(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】樹脂成形品の歪み計測方法、樹脂成形品の溶着条件の選定方法、樹脂成形品の破壊許容歪み及び/又は破壊時間の取得方法、複合成形品の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
G01L 1/24 20060101AFI20240909BHJP
【FI】
G01L1/24 A
(21)【出願番号】P 2021018261
(22)【出願日】2021-02-08
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】束田 拓平
(72)【発明者】
【氏名】岡田 章
【審査官】井亀 諭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102445435(CN,A)
【文献】特開2020-084780(JP,A)
【文献】特開2007-132824(JP,A)
【文献】特開2019-002692(JP,A)
【文献】再公表特許第2007/046536(JP,A1)
【文献】特開2007-139698(JP,A)
【文献】特開2001-183114(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01L 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ吸収性を有する熱可塑性材料からなる第1の樹脂成形品に溝を形成する工程と、
前記溝に光ファイバセンサを設置する工程と、
レーザ透過性を有する第2の樹脂成形品を、第1の樹脂成形品の前記溝を有する面上に配置する工程と、
レーザを照射することで、前記光ファイバセンサを第1の樹脂成形品に埋設するとともに第1の樹脂成形品と第2の樹脂成形品を溶着により接合させ、複合成形品を得る工程と、
前記光ファイバセンサにレーザ光を入射したときのセンサ応答を得ることで第1の樹脂成形品の歪みを計測する工程と、
を含む樹脂成形品の歪み計測方法。
【請求項2】
レーザ吸収性を有する熱可塑性材料からなる第1の樹脂成形品に溝を形成する工程と、
前記溝に光ファイバセンサを設置する工程と、
レーザを照射することで前記光ファイバセンサを第1の樹脂成形品に埋設する工程と、
第1の樹脂成形品の前記溝を有する面に第2の樹脂成形品を接合させ、複合成形品を得る工程と、
前記光ファイバセンサにレーザ光を入射したときのセンサ応答を得ることで第1の樹脂成形品の歪みを計測する工程と、
を含む樹脂成形品の歪み計測方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された樹脂成形品の歪み計測方法の各工程と、
複数の接合条件で得られた各々の複合成形品の溶着部の破壊強度を測定する工程と、
前記複数の接合条件で得られた各々の複合成形品を基に計測された前記第1の樹脂成形品の歪みと、各複合成形品の溶着部の破壊強度の測定結果との関係に基づいて、前記複数の接合条件からいずれかの接合条件を選定する工程と、
を含む樹脂成形品の溶着条件の選定方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された樹脂成形品の歪み計測方法の各工程と、
前記複合成形品に対して所定の耐久試験を行う工程と、
前記耐久試験中に前記歪みを計測する工程によって逐次得られるセンサ応答、又は、当該工程で逐次計測された前記第1の樹脂成形品の歪みに基づいて、前記複合成形品の破壊許容歪み及び/又は破壊時間を取得する工程と、
を含む樹脂成形品の破壊許容歪み及び/又は破壊時間の取得方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された樹脂成形品の歪み計測方法の各工程と、
前記歪みを計測する工程によって得られたセンサ応答、又は、当該工程で計測された前記第1の樹脂成形品の歪みに基づいて、前記複合成形品の品質管理を行う工程と、
を含む複合成形品の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成形品の歪みを計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂成形品は、従来から、自動車、電車、航空部品、電機・電子部品、医療機器等の様々な分野で使用されている。特に、輸送機分野では使用温度範囲が広く、樹脂成形品の成形時の残留歪や温度変化に伴う歪によりクラックや割れが発生することがある。このような樹脂成形品にクラックや割れが発生すると、樹脂成形品を使用した製品の信頼性が低下することから、樹脂成形品の状態、特に歪などを測定する方法が提案されてきた(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-243335号公報
【文献】特開2011-242369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1では歪みゲージを用いて、樹脂成形品の穿孔により残留応力を計測しているが、この計測方法では成形品を破壊しなくてはならず、応力や歪みの経時変化を測定することができない。また、特許文献2では成形品に顔料インクなどを吹き付け、その模様の経時変化により成形収縮に伴う変形不良を計測する手法を採用する。しかし、成形品同士の溶着部の歪等、成形品の内部の収縮については計測することができない。
【0005】
そこで、本発明は、樹脂成形品同士を接合させた複合成形品について、当該複合成形品を破壊することなく接合部の内部歪みを計測できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の観点は、レーザ吸収性を有する熱可塑性材料からなる第1の樹脂成形品に溝を形成する工程と、前記溝に光ファイバセンサを設置する工程と、レーザ透過性を有する第2の樹脂成形品を、第1の樹脂成形品の前記溝を有する面上に配置する工程と、レーザを照射することで、前記光ファイバセンサを第1の樹脂成形品に埋設するとともに第1の樹脂成形品と第2の樹脂成形品を溶着により接合させ、複合成形品を得る工程と、前記光ファイバセンサにレーザ光を入射したときのセンサ応答を得ることで第1の樹脂成形品の歪みを計測する工程と、を含む樹脂成形品の歪み計測方法である。
【0007】
本発明の第2の観点は、レーザ吸収性を有する熱可塑性材料からなる第1の樹脂成形品に溝を形成する工程と、前記溝に光ファイバセンサを設置する工程と、レーザを照射することで前記光ファイバセンサを第1の樹脂成形品に埋設する工程と、第1の樹脂成形品の前記溝を有する面に第2の樹脂成形品を接合させ、複合成形品を得る工程と、前記光ファイバセンサにレーザ光を入射したときのセンサ応答を得ることで第1の樹脂成形品の歪みを計測する工程と、を含む樹脂成形品の歪み計測方法である。
【0008】
本願発明の第3の観点は、上述の樹脂成形品の歪み計測方法の各工程と、複数の接合条件で得られた各々の複合成形品の溶着部の破壊強度を測定する工程と、前記複数の接合条件で得られた各々の複合成形品を基に計測された前記第1の樹脂成形品の歪みと、各複合成形品の溶着部の破壊強度の測定結果との関係に基づいて、前記複数の接合条件からいずれかの接合条件を選定する工程と、を含む樹脂成形品の溶着条件の選定方法である。
【0009】
本発明の第4の観点は、上述の樹脂成形品の歪み計測方法の各工程と、前記複合成形品に対して所定の耐久試験を行う工程と、前記耐久試験中に前記歪みを計測する工程によって逐次得られるセンサ応答、又は、当該工程で逐次計測された前記第1の樹脂成形品の歪みに基づいて、前記複合成形品の破壊許容歪み及び/又は破壊時間を取得する工程と、を含む樹脂成形品の破壊許容歪み及び/又は破壊時間の取得方法である。
【0010】
本発明の第5の観点は、上述の樹脂成形品の歪み計測方法の各工程と、前記歪みを計測する工程によって得られたセンサ応答、又は、当該工程で計測された前記第1の樹脂成形品の歪みに基づいて、前記複合成形品の品質管理を行う工程と、を含む複合成形品の品質管理方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様によれば、樹脂成形品同士を接合させた複合成形品について、当該複合成形品を破壊することなく接合部の内部歪みを計測できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態の樹脂成形品の歪み計測方法が適用されるシステムのセットアップを示す図である。
【
図2】一実施形態の樹脂成形品の歪み計測方法を実行するための構成を説明する図である。
【
図3】ファイバ・ブラッグ・グレーティングセンサに対する入射光、透過光、及び、反射光のスペクトルを説明する図である。
【
図4】一実施形態の樹脂成形品に光ファイバケーブルを埋設する方法を説明する図である。
【
図5】一実施形態の樹脂成形品に光ファイバケーブルを埋設する方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(1)樹脂成形品の歪み計測方法
本発明に係る樹脂成形品の歪み計測方法が適用される樹脂成形品を成形するための樹脂材料は、特に限定されず従来公知の熱可塑性樹脂材料を用いることができる。また、複数の樹脂材料をブレンドした樹脂混合物も上記樹脂材料に含まれる。さらに、ある樹脂に対して他の樹脂、ガラス繊維や無機粉体などの充填剤、核剤、染料や顔料等の着色剤、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤及び難燃剤等の添加剤を添加して、所望の特性を付与した樹脂組成物も含まれる。
樹脂成形品の形状も特に限定されず、如何なる形状の樹脂成形品に対しても本発明を適用することができる。
【0014】
図1に一実施形態に係る樹脂成形品の歪み計測方法が適用されるシステムのセットアップを示す。
図1のシステムにおいて、歪み計測装置5は、ファイバ・ブラッグ・グレーティング(Fiber Bragg Grating;以下「FBG」と表記する。)を用いるFBGセンサにより複合成形品1の歪みを反射光スペクトルにより計測する。このほかにも、散乱光の周波数シフトを計測・評価する事により成形品1の歪みを取得するBOTDRや干渉現象を利用したマイケルソン干渉計に基づく光ファイバセンサも活用する事ができる。
複合成形品1は、第1の樹脂成形品11と第2の樹脂成形品12を溶着させたものである。
図1に示すように、第1の樹脂成形品11の第2の樹脂成形品12との溶着部の近傍に光ファイバケーブル100の一方の端部が埋設される。光ファイバケーブル100は、第1の樹脂成形品11に埋設された部分にFBGセンサが設けられている。
光ファイバケーブル100の他方の端部は、歪み計測装置5に接続される。
【0015】
図2に、一実施形態の樹脂成形品の歪み計測方法を実行するための構成を説明する図である。
図2に示すように、複合成形品1の第1の樹脂成形品11にFBGセンサ2が埋設されている。FBGセンサ2の第1の樹脂成形品11への埋設方法については後述する。
【0016】
図2に示すように、光ファイバケーブル100は、石英ガラスで形成された細い物質であるコア101を中心に配置し、その周囲を覆うグラッド102で構成されている。石英ガラスは脆いため、保護被膜103で周囲を被せる。コア101には、所定の範囲内にピッチΛで周期的に回折格子Gが形成されている。この回折格子Gは、図示しない方法によって、光ファイバのコア101に紫外光(たとえば波長250nm前後)の干渉縞を照射することで、コア101の屈折率の変化を周期的に変化させることで形成可能である。この回折格子Gが形成された部分がFBGセンサ2である。
【0017】
この干渉縞の間隔を変えれば、コア101に作成する回折格子は任意のピッチで製作可能である。FBGセンサ2に広帯域波長を有する入射光λを入射すると、λB=2NΛ(N:光ファイバの屈折率、Λ:回折格子の周期)の関係式により、FBGセンサ2における反射光は波長λBの光成分のみとなり、透過光は波長λBが除去された波長分布となる。
【0018】
図3の(a)はFBGセンサ2に入射する入射光ILの波長分布を示し、
図3の(b)は入射光ILのうちFBGセンサ2を透過した透過光TLの波長分布を示し、
図3の(c)は入射光ILのうちFBGセンサ2で反射された反射光RLの波長分布(反射光スペクトル)を示す。
ここで、FBGセンサ2における反射光RLの波長λBは、光ファイバの屈折率や回折格子の周期を変化させる物理量によって変化する。すなわち、樹脂成形品にFBGセンサ2を埋設させた場合、樹脂成形品の内部に歪みが生ずる前後で光ファイバの屈折率や回折格子の周期を変化することで、反射光RLの波長λBが変化することになる。その波長λBの変化量(
図3の(c)のΔλ)を測定することで、第1の樹脂成形品11の内部の歪みを計測できる。
【0019】
再度
図2を参照すると、歪み計測装置5は、波長可変光源51、光サーキュレータ52、光電変換器53,54、A/D変換器55,56を備えている。
波長可変光源51から発した光は、光サーキュレータ52を透過し、光ファイバケーブル100に投光される。FBGセンサ2によって波長可変光源51の光は、FBGセンサ2に施された回折格子のピッチに応じた波長のみが反射される。FBGセンサ2で反射した光は、光サーキュレータ52で反射し、光電変換器53,54で受光する。ここで、波長可変光源51は、例えばASE(Amplified Spontaneous Emission)光源のような幅広い波長帯域を有するものを使用する。また、広帯域で波長が掃引可能な、掃引光源を使用しても構わない。使用する光源の波長範囲は、使用する光ファイバケーブル100とFBGセンサ2の適用波長が対応していれば、どの波長範囲でも構わない。光電変換器53,54は、FBGセンサ2で反射した波長の光を受光するが、出力として波長と光量が検出できるものを使用する。光電変換器53,54で検出したFBGセンサ2の反射光は、A/D変換器55,56によりデジタル変換され、信号処理部57に伝送される。
【0020】
信号処理部57は、FBGセンサ2の反射光の波長を算出する。信号処理部57は、例えば、
図3の(c)に例示される反射光RLの波長分布のエンベロープから中心波長を算出する。
信号処理部57は、第1の樹脂成形品11と第2の樹脂成形品12の溶着前後での反射光RLの中心波長の変化(波長変化)を算出するとともに、波長変化を歪みに変換して出力する。
表示部58は、信号処理部57において出力される歪みを表示出力する。
【0021】
次に、
図4は、一実施形態の樹脂成形品にFBGセンサ2を埋設する方法を説明する図である。この方法は、工程S1~S6を含む。この方法に対して、上述したようにして第1の樹脂成形品11の歪みを計測する工程を加えたものが、一実施形態に係る樹脂成形品の歪み計測方法である。
【0022】
図4を参照すると、工程S1では、第1の樹脂成形品11として、レーザ吸収性を有する熱可塑性材料からなる樹脂成形品を用意する。
工程S2では、第1の樹脂成形品11に溝C1を形成する。溝C1の形成方法は問わないが、例えば、レーザを照射してもよいし、機械加工による切削でもよい。なお、機械加工よりもレーザ加工の方が溝形状が安定する点で好ましい。
工程S3では、溝C1にFBGセンサ2を含むように光ファイバケーブル100を設置する。
工程S4では、レーザ透過性を有する第2の樹脂成形品12を、第1の樹脂成形品11の溝C1を有する面上に配置する。
工程S5,S6では、第2の樹脂成形品12から第1の樹脂成形品11に向かう方向にレーザを照射する。照射したレーザは、レーザ透過性を有する第2の樹脂成形品12を透過して第1の樹脂成形品11にも照射される。それによって、第1の樹脂成形品11の溝C1の周辺部分を溶融させることでFBGセンサ2を第1の樹脂成形品11に埋設させるとともに、第1の樹脂成形品11と第2の樹脂成形品12を溶着させ、複合成形品1を得る。
【0023】
図4に示す方法において、工程S3の後においてFBGセンサ2を基に得られる歪みと、工程S6の後においてFBGセンサ2を基に得られる歪みとを歪み計測装置5により計測することで、第1の樹脂成形品11に第2の樹脂成形品12を溶着させる前後での第1の樹脂成形品11の内部歪みの変化を得ることができる。
また、
図4の工程S6の直後においてFBGセンサ2を基に得られる歪みと、その後に所定の耐久試験を行った後にFBGセンサ2を基に得られる歪みとを歪み計測装置5により計測することで、耐久試験の前後での第1の樹脂成形品11の内部歪みの変化を得ることができる。
【0024】
次に、
図5は、別の実施形態の樹脂成形品に光ファイバケーブルを埋設する方法を説明する図である。この方法は、工程S10~S14を含む。この方法に対して、上述したようにして第1の樹脂成形品11の歪みを計測する工程を加えたものが、一実施形態に係る樹脂成形品の歪み計測方法である。
【0025】
図5を参照すると、工程S10では、第1の樹脂成形品11として、レーザ吸収性を有する熱可塑性材料からなる樹脂成形品を用意する。
工程S11では、第1の樹脂成形品11に溝C2を形成する。溝C2の形成方法は問わないが、例えば、レーザを照射してもよいし、機械加工による切削でもよい。なお、機械加工よりもレーザ加工の方が溝形状が安定する点で好ましい。
工程S12では、溝C1にFBGセンサ2を含む光ファイバケーブル100を設置する。
工程S13では、レーザを照射して第1の樹脂成形品11の溝C1の周辺部分を溶融させることで、FBGセンサ2を第1の樹脂成形品11に埋設させる。
工程S14では、第1の樹脂成形品11の溝C1を有する面に第2の樹脂成形品12を接合させ、複合成形品1を得る。なお、工程S14では、第1の樹脂成形品11と第2の樹脂成形品12の接合はレーザ溶着に限られず、超音波溶着等、他の如何なる接合方法をも採ることができる。
【0026】
図5に示す方法において、工程S13の後においてFBGセンサ2を基に得られる歪みと、工程S14の後においてFBGセンサ2を基に得られる歪みとを歪み計測装置5により計測することで、第1の樹脂成形品11に第2の樹脂成形品12を接合させる前後での第1の樹脂成形品11の内部歪みの変化を得ることができる。
また、
図5の工程S14の直後においてFBGセンサ2を基に得られる歪みと、その後に所定の耐久試験を行った後にFBGセンサ2を基に得られる歪みとを歪み計測装置5により計測することで、耐久試験の前後での第1の樹脂成形品11の内部歪みの変化を得ることができる。
【0027】
(2)樹脂成形品の接合条件の選定方法
一実施形態に係る樹脂成形品の接合条件の選定方法は、第1の樹脂成形品11と第2の樹脂成形品12を溶着により接合させる場合、上述の樹脂成形品の歪み計測方法の各工程と、複数の溶着条件で得られた各々の複合成形品1の溶着部の破壊強度を測定する工程と、複数の溶着条件で得られた各々の複合成形品1を基に計測された第1の樹脂成形品11の歪みと、各複合成形品1の溶着部の破壊強度の測定結果との関係に基づいて、複数の溶着条件からいずれかの溶着条件を選定する工程と、を含む。
【0028】
溶着条件は限定しないが、例えば、第1の樹脂成形品11と第2の樹脂成形品12をレーザ溶着するときのレーザ出力、レーザの走査速度、レーザの走査回数等である。これらのパラメータを適宜変更しながら複合成形品1の破壊強度を測定することで最適なレーザ溶着のパラメータを選定することができる。この溶着条件の選定方法では、レーザ溶着の複数のパラメータに対して得られた複合成形品1の各々について内部歪みを計測することができるため、破壊強度の測定結果との関係だけでなく各パラメータと内部歪みとの関係から、より最適なレーザ溶着のパラメータを選定することができる。
なお、第1の樹脂成形品11と第2の樹脂成形品12をレーザ溶着以外の方法で接合させる場合、同様にして、複数の接合条件の中からいずれかの接合条件を選定することができる。例えば、熱溶着の場合は加熱温度や時間、超音波溶着の場合は出力や加圧力や周波数や時間等のパラメータを選定することができ、振動溶着の場合は振幅と周波数と加圧力と時間等のパラメータを選定することができ、溶接の場合は溶接時の加熱温度や時間等のパラメータを選定することができる。
【0029】
(3)樹脂成形品の破壊許容歪み及び/又は破壊時間の取得方法
一実施形態に係る樹脂成形品の破壊許容歪み及び/又は破壊時間の取得方法は、上述の樹脂成形品の歪み計測方法の各工程と、複合成形品1に対して所定の耐久試験を行う工程と、当該耐久試験中に歪みを計測する工程によって逐次得られるセンサ応答、又は、当該工程で逐次計測された第1の樹脂成形品11の歪みに基づいて、複合成形品1の破壊許容歪み及び/又は破壊時間を取得する工程と、を含む。
【0030】
耐久試験は限定しないが、例えばISO16750やJIS C 60068で規定されるヒートサイクル試験が挙げられる。耐久試験のサイクルが進行するにつれて複合成形品1の破壊が進行して内部応力が変化する。この樹脂成形品の破壊許容歪み及び/又は破壊時間の取得方法では、耐久試験中に複合成形品1の歪みの計測結果の変化や反射光や散乱光のセンサ応答の変化をモニタすることで、破壊の進行状況がわかるため、複合成形品1の破壊許容歪み及び/又は破壊時間(又は製品寿命)を推定することができる。
【0031】
(4)複合成形品の品質管理方法
一実施形態に係る複合成形品の品質管理方法は、上述の樹脂成形品の歪み計測方法の各工程と、歪みを計測する工程によって得られた反射光のセンサ応答(反射光スペクトル)、又は、当該工程で計測された第1の樹脂成形品11の歪みに基づいて、複合成形品1の品質管理を行う工程と、を含む。
【0032】
例えば、第1の樹脂成形品11と第2の樹脂成形品12をレーザ溶着させるときのレーザ出力が過剰であった場合、溶着部が溶融してボイドが発生することがある。このような場合、外観からはボイドの発生有無を判別できないが、複合成形品1の強度が低下する。そこで、複合成形品1の第1の樹脂成形品11の歪みを計測することでボイドの発生有無を推定することができ、複合成形品1の品質管理を効果的に行うことができる。
【0033】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…複合成形品
11…第1の樹脂成形品
12…第2の樹脂成形品
5…歪み計測装置
51…波長可変光源
52…光サーキュレータ
53,54…光電変換器
55,56…A/D変換器
57…信号処理部
58…表示部
100…光ファイバケーブル
2…FBGセンサ
101…コア
102…クラッド
103…保護被膜
G…回折格子
IL…入射光
RL…反射光
TL…透過光