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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240909BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240909BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
H01L21/304 643C
H01L21/78 F
H01L21/304 643A
H01L21/304 622Q
H01L21/304 631
B24B55/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020122718
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019116
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】中塚 敦
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-039205(JP,A)
【文献】特開2005-000722(JP,A)
【文献】特開平10-092784(JP,A)
【文献】特開2015-109324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/301
B24B 55/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状物を保持し回転可能なスピンナーテーブルと、該スピンナーテーブルに保持された板状物に洗浄水を供給する洗浄水供給手段とを備えた洗浄装置であって、
該洗浄水供給手段は、洗浄水を噴射する洗浄水噴射口を備えたノズルと、該ノズルに別部材として装着された内側スカートと、該内側スカートを覆い、隙間をもって装着された外側スカートと、を備え、
該外側スカートの裾は該内側スカートの裾よりも下方に突出した環状部を備え、
該内側スカートと該外側スカートとの隙間には、吸引源に連通する吸引孔が連通されており、
該ノズルには、水源とエアー源とに連通された連通路が形成され、該洗浄水噴射口から洗浄水とエアーとの混合2流体が噴射され、
該混合2流体によって該板状物を洗浄した際に発生したミストが、該外側スカートの裾と該内側スカートの裾とにおける高さ違いにより形成される経路と該隙間を通り、該吸引孔によって吸引される洗浄装置。
【請求項2】
該環状部は、
板状物の上面と隙間をもって位置付けられる環状底と、該環状底の外縁から立設される環状側壁と、該環状側壁の上端部側を閉塞する環状天壁と、から構成される環状室と、
該環状室に水を供給する水供給部と、を備え、
該環状底には、該環状室に供給された水を排出する環状室噴射口が形成され、該環状室噴射口と、該環状底とにより、該スピンナーテーブルに保持される板状物の上面に水シールを形成する水シール形成部を構成する請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
該環状室噴射口は、外側から内側に向かって傾斜している請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
該環状室噴射口は、該環状底に形成された環状のスリットである請求項2、又は3に記載の洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板状物を保持し回転可能なスピンナーテーブルと、該スピンナーテーブルに保持された板状物に洗浄水を供給する洗浄水供給手段とを備えた洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、研削装置によって裏面が研削されて所望の厚みに形成された後、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され、携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
研削装置は、ウエーハを保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持されたウエーハを研削する研削手段と、研削済みのウエーハを洗浄する洗浄手段と、を少なくとも備え、ウエーハを所望の厚みに形成することができる。
【0004】
また、洗浄手段は、ウエーハを保持し、回転可能なスピンナーテーブルと、スピンナーテーブルに保持されたウエーハに洗浄水を供給するノズルと、洗浄時にスピンナーテーブルとノズルとを覆い、外部へのミストの飛散を防止するカバーと、を備えている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平07-211685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記した洗浄手段による洗浄が完了した後も、カバー内ではコンタミが混入したミストが漂い続け、ミスト及び凝集した水滴が、洗浄、乾燥後のウエーハの上面に付着して、洗浄済みのウエーハが再び汚染される、という問題がある。
【0007】
さらに、ウエーハの洗浄が完了した後、スピンナーテーブルとノズルとを覆うカバーを開放してウエーハを洗浄手段から搬出する際、カバー内に漂っていたミストが洗浄手段の外側に拡散し、研削装置内の他の箇所を汚染したり、研削装置が配設されたクリンルームを汚染したりする、という問題がある。特に、ノズルから洗浄水を供給する際に、該洗浄水にエアーを混合し混合2流体とする場合は、ミストが長く漂いやすく、深刻な問題となる。このような問題は、上記した研削装置に限定されず、洗浄手段が配設されるダイシング装置、レーザー加工装置等においても起こり得る問題である。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、ミスト及び凝集した水滴が、洗浄、乾燥後の板状物に付着して、洗浄済みの板状物を汚染するという問題を解消することができる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、板状物を保持し回転可能なスピンナーテーブルと、該スピンナーテーブルに保持された板状物に洗浄水を供給する洗浄水供給手段とを備えた洗浄装置であって、該洗浄水供給手段は、洗浄水を噴射する洗浄水噴射口を備えたノズルと、該ノズルに別部材として装着された内側スカートと、該内側スカートを覆い、隙間をもって装着された外側スカートと、を備え、該外側スカートの裾は該内側スカートの裾よりも下方に突出した環状部を備え、該内側スカートと該外側スカートとの隙間には、吸引源に連通する吸引孔が連通されており、該ノズルには、水源とエアー源とに連通された連通路が形成され、該洗浄水噴射口から洗浄水とエアーとの混合2流体が噴射され、該混合2流体によって該板状物を洗浄した際に発生したミストが、該外側スカートの裾と該内側スカートの裾とにおける高さ違いにより形成される経路と該隙間を通り、該吸引孔によって吸引される洗浄装置が提供される。
【0010】
環状部は、板状物の上面と隙間をもって位置付けられる環状底と、該環状底の外縁から立設される環状側壁と、該環状側壁の上端部側を閉塞する環状天壁と、から構成される環状室と、該環状室に水を供給する水供給部と、を備え、該環状底には、該環状室に供給された水を排出する環状室噴射口が形成され、該環状室噴射口と、該環状底とにより、該スピンナーテーブルに保持される板状物の上面に水シールを形成する水シール形成部を構成するようにすることが好ましい。
【0011】
該環状室噴射口は、外側から内側に向かって傾斜しているようにすることが好ましく、また、該環状室噴射口は、該環状底に形成された環状のスリットとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗浄装置は、板状物を保持し回転可能なスピンナーテーブルと、該スピンナーテーブルに保持された板状物に洗浄水を供給する洗浄水供給手段とを備えた洗浄装置であって、該洗浄水供給手段は、洗浄水を噴射する洗浄水噴射口を備えたノズルと、該ノズルに別部材として装着された内側スカートと、該内側スカートを覆い、隙間をもって装着された外側スカートと、を備え、該外側スカートの裾は該内側スカートの裾よりも下方に突出した環状部を備え、該内側スカートと該外側スカートとの隙間には、吸引源に連通する吸引孔が連通されており、該ノズルには、水源とエアー源とに連通された連通路が形成され、該洗浄水噴射口から洗浄水とエアーとの混合2流体が噴射され、該混合2流体によって該板状物を洗浄した際に発生したミストが、該外側スカートの裾と該内側スカートの裾とにおける高さ違いにより形成される経路と該隙間を通り、該吸引孔によって吸引されることから、板状物の洗浄面を洗浄することにより発生したコンタミが混入したミストは、洗浄水供給手段の外部に漏れ出ることがなく、内側スカートと外側スカートとの間の隙間から吸引されて除去される。よって、ミストや、該ミストが凝集した水滴が洗浄、乾燥された板状物の洗浄面に付着して再び板状物を汚染するという問題が解消される。また、洗浄が完了し板状物を洗浄装置から搬出する際にも、コンタミが混入したミストが拡散して洗浄装置が配設された加工装置の内部を汚染したり、クリンルームを汚染したりするという問題も解消する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態の洗浄装置が配設された研削装置の斜視図である。
図2図1に示す研削装置に採用された洗浄装置の洗浄水供給手段、及びスピンナーテーブルの斜視図である。
図3図2に示す洗浄水供給手段の洗浄水供給部、及び洗浄水供給部の分解斜視図である。
図4】(a)図3に示す洗浄水供給部の断面図、(b)(a)に示す洗浄水供給部のA-A断面図である。
図5】ウエーハを洗浄する洗浄工程の実施態様を示す斜視図である。
図6図5に示す洗浄工程が実施されている状態のスピンナーテーブル及び洗浄水供給部の断面の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に基づいて構成される洗浄装置に係る実施形態が適用された研削装置1について、添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
【0015】
図1に示すように、研削装置1は、略直方体状の装置ハウジング2を備えている。図1において、装置ハウジング2の右側奥には、支持壁21が立設されている。この支持壁21の内側壁面には、上下方向に延びる案内レール22、22及び案内レール23、23が設けられている。一方の案内レール22、22には粗研削手段としての粗研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されており、他方の案内レール23、23には仕上げ研削手段としての仕上げ研削ユニット4が上下方向に移動可能に装着されている。
【0016】
粗研削ユニット3は、ユニットハウジング31と、ユニットハウジング31に回転自在に支持された回転軸31aの下端に装着されたホイールマウント32と、ホイールマウント32に装着され、下面に環状に複数の研削砥石33aが配置された粗研削ホイール33と、該ユニットハウジング31の上端に装着されホイールマウント32を矢印R3で示す方向に回転させる電動モータ34と、ユニットハウジング31を装着し案内レール22、22に支持された移動基台35とを備えている。さらに、研削装置1は、粗研削ユニット3の移動基台35を上下方向に研削送りする研削送り機構36を備えている。研削送り機構36は、支持壁21に案内レール22、22と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド361と、該雄ねじロッド361を回転駆動するためのパルスモータ362と、移動基台35に装着され雄ねじロッド361と螺合する図示しない雌ねじブロックを備えており、パルスモータ362によって雄ねじロッド361を正転及び逆転駆動することにより、粗研削ユニット3を上下方向に移動させる。
【0017】
仕上げ研削ユニット4も上記粗研削ユニット3と略同様に構成されており、ユニットハウジング41と、ユニットハウジング41に回転自在に支持された回転軸41aの下端に装着されたホイールマウント42と、ホイールマウント42に装着され下面に環状に複数の研削砥石43aが配置された仕上げ研削ホイール43と、ユニットハウジング41の上端に装着されホイールマウント42を矢印R4で示す方向に回転させる電動モータ44と、ユニットハウジング41を装着し案内レール23、23に支持された移動基台45とを備えている。なお、仕上げ研削ユニット4の研削砥石43aは、粗研削ユニット3の研削砥石33aよりも細かい砥粒によって構成されている。図示の実施形態における研削装置1は、仕上げ研削ユニット4の移動基台45を案内レール23、23に沿って移動する研削送り機構46を備えている。研削送り機構46は、上記支持壁21に案内レール23、23と平行に上下方向に配設され回転可能に支持された雄ねじロッド461と、雄ねじロッド461を回転駆動するためのパルスモータ462と、移動基台45に装着され雄ねじロッド461と螺合する図示しない雌ねじブロックを備えており、パルスモータ462によって雄ねじロッド461を正転及び逆転駆動することにより、仕上げ研削ユニット4を上下方向に移動させる。
【0018】
電動モータ34及び電動モータ44によって回転させられる回転軸31a、回転軸41aの回転軸端31b、41bには、図示しない研削水供給手段が接続されている。該研削水供給手段は、圧送ポンプが内蔵された研削水タンクを備え、該研削水タンクから圧送される研削水L1を、回転軸31a、及び回転軸41aに導入し、回転軸31a、回転軸41aの内部に形成された貫通路を介して、粗研削ホイール33、及び仕上げ研削ホイール43の下端面に供給する。
【0019】
図示の実施形態における研削装置1は、上記支持壁21の前側において装置ハウジング2の上面と略面一となるように配設されたターンテーブル5を備えている。このターンテーブル5は、比較的大径の円盤状に形成されており、図示しない回転駆動機構によって矢印R5で示す方向に適宜回転させられる。図示の実施形態の場合、ターンテーブル5には3個のチャックテーブル6が均等な間隔で配設されている。このチャックテーブル6は、円盤状の枠体61と、ポーラスセラミックスによって形成された吸着チャック62とからなっており、吸着チャック62に載置される被加工物を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持する。枠体61は、吸着チャック62を支持すると共に吸着チャック62を囲繞する外縁部を構成する。吸着チャック62の上面と枠体61の外縁部は、その高さが面一になるように構成されている。このように構成されたチャックテーブル6は、図示しない回転駆動機構によって矢印R6で示す方向に回転させられる。ターンテーブル5に配設された3個のチャックテーブル6は、ターンテーブル5が矢印R5で示す方向に120度回転させられる毎に、被加工物搬入・搬出域A→粗研削加工域B→仕上げ研削加工域C→被加工物搬入・搬出域Aに順次移動させられる。
【0020】
図示の研削装置1は、被加工物搬入・搬出域Aに対して一方側に配設され研削加工前の被加工物であるウエーハ10をストックする第1のカセット7と、被加工物搬入・搬出域Aに対して他方側に配設され研削加工後のウエーハ10をストックする第2のカセット8と、第1のカセット7と被加工物搬入・搬出域Aとの間に配設され被加工物の中心合わせを行う仮置き手段9と、被加工物搬入・搬出域Aと第2のカセット8との間に配設され研削加工後のウエーハ10の研削面(上面)を洗浄すべく構成された本実施形態に係る洗浄装置11とを備えている。さらに、研削装置1は、第1のカセット7内に収納されたウエーハ10を仮置き手段9に搬出するとともに洗浄装置11によって洗浄されたウエーハ10を第2のカセット8に搬送する第1の搬送手段12と、仮置き手段9上に載置され中心合わせされたウエーハ10を被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に搬送する第2の搬送手段13と、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に載置されている研削加工後のウエーハ10を洗浄装置11に搬送する第3の搬送手段14と、装置ハウジング2の手前側に配設され、研削作業を指示したり、加工条件を指定したりするための操作パネル15と、を備えている。なお、図1では、洗浄装置11の上方を覆う天板11aを説明の都合上、切り欠いて2点鎖線で示している。
【0021】
なお、本実施形態の研削装置1には、上記した構成の他、研削加工時の状況を表示し、タッチパネル機能を備えることにより、適宜作業指示を実施可能に構成された表示モニタ、各作動部を制御するための制御手段、粗研削加工域B及び仕上げ研削加工域Cにそれぞれ隣接して配設された被加工物の厚みを計測する厚み計測手段、上記した研削装置1全体を覆うハウジング等が配設されている(いずれも図示は省略している)。
【0022】
図1に示すように、洗浄装置11は、洗浄装置11の天板11aの下方側に、ウエーハ10を保持し回転可能に構成されたスピンナーテーブル120と、スピンナーテーブル120に保持された板状物に洗浄水を供給する洗浄水供給手段130とを収容する収容部11bを備えている。さらに、収容部11bには、洗浄水供給手段130によってウエーハ10を洗浄する際に上昇して、スピンナーテーブル120、及び洗浄水供給手段130を天板11aと共に覆い密閉空間を形成する略円筒状のカバー部材(図示は省略している)が配設されている。
【0023】
図2に示すように、スピンナーテーブル120は、図示しないモータによって図中矢印R1で示す方向に回転させられる回転軸122と、回転軸122の上端部に配設された枠体124と、枠体124によって囲繞されウエーハ10を吸引保持する吸着チャック126とを備えている。吸着チャック126は、例えば、通気性を有するポーラスセラミックスによって形成されており、回転軸122を介して、吸着チャック126の表面に吸引負圧を供給する吸引源(図示は省略している)に接続されている。
【0024】
図2に示すように、本実施形態の洗浄水供給手段130は、洗浄水供給部131と揺動手段132とを備えている。洗浄水供給部131は、ノズル134と、内側スカート135と、外側スカート136とを備えている。
【0025】
ノズル134は、洗浄水としての水L2を噴射するものであり、水源140から第一水供給路142を介して水L2が導入される洗浄水導入口134aと、エアー供給源150からエアー供給路152を介してエアーAを導入するエアー導入口134bとを備えている。
【0026】
図3に示すように、内側スカート135は、縮径されたノズル保持部135aと、該ノズル保持部135aよりも拡径されたスカート部135bとを備え、外側スカート136の下方側から内部に挿入されて、外側スカート136の上壁136aに形成された開口136bから上方に突出させられる。図4(a)に示すように、外側スカート136は、内側スカート135に対して隙間S1をもって装着される。
【0027】
図4(a)に示すように、ノズル134の内部には、連通路134cが形成されている。図2も併せて参照することにより理解されるように、連通路134cは、第一水供給路142及びエアー供給路152を介して水源140及びエアー源150に連通されている。連通路134c内において洗浄水導入口134aが配設される部位には、オリフィス部が形成されて所謂ベンチュリ機構を構成されており、エアー導入口134bから高圧のエアーAが導入されることで、ノズル134の先端部に形成された洗浄水噴射口134dから、水L2とエアーAとが混合させられた混合2流体Fが噴射される。なお、混合2流体Fを形成する機構はこれに限定されず周知の構成を採用することができる。
【0028】
図4(a)に示すように、外側スカート136は、開口136bが形成された上壁136aと、上壁136aから垂下するように形成された円筒状のスカート壁136cと、スカート壁136cの裾に形成され、内側スカート135の裾部135cよりも下方に突出した環状部137と、を備えている。外側スカート136の上壁136aには、内側スカート135と外側スカート136との間に形成される隙間S1を、図2に示す吸引源160に連通する吸引孔136dが形成されている。吸引源160には、吸引ポンプと、気液分離器とが配設され、該気液分離器には、ウエーハ10の洗浄に使用された混合2流体Fに含まれるコンタミ、水L2を分離し貯留する貯留槽、及び分離されたエアーを浄化して排出するエアフィルター(いずれも図示は省略する)等が配設される。
【0029】
環状部137は、外側スカート136のスカート壁136cの下端から外方向に広がるように形成され、ウエーハ10の上面(洗浄面)と隙間(例えば1~2mm)をもって位置付けられる環状底137a、環状底137aの外周縁から立設される略円筒状の環状側壁137b、及び環状底137aと対向し環状側壁137bの上端部側を閉塞する環状天壁137cにより構成される環状室S2と、環状室S2に水L3を供給する水供給部137dとを備えている。図2に示すように、水供給部137dは、第二水供給路144を介して、水源140に接続されている。図4(a)から理解されるように、環状底137aには、環状室S2に供給された水L3を環状底137aの下面側に排出する環状室噴射口137eが、外側から内側に向かって傾斜するように形成され、環状室噴射口137eと、環状底137aとにより、スピンナーテーブル120に保持されるウエーハ10の洗浄面に水シールを形成する水シール形成部138を形成している。なお、図4(b)に示す図4(a)のA-A断面図から理解されるように、本実施形態の環状室噴射口137eは、環状底137aに切れ目のない環状のスリットとして形成されている。
【0030】
内側スカート135のノズル保持部135aの外周と、外側スカート136の上部に形成された開口136bの内周との間に図示を省略するねじ構造を採用することで、両者を強固に固定することができる。また、ノズル134は、外側スカート136の上壁136aから突出されたノズル保持部135a内に挿入され圧入、又はナット等により固定される。なお、ノズル134、内側スカート135、及び外側スカート136を連結し装着する構成はこれに限定されず、当業者において知られた周知の締結構造を採用することができる。
【0031】
図2に示すように、揺動手段132は、収容部11bに配設された回転軸132aと、回転軸132aによって揺動される揺動アーム132bとを備えている。回転軸132aには、揺動アーム132bを揺動させるモータ(図示は省略している)が接続されている。なお、回転軸132a及び揺動アーム132bは、任意に設定されるものであり、本発明において必須の構成ではない。
【0032】
図2に示すように、第一水供給路142、第二水供給路144、エアー供給路152、及び吸引経路162上には、開閉バルブ146、148、154、164が配設されている。図示しない制御手段によりその開閉が制御される。
【0033】
本実施形態の洗浄装置11を備えた研削装置1は、概ね上記したとおりの構成を備え、以下に、その機能、作用について説明する。
【0034】
図1に示す研削装置1の第1のカセット7から、第1の搬送手段12を作動して、未加工のウエーハ10を搬出し、仮置き手段9に載置して、中心合わせを実施する。次いで、仮置き手段9から、第2の搬送手段13を作動して、ウエーハ10を搬出し、保護テープTが貼着された表面側を下方に、裏面10b側を上方に向けて、研削装置1の被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6の吸着チャック62上に載置する。次いで、チャックテーブル6の吸着チャック62に吸引負圧を供給する図示しない吸引手段を作動することによりウエーハ10をチャックテーブル6上に吸引保持する。
【0035】
ウエーハ10を、被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6上に吸引保持したならば、ターンテーブル5をR5で示す方向に回転して、ウエーハ10を吸引保持したチャックテーブル6を粗研削ユニット3の直下に位置付ける。次いで、図1に示すように、粗研削ユニット3の回転軸31aを矢印R3で示す方向に例えば6000rpmで回転させつつ、チャックテーブル6を図1において矢印R6で示す方向に例えば300rpmで回転させる。そして、研削砥石33aをウエーハ10の裏面10bに接触させ、研削ホイール32を、例えば1μm/秒の研削送り速度で下方、すなわち、チャックテーブル6に対し垂直な方向に研削送りする。この際、回転軸31aを介して粗研削ホイール32の下面からウエーハ10の研削面、すなわち裏面10bに対して研削水L1を供給する。また、これと同時に、図示しない接触式の測定ゲージによりウエーハ10の厚みを測定しながら研削を進め、ウエーハ10の裏面10bを粗研削して粗研削における所望の厚さとして、粗研削工程を完了する。
【0036】
上記したように、粗研削工程が完了したならば、ターンテーブル5を矢印R5で示す方向に回転して、チャックテーブル6を仕上げ研削ユニット4の直下に移動させる。次いで、仕上げ研削ユニット4の回転スピンドル41aを矢印R4の方向に例えば6000rpmで回転させつつ、チャックテーブル6を矢印R6の方向に例えば300rpmで回転させる。そして、研削砥石43aをウエーハ10の裏面10bに接触させ、研削ホイール42を、例えば0.1μm/秒の研削送り速度で下方、すなわち、チャックテーブル6に対し垂直な方向に研削送りする。この際、回転軸41aを介して仕上げ研削ホイール42の下面からウエーハ10の研削面、すなわち裏面10bに対して研削水L1が供給される。また、これと同時に、図示しない接触式の測定ゲージによりウエーハWの厚みを測定しながら研削を進め、ウエーハ10を仕上げ研削における所望の厚さとして、仕上げ研削工程を完了する。上記した粗研削工程、及びこの仕上げ研削工程を実施することで、研削工程が完了する。
【0037】
上記した研削工程が完了したならば、さらにターンテーブル5を矢印R5で示す方向に回転して研削されたウエーハ10を保持したチャックテーブル6を被加工物搬入・搬出域Aに位置付ける。被加工物搬入・搬出域Aに位置付けられたチャックテーブル6から、第3の搬送手段14を作動して、ウエーハ10の裏面10bを吸引して洗浄装置11に搬送する。このとき、ウエーハ10を受け入れる洗浄装置11においては、洗浄水供給手段130をスピンナーテーブル120の吸着チャック126を避けた待機位置に移動させておく。第3の搬送手段14によって搬送されたウエーハ10はスピンナーテーブル120の吸着チャック126上に載置されて吸引保持され、以下に説明する洗浄工程を実施する。
【0038】
図5に示すように、スピンナーテーブル120にウエーハ10を載置したならば、洗浄装置11の収容部11bに格納された図示を省略する略円筒状のカバーを上昇させて、スピンナーテーブル120、及び洗浄水供給手段130を、天板11a(図1を参照)と共に囲んで密閉空間を形成する。次いで、待機位置にある洗浄水供給部131を、ウエーハ10が保持されたスピンナーテーブル120上に位置付ける。洗浄水供給部131をスピンナーテーブル120上に位置付ける際には、図6に示すように、洗浄水供給部131を構成する外側スカート136の環状部137の環状底137aと、スピンナーテーブル120に保持されたウエーハ10の裏面10b、すなわち洗浄面との間に僅かな隙間が形成されるように洗浄水供給部131の高さが調整されている。
【0039】
次いで、スピンナーテーブル120を、図5の矢印R1で示す方向に回転させ(例えば300rpm)、揺動アーム132bによって洗浄水供給部131を矢印R2で示す方向に揺動(例えば1揺動10秒)させる。また、これと同時に、水源140、エアー源150、及び吸引源160を作動すると共に、開閉バルブ146、148、154、及び164(図2を参照)を開とする。これにより、図5に示すノズル134にエアーAと、水L2とが導入され、両者が混合された混合2流体Fが内側スカート135の内部に噴射される。また、第二水供給路144を介して環状部137内に形成された環状部S2に水L3が供給され、図6に示すように、環状底137aと環状室噴射口137eとにより形成された水供給部138によりウエーハ10の上面に環状に水シール139を形成する。
【0040】
上記したように環状に形成された水シール139の内側の領域には、混合2流体Fが供給されて、ウエーハ10の上面を揺動しながら洗浄する。また、内側スカート135と外側スカート136との間で形成された隙間S1からは、外側スカート136の吸引孔136dを介して洗浄に供されコンタミが混入した混合2流体Fが吸引される。この際、混合2流体Fが供給される空間は、水シール139によって囲まれ閉塞されており、混合2流体Fが水シール139を超えて洗浄水供給部131の外部に漏れることが防止される。特に、本実施形態においては、環状室噴射口137eが外側から内側に向けて傾斜し、水L3が傾斜に沿って内側方向に噴射されることから、水シール139が混合2流体Fに押し出されることなく良好に維持される。このようにして、所定の洗浄時間だけ洗浄工程が実施されたならば、まず、開閉バルブ146、148を閉じると共に水源140を停止し、水L2、水L3の供給を停止する。次いで、開閉バルブ154を閉じると共に、エアー源150を停止して、エアーAの供給を停止し、吸引源160を停止すると共に、開閉バルブ164を閉じる。そして、スピンナーテーブル120を3000rpmで回転し、ウエーハ10を乾燥させる。
【0041】
上記したようにウエーハ10の上面の洗浄、及び乾燥が完了したならば、図示が省略されたカバーが下降されて、洗浄水供給手段130を、ウエーハ10の搬出の邪魔にならない待機位置に移動させる。そして、洗浄されたウエーハ10は、第1の搬送手段12によって吸着されて、第2のカセット8の所定の位置に搬送されて収容され、洗浄工程が完了する。
【0042】
上記した構成によってウエーハ10の上面を混合2流体Fによって洗浄した際に発生したコンタミが混入したミストは、洗浄水供給手段130の外部に漏れ出ることがなく、内側スカート135と外側スカート136との間の隙間S1から吸引されて除去される。よって、ミストや、該ミストが凝集した水滴が洗浄、乾燥されたウエーハ10の洗浄面に付着して再びウエーハ10の洗浄面を汚染するという問題が解消される。また、洗浄が完了し該カバーが下降して、洗浄装置11のスピンナーテーブル120や洗浄水供給手段130を収容する収容部11bが開放された場合も、収容部11bには、ミストが殆ど残留していないことから、ウエーハ10を洗浄装置11から搬出する際にも、コンタミが混入したミストが拡散して研削装置1の内部を汚染したり、クリンルームを汚染したりするという問題も解消する。
【0043】
なお、上記した実施形態では、図1に示す洗浄装置11の収容部11bに、洗浄工程が実施されている最中において、スピンナーテーブル120、及び洗浄水供給手段130を囲い密閉空間を形成するカバーを上昇させるようにしたが、本発明はこれに限定されず、内側スカート135と外側スカート136との間に形成される隙間S1から混合2流体Fを良好に吸引して除去できる場合は、該カバーを廃止することが可能である。
【0044】
また、上記した実施形態では、ノズル134に、エアーAと洗浄水として供給される水L2を導入して、ノズル134の洗浄水噴射口134dから混合2流体Fを噴射するようにしたが、本発明はこれに限定されず、ノズル134からは、洗浄用の水L2のみを噴射するようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記した実施形態では、外側スカート136の環状部137の環状底137aに、切れ目のない環状のスリットで形成した環状室噴射口137eを配設し、環状底137aとウエーハ10の洗浄面との間に環状の水シール139を形成するようにしたが、本発明はこれに限定されず、上記した実施形態において環状室噴射口137eのスリットが形成された位置に沿って、複数の貫通孔を配設して、上記と同様に環状の水シール139を形成するようにしてもよい。
【0046】
さらにいえば、上記した実施形態では、本発明に基づき形成された洗浄装置11を、研削装置1に採用した例を示したが、本発明はこれに限定されず、ダイシング装置、レーザー加工装置に採用するものであってもよく、また、加工装置のみならず、専ら板状物の洗浄のみを実施する洗浄装置に採用されてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1:研削装置
2:装置ハウジング
3:粗研削ユニット
4:仕上げ研削ユニット
5:ターンテーブル
6:チャックテーブル
7:第1のカセット
8:第2のカセット
9:仮置き手段
10:ウエーハ
10b:裏面
11:洗浄装置
11a:天板
11b:収容部
12:第1の搬送手段
13:第2の搬送手段
14:第3の搬送手段
21:支持壁
22、23:案内レール
31:ユニットハウジング
31a:回転軸
33:粗研削ホイール
33a:研削砥石
34:電動モータ
35:移動基台
36:研削送り機構
41:ユニットハウジング
41a:回転軸
43:研削ホイール
43a:研削砥石
44:電動モータ
45:移動基台
46:研削送り機構
120:スピンナーテーブル
122:回転軸
124:枠体
126:吸着チャック
130:洗浄水供給手段
131:洗浄水供給部
132:揺動手段
132a:回転軸
132b:揺動アーム
134:ノズル
134a:洗浄水導入口
134b:エアー導入口
134c:連通路
135:内側スカート
135a:ノズル保持部
136:外側スカート
136a:上壁
136b:開口
136c:スカート壁
136d:吸引孔
137:環状部
137a:環状底
137b:環状側壁
137c:環状天壁
137d:水供給部
137e:環状室噴射口
138:水シール形成部
139:水シール
140:水源
142:第一水供給路
144:第二水供給路
146:開閉バルブ
148:開閉バルブ
150:エアー源
152:エアー供給路
154:開閉バルブ
160:吸引源
162:吸引経路
164:開閉バルブ
A:被加工物搬入・搬出域
B:粗研削加工域
C:仕上げ研削加工域
F:混合2流体
L1:研削水
L2:洗浄水
T:保護テープ
S1:隙間
S2:環状室
図1
図2
図3
図4
図5
図6