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特許7551100スルホン酸シリルエステルの製造方法および新規なケイ素化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】スルホン酸シリルエステルの製造方法および新規なケイ素化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/08 20060101AFI20240909BHJP
   C07F 7/18 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C07F7/08 Q
C07F7/08 C
C07F7/18 C
C07F7/18 W
C07F7/08 W
C07F7/18 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020163112
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055604
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-06-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「有機ケイ素機能性化学品製造プロセス技術開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 浩
(72)【発明者】
【氏名】羽鳥 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 正安
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 一彦
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103665017(CN,A)
【文献】特開2002-020494(JP,A)
【文献】特開平09-194484(JP,A)
【文献】特開平08-041078(JP,A)
【文献】Synthesis,1985年,(2),P.206-207
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Si-O-C結合を有するアルコキシシランに、スルホン酸無水物、または、スルホン酸およびカルボン酸の混合酸無水物を反応させる反応工程を含み、
前記Si-O-C結合を有するアルコキシシランが、下記一般式(IA)または(IB)で表される化合物である、Si-O-SO結合を有するスルホン酸シリルエステルの製造方法。
Si(OR 4-(a+b+c) (IA)
(式中、a、b、およびcは、それぞれ独立に0以上3以下の整数であり;a+b+cは、0以上3以下の整数であり;R 、R 、およびR は、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;R は、炭素数1~6のアルキル基である。)
O(SiR O) (IB)
(式中、pは、2以上10000以下の整数であり;R は、炭素数1~6のアルキル基であり;R およびR は、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
【請求項2】
前記スルホン酸無水物が、下記一般式(IIA)で表される化合物である、請求項に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
(RSOO (IIA)
(式中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
【請求項3】
前記スルホン酸およびカルボン酸の混合酸無水物が、下記一般式(IIB)または(IIC)で表される化合物である、請求項に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
(RSO)O(COR10) (IIB)
(式中、RおよびR10は、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基であり、前記
炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
【化1】

(式中、R11は、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、前記2価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
【請求項4】
前記反応工程が、酸性化合物の存在下で行われる、請求項1~の何れか1項に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
【請求項5】
前記酸性化合物が、第3族~第15族の元素を含むルイス酸化合物、およびスルホン酸化合物から選ばれる化合物である、請求項に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
【請求項6】
Si-C結合を有するケイ素化合物の製造方法であって、
請求項1~の何れか1項に記載の製造方法によりスルホン酸シリルエステルを製造するスルホン酸シリルエステル製造工程、および
前記スルホン酸シリルエステルに、下記一般式(IVA)で表されるアルキン、および下記一般式(IVB1)または(IVB2)で表されるアルケンから選ばれる修飾剤を反応させる修飾工程
を含み、
前記Si-C結合を有するケイ素化合物が、前記スルホン酸シリルエステルのスルホニルオキシ基を下記一般式(IVA’)で表されるアルキニル基または下記一般式(IVB’)で表されるアルケニル基に変換した化合物である、Si-C結合を有するケイ素化合物の製造方法。
12C≡CH (IVA)
13CHCH=CHR14 (IVB1)
13C=CHCH14 (IVB2)
12 C≡CH-* (IVA’)
(R 14 CH )R 13 C=CZ -*(IVB’)
(これら式中、R12~R14は、それぞれ独立に炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアリール基または水素原子であり、前記アルキル基および前記アリール基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;Zは、シアノ基である。)
【請求項7】
前記修飾工程が、塩基性化合物の存在下で行われる、請求項に記載のケイ素化合物の製造方法。
【請求項8】
前記塩基性化合物が、アミン化合物、アミジン化合物、およびグアニジン化合物から選ばれる化合物である、請求項に記載のケイ素化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン酸シリルエステルの効率的な製造方法および新規なケイ素化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
スルホン酸シリルエステルは、医薬、農薬、電子材料等の精密合成用試薬またはその合成中間体等として利用される機能性化学品である。
それらの製造方法としては、たとえば、クロロシランに、スルホン酸またはスルホン酸の銀塩を反応させる方法(方法A、非特許文献1)、メチルシラン(テトラメチルシラン)、アリルシラン(アリルトリメチルシラン)等にスルホン酸を反応させる方法(方法B、非特許文献2、3)、ジシロキサン(ヘキサメチルジシロキサン)にスルホン酸無水物を反応させる方(方法C、非特許文献4)、シラノール(トリメチルシラノール)にスルホン酸無水物を反応させる方法(方法D、特許文献1)、等が検討されていた。
【0003】
しかしながら、クロロシランを用いる方法(方法A)では、加水分解で腐食性が高い塩化水素を発生するクロロシランを使用するため、原料の取り扱いや装置の設計に注意が必要であり、メチルシラン、アリルシラン等を用いる方法(方法B)では、メチルシラン、アリルシラン等が高価である、メチルシランと反応するスルホン酸の種類がトリフルオロメタンスルホン酸のような酸性が強いスルホン酸に限られている、等の問題があった。また、ジシロキサン、シラノールを用いる方法(方法C、D)でも、入手容易なジシロキサン、シラノールの種類が限られている、容易に反応するスルホン酸無水物の種類がトリフルオロメタンスルホン酸無水物のような反応性が高いトリフルオロメタンスルホン酸に限られている、等の問題点があった。さらに、シラノールを用いる方法(方法D)では、シラノールの安定性が高くないため、取扱いに注意が必要である、等の問題点もあった。これらのことから、工業的により有利な方法が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】中国特許出願公開第103665017号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】Chem. Ber., 103, 868-879 (1970)
【文献】Synthesis, 827 (1982)
【文献】Synthesis, 745-746 (1981)
【文献】Synthesis, 206-207 (1985)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであって、スルホン酸シリルエステルの効率的な製造方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、(1)入手容易なアルコキシシランが、スルホン酸無水物等とスムーズに反応して、スルホン酸シリルエステルを効率よく与えること、(2)生成したスルホン酸シリルエステルが、アルキンまたはアルケン等の修飾剤と反応して、スルホン酸シリルエステルのSi-O-SO結合をSi-C結合に変換した修飾化合物を与えること、(3)(1)、(2)の反応により新規なケ
イ素化合物が得られること、などを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、この出願は以下の発明を提供するものである。
<1>
Si-O-C結合を有するアルコキシシランに、スルホン酸無水物、または、スルホン酸およびカルボン酸の混合酸無水物を反応させる反応工程を含む、Si-O-SO結合を有するスルホン酸シリルエステルの製造方法。
<2>
前記Si-O-C結合を有するアルコキシシランが、下記一般式(IA)または(IB)で表される化合物である、<1>に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
Si(OR4-(a+b+c) (IA)
(式中、a、b、およびcは、それぞれ独立に0以上3以下の整数であり;a+b+cは、0以上3以下の整数であり;R、R、およびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;Rは、炭素数1~6のアルキル基である。)
O(SiRO) (IB)
(式中、pは、2以上10000以下の整数であり;Rは、炭素数1~6のアルキル基であり;RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
<3>
前記スルホン酸無水物が、下記一般式(IIA)で表される化合物である、<1>または<2>に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
(RSOO (IIA)
(式中、Rは、炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
<4>
前記スルホン酸およびカルボン酸の混合酸無水物が、下記一般式(IIB)または(IIC)で表される化合物である、<1>または<2>に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
(RSO)O(COR10) (IIB)
(式中、RおよびR10は、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
【化1】
(式中、R11は、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、前記2価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。)
<5>
前記反応工程が、酸性化合物の存在下で行われる、<1>~<4>の何れかに記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
<6>
前記酸性化合物が、第3族~第15族の元素を含むルイス酸化合物、およびスルホン酸
化合物から選ばれる化合物である、<5>に記載のスルホン酸シリルエステルの製造方法。
<7>
<1>~<6>の何れかに記載の製造方法によりスルホン酸シリルエステルを製造するスルホン酸シリルエステル製造工程、および
前記スルホン酸シリルエステルに、下記一般式(IVA)で表されるアルキン、および下記一般式(IVB1)または(IVB2)で表されるアルケンから選ばれる修飾剤を反応させる修飾工程
を含む、Si-C結合を有するケイ素化合物の製造方法。
12C≡CH (IVA)
13CHCH=CHR14 (IVB1)
13C=CHCH14 (IVB2)
(これら式中、R12~R14は、それぞれ独立に炭素数1~20の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよく;Zは、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アミド基、アリールスルホニル基、およびアルキルスルホニル基から選ばれる基である。)
<8>
前記修飾工程が、塩基性化合物の存在下で行われる、<7>に記載のケイ素化合物の製造方法。
<9>
前記塩基性化合物が、アミン化合物、アミジン化合物、およびグアニジン化合物から選ばれる化合物である、<8>に記載のケイ素化合物の製造方法。
<10>
下記一般式(VA)、(VB)、(VI)、(VII)、または(VIII)で表されるSi-C結合を有するケイ素化合物。
15 16 Si(OR174-(e+f+g)(OSO18 (VA)R19 20 (R21O)3-(h+i)Si-OSO-(o-C)-CO21 (VB)
22 23 Si(OR244-(j+k+l)(C≡CR25 (VI)
26 27 Si(OR284-(m+n+o)[C(CN)=CHR29 (VII)
(SiR3031O)q-1SiR3031 (VIII)
(これら式中、R15、R16、R19、R20、R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、およびR31は、それぞれ独立にメチル基、フェニル基、およびビニル基より選ばれる基であり;R17、R21、R24、およびR28は、それぞれ独立にメチル基およびエチル基から選ばれる基であり;R18は、トリフルオロメチル基、メチル基、およびp-トリル基から選ばれる基であり;XおよびXは、それぞれ独立にトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、エトキシ基、メトキシ基、フェニルエチニル基、および1-シアノ-1-プロペニル基から選ばれる基であり、XおよびXのうちの少なくとも一方は、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、フェニルエチニル基、および1-シアノ-1-プロペニル基から選ばれる基であり;e、f、h、i、j、k、m、およびnは、それぞれ独立に0以上2以下の整数であり;gおよびlは、それぞれ独立に1または2であり;oは、1以上4以下の整数であり;e+f+gおよびj+k+lは、それぞれ独立に2または3であり;h+iは、0以上3以下の整数であり;m+n+oは、1以上4以下の整数であり;qは、2以上6以下の整数である。)
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法を用いることにより、スルホン酸シリルエステルおよびその修飾化合
物を効率的に製造できるとともに、新規なケイ素化合物を提供できるという効果を有する。
【0010】
詳細には、本発明の製造方法の好適な態様では、次のような特徴を有する。
(1)原料が比較的入手し易く、反応条件が温和で反応効率が高い。
(2)反応系に酸性化合物または水を添加することにより反応が促進されるため、反応性が高くないスルホン酸無水物等の反応も効率的に行うことができる。
(3)反応が段階的に進行するため、複数のアルコキシ基を有する化合物では、アルコキシ基の1個または2個だけを選択的に変換できる。
(4)反応工程と修飾工程を連続的に行うことができるため、アルコキシシランを原料として、修飾化合物である、アルキニルシラン、アルケニルシラン等を、簡便なワンポットの工程で製造できる。
(5)テトラエトキシシラン等の複数のアルコキシ基を有する化合物を原料にする場合、1置換型または2置換型の、アルキニルシラン、アルケニルシラン等を、ワンポットの工程で、選択的に製造できる。
(6)新規な機能性ケイ素化合物を効率的に製造できる。
本発明の製造方法の好適な態様においては、スルホン酸シリルエステルおよびその修飾化合物であるアルキニルシラン、アルケニルシラン等の効率的な製造方法を可能にするもので、従来技術に比べて、安全性、経済性等の面で、大きな利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、特段の記載がない限り、本明細書中のある式中の記号が他の式においても用いられる場合、同一の記号は同一の意味を示す。
本発明の一実施形態に係るスルホン酸シリルエステルの製造方法は、Si-O-C結合を有するアルコキシシランに、スルホン酸無水物、または、スルホン酸およびカルボン酸の混合酸無水物を反応させる反応工程を含むことを特徴とする。
【0012】
本実施形態において、原料として使用するアルコキシシランは、たとえば、下記一般式(IA)または(IB)等で表される。
【0013】
Si(OR4-(a+b+c) (IA)
一般式(IA)において、a、b、およびcは、それぞれ独立に0以上3以下の整数であり、a+b+cは、0以上3以下の整数である。また、R、R、およびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。Rは、炭素数1~6のアルキル基である。なお、本明細書において「反応に関与しない」とは、目的とする反応に反応物質として直接関与せず、また、当該反応を阻害または促進しないことを意味する。
【0014】
O(SiRO) (IB)
一般式(IB)において、pは、2以上10000以下の整数である。Rは、炭素数1~6のアルキル基である。また、RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
【0015】
一般式(IA)および(IB)において、R、R、R、R、およびRが、炭素数1~24の炭化水素基である場合、それらの具体例としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられる。
【0016】
炭化水素基がアルキル基の場合、アルキル基の炭素数は、好ましくは1~20、より好
ましくは1~18であり、さらに好ましくは1~10であり、特に好ましくは1~4である。アルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
【0017】
反応に関与しない基としては、炭素数が1~6のアルコキシ基、炭素数が1~6のアルコキシカルボニル基、炭素数が1~6のジアルキルアミノ基、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子等が挙げられる。アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、ジアルキルアミノ基、およびハロゲン原子をより具体的に示せば、メトキシ基、エトキシ基、ヘキソキシ基等のアルコキシ基;メトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2-オクチル基、デシル基、2-メトキシエチル基、3-エトキシプロピル基、2-メトキシカルボニルエチル基、2-ジメチルアミノエチル基、2-シアノエチル基、トリフルオロメチル基、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、1H,1H,2H,2H-トリデカフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H-ヘプタデカフルオロデシル基等が挙げられる。
【0018】
炭化水素基がアリール基の場合は、炭化水素環系または複素環系の1価の芳香族有機基を使用できる。アリール基が炭化水素環系の場合、炭化水素環系の1価の芳香族有機基の炭素数は、好ましくは6~22、より好ましくは6~14である。アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、ペンタセニル基等が挙げられる。また、アリール基が複素環系の場合、複素環中のヘテロ原子は硫黄、酸素原子等である。また、複素環系の1価の芳香族有機基の炭素数は、好ましくは4~12、より好ましくは4~8である。アリール基の具体例としては、チエニル基、ベンゾチエニル基、ジベンゾチエニル基、フリル基、ベンゾフリル基、ジベンゾフリル基等が挙げられる。
アリール基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部は、反応に関与しない基で置換されていてもよい。反応に関与しない基としては、前記のアルキル基の場合に示したもの等を挙げることができる。また、その他の反応に関与しない基として、環上の2つの炭素原子を結合させる2価の基であるオキシエチレン基、オキシエチレンオキシ基等が挙げられる。それらの基等を有するアリール基の具体例としては、メチルフェニル基、エチルフェニル基、ヘキシルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ブトキシフェニル基、オクトキシフェニル基、メチル(メトキシ)フェニル基、フルオロ(メチル)フェニル基、クロロ(メトキシ)フェニル基、ブロモ(メトキシ)フェニル基、2,3-ジヒドロベンゾフラニル基、1,4-ベンゾジオキサニル基等が挙げられる。
【0019】
また、炭化水素基がアラルキル基の場合には、アラルキル基の炭素数は、好ましくは7~23、より好ましくは7~16である。また、アラルキル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基としては、前記のアルキル基の場合について示したもの等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアラルキル基の具体例としては、ベンジル基、フェネチル基、2-ナフチルメチル基、9-アントリルメチル基、(4-クロロフェニル)メチル基、1-(4-メトキシフェニル)エチル基等が挙げられる。
【0020】
さらに、炭化水素基がアルケニル基の場合には、アルケニル基の炭素数は、好ましくは2~23、より好ましくは2~20であり、さらに好ましくは2~10であり、特に好ましくは2~4である。また、アルケニル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全
部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
反応に関与しない基としては、前記のアルキル基の場合について示したもの等の他、前記に示したアリール基等を挙げることができる。
反応に関与しない基で置換されていてもよいアルケニル基の具体例としては、ビニル基、2-プロペニル基、3-ブテニル基、5-ヘキセニル基、9-デセニル基、2-フェニルエテニル基、2-(メトキシフェニル)エテニル基、2-ナフチルエテニル基、2-アントリルエテニル基等が挙げられる。
【0021】
pは、好ましくは2~1000であり、より好ましくは2~100である。
【0022】
したがって、それらの炭化水素基等を有する一般式(IA)のアルコキシシランの具体例としては、エトキシトリメチルシラン(MeSiOEt)、メトキシトリメチルシラン(MeSiOMe)、ジエトキシジメチルシラン(MeSi(OEt))、メチルジメトキシフェニルシラン(MePhSi(OMe))、トリエトキシメチルシラン(MeSi(OEt))、トリエトキシフェニルシラン(PhSi(OEt))、トリエトキシビニルシラン((CH=CH)Si(OEt))、トリメトキシビニルシラン((CH=CH)Si(OMe))、トリエトキシシラン(HSi(OEt))、トリメトキシシラン(HSi(OMe))、テトラエトキシシラン(Si(OEt))、テトラメトキシシラン(Si(OMe))、テトラプロポキシシラン(Si(OPr))、テトラブトキシシラン(Si(OBu))等を挙げることができる。
【0023】
また、一般式(IB)のアルコキシシランの具体例としては、1,3-ジエトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(EtO(SiMeO)Et)、1,3-ジメトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(MeO(SiMeO)Me)、1,3-ジエトキシ-1,1,3,3-テトラフェニルジシロキサン(EtO(SiPhO)Et)、1,5-ジエトキシ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン(EtO(SiMeO)Et)、1,5-ジメトキシ-1,1,3,3,5,5-ヘキサメチルトリシロキサン(MeO(SiMeO)Me)等を挙げることができる。
【0024】
一方、前記アルコキシシランと反応させるスルホン酸無水物、または、スルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物は、たとえば、下記一般式(IIA)、または、下記一般式(IIB)、(IIC)等で表される。
【0025】
(RSOO (IIA)
一般式(IIA)において、Rは、炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
【0026】
(RSO)O(COR10) (IIB)
一般式(IIB)において、RおよびR10は、それぞれ独立に炭素数1~24の炭化水素基であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
【0027】
【化2】
【0028】
一般式(IIC)において、R11は、炭素数2~24の2価の炭化水素基であり、前記2価の炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
【0029】
1価の炭化水素基であるR~R10の具体例としては、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられる。反応に関与しない基としては、前記の一般式(IA)のR、R、およびRの説明において示したもの等を挙げることができる。
炭化水素基の炭素数に関しては、炭化水素基がアルキル基の場合には、好ましくは1~20、より好ましくは1~18であり;炭化水素基がアリール基の場合には、好ましくは4~20、より好ましくは4~18であり;炭化水素基がアラルキル基の場合には、好ましくは5~21、より好ましくは5~19であり;炭化水素基がアルケニル基の場合には、好ましくは2~20、より好ましくは2~18である。
炭素数1~24の炭化水素基の具体例としては、前記の一般式(IA)、(IB)のR、R、R、R、およびRの説明において示したもの等を挙げることができる。
【0030】
一方、2価の炭化水素基であるR11の具体例としては、アリーレン基、アルキレン基等が挙げられ、反応に関与しない基としては、前記の一般式(IA)、(IB)のR、R、R、R、およびRの説明において示したもの等を挙げることができる。
炭化水素基中炭素数に関しては、炭化水素基がアリーレン基の場合には、好ましくは6~20、より好ましくは6~18であり;炭化水素基がアルキレン基の場合には、好ましくは2~20、より好ましくは2~10である。
炭素数2~24の2価の炭化水素基の具体例としては、1,2-フェニレン基、エチレン基、トリメチレン基等を挙げることができる。
【0031】
したがって、それらの炭化水素基を有するスルホン酸無水物に関して、一般式(IIA)の化合物の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(TfO)、ノナフルオロブタンスルホン酸無水物([CF(CFSO]O)、p-トルエンスルホン酸無水物((p-TolSOO)、メタンスルホン酸無水物((MeSOO)等が挙げられる。
【0032】
また、スルホン酸およびカルボン酸の混合酸無水物に関しては、一般式(IIB)の化合物の具体例としては、トリフルオロメタンスルホン酸トリフルオロアセチル(TfOCOCF)、トリフルオロメタンスルホン酸アセチル(TfOAc)、メタンスルホン酸トリフルオロアセチル(MeSOCOCF)、p-トルエンスルホン酸トリフルオロアセチル(p-TolSOCOCF)等が挙げられ、一般式(IIC)の化合物の具体例としては、2-スルホ安息香酸無水物((1,2-C)(COSO))、テトラフルオロ-2-スルホ安息香酸無水物((1,2-C)(COSO))、テトラクロロ-2-スルホ安息香酸無水物((1,2-CCl)(COSO))テトラブロモ-2-スルホ安息香酸無水物((1,2-CBr)(COSO))、テトラヨード-2-スルホ安息香酸無水物((1,2-C)(COSO))等が挙げられる。
【0033】
原料のアルコキシシラン類に対する、スルホン酸無水物、または、スルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物のモル比は任意に選ぶことができるが、アルコキシシランに対するスルホン酸シリルエステルの収率を考慮すれば、通常0.4以上300以下であり、より好ましくは0.5以上200以下であり、さらに好ましくは0.5以上150以下、特に好ましくは0.5以上5以下である。
【0034】
前記一般式(IA)のアルコキシシランと、前記一般式(IIA)のスルホン酸無水物、または、前記一般式(IIB)のスルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物の反応では、一般式(IA)のアルコキシ基(OR)の一部または全部をスルホニルオキシ基(OSOまたはOSO)に変換した、下記一般式(IIIA)または(IIIB)で表されるスルホン酸シリルエステルを製造できる。
【0035】
Si(OR4-(a+b+c)-d(OSO (IIIA)
Si(OR4-(a+b+c)-e(OSO (IIIB)
これら式中、a、b、c、a+b+c、およびR~Rは、前記と同義であり;dおよびeは、それぞれ独立に1以上4以下の整数であり;4-(a+b+c)-d、および4-(a+b+c)-eは、それぞれ独立に0以上3以下の整数である。
【0036】
また、前記一般式(IA)のアルコキシシランと、前記一般式(IIC)のスルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物の反応では、下記一般式(IIIC)で表されるアルコキシカルボニル基含有スルホン酸シリルエステルを提供できる。
【0037】
(RO)3-(a+b+c)Si-OSO-R11-CO (IIIC)
式中、a、b、c、a+b+c、R~R、およびR11は、前記と同義である。
【0038】
さらに、前記一般式(IB)のアルコキシシランと、前記一般式(IIA)のスルホン酸無水物、または、前記一般式(IIB)のスルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物の反応では、一般式(IB)のアルコキシ基(OR)の一部または全部をスルホニルオキシ基(OSOまたはOSO)に変換した、下記一般式(IIID)または(IIIE)で表されるスルホン酸シリルエステルを製造できる。
O(SiRO) (IIID)
O(SiRO) (IIIE)
これら式中、XおよびXは、それぞれ独立にスルホニル基(SO)またはアルキル基(R)であり、XおよびXのうち少なくとも一方はスルホニル基である。また、XおよびXは、スルホニル基(SO)またはアルキル基(R)であり、XおよびXのうち少なくとも一方はスルホニル基である。p、R、R、RおよびRは、前記と同義である。
【0039】
また、前記一般式(IB)のアルコキシシランと、前記一般式(IIC)のスルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物の反応では、下記一般式(IIIF)で表されるスルホン酸シリルエステルを製造できる。
【0040】
O(SiRO) (IIIF)
式中、XおよびXは、それぞれ独立にアルコキシカルボニル基含有スルホニル基(SO-R11-CO)またはアルキル基(R)であり、XおよびXのうち少なくとも一方はアルコキシカルボニル基含有スルホニル基である。p、R、R、RおよびR11は、前記と同義である。
【0041】
本実施形態における反応工程は、原料のアルコキシシランに対する、スルホン酸無水物、または、スルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物による求核的置換反応を伴う反応工程である。
したがって、前記一般式(IIA)で表されるスルホン酸無水物、または、前記一般式(IIB)で表されるスルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物を用いた場合、本実施形態における反応は、スルホン酸エステルまたはカルボン酸エステルの脱離を伴う反応となり、その反応工程は、モノアルコキシモノシランの反応では、たとえば、下記のスキーム1またはスキーム2のように表すことができる。
【0042】
【化3】
スキーム1
【0043】
【化4】
スキーム2
【0044】
一方、前記一般式(IIC)で表される環状のスルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物を用いた場合には、アルコキシシランのSi-O結合に対して、一般式(IIC)の混合酸無水物が挿入する形式の反応となり、その反応工程は、モノアルコキシモノシランの反応では、たとえば、下記のスキーム3のように表すことができる。
【0045】
【化5】
スキーム3
【0046】
これらの反応において、原料のアルコキシシランにおけるアルコキシ基の数は複数であってもよく、それらの反応で生成するシラン類は、アルコキシ基の一部または全部がスルホニルオキシ基に変換されたものである。
すなわち、本実施形態における反応工程で得られるスルホン酸シリルエステルは、1種類の化合物に限られるものではなく、複数のアルコキシ基を有するアルコキシシランを原料とする場合には、アルコキシ基が1個~複数個変換されたシラン類を製造することが可能で、本実施形態に係る製造方法で提供されるスルホン酸シリルエステルはそれらの混合物であってもよいことを意味する。
【0047】
反応工程におけるアルコキシ基の変換反応は、モノシランの場合には段階的に進行する
ため、複数のアルコキシ基を有するモノシランを原料とする場合、スルホン酸無水物、または、スルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物の使用量を制御することにより、変換されるアルコキシ基の個数を制御することが可能である。
たとえば、3個以上のアルコキシ基をケイ素原子上に有するモノシランに対して、スルホン酸無水物、または、スルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物を、約1当量または約2当量用いて反応を行うことにより、原料中の1個または2個のアルコキシ基を、それぞれ、選択的に変換することができる。
そのような選択的変換反応においては、スルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物がより好ましく使用される。
【0048】
反応工程では、反応を促進するために、従来公知の各種の均一系または不均一系の酸性化合物を触媒として使用することができる。
酸性化合物の存在下で反応を行う方法としては、反応系に酸性化合物を添加する方法だけでなく、反応系に少量の水を添加することによって、原料のスルホン酸無水物、または、スルホン酸とカルボン酸の混合酸無水物の一部を加水分解させて生成するスルホン酸を酸性化合物として使用する方法も可能である。
【0049】
反応を促進するための触媒である酸性化合物としては、第3族~第15族の元素を含むルイス酸化合物、およびスルホン酸化合物から選ばれる化合物が好ましい。
【0050】
第3族~第15族の元素に関しては、好ましくは第3族、第8族、第13族~第15族から選ばれ、より好ましくは第3族、第8族、第13族、または第15族から選ばれ、さらに好ましくは第8族または第13族から選ばれる元素である。
【0051】
それらの元素をより具体的に示すと、好ましくは、スカンジウム、イットリウム、サマリウム、イットリビウム、鉄、ルテニウム、銅、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、またはビスマスから選ばれ、より好ましくは、スカンジウム、鉄、ルテニウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、またはビスマスから選ばれ、さらに好ましくは、鉄、ルテニウム、アルミニウム、ガリウム、またはインジウムから選ばれる元素である。
【0052】
それらの元素を含むルイス酸化合物としては、それらの元素を含む、ハロゲン化物、過塩素酸塩、スルホン酸塩、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド塩、ヘキサフルオロアンチモン酸塩、チオシアン酸塩等を使用できる。
【0053】
したがって、ルイス酸化合物の例をより具体的に示すと、塩化スカンジウム(III)、塩化チタン(III)、塩化チタン(IV)、塩化鉄(III)、臭化鉄(III)、塩化ルテニウム(III)、塩化アルミニウム(III)、塩化ガリウム(III)、塩化インジウム(III)、塩化スズ(IV)、過塩素酸鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸スカンジウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸鉄(III)、トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)、トリフルオロメタンスルホン酸アルミニウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸ガリウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸インジウム(III)、トリフルオロメタンスルホン酸スズ(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ビスマス(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ランタン(III)、トリフルオロメタンスルホン酸プラセオジム(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸ネオジム(IV)、トリフルオロメタンスルホン酸イットリビウム(IV)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスカンジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド亜鉛(II)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドインジウム(III)、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドスズ(IV)、ヘキサフルオロアンチモン酸鉄(I
II)、ヘキサフルオロアンチモン酸インジウム(III)、チオシアン酸鉄(III)、チオシアン酸インジウム(III)等が挙げられる。
【0054】
触媒である酸性化合物としては、スルホン酸化合物も好ましく使用される。
それらの具体例としては、パーフルオロアルカンスルホン酸、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミド等が挙げられ、より具体的には、前記ルイス酸化合物中のスルホン酸化合物等が挙げられる。
【0055】
また、触媒としては、触媒の分離及び回収等が容易な、従来公知の各種の固体酸触媒を使用することもできる。固体酸触媒としては、無機系および有機系のものを使用できる。
無機系の固体酸触媒としては、金属塩、金属酸化物等の固体無機物等が挙げられ、より具体的に示せば、プロトン性水素原子または金属原子(アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、鉄、チタン、スカンジウム、セリウム等)を有する、ゼオライト、メソポーラスシリカ、モンモリロナイトなどのほか、シリカゲル、ヘテロポリ酸や、カーボン系素材を担体とする無機系固体酸が挙げられる。
また、有機系の固体酸触媒としては、スルホ基、カルボキシル基等の酸性官能基を有する、ポスチレンゲル、ポリテトラフルオロエチレン等、各種のポリマー、オリゴマー等が挙げられる。
【0056】
アルコキシシランに対する触媒量は任意に決めることができるが、モル比または重量比では、通常は0.0001~10程度で、好ましくは0.001~8程度、より好ましくは0.001~6程度、さらに好ましくは0.005~0.05程度である。
【0057】
本実施形態において、反応工程での反応は、反応温度または反応圧力に応じて、液相または気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。
反応温度は、通常は-20℃以上、好ましくは-10~300℃、より好ましくは、-10~200℃、さらに好ましくは0~150℃である。また、室温で反応を行う場合には、室温の温度範囲としては、通常は0~40℃、好ましくは5~40℃、より好ましくは10~35℃である。
さらに、反応圧力は、通常は0.1~100気圧で、好ましくは0.1~50気圧、より好ましくは0.1~10気圧である。
反応時間は、原料や触媒の量、反応温度、反応装置の形態等に依存するが、生産性や効率を考慮すると、通常は0.1~72時間、好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.1~14時間程度である。
【0058】
また、反応を液相系で行う場合、溶媒を用いてもよく、無溶媒系で行ってもよい。溶媒を用いる場合、溶媒としては、デカリン(デカヒドロナフタレン)、デカン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素、クロロホルム、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル等;1,4-ジオキサン、tert-ブチルメチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル等;原料と反応しない各種の溶媒;等が使用可能で、2種以上混合して用いることもできる。
溶媒としては、反応生成物を核磁気共鳴装置で分析する上で有利な重水素化溶媒を用いることもでき、たとえば、重ベンゼン、重トルエン、重クロロホルム、重アセトニトリル等を使用できる。
さらに、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
【0059】
反応工程は、密閉系の反応装置でも進行するが、スルホン酸エステルまたはカルボン酸
エステルの脱離を伴う反応系の場合には、反応装置を開放系にして、それらの共生成物を反応系外に連続的に除去することにより、反応をより効率的に進行させることもできる。
【0060】
本実施形態の反応工程は、マイクロ波照射下で行うこともできる。本反応系では、原料のスルホン酸無水物等の誘電損失係数が比較的大きく、マイクロ波を効率よく吸収するため、マイクロ波照射下ではスルホン酸無水物等が活性化され、反応をより効率的に行うことができる。
【0061】
マイクロ波照射反応では、接触式または非接触式の温度センサーを備えた各種の市販装置等を使用できる。また、マイクロ波照射の出力、キャビティの種類(マルチモード、シングルモード)、照射の形態(連続的、断続的)等は、反応のスケール、反応の種類等に応じて任意に決めることができる。マイクロ波の周波数としては、通常、0.3~30GHzである。その中で好ましいのは、産業分野、科学分野、医療分野等で使用するために割り当てられたIMS周波数帯で、さらにその中でも、2.45GHz帯、5.8GHz帯等がより好ましい。
【0062】
また、マイクロ波照射反応では、反応系をより効率よく加熱するために、マイクロ波を吸収して発熱する加熱材(サセプター)を反応系に添加することができる。加熱材の種類としては、活性炭、黒鉛、炭化ケイ素、炭化チタン等、従来公知の各種のものを使用できる。また、先に記載した触媒と加熱材の粉末を混合して、セピオライト、ホルマイト等の適当なバインダーを利用して焼成加工した成形触媒を用いることもできる。
【0063】
本実施形態の製造方法により提供されるスルホン酸シリルエステルは、原料のアルコキシシラン類に比べて一般に高い反応性を有するため、合成中間体として利用する際の反応、表面処理剤、ゾル・ゲル材料等として利用する際の反応等を、原料のアルコキシシラン類を用いる場合よりも温和な条件で、より効率的に行うことができる。
【0064】
また、スルホン酸シリルエステルは高い反応性を有していることから、適当な修飾剤を反応させることにより、スルホン酸シリルエステルのSi-O-SO結合を他の結合に容易に変換できる。
たとえば、炭素系修飾剤を反応させた場合は、スルホン酸シリルエステルのSi-O-SO結合がSi-C結合に変換され、Si-C結合を有するケイ素化合物を製造できる。
【0065】
そのような炭素系修飾剤としては、たとえば、下記一般式(IVA)で表されるアルキン、または下記一般式(IVB1)もしくは(IVB2)で表されるアルケンを使用できる。
12C≡CH (IVA)
(ZCH)R13C=CHR14 (IVB1)
HC=CR13(CH14) (IVB2)
【0066】
式中、R12~R14は、それぞれ独立に炭素数1~20の炭化水素基または水素原子であり、前記炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。Zは、シアノ基、ニトロ基、アシル基、アミド基、アリールスルホニル基、およびアルキルスルホニル基から選ばれる基であり、アシル基、アミド基、アリールスルホニル基、およびアルキルスルホニル基の炭素原子に結合した水素原子の一部または全部が反応に関与しない基で置換されていてもよい。
【0067】
12~R14の炭化水素基および反応に関与しない基としては、前記一般式(IA)および(IB)のR、R、R、R、およびRの説明で例示したもの等を挙げる
ことができる。
また、アシル基の具体例としては、アセチル基、トリフルオロアセチル基等が挙げられ;アミド基の具体例としては、アセトアミド基、トリフルオロアセトアミド基等が挙げられ;アリールスルホニル基の具体例としては、フェニルスルホニル基等が挙げられ;アルキルスルホニル基の具体例としては、メチルスルホニル基等が挙げられる。
【0068】
したがって、一般式(IVA)で示されるアルキンとしては、アセチレン、1-プロピン、1-ブチン、1-オクチン、エチニルベンゼン、1-エチニルナフタレン、2-エチニルナフタレン、4-エチニルビフェニル、9-エチニルアントラセン等が挙げられる。
また、一般式(IVB1)で示されるアルケンとしては、アリルシアニド、3-メチル-3-ブテンニトリル、3-ペンテンニトリル、4-フェニル-3-ブテンニトリル、3-ニトロ-1-プロペン、メチル(2-プロペニル)ケトン、N,N-ジメチル-3-ブテンアミド、3-フェニルスルホニル-1-プロペン、3-メチルスルホニル-1-プロペン等が挙げられる。
一般式(IVB2)で示されるアルケンとしては、2-ブテンニトリル、2-ペンテンニトリル、4-フェニル-2-ブテンニトリル等が挙げられる。
【0069】
前記反応工程において得られたスルホン酸シリルエステルに、一般式(IVA)で表わされるアルキンを反応させる場合、スルホン酸シリルエステルのアルキルまたはアリールスルホニル基を、アルキニル基(R12C≡C-)に変換した化合物等が得られる。
また、一般式(IVB1)または(IVB2)で表わされるアルケンを反応させる場合には、スルホン酸シリルエステルのアルキルスルホニル基またはアリールスルホニル基を、アルケニル基((R14CH)R13C=CZ-)に変換した化合物等が得られる。
【0070】
この修飾反応は、次のスキーム4、5に示すように進行していると考えられる。
【0071】
【化6】
スキーム4
【0072】
【化7】
スキーム5
【0073】
これらの反応では、スルホン酸シリルエステルに、アルキンまたはアルケンが反応する際に、スルホン酸が脱離して、アルキニルシランまたはアルケニルシランがそれぞれ生成
する。
アルケンとの反応では、電子吸引性基であるZとの共役が有利になるように、二重結合の移動による異性化反応が起きる場合もあるが、塩基が存在する場合には、その異性化反応がとくに進行しやすいと考えられる。
【0074】
また、アルケンを反応させる場合、一般式(IVB1)と一般式(IVB2)のアルケンは、スキーム6に示すように、二重結合の移動による異性化反応により、相互変換が可能であるため、どちらの構造のアルケンを反応させても、同様の構造の生成物が得られる場合がある。とくに、塩基が存在する場合は、その異性化反応が起きやすくなるため、同様の構造の生成物が得られやすい。
【0075】
【化8】
スキーム6
【0076】
前記修飾工程においては、スルホン酸を捕捉する特性がある塩基性化合物を添加することにより、反応を促進することができる。
そのような塩基性化合物としては、たとえば、アミン化合物、アミジン化合物、または、グアニジン化合物等を使用でき、それらの化合物に由来する基を有する有機系または無機系の固体化合物を使用することもできる。
アミン化合物の具体例としては、トリエチルアミン、ジイソプロピルメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N-メチルピロリジン、N-メチルピペリジン等が挙げられる。アミジン化合物の具体例としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)等が挙げられる。グアニジン化合物の具体例としては、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]-5-デセン(TBD)、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]-5-デセン(MTBD)等が挙げられる。
【0077】
スルホン酸シリルエステルに対する、炭素系修飾剤、塩基性化合物のモル比は、それぞれ、任意に選ぶことができるが、スルホン酸シリルエステルに対する収率を考慮すれば、スルホン酸シリルエステル中のスルホニルオキシ基に対して、通常0.4モル当量以上100モル当量以下であり、より好ましくは0.5モル当量以上50モル当量以下であり、さらに好ましくは0.5モル当量以上20モル当量以下である。
【0078】
また、修飾工程の反応は、反応温度または反応圧力に応じて、液相または気相状態で行うことができる。また、反応装置の形態としては、バッチ型、フロー型等、従来知られている各種形態で行うことができる。
反応温度は、通常は-20℃以上、好ましくは-10~300℃、より好ましくは、-10~200℃、さらに好ましくは0~150℃である。また、室温で反応を行う場合には、室温の温度範囲としては、通常は0~40℃、好ましくは5~40℃、より好ましくは10~35℃である。
さらに、反応圧力は、通常は0.1~100気圧で、好ましくは0.1~50気圧、より好ましくは0.1~10気圧である。
反応時間は、原料の量、反応温度、反応装置の形態等に依存するが、生産性および効率
を考慮すると、通常は0.1~72時間、好ましくは0.1~24時間、より好ましくは0.1~14時間程度である。
【0079】
反応を液相系で行う場合、溶媒を用いてもよく、無溶媒系で行ってもよい。溶媒を用いる場合、溶媒としては、反応工程において用いることができる溶媒等が挙げられる。溶媒は、2種以上混合して用いることもできる。
さらに、反応を気相で行う場合には、窒素等の不活性ガスを混合して反応を行うこともできる。
【0080】
本実施形態修飾工程は、反応工程で生成したスルホン酸シリルエステルを精製して行うだけでなく、反応工程で得られた未精製のスルホン酸シリルエステルを用いて行うこともできる。
未精製のスルホン酸シリルエステル用いて行う方法は、アルコキシシランを原料として、ワンポットの簡便な操作でケイ素化合物を得ることができる方法であり、本発明の特長を示す有利な態様である。
【0081】
また、反応工程で生成したスルホン酸シリルエステルおよび修飾工程で生成したケイ素化合物の精製は、蒸留、再結晶、クロマトグラフィー等の有機化学上通常用いられる手段により容易に達せられる。
【0082】
なお、スルホン酸シリルエステルが、テトラアルコキシシランのような複数のアルコキシ基を有するアルコキシシランのアルコキシ基の一部を変換して得られるスルホン酸エステルである場合、前記修飾工程において、スルホン酸シリルエステルの不均化反応を経たケイ素化合物が生成する場合もある。
たとえば、テトラアルコキシシラン中の1個のアルコキシ基を変換したスルホン酸シリルエステルの修飾工程の反応では、Si-C結合を1個有するシラン類だけでなく、それらを2個有するシラン類が少量生成する場合がある。
それらの少量生成物の生成量は、修飾工程で使用する塩基性化合物の種類によって制御することが可能である。たとえば、立体的に比較的嵩高い2級アルキル基を有する3級アミンである、ジイソプロピルメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン等を用いた場合には、修飾工程におけるスルホン酸シリルエステルの不均化が抑制され、少量生成物の生成量を減少させることができる。
すなわち、テトラアルコキシシラン中の1個のアルコキシ基を変換したスルホン酸シリルエステルの修飾工程の反応では、ジイソプロピルメチルアミン、ジシクロヘキシルメチルアミン等の2級アルキル基を有する3級アミンを用いることにより、Si-C結合を1個だけ有するケイ素化合物に対する、選択率、収率を向上させることができる。
【0083】
また、前記修飾工程において、未反応のスルホニルオキシ基が残存している場合、別の種類のアルキン、アルケン、あるいは、他の修飾剤をさらに添加して、残存しているスルホニルオキシ基を他の置換基に変換した別のケイ素化合物を得ることもできる。
たとえば、他の修飾剤として、エタノール、メタノール等のアルコールを用いた場合は、残存しているスルホニルオキシ基を、エトキシ基、メトキシ基等のアルコキシ基に変換したケイ素化合物が得られる。
未反応のスルホニルオキシ基が残存している場合は、スルホニルオキシシラン同士が反応して、Si-O-Si結合の生成を伴うケイ素化合物が生成する場合もある。
【0084】
それらのケイ素化合物の具体例を示すと、トリメチル(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiMe)、ジメチルビス(フェニルエチニル)シラン((PhC≡C)SiMe)、メチルメトキシフェニル(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiMePh(OMe))、メチルフェニルビス(フェニルエチニル)シラン((PhC≡C)
SiMePh)、ジエトキシフェニル(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiPh(OEt))、ジエトキシ(フェニルエチニル)ビニルシラン(PhC≡CSi(CH=CH)(OEt):)、エトキシビス(フェニルエチニル)ビニルシラン((PhC≡C)Si(CH=CH)(OEt))、トリエトキシ(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSi(OEt))、ジエトキシビス(フェニルエチニル)シラン((PhC≡C)Si(OEt))、トリメトキシ(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSi(OMe))、ジメトキシビス(フェニルエチニル)シラン((PhC≡C)Si(OMe))、1,1,3,3-テトラメチル-1-フェニルエチニルジシロキサン-3-トリフラート(PhC≡C(SiMeO)Tf)、1,3-ビス(フェニルエチニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン((PhC≡CSiMeO)、1,7-ビス(フェニルエチニル)-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン((PhC≡CSiMeOSiMeO)、1-エトキシ-1,1,3,3-テトラメチル-3-フェニルエチニルジシロキサン(PhC≡C(SiMeO)Et)、2-トリメチルシリル-2-ブテンニトリル(MeCH=C(CN)(SiMe))、2,4-ビス(トリメチルシリル)-2-ブテンニトリル(MeSiCHCH=C(CN)(SiMe))、(1-シアノ-1-プロペニル)エトキシジメチルシラン([MeCH=C(CN)]SiMe(OEt))、ビス(1-シアノ-1-プロペニル)ジメチルシラン([MeCH=C(CN)]SiMe)、(1-シアノ-1-プロペニル)メチルメトキシフェニルシラン([MeCH=C(CN)]SiMePh(OMe))、(1-シアノ-1-プロペニル)ジエトキシフェニルシラン([MeCH=C(CN)]SiPh(OEt))、ビス(1-シアノ-1-プロペニル)エトキシフェニルシラン([MeCH=C(CN)]SiPh(OEt))、(1-シアノ-1-プロペニル)ジエトキシビニルシラン([MeCH=C(CN)]Si(CH=CH)(OEt))、ビス(1-シアノ-1-プロペニル)エトキシビニルシラン([MeCH=C(CN)]Si(CH=CH)(OEt))、(1-シアノ-1-プロペニル)トリエトキシシラン([MeCH=C(CN)]Si(OEt))、ビス(1-シアノ-1-プロペニル)ジエトキシシラン([MeCH=C(CN)]Si(OEt))、(1-シアノ-1-プロペニル)トリメトキシシラン([MeCH=C(CN)]Si(OMe))、ビス(1-シアノ-1-プロペニル)ジメトキシシラン([MeCH=C(CN)]Si(OMe))、1-(1-シアノ-1-プロペニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン-3-トリフラート([MeCH=C(CN)](SiMeO)Tf)、1,3-ビス(1-シアノ-1-プロペニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン({[MeCH=C(CN)]SiMeO)、1-(1-シアノ-1-プロペニル)-3-エトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン([MeCH=C(CN)](SiMeO)Et)等が挙げられる。
【0085】
さらに、前記の反応工程および修飾工程の反応により、次の一般式(VA)、(VB)、(VI)、(VII)、または(VIII)で表される新規なケイ素化合物を提供できる。
15 16 Si(OR174-(e+f+g)(OSO18 (VA)R19 20 (R21O)3-(h+i)Si-OSO-(o-C)-CO21 (VB)
22 23 Si(OR244-(j+k+l)(C≡CR25 (VI)
26 27 Si(OR284-(m+n+o)[C(CN)=CHR29 (VII)
(SiR3031O)q-1SiR3031 (VIII)
【0086】
これら式中、R15、R16、R19、R20、R22、R23、R25、R26、R27、R29、R30、およびR31は、それぞれ独立にメチル基、フェニル基、および
ビニル基より選ばれる基であり;R17、R21、R24、およびR28は、それぞれ独立にメチル基およびエチル基から選ばれる基であり;R18は、トリフルオロメチル基、メチル基、およびp-トリル基から選ばれる基である。
また、XおよびXは、それぞれ独立にトリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、エトキシ基、メトキシ基、フェニルエチニル基、および1-シアノ-1-プロペニル基から選ばれる基であり、XおよびXのうちの少なくとも一方は、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、メタンスルホニルオキシ基、p-トルエンスルホニルオキシ基、フェニルエチニル基、および1-シアノ-1-プロペニル基から選ばれる基である。
さらに、e、f、h、i、j、k、m、およびnは、それぞれ独立に0以上2以下の整数であり;gおよびlは、それぞれ独立に1または2であり;oは、1以上4以下の整数であり;e+f+gおよびj+k+lは、それぞれ独立に2または3であり;h+iは、0以上3以下の整数であり;m+n+oは、1以上4以下の整数であり;qは、2以上6以下の整数である。
【0087】
一般式(VA)では、(R15、R16、R17、R18、e、f、g)の組み合わせの好ましい例として、(メチル基、-、エチル基、トリフルオロメチル基、2、0、1)、(メチル基、フェニル基、メチル基、トリフルオロメチル基、1、1、1)、(メチル基、-、エチル基、トリフルオロメチル基、1、0、1)、(フェニル基、-、エチル基、トリフルオロメチル基、1、0、1)、(フェニル基、-、エチル基、トリフルオロメチル基、1、0、2)、(ビニル基、-、エチル基、トリフルオロメチル基、1、0、1)、(ビニル基、-、エチル基、トリフルオロメチル基、1、0、2)、(-、-、エチル基、トリフルオロメチル基、0、0、2)、(-、-、メチル基、トリフルオロメチル基、0、0、2)等が挙げられる。
一般式(VB)では、(R19、R20、R21、h、i)の組み合わせの好ましい例として、(メチル基、メチル基、メチル基、2、1)等が挙げられる。
【0088】
一般式(VI)では、(R22、R23、R24、R25、j、k、l)の組み合わせの好ましい例として、(メチル基、フェニル基、メチル基、フェニル基、1、1、1)、(フェニル基、-、エチル基、フェニル基、1、0、1)、(ビニル基、-、エチル基、フェニル基、1、0、1)、(ビニル基、-、エチル基、フェニル基、1、0、2)等が挙げられる。
【0089】
一般式(VII)では、(R26、R27、R28、R29、m、n、o)の組み合わせの好ましい例として、(メチル基、-、エチル基、メチル基、2、0、1)、(メチル基、-、-、メチル基、2、0、2)、(メチル基、フェニル基、メチル基、メチル基、1、1、1)、(フェニル基、-、エチル基、メチル基、1、0、1)、(フェニル基、-、エチル基、メチル基、1、0、2)、(ビニル基、-、エチル基、メチル基、1、0、1)、(ビニル基、-、エチル基、メチル基、1、0、2)、(フェニル基、-、エチル基、メチル基、1、0、1)、(-、-、エチル基、メチル基、0、0、1)、(-、-、エチル基、メチル基、0、0、2)、(-、-、メチル基、メチル基、0、0、1)、(-、-、メチル基、メチル基、0、0、2)等が挙げられる。
【0090】
一般式(VIII)では、(R30、R31、X、X、q)の組み合わせの好ましい例として、(メチル基、メチル基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、2)、(メチル基、メチル基、フェニルエチニル基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、2)、(メチル基、メチル基、フェニルエチニル基、エトキシ基、2)、(メチル基、メチル基、フェニルエチニル基、フェニルエチニル基、4)、(メチル基、メチル基、1-シアノ-1-プロペニル基、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、2)、(メチル基、メチル基、1-シアノ-1-プロペニル基、エ
チル基、2)、(メチル基、メチル基、1-シアノ-1-プロペニル基、1-シアノ-1-プロペニル基、2)等が挙げられる。
【0091】
それらのケイ素化合物は、反応性基である、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、エトキシ基等および機能性基であるアルキニル基、アルケニル基等を有することから、合成中間体、表面処理剤等として有用な機能性ケイ素化合物として利用できる。
【実施例
【0092】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに具体的に説明するが、本発明はそれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例で使用した主な分析装置等は、以下の通りである。
・核磁気共鳴スペクトル分析(以下、NMRと称する場合がある。):ブルカー製 AVANCE III HD 600MHz(クライオプローブ装着)
・ガスクロマトグラフ分析(以下、GCと称する場合がある。):島津製作所製 GC-2014
・ガスクロマトグラフ質量分析(以下、GC-MSと称する場合がある。):島津製作所製 GCMS-QP2010Plus
【0093】
(実施例1)
エトキシトリメチルシラン(MeSiOEt) 1.16mmol、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(TfO) 1.22mmolを、反応容器に入れ、約25℃(室温)で、0.25時間撹拌した。生成物をNMRで分析し、生成物の収率をNMRで測定した結果、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(MeSiOTf)が≧95%の収率で生成したことがわかった(表1-1参照)。
【0094】
(実施例2~46)
反応条件(触媒、原料、温度、時間等)を変えて、実施例1と同様に反応および分析を行い、生成物の収率をGCまたは核磁気共鳴スペクトル分析で測定した結果を表1-1~表1-4(単に「表1」と称することがある。)に示す。
【0095】
【表1-1】
【0096】
【表1-2】
【0097】
【表1-3】
【0098】
【表1-4】
【0099】
表1中の注釈を以下に示す。
1) Me3SiOEt:エトキシトリメチルシラン
Me3SiOMe:メトキシトリメチルシラン
Me2Si(OEt)2:ジエトキシジメチルシラン
MePhSi(OMe)2:メチルジメトキシフェニルシラン
MeSi(OEt)3:トリエトキシメチルシラン
PhSi(OEt)3:トリエトキシフェニルシラン
(CH2=CH)Si(OEt)3:トリエトキシビニルシラン
Si(OEt)4:テトラエトキシシラン
Si(OMe)4:テトラメトキシシラン
EtO(SiMe2O)2Et:1,3-ジエトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
2) Tf2O:トリフルオロメタンスルホン酸無水物
(p-TolSO2)2O:p-トルエンスルホン酸無水物
(MeSO2)2O:メタンスルホン酸無水物
TfOCOCF3:トリフルオロメタンスルホン酸トリフルオロアセチル
(1,2-C6H4)(CO2SO2):2-スルホ安息香酸無水物
3) FeCl3:塩化鉄(III)
Fe(ClO4)3・6H2O:過塩素酸鉄(III)6水和物
In(NTf2)3:ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドインジウム(III)
TfOH:トリフルオロメタンスルホン酸
H2O:水
4) DCB:1,2-ジクロロベンゼン
MeCN:アセトニトリル
PhMe:トルエン
C6D6:重ベンゼン
【0100】
5) 25℃は、室温での反応を示す。室温より高い温度での反応では、オイルバス(理工科学社製MH-5D)を使用した。
6) Me3SiOTf:トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル
Me3SiOSO2-p-Tol:p-トルエンスルホン酸トリメチルシリル
Me3SiOSO2Me:メタンスルホン酸トリメチルシリル
1-MeOCO-2-(Me3SiOSO2)C6H4:1-メトキシカルボニル-2-(トリメチルシロキシスルホニル)ベンゼン
Me2Si(OEt)(OTf):エトキシジメチルシリルトリフラート
Me2Si(OTf)2:ジメチルシリルビストリフラート
MePhSi(OMe)(OTf):メチルメトキシフェニルシリルトリフラート
MePhSi(OTf)2:メチルフェニルシリルビストリフラート
MeSi(OEt)2(OTf):ジエトキシメチルシリルトリフラート
PhSi(OEt)2(OTf):ジエトキシフェニルシリルトリフラート
PhSi(OEt)(OTf)2:エトキシフェニルシリルビストリフラート
(CH2=CH)Si(OEt)2(OTf):ジエトキシビニルシリルトリフラート
(CH2=CH)Si(OEt)(OTf)2:エトキシビニルシリルビストリフラート
Si(OEt)3(OTf):トリエトキシシリルトリフラート
Si(OEt)2(OTf)2:ジエトキシシリルビストリフラート
Si(OMe)3(OTf):トリメトキシシリルトリフラート
Si(OMe)2(OTf)2:ジメトキシシリルビストリフラート
TfO(SiMe2O)2Tf:1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン-1,3-ビストリフラート
なお、括弧内は、生成したスルホン酸シリルエステルの比を示す。また、収率はそれらの合計収率を示す。
7) NMRによる収率(アルコキシシランに対するスルホン酸シリルエステルの収率)。
【0101】
本発明の製造方法では、触媒を用いることにより、低温でも効率よく反応が進行する。
たとえば、エトキシトリメチルシランとp-トルエンスルホン酸無水物の反応では、触媒を使用しない場合、表1の実施例2に示すように、90℃で0.25時間の条件では、スルホン酸シリルエステルの収率は47%であった。一方、触媒を用いる方法では、実施例4~8に示すように、90℃、0.25時間の条件で、スルホン酸シリルエステルの収率はいずれも90%以上であり、触媒を用いない場合に比べて高収率であることがわかった。
これらの結果は、反応工程では、触媒の添加により、スルホン酸シリルエステルを、より効率的に製造できることを示している。
【0102】
また、反応工程で得られたスルホン酸シルルエステルは、適当な炭素系修飾剤を用いることにより、以下の実施例に示すように、Si-C結合を有するケイ素化合物に容易に変換することができる。
【0103】
(実施例47)
表1の実施例15で得られたトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル 0.6mmolを含む反応溶液に、フェニルアセチレン 0.9mmol、トリエチルアミン 3mmolを添加して、120℃で0.5時間加熱した。生成物を、GC、GC-MS、およびNMRで分析し、生成物の収率をNMRで測定した結果、トリメチル(フェニルエチニル)シラン(PhC≡CSiMe)が80%の収率で生成したことがわかった(表2-1参照)。
【0104】
(実施例48~106)
反応条件(原料、温度、時間等)を変えて、実施例47と同様に反応および分析を行い、生成物の収率をNMRで測定した結果を表2-1~表2-7(単に「表2」と称することがある。)に示す。
【0105】
【表2-1】
【0106】
【表2-2】
【0107】
【表2-3】
【0108】
【表2-4】
【0109】
【表2-5】
【0110】
【表2-6】
【0111】
【表2-7】
【0112】
1) 表1の実施例と同様の反応条件で得られたスルホン酸シリルエステルを含む反応液を
使用して、修飾剤との反応を行った。角括弧内の実施例番号は、スルホン酸シリルエステルを調製した反応条件の実施例番号を示す。
2) PhC≡CH:フェニルアセチレン
CH2=CHCH2CN:アリルシアニド
EtOH:エタノール
3) Et3N:トリエチルアミン
iPr2NMe:ジイソプロピルメチルアミン
cyc-Hex2NMe:ジシクロヘキシルメチルアミン
iPr2NEt:ジイソプロピルエチルアミン
Me5NC5H6:1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン
Bu3N:トリブチルアミン
Hex3N:トリヘキシルアミン
Oct3N:トリオクチルアミン
MeN(CH2)4:N-メチルピロリジン
MeN(CH2)5:N-メチルピペリジン
4) PhMe:トルエン
CHCl3:クロロホルム
Dioxane:1,4-ジオキサン
C6D6:重ベンゼン
DCB:1,2-ジクロロベンゼン
5) 25℃は、室温での反応を示す。
【0113】
6) PhC≡CSiMe3:トリメチル(フェニルエチニル)シラン
(PhC≡C)2SiMe2:ジメチルビス(フェニルエチニル)シラン
PhC≡CSiMePh(OMe):メチルメトキシフェニル(フェニルエチニル)シラン
(PhC≡C)2SiMePh:メチルフェニルビス(フェニルエチニル)シラン
PhC≡CSiPh(OEt)2:ジエトキシフェニル(フェニルエチニル)シラン
PhC≡CSi(CH=CH2)(OEt)2:ジエトキシ(フェニルエチニル)ビニルシラン
(PhC≡C)2Si(CH=CH2)(OEt):エトキシビス(フェニルエチニル)ビニルシラン
PhC≡CSi(OEt)3:トリエトキシ(フェニルエチニル)シラン
(PhC≡C)2Si(OEt)2:ジエトキシビス(フェニルエチニル)シラン
PhC≡CSi(OMe)3:トリメトキシ(フェニルエチニル)シラン
(PhC≡C)2Si(OMe)2:ジメトキシビス(フェニルエチニル)シラン
PhC≡C(SiMe2O)2Tf:1,1,3,3-テトラメチル-1-フェニルエチニルジシロキサン-3-トリフラート
(PhC≡CSiMe2)2O:1,3-ビス(フェニルエチニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
(PhC≡CSiMe2OSiMe2)2O:1,7-ビス(フェニルエチニル)-1,1,3,3,5,5,7,7-オクタメチルテトラシロキサン
PhC≡C(SiMe2O)2Et:1-エトキシ-1,1,3,3-テトラメチル-3-フェニルエチニルジシロキサン
MeCH=C(CN)(SiMe3):2-トリメチルシリル-2-ブテンニトリル
Me3SiCH2CH=C(CN)(SiMe3):2,4-ビス(トリメチルシリル)-2-ブテンニトリル
[MeCH=C(CN)]SiMe2(OEt):(1-シアノ-1-プロペニル)エトキシジメチルシラン
[MeCH=C(CN)]2SiMe2:ビス(1-シアノ-1-プロペニル)ジメチルシラン
[MeCH=C(CN)]SiMePh(OMe):(1-シアノ-1-プロペニル)メチルメトキシフェニルシラン
[MeCH=C(CN)]SiPh(OEt)2:(1-シアノ-1-プロペニル)ジエトキシフェニルシラン
[MeCH=C(CN)]2SiPh(OEt):ビス(1-シアノ-1-プロペニル)エトキシフェニルシラン
[MeCH=C(CN)]Si(CH=CH2)(OEt)2:(1-シアノ-1-プロペニル)ジエトキシビニルシラン
[MeCH=C(CN)]2Si(CH=CH2)(OEt):ビス(1-シアノ-1-プロペニル)エトキシビニルシラン
[MeCH=C(CN)]Si(OEt)3:(1-シアノ-1-プロペニル)トリエトキシシラン
[MeCH=C(CN)]2Si(OEt)2:ビス(1-シアノ-1-プロペニル)ジエトキシシラン
[MeCH=C(CN)]Si(OMe)3:(1-シアノ-1-プロペニル)トリメトキシシラン
[MeCH=C(CN)]2Si(OMe)2:ビス(1-シアノ-1-プロペニル)ジメトキシシラン
[MeCH=C(CN)](SiMe2O)2Tf:1-(1-シアノ-1-プロペニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン-3-トリフラート
{[MeCH=C(CN)]SiMe2}2O:1,3-ビス(1-シアノ-1-プロペニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
[MeCH=C(CN)](SiMe2O)2Et:1-(1-シアノ-1-プロペニル)-3-エトキシ-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン
なお、括弧内は、生成したケイ素化合物の比を示す。また、収率はそれらの合計収率を示す。
【0114】
7) NMRによる収率(スルホン酸シリルエステルに対する収率)。
8) PhC≡C(SiMe2O)2Tfには、2種類の異性体(A, B)が存在していると考えられる(表3脚注4)参照)。また、長時間の反応では、(PhC≡CSiMe2)2Oと、PhC≡C(SiMe2O)2Tfの2量化によると考えられる(PhC≡CSiMe2OSiMe2)2Oが生成した。括弧内は、それらの2種類の異性体と、(PhC≡CSiMe2)2O、(PhC≡CSiMe2OSiMe2)Oを合わせた合計4種類の化合物の比を示す。
9) 1番目の修飾剤(アルキンまたはアルケン)を添加した後、2番目の修飾剤(アルコール)を添加して、残存するスルホニルオキシ基をアルコキシ基に変換した。
【0115】
前記実施例で得られた、スルホン酸シリルエステルおよびそれらのケイ素化合物の29Si核磁気共鳴スペクトル(29Si NMR)およびGC-MSのデータを表3-1~表3-3(単に「表3」と称することがある。)に示す。
【0116】
【表3-1】
【0117】
【表3-2】
【0118】
【表3-3】
【0119】
表3中の注釈を以下に示す。
1) 各化合物の名称は、表1脚注6、および、表2脚注6に記載。
2) 29Si NMRの化学シフト値。NMR溶媒として、C6D6を使用。緩和試薬Cr(acac)3(クロム(III)アセチルアセトナート)を添加して測定。
3) GC-MS:ガスクロマトグラフ質量分析、EI法:電子衝撃イオン化法(70eV)。
4) TfO基を有するモノアルキニル化体(PhC≡C(SiMe2O)2Tf)は、Si-O-Si-O-SO2骨格において、末端のSiに対しSO2の酸素原子が5配位的に相互作用して6員環状構造になり、アルキニル基の立体的位置が異なる2種類の異性体(A, B)が生じている可能性がある。エタノールを添加して、TfO基をEtO基に変換したモノアルキニル化体(PhC≡C(SiMe2O)2Et)では、そのような6員環状構造による立体的異性体がなくなるため、1種類の化合物になったと推定される。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の製造方法により、機能性化学品として有用なスルホン酸シリルエステル、および、それらから得られるSi-C結合を有するケイ素化合物を、より効率的かつ安全に提供できるため、本発明の利用価値は高く、その工業的意義は多大である。