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特許7551721食品分析における試料の自動化された前処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-06
(45)【発行日】2024-09-17
(54)【発明の名称】食品分析における試料の自動化された前処理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240909BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20240909BHJP
   G01N 33/02 20060101ALI20240909BHJP
   A23L 27/00 20160101ALN20240909BHJP
【FI】
G01N35/00 Z
G01N1/28 Z
G01N33/02
A23L27/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022187228
(22)【出願日】2022-11-24
(65)【公開番号】P2024075943
(43)【公開日】2024-06-05
【審査請求日】2024-07-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)講演要旨 日本分析化学会 第71年会(2022年度)講演番号:PA3033 (2)学会発表 日本分析化学会 第71年会(2022年度)講演番号:PA3033 (3)雑誌 日経ビジネス 2022年5月30日号 第27頁
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226976
【氏名又は名称】日清食品ホールディングス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】楠野 大輔
(72)【発明者】
【氏名】赤司 隆二
(72)【発明者】
【氏名】田中 政春
(72)【発明者】
【氏名】宮永 麻友子
(72)【発明者】
【氏名】首藤 昌也
【審査官】佐々木 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-107830(JP,A)
【文献】特開2018-128260(JP,A)
【文献】特開2001-349896(JP,A)
【文献】特開2019-27784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L27/00-27/40
27/60
G01N 1/00- 1/44
33/00-33/46
35/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品分析における試料の自動化された前処理方法であって、当該前処理方法における複数の特定の自動化された処理作業について、これらを任意に組み合わせることで、種々の分析項目に対応することを可能とした食品分析における試料の自動化された前処理方法において、
前記食品分析における分析項目が、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンE 、3-MCPD、3-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステル、辛味成分(ピぺリン、ショウガオール、ヒドロキシサンショオール)、保存料及びかび毒を含む食品分析における試料の自動化された前処理方法。
【請求項2】
前記複数の特定の処理作業が、抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈、乾固、加温、振盪、低温保管及び反応を含む複数の処理作業である請求項1に記載の食品分析における試料の自動化された前処理方法。
【請求項3】
前記複数の特定の処理作業が、分注、定容、遠心分離、上清採取、下層採取、固相抽出、攪拌、乾固、振盪、廃液、静置、加温及び低温保管を含む複数の処理作業である請求項1に記載の食品分析における試料の自動化された前処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品分析における試料の自動化された前処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品分析においてはビタミンA、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、保存料等の特定の分析項目の検査のため、検査試料から分析対象となる成分を分離等することが必要となる。一方、検査試料から抽出、精製等をする操作は煩雑であることが多い。
これらの操作は、所定の手順に従って実施することが多く、これらの操作を自動化できれば操作の正確性・均一性や再現性の高いデータを得ることができる。さらに人件費の軽減や、人による人為的ミス等を排除できるというメリットもある。人員の教育や引継ぎ業務の負担の軽減にもなる。
【0003】
このように、種々の分析に使用する検査試料の前処理については、可能な限り自動化をすることが好ましい。
例えば、本願発明者らは、農薬の分析において効率的に分析をするための機械的に自動で抽出操作を行う自動前処理方法について検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-3003号
【0005】
しかし、上記の文献に記載の技術では、農薬の分析には適合できるものの、他の分析への応用度が小さかった。そこで、種々の分析項目に対応可能なより汎用性の高い自動前処理方法を開発することを課題とすることとした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは食品分析において自動化前処理方法において汎用性を持たせる方法を検討した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らの鋭意研究の結果、食品分析における試料の自動化された前処理方法において、種々の分析項目間で共通する所定の処理作業について、モジュール化を行うことが好適であることを見出した。そして、当該前処理方法における複数の特定の自動化された処理作業について、当該複数の特定の自動化された処理作業を任意に組み合わせることで、種々多様な食品の分析項目に対応可能とできることを見出した。
【0008】
そして、さらに当該方法によって、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンE 、3-MCPD、3-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステル、辛味成分(ピぺリン、ショウガオール、ヒドロキシサンショオール)、保存料及びかび毒を含む分析項目について対応できることを見出して本発明を完成するに至ったのである。
【0009】
すなわち、本願第一の発明は、
“食品分析における試料の自動化された前処理方法であって、当該前処理方法における複数の特定の自動化された処理作業について、これらを任意に組み合わせることで、種々の分析項目に対応することを可能とした食品分析における試料の自動化された前処理方法において、
前記食品分析における分析項目が、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンE 、3-MCPD、3-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステル、辛味成分(ピぺリン、ショウガオール、ヒドロキシサンショオール)、保存料及びかび毒を含む食品分析における試料の自動化された前処理方法。“、
である。
【0010】
次に、前記複数の特定の処理作業が、「抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈、乾固、加温、振盪、低温保管及び反応」の各処理作業の組合せとすることが好適であることを見出した。
すなわち、本願第二の発明は、
“前記複数の特定の処理作業が、抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈、乾固、加温、振盪、低温保管及び反応を含む複数の処理作業である請求項1に記載の食品分析における試料の自動化された前処理方法。”、である。
【0011】
さらに、前記複数の特定の処理作業については、「抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈、乾固、加温、振盪、低温保管及び反応」の各工程については、これら以外にも、例えば、前記各工程のうち特定の工程をより細分化して、「分注、定容、遠心分離、上清採取、下層採取、固相抽出、攪拌、乾固、振盪、廃液、静置、加温及び低温保管」の各処理作業の組合せとすることも可能である。
【0012】
すなわち、本願第三の発明は、
“前記複数の特定の処理作業が、抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈、乾固、加温、振盪、低温保管及び反応”の各工程については、これら以外にも、例えば、前記各工程をより細分化して、“分注、定容、遠心分離、上清採取、下層採取、固相抽出、攪拌、乾固、振盪、廃液、静置、加温及び低温保管を含む複数の処理作業である請求項1に記載の食品分析における試料の自動化された前処理方法。”、である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の自動化された前処理方法を利用することで、食品分析において種々の分析項目に対応可能なより汎用性の高い自動前処理を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】検査試料の自動前処理装置の作業フィールド例を示した第一の実施態様の平面図ある。
図2】検査試料の自動前処理装置の作業フィールド例を示した第二の実施態様の平面図ある。
図3】サンプルチューブとそのラックの例を示した斜視図である。
図4】サンプルチューブを移動するための挟持部とピペッティング装置の例を示した斜視図であり、(1)サンプルチューブ挟持部の移動前(2)サンプルチューブ挟持部の移動後を示している。
図5】サンプルチューブを挟持して移動させる際の動作の例を示した正面図である。
図6】スクリュー式のサンプルチューブの開閉例を示した正面図である。
図7】蓋部を本体部が一体化されたサンプルチューブの開閉例を示した斜視図である。
図8】サンプルチューブに対して溶媒の分注の動作の例を示した斜視図である。
図9】ピペッティング装置の例を示した斜視図である。
図10】固相カラムによる精製の構成例を示した斜視図である。
図11】固相カラムの上部より圧力供給部を配置した例を示した正面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 固定レール
3 移動軸
5 固定ストック部
7 チップラック
9 バッファー載置部
11 カラム載置部
13 移動ポンプ部
15 チューブラック
17 遠心分離機
19 遠心エバポレータ
21 キャップ回転移動部
23 キャップ載置部
25 廃液瓶
27 加温機付き振盪装置
29 ホモジナイザー
31 移動ストック部
33 冷却トラップ
35 吸引ポンプ
41 ロボットアームA
43 ロボットアームB
45 自動開閉ユニット
47 スイングロータ―遠心機
49 乾固ユニット
51 ボルテックスユニット
53 ピペットノズルユニット
55 チップ廃棄ユニット
57 第二チップラック
59 分注秤量ユニット
61 分注ノズルユニット
63 固相精製ユニット
65 攪拌ユニット
67 第一チップラック
69 サンプルチューブラック
71 回転テーブル
73 小量溶媒用サンプルチューブラック
75 固相カラムラック
77 振盪ユニット(ブロックヒーターも兼ねる)
79 ロボット架台
81 サンプルチューブ
83 クールユニット
85 ラック
87 サンプルチューブ挟持部
88 チップ
89 ピペッティング装置
91 移動ユニット
95 サンプルチューブ保持部
99 キャップ挟持ハンド
101 キャップ(分離された蓋部)
105 蓋部(一体型の蓋部)
107 サンプルチューブ本体部
109 ヒンジ部
111 開閉バー
112 蓋押さえ板
113 溶媒供給部
115 チューブ載置部
121 固相カラム
122 固相カラム載置部
123 固相カラム溶媒供給部
125 固相カラム圧力供給部
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の内容を詳細に説明する。本願第一の発明は、
“食品分析における試料の自動化された前処理方法であって、当該前処理方法における複数の特定の自動化された処理作業について、これらを任意に組み合わせることで、種々の分析項目に対応することを可能とした食品分析における試料の自動化された前処理方法において、
前記食品分析における分析項目が、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンE 、3-MCPD、3-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステル、辛味成分(ピぺリン、ショウガオール、ヒドロキシサンショオール)、保存料及びかび毒を含む食品分析における試料の自動化された前処理方法。”、である。
【0017】
以下に本発明の内容を詳細に説明する。
〇食品分析における種々の分析項目
食品分析における種々の分析項目とは、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンE 、3-MCPD、3-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステル、辛味成分(ピぺリン、ショウガオール、ヒドロキシサンショオール)、保存料及びかび毒等が挙げられる。但し、上記は例示でありこれらに限定されるものではなく他の分析項目を含んでもよいことは勿論である。
【0018】
〇本発明にいう自動化とは、当該前処理について、人の手技(手動)のみでなく、機械等がこれを実施することをいう。ここで機械等が実施する場合については、例えば、図1に示すように所定の筐体上のXY平面上を自在に移動できる移動ユニット91(図4:チューブ挟持装置やピペットや昇降ユニットを装着したもの)がサンプルチューブ81の移動、溶液の分注等を実施できるようなスタイルや、図2に示すように筐体上にロボットアーム41、43が設置され、当該ロボットアーム(41、43)が人の代わりにサンプルチューブ81の移動等の各種の動作を行うとともに、その周辺に配置された分注ノズル、遠心機等の各種機器を利用して、これらの前処理工程を実施することができるスタイルでもよい。
【0019】
さらに、図1の態様においては、XY平面上を自在に移動できる移動ユニットの可動範囲内や、図2の態様においてはロボットアームの挟持部の可動範囲領域内に、サンプルチューブホルダー、サンプルチューブラック、カラムラック、自動開閉ユニット(サンプルチューブ)、消耗品ストッカーユニット、攪拌ユニット(振盪機、ボルテックスミキサー)、固相精製ユニット(カラム載置部)、分注秤量ユニット、ピペットチップユニット、乾固ユニット、スイングローター遠心機、クールユニット等を必要に応じて設置しておくことが必要となる。尚、これらの装着器具・装置は、使用する自動化前処理装置の機械構成によって異なる。また、分析対象となる項目の種類によっても異なることとなる。
【0020】
〇自動化された前処理方法
本発明にいう自動化された前処理方法とは、試料から各種食品成分の分析項目を機器分析や定量分析、定性分析に供与する前の状態まで処理することをいう。具体的には、当該前処理終了時点に得られた試料溶液を利用して、適宜溶媒等の添加、酵素処理、希釈等することによって、液体クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ、質量分析計、紫外可視分光光度計、原子吸光分光光度計、イオンクロマトグラフ、示差走査熱量計、ICP発光分析計等の計測機器に供与する場合が挙げられる。また、特定の分析項目についての定量分析、定性分析に供する場合が挙げられる。
【0021】
〇複数の特定の処理作業
複数の特定の処理作業とは、食品分析における試料の自動化された前処理作業についてその内容をいう。当該処理作業については、これらの特定の処理作業を組み合わせることによって食品分析の前処理を構成できるものであれば、抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈等の様々な処理作業が想定される。これらの内容については特に限定されない。
【0022】
複数の特定の処理作業の具体例
(1)複数の特定の処理作業の具体例
例えば、具体的には、複数の特定の処理作業については、例えば、抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈、乾固、加温、振盪、低温保管及び反応が挙げられる。
【0023】
(2)複数の特定の処理作業を実施するための基本的な構成
<1> 作業フィールド
本発明の自動化された前処理方法を実施するためには、検査試料の自動前処理装置として、図1に示すように、所定の溶媒等の抽出等の各種処理を行う際に、サンプルチューブを所定のXY平面上で自在に移動できる移動ユニット91を有する機構を採用するともに、当該チューブの移動と一体として、溶液の分取・供給等のピペッティング装置89も移動させる方法がある。
図1については、XY平面上で自在に移動できる機構を採用するともに、当該チューブの移動と一体として、溶液の分取・供給等のピペッティング装置89も移動させる構成の例を示している。また、当該チューブを移動可能範囲内に遠心分離機17、キャップ回転移動部21、加温機付き振盪機27等の機器が配置されている。
【0024】
さらに別の態様として、ロボットアームを利用する分析設備を利用することも可能である。図2には2台のロボットアーム(41、43)を利用する態様を示している。このような態様の場合、当該ロボットアーム(41、43)の移動可能範囲の領域内に溶液の分取・供給等のピペットノズルユニット53や分注ノズルユニット61、攪拌ユニット65、スイングローター遠心機47等の機器や種々の装置等が配置されていればよい。
【0025】
また、図1及び図2の態様において、処理プロセスについてはコンピュータ、マイコン、PLC、リレー回路等を利用した制御(制御装置)により実施される。
また、各処理プロセスの操作の入力についてはタッチパネルや装置への入力により実施することができる。
【0026】
<2> 試料の保管・配置
自動化された前処理方法を実現するための方法として、基本的な構成として、試料はサンプルチューブ81内に溶液又は固体状態で保管する。当該試料を含むサンプルチューブ81の保管としては、作業フィールドに設けられた各種ラックが設けられている。当該ラックについて固定式、移動式の種々のタイプを配置しておくことが可能である。図3はサンプルチューブのラックの例についての斜視図である。
【0027】
<3> サンプルチューブの移動
上述の作業フィールドに配置されたサンプルチューブ81の移動については、例えば図1の態様においては、上述のXY平面を移動可能であって、当該サンプルチューブ81を挟持するようなタイプとして、図4に示すタイプが例として挙げられる。
図4については図1の態様におけるXY平面を移動する移動ユニット91に対して、チューブの挟持部87と、溶液の採取等を行うためのチップ88を利用したピペッティング装置89が装着された例を示している。
【0028】
次に図5については、サンプルチューブ81を挟持する際の動作について示している。
また、図2のタイプにおいて、ロボットアーム(41、43)を使用する場合においても図4図5に示すようなサンプルチューブ81の挟持部87を利用することができる。
すなわち、ロボットアーム(41、43)の先端部にサンプルチューブの挟持部87を設けておき、必要に応じて当該サンプルチューブ81を挟持・開放するようにすることができる。
【0029】
また、図2においては、当該挟持をした状態でロボットアーム(41、43)の可動領域内においてサンプルチューブ81を自在に移動させることができ、振盪装置77や遠心機47等の種々の装置にサンプルチューブ81を配置することができる。また、回転テーブル71が設けられており、必要なタイミングでロボットアーム(41、43)の可動領域内にサンプルチューブラック69や固相カラムラック75等が配置されるように調整されている。
【0030】
<4> サンプルチューブの開閉
サンプルチューブ81の蓋部の開閉についても種々の方法を利用することができる。
例えば図6に示すタイプにおいては、サンプルチューブ81がスクリュー式の蓋部(キャップ)101とチューブ本体部107に分離するタイプの場合において、チューブ81の下方部を支持・固定及びその解除をするこができるようにチューブ保持部95が設けられている。
【0031】
当該保持部95にサンプルチューブ81が固定されるとチューブ81の回転が阻止されるようになっている。この状態で、チューブの上部より、キャップ回転・移動部21が接近して、2本又は3本のキャップ挟持ハンド99が降下してキャップを挟持したのち、回転することでキャップ101を外すことができる。
【0032】
また、その他の方法として、図2のタイプにおいては、図7に示すようなサンプルチューブ81について蓋部105と本体部107がヒンジ部109を介して一体化しており、蓋部を分離せずに開閉するタイプを利用することとしている。当該一体型のタイプであると、蓋部105の先端突起部分の下から開閉バーが蓋部を持ち上げることで蓋部が開き、蓋部を閉める場合には蓋押さえ板が蓋部を上方から押さえつける態様によって蓋を閉めることができる。図2の自動開閉ユニット45において当該開閉の動作が行われるように構成されている。
【0033】
<5> 溶媒の分注
溶液の分注についても種々の構成を採用することができる。例えば、図8であると、溶媒のいずれかを分注できるように複数(6つ)の供給部113を有するように構成されており、所定の溶媒を分注するために、チューブ載置部115が当該供給部113のうちいずれかの先端部の下方部にまで移動し、供給部のいずれかの一つが矢印方向にスライドして、サンプルチューブ81の上部に位置することとなり、溶媒が供給可能となるように構成されている。
【0034】
尚、サンプルチューブ81内の液量を定容するために所定ラインまで液を注入する等のために、光センサー等を用いた定容制御が可能である。また、使用する溶媒の比重を考慮した上で重量制御とすることもできる。図2における分注秤量ユニット59においてはこのような重量制御が行われるように構成されている。
【0035】
また、その他の態様として、図2のようなロボットアーム(41,43)を利用する場合であれば、当該ロボットアーム(41,43)の先端部に所定の溶媒瓶とチューブに繋がった分注ノズルを装着する態様とすることも可能である。
サンプルチューブ81の蓋部が開の状態でその上部にロボットアームA41の先端部に装着された分注ノズルを移動させてサンプルチューブ81の上方に配置されるようにした後、所定量の溶媒をチューブ内に供給する態様等も可能である。
【0036】
<6> サンプルチューブからの廃液の除去・採取等
本発明においては、液液精製等の処理の工程においてサンプルチューブ81内で二層に分かれた溶液から廃液を排除したり、或いは必要な測定対象の食品成分を含むサンプル層を採取したりすることが必要な場合がある。このような場合、チップ88を利用したピペッティング装置が必要となる。
【0037】
当該ピペッティング装置89としては、例えば、図1の態様であれば、図9に示すような移動ユニット91において、先端部(チップ88)を脱着可能とし、液体を吸入又は吐出する昇降可能なピペッティング装置89とする方法が可能である。
【0038】
また、図2のようにロボットアーム(41,43)を利用する場合においては、当該ロボットアームのいずれかの先端部に必要に応じて。吸引又は排出ノズルや、ピペットノズルを装着させ、これによって廃液又はサンプル吸引等の各種ピペッティング操作を行うようにしてもよい。
特に図2においては、ロボットアームA41にピペットノズルを装着することを想定している。
【0039】
<7> 振盪
振盪や攪拌のプロセスについては、図1においては作業フィールド内に設けられた加温機付き振盪装置27や、図2においては作業フィールド内に配置された振盪ユニット77,攪拌ユニット65やボルテックスミキサー51を配置しており、これらを適宜利用することができる。
【0040】
<8> 固相精製による精製(固相カラム精製)
○固相カラムによる処理部
本発明の第一の実施態様においては、固相精製による精製工程を加えることが必要な場合がある。本発明の実施のための装置においては、固相カラム121による処理のための処理部を有することが必要となる。
【0041】
当該固相精製の処理部は、固相カラムの載置部122と、当該固相カラム121の上部よりバッファー等を供給する供給部が水平方向からスライドして固相カラム121の上部に位置するように構成することができる。
また、固相カラム中の液体の通液を促進するために、装着した固相カラムの上部より空気を送り、圧力を供給する圧力供給部125も装備することが好ましい。
例えば、図10に示すように一列の固相カラム121による処理のための処理部を示している。
【0042】
当該固相カラム処理部は、固相カラムの載置部122と、当該固相カラムの上部よりバッファー等を供給するシリンジ等を備えた固相カラム溶媒供給部が水平方向からスライドして固相カラム上部に位置されることになる。
また、固相カラム121中の液体の通過性を促進するために、装着した固相カラムの上部より空気や窒素等を送り、固相カラムに圧力を供給する固相カラム圧力供給部も適宜設けることも可能である。
【0043】
尚、その他の態様としてより多くのサンプルを処理するために、格子状に固相カラム121の配置部及びサンプルチューブ収納部を設けてもよいことは勿論である。
例えば、図2のタイプにおいては、固相精製ユニット63において図11に示すような格子状に固相カラム121を配置し、固相カラム121に吸着した目的の成分を溶出するための状態の正面図を示している。サンプルチューブ81の上に固相カラム121が配置され、さらにその上部に圧力供給のための圧力供給部125が配置されている。
【0044】
<9> 遠心分離
遠心分離については作業フィールド内に遠心分離機を配置することで実施が可能となる。
スイングローター47やアングルローター等を利用することができる。尚、遠心分離の場合、ローターのバランスをとる必要があるため、サンプルチューブの重量を測定し、対称位置に同重量のバランスを配置することが必要な場合がある。
【0045】
<10> 乾固
乾固については、窒素乾固や加温によって溶液中の溶媒を除去することができる。例えば、図2においては、乾固ユニット49において所定のラック等に配置されたサンプルチューブ81の上方から吹き出しノズル等より窒素を所定時間、サンプルに当てることによって乾固の処理を実施することができる。
【0046】
<11> 低温保管
前処理が終了したサンプルを4℃程度の状態で保管する必要があることが多い。このため、作業フィールド内に恒温ユニットや図2のクールユニット83を配置することによって実施することができる。
【0047】
(3)複数の自動化された特定の処理作業度
本発明においては、食品分析における試料の自動化された前処理方法として、当該前処理における複数の特定の自動化された処理作業を任意に組み合わせることによって実施する。
すなわち、特定の処理作業についてこれらをモジュール化することによってこれらを任意に組み合わせるようにする。
【0048】
特に、ここでの特定の処理作業については、抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈、乾固、加温、振盪、低温保管及び反応であることが好ましい。各処理作業について以下に説明する。
【0049】
─抽出─
抽出とは、試料から測定対象となる目的とする物質又はこれに準ずる物質を取り出すことをいう。具体的には、目的物の極性に応じて、特定の溶媒を利用して当該目的物を分離したり、あるいは不要な物質から取り出したりすることをいう。
当該抽出工程については、分析対象項目に応じて、適宜その内容を変更可能であることは勿論である。
【0050】
また、当該抽出については、加水分解や酵素処理等の処理作業を含めてもよい。尚、これらの加水分解、酵素処理の処理作業については、後述する“加温”や“反応”の処理工程としてもよい。
“抽出”について自動化された処理作業の具体例としては、例えば、所定のチューブ81に収納された試料に対して当該チューブの蓋部105を自動開封し、所定のストック瓶からチューブによって導かれる溶媒を分注して、その後、ボルテックスミキサー51又は攪拌装置65に当該チューブを移動して攪拌を行う自動化処理工程が挙げられる。
また、抽出の工程においては次に述べる“遠心分離”をその工程の一部に含めてもよい。
【0051】
─遠心分離─
遠心分離とは、抽出成分溶液と残渣を分離することをいう。遠心力によって、固形等の不要成分を沈降させることで上層に目的物を含有させ、当該上清を採取することによって目的物を回収することができる。また、液液精製の際に遠心分離によって2層に分ける工程を含む場合もある。
【0052】
遠心分離についての自動化された処理方法の具体例としては、ロボットアーム(41,43)等によってサンプルチューブ81を移動して、作業フィールド内に設置された遠心機47におけるローター部にサンプルチューブ81を収容し、ローター部のバランスを確保した上で所定の回転数(rpm)で遠心分離操作を実施するという自動化工程が挙げられる。
【0053】
─定容─
定容とは、溶液を目的の体積に合わせることをいう。尚、本自動化処理においては、当該定容工程について、体積を利用する方法のみなならず、使用する溶媒の比重に対応して重量換算で調整することも可能である。すなわち、予め溶媒の比重を測定しておくことで所定の容積に調整した場合と同様に溶液を調整することが可能となる。
【0054】
定容についての自動化された処理方法の具体例としては、予め容器内の液面の高さで容量が判明している容器を準備しておき、当該液面となるまで溶媒を注加可能なように光センサー等の制御機器を利用することができる。
また、予め溶媒の比重を測定しておき、サンプルチューブ81に対して所定量の重量となるまで溶媒を加えることで所定容積の溶媒を加えることができる。
【0055】
─液液精製─
液液精製とは、試料溶液の中から目的となる分析項目の物質以外の夾雑物質を物質の極性等を利用して取り除くことをいう。
例えば、水層に対して有機溶媒を添加し、攪拌・遠心分離することによって目的の食品成分を有機溶媒層に移したり、塩濃度やpHを調整したりすることで分離することも可能である。尚、本液液精製の工程においては“遠心分離”の工程を包含する場合も多い。
【0056】
液液精製についての自動化された処理方法の具体例としては、サンプルチューブに対して溶媒等を加え、攪拌を行い、その後遠心分離した後、上層の廃液を除去する方法がある。
尚、当該操作を繰り返し実施して精製度を高めることも可能である。さらに、下層のサンプル溶液のみを回収することも可能である。これらの工程については、前述のピペッティング装置89等により実施することができる。
【0057】
─固相精製─
固相精製とは、固相カラム121を利用して当該固相カラム121に充填された吸着剤を用いて不要な物質を取り除くことや、もしくは目的物を一旦吸着させてから不要物を取り除いた後で吸着した目的物を溶出させることをいう。
固相精製についての自動化された処理方法の具体例としては、図2に示す態様の場合においては、固相カラム121を挟持し、固相精製ユニット63まで移動し、固相精製ユニット63の載置板に設けられた孔に固相カラム121を挿入して載置する。
【0058】
ロボットアーム(41又は43)が分注ノズルユニット61に配置された分注ノズルを挟持した状態で、固相精製ユニット63の固相カラムの上方まで移動し、分注ノズルから固相カラム121に活性化させる溶媒を所定量、注入する。その後、蓋部105が開かれたサンプルチューブ81の中に、ロボットアームの先端部に装着されたピペットノズルの先端に装着されたチップ88を挿入し、試料溶液を吸引する。
【0059】
当該吸引した状態でロボットアーム(41又は43)が移動し、固相カラム121の上方から固相カラム内に試料溶液を吸引した状態のチップから試料溶液を吐出する。次に、固相カラム121の上部に、上方から圧力を加えるために圧力供給プレート127がスライド移動して配置され、下方に移動することで固相精製ユニットの上部開口部に対してゴムパッキンを介して圧力供給プレートが押圧し、所定の圧力を加え漏れの無い状態とする。
【0060】
次に、圧力を供給されることで試料溶液が固相カラム121を通過し、夾雑物が固相カラム側に吸着されることによって夾雑物の低減した試料溶液が下方のサンプルチューブ81に収容される。このようなステップによって実施することができる。
尚、固相カラム121に目的物質を吸着させた状態とし、夾雑物を通過させた後、目的物を溶出させて回収するステップも可能である。
【0061】
─希釈─
希釈とは、溶液を希釈することをいう。希釈についての自動化された処理方法の具体例としては、サンプルチューブ81に対して分注ノズル等より所定の量の溶媒を加えることで実施することができる。尚、加える量についてはサンプルチューブの重量を測定したり、チューブの液面をセンサーで検知したりすることによって調整することができる。尚、本希釈の工程については、“定容”の工程として、これに含めてもよい。
【0062】
─乾固─
乾固とは、溶媒を揮発させて目的物質を濃縮するこという。具体的には乾固する対象物に窒素を吹き付け等することによって乾固することが可能となる。尚、この際同時に加温してもよいことは勿論である。
乾固についての自動化された処理方法の具体例としては、図2においては、乾固の対象となるサンプルチューブ81を作業フィールド内に配置された乾固ユニット49に収容し、上方より窒素を所定時間吹き付ける等によって実施できる。
【0063】
─加温─
加温とは、試料溶液等の温度を上げることをいう。尚、当該加温においては、酵素反応や加水分解等のために試薬を加えた状態での加温も含めることも可能である。尚、この場合の加温の処理作業についての名称は後述する“反応”の処理作業としてもよい。
加温についての自動化された処理方法の具体例としては、図2においては、所定のサンプルチューブ81に溶媒等を加えた後、ブロックヒーター77にサンプルチューブ81を移載し、所定の温度・時間でサンプルチューブ81を保持することができる。
【0064】
─振盪─
振盪とは、温度を一定に保ちながらサンプルチューブ内の溶液等を激しく揺れ動かすことをいう。振盪についての自動化された処理方法の具体例としては、図2においては、振盪の必要な溶液等を収容したサンプルチューブ81を攪拌ユニット65又は振盪ユニット77に載置して当該振盪ユニットが反転又は振動等することによって振盪することが可能となる。尚、ブロックヒーター77中で実施することによって加温しながら振盪することも可能である。
【0065】
また、加温・低温の恒温状態として、内部の溶液の温度を、外部の温度と関係なく、長時間一定に保つように制御する恒温振盪とすることも可能であることは勿論である。
尚、ここでの“振盪”とは溶液の揺れ動かしの程度が軽いもの(いわゆる振盪)から激しいもの(いわゆる攪拌)の全体を含む概念とする。
【0066】
─低温保管─
低温保管とは低温で冷却保管するこという。前処理終了後の処理液又は処理固体において目的成分の分解を防ぐために低温(通常は4℃程度)で保管することをいう。低温保管についての自動化された処理方法の具体例としては、前処理終了後の処理液又は処理固体についてクールユニット81等に移載し、保持することによって“低温保管”を実施することができる。
【0067】
─反応─
反応とは、食品分析の対象によってはガスクロマトグラフや液体クロマトグラフ等の種々の分析装置によって分析しやすいように、誘導体化や加水分解、脱水等の処理が必要になる場合があり、当該処理を実施する場合のステップをいう。
反応についての自動化された処理方法の具体例としては、所定の反応液(加水分解剤、酵素、酸及びアルカリ等)を加えた後、加温又は恒温で保持することによって“反応”を行わせる
【0068】
尚、本発明の第一の実施態様においては、上述の“抽出”、“遠心分離”、“定容”等の用語を利用しているが、実質的に解釈して同趣旨の内容の処理工程であれば、当該用語以外の用語を利用してもよいことは勿論である。
また、個々の分析項目によって、“抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈、乾固、加温、振盪、低温保管及び反応”のそれぞれの処理作業の内容が異なる場合があることは勿論である。
【0069】
〇特定の処理作業を任意に組み合わせ可能とする
本発明においては、上記の特定の処理作業について任意にこれらを組み合わせ可能とすることができる。このような方法を採用することによって分析項目に応じて、必要な処理工程を組み合わせて調整することが可能となる。また、新たな分析項目を順次追加することが可能となる。
【0070】
例えば、後述するビタミンAの分析であると、加温 → 液液精製 → 乾固 → 低温保管の順番に処理工程を組み合わせて調整することが可能となる。
ここで、ビタミンAの場合の加温のステップは、サンプルに対して水酸化カリウム溶液を添加して攪拌した後、70℃に加温する内容の工程となり、当該処理について自動処理を行う。
【0071】
次に液液精製については、加温後の溶液に対して食塩水を添加した後、イソプロパノールを添加して攪拌し、次にイソプロパノールを添加して攪拌し、さらに酢酸エチル/ヘキサンの混液を加え、液液精製することによって上層にビタミンAを回収し、その後、乾固することによって前処理工程を終了する。
上述の工程のうち、液液精製の工程については、例えば、後述する3-MCPDの分析において試料に蒸留水とヘキサンを加えて分析対象である3-MCPDを下層(水層)に抽出し下層(水層)を別のチューブに移した後、酢酸エチルを加え、攪拌・遠心分離することによって夾雑物を除いて、上層(酢酸エチル層)を得る場合においても実施している。
【0072】
このような液液精製の工程は分析項目によらず共通している。このため液液精製のステップについての処理作業をモジュール化することによって様々な分析項目に対して液液精製のステップを組み合わせることができる。
次に、上述の“抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈、乾固、加温、振盪、低温保管及び反応”の各工程については、これら以外にも、例えば、前記各工程をより細分化して、“分注、定容、遠心分離、上清採取、下層採取、固相抽出、攪拌、乾固、振盪、廃液、静置、加温及び低温保管”の各工程の組み合わせとすることも可能である。
【0073】
すなわち、例えば、前述の抽出については、分注(溶媒の添加)、攪拌、遠心分離、上清採取等の複数のステップとして記載することもできる。
尚、上述の“分注”、“定容”、“遠心分離”、“上清採取”、“下層採取”等の用語を利用しているが、実質的に解釈して同趣旨の内容の処理工程であれば、当該用語以外の用語を利用してもよいことは勿論である。
このような種々の特定の処理作業について任意にこれらを組み合わせ可能とすることができる。このような方法を採用することによって分析項目に応じて、必要な処理工程を組み合わせて調整することも可能となる。これによって、新たな分析項目を順次追加することが可能となる。
【0074】
次に本願発明においては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンE 、3-MCPD、3-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステル、辛味成分(ピぺリン、ショウガオール、ヒドロキシサンショオール)、保存料及びかび毒を分析項目として含むこと特徴とする。
【0075】
ここで、
・ビタミンB1とは、チアミンとも呼ばれ、水溶性ビタミンの一種であり、生理活性物質でもあり、栄養素の一つである。
・ビタミンB2とは、リボフラビンとも呼ばれ、水溶性ビタミンの一種であり、生理活性物質でもあり、栄養素の一つである。
【0076】
・ビタミンAとは脂溶性ビタミンの一種で生体内でレチノールに変換される化合物(例えばβ-クリプトキサンチン、α-カロテン及びβ-カロテン)の総称である。レチノールは生理活性物質であり、必須栄養素で皮膚細胞の分化を促進する。
・ビタミンEとは脂溶性ビタミンの一種であり、トコフェロール(tocopherol)とも呼ばれ、抗酸化作用を有する。トコフェロールにはα、β、γ、δ-トコフェロールがある。
【0077】
・3-MCPDとは3-モノクロロプロパン-1,2-ジオールの略称である。タンパク質の加水分解を促進するために塩酸によって処理された食品において生成し、有害物質であるため健康への影響が懸念されている。
・3-MCPD脂肪酸エステルは食用油の精製工程において高温処理する脱臭工程で生成すると考えられている。 生体内では上述の3-MCPDとして遊離する可能性があるため、健康への影響が懸念されている。
【0078】
・グリシドール脂肪酸エステルは3-MCPD脂肪酸エステルと同様に食用油の精製工程において高温処理する脱臭工程で生成すると考えられている。生体内ではグリシドールとして遊離する可能性があり、健康への影響が懸念されている。
・辛味成分とは、後述するピぺリン、ショウガオール及びヒドロキシサンショオールなどの総称である。
【0079】
・ピぺリンとは、ブラックペッパーの辛味のもととなっている成分である。
・ショウガオールとは、6-ショウガオール、6-ジンゲロール、8-ジンゲロール、10-ジンゲロール、6-ジンゲロンなどの総称である。ショウガの辛味成分であり、ショウガを乾燥したり加熱したりする際に産生される。
・ヒドロキシサンショオールとは、サンショウ属植物に特有の辛味成分である。
・保存料とは、ソルビン酸、安息香酸、デヒドロ酢酸、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸メチルなどの総称である。
【0080】
・かび毒とは、
アフラトキシン類:アフラトキシンB1、B2、G1、G2、M1
オクラトキシン類:オクラトキシンA、B
トリコテセン類:ニバレノール、デオキシニバレノール、デオキシニバレノール-3-グルコシド、3-アセチル-デオキシニバレノール、15-アセチル-デオキシニバレノール、T-トキシン、HT-2トキシン、ジアセトキシスシルペノール、モノアセトキシスシルペノール、フザレノンX、ネオソラニオール
ゼアラレノン類:ゼアラレノン、ゼアララノン、α-ゼアララノール、β-ゼアララノール、α-ゼアラレノール、β-ゼアラレノール
麦角アルカロイド類:エルゴシン、エルゴクリスチン、エルゴコルニン、エルゴクリプチン
その他:ペニシリン酸、ステリグマトシスチン、ビューベリシン
などの総称をいう。
【0081】
本発明においては、上記の各分析項目について試料の自動化された前処理方法を可能とすることができる。
【0082】
─実施例─
本発明の試料の自動化された前処理方法に使用する自動前処理装置についての第一の実施態様を示す。但し、本発明は以下の第一の実施態様に限定されるものではない。
本発明の第一の実施態様においては、図2に示すように2台のロボットアーム(41、43)を利用するタイプを利用した。各ロボットアーム(41、43)には複数の回転部、屈曲部及び挟持部が設けられており、幅広い領域の移動が可能となっている。
【0083】
ロボットアーム(41,43)の先端部にはサンプルチューブ81の挟持部やピペッティングのための各種ノズルツールを装着できるように構成されており、サンプルチューブ81の挟持・移動や溶媒の分注を実施できるように構成されている。
ロボットアーム(41,43)の先端部が移動可能な領域内にサンプルチューブ81が配置されるように、回転テーブル71が設置されており、当該回転テーブル71には各種のカラムラック(69,73,75)が配置されている。
【0084】
また、図2示すように、本発明の第一の実施態様における自動前処理装置においては、筐体上に配置された2台のロボットアーム(41,43)以外に、攪拌ユニット65、固相精製ユニット63、分注ノズルユニット61に配置された分注ノズル、分注秤量ユニット59、第一チップラック67、第二チップラック57、チップ廃棄ユニット55、ピペットノズルユニット53、ボルテックスユニット51、乾固ユニット49、スイングローター遠心機47、自動開閉ユニット45、クールユニット81、振盪ユニット(ブロックヒーターも兼ねる)77、少量溶媒チューブラック73及びサンプルチューブラック69等が配置されている。
【0085】
また、カラムラック75及び少量溶媒用チューブラック73及びサンプルチューブラック69については回転テーブル71の上に設置されており、必要に応じて回転テーブル71が回転してロボットアーム(41,43)の可動領域内に位置するように構成されている。
【0086】
─ロボットアーム─
ロボットアーム(41,43)については、サンプルチューブ81や固相カラム121の挟持・各ユニットへの移動、溶媒の分注、ピペッティング操作移動等のために利用される。
特に第一の実施態様においては、ロボットアームA41によって溶媒の分注、ピペッティング操作等が実施される。
【0087】
また、溶媒の分注、ピペッティング操作のためにロボットアーム41の先端領域には、ピペットノズルユニット53や分注ノズルユニット61に配置された各種ピペットノズル(5mL用、1.25mL用等)や分注ノズルを装着可能となっており、ロボットアームA41の先端部がサンプルチューブ中の溶液についてピペッティング操作やサンプルチューブ81への溶媒の分注、廃棄等の各種操作が可能となっている。
さらに、ロボットアームA41及びロボットアームB43によってサンプルチューブ81や固相カラム121の挟持・各ユニットへの移動が実施される態様となっている。
【0088】
─攪拌ユニット─
前処理の工程の中で、特にサンプルチューブ81の攪拌が必要な場合に利用される。攪拌ユニット65にはチューブラックが装着されており、所定の数のサンプルチューブ81を収納した状態で往復回転することによって攪拌操作を自動化して実施するように構成されている。
【0089】
─固相精製ユニット─
固相精製(固相抽出)が必要な場合に利用され、カラムラック75に準備しておいた所定数の固相カラム121を固相抽出ユニット63に移動して、溶媒やサンプル溶液等を上部より供与して、固相カラム121の前処理、分析対象成分の吸着・回収、不純物の吸着、洗浄等の操作を実施することが可能となっている。
さらに、カラム処理の迅速化のための必要な場合に固相カラム121の上部開口部より気体による圧力を供与可能となるよう押圧プレートを設けている。
【0090】
─分注ノズルユニット─
分注ノズルユニット61には、溶媒等の分注のための分注ノズルが載置されており、サンプルチューブ81や固相精製に必要な場合において、ロボットアームA41の先端部に当該分注ノズルを装着し、分注の工程を実施できるように構成されている。
【0091】
─分注秤量ユニット─
分注秤量ユニット59は所定重量の溶媒等をサンプルチューブ81等に供与するために利用される。また、決められた溶媒の容量を添加するために予め当該溶媒の比重を測定しておき、当該比重から換算した重量の溶媒を供与することも可能である。
【0092】
─第一チップラック─
第一チップラック67には、ロボットアームA41の先端部に装着されるピペットノズルの先端部に装着するための使い捨てのピペットチップ88が収納されている。必要に応じてピペットノズルを装着したロボットアームの先端部にピペット用のチップ88に挿入・固定され種々のピペッティング操作(上清採取、下層採取等)に利用される。
【0093】
─第二チップラック─
第一チップラック67と同様に、ロボットアームA41の先端部に装着されるピペットノズルの先端部に装着するための使い捨てのピペットチップ88が収納されている。必要に応じてピペットノズルを装着したロボットアームの先端部にピペット用のチップ88に挿入・固定されピペッティング操作(廃液)に利用される。
【0094】
─チップ廃棄ユニット─
チップ廃棄ユニット55はピペットチップ88の交換・廃棄等のために利用される。ピペットノズルの先端部に装着されたピペットチップ88を挟持可能な挟持機構が設けられており、挟持された状態でピペットノズルを上方に移動させることでピペットチップを外すことが可能となる。
その後、挟持されたピペットチップ88は挟持が解除され下方に廃棄される。
【0095】
─ピペットノズルユニット─
ピペットノズルユニット53には、種々のピペッティング操作のため利用される複数のピペットノズル(5mL、1.2mL用等)が載置されている。必要に応じてピペットノズルを装着したロボットアームの先端部がピペットチップに挿入・固定され種々のピペッティング操作(廃液、上清採取、下層採取等)に利用される。
【0096】
─ボルテックスユニット─
ボルテックスユニット51はボルテックスミキシングのために利用される、サンプルチューブの底部を高速で旋回するように振動を加えて内容液を攪拌するための装置である。ロボットアームの先端部に挟持されたサンプルチューブ81の底部がボルテックス装置のカップ状の収容部に接触することで内容液が攪拌する。また、ボルテックスミキシングの時間及び間隔は適宜設定が可能である。
【0097】
─乾固ユニット─
乾固ユニット49は溶液から溶媒を取り除くために、窒素乾固が可能なように構成されている。チューブラックに所定の数のサンプルチューブ81が配置され、蓋部が開いた状態で上部よりそれぞれのサンプルチューブの上方から窒素ノズルを接近させて窒素を溶液に吹き付けることによって溶媒を揮発させ目的の分析対象成分を含む乾固物を得ることができる。
【0098】
─スイングローター遠心機─
スイングローター遠心機47は不純物を遠沈させる、又は対象となる分析対象成分を遠沈させる、もしくは比重の異なる2種類の溶液を分離させるために利用される。ローターのバランスをとった上で所定の回転数・時間で遠心分離される。遠心分離後のサンプルチューブは移動され、ピペッティング等の作業に供される。
【0099】
─自動開閉ユニット─
本実施態様におけるサンプルチューブ81としては、図7に示すような蓋部105と本体部107がヒンジ部109を介して一体化しており、ヒンジ部を有する蓋部を開閉するタイプを利用する。また、当該タイプの蓋部の開封のために図2の自動開閉ユニットにおいては、サンプルチューブをラックに収納した状態で蓋開口バーが持ち上がることでヒンジ部109を介して蓋部105を開けることが可能となる。
また、蓋を閉める場合には蓋押さえ板112が蓋部を上方から押しながら回転することで蓋部が閉じる構成となっている。
【0100】
─クールユニット─
クールユニット81はサンプルチューブを冷却する必要がある場合に利用する。試料の前処理が終了した後、当該クールユニットに設けられたラックに前処理終了後のサンプルチューブを載置して低温保管(4℃程度)しておくことが可能である。
本発明の実施に利用する自動前処理装置において終夜運転で食品サンプルの前処理を行う場合等に有効に利用することができる。
【0101】
─振盪ユニット(ブロックヒーターを兼ねる)─
振盪ユニット77ではサンプルチューブに振盪を加えることが可能である。また、当該振盪を加えるとともに、所定の温度で保持する場合にも利用することができ、ブロックヒーターとしての機能も兼ねている。本発明における“加温”や“反応”の工程において加水分解や酵素分解の工程において有効に利用することができる。
【0102】
─サンプルチューブラック─
サンプルチューブラック69は予め種々の分析項目に対応するために食品等の試料を採取・秤量した所定数のサンプルチューブ及び前処理工程中に使用する空のサンプルチューブを当該ラックにセットしておくために利用する。
【0103】
─少量溶媒用チューブラック─
少量溶媒用チューブラック73は前処理で使用する種々の溶媒のうち使用量が少ない溶媒を入れたサンプルチューブを当該ラックにセットしておくために利用する。
【0104】
-各種溶媒のストック部-
図2には示されていないが、固相精製ユニット121の下部に、各種溶媒のストック部が設置されている。必要に応じて複数の溶媒のうちから必要な溶媒を選択して、ロボットアームの先端部に装着される分注ノズルから供給される。
【0105】
-タッチパネル-
各処理プロセスの操作の詳細についての入力は、図2には示されていないタッチパネルにより実施することができるように構成されている。
作業者は各分析項目の内容に応じて、各処理作業について、例えば、処理検体数、試薬(溶媒)の添加量、攪拌の時間、遠心分離の回転数、ボルテックスミキシングの時間・回数、固相抽出の加圧力・加圧時間・加圧回数、窒素ガス吹付時間等の種々の各種パラメータを入力して設定することができる。
【0106】
-制御装置-
図2の態様においてはロボットアームの回転・移動等の処理プロセス・プログラムについてはコンピュータ、マイコン、PLC等を利用した制御(制御装置)により実施される。当該制御装置については、ロボット架台の下方部分に収納されている。
【0107】
ここで、第一の実施態様においては、作業者は、分析の対象となっている食品等のサンプルについてサンプルチューブに所定量を採取して、サンプルチューブラックに順次セットしさえすれば、自動前処理装置を稼働させることで、前処理完了まで自動で前処理を実施させることができる。
したがって、例えば、作業者は、夕方に複数のサンプルをセットして、当該自動前処理装置を終夜運転で稼働させて翌日に前処理済の処理サンプルを得ることができる。
【0108】
次に、前記の自動前処理装置を利用して、食品分析における試料の自動化された前処理における複数の特定の自動化された処理作業について、当該複数の特定の自動化された処理作業を任意に組み合わせることで、種々の分析項目に対応することができる。
また、以下にはビタミンA、ビタミンE、ビタミンB1、ビタミンB2、3-MCPD、3-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステル、辛味成分(ピぺリン、ショウガオール、ヒドロキシサンショオール)、保存料及びかび毒について、
各分析項目について具体的な処理工程について以下に示す。
尚、以下の各工程におけるパラメータの設定値は、作業者がタッチパネルに入力することで設定することができる。
【0109】
〇ビタミンA及びビタミンEの場合、表1に示すような特定の処理作業を組み合わせた試料の自動化された前処理方法とすることができる。
【0110】
【表1】
〇ビタミンB1及びビタミンB2の場合、表2に示すような特定の処理作業を組み合わせた試料の自動化された前処理方法とすることができる。
【0111】
【表2】
〇3-MCPDの場合、表3に示すような特定の処理作業を組み合わせた試料の自動化された前処理方法とすることができる。
【0112】
【表3】
〇3-MCPD脂肪酸エステルの場合、表4に示すような特定の処理作業を組み合わせた試料の自動化された前処理方法とすることができる。
【0113】
【表4】
〇グリシドール脂肪酸エステルの場合、表5に示すような特定の処理作業を組み合わせた試料の自動化された前処理方法とすることができる。
【0114】
【表5】

〇辛味成分(ピぺリン、ショウガオール、ヒドロキシサンショオール)の場合、表6に示すような特定の処理作業を組み合わせた試料の自動化された前処理方法とすることができる。
【0115】
【表6】
〇保存料の場合、表7に示すような特定の処理作業を組み合わせた試料の自動化された前処理方法とすることができる。
【0116】
【表7】

〇かび毒の場合、表8に示すような特定の処理作業を組み合わせた試料の自動化された前処理方法とすることができる。
【0117】
【表8】

実際に上記の本願第一の実施態様におけるロボットアームを利用した自動前処理装置を利用し、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンA、ビタミンE 、3-MCPD、3-MCPD脂肪酸エステル、グリシドール脂肪酸エステル、辛味成分(ピぺリン、ショウガオール、ヒドロキシサンショオール)、保存料及びかび毒について妥当性確認試験を行った結果、良好な分析結果を得ることができた。
また、上記の分析項目以外の他の食品成分の分析項目についても“抽出、遠心分離、定容、液液精製、固相精製、希釈、乾固、加温、振盪、低温保管及び反応”を含む複数の処理作業を含む、特定の自動化された処理作業を組み合わせることで試料の自動化された前処理が可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11