(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】シリカ-チタニア複合酸化物粉末
(51)【国際特許分類】
C01B 33/12 20060101AFI20240909BHJP
C01B 33/18 20060101ALI20240909BHJP
C01B 33/20 20060101ALI20240909BHJP
【FI】
C01B33/12 A
C01B33/18 Z
C01B33/20
(21)【出願番号】P 2021509035
(86)(22)【出願日】2020-03-12
(86)【国際出願番号】 JP2020010943
(87)【国際公開番号】W WO2020195914
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2019055799
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石津 賢一
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-037700(JP,A)
【文献】特開2007-269612(JP,A)
【文献】特開2017-036168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
C01B 33/20-39/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー散乱法により測定される平均粒子径D(μm)が0.1μm以上3.0μm以下の範囲にあるシリカ-チタニア複合酸化物粉末であって、
液浸法により測定した測定波長589nmにおける平均屈折率が1.47以上であり、当該平均屈折率と同じ屈折率を有する液体中に30質量%のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を分散させて測定して得られる最小吸光度Sが、下記関係を満たすシリカ-チタニア複合酸化物粉末。
S<0.026-0.008×D
【請求項2】
コールターカウンター法により測定される5μm以上の粒子の割合が、個数基準で200ppm以下である請求項1記載のシリカ-チタニア複合酸化物粉末。
【請求項3】
ケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドを原料とするシリカ-チタニア複合酸化物粒子の製造方法において、ケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドとを混合し複合アルコキシド原料を調製する工程と、水及び窒素含有塩基触媒の存在下において、複合アルコキシド原料を反応させて粒子を生成させる工程と、生成した粒子を固液分離する工程と、粒子を乾燥させる工程と、乾燥した粒子を焼成する工程とを含み、乾燥後、焼成前の粒子に含まれる窒素の含有率が下記の範囲
窒素含有率(質量%)<0.19×Ti含有率+0.35
(ただし、Ti含有率は、mol基準でのTiとSiの合計量を100%とした場合の、%で示したTiの含有割合である。)
であることを特徴とするシリカ-チタニア複合酸化物粉末の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2記載のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を含む樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1又は2記載のシリカ-チタニア複合酸化物粉末が溶媒中に分散された分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高透明性樹脂や透明樹脂接着剤の充填剤、フィルムのアンチブロッキング剤、及びハードコート材料として好適に使用できる、屈折率及びその分布が制御され、5μm以上の粗粒が低減されたシリカ-チタニア複合酸化物粉末に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PET、ポリカーボネート、PMMA,ポリスチレン等の熱可塑性樹脂は、優れた透明性、力学特性、成形性などを利用して幅広い範囲で工業的に使用されている。有機高分子の諸物性を向上させる手段として、有機高分子の特徴である柔軟性、低密度、成形性などを保持しつつ、無機化合物の特徴である高強度、高弾性率、耐熱性などの特徴を有する、有機化合物と無機化合物とを複合化した材料(以下、有機-無機複合化材料という)の研究が行われている。
【0003】
有機-無機複合化材料の製造方法の一つとして、直接、無機フィラーを有機高分子に添加する方法が知られている。例えば、特許文献1では、ポリカーボネートに無機フィラーである表面処理シリカ粒子を添加することにより、引張強度などの力学的特性や、難燃性を向上させる方法が提案されている。
【0004】
しかし、無機フィラーを添加することにより、有機-無機複合化材料の透明性は低下する。この点を改善するため、使用する有機材料(通常は各種樹脂)の屈折率と同等の屈折率の無機フィラーを用いて、透明性の低下を抑えながら、有機-無機複合化材料の機能を向上させる方法も提案されている。例えば、特許文献2では、エポキシ樹脂組成物に対し、樹脂と同じ屈折率を有するシリカ-チタニア粒子を使用することで、熱膨張率を制御しつつ、有機-無機複合化材料の透明性を維持させる方法が提案されている。しかし、使用樹脂と実質的に同じ屈折率を有する無機フィラーを添加した場合においても、樹脂本来の透明性を維持するには至っておらず、その光学的な損失に関する機構の解明や光学的な損失の対応策の提案はなされていない。このため、高い透明性が要求される用途では従来の有機-無機複合化材料を使用できなかった。
【0005】
また、このような屈折率を調整した無機フィラーの製造方法についても多くの検討がなされており、なかでも金属アルコキシドの加水分解により球形状の粒子を製造する、いわゆるゾル-ゲル法での製造方法が多数提案されている。例えば、特許文献3では、シリカと第IV族金属の酸化物とを構成成分とする球形状の粒子が提案されており、特許文献4では、塩基性触媒とアルコキシド原料を同時に添加し、一部を系外に排出する方法により単分散性の高い、比較的大きなシリカ-チタニア粒子を得る方法が提案されている。特許文献5や6では、チタニア含有率の多い粒子を製造するために、鎖化剤の使用が提案されている。さらにこれら以外にも多数の提案がなされている(特許文献7、8等)。
【0006】
一方、近年、フラットパネルディスプレイの大画面化や高精細化の進行に伴い、光学用途フィルムにおいては高い透明性の他にも、実質的に欠陥が無いことが求められている。しかし、光学用フィルムを製造する場合、無機フィラー中に粗粒や凝集塊が含まれている場合は、欠陥や傷などの原因となるおそれがある。また、半導体のアンダーフィルなどの用途に使用する場合、有機-無機複合化材料を狭い流路に流動させる必要があるが、粗粒や凝集塊が含まれているとそれらは狭い流路において均一に流れることとを妨げるため、ボイドや接着不良の原因となる。従って、光半導体用をはじめ種々の光学用接着剤でも、不良の発生防止のために粗粒や凝集塊の含有量が極めて低レベルであることは非常に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2004-107470号公報
【文献】特開平6-65475号公報
【文献】特開平03-33721号公報
【文献】特開平08-48505号公報
【文献】特開2007-269612号公報
【文献】特開2008-37700号公報
【文献】特開2007-269594号公報
【文献】特開2003-252616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねてきた。その結果、有機-無機複合化材料に使用する無機粒子の屈折率を有機高分子の屈折率に合わせて調節した場合であっても、その無機粒子の屈折率に分布がある場合、即ち個々の無機粒子の屈折率にばらつきがある場合には、高い透明性が得られないことに気が付いた。また、無機粒子の屈折率分布は、高温で焼成することで改善する傾向がみられるものの、その効果は不十分で、さらにこの様な温度で焼成した場合には粗粒が生じやすくなるという課題があった。
【0009】
そこでさらに検討を続けた結果、無機粒子の製造段階、具体的には乾燥後、焼成前の粉末に含まれる窒素量を、特定の範囲以下にすることで、低温での焼成で屈折率分布が抑えられ、粗粒の発生が少ないシリカ-チタニア複合酸化物粒子粉末を調製し得ることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明はレーザー散乱法により測定される平均粒子径D(μm)が0.1μm以上3.0μm以下の範囲にあるシリカ-チタニア複合酸化物粉末であって、測定波長589nmにおける平均屈折率が1.47以上であり、当該平均屈折率と同じ屈折率を有する液体中に30質量%のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を分散させて測定して得られる最小吸光度Sが、下記関係を満たすシリカ-チタニア複合酸化物粉末である。
【0011】
S<0.026-0.008×D
【発明の効果】
【0012】
本発明の屈折率の分布が抑えられたシリカ-チタニア複合酸化物粒子を用いると、単に有機高分子に屈折率を合わせた粒子を使用して得られる透明性に比べ、より高い透明性を有する有機-無機複合化材料が得られる。また、粗粒の発生を抑制出来るため、無機フィラーの添加による機能向上を積極的に行うことが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施形態に係るシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、粉末を構成する粒子が、シリカ(SiO2)とチタニア(TiO2)からなり、これらが原子レベルで複合化しているものである。原子レベルで複合化しているとは、前記粒子において一つの酸素原子がSi原子とTi原子との両方と結合している結合状態(Si-O-Ti)が含まれていることを意味する。なお、部分的にSi-O-Siの結合及びTi-O-Tiの結合が含まれていても本実施形態においては以下に説明する製造方法によって、1つの粒子内においてシリカとチタニアとの存在比率がいずれの箇所においてもほぼ均一となり、Si-O-Tiが含まれているので、原子レベルで複合化しているということができる。
【0014】
シリカとチタニアとの割合は特に限定されるものではないが、個々が独立している球状粒子を製造しやすく、多くの樹脂と屈折率の範囲が近い点でチタニアを全酸化物に対し25mol%以下含むことが好ましく、20mol%以下がより好ましく、17mol%以下が特に好ましい。チタニアの含有率が大きくなると屈折率が高くなる傾向がある。また、本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を構成する粒子は非晶質であることが好ましいが、粒子の構成成分の割合のうち、チタニアの含有率が高くなる、すなわちシリカの含有率が低くなると、シリカ成分による非晶質構造を取りにくくなるため粒子中にチタニアの微結晶を生じやすくなる。
【0015】
一方、屈折率をシリカよりも高くすることを考慮すると、チタニア含有量下限は1mol%以上であることが好ましく、3mol%以上が特に好ましい。
【0016】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、レーザー散乱法で測定される体積累計50%径(以下、「平均粒子径」という)が0.1μm以上3.0μm以下の範囲にある。平均粒子径が0.1μmよりも小さいと、個々の粒子が凝集しやすく、そのような凝集物は複合化後に、光学的にも物理的にも欠陥の原因となりやすいためである。一方で、粒子が大きくなりすぎると、僅かな屈折率の差により透明性が著しく変化するため透明な複合化材料を得にくい。このため、より好ましい粒子の大きさは、平均粒子径が0.2μm以上2μm以下の範囲であり、さらに好適な範囲としては0.4μm以上1.5μm以下である。
【0017】
なおこのような平均粒子径のものであれば粒度分布は問題がないが、広い粒度分布を有する場合には粗粒を生成しやすいため、単分散性が高いことが好ましい。
【0018】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、測定波長589nmにおける平均屈折率(以下、屈折率という場合は測定波長589nmにおける平均屈折率のことをいう)が1.47以上である。単一元素からなるシリカの屈折率が1.46であるのに対し、チタニアが複合化されているため、シリカ単体より高い屈折率を示す。そのため、多くの場合に屈折率が1.5を超えるような各種の樹脂と複合化した際に屈折率を一致させることが容易となり、それ故、透明性などの光学特性として優れたものを得ることができる。
【0019】
なおここで、上記の平均屈折率は以下のようにして液浸法で測定される値である。即ち、波長589nmにおける屈折率の異なる液体を複数用意し、これらの液にシリカ-チタニア複合酸化物粉末を分散させる。分散液の波長589nmにおける透明性(透過率又は吸光度)を測定し、最も透明性の高い分散液を与えた液体の屈折率をシリカ-チタニア複合酸化物粉末の波長589nmにおける屈折率とする。
【0020】
なお、シリカ-チタニア複合酸化物粉末に吸着した水分が屈折率に影響を与える場合があるため、上記屈折率の測定は、粉末を100℃で12時間以上乾燥した後に行う。
【0021】
ここで、液体の屈折率を調整する方法としては、屈折率の異なる複数の物質を所望の屈折率になるように混ぜ合わせる方法、測定時の温度を変化させる方法などが採用できる。なお測定に用いる分散媒に用いる液体としては波長589nmにおいて、実質的に透明な液体を採用する。例えば、液体としては、水、トルエン、1-ブロモナフタレン、1-クロロナフタレン、ジョードメタン、イオウ入りジョードメタン、2-メトキシエタノール、ベンジルアルコール、サリチル酸メチル、安息香酸メチル、シリコーン油等が使用でき、これらを適宜混合して、さらには屈折率調整の為に各種の塩類や有機物固体を溶解させることも可能である。また、屈折率の標準液として各種屈折率の液体が市販されており、それを用いてもよい。
【0022】
また上記の方法とは別に、シリカ-チタニア複合酸化物粉末の屈折率を、JIS K 7142 プラスチック屈折率の求め方におけるB法(粉体又は粒状の透明材料の屈折率を、顕微鏡による液浸法によって測定する方法)に準じて求めても良い。
【0023】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末に係る上記屈折率は、シリカとチタニアとの割合を変えることにより制御できる。即ち、上述の通り純粋なシリカの屈折率は1.46であり、チタニアの割合が増えるほど屈折率は高くなっていく。
【0024】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末の最大の特徴は、上記の如くして求めた平均屈折率と同じ屈折率(波長589nm)を有する液体中にシリカ-チタニア複合酸化物粒子を30質量%分散させた際の波長589nmにおける吸光度を最小吸光度Sとしたときに、これと前記平均粒径Dとが下記式(1)の関係をとることにある。
【0025】
S<0.026-0.008×D (1)
【0026】
上記式(1)において、まず最小吸光度Sの有する意味であるが、シリカ-チタニア複合酸化物粉末を構成する粒子における屈折率のバラつき(分布)の指標である。上記定義の如く最小吸光度Sは、シリカ-チタニア複合酸化物粉末の屈折率と同じ屈折率の液体で測定するから、屈折率差は0であり、よって吸光度も0になるはずである。しかしながら、シリカ-チタニア複合酸化物粉末を構成する粒子は全てが同一の屈折率をもっておらず、粒子ごとにわずかに異なっており、その平均値が前記液浸法で測定される。
【0027】
そのためシリカ-チタニア複合酸化物の分散液中には、液体の屈折率と異なる屈折率を有する粒子が少なからず存在することになり、このような粒子が透明性を低下させるため最小吸光度Sを上昇させる。換言すれば、最小吸光度Sが小さければ小さいほど、前記平均屈折率から外れた屈折率を有する粒子の割合が少ないということになる。
【0028】
なおここで、粒子同士の屈折率が同一とは、屈折率の差が±0.001の範囲にあることをいう。
【0029】
また、周知の如く、粒子分散体における透明性(吸光度)には粒子径の影響があり、粒子径が小さければ、屈折率差があってもその影響は相対的に小さくなる。上記式(1)はこのような屈折率のバラつきに粒子径(D)の影響を加味したものである。
【0030】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、粒子間の屈折率のバラつきが従来になく小さいため、樹脂や溶剤に分散させた際に、いままでにない高い透明性を得ることができる。
【0031】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、粒子径が5μm以上の粗粒の個数割合が、全体の個数に対して500ppm以下、特に200ppm以下であることが好ましい。ここで、粗粒とは、幾つかの独立した粒子が複数集まったもの又は独立した粒子でなるものである。このような粗粒が多いと、例えば樹脂と複合化して複合化材料を形成した後に欠陥を生じやすい。
【0032】
なおここで、上記の粗粒は、水またはメタノール液中にシリカ-チタニア複合酸化物粉末を2.5質量%になるよう加えたのち超音波破砕機で分散させた分散液を、コールターカウンターで、粒子の計測数を50,000個計測する測定を5回繰返し(計250,000個を計測)、計測された5μm以上の粒子の個数の割合である
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末に含まれる個々の粒子形状は、特に制限されないが、有機-無機複合化材料の流動性や成形性を加味すると球状であることが好ましい。
【0033】
また本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、ケイ素及びチタン以外の金属含有量が少ないことが好ましく、特に、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属含有量は10ppm以下であることが好ましく、1ppm以下がより好ましい。
【0034】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末の使用態様に応じて、適宜、粒子の表面を表面処理等により調製することが出来る。樹脂と複合化する場合、使用樹脂とのなじみを考慮し、最小吸光度に影響がない範囲であれば、公知の方法で表面処理を行い、表面を改質することが出来る。例えば、親水性部位を有する樹脂と複合化する場合には、粒子の表面に親水性のシラノール基が多数存在していることが好ましい。この場合には、シリカ-チタニア複合酸化物粉末をそのまま使用することも出来るし、また、表面に無機物よりなるコートを施して、より親和性を向上させることも出来る。一方で、表面の親水性を低下させたい場合には、メチル基を有するシランカップリング剤などを適宜使用して表面の改質を行うことも出来る。
【0035】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は粗粒を含まず、有機高分子に充填した際の透明性に優れるため、そのような特性を要求される電子材料用樹脂組成物への充填用として好適に用いることができる。さらに、樹脂に添加すると、その樹脂組成物の溶融時の流動性が優れ、成形品の透明性を制御でき、表面の凹凸を精密に制御できるため、フィルム用途を初めとした、各種成形品用途にも好適に用いることができる。
【0036】
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を配合する樹脂の種類は、特に限定されない。樹脂の種類は所望の用途により適宜選択すればよいが、屈折率の値を加味すると、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂やオレフィン系樹脂等を挙げることができる。
【0037】
たとえば、半導体封止材用途であれば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂等が好ましい。フィルム用途であれば、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレンなど)、ポリエステル樹脂が好ましい。
【0038】
さらに構造体として使用する場合には、ポリカーボネートやアクリル樹脂などが好ましい。
【0039】
樹脂にシリカ-チタニア複合酸化物粉末を添加した組成物において、シリカ-チタニア複合酸化物粉末の充填量は、その用途と目的に応じて適宜調整すればよい。具体的には、半導体封止材用途に用いる場合は樹脂成分100質量部に対して30~900質量部の範囲が好ましく、フィルム用途に用いる場合は樹脂成分100質量部に対して0.01~10質量部の範囲であることが好ましい。また、構造材に使用する場合には、樹脂成分100質量部に対して0.01~100質量部の範囲であることが好ましい。
【0040】
なお、本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を樹脂に添加して樹脂組成物として用いる場合には、必要に応じて別の充填剤など、他の成分を含んでいても無論かまわない。
【0041】
さらに本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、溶媒に分散させた状態で、上記したようなフィルムや塗料等の製造原料とすることもできる。
【0042】
<<シリカ-チタニア複合酸化物粉末の製造方法>>
本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末は、基本的には、以下に示すシリコンのアルコキシド及びチタンのアルコキシドを使用し、いわゆるゾル-ゲル法で製造することができる(以下、本製造方法という)。
(1)シリコンのアルコキシドとチタンのアルコキシドを混合させて複合化させ、複合アルコキシド原料を作製する工程(以下、複合化工程ともいう)
(2)水を含む分散媒中に、窒素含有塩基触媒を存在させ、そこへ前記複合アルコキシド原料を添加し、これを加水分解・縮合させる反応により複合酸化物粒子を生成させて、この複合酸化物粒子が分散媒中に分散した分散液を得る工程(以下、反応工程ともいう)
(3)前記分散液を固液分離する工程
(4)固体分を乾燥させる工程
(5)乾燥物を焼成する工程
【0043】
上記ゾル-ゲル法は周知であるが、本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を得るためには、上記(4)の乾燥工程後、(5)の焼成工程に入る前に、窒素の含有量が下記の範囲、
窒素含有率(質量%)<0.19×Ti含有率+0.35
(ただし、Ti含有率は、mol基準でのTiとSiの合計量を100%とした場合の、%で示したTiの含有割合である。)
を満たすようにしてから焼成する必要がある。上記式を満たす、即ち、窒素含有量を上記の数値よりも小さくすることによって、続く焼成工程を経た後に残留する微細な空隙を少なくし、屈折率のばらつきの小さな複合酸化物粒子を得ることができる。
【0044】
なお、必要に応じて、使用する原料液や各工程液を濾過し不純物を除去する工程や乾燥粉、焼成粉を解砕・分級する工程などを行うことが出来る。
【0045】
以下、上記各工程について説明するが、(1)~(3)及び(5)の工程はゾル-ゲル法で複合酸化物の製造方法として広く知られている工程と同様に行えば良く、よって、以下に記載されていない部分は、そのような公知技術を適宜選択して実施すればよい。また必要に応じて、以下に記載の方法をアレンジして実施することも可能である。
【0046】
(1)複合化工程
本製造方法では、まずシリコンのアルコキシドとチタンのアルコキシドを複合化した複合アルコキシドを調製する。
【0047】
複合化の方法としては、公知の方法が使用でき、例えば、特許文献4にあるように、シリコンのアルコキシドに水を添加し部分的に加水分解したアルコキシドを調製し、この液とチタンのアルコキシドとを混合する方法が好ましく使用できる。
【0048】
シリコンのアルコキシドとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシドなどのアルコキシドが使用できる。
【0049】
チタンのアルコキシドとしては、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラn-ブトキシドなどのアルコキシドが使用できる。このうちチタンテトライソプロポキシドは、工業的に入手が容易に可能である点、及び取扱いが容易である点から特に好ましい。
【0050】
チタンのアルコキシド、シリコンのアルコキシドともに、1種のみを使用してもよく、あるいはそれぞれ、又は一方のみ2種以上を併用してもよい。
【0051】
また、上記のアルコキシドは、アルコールなどの有機溶媒と混合して使用することが好ましい。この場合、使用するアルコキシドに応じて有機溶媒の種類を変えても良い。
【0052】
また、使用する有機溶媒の量は、粒子の大きさや所望の粒度分布に応じて調製することが出来る。
【0053】
また、部分加水分解に使用する水の量は、適切な量にすればよい。
【0054】
また、シリコンのアルコキシドの部分加水分解及びアルコキシドの複合化を迅速に進めるために触媒を使用することが好ましい。触媒としては、酸が好ましく、具体的には、塩酸、硫酸、硝酸、シュウ酸等が挙げられる。酸は、水溶液のpHが1~4の範囲となるように調整して使用することが好ましい。
【0055】
以下では、上記のような複合化により得られたアルコキシドを複合アルコキシドとよぶ。
【0056】
上記の複合化において、チタンのアルコキシドと結合するケイ素のアルコキシドはモノマーであっても良いし、オリゴマーであっても良い。複合アルコキシドは、一分子内に一つのTi原子と少なくとも3~4個のSi原子、少なくとも10~12のアルコキシ基を有したアルコキシドである。また、複合アルコキシドは、一部であればアルコキシ基が加水分解されていてもかまわない。
【0057】
ところで、本実施形態においては、使用するケイ素のアルコキシドとチタンのアルコキシドの割合は、所望する屈折率の値に応じて変化させうる。
【0058】
ケイ素のアルコキシドの一部は、チタンのアルコキシドとの複合化に供されるが、ケイ素のアルコキシドが全量、複合化に使用される必要はない。
【0059】
(2)反応工程
本製造方法では、上記のようにして調製した複合アルコキシドを原料とし、該複合アルコキシド原料から粒子状の生成物を得る。ここで、上記複合化工程では、通常は複合アルコキシドを含み、さらにシリコンのアルコキシド及びその加水分解物、水、有機溶媒を含む混合物が得られるが、ここから複合アルコキシドを単離する必要はなく、混合物のまま使用できる。
【0060】
本工程では、複合アルコキシド原料から、微細な核と呼ばれる粒子を生成させ、その表面に存在する水酸基と複合アルコキシド原料の加水分解により生じた水酸基とを縮合させて、溶液中のアルコキシド原料を粒子表面に結合させていくことを無数に繰返して所望の大きさの粒子を得る。
【0061】
本工程で得られる粒子は、前述の通り縮合を繰返し成長したものである。
【0062】
上記粒子は、連続的に結合したSi-O-Si結合、Si-O-Ti、部分的にはTi-O-Ti結合を有する網目構造からなる。
【0063】
また、上記粒子には、アルコキシ基が加水分解を受けることなくそのまま残留したもの、またアルコキシ基が加水分解を受けて生成したSi-OH基やTi-OH基が縮合せずにそのまま残留したもの、また、これらと化学的に結合した塩基性触媒、水及び溶媒成分を含有する。
【0064】
このように、本反応工程で得られる粒子は、無機骨格を有しつつも、反応に使用した溶媒や加水分解により生じたアルコールなど、内部に様々な分子や結合基を有する粒子である。
【0065】
本製造方法における反応工程は、公知の方法で行うことが出来る。すなわち、特許文献3にあるように、上記複合アルコキシド原料を、アルカリ性溶媒中に添加し、複合酸化物を得る方法でも良いし、特許文献4にあるように加水分解による水の原料を補うために複合アルコキシド原料の添加に合わせアルカリ性水溶液を添加する方法でも良い。
【0066】
ゾル-ゲル法では、上記の加水分解と縮合のために反応系を塩基性下で行うのが通常であるが、本製造方法においては、窒素含有塩基触媒を使用する。窒素含有塩基性触媒は、反応後に除去が困難な成分を含有せず、特に製造された複合酸化物中にアルカリ金属等が含まれる可能性を排除できる。このような窒素含有塩基性触媒としては、アンモニア、水酸化第4級アンモニウム或いは各種アミン化合物が挙げられる。このようなアミン化合物としては、例えばメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン等を挙げることができる。水酸化第4級アンモニウムとしては、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム等の水酸化物等を挙げることができる。これらのうち、揮発性が高く除去し易いこと、ゾル-ゲル法の反応速度が速いこと等から、アンモニアを使用することが特に好ましい。
【0067】
窒素含有塩基性触媒の使用割合は、金属アルコキシドの加水分解及び重縮合反応の反応速度等を勘案して適宜決定すればよい。窒素含有塩基性触媒の使用割合としては、通常は、反応溶液のpHを8以上とする必要がある。
【0068】
本製造方法における反応工程におけるそれぞれの原料の使用量は、反応装置の構成や反応スケールを勘案して、所望の屈折率や粒径を有するシリカ-チタニア粉末が得られるよう、公知の範囲から適宜選択して決定すればよい。
【0069】
本実施形態の製造方法で使用する反応設備は、攪拌するための装置を備えた反応器及び添加液量を制御し得る供給装置及び液の供給管、さらに反応液の温度を保つ温度制御装置を有する設備が好ましい。
【0070】
反応温度は、用いる原料物質の種類に応じて、ゾル-ゲル法の反応が速やかに進行する温度であれば特に制限されず、目的とするシリカ-チタニア複合酸化物粒子の粒径に応じて公知の範囲から適宜に選択すればよいが、平均粒子径が0.1~3.0μmのシリカ系複合酸化物粒子を得るためには、反応温度としては、-10~60℃の範囲が好適である。
【0071】
また、反応を確実に進行させるために、液の添加を終了した後に、反応温度と同程度の温度で撹拌を継続する操作、いわゆる熟成操作を行っても良い。熟成操作を行う時間としては0.25~5時間とすることが好ましい。
【0072】
また、所望の大きさの粒子を得るために、上記、反応後の液の一部を使用して、同じ複合アルコキシド原料を用いて反応を継続しても良い。
【0073】
上述した方法によって、レーザー回折散乱法による平均粒子径0.1~3.0μmのシリカ-チタニア複合酸化物粒子の分散液が得られる。
【0074】
上記分散液中においてシリカ-チタニア複合酸化物粒子は、癒着粒子や凝集塊を実質生じること無く良好に分散した状態で得られるが、局所的な過度の反応進行により、粒径が5μmを越える、粗大な独立一次粒子が若干量混存する恐れがある。このため、このような粗粒を除去するため、反応工程完了後にろ過するフィルタリングの実施が好ましい。
【0075】
(3)固液分離
次に、反応工程により得られたシリカ-チタニア複合酸化物粒子を反応液中から分離する。反応が終了した液には、未反応のアルコキシド、窒素含有塩基性触媒、水、溶媒など雑多物が含まれる(以下、反応液に含まれるシリカ-チタニア複合酸化物粒子以外の成分を反応液成分とする)。
【0076】
分離の方法としては、溶媒を蒸発させて除去し、シリカ-チタニア複合酸化物粒子を含む蒸発残分を分離する方法や、遠心力及び重力によりシリカ-チタニア複合酸化物粒子を沈降させた後、上澄みを除去してシリカ-チタニア複合酸化物粒子を含む濃縮物を得る方法、濾材に反応液を通液して濾材上に補足されたシリカ-チタニア複合酸化物粒子を含む濃縮物を得る方法など、公知の方法を使用できる。
【0077】
また、上記の方法を組み合わせる方法、例えば、遠心容器に濾材を設置し、遠心力により濾材を通過した溶液を除去し、濾材状のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を含む濃縮物を取得する方法が好ましく使用できる。
【0078】
上記のなかでも、後述する窒素含有率を低減させやすい点で、ろ過を伴う方法が特に好ましい。
【0079】
さらに、固液分離操作を円滑にするため反応液に凝析剤を投入して緩やかな凝集物を作成し、沈降を促進したり、濾過性を改善させたりする方法を併用しても良い。
【0080】
また、ろ過後に更に洗浄を行うことも、窒素含有率を低減しやすい点で好ましい。
【0081】
<窒素含有率の低減>
固液分離して得られたシリカ-チタニア複合酸化物粒子を含む濃縮物には、単にシリカ-チタニア複合酸化物粒子間の間隙に残留する反応液成分のほか、シリカ-チタニア複合酸化物粒子内部に存在する未反応のアルコキシ基や未縮合のSi-OH基、Ti-OH基、これらと化学的に結合した反応液成分が存在する。
【0082】
シリカ-チタニア複合酸化物粒子間に残存する反応液成分は、無機フィラーとして使用する際に容易に流出し、有機高分子との混合において混合を妨害する因子となる。また、未反応のアルコキシ基や未縮合のSi-OH基、Ti-OH基は、その存在部分が微細な空隙となっていることが通常であり、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の機械的強度等の物理的な特性を低くする要因となり、また屈折率にも悪影響を与える。さらにこのような微細な空隙は均一に存在しないため、各シリカ-チタニア複合酸化物粒子の屈折率に違いを生じやすく、それゆえ、屈折率のバラツキが大きくなる。
【0083】
従って、本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を得るためには、後述するように固液分離して得られた濃縮物を加熱して反応液成分を除去し、また未反応のアルコキシ基や未縮合のSi-OH基、Ti-OH基を、M-O-M(MはSi又はTi)へと変換させる必要がある。
【0084】
ここで、本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を得るために更に重要なことは、上記加熱において、400℃以上の温度とするよりも前に、下記の関係式
窒素含有率(質量%)<0.19×Ti含有率+0.35
(ただし、Ti含有率は、mol基準でのTiとSiの合計量を100%とした場合の、%で示したTiの含有割合である。)
を満たすように、濃縮物から充分に窒素成分を除去することである。このような要件を満たす必要がある理由は定かではないが、以下のように考えている。
【0085】
即ち、概ね400℃以上の温度、主に400℃~600℃の温度領域で粒子内に存在する未反応のアルコキシ基や未縮合のSi-OH基あるいはTi-OH基と化学的に結合した反応液成分の多くは分解・脱離し、またSi-OH基あるいはTi-OH基の大部分は、M-O-Mへと縮合する。
【0086】
本製造方法においては前記の通り窒素含有塩基性触媒を用いるが、当該塩基性触媒は固液分離で完全に分離されることはなく、その一部は上記したSi-OH基やTi-OH基(以下、合わせて「水酸基」という)と化学的な力で結合しており、そのため当該水酸基近傍は当該窒素含有塩基性触媒により空間的に占有されている。
【0087】
このような窒素含有塩基性触媒が近傍に存在しない水酸基であれば、加熱により他の近接する水酸基と縮合する(M-O-Mとなる)ことで、網目構造は単純に強化される。一方、水酸基近傍が窒素含有塩基性触媒により空間的に占有されている場合、その水酸基は他の水酸基と近接できず、縮合することができない。このため、窒素含有塩基性触媒の残存量が多い場合には、縮合できない水酸基が多くなるものと思われる。
【0088】
むろん、温度を高くすると窒素含有塩基性触媒も分解・脱離し、水酸基は自由に活動できるようになるが、一方、このような分解温度まで達した時点では、他の水酸基の多くは既に縮合を終えており、この水酸基の近傍には、これと反応し得る水酸基はなく、さらに網目構造が強固となっていると考えられる。そのため、窒素含有塩基性触媒が脱離した後には、前記したような微細な空隙が残されることになってしまう。
【0089】
以上のような機構により、濃縮物中に含まれる窒素含有率が大きい場合(即ち、窒素含有塩基性触媒量が多い場合)には、そのまま高温での焼成を行うとシリカ-チタニア複合酸化物粒子内に微細な空隙が多く生成し、各シリカ-チタニア複合酸化物粒子における空隙量のばらつきが相対的に大きくなり、よって各シリカ-チタニア複合酸化物粒子の屈折率のバラツキが大きくなってしまうと考えられる。本製造方法においては、このような現象の発生を避けるために、濃縮物中における窒素含有率を前記式で示したように高度に低減させる。
【0090】
なお、式にあるようにチタン含有率が多くなれば、許容できる窒素量が高くなる。
【0091】
これは、チタン元素の含有率が小さい場合、すなわちシリカの割合が多い場合には、網目構造がより強固になりやすく、このため同程度の温度においても微細な空隙を減少される網目構造の再配列が進行しづらくなるためである。
【0092】
一方で、上記の屈折率のバラつきに対する影響とは別に、前記反応液成分のうちの溶媒成分、特に有機溶媒成分が残存した状態で焼成(高温での加熱)を行うと、引火危険性等、作業性に様々な障害を生じる場合がある。そのため、通常は乾燥が行われる。乾燥にあたっては加熱を伴う場合が多いが、上記のような引火等の危険を伴う事象は乾燥による加熱では通常は起きない。また、乾燥に伴って、窒素含有率が変化(通常は減少)する場合もある。
【0093】
そこで本製造方法では、乾燥を実施してから焼成を行うものとし、当該焼成前の乾燥物における前記窒素含有率が前記式を満たすようにする。
【0094】
なおここで、本製造方法における焼成とは400℃以上の温度を付与すること指し、加熱を伴って上記乾燥を行う場合でも、その温度の上限は400℃未満、好ましくは300℃未満でなくてはならない。
【0095】
以下では、乾燥物を得た時点で窒素含有率を前記式を満たすものとする方法をいくつか述べる。
【0096】
例えば、ろ過後に複数回の洗浄(好ましくは水洗)を行う方法、長時間または比較的高温で乾燥を行う方法、送風乾燥や減圧乾燥等の揮発性成分が除去されやすい条件で乾燥を行う方法などを挙げることができる。特に好ましいのは、以下の2つの方法である。
【0097】
(I)固液分離後の乾燥粉の窒素含有率を減少させるのに好ましい方法の一つは、シリカ-チタニア複合酸化物粒子分散液を酸性にして処理することにより窒素含有塩基性触媒を減少させる方法である。
【0098】
前記の通り反応工程は所望のシリカ-チタニア複合酸化物粒子を得るために塩基性下で行い、その完了によりシリカ-チタニア複合酸化物粒子分散液が得られる。固液分離及び乾燥後の粉末の窒素含有率を低減させるためには、固液分離前に当該分散液に酸を添加し、酸性下にした後に固液分離を行う方法が挙げられる。窒素含有塩基性触媒は前記したような水酸基よりも、添加された酸と反応して塩を形成するため、水洗による除去が容易となる。
【0099】
分散液の中和及び酸性化にするために使用する酸は、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、クエン酸、酢酸等の有機酸が使用できる。
【0100】
酸の添加割合としては、反応液又は分散液のpHを7以下にできる量を添加すればよいが、シリカ-チタニア複合酸化物粒子内部に含有された塩基性触媒を効率的に減少させるためには、粒子分散液のpHを4以下、さらに好ましくは3以下にできる量の酸を添加することが好ましい。酸を添加する際の温度は、塩基性成分の減少を効果的に行うため反応に使用した温度及びより高い温度で行うことが好ましい。
【0101】
この方法を採用した場合には、前記固液分離は、ろ過を伴う方法で行うべきである。
【0102】
上記方法は固液分離前の分散液で実施するが、固液分離前の分散液に酸を投入する代わりに、固液分離して得た粒子を含む濃縮物を、塩基性触媒を含まない液中に分散させてそれから酸を投入したのちに固液分離を行う方法でもよい。
【0103】
この方法では、必要となる酸の量が、反応液に直接酸を加える場合に比べ少ないため好ましい。濃縮物を分散させる方法は、回収した濃縮物に洗浄液を添加しながら撹拌する方法が好ましく使用できる。公知の撹拌方法が使用できる。濃縮物を分散させる際に加える溶液としては、水や有機溶媒が好ましい。濃縮物を分散させる際に加える溶液量は、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の質量が5~50質量%となる範囲が好ましい。5%よりも低いと使用する溶液量が増大するため好ましくない。一方、シリカ-チタニア複合酸化物粒子の濃度が50%よりも高くなると、濃縮物の分散に強力な撹拌が必要となるため好ましくない。シリカ-チタニア複合酸化物粒子を分散させた液の温度は、反応に使用した温度か、それ以上の温度にすることが効率的に塩基性触媒を除去することができるため好ましい。
【0104】
その後、再度固形物をろ過により回収する。なお、固液分離前の分散液に酸を加えて固液分離した後、さらに固液分離して得た粒子を含む濃縮物を、塩基性触媒を含まない液中に分散させてそれから酸を投入したのちに固液分離を行ってもよい。
【0105】
(II)固液分離後の乾燥粉の窒素含有率を減少させる他の方法は、後述する乾燥工程において、水蒸気を含むガスとシリカ-チタニア複合酸化物粒子を接触させる方法である。
【0106】
水蒸気との接触によって粒子表面に残存する窒素含有塩基性触媒を水酸基で置換し、乾燥粉中の窒素含有塩基性触媒に起因する窒素分を低減させる方法である。
【0107】
水蒸気を含むガスとは、全ガスに対し0.05~0.5の分圧で水蒸気を含むガスである。水蒸気の分圧が0.05よりも小さいと効果的に窒素含有塩基性触媒との置換ができないため、通常乾燥時と同程度の窒素量が残留する。一方、水蒸気の分圧が0.5よりも大きいガスを用いると乾燥が進行しないため窒素含有塩基性触媒との置換も効率的に行うことができない。
【0108】
水蒸気を含むガスの温度は60℃以上であることが好ましい。ガスの温度が低いと、窒素含有塩基性触媒が除去されにくいためである。また、ガスの温度は200℃以下であることが好ましい。温度が高いと、窒素含有塩基性触媒は除去されやすいものの、水酸基の縮合反応も進みやすく、窒素含有塩基性触媒を包含したまま網目構造が強固になってしまうため好ましくない。水蒸気を含むガスを導入する時間は特に制限されないが、通常は30分から8時間の範囲である。
【0109】
水蒸気を含むガスと接触したシリカ-チタニア複合酸化物粒子には水が含まれやすいため、別途、水蒸気を含まないガス中で乾燥させる必要がある。
【0110】
以上に示した窒素量を減じる操作は、単独で行っても良いし、操作を組合せてより効率的に窒素含有率を減少させても良い。
【0111】
(4)乾燥工程
本製造方法において乾燥は、シリカ-チタニア複合酸化物粒子間に存在する反応液成分と粒子内に残留する反応液成分の一部を除去する工程である。乾燥工程では、これらの除去に伴い顕著な質量変化を伴う。
【0112】
乾燥の終了の目処は、同条件の乾燥を継続して行っても顕著な質量減少を示さない、すなわちシリカ-チタニア複合酸化物粒子間に残存する反応液成分や、シリカ-チタニア複合酸化物粒子内に残留し除去が容易な一部の反応液成分が、十分に除去された状態になった時点である。さらに質量減少の目処としては質量変化で3%以下であるが、窒素含有率に比べて、他の成分の悪影響は著しく少ないため、この3%という値にこだわる必要はない。
【0113】
本製造方法において、乾燥の方法は特に制限はされず、静置乾燥のほか、送風乾燥や減圧乾燥等を使用できる。
【0114】
乾燥の温度は、使用する溶媒成分にもよるが、溶媒の沸点以上の条件で行うことが好ましい。大気圧であれば、乾燥温度は70℃~200℃であることが好ましい。乾燥時間は、特に制限はされないが、2~48時間程度が好ましい。なお、このような乾燥を行うことにより、乾燥物は粉末として得ることができる。以下では、乾燥を行ったものを「乾燥粉」と称す。
【0115】
上記の乾燥の方法等にもよるが、上記の乾燥に伴って窒素含有率が減る場合がある。従って、本製造方法においては、前記した窒素含有率を減少させる操作を行った時点での窒素含有率を把握する必要は必ずしもなく、焼成前の乾燥粉の時点で把握・管理すればよい。
【0116】
当該乾燥物中の窒素含有率は、一般的なCHN分析装置で求めた乾燥物中の窒素含有量を用いればよい。前記式への適用にあたっては、当該窒素含有率は“%”で計算を行う。
【0117】
またTi含有量は、原料の仕込み値から把握でき、必要であれば焼成後に確認することができる。
【0118】
(5)焼成工程
上記の乾燥工程を行ったシリカ-チタニア複合酸化物粒子内にも、種々の成分が残留しており、骨格構造は弱く無機物としての機能である硬さや優れた熱的安定性が得られないため、本製造方法では残存物を除去し、強固な骨格構造を得るために焼成を行う。
【0119】
ここで前記の通り、400℃~600℃の温度領域での焼成でシリカ-チタニア複合酸化物粒子内に残留した未反応のアルコキシ基や未縮合の水酸基、これらと化学的に結合した反応液成分の多くは分解・脱離し、機械的強度も向上するが、水酸基の一部は残存し、微細な空隙を生じる。それぞれのシリカ-チタニア複合酸化物粒子において、この微細な空隙が占める割合は一様ではない。このため、それぞれのシリカ-チタニア複合酸化物粒子の屈折率差が大きく、最小吸光度Sの値を充分に小さくすることはできない。
【0120】
そこで、本製造方法においては、さらに高い温度、具体的には800℃以上の温度で焼成を行うことにより本実施形態のシリカ-チタニア複合酸化物粉末を得る。即ち、焼成温度を高くすると構成された網目構造が再配列されやすく全般的にSi-OH基やTi-OH基がより除去される。
【0121】
このため、微細な空隙が占める割合は、どの粒子においても減少し、最小吸光度は減少する。
【0122】
一方で、焼成温度が高くなると、粒子間の接触点近傍において存在している水酸基が隣接するシリカ-チタニア複合酸化物粒子の水酸基と縮合反応を起こす。
【0123】
シリカ-チタニア複合酸化物粒子間の縮合が進むと粒子は同一化しやすく、このような同一化が複数のシリカ-チタニア複合酸化物粒子からなる構成されると凝集粒を生成する。
【0124】
このような凝集粒の生成は、状況により様々で一概にはいえないが、1100℃を超える温度で焼成を行った場合には生じやすく、1000℃~1100℃の焼成でも凝集粒を生じることがある。
【0125】
このため焼成温度は、1100℃以下であればよく、さらには1000℃以下とすることがより好ましい。
【0126】
焼成は、公知の方法で行うことが出来る。一般的には、乾燥粉を敷きつめた容器を所望の温度の炉中に存在せしめる方法が好ましく使用することが出来る。
【0127】
焼成時間については、上記焼成の目的を達することができれば、特に制限されない。しかし、あまりにも長すぎると生産性が落ちるため、目的とする焼成温度まで昇温した後、0.5~48時間、より好ましくは、2~24時間の範囲で保持し焼成を行えば十分である。
【0128】
焼成時の雰囲気も特に制限はされず、アルゴンや窒素などの不活性ガス下、または大気雰囲気下で行うことができる。
【実施例】
【0129】
以下、本実施形態の実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら制限されるものではない。
【0130】
(平均屈折率及び最小吸光度の測定)
トルエン、1-ブロモナフタレン、1-クロロナフタレン、ジヨードメタン、イオウ入りジヨードメタン、2-メトキシエタノール及びベンジルアルコールを様々な割合で配合することにより屈折率の異なる複数の混合溶媒を調製した。
【0131】
30mlの清浄なガラス容器に上記混合溶媒14.0gを投入し、予め100℃で24時間乾燥させたシリカ-チタニア複合酸化物粉末6.0gを秤量して加えた。その後、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier250)を用いて、20W・1分の条件で分散させた後、吸光度測定用の石英セル(光路長10mm)に分散液を導入した。
【0132】
ブランクとして、シリカ-チタニア複合酸化物粉末を導入していない混合溶媒を石英セルに導入した。
【0133】
温度制御用フォルダーを設置した分光光度計(日本分光製 紫外可視分光光度計V-650)に、上記の石英セルを取り付け、以下の条件で吸光度を小数点以下4桁まで測定した。
【0134】
測定波長:589nm
温度範囲:5℃~40℃
測定温度間隔:1℃
【0135】
最も低い吸光度を示した条件のものについて、その吸光度が極小値であることを確認し、この際の吸光度の値を最小吸光度Sとした。
【0136】
また、最小吸光度を示した混合溶媒の、当該最小吸光度を示した際の温度での波長589nmでの屈折率を、シリカ-チタニア複合酸化物粉末の平均屈折率とした。
【0137】
なお上記の平均屈折率は、事前に各混合溶媒の波長589nmにおける屈折率を、測定温度を温度5℃~40℃の範囲で変えてアッベ屈折率計で小数点以下4桁まで測定して求めておいた値をそのまま適用した。
【0138】
(体積基準累積50%径(平均粒子径))
50mLのガラス瓶にシリカ-チタニア複合酸化物粉末約0.1gを電子天秤ではかりとり、蒸留水を約40ml加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier250)を用いて、40W・10分の条件で分散させた後、シリカ-チタニア複合酸化物粉末の体積基準累積50%径(μm)及び変動係数をレーザー回折散乱法粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、LS-230)により測定した。
【0139】
(コールターカウンター法における5μm以上の粗粒量)
50mLのガラス瓶を5個準備し、それぞれにシリカ-チタニア複合酸化物粉末を1gずつ電子天秤ではかりとり、蒸留水もしくはエタノールを19gずつ加え、超音波ホモジナイザー(BRANSON製、Sonifier250)を用いて、40W・10分の条件で分散させて測定試料とした。コールターカウンター(ベックマンコールター社製、MultisizerIII)により各試料中のシリカ-チタニア複合酸化物粒子の個々の粒子径を測定した。このとき、1試料あたりの測定粒子数を約5万個とし、5試料合わせて約25万個について測定した。そのうち、粒径が5μm以上の粒子数をそれぞれ算出し、総測定個数に対するそれぞれの粗粒量(ppm)とした。
【0140】
(窒素含有率)
乾燥粉に含まれる窒素含有率は次のように測定した。乾燥粉を酸素雰囲気中で950℃に加熱し、CHN分析装置(柳本製作所製:CHNコーダーMT-5)によって窒素含有率を求めた。
【0141】
<実施例1>
200mlのガラス製3つ口フラスコに、金属アルコキシドとしてテトラメトキシシラン(多摩化学工業社製、正珪酸メチル、以下、TMOS)54.6gを仕込み、有機溶媒としてメタノールを5.5gと、酸触媒として0.035質量%塩酸2.2gを加え、室温で10分間、スターラーで攪拌することによって、TMOSを加水分解した。
【0142】
続いて、30mlガラス容器に金属アルコキシドとしてチタンテトライソプロポキシド(日本曹達社製、A-1(以下、TPT))8.9gを仕込み、これをスターラーで撹拌しながらイソプロピルアルコール(以下、IPA)8.9gを添加した。
【0143】
スターラーで撹拌しているTMOSの加水分解液に、TPTの希釈液を添加して80.1gの透明な複合アルコキシド溶液を得た。
【0144】
アルコキキシドの使用量から計算したチタニア含有量は8.0mol%である。
【0145】
300mlの4つ口フラスコに、プロペラ翼を有する撹拌器を設置し、IPAを6.1g、メタノールを43.0g、25質量%アンモニア水9.4gを仕込み、40℃で保持、攪拌した。これに、上記複合アルコキシド溶液と、25質量%アンモニア水28.1gを、それぞれ独立に液中滴下した。原料添加開始後、30分で溶液が白色となった。その後、添加速度を調整しながら4.3時間で原料供給を完了し、シリカ-チタニア複合酸化物粒子を成長させた。
【0146】
滴下終了後、遠心管に分散液を分取し、6000rpmで遠心分離を行い粒子を含む濃縮物を取得した。
【0147】
この濃縮物に純水を加えスターラーで分散して40℃に昇温した。この液に1.0規定の塩化水素を加え、分散液のpHを4にした。
【0148】
この液を遠心分離し、粒子を含む濃縮物を取得した。
【0149】
得られた濃縮物を、真空乾燥器に導入し100℃に保持した。乾燥を開始して16時後に重量が安定した。この乾燥が終了した粉末の一部を取り出し窒素量を測定したところ1.71%であった。この数値は、Tiの仕込み値8.0%から算出される0.19×Ti含有量+0.35の値1.87よりも小さかった。
【0150】
乾燥粉を、昇温速度5℃/min、焼成温度900℃、焼成保持時間12時間の条件で焼成を行った。
【0151】
焼成して得られたシリカ-チタニア複合酸化物粉末を、レーザー式粒度分布計で測定したところ、平均粒径は0.64μmであった。粗粒測定の結果、5μm以上の粒子は46ppmであった。また、粒子の平均屈折率は1.504であった。最小吸光度Sは0.0135であり、平均粒子径0.64μmから算出される値(0.026-0.008×D=0.0209)よりも大幅に小さかった。
【0152】
<比較例1>
実施例1において、反応液を遠心分離し、そのまま乾燥した以外は、実施例1と同様にしてシリカ-チタニア複合酸化物粒子を得た。
【0153】
乾燥粉の窒素含有率は、2.11%であった。この数値は、Tiの仕込み値8.0%から算出される0.19×Ti含有量+0.35の値1.87よりも大きかった。
【0154】
焼成して得られたシリカ-チタニア複合酸化物粉末を、レーザー式粒度分布計で測定したところ、平均粒径は0.64μmであった。粗粒測定の結果、5μm以上の粒子は42ppmであった。また、粒子の平均屈折率は1.504であった。最小吸光度Sは0.0310であり、0.0209よりも大きい値であった。
【0155】
<実施例2>
実施例1において、原料供給を2.4時間で投入し終えた点を除けば、実施例1と同様にしてシリカ-チタニア複合酸化物粒子を得た。乾燥粉の窒素含有率は、1.73%であった。
【0156】
焼成して得られたシリカ-チタニア複合酸化物粉末を、レーザー式粒度分布計で測定したところ、平均粒径は0.35μmであった。粗粒測定の結果、5μm以上の粒子は84ppmであった。また、粒子の平均屈折率は1.504であった。最小吸光度Sは0.0148であり、平均粒子径0.35μmから算出される値(0.026-0.008×D=0.0232)よりも大幅に小さかった。
【0157】
<比較例2>
実施例2において、反応液を遠心分離し、そのまま乾燥に使用した以外は、実施例2と同様にしてシリカ-チタニア複合酸化物粒子を得た。乾燥粉の窒素含有率は、2.35%であった。
【0158】
焼成して得られたシリカ-チタニア複合酸化物粉末を、レーザー式粒度分布計で測定したところ、平均粒径は0.35μmであった。粗粒測定の結果、5μm以上の粒子は88ppmであった。また、粒子の平均屈折率は1.504であった。最小吸光度Sは0.0271であり、0.0232よりも大きい値であった。
【0159】
<実施例3>
実施例2において得た乾燥粉を、焼成温度を1000℃で焼成した以外は、実施例1と同様にしてシリカ-チタニア複合酸化物粒子を得た。
【0160】
焼成して得られたシリカ-チタニア複合酸化物粉末を、レーザー式粒度分布計で測定したところ、平均粒径は0.34μmであった。粗粒測定の結果、5μm以上の粒子は284ppmであった。また、粒子の平均屈折率は1.504であった。最小吸光度は0.0139であり、平均粒子径が0.34μmから算出される値(0.026-0.008×D=0.0233)よりも大幅に小さかった。
【0161】
<実施例4>
200mlのガラス製3つ口フラスコに、金属アルコキシドとしてTMOS51.6gを仕込み、有機溶媒としてメタノールを5.5gと、酸触媒として0.035質量%塩酸3.7gを加え、室温で10分間、スターラーで攪拌することによって、TMOSを加水分解した。
【0162】
続いて、50mlガラス容器に金属アルコキシドとしてTPT14.4gを仕込み、これをスターラーで撹拌しながらIPA8.9gを添加した。
【0163】
スターラーで撹拌しているTMOSの加水分解液に、TPTの希釈液を添加して84.1gの透明な複合アルコキシド溶液を得た。
【0164】
アルコキキシドの使用量から計算したチタニア含有量は13.0mol%である。
【0165】
300mlの4つ口フラスコに、プロペラ翼を有する撹拌器を設置し、IPAを6.1g、メタノールを43.0g、25質量%アンモニア水9.4gを仕込み、40℃で保持、攪拌した。これに、上記複合アルコキシド溶液と、25質量%アンモニア水28.1gを、それぞれ独立に液中滴下した。原料添加開始後、30分で溶液が白色となった。その後、添加速度を調整しながら11.4時間で原料供給を完了し、シリカ-チタニア複合酸化物粒子を成長させた。
【0166】
滴下終了後、遠心管に分散液を分取し、6000rpmで遠心分離を行い粒子を含む濃縮物を取得した。
【0167】
この液を遠心分離し、粒子を含む濃縮物を取得した。
【0168】
得られた濃縮物を、真空乾燥器に導入し100℃に保持した。乾燥を開始して8時後に大気圧に戻し、予め100℃の保った管状乾燥器(内容積0.4L)に導入し、水蒸気の分圧を0.3とした空気を20ml/minで4時間流通させた。水蒸気の導入を終了した後、再び真空乾燥を行った。再乾燥を開始後、16時間後に重量が安定した。この乾燥が終了した粉末の一部を取り出し窒素量を測定したところ2.68%であった。この数値は、Tiの仕込み値13.0%から算出される0.19×Ti含有量+0.35の値2.82よりも小さかった。
【0169】
乾燥粉を、昇温速度5℃/min、焼成温度900℃、焼成保持時間12時間の条件で焼成を行った。
【0170】
焼成して得られたシリカ-チタニア複合酸化物粉末を、レーザー式粒度分布計で測定したところ、平均粒径は1.35μmであった。粗粒測定の結果、5μm以上の粒子は28ppmであった。また、粒子の平均屈折率は1.543であった。最小吸光度Sは0.0123であり、平均粒子径1.35μmから算出される値(0.026-0.008×D=0.0152)よりも大幅に小さかった。
【0171】
<比較例3>
実施例4において、真空乾燥を16時間継続して行い、途中で水蒸気を有するガスと接触させる操作を行わなかった以外は、実施例4と同様にしてシリカ-チタニア複合酸化物粒子を得た。
【0172】
乾燥粉の窒素含有率は、3.04%であった。この数値は、Tiの仕込み値13.0%から算出される0.19×Ti含有量+0.35の値2.82よりも大きかった。
【0173】
焼成して得られたシリカ-チタニア複合酸化物粉末を、レーザー式粒度分布計で測定したところ、平均粒径は1.35μmであった。粗粒測定の結果、5μm以上の粒子は24ppmであった。また、粒子の平均屈折率は1.543であった。最小吸光度Sは0.0168であり、0.0152よりも大きい値であった。