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特許7551215リチウム二次電池用正極活物質の製造方法およびこれにより製造された正極活物質
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質の製造方法およびこれにより製造された正極活物質
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240909BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240909BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023511851
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2021013710
(87)【国際公開番号】W WO2022075748
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】10-2020-0128547
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヒュン・シム
(72)【発明者】
【氏名】ミュン・ギ・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ユ・キョン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】イェ・ヒョン・グ
(72)【発明者】
【氏名】ジン・ホ・ジョン
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-209434(JP,A)
【文献】特開平11-025984(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104112849(CN,A)
【文献】特表2020-527832(JP,A)
【文献】特開2005-060162(JP,A)
【文献】特表2018-502416(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0291043(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109802114(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
C01G 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1)尿素(urea)、グリシン(glycine)、カルボヒドラジド(carbohydrazide)、オキサリルジヒドラジド(oxalyldihydrazide)およびヘキサメチレンテトラミン(hexamethylenetetramine)からなる群から選択される一つ以上の第1燃料と、クエン酸(citric acid)、シユウ酸(oxalic acid)、スクロース(sucrose)、グルコース(glucose)およびアセチルアセトン(acetylacetone)からなる群から選択される一つ以上の第2燃料と、
リチウム原料物質、ニッケル原料物質、コバルト原料物質およびマンガン原料物質を含む金属原料物質を水に入れ、撹拌して、混合溶液を製造するステップと、
2)前記混合溶液を加熱して粉末状に燃焼させるステップと、
3)前記ステップ2)で得られた粉末を熱処理するステップと、を含む、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記第1燃料は尿素であり、第2燃料はクエン酸である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項3】
前記第1燃料および第2燃料の重量比は60:40~90:10である、請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項4】
前記第1燃料および第2燃料の重量比は70:30~90:10である、請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項5】
前記ステップ1)において、第1燃料および第2燃料の全含量は、前記金属原料物質の全含量に対して20wt%~60wt%である、請求項1から4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ2)の加熱は、300℃~500℃の温度で行われる、請求項1から5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記ステップ3)の熱処理は、700℃~800℃の温度で行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記正極活物質は、平均粒径(D50)が0.5μm~2.5μmである単粒子(single particle)を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法
【請求項9】
請求項1から7のいずれか一項に記載の製造方法によりリチウム二次電池用正極活物質を製造するステップを含む正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在されたセパレータと、電解質とを含むリチウム二次電池の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年10月6日付けの韓国特許出願第10-2020-0128547号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法、これにより製造された正極活物質および前記正極活物質を含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
モバイル機器に関する技術の開発と需要の増加に伴い、エネルギー源として二次電池の需要が急激に増加している。このような二次電池のうち、高いエネルギー密度と電圧を有し、サイクル寿命が長く、自己放電率が低いリチウム二次電池が商用化し、広く使用されている。
【0004】
リチウム二次電池は、正極活物質と、負極活物質と、セパレータと、電解液とに大別されることができる。前記負極活物質は、主成分として炭素材料を用いており、その他に、リチウム金属、硫黄化合物、ケイ素化合物、スズ化合物などを用いるための研究が活発に行われている。
【0005】
また、正極活物質としては、リチウムを含有しているリチウム金属酸化物が主に使用されており、コバルト系、ニッケル系およびコバルト、ニッケル、マンガンが共存する三成分系などの層状系リチウム金属酸化物が主に使用されている。
【0006】
層状系リチウム金属酸化物を製造するための一般的な方法は、水に正極活物質に入る金属を含んでいる金属塩とアルカリを投入して金属の水酸化物として沈殿させることで、前駆体を製造する方法である。これは、製造工程が複雑で、長い時間がかかり、アルカリの使用によって環境汚染を引き起こし得る廃水が多量発生するという問題がある。
【0007】
また、従来のリチウム金属酸化物は、数十~数百個の一次粒子が凝集した球状の二次粒子形状であることが一般的であった。しかし、このように多くの一次粒子が凝集した二次粒子形状のリチウム金属酸化物の場合、正極の製造時に圧延工程で一次粒子が離脱する粒子の割れが発生しやすく、充放電過程で粒子の内部にクラックが発生するという問題がある。正極活物質の粒子の割れやクラックが発生する場合、電解液との接触面積が増加して、電解液との副反応によるガスの発生および活物質の劣化が増加し、そのため、寿命特性が低下するという問題がある。
【0008】
これを解消するために、前駆体の焼成時に焼成温度を高めることで、単粒子形状のリチウム金属酸化物を製造する方法も使用されているが、この場合、二次粒子形状に比べて相対的に一次粒子のサイズが大きく、リチウムイオンの拡散経路になる一次粒子間の界面が少ないため、リチウムの移動性が低下して初期抵抗が高く、相対的に高い焼成温度で製造されるため、リチウム副生成物が増加し、電気化学的に非活性の相である岩塩相(rock salt phase)に変化しやすくて表面抵抗が高くなるというさらに他の問題がある。
【0009】
したがって、これを解決するための正極活物質の製造方法が様々に研究されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術に比べて工程時間を短縮することができる正極活物質の製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
また、相対的に低い焼成温度で単粒子形状の正極活物質が製造されるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、
1)尿素(urea)、グリシン(glycine)、カルボヒドラジド(carbohydrazide)、オキサリルジヒドラジド(oxalyldihydrazide)およびヘキサメチレンテトラミン(hexamethylenetetramine)からなる群から選択される一つ以上の第1燃料と、クエン酸(citric acid)、シユウ酸(oxalic acid)、スクロース(sucrose)、グルコース(glucose)およびアセチルアセトン(acetylacetone)からなる群から選択される一つ以上の第2燃料と、リチウム原料物質、ニッケル原料物質、コバルト原料物質およびマンガン原料物質を含む金属原料物質を水に入れ、撹拌して、混合溶液を製造するステップと、
2)前記混合溶液を加熱して粉末状に燃焼させるステップと、
3)前記ステップ2)で得られた粉末を熱処理するステップと、を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、前記製造方法により製造されたリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0014】
また、前記正極活物質を含む正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在されたセパレータと、電解質とを含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明による正極活物質の製造方法は、前駆体形成ステップが省略されることから、工程所要時間が短縮する利点がある。
【0016】
また、従来技術では、単粒子形状の正極活物質を製造するために、前駆体焼成ステップで850℃以上の熱処理を要していたが、本発明による場合、これよりも低い温度で単粒子形状の正極活物質を製造することができる利点がある。
【0017】
また、焼成温度を下げることで、表面に岩塩相が形成されることを防止して抵抗および容量特性を改善し、相変化時に発生するカチオン混合現象を防止し、リチウム副生成物の量を減少させて電解液との副反応によるガス発生量を低減することができる。
【0018】
また、使用する燃料の種類に応じて正極活物質粒子の形状および成長方向を調節することができ、粒子径が大きい単粒子の製造に有利であるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施例1で製造された正極活物質の低倍率TEMイメージを示す図である。
図2】本発明の実施例1で製造された正極活物質の高倍率TEMイメージおよびSAED(selected area electron diffraction)パターンを示す図である。
図3】本発明の実施例1で製造された正極活物質のSEMイメージを示す図である。
図4】本発明の比較例1で製造された正極活物質のSEMイメージを示す図である。
図5】本発明の実験例1で行われた容量維持率評価実験の結果を示す図である。
図6】本発明の実験例2で行われたガス発生率評価実験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、本発明をより詳細に説明する。
【0021】
本明細書において、「平均粒径(D50)」は、粒径分布の50%基準での粒径として定義することができ、例えば、レーザ回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができ、より具体的には、前記正極活物質を溶液に分散させた後、市販のレーザ回折粒度測定装置(例えば、Microtrac MT 3000)に導入して、約28kHzの超音波を出力60Wで照射した後、測定装置における粒径分布の50%基準で平均粒径(D50)を算出することができる。
【0022】
本明細書において、「一次粒子」は、走査電子顕微鏡(SEM)を介して正極活物質の断面を観察した時に1個の塊として区別される最小粒子単位を意味し、一つの結晶粒からなることもでき、複数個の結晶粒からなることもできる。具体的には、前記一次粒子の平均粒径は、正極活物質粒子の断面SEMデータで区別されるそれぞれの粒子径を測定した後、これらの算術平均値を求める方法で測定されることができる。
【0023】
本明細書において、「二次粒子」は、複数個の一次粒子が凝集して形成される二次構造体を意味する。前記二次粒子の平均粒径は、上述のレーザ回折法により測定することができる。
【0024】
本明細書において、「単粒子」は、従来一般的に使用されていた数十~数百個の一次粒子が凝集して形成される二次粒子形状の正極活物質粒子と区別するために使用される用語であり、1個の一次粒子からなる単一粒子と10個以下の一次粒子の凝集体粒子を含む概念である。
【0025】
従来、一般的に金属塩を含む水溶液に塩基性物質を投入して金属の水酸化物として沈殿させることで前駆体を製造し、前記前駆体をリチウムソース、ドーピングソースおよびコーティングソースと乾式で混合して高温熱処理を行う方式で正極活物質を製造した。
【0026】
この場合、前記前駆体は、主に、数nm~数十nmの一次粒子が集まって形成される球形状の二次粒子からなり、これを単粒子の形状に変えるためには、850℃以上の高温で焼成するか、相対的に低い温度で複数回焼成を行うか、フラックス(Flux)物質を添加して焼成温度を下げる過程が必要であった。
【0027】
このように単粒子の形成のために焼成温度を高める場合、既存の層状(layered)構造がスピネル(spinel)構造に、スピネル構造が岩塩相(rock salt phase)構造に変化する相変化が起こるため、電気化学的に非活性である岩塩相によって単粒子自体の抵抗特性が低下する欠点がある。それだけでなく、前記相変化過程でリチウムイオンの脱離が発生してニッケルイオンがリチウム層に置換される現象、すなわち、カチオン混合(cation mixing)が発生するため、正極材の劣化につながり、リチウムイオンの脱離によって相対的にLiCOとLiOHなどのリチウム副生成物も多くなるため、正極材としてリチウム二次電池に適用時に、電解液との副反応によってガス発生量が増加する問題がある。
【0028】
一方、本発明によるリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、溶液状態からゲル状態を経て粉末状態になるまでの燃焼反応を含むことから、700℃~800℃の温度でも単粒子(single particle)形状の正極活物質を製造することができる利点がある。すなわち、岩塩相への相変化を防止し、カチオン混合現象およびリチウム副生成物の量を減少させることができ、リチウム二次電池の正極材として抵抗および安定性の改善に寄与することができる。
【0029】
また、単粒子の形成のために既存の高温焼成を適用しながら粒子径を増加させようとする場合、900℃以上の高温が必要であり、実際工程に適用し難い欠点があるが、本発明による場合、相対的に低い温度で粒子径が大きい単粒子の形成が可能であるという利点がある。
【0030】
また、本発明では、リチウム原料物質と遷移金属原料物質を同時に入れて混合することで、リチウムの凝集なしに均一な正極活物質を製造することができる。
【0031】
特に、本発明者らは、前記燃焼反応に使用される燃料として2種以上がともに使用される場合、正極活物質粒子のサイズと形状、分散程度を容易にコントロールすることができることを確認し、中でも、尿素、グリシン、カルボヒドラジド、オキサリルジヒドラジドおよびヘキサメチレンテトラミンからなる群から選択される一つ以上の第1燃料と、クエン酸、シユウ酸、スクロース、グルコースおよびアセチルアセトンからなる群から選択される一つ以上の第2燃料を燃料としてともに使用する場合、比較的低い工程温度で均一な形状の粒子を得ることができることを見出した。
【0032】
本発明のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法は、下記のステップ1)~3)を含み、以下では、各ステップについてより具体的に説明する。
【0033】
1)混合溶液を製造するステップ
ステップ1)は、第1燃料、第2燃料および金属原料物質を水に入れて撹拌し、混合溶液を製造するステップである。
【0034】
具体的には、前記第1燃料は、尿素(urea)、グリシン(glycine)、カルボヒドラジド(carbohydrazide)、オキサリルジヒドラジド(oxalyldihydrazide)およびヘキサメチレンテトラミン(hexamethylenetetramine)からなる群から選択されることができ、前記第2燃料は、クエン酸(citric acid)、シユウ酸(oxalic acid)、スクロース(sucrose)、グルコース(glucose)およびアセチルアセトン(acetylacetone)からなる群から選択されることができる。
【0035】
好ましくは、前記第1燃料は尿素であることができ、前記第2燃料はクエン酸であることができる。
【0036】
尿素をはじめ前記第1燃料は、水に分解してアミノ官能基(amino functional group)を生成するが、これらがレドックス(redox)反応により燃焼(combustion)を増幅させるため、工程温度を下げることができるという利点がある。ただし、燃料として第1燃料を単独で使用する場合、正極活物質ナノ粒子のサイズと形状を調節し難いという欠点がある。これを補完することができるものが、クエン酸をはじめ第2燃料であり、第2燃料は、分解時にカルボキシル官能基(carboxylic functional group)を生成させ、これらは、結合力が強くて混合溶液の構成要素が強固に結合するようにし、これにより、比較的一定なサイズと形状の正極活物質ナノ粒子が製造されることができる。
【0037】
また、第1燃料は、分解されてアンモニアを生成させるため、これを含む混合溶液のpHが増加するが、これは、溶液のゲル化(gelation)を引き起こし、燃焼(combustion)反応を増幅させる利点がある。しかし、pHが過剰に高くなると、溶液内の金属水酸化物(metal hydroxide)の沈殿が発生し、燃焼反応の効率を低下させる逆効果が示され得る。これを補完するために、第2燃料を添加すると、第2燃料から分解された酸性のカルボキシルアニオンがpHを下げて燃焼反応が起こるのに適するpHを作る。
【0038】
本発明において、前記第1燃料および第2燃料の重量比は、60:40~90:10、好ましくは70:30~90:10、さらに好ましくは75:35~85:15であることができる。この場合、上述の第1燃料および第2燃料の組み合わせの効果を最大に得ることができる。
【0039】
後述するステップ2)の燃焼過程で発生するガスの量は、投入される燃料の量に比例するが、このガスの発生圧力は、第1燃料と第2燃料をともに使用する場合、第1燃料の重量が増えるほど増加する。
【0040】
本発明の金属燃料物質は、リチウム原料物質、ニッケル原料物質、コバルト原料物質およびマンガン原料物質を含む。
【0041】
前記リチウム原料物質は、リチウム含有硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、炭酸塩、シユウ酸塩、クエン酸塩、ハライド、水酸化物、オキシ水酸化物またはこれらの組み合わせであることができ、水に溶解可能な限り特に限定されない。
【0042】
具体的には、前記リチウム原料物質は、LiCO、LiNO、LiNO、LiOH、LiOH・HO、LiH、LiF、LiCl、LiBr、LiI、CHCOOLi、LiO、LiSO、CHCOOLi、およびLiから選択される1種以上であることができ、好ましくはLiNOであることができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0043】
本発明において、前記ニッケル原料物質は、例えば、ニッケル含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物またはこれらの組み合わせであることができ、具体的には、Ni(OH)、NiO、NiOOH、NiCO・2Ni(OH)・4HO、NiC・2HO、Ni(NO・6HO、NiSO、NiSO・6HO、脂肪酸ニケル塩およびニッケルハロゲン化物から選択される1種以上であることができ、好ましくはNi(NO・6HOであることができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明で前記コバルト原料物質は、コバルト含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物またはオキシ水酸化物などであることができ、具体的には、Co(OH)、CoOOH、Co(OCOCH・4HO、Co(NO・6HO、CoSOおよびCo(SO・7HOから選択される1種以上であることができ、好ましくはCo(NO・6HOであることができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0045】
本発明において、前記マンガン含有原料物質は、例えば、マンガン含有酢酸塩、硝酸塩、硫酸塩、ハライド、硫化物、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物またはこれらの組み合わせであることができ、具体的には、Mn、MnOおよびMnなどのマンガン酸化物;MnCO、Mn(NO・6HO、MnSO、酢酸マンガン、ジカルボン酸マンガン塩、クエン酸マンガンおよび脂肪酸マンガン塩などのマンガン塩;オキシ水酸化マンガン;および塩化マンガンから選択される1種以上であることができ、好ましくはMn(NO・6HOであることができる。ただし、これに限定されるものではない。
【0046】
前記リチウム原料物質、ニッケル原料物質、コバルト原料物質およびマンガン原料物質の濃度を調節して、最終製造される正極活物質の組成を調節することができ、必要に応じて、前記金属原料物質がドーピング原料物質をさらに含むこともできる。
【0047】
前記ステップ1)において、第1燃料および第2燃料の全含量は、前記金属原料物質の全含量に対して20wt%~60wt%、好ましくは30wt%~50wt%であることができる。燃料の含量が前記範囲にある時に、十分な燃焼による好適な一次仮焼成効果と最終正極活物質の適切な収率の取得の面で好ましい。10wt%未満の場合、燃焼が十分に起こらず、単粒子形状の正極活物質を製造することが困難であり、90wt%超の場合、最終正極活物質の取得率が著しく低下する問題がある。
【0048】
前記ステップ1)において、金属原料物質の含量は、前記混合溶液の全含量に対して15wt%~50wt%、好ましくは25wt%~45wt%、さらに好ましくは30wt%~40wt%であることができる。金属原料物質の含量が前記範囲にある時に、均一な初期溶液を製造することができる点で好ましい。15wt%未満の場合、最終的に得られる正極活物質の量が少ないことがあり、50wt%超の場合、初期に製造する溶液が均一に溶解されず、最終的に均一な形状の正極活物質を得ることが困難である。
【0049】
前記混合溶液のうち燃料および金属原料物質以外の残部は、別の言及がない限り、蒸留水などの水であることができる。
【0050】
本発明において、前記混合溶液の撹拌は、40℃~60℃の温度で30分~60分間行われることができるが、これに限定されない。
【0051】
2)混合溶液を加熱して粉末状に燃焼させるステップ
ステップ2)は、上述の混合溶液をホットプレート(hot plate)を用いて加熱しながら水分を蒸発させてゲル(gel)状態にした後、熱を加え続けて前記ゲルで燃焼反応が起こるようにし、粉末状に変化させるステップである。
【0052】
前記ステップ2)の加熱は、300℃~500℃、好ましくは300℃~400℃の温度で行われる。ステップ2)の加熱温度が300℃未満の場合、自発的な燃焼を起こし難い。
【0053】
3)粉末を熱処理するステップ
ステップ3)は、前記ステップ2)で得られた粉末を熱処理することで、先に行われた燃焼で不完全な状態である単粒子(single particle)、すなわち、単粒子の形状であり得るが、完全な層状の(layered)結晶相が形成されず、ニッケル酸化物相が混ざっている状態の粒子を熱処理することで、電池材料として電気化学的特性を備えた正極活物質粒子に変化させるステップである。
【0054】
具体的には、前記ステップ2)で得られた粉末を乾燥した後、乳鉢を用いてより細かい形状の粉末に粉砕し、これを熱処理するステップを経る。
【0055】
前記ステップ3)の熱処理は、700℃~800℃の温度で行われ、熱処理温度が700℃未満の場合、正極活物質として機能するようにする層状の(layered)結晶相が適切に生成されない問題があり、800℃を超える場合、正極活物質が劣化するステップに発生する岩塩(rock salt)結晶相が発生する可能性が高くなり、これを含む電池の容量および寿命の低下につながり得る。
【0056】
正極活物質
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は、上述のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法により製造されたものである。
【0057】
前記正極活物質は、平均粒径(D50)が0.5μm~2.5μm、好ましくは1μm~2μmである単粒子(single particle)を含む。単粒子を含むか否かは、SEM、TEMまたはEBSD分析により確認することができる。
【0058】
正極活物質が、平均粒径(D50)が前記範囲にある単粒子を含む場合、広い表面積によって容量の増加を引き起こし得る点で好ましい。また、単粒子形状によって正極活物質の劣化程度を延ばすことができ、寿命の増加において好ましい。
【0059】
前記正極活物質は、下記化学式1で表されるリチウム複合遷移金属酸化物であることができる。
【0060】
[化学式1]
Li1+x(NiCoMn)O
【0061】
前記化学式1中、
Mは、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、BおよびMoから選択される1種以上であり、
x、a、b、cおよびdは、それぞれ独立した元素の原子分率として、
0≦x≦0.20、0.50≦a≦0.95、0.025≦b≦0.25、0.025≦c≦0.25、0≦d≦0.05、a+b+c+d=1である。
【0062】
リチウム二次電池
本発明のリチウム二次電池は、前記正極活物質を含む正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在されたセパレータと、電解質とを含み、本発明による正極活物質を適用する以外は、当業界において周知の通常の製造方法により製造されることができる。
【0063】
本発明による正極は、前記正極活物質を含み、正極集電体上に、正極活物質、バインダー、導電材および溶媒などを含む正極スラリーをコーティングした後、乾燥および圧延して製造することができる。
【0064】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;またはアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。
【0065】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合を容易にする成分であり、通常、正極スラリーのうち固形分の全重量に対して1重量%~30重量%の含量で添加されることができる。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルモノマー、スチレン-ブタジエンゴムまたはフッ素ゴムなどが挙げられる。
【0066】
また、前記導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を与える物質であり、正極スラリーのうち固形分の全重量に対して1重量%~20重量%添加されることができる。
【0067】
前記導電材の例としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックまたはサーマルブラックなどの炭素粉末;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブまたはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末またはニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが挙げられる。
【0068】
また、前記正極スラリーの溶媒は、N-メチル-2-ピロリドン(NMP:N-methyl-2-pyrrolidone)などの有機溶媒を含むことができ、前記正極活物質、バインダーおよび導電材などを含む時に、好ましい粘度になる量で使用されることができる。例えば、正極活物質、バインダーおよび導電材を含む正極スラリー中の固形分の濃度が10重量%~90重量%、好ましくは10重量%~50重量%になるように含まれることができる。
【0069】
本発明による負極は、負極活物質を含み、負極集電体上に、負極活物質、バインダー、導電材および溶媒などを含む負極スラリーをコーティングした後、乾燥および圧延して製造することができる。
【0070】
前記負極集電体は、一般的に、3μm~500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、銅;ステンレス鋼;アルミニウム;ニッケル;チタン;焼成炭素;銅またはステンレス鋼の表面に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの;またはアルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、正極集電体と同様、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することもでき、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形状で使用されることができる。
【0071】
また、前記負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる炭素物質;金属またはこれら金属とリチウムの合金;金属複合酸化物;リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質;リチウム金属;および遷移金属酸化物から選択される一つ以上を含むことができる。
【0072】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる炭素物質としては、リチウムイオン二次電池において一般的に使用される炭素系負極活物質であれば特に制限なく使用可能であり、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらをともに使用することができる。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)、ハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0073】
前記金属またはこれら金属とリチウムの合金としては、Cu、Ni、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群から選択される金属またはこれらの金属とリチウムの合金が使用されることができる。
【0074】
前記金属複合酸化物としては、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)およびSnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期表の第1族、第2族、第3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)からなる群から選択される1種以上が使用されることができる。
【0075】
前記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiO(0<x≦2)、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、第14族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、第14族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群から選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、また、これらのうち少なくとも一つとSiOを混合して使用することもできる。前記元素Yは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Poおよびこれらの組み合わせからなる群から選択されることができる。
【0076】
前記の遷移金属酸化物の例としては、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。
【0077】
前記負極活物質は、負極スラリーのうち固形分の全重量に対して80重量%~99重量%含まれることができる。
【0078】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体の間の結合を容易にする成分として、通常、負極スラリーのうち固形分の全重量に対して1重量%~30重量%の含量で添加されることができる。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴムまたはフッ素ゴムなどが挙げられる。
【0079】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分として、負極スラリーのうち固形分の全重量に対して1重量%~20重量%添加されることができる。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラックまたはサーマルブラックなどの炭素粉末;結晶構造が非常に発達した天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンナノチューブまたはグラファイトなどの黒鉛粉末;炭素繊維または金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン粉末、アルミニウム粉末またはニッケル粉末などの導電性粉末;酸化亜鉛またはチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;またはポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0080】
前記負極スラリーの溶媒は、水;またはNMPおよびアルコールなどの有機溶媒を含むことができ、前記負極活物質、バインダーおよび導電材などを含む時に、好ましい粘度になる量で使用されることができる。例えば、負極活物質、バインダーおよび導電材を含むスラリー中の固形分の濃度が30重量%~80重量%、好ましくは40重量%~70重量%になるように含まれることができる。
【0081】
本発明のセパレータは、負極と正極を分離し、リチウムイオンの移動通路を提供するものであり、通常、リチウム二次電池においてセパレータとして使用されるものであれば特に制限なく使用可能であり、特に、電解液のイオン移動に対して低い抵抗を有するとともに、電解液含浸能に優れ、安定性に優れるものが好ましい。
【0082】
具体的には、セパレータとして、多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルム;またはこれらの2層以上の積層構造体が使用されることができる。また、通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布が使用されることもできる。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコーティングされたセパレータが使用されることもでき、単層または多層構造で使用されることができる。
【0083】
本発明の電解質としては、リチウム二次電池の製造時に使用可能な有機系液体電解質、無機系液体電解質、固体高分子電解質、ゲル状高分子電解質、固体無機電解質、溶融型無機電解質などが挙げられ、これらに限定されるものではない。
【0084】
具体的には、前記電解質は、有機溶媒およびリチウム塩を含むことができる
【0085】
前記有機溶媒としては、電池の電気化学的反応に関わるイオンが移動することができる媒質の役割が可能なものであれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記有機溶媒としては、メチルアセテート(methyl acetate)、エチルアセテート(ethyl acetate)、γ-ブチロラクトン(γ-butyrolactone)、ε-カプロラクトン(ε-caprolactone)などのエステル系溶媒;ジブチルエーテル(dibutyl ether)またはテトラヒドロフラン(tetrahydrofuran)などのエーテル系溶媒;シクロヘキサノン(cyclohexanone)などのケトン系溶媒;ベンゼン(benzene)、フルオロベンゼン(fluorobenzene)などの芳香族炭化水素系溶媒;ジメチルカーボネート(dimethylcarbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethylcarbonate、DEC)、エチルメチルカーボネート(ethylmethylcarbonate、EMC)、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)などのカーボネート系溶媒;エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;R-CN(Rは、C~C20の直鎖状、分岐状または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類;1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類;またはスルホラン(sulfolane)類などが使用されることができる。中でも、カーボネート系溶媒が好ましく、電池の充放電性能を高めることができる高いイオン伝導度および高誘電率を有する環状カーボネート(例えば、エチレンカーボネートまたはプロピレンカーボネートなど)と、底粘度の直鎖状カーボネート系化合物(例えば、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートまたはジエチルカーボネートなど)の混合物がより好ましい。この場合、環状カーボネートと直鎖状カーボネートは、約1:1~約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液が優れた性能を示すことができる。
【0086】
前記リチウム塩は、リチウム二次電池において使用されるリチウムイオンを提供することができる化合物であれば、特に制限なく使用可能である。具体的には、前記リチウム塩は、LiPF、LiClO、LiAsF、LiBF、LiSbF、LiAlO、LiAlCl、LiCFSO、LiCSO、LiN(CSO、LiN(CSO、LiN(CFSO、LiCl、LiI、またはLiB(Cなどが使用されることができる。前記リチウム塩の濃度は、0.1M~2.0Mの範囲内であることが好ましい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれると、電解質が適切な伝導度および粘度を有することから、優れた電解質の性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0087】
前記電解質には、前記電解質の構成成分の他にも、電池の寿命特性の向上、電池の容量減少の抑制、電池の放電容量の向上などを目的として、例えば、ジフルオロエチレンカーボネートなどのハロアルキレンカーボネート系化合物、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノールまたは三塩化アルミニウムなどの添加剤が1種以上さらに含まれることもできる。この際、前記添加剤は、電解質の全重量に対して0.1~5重量%含まれることができる。
【0088】
本発明による正極活物質を含むリチウム二次電池は、ガス発生率および寿命の面で、従来の正極活物質に比べて改善した性能を示すことから、携帯電話、ノート型パソコン、デジタルカメラなどのポータブル機器、およびハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicle、HEV)などの電気自動車分野などにおいて有用である。
【0089】
これにより、本発明の他の一具現例によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックが提供される。前記電池モジュールまたは電池パックは、パワーツール(Power Tool);電気自動車(Electric Vehicle、EV)、ハイブリッド電気自動車、およびプラグインハイブリッド電気自動車(Plug-in Hybrid Electric Vehicle、PHEV)を含む自動車;または電力貯蔵用システムのいずれか一つ以上の中大型デバイス電源として用いられることができる。
【0090】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施するように、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0091】
<実施例および比較例:正極活物質の製造>
実施例1
燃料として尿素およびクエン酸を80:20の重量比で蒸留水に入れた後、完全に溶解するまで混合した。前記燃料が完全に溶解した水溶液に金属原料物質であるLiNO、Ni(NO・6HO、Co(NO・6HO、Mn(NO・6HO、Al(NO・9HOを入れて完全に溶解するまで撹拌した。この際、LiNOは、リチウム以外の金属(M)、すなわちニッケル、コバルト、マンガンおよびアルミニウムの総モル数に対するリチウムのモル数の割合であるLi/Mモル比が1.07になるように投入し、ニッケル、コバルト、マンガンおよびアルミニウムの間のモル比は86:5:7:2になるように投入した。また、燃料の含量は、前記金属原料物質の全含量に対して40wt%であった。撹拌された溶液を、ホットプレート(hot plate)を用いて、380℃に加熱して水分をすべて蒸発させた後、自発的な燃焼反応が起こるようにした。
【0092】
燃焼反応の後に得られた粉末を微細な粒子に粉砕した後、酸素雰囲気下で800℃で10時間焼成した後、解砕およびふるい分けして正極活物質を製造した。
【0093】
製造された正極活物質の平均粒径(D50)は2μmであった。また、低倍率TEMイメージを図1に、高倍率TEMイメージおよびSAEDパターンを図2に、SEMイメージを図3に示した。これにより、実施例1で製造された正極活物質が粒子間の凝集がほとんどない単一相を示すということを確認することができる。
【0094】
比較例1
燃料として、尿素およびクエン酸の代わりに尿素のみを単独で使用した以外は、実施例1と同一の過程により正極活物質を製造した。製造された正極活物質の平均粒径(D50)は3μmであり、走査電子顕微鏡(SEM)で観察した写真は図4に示した。図4を参照すると、燃料の燃焼が急激に起こり、不均一な粒子の成長によって一次粒子が多数凝集して形成された二次粒子の形状が多数観察されることを確認することができる。
【0095】
[実験例1:寿命の評価]
前記実施例1および比較例1で製造された正極活物質を、それぞれ導電材(カーボンブラック)およびバインダー(ポリビニリデンフルオライド、PVdF)と、95:2.2:2.8の重量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)溶媒の中で混合し、正極スラリー(固形分含量:16重量%)を製造した。
【0096】
次に、平坦なガラス基板の上に、正極集電体として、アルミ箔(Al foil)を空気が入らないように平坦に付着した後、前記製造されたスラリーをアルミ箔(Al foil上)にステンレス鋼スパチュラ(stainless steel spatula)を用いてコーティングした。スラリーがコーティングされたアルミ箔(Al foil)を90℃~120℃の乾燥器に入れて15分間乾燥した後、乾燥したスラリーがコーティングされたアルミ箔(Al foil)を打ち抜き機を用いて直径が14mmである円形の正極サンプルとして製造した。この正極サンプルを電動圧延機で圧延して全体の孔隙率が24%になるように調節した。コインハーフセルは、以下のような順に組み立てる。コインセル缶に前記製造された円形の正極を入れて電解液を注入した後、缶上にガスケット(gasket)、セパレータ(separator)、リチウム(lithium)、スペーサ(spacer)およびワッシャ(washer)を順次積層した。この際、電解液としてエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC):ジメチルカーボネート(DMC)を3:3:4の体積比で混合した混合有機溶媒に、1.0MのLiPF、3重量%のビニレンカーボネート(VC)、0.5重量%の1,3-プロパスルトン(PS)および1重量%のエチレンサルフェート(Esa)を溶解させたものを使用した。最後に、キャップ(cap)を締めた後、内部の気泡を除去するために、手動式クリンパー(crimper)で接合させてコインハーフセルを完成した。
【0097】
寿命の評価は、前記製造されたコインハーフセルを2.5V~4.25Vの電圧区間、45℃の温度下で行われた。最初のサイクル(cycle)では、充電および放電が0.2Cで行われ、2回目から30回目まで総30サイクルの間には、充電および放電が、それぞれ0.5C、1.0Cで行われ、サイクルの進行に伴う容量の変化を図5に示した。
【0098】
図5により、正極活物質の製造時に燃料として尿素およびクエン酸の混合物を使用した実施例1で製造された正極活物質が、尿素を単独で使用した比較例1で製造された正極活物質に比べて、電池の寿命特性の改善においてより効果的であることを確認することができる。
【0099】
[実験例2:ガス発生率の評価]
前記実験例1と同一の方法で、実施例1および比較例1の正極活物質がそれぞれ適用されたリチウム二次電池を製造した後、0.33Cで4.3Vまで100%満充電した。充電された電池を分解した後、分離した正極3個をパウチに入れて前記実験例1の電解液をさらに注液した後、60℃のオーブンで12週間保管しながら発生したパウチの体積の変化を1週単位で測定した。具体的には、パウチの体積変化時に発生する浮力の変化を用いたアルキメデスの原理を用いて、水中で前記パウチの質量の変化を測定した後、これを体積変化に換算し、図6に示した。
【0100】
図6により、正極活物質の製造時に、燃料として尿素およびクエン酸の混合物を使用した実施例1で製造された正極活物質が、尿素を単独で使用した比較例1で製造された正極活物質に比べて、高温保管時に電池のガス発生率を低減させることにおいてより効果的であることを確認することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6