IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧 ▶ エルジー エナジー ソリューション リミテッドの特許一覧

特許7551221化合物、これを含む非水電解液およびリチウム二次電池
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】化合物、これを含む非水電解液およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   C07D 327/04 20060101AFI20240909BHJP
   H01M 10/0567 20100101ALI20240909BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240909BHJP
【FI】
C07D327/04 CSP
H01M10/0567
H01M10/052
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023547129
(86)(22)【出願日】2022-03-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 KR2022004089
(87)【国際公開番号】W WO2022203402
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-08-02
(31)【優先権主張番号】10-2021-0037393
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0039092
(32)【優先日】2021-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0043329
(32)【優先日】2021-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0035958
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・クン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ス・ジョン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミ・スク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ウォン・キュン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥク・フン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・エ・ユン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・フン・キム
(72)【発明者】
【氏名】チュル・ヘン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ミ・ヨン・オ
(72)【発明者】
【氏名】キル・スン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジュン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】エスダー・カン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ウ・ノ
(72)【発明者】
【氏名】チョル・ウン・ヨム
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/117101(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1941401(KR,B1)
【文献】特開2015-162289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 327/04
H01M 10/0567
H01M 10/052
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式Iで表される化合物。
【化1】
前記化学式I中、
n、mは、それぞれ独立して、1または2であり、
Akは、置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、
Xは、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-C10のアルキル基;-Y1-C≡C-Y2基;または-Y1-CN基であり、
前記Y1は、直接結合;または置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、前記Y2は、水素;または置換または非置換のC-C10のアルキル基である。
【請求項2】
前記Akは、非置換のC-Cのアルキレン基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記Xは、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-Cのアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記Xは、-Y1'-C≡C-Y2'基であり、
前記Y1'は、非置換のC-Cのアルキレン基であり、前記Y2'は、水素;または非置換のC-Cのアルキル基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
前記Xは、-Y1'-CN基であり、
前記Y1'は、非置換のC-Cのアルキレン基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
前記化学式Iで表される化合物は、下記化学式1で表される化合物である、請求項1に記載の化合物。
【化2】
前記化学式1中、
n、mは、それぞれ独立して、1または2であり、
Akは、置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、
Xは、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-C10のアルキル基;-Y1-C≡C-Y2基;または-Y1-CN基であり、
前記Y1は、直接結合;または置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、前記Y2は、水素;または置換または非置換のC-C10のアルキル基である。
【請求項7】
前記化学式Iで表される化合物は、下記化学式a~化学式fで表される化合物のいずれか一つである、請求項1に記載の化合物。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項8】
有機溶媒と、リチウム塩と、請求項1から7のいずれか一項に記載の化合物とを含む、非水電解液。
【請求項9】
前記化合物は、前記非水電解液の全重量に対して0.01重量%~10重量%含まれる、請求項8に記載の非水電解液。
【請求項10】
請求項8または9に記載の非水電解液を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年3月23日付けの韓国特許出願第10-2021-0037393号、2021年3月25日付けの韓国特許出願第10-2021-0039092号、2021年4月02日付けの韓国特許出願第10-2021-0043329号および2022年3月23日付けの韓国特許出願第10-2022-0035958号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、スルトン系化合物、これを含む非水電解液およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、リチウム二次電池の応用領域が、電気、電子、通信、コンピュータのような電子機器の電力供給だけでなく、自動車や電力貯蔵装置といった大面積機器の電力貯蔵供給にまで急速に拡大するにつれて、高容量、高出力であるとともに高安定性である二次電池に関するニーズが増加している。
【0004】
リチウム二次電池は、一般的に、リチウム含有遷移金属酸化物などからなる正極活物質またはリチウムイオンを吸蔵および放出することができる炭素材あるいはシリコン材負極活物質と、選択的にバインダーおよび導電材を混合した物質をそれぞれ正極集電体および負極集電体に塗布して正極と負極を製造し、これをセパレータの両側に積層して所定の形状の電極集電体を形成した後、この電極集電体と非水電解液を電池ケースに挿入して製造される。ここで、電池の性能を確保するために、ほぼ必ずフォーメーション(formation、化成)およびエイジング(aging)工程を経る。
【0005】
前記フォーメーション工程は、電池の組立後、充電と放電を繰り返して二次電池を活性化するステップであり、前記充電時に正極として使用されるリチウム含有遷移金属酸化物から出たリチウムイオンが負極として使用される炭素材負極活物質に移動して挿入される。この場合、反応性が強いリチウムイオンは、電解質と反応して、LiCO、LiO、LiOHなどの化合物を生成し、この化合物は、電極の表面に固体電解質界面(Solid Electrolyte Interface:SEI)層を形成する。前記SEI層は、寿命および容量の維持に密接に影響を与えるため、SEI層の形成は、重要な因子である。
【0006】
最近、特に、自動車用リチウム二次電池では、高容量、高出力、長期寿命特性が重要になっている。高容量化のために、正極の面では、エネルギー密度が高いが安定性が低い正極活物質を使用しており、そのため、正極活物質の表面を保護して正極活物質を安定化することができる活物質-電解質界面の形成が必要であり、負極の面では、負極の表面種が電解液に分解されて副反応を起こす問題などが報告されており、SEI層が強固であるとともに抵抗が低いように形成される必要がある。また、高温で貯蔵した時に、SEI層が徐々に崩壊して電極の露出などの問題を引き起こすことがあり、高温貯蔵時に副反応を抑制することができるSEI界面の生成に役立つ電解液内の添加剤を開発する試みが行われてきた。一方、負極のSEI層の形成に効果的であると知られている添加剤である1,3-プロパンスルトンは、毒性の問題、1,3,2-ジオキサチオラン2,2-ジオキシドなどは、ガス発生、化学的安定性などの問題がある。
【0007】
上記のように、リチウム二次電池に対して、高温駆動、長期寿命特性が重要になるにつれて、繰り返したサイクルの間に電解質と電極の界面で発生する酸化還元反応による電解質分解反応が累積し、これによって増加した抵抗に起因して、寿命特性が劣化する問題が生じている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題を解決するためのものであり、非水電解液に含まれた時に非水電解液の可燃性を低減することができ、薄くて安定したSEI層が形成されて、高温安定性と寿命特性に優れたリチウム二次電池を実現することができる化合物、これを含む非水電解液およびリチウム二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、化合物、非水電解液およびリチウム二次電池を提供する。
【0010】
(1)本発明は、下記化学式Iで表される化合物を提供する。
【化1】
前記化学式I中、
n、mは、それぞれ独立して、1または2であり、
Akは、置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、
Xは、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-C10のアルキル基;-Y1-C≡C-Y2基;または-Y1-CN基であり、
前記Y1は、直接結合;または置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、前記Y2は、水素;または置換または非置換のC-C10のアルキル基である。
【0011】
(2)本発明は、前記(1)において、前記化学式Iで表される化合物が下記化学式1で表される化合物である化合物を提供する。
【化2】
前記化学式1中、
n、mは、それぞれ独立して、1または2であり、
Akは、置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、
Xは、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-C10のアルキル基;-Y1-C≡C-Y2基;または-Y1-CN基であり、
前記Y1は、直接結合;または置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、前記Y2は、水素;または置換または非置換のC-C10のアルキル基である。
【0012】
(3)本発明は、前記(1)または(2)において、前記Akが非置換のC-Cのアルキレン基である化合物を提供する。
【0013】
(4)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記Xは、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-Cのアルキル基である化合物を提供する。
【0014】
(5)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記Xが-Y1'-C≡C-Y2'基であり、前記Y1'は、非置換のC-Cのアルキレン基であり、前記Y2'は、水素;または非置換のC-Cのアルキル基である化合物を提供する。
【0015】
(6)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記Xが-Y1'-CN基であり、前記Y1'は、非置換のC-Cのアルキレン基である化合物を提供する。
【0016】
(7)本発明は、前記(1)~(3)のいずれか一つにおいて、前記化学式Iで表される化合物が下記化学式a~化学式fで表される化合物のいずれか一つである化合物を提供する。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0017】
(8)また、本発明は、有機溶媒と、リチウム塩と、前記(1)~(7)のいずれか一つによる化合物とを含む非水電解液を提供する。
【0018】
(9)本発明は、前記(8)において、前記化合物が前記非水電解液の全重量に対して0.01重量%~10重量%含まれる非水電解液を提供する。
【0019】
(10)また、前記(8)または(9)による非水電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明による化学式Iで表される化合物が非水電解液に含まれる場合、非水電解液の可燃性を低減することができ、薄くて安定したSEI層が形成されて、高温安定性と寿命特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
本明細書および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0023】
本発明で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なる意味を有していない限り、複数の表現を含む。
【0024】
本発明において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものなどの存在または付加可能性を予め排除しないものと理解すべきである。
【0025】
本発明において、「C~C」の記載において、「a」および「b」は、炭素原子の個数を意味する。例えば、「C~C10のアルキレン基」は、1個~10個の炭素原子を含むアルキレン基、すなわち、-CH-、-CHCH-、-CHCHCH-、-CHCH(CH)-、-CH(CH)CH-、-CH(CH)CHCH-などを意味する。
【0026】
本発明者らは、高温でも優れた性能を有するリチウム二次電池を開発するために鋭意研究を重ねた結果、非水電解液添加剤として、下記化学式Iで表されるスルトン系化合物を使用することで、高温貯蔵特性および寿命特性が向上することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0027】
化学式Iで表される化合物
本発明は、下記化学式Iで表される化合物を提供する。
【0028】
【化9】
【0029】
前記化学式I中、
n、mは、それぞれ独立して、1または2であり、
Akは、置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、
Xは、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-C10のアルキル基;-Y1-C≡C-Y2基;または-Y1-CN基であり、
前記Y1は、直接結合;または置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、前記Y2は、水素;または置換または非置換のC-C10のアルキル基である。
【0030】
本発明において、前記置換アルキレン基または置換アルキル基での置換基は、重水素、ハロゲン基、ヒドロキシ基、アミノ基、チオール基、ニトロ基、ニトリル基、シリル基および直鎖または分岐鎖C-Cのアルコキシ基から選択される1個以上の置換基であることができる。
【0031】
従来、電解液添加剤として使用される1,3-プロパンスルトン(PS)の場合、毒性によって使用が制限されたのに対し、本発明の化学式Iで表される化合物は、1,3-プロパンスルトンとは異なり、毒性が低く、末端基として電子を引き寄せる官能基を含み、サルファイト基またはサルフェート基を含むことで、正極および負極の表面に強固であるとともに、リチウム塩伝導度が高い被膜を形成することができる。
【0032】
前記化学式Iで表される化合物は、末端(X位置)に電子を引き寄せる官能基(Electron Withdrawing Group)が位置することで、LUMO(Lowest Unoccupied Molecular Orbital)エネルギーを下げて還元性を高める。したがって、電極の表面に被膜(SEI層)をより容易に形成することができる。
【0033】
また、前記化学式Iで表される化合物は、分子内にイオン伝導度が高いスルトン基を含有することで、界面抵抗増加を最小化するとともに、電極の表面が露出することを防止することができる安定した被膜を形成し、電極と電解質との副反応を抑制することができ、Oの発生を抑制することができ、正極からの遷移金属の溶出を効果的に制御することができる。
【0034】
その結果、高温貯蔵特性および高温サイクル特性が改善したリチウム二次電池を実現することができる。
【0035】
このような本発明の化学式Iで表されるスルトン系化合物は、ジオール(diol)含有アルケン化合物またはジオール含有ハロゲン化合物をスルホン化するステップと、ジオールのうち1個のアルコール基とスルホネート基の縮合によるヒドロキシ基含有スルトン化合物を製造するステップと、残存ヒドロキシ基に、スルホン化反応によりクロロサルファイト基を含む化合物を製造するステップと、クロロサルファイト基含有化合物をアルコール基と反応させてサルファイト基含有化合物を製造するステップと、サルファイト基を酸化してサルフェート基含有化合物を製造するステップとにより製造されることができ、これに制限されず、公知の方法により製造することもできる。
【0036】
一方、前記化学式Iで表される化合物は、非水系溶媒よりも還元電位が高くてセル駆動条件で先に分解されて強固な被膜を形成することができ、還元電位は、DFT計算法を適用したガウシアン09プログラムパッケージ(Gaussian 09 Revision C.01,Gaussian Inc.,Wallingford,CT,2009)を用いて以下の方法で測定することができる。
【0037】
1)還元前の状態で化合物の安定した構造エネルギ-(Eneut)、還元された状態で化合物の安定した構造エネルギ-(Ered)を計算する。2)Eneut-Ered-1.45eVを還元安定性の値と定義する。ここで、構造安定化計算は、PCM(Polarizable Continuum Model)方法を適用した状態で行う。
【0038】
本発明によると、前記化学式I中、Akは、非置換のC-Cのアルキレン基、さらに具体的には、非置換のC-Cのアルキレン基であることができる。この場合、化合物の合成が容易であり、非水電解液用添加剤として使用した時に、SEI層の抵抗が高くなることを防止することができ、結果、電池の抵抗が高くなることを防止することができる。
【0039】
本発明によると、前記化学式I中、Xは、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-Cのアルキル基、さらに具体的には、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-Cのアルキル基であることができる。この場合、電子を引き寄せる力がより優秀で、還元性が高く、電極の表面にSEI層をより容易に形成することができる。一方、前記ハロゲン元素は、具体的にはフッ素元素であることができる。
【0040】
本発明によると、前記化学式I中、Xは、-Y1'-C≡C-Y2'基であり、前記Y1'は、非置換のC-Cのアルキレン基であり、前記Y2'は、水素;または非置換のC-Cのアルキル基であることができる。この場合、一分子内のC≡C三重結合が他の分子内のC≡C三重結合と重合反応(polymerization)を行い、より強固なSEI層を形成することができる。前記Y1'は、具体的には、非置換のC-Cのアルキレン基であることができ、前記Y2'は、水素;または非置換のC-Cのアルキル基であることができる。
【0041】
本発明によると、前記化学式I中、Xは、-Y1'-CN基であり、前記Y1'は、非置換のC-Cのアルキレン基であることができる。前記Y1'は、具体的には、非置換のC-Cのアルキレン基であることができる。この場合、電子を引き寄せる力がより優秀で、還元性が高く、電極の表面にSEI層をより容易に形成することができる。
【0042】
本発明によると、前記化学式Iで表される化合物は、下記化学式1で表される化合物であることができる。
【0043】
【化10】
【0044】
前記化学式1中、
n、mは、それぞれ独立して、1または2であり、
Akは、置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、
Xは、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-C10のアルキル基;-Y1-C≡C-Y2基;または-Y1-CN基であり、
前記Y1は、直接結合;または置換または非置換のC-C10のアルキレン基であり、前記Y2は、水素;または置換または非置換のC-C10のアルキル基である。
【0045】
電解質添加剤として、1,3-プロパンスルトンまたは1,4-ブタンスルトンのような化合物を使用する場合、開環反応が起こり毒性が発現する問題があるが、前記化学式1のように環構造にある酸素の隣の位置に-Ak-O-(S=O)OX基が置換された化合物を電解質添加剤として使用する場合には、開環反応を防止することができ、毒性が発現することを防止することができる。
【0046】
前記化学式1中、前記n、m、Ak、X、Y1およびY2は、前記化学式Iのn、m、Ak、X、Y1およびY2と同じものであることができる。
【0047】
前記化学式1中、Akは、具体的には、非置換のC-Cのアルキレン基であることができ、前記Xは、一つ以上のハロゲン元素で置換されたC-Cのアルキル基;-Y1'-C≡C-Y2'基(前記Y1'は、非置換のC-Cのアルキレン基であり、前記Y2'は、水素;または非置換のC-Cのアルキル基);または-Y1'-CN基(前記Y1'は、非置換のC-Cのアルキレン基)であることができる。
【0048】
本発明によると、前記化学式Iで表される化合物は、下記化学式a~化学式fで表される化合物であることができる。
【0049】
【化11】
【0050】
【化12】
【0051】
【化13】
【0052】
【化14】
【0053】
【化15】
【0054】
【化16】
【0055】
非水電解液
本発明は、有機溶媒;リチウム塩;および前記化学式Iで表される化合物を含む非水電解液を提供する。
【0056】
(1)化学式Iで表される化合物
本発明による非水電解液は、添加剤として、前記化学式Iで表される化合物を含む。
【0057】
毒性の問題を減少させることができる前記化学式Iで表される化合物が非水電解液に含まれる場合、薄くて安定したSEI層が形成され、高温安定性と寿命特性に優れたリチウム二次電池を提供することができる。
【0058】
本発明によると、前記化合物は、前記非水電解液の全重量に対して、0.01重量%~10重量%、具体的には、0.01重量%~5重量%、0.01重量%~1重量%、または0.1重量%~1重量%含まれることができる。この場合、非水電解液を二次電池に適用した時に、強固なSEI層を形成して、長期寿命特性およびガス発生を改善するのに役立つことができる。
【0059】
(2)有機溶媒
前記有機溶媒は、リチウム二次電池に通常使用される非水系溶媒として、二次電池の充放電過程で酸化反応などによる分解を最小化することができ、添加剤とともに目的とする特性を発揮することができるものであれば制限されない。
【0060】
前記有機溶媒は、例えば、直鎖状カーボネートまたは環状カーボネート、直鎖状エステルまたは環状エステル、エーテル、グライム、ニトリル(アセトニトリル、SNなど)などであることができるが、これに限定されるものではない。前記有機溶媒として、代表的には、環状カーボネート、直鎖状カーボネートまたはこれらの混合物であるカーボネート化合物を含むカーボネート系電解液溶媒を使用することができる。
【0061】
一方、前記環状カーボネート化合物の具体的な例としては、エチレンカーボネート(ethylene carbonate、EC)、プロピレンカーボネート(propylene carbonate、PC)、1,2-ブチレンカーボネート、2,3-ブチレンカーボネート、1,2-ペンチレンカーボネート、2,3-ペンチレンカーボネート、ビニレンカーボネートおよびフルオロエチレンカーボネート(FEC)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0062】
前記直鎖状カーボネート化合物の具体的な例としては、ジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、DMC)、ジエチルカーボネート(diethyl carbonate、DEC)、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネートおよびエチルプロピルカーボネートなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記直鎖状エステル化合物の具体的な例としては、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、およびブチルプロピオネートなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0064】
前記環状エステル化合物の具体的な例としては、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、σ-バレロラクトン、ε-カプロラクトンなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記エーテル系溶媒の具体的な例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、1,3-ジオキソラン(DOL)および2,2-ビス(トリフルオロメチル)-1,3-ジオキソラン(TFDOL)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0066】
前記グライム系溶媒は、直鎖状カーボネート系有機溶媒に比べて高い誘電率および低い表面張力を有し、メタルとの反応性が少ない溶媒として、ジメトキシエタン(グライム、DME)、ジエトキシエタン、ジグライム(diglyme)、トリ-グライム(Triglyme)、およびテトラ-グライム(TEGDME)などがあるが、これに限定されるものではない。
【0067】
前記ニトリル系溶媒の具体的な例としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、バレロニトリル、カプリロニトリル、ヘプタンニトリル、シクロペンタンカルボニトリル、シクロヘキサンカルボニトリル、2-フルオロベンゾニトリル、4-フルオロベンゾニトリル、ジフルオロベンゾニトリル、トリフルオロベンゾニトリル、フェニルアセトニトリル、2-フルオロフェニルアセトニトリル、4-フルオロフェニルアセトニトリルなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0068】
一方、前記環状カーボネート系有機溶媒であるエチレンカーボネートおよびプロピレンカーボネートは、高粘度の有機溶媒として誘電率が高く、電解液内のリチウム塩をよく解離させるため好ましく使用されることができ、このような環状カーボネートとジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネートなどの低粘度、低誘電率の直鎖状カーボネートを適当な割合で混合して使用すると、高い電気伝導率を有する電解液を製造することができ、より好ましく使用されることができる。この場合、前記環状カーボネートと直鎖状カーボネートは、2:8~4:6の体積比で混合して使用されることができる。
【0069】
(3)リチウム塩
前記リチウム塩は、リチウム二次電池内で電解質塩として使用されるものであり、イオンを伝達するための媒体として使用されるものである。通常、リチウム塩は、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiN(CSO、LiN(CFSO、CFSOLi、LiC(CFSO、LiCBO、LiTFSI、LiFSI、およびLiClOから選択される1種以上の化合物を含むことができ、好ましくはLiPFを含むことができるが、これに限定されるものではない。一方、前記リチウム塩は、1種または必要に応じて、2種以上を混合して使用することもできる。
【0070】
本発明によると、前記リチウム塩は、非水電解液に0.5M~5Mの濃度で含まれることができ、好ましくは0.5M~4Mの濃度で含まれることができる。リチウム塩の濃度が前記範囲内である場合、電解液内のリチウムイオンの濃度が適切で電池の充放電が十分に行われることができ、電解液の粘度が適切で電池内の濡れ性(wetting)が優秀で電池性能が改善することができる。
【0071】
(4)その他の電解質添加剤
前記非水電解液は、その他の電解質添加剤をさらに含むことができる。
【0072】
前記その他の電解質添加剤は、本発明の非水電解液にさらに添加されることができる公知の電解質添加剤であり、例えば、ビニレンカーボネート(Vinylene Carbonate)、ビニルエチレンカーボネート(vinyl ethylene carbonate)、カテコールカーボネート(catechol carbonate)、α-ブロモ-γ-ブチロラクトン(α-bromo-γ-butyrolactone)、メチルクロロホルメート(methyl chloroformate)、スクシンイミド(succinimide)、N-ベンジルオキシカルボニルオキシスクシンイミド(N-benzyloxycarbonyloxysuccinimide)、N-ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxysuccinimide)、N-クロロスクシンイミド(N-chlorosuccinimide)、けい皮酸メチル(methyl cinnamate)、1,3,5-トリシアノベンゼン(1,3、5-tricyanobenzene)、テトラシアノキノジメタン(tetracyanoquinodimethane)、ピロカーボネート(pyrocarbonate)、シクロヘキシルベンゼン(cyclohexylbenzene)、プロパンスルトン(Propane sultone)、スクシノニトリル(succinonitrile)、アジポニトリル(Adiponitrile)、エチレンサルフェート(ethylene sulfate)、プロペンスルトン(Propene Sultone)、フルオロエチレンカボンネート(fluoroethylene carbonate)、LiPO、LiODFB(Lithium difluorooxalatoborate)、LiBOB(Lithium bis-(oxalato)borate)、TMSPa(3-trimethoxysilanyl-propyl-N-aniline)、TMSPi(Tris(trimethylsilyl)Phosphite)、12-クラウン-4(12-crown-4)、15-クラウン-5(15-crown-5)、18-クラウン-6(18-crown-6)、アザ-エーテル類(aza-ethers)、ボラン類(boranes)、ボレート類(borates)、ボロネート類(boronates)、フェロセン(ferrocene)およびその誘導体、LiBFなどであることができる。
【0073】
前記その他の電解質添加剤は、非水電解液の全重量に対して、0.01重量%~10重量%含まれることができ、好ましくは0.05重量%~7.0重量%、さらに好ましくは0.05重量%~5.0重量%含まれることができる。
【0074】
リチウム二次電池
本発明は、前記非水電解液を含むリチウム二次電池を提供する。
【0075】
具体的には、前記リチウム二次電池は、正極活物質を含む正極と、負極活物質を含む負極と、前記正極と負極との間に介在されたセパレータと、本発明による非水電解液とを含む。
【0076】
ここで、本発明のリチウム二次電池は、当技術分野において周知の通常の方法により製造することができる。例えば、正極と負極との間にセパレータが介在された電極組立体を形成した後、前記電極組立体を電池ケースの内部に挿入し、本発明による非水電解液を注入して製造することができる。
【0077】
(1)正極
前記正極は、正極集電体上に、正極活物質、バインダー、導電材および溶媒などを含む正極用スラリーをコートして製造することができる。
【0078】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したものなどが使用されることができる。また、表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の結合力を強化することもでき、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0079】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーション可能な化合物として、具体的には、コバルト、マンガン、ニッケルまたはアルミニウムのような1種以上の金属とリチウムを含むリチウム金属酸化物を含むことができる。より具体的には、前記リチウム金属酸化物は、リチウム-マンガン系酸化物(例えば、LiMnO、LiMnなど)、リチウム-コバルト系酸化物(例えば、LiCoOなど)、リチウム-ニッケル系酸化物(例えば、LiNiOなど)、リチウム-ニッケル-マンガン系酸化物(例えば、LiNi1-YMn(ここで、0<Y<1)、LiMn2-zNi(ここで、0<Z<2)など)、リチウム-ニッケル-コバルト系酸化物(例えば、LiNi1-Y1CoY1(ここで、0<Y1<1)など)、リチウム-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、LiCo1-Y2MnY2(ここで、0<Y2<1)、LiMn2-z1Coz1(ここで、0<Z1<2)など)、リチウム-ニッケル-マンガン-コバルト系酸化物(例えば、Li(NiCoMnr1)O(ここで、0<p<1、0<q<1、0<r1<1、p+q+r1=1)またはLi(Nip1Coq1Mnr2)O(ここで、0<p1<2、0<q1<2、0<r2<2、p1+q1+r2=2)など)、またはリチウム-ニッケル-コバルト-遷移金属(M)酸化物(例えば、Li(Nip2Coq2Mnr3S2)O(ここで、MはAl、Fe、V、Cr、Ti、Ta、MgおよびMoからなる群から選択され、p2、q2、r3およびs2は、それぞれ独立した元素の原子分率として、0<p2<1、0<q2<1、0<r3<1、0<s2<1、p2+q2+r3+s2=1である)など)などが挙げられ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の化合物が含まれることができる。
【0080】
中でも、電池の容量特性および安定性を高めることができる点で、前記リチウム金属酸化物は、LiCoO、LiMnO、LiNiO、リチウムニッケルマンガンコバルト酸化物(例えば、Li(Ni1/3Mn1/3Co1/3)O、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)OおよびLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなど)、またはリチウムニッケルコバルトアルミニウム酸化物(例えば、Li(Ni0.8Co0.15Al0.05)Oなど)などであることができ、リチウム複合金属酸化物を形成する構成元素の種類および含量比の制御による改善効果の顕著性を考慮すると、前記リチウム複合金属酸化物は、Li(Ni0.6Mn0.2Co0.2)O、Li(Ni0.5Mn0.3Co0.2)O、Li(Ni0.7Mn0.15Co0.15)OおよびLi(Ni0.8Mn0.1Co0.1)Oなどであることができ、これらのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用されることができる。
【0081】
前記正極活物質は、正極用スラリーのうち溶媒以外の固形分の全重量に対して60重量%~99重量%、好ましくは70重量%~99重量%、より好ましくは80重量%~98重量%含まれることができる。
【0082】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合を容易にする成分である。
【0083】
このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、様々な共重合体などが挙げられる。
【0084】
通常、前記バインダーは、正極用スラリーのうち溶媒以外の固形分の全重量に対して、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%含まれることができる。
【0085】
前記導電材は、正極活物質の導電性をより向上させるための成分である。
【0086】
前記導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、グラファイト;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどの炭素系物質;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0087】
通常、前記導電材は、正極用スラリーのうち溶媒以外の固形物の全重量に対して、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%含まれることができる。
【0088】
前記溶媒は、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒を含むことができ、前記正極活物質、および選択的に、バインダーおよび導電材などを含む時に好ましい粘度になる量で使用されることができる。例えば、正極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む固形分の濃度が50重量%~95重量%、好ましくは70重量%~95重量%、より好ましくは70重量%~90重量%になるように含まれることができる。
【0089】
(2)負極
前記負極は、例えば、負極集電体上に、負極活物質、バインダー、導電材および溶媒などを含む負極用スラリーをコートして製造するか、炭素(C)からなる黒鉛電極または金属自体を負極として使用することができる。
【0090】
例えば、前記負極集電体上に負極用スラリーをコートして負極を製造する場合、前記負極集電体は、一般的に、3~500μmの厚さを有する。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、銅、ステンレス鋼、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレス鋼の表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理を施したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが使用されることができる。また、正極集電体と同様、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化することもでき、フィルム、シート、箔、網、多孔質体、発泡体、不織布体など、様々な形態で使用されることができる。
【0091】
前記負極活物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、炭素質材料;リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)、Si、SiO、Sn、Li、Zn、Mg、Cd、Ce、NiまたはFeである金属類(Me);前記金属類(Me)で構成された合金類;前記金属類(Me)の酸化物(MeO);および前記金属類(Me)と炭素との複合体からなる群から選択される1種または2種以上の負極活物質が挙げられる。負極活物質は、具体的には、シリコン(Si)、シリコン酸化物(SiO)またはシリコン合金(silicon alloy)などを含むシリコン系負極活物質が使用されることができる。この場合、シロキサン結合を含む薄くて安定したSEI層が形成され、電池の高温安定性および寿命特性をより改善することができる。
【0092】
前記負極活物質は、負極用スラリーのうち溶媒以外の固形分の全重量に対して、60重量%~99重量%、好ましくは70重量%~99重量%、より好ましくは80重量%~98重量%含まれることができる。
【0093】
前記バインダーは、導電材、活物質および集電体の間の結合を容易にする成分である。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スルホン化エチレン-プロピレン-ジエンモノマー、スチレン-ブタジエンゴム、フッ素ゴム、これらの様々な共重合体などが挙げられる。
【0094】
通常、前記バインダーは、負極用スラリーのうち溶媒以外の固形分の全重量に対して、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%含まれることができる。
【0095】
前記導電材は、負極活物質の導電性をより向上させるための成分である。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさず、導電性を有するものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。
【0096】
前記導電材は、負極用スラリーのうち溶媒以外の固形分の全重量に対して、1重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、より好ましくは1重量%~10重量%含まれることができる。
【0097】
前記溶媒は、水またはNMP(N-メチル-2-ピロリドン)などの有機溶媒を含むことができ、前記負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材などを含む時に好ましい粘度になる量で使用されることができる。例えば、負極活物質、および選択的にバインダーおよび導電材を含む固形分の濃度が50重量%~95重量%、好ましくは70重量%~90重量%になるように含まれることができる。
【0098】
前記負極として、金属自体を使用する場合、金属薄膜自体または前記負極集電体上に金属を物理的に接合、圧延または蒸着などをする方法で製造することができる。前記蒸着する方式は、金属に対する電気的蒸着法または化学的蒸着法(chemical vapor deposition)を使用することができる。
【0099】
例えば、前記金属薄膜自体または前記負極集電体上に接合/圧延/蒸着される金属は、リチウム(Li)、ニッケル(Ni)、スズ(Sn)、銅(Cu)およびインジウム(IN)からなる群で選択される1種の金属または2種の金属の合金などを含むことができる。
【0100】
(3)セパレータ
また、セパレータとしては、従来セパレータとして使用されていた通常の多孔性高分子フィルム、例えば、エチレン単独共重合体、プロピレン単独共重合体、エチレン/ブテン共重合体、エチレン/ヘキセン共重合体およびエチレン/メタクリレート共重合体などのポリオレフィン系高分子で製造した多孔性高分子フィルムを単独でまたはこれらを積層して使用することができ、または通常の多孔性不織布、例えば、高融点のガラス繊維、ポリエチレンテレフタレート繊維などからなる不織布を使用することができるが、これに限定されるものではない。また、耐熱性または機械的強度の確保のために、セラミック成分または高分子物質が含まれたコートされたセパレータが使用されることもでき、選択的に、単層または多層構造として使用されることができる。
【0101】
本発明のリチウム二次電池の外形は、特に制限されないが、缶を使用した円筒型、角型、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などであることができる。
【0102】
本発明によると、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールおよびこれを含む電池パックを提供することができる。前記電池モジュールおよび電池パックは、高容量、高い律速特性およびサイクル特性を有する前記リチウム二次電池を含むことから、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグ-インハイブリッド電気自動車および電力貯蔵用システムからなる群から選択される中大型デバイスの電源として用いられることができる。
【0103】
以下、具体的な実施例により、本発明をより具体的に説明する。ただし、下記実施例は、本発明の理解を容易にするための例示であって、本発明の範囲を限定するものではない。本記載の範疇および技術思想の範囲内で様々な変更および修正が可能であることは当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することは言うまでもない。
【0104】
合成例
合成例1.化学式aで表される化合物の製造
氷浴(ice bath)内に丸底フラスコを位置させた後、前記丸底フラスコにジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、Aldrich社製)を投入し、塩化チオニル(thionyl chloride、Aldrich社製)1.1eq(当量)、ピリジン(pyridine、Aldrich社製)1.15eq、5-(ヒドロキシメチル)-1,2-オキサチオラン-2,2-ジオキシド(5-(Hydroxymethyl)-1,2-oxathiolane 2,2-dioxide)(LG chem.社製)1.0eqを順に滴下した後、常温で1時間撹拌した。次に、また氷浴でさらに2,2,2-トリフルオロエタノール(2,2,2-trifluoroethanol、Aldrich社製)1.15eqおよびピリジン(pyridine、Aldrich社製)1.15eqを徐々に滴加した。次に、常温で1時間撹拌した後、水を用いて残留する塩を抽出し、有機層を減圧蒸留して、中間体である(2,2-dioxido-1,2-oxathiolan-5-yl)methyl(2,2,2-trifluroethyl)sulfiteを取得した。
【0105】
追加の分離工程なしに、前記中間体である(2,2-dioxido-1,2-oxathiolan-5-yl)methyl(2,2,2-trifluroethyl)sulfiteで満たされたフラスコを氷浴内に位置させた後、水とアセトニトリルを1:1の重量比で混合した混合溶媒に過ヨウ素酸ナトリウム(sodium periodate、Aldrich社製)1.3eqおよび塩化ルテニウム(ruthenium(III)chloride、Aldrich社製)0.01eqを投入し、氷浴で1時間撹拌した。
【0106】
次に、t-ブチルエーテル(t-butyl ether、Aldrich社製)を投入して析出された触媒をろ過した後、有機層を抽出し、メタ重亜硫酸ナトリウム(sodium metabisulfite、Aldrich社製)水溶液を用いてさらに触媒を除去した後、有機層を濃縮して得られた化合物をカラム精製して最終化合物である下記化学式aで表される化合物((2,2-dioxido-1,2-oxathiolan-5-yl)methyl(2,2,2-trifluroethyl)sulfate)を取得した(収率27%)。
【0107】
【化17】
【0108】
化学式aで表される化合物の合成可否をH NMRスペクトル(Bruker社製、AVANCE NEO、500MHz、Acetonitrile-d)により確認した。
【0109】
1H NMR (Acetonitrile-d): δ 5.0 (m, 1H), δ 4.9~4.5 (m, 2H), δ 4.8 (dd, 2H), δ 3.5 (m, 2H), δ 2.8 (m, 1H), δ 2.4 (m, 1H)
【0110】
合成例2.化学式bで表される化合物の製造
2,2,2-トリフルオロエタノール(2,2,2-trifluoroethanol、Aldrich社製)の代わりに2,2-ジフルオロエタノール(2,2-difluoroethanol、Aldrich社製)を使用する以外は、前記合成例1と同じ方法で反応を進めて、下記化学式bで表される化合物((2,2-dioxido-1,2-oxathiolan-5-yl)methyl(2,2-difluroethyl)sulfate)を取得した(収率29%)。
【0111】
【化18】
【0112】
化学式bで表される化合物の合成可否をH NMRスペクトル(Bruker社製、AVANCE NEO、500MHz、Acetonitrile-d)により確認した。
【0113】
1H NMR (Acetonitrile-d): δ 6.1 (t, 1H), δ 5.1 (m, 1H), δ 4.9~4.4 (m, 2H), δ 4.7 (m, 2H), δ 3.4 (m, 2H), δ 2.7 (m, 1H), δ 2.3 (m, 1H)
【0114】
合成例3.化学式cで表される化合物の製造
2,2,2-トリフルオロエタノール(2,2,2-trifluoroethanol、Aldrich社製)の代わりに2-ブチン-1-オル(2-butyn-1-ol、Aldrich社製)を使用する以外は、前記合成例1と同じ方法で反応を進めて、下記化学式cで表される化合物(but-2-yn-1-yl((2,2-dioxido-1,2-oxathiolan-5-yl)methyl)sulfate)を取得した(収率31%)。
【0115】
【化19】
【0116】
化学式cで表される化合物の合成可否をH NMRスペクトル(Bruker社製、AVANCE NEO、500MHz、Acetonitrile-d)により確認した。
【0117】
1H NMR (Acetonitrile-d): δ 4.9 (m, 1H), δ 4.6 (m, 2H), δ 4.4~4.1 (m, 2H), δ 3.4 (m, 2H), δ 2.6 (m, 1H), δ 2.4 (m, 1H), δ 1.8 (s, 3H)
【0118】
合成例4.化学式dで表される化合物の製造
2,2,2-トリフルオロエタノール(2,2,2-trifluoroethanol、Aldrich社製)の代わりにプロパルギルアルコール(propargyl alcohol、Aldrich社製)を使用する以外は、前記合成例1と同じ方法で反応を進めて、下記化学式dで表される化合物((2,2-dioxido-1,2-oxathiolan-5-yl)methyl prop-2-yn-1-yl sulfate)を取得した(収率31%)。
【0119】
【化20】
【0120】
化学式dで表される化合物の合成可否をH NMRスペクトル(Bruker社製、AVANCE NEO、500MHz、DMSO-d6)により確認した。
【0121】
1H NMR (DMSO-d6): δ 4.9 (m, 1H), δ 4.7 (dd, 2H), δ 4.3~4.1 (m, 2H), δ 3.7 (m, 1H), δ 3.5 (m, 2H), δ 2.6 (m, 1H), δ 2.3 (m, 1H)
【0122】
合成例5.化学式eで表される化合物の製造
2,2,2-トリフルオロエタノール(2,2,2-trifluoroethanol、Aldrich社製)の代わりに3-ヒドロキシプロパンニトリル(3-hydroxypropanenitrile、Aldrich社製)を使用する以外は、前記合成例1と同じ方法で反応を進めて、下記化学式eで表される化合物(2-cyanoethyl((2,2-dioxido-1,2-oxathiolan-5-yl)methyl)sulfate)を取得した(収率31%)。
【0123】
【化21】
【0124】
化学式eで表される化合物の合成可否をH NMRスペクトル(Bruker社製、AVANCE NEO、500MHz、DMSO-d6)により確認した。
【0125】
1H NMR (DMSO-d6): δ 5.1 (m, 1H), δ 4.7~4.5 (m, 4H), δ 3.5 (m, 2H), δ 3.1 (m, 2H), δ 2.9 (m, 1H), δ 2.6 (m, 1H)
【0126】
合成例6.化学式fで表される化合物の製造
氷浴(ice bath)内に丸底フラスコを位置させた後、前記丸底フラスコにジメチルカーボネート(dimethyl carbonate、Aldrich社製)を投入し、塩化チオニル(thionyl chloride、Aldrich社製)1.1eq、ピリジン(pyridine、Aldrich社製)1.15eqおよび5-(ヒドロキシメチル)-1,2-オキサチオラン-2,2-ジオキシド(5-(hydroxymethyl)-1,2-oxathiolane-2,2-dioxide)(LG Chem.社製)1.0eqを順に投入した後、常温で1時間撹拌した。次に、また氷浴にさらに3-ヒドロキシプロパンニトリル(3-hydroxypropanenitrile)1.15eqおよびピリジン(pyridine、Aldrich社製)1.15eqを滴加した。次に、常温で1時間撹拌した後、水を用いて残留する塩を抽出し、有機層を減圧蒸留した後、下記化学式fで表される化合物(2-cyanoethyl(2,2-dioxido-1,2-oxathiolan-5-yl)methyl)sulfite)を取得した(収率35%)。
【0127】
【化22】
【0128】
化学式fで表される化合物の合成可否をH NMRスペクトル(Bruker社製、AVANCE NEO、500MHz、DMSO-d6)により確認した。
【0129】
1H NMR (DMSO-d6): δ 5.0 (m, 1H), δ 4.4~4.2 (m, 4H), δ 3.4 (m, 2H), δ 3.0 (m, 2H), δ 2.8 (m, 1H), δ 2.6 (m, 1H)
【0130】
実施例および比較例
実施例1
(非水電解液の製造)
1.0M LiPFが溶解された有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7の体積比)99gに前記化学式aで表される化合物1gを添加して非水電解液を製造した(下記表1参照)。
【0131】
(二次電池の製造)
正極活物質(LiNi0.8Co0.1Mn0.1):導電材(カーボンブラック):バインダー(ポリビニリデンフルオライド)を97.5:1:1.5の重量比でN-メチル-2-ピロリドン(NMP)に添加して正極用スラリー(固形分60重量%)を製造した。前記正極用スラリーを厚さ15μmの正極集電体(Al薄膜)の一面に塗布し、乾燥およびロールプレス(roll press)を実施して正極を製造した。
【0132】
負極活物質(グラファイト):導電材(カーボンブラック):バインダー(ポリビニリデンフルオライド)を96:0.5:3.5の重量比で蒸留水に添加して負極用スラリー(固形分50重量%)を製造した。前記負極用スラリーを厚さ8μmの正極集電体(Cu薄膜)の一面に塗布し、乾燥およびロールプレス(roll press)を実施して負極を製造した。
【0133】
ドライルームで前記正極と前記負極との間に多孔性ポリプロピレンセパレータを介在して電極組立体を製造した後、これを電池ケースに入れて前記非水電解液を注液し、密封して、パウチ型リチウム二次電池(電池容量:6.24mAh)を製造した。
【0134】
実施例2
非水電解液として合成例1で製造した化学式aで表される化合物の代わりに合成例2で製造した化学式bで表される化合物を添加して製造した非水電解液を使用した以外は、前記実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0135】
実施例3
1.0M LiPFが溶解された有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7の体積比)99.5gに前記化学式aで表される化合物0.5gを添加して製造した非水電解液を使用した以外は、前記実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0136】
実施例4
非水電解液として合成例1で製造した化学式aで表される化合物の代わりに合成例3で製造した化学式cで表される化合物を添加して製造した非水電解液を使用した以外は、前記実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0137】
実施例5
非水電解液として合成例1で製造した化学式aで表される化合物の代わりに合成例4で製造した化学式dで表される化合物を添加して製造した非水電解液を使用した以外は、前記実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0138】
実施例6
非水電解液として合成例1で製造した化学式aで表される化合物の代わりに合成例5で製造した化学式eで表される化合物を添加して製造した非水電解液を使用した以外は、前記実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0139】
実施例7
非水電解液として合成例1で製造した化学式aで表される化合物の代わりに合成例6で製造した化学式fで表される化合物を添加して製造した非水電解液を使用した以外は、前記実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0140】
比較例1
実施例1の非水電解液の代わりに1.0M LiPFが溶解された有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7の体積比)を非水電解液として使用した以外は、前記実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0141】
比較例2
非水電解液として1.0M LiPFが溶解された有機溶媒(エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7の体積比)99gに1,3-プロパンスルトン(1,3-Propane sultone)1gを添加して製造した非水電解液を使用した以外は、前記実施例1と同じ方法でリチウム二次電池を製造した(下記表1参照)。
【0142】
【表1】
【0143】
実験例
実験例1:高温(60℃)貯蔵特性の評価
高温貯蔵後の体積変化率と抵抗増加率を下記のような方法で算出した。
【0144】
(1)高温貯蔵後の体積変化率(%)
前記実施例1~7と比較例1および2で製造したそれぞれの二次電池を0.1Cの定電流(CC)で活性化した。次いで、25℃でPESC05-0.5充放電器(メーカー名:(株)PNEソリューション、5V、500mA)を使用して定電流-定電圧(CC-CV)充電条件で、4.2Vまで0.33Cの定電流で充電した後、0.05C current cutを行い、CC条件で2.5Vまで0.33Cで放電した。前記充放電を1サイクルとし、2サイクルを行った。次いで、0.33C/4.2Vの定電流-定電圧で満充電し、SOC50%にSOCを調節した後、2.5Cで10秒間放電して、放電前の電圧と10秒間放電後の電圧の差により初期抵抗を算出した。その後、0.33Cの定電流で2.5Vになるまで放電した。次いで、デガスを行い、Two-pls社製のTWD-150DM装置を用いて、常温で水で満たされたボール(bowl)に前記初期充放電されたリチウム二次電池を入れて初期体積を測定した。その後、前記リチウム二次電池を0.33C/4.2Vの定電流-定電圧で満充電し、60℃で4週間貯蔵(SOC100%)した後、Two-pls社製のTWD-150DM装置を用いて、常温で水で満たされたボール(bowl)にリチウム二次電池を入れて高温貯蔵後の体積を測定した。
【0145】
前記のように測定された初期体積と高温貯蔵後の体積を下記式(1)に代入して高温貯蔵後の体積変化率(%)を計算し、その結果を下記表2に示した。
【0146】
式(1):高温貯蔵後の体積変化率(%)={(高温貯蔵後の体積-初期体積)/(初期体積)}×100
【0147】
(2)高温貯蔵後の抵抗増加率(%)
前記実施例1~7と比較例1および2で製造したそれぞれの二次電池を0.1Cの定電流(CC)で活性化した。次いで、25℃でPESC05-0.5充放電器(メーカー名:(株)PNEソリューション、5V、500mA)を使用して定電流-定電圧(CC-CV)充電条件で4.2Vまで0.33Cの定電流で充電した後、0.05C current cutを行い、CC条件で2.5Vまで0.33Cで放電した。前記充放電を1サイクルとし、2サイクルを行った。次いで、0.33C/4.2Vの定電流-定電圧で満充電し、SOC50%にSOCを調節した後、2.5Cで10秒間放電して、放電前の電圧と10秒間放電後の電圧の差により初期抵抗を算出した。その後、0.33Cの定電流で2.5Vになるまで放電した。次いで、デガスを行い、4.2Vで充電し、60℃で4週間貯蔵(SOC100%)した後、SOC50%で2.5Cで10秒間また放電しながら、高温貯蔵後の抵抗を算出した。
【0148】
前記のように算出した初期抵抗と高温貯蔵後の抵抗を下記式(2)に代入して高温貯蔵後の抵抗増加率(%)を計算し、その結果を下記表2に示した。
【0149】
式(2):高温貯蔵後の抵抗増加率(%)={(高温貯蔵後の抵抗-初期抵抗)/(初期抵抗)}×100
【0150】
【表2】
【0151】
実験例2:サイクル特性の評価
前記実施例1~7と比較例1および2で製造したそれぞれの二次電池を0.1Cの定電流(CC)で活性化した。次いで、25℃でPESC05-0.5充放電器(メーカー名:(株)PNEソリューション、5V、500mA)を使用して定電流-定電圧(CC-CV)充電条件で4.2Vまで0.33Cの定電流で充電した後、0.05C current cutを行い、CC条件で2.5Vまで0.33Cで放電した。前記充放電を1サイクルとし、2サイクルを行った。次いで、0.33C/4.2V定電流-定電圧で満充電し、SOC50%にSOCを調節した後、2.5Cで10秒間放電して、放電の前電圧と10秒間放電後の電圧の差により初期抵抗を算出した。その後、0.33Cの定電流で2.5Vになるまで放電した。
【0152】
次いで、デガスを行い、45℃でCC-CV充電条件で4.2Vまで0.33Cの定電流で充電した後、0.05C current cutを行い、20分間放置した後、CC条件で2.5Vまで0.33Cで放電した。前記充放電を1サイクルとし、100サイクルを行った。ここで、最初のサイクル後の放電容量(初期の放電容量)と100回目のサイクル後の放電容量をPESC05-0.5充放電器(メーカー名:(株)PNEソリューション、5V、500mA)を使用して測定し、下記式(3)を用いて100サイクル後の放電容量維持率を算出した。その結果を下記表3に示した。
【0153】
式(3):100サイクル後の放電容量維持率(%)={(100サイクル後の放電容量)/初期の放電容量}×100
【0154】
一方、100サイクルを実施した後、SOC50%で2.5Cで10秒間放電して、放電の前電圧と10秒間放電後の電圧の差により100サイクル後の抵抗を算出した。前記のように算出した初期抵抗と100サイクル後の抵抗を下記式(4)に代入して100サイクル後の抵抗増加率(%)を計算し、その結果を下記表3に示した。
【0155】
式(4):100サイクル後の抵抗増加率(%)={(100サイクル後の抵抗)/初期抵抗}×100
【0156】
【表3】
【0157】
前記表2を参照すると、実施例1~7で製造された二次電池は、比較例1および2で製造された二次電池に比べて高温貯蔵時の体積変化率と抵抗増加率が著しく低いことを確認することができる。また、前記表3を参照すると、実施例1~7で製造された二次電池は、100サイクル後の放電容量維持率が高く、抵抗増加率が低いことから、寿命特性が、比較例1および2で製造された二次電池に比べて著しく優れていることを確認することができる。このような特性は、実施例1~7の非水電解液に含まれるスルトン系化合物(本発明の化学式Iで表される化合物)が安定度が高く、抵抗が低いSEI層を効率的に生成するためである。
【0158】
したがって、本発明のように、化学式Iで表される化合物が添加剤として非水電解液に含まれる場合、非水電解液の可燃性を低減することができ、抵抗が低く強固なSEI層が形成されて、高温安定性と寿命特性に優れたリチウム二次電池を提供することができることが分かる。