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特許7550668走査ユニットおよびこれを搭載したロータリエンコーダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】走査ユニットおよびこれを搭載したロータリエンコーダ
(51)【国際特許分類】
   G01D 5/245 20060101AFI20240906BHJP
【FI】
G01D5/245 E
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021012763
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022001860
(43)【公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】20181310
(32)【優先日】2020-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390014281
【氏名又は名称】ドクトル・ヨハネス・ハイデンハイン・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】DR. JOHANNES HEIDENHAIN GESELLSCHAFT MIT BESCHRANKTER HAFTUNG
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100220065
【弁理士】
【氏名又は名称】高梨 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・エーダー
(72)【発明者】
【氏名】ヨーゼフ・ターラー
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・アーレント
(72)【発明者】
【氏名】アロイス・ブランドル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・イェーガー
【審査官】菅藤 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-182937(JP,A)
【文献】特開2018-179903(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0375405(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 5/12-5/40
G01B 7/30-7/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査ユニット(1)に対して相対的に軸(A)の周りを回転可能なスケール要素(2)を走査するための走査ユニット(1)であって、前記走査ユニット(1)が、金属枠(1.1)およびプリント基板(1.2)を含んでおり、
- 前記プリント基板(1.2)が基材(1.21)を有しており、前記基材(1.21)が、
第1の面(1.211)と、
前記第1の面(1.211)の反対側にある第2の面(1.212)と、
周りを取り巻いている第3の面(1.213)とを有しており、これに関し、
前記第1の面(1.211)には検知器構成(1.23)が配置されており、かつ前記第2の面(1.212)には電子部品(1.22)が取り付けられており、かつ前記第3の面(1.213)が複数の凹状のくぼみ(1.214)を有しており、
- 前記金属枠(1.1)が、前記金属枠(1.1)の内面(I)によって径方向に画定された一続きの第1の孔(1.11)を有しており、前記内面(I)が、複数の内側に出っ張った要素(1.12)を有しており、これに関し、
前記金属枠(1.1)の前記内面(I)が、前記基材(1.21)の前記くぼみ(1.214)を包囲しており、かつ
前記内側に出っ張った要素(1.12)が、前記基材(1.21)が機械的応力を受けて前記金属枠(1.1)内で固定されるように、前記凹状のくぼみ(1.214)に食い込んでいる走査ユニット(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の走査ユニット(1)であって、前記内側に出っ張った要素(1.12)がそれぞれ、前記軸(A)に平行に走るエッジ(1.121)を有している、走査ユニット(1)。
【請求項3】
請求項1または2に記載の走査ユニット(1)であって、前記金属枠(1.1)が円盤状の形を有している、走査ユニット(1)。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の走査ユニット(1)であって、前記金属枠(1.1)が、前記軸(A)に垂直な方向に第1の広がり(D11)を有しており、かつ前記軸(A)の方向に第2の広がり(T11)を有しており、これに関し、前記第1の広がり(D11)が前記第2の広がり(T11)より少なくとも5倍大きい、走査ユニット(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の走査ユニット(1)であって、前記プリント基板(1.2)が前記金属枠(1.1)内で、前記金属枠(1.1)が前記基材(1.21)の前記第1の面(1.211)に対して第1の軸方向の突出部(H1)を有するように配置されている、走査ユニット(1)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の走査ユニット(1)であって、前記プリント基板(1.2)が前記金属枠(1.1)内で、前記金属枠(1.1)が前記基材(1.21)の前記第2の面(1.212)に対して第2の軸方向の突出部(H2)を有するように配置されている、走査ユニット(1)。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の走査ユニット(1)であって、前記金属枠(1.1)が、機械部分(4)に固定するための第2の孔(1.13)を有している、走査ユニット(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の走査ユニット(1)であって、前記走査ユニット(1)が固定要素(1.3)をさらに含んでおり、前記固定要素(1.3)が前記第2の孔(1.13)を貫通しており、それにより、前記固定要素(1.3)がそれぞれ、内側に前記基材(1.21)上に張り出した区域(1.31)を有している、走査ユニット(1)。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の走査ユニット(1)であって、前記金属枠(1.1)が前記軸(A)の方向に第2の広がり(T11)を有しており、かつ前記基材(1.21)が前記軸(A)の方向に第3の広がり(T121)を有しており、これに関し、前記第2の広がり(T11)が前記第3の広がり(T121)より大きい、走査ユニット(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の走査ユニット(1)およびスケール要素(2)を含むロータリエンコーダであって、前記第1の面(1.211)が、前記スケール要素(2)に対向して、前記軸(A)の方向に延びている間隔(C)をあけて配置されているロータリエンコーダ。
【請求項11】
請求項10に記載のロータリエンコーダであって、前記ロータリエンコーダが、軸受なしのロータリエンコーダとして形成されている、ロータリエンコーダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1による、走査ユニットに対して相対的に回転可能なスケール要素を走査するための走査ユニットおよびこのような走査ユニットを搭載したロータリエンコーダに関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリエンコーダは、例えば2つの互いに対して相対的に回転可能な機械部分の角度位置を決定するための角度測定機器として使用される。
誘導式ロータリエンコーダではしばしば、励磁導体路と、例えば導体路の形態での受信トラックとが、共通のたいていは多層のプリント基板上に施されており、このプリント基板が、例えばロータリエンコーダの固定子と固定的に結合している。このプリント基板に対向してスケール要素が存在しており、このスケール要素上には目盛構造が施されており、かつスケール要素はロータリエンコーダの回転子と回転不能に結合されている。励磁トラックに、時間と共に交番する励磁電流が印加されると、受信トラック内で、回転子と固定子の相対回転中に角度位置に依存する信号が生成される。この信号はその後、評価電子機器内でさらに処理される。
【0003】
光学原理に従って働くロータリエンコーダではしばしば、光線が、目盛構造を有する回転可能な円盤で反射され、その後、反射および変調された光が光検出器によって受信される。受信された光強度が、相対角度位置についての情報を内包している。
【0004】
このようなロータリエンコーダはしばしば、電気駆動装置のための測定機器として、相応の機械部分の相対運動または相対位置の決定に用いられる。この場合には、後続電子機器の生成された角度位置値が、駆動装置の制御のために、相応のインターフェイス構成を介して供給される。
【0005】
本出願人のDE102018202239A1では、角度スケールを走査するためのリング状のプリント基板を含む角度測定機構が説明されている。このプリント基板は、角度測定機構のハウジングの段部に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】DE102018202239A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の基礎となる課題は、経済的に製造可能であり、かつコンパクトな構造形を有しており、それにもかかわらず高い測定精度を可能にする走査ユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は本発明により、請求項1の特徴によって解決される。
それに従えばこの走査ユニットは、走査ユニットに対して相対的に軸の周りを回転可能なスケール要素を走査するのに適しており、この走査ユニットは、金属枠およびプリント基板を含んでいる。プリント基板は基材を有しており、基材は、第1の面と、第1の面の反対側にある第2の面と、周りを取り巻いている第3の面とを有している。第1の面には検知器構成またはセンサ構成が配置されている。第2の面にはまたは第2の面の上には電子部品が取り付けられている。第3の面は複数の凹状のくぼみを有している。金属枠は、金属枠の内面によって径方向に画定された一続きの第1の孔を有しており、この内面は、複数の内側に出っ張った要素を有している。金属枠の内面は、基材の周りを取り巻いている第3の面のくぼみを包囲している。内側に出っ張った要素は、基材が金属枠内で機械的応力を受けて固定されるように、凹状のくぼみに食い込む。
【0009】
特に、一続きの第1の孔とは段部を有さない孔のことであり、したがってつまり、孔の内面の軸に平行な各線に沿って、軸に対する径方向の間隔が、1つの同じ線に関して常に同じ大きさである孔のことである。
【0010】
この関連で、特に機械的応力は径方向に方向づけられた力から、つまり軸の方向への挟持力から結果として生じている。
しばしば基材は、生成された機械的応力による前述の挟持に加え、重複的な接着結合によってさらに固定または保持される。
【0011】
特に、走査ユニットは4つの、内側に出っ張った要素を有することができ、この内側に出っ張った要素は、プリント基板または基材が機械的応力を受けて金属枠内で固定されるように、凹状のくぼみに食い込む。
【0012】
内側に出っ張った要素がそれぞれ、軸に平行に走るエッジまたは刃を有することが有利である。
本発明のさらなる一形態によれば、金属枠は、円盤状のまたは一番の近似ではリング状の形を有している。したがって金属枠は、とりわけ、直径が厚さより何倍も大きい中空円筒に近似した形を有している。金属枠はとりわけ平らな板から作り出されており、したがって金属枠のリング状の上面または端面は、張り出した領域を有していない。むしろ金属枠の端面は平らで、互いに対して平行に方向づけられている。金属枠は、周りを取り巻くように閉じて形成されることが好ましい。しかし金属枠は、場合によっては閉じずに実施されていてもよく、つまり隙間を有することができ、その隙間幅は周方向に延びている。
【0013】
その他の点では、金属枠の端面(リング状の上面)は、軸に直交して配置されている。
金属枠の内面と、金属枠の周りを取り巻いている外面または外輪郭とは互いに対し、1つの同じ点に対して点対称に配置されており、この点は軸上にくることが好ましい。
【0014】
金属枠は、軸に垂直な方向に第1の広がり(又は、寸法)を有しており、この第1の広がりが直径または最大直径と認識され得ることが有利である。金属枠はこれに加え、軸の方向に第2の広がりを有しており、この第2の広がりは厚さと言ってもよい。第1の広がりは第2の広がりより少なくとも5倍大きく、有利には少なくとも10倍大きく、とりわけ少なくとも12倍大きい。
【0015】
金属枠がほぼ円形の外輪郭を有することが有利である。
プリント基板は金属枠内で、金属枠が基材の第1の面に対して第1の軸方向の突出を有するように配置されることが有利である。
【0016】
本発明のさらなる形態では、プリント基板が金属枠内で、金属枠が基材の第2の面に対して第2の軸方向の突出を有するように配置されている。ただし電子部品は軸の方向に金属枠の輪郭を越えて突き出ることができる。
【0017】
金属枠が、機械部分に固定するための、とりわけドリル孔として形成され得る第2の孔を有することが有利である。走査ユニットは固定要素をさらに含むことができ、この固定要素が第2の孔を貫通しており、その際、固定要素はそれぞれ、内側に基材上に張り出した区域を有している。したがって固定要素により、金属枠が固定され得るだけでなく、同時にプリント基板の軸方向の保持も達成され得る。
【0018】
有利なのは、金属枠が軸の方向に第2の広がり(金属枠の厚さ)を有しており、かつ基材が軸の方向に第3の広がり(基材の厚さ)を有しており、これに関し、第2の広がりが第3の広がりより大きいことである。
【0019】
さらなる一態様によれば、本発明は、走査ユニットおよびスケール要素を備えたロータリエンコーダも含んでおり、これに関し、基材の第1の面は、スケール要素に対向して、軸の方向に延びている間隔をあけて配置されている。
【0020】
原理的に、自己軸受部を備えたロータリエンコーダと、自己軸受部なしのロータリエンコーダ(以下に、軸受なしのロータリエンコーダと言う)とが区別される。自己軸受部を備えたロータリエンコーダは、通常は比較的小さな玉軸受を有しており、したがって、当該ロータリエンコーダ内の互いに対して相対的に回転可能な部品群は、互いに対して相対的に規定の軸方向および径方向の位置に配置されている。これに対し軸受なしのロータリエンコーダの場合、機械に取り付ける際に、互いに対して回転可能な部品群が、互いに対して正しい位置に、とりわけ正しい軸方向の間隔をあけて位置規定されるよう注意を払わなければならない。
【0021】
本ロータリエンコーダが、軸受なしのロータリエンコーダとして形成されることが有利である。
本発明の有利な形成形態は従属請求項から読み取られる。
【0022】
本発明によるロータリエンコーダのさらなる詳細および利点は、添付の図に基づく1つの例示的実施形態の以下の説明から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】走査ユニットの金属枠の平面図である。
図2】走査ユニットの金属枠の側面図である。
図3】走査ユニットのプリント基板の平面図である。
図4図3とは反対側のプリント基板の面での走査ユニットのプリント基板の平面図である。
図5】走査ユニットの平面図である。
図6】スケール要素の平面図である。
図7】組み込まれた状態でのロータリエンコーダの断面図である。
図8】組み込まれた状態でのロータリエンコーダの断面の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明が、本発明による走査ユニット1と、相対的に軸Aの周りを回転可能なスケール要素2またはスケールとの間の角度位置を捕捉(又は、測定)するために決定されたロータリエンコーダ(図7)に基づいて説明される。走査ユニット1は金属枠1.1を有しており、金属枠1.1は、紹介している例示的実施形態ではアルミニウム合金から製造されている。
【0025】
とりわけ図1および図2に基づいて金属枠1.1の形態を解説することができる。金属枠1.1は、ほぼ円形の外輪郭を有しており、かつ軸に直交して、金属枠1.1の最大外径に相当する第1の広がり(又は、寸法)D11を有している。金属枠1.1は、金属枠1.1の第2の広がりT11に相当する厚さをもつ平らな板から切り出されている。軸Aは、金属枠1.1に直交して、つまり金属枠1.1の端面に直交して方向づけられている。さらに、金属枠1.1は軸方向に一続きの第1の孔1.11を有しており、したがってつまり、金属枠1.1は一続きの第1の孔1.11を包囲している。第1の孔1.11は必然的に、金属枠1.1の内面Iによって画定されている。つまり金属枠1.1の内面Iは、軸Aに平行に方向づけられており、かつ軸Aを取り囲んでいる。この内面Iは、軸Aに向かって径方向に方向づけられた4つの内側に張り出した要素1.12を有しており、この内側に張り出した要素1.12はそれぞれ、軸Aに平行に延びるエッジ1.121を有している。内面Iは、金属枠1.1の第2の広がりT11の全体、つまり金属枠1.1の厚さ全体にわたっては延びていないであろう段部または突起を有していない。よって、一続きの第1の孔1.11は例えば打抜きプロセスまたはレーザ切断もしくはウォータージェット切断プロセスによって製造可能である。
【0026】
金属枠1.1はこれに加え、機械部分に固定するため、紹介している例示的実施形態では固定用ドリル孔として形成された第2の孔1.13を有している。
金属枠1.1は、したがって円盤状またはリング状の形を有している。これに関し、紹介している例示的実施形態では、第1の広がりD11が第2の広がりT11より17.5倍大きい。金属枠1.1の内面Iにはまたは第1の孔1.11の縁には、仮想的に軸に平行な線が配置され得る。これらの線の各々が、第2の広がりT11にわたって軸Aに対する同じ間隔を有している。
【0027】
走査ユニット1はプリント基板1.2をさらに含んでいる。プリント基板1.2は、とりわけ図3および図4に示されている。それに従えば、プリント基板1.2は基材1.21を有しており、基材1.21は、紹介している例示的実施形態では複数の層を有している。基材1.21は、第1の面1.211および第2の面1.212を有しており、これに関し、第2の面1.212は第1の面1.211の反対側に配置されており、ならびに周りを取り巻いている第3の面1.213を有しており、第3の面1.213は側面とも言える。
【0028】
第1の面1.211には、図3による検知器構成1.23が配置されている。紹介している例示的実施形態では、ロータリエンコーダは誘導走査原理に基づいており、したがって検知器構成1.23は、2つの受信トラック1.231、1.232を有しており、この受信トラック1.231、1.232の各々が2つの受信導体路1.2311、1.2312、1.2321、1.2322を含んでいる。受信導体路1.2311、1.2312、1.2321、1.2322は、貫通ビアを有する異なる平面に延びており、これにより交点で望ましくない短絡が回避される。示した例示的実施形態では、プリント基板構造または基材構造内で少なくとも2つの層が設けられている。受信導体路1.2311、1.2312、1.2321、1.2322は、実質的に正弦波形にまたは正弦波状に形成された、空間的に周期的な軌道を有している。
【0029】
同じ受信トラック1.231、1.232に属する受信導体路1.2311、1.2312、1.2321、1.2322は、互いに対して相対的に周方向に沿ってずれて配置されている。紹介している例示的実施形態では、隣接する受信導体路1.2311、1.2312、1.2321、1.2322は互いに対し、正弦波周期全体の1/4(第1の方向xに沿ってπ/2または90°)ずれて配置されている。受信導体路1.2311、1.2312、1.2321、1.2322は、最終的に周方向での位置決定に対し、90°移相した信号をもたらし得るように電気的に接続されている。
【0030】
走査ユニット1は励磁導体路1.24をさらに含んでおり、励磁導体路1.24は、同様に第1の面1.211に配置されており、かつ受信導体路1.2311、1.2312、1.2321、1.2322を包囲している。
【0031】
励磁導体路1.24を動作させるために、および受信導体路1.2311、1.2312、1.2321、1.2322によって受信された信号を処理するために、電子回路が必要である。プリント基板1.2の、第1の面1.211の反対側に配置された第2の面1.212には、電子部品1.22が取り付けられている(図では、例示的に幾つかの少数の電子部品だけが符号を備えている)。これらの電子部品1.22は、励磁導体路1.24に給電するために、および受信された信号を処理するために用いられる。第2の面1.212にはこれに加え、ケーブルの嵌合コネクタとの差込接続を確立するための電気的なカップリングピース1.221が取り付けられている。
【0032】
プリント基板1.2はこれに加え、側面側で、つまりプリント基板1.2の周りを取り巻いている側面に、4つの凹状のくぼみ1.214を有している。
走査ユニット1を取り付ける過程で、プリント基板1.2または基材1.21が金属枠1.1内に押し込まれ、これにより、張り出した要素1.12のエッジ1.121が、くぼみ1.214の領域内の基材1.21にめり込む(図5)。つまり基材1.21は、金属枠1.1への接触箇所でオーバーサイズを有している。それに応じて、張り出した要素1.12は、基材1.21が機械的応力を受けて金属枠1.1内で固定されるように、凹状のくぼみ1.214に食い込む。こうすることで、検知器構成1.23を備えたプリント基板1.2が、金属枠1.1または第2の孔1.13に対して相対的にすべての空間方向で厳密に固定され、これが、ロータリエンコーダの測定精度に対して重要である。
【0033】
図6では、スケール要素2が平面図で示されている。スケール要素2は、図示した例示的実施形態ではエポキシ樹脂から製造された基材2.3から成っており、かつ基材2.3上には2つの目盛トラック2.1、2.2が配置されている。目盛トラック2.1、2.2はリング状に形成されており、かつ基材上で、軸Aに対して異なる直径で同心に配置されている。両方の目盛トラック2.1、2.2はそれぞれ、交互に配置された導電性目盛領域2.11、2.21と非導電性目盛領域2.12、2.22の周期的シーケンスから成っている。導電性目盛領域2.11、2.21の材料として、示した例では銅が、基材2.3上に施された。これに対して非導電性目盛領域2.12、2.22では、基材2.3がコーティングされなかった。
【0034】
図7では、走査ユニット1およびスケール要素2を含むロータリエンコーダが示されている。走査ユニット1は第1の機械部分4、ここではフランジに、紹介している例示的実施形態ではネジとして形成された固定要素1.3を使って固定されている。固定要素1.3はこのために第2の孔1.13を貫いて差し込まれており、したがって固定要素1.3は第2の孔1.13を貫通している。これに加えて固定要素1.3はそれぞれ、内側に基材1.21上に張り出した区域1.31を有しており、この張り出した区域1.31は、紹介している例示的実施形態ではネジの頭部である。
【0035】
図8によれば、張り出した区域1.31は、基材1.21の上に長さX1にわたってはみ出している。つまり固定要素1.3は、金属枠1.1をフランジ4に押し付けると同時に、プリント基板1.2を軸方向において保持している。
【0036】
プリント基板1.2または基材1.21は、走査ユニット1を取り付ける過程で、軸Aの方向に正確に、金属枠1.1が基材1.21の第1の面1.211に対して第1の軸方向の突出部H1を有するように、金属枠1.1内に押し込まれた。基材1.21の第1の面1.211は、プリント基板1.2のうち、検知器構成1.23および励磁導体路1.24が配置されている側である。第1の軸方向の突出部H1は、金属枠の端面および基材1.21の第1の面1.211に対してである。
【0037】
これに加えて図8では、プリント基板1.2が金属枠1.1内で、金属枠1.1が基材1.21の第2の面1.212に対して第2の軸方向の突出H2を有するように配置されていることが認識され得る。
【0038】
したがって金属枠1.1は軸Aの方向に、基材1.21より大きな第2の広がりT11を有しており、基材1.21は軸Aの方向に第3の広がりT121を有している。すなわち基材1.21は、金属枠1.1によって、つまり金属枠1.1の内面Iによって完全に取り囲まれており、どの箇所でも軸方向に金属枠1.1の外輪郭を越えて突き出てはいない。
【0039】
図7による組み立てられた状態では、走査ユニット1とスケール要素2は、軸方向の間隔C、つまり軸方向の空隙をあけて向かい合っている。軸方向の突出部H1は、取付の際、例えばストッパを備えた適切な取付装置により、簡単に、しかし非常に精密に調整することができ、これにより所望の間隔Cも高い精度で簡単に調整され得る。これがロータリエンコーダの測定精度を高める。
【0040】
スケール要素2と走査ユニット1が相対的に回転すると、検知器構成1.23内で、とりわけ受信導体路1.2311、1.2312、1.2321、1.2322内で、それぞれの角度位置に依存する信号が誘導効果によって生成される。相応の信号が形成されるための前提条件は、励磁導体路1.24が、走査される目盛構造の領域内で、時間と共に交番する電磁励起場を生成することである。図示した例示的実施形態では、励磁導体路1.24が、平行平面で電流に貫流される複数の単一導体路として形成されている。電子部品1.22を備えた走査ユニット1の電子回路は、評価要素としてだけでなく、励磁コントロール要素としても働き、この励磁コントロール要素のコントロール下で励磁電流が生成され、励磁電流はその後、励磁導体路1.24を貫流する。
【0041】
励磁導体路1.24が通電すると、それぞれの励磁導体路1.24の周りに管状または円筒形に方向づけられた電磁場が形成される。この生じている電磁場の力線は、同心円の形態で励磁導体路1.24の周りに延びており、この力線の方向は、既知のように励磁導体路1.24内の電流方向に依存している。導電性目盛領域2.11、2.21の領域で渦電流が誘導され、これにより、角度位置に依存した場の変調が達成される。これに相応して受信トラック1.231、1.232により、それぞれ、回転軸としての軸Aに対する相対的な角度位置が測定され得る。ペアの受信導体路1.2311、1.2312、1.2321、1.2322はその受信トラック1.231、1.232内で、それぞれ90°移相した信号をもたらすように配置されており、これにより回転方向の決定も行われ得る。
【符号の説明】
【0042】
1 走査ユニット
1.1 金属枠
1.11 第1の孔
1.12 内側に出っ張った要素
1.121 エッジ
1.13 第2の孔
1.2 プリント基板
1.21 基材
1.211 第1の面
1.212 第2の面
1.213 第3の面
1.214 くぼみ
1.22 電子部品
1.23 検知器構成
1.3 固定要素
1.31 張り出した区域
2 スケール要素
4 機械部分
A 軸
C 間隔
D11 第1の広がり
H1 第1の軸方向の突出部
H2 第2の軸方向の突出部
I 内面
T11 第2の広がり
T121 第3の広がり
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8