(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】シリカゾル、シリカゾルの製造方法、研磨組成物、研磨方法及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/14 20060101AFI20240910BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240910BHJP
C09K 3/14 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C01B33/14
H01L21/304 622B
H01L21/304 622D
H01L21/304 622X
C09K3/14 550D
(21)【出願番号】P 2020141034
(22)【出願日】2020-08-24
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】出島 栄治
(72)【発明者】
【氏名】京谷 智裕
(72)【発明者】
【氏名】河瀬 康弘
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/087965(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131874(WO,A1)
【文献】特開2014-129196(JP,A)
【文献】特開2004-082225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00-33/193
H01L 21/304
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DLS法により測定した平均2次粒子径/BET法により測定した平均1次粒子径で算出される会合比が4以下であるシリカ粒子を含み、
pHが6.0~8.0であり、等電点がpH2.4以下である、シリカゾル。
【請求項2】
等電点がpH2.0以下である、請求項1に記載のシリカゾル。
【請求項3】
前記シリカ粒子のcv値が10~50である、請求項1又は2に記載のシリカゾル。
【請求項4】
前記シリカ粒子の平均2次粒子径が10nm~150nmである、請求項1~3のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項5】
前記シリカ粒子の平均1次粒子径が5nm~75nmである、請求項1~4のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項6】
アルカリ触媒の含有率が10ppm以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項7】
金属不純物含有率が1ppm以下である、請求項1~6のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項8】
前記シリカ粒子がテトラアルコキシシラン縮合物を主成分とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項9】
前記テトラアルコキシシラン縮合物がテトラメトキシシラン縮合物を含む、請求項8に記載のシリカゾル。
【請求項10】
前記シリカ粒子の含有率が、シリカゾル全量中、3質量%~50質量%である、請求項1~9のいずれか1項に記載のシリカゾル。
【請求項11】
シリカゾルを180℃以上で2時間以上加熱する工程を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項12】
前記加熱前にシリカゾルのアンモニアの含有率を10ppm以下にする工程を含む、請求項11に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項13】
前記加熱を、pH6.0~8.0で行う、請求項11に記載のシリカゾルの製造方法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれか1項に記載のシリカゾルを含む、研磨組成物。
【請求項15】
請求項
14に記載の研磨組成物を用いて研磨する、研磨方法。
【請求項16】
請求項
14に記載の研磨組成物を用いて研磨する工程を含む、半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカゾル、シリカゾルの製造方法、研磨組成物、研磨方法、半導体ウェハの製造方法及び半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属や無機化合物等の材料の表面を研磨する方法として、研磨液を用いた研磨方法が知られている。中でも、半導体用のプライムシリコンウェハやこれらの再生シリコンウェハの最終仕上げ研磨、及び、半導体デバイス製造時の層間絶縁膜の平坦化、金属プラグの形成、埋め込み配線形成等の化学的機械的研磨(CMP)では、その表面状態が半導体特性に大きく影響するため、これらの部品の表面や端面は、極めて高精度に研磨されることが要求されている。
【0003】
このような精密研磨においては、シリカ粒子を含む研磨組成物が採用されており、その主成分である砥粒として、コロイダルシリカが広く用いられている。コロイダルシリカは、その製造方法の違いにより、四塩化珪素の熱分解によるもの(ヒュームドシリカ等)、水ガラス等の珪酸アルカリの脱イオンによるもの、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応(一般に「ゾルゲル法」と称される)によるもの等が知られている。
【0004】
シリカ粒子を含むシリカゾルの製造方法に関し、これまで多くの検討がなされてきた。例えば、特許文献1~3には、アルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応により製造されたシリカゾルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-60232号公報
【文献】国際公開第2008/123373号
【文献】国際公開第2019/131874号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アルコキシシランの加水分解反応・縮合反応により製造されたシリカゾルは、各種化合物を配合して研磨組成物として研磨に用いられる。この研磨組成物は、配合する化合物の種類や量によってpHが変化し、pH次第でシリカ粒子が凝集・沈降してしまう等、シリカ粒子の分散状態に悪影響を与え、更には研磨に悪影響を及ぼすという課題を有する。
中でも、強酸性の研磨組成物は、pHにより研磨が促進される一方で、シリカ粒子の凝集により研磨に悪影響を及ぼすため、研磨性能が必ずしも十分とは言えなかった。
【0007】
このような課題を解決するため、シリカゾルの等電点のpHを下げる処理を行うことが考えられる。
しかしながら、特許文献1~2に開示されているアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応により製造されたシリカゾルは、シリカゾルの等電点のpHを下げる処理が行われておらず、研磨組成物を強酸性とした際に、シリカ粒子が凝集し、研磨に悪影響を及ぼすという課題を有する。
また、特許文献3に開示されているアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応により製造されたシリカゾルは、加熱によりシリカゾルの等電点のpHが下がっている可能性があるものの、シリカ粒子が長鎖状に連結しているため研磨ムラの原因となりやすい。また、加熱前後でシリカ粒子の2次構造が大きく変化するため、シリカ粒子の分散状態に悪影響を与え、研磨に悪影響を及ぼすという課題を有する。
【0008】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、シリカ粒子の分散状態を維持した強酸性の研磨組成物を得ることができるシリカゾルを提供することにある。また、本発明のもう1つの目的は、加熱前後でシリカ粒子の平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値、会合比の変化が少ない、シリカ粒子の分散状態を維持した強酸性の研磨組成物を得ることができるシリカゾルの製造方法を提供することにある。更に、本発明のもう1つの目的は、強酸性としてもシリカ粒子の分散状態を維持することができ、研磨性能に優れる研磨組成物、並びに、前記研磨組成物を用いた研磨方法及び半導体デバイスの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来のシリカゾルは、研磨組成物として用いた場合、特に、強酸性の研磨組成物として用いた場合に、シリカ粒子の分散状態に悪影響を与え、研磨に悪影響を及ぼすという課題を有していた。しかしながら、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、シリカ粒子の会合比及びシリカゾルの等電点のpHを好適化することで、前述した課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]前記DLS法により測定した平均2次粒子径/BET法により測定した平均1次粒子径で算出される会合比が4以下であるシリカ粒子を含み、等電点がpH2.4以下である、シリカゾル。
[2]等電点がpH2.0以下である、[1]に記載のシリカゾル。
[3]前記シリカ粒子のcv値が10~50である、[1]又は[2]に記載のシリカゾル。
[4]前記シリカ粒子の平均2次粒子径が10nm~150nmである、[1]~[3]のいずれかに記載のシリカゾル。
[5]前記シリカ粒子の平均1次粒子径が5nm~75nmである、[1]~[4]のいずれかに記載のシリカゾル。
[6]アルカリ触媒の含有率が10ppm以下である、[1]~[5]のいずれかに記載のシリカゾル。
[7]金属不純物含有率が1ppm以下である、[1]~[6]のいずれかに記載のシリカゾル。
[8]前記シリカ粒子がテトラアルコキシシラン縮合物を主成分とする、[1]~[7]のいずれかに記載のシリカゾル。
[9]前記テトラアルコキシシラン縮合物がテトラメトキシシラン縮合物を含む、[8]に記載のシリカゾル。
[10]前記シリカ粒子の含有率が、シリカゾル全量中、3質量%~50質量%である、[1]~[9]のいずれかに記載のシリカゾル。
[11]シリカゾルを180℃以上で2時間以上加熱する工程を含む、[1]~[10]のいずれかに記載のシリカゾルの製造方法。
[12]前記加熱前にシリカゾルのアンモニアの含有率を10ppm以下にする工程を含む、[11]に記載のシリカゾルの製造方法。
[13][1]~[10]のいずれかに記載のシリカゾルを含む、研磨組成物。
[14][13]に記載の研磨組成物を用いて研磨する、研磨方法。
[15][13]に記載の研磨組成物を用いて研磨する工程を含む、半導体デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリカゾルは、シリカ粒子の分散状態を維持した強酸性の研磨組成物を得ることができる。また、本発明のシリカゾルは、加熱前後でシリカ粒子の平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値、会合比の変化が少なく、シリカ粒子の分散状態を維持した強酸性の研磨組成物を得ることができる。更に、本発明の研磨組成物は、強酸性としても、シリカ粒子の分散状態を維持することができ、研磨性能に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いる。
【0013】
本発明のシリカゾルは、DLS法により測定した平均2次粒子径/BET法により測定した平均1次粒子径で算出される会合比が4以下であるシリカ粒子を含み、等電点がpH2.4以下である。
【0014】
本発明のシリカゾルは、シリカ粒子及び分散媒を含むことが好ましい。
【0015】
(シリカ粒子)
本発明に係るシリカ粒子の平均1次粒子径は、5nm~75nmが好ましく、10nm~60nmがより好ましい。シリカ粒子の平均1次粒子径が5nm以上であると、シリカゾルの保存安定性に優れる。また、シリカ粒子の平均1次粒子径が75nm以下であると、被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、シリカ粒子の沈降を抑制することができる。
【0016】
シリカ粒子の平均1次粒子径は、BET法により測定する。具体的には、比表面積自動測定装置を用いてシリカ粒子の比表面積を測定し、下記式(1)を用いて平均1次粒子径を算出する。
平均1次粒子径(nm)=6000/(比表面積(m2/g)×密度(g/cm3))
・・・ (1)
【0017】
本発明に係るシリカ粒子の平均1次粒子径は、公知の条件・方法により、所望の範囲に設定することができる。
【0018】
本発明に係るシリカ粒子の平均2次粒子径は、10nm~150nmが好ましく、20nm~100nmがより好ましい。シリカ粒子の平均2次粒子径が10nm以上であると、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れ、シリカゾルの保存安定性に優れる。シリカ粒子の平均2次粒子径が150nm以下であると、研磨時の被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れ、シリカ粒子の沈降を抑制することができる。
【0019】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、DLS法(動的光散乱法)により測定する。具体的には、動的光散乱粒子径測定装置を用いて測定する。
【0020】
シリカ粒子の平均2次粒子径は、公知の条件・方法により、所望の範囲に設定することができる。
【0021】
本発明に係るシリカ粒子のcv値は、10~50が好ましく、15~40がより好ましく、20~35が更に好ましい。シリカ粒子のcv値が10以上であると、被研磨体に対する研磨レートに優れ、被研磨体の生産性に優れる。また、シリカ粒子のcv値が50以下であると、研磨時の被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、研磨後の洗浄における粒子等の除去性に優れる。
【0022】
シリカ粒子のcv値は、動的光散乱粒子径測定装置を用いてシリカ粒子の平均2次粒子径を測定し、下記式(2)を用いて算出する。
cv値=(標準偏差(nm)/平均2次粒子径(nm))×100 ・・・ (2)
【0023】
本発明に係るシリカ粒子の会合比は、4以下であり、1~4が好ましく、1.1~3がより好ましく、1.2~2が更に好ましい。シリカ粒子の会合比が4以下であると、研磨時の被研磨体の表面粗さや傷を低減でき、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。また、シリカ粒子の会合比が1以上であると、被研磨体に対する研磨レートに優れ、被研磨体の生産性に優れる。
【0024】
シリカ粒子の会合比は、前述の測定方法にて測定した平均1次粒子径と前述の測定方法にて測定した平均2次粒子径とから、下記式(3)を用いて算出する。
会合比=平均2次粒子径/平均1次粒子径 ・・・ (3)
【0025】
本発明に係るシリカ粒子の形状としては、例えば、球状、鎖状、繭状(こぶ状や落花生状とも称される)、異形状(例えば、疣状、屈曲状、分岐状等)等が挙げられる。これらのシリカ粒子の形状の中でも、研磨時の被研磨体の表面粗さや傷を低減させたい場合は、球状が好ましく、被研磨体に対する研磨レートをより高めたい場合は、異形状が好ましい。
【0026】
本発明に係るシリカ粒子は、機械的強度、保存安定性に優れることから、細孔を有しないことが好ましい。
シリカ粒子の細孔の有無は、窒素を吸着ガスとした吸着等温線を用いたBET多点法解析により確認する。
【0027】
本発明に係るシリカ粒子は、機械的強度、保存安定性に優れることから、アルコキシシラン縮合物を主成分とすることが好ましく、テトラアルコキシシラン縮合物を主成分とすることがより好ましい。主成分とは、シリカ粒子を構成する全成分100質量%中、50質量%以上であることをいう。
アルコキシシラン縮合物を主成分とするシリカ粒子を得るためには、アルコキシシランを主原料とすることが好ましい。テトラアルコキシシラン縮合物を主成分とするシリカ粒子を得るためには、テトラアルコキシシランを主原料とすることが好ましい。主原料とは、シリカ粒子を構成する全原料100質量%中、50質量%以上であることをいう。
【0028】
(シリカ粒子の製造方法)
本発明に係るシリカ粒子を製造する方法としては、シリカゾルの金属不純物含有率を低減させることができることから、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる方法が好ましく、加水分解反応及び縮合反応を制御しやすいことから、水を含む溶液(A)に、テトラアルコキシシランを含む溶液(B)及びアルカリ触媒を含む溶液(C)を添加し、テトラアルコキシシランを加水分解反応及び縮合反応させる方法が好ましい。
【0029】
溶液(A)は、水を含む。
【0030】
溶液(A)は、反応液中でのテトラアルコキシシランの分散性に優れることから、水以外の溶媒を含むことが好ましい。
溶液(A)中の水以外の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、テトラアルコキシシランを溶解しやすく、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、アルコールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが更に好ましい。
【0031】
溶液(A)は、テトラアルコキシシランの加水分解反応及び縮合反応の反応速度を高めることができることから、アルカリ触媒を含むことが好ましい。
溶液(A)中のアルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすく、金属不純物の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0032】
溶液(A)中の水の濃度は、溶液(A)100質量%中、3質量%~30質量%が好ましく、5質量%~25質量%がより好ましい。溶液(A)中の水の濃度が上記下限値以上であると、テトラアルコキシシランの加水分解反応速度を制御しやすい。また、溶液(A)中の水の濃度が上記上限値以下であると、加水分解反応と縮合反応との反応バランスがよく、粒子形状を制御しやすい。
【0033】
溶液(A)中のアルカリ触媒の濃度は、溶液(A)100質量%中、0.5質量%~2.0質量%が好ましく、0.6質量%~1.5質量%がより好ましい。溶液(A)中のアルカリ触媒の濃度が上記下限値以上であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、得られる分散液中のシリカ粒子の分散安定性に優れる。また、溶液(A)中のアルカリ触媒の濃度が上記上限値以下であると、反応が過度に速く進行せず、反応制御性に優れる。
【0034】
溶液(A)中の水以外の溶媒の濃度は、水とアルカリ触媒の残部とすることが好ましい。
【0035】
溶液(B)は、テトラアルコキシシランを含む。
溶液(B)中のテトラアルコキシシランとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のアルコキシ基の炭素数が1~12のテトラアルコキシシランが挙げられる。これらのテトラアルコキシシランは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのテトラアルコキシシランの中でも、加水分解反応が速く、未反応物が残留し難く、生産性に優れ、安定なシリカゾルを容易に得ることができることから、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましく、テトラメトキシシランがより好ましい。
【0036】
シリカ粒子の原料は、テトラアルコキシシランの低縮合物等のテトラアルコキシシラン以外の原料を用いてもよいが、反応性に優れることから、シリカ粒子を構成する全原料100質量%中、テトラアルコキシシランが50質量%以上で、テトラアルコキシシラン以外の原料が50質量%以下であることが好ましく、テトラアルコキシシランが90質量%以上で、テトラアルコキシシラン以外の原料が10質量%以下であることがより好ましい。
【0037】
溶液(B)は、溶媒を含まずテトラアルコキシシランのみでもよいが、反応液中でのテトラアルコキシシランの分散性に優れることから、溶媒を含むことが好ましい。
溶液(B)中の溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル等が挙げられる。が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、アルコールが好ましく、メタノール、エタノールがより好ましく、メタノールが更に好ましい。
【0038】
溶液(B)のテトラアルコキシシランの濃度は、溶液(B)100質量%中、60質量%~95質量%が好ましく、70質量%~90質量%がより好ましい。溶液(B)のテトラアルコキシシランの濃度が上記下限値以上であると、反応液が均一になりやすい。また、溶液(B)のテトラアルコキシシランの濃度が上記上限値以下であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。
【0039】
溶液(B)の溶媒の濃度は、溶液(B)100質量%中、5質量%~40質量%が好ましく、10質量%~30質量%がより好ましい。溶液(B)の溶媒の濃度が上記下限値以上であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。また、溶液(B)の溶媒の濃度が上記上限値以下であると、反応液が均一になりやすい。
【0040】
溶液(A)の体積に対する時間当たりの溶液(B)の添加速度は、0.05kg/時間/L~1.3kg/時間/Lが好ましく、0.1kg/時間/L~0.8kg/時間/Lがより好ましい。溶液(B)の添加速度が上記下限値以上であると、シリカ粒子の生産性に優れる。また、溶液(B)の添加速度が上記上限値以下であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。
ここで、「kg/時間/L」とは、溶液(A)1Lに対して、1時間当たりに添加する溶液(B)の質量(kg)を表す。
【0041】
溶液(C)は、アルカリ触媒を含む。
溶液(C)中のアルカリ触媒としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アンモニア、尿素、エタノールアミン、テトラメチル水酸化アンモニウム等が挙げられる。これらのアルカリ触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルカリ触媒の中でも、触媒作用に優れ、粒子形状を制御しやすく、金属不純物の混入を抑制することができ、揮発性が高く加水分解反応及び縮合反応後の除去性に優れることから、アンモニアが好ましい。
【0042】
溶液(C)は、反応液中のアルカリ触媒の濃度の変動を小さくすることができることから、溶媒を含むことが好ましい。
溶液(C)中の溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの溶媒の中でも、加水分解反応及び縮合反応で用いるものと副生するものとが同一で、製造上の利便性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0043】
溶液(C)中のアルカリ触媒の濃度は、溶液(C)100質量%中、0.5質量%~10質量%が好ましく、1質量%~6質量%がより好ましい。溶液(C)中のアルカリ触媒の濃度が上記下限値以上であると、反応開始から反応終了まで反応液中のアルカリ触媒の濃度を調整しやすい。また、溶液(C)中のアルカリ触媒の濃度が上記上限値以下であると、反応液中のアルカリ触媒の濃度の変動を小さくすることができる。
【0044】
溶液(C)中の溶媒の濃度は、溶液(C)100質量%中、90質量%~99.5質量%が好ましく、94質量%~99質量%がより好ましい。溶液(C)中の溶媒の濃度が上記下限値以上であると、反応液中のアルカリ触媒の濃度の変動を小さくすることができる。また、溶液(C)中の溶媒の濃度が上記上限値以下であると、反応開始から反応終了まで反応液中のアルカリ触媒の濃度を調整しやすい。
【0045】
溶液(A)の体積に対する時間当たりの溶液(C)の添加速度は、0.02kg/時間/L~0.5kg/時間/Lが好ましく、0.04kg/時間/L~0.3kg/時間/Lがより好ましい。溶液(C)の添加速度が上記下限値以上であると、シリカ粒子の生産性に優れる。また、溶液(C)の添加速度が上記上限値以下であると、ゲル状物の生成を抑制することができる。
ここで、「kg/時間/L」とは、溶液(A)1Lに対して、1時間当たりに添加する溶液(C)の質量(kg)を表す。
【0046】
溶液(B)及び溶液(C)の添加は、溶液(A)の液中に行うことが好ましい。溶液(B)及び溶液(C)を溶液(A)の液中に添加することで、アンモニアに代表される揮発性が高いアルカリ触媒を用いた場合、かつ、高い反応温度で加水分解反応及び縮合反応を進めたい場合に、反応液中での各成分の混合性が高まり、気中での異常反応を抑制できると共に、粒子径を制御しやすくなる。液中に添加するとは、液面以下に添加することをいい、例えば、溶液(B)の供給出口及び溶液(C)の供給出口を溶液(A)の液面以下とすることで、溶液(B)及び溶液(C)を溶液(A)の液中に添加することができる。
【0047】
溶液(B)と溶液(C)の添加のタイミングは、同一であってもよく、交互のように異なっていてもよいが、反応組成の変動が少なく、操作が煩雑にならないことから、同一であることが好ましい。
【0048】
加水分解反応及び縮合反応の反応温度は、10℃~80℃が好ましく、20℃~65℃がより好ましい。反応温度が上記下限値以上であると、反応液中の溶媒の凝固を抑制することができる。また、反応温度が上記上限値以下であると、突沸や溶媒の揮発を抑制でき、反応液組成の変動を少なくすることができる。
【0049】
加水分解反応及び縮合反応の反応系内の水の濃度は、反応系内の全量100質量%中、3質量%~30質量%に維持することが好ましく、5質量%~25質量%に維持することがより好ましい。反応系内の水の濃度が上記下限値以上であると、テトラアルコキシシランの加水分解反応速度を制御しやすい。また、反応系内の水の濃度が上記上限値以下であると、加水分解反応と縮合反応との反応バランスがよく、粒子形状を制御しやすい。
【0050】
加水分解反応及び縮合反応の反応系内のアルカリ触媒の濃度は、反応系内の全量100質量%中、0.5質量%~2.0質量%に維持することが好ましく、0.6質量%~1.5質量%に維持することがより好ましい。反応系内のアルカリ触媒の濃度が下限値以上であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、分散液中のシリカ粒子の分散安定性に優れる。また、反応系内のアルカリ触媒の濃度が上記上限値以下であると、反応が過度に速く進行せず、反応制御性に優れる。
【0051】
本発明に係るシリカ粒子の製造方法は、不必要な成分を除去し、必要な成分を添加することができることから、更に、上記加水分解反応及び縮合反応工程後に、得られたシリカ粒子の分散液を濃縮し、分散媒を添加する工程を含むことが好ましい。
【0052】
シリカ粒子の分散液の濃縮と分散媒の添加とはいずれを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。
【0053】
シリカ粒子の分散液を濃縮する方法は特に限定されず、例えば、加熱濃縮法、膜濃縮法等が挙げられる。
加熱濃縮法によってシリカ粒子の分散液を濃縮するには、分散液を常圧下又は減圧下で加熱濃縮すればよい。
膜濃縮法によってシリカ粒子の分散液を濃縮するには、限外濾過法による膜分離が好ましい。ここで用いる限外濾過膜の分画分子量は、分散液中のシリカ粒子の粒子径に合わせて選択する。
限外濾過膜の材質としては、例えば、ポリスルホン、ポリアクリルニトリル、焼結金属、セラミック、カーボン等が挙げられる。限外濾過膜の形態としては、例えば、スパイラル型、チューブラー型、中空糸型等が挙げられる。
【0054】
また、シリカ粒子の分散液に添加する分散媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール等が挙げられる。これらの分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの分散媒の中でも、シリカ粒子との親和性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0055】
(シリカゾル)
本発明のシリカゾルは、等電点がpH2.4以下である。本発明のシリカゾルの等電点はpH0~2.2が好ましく、pH0.1~2.0がより好ましい。等電点がpH2.4以下であると、強酸性の研磨組成物中のシリカ粒子の分散性に優れる。また、等電点がpH0以上であると、シリカゾルの製造が容易となる。
シリカゾルの等電点のpHは、25℃の条件で、ゼータ電位測定装置を用いて測定する。
【0056】
シリカゾル中の分散媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール等が挙げられる。これらのシリカゾル中の分散媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのシリカゾル中の分散媒の中でも、シリカ粒子との親和性に優れることから、水、アルコールが好ましく、水がより好ましい。
【0057】
本発明のシリカゾル中のシリカ粒子の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、3質量%~50質量%が好ましく、4質量%~40質量%がより好ましく、5質量%~30質量%が更に好ましい。シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が3質量%以上であると、被研磨体に対する研磨レートに優れる。また、シリカゾル中のシリカ粒子の含有率が50質量%以下であると、シリカゾルや研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、シリカゾルや研磨組成物の保存安定性に優れる。
【0058】
本発明のシリカゾル中の分散媒の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、50質量%~97質量%が好ましく、60質量%~96質量%がより好ましく、70質量%~95質量%が更に好ましい。シリカゾル中の分散媒の含有率が50質量%以上であると、シリカゾルや研磨組成物中のシリカ粒子の凝集を抑制することができ、シリカゾルや研磨組成物の保存安定性に優れる。また、シリカゾル中の分散媒の含有率が97質量%以下であると、被研磨体に対する研磨レートに優れる。
【0059】
シリカゾル中のシリカ粒子や分散媒の含有率は、得られたシリカ粒子の分散液中の成分のうち、不必要な成分を除去し、必要な成分を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0060】
本発明のシリカゾルは、シリカ粒子及び分散媒以外に、その性能を損なわない範囲において、必要に応じて、酸化剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、pH緩衝剤、界面活性剤、キレート剤、抗菌殺生物剤等の他の成分を含んでもよい。
特に、シリカゾルの保存安定性に優れることから、シリカゾル中に抗菌殺生物剤を含ませることが好ましい。
【0061】
抗菌殺生物剤としては、例えば、過酸化水素、アンモニア、第四級アンモニウム水酸化物、第四級アンモニウム塩、エチレンジアミン、グルタルアルデヒド、過酸化水素、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、亜塩素酸ナトリウム等が挙げられる。これらの抗菌殺生物剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの抗菌殺生物剤の中でも、シリカゾルとの親和性に優れることから、過酸化水素が好ましい。
抗菌殺生物剤は、一般に殺菌剤と言われるものも含む。
【0062】
シリカゾル中の抗菌殺生物剤の含有率は、シリカゾル全量100質量%中、0.0001質量%~10質量%が好ましく、0.001質量%~1質量%がより好ましい。シリカゾル中の抗菌殺生物剤の含有率が0.0001質量%以上であると、シリカゾルの保存安定性に優れる。シリカゾル中の抗菌殺生物剤の含有率が10質量%以下であると、シリカゾルの本来の性能を損なわない。
【0063】
本発明のシリカゾルのpHは、6.0~8.0が好ましく、6.5~7.8がより好ましい。シリカゾルのpHが6.0以上であると、分散安定性に優れ、シリカ粒子の凝集を抑制することができる。また、シリカゾルのpHが8.0以下であると、シリカ粒子の溶解を防ぎ、長期間の保存安定性に優れる。
シリカゾルのpHは、アルカリ触媒を除去したり、pH調整剤を添加したりすることで、所望の範囲に設定することができる。
【0064】
本発明のシリカゾル中の金属不純物含有率は、1ppm以下が好ましく、0.4ppm以下がより好ましい。
【0065】
半導体デバイスの研磨において、金属不純物が被研磨体の表面に付着、汚染することで、被研磨体の特性に悪影響を及ぼすと共に、被研磨体の内部に拡散して品質が劣化するため、このような被研磨体によって製造された半導体デバイスの性能が著しく低下する。
また、シリカゾル中でシリカ粒子と金属不純物とが共存すると、酸性を示す表面シラノール基と金属不純物とが配位的な相互作用が発生し、表面シラノール基の化学的性質(酸性度等)を変化させたり、シリカ粒子表面の立体的な環境(シリカ粒子の凝集のしやすさ等)を変化させたり、研磨レートに影響を及ぼす。
【0066】
シリカゾル中の金属不純物含有率は、高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により測定する。具体的には、シリカ粒子0.4g含むシリカゾルを正確に量り取り、硫酸とフッ酸を加え、加温、溶解、蒸発させ、残存した硫酸滴に総量が正確に10gとなるよう純水を加えて試験液を作成し、高周波誘導結合プラズマ質量分析装置を用いて測定する。対象の金属は、ナトリウム、カリウム、鉄、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、コバルト、クロム、銅、マンガン、鉛、チタン、銀、ニッケルとし、これらの金属の含有率の合計を金属不純物含有率とする。
【0067】
シリカゾル中の金属不純物含有率は、アルコキシシランを主原料として加水分解反応及び縮合反応を行ってシリカ粒子を得ることで、1ppm以下とすることができる。
水ガラス等の珪酸アルカリの脱イオンによる方法では、原料由来のナトリウム等が残存するため、シリカゾル中の金属不純物含有率を1ppm以下とすることが極めて困難である。
【0068】
本発明のシリカゾル中のアンモニア等のアルカリ触媒の含有率は、後述する加熱の前後でシリカ粒子の平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値、会合比の変化を少なくすることができることから、50ppm以下が好ましく、10ppm以下がより好ましい。
【0069】
シリカゾル中のアルカリ触媒の含有率は、シリカ粒子の製造後、後述する加熱の前にアルカリ触媒を除去することで、50ppm以下とすることができる。
【0070】
(シリカゾルの製造方法)
本発明のシリカゾルの製造方法は、等電点がpH2.4以下のシリカゾルを得ることができることから、シリカゾルを180℃以上で2時間以上加熱する工程を含むことが好ましい。
【0071】
加熱前のシリカゾルは、前述したシリカ粒子の分散液をそのまま用いてもよく、シリカ粒子の分散液中の成分のうち、不必要な成分の除去や必要な成分の添加をして製造してもよいが、シリカ粒子の平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値、会合比の変化を少なくすることができ、シリカゾルの分散安定性に優れることから、加熱前にシリカゾルのアンモニアの含有率を50ppm以下にすることが好ましく、10ppm以下にすることがより好ましい。
シリカゾルの加熱前にシリカゾルのアンモニアの含有率を50ppm以下にするには、前述の加熱濃縮等により、アンモニアを揮発させて除去する方法が挙げられる。
【0072】
シリカゾルの加熱の温度は、180℃以上が好ましく、180℃~300℃が好ましく、190℃~250℃がより好ましい。加熱の温度が180℃以上であると、等電点がpH2.4以下のシリカゾルを得ることができる。また、加熱の温度が300℃以下であると、加熱の前後でシリカ粒子の平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値、会合比の変化を少なくすることができ、シリカゾルの分散安定性に優れる。
【0073】
加熱時の圧力は、1.0MPa以上が好ましく、1.0MPa~9.4MPaがより好ましく、1.3MPa~4.3MPaが更に好ましい。加熱時の圧力が1.0MPa以上であると、等電点がpH2.4以下のシリカゾルを得ることができる。また、加熱時の圧力が9.4MPa以下であると、加熱の前後でシリカ粒子の平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値、会合比の変化を少なくすることができ、シリカゾルの分散安定性に優れる。
加圧は、密閉した状態でシリカゾルを分散媒の沸点以上に加熱すればよい。密閉した状態で水に分散させたシリカゾルを100℃以上に加熱した場合、圧力は、その温度の飽和水蒸気圧となる。
【0074】
加熱の時間は、2時間以上が好ましく、2時間~10時間がより好ましく、4時間~8時間が更に好ましい。加熱の時間が2時間以上であると、等電点がpH2.4以下のシリカゾルを得ることができる。また、加熱の時間が10時間以下であると、加熱の前後でシリカ粒子の平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値、会合比の変化を少なくすることができ、シリカゾルの分散安定性に優れる。
【0075】
加熱は、加熱の前後でシリカ粒子の平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値、会合比の変化を少なくすることができ、シリカゾルの分散安定性に優れることから、水分散液中で行うことがより好ましい。
【0076】
加熱を水分散液中で行う際のpHは、6.0~8.0が好ましく、6.5~7.8がより好ましい。pHが6.0以上であると、シリカゾルのゲル化を抑制することができる。また、pHが8.0以下であると、シリカ粒子の平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値、会合比の変化を少なくすることができ、シリカゾルの分散安定性に優れる。
【0077】
(研磨組成物)
本発明の研磨組成物は、本発明のシリカゾルを含むものであり、必要に応じて、公知の各主成分を含んでもよい。
【0078】
本発明の研磨組成物は、強酸性にしてもシリカ粒子の分散状態を維持することができることから、酸で化学的に作用する研磨に好適に用いることができ、具体的には、シリコン酸化膜の化学的機械的研磨が好ましく、二酸化ケイ素膜の化学的機械的研磨がより好ましい。
【0079】
研磨組成物のpHは、シリカゾルの等電点のpHを勘案し、2.4以下が好ましく、
0~2.2がより好ましく、pH0.1~2.0が更に好ましい。研磨組成物のpHは、酸成分を添加することで、所望の範囲に設定することができる。
【0080】
本発明の研磨組成物は、本発明のシリカゾル、及び、必要に応じて、各種成分を混合することで得られるが、保管、運搬を考慮し、一旦高濃度で調製し、研磨直前に水等で希釈してもよい。
【0081】
(研磨方法)
本発明の研磨方法は、本発明の研磨組成物を用いて研磨する方法である。
具体的な研磨の方法としては、例えば、被研磨体の表面を研磨パッドに押し付け、研磨パッド上に本発明の研磨組成物を滴下し、被研磨体の表面を研磨する方法が挙げられる。
【0082】
(半導体デバイスの製造方法)
本発明の半導体デバイスの製造方法は、本発明の研磨組成物を用いて研磨する工程を含む方法であり、具体的な研磨方法は、前述した通りである。
【0083】
(用途)
本発明のシリカゾルは、研磨用途に好適に用いることができ、例えば、シリコンウェハ等の半導体材料の研磨、ハードディスク基板等の電子材料の研磨、集積回路を製造する際の平坦化工程における研磨(化学的機械的研磨)、フォトマスクや液晶に用いる合成石英ガラス基板の研磨、磁気ディスク基板の研磨等に用いることができる。中でも化学的機械的研磨に特に好適に用いることができる。
【実施例】
【0084】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0085】
(平均1次粒子径の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカゾルを150℃で乾燥し、比表面積自動測定装置「BELSORP-MR1」(機種名、マイクロトラック・ベル株式会社)を用いて、シリカ粒子の比表面積を測定し、下記式(1)を用い、密度を2.2g/cm3とし、シリカ粒子の平均1次粒子径を算出した。
平均1次粒子径(nm)=6000/(比表面積(m2/g)×密度(g/cm3))
・・・ (1)
【0086】
(平均2次粒子径、cv値の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカゾルを、動的光散乱粒子径測定装置「ゼーターサイザーナノZS」(機種名、マルバーン社製)を用いて、シリカ粒子の平均2次粒子径を測定し、下記式(2)を用いてcv値を算出した。
cv値=(標準偏差(nm)/平均2次粒子径(nm))×100 ・・・ (2)
【0087】
(会合比の算出)
測定した平均1次粒子径と平均2次粒子径とから、下記式(3)を用いて会合比を算出した。
会合比=平均2次粒子径/平均1次粒子径 ・・・ (3)
【0088】
(等電点の測定)
実施例及び比較例で得られたシリカゾルを、25℃の条件で、ゼータ電位測定装置(機種名「ゼーターサイザーナノZS」、マルバーン社製)を用いて、シリカゾルの等電点のpHを測定した。
【0089】
[比較例1]
純水8.7質量部、メタノール74.6質量部及び29質量%アンモニア水3.6質量部を混合した溶液(A)の液中に、テトラメトキシシラン100質量部及びメタノール33.4質量部を混合した溶液(B)並びに純水37.4質量部及び29質量%アンモニア水5.7量部を混合した溶液(C)を、287分かけてそれぞれ等速で添加した。滴下中、反応液の温度を40℃に保ったまま、反応液の撹拌を続けた。滴下終了後、反応液の温度を40℃に保ったまま、更に反応液を30分間撹拌し、シリカ粒子の分散液を得た。
得られたシリカ粒子の分散液を、シリカ粒子の含有率が約20質量%になるように、液量を純水追加で調整しながら、分散媒の沸点付近まで温度を上げてメタノールとアンモニアの除去を行い、アンモニアが検出限界以下(10ppm以下)でシリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカゾルAを得た。
得られたシリカゾルAの評価結果を、表1に示す。
【0090】
[実施例1]
比較例1で得られたシリカゾルAを密閉容器に入れ、200℃で3時間加熱し、実施例1のシリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0091】
[実施例2、比較例2~10]
加熱温度、加熱時間を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に操作し、それぞれ実施例2、及び比較例2~10のシリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0092】
[比較例11]
純水22.5質量部、メタノール187.6質量部及び29質量%アンモニア水8.3質量部を混合した溶液(A)の液中に、テトラメトキシシラン100質量部及びメタノール33.4質量部を混合した溶液(B)並びに純水37.8質量部及び29質量%アンモニア水5.2量部を混合した溶液(C)を、109分かけてそれぞれ等速で添加した。滴下中、反応液の温度を31℃に保ったまま、反応液の撹拌を続けた。滴下終了後、反応液の温度を31℃に保ったまま、更に反応液を30分間撹拌し、シリカ粒子の分散液を得た。
得られたシリカ粒子の分散液を、シリカ粒子の含有率が約20質量%になるように、液量を純水追加で調整しながら、分散媒の沸点付近まで温度を上げてメタノールとアンモニアの除去を行い、アンモニアが検出限界以下(10ppm以下)でシリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカゾルBを得た。
得られたシリカゾルBの評価結果を、表1に示す。
【0093】
[実施例3]
比較例11で得られたシリカゾルBを密閉容器に入れ、200℃で5時間加熱し、実施例3のシリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0094】
[比較例12~13]
加熱温度、加熱時間を表1のように変更した以外は、実施例3と同様に操作し、それぞれ比較例12~13のシリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0095】
[比較例14]
純水11.6質量部、メタノール77.7質量部及び29質量%アンモニア水3.2質量部を混合した溶液(A)の液中に、テトラメトキシシラン100質量部及びメタノール33.2質量部を混合した溶液(B)並びに純水31.9質量部及び29質量%アンモニア水5.3量部を混合した溶液(C)を、225分かけてそれぞれ等速で添加した。滴下中、反応液の温度を37℃に保ったまま、反応液の撹拌を続けた。滴下終了後、反応液の温度を37℃に保ったまま、更に反応液を30分間撹拌し、シリカ粒子の分散液を得た。
得られたシリカ粒子の分散液を、シリカ粒子の含有率が約20質量%になるように、液量を純水追加で調整しながら、分散媒の沸点付近まで温度を上げてメタノールとアンモニアの除去を行い、アンモニアが検出限界以下(10ppm以下)でシリカ粒子の含有率が約20質量%のシリカゾルCを得た。
得られたシリカゾルCの評価結果を、表1に示す。
【0096】
[実施例4]
比較例14で得られたシリカゾルCを密閉容器に入れ、200℃で5時間加熱し、実施例4のシリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0097】
[比較例15]
市販のシリカゾル(商品名「PL-3」、扶桑化学工業株式会社製)をそのままシリカゾルDとして用いた。
用いたシリカゾルDの評価結果を、表1に示す。
【0098】
[実施例5]
比較例15で用いたシリカゾルDを密閉容器に入れ、200℃で5時間加熱し、実施例5のシリカゾルを得た。
【0099】
[比較例16~17]
加熱温度、加熱時間を表1のように変更した以外は、実施例5と同様に操作し、それぞれ比較例16~17のシリカゾルを得た。
得られたシリカゾルの評価結果を、表1に示す。
【0100】
【0101】
表1から分かるように、シリカゾルの加熱前後でシリカ粒子の平均1次粒子径、平均2次粒子径、cv値、会合比の変化がほぼないことが確認できた。
また、実施例で得られたシリカゾルは、比較例で得られたシリカゾルと比較して、等電点のpHを下げることができた。そのため、実施例で得られたシリカゾルによれば、シリカ粒子の分散状態を維持した強酸性の研磨組成物を得ることができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明のシリカゾルは、研磨用途に好適に用いることができる。例えば、シリコンウェハ等の半導体材料の研磨、ハードディスク基板等の電子材料の研磨、集積回路を製造する際の平坦化工程における研磨(化学的機械的研磨)、フォトマスクや液晶に用いる合成石英ガラス基板の研磨、磁気ディスク基板の研磨等に用いることができる。中でも化学的機械的研磨に特に好適に用いることができる。