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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-05
(45)【発行日】2024-09-13
(54)【発明の名称】静電チャック及び基板固定装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20240906BHJP
   H02N 13/00 20060101ALI20240906BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021044021
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022143488
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小泉 直幸
(72)【発明者】
【氏名】清水 和紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 健太郎
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-007190(JP,A)
【文献】米国特許第9518326(US,B2)
【文献】特開2018-133502(JP,A)
【文献】特開平9-213455(JP,A)
【文献】国際公開第2019/082821(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミック板と、
前記セラミック板の一方の面の近傍に内蔵される吸着電極と、
前記セラミック板内において前記セラミック板の他方の面と前記吸着電極の間に階段状に積層される複数の連結パッドと
を有し、
前記複数の連結パッドは、
中央の層において折り返して積層される
ことを特徴とする静電チャック。
【請求項2】
隣接する層の連結パッドを接続するビアをさらに有することを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
【請求項3】
前記複数の連結パッドそれぞれは、
角丸四角形状を有する
ことを特徴とする請求項1記載の静電チャック。
【請求項4】
前記複数の連結パッドそれぞれは、
直径が異なる2つの円の円周上の点を直線で結んで得られる角丸台形状を有する
ことを特徴とする請求項記載の静電チャック。
【請求項5】
前記複数の連結パッドは、
隣接する層の一方の連結パッドの直径が大きい円に他方の連結パッドの直径が小さい円が重なるように積層される
ことを特徴とする請求項記載の静電チャック。
【請求項6】
前記複数の連結パッドそれぞれは、
直径が等しい2つの円の円周上の点を直線で結んで得られる角丸長方形状を有する
ことを特徴とする請求項記載の静電チャック。
【請求項7】
ベースプレートと、
前記ベースプレートに固定され、静電気力によって基板を吸着する静電チャックとを有し、
前記静電チャックは、
セラミック板と、
前記基板を吸着する前記セラミック板の一方の面の近傍に内蔵される吸着電極と、
前記セラミック板内において前記セラミック板の他方の面と前記吸着電極の間に階段状に積層される複数の連結パッドと
を有し、
前記複数の連結パッドは、
中央の層において折り返して積層される
ことを特徴とする基板固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電チャック及び基板固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば半導体部品を製造する場合などにウエハを吸着して保持する基板固定装置には、吸着電極を内蔵するセラミック板を用いて構成される静電チャック(ESC:Electrostatic Chuck)が備えられている。基板固定装置は、静電チャックがベースプレートに固定された構造を有し、セラミック板に内蔵された吸着電極に電圧を印加することにより、静電気力を利用して静電チャックにウエハを吸着する。静電チャックにウエハを吸着して保持することにより、ウエハに対する例えば微細加工やエッチングなどのプロセスが効率的に行われる。
【0003】
静電チャックを構成するセラミック板は、例えば酸化アルミニウム及び助剤から作製されるグリーンシートを積層し、焼成することにより形成される。このセラミック板のウエハを吸着する吸着面の近傍には、吸着電極が内蔵される。一方、吸着電極へ電流を供給するベースプレートは、吸着面から最も離れた位置にある。このため、セラミック板の内部には、ベースプレートから吸着電極へ電流を供給するための配線が形成される。
【0004】
具体的には、各グリーンシートの表面に導電性の連結パッドが形成され、グリーンシートを貫通するビアによって、隣接するグリーンシートの連結パッドが接続される。これにより、複数のグリーンシートが積層される場合でも、各グリーンシートに形成される連結パッドとビアによって、ベースプレートと吸着電極を接続する配線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-229464号公報
【文献】特開2010-199318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、内部に配線が形成される静電チャックは、セラミック部分と配線部分との熱膨張係数の相違により、破損する恐れがあるという問題がある。具体的には、セラミックを構成するグリーンシートは、例えば上述したように酸化アルミニウムを主材料とするのに対し、配線を構成する連結パッドは、例えばタングステンなどの導電体を材料として形成される。このように、異なる材料が混在した状態でグリーンシートを積層して焼成するため、高温で加熱される焼成時には、熱膨張係数の相違により連結パッドとセラミックの境界で応力が発生する。結果として、例えば連結パッドが重なる部分の周囲を起点として、セラミックにクラックが発生することがある。
【0007】
開示の技術は、かかる点に鑑みてなされたものであって、破損の可能性を低減することができる静電チャック及び基板固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願が開示する静電チャックは、1つの態様において、セラミック板と、前記セラミック板の一方の面の近傍に内蔵される吸着電極と、前記セラミック板内において前記セラミック板の他方の面と前記吸着電極の間に階段状に積層される複数の連結パッドとを有する。
【発明の効果】
【0009】
本願が開示する静電チャック及び基板固定装置の1つの態様によれば、破損の可能性を低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施の形態に係る基板固定装置の構成を示す斜視図である。
図2図2は、一実施の形態に係る基板固定装置の断面を示す模式図である。
図3図3は、連結パッドの配置の具体例を示す平面図である。
図4図4は、連結パッドの形状の具体例を示す図である。
図5図5は、連結パッドの形状の他の具体例を示す図である。
図6図6は、連結パッドの形状のさらに他の具体例を示す図である。
図7図7は、一実施の形態に係る基板固定装置の製造方法を示すフロー図である。
図8図8は、応力分布の具体例を示す図である。
図9図9は、基板固定装置の変形例を示す図である。
図10図10は、連結パッドの配置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本願が開示する静電チャック及び基板固定装置の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0012】
図1は、一実施の形態に係る基板固定装置100の構成を示す斜視図である。図1に示す基板固定装置100は、ベースプレート110に静電チャック120が接着された構造を有する。
【0013】
ベースプレート110は、例えばアルミニウムなどの金属製の円形部材である。ベースプレート110は、静電チャック120を固定する基材である。ベースプレート110は、例えば半導体製造装置などに取り付けられ、基板固定装置100を、ウエハを保持する半導体保持装置として機能させる。
【0014】
静電チャック120は、ベースプレート110に接着され、静電気力を利用して例えばウエハなどの対象物を吸着する。静電チャック120は、ベースプレート110よりも小径の円形部材であり、一面がベースプレート110の中央に接着される。そして、静電チャック120は、ベースプレート110に接着される接着面とは反対側の吸着面に、例えばウエハなどの対象物を吸着する。すなわち、静電チャック120は、吸着面の近傍に吸着電極を内蔵するセラミックからなり、ベースプレート110から吸着電極に電圧が印加されると、静電気力によって吸着面に対象物を吸着する。
【0015】
図2は、図1のI-I線断面を示す模式図である。図2に示すように、基板固定装置100は、接着層160によって静電チャック120がベースプレート110に接着されて構成される。以下においては、便宜上ベースプレート110から静電チャック120へ向かう方向を上方向とし、静電チャック120からベースプレート110へ向かう方向を下方向として説明するが、基板固定装置100は、例えば上下反転するなど任意の姿勢で製造・使用されて良い。
【0016】
ベースプレート110は、例えばアルミニウムなどの金属からなる厚さが5~100mmの部材である。ベースプレート110の上面中央からは、給電ピン115が突出し、給電ピン115は、接着層160を貫通して静電チャック120の配線パッド130に接触することにより、静電チャック120内の配線に給電される。
【0017】
静電チャック120は、通電可能な配線を内蔵し、例えば酸化アルミニウムを焼成して得られるセラミック板からなる。静電チャック120の厚さは、例えば1~20mm程度である。静電チャック120の下部には、ベースプレート110の給電ピン115を収容可能な凹部であるキャビティ120bが形成され、キャビティ120bには配線パッド130の下面が露出する。そして、配線パッド130の下面に給電ピン115の先端が接触することにより、ベースプレート110から静電チャック120内の配線に給電される。
【0018】
静電チャック120の上面は、対象物を吸着する吸着面120aである。吸着面120aの近傍には、静電気力を発生させるための吸着電極140が内蔵される。そして、配線パッド130と吸着電極140とは、複数の連結パッド150及びビア155によって電気的に接続される。すなわち、給電ピン115に接触する配線パッド130と吸着電極140の間に、複数の層の連結パッド150が配置され、配線パッド130と連結パッド150の間、隣接する連結パッド150の間、及び連結パッド150と吸着電極140の間がそれぞれビア155によって接続される。
【0019】
図2に示す構成においては、左右に2組の配線が配置されており、それぞれの配線は、配線パッド130と吸着電極140の間に6層の連結パッド150が積層されて形成される。以下、配線パッド130に近い連結パッド150から順に、それぞれ第1~6層の連結パッド150という。
【0020】
連結パッド150は、例えばタングステンなどの導電体を材料として形成される。また、ビア155は、隣接する層の連結パッド150の間に形成されたビアホールに、例えばモリブデンなどの導電体を充填することにより形成される。
【0021】
隣接する層の連結パッド150は、互いに全体が重ならない位置に配置される。すなわち、例えば第2層の連結パッド150に着目すると、この連結パッド150の一端は、第1層の連結パッド150と重なる一方、この連結パッド150の他端は、第1層の連結パッド150と重ならない。そして、第1層の連結パッド150と重ならない他端は、第3層の連結パッド150と重なる。このように、複数の連結パッド150は、それぞれ一端が下層の連結パッド150と重なり、他端が上層の連結パッド150と重なるように配置され、側面視で階段状に積層される。また、複数の連結パッド150は、所定の段数の階段状に積層されると、折り返して再び階段状に積層される。すなわち、例えば図2においては、第3層及び第4層の連結パッド150において折り返して積層されている。隣接する層の連結パッド150が重なる位置においては、各層の連結パッド150がビア155によって接続される。
【0022】
図2に示す構成においては、第1層の連結パッド150の一端が配線パッド130と重なり、ビア155によって接続される。第1層の連結パッド150の他端は、配線パッド130とは重ならず、第2層の連結パッド150の一端と重なり、ビア155によって接続される。
【0023】
同様に、第2層の連結パッド150の一端は、第1層の連結パッド150と重なり、ビア155によって接続される。第2層の連結パッド150の他端は、第1層の連結パッド150とは重ならず、第3層の連結パッド150の一端と重なり、ビア155によって接続される。
【0024】
そして、第3層の連結パッド150の一端は、第2層の連結パッド150と重なり、ビア155によって接続される。また、第3層及び第4層の連結パッド150において折り返すため、第3層及び第4層の連結パッド150は、全体が重なって積層される。そして、第3層の連結パッド150の他端は、第4層の連結パッド150の一端とビア155によって接続される。
【0025】
第4層の連結パッド150の一端は、第3層の連結パッド150と重なり、ビア155によって接続される。第4層の連結パッド150の他端は、第5層の連結パッド150の一端と重なり、ビア155によって接続される。
【0026】
同様に、第5層の連結パッド150の一端は、第4層の連結パッド150と重なり、ビア155によって接続される。第5層の連結パッド150の他端は、第4層の連結パッド150とは重ならず、第6層の連結パッド150の一端と重なり、ビア155によって接続される。
【0027】
そして、第6層の連結パッド150の一端は、第5層の連結パッド150と重なり、ビア155によって接続される。第6層の連結パッド150の他端は、第5層の連結パッド150とは重ならず、吸着電極140とビア155によって接続される。
【0028】
このように、各層の連結パッド150は、隣接する層の連結パッド150と水平方向の位置をずらして階段状に積層される。このため、各層の連結パッドの全体が重なって積層される場合と比較して、水平方向の単位面積当たりに含まれる連結パッド150の量を少なくすることができる。すなわち、セラミックとは異なる材料からなる連結パッド150の密度が低くなるため、セラミックと連結パッド150の熱膨張係数の違いによる応力の発生を低減することができる。結果として、セラミック及び連結パッド150を含む静電チャック120の破損の可能性を低減することができる。
【0029】
図3は、連結パッド150の配置の具体例を示す平面図である。図3においては、図2に示した第1~3層の連結パッド150の配置を図示している。
【0030】
図3に示すように、第1~3層の連結パッド150は、円形の静電チャック120の中心から半径方向に連結し、階段状に積層される。それぞれの連結パッド150の長手方向は、例えば15mmの長さである。第1層の連結パッド150は、静電チャック120の中心において配線パッド130とビア155を介して接続され、図中中心から右方向へずれた位置において第2層の連結パッド150と重なり、ビア155を介して接続される。ここでは、第1層の連結パッド150と第2層の連結パッド150とは、4つのビア155を介して接続される。
【0031】
第2層の連結パッド150は、第1層の連結パッド150と重なる位置から右方向へずれた位置において第3層の連結パッド150と重なり、ビア155を介して接続される。ここでは、第2層の連結パッド150と第3層の連結パッド150とは、4つのビア155を介して接続される。
【0032】
このように、各層の連結パッド150が下層及び上層の連結パッド150とずれた位置に配置されることで、階段状に連結パッド150を積層させ、単位面積当たりの連結パッド150の量を削減し、セラミックと異なる導電体の密度を低くすることができる。
【0033】
なお、図3においては、静電チャック120の中心から半径方向に連結される連結パッド150を図示したが、連結パッド150は、必ずしも半径方向に連結されなくても良い。また、第1層の連結パッド150は、必ずしも静電チャック120の中心に配置されなくても良い。すなわち、例えば静電チャック120の周方向に沿って連結パッド150が連結されたり、静電チャック120の中心とは異なる位置に第1層の連結パッド150が配置されたりしても良い。
【0034】
図4は、連結パッド150の形状の具体例を示す図である。この連結パッド150は、直径が異なる2つの円を直線で結んだ形状を有する。すなわち、連結パッド150は、小円150aと大円150bの円周上の点を直線で結んで得られる角丸台形状を有する。連結パッド150の一端の小円150aは、下層の連結パッド150の大円150bと重なってビア155により接続される。連結パッド150の他端の大円150bは、上層の連結パッド150の小円150aと重なってビア155により接続される。
【0035】
このように、連結パッド150の両端が径の異なる円形であることにより、上層及び下層の連結パッド150と重なる部分において、外周が完全に一致しないようにすることができる。このため、連結パッド150の外周付近において、単位面積当たりの導電体の量が緩やかに変化するようにすることができる。結果として、セラミックと連結パッド150の熱膨張係数の違いによる応力の発生を低減し、静電チャック120の破損の可能性を低減することができる。
【0036】
なお、連結パッド150の形状は、図4に示した角丸台形状に限定されず、他の様々な形状であっても良い。例えば図5に示すように、連結パッド150は、直径が等しい2つの円150cの円周上の点を直線で結んで得られる角丸長方形状を有していても良い。また、例えば図6に示すように、連結パッド150は、両端が半円となっていない角丸長方形状を有していても良い。いずれの形状であっても、連結パッド150は、長手方向の一端において下層の連結パッド150とビア155によって接続され、長手方向の他端において上層の連結パッド150とビア155によって接続される。
【0037】
次に、一実施の形態に係る基板固定装置100の製造方法について、図7に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0038】
まず、静電チャック120を形成するために、複数のグリーンシートが作製される(ステップS101)。具体的には、例えば酸化アルミニウムと所定の助剤とが混合され、得られたスラリー状の混合物が乾燥されることにより、グリーンシートが作製される。グリーンシートは、例えば厚さ0.7mmかつ縦横500mm×500mmの正方形のシートである。
【0039】
それぞれのグリーンシートには、隣接する層の連結パッド150を接続するためのビア155が形成される(ステップS102)。具体的には、隣接する層の連結パッド150が重なる位置において、グリーンシートを貫通するビアホールが形成され、ビアホールに例えばモリブデンなどの導電体が充填されることにより、ビア155が形成される。ビア155が形成される位置は、このビア155が接続する連結パッド150の位置に応じるため、グリーンシートごとのビア155の位置は異なる。なお、キャビティ120bもビアホールと同様に、グリーンシートを貫通する貫通孔から形成される。すなわち、積層される複数のグリーンシートの貫通孔が連結して開口が形成されることにより、キャビティ120bが形成される。
【0040】
ビア155が形成されたグリーンシートには、連結パッド150のパターンが印刷される(ステップS103)。すなわち、グリーンシートの表面に、例えばタングステンなどの金属ペーストが印刷され、図4~6に示したような形状の連結パッド150が形成される。また、静電チャック120の吸着面120a近傍に積層されるグリーンシートには、吸着電極140が形成される(ステップS104)。
【0041】
このように連結パッド150及び吸着電極140が形成されたグリーンシートは、隣接する層の連結パッド150及び吸着電極140がビア155によって接続される順序で積層される(ステップS105)。そして、グリーンシートの積層体は、ベースプレート110の形状に合わせて円形にカットされる(ステップS106)。
【0042】
円形にカットされた積層体は、焼成炉において焼成され、セラミックとなる(ステップS107)。このとき、各グリーンシートには、グリーンシートと異なる材料の連結パッド150が形成されているが、各層の連結パッド150の位置がずれて階段状に積層されているため、単位面積当たりの連結パッド150の量が少なく、熱膨張係数の違いによる応力の発生を低減することができる。このため、積層体が高温にさらされる焼成時にも、セラミックにクラックが生じる可能性を低減することができる。
【0043】
焼成により得られるセラミックの円形板の厚さは、例えば10mm程度である。焼成により積層体が収縮するため、円形板の厚さは、焼成前の積層体の厚さよりも薄くなる。このようにして形成されたセラミックの円形板が静電チャック120となり、静電チャック120は、接着層160によって金属製のベースプレート110に接着される(ステップS108)。接着層160の形成には、例えばボンド材が用いられる。これにより、基板固定装置100が完成する。
【0044】
図8は、配線を内蔵する静電チャックにおいて発生する応力分布の具体例を示す図である。図8の上図は、配線領域210内に全体が重なるように複数の連結パッドが積層される静電チャック200における応力分布を示し、図8の下図は、配線領域310内に階段状に複数の連結パッドが積層される静電チャック300における応力分布を示す。
【0045】
図8上図に示す静電チャック200においては、吸着面220が下方に位置し、キャビティ230が上方に位置する。この静電チャック200では、配線領域210上方の特にキャビティ230の両側において、応力が高くなっている。すなわち、配線領域210内では、全体が重なるように複数の連結パッドが積層されているため、配線領域210における連結パッドの密度が高い。このため、配線領域210内外で連結パッドの密度差が大きく、連結パッドとセラミックの熱膨張係数の違いにより、配線領域210の外周部分で応力が高くなる。
【0046】
一方、図8下図に示す静電チャック300においても、吸着面320が下方に位置し、キャビティ330が上方に位置する。この静電チャック300では、静電チャック200と比較すると、配線領域310の外周部分でも応力が低くなっている。すなわち、配線領域310内では、階段状に複数の連結パッドが積層されているため、配線領域310における連結パッドの密度が低い。このため、配線領域310内外の連結パッドの密度差を小さくすることができ、配線領域310の外周部分での応力発生を抑制することができる。結果として、静電チャック300においては、静電チャック200と比較して、応力によるクラックの発生などのセラミックの破損の可能性を低減することができる。
【0047】
以上のように、本実施の形態によれば、ベースプレートと静電チャックの吸着電極とを電気的に接続する複数の連結パッドを、互いに全体が重ならないように階段状に積層し、隣接する層の連結パッドの重なる部分をビアを介して接続する。このため、単位面積当たりに含まれる連結パッドの量を少なくしてセラミックと連結パッドの熱膨張係数の違いによる応力の発生を低減し、セラミック及び連結パッドを含む静電チャックの破損の可能性を低減することができる。
【0048】
なお、上記一実施の形態においては、接着層160によって静電チャック120がベースプレート110に接着されるものとしたが、ベースプレート110と静電チャック120は、必ずしも接着剤によって接着されなくても良い。例えば、ねじ止めなどの手段によって静電チャック120がベースプレート110に固定されても良い。この場合には、例えば図9に示すように、接着層160は存在せず、ベースプレート110の給電ピン115がキャビティ120b内に突出し、配線パッド130の下面に接触する。
【0049】
また、上記一実施の形態においては、階段状に積層される複数の連結パッドが、中央の層において折り返して積層されるものとして説明したが、これらの複数の連結パッドは、必ずしも折り返して積層されなくても良い。すなわち、配線パッド130と吸着電極140との間の複数の連結パッド150が、折り返さずに階段状に積層されても良い。
【0050】
また、複数の連結パッドが折り返して積層される場合、折り返しの回数は1往復に限定されない。すなわち、例えば図10に示すように、給電ピン115に接触する配線パッド130と吸着電極140との間に階段状に積層される複数の連結パッド150が、例えば3回(すなわち2往復)折り返して積層されても良い。
【0051】
折り返しの有無に関わらず、複数の連結パッド150が階段状に積層されるため、連結パッド150の全体が重なって積層される場合と比較して、連結パッド150の密度を低くし、静電チャック120の破損の可能性を低減することができる。
【0052】
上記一実施の形態に係る基板固定装置100は、例えば半導体製造装置に取り付けて、半導体を保持する半導体保持装置として機能させることができる。また、上記一実施の形態に係る基板固定装置100に、例えば半導体部品を加熱又は冷却する温調部材を追加して温調装置を構成する場合にも、基板固定装置100を半導体保持装置として機能させることができる。
【符号の説明】
【0053】
110 ベースプレート
115 給電ピン
120 静電チャック
120a 吸着面
120b キャビティ
130 配線パッド
140 吸着電極
150 連結パッド
155 ビア
160 接着層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10