(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】硬化性組成物、およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 75/045 20160101AFI20240909BHJP
【FI】
C08G75/045
(21)【出願番号】P 2019060238
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-02-09
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】和泉 伸一郎
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-067333(JP,A)
【文献】特開平11-095233(JP,A)
【文献】特開2002-155141(JP,A)
【文献】特開2016-117832(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0007362(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0145247(US,A1)
【文献】国際公開第2019/224699(WO,A1)
【文献】国際公開第2009/132070(WO,A2)
【文献】国際公開第2009/010423(WO,A1)
【文献】特開平03-210364(JP,A)
【文献】国際公開第2017/170050(WO,A1)
【文献】特表平02-502834(JP,A)
【文献】特開2009-270068(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018102916(DE,A1)
【文献】国際公開第2012/126695(WO,A1)
【文献】JOURNAL OF APPLIED POLYMER SCIENCE,2016年,Vol.133,No.42,p.44107(1 of 12)~p.44107(12 of 12)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 2/00- 85/02
C08F 2/00-299/06
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウレタン(メタ)アクリレート、
(B)チオカルボン酸誘導体、
(C)トリアリルイソシアヌレート、および
(D)光重合開始剤、
を含む硬化性組成物であって、
前記(B)チオカルボン酸誘導体が
トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレートであり、
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して前記(B)チオカルボン酸誘導体を50質量部以上、
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して前記(C)トリアリルイソシアヌレートを40質量部以上含み、
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレートの使用量は、硬化性組成物の総質量に対して、30~40質量%であり、
前記(B)チオカルボン酸誘導体の使用量は、硬化性組成物の総質量に対して、25~40質量%であることを特徴とする硬化性組成物。
【請求項2】
前記(A)ウレタン(メタ)アクリレート、前記(B)チオカルボン酸誘導体、及び前記(C)トリアリルイソシアヌレートの合計質量が、硬化性組成物の全体の質量の95%以上である請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の硬化性組成物から得られる透明硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物、例えば透明のディスプレイや接着剤の製造に用いられる硬化性組成物、およびその硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の画像形成技術の進歩により、液晶ディスプレイやタッチパネル等の電子機器における画像品質の向上が目覚ましい。このような高品質の画像の再現性を向上させるために、画像表示装置のスクリーン等についても品質の向上が望まれている。すなわち、画像表示装置で高画質の動画や静止画像を高精度で再現可能とするために、ディスプレイやその接着剤等が優れた透明性を有すること、すなわち無色透明であることが必須である。
【0003】
このような要求に合致する高い透明性を有する樹脂の硬化物を得るために、光硬化成分と所定の無機粒子を用いた活性エネルギー線硬化性樹脂組成物が提案されている(特許文献1)。同文献では透明性の指標としてヘーズ(曇り度)を制御し、これにより優れた透明性の高い硬化性組成物が得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
画像表示装置等のスクリーン等において用いられる硬化性組成物の透明硬化物は、さらに画像を明るく鮮明に視認可能とすべき要求が存在する。しかしながら、特許文献1に示されるような従来の樹脂組成物では、所定の透明性は得られているものの、光線透過率を検討しておらず、画像の鮮明な視認性が必ずしも十分とはいえない。
また、電子機器の製造にあっては、硬化性組成物が、電子機器の本体等(基板等)に対して良好に密着することが要求される。このような状況下、従来の樹脂組成物では、所定の使用条件の品質の維持や基板との密着性について未だ改良の余地がある。
【0006】
本発明は、基板に対する密着性に優れるとともに、高い全光線透過率および良好に抑制された曇り度を有する硬化物を形成することが可能な硬化性組成物、およびその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は上記を鑑み、鋭意検討した結果、(A)ウレタン(メタ)アクリレート、(B)チオカルボン酸誘導体、(C)トリアリルイソシアヌレート、および(D)光重合開始剤、を含む硬化性組成物であって、(A)ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して(B)チオカルボン酸誘導体を50質量部以上、(A)ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して(C)トリアリルイソシアヌレートを40質量部以上含むことを特徴とする硬化性組成物により上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の硬化性組成物では、(A)ウレタン(メタ)アクリレート、(B)チオカルボン酸誘導体、(C)トリアリルイソシアヌレートの合計質量が、硬化性組成物の全体の質量の95%以上であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の課題は、本発明の硬化性組成物から得られる透明硬化物により解決される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の硬化性組成物は、基板との密着性が高い。さらに本発明の硬化性組成物を硬化させることにより、曇り度が抑制され、且つ高い全光線透過率を有する透明性の高い硬化物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の成型品の作製に用いる凹部を備える版体を表す模式図である。
【
図2】版体の凹部に本発明の光硬化性組成物を充填した状態を表す模式図である。
【
図3】版体に基材を被せ、その上方に位置する光源から紫外線を照射する工程を表す模式図である。
【
図4】版体から基材と成型品を離型した状態を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の硬化性組成物は、(A)ウレタン(メタ)アクリレート、 (B)チオカルボン酸誘導体、(C)トリアリルイソシアヌレート、および(D)光重合開始剤、を含む硬化性組成物であって、(A)ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して(B)チオカルボン酸誘導体を40質量部以上、(A)ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して(C)トリアリルイソシアヌレートを50質量部以上含むことを特徴とする。
本発明の硬化性組成物は基板に対する密着性に優れ、その硬化物は高い光線透過率とを有し、曇り度(ヘーズ)が抑制されているため、これにより優れた透明性および透過性を有する。
【0013】
本発明では透明性の指標としてヘーズ(Haze)を用いる。
ヘーズとは曇りの度合のことで、ガラス、プラスチックや液体などの透明材料の透明の程度を表わすものであり、試験片の散乱光線透過率を全光線透過率で割った値の100分率で表される。したがって、値が小さいほど、散乱光の透過が少なく、材料に曇りがないことを意味する。
また、本発明では、透過性の指標として透過率(全光線透過率)を用いる。透過率とは、測定対象となる材料に入射する光量に対する透過光量の割合であり、材料表面における反射や材料内部における吸収も考慮した値として得られる。
本発明において、ヘーズはJIS-K-7136:2000に準拠して測定し、「透明」ないし「透明性が高い」とはヘーズが5%未満であることを意味する。好ましくはヘーズが1%未満である。
更に、本発明において、全光線透過率はJIS K7361-1の方法により測定し、透過率が高い(透過性に優れる)とは、透過率が99.0%以上であることを意味する。
以下、各成分について詳述する。
【0014】
[(A)ウレタン(メタ)アクリレート]
本発明の硬化性組成物は(A)ウレタン(メタ)アクリレートを含む。
なお、本明細書において(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを総称する用語として用いられ、アクリレートもしくはメタクリレートのいずれか一方または双方を含む。他の類似の表現についても同様である。
ウレタン(メタ)アクリレート樹脂は、例えば、ポリオールとポリイソシアネートによりウレタンプレポリマーを合成し、そこに、水酸基を有する(メタ)アクリレートを付加させることにより製造することができる。
ポリオールとしては、例えば、炭化水素ポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどの公知のポリオールを用いることができる。また、ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネートなどの公知のポリイソシアネートを用いることができる。
本発明の硬化性組成物は(A)ウレタン(メタ)アクリレートを含むことにより、硬化性組成物の基板に対する密着性が得られ、さらに硬化性組成物を硬化することにより得られる硬化塗膜の柔軟性が得られ、基板からの剥離の可能性が抑制される。(メタ)アクリロイル官能基数は、あまり大きいと架橋密度が高くなって硬化物の反りが大きくなり、強靱性も悪くなる傾向があることから、2官能、3官能のものが好ましい。
【0015】
本発明では、2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン樹脂が特に好ましく使用される。 さらに、二官能ウレタン(メタ)アクリレートは、その重量平均分子量が、1500~20000の範囲にあることが好ましい。二官能ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量が1500以上であることにより、二官能ウレタン(メタ)アクリレートの硬化収縮が低下し、硬化物の反りが生じにくい。一方、二官能ウレタン(メタ)アクリレートの重量平均分子量が20000以下とされることにより、粘度が良好とされて組成物調製における取り扱い性が向上する。
【0016】
二官能ウレタン(メタ)アクリレートの市販品の例には、新中村化学工業製U-108A、U-200AX、UA-112P、UA-5201、U-340AX、UA-511、UA-512、UA-311、UA-412A、UA-4200、UA-4400、UA-340P、UA-2235PE、UA-160TM、UA-6100、U-108、UA-4000、UA-122P、UA-5201、UA-512、UA-W2、UA-7000、U-2PPA、UA-NDP;サートマー製CN962、CN963、CN964、CN965、CN980、CN981、CN982、CN983、CN996、CN9001、CN9002、CN9788、CN9893、CN978、CN9782、CN9783;東亞合成化学工業製M-1100、M-1200、M-1210、M-1310、M-1600;根上工業製アートレジンUN-9000PEP、UN-9200A、UN-7600、UN-333、UN-1255、UN-6060PTM、UN-6060P、SH-500B;共栄社化学製AH-600、AT-600;ダイセル・オルネクス製エベクリル280、エベクリル284、エベクリル402、エベクリル8402、エベクリル9270などがある。
【0017】
三官能ウレタン(メタ)アクリレートの市販品の例には、ダイセル・オルネクス社製エベクリル4513、エベクリル4740、KRM8296、エベクリル8296、エベクリル8311を挙げることができる。
【0018】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートは上記のうちの1種類を用いても、複数種類の組み合わせとしてもよい。
【0019】
(A)ウレタン(メタ)アクリレートの使用量は、硬化性組成物の総質量に対して、30~40質量%、特に34~36%の範囲にあると好ましい。
上記の割合の(A)ウレタン(メタ)アクリレートを用いることより、硬化性組成物を施与する基板に対する密着性と、硬化塗膜の柔軟性が向上する。
【0020】
[(B)チオカルボン酸誘導体]
本発明の硬化性組成物は(B)チオカルボン酸誘導体を、(A)ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して50質量部以上、好ましくは60~120質量部の範囲で含む。
本発明では(B)チオカルボン酸誘導体を含むことにより、硬化塗膜の光線透過率を向上させることができる。(B)チオカルボン酸誘導体は、1種類を単独で使用しても2種類以上併用してもよい。
【0021】
(B)チオカルボン酸誘導体としては、
【化1】
で表される基を1~6個有する化合物を挙げることができる。
その具体例としては、β-メルカプトプロピオン酸、2-エチルヘキシル-3-メルカプトプロピオネート、n-オクチル-3-メルカプトプロピオネート、メトキシブチル-3-メルカプトプロピオネート、ステアリル-3-メルカプトプロピオネート、トリメチロールプロパン トリス(3-メルカプトプロピオネート)プロピオネート、ペンタエリスリトール テトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、テトラエチレングリコール ビス(3-メルカプトプロピオネート)等の直鎖または分岐状の化合物、及びトリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)- エチル]-イソシアヌレートなどの環状構造を有する化合物を含むメルカプトプロピオン酸誘導体を挙げることができ、本発明ではトリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)- エチル]-イソシアヌレートが特に好ましく用いられる。
【0022】
(B)チオカルボン酸誘導体の使用量は、硬化性組成物の総質量に対して、25~40質量%、特に30~38%の範囲にあると好ましい。
(B)チオカルボン酸誘導体の使用量を25質量%以上とすることにより、硬化塗膜の光線透過率が十分に得られ、40質量%以下とすることによりウレタン(メタ)アクリレート単独よりも、硬化性組成物の基板に対する密着性をより得ることができる。
【0023】
[(C)トリアリルイソシアヌレート]
本発明の硬化性組成物は、(C)トリアリルイソシアヌレートを、(A)ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して40質量部以上、好ましくは45~95質量部の範囲で含む。
一般に、トリアリルイソシアヌレートは、硬化性組成物に対して、10質量%程度の少量を添加することにより、架橋助剤としての作用および硬化性組成物における密着性付与剤としての作用を奏するものであるが、本発明では(C)トリアリルイソシアヌレートを40質量部以上用いることにより硬化塗膜のヘーズ値を低下させ、および光線透過率を高水準とし、耐熱性も付与することができる。
(C)トリアリルイソシアヌレートの使用量は、硬化性組成物の総質量に対して、20~40質量%、特に24~33%の範囲にあると好ましい。
(C)トリアリルイソシアヌレートの使用量を20質量%以上とすることにより、硬化塗膜の硬度を十分とすることが可能となり、40質量%以下とすることにより、透明性および光線透過率が特に良好となり、耐熱性も付与することができる。
【0024】
[(D)光重合開始剤]
本発明の硬化性組成物は(D)光重合開始剤を含む。使用可能な光重合開始剤の例としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテルなどのベンゾイン類;ベンゾインアルキルエーテル類;ベンゾフェノン、p-メチルベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、メチルベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ビスジエチルアミノベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;アセトフェノン、α- ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、N,N-ジメチルアミノアセトフェノン、などのアセトフェノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントンなどのチオキサントン類;アントラキノン、クロロアントラキノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、2-アミルアントラキノン、2-アミノアントラキノンなどのアントラキノン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタールなどのケタール類;エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)エチルベンゾエート、p-ジメチル安息香酸エチルエステルなどの安息香酸エステル類;フェニルジスルフィド2-ニトロフルオレン、ブチロイン、アニソインエチルエーテル、アゾビスイソブチロニトリル、テトラメチルチウラムジスルフィド等を挙げることができる。
【0025】
上記(D)光重合開始剤は、1種もしくは2種以上を組み合わせて用いることができるが、硬化物の柔軟性を損なわずに表面特性を向上させるためにα- ヒドロキシアセトフェノン系の光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0026】
(D)光重合開始剤は、(A)ウレタン(メタ)アクリレート100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.3~5質量部の割合で添加される
。
【0027】
上述の(A)ウレタン(メタ)アクリレート、前記(B)チオカルボン酸誘導体、及び前記(C)トリアリルイソシアヌレートの合計質量は、硬化性組成物の全体の質量の95%以上であることが好ましく、これにより、高い全光線透過率および良好に抑制された曇り度という特性を得ることができる。
【0028】
粘度調整には、公知慣用の希釈剤、特に反応性希釈剤を用いることができる。特に分子中に1個のエチレン性不飽和基を有する化合物である単官能(メタ)アクリレート化合物が、希釈効果が高く好ましい。
【0029】
[その他の成分]
本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、前記成分以外の他の成分を添加することができる。添加剤としては、光硬化性モノマー、シリコーン系、フッ素系の消泡剤、レベリング剤、公知慣用の熱重合禁止剤、紫外線吸収剤、シランカップリング剤、可塑剤、発泡剤、難燃剤、帯電防止剤、老化防止剤、抗菌・防黴剤等を配合することができる。
【0030】
本発明の硬化性組成物は、所望の特性を損なわない範囲であれば、熱硬化性成分を含んでもよいが、一般には熱硬化成分は用いない。その結果、より優れた透明性および光線透過性を有し、経時変化の少ない硬化物とすることができる。
【0031】
本発明の硬化性組成物は、基板との密着性が高いため、基板との結合が容易かつ確実となり、結合対象とされる機器や部品の耐久性も向上させることができる。
【0032】
[硬化性組成物の硬化方法]
上述の成分から構成される本発明の硬化性組成物は、光硬化することにより硬化物とすることができる。硬化に際しては、硬化性組成物を石英ガラス等の基材などに塗工後、活性エネルギー線を照射し、硬化するものである。なお、本発明の硬化性組成物は、1~50dPa・sの粘度を有することが好ましい。
【0033】
塗工方法は、ディップコート法、フローコート法、バーコーター法、スクリーン印刷法、の任意の方法を適用することができる。また、活性エネルギー線の照射光源としては、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプなどが適当である。その他、UV-LED、レーザー光線、電子線なども活性エネルギー線として利用できる。
【0034】
[硬化性組成物の硬化・成形方法]
ここで、表面に凹部を有する版体を用いて、本発明の硬化性組成物を凹部に充填し、充填した硬化性組成物を紫外線により硬化させ、その硬化物を凹部から取り出すことにより成型品を得る方法について図面を用いて例示する。
【0035】
図1は、表面に凹部(2)を有した版体(1)を示している。一般的には、ステンレスなどの金属製のものが用いられる。
【0036】
図2は、この版体に本発明の硬化性組成物を充填した状態(3)を示している。一般的には、ドクターナイフなどを用いて硬化性組成物を版体の凹部へ充填する。
【0037】
図3は、その上部から基材(4)を被せ、さらにその上部の光源(5)から紫外線を照射して本発明の硬化性組成物を硬化させる工程を示している。一般的に、基材(4)には紫外線を透過する透明なポリエチレンテレフタレートやポリカーボネート製のフィルムが用いられる。
【0038】
図4は、硬化物を版体(1)から離型し硬化成型体(6)を得た状態を示している。
図1から
図4の一連の工程は、それぞれに専用の公知の装置を用いることで、連続的に成型品を製造することができる。
【0039】
このように本発明の硬化性組成物を予め成型して用いることができる。凹部に充填したままの光硬化による成型方法では、酸素による硬化阻害がないため、厚みを増すことができ、最厚部で厚さ5mmとすることも可能である。
なお、本発明の硬化性組成物は、タッチパネル等などの透明スクリーン用、並びにソルダーレジスト、層間絶縁材、およびカバーレイなどの絶縁材料として適用することもできる。また、本発明の硬化性組成物は、ソルダーダムとして適用してもよい。更に、本発明の組成物は良好な密着性を有することから、接着剤、特に透明スクリーン等に用いられる無色透明の接着剤として用いることもできる。
【実施例】
【0040】
以下、実施例、比較例により、本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、下記実施例に限定されるものではなく、以下に記載の「部」及び「%」とは、特に断りのない限り全て質量基準とする。
【0041】
[実施例1~8、10、参考例9、および比較例1~3]
下記表1記載の各成分を、それぞれ表1の使用成分について記載した部数で、自転・公転式ミキサーにより混錬し、各硬化性組成物を調製した。
得られた各硬化性組成物を以下の評価を行った。
【0042】
1.印刷性評価
実施例1~8、10、参考例9、および比較例1~3の硬化性組成物を、ポリエステル(テトロン(登録商標))製の300メッシュの刷版を具備したスクリーン印刷装置により、硬化後の膜厚10μmとなるように石英ガラスの基板上に全面印刷した。
印刷後5分経過後の塗膜の表面状態を目視にて観察し、以下の基準で評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
〇 硬化性組成物により基板全面が滑らか、かつ均一に塗工されている
× 硬化性組成物の表面に気泡の破裂の痕が見られ、塗膜表面が不均一
【0044】
2.指触乾燥性評価(タック評価)
実施例1~8、10、参考例9、および比較例1~3の硬化性組成物を、ポリエステル(テトロン(登録商標))製の300メッシュの刷版を具備したスクリーン印刷装置により、石英ガラスの基板上に全面印刷した。得られた塗膜を、メタルハライドランプを用いて1000mJ/cm2の光量で露光し、塗膜を硬化させた。これにより得られた塗膜(膜厚10μm)を評価用の硬化膜として用い、下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0045】
◎ 塗膜を指で触っても塗膜表面に指紋が付かず、指に塗膜が付着することもない
〇 塗膜を指で触ると塗膜表面に指紋がつくが、指に塗膜が付着はしない
× 塗膜を指で触ると塗膜表面に指紋が付き、更に指に塗膜が付着した
【0046】
3.鉛筆硬度評価
上記2.指触乾燥性評価で用いた評価用の硬化膜と同様の効果膜を作製し、その表面硬度を鉛筆硬度試験器( (株)東洋精機製作所 製 )を用いて測定した。この試験では、各試験片に、芯の先が平らになるように研がれた3H、および4Hの鉛筆を、約45°の角度、1kg荷重にて押圧した状態で、0.5~1mm/sの速度で少なくとも7mm移動させることにより距離塗膜の剥がれの状態を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0047】
◎ 4Hの鉛筆で塗膜の剥がれなし
〇 3Hの鉛筆で塗膜の剥がれなし
× 3Hの鉛筆で塗膜が剥がれる
【0048】
4.密着性評価
上記3.鉛筆硬度評価に用いたものと同様の硬化塗膜(膜厚10μm)の密着性を、JIS K 5600-5-6に準拠し、クロスカットガイドを用いて10mmx10mm碁盤目状にクロスカットを入れて100x100個の碁盤目を形成することにより、クロスカットテープピールリング試験を実施した。碁盤目の残り個数を、以下の基準で目視観察した。結果を表1に示す。
【0049】
〇 塗膜の碁盤目に剥がれが全くない
× 塗膜の碁盤目の1個以上に剥がれが観察された
【0050】
5.全光線透過率評価
上記3.鉛筆硬度評価に用いたものと同様の硬化塗膜(膜厚10μm)について、全光線透過率透過率を、JIS K 7361‐1に準拠し、紫外可視分光光度計V-670EX(日本分光社製)を用いることにより測定した。
この評価では評価に用いた波長300~780nmの全域にわたる入射光に対する透過光の割合を示す。測定結果を表1に記載した。
【0051】
6.ヘーズ(曇価)評価
上記3.鉛筆硬度評価に用いたものと同様の硬化塗膜(膜厚10μm)について、JIS K 7136に準拠して、紫外可視分光光度計V-670EX(日本分光社製)を用いることにより測定した。なお、JIS K 7136に記載されているとおり、ヘーズとは試験片の散乱光線透過率を全光線透過率で割った値の100分率で表される値であるところ、全光線透過率の値はJIS K 7361-1に準拠して求めた。測定結果を表1に記載したる。
【0052】
7.耐熱性試験(加熱処理後の全光線透過率およびヘーズ評価)
7-1.加熱処理試料の作製
上記3.鉛筆硬度評価に用いたものと同様の硬化塗膜を、温度100℃、の熱風循環式乾燥炉に2時間保管することにより、加熱処理試料を作製した。
7-2.加熱処理試料の全光線透過率評価およびヘーズ評価
これにより得られた加熱処理試料についての全光線透過率透過及びヘーズ値を、上記の5.全光線透過率評価および6.ヘーズ(曇価)評価と同様の測定方法により求めた。測定結果を表1に記載する。
【0053】
8.耐光性試験(露光処理後の全光線透過率およびヘーズ評価)
8-1.露光処理試料の作製
上記3.鉛筆硬度評価に用いたものと同様の硬化塗膜に対し、メタルハライドランプにより20J/cm2の光量の全面露光を行うことにより、露光処理試料を作製した。
8-2.露光処理試料の全光線透過率評価およびヘーズ評価
これにより得られた露光処理試料についての全光線透過率透過及びヘーズ値を、上記の5.全光線透過率評価および6.ヘーズ(曇価)評価と同様の測定方法により求めた。測定結果を表1に記載する。
【0054】
【0055】
表中に記載した材料の詳細を以下に示す。
エベクリル8402:2官能ウレタンアクリレート、光硬化性ウレタン樹脂、ダイセル・オルネクス株式会社製
TAIC:トリアリルイソシアヌレート、三菱ケミカル株式会社製
TEMPIC:トリス‐[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、SC有機化学株式会社製
Omnirad(登録商標)184:1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、IGM Resins社製
KBM-5103:3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製
ライトエステルP-1M:モノ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)ホスフェート、共栄社化学株式会社製
フローレン AC-2300C:オレフィンポリマー(消泡剤)、共栄社化学株式会社製
ポリフローKL-700:シリコーン含有ポリマー(基材湿潤剤)、共栄社化学株式会社製
【0056】
以上より、本発明の硬化性組成物は 印刷性に優れ、その硬化物は指触乾燥性、鉛筆硬度、密着性のいずれの特性においても優れた物理的特性を有することがわかる。
更に、本発明の硬化物は、光線透過率が初期値、並びに耐熱試験暴露後および耐光性試験暴露後のいずれも99.0%以上と高く、ヘーズ値も、初期値、並びに耐熱試験暴露後および耐光性試験暴露後のいずれにおいても1.5%以下と抑制されていることから、特に液晶ディスプレイやタッチパネル等の透明保護材料として、初期の無色透明の美しい状態が長期の過酷な使用にも耐性を有することがわかる。
【0057】
本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・版体
2・・・凹部
3・・・光硬化性組成物
4・・・基材
5・・・光源
6・・・成型品