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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】偏光板
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240909BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20240909BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20240909BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20240909BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
G02F1/13363
B32B7/023
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019074184
(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公開番号】P2019194685
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】P 2018084486
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(74)【代理人】
【識別番号】100214215
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼梨 航
(72)【発明者】
【氏名】市原 正寛
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200731(JP,A)
【文献】特開2013-178321(JP,A)
【文献】国際公開第2007/148650(WO,A1)
【文献】特開2012-032507(JP,A)
【文献】米国特許第05412505(US,A)
【文献】国際公開第2009/072495(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面及び第2の面を有する偏光子と、前記偏光子の前記第1の面上に配置される第1の基材とを有する偏光板であって、
前記偏光子の厚みが15μm以下であり、
前記偏光子は、配向層と偏光層を含み、
前記偏光層は、液晶化合物の硬化物及び二色性色素を含み、
前記液晶化合物の硬化物が重合性液晶化合物を重合硬化させた硬化物であり、
前記硬化物中に、前記二色性色素が分散して配向しており、
前記第1の基材がアクリル系樹脂及び環状オレフィン系樹脂の少なくとも一つの樹脂を含み
前記偏光板が少なくとも1つの湾曲部を有し、
前記湾曲部の曲率半径が30mm~150mmである偏光板。
【請求項2】
前記第1の基材の厚さが、40μm~120μmである請求項1に記載の偏光板。
【請求項3】
さらに、前記偏光子の前記第2の面上に第2の基材を有する請求項1又は2に記載の偏光板。
【請求項4】
前記第2の基材が、アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂及びトリアセチルセルロース樹脂から選ばれる少なくとも一つを含む請求項に記載の偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏光板に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板は、特定の配向構造を有する光学素子である。例えば、特許文献1は、ポリビニルアルコール(PVA)あるいはその誘導体からなるフィルムに代表される高分子フィルムにヨウ素や二色性色素を吸着し、このフィルムを一軸に延伸配向させた偏光フィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-047498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏光板は、その用途に応じて加熱成型する場合がある。例えば、サングラス等の曲面を有するレンズに偏光板を貼合する場合、偏光板をレンズに沿って貼り合わせながら加熱成型し、偏光板に曲面に応じた形状を付与する。しかし、偏光板を加熱成型する場合には、次のような課題が生じることがある。
【0005】
従来の延伸PVAを用いた偏光板の偏光子の厚さは20μm~30μmであり、このような偏光板を加熱成型する場合、延伸PVAの収縮力が大きく、延伸方向に熱収縮してしまったり、延伸方向に沿って裂けてしまったりすることがある。このような現象を抑制するために、延伸PVAを用いた偏光板では、偏光板を樹脂等の基板に貼り合わせたり、偏光板の周辺を硬化性樹脂で固定したりする必要がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、熱成型による収縮が抑制され、薄膜化された偏光板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]第1の面及び第2の面を有する偏光子と、前記偏光子の前記第1の面上に配置される第1の基材とを有する偏光板であって、前記偏光子の厚みが15μm以下であり、前記第1の基材が熱可塑性樹脂基材であり、前記偏光板が少なくとも1つの湾曲部を有する偏光板。
[2]前記湾曲部の曲率半径が30mm~150mmである[1]に記載の偏光板。
[3]前記第1の基材が、アクリル系樹脂及び環状オレフィン系樹脂の少なくとも一つの樹脂を含む[1]又は[2]に記載の偏光板。
[4]前記偏光子は、偏光層を含み、前記偏光層は、液晶化合物の硬化物及び二色性色素を含み、前記偏光層中に、二色性色素が分散して配向している[1]~[3]のいずれか一つに記載の偏光板。
[5]前記第1の基材の厚さが、40μm~120μmである[1]~[4]のいずれか一つに記載の偏光板。
[6]さらに、前記偏光子の前記第2の面上に第2の基材を有する[1]~[5]のいずれか一つに記載の偏光板。
[7]前記第2の基材が、アクリル系樹脂、環状オレフィン系樹脂及びトリアセチルセルロース樹脂から選ばれる少なくとも一つを含む[6]に記載の偏光板。
[8]前記偏光板が、表示面に曲面を有する表示装置の前記表示面に貼合して用いられ、前記湾曲部が、前記曲面と合致している[1]~[7]のいずれか一つに記載の偏光板。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、熱成型による収縮が抑制され、薄膜化された偏光板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態における偏光板の模式断面図である。
図2】本発明の一実施形態における偏光板の模式断面図である。
図3】本発明の一実施形態における円偏光板の模式断面図である。
図4】本発明の一実施形態における円偏光板の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態における偏光板は、第1の面及び第2の面を有する偏光子と、前記偏光子の前記第1の面上に配置される第1の基材とを有する偏光板であって、前記偏光子の厚みが15μm以下であり、第1の基材が熱硬化性樹脂基材であり、前記偏光板が少なくとも1つの湾曲部を有する。
【0011】
以下、本発明の一態様として、偏光層が液晶化合物の硬化物を含む場合と、PVAを含む場合についてそれぞれ説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る偏光板1の模式断面図である。偏光板1は、偏光子11と、第1の基材12とを含んでいる。偏光子11は、第1の面31及び第2の面32を有している。第1の基材12は、第1の面31上に位置する。偏光子11は、偏光層21と、配向層22とを含んでいる。偏光層21は、液晶化合物の硬化物101と、二色性色素102とを含んでいる。二色性色素102は、液晶化合物の硬化物101中に分散している。
配向層22は、配向規制力を示す。配向層22上に硬化前の液晶化合物を配置させることにより、硬化前の液晶化合物が一方向に配向する。その後、液晶化合物を硬化させることにより、一方向に配向している液晶化合物の硬化物101が得られる。二色性色素102は、硬化前の液晶化合物中に分散した状態で配向層22上に配置されるため、液晶化合物の硬化物101の配向に従い、二色性色素102も液晶化合物の硬化物101の配向方向に配向する。
【0013】
偏光板1は、少なくとも一つの湾曲部13を有している。湾曲部13の形状は、偏光板1が貼合される対象物の形状に依存する。本実施形態において、湾曲部13は、複数の曲率半径を有する湾曲部であってよい。本実施形態における曲率半径は、湾曲部13における仮想の中心に最も近い面にて定義される。例えば、図1の偏光板1における曲率半径は、第2の面32の曲率半径と定義される。曲率半径は、湾曲部13の弧長、弦長及び矢高とから、以下の式を利用して求められる値である。
弧長(L)=半径(r)*中心角(θ) (1)
弦長(d)=2*r*sin(θ/2) (2)
矢高(h)=r*{1-cos(θ/2)} (3)
【0014】
湾曲部13の曲率半径は、例えば30mm~150mmであってもよい。また、偏光板1は、湾曲部13を2つ以上有していてもよい。湾曲部13の形状は特に限定されないが、例えば延伸PVAを含む偏光板では追従できなかったような小さい曲率半径を有する湾曲部であってもよい。
【0015】
なお、厚さが20μm~30μmである延伸PVAを偏光層として用いた偏光板では、加熱成型の際に延伸PVAの延伸方向に熱収縮したり、延伸PVAの延伸方向に沿って裂けたりすることがある。このような現象を抑制するために、形状を維持するための第2の基材によって偏光板を保持する必要がある。
【0016】
偏光板1の偏光子として、液晶化合物の硬化物101と、二色性色素102を配向させたものを用いる場合には延伸が必要ない。そのため、従来の厚さが20μm~30μmである延伸PVAを含む偏光板と比較して、熱による収縮が小さい。このことから、従来の厚さが20μm~30μmである延伸PVAを用いた偏光板を加熱成型する際に、形状維持のために用いられていた第2の基材を薄くする、または省略することができる。偏光板1は、より複雑な形状を有する対象物にも貼合が可能であり、対象物のデザイン性の向上に寄与する。
【0017】
偏光板1の偏光子として、液晶化合物の硬化物101と、二色性色素102を配向させたものを用いる場合には、加熱成型の際の屈曲方向によって屈曲強度がばらつくということがない。よって、より複雑な形状を有する対象物にも貼合が可能であり、対象物のデザイン性の向上に寄与する。
【0018】
偏光板1の厚さは、25μm~200μmであり、好ましくは50μm~180μmであり、より好ましくは60μm~170μmである。偏光板1の厚さを60μm~170μmとすることにより、偏光板1が貼合される対象物の形状への追従性が良好となる。本実施形態における偏光板1の厚さは、偏光板1における任意の5点を接触式膜厚計にて測定し、その平均を算出した値と定義される。
【0019】
偏光子11の厚さは、1μm以上15μm以下であり、1μm以上10μm以下の範囲が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましく、1μm以上3μm以下であることがさらに好ましい。本実施形態における偏光子11の厚さは、偏光子11の任意の5点を、接触式膜厚計、干渉膜厚計、レーザー顕微鏡又は触針式膜厚計の測定し、その平均値を算出することで求めることができる。
【0020】
本実施形態の偏光板1は、液晶化合物の硬化物101と、二色性色素102が配向した偏光層21を有しているため、偏光板1を加熱しても偏光特性が変化しにくい。加熱前後の偏光板1の偏光特性の保持率は、例えば90%~100%であり、95%~100%であることが好ましい。本実施形態において、加熱前後の偏光板1の偏光特性の保持率は、二色性色素102の配向方向(吸収軸方向ともいう)の吸光度保持率(%)として算出することができる。
【0021】
具体的には、以下のように定義する。まず、偏光板1の23℃における吸収軸方向の吸光度A1を測定する(A1(23℃))。分光光度計(株式会社島津製作所製 UV-3150)に偏光板1を取り付けたフォルダーをセットした装置を使用して、ダブルビーム法により2nmステップ380~680nmの波長範囲でA1(23℃)を測定する。尚、偏光板1の表面反射による光損失分の寄与を除去するために、測定サンプルをセットした後に、光吸収の無い800nmでゼロ点補正してから測定を実施する。その後、85℃のオーブンに500時間投入し、取り出した後に再び上記の方法により吸光度測定を実施する。下記式(I)により吸光度保持率(%)を算出する。
吸光度保持率(%)=A1(85℃)/A1(23℃)×100 (I)
式中、A1(85℃)は、85℃のオーブン中で偏光板を500時間保持した後の吸収軸方向の吸光度、A1(23℃)は、耐熱性試験前に23℃で測定した際の吸収軸方向の吸光度を示す。
【0022】
偏光板1は、偏光子が15μm以下と薄いため、厚さ20μm~30μmの延伸PVAを偏光子として含む偏光板と比較して、加熱による収縮が小さい。さらに液晶化合物の硬化物101と、二色性色素102が配向した偏光層21を採用する場合は、加熱による収縮がより小さい。よって、加熱成型後も湾曲部13における任意の複数の点においてもその偏光特性のばらつきが少ない。
【0023】
図2は、本発明の一実施形態における偏光板の模式断面図である。偏光板1′は、図2に示すように、偏光子11の第2の面32上に第2の基材14が位置している。第2の基材14により、偏光子11を保護することができる。具体的には、偏光子11を直接手で触った場合、擦り傷などが発生し、その部分のみ偏光特性が低下することがある。第2の基材14は、このような偏光特性の低下を防止することができる。
【0024】
以下に、偏光板1に含まれる各要素について詳細に説明する。
1.偏光子
本実施形態に係る偏光子は、二色性色素と、液晶化合物の硬化物が配向している偏光層を有している。この偏光層は、二色性色素を含む組成物(以下、場合により「偏光子形成用組成物」という。)を用いて形成することができる。この実施形態において、液晶化合物が二色性色素の役割を兼ねてもよく、すなわち、液晶化合物が二色性を示してもよい。二色性を示す液晶化合物としては、例えばWO2011/024891や特開2018-120229号公報に記載されている化合物が例示される。
【0025】
1-1.二色性色素
二色性色素としては、波長380nm~800nmの範囲内に吸収を有するものを用いることができ、有機染料を用いることが好ましい。二色性色素として、例えば、アゾ化合物が挙げられる。
【0026】
アゾ化合物として、波長380nm~550nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(1)が挙げられる。二色性色素(1)としては、例えば、下記式(1)で表される化合物(以下、場合により「化合物(1)」という。)が挙げられる。化合物(1)のアゾベンゼン部位の幾何異性は、トランスが好ましい。
【0027】
【化1】
【0028】
式(1)におけるYは下記式(Y1)又は式(Y2)で表される基であり、好ましくは式(Y1)で表される基である。
【0029】
【化2】
【0030】
式(Y1)及び式(Y2)において、両端の直線は、結合手を表し、左側の結合手は、アゾ基を有するフェニレン基と結合しており、右側の結合手は、Rを有するフェニレン基と結合している。Lは、酸素原子又は-NR-であり、Rは、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基である。このアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基及びt-ブチル基が挙げられる。中でもLは、酸素原子又は-NH-であると好ましく、酸素原子であるとより好ましい。
【0031】
は、下記式(R-1)、式(R-2)又は式(R-3)で表される基であり、好ましくは式(R-2)及び式(R-3)で表される基である。式中の*は結合手を表す。
【0032】
【化3】
【0033】
式(R-2)で表される基におけるmaは、それぞれ独立に0~10の整数であることが好ましく、0~5の整数であることがより好ましい。2つのmaは、それぞれ同一でも異なっていてもよいが、同一であると好ましい。
【0034】
は、式(R-1)、式(R-2)、式(R-3)、式(R-4)、式(R-5)又は式(R-6)で表される基であり、式(R-2)、式(R-5)又は式(R-6)で表される基であると好ましく、式(R-6)で表される基であるとより好ましい。
【0035】
【化4】
【0036】
が式(R-1)、式(R-2)、式(R-3)、式(R-5)又は式(R-6)で表される基である場合、当該基に含まれるmbは、0~10の整数であると好ましく、0~5の整数であるとより好ましい。
【0037】
化合物(1)としては、例えば、以下の式(1-1)~式(1-8)で表される化合物が挙げられる。
【0038】
【化5】
【0039】
中でも、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)、式(1-5)、式(1-7)及び式(1-8)で表される化合物が好ましく、式(1-1)、式(1-2)、式(1-3)及び式(1-7)で表される化合物がより好ましい。
【0040】
ここで、化合物(1)の製造方法について説明する。化合物(1)は、例えば、式(1X)で表される化合物[化合物(1X)]と、式(1Y)で表される化合物[化合物(1Y)]とから、下記図式で示す反応により製造することができる。
【0041】
【化6】
【0042】
上記図式において、R、R及びYは上記と同じ意味であり、Re及びReは、互いに反応してYで表される基となる基である。Re及びReの組み合わせとしては、例えば、カルボキシ基及び水酸基の組み合わせ、カルボキシ基及びアミノ基(かかるアミノ基はRで置換されていてもよい)の組み合わせ、カルボニルハライド基及び水酸基の組み合わせ、カルボニルハライド基及びアミノ基(かかるアミノ基は、Rで置換されていてもよい)の組み合わせ、カルボニルオキシアルキル基及び水酸基の組み合わせ、カルボニルオキシアルキル基及びアミノ基(かかるアミノ基は、Rで置換されていてもよい)の組み合わせが挙げられる。また、ここでは、Rを有する化合物(1X)及びRを有する化合物(1Y)で説明するが、Rを適当な保護基で保護した化合物や、Rを適当な保護基で保護した化合物を互いに反応させて、その後、適当な脱保護反応を行うことで化合物(1)を製造することもできる。
【0043】
化合物(1X)及び化合物(1Y)を反応する際の反応条件は、用いる化合物(1X)及び化合物(1Y)の種類に応じて適宜、最適な公知の条件を選択できる。
【0044】
例えば、Reがカルボキシ基であり、Reが水酸基であり、Yが-C(=O)-O-である場合の反応条件としては、例えば、溶媒中、エステル化縮合剤の存在下で縮合する条件が挙げられる。溶媒としては、クロロホルム等の、化合物(1X)及び化合物(1Y)をともに可溶な溶媒が挙げられる。エステル化縮合剤としては、例えばジイソプロピルカルボジイミド(IPC)が挙げられる。ここでは、さらにジメチルアミノピリジン(DMAP)等の塩基を併用するが好ましい。反応温度は、化合物(1X)及び化合物(1Y)の種類に応じて選択されるが、例えば-15~70℃の範囲が挙げられ、好ましくは0~40℃の範囲である。反応時間は、例えば15分~48時間の範囲が挙げられる。
【0045】
反応時間は、反応途中の反応混合物を適宜サンプリングし、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーなどの公知の分析手段により、化合物(1X)及び化合物(1Y)の消失の度合いや、化合物(1)の生成の度合いを確認して、定めることもできる。
【0046】
反応後の反応混合物から、再結晶、再沈殿、抽出及び各種クロマトグラフィーといった公知の方法により、或いはこれらの操作を組み合わせることにより、化合物(1)を取り出すことができる。
【0047】
アゾ化合物として、波長550nm~700nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(2)を用いることができる。
【0048】
二色性色素(2)は、波長550nm~600nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(2-1)及び/又は波長600nm~700nmの範囲に吸収極大を有する二色性色素(2-2)を含んでいてもよい。二色性色素(2-1)は波長570nm~600nmの範囲に吸収極大を有するとより好ましく、二色性色素(2-2)は波長600nm~680nmの範囲に吸収極大を有するとより好ましい。
【0049】
二色性色素(2)としては、例えば、下記式(2)で表される化合物(以下、場合により「化合物(2)」という。)が挙げられる。化合物(2)のアゾベンゼン部位の幾何異性は、トランスが好ましい。式(2)中、nは1又は2である。
【0050】
【化7】
【0051】
Ar及びArは、それぞれ独立に、式(AR-1)、式(AR-2)、式(AR-3)又は式(AR-4)で表される基である。*は結合手を表す。
【0052】
【化8】
【0053】
Arは、式(AR2-1)、式(AR2-2)又は式(AR2-3)で表される基である。
【0054】
【化9】
【0055】
及びAは、それぞれ独立に、式(A-1)~式(A-9)のいずれかで表される基である。式(A-2)、式(A-3)、式(A-5)及び(A-6)中、mcは0~10の整数であり、同一の基中にmcが2つある場合、この2つのmcは互いに同一又は相異なる。
【0056】
【化10】
【0057】
化合物(2)が波長550nm~600nmの範囲に吸収極大を有するように、Ar、Ar及びArを組み合わせることで、二色性色素(2-1)として使用できる化合物(2)が定められる。同様に、化合物(2)が波長600nm~700nmの範囲に吸収を有するように、Ar、Ar及びArを組み合わせることで、二色性色素(2-2)として使用できる化合物(2)が定められる。
【0058】
化合物(2)を具体的に示すと、例えば、式(2-11)~式(2-37)でそれぞれ表される化合物が挙げられる。
【0059】
【化11】
【0060】
【化12】
【0061】
【化13】
【0062】
【化14】
【0063】
【化15】
【0064】
【化16】
【0065】
上記化合物(2)の具体例の中では、二色性色素(2-1)としては、式(2-12)、式(2-13)、式(2-18)、式(2-20)、式(2-21)、式(2-22)、式(2-23)、式(2-24)、式(2-26)、式(2-27)、式(2-28)、式(2-29)、式(2-30)及び式(2-37)でそれぞれ表されるものが該当し、二色性色素(2-2)としては、式(2-31)、式(2-32)、式(2-33)、式(2-34)、式(2-35)及び式(2-36)でそれぞれ表されるものが該当する。なお、式(2-11)、式(2-15)及び式(2-16)でそれぞれ表されるものは波長550nm~700nmに吸収を示す色素では無いが、他の二色性色素と併用することができる。
【0066】
化合物(2)の具体例の中でも、二色性色素(2)としては、式(2-15)、式(2-16)、式(2-18)、式(2-20)、式(2-21)、式(2-22)、式(2-23)、式(2-27)、式(2-29)、式(2-31)、式(2-32)、式(2-33)、式(2-34)、式(2-35)及び式(2-37)でそれぞれ表されるものが好ましい。
【0067】
二色性色素(2)は、例えば、特開昭58-38756号公報、特開昭63-301850号公報等に記載の公知方法で製造される。
【0068】
上述した二色性色素は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせ用いてもよい。
偏光子形成用組成物が2種以上の二色性色素を含有する場合、二色性色素の各含有量は、後述する重合性液晶化合物100質量部に対する含有量で表して、3質量部以下が好ましく、0.1質量部以上2.5質量部以下がより好ましく、1質量部以上1.5質量部以下が更に好ましい。二色性色素の各含有量が上記範囲内であれば、偏光子形成用組成物における二色性色素が溶剤に対して十分な溶解性を示すため、偏光子形成用組成物を用いて偏光子を製造したとき、欠陥の発生が無い偏光子が得られ易い。これにより、薄膜でも高い光吸収選択性能を有し、耐熱性に優れる偏光板をより作製し易くなる。偏光子形成用組成物に含まれる二色性色素の総量は、後述する重合性液晶化合物100質量部に対する含有量で表して、9質量部以下が好ましく、0.1質量部以上7.5質量部以下がより好ましく、1質量部以上4.5質量部以下が更に好ましい。
【0069】
1-2.液晶化合物
本実施形態に係る偏光子11は、液晶化合物の硬化物101及び二色性色素102を含む偏光層21を有する。すなわち、上記偏光子形成用組成物は、二色性色素と共に液晶化合物を含有する。
【0070】
本実施形態における液晶化合物としては、重合性液晶化合物が挙げられる。重合性液晶化合物は、配向したまま重合することができる液晶化合物であり、分子内に重合性基を有する。重合性液晶化合物を含有する偏光子形成用組成物は、重合性液晶化合物を配向させた状態で重合することにより、硬化膜を形成する。硬化膜、即ち液晶化合物の硬化物101は、液晶性を示す必要はない。重合性基は、ラジカル重合性基であると特に好ましい。
ラジカル重合性基とは、ラジカル重合反応に関与する基を意味する。
【0071】
重合性液晶化合物は、ネマチック相の液晶相(以下、場合により「ネマチック液晶相」という。)を示すものであっても、スメクチック相の液晶相(以下、場合により「スメクチック液晶相」という。)を示すものであっても、ネマチック液晶相及びスメクチック液晶相の両方を示すものであってもよいが、少なくともスメクチック液晶相を示す重合性スメクチック液晶化合物であると好ましい。重合性スメクチック液晶化合物を含む偏光子形成用組成物は、二色性色素との相互作用により、色づきが抑制され、より偏光性能に優れる偏光子が得られる。
【0072】
重合性スメクチック液晶化合物が示すスメクチック液晶相としては、高次スメクチック液晶相がより好ましい。ここでいう高次スメクチック液晶相とは、スメクチックB相、スメクチックD相、スメクチックE相、スメクチックF相、スメクチックG相、スメクチックH相、スメクチックI相、スメクチックJ相、スメクチックK相及びスメクチックL相であり、中でも、スメクチックB相、スメクチックF相及びスメクチックI相がより好ましい。
【0073】
重合性液晶化合物が示すスメクチック液晶相がこれらの高次スメクチック液晶相であると、配向秩序度のより高い偏光子を製造することができる。また、このように配向秩序度の高い高次スメクチック液晶相である重合性液晶化合物を用いて作製した偏光子は、X線回折測定においてヘキサチック相やクリスタル相といった高次構造由来のブラッグピークが得られる。このブラッグピークとは、分子配向の面周期構造に由来するピークである。
本実施形態に係る偏光子形成用組成物によれば、周期間隔が3.0~5.0Åである偏光子を得ることができる。
【0074】
重合性液晶化合物が、ネマチック液晶相やスメクチック液晶相を示すか否かは、例えば、以下のようにして確認できる。適当な基材を準備し、この基材に偏光子形成用組成物を塗布して塗布膜を形成する。その後、重合性液晶化合物が重合しない条件で加熱処理又は減圧処理することで塗布膜に含有される溶剤を除去する。続いて、基材上に形成された塗布膜を等方相温度まで加熱し、徐々に冷却することで発現する液晶相を、偏光顕微鏡によるテクスチャー観察により検査する。この検査において、例えば、冷却することでネマチック液晶相を示し、さらに冷却することで、スメクチック液晶相を示す重合性液晶化合物が特に好ましい。ネマチック液晶相及びスメクチック液晶相において、重合性液晶化合物と二色性色素とが相分離していないことは、例えば、各種顕微鏡による表面観察やヘイズメーターによる散乱度測定により確認できる。
【0075】
重合性液晶化合物としては、例えば、式(4)で表される化合物(以下、場合により「化合物(4)」という)が挙げられる。
-V-W-X-Y-X-Y-X-W-V-U (4)
【0076】
式(4)中、X、X及びXは、互いに独立に、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基を表す。X、X及びXのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であることが好ましく、X又はXが置換基を有していてもよいシクロヘキサン-1,4-ジイル基であることが特に好ましい。置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-又は-NR-に置き換わっていてもよい。Rは、炭素数1~6のアルキル基又はフェニル基である。
【0077】
置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基は、置換基を有していてもよいトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることが好ましく、置換基を有しないトランス-シクロへキサン-1,4-ジイル基であることがより好ましい。式(4)において、X、X及びXのうち少なくも2つが、置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基であってもよく、置換基を有しない1,4-フェニレン基であることが好ましい。
【0078】
置換基を有していてもよい1,4-フェニレン基又は置換基を有していてもよいシクロへキサン-1,4-ジイル基が任意に有する置換基としては、例えば、メチル基、エチル基及びブチル基等の炭素数1~4のアルキル基、シアノ基及びハロゲン原子が挙げられる。
【0079】
式(4)中、Y及びYは、互いに独立に、-CHCH-、-CHO-、-COO-、-OCOO-、単結合、-N=N-、-CR=CR-、-C≡C-又は-CR=N-を表す。R及びRは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表す。Yは、-CHCH-、-COO-又は単結合であると好ましく、Yは、-CHCH-、-COO-又は-CHO-であると好ましい。
【0080】
式(4)中、Uは、水素原子又は重合性基であり、好ましくは重合性基である。Uは、重合性基である。U及びUは共に、重合性基であると好ましく、光重合性基であるとより好ましい。光重合性基とは、後述する光重合開始剤から発生した活性ラジカル、酸等によって重合反応に関与し得る基のことをいう。光重合性基を有する重合性液晶化合物は、より低温条件下で重合できる点で有利である。
【0081】
及びUの重合性基は互いに異なっていてもよいが、同じ種類の基であることが好ましい。重合性基としては、例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、1-クロロビニル基、イソプロペニル基、4-ビニルフェニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が挙げられる。中でも、重合性基として、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、オキシラニル基及びオキセタニル基が好ましく、アクリロイルオキシ基がより好ましい。
【0082】
式(4)中、V及びVは、互いに独立に、置換基を有していてもよい炭素数1~20のアルカンジイル基を表し、このアルカンジイル基を構成する-CH-は、-O-、-S-又は-NH-に置き換わっていてもよい。炭素数1~20のアルカンジイル基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基、ヘプタン-1,7-ジイル基、オクタン-1,8-ジイル基、デカン-1,10-ジイル基、テトラデカン-1,14-ジイル基及びイコサン-1,20-ジイル基が挙げられる。V及びVは、好ましくは炭素数2~12のアルカンジイル基であり、より好ましくは炭素数6~12のアルカンジイル基である。炭素数1~20のアルカンジイル基が任意に有する置換基としては、例えば、シアノ基及びハロゲン原子を挙げることができる。このアルカンジイル基は、無置換であることが好ましく、無置換且つ直鎖状であることがより好ましい。
【0083】
式(4)中、W及びWは、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-COO-又は-OCOO-を表し、好ましくは単結合又は-O-である。
【0084】
化合物(4)としては、例えば、式(4-1)~式(4-43)で表される化合物が挙げられる。化合物(4)の具体例が、シクロヘキサン-1,4-ジイル基を有する場合、シクロヘキサン-1,4-ジイル基は、トランス体であることが好ましい。
【0085】
【化17】
【0086】
【化18】
【0087】
【化19】
【0088】
【化20】
【0089】
重合性液晶化合物は、単独で又は2種以上を混合して偏光子形成用組成物に用いることができる。重合性液晶化合物を2種以上混合する場合、少なくとも1種が化合物(4)であると好ましい。重合性液晶化合物を2種混合する場合の混合比としては、通常、化合物(4)以外の重合性液晶化合物:化合物(4)が、1:99~50:50であり、好ましくは5:95~50:50であり、より好ましくは10:90~50:50である。
【0090】
化合物(4)の中でも、式(4-5)、式(4-6)、式(4-7)、式(4-8)、式(4-9)、式(4-10)、式(4-11)、式(4-12)、式(4-13)、式(4-14)、式(4-15)、式(4-22)、式(4-24)、式(4-25)、式(4-26)、式(4-27)、式(4-28)及び式(4-29)で表される化合物が好ましい。これらの化合物は、その他の重合性液晶化合物との相互作用により、容易に結晶相転移温度を下回る温度条件下で、すなわち高次のスメクチック相の液晶状態を十分に保持したままで、重合することができる。具体的には、これらの化合物は、70℃以下、好ましくは60℃以下の温度条件下で、高次のスメクチック相の液晶状態を十分に保持したまま重合することができる。
【0091】
偏光子形成用組成物における重合性液晶化合物の含有割合は、偏光子形成用組成物の固形分に対して、50質量%~99.9質量%が好ましく、80質量%~99.9質量%がより好ましい。重合性液晶化合物の含有割合が上記範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向性が高くなる傾向がある。固形分とは、偏光子形成用組成物から溶剤等の揮発性成分を除いた成分の合計量のことをいう。
【0092】
重合性液晶化合物は、例えば、Lub et al. Recl.Trav.Chim.Pays-Bas,115, 321-328(1996)、特許第4719156号等に記載の公知方法で製造される。
【0093】
1-3.溶剤
偏光子形成用組成物は、溶剤を含むことが好ましい。溶剤としては、二色性色素及び重合性液晶化合物を完全に溶解し得る溶剤が好ましい。また、偏光子形成用組成物に含まれる重合性液晶化合物の重合反応に不活性な溶剤であることが好ましい。
【0094】
溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤;アセトニトリル等のニトリル溶剤;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶剤;並びにクロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素含有溶剤が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0095】
溶剤の含有量は、偏光子形成用組成物の総量に対して50質量%~98質量%が好ましい。換言すると、偏光子形成用組成物における固形分は、2質量%~50質量%が好ましい。固形分が2質量%以上であると、本実施形態の目的の一つである薄型の偏光板が得られ易くなる。また、固形分が50質量%以下であると、偏光子形成用組成物の粘度が低くなることから、偏光子の厚みが略均一になることで、偏光子にムラが生じ難くなる。固形分は、偏光子の厚みを考慮して定めることができる。
【0096】
1-4.添加剤
本実施形態に係る偏光子形成用組成物は、添加剤を任意に含むことができる。添加剤としては、例えば、重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤及びレベリング剤が挙げられる。
【0097】
1-4-1.重合開始剤
偏光子形成用組成物は、重合開始剤を含有すると好ましい。重合開始剤は、重合性液晶化合物の重合反応を開始し得る化合物である。重合開始剤としては、低温条件下で、重合反応を開始できる点で、光重合開始剤が好ましい。具体的には、光の作用により活性ラジカル又は酸を発生する化合物が光重合開始剤として用いられる。当該光重合開始剤の中でも、光の作用により活性ラジカルを発生するものがより好ましい。
【0098】
重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン化合物、ベンゾフェノン化合物、アルキルフェノン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、トリアジン化合物、ヨードニウム塩及びスルホニウム塩が挙げられる。
【0099】
ベンゾイン化合物としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル及びベンゾインイソブチルエーテルが挙げられる。
【0100】
ベンゾフェノン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン及び2,4,6-トリメチルベンゾフェノンが挙げられる。
【0101】
アルキルフェノン化合物としては、例えば、ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルチオフェニル)プロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1,2-ジフェニル-2,2-ジメトキシエタン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(1-メチルビニル)フェニル〕プロパン-1-オンのオリゴマーが挙げられる。
【0102】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドが挙げられる。
【0103】
トリアジン化合物としては、例えば、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン及び2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0104】
重合開始剤は、市販のものを用いることもできる。市販の重合開始剤としては、例えば、”イルガキュア(Irgacure)907”、”イルガキュア184”、”イルガキュア651”、”イルガキュア819”、”イルガキュア250”、”イルガキュア369”(BASFジャパン(株));”セイクオールBZ”、”セイクオールZ”、”セイクオールBEE”(精工化学(株));”カヤキュアー(kayacure)BP100”(日本化薬(株));”UVI-6992”(ダウケミカル社製);”アデカオプトマーSP-152”、”アデカオプトマーSP-170”((株)ADEKA);”TAZ-A”、”TAZ-PP”(DKSHジャパン社);及び”TAZ-104”((株)三和ケミカル)が挙げられる。
【0105】
偏光子形成用組成物が重合開始剤を含有する場合、その含有量は、偏光子形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、通常、重合性液晶化合物の合計100質量部に対する重合開始剤の含有量は、0.1質量部~30質量部であり、好ましくは0.5質量部~10質量部であり、より好ましくは0.5質量部~8質量部である。重合性開始剤の含有量が、この範囲内であれば、重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができるため好ましい。
【0106】
1-4-2.光増感剤
偏光子形成用組成物は、光重合開始剤を含有する場合、光増感剤を更に含有してもよい。光増感剤としては、例えば、キサントン及びチオキサントン等のキサントン化合物(例えば、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン等);アントラセン及びアルコキシ基含有アントラセン(例えば、ジブトキシアントラセン等)等のアントラセン化合物;フェノチアジン及びルブレンが挙げられる。
【0107】
偏光子形成用組成物が光重合開始剤及び光増感剤を含有する場合、偏光子形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の重合反応がより促進される。光増感剤の含有量は、併用する光重合開始剤及び重合性液晶化合物の種類及びその量に応じて適宜調節できるが、通常、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.1質量部~30質量部であり、好ましくは0.5質量部~10質量部であり、より好ましくは0.5質量部~8質量部である。
【0108】
1-4-3.重合禁止剤
偏光子形成用組成物は、重合性液晶化合物の重合反応を安定的に進行させるために、重合禁止剤を含有していてもよい。重合禁止剤により、重合性液晶化合物の重合反応の進行度合いをコントロールすることができる。
【0109】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、アルコキシ基含有ハイドロキノン、アルコキシ基含有カテコール(例えば、ブチルカテコール等)、ピロガロール、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル等のラジカル補足剤;チオフェノール類;β-ナフチルアミン類及びβ-ナフトール類が挙げられる。
【0110】
偏光子形成用組成物が重合禁止剤を含む場合、その含有量は、用いる重合性液晶化合物の種類及びその量、並びに光増感剤の含有量などに応じて適宜調節されるが、通常、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.1質量部~30質量部であり、好ましくは0.5質量部~10質量部であり、より好ましくは0.5質量部~8質量部である。
重合禁止剤の含有量が、上記範囲内であれば、偏光子形成用組成物に含有される重合性液晶化合物の配向を乱すことなく重合させることができるため好ましい。
【0111】
1-4-4.レベリング剤
偏光子形成用組成物は、レベリング剤を含有すると好ましい。レベリング剤とは、偏光子形成用組成物の流動性を調整し、偏光子形成用組成物を塗布して得られる塗布膜をより平坦にする機能を有するものであり、界面活性剤等を挙げることができる。レベリング剤としては、例えば、ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤及びフッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤が挙げられる。
【0112】
ポリアクリレート化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、”BYK-350”、”BYK-352”、”BYK-353”、”BYK-354”、”BYK-355”、”BYK-358N”、”BYK-361N”、”BYK-380”、”BYK-381”及び”BYK-392”[BYK Chemie社]が挙げられる。
【0113】
フッ素原子含有化合物を主成分とするレベリング剤としては、例えば、メガファック”R-08”、”R-30”、”R-90”、”F-410”、”F-411”、”F-443”、”F-445”、”F-470”、”F-471”、”F-477”、”F-479”、”F-482”及び”F-483”[DIC(株)];サーフロン”S-381”、”S-382”、”S-383”、”S-393”、”SC-101”、”SC-105”、”KH-40”及び”SA-100”[AGCセイミケミカル(株)];”E1830”、”E5844”[ダイキン工業(株)];エフトップ”EF301”、”EF303”、”EF351”及び”EF352”[三菱マテリアル電子化成(株)]が挙げられる。
【0114】
偏光子形成用組成物にレベリング剤を含有させる場合、その含有量は、通常、重合性液晶化合物の含有量100質量部に対して、0.3質量部以上5質量部以下であり、好ましくは0.5質量部以上3質量部以下である。レベリング剤の含有量が上記範囲内であると、重合性液晶化合物を水平配向させることが容易であり、かつ得られる偏光子がより平滑となる傾向がある。重合性液晶化合物に対するレベリング剤の含有量が上記範囲を超えると、得られる偏光子にムラが生じ易い傾向がある。なお、偏光子形成用組成物は、レベリング剤を2種類以上含有していてもよい。
【0115】
2.第1の基材及び第2の基材
第1の基材12及び第2の基材14としては、熱可塑性樹脂基材を用いることができる。第1の基材12及び第2の基材14は、透明な熱可塑性樹脂基材が好ましい。透明な熱可塑性樹脂基材とは光、特に可視光を透過し得る程度の透明性を有する熱可塑性樹脂基材である。透明性とは、波長380nm~780nmに渡る光線に対しての透過率が80%以上となる特性をいう。第1の基材および第2の基材は、同じ熱可塑性樹脂から形成されてもよいし、異なる熱可塑性樹脂から形成されもよい。
【0116】
具体的には、第1の基材12及び第2の基材14としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノルボルネン系ポリマー等のポリオレフィン;環状オレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール;ポリエチレンテレフタレート;ポリメタクリル酸エステル及びポリアクリル酸エステル等のアクリル系樹脂;ポリエチレンナフタレート;ポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリエーテルケトン;ポリフェニレンスルフィド及びポリフェニレンオキシドが挙げられる。中でも、市場から容易に入手できたり、透明性に優れていたりする点から、好ましくは、環状オレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート又はアクリル系樹脂であり、特に好ましくは、環状オレフィン系樹脂又はポリメタクリル酸エステルである。偏光板1の製造工程において、第1の基材12及び第2の基材14を運搬したり、保管したりする際に破れなどの破損を起こすことなく容易に取り扱える点で第1の基材12及び第2の基材14に支持基材等を貼り付けておいてもよい。
【0117】
第1の基材12及び第2の基材14のいずれか一方が熱可塑性樹脂基材であれば、他方は熱可塑性樹脂基材でなくてもよい。第1の基材12及び第2の基材14のいずれか一方が熱可塑性樹脂基材であると、偏光板1の曲面成型性が保持される。例えば、第1の基材としてトリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル樹脂を含む基材を用いてもよい。一例として、第1の基材としてトリアセチルセルロースを含む基材を用い、第2の基材としてアクリル系樹脂を含む基材を用いることができる。
【0118】
第1の基材12に位相差性を付与する場合、その位相差値をコントロールし易いという点で、セルロースエステル又は環状オレフィン系樹脂からなるプラスチック基材が好ましい。
【0119】
セルロースエステルは、セルロースに含まれる水酸基の少なくとも一部が、酢酸エステル化されている。このようなセルロースエステルからなるセルロースエステルフィルムは市場から容易に入手することができる。市販のトリアセチルセルロースフィルムとしては、例えば、“フジタックフィルム”(富士写真フィルム(株));“KC8UX2M”、“KC8UY”及び“KC4UY”(コニカミノルタオプト(株))が挙げられる。このような市販トリアセチルセルロースフィルムは、そのまま又は必要に応じて位相差性を付与してから第1の基材12として用いることができる。また、準備した第1の基材12の表面に、防眩処理、ハードコート処理、帯電防止処理又は反射防止処理などの表面処理を施してから、第1の基材12として使用することができる。
【0120】
環状オレフィン系樹脂は、例えば、ノルボルネンや多環ノルボルネン系モノマー等の環状オレフィンの重合体又は共重合体から構成される。環状オレフィン系樹脂は部分的に、開環部を含んでいてもよく、開環部を含む環状オレフィン系樹脂を水素添加したものでもよい。環状オレフィン系樹脂は、透明性を著しく損なわない点や、著しく吸湿性を増大させない点で、例えば、環状オレフィンと、鎖状オレフィン又はビニル化芳香族化合物(スチレンなど)との共重合体であってもよい。また、環状オレフィン系樹脂は、その分子内に極性基が導入されていてもよい。
【0121】
環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィン又はビニル基を有する芳香族化合物との共重合体である場合、鎖状オレフィンとしては、例えば、エチレン及びプロピレンが挙げられ、ビニル化芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン及びアルキル置換スチレンが挙げられる。このような共重合体において、環状オレフィンに由来する構造単位の含有割合は、環状オレフィン系樹脂の全構造単位に対して、50モル%以下、例えば、15モル%~50モル%程度の範囲である。環状オレフィン系樹脂が、環状オレフィンと、鎖状オレフィンと、ビニル化芳香族化合物とから得られる三元共重合体である場合、例えば、鎖状オレフィン由来の構造単位の含有割合は、該環状オレフィン系樹脂の全構造単位に対して5モル%~80モル%程度であり、ビニル化芳香族化合物由来の構造単位の含有割合は5モル%~80モル%程度である。このような三元共重合体の環状オレフィン系樹脂は、この環状オレフィン系樹脂を製造する際に、高価な環状オレフィンの使用量を比較的少なくすることができるという利点がある。
【0122】
環状オレフィン系樹脂は、市場から容易に入手できる。市販の環状オレフィン系樹脂としては、例えば、“Topas”[Ticona社(独)];“アートン”[JSR(株)];“ゼオノア(ZEONOR)”及び“ゼオネックス(ZEONEX)”[日本ゼオン(株)];“アペル”[三井化学(株)製]が挙げられる。このような環状オレフィン系樹脂を、例えば、溶剤キャスト法や溶融押出法などの公知の製膜手段により製膜して、フィルム(環状オレフィン系樹脂フィルム)とすることができる。また、すでにフィルムの形態で市販されている環状オレフィン系樹脂フィルムも用いることができる。このような市販の環状オレフィン系樹脂フィルムとしては、例えば、“エスシーナ”及び“SCA40”[積水化学工業(株)];“ゼオノアフィルム”[オプテス(株)];並びに“アートンフィルム”[JSR(株)]が挙げられる。
【0123】
第1の基材12及び第2の基材14の厚みは、実用的な取扱いができる程度の重量である点、及び、十分な透明性が確保できる点では、薄い方が好ましいが、薄すぎると強度が低下し、加工性に劣る傾向がある。第1の基材12及び第2の基材14それぞれの適当な厚みは、例えば、20μm~200μm程度であり、好ましくは20μm~160μm程度である。本実施形態の偏光板1を、後述する円偏光板として使用する場合や、特にモバイル機器用途の偏光板として使用する場合の透明基材の厚みは、20μm~80μm程度が好ましく、20μm~50μmであってもよい。
【0124】
3.配向層
第1の基材12または第2の基材14には、配向層22が形成されていることが好ましい。この場合、偏光子形成用組成物は配向層22上に塗布することとなる。このため、配向層22は、偏光子形成用組成物の塗布により溶解しない程度の溶剤耐性を有することが好ましい。また、溶剤の除去や液晶の配向のための加熱処理における耐熱性を有することが好ましい。配向層22は、配向性ポリマーにより形成することができる。
【0125】
配向性ポリマーとしては、例えば、ポリアミド、ゼラチン類、ポリイミド、ポリアミック酸、ポリビニルアルコール、アルキル変性ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリオキサゾール、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸及びポリアクリル酸エステルを挙げることができる。これらの中でも、ポリビニルアルコールが好ましい。これらの配向性ポリマーは、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0126】
配向性ポリマーは、溶剤に溶解した配向性ポリマー組成物(配向性ポリマーを含む溶液)として、第1の基材12または第2の基材14上に塗布することにより、第1の基材12または第2の基材14上に配向層22を形成することができる。溶剤としては、例えば、水;メタノール、エタノール、エチレングリコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ及びプロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート及び乳酸エチル等のエステル溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン及びメチルイソブチルケトン等のケトン溶剤;ペンタン、ヘキサン及びヘプタン等の脂肪族炭化水素溶剤;トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素溶剤、アセトニトリル等のニトリル溶媒;テトラヒドロフラン及びジメトキシエタン等のエーテル溶媒;並びにクロロホルム及びクロロベンゼン等の塩素置換炭化水素溶媒が挙げられる。これら溶剤は、単独で用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0127】
配向性ポリマー組成物として、市販の配向膜材料をそのまま使用してもよい。市販の配向膜材料としては、例えば、サンエバー(登録商標、日産化学工業(株)製)及びオプトマー(登録商標、JSR(株)製)が挙げられる。
【0128】
配向層22は、光配向層であってもよい。光配向層とは、光反応性基を有するポリマー又はモノマーと、溶剤とを含む組成物(以下、場合により「光配向層形成用組成物」という)を第1の基材12に塗布し、偏光(好ましくは、偏光UV)を照射することによって配向規制力を付与した配向層のことをいう。光反応性基とは、光を照射することにより液晶配向能を生じる基をいう。具体的には、光反応性基は、光を照射することで生じる分子の配向誘起又は異性化反応、二量化反応、光架橋反応、あるいは光分解反応のような、液晶配向能の起源となる光反応を生じる。二量化反応又は光架橋反応を起こす光反応性基が、配向性に優れ、偏光子形成時のスメクチック液晶状態を保持する点で好ましい。光反応性基としては、不飽和結合、特に二重結合を有するものが好ましく、炭素-炭素二重結合(C=C結合)、炭素-窒素二重結合(C=N結合)、窒素-窒素二重結合(N=N結合)及び炭素-酸素二重結合(C=O結合)からなる群より選ばれる少なくとも一つを有する基がより好ましい。
【0129】
C=C結合を有する光反応性基としては、例えば、ビニル基、ポリエン基、スチルベン基、スチルバゾ-ル基、スチルバゾリウム基、カルコン基及びシンナモイル基が挙げられる。C=N結合を有する光反応性基としては、例えば、芳香族シッフ塩基及び芳香族ヒドラゾン等の構造を有する基が挙げられる。N=N結合を有する光反応性基としては、例えば、アゾベンゼン基、アゾナフタレン基、芳香族複素環アゾ基、ビスアゾ基及びホルマザン基などや、アゾキシベンゼンを基本構造とする基が挙げられる。C=O結合を有する光反応性基としては、例えば、ベンゾフェノン基、クマリン基、アントラキノン基及びマレイミド基が挙げられる。これらの基は、アルキル基、アルコキシ基、アリ-ル基、アリルオキシ基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、ヒドロキシル基、スルホン酸基又はハロゲン化アルキル基等の置換基を有していてもよい。中でも、光二量化反応を起こしうる光反応性基が好ましく、シンナモイル基及びカルコン基が、光配向に必要な偏光照射量が比較的少なく、かつ、熱安定性や経時安定性に優れる光配向層が得られやすいため好ましい。さらに、光反応性基を有するポリマーとしては、ポリマー側鎖の末端部が桂皮酸構造となるようなシンナモイル基を有するものがより好ましい。
【0130】
光配向層形成用組成物の溶剤としては、光反応性基を有するポリマー及びモノマーを溶解するものが好ましく、例えば、上述の配向性ポリマー組成物に用いた溶剤が挙げられる。
【0131】
光配向層形成用組成物に対する、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの濃度は、光反応性基を有するポリマー又はモノマーの種類や製造しようとする光配向層の厚みによって適宜調節できるが、固形分濃度で表して、少なくとも0.2質量%とすることが好ましく、0.3質量%~10質量%の範囲がより好ましい。配向層22の特性が著しく損なわれない範囲で、光配向層形成用組成物には、ポリビニルアルコ-ルやポリイミド等の高分子材料、光増感剤が含まれていてもよい。
【0132】
配向層22の厚さは、10nm以上10000nm以下であり、好ましくは10nm以上1000nm以下である。本実施形態における配向層22の厚さは、配向層22の任意の5点を干渉膜厚計で測定し、その平均値を算出することで求めることができる。
【0133】
本実施形態に係る偏光子11は、波長380nm~760nmにおける吸収軸方向の吸光度(A1)が0.3以上1.5以下であり、0.3以上1.0以下であることが好ましく、0.33以上0.9以下であることがより好ましく、0.36以上0.85以下であることが更に好ましい。透過軸方向の吸光度(A2)は、0.001以上0.15以下であり、0.001以上0.10以下であることが好ましく、0.002以上0.05以下であることがより好ましく、0.005以上0.040以下であることが更に好ましい。
【0134】
上記吸光度は、偏光子11に含まれる二色性色素102の種類、二色性色素102の量、偏光子形成用組成物の固形分濃度又は塗布量を調整することによって偏光子11の厚さを制御すること等により、適宜調整することができる。
【0135】
4.偏光板の製造方法
偏光子形成用組成物を用いて偏光板1を製造する方法について説明する。かかる方法では、偏光子形成用組成物を第1の基材12に、好ましくは透明な熱可塑性樹脂基材である第1の基材12に塗布することにより偏光板1を形成する。なお、本実施形態においては液晶化合物の硬化物101が重合性液晶化合物である例について説明する。
【0136】
第1の基材12に配向層22を形成する方法としては、例えば、第1の基材12上に配向層形成用組成物又は市販の配向膜材料を塗布し、加熱する方法が挙げられる。配向層形成用組成物の塗布膜の厚みは、得られる配向層22の厚みを考慮して定められる。
【0137】
配向層22に対して配向規制力を付与するために、必要に応じてラビングを行うこと(ラビング法)が好ましい。配向規制力を付与することにより液晶化合物の硬化物101を所望の方向に配向させることができる。
【0138】
ラビング法により配向規制力を付与する方法としては、例えば、ラビング布が巻きつけられ、回転しているラビングロールを準備し、第1の基材12上に配向層形成用の塗布膜が形成された積層体をステージに載せて、回転しているラビングロールに向けて搬送することで、配向層形成用塗布膜と、回転しているラビングロールとを接触させる方法が挙げられる。
【0139】
配向層形成用組成物又は光配向層形成用組成物を第1の基材12上に塗布する方法としては、スピンコ-ティング法、エクストルージョン法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法及びアプリケータ法等の塗布法や、フレキソ法等の印刷法などの公知の方法が採用される。なお、偏光子製造を、RolltoRoll形式の連続的製造方法により実施する場合、塗布方法としては、通常、グラビアコーティング法、ダイコーティング法又はフレキソ法等の印刷法が採用される。
【0140】
なお、ラビング又は偏光照射を行う時に、マスキングを行えば、配向方向が異なる複数の領域(パターン)を形成することもできる。
【0141】
第1の基材12又は第1の基材12に形成された配向層22上に、偏光子形成用組成物を塗布して塗布膜を得る。偏光子形成用組成物を塗布する方法としては例えば、配向層形成用組成物又は光配向層形成用組成物を基材に塗布する方法として例示したものと同じ方法が挙げられる。
【0142】
次に、塗布膜中に含まれる液晶化合物が重合しない条件で、偏光子形成用組成物に含まれる溶剤を乾燥除去することにより乾燥被膜が形成される。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥法、通風乾燥法、加熱乾燥及び減圧乾燥法が挙げられる。
【0143】
好ましい形態としては、一旦、乾燥被膜に含まれる液晶化合物の液晶状態をネマチック液晶にした後、ネマチック液晶相をスメクチック液晶相に転移させる。このようにネマチック液晶相を経由してスメクチック液晶相を形成するためには、例えば、乾燥被膜に含まれる液晶化合物がネマチック液晶相を示す温度以上に加熱し、次いで、液晶化合物がスメクチック液晶相を示す温度まで冷却するといった方法が採用される。
【0144】
乾燥被膜中の液晶化合物をスメクチック液晶相としたり、重合性液晶化合物を、ネマチック液晶相を経由してスメクチック液晶相としたりする場合、重合性液晶化合物の相転移温度を測定することで、液晶状態を制御する条件(加熱条件)を求めることができる。
【0145】
次に、液晶化合物の重合工程について説明する。ここでは、偏光子形成用組成物に光重合開始剤を含有させ、乾燥被膜中の液晶化合物の液晶状態をスメクチック液晶相にした後、このスメクチック液晶相の液晶状態を保持したまま、液晶化合物を光重合させる方法について詳述する。
【0146】
光重合において、乾燥被膜に照射する光としては、乾燥被膜に含まれる光重合開始剤の種類、又は液晶化合物の種類(特に、液晶化合物が有する重合性基の種類)及びその量に応じて適宜、可視光、紫外光及びレーザー光からなる群より選択される光や活性電子線によって行うことができる。これらのうち、重合反応の進行をコントロールし易い点や、光重合に係る装置として当分野で広範に用いられているものが使用できるという点で、紫外光が好ましい。よって、紫外光によって、光重合できるように、偏光子形成用組成物に含有される液晶化合物や光重合開始剤の種類を選択しておくと好ましい。
【0147】
また、重合させる際には、紫外光照射とともに適当な冷却手段により、乾燥被膜を冷却することで重合温度をコントロールすることもできる。このような冷却手段の採用により、より低温で液晶化合物の重合を実施できれば、第1の基材12として比較的耐熱性が低い基材を用いたとしても、適切に偏光子11を形成できるという利点もある。なお、光重合の際、マスキングや現像を行うことによって、パターニングされた偏光子11を得ることもできる。
【0148】
以上のような光重合を行うことにより、液晶化合物は、ネマチック液晶相又はスメクチック液晶相、好ましくは、すでに例示したような高次のスメクチック液晶相を保持したまま重合し、偏光子11が形成される。液晶化合物がスメクチック液晶相を保持したまま重合して得られる偏光子11は、ネマチック液晶相の液晶状態を保持したままで重合性液晶化合物などを重合させて得られる偏光子と比較して偏光性能が高いという利点がある。さらに、リオトロピック性二色性色素のみを塗布したものと比較して、強度に優れるという利点がある。
【0149】
偏光層21の厚さは、1μm以上15μm未満であることが好ましく、1μm以上10μm以下の範囲がより好ましく、1μm以上5μm以下がさらに好ましく、1μm以上3μm以下であることが特に好ましい。したがって、偏光子形成用の塗布膜の厚みは、得られる偏光層21の厚みを考慮して定められる。本実施形態における偏光層21の厚さは、偏光層21の任意の5点を、接触式膜厚計、干渉膜厚計、レーザー顕微鏡又は触針式膜厚計の測定し、その平均値を算出することで求めることができる。
【0150】
なお、上述のように第1の基材12上に偏光子11を形成する方法の他に、他の基材上に上述の方法で偏光子11を形成したのち、偏光子11を第1の基材12に転写して貼合する方法によって偏光板を製造することもできる。
【0151】
上記例では、第1の基材12上に、配向層22および偏光層21を形成する例を説明したが、第2の基材14上に、配向層22および偏光層21を形成してもよい。この場合、偏光層21上に、接着剤層や粘着剤層を介して第1の基材12を積層することより、第2の基材14、配向層22、偏光層21および第1の基材を有する偏光板が得られる。
【0152】
形成された偏光子11は、X線回折測定においてブラッグピークが得られると好ましい。ブラッグピークが得られる偏光子としては、例えば、ヘキサチック相又はクリスタル相に由来する回折ピークを示す偏光子を挙げることができる。
【0153】
商業的に偏光子を製造する際には、連続的に偏光子を形成できる方法が求められる。このような連続的製造方法はRoll to Roll形式によるものであり、場合により、「本製造方法」という。なお、本製造方法では、第1の基材12が透明である場合を中心に説明する。第1の基材12が透明である場合は、最終的に得られるものが、透明な第1の基材12と、偏光子11とを有する偏光板1となる。
【0154】
本製造方法は、例えば、以下の工程を含む。第1の基材12が第1の巻芯に巻き取られている第1ロールを準備する。第1ロールから、第1の基材12を連続的に送り出す。この第1の基材12上に、配向層22を連続的に形成する。この配向層22上に、偏光子形成用組成物を連続的に塗布する。塗布された偏光子形成用組成物を、液晶化合物が重合しない条件で乾燥することにより、配向層22上に乾燥被膜を連続的に形成する。この乾燥被膜中に含まれる液晶化合物をネマチック液晶相、好ましくはスメクチック液晶相とする。その後、このスメクチック液晶相を保持したまま、液晶化合物を重合させることにより、偏光層21を連続的に得て偏光子11とする。連続的に得られた偏光子11を第2の巻芯に巻き取り、第2ロールを得る。
【0155】
本製造方法により得られる偏光板1は、その形状がフィルム状且つ長尺状の偏光フィルムである。この偏光板1は、後述するサングラス等のレンズなどに用いる場合には、サングラス等のレンズの寸法などに合わせて裁断されて用いられる。
【0156】
偏光板1は、第1の基材12/配向層22/偏光層21の積層体の形態をとることができる。さらに、偏光板1は、第1の基材12/配向層22/偏光層21以外の層又は膜をさらに積層した形態であってもよい。これらの層及び膜として、位相差フィルムを更に偏光板1に備えていてもよいし、反射防止層又は輝度向上フィルムを更に備えていてもよい。
【0157】
例えば、本実施形態の偏光板1は、1/4波長板を更に備えることで、円偏光板2となる。図3は、本発明の一実施形態における円偏光板の模式断面図である。円偏光板2は、一方の面に配向層22が配置された第1の基材12と、配向層22上に設けられた偏光層21と、第1の基材12の他方の面に配置された1/4波長板である位相差フィルム15とを含む。また、位相差フィルム15は、偏光子11の第2の面32上に位置してもよい。この場合、図4に示すように、円偏光板2’は、第1の基材12、配向層22、偏光層21及び位相差フィルム15の順に配置された形態を取ることもできる。
【0158】
円偏光板を作製する際、適当な粘着剤を用い、粘着剤から形成される粘着層を介して、第1の基材12又は偏光子11と、位相差フィルム15とを貼合してもよい。
【0159】
予め位相差性が付与されている第1の基材12を用いることで、第1の基材12自体が位相差層としての機能を兼ね備えていてもよい。第1の基材12自体を位相差フィルムとすることで、第1の基材12/配向層22/偏光層21の形態の円偏光板又は楕円偏光板とすることもできる。このように円偏光板を製造する際に用いられる1/4波長板は、可視光に対する面内位相差値が、波長が短くなるに従って小さくなる特性を有するものが好ましい。
【0160】
位相差フィルム15として1/2波長板を用いて、その遅相軸と偏光子11の吸収軸の角度をずらして設定したような直線偏光板ロールを作製し、偏光子11を形成した面と反対側に1/4波長板を更に形成することで広帯域の円偏光板とすることも可能である。
【0161】
位相差フィルム15として用いられる1/4波長板の波長450nmの光に対する複屈折率、波長550nmの光に対する複屈折率及び波長650nmの光に対する複屈折率は、下記式(II)及び(III)で示される関係を満足する逆波長分散性を有することが好ましい。式中、Δn(λ)は波長λnmの光に対する複屈折率を表す。
Δn(450)/Δn(550)≦1.00 (II)
1.00≦Δn(650)/Δn(550) (III)
このような逆波長分散特性を示す位相差フィルムは、特許第5463666号公報に記載の方法により作製することができる。
【0162】
本実施形態の偏光板1を加熱することにより湾曲部を形成する方法としては、インサート成型、射出成型、圧空成型、真空成型、金型プレス等が挙げられる。
【0163】
本実施形態における偏光板1は、熱収縮が小さく、薄いことから曲率半径の小さい湾曲部を有することができる。
【0164】
本発明の一つの側面として、第1の基材12は、アクリル系樹脂フィルム、または環状オレフィン系樹脂フィルムであることが好ましい。これらの熱可塑性樹脂基材を用いると、低温で加工しやすく、熱成型性が良いため曲率半径の小さい湾曲部を有する偏光板1を実現することができる。
【0165】
本発明の一つの側面として、液晶化合物は、以下に示す式(4-6)で表される化合物又は式(4-7)で表される化合物であることが好ましい。
【0166】
【化21】
【0167】
【化22】
【0168】
本発明の一つの側面として、二色性色素102は、式(2-15)で表される化合物、式(2-18)及び式(2-37)で表される化合物式からなる群から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。式(2-15)で表される化合物は、380nmに極大吸収波長を有する。式(2-18)で表される化合物は、490nmに極大吸収波長を有する。式(2-37)で表される化合物は、590nmに極大吸収波長を有する。これらの二色性色素を用いると、偏光特性の高い偏光板を実現することができる。二色性色素102は、式(2-15)で表される化合物、式(2-18)及び式(2-37)で表される化合物式を含むことがより好ましい。
【0169】
【化23】
【0170】
【化24】
【0171】
【化25】
【0172】
本発明の一つの側面として、偏光板1は、第1の熱可塑性樹脂基材(第1の基材12)としてアクリル系樹脂フィルムを含み、液晶化合物として式(4-6)で表される化合物及び式(4-7)で表される化合物を含み、二色性色素102として式(2-15)で表される化合物、式(2-18)で表される化合物及び式(2-37)で表される化合物を含むものが好ましい。このような偏光板1においては、第2の基材を設ける必要がなく、より薄い偏光板を実現することができるため、曲率半径の小さい湾曲部を有する偏光板を実現することができる。
【0173】
本発明の一つの側面として、偏光板1は、第1の熱可塑性樹脂基材(第1の基材12)の厚さが20μm~200μm、偏光層21の厚さが1μm~5μm、配向層22の厚さが10nm~1000nmであることが好ましい。このような偏光板1においては、より薄い偏光板を実現することができるため、曲率半径の小さい湾曲部を有する偏光板を実現することができる。
【0174】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る偏光板は、偏光子がPVAフィルムにヨウ素又は二色性色素が配向した偏光層を有している点が第1実施形態と異なる。また、本実施態様における偏光子は、偏光層が液晶化合物を含んでいないため、配向層を有していなくてよい。即ち、本実施形態の偏光子は、偏光層のみを有していてもよい。本実施形態の偏光子以外の構成については、第1実施形態と同じである。
【0175】
本実施形態の偏光層の具体例としては、PVAフィルムにヨウ素を吸着させている偏光層、PVAフィルムに二色性色素を吸着配向させている偏光層、及び分子内にカチオン基を含有する変性PVAフィルムの表面及び内部の少なくとも一つに二色性色素を有する偏光層等が挙げられる。なお、二色性色素としては、前述の二色性色素を用いることができる。
【0176】
PVAフィルムにヨウ素又は二色性色素が配向している偏光層を有する偏光子の厚さを15μm以下とすることで、曲面成型した後に高温環境下に置いた場合においても形状変化を小さくすることができる。
【0177】
PVAフィルムにヨウ素が配向している偏光層である場合、PVAフィルムの水分率は、通常、5~20重量%であり、8~15重量%が好ましい。水分率が5重量%を下回ると、偏光層の可撓性が失われ、偏光層がその乾燥後に損傷したり、破断したりする場合がある。また、水分率が20重量%を上回ると、偏光層の熱安定性に劣る場合がある。
【0178】
本実施形態における偏光子と積層される基材としては、第1実施形態に記載の第1の基材及び第2の基材を用いることができる。本実施形態における偏光子は厚さが15μm以下であるため、曲面成型した後に高温環境下置いた場合においても形状変化が小さい。
【0179】
本実施形態の偏光板は、第1実施形態と同様に、第1の基材のみが偏光子に積層されていてもよい。偏光板は、第1実施形態と同様に、偏光子、偏光子の第1の面上に位置する第1の基材、及び偏光子の第2の面上に位置する第2の基材を含んでいてもよい。
【0180】
このような偏光層の製造方法については特に限定されるものではなく、例えば、PVAフィルムを延伸後、PVAフィルムにヨウ素イオンを吸着させる方法、PVAフィルムを二色性色素により染色後延伸する方法、PVAフィルムを延伸後二色性色素で染色する方法、二色性色素をPVAフィルムに印刷後延伸する方法、及びPVAフィルムを延伸後二色性色素を印刷する方法等の公知の方法が挙げられる。偏光層の厚さを15μm以下にするためには、延伸前のPVAフィルムとして厚さが30μm以下のものを用いることが好ましい。
【0181】
例えば、ヨウ素をヨウ化カリウム溶液に溶解して高次のヨウ素イオンを調製し、このヨウ素イオンをPVAフィルムに吸着させて延伸した後、1~4重量%ホウ酸水溶液に浴温度30~40℃で浸漬して偏光層を製造する方法が挙げられる。あるいは、PVAフィルムを同様にホウ酸処理して一軸方向に3~7倍程度延伸し、0.05~5重量%の二色性染料水溶液に浴温度30~40℃で浸漬して染料を吸着させ、80~100℃で乾燥して熱固定して偏光層を製造する方法が挙げられる。
【0182】
また、本実施形態の偏光子の場合においても、1/4波長板を更に備えることで、円偏光板として用いることができる。
【0183】
本実施形態の偏光子を有する偏光板を加熱することにより湾曲部を形成する方法としては、前述の方法と同様にインサート成型、射出成型、圧空成型、真空成型、金型プレス等が挙げられる。
【0184】
本実施形態における偏光板は、偏光子の厚さが15μm以下であるため、従来の厚さ20μm~30μmの延伸PVAを偏光子として含む偏光板と比較して熱収縮が小さい。また、本実施形態における偏光板は、曲率半径の小さい湾曲部を有することができる。
【0185】
<偏光板の用途>
本実施形態における偏光板又は円偏光板は、湾曲部を有する様々な物品に用いることができるが、例えばサングラスのレンズ、三次元画像表示装置用のゴーグルのレンズ等に用いることができる。本実施形態における偏光板又は円偏光板は、曲率半径の小さい曲面上に偏光板又は円偏光板を貼合することができるため、デザイン性の向上に寄与する。
【0186】
本実施形態における偏光板は、表示面に曲面を有するさまざまな表示装置に用いることができる。表示装置とは、表示素子を有する装置であり、発光源として発光素子又は発光装置を含む。表示装置としては、例えば、液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、無機エレクトロルミネッセンス(EL)表示装置、電子放出表示装置(例えば電場放出表示装置(FED)、表面電界放出表示装置(SED))、電子ペーパー(電子インクや電気泳動素子を用いた表示装置、プラズマ表示装置、投射型表示装置(例えばグレーティングライトバルブ(GLV)表示装置、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を有する表示装置)、圧電セラミックディスプレイ等が挙げられる。
【0187】
液晶表示装置としては、例えば、透過型液晶表示装置、半透過型液晶表示装置、反射型液晶表示装置が挙げられる。これらの表示装置は、2次元画像を表示する表示装置であってもよいし、3次元画像を表示する立体表示装置であってもよい。
【0188】
本実施形態の偏光板は、特に有機EL表示装置又は無機EL表示装置の表示装置に有効に用いることができる。本実施形態における偏光板又は円偏光板は、曲率半径の小さい曲面上に偏光板又は円偏光板を貼合することができるため、表示装置の端や角に湾曲部を有する場合においてもその局面を覆うように偏光板又は円偏光板を貼合することができ、デザイン性の向上に寄与する。
【0189】
電子ペーパーとしては、光学異方性と染料分子配向のような分子により表示されるもの、電気泳動、粒子移動、粒子回転、相変化のような粒子により表示されるもの、フィルムの一端が移動することにより表示されるもの、分子の発色/相変化により表示されるもの、分子の光吸収により表示されるもの、電子とホールが結合して自発光により表示されるものなどが挙げられる。
【0190】
より具体的には、マイクロカプセル型電気泳動、水平移動型電気泳動、垂直移動型電気泳動、球状ツイストボール、磁気ツイストボール、円柱ツイストボール方式、帯電トナー、電子粉流体、磁気泳動型、磁気感熱式、エレクトロウェッテイング、光散乱(透明/白濁変化)、コレステリック液晶/光導電層、コレステリック液晶、双安定性ネマチック液晶、強誘電性液晶、2色性色素・液晶分散型、可動フィルム、ロイコ染料による発消色、フォトクロミック、エレクトロクロミック、エレクトロデポジション、フレキシブル有機ELなどが挙げられる。電子ペーパーは、テキストや画像を個人的に利用するものだけでなく、広告表示(サイネージ)等に利用されるものであってもよい。本実施形態の偏光板又は円偏光板によれば、電子ペーパーの厚みを薄くすることができる。
【0191】
立体表示装置としては、例えばマイクロポール方式のように交互に異なる位相差フィルムを配列させる方法が提案(特開2002-185983号公報)されているが、本実施形態の偏光板を用いると、印刷、インクジェット、フォトリソグラフィー等によりパターニングが容易であるため、表示装置の製造工程を短くすることができ、かつ位相差フィルムが不要となる。
【0192】
本実施形態における偏光板及び円偏光板は、特に、小さい曲率半径の湾曲部を有する表示装置に用いることができる。具体的には、画面の端や角の部分に湾曲部を有するスマートフォンに偏光板を貼合することができる。また、本実施形態の偏光板及び円偏光板をVR(ヴァーチャルリアリティ)用ヘッドマウントディスプレイに用いることができる。
【実施例
【0193】
以下、実施例を用いて本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
【0194】
〔曲面成型性の評価〕
偏光板の曲面成型は以下のように行った。中央部に直径10cmの穴が開いた金属板2枚の間に偏光板を挟持した。ヒートガンを用いて、偏光板を100℃~140℃に加熱した。加熱した偏光板に、任意の曲率半径を持った円柱のガラスを押し当て、曲面を成型した。偏光板の曲率半径は、湾曲部の直径と矢高から計算した。
曲面成型性の評価は、目視により行い、曲面が形成されており、基材または偏光子にクラックなどの不具合が発生していない場合に曲面成型性が良好であると判断し、そうでない場合を不良と評価した。
【0195】
〔偏光子の厚さの測定〕
偏光子の任意の5点を接触式膜厚計(デジタルマイクロメーター MH-15M;株式会社ニコン製)を用いて測定し、その平均値を算出することで偏光子の厚さを求めた。
【0196】
〔高温環境下における形状変化の評価〕
上記方法により曲面を形成した偏光板を、60℃又は80℃のオーブンに24時間投入した。その後、定規を用いて形状変化を評価した。曲率半径や高さなどの寸法が、オーブンに投入される前の状態で維持されていた場合に良好であると判断し、そうでない場合を不良と判断した。
【0197】
〔実施例1〕
[偏光子形成用組成物の調製]
下記の重合性液晶化合物、二色性色素、重合開始剤、レベリング材及び溶剤を下記の割合で混合した。得られた混合物を80℃で1時間攪拌することにより、偏光子形成用組成物を得た。なお、二色性色素は、特開2013-101328号公報に記載の化合物と同様に合成した。
【0198】
(重合性液晶化合物)
重合性液晶化合物として、式(4-6)で表される化合物を75質量部、式(4-7)で表される化合物を25質量部となるよう用いた。
【0199】
【化26】
【0200】
【化27】
【0201】
(二色性色素)
二色性色素として、式(2-15)で表される化合物(380nmに極大吸収波長を有する)を2.6質量部、式(2-18)で表される化合物(490nmに極大吸収波長を有する)を2.6質量部、式(2-37)で表される化合物(590nmに極大吸収波長を有する)を2.2質量部となるよう用いた。
【0202】
【化28】
【0203】
【化29】
【0204】
【化30】
【0205】
(他の成分)
重合開始剤として、2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369;チバスペシャルティケミカルズ社製)を6質量部となるよう用いた。
レベリング剤として、ポリアクリレート化合物(BYK-361N;BYK-Chemie社製)を1.2質量部となるよう用いた。
溶剤として、o-キシレンが250質量部となるよう用いた。
【0206】
[偏光板の製造方法]
第2の基材であるトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(コニカミノルタ株式会社製、KC4UY-TAC、厚さ40μm)のロールを10m/分の速度で連続的に巻出し、スロットダイコーターにより光配向層形成用組成物を吐出して、第1塗布膜を形成した。さらに、120℃に設定した通風乾燥炉中に2分間搬送させることで溶媒を除去し、第1乾燥膜を形成した。
【0207】
その後、フィルム搬送方向に対して0°方向に偏光した偏光UV光を第1乾燥膜に50mJ/cm(313nm基準)の強度となるように照射することで配向規制力を付与して、光配向層付き基材フィルムを作製した。光配向層面上に、スロットダイコーターにより偏光子形成用組成物を塗布し、第2塗布膜を形成した。さらに、120℃に設定した通風乾燥炉中に2分間搬送させることで溶媒を除去し、第2乾燥膜を形成した。
【0208】
その後、UV光を50mJ/cm(365nm基準)で照射して重合性液晶化合物を重合硬化させることで偏光子を形成した。その後、紫外線硬化型接着剤を介して第1の基材であるアクリル系樹脂フィルム(住友化学株式会社製、S001G)を偏光子上に張り合わせ、連続的にロール状に巻き上げることで、0°方向に吸収軸を有する偏光フィルムロールを作製した。
【0209】
このように作製した長尺の偏光フィルムロールから10cm角の大きさに切りだしたものを偏光板として用いて種々評価を行った。作製された偏光板の配向層の厚さは100nm、偏光層の厚さは2μmであった。配向層及び偏光層の厚さは、各層の任意の5点を干渉膜厚計、レーザー顕微鏡又は触針式膜厚計の測定し、その平均値を算出することで求めた。偏光板の曲面成型性の評価及び高温環境下における形状変化の評価結果を表1に示す。
【0210】
(実施例2~5、比較例1)
実施例2~5、比較例1の偏光板は、第1及び第2の基材、曲面成形を表1に示すように変更した以外は実施例1と同じ手順で作製した。なお、実施例4,5及び比較例1では、偏光板に第2の基材を設けなかった。なお、表1中のCOPは、環状オレフィン系樹脂フィルム(日本ゼオン株式会社製)を示す。
【0211】
(実施例6)
実施例6の偏光板は、以下のように作製した。第1の基材であるアクリル樹脂(株式会社カネカ製)上に、延伸PVAをヨウ素で染色した偏光子(住友化学株式会社製)を貼合した。偏光子のもう一方の面に、接着剤を介して、TACフィルムを貼合した。この偏光子の水分率は、10重量%であった。
【0212】
(実施例7~10、比較例2)
実施例7~10及び比較例2の偏光板は、第1及び第2の基材を表1に示すように変更した以外は実施例6と同じ手順で作製した。なお、実施例9、10、及び比較例2では、偏光板に第2の基材を設けなかった。
【0213】
【表1】
【0214】
実施例1~5の偏光板は、曲面成型性に優れ、60℃及び80℃の環境下においても形状の変化は見られなかった。実施例6~10の偏光板は、曲面成型性に優れ、60℃の環境下で形状の変化が見られなかった。しかしながら、80℃の環境下においては形状変化が起こった。この原因としては、延伸PVAが80℃で延伸方向に収縮したためと考えられる。また、第1の基材としてトリアセチルセルロースフィルムを用い、第2の基材を設けなかった比較例1及び2では、曲面成型性が悪かった。そのため、高温環境下での形状変化を評価できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0215】
本発明の偏光板は、熱成型による収縮が抑制されており、曲率半径の小さい湾曲部を有する対象物に貼合することができる。
【符号の説明】
【0216】
1,1’・・・偏光板、2,2’・・・円偏光板、11・・・偏光子、12・・・第1の基材、13・・・湾曲部、14・・・第2の基材、15・・・位相差フィルム、101・・・液晶化合物の硬化物、102・・・二色性色素、21・・・偏光層、22・・・配向層
図1
図2
図3
図4