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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】注射デバイス用のタッチ感応ラベル
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/31 20060101AFI20240909BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20240909BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
A61M5/31 520
A61M5/24 502
A61M5/315 550A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020564467
(86)(22)【出願日】2019-05-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 EP2019062579
(87)【国際公開番号】W WO2019219797
(87)【国際公開日】2019-11-21
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】18305608.4
(32)【優先日】2018-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】マウリス・トーポレク
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/081051(WO,A1)
【文献】特表2016-512966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/31
A61M 5/24
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイス用のタッチ感応ラベルであって:
注射デバイス(1)のハウジング(10)に取り付けられるように構成された可撓性基板(101)と、
該基板(101)上に位置し、少なくとも1つの標示(111)を視覚的に表示するように構成された電子ディスプレイ(110)と、
基板(101)上に位置し、電子ディスプレイ(110)に電気的に接続可能なタッチ感応区域(120)と、
電子ディスプレイ(110)に接続され、使用者がタッチ感応区域(120)に触れたまたはそれを押し下げたことに応答して、少なくとも1つの標示(111)の外観を変更するように構成されたプロセッサ(140)と
を含み、
タッチ感応区域(120)は、電子ディスプレイ(110)に一体化され、タッチ感応区域(120)は、少なくとも1つの容量性スイッチを含む、
前記ラベル。
【請求項2】
基板(101)上に位置し、タッチ感応区域(120)に電気的に接続され、電子ディスプレイ(110)およびプロセッサ(140)に電気的に接続された電子回路(130)をさらに含む、請求項1に記載のラベル。
【請求項3】
可撓性基板(101)の下面は、少なくとも部分的に接着剤(102)を備える、請求項1または2に記載のラベル。
【請求項4】
電子回路(130)は電池(150)を含む、請求項2または3に記載のラベル。
【請求項5】
電子回路(130)は、ユーザ活動の数およびユーザ活動の時点のうちの少なくとも1つを記憶するように構成されたデータ記憶装置(144)を含む、請求項2~のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項6】
電子回路(130)は、外部電子デバイス(200)との電子信号の無線伝送のためのアンテナ(160)を含む、請求項2~のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項7】
電子回路(130)は、ラベル(100)が注射デバイス(1)に取り付けられたとき、注射デバイス(1)の用量トラッカ(176)およびプリセレクタ(95)のうちの少なくとも1つの位置および/または回転状態のうちの少なくとも1つを判定するように構成されたセンサ(170)を含む、請求項2~のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項8】
センサ(170)は、互いから所定の距離をあけて配置された少なくとも第1のセンサセグメント(171)および第2のセンサセグメント(172)を含み、該第1および第2のセンサセグメント(171、172)の各々は、用量トラッカ(176)およびプリセレクタ(95)のうちの1つのインジケータ(175)の存在または位置を検出するように構成される、請求項に記載のラベル。
【請求項9】
プロセッサ(140)は、
用量トラッカ(176)の判定された長手方向もしくは回転方向位置が所定の位置に整合した場合、または
用量トラッカ(176)の判定された長手方向もしくは回転方向位置が所定の位置に整合しない場合、
電子ディスプレイ(110)上に視覚的標示(111)および視覚的確認通知(112)のうちの少なくとも1つを生成するように構成される、請求項またはに記載のラベル。
【請求項10】
電子回路(130)は、少なくとも1つの印刷電子構成要素を含む、請求項2~のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項11】
電子ディスプレイ(110)は、電気泳動ディスプレイおよび薄膜エレクトロルミネッセントディスプレイのうちの1つである、請求項1~10のいずれか1項に記載のラベル。
【請求項12】
薬剤の用量を設定および注射する注射デバイスであって:
薬剤容器(6)を収容するように構成されたハウジング(10)と、
薬剤の用量を薬剤容器(6)から抜き出しまたは排出するように構成され、薬剤の用量を生物組織に注射するように構成された駆動機構(8)と、
ハウジング(10)に取り付けられた請求項1~11のいずれか1項に記載のラベルとを含む前記注射デバイス。
【請求項13】
ハウジング(10)内に配置された薬剤容器(6)をさらに含む、請求項12に記載の注射デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、注射デバイス用のラベルの分野に関する。特に、本開示は、使用者がラベルのタッチ感応区域に触れたことに応答して外観を変化させるように構成された注射デバイス用のタッチ感応ラベルに関する。別の態様では、本開示は、注射デバイスに取付け可能であり、注射処置を行うように使用者にリマインドしかつ/または注射デバイスを使用するときに、使用者が注射処置を行うことを支援するように構成されたリマインダデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
液体薬剤の単一または複数の用量を設定および投薬するための薬物送達デバイスは、それ自体、当技術分野ではよく知られている。一般に、そのようなデバイスは、通常のシリンジの目的と実質上同様の目的を有する。
【0003】
ペン型注射器などの薬物送達デバイスは、使用者特有の複数の要件を満たさなければならない。たとえば、糖尿病などの慢性疾患を患っている患者の場合、患者は身体的に弱い可能性があり、視覚障害を患っている可能性もある。したがって、特に家庭用医薬品向けの好適な薬物送達デバイスは、構造上頑強である必要があり、容易に使用できるべきである。さらに、デバイスおよびその構成要素の操作および一般的な取扱いは、分かりやすく容易に理解できるべきである。そのような注射デバイスは、可変サイズの薬剤の用量の設定およびその後の投薬を提供するべきである。さらに、用量設定ならびに用量投薬処置は、容易に操作できて明快でなければならない。
【0004】
一般的に、そのようなデバイスは、投薬予定の薬剤が少なくとも部分的に充填されたカートリッジを受けるように適用されたハウジングまたは特定のカートリッジホルダを含む。デバイスは、駆動機構をさらに含み、駆動機構は通常、カートリッジの栓またはピストンに動作可能に係合するための変位可能なピストンロッドを有する。駆動機構およびそのピストンロッドによって、カートリッジの栓またはピストンは、遠位または投薬方向に変位可能であり、したがって薬物送達デバイスのハウジングの遠位端部に解放可能に連結されるたとえば注射針の形態の穿孔アセンブリを介して、所定の量の薬剤を排出することができる。
【0005】
薬物送達デバイスによって投薬予定の薬剤は、多用量カートリッジ内に提供および収容することができる。そのようなカートリッジは一般的に、穿孔可能な封止によって遠位方向に封止されたガラス質の胴部を含み、その胴部は、栓によって近位方向にさらに封止される。再利用可能な薬物送達デバイスの場合、空のカートリッジを新しいものに交換可能である。それとは対照的に、使い捨てタイプの薬物送達デバイスは、カートリッジ内の薬剤が投薬されまたは使い尽くされたときは完全に廃棄される。
【0006】
ペン型注射デバイスなどのいくつかの薬物送達デバイスの場合、使用者は、注射デバイスの本体またはハウジングに対して用量ダイヤルを時計回りまたは用量増分方向に回転させることによって、等しいサイズまたは可変サイズの用量を設定しなければならない。液体薬剤の用量を注射および排出する場合、使用者は、トリガまたは用量ボタンを遠位方向に、したがって注射デバイスの本体またはハウジングの方へ押し下げなければならない。一般に、使用者は、自身の親指を使用して、用量ダイヤルおよび用量ダイヤルスリーブの近位端に位置することができる用量ボタンに遠位向きの圧力をかけながら、同じ手の残りの指で注射デバイスのハウジングを保持する。
【0007】
機械的に実施される注射デバイスの場合、注射デバイスの使用中に注射関連データの正確で確実な準自動の監督および/または収集を有効にすることが望ましい。さらに、そのような薬物送達または注射デバイスの適切で規則的な取扱いのための使用者支援に対する要求が高まっている。治療の成功のためには、所与の処方スケジュールに従って、たとえば定期的時間基準に基づいて、明確な、たとえば使用者特有の量の薬剤、すなわち薬剤の用量が投与されなければならない。いくつかの例では、患者は、処方用量が最近注射されたか否かを忘れ、または認識できない可能性がある。さらに、患者は、設定および注射予定の用量のサイズについて常に認識できるとは限らない。これは、忘れっぽい患者ならびに/または少なくとも一定の程度で精神的および/もしくは身体的に弱い患者にとって、特に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本開示の目的は、注射デバイスの適切な取扱いに関する上述した欠点に対する解決策を提供することである。さらなる目的は、注射デバイスの正確な動作のための使用者に対する記憶支援および/またはリマインダを提供することである。リマインダまたは記憶支援は、容易かつ直観的に使用できるべきである。リマインダまたは記憶支援は、適度なまたは低いコストで製造可能であるべきであり、既存の注射デバイスに記憶支援またはリマインダを後付けすることを有効にするべきである。記憶支援またはリマインダは、省スペース設計をさらに提供するべきであり、注射デバイスのハウジングの幾何形状に共形となるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一態様では、本開示は、注射デバイス用のタッチ感応ラベルに関する。ラベルは、注射デバイスのハウジングに取り付けられるように構成された可撓性基板を含む。タッチ感応ラベルは、基板上に位置する電子ディスプレイを含む。電子ディスプレイは、少なくとも1つの標示を視覚的に表示するように構成される。タッチ感応ラベルは、基板上に位置するタッチ感応区域をさらに含む。タッチ感応区域は、電子ディスプレイに電気的に接続可能である。タッチ感応区域は、電子ディスプレイに電気的に接続することができる。タッチ感応区域は、電子ディスプレイに恒久的に電気的に接続することができる。タッチ感応区域はまた、電子ディスプレイから電気的に切断することもできる。タッチ感応ラベルは、ディスプレイに電気的に接続されたプロセッサをさらに含む。プロセッサは、ディスプレイを制御および変更するように動作可能である。プロセッサは、使用者がタッチ感応区域に触れたまたはそれを押し下げたことに応答して、少なくとも1つの標示の外観を変更するように構成される。
【0010】
可撓性基板は、弾性変形可能および塑性変形可能のうちの1つとすることができる。特に、可撓性基板は、塑性変形して、注射デバイスのハウジングの外形およびサイズまたは幾何形状に共形となるように構成することができる。
【0011】
このようにして、タッチ感応ラベルは、注射デバイスのハウジング、すなわちタッチ感応ラベルが注射デバイスのハウジングに取り付けられたとき、および電子ディスプレイが少なくとも1つの標示を視覚的に表示したときを、印付けおよび描写するように構成される。少なくとも1つの標示は、注射デバイスに対する視覚識別子を表す。少なくとも1つの標示は、設定予定の用量のサイズ、または注射デバイスの支援により用量が使用者によって設定および注射されるべき時点を表すことができる。このようにして、タッチ感応ラベルは、タッチ感応ラベルを装備した注射デバイスを使用する人物または患者に対して、対話式の記憶支援および/またはリマインダを提供する。
【0012】
電子ディスプレイは、デフォルトモードと起動モードとの間で切換え可能とすることができる。起動モードは、プロンプトモードと呼ぶこともできる。デフォルトモードにおいて、電子ディスプレイおよびプロセッサは、少なくとも1つの標示を恒久的に表示するように構成することができる。少なくとも1つの標示は、タッチ感応区域がたとえば使用者の指によって触れられたり軽く叩かれたりしない限り、ディスプレイ上で可視とすることができる。使用者がタッチ感応区域に触れたまたはそれを押し下げたことに応答して、プロセッサは、電子ディスプレイの外観を変更するように構成される。一般に、プロセッサおよびディスプレイは、様々なモードに応じて反応することができる。タッチ感応区域に触れたときまたはタッチ感応区域を押し下げたとき、電子ディスプレイをデフォルトモードから起動モードへ切り換えることができ、または逆も同様である。
【0013】
デフォルトモードおよび起動モードのどちらの場合も、異なるシナリオがある。1つのシナリオによれば、電子ディスプレイは、デフォルトモードにある限り、少なくとも1つの標示を視覚化するように構成される。起動モードにおいて、タッチ感応区域に触れたときまたはタッチ感応区域を押し下げたとき、少なくとも1つの標示は、少なくとも所定の時間間隔にわたって消える。起動モードにおいて、電子ディスプレイは、ブランク画面を表すことができ、視覚的標示がない状態にすることができる。使用者が繰返しタッチ感応区域に触れたときまたはタッチ感応区域を押し下げたとき、電子ディスプレイは、再び起動モードからデフォルトモードに切り換わることができる。したがって、少なくとも1つの標示は、電子ディスプレイ上に再び現れることができる。
【0014】
代替として、プロセッサおよび電子ディスプレイは、デフォルトモードにあるとき、第1の視覚的標示を提供するように構成することができる。起動モードに切り換えられたとき、電子ディスプレイは、第1の視覚的標示とは区別される第2の視覚的標示を提供することができ、またはそのような第2の視覚的標示を含むことができる。
【0015】
電子ディスプレイおよび電子ディスプレイとタッチ感応区域の相互作用は、デフォルトモードにあるとき、タッチ感応区域を押し下げるまたはそれに触れることで、電子ディスプレイが起動モードに切り換わるように構成することができる。電子ディスプレイが起動モードにある異なる状況では、タッチ感応区域に触れるまたはそれを押し下げることで、電子ディスプレイが起動モードからデフォルトモードに切り換わる。電子ディスプレイは、タッチ感応区域が触れられたり押し下げられたりしない限り、デフォルトモードおよび起動モードのうちの1つのままになるように構成することができる。デフォルトモードと起動モードとの間で切り換えることは、タッチ感応区域に触れるまたはそれを押し下げることを常に必要とする。
【0016】
このようにして、要求に応じて少なくとも1つの標示のオンおよびオフを選択的に切り換える可能性が使用者に与えられる。使用者または患者が設定および投薬予定の用量のサイズを忘れた可能性のある状況では、使用者または患者は、単にタッチ感応ラベルを見て、電子ディスプレイ上に提供された少なくとも1つの標示を読むことができる。少なくとも1つの標示が電子ディスプレイ上で可視でない場合、使用者は、単にタッチ感応区域に触れまたはそれを押し下げ、したがって現在注射予定の薬剤の処方用量について使用者に通知する少なくとも1つの標示の外観をトリガすることができる。
【0017】
別の例の場合、電子ディスプレイは、タッチ感応区域に触れまたはそれを押し下げてから所定の時間間隔が経過した後、デフォルトモードに切り換わるように構成することができる。そのような構成の場合、電子ディスプレイは、少なくとも1つの標示を恒久的に視覚化することができる。使用者がタッチ感応区域に触れまたはそれを押し下げたとき、それに応答して、電子ディスプレイは、所定の時間間隔にわたって起動モードに切り換わる。時間間隔が経過した後、電子ディスプレイは、使用者対話なしにデフォルトモードに戻るように構成することができる。起動モードにおいて、電子ディスプレイは、少なくとも1つの標示のない状態とすることができ、ブランク画面のみを提供し、したがって用量の設定および注射が現在予定されていないことを使用者に示すことができる。
【0018】
別の例の場合、電子ディスプレイは、タッチ感応区域に触れまたはそれを押し下げてから所定の時間間隔が経過した後、起動モードに切り換わるように構成することができる。ここで、起動モードにおいて、ディスプレイは、視覚的標示のない状態とすることができる。ディスプレイは、ブランク画面を表しまたは提供することができる。これは、電子ディスプレイが能動ディスプレイとして実施されるとき、すなわち能動的照明を含むとき、電気エネルギーを節約するのに有益である。
【0019】
典型的な使用シナリオの場合、使用者は、用量設定および注射処置が行われた後、またはその直前に、電子ディスプレイに触れまたはそれを押し下げるべきである。その結果、少なくとも1つの標示は、電子ディスプレイから消え、したがって次の注射が現在予定されていないことを使用者に示す。このようにして、使用者は、タッチ感応ラベルを見るたびに、かなり前に予定されていた注射処置が実際に行われたか否かを容易に確かめることができる。
【0020】
少なくとも1つの標示が消える代わりに、起動モードにおいて、電子ディスプレイは、第2の標示を提供し、したがって次の注射処置が予定されているときまたは最後の注射処置が実際に実行されたときを使用者に示すことも考えられる。
【0021】
したがって、電子ディスプレイは、少なくとも1つの標示を視覚化するように構成することができるだけでなく、以前または直前の注射処置に関する使用者に対する確認通知および/または標示を視覚化するように構成することもできる。
【0022】
可撓性基板は特に、注射デバイスのハウジングの少なくとも一部分を包み込むように構成される。ハウジングは、やや円筒形または管状の構造を含むことができる。したがって、可撓性基板は、注射デバイスの管形のハウジングの側壁に共形となることができ、またはそのような側壁にカスタマイズすることができる。可撓性基板は、多数の異なる注射デバイスに対するタッチ感応ラベルのかなり普遍的な取付けを有効にする。タッチ感応ラベルは、異なるタイプの注射デバイスに普遍的に適用可能および/または取付け可能とすることができる。
【0023】
タッチ感応ラベルはまた、かなり薄くまたは平坦であり、注射デバイスのハウジングに恒久的に取り付けることができる。タッチ感応ラベルが取り付けられた注射デバイスは、たとえば輸送および/または収納のために、デバイス包装内に包み込みまたは詰め込むことができる。注射デバイスのハウジングに取り付けられたとき、タッチ感応ラベルが注射デバイスの外側の輪郭および/または幾何形状に衝撃を与えたとしても、軽微なものだけである。タッチ感応ラベルは、かなり魅力的な設計を注射デバイスにさらに与えることができる。
【0024】
可撓性基板は、可撓性のプラスチック箔または可撓性の金属箔を含むことができる。可撓性基板は、たとえばポリエチレン(PE)またはポリエチレンテレフタレート(PET)から作られたプラスチック箔を含むことができる。
【0025】
可撓性基板、電子ディスプレイ、タッチ感応区域、したがってタッチ感応ラベル全体が、5mm未満、4mm未満、3mm未満、または2mm未満の全体的な厚さを含むことができる。いくつかの例の場合、タッチ感応ラベルは、1mm未満または0.5mm未満の厚さを含む。
【0026】
いくつかの例の場合、タッチ感応区域は、少なくとも1つの容量性スイッチを含む。タッチ感応区域は、タッチ感応区域にわたって空間的に分散された多数の容量性スイッチを含むことができる。少なくとも1つの容量性スイッチは、印刷電子機器技術で作製することができる。たとえば、タッチ感応区域の一部分は、キャパシタの一部である電極を含むことができる。キャパシタは、使用者の指などの物体がキャパシタに接近および密接または機械的に接触したときに「離調」することができる。この接近は、キャパシタの測定可能な特性、たとえばキャパシタの静電容量に影響を与える。さらなる例によれば、ラベルは、基板上に位置する電子回路を含む。電子回路は、タッチ感応区域に電気的に接続され、電子回路は、電子ディスプレイおよびプロセッサにさらに電気的に接続される。タッチ感応区域が電子ディスプレイからずれまたは遠隔に位置するラベルの多数の例の場合、電子ディスプレイおよびタッチ感応区域は、電子回路によって電気的に接続されており、または電子回路によって電気的に接続可能である。電子回路は、可撓性基板上に直接配置することができる。タッチ感応区域、電子ディスプレイ、および/またはプロセッサは、電子回路に一体化することができる。
【0027】
電子回路は、可撓性の電子回路を含むことができる。したがって、電子回路の導電性構造は、たとえば可撓性基板を注射デバイスのハウジングに取り付ける途中に、たとえばラベルを管形のハウジングに巻き付けることによって、基板の可撓性の変形に追従するように屈曲可能または柔軟である。
【0028】
電子回路は、基板上に印刷することができる。電子回路は、炭素系化合物から構成された1つまたはそれ以上のインクによって、可撓性基板上に印刷することができる。さらに、電子回路は、溶液または蒸気に基づく堆積プロセスによって、可撓性基板上に堆積させることができる。基板上に電子回路を印刷することで、タッチ感応ラベルの低コストの大量製造が
有効になる。
【0029】
別の例によれば、タッチ感応区域は、電子ディスプレイに一体化される。言い換えれば、電子ディスプレイは、タッチ感応電子ディスプレイを構成する。タッチ感応区域は、表示面に重複することができる。タッチ感応区域はまた、電子ディスプレイ上に視覚的に表示された少なくとも1つの標示に重複することができる。このようにして、かなり直観的な外観および感触を提供することができる。使用者は、デフォルトモードから起動モードへまたはその逆のタッチ感応ラベルの切換えを引き起こすために、少なくとも1つの標示に単に触れるだけでよい。
【0030】
別の例では、可撓性基板の下面は、少なくとも部分的に接着剤を備える。可撓性基板の下面は、接着剤層を備えることができる。可撓性基板の下面全体またはその一部分のみが、接着剤を備えることができる。特に、可撓性基板の下面の境界領域は、注射デバイスのハウジングへのラベルの恒久的な取付けを有効にするために、接着剤を備える。可撓性基板の下面上の接着剤によって、注射デバイスのハウジングに対するタッチ感応ラベルの接着に基づく固定を提供することができる。これはかなり省スペースであり、適度なまたは低いコストで実施することができる。
【0031】
顧客または患者へ渡されたとき、可撓性基板の下面、したがって下面に提供された接着剤は、タッチ感応ラベルが使用されていない限り接着剤を保護する剥離シートによって覆うことができる。タッチ感応ラベルを注射デバイスのハウジングに取り付ける前に、剥離シートを取り外し、したがって可撓性基板の下面にある接着剤を露出させなければならない。
【0032】
可撓性基板の下面にある接着剤は、ラベルと注射デバイスのハウジングとの間のインターフェース内で接着作用または力を提供する。この接着力は、注射デバイスのハウジングの外形に共形となるように弾性および/または塑性変形を受けたとき、またはその後、ラベルまたは基板の任意選択の固有弾性復元力より大きい。
【0033】
別の例によれば、電子回路は、電池をさらに含む。電池は、典型的には、プロセッサおよび/または電子ディスプレイに接続される。プロセッサおよび/または電池は、可撓性基板上に印刷することができる。プロセッサおよび/または電池もまた、一定の程度まで可撓性とすることができ、したがって注射デバイスのハウジングに組み立てて取り付けたとき、可撓性基板の変形を可能にしてそのような変形を支持する。
【0034】
プロセッサは、電子ディスプレイに接続され、電池にも接続される。プロセッサは、電池によって提供される電気エネルギーによって駆動される。典型的には、プロセッサおよび電池はどちらも、印刷電子構成要素を含み、または印刷電子構成要素から形成される。さらに、プロセッサはまた、タッチ感応区域に接続することができる。プロセッサは、電子ディスプレイをデフォルトモードから起動モードに切り換えるために、かつ/または逆も同様に起動モードからデフォルトモードへ切り換えるために、タッチ感応区域によって提供または生成される電子信号を処理するように構成することができる。
【0035】
プロセッサは、電子ディスプレイ上の少なくとも1つの標示を変更するようにさらに構成することができる。プロセッサは、電子ディスプレイ上の1つの同じ標示のみを視覚化するように配置することができる。プロセッサおよび/または電子ディスプレイは、電子ディスプレイ上の異なる標示を視覚化するように再構成可能とすることができる。典型的なシナリオでは、注射デバイスを使用して、薬剤の1つまたは制限された数の異なる用量のみを繰返し規則的に設定および投薬するべきである。したがって、プロセッサおよび電子ディスプレイは、常に1つの同じ標示を表示するように構成することができる。プロセッサは、プログラマブルタイプとすることができる。プロセッサは、電子ディスプレイ上に視覚的に表示される少なくとも1つの標示を変更するように、再プログラムまたは再構成することができる。
【0036】
別の例によれば、電子回路は、ユーザ活動の数および1つまたは多数のユーザ活動の時点のうちの少なくとも1つを記憶するように構成されたデータ記憶装置またはメモリを含む。電子回路および/またはプロセッサは、時間標示を導出し、ユーザ活動の時点、たとえば使用者がタッチ感応区域に触れまたはそれを押し下げた時点の記憶を有効にするためのクロックをさらに装備することができる。ラベルにクロックがない場合、電子回路は、そのようなユーザ活動の数を計数するように単に構成することができる。このようにして、タッチ感応ラベルによって一種の投与量カウンタを提供することができる。
【0037】
別の例によれば、電子回路は、外部電子デバイスとの電子信号の無線伝送のためのアンテナを含む。アンテナは、典型的には、プロセッサに接続される。アンテナによって、プロセッサは、外部電子デバイスと通信するように構成される。プロセッサは、外部電子デバイスへデータを伝送するように構成することができる。プロセッサは、外部電子デバイスからデータを受けるように構成することができる。外部電子デバイスは、スマートフォン、スマートウォッチ、またはタブレットコンピュータなどの手持ち式外部電子デバイスを含むことができる。アンテナは、パーソナルコンピュータまたは類似のコンピューティングデバイスとの通信を提供することをさらに有効にすることができる。
【0038】
アンテナおよびアンテナとプロセッサとの相互作用により、電子回路のデータ記憶装置内に以前に記憶されていたデータを外部電子デバイスへ伝達することがさらに有効になる。アンテナによって、外部電子デバイスは、タッチ感応ラベルのデータ記憶装置の内容を読み出すように構成することができる。典型的には、データ記憶装置は、電子回路に一体化することができる。他の例の場合、データ記憶装置は別個に、したがって電子回路からずらして提供することができる。プロセッサと外部電子デバイスとの間の電子信号の無線伝送は、プロセッサおよび/または電子ディスプレイの再構成をさらに有効にする。
【0039】
外部電子デバイスおよび電子信号の無線伝送によって、外部電子デバイスを使用して、タッチ感応ラベルを再構成することができる。このようにして、少なくとも1つの標示を第2の標示に置き換えることができる。加えて、電子ディスプレイの全体的な外観は、外部電子デバイスから受けた電子信号に応じて再構成することができる。このようにして、タッチ感応ラベルは、異なる使用シナリオに対して個々に構成することができる。
【0040】
電子回路のデータ記憶装置内に記憶されたデータを外部電子デバイスへ伝送することで、タッチ感応ラベルが外部電子デバイスから切断された時間間隔中に、データ記憶装置内に記録されていたユーザ活動の監視および投薬後評価が有効になる。
【0041】
別の例によれば、電子回路は、ラベルが注射デバイスに取り付けられたとき、注射デバイスの用量トラッカおよびプリセレクタのうちの少なくとも1つの位置および/または回転状態のうちの少なくとも1つを判定するように構成されたセンサを含む。用量トラッカ、特に注射デバイスのハウジングに対する用量トラッカの位置または回転状態は、実際に設定または投薬された用量のサイズを明白に示す。タッチ感応ラベル内で実施されるセンサは、ラベルが注射デバイスのハウジングの所定の場所に正確に取り付けられているとき、注射デバイスのハウジングに対する用量トラッカの位置または回転状態を判定するように構成される。
【0042】
注射デバイスの任意選択のプリセレクタは、デバイスによって設定される用量の最大サイズを判定するように構成することができる。その限りにおいて、プリセレクタは、注射デバイスによって設定および投薬される用量の数および/またはサイズを制限する。
【0043】
プリセレクタは、長手方向軸に沿ってハウジングに対して変位可能とすることができる。プリセレクタは、ハウジングに対して少なくとも2つの異なる位置状態で、ハウジングに、特にハウジングの側壁にロック可能とすることができる。ここで、位置状態は、ハウジングに対するプリセレクタの長手方向位置を指すことができる。位置状態はまた、プリセレクタがハウジング内でまたはハウジングに対して回転可能に支持されているとき、ハウジングに対するプリセレクタの角度方向を指すことができる。
【0044】
典型的には、プリセレクタは、少なくとも第1の事前選択位置状態と第2の事前選択位置状態との間で変位可能である。第1の事前選択位置状態は、ハウジングに対するプリセレクタの遠位停止位置に一致することができる。第2の事前選択位置状態は、ハウジングに対するプリセレクタの近位停止位置に一致することができる。第2の事前選択位置状態で、プリセレクタは、第1の事前選択位置状態よりハウジングの近位端の近くに位置することができる。少なくとも2つの事前選択位置状態のいずれにおいても、プリセレクタはハウジングにロック可能である。
【0045】
ハウジングの側壁のうち、プリセレクタをロック可能な特有の部分は、用量トラッカの長手方向または回転方向の変位が阻止される位置状態を画成することができる。したがって、用量トラッカは、プリセレクタによって、ハウジングの側壁に対するプリセレクタの位置によって画成される位置または回転状態を越えて動くことが妨げられる。
【0046】
言い換えれば、用量トラッカは、最大用量位置状態に到達したとき、側壁の所定の部分またはセクションに少なくとも一時的にロックされたプリセレクタに当接または係合することができる。プリセレクタは、プリセレクタ停止機能(preselector stop feature)を含むことができ、用量トラッカは、追跡停止機能(tracking stop feature)を含むことができる。プリセレクタ停止機能および追跡停止機能は、たとえば軸方向に係合するように周方向および/または径方向に延びている相互に対応する停止面を含むことができる。別法または追加として、プリセレクタ停止機能および追跡停止機能は、周方向に係合するように軸方向および径方向に延びている相互に対応する停止面を含む。軸方向に係合するように構成されたとき、プリセレクタ停止機能および追跡停止機能の相互係合は、軸方向の停止を提供し、それによって所定の最大の軸方向用量位置状態を越えた用量トラッカの長手方向または軸方向の並進運動を邪魔および阻止する。
【0047】
センサによって、タッチ感応ラベルは、使用者に情報を提供することができるだけでなく、注射デバイスの実際の取扱いおよび性能に関する情報を収集することもできる。このようにして、タッチ感応ラベルのプロセッサは、電子回路のデータ記憶装置内に記憶された所定または処方の用量サイズと、注射デバイスの使用中にセンサから得られた信号に基づいて実際に判定された用量サイズとを比較することが有効にされ、そのように構成される。代替または追加として、センサは、プリセレクタの瞬時の位置状態の視覚化を有効にすることができる。
【0048】
このようにして、タッチ感応ラベルのプロセッサは、処方用量が使用者によって正確に設定および注射されたかどうかを判定するように構成される。したがって、プロセッサ、したがってタッチ感応ラベルは、所与の治療または処方スケジュールを考慮して注射デバイスの適切な動作を監督および/または監視することができる。
【0049】
別の例の場合、センサは、互いから所定の距離をあけて配置された少なくとも第1のセンサセグメントおよび第2のセンサセグメントを含む。第1および第2のセンサセグメントの各々は、用量トラッカおよびプリセレクタのうちの少なくとも1つのインジケータの存在または位置を検出するように構成される。インジケータは、センサによる位置感知向けに特に構成される。インジケータは、センサの感度に応じて符号化することができる。センサが抵抗センサなどの電気センサとして実施された場合、用量トラッカのインジケータは、特徴的な電気抵抗を含む。
【0050】
用量トラッカおよび/またはプリセレクタのインジケータがセンサセグメントのうちの1つに直接的に電気的に接続しているため、それぞれのセンサセグメントの抵抗率はそれに応じて変化し、そのような抵抗率の変化は、センサおよび/またはセンサに接続されたプロセッサによって検出可能である。
【0051】
他の実装形態の場合、センサおよびインジケータは、磁気位置または回転センサとして構成される。したがって、センサセグメントは、ホールセンサまたはコイル状セグメントを含むことができる。インジケータは、センサのセンサセグメントによって検出可能な特定の磁気符号化を含むことができる。磁気符号化と磁気および/または電磁検出を組み合わせることで、注射デバイスの用量トラッカの位置または回転状態の非接触感知が有効になる。センサおよび対応するインジケータはまた、電気容量測定に基づいて実施することもできる。
【0052】
他の例の場合、センサは、1つのみまたはいくつかのセンサセグメントを含むことができ、用量トラッカは、用量トラッカの運動方向に沿って隣接して配置された多数のインジケータを備える。用量トラッカ上に隣接して配置されたインジケータは、センサによって検出可能な少なくとも1つの特性に関して互いから区別することができる。用量トラッカまたはプリセレクタ上の多数のインジケータは、電気、磁気、または容量符号化のうちの1つを提供することができる。用量トラッカまたはプリセレクタが、注射デバイスのハウジング、したがってセンサの少なくとも1つのセンサセグメントに対する動きを受けるため、多数のインジケータは、センサまたはセンサセグメント付近を通過するとき、相互に区別されるセンサ信号を誘起する。ここで、センサまたはセンサセグメントは、異なるインジケータがセンサに沿って通過するとき、変動する電気信号を生成するように構成される。
【0053】
別の例によれば、プロセッサは、センサから得られた電子信号に基づいて、ハウジングに対する用量トラッカまたはプリセレクタの長手方向または回転方向位置のうちの少なくとも1つを判定するように構成される。このようにして、プロセッサは、注射デバイスによって実際に設定された用量のサイズを示す用量トラッカの位置または回転状態を判定するように構成される。したがって、プロセッサは、タッチ感応ラベルが注射デバイスのハウジングに適切に取り付けられているとき、注射デバイスによって実際に設定された用量のサイズを判定するように構成された。同様に、プロセッサは、プリセレクタの位置状態、したがって注射デバイスによって設定および注射することができる用量の最大サイズを判定するように構成される。
【0054】
別の例では、プロセッサはまた、用量トラッカの判定された長手方向または回転方向位置のうちの少なくとも1つと所定の位置とを比較するように構成される。所定の位置は、用量の処方サイズに対応することができる。プロセッサは、用量トラッカの実際に判定された位置または回転状態と所定の位置とを比較することが可能であるため、したがってプロセッサは、実際に判定または測定された用量サイズと処方または所定の用量サイズとを比較することが有効になる。このようにして、タッチ感応ラベルは、使用者が正しいサイズの用量を設定したかどうか、または使用者によって設定された用量が所定の用量サイズに整合するかどうかを監視および追跡することが有効になる。
【0055】
センサおよび/またはプロセッサは、用量トラッカの位置状態およびプリセレクタの位置状態の両方を判定するようにさらに構成することができる。次いで、プロセッサは、用量トラッカの位置状態とプリセレクタの位置状態とを比較するように、したがって実際に設定された用量と注射デバイスによって設定可能および注射可能な最大用量とを比較するように構成することができる。このようにして、プロセッサは、プリセレクタの位置状態によって決定される用量の最大または所定のサイズが設定され、次に投薬されたかどうかを判定するように構成することができる。
【0056】
さらなる例によれば、プロセッサは、電子ディスプレイ上に視覚的標示および視覚的確認通知のうちの少なくとも1つを生成するように構成される。プロセッサは、使用者がタッチ感応区域に触れたまたはそれを押し下げたことに応答して、視覚的確認通知を生成するように構成することもできる。このようにして、タッチ感応区域に触れたまたはそれを押し下げたことがタッチ感応ラベルによって登録および検出されたというフィードバックが、使用者に提供される。
【0057】
さらなる例によれば、プロセッサは、用量トラッカの判定された長手方向もしくは回転方向位置が所定の位置に整合した場合、または用量トラッカの判定された長手方向もしくは回転方向位置が所定の位置に整合しない場合、電子ディスプレイ上に視覚的標示および視覚的確認通知のうちの少なくとも1つを生成するように構成される。視覚的確認通知は、用量トラッカの判定された長手方向または回転方向位置が所定の位置に整合した場合のみ、電子ディスプレイ上に提示することができる。典型的には用量の所定または処方サイズに対応して、用量トラッカの判定された長手方向または回転方向位置が所定の位置に整合しない限り、プロセッサおよび電子ディスプレイは、視覚的標示を生成し、したがって実際に設定された用量が用量の所定または処方サイズに整合することを使用者に通知するように構成することができる。したがって、実際に設定された用量が小さすぎるまたは大きすぎる可能性がある。
【0058】
視覚的標示は、記号の形態で、たとえばしたがって実際に設定された用量が小さすぎるまたは大きすぎることを使用者に示す矢印の形態で、電子ディスプレイ上に提供することができる。視覚的標示は、回転方向を直接示すことができ、または実際に設定された用量と用量の所定もしくは処方サイズとの間の差を最小にするために、用量トラッカおよび/もしくは用量ダイヤルによって表されるたとえば用量設定部材が動かされもしくは回転されなければならない方向を示すことができる。
【0059】
いくつかの例の場合、プロセッサは、少なくとも1つの視覚的標示を恒久的に生成または提供し、したがって用量の所定もしくは処方サイズ、および/または所定もしくは処方の用量に到達するために用量設定部材、たとえば用量ダイヤルが動かされなければならない方向を、使用者に通知するように構成される。用量トラッカの長手方向または回転方向位置が所定の位置に整合すると判定したとき、プロセッサは、視覚的標示を犠牲にして視覚的確認通知を視覚的に示すように構成することができる。ここで、視覚的確認通知が電子ディスプレイ上に現れると、視覚的標示は消えることができる。別の例の場合、用量トラッカの判定された長手方向または回転方向位置が所定の位置に整合するとすぐに、視覚的標示に加えて視覚的確認通知を提供することができる。
【0060】
さらなる例の場合、視覚的確認通知は、視覚的標示の外観の変更の形態で提供することができる。したがって、用量トラッカの長手方向または回転方向位置が所定の用量に整合すると判定したとき、視覚的標示は変化することができる。ここで、矢印をチェックマークまたは目盛などの確認記号に置き換えることができる。他の例の場合、視覚的標示の色、明るさ、またはスタイルが変化することができる。たとえば、数、文字、または記号を枠で囲むことができ、または斜体もしくは太字で表すことができる。したがって、プロセッサは、用量トラッカの長手方向または回転方向位置が所定の位置に整合すると判定したとき、視覚的標示を変化させるように構成することができる。
【0061】
任意選択のプリセレクタは、プロセッサのデータ記憶装置内に記憶された所定の位置を変更するように構成することができる。プリセレクタは、典型的には、用量トラッカと機械的に相互作用して用量トラッカの最大投与位置を画成するように構成される。このようにして、ハウジングに対するプリセレクタの位置状態は、注射デバイスによって設定および投薬される用量の最大または所定のサイズを示す。センサによってプリセレクタの位置状態を判定することによって、設定および投薬される用量の所定のサイズをセンサによって自動的に検出することができ、プロセッサのデータ記憶装置内に記憶することができる。プリセレクタの位置状態に応じて、タッチ感応ラベルの記憶内に記憶された所定の用量サイズを変化させることができる。
【0062】
このようにして、ラベルは、薬剤の正しい処方用量の設定中に使用者を視覚的に支援することができる。
【0063】
別の例によれば、電子回路は、少なくとも1つの印刷電子構成要素を含む。他の例では、電子回路は、印刷電子構成要素からなる。電子回路全体が、印刷電子構成要素を含むことができ、または印刷電子構成要素からなることができる。典型的には、電子回路は、可撓性基板の上面に印刷される。電子回路の印刷電子構成要素ならびに電子回路の印刷導電構造は、所定の程度まで可撓性であり、したがってたとえばタッチ感応ラベルを注射デバイスのハウジングに巻き付ける途中に、電子回路の可撓性の変形および屈曲が可能になる。
【0064】
別の例によれば、電子ディスプレイは、電気泳動ディスプレイおよび薄膜エレクトロルミネッセントディスプレイのうちの1つである。そのようなディスプレイタイプは、最小の電気エネルギーのみを消費する。このようにして、可撓性基板上に印刷された電池は、注射デバイスおよび/または注射デバイス内に位置する薬剤の寿命を超過する時間にわたって、タッチ感応ラベルおよびその電子ディスプレイのフェイルセーフ動作を有効にするのに十分な電気エネルギーを提供することができる。
【0065】
電気泳動ディスプレイおよび薄膜エレクトロルミネッセントディスプレイは、かなり大きいコントラストをさらに提供し、直射日光下でも容易に判読することができる。電気泳動ディスプレイおよび薄膜エレクトロルミネッセントディスプレイは、特に1つの表示状態から別の表示状態に切り換わるとき、最小の電力のみを消費する。
【0066】
別の態様によれば、本開示はまた、薬剤の用量を設定および注射するための注射デバイスに関する。注射デバイスは、手持ち式のペン型注射器または薬剤ポンプとして構成することができる。注射デバイスは、薬剤容器を収容するように構成されたハウジングを含む。注射デバイスは、薬剤の用量を薬剤容器から抜き出しまたは排出するように構成された駆動機構をさらに含む。駆動機構は、薬剤の用量を生物組織に注射するようにさらに構成される。注射デバイスは、上述したラベルをさらに備える。ラベルは、注射デバイスのハウジングに取り付けられる。
【0067】
注射デバイスの駆動機構は、典型的には、長手方向に沿って変位可能なピストンロッドを含む。ピストンロッドは、注射可能な薬剤を収容するカートリッジのピストンに動作可能に係合するように構成される。ピストンロッドとは反対に位置するカートリッジの遠位端は、典型的には両頭注射針によって貫通可能である穿孔可能な封止部を備える。
【0068】
注射デバイスのハウジングの外側に取り付けられたタッチ感応ラベルによって、使い捨てまたは再利用可能な注射ペンなどのすべて機械的に実施される注射デバイスに、記憶支援またはリマインダを後付けし、したがって注射デバイスの適切な取扱いおよび動作に関して使用者を支援することができる。
【0069】
さらなる例によれば、たとえば薬剤を収容するカートリッジの形態の薬剤容器は、注射デバイスのハウジング内に配置される。注射デバイスは、使い捨ての注射デバイスとして構成することができる。薬剤が充填された薬剤容器は、注射デバイスが顧客または患者に渡されたとき、注射デバイス内に容易に組み立てることができる。
【0070】
本文脈では、「遠位」または「遠位端」という用語は、人間または動物の注射部位の方を向いている注射デバイスの端部を指す。「近位」または「近位端」という用語は、人間または動物の注射部位から最も遠く離れている注射デバイスの反対の端部を指す。
【0071】
「薬物」または「薬剤」という用語は、本明細書で用いられる場合、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態では、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、かつ/あるいはペプチド、タンパク質、多糖、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモン、もしくはオリゴヌクレオチド、または上述した薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態では、薬学的に活性な化合物は、糖尿病もしくは糖尿病に伴う合併症、たとえば、糖尿病性網膜症、血栓塞栓障害、たとえば、深部静脈血栓塞栓症もしくは肺血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、アンギナ、心筋梗塞、癌、黄斑変性、炎症、枯草熱、アテローム硬化症および/または関節リウマチの治療および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態では、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病に伴う合併症、たとえば、糖尿病性網膜症の治療および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態では、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリンアナログもしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)もしくはそのアナログもしくは誘導体、もしくはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4またはエキセンジン-3もしくはエキセンジン-4のアナログもしくは誘導体を含む。
【0072】
インスリンアナログは、たとえば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;位置B28のプロリンがAsp、Lys、Leu、ValまたはAlaに置き換えられたうえに位置B29のLysがProに置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0073】
インスリン誘導体は、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-パルミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリンおよびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0074】
エキセンジン-4は、たとえば、H-His-Gly-Glu-Gly-Thr-Phe-Thr-Ser-Asp-Leu-Ser-Lys-Gln-Met-Glu-Glu-Glu-Ala-Val-Arg-Leu-Phe-Ile-Glu-Trp-Leu-Lys-Asn-Gly-Gly-Pro-Ser-Ser-Gly-Ala-Pro-Pro-Pro-Ser-NH2の配列のペプチドであるエキセンジン-4(1-39)を意味する。
【0075】
エキセンジン-4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H-(Lys)4-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)5-desPro36,desPro37エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39);もしくは
desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)、
desPro36[Met(O)14 Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン-4(1-39)、
(ここで、基-Lys6-NH2が、エキセンジン-4誘導体のC-末端に結合していてもよい);
【0076】
もしくは、以下の配列のエキセンジン-4誘導体:
desPro36エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2(AVE0010)、
H-(Lys)6-desPro36[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
desMet(O)14 Asp28 Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5 desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Lys6-desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-Lys6-NH2、
H-desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2、
H-(Lys)6-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(S1-39)-(Lys)6-NH2、
H-Asn-(Glu)5-desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン-4(1-39)-(Lys)6-NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン-4誘導体の薬学的に許容可能な塩もしくは溶媒和物
から選択される。
【0077】
ホルモンは、たとえば、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたはレギュラトリー活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニスト、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(Somatropine)(ソマトロピン(Somatropin))、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、リュープロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンである。
【0078】
多糖は、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリンもしくは超低分子量ヘパリンもしくはそれらの誘導体、もしくは硫酸化形たとえばポリ硫酸化形の上述した多糖、および/またはそれらの薬学的に許容可能な塩である。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容可能な塩の例は、エノキサパリンナトリウムである。
【0079】
抗体は、基本構造を共有するイムノグロブリンとしても公知の球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位はイムノグロブリン(Ig)単量体(Ig単位のみを含む)であり、分泌型抗体は、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもありうる。
【0080】
Ig単量体は、4本のポリペプチド鎖;システイン残基間のジスルフィド結合によって結合した2本の同一の重鎖および2本の同一の軽鎖からなる「Y」字型の分子である。各重鎖は約440アミノ酸長であり、各軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化する鎖内ジスルフィド結合を含む。各鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインで構成される。これらのドメインは、70~110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に従って異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的なイムノグロブリン折り畳み構造を有する。
【0081】
α、δ、ε、γ、およびμで表される5タイプの哺乳動物Ig重鎖が存在する。存在する重鎖のタイプにより抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM抗体中に見出される。
【0082】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(C)と可変領域(V)とを有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、αおよびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つのイムノグロブリンドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0083】
哺乳動物では、λおよびκで表される2タイプのイムノグロブリン軽鎖が存在する。軽鎖は、2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211~217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を含み、哺乳動物の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0084】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(VH)について3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0085】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化により、Igプロトタイプが3つのフラグメントに切断される。1つの完全なL鎖と約半分のH鎖とをそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズは同等であるが鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶化可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH-H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合を、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域を融合して、単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することができる。
【0086】
薬学的に許容可能な塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩は、たとえば、HClまたはHBr塩である。塩基性塩は、たとえば、アルカリもしくはアルカリ土類、たとえば、Na+、もしくはK+、もしくはCa2+から選択されるカチオン、またはアンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)、(式中、R1~R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1~C6アルキル基、場合により置換されたC2~C6アルケニル基、場合により置換されたC6~C10アリール基、または場合により置換されたC6~C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容可能な塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0087】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、たとえば、水和物である。
【0088】
本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および変更を本発明に加えることができることが、当業者にはさらに明らかであろう。さらに、添付の特許請求の範囲で使用されるあらゆる参照番号は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではないことに留意されたい。
【0089】
以下、容器および注射デバイスの多数の例について、図面を参照することによってより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0090】
図1】注射デバイスの例を示す図である。
図2図1の注射デバイスを示す分解斜視図である。
図3】注射デバイスのハウジングにタッチ感応ラベルが取り付けられた図1の注射デバイスを示す図である。
図4】タッチ感応ラベルの一例の分離図である。
図5】タッチ感応ラベルの別の例を示す図である。
図6】タッチ感応ラベルのさらなる例を示す図である。
図7】タッチ感応ラベルの多層構造を示す図である。
図8】タッチ感応ラベルの一例の断面図である。
図9】タッチ感応ラベルの電子回路を示すブロック図である。
図10】センサを装備したタッチ感応ラベルの別の例を示す図である。
図11】タッチ感応ラベルが取り付けられた注射デバイスの断面図である。
図12図10のタッチ感応ラベルの一例の底面図である。
図13】タッチ感応ラベルを使用する様々な工程を表す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
図1および図2に示す注射デバイス1は、ハウジング10を含む充填済みの使い捨て注射デバイスであり、ハウジング10に注射針15を取り付けることができる。注射針15は、注射デバイス1のハウジング10の遠位セクションを密閉および保護するように構成された内側ニードルキャップ16および外側ニードルキャップ17または保護キャップ18によって保護される。ハウジング10は、図2に示す駆動機構8を収容するように構成された主ハウジング部材を含み、そのような主ハウジング部材を形成することができる。注射デバイス1は、カートリッジホルダ14として示す遠位ハウジング構成要素をさらに含むことができる。カートリッジホルダ14は、主ハウジング10に恒久的または解放可能に連結することができる。カートリッジホルダ14は、典型的には、液体薬剤が充填されたカートリッジ6を収容するように構成される。カートリッジ6は、円筒形または管形の胴部25を含み、胴部25は、胴部25内に位置する栓7によって近位方向3に封止される。栓7は、ピストンロッド20によって、カートリッジ6の胴部25に対して遠位方向2に変位可能である。カートリッジ6の遠位端は、セプタムとして構成された穿孔可能な封止部26によって封止されており、穿孔可能な封止部26は、注射針15の近位向きの先端部によって穿孔可能である。カートリッジホルダ14は、その遠位端にねじ付ソケット28を含み、注射針15の対応するねじ付部分にねじ係合する。カートリッジホルダ14の遠位端に注射針15を取り付けることによって、カートリッジ6の封止部26が貫通され、それによってカートリッジ6の内部への流体伝達アクセスを確立する。
【0092】
注射デバイス1がたとえばヒトインスリンを投与するように構成されたとき、注射デバイス1の近位端にある用量ダイヤル12によって設定される投与量は、いわゆる国際単位(IU)で表示することができ、1IUは、約45.5μgの純結晶インスリン(1/22mg)に生物学的に均等である。用量ダイヤル12は、用量ダイヤルを含むことができ、または用量ダイヤルを形成することができる。
【0093】
図1および図2にさらに示すように、ハウジング10は投与量窓13を含み、投与量窓13は、ハウジング10内のアパーチャの形態とすることができる。投与量窓13により、使用者は、現在設定されている用量の視覚的標示を提供するために用量ダイヤル12が回されたときに動くように構成された数字スリーブ(number sleeve)80の制限された部分を見ることが可能になる。用量ダイヤル12は、用量の設定および/または投薬もしくは排出中に回されると、ハウジング10に対して螺旋経路上を回転する。
【0094】
注射デバイス1は、投与量ノブ12を回すことで機械的なクリック音を引き起こし、音響フィードバックを使用者に提供するように構成することができる。数字スリーブ80は、インスリンカートリッジ6内のピストンと機械的に相互作用する。針15が患者の皮膚部分に刺さり、トリガ11または注射ボタンが押されると、表示窓13内に表示されているインスリン用量が注射デバイス1から排出される。トリガ11が押された後、注射デバイス1の針15が一定の時間にわたって皮膚部分内に留まったとき、用量の大部分が実際に患者の体内へ注射されている。インスリン用量の排出でも、機械的なクリック音を引き起こすことができるが、このクリック音は、用量ダイヤル12を使用したときに生じる音とは異なる。
【0095】
この実施形態では、インスリン用量の送達中、用量ダイヤル12は、軸方向運動に、すなわち回転なしで、その初期位置へ戻され、数字スリーブ80は、回転してその初期位置へ戻り、たとえばゼロ単位の用量を表示する。
【0096】
注射デバイス1は、カートリッジ6が空になるまで、または注射デバイス1内の薬剤の有効期日(たとえば、最初の使用から28日後)に到達するまで、数回の注射プロセスに使用することができる。
【0097】
さらに、注射デバイス1を初めて使用する前に、カートリッジ6および針15から空気を除去するために、たとえば薬剤の2単位を選択し、針15を上向きにして注射デバイス1を保持しながらトリガ11を押下することによって、いわゆる「プライムショット」を実行することが必要なことがある。以下、提示を簡単にするために、排出された量が注射された用量に実質上対応し、したがってたとえば注射デバイス1から排出された薬剤の量が、使用者が受け取った用量に等しいものと仮定する。
【0098】
駆動機構8の一例が、図2により詳細に示されている。駆動機構8は、多数の機械的に相互作用する構成要素を含む。ハウジング10のフランジ状の支持体が、ピストンロッド20の第1のねじ山または遠位ねじ山22にねじ係合される軸方向のねじ付貫通口を含む。ピストンロッド20の遠位端は支承部21を含み、支承部21では、押さえ23がピストンロッド20の長手方向軸を回転軸として自由に回転する。押さえ23は、推力を受けているカートリッジ6の栓7の近位向きの面に軸方向に当接するように構成される。投薬動作中、ピストンロッド20は、ハウジング10に対して回転し、それによってハウジング10に対して、したがってカートリッジ6の胴部25に対して、遠位向きの前進運動を受ける。その結果、カートリッジ6の栓7は、ピストンロッド20とハウジング10とのねじ係合のため、明確な距離だけ遠位方向2に変位する。
【0099】
ピストンロッド20は、その近位端に第2のねじ山24をさらに備える。遠位ねじ山22および近位ねじ山24は反対の向きである。
【0100】
ピストンロッド20を受けるための中空の内部を有する駆動スリーブ30がさらに設けられる。駆動スリーブ30は、ピストンロッド20の近位ねじ山24にねじ係合する内側ねじ山を含む。さらに、駆動スリーブ30は、その遠位端に外側ねじ付セクション31を含む。ねじ付セクション31は、遠位フランジ部分32と、遠位フランジ部分32から所定の軸方向距離をあけて位置する別のフランジ部分33との間で、軸方向に制限される。2つのフランジ部分32、33間には、駆動スリーブ30のねじ付セクション31に嵌合する内部ねじ山を有する半円形ナットの形態の最終用量リミッタ35が設けられる。
【0101】
最終用量リミッタ35は、その外周に、径方向の凹部または突起をさらに含み、この凹部または突起は、ハウジング10の側壁の内側にある相補形状の凹部または突起に係合する。このようにして、最終用量リミッタ35は、ハウジング10にスプライン連結される。連続用量設定処置中に駆動スリーブ30が用量増分方向4または時計回り方向に回転すると、最終用量リミッタ35が駆動スリーブ30に対して累積的に軸方向に変位する。フランジ部分33の近位向きの表面に軸方向に当接する環状ばね40がさらに設けられる。さらに、管形のクラッチ60が設けられる。クラッチ60は、第1の端部に、一連の周方向向きの鋸歯を備える。クラッチ60の第2の反対の端部には、径方向内方向きのフランジが位置する。
【0102】
さらに、数字スリーブ80としても示されている用量ダイヤルスリーブが設けられる。数字スリーブ80は、ばね40およびクラッチ60の外側に設けられ、ハウジング10の径方向内方に位置する。数字スリーブ80の外面の周りには、螺旋溝81が設けられる。ハウジング10は投与量窓13を備えており、投与量窓13を通して数字スリーブ80の外面の一部を見ることができる。ハウジング10は、挿入片62の内側壁部分に螺旋リブをさらに備えており、螺旋リブは、数字スリーブ80の螺旋溝81内に着座される。管形の挿入片62は、ハウジング10の近位端内へ挿入される。挿入片62は、ハウジング10に回転不能に、および軸方向に固定される。数字スリーブ80がハウジング10に対して螺旋運動で回転する用量設定処置を制限するために、ハウジング10上に第1および第2の止め具が設けられる。以下により詳細に説明するように、止め具のうちの少なくとも1つは、プリセレクタ70上に設けられたプリセレクタ停止機能71によって提供される。
【0103】
用量ダイヤルグリップの形態の用量ダイヤル12は、数字スリーブ80の近位端の外面の周りに配置される。用量ダイヤル12の外径は、典型的には、ハウジング10の外径に対応および整合する。用量ダイヤル12は、用量ダイヤル12と数字スリーブ80との間の相対運動を防止するために、数字スリーブ80に固定される。用量ダイヤル12は、中心開口部を備える。
【0104】
用量ボタンとしても示されているトリガ11は、実質上T字形である。トリガ11は、注射デバイス1の近位端に設けられる。トリガ11の心棒64が、用量ダイヤル12内の開口部を通り、駆動スリーブ30の延長部の内径を通って、ピストンロッド20の近位端にある受け凹部内へ延びる。心棒64は、駆動スリーブ30内に軸方向運動を制限し、駆動スリーブ30に対して回転しないように保持される。トリガ11のヘッドは略円形である。トリガの側壁またはスカートが、ヘッドの周辺部から延びており、近位からアクセス可能な用量ダイヤル12の環状凹部内に着座するようにさらに適用される。
【0105】
用量をダイヤル設定するために、使用者は用量ダイヤル12を回転させる。ばね40がクリッカとしても作用し、クラッチ60が係合しているとき、駆動スリーブ30、ばねまたはクリッカ40、クラッチ60、および数字スリーブ80は、用量ダイヤル12とともに回転する。用量がダイヤル設定されたという可聴および触覚フィードバックが、ばね40およびクラッチ60によって提供される。ばね40とクラッチ60との間の鋸歯を介してトルクが伝送される。数字スリーブ80上の螺旋溝81および駆動スリーブ30内の螺旋溝は、同じリードを有する。これにより、同じ速度で数字スリーブ80がハウジング10から延び、駆動スリーブ30がピストンロッド20を上がることが可能になる。移動限界で、数字スリーブ80上の径方向の止め具が、ハウジング10上に設けられた第1の止め具または第2の止め具に係合して、第1の回転方向、たとえば用量増分方向4のさらなる動きを防止する。ピストンロッド20上の全体的な駆動ねじ山の方向が反対であるため、ピストンロッド20の回転が防止される。
【0106】
ハウジング10に掛止された最終用量リミッタ35は、駆動スリーブ30の回転によって、ねじ付セクション31に沿って前進される。最終用量投薬位置に到達したとき、最終用量リミッタ35の表面上に形成された径方向の止め具が、駆動スリーブ30のフランジ部分33上の径方向の止め具に当接し、最終用量リミッタ35および駆動スリーブ30がどちらもさらに回転することを防止する。
【0107】
使用者が不注意で所望の投与量を越えてダイヤル設定した場合、ペン注射器として構成された注射デバイス1により、薬剤をカートリッジ6から投薬することなく、投与量をダイヤルダウンすることが可能になる。このため、用量ダイヤル12は簡単に逆回転する。これにより、システムは逆に作用する。このときばねまたはクリッカ40の可撓アームは、ばね40が回転することを防止するラチェットとして作用する。クラッチ60を介して伝送されるトルクにより、鋸歯は互いを載り越えて、ダイヤル設定された用量の低減に対応するクリックを生み出す。典型的には、鋸歯は、各鋸歯の周方向範囲が単位用量に対応するように配置される。ここで、クラッチは、ラチェット機構として働くことができる。
【0108】
代替または追加として、ラチェット機構90は、管形のクラッチ60の側壁上の可撓アームなどの少なくとも1つのラチェット機能91を含むことができる。少なくとも1つのラチェット機能91は、たとえば可撓アームの自由端上に、径方向外方へ延びる突起を含むことができる。突起は、数字スリーブ80の内側にある対応する形状のカウンタラチェット構造に係合するように構成される。数字スリーブ80の内側は、鋸歯プロファイルを有する長手方向の形状の溝または突起を含むことができる。用量のダイヤル設定または設定中、ラチェット機構90は、数字スリーブ80がクラッチ60に対して第2の回転方向5に沿って回転することを可能にしてそのような回転を支持し、この回転に付随して、クラッチ60の可撓アームの規則的なクリックが生じる。第1の回転方向に沿って数字スリーブ80に印加される角運動量は、クラッチ60へ不変に伝達される。ここで、ラチェット機構90の相互に対応するラチェット機能は、数字スリーブ80からクラッチ60へのトルク伝達を提供する。
【0109】
所望の用量がダイヤル設定されたとき、使用者は、トリガ11を押し下げることによって、設定された用量を簡単に投薬することができる。これにより、クラッチ60が数字スリーブ80に対して軸方向に変位し、その犬歯を係合解除する。しかし、クラッチ60は、駆動スリーブ30に対して回転しないように掛止されたままである。ここで、数字スリーブ80および用量ダイヤル12は、螺旋溝81に応じて自由に回転する。
【0110】
この軸方向運動により、ばね40の可撓アームが変形して、投薬中に鋸歯が緩まないことを確実にする。これにより、駆動スリーブ30がハウジング10に対して回転することを防止されるが、駆動スリーブ30はそれでもなお、ハウジング10に対して軸方向には自由に動く。次に、遠位向きの投薬圧力がトリガ11から除去されたとき、この変形を使用して、ばね40およびクラッチ60を駆動スリーブ30に沿って後方へ付勢し、クラッチ60と数字スリーブ80との間の連結を回復する。
【0111】
駆動スリーブ30の長手方向の軸方向運動により、ピストンロッド20は、ハウジング10の支持体の貫通口を通って回転し、それによってカートリッジ6内で栓7を前進させる。ダイヤル設定された用量が投薬された後、用量ダイヤル12から延びる少なくとも1つの止め具と、ハウジング10の少なくとも1つの対応する止め具との接触により、数字スリーブ80のさらなる回転が防止される。数字スリーブ80の軸方向に延びる縁部または止め具のうちの1つと、ハウジング10の少なくとも1つまたはいくつかの対応する止め具との当接によって、ゼロ用量位置を判定することができる。
【0112】
上述した排出機構または駆動機構8は、一般に使い捨てペン注射器内で実施可能な複数の異なる構成の駆動機構のうちの1つに対する単なる例示である。上述した駆動機構は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、たとえばWO2004/078239A1、WO2004/078240A1、またはWO2004/078241A1において、より詳細に説明されている。
【0113】
図2に示す用量設定機構9は、少なくとも用量ダイヤル12および数字スリーブ80を含む。用量の設定中、用量の設定のために用量ダイヤル12が回転すると、数字スリーブ80は、その外側ねじ山または螺旋溝81と、ハウジングの内面にある対応する形状のねじ付セクションとのねじ係合によって画成された螺旋経路に沿って、ハウジングに対して回転し始める。
【0114】
用量設定中、駆動機構8または用量設定機構9が用量設定モードにあるとき、駆動スリーブ30は、用量ダイヤル12および数字スリーブ80とともに回転する。駆動スリーブ30は、用量設定中にハウジング10に対して静止しているピストンロッド20にねじ係合される。したがって、駆動スリーブ30は、用量設定中に螺着または螺旋運動を受ける。駆動スリーブ30は、用量ダイヤルが第1の回転方向または用量増分方向4に、たとえば時計回り方向に回転すると、近位方向に移動し始める。用量のサイズを調整または補正するために、用量ダイヤル12は、反対の第2の回転方向に、したがって用量減分方向5に、たとえば反時計回りに回転可能である。
【0115】
図3図9に、注射デバイス1のハウジング10に取り付けられるように構成されたタッチ感応ラベル100の一例が示されている。図3に示すように、ラベル100は、ハウジング10の側壁に取付け可能である。タッチ感応ラベルは、電子ディスプレイ110を有する図7に示す可撓性基板101を含む。電子ディスプレイ110は、基板101の上面に位置する。電子ディスプレイ110は、図7および図8に示す多層構造によって形成することができる。したがって、電子ディスプレイ110および/またはタッチ感応ラベル100は、多層構造、たとえば薄膜多層構造を含むことができる。
【0116】
可撓性基板101は、管形とすることができるハウジング10の円周に折畳み可能または屈曲可能である。可撓性基板101、したがってタッチ感応ラベル100全体を、ハウジング10の側壁に接着剤により取り付けることができ、したがってハウジング10の外面の少なくとも一部分に巻き付けることができる。
【0117】
可撓性基板101またはベース基板は、PETフィルムまたはオフィス用紙などの印刷電子ラベルを作製するための知られている任意の材料とすることができる。他のプラスチック材料、たとえばPVCも実現可能である。ベース基板は、片面に接着剤を有し、たとえば接着剤の選択に応じて恒久的または取外し可能に、ラベルをペン本体に固定する。
【0118】
タッチ感応ラベル100は、電子ディスプレイ110およびタッチ感応区域120を含む。図4図6の例では、タッチ感応区域120は、電子ディスプレイ110の表面の専用区域である。ここで、タッチ感応区域120は、電子ディスプレイ110に一体化される。電子ディスプレイ110は、タッチ感応ディスプレイとすることができる。電子ディスプレイ110は、少なくとも1つの標示111を視覚的に表示するように構成される。この例では、少なくとも1つの標示111は、数字または任意の他の記号とすることができ、したがって注射デバイス1によって設定および注射される用量のサイズを表すことができる。
【0119】
タッチ感応ラベル100は、可撓性構造を含む。タッチ感応ラベル100は、注射デバイス1のハウジング10の外周に屈曲可能または巻付け可能である。電子ディスプレイ110は、可撓性ディスプレイである。電子ディスプレイ110は、電気泳動ディスプレイおよび薄膜エレクトロルミネッセントディスプレイのうちの1つを含むことができる。そのようなディスプレイは、可撓性および/または屈曲可能であることが知られている。したがって、そのようなディスプレイは、注射デバイス1のハウジング10の外周に巻き付けられるように構成される。ディスプレイ110は、標示111を視覚的に示すように少なくとも構成される。
【0120】
タッチ感応ラベル100は、タッチ感応区域120をさらに含む。図4の例では、タッチ感応区域120は、電子ディスプレイ110に一致し、電子ディスプレイ110に完全に重複する。図5に示す別の例では、タッチ感応区域120は、電子ディスプレイ110内に位置する。タッチ感応区域120は、電子ディスプレイ110の一部分である。ここで、タッチ感応区域120は、電子ディスプレイ110のタッチ感応部材である。タッチ感応区域120の外側に位置する電子ディスプレイ110の部分またはセクションは、タッチ非感応とすることができる。
【0121】
タッチ感応区域は、印刷電子機器技術で作製された容量性スイッチを含むことができる。たとえば、センサ要素は、キャパシタの一部である電極として設計することができる。キャパシタは、指などの物体がキャパシタに接近および密接したときに「離調」することができる。この接近は、キャパシタの測定可能な特性、たとえばキャパシタの静電容量に影響を与える。
【0122】
図3の例では、タッチ感応区域120は、電子ディスプレイ110の外側に位置する。タッチ感応区域120は、基板101の同じ面に位置する。タッチ感応区域120および電子ディスプレイ110はどちらも、基板101の上面に位置する。図3の例では、タッチ感応区域120は、タッチ感応ボタンまたは機械スイッチを含むことができる。タッチ感応区域120、すなわちスイッチに触れたとき、またはそれを押し下げたとき、それに応じてたとえば図9に示す電子回路130を操作することができる。ここで、タッチ感応区域120は、電池150とプロセッサ140との間の連結を遮断するように構成された機械スイッチ154を含む。他の例では、スイッチ154は、電子ディスプレイ110とプロセッサ140および/または電池150とを電気的に接続または切断することができる。
【0123】
タッチ感応区域120ならびに機械スイッチ154は、プロセッサ140に排他的に接続することができる。タッチ感応区域120ならびに機械スイッチ154は、電池150とプロセッサ140との間の電気接続から遠隔に位置決めおよび配置することができる。
【0124】
図9の電子回路130の例は、図3図8の例を何ら限定するものではない。電子ディスプレイ110は、電子回路130に重ね合わせることができる。したがって、電子ディスプレイ110は、電子ディスプレイ110の下に位置する電子回路130に完全に重複することができる。電子ディスプレイ110は、図7および図8に示す多層構造を含むことができる。電子回路130は、可撓性ラベル100の様々な層103、104、105、106のうちの1つまたはいくつかにおいて実施することができる。典型的には、電子回路130は、導電層103によって全体的に提供される。
【0125】
タッチ感応区域120は、電子ディスプレイ110上、または電子ディスプレイ110の外側の別個の部分上に、視覚的に示すことができる。図5および図6に示すように、タッチ感応区域120は、ボタン形状、たとえば円対称構造を含むことができる。別法として、タッチ感応区域120は、矩形または多角形の形状とすることができる。
【0126】
タッチ感応区域120は、電子ディスプレイ110に接続される。タッチ感応区域120および電子ディスプレイ110は、タッチ感応区域120に触れたまたはそれを押し下げたとき、電子ディスプレイ110がその動作モードを変化させるように、相互作用するように構成される。電子ディスプレイ110は、たとえば図4に示すデフォルトモードと、たとえば図6に示す起動モードとの間で切換え可能とすることができる。デフォルトモードで、電子ディスプレイ110は、少なくとも1つの標示111を視覚的に示すことによって、用量のデフォルトまたは所定のサイズを示すように構成することができる。
【0127】
図5に示すタッチ感応区域120に触れたまたはそれを押し下げたとき、電子ディスプレイ110は、確認通知112または他の絵文字を示すように構成することができる。確認通知112を示すことに対する代替または追加として、電子ディスプレイ110は、その外観を変化させるように構成することができる。電子ディスプレイ110は、タッチ感応区域120に触れたまたはそれを押し下げたことが検出および認識されたことを使用者に示すために、コントラストまたは明るさを強化するように構成することができる。電子ディスプレイ110が多色ディスプレイであるとき、電子ディスプレイ110は、タッチ感応区域120に触れたまたはそれを押し下げたことに応答して、色を変化させることができる。ここで、電子ディスプレイ110の背景照明が変化することができる。代替として、標示111および/または確認通知112のうちの少なくとも1つがその色を変化させることができる。
【0128】
他の例の場合、標示111および確認通知112のうちの少なくとも1つの外観のスタイルが、タッチ感応区域120に触れたまたはそれを押し下げたことに応答して変化を受けることができる。たとえば、標示111および確認通知112のうちの少なくとも1つが、明るさ、フォントタイプ、色、サイズ、およびこれらの組合せに関する変化を受けることができる。
【0129】
追加またはさらなる代替として、標示(たとえば、用量値「10」)の位置がディスプレイ上で変化することができる。たとえば、タッチ感応区域を起動したとき、「10」という標示が、ディスプレイの一方の側(たとえば、左側)からディスプレイの他方の側(たとえば、右側)へ動くことができる。この位置変化は、タッチ感応区域に触れたことが検出および処理されたことを使用者に示して思い付かせることができる。
【0130】
さらなる例では、タッチ感応区域に触れたときまたはタッチ感応区域を押し下げたとき、プロセッサは、ユーザ活動および/またはユーザ活動の時点を電子回路のデータ記憶装置またはメモリ内に記録するように構成することができる。記憶は、タイムスタンプを含む複数の事象、たとえば30、100、1000の事象に関係するデータを記憶するための容量を含むことができる。
【0131】
さらなる例では、電子回路は、データ伝送要素を提供し、たとえばNFCデータ伝送を有効にするアンテナを含む。このようにして、外部デバイスがNFC通信を使用することによって、メモリ内に記憶されたデータを読み出すことができる。NFC通信は、受動的または能動的に実施することができ、後者の場合、電子機器に給電するエネルギー源、たとえば電池が必要とされる。電池は、印刷技術で実施することができる。
【0132】
代替の例の場合、電子ディスプレイ110は、タッチ感応区域120に触れたことに応答して、一時的に電源を切ってブランク画面を示すように構成することができる。タッチ感応区域120に触れるまたはそれを押し下げることによって、電子ディスプレイ110を起動モードに切り換えることができるが、デフォルトモード中に以前は示されていた標示111も消えたブランクまたは何もない画面を提供する可能性がある。この起動モードで、電子ディスプレイ110は、所定の時間間隔の経過後、再びデフォルトモードに切り換えまたは戻るように構成することができる。この所定の時間間隔は、注射治療の連続注射処置間の時間間隔に一致または対応することができる。言い換えれば、電子ディスプレイ110がデフォルトモードに戻り、少なくとも1つの標示111を視覚的に示すとすぐに、これは使用者にとって、薬剤の次の用量の注射が現在予定されているという明白な標示になる。
【0133】
そのような例の場合、タッチ感応ラベル100は、場合により、クロックが装備されており、クロックはたとえば、電子回路130のプロセッサ140内で実施される。基本的にクロックにより、所定の時間間隔、したがって2回連続してタッチ感応区域120に触れた事例間の時間間隔を計数することが有効になる。
【0134】
プロセッサ140および電子ディスプレイ110は、たとえば次の用量の設定および注射が遅れたとき、デフォルトモードから警報モードに自動的に切り換わるようにさらに構成することができる。警報モードで、電子ディスプレイ110は、デフォルトモードと比較すると強化されたコントラストおよび/または強化された明るさを提供することができる。加えて、警報モードで、プロセッサ140および電子ディスプレイ110は、警報信号を視覚化し、したがって薬剤の前の用量の設定および注射が現在遅れていることを使用者に示すように構成することができる。警報モードで、電子ディスプレイ110は、その外観の規則的な変化を受けることができる。電子ディスプレイ110は、明るさ、コントラスト、色というパラメータのうちの少なくとも1つを規則的または不規則的に変更することができる。さらに、少なくとも1つの標示111が応答し、または確認通知112は規則的もしくは不規則的な変更を受けることができる。警報モードで、電子ディスプレイ110は、点滅または明滅作用を提供し、したがって使用者の注意を引き付けることができる。
【0135】
図9は、タッチ感応ラベル100の電子回路130の一例を示す。電子回路130は、可撓性基板101上に直接印刷することができる。電子回路130の電子構造および/または導電構造も同様に屈曲可能または可撓性とすることができる。電子回路130の完全性または機能性は、可撓性基板101および/または電子回路130の屈曲または収縮による影響を実質上受けない。
【0136】
電子回路130は電池150を含み、電池150は典型的には、多数の電池セル152を備えている。個々の電池セル152は電気的に接続される。電池セル152は、個々の電池セル152によって提供される電圧およびプロセッサ140によって必要とされる電圧に応じて、直列または並列に接続することができる。電池150および/またはその電池セル152は、印刷電子構造を含むことができる。したがって、電池150および/または電池セル152は、印刷電池または電池セルであり、印刷によって基板101上に配置することができる。
【0137】
プロセッサ140は、電池150ならびに電子ディスプレイ110に接続される。電池150とプロセッサ140との間の相互接続は、タッチ感応区域120内に位置するスイッチ154によって遮断することができる。スイッチ154を押し下げることで、電池150とプロセッサ140との間の電気接続を接続または切断することができる。プロセッサ140は、電子ディスプレイ110にさらに接続される。電子ディスプレイ110上のグラフィック表現、たとえば電子ディスプレイ110の様々な表示セグメントまたは画素は、プロセッサ140によって個々に起動または停止状態にすることができる。
【0138】
プロセッサ140は、中央演算処理装置(CPU)142および記憶装置144を含む。記憶装置内には多数の所定の標示111を記憶することができ、標示111は、スイッチ154の開閉を登録したときに電子ディスプレイ110上に示すことができる。データ記憶装置144を装備しているとき、プロセッサ140は、タッチ感応区域120に触れる動作の数を計数するようにさらに構成することができる。使用者が注射デバイス1を使用し、タッチ感応区域120を押し下げまたはタッチ感応区域120に触れるたびに、こうして触れたまたは押し下げたことを記憶装置144内で登録および計数することができる。プロセッサ140がクロックをさらに装備している場合、すべての触れた事例にタイムスタンプをさらに割り当てることができ、したがって投与履歴の記録またはタッチ感応区域120が注射デバイス1の使用者によって適切に触れられた時点の記録を可能にすることができる。
【0139】
図9で、タッチ感応区域120は電子ディスプレイ110からずれてまたは遠隔に示されているが、電子ディスプレイ110がタッチ感応区域120に重複する例または電子ディスプレイ110全体がタッチ感応式である例も可能である。そのような例の場合、タッチ感応区域120および電子ディスプレイ110は、完全にまたは少なくとも部分的に重複することができる。
【0140】
電子回路130は、プロセッサ140に接続されたアンテナ160をさらに含むことができる。アンテナ160は、無線データ伝送向けに構成することができる。アンテナ160は、受信アンテナおよび/または同報アンテナとして構成することができる。アンテナ160は、RF周波帯域内で電磁信号を伝送するように構成することができる。アンテナ160は、RFIDアンテナを含むことができる。アンテナ160は、Bluetooth、NFC、またはIEEE802.11(WLAN)などの従来の無線通信規格に応じて構成することができる。アンテナ160は、スマートウォッチ、スマートフォン、タブレットコンピュータ、またはパーソナルコンピュータなどの外部電子デバイス200とデータを交換するように構成される。
【0141】
プロセッサ140は、アンテナ160を介して外部電子デバイス200から得られた信号によって再構成可能とすることができる。このようにして、外部電子デバイス200を使用して、プロセッサ140を変更または再構成し、したがって電子ディスプレイ110の内容を変更および再構成することができる。追加または代替として、外部電子デバイス200は、電子回路130のデータ記憶装置144を読み出すようにさらに構成することができる。このようにして、タッチ感応ラベル100の投与履歴および使用を正確に監視し、さらなる処理および/または評価のために外部電子デバイス200へ伝送することができる。
【0142】
電子回路130の電子構成要素、たとえば電池150と電池セル152との間の有線接続、スイッチ154またはタッチ感応区域120、アンテナ160、ならびにプロセッサ140はすべて、基板101上の印刷プロセスによって含むことができ、または形成することができる。このようにして、基板101上の多数の電子構成要素の別個の組立ておよび配置が実質上余分になる。これにより、タッチ感応ラベル100のコスト効率の良い大量製造が有効になる。
【0143】
基板101の下面は、接着剤を備えることができる。接着剤は、電子回路130が位置する導電層103とは反対に位置する基板101の下面を完全または少なくとも部分的に覆う接着剤層102上に提供することができる。図8に、電子ディスプレイ110を形成するように構成された多数の層103、104、105、106の積層体が、例示的に示されている。図8の積層構造は、薄膜エレクトロルミネッセントディスプレイ110を表す。基板101は、柔軟なものとすることができ、折畳み可能なオフィス用紙、透明または不透明のPETフィルム、革、木材、セラミック、および金属箔のうちの1つを含むことができ、またはそのようなものからなることができる。エレクトロルミネッセントディスプレイは、能動的に光を放出するように構成される。
【0144】
ディスプレイのセグメントは、キャパシタとして作用する2つの重なった電極からなる。反対に位置する電極が、導電層103および透明電極層106内に設けられる。これらの層103、106間には、誘電体層104と、たとえば蛍光体層の形態のエレクトロルミネッセント層105とが設けられる。好適な電圧および好適な電流のAC信号が印加された場合、エレクトロルミネッセント層105は光子を放出する。
【0145】
層103、104、105、106の積層体により、基板101の厚さは100~150μmしか増加しない。このようにして、電子ディスプレイ110を極めて薄くすることができる。
【0146】
他の例の場合、可撓性の電子ディスプレイ110は、電界の印加による荷電顔料粒子の再配置に基づく電気泳動ディスプレイとして実施される。ここで、適切な直径1μmの二酸化チタン粒子を炭化水素油中に分散させることができる。界面活性剤および帯電剤とともに、暗い色の染料が油に添加され、帯電剤は、粒子が電荷を帯びるように作用する。この混合物が、10~100μmの間隙だけ分離された2つの平行な導電板間に配置される。2つの板に電圧が印加されると、粒子は、粒子の電荷とは反対の電荷を有している板へ、電気泳動によって移動する。
【0147】
粒子がディスプレイの前側または観察側に位置するとき、光が高指数チタニア粒子によって観察者の方へ後方散乱するため、粒子は白色に見える。粒子がディスプレイの後側に位置するとき、着色された染料によって入射光が吸収されるため、粒子は暗く見える。後方電極が複数の小さい画像要素または画素に分割されている場合、ディスプレイの各領域に適切な電圧を印加して反射および吸収領域のパターンを生み出すことによって、画像を形成することができる。電気泳動ディスプレイは、紙状の外観およびより低い電力消費のため、電子ペーパーカテゴリーの重要な例と考えられている。
【0148】
タッチ感応ラベル100は、場合により、アンテナ160のみを装備することができる。一実装形態の場合、ラベル100にアンテナ160がなくてもよく、ラベル100は、明確なまたは所定の標示111を示し、たとえばタッチ感応区域120に触れたまたはそれを押し下げたことに応答して、デフォルトモード、起動モード、および/または警報モードの間の切換えを提供するように動作可能とすることができる。
【0149】
図10図12に、タッチ感応ラベル100のさらなる例が示されている。このラベル100は、アンテナ160の有無にかかわらず実施することができる。ラベル100は、電子ディスプレイ110およびタッチ感応区域120を有する可撓性基板101を含む。典型的には、図10のラベル100はまた、図9に関連して上述したプロセッサ140、CPU142、データ記憶装置144、および電池150を含む。図3図9に関連して上述した例に加えて、図10図12のラベル100は、センサ170をさらに含む。
【0150】
センサ170は、ラベル100がハウジング10に所定のとおり取り付けられているとき、注射デバイス1の用量トラッカ176およびプリセレクタ95のうちの少なくとも1つの位置および/または回転状態を位置決定または判定するように構成される。このため、ハウジング10は、ハウジング10の外面上の突起として、図11に示す少なくとも1つまたはいくつかの位置印180を含むことができる。ラベル100は、少なくとも1つまたはいくつかの位置印180によって画成された区域内で、ハウジング10に適切に取り付けなければならない。用量トラッカ176は、注射デバイス1の数字スリーブ80に一致することができ、または数字スリーブによって形成することができる。用量トラッカ176はインジケータ175を含み、ハウジング10に対するインジケータ175の位置状態、すなわち長手方向位置および/または回転方向は、センサ170によって検出可能である。
【0151】
図2に概略的に示すプリセレクタ95は、ハウジング10に対して摺動可能または回転可能に可動のうちの1つとすることができる。プリセレクタ95は、ハウジング10の側壁に摺動可能または回転可能に連結することができる。プリセレクタ95は、少なくとも2つの個別の位置状態間で可動であり、各位置状態は、用量の設定中に用量トラッカ176が変位可能な経路長を画成および制限する。プリセレクタ95は、第1の停止位置と第2の停止位置と間で、長手方向に、または回転可能にのうちの少なくとも1つで変位可能である。各停止位置は、ハウジングに少なくとも解放可能に固定可能である。プリセレクタ95は、典型的にはプリセレクタ停止機能を含み、プリセレクタ停止機能は、用量トラッカ176の対応する形状の追跡停止機能に係合する。用量トラッカ176は、追跡停止機能がプリセレクタ停止機能に係合するまで、用量増分方向に変位可能である。この係合位置を越えた用量トラッカのさらなる回転または動きは、プリセレクタ95によって妨げられて阻止される。
【0152】
ここに示す例では、用量トラッカ176のみがインジケータ175を含み、インジケータ175の位置はセンサ170によって検出可能である。プリセレクタ95が、センサ170と相互作用するように構成されたインジケータ175を等しく装備することもできる。タッチ感応ラベル100の一例の場合、プリセレクタ95のみがインジケータ175を装備し、用量トラッカ176にはインジケータ175がない。
【0153】
他の例の場合、プリセレクタ95および用量トラッカ176の両方が各々、独自のインジケータ175を装備する。用量トラッカ176のインジケータは、プリセレクタ95のインジケータとは区別することができる。センサ170は、用量トラッカ176のインジケータおよびプリセレクタ95のインジケータを区別するように構成することができる。したがって、センサ170および/またはプロセッサ140は、用量トラッカ176およびプリセレクタ95の両方の位置状態を判定するように構成することができる。
【0154】
位置印180は、ハウジング10の側壁から突出することができ、またはハウジング10内に凹部を含むことができる。代替として、ハウジング10の外面において、位置印180に突起または凹部がなくてもよい。位置印180は、ラベル100を接着剤により取り付けるべき境界領域などの視覚的標示を単に含むことができる。
【0155】
一例では、センサ170は、ハウジング10に対するインジケータ175および/または用量トラッカ176の運動方向に沿って分離された多数の個別のセンサセグメント171、172、173を含む。用量トラッカ176がハウジング10に対する回転および/または摺動運動を受けると、たとえば最初に第1のセンサセグメント171に重複しているインジケータ175は、第2のセンサセグメント172の方へ動き、たとえばさらに第3のセンサセグメント173の方へ動く。多数のセンサセグメント171、172、173に対するインジケータ175の動きは、プロセッサ140に電気的に接続されたセンサ170によって検出可能である。このようにして、プロセッサ140およびセンサ170は、ハウジング10に対するインジケータ175、したがって用量トラッカ176の実際の位置および/または回転状態を判定および検出するように構成される。
【0156】
用量トラッカ176の位置または回転状態は、注射デバイス1によって実際に設定された用量サイズに明白に一致する。このようにして、プロセッサ140は、ラベル100がハウジング10に適切に連結されているとき、注射デバイス1によって実際に設定された用量のサイズを判定または測定するように構成することができる。したがって、用量トラッカの判定された長手方向または回転方向位置と、たとえば標示111によって電子ディスプレイ110上に示される所定の位置とを比較することができる。注射デバイスによって実際に設定された用量は、投与量窓13を通してさらに示すことができる。
【0157】
プロセッサ140および電子ディスプレイ110は、用量トラッカ176の判定された長手方向または回転方向位置が所定の位置に整合した場合、電子ディスプレイ110上に視覚的標示111および視覚的確認通知112のうちの少なくとも1つを生成するようにさらに構成することができる。別法または追加として、プロセッサは、用量トラッカ176の判定された長手方向または回転方向位置が所定の位置に整合しない場合、電子ディスプレイ110上に視覚的標示111および視覚的確認通知112のうちの少なくとも1つを生成するように構成することができる。
【0158】
典型的には、センサ170によって実際に測定された用量トラッカの判定された長手方向または回転方向位置が所定の位置または用量の所定のサイズに整合しない限り、プロセッサは、電子ディスプレイ上に視覚的標示を生成し、したがって実際に設定された用量のサイズが大きすぎるまたは小さすぎることを使用者に示すように構成される。このため、電子ディスプレイ110は、それぞれの標示111を生成するように構成することができ、標示111はたとえば、センサ170によって実際に設定および判定された用量のサイズが用量の所定のサイズに整合するまで、用量ダイヤル12を回転させるべきそれぞれの方向を指している矢印の形態である。
【0159】
用量サイズを示す記号の生成に対する代替として、電子ディスプレイ110がその外観を変化させることも考えられ、これはたとえば、コントラストおよび/または明るさの突然の強化の形態である。電子ディスプレイ110が多色ディスプレイである場合、電子ディスプレイ110はまた、たとえば実際に測定された用量サイズが、注射デバイス1によって設定および注射されるべき所定の用量に整合したとき、色を変化させることができる。
【0160】
センサ170およびインジケータ175の特有の実装形態は変動することができる。図11に示すように、ハウジング10は、貫通口178または凹部を含むことができ、たとえば各センサセグメント171、172、173上に設けられた多数の接触ピンによって、貫通口178を通ってインジケータ175の位置をたとえば機械的または電気的に検出することができる。このため、インジケータ175とセンサセグメント171、172、173のうちの少なくとも1つとの間に、直接的な機械接触を確立することができる。図12に概略的に示すように、基板101の下面は凹部108を含み、凹部108を通って、センサセグメント171、172、173にアクセス可能であり、またはセンサセグメント171、172、173に到達することができる。
【0161】
別法として、センサセグメント171、172、173は、ハウジング10の貫通口178または凹部に到達するように、基板101の下面からわずかに突出することができる。ハウジング10に適切に取り付けられている場合、センサセグメント171は、図12に示すインジケータ175に電気的に接触することができる。センサセグメント171とインジケータ175との間の電気的接触は、センサ170および/またはプロセッサ140によって検出することができる。インジケータ175および用量トラッカは、たとえば凹部108の長手方向に沿って動きを受けると、第1のセンサセグメント171から離れる方へ動くことができ、第2のセンサセグメント172を越えて摺動または回転することができる。図12にさらに示すように、初期位置から離れる方へ動いたとき、インジケータ175’は、第2のセンサセグメント172と第3のセンサセグメント173との間に位置することができる。ここで、インジケータ175’は、センサセグメント172、173の両方に接触することができる。この位置は、セグメント172、173の両方によって検出することができる。
【0162】
他の例の場合、インジケータ175は、磁気的に符号化することができ、センサセグメント171、172、173は、インジケータ175が長手方向および/または回転方向の動きを受けたとき、インジケータ175の磁場を検出するように構成することができる。さらなる例の場合、インジケータ175およびセンサセグメント171、172、173は、静電的に実施することができる。ここで、多数のセンサセグメント171、172、173は、インジケータ175によって誘起される電界の変更を位置決定または検出するように構成することができる。さらに、センサセグメント171、172、173は、それぞれのセンサセグメント171、172、173の近傍で電界または電気容量の変更を測定するように構成された容量測定要素を含むことができる。磁気、静電、および容量測定処置は、ハウジング10の側壁内に貫通口178または凹部を必要としないため、特に有益である。そのような実装形態の場合、ラベル100は、ハウジング10の外面上の所与の位置印内で単に接着剤により取り付けることができる。
【0163】
図13に、タッチ感応ラベルを使用する方法の流れ図が示されている。第1の工程300で、ラベル100は、注射デバイス1に取り付けられる。ラベル100は、典型的には、注射デバイス1の側壁に取り付けられる。このため、基板101の下面上の接着剤層102を覆う剥離シートを取り外して、接着剤層102を露出させる。したがって、典型的には位置印180内で、基板101およびラベル100全体をハウジング10の側壁の周りに折り畳みまたは巻き付けることができる。
【0164】
工程300でラベルを注射デバイスに取り付けた後、使用者は、工程302で、タッチ感応区域120に触れまたはそれを押し下げて、ラベル100をデフォルトモードから起動モードに切り換えることができる。工程302でタッチ感応区域120に触れたまたはそれを押し下げたことに応答して、次の工程304で、ラベル100は、デフォルトモードおよび起動モードのうちの一方からデフォルトモードおよび起動モードのうちの他方に実際に切り換わる。実際には、電子ディスプレイ110は、その外観を変更する。場合により、前の工程304でデフォルトモードから起動モードに切り換わっていたとき、さらなる工程306で、電子ディスプレイ110はデフォルトモードに戻ることができる。工程306でデフォルトモードに戻ることは、所定の時間間隔の経過後、プロセッサ140によって自律的にトリガすることができる。
【符号の説明】
【0165】
1 注射デバイス
2 遠位方向
3 近位方向
4 用量増分方向
5 用量減分方向
6 カートリッジ
7 栓
8 駆動機構
9 用量設定機構
10 ハウジング
11 トリガ
12 用量ダイヤル
13 投与量窓
14 カートリッジホルダ
15 注射針
16 内側ニードルキャップ
17 外側ニードルキャップ
18 保護キャップ
19 突起
20 ピストンロッド
21 支承部
22 第1のねじ山
23 押さえ
24 第2のねじ山
25 胴部
26 封止部
28 ねじ付ソケット
30 駆動スリーブ
31 ねじ付セクション
32 フランジ
33 フランジ
35 最終用量リミッタ
36 肩部
40 ばね
41 凹部
50 用量トラッカ
51 追跡停止機能
60 クラッチ
62 挿入片
64 心棒
80 数字スリーブ
81 溝
90 ラチェット機構
91 ラチェット機能
95 プリセレクタ
100 ラベル
101 基板
102 接着剤層
103 導電層
104 誘電体層
105 エレクトロルミネッセント層
106 透明電極層
108 凹部
110 電子ディスプレイ
111 標示
112 確認通知
120 タッチ感応区域
130 電子回路
140 プロセッサ
142 CPU
144 データ記憶装置
150 電池
152 電池セル
154 スイッチ
160 アンテナ
170 センサ
171 センサセグメント
172 センサセグメント
173 センサセグメント
175 インジケータ
176 用量トラッカ
178 貫通口
180 位置印
200 外部電子デバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13