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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】表皮、表皮の製造方法、および積層体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/30 20060101AFI20240910BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20240910BHJP
   B60R 13/02 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B32B27/30 101
B32B5/24 101
B60R13/02 Z
B60R13/02 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020034151
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133662
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100217135
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 誠
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100209679
【弁理士】
【氏名又は名称】廣 昇
(72)【発明者】
【氏名】西村 翔太
【審査官】橋本 憲一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/188520(WO,A1)
【文献】特開平09-070910(JP,A)
【文献】特開平01-185338(JP,A)
【文献】特開昭63-137832(JP,A)
【文献】特開平11-129411(JP,A)
【文献】特開平06-279642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B60R 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩化ビニル樹脂成形シート(X)と、前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に配置された発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とを有する表皮であって、
前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)が、塩化ビニル樹脂(a)と可塑剤(b)とを含み、
前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)中の前記可塑剤(b)の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(a)100質量部に対して50質量部以上であり、
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は、平均重合度が100以上2000以下である塩化ビニル樹脂(c)および可塑剤(d)を含み、
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重が0.5以下であり、
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の前記可塑剤(d)の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(c)100質量部に対して、50質量部以上200質量部以下であり、
前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚みが0.8mm以上2.0mm以下であり、
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが2.5mm以上5.0mm以下である、表皮。
【請求項2】
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が、アゾ化合物を更に含み、
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の前記アゾ化合物の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(c)100質量部に対して、0.05質量部以上1.00質量部以下である、請求項に記載の表皮。
【請求項3】
前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)がアクリル系重合体を更に含む、請求項1または2に記載の表皮。
【請求項4】
前記アクリル系重合体がメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体を含む、請求項に記載の表皮。
【請求項5】
自動車内装部品の表皮用である、請求項1~のいずれかに記載の表皮。
【請求項6】
請求項1に記載の表皮の製造方法であって、
塩化ビニル樹脂(a)と可塑剤(b)とを含む塩化ビニル樹脂組成物(A)を用いて塩化ビニル樹脂成形シート(X)を形成する第1工程と、
前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を形成する第2工程と、を有し、
前記塩化ビニル樹脂組成物(A)中の前記可塑剤(b)の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(a)100質量部に対して50質量部以上であり、
前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、平均重合度が100以上2000以下である塩化ビニル樹脂(c)および可塑剤(d)を含み、
前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の前記可塑剤(d)の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(c)100質量部に対して、50質量部以上200質量部以下である、表皮の製造方法。
【請求項7】
前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が熱分解型発泡剤を更に含む、請求項に記載の表皮の製造方法。
【請求項8】
前記熱分解型発泡剤がアゾ化合物を含む、請求項に記載の表皮の製造方法。
【請求項9】
前記熱分解型発泡剤の体積平均粒子径が10μm以下である、請求項またはに記載の表皮の製造方法。
【請求項10】
前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の前記熱分解型発泡剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(c)100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である、請求項7~9のいずれかに記載の表皮の製造方法。
【請求項11】
発泡ポリウレタン成形体と、
請求項1~のいずれかに記載の表皮と、
を有する積層体であり、
前記発泡ポリウレタン成形体と前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)との間に前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置される、積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮、表皮の製造方法、および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
塩化ビニル樹脂は、一般に、耐寒性、耐熱性、耐油性などの特性に優れているため、種々の用途に用いられている。
具体的には、例えば、従来、自動車インスツルメントパネル等の自動車内装部品の形成には、塩化ビニル樹脂組成物をシート状に成形した塩化ビニル樹脂成形体(以下、「塩化ビニル樹脂成形シート」と称することがある。)からなる表皮や当該塩化ビニル樹脂成形シートからなる表皮に発泡ポリウレタン等の発泡体を裏打ちしてなる積層体などの自動車内装材が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1では、所定量の可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シートの厚み方向の一方側に、発泡塩化ビニル樹脂成形シートを配置してなる表皮が、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を良好に抑制し得ることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/188520号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、自動車内装部品の製造は、例えば、上述した表皮、または当該表皮に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちしてなる積層体を、用途に応じた所望の形状にプレス成形した後、さらに、当該表皮または積層体の裏面に芯材となる樹脂材料を射出成形することにより行われる。
そこで、自動車内装部品の表皮は、上述したプレス成形および射出成形などの高温高圧処理を施された後であっても、優れたクッション性を良好に維持することが求められる。
しかしながら、上記従来技術の表皮は、高温高圧処理後のクッション性に改善の余地があった。
【0006】
そこで、本発明は、高温高圧処理後のクッション性に優れた表皮を提供することを目的とする。
また、本発明は、当該表皮を備え、高温高圧処理後のクッション性に優れた積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決することを目的として鋭意検討を行った。そして、本発明者は、所定量の可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シートの厚み方向の一方側に、平均重合度が所定値以上である塩化ビニル樹脂を含み、且つ、比重が所定値以下である発泡塩化ビニル樹脂成形シートを配置してなる表皮であれば、高温高圧処理後においても優れたクッション性を発揮し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の表皮は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)と、前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に配置された発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とを有する表皮であって、前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)が、塩化ビニル樹脂(a)と可塑剤(b)とを含み、前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)中の前記可塑剤(b)の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(a)100質量部に対して50質量部以上であり、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は、平均重合度が1200以上である塩化ビニル樹脂(c)を含み、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重が0.5以下であることを特徴とする。このように、所定量の可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シートの厚み方向の一方側に、平均重合度が所定値以上である塩化ビニル樹脂を含み、且つ、比重が所定値以下である発泡塩化ビニル樹脂成形シートを配置してなる表皮であれば、高温高圧処理後においても優れたクッション性を発揮することができる。
なお、本発明において、塩化ビニル樹脂の平均重合度は、JIS K6720-2に準拠する方法により測定することができる。
また、本発明において、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重は、ISO1183に規定される水中置換法により測定することができる。
【0009】
ここで、本発明の表皮は、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が、可塑剤(d)を更に含み、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の前記可塑剤(d)の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(c)100質量部に対して、50質量部以上200質量部以下であることが好ましい。発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が上記所定量の可塑剤(d)を含んでいれば、高温高圧処理による表皮のクッション性の低下を小さくできると共に、高温高圧処理後の表皮のクッション性を更に高めることができる。
【0010】
また、本発明の表皮は、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が、アゾ化合物を更に含み、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の前記アゾ化合物の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(c)100質量部に対して、0.05質量部以上1.00質量部以下であることが好ましい。発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が上記所定量のアゾ化合物を含んでいれば、高温高圧処理による表皮のクッション性の低下を小さくできると共に、高温高圧処理後の表皮のクッション性を更に高めることができる。
なお、本発明において、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中のアゾ化合物の含有量は、本明細書の実施例に記載の方法により測定することができる。
【0011】
さらに、本発明の表皮は、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが1.5mm以上であることが好ましい。前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが上記所定以上であれば、高温高圧処理後の表皮のクッション性を更に高めることができる。
なお、本発明において、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みは、光学顕微鏡を用いて測定することができる。
【0012】
また、本発明の表皮は、前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)がアクリル系重合体を含むことが好ましい。発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)がアクリル系重合体を含めば、高温高圧処理後の表皮のクッション性を更に高めることができる。
【0013】
さらに、本発明の表皮は、前記アクリル系重合体がメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体を含むことが好ましい。前記アクリル系重合体がメタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体を含めば、高温高圧処理後の表皮のクッション性を一層高めることができる。
【0014】
また、本発明の表皮は、自動車内装部品の表皮用であることが好ましい。本発明の表皮は、自動車内装部品の表皮として用いられた場合、例えば、プレス成形および射出成型などの高温高圧処理を施された後であっても、優れたクッション性を発揮することができる。
【0015】
また、本発明の表皮の製造方法は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)と発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とを有する表皮の製造方法であって、塩化ビニル樹脂(a)と可塑剤(b)とを含む塩化ビニル樹脂組成物(A)を用いて塩化ビニル樹脂成形シート(X)を形成する第1工程と、前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を形成する第2工程と、を有し、前記塩化ビニル樹脂組成物(A)中の前記可塑剤(b)の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(a)100質量部に対して50質量部以上であり、前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、平均重合度が1200以上である塩化ビニル樹脂(c)を含むことを特徴とする。このように、塩化ビニル樹脂と所定量の可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物を用いて塩化ビニル樹脂成形シートを形成する工程と、前記塩化ビニル樹脂成形シートの厚み方向の一方側に、平均重合度が所定値以上である塩化ビニル樹脂を含む発泡性塩化ビニル樹脂組成物を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シートを形成する工程と、を実施すれば、高温高圧処理後のクッション性に優れた表皮を製造することができる。
【0016】
ここで、本発明の表皮の製造方法は、前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が、可塑剤(d)を更に含み、前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の前記可塑剤(d)の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(c)100質量部に対して、50質量部以上200質量部以下であることが好ましい。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が上記所定量の可塑剤(d)を更に含んでいれば、形成される表皮の高温高圧処理によるクッション性の低下を小さくできると共に、高温高圧処理後の表皮のクッション性を更に高めることができる。
【0017】
また、本発明の表皮の製造方法は、前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が熱分解型発泡剤を更に含むことが好ましい。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が熱分解型発泡剤を更に含めば、形成される表皮の高温高圧処理後のクッション性を更に高めることができる。
【0018】
さらに、本発明の表皮の製造方法は、前記熱分解型発泡剤がアゾ化合物を含むことが好ましい。熱分解型発泡剤がアゾ化合物を含めば、得られる表皮の高温高圧処理後のクッション性を一層高めることができる。
【0019】
また、本発明の表皮の製造方法は、前記熱分解型発泡剤の体積平均粒子径が10μm以下であることが好ましい。前記熱分解型発泡剤の体積平均粒子径が10μm以下であれば、得られる表皮の高温高圧処理後のクッション性を一層高めることができる。
【0020】
さらに、本発明の表皮の製造方法は、前記発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の前記熱分解型発泡剤の含有量が、前記塩化ビニル樹脂(c)100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下であることが好ましい。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が熱分解型発泡剤を上記所定量含んでいれば、得られる表皮の高温高圧処理後のクッション性を一層高めることができる。
【0021】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述したいずれかの表皮と、を有する積層体であり、前記発泡ポリウレタン成形体と前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)との間に前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されることを特徴とする。このように、発泡ポリウレタン成形体と、上述したいずれかの表皮とを有し、前記発泡ポリウレタン成形体と前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)との間に前記発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置される積層体であれば、高温高圧処理後においても優れたクッション性を発揮することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高温高圧処理後のクッション性に優れた表皮を提供することができる。
また、本発明によれば、当該表皮を備え、高温高圧処理後のクッション性に優れた積層体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の表皮は、例えば、本発明の積層体の製造に用いることができる。そして、本発明の表皮は、例えば、自動車インスツルメントパネルなどの自動車内装部品の表皮等の、自動車内装材として好適に用いることができる。なお、本発明の表皮は、本発明の表皮の製造方法により製造することができる。
【0024】
(表皮)
本発明の表皮は、所定量の可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シート(X)と、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に配置され、平均重合度が所定値以上である塩化ビニル樹脂を含み、且つ、比重が所定値以下である発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とを含むことを特徴とする。そして、本発明の表皮は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されているため、優れたクッション性を発揮することができる。特に、本発明の表皮は、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)に含まれる塩化ビニル樹脂(c)の平均重合度が所定値以上であり、且つ、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重が所定値以下であるため、例えばプレス成形や射出成形などの高温高圧処理を施された後であっても優れたクッション性を発揮することができる。
なお、本明細書中の「高温高圧処理」における「高温」は、例えば100℃以上の温度を指し、「高圧」は、例えば100N以上の圧力を指す。
【0025】
また、本発明の表皮は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されているため、発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合、即ち、発泡塩化発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されている側に発泡ポリウレタン成形体を更に積層して用いた場合に、熱収縮を良好に抑制することができる。
【0026】
したがって、本発明の表皮は、自動車内装部材として、具体的には、例えば、自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等の自動車内装部品の表皮として好適に用いられ、特に、自動車インスツルメントパネルの表皮用に好適に用いられる。
【0027】
<塩化ビニル樹脂成形シート(X)>
塩化ビニル樹脂成形シート(X)は、塩化ビニル樹脂と所定量の可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物(A)をシート状に成形することにより得られる。なお、塩化ビニル樹脂成形シート(X)は通常、後述する発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とは異なり、発泡体ではないものとする。
【0028】
なお、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚みは、特に限定されないが、0.1mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましく、0.7mm以上であることが更に好ましく、5.0mm以下であることが好ましく、2.0mm以下であることがより好ましく、1.8mm以下であることが更に好ましく、1.5mm以下であることが一層好ましい。塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚みが上記下限以上であれば、得られる塩化ビニル樹脂成形シート(X)に低温下での良好な引張伸びを付与することができるからである。また、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚みが上記上限以下であれば、得られる塩化ビニル樹脂成形シート(X)の取り扱い性に優れる他、塩化ビニル樹脂成形シート(X)に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を配置することがより容易にできるからである。
なお、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚みは、光学顕微鏡を用いて測定することができる。
【0029】
<<塩化ビニル樹脂組成物(A)>>
塩化ビニル樹脂組成物(A)は、塩化ビニル樹脂(a)と、所定量の可塑剤(b)とを含み、任意に、各種の添加剤などを更に含有してもよい。
なお、成形工程で分解し得る成分を除き、塩化ビニル樹脂組成物(A)中の各成分の塩化ビニル樹脂(a)に対する含有量は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)中の各成分の塩化ビニル樹脂(a)に対する含有量と一致するものとする。
【0030】
[塩化ビニル樹脂(a)]
ここで、塩化ビニル樹脂組成物(A)が含む塩化ビニル樹脂(a)としては、例えば、1種類または2種類以上の塩化ビニル樹脂粒子を含有することができ、任意に、1種類または2種類以上の塩化ビニル樹脂微粒子を更に含有することができる。中でも、塩化ビニル樹脂(a)は、少なくとも塩化ビニル樹脂粒子を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂粒子および塩化ビニル樹脂微粒子を含有することがより好ましい。
【0031】
なお、本明細書において、「樹脂粒子」とは、粒子径が30μm以上の粒子を指し、「樹脂微粒子」とは、粒子径が30μm未満の粒子を指す。そして、塩化ビニル樹脂粒子は、通常、マトリックス樹脂(基材)として機能し、塩化ビニル樹脂微粒子は、通常、ダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。
【0032】
また、塩化ビニル樹脂(a)は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造され得る。そして、塩化ビニル樹脂粒子は、懸濁重合法により製造することが好ましく、塩化ビニル樹脂微粒子は、乳化重合法により製造することが好ましい。
【0033】
-組成-
塩化ビニル樹脂(a)としては、塩化ビニル単量体単位からなる単独重合体の他、塩化ビニル単量体単位を好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上含有する塩化ビニル系共重合体が挙げられる。塩化ビニル系共重合体を構成し得る、塩化ビニル単量体と共重合可能な単量体(共単量体)の具体例としては、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類;塩化アリル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、三フッ化塩化エチレンなどのハロゲン化オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;イソブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリル-3-クロロ-2-オキシプロピルエーテル、アリルグリシジルエーテルなどのアリルエーテル類;アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸メチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸、そのエステルまたはその酸無水物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどの不飽和ニトリル類;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライドなどのアクリルアミド類;アリルアミン安息香酸塩、ジアリルジメチルアンモニウムクロライドなどのアリルアミンおよびその誘導体類;などが挙げられる。以上に例示される単量体は、共単量体の一部に過ぎず、共単量体としては、近畿化学協会ビニル部会編「ポリ塩化ビニル」日刊工業新聞社(1988年)第75~104頁に例示されている各種単量体が使用され得る。これらの共単量体は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。なお、上記塩化ビニル樹脂には、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、塩素化ポリエチレンなどの樹脂に、(1)塩化ビニルまたは(2)塩化ビニルと前記共単量体とがグラフト重合された樹脂も含まれる。
ここで、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
【0034】
なお、塩化ビニル樹脂(a)の平均重合度は、特に限定されないが、1200以上であることが好ましく、1300以上であることがより好ましく、1400以上であることが更に好ましく、1500以上であることが一層好ましく、3000以下であることが好ましく、2500以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましい。塩化ビニル樹脂(a)の平均重合度が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂(a)が適度な硬度を有するため、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の強度を向上させて、表皮の高温高圧処理後のクッション性を更に高めることができる。一方、塩化ビニル樹脂(a)の平均重合度が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂(a)は適度に柔軟性を有するため、塩化ビニル樹脂組成物(A)から塩化ビニル樹脂成形シート(X)への成形を容易にすることができる。
【0035】
[可塑剤(b)]
塩化ビニル樹脂組成物(A)は所定量の可塑剤(b)を更に含む。塩化ビニル樹脂組成物(A)が可塑剤(b)を含まなければ、塩化ビニル樹脂組成物(A)を用いて塩化ビニル樹脂成形シート(X)を良好に得ることができない。
【0036】
-含有量-
ここで、可塑剤(b)の含有量は、上記塩化ビニル樹脂(a)100質量部に対して50質量部以上であることが必要であり、55質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、65質量部以上であることが更に好ましく、70質量部以上であることが一層好ましく、85質量部以上であることがより一層好ましく、200質量部以下であることが好ましく、170質量部以下であることがより好ましく、140質量部以下であることが更に好ましく、100質量部以下であることが一層好ましい。可塑剤(b)の含有量が上記下限以上であれば、塩化ビニル樹脂組成物(A)に優れた柔軟性を付与し、例えば、塩化ビニル樹脂成形シート(X)へと加工し易くできると共に、得られる塩化ビニル樹脂成形シート(X)に対して、高温高圧処理の前後の双方における優れたクッション性を付与することができる。また、可塑剤(b)の含有量が上記上限以下であれば、得られた塩化ビニル樹脂成形シート(X)の表面のべた付きを抑制し、表面滑り性を高めることができる。
【0037】
-種類-
可塑剤(b)としては、例えば、国際公開第2016/098344号に記載の一次可塑剤および二次可塑剤などを使用することができる。これらの成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
上述した可塑剤の中でも、塩化ビニル樹脂組成物(A)および塩化ビニル樹脂成形シート(X)を容易に良好に得られる観点から、可塑剤(b)として、少なくとも一次可塑剤を用いることが好ましく、一次可塑剤および二次可塑剤を併用することがより好ましい。具体的には、可塑剤(b)としては、トリメリット酸エステルおよび/またはピロメリット酸エステルを用いることが好ましく、少なくともトリメリット酸エステルを用いることがより好ましく、トリメリット酸エステルとエポキシ化大豆油とを併用することが更に好ましい。
【0038】
[添加剤]
塩化ビニル樹脂組成物(A)は、上述した成分以外に、各種添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、過塩素酸処理ハイドロタルサイト、ゼオライト、β-ジケトン、脂肪酸金属塩などの安定剤;離型剤;上記塩化ビニル樹脂微粒子以外のその他のダスティング剤;耐衝撃性改良剤;過塩素酸処理ハイドロタルサイト以外の過塩素酸化合物(過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム等);酸化防止剤;防カビ剤;難燃剤;帯電防止剤;充填剤;光安定剤;成形加工性調節剤(シリコーンオイル等);着色剤が挙げられる。
このような添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、国際公開第2016/098344号に記載のもの(ただし、発泡剤を除く。)を使用することができる。
なお、塩化ビニル樹脂組成物(A)中の各種添加剤の含有量は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜調整することができる。
【0039】
[塩化ビニル樹脂組成物(A)の調製方法]
塩化ビニル樹脂組成物(A)は、特に制限されることなく、上述した成分を混合して調製することができる。
ここで、上記塩化ビニル樹脂(a)と、所定量の可塑剤(b)と、必要に応じて更に使用される各種添加剤との混合方法としては、特に限定されることなく、例えば、塩化ビニル樹脂微粒子を含むダスティング剤を除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、ダスティング剤を添加、混合する方法が挙げられる。ここで、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、特に制限されることなく、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましい。
【0040】
<発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)>
本発明の表皮は、上述した塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、平均重合度が所定値以上である塩化ビニル樹脂を含み、且つ、比重が所定値以下である発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されてなる。なお、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は、本発明の表皮の厚み方向の一方側の表面に位置することが好ましい。なお、本発明の表皮の厚み方向の一方側の表面は、一部が発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)で構成されていてもよいし、全部が発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)で構成されていてもよい。
【0041】
ここで、一般に、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シートからなる表皮は、例えば、発泡ウレタン成形体と直接接触した状態で高温条件下に置かれると、表皮中の可塑剤が発泡ウレタン成形体に移行することで、表皮中の可塑剤の量が減少し、表皮の熱収縮が発生すると考えられている。しかしながら、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を配置してなる本発明の表皮であれば、塩化ビニル樹脂成形シート(X)と発泡ウレタン成形体との間に当該発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を介在させることで、可塑剤が塩化ビニル樹脂成形シート(X)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)から移行して発泡ウレタン成形体に到達することが困難になり、結果として、熱収縮を良好に抑制することができると推測される。
【0042】
発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は塩化ビニル樹脂成形シート(X)に直接接着していてもよいし、所望の効果が得られる限り、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は他の樹脂層等を介して塩化ビニル樹脂成形シート(X)に接着していてもよいが、表皮に発泡ウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を更に良好に抑制する観点から、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は塩化ビニル樹脂成形シート(X)に直接接着していることが好ましい。
【0043】
ここで、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重は、0.5以下であることが必要であり、0.4以下であることが好ましく、0.3以下であることがより好ましく、0.25以下であることが更に好ましく、0.1以上であることが好ましく、0.12以上であることがより好ましく、0.15以上であることが更に好ましい。発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重が0.5を超える場合、高温高圧処理後の表皮のクッション性を良好に維持することができない。一方、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重が0.5以下であれば、当該発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を有する表皮は高温高圧処理後であっても優れたクッション性を発揮することができる。さらに、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重が上記上限以下であれば、当該発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を有する表皮の高温高圧処理前のクッション性も十分に高く確保することができる。また、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重が上記下限以上であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の強度を良好に維持し、高温高圧処理によるクッション性の低下を小さくすることができる。
なお、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重は、後述の発泡性塩化ビニル樹脂組成物(Y)中の発泡剤の種類および量、並びに、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(Y)を成形して発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)にする際の温度等の条件により調整することができる。
【0044】
なお、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みは、特に限定されないが、1.5mm以上であることが好ましく、1.8mm以上であることがより好ましく、2.0mm以上であることが更に好ましく、2.3mm以上であることが一層好ましく、2.5mm以上であることがより一層好ましく、10.0mm以下であることが好ましく、5.0mm以下であることがより好ましく、4.0mm以下であることが更に好ましく、3.0mm以下であることが一層好ましく、2.8mm以下であることがより一層好ましい。発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが上記下限以上であれば、得られる表皮に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合に、表皮の熱収縮を更に良好に抑制することができると共に、当該表皮の硬度を低下させ、高温高圧処理の前後の双方における表皮のクッション性を高めることができる。一方、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みが上記上限以下であれば、得られる表皮は発泡ポリウレタン成形体を裏打ちする際の取り扱い性に優れるものとなる。
【0045】
発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)は、特に限定されないが、通常、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を発泡させつつ、シート状に成形することにより得られる。
【0046】
<<発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)>>
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、平均重合度が所定値以上である塩化ビニル樹脂(c)と、発泡剤とを含み、任意に、アクリル系重合体、可塑剤(d)、およびその他の各種添加剤などを更に含有してもよい。
【0047】
なお、後述する熱分解型発泡剤等の成形工程で分解し得る成分を除き、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の各成分の塩化ビニル樹脂に対する含有量は、発泡塩化ビニル樹脂成形体(Y)中の当該各成分の塩化ビニル樹脂に対する含有量と一致するものとする。
【0048】
[塩化ビニル樹脂(c)]
ここで、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が含む塩化ビニル樹脂(c)としては、例えば、1種類または2種類以上の塩化ビニル樹脂粒子を含有することができ、任意に、1種類または2種類以上の塩化ビニル樹脂微粒子を更に含有することができる。中でも、塩化ビニル樹脂()は、少なくとも塩化ビニル樹脂粒子を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂粒子および塩化ビニル樹脂微粒子を含有することがより好ましい。
【0049】
なお、塩化ビニル樹脂粒子は、通常、マトリックス樹脂(基材)として機能し、塩化ビニル樹脂微粒子は、通常、ダスティング剤(粉体流動性改良剤)として機能する。
【0050】
また、塩化ビニル樹脂(c)は、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法など、従来から知られているいずれの製造法によっても製造され得る。そして、塩化ビニル樹脂粒子は、懸濁重合法により製造することが好ましく、塩化ビニル樹脂微粒子は、乳化重合法により製造することが好ましい。
【0051】
塩化ビニル樹脂(c)としては、例えば、「塩化ビニル樹脂成形シート(X)」の項で上述した塩化ビニル樹脂組成物(A)中の塩化ビニル樹脂(a)として使用し得る重合体を用いることができる。
【0052】
そして、塩化ビニル樹脂(c)の平均重合度は、1200以上であることが必要であり、1300以上であることが好ましく、1400以上であることがより好ましく、1500以上であることが更に好ましく、3000以下であることが好ましく、2500以下であることがより好ましく、2000以下であることが更に好ましい。塩化ビニル樹脂(c)の平均重合度が1200未満である場合、高温高圧処理後の表皮のクッション性を良好に維持することができない。一方、塩化ビニル樹脂(c)の平均重合度が1200以上であれば、高温高圧処理後の表皮は優れたクッション性を発揮することができる。さらに、塩化ビニル樹脂(c)の平均重合度が上記下限以上であれば、高温高圧処理前における表皮のクッション性を更に高めることもできる。また、塩化ビニル樹脂(c)の平均重合度が上記上限以下であれば、塩化ビニル樹脂(c)は適度に柔軟性を有するため、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)から発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)への成形を容易にすることができると共に、高温高圧処理の前後の双方における表皮のクッション性を更に高めることができる。
【0053】
[発泡剤]
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、発泡剤を含む。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が発泡剤を含むことにより、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を発泡させながら成形して、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を良好に得ることができる。
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が含む発泡剤としては、化学発泡剤および物理発泡剤などを使用することができる。
【0054】
ここで化学発泡剤の例としては、熱分解型発泡剤、および反応型発泡剤などが挙げられる。
【0055】
そして、熱分解型発泡剤としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物、ヒドラジン誘導体、セミカルバジド化合物、テトラゾール化合物、有機酸、等の有機系熱分解型発泡剤;重炭酸塩、炭酸塩、有機酸塩、亜硝酸塩、等の無機系熱分解型発泡剤;などを用いることができる。
【0056】
さらに、アゾ化合物としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、バリウムアゾジカルボキシレート、ジアゾアミノベンゼン等が挙げられる。ニトロソ化合物としては、例えば、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)等が挙げられる。
ヒドラジン誘導体としては、例えば、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド(TSH)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等が挙げられる。
セミカルバジド化合物としては、例えば、p-トルエンスルホニルセミカルバジドが挙げられる。また、テトラゾール化合物としては、例えば、5-フェニルテトラゾール、1,4-ビステトラゾール等が挙げられる。
有機酸としては、例えば、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸等の多価カルボン酸が挙げられる。
【0057】
また、反応型発泡剤としては、イソシアネート化合物と水との組み合わせ、重炭酸ナトリウムと酸との組み合わせ、過酸化水素とイースト菌との組み合わせ、亜鉛粉末と酸との組み合わせ等が挙げられる。
【0058】
一方、物理発泡剤の例としては、フロンガス、炭酸ガス等の気体;水、揮発性炭化水素化合物等の揮発性液体;これらの気体、揮発性液体等を内包する熱膨張性マイクロカプセル;などが挙げられる。
【0059】
上述した発泡剤の中でも、熱分解型発泡剤を用いることが好ましく、アゾ化合物を用いることが更に好ましく、アゾジカルボンアミド(ADCA)を用いることが特に好ましい。発泡剤として熱分解型発泡剤を用いれば、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を良好に発泡させながら発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を成形できるため、得られる表皮に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を更に良好に抑制することができると共に、表皮の高温高圧処理の前後の双方におけるクッション性を更に高めることができる。さらに、熱分解型発泡剤としてアゾ化合物を用いれば、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を更に良好に発泡させながら発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を成形できるため、得られる表皮に発泡ポリウレタン成形体を裏打ちして用いた場合の熱収縮を一層良好に抑制することができると共に、表皮の高温高圧処理の前後の双方におけるクッション性を一層高めることができる。
【0060】
ここで、熱分解型発泡剤の体積平均粒子径は、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましく、7μm以下であることが一層好ましく、5μm以下であることがより一層好ましく、4μm以下であることが更に一層好ましく、3μm以下であることが最も好ましく、1μm以上であることが好ましい。熱分解型発泡剤の体積平均粒子径が上記上限以下であれば、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の発泡倍率を向上させ、得られる表皮の硬度を低下させ、高温高圧処理の前後の双方におけるクッション性を一層高めることができる。一方、熱分解型発泡剤の体積平均粒子径が上記下限以上であれば、熱分解型発泡剤はその取り扱い性に優れるものとなる。
なお、本明細書中において、「体積平均粒子径」とは、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定した粒子径分布(体積基準)において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(メジアン径)を指す。
【0061】
また、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の熱分解型発泡剤の含有量は、上記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、2質量部以上であることがより好ましく、3質量部以上であることが更に好ましく、10質量部以下であることが好ましく、5質量部以下であることがより好ましく、4質量部以下であることが更に好ましい。熱分解型発泡剤の含有量が、上記下限以上であれば、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の発泡倍率を向上させ、得られる表皮の硬度を低下させ、高温高圧処理の前後の双方におけるクッション性を一層高めることができる。一方、熱分解型発泡剤の含有量が、上記上限以下であれば、気泡(セル)の均一性が向上するため、得られる表皮の硬度を場所によらず略均一に低下させ、高温高圧処理の前後の双方におけるクッション性を一層高めることができる。
【0062】
なお、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の発泡剤として熱分解型発泡剤を用いた場合、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を成形する際に、熱分解型発泡剤の少なくとも一部は分解するが、得られた発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中に熱分解型発泡剤が残留物として含まれていてもよい。
例えば、熱分解型発泡剤としてアゾ化合物を用いた場合、形成される発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中におけるアゾ化合物の含有量(残留量)は、塩化ビニル樹脂(c)100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.10質量部以上であることがより好ましく、0.20質量部以上であることが更に好ましく、1.00質量部以下であることが好ましく、0.75質量部以下であることがより好ましく、0.50質量部以下であることが更に好ましい。発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中におけるアゾ化合物の含有量(残留量)が上記下限以上であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の柔軟性を適度に向上させて、高温高圧処理の前後の双方における表皮のクッション性を一層高めることができる。一方、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中におけるアゾ化合物の含有量(残留量)が上記上限以下であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の柔軟性が過度に高まることを抑制し、発泡セル(気泡)の強度を高めることができる。これにより、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を有する表皮は、高温高圧処理によるクッション性の低下を小さくすることができる。
【0063】
[アクリル系重合体]
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、アクリル系重合体を含むことが好ましい。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)がアクリル系重合体を含むことにより、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の気泡(セル)の均一性が向上するため、得られる表皮の硬度を場所によらず略均一に低下させ、高温高圧処理の前後の双方におけるクッション性を更に高めることができる。
【0064】
ここで、本発明において、「アクリル系重合体」とは、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルコキシアルキルエステル、メタクリル酸アルコキシアルキルエステルなどの、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構造単位を含む重合体である。ここで、「(メタ)アクリル酸エステル」とは、「アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステル」を意味する。そして、アクリル系重合体としては、特に限定されないが、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体(メタクリル酸アルキル・アクリル酸アルキル共重合体)を用いることが好ましい。アクリル系重合体として、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体を用いれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の気泡(セル)の均一性が更に向上するため、高温高圧処理の前後の双方におけるクッション性を一層高めることができる。
【0065】
アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステルと、任意のその他の化合物とを単量体として含む単量体組成物Cを用いて、重合反応を行なうことにより調製することができる。
そして、アクリル系重合体の調製に使用し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレー卜、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ヘプチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートを用いることが好ましい。
【0066】
上記単量体組成物C中の全単量体に占める(メタ)アクリル酸エステル単量体の割合は、50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。上記単量体組成物中の全単量体に占める(メタ)アクリル酸エステル単量体の割合が上記下限以上であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の気泡(セル)の均一性が更に向上するため、高温高圧処理の前後の双方におけるクッション性を一層高めることができる。一方、上記単量体組成物中の全単量体に占める(メタ)アクリル酸エステル単量体の割合が上記上限以下であれば、アクリル系重合体が熱などにより融着することを防止することができる。
【0067】
また、上記単量体組成物Cが含み得る(メタ)アクリル酸エステル以外の単量体としては、特に限定されないが、例えば、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、α,β-不飽和ニトリル単量体などが挙げられる。
【0068】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩の少なくとも一方を用いることができる。そして、エチレン性不飽和カルボン酸としては、エチレン性不飽和モノカルボン酸およびその誘導体、エチレン性不飽和ジカルボン酸およびその酸無水物並びにそれらの誘導体などが挙げられる。また、エチレン性不飽和カルボン酸塩としては、エチレン性不飽和カルボン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。
なお、エチレン性不飽和カルボン酸およびその塩は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
ここで、エチレン性不飽和モノカルボン酸の例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。そして、エチレン性不飽和モノカルボン酸の誘導体の例としては、2-エチルアクリル酸、イソクロトン酸、α-アセトキシアクリル酸、β-trans-アリールオキシアクリル酸、α-クロロ-β-E-メトキシアクリル酸、β-ジアミノアクリル酸などが挙げられる。
また、エチレン性不飽和ジカルボン酸の例としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。そして、エチレン性不飽和ジカルボン酸の酸無水物の例としては、無水マレイン酸、ジアクリル酸無水物、メチル無水マレイン酸、ジメチル無水マレイン酸などが挙げられる。さらに、エチレン性不飽和ジカルボン酸の誘導体の例としては、メチルマレイン酸、ジメチルマレイン酸、フェニルマレイン酸、クロロマレイン酸、ジクロロマレイン酸、フルオロマレイン酸、などが挙げられる。
【0069】
また、α,β-不飽和ニトリル単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
なお、アクリル系重合体としては、市販品を用いることもできる。特に、メタクリル酸アルキルエステルとアクリル酸アルキルエステルとの共重合体として、「メタブレンL-1000」(三菱ケミカル社製)を好適に用いることができる。
【0071】
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中のアクリル系重合体の含有量は、上記塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることが更に好ましく、2質量部以下であることが好ましく、1質量部以下であることがより好ましい。アクリル系重合体の含有量が、上記所定の範囲内であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の気泡(セル)の均一性が更に向上するため、高温高圧処理の前後の双方におけるクッション性を一層高めることができる。
【0072】
[可塑剤(d)]
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、可塑剤を更に含んでいることが好ましい。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が可塑剤を更に含んでいれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の柔軟性を向上させて、高温高圧処理の前後の双方におけるクッション性を更に高めることができる。
【0073】
ここで、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が含み得る可塑剤(d)の種類としては、「塩化ビニル樹脂成形シート(X)」の項で上述した塩化ビニル樹脂組成物(A)中の可塑剤の種類の範囲内で適宜選択することができる。
そして、高温高圧処理の前後の双方における表皮のクッション性を一層高める観点から、可塑剤(d)として、少なくとも一次可塑剤を用いることが好ましく、一次可塑剤および二次可塑剤を併用することがより好ましい。具体的には、可塑剤(d)としては、トリメリット酸エステルおよび/またはピロメリット酸エステルを用いることが好ましく、少なくともトリメリット酸エステルを用いることがより好ましく、トリメリット酸エステルとエポキシ化大豆油とを併用することが更に好ましい。
【0074】
ここで、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中のトリメリット酸エステルの含有量は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることが更に好ましく、195質量部以下であることが好ましく、145質量部以下であることがより好ましく、125質量部以下であることが更に好ましく、95質量部以下であることが一層好ましい。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中のトリメリット酸エステルの含有量が上記下限以上であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の柔軟性を更に向上させて、高温高圧処理の前後の双方における表皮のクッション性を一層高めることができる。一方、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中のトリメリット酸エステルの含有量が上記上限以下であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の柔軟性が過度に高まることを抑制し、発泡セル(気泡)の強度を高めることができる。これにより、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を有する表皮は、高温高圧処理によるクッション性の低下を小さくすることができる。
【0075】
また、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中のエポキシ化大豆油の含有量は、特に限定されないが、例えば、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、0質量部以上5質量部以下とすることができる。
【0076】
そして、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の可塑剤の総含有量(即ち、可塑剤(d)の含有量)は、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、70質量部以上であることがより好ましく、80質量部以上であることが更に好ましく、200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、130質量部以下であることが更に好ましく、100質量部以下であることが一層好ましい。発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の可塑剤(d)の含有量が上記下限以上であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の柔軟性を更に向上させて、高温高圧処理の前後の双方における表皮のクッション性を更に高めることができる。一方、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の可塑剤(d)の含有量が上記上限以下であれば、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の柔軟性が過度に高まることを抑制し、発泡セル(気泡)の強度を高めることができる。これにより、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を有する表皮は、高温高圧処理によるクッション性の低下を小さくすることができる。
【0077】
[添加剤]
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、上述した成分以外の各種添加剤を更に含んでいてもよい。
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)が含み得る各種添加剤としては、「塩化ビニル樹脂成形シート(X)」の項で上述した塩化ビニル樹脂組成物(A)が含み得る添加剤を使用することができる。
なお、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の各種添加剤の含有量は、本発明の所望の効果が得られる範囲内で適宜調整することができる。
【0078】
[発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の調製方法]
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)は、特に制限されることなく、上述した成分を混合して調製することができる。
ここで、上記塩化ビニル樹脂と、発泡剤と、必要に応じて更に使用されるアクリル系重合体、可塑剤、およびその他の各種添加剤との混合方法としては、特に限定されることなく、例えば、塩化ビニル樹脂微粒子を含むダスティング剤と発泡剤とを除く成分をドライブレンドにより混合し、その後、ダスティング剤および発泡剤を添加、混合する方法が挙げられる。ここで、ドライブレンドには、ヘンシェルミキサーの使用が好ましい。また、ドライブレンド時の温度は、特に制限されることなく、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、200℃以下が好ましい。なお、発泡剤を添加する際の温度は、使用する発泡剤の種類に応じ、本発明の所望の効果が得られる範囲内で任意に設定することができる。
【0079】
(表皮の製造方法)
本発明の表皮の製造方法は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)と発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とを有する表皮の製造方法であって、塩化ビニル樹脂と所定量の可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物(A)を用いて塩化ビニル樹脂成形シート(X)を形成する第1工程と、前記塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、平均重合度が所定値以下である塩化ビニル樹脂を含む発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を形成する第2工程と、を有することを特徴とする。本発明の表皮の製造方法によれば、高温高圧処理後のクッション性に優れた表皮を製造することができる。
【0080】
<第1工程>
第1工程では、塩化ビニル樹脂と所定量の可塑剤とを含む塩化ビニル樹脂組成物(A)を用いて塩化ビニル樹脂成形シート(X)を形成する。そして、通常は、当該塩化ビニル樹脂組成物(A)を既知の成形方法によりシート状に成形することで、塩化ビニル樹脂成形シート(X)を形成する。
ここで、塩化ビニル樹脂組成物(A)としては、「表皮」の項で上述した塩化ビニル樹脂成形シート(X)の形成に用いる塩化ビニル樹脂組成物(A)を使用することができる。
また、成形方法としては、粉体成形を用いることが好ましく、パウダースラッシュ成形を用いることがより好ましい。
【0081】
ここで、パウダースラッシュ成形時の金型温度は、特に制限されることなく、200℃以上とすることが好ましく、220℃以上とすることがより好ましく、300℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。
【0082】
そして、塩化ビニル樹脂成形シート(X)を製造する際には、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、上記温度範囲の金型に塩化ビニル樹脂組成物(A)を振りかけて、5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物(A)を振り落とし、さらに、任意の温度下、30秒以上3分以下の間放置する。その後、得られた塩化ビニル樹脂成形シート(X)は、後述する第2工程の態様に応じて、金型を10℃以上60℃以下に冷却することで、金型から脱型されてもよいし、脱型されなくてもよい。なお、脱型された塩化ビニル樹脂成形シートは、例えば、金型の形状をかたどったシート状の成形体として得られる。
【0083】
<第2工程>
第2工程では、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を形成する。
ここで、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)としては、「表皮」の項で上述した発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の形成に用いる発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用することができる。
塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を用いて発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を形成する方法としては、特に限定されることはなく、「第1工程」の項で上述した既知の成形方法により、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を発泡させながらシート状に成形して、単独の発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を作製した後、既知の接着方法により、当該発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に接着する方法を採用してもよいが、同一の金型を用いて、第一工程としてのパウダースラッシュ成形と、第2工程としてのパウダースラッシュ成形とを連続して行なう以下の方法(「ダブルスラッシュ成形」と称することがある。)を用いることもできる。
即ち、上述した第1工程としてのパウダースラッシュ成形で、金型から余剰の塩化ビニル樹脂組成物(A)を振り落とし、さらに、任意の温度下、30秒以上3分以下放置した後に、得られた塩化ビニル樹脂成形シート(X)を金型から脱型せず、第2工程として、塩化ビニル樹脂成形シート(X)が付いた状態の金型に、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の粉体を振りかけて、発泡させる。なお、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の粉体を振りかける時の金型温度は、特に制限されることなく、200℃以上とすることが好ましく、220℃以上とすることがより好ましく、300℃以下とすることが好ましく、280℃以下とすることがより好ましい。そして、5秒以上30秒以下の間放置した後、余剰の発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を振り落とし、さらに、任意の温度下、30秒以上3分以下の間放置する。その後、金型を10℃以上60℃以下に冷却し、得られた表皮を金型から脱型する。脱型された表皮は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されてなり、上記製造方法の一例では、得られた表皮は、全体として金型の形状をかたどったシート状の2層構造の成形体である。このように、本発明の表皮の製造方法における第1工程および第2工程として、同一の金型を用いてパウダースラッシュ成形を連続して2回実施すれば、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されてなる表皮を効率良く製造することができる。
【0084】
なお、上記では、本発明の表皮の製造方法により、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側の表面に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が直接接着されてなる表皮が製造される場合について説明したが、本発明の表皮の製造方法はこれに限定されることはない。例えば、本発明の表皮の製造方法は、上述した第1工程および第2工程以外の任意の工程を含むことで、塩化ビニル樹脂成形シート(X)と発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)とが他の樹脂層等を介して接着されてなる表皮を製造することもできる。
【0085】
(積層体)
本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と、上述した本発明の表皮とを有する。そして、本発明の積層体は、発泡ポリウレタン成形体と上述した塩化ビニル樹脂成形シート(X)との間に上述した発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されてなる構造を有する。本発明の積層体は、上述した本発明の表皮を有しているため、高温高圧処理後のクッション性に優れている。
なお、通常、発泡ポリウレタン成形体は、表皮における発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)側に裏打ちされており、発泡ポリウレタン成形体と表皮とは積層方向に隣接して(即ち、発泡ポリウレタン成形体と塩化ビニル樹脂成形シート(X)とは発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を介して積層方向に積層されて)いる。そして、本発明の積層体は、発泡ウレタン成形体と塩化ビニル樹脂成形シート(X)との間に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が介在しているため、熱収縮を良好に抑制することもできる。したがって、本発明の積層体は、例えば、自動車インスツルメントパネルおよびドアトリム等といった自動車内装部品の自動車内装材として好適に用いられ、特に、自動車インスツルメントパネル用に好適に用いられる。
【0086】
ここで、積層方法は、特に限定されることなく、例えば、以下の方法を用いることができる。即ち、表皮の発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が配置されている側の表面上で発泡ポリウレタン成形体の原料となるイソシアネート類とポリオール類などとを反応させて重合を行うと共に、公知の方法によりポリウレタンの発泡を行うことにより、表皮上に発泡ポリウレタン成形体を直接形成する。
【実施例
【0087】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、塩化ビニル樹脂の平均重合度、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の発泡倍率、塩化ビニル樹脂成形シート(X)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重、塩化ビニル樹脂成形シート(X)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚み、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中のアゾジカルボンアミド(ADCA)の残留量、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の発泡空隙率、および表皮のクッション性は、下記の方法で測定または評価した。
【0088】
<平均重合度>
各製造例および製造比較例について、表1に示す配合量に従って、塩化ビニル樹脂粒子と塩化ビニル樹脂微粒子とを混合した。得られた混合物を用いて、JIS K6720-2に準拠して測定を行い、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)(または塩化ビニル樹脂組成物(A))中の塩化ビニル樹脂の平均重合度を求めた。
【0089】
<比重および発泡倍率>
ISO1183に規定される水中置換法により、各製造例で得られた発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)および比較製造例1で得られた非発泡の塩化ビニル樹脂成形シートの比重を測定した。そして、以下の式から、各製造例で使用した発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の発泡倍率を算出した。
発泡倍率=比較製造例1の比重÷各製造例の比重
【0090】
<厚み>
塩化ビニル樹脂成形シート(X)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の断面を光学顕微鏡で観察することにより、厚みを測定した。
【0091】
<ADCAの残留量>
各実施例および比較例で得られた表皮から発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)のみを剥離して回収した。回収した発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を溶剤中に溶解し、測定用試料を調製した。調製された測定用試料を用いて、下記の条件の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を行い、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)中の塩化ビニル樹脂100質量部に対するアゾ化合物としてのアゾジカルボンアミド(ADCA)の残留量を測定した。
測定装置:島津製作所社製「LC-2030C」
溶媒:ジメチルスルホキシド
【0092】
<発泡空隙率およびクッション性>
<<プレス試験>>
各実施例および比較例で得られた表皮を4cm×4cmの寸法に切断して、試験片を作製した。
精密加熱加圧装置(新東工業社製)に上記試験片をセットし、下型に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)側を配置し、上型に塩化ビニル樹脂成形シート(X)側を配置した。次いで、下型の温度を170℃、上型の温度を30℃に設定した。そして、500Nで10秒間および100Nで5秒間の各条件で試験片へのプレスを実施した。
そして、プレス前の試験片、500Nで10秒プレス後の試験片、および100Nで5秒プレス後の試験片のそれぞれについて、下記の方法により、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の発泡空隙率および表皮のクッション性を測定、評価した。
<<発泡空隙率>>
多三次元計測X線CT装置(ヤマト科学社製)を用いて、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)における発泡セルの体積および発泡セル以外の体積の測定を行い、下記式:
空隙率(%)=100×{発泡セルの体積÷(発泡セル以外の部分の体積+発泡セルの体積)}
により、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の空隙率を算出した。
<<クッション性>>
温度23℃/湿度50%RHの環境下で、レスカ社製「TAC-1000」を用いて、プローブの直径:10mm、押付け速度:0.1mm/s、押付け荷重:1200gfの条件にて、試験片のへこみ変位量を測定した。なお、へこみ変位量が大きいほど、表皮がクッション性に優れていることを示す。
【0093】
(製造例1)
<発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の調製>
表1に示す配合成分のうち、可塑剤と、ダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子と、熱分解型発泡剤とを除く成分をヘンシェルミキサーに入れて混合した。そして、混合物の温度が80℃に上昇した時点で上記可塑剤を全て添加し、更に昇温することにより、ドライアップ(可塑剤が、塩化ビニル樹脂である塩化ビニル樹脂粒子に吸収されて、上記混合物がさらさらになった状態をいう。)させた。その後、ドライアップさせた混合物が温度100℃以下に冷却された時点でダスティング剤である塩化ビニル樹脂微粒子を添加し、さらに温度が80℃まで低下した時点で熱分解型発泡剤であるアゾジカルボンアミド(体積平均粒子径:3μm)を添加して、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を調製した。
また、上述の方法に従って、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)中の塩化ビニル樹脂(c)の平均重合度を測定した。結果を表1に示す。
【0094】
<発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の形成>
上述で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を、温度230℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、8秒~20秒程度の任意の時間放置して溶融および発泡させた後、余剰の発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を振り落とした。その後、当該発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を振りかけたシボ付き金型を、温度220℃に設定したオーブン内に静置し、静置から60秒経過した時点で当該シボ付き金型を冷却水で冷却した。金型温度が40℃まで冷却された時点で、縦200mm、横300mmの発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を金型から脱型した。
そして、上述の方法に従って、得られた発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重およびセルの状態を測定または評価した。結果を表1に示す。
【0095】
(製造例2~8)
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)調製時の配合成分を表1に示す通りに変更したこと以外は、製造例1と同様にして、発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を製造した。
そして、製造例1と同様の方法により測定および評価を行なった。結果を表1に示す。
【0096】
(比較製造例1)
<塩化ビニル樹脂組成物(A)の調製および塩化ビニル樹脂成形シート(X)の形成>
発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)調製時に熱分解型発泡剤としてのアゾジカルボンアミド(体積平均粒子径:3μm)を使用せず、シボ付き金型の温度を230℃から260℃に変更し、オーブンの温度を220℃から200℃に変更したこと以外は、製造例1と同様にして、非発泡性の塩化ビニル樹脂組成物(A)および非発泡の塩化ビニル樹脂成形シート(X)を製造した。そして、製造例1と同様の方法により評価を行なった。結果を表1に示す。
さらに、比較製造例1で得られた非発泡の塩化ビニル樹脂成形シート(X)の比重、および上述した製造例1~8で得られた発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の比重から、各製造例における発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)の発泡倍率を算出した。結果を表1に示す。
【0097】
(実施例1)
<表皮の作製>
[第1工程(塩化ビニル樹脂成形シート(X)の形成)]
上述の比較製造例1で得られた塩化ビニル樹脂組成物(A)を、温度260℃に加熱したシボ付き金型に振りかけ、8秒~20秒程度の任意の時間放置して溶融させた後、余剰の塩化ビニル樹脂組成物(A)を振り落とした。
【0098】
[第2工程(発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の形成)]
第1工程に引き続き、塩化ビニル樹脂成形シート(X)が付いた状態のシボ付き金型の当該塩化ビニル樹脂成形シート(X)の上から、製造例2で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を更に振りかけ、8秒~20秒程度の任意の時間放置して溶融および発泡させた後、余剰の発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を振り落とした。その後、当該シボ付き金型を、温度220℃に設定したオーブン内に静置し、静置から60秒経過した時点で当該シボ付き金型を冷却水で冷却した。金型温度が40℃まで冷却された時点で、縦200mm、横300mmの表皮を金型から脱型した。得られた表皮は、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚み方向の一方側に発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)が積層されてなる、2層構造のシートであった。そして、当該表皮を構成する塩化ビニル樹脂成形シート(X)および発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)のそれぞれの厚みを測定しところ、塩化ビニル樹脂成形シート(X)の厚みは0.8mm、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の厚みは2.5mmであった。なお、得られた表皮から、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)を剥離し、上述した方法により比重を測定したところ、製造例2で得られた発泡塩化ビニル樹脂成形シートの比重と同じ値であることを確認した。
そして、得られた表皮を用いて、発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の発泡空隙率、および表皮のクッション性を測定および評価した。結果を表2に示す。
なお、発泡空隙率およびクッション性については、プレス前および500Nで10秒間プレス後の試験片のみで測定および評価を行った。
【0099】
(実施例2~5)
表皮の作製における第2工程(発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の形成)の際に、実施例2では製造例3で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用し、実施例3では製造例4で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用し、実施例4では製造例5で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用し、実施例5では製造例6で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、表皮を作製した。そして、実施例1と同様にして、各種の測定および評価を行なった。結果を表2に示す。
なお、実施例3では、発泡空隙率およびクッション性について、プレス前、500Nで10秒間プレス後、および100Nで5秒間プレス後の試験片で測定および評価を行った。
また、実施例4~5では、発泡空隙率およびクッション性について、プレス前および100Nで5秒間プレス後の試験片のみで測定および評価を行った。
また、実施例2~4では、得られた表皮を用いて、ADCAの残留量の測定を行った。
【0100】
(比較例1~3)
表皮の作製における第2工程(発泡塩化ビニル樹脂成形シート(Y)の形成)の際に、比較例1では製造例1で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用し、比較例2では製造例7で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用し、比較例3では製造例8で得られた発泡性塩化ビニル樹脂組成物(B)を使用したこと以外は、実施例1と同様にして、表皮および積層体を作製した。そして、実施例1と同様にして、各種の測定および評価を行なった。結果を表2に示す。
なお、比較例2~3では、発泡空隙率の測定および評価は行なわず、クッション性については、プレス前の試験片のみで測定および評価を行った。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
1)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST(登録商標)1000Z」(懸濁重合法、平均重合度:1000、平均粒子径:140μm)
2)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST(登録商標)1300S」(懸濁重合法、平均重合度:1300、平均粒子径:115μm)
3)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST(登録商標)1700ZI」(懸濁重合法、平均重合度:1700、平均粒子径:130μm)
4)新第一塩ビ社製、製品名「ZEST PQLTX」(乳化重合法で調製、平均重合度:800、平均粒子径:1.8μm)
5)三菱ガス化学製、トリ-2-エチルヘキシルトリメリテート、製品名「TOTM」
6)ADEKA社製、製品名「アデカサイザー O-130S」
7)協和化学工業社製、製品名「アルカマイザー(登録商標)5」
8)水澤化学工業社製、製品名「MIZUKALIZER DS」
9)昭和電工社製、製品名「カレンズDK-1」
10)堺化学工業社、製品名「SAKAI SZ2000」
11)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ LA-72」
12)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ SC-131」
13)ADEKA社製、製品名「アデカスタブ LS-12」
14)大塚化学社製、製品名「UNIFOAM AZ VI-40」
15)大塚化学社製、製品名「UNIFOAM AZ P-4」
16)三菱ケミカル社製、製品名「メタブレンL-1000」
17)大日精化社製、製品名「DA PX 1720(A)ブラック」
18)大日精化社製、製品名「DA P 1050ホワイト」
【0104】
表2より、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂成形シートの厚み方向の一方側に、平均重合度が所定値以上である塩化ビニル樹脂を含み、且つ、比重が所定値以下である発泡塩化ビニル樹脂成形シートを配置してなる実施例1~5の表皮は、発泡塩化ビニル樹脂成形シート中の塩化ビニル樹脂の平均重合度が所定値に満たない比較例1の表皮と比較して、高温高圧処理後のクッション性に優れていることが分かる。
なお、発泡塩化ビニル樹脂成形シートの比重が所定値を超える比較例2および3の表皮は、高温高圧処理を施される前の時点で、既にクッション性が不十分であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明によれば、高温高圧処理後のクッション性に優れた表皮を提供することができる。
また、本発明によれば、当該表皮を備え、高温高圧処理後のクッション性に優れた積層体を提供することができる。