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特許7552192データ生成方法、荷電粒子ビーム照射装置及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】データ生成方法、荷電粒子ビーム照射装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240910BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240910BHJP
   H01J 37/305 20060101ALI20240910BHJP
   G06T 11/20 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01L21/30 541E
G03F7/20 504
H01L21/30 541W
H01J37/305 B
G06T11/20 300
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020159904
(22)【出願日】2020-09-24
(65)【公開番号】P2022053208
(43)【公開日】2022-04-05
【審査請求日】2023-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】安井 健一
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-149036(JP,A)
【文献】特開2020-064911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数の領域の各々におけるポリゴンによる被覆率を計算するデータ生成方法であって、
パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割し、
分割後の複数のパラメトリック曲線の各々について、該パラメトリック曲線の制御点の端点を結ぶ線分と該パラメトリック曲線とで囲まれた領域の面積を算出し、
前記制御点の端点を結ぶ線分を一辺とし、算出した前記面積と同等の面積を有する図形の頂点の位置を算出し、
前記頂点を用いて前記ポリゴンを生成する、データ生成方法。
【請求項2】
前記パラメトリック曲線はベジェ曲線であることを特徴とする請求項1に記載のデータ生成方法。
【請求項3】
前記図形は、前記制御点の端点を結ぶ線分を底辺とする台形又は三角形であることを特徴とする請求項2に記載のデータ生成方法。
【請求項4】
前記パラメトリック曲線の制御点を頂点とする図形を囲うバウンディングボックスのサイズが所定値以下となるまで、パラメトリック曲線の分割を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のデータ生成方法。
【請求項5】
荷電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数の領域の各々におけるポリゴンによる被覆率を計算するステップをコンピュータに実行させるプログラムであって、
パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割するステップと、
分割後の複数のパラメトリック曲線の各々について、該パラメトリック曲線の制御点の端点を結ぶ線分と該パラメトリック曲線とで囲まれた領域の面積を算出するステップと、
前記制御点の端点を結ぶ線分を一辺とし、算出した前記面積と同じ面積を有する図形の頂点の位置を算出するステップと、
前記頂点を用いて前記ポリゴンを生成するステップと、
を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【請求項6】
対象物上に荷電粒子ビームを照射する照射部と、
パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割し、分割後の複数のパラメトリック曲線の各々について、該パラメトリック曲線の制御点の端点を結ぶ線分と該パラメトリック曲線とで囲まれた領域の面積を算出し、前記制御点の端点を結ぶ線分を一辺とし、算出した前記面積と同じ面積を有する図形の頂点の位置を算出し、前記頂点を用いてポリゴンを生成し、前記荷電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数の領域の各々における前記ポリゴンによる被覆率を計算し、前記被覆率に基づいて各領域の照射量を算出し、算出した照射量となるように前記照射部を制御する制御部と、
を備える荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項7】
荷電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数の領域の各々におけるポリゴンによる被覆率を計算するデータ生成方法であって、
パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割し、
分割後の複数のパラメトリック曲線の各々に対応する複数の制御点の内、荷電粒子ビームの多重描画のパス毎に異なる制御点を使用し、前記パス毎に異なる形状の前記ポリゴンを生成し、
前記パス毎に、前記ポリゴンによる被覆率を計算し、
前記パラメトリック曲線はベジェ曲線であり、
前記多重描画のnパス目(nは1以上の整数)では、前記複数の制御点の全てを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成し、
前記多重描画のmパス目(mは1以上かつn以外の整数)では、前記複数の制御点の端点のみを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成する、データ生成方法。
【請求項8】
荷電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数の領域の各々におけるポリゴンによる被覆率を計算するデータ生成方法であって、
パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割し、
分割後の複数のパラメトリック曲線の各々に対応する複数の制御点の内、荷電粒子ビームの多重描画のパス毎に異なる制御点を使用し、前記パス毎に異なる形状の前記ポリゴンを生成し、
前記パス毎に、前記ポリゴンによる被覆率を計算し、
前記パラメトリック曲線はベジェ曲線であり、
前記多重描画のnパス目(nは1以上の整数)では、前記複数の制御点の端点と、前記端点以外の制御点のうち第1制御点とを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成し、
前記多重描画のmパス目(mは1以上かつn以外の整数)では、前記複数の制御点の端点と、前記端点以外の制御点のうち前記第1制御点とは異なる第2制御点とを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成する、データ生成方法。
【請求項9】
前記パラメトリック曲線の制御点を頂点とする図形を囲うバウンディングボックスのサイズが所定値以下となるまで、パラメトリック曲線の分割を行うことを特徴とする請求項7又は8に記載のデータ生成方法。
【請求項10】
電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数の領域の各々におけるポリゴンによる被覆率を計算するステップをコンピュータに実行させるプログラムであって、
パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割するステップと、
分割後の複数のパラメトリック曲線の各々に対応する複数の制御点の少なくとも一部を使用し、荷電粒子ビームの多重描画のパス毎に異なる形状のポリゴンを生成するステップと、
前記パス毎に、前記ポリゴンによる被覆率を計算するステップと、
を前記コンピュータに実行させ
前記パラメトリック曲線はベジェ曲線であり、
前記多重描画のnパス目(nは1以上の整数)では、前記複数の制御点の全てを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成し、
前記多重描画のmパス目(mは1以上かつn以外の整数)では、前記複数の制御点の端点のみを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成する、プログラム。
【請求項11】
電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数の領域の各々におけるポリゴンによる被覆率を計算するステップをコンピュータに実行させるプログラムであって、
パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割するステップと、
分割後の複数のパラメトリック曲線の各々に対応する複数の制御点の少なくとも一部を使用し、荷電粒子ビームの多重描画のパス毎に異なる形状のポリゴンを生成するステップと、
前記パス毎に、前記ポリゴンによる被覆率を計算するステップと、
を前記コンピュータに実行させ
前記パラメトリック曲線はベジェ曲線であり、
前記多重描画のnパス目(nは1以上の整数)では、前記複数の制御点の端点と、前記端点以外の制御点のうち第1制御点とを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成し、
前記多重描画のmパス目(mは1以上かつn以外の整数)では、前記複数の制御点の端点と、前記端点以外の制御点のうち前記第1制御点とは異なる第2制御点とを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成する、プログラム。
【請求項12】
対象物上に荷電粒子ビームを照射する照射部と、
パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割し、分割後の複数のパラメトリック曲線の各々に対応する複数の制御点の少なくとも一部を使用し、前記荷電粒子ビームの多重描画のパス毎に異なる形状のポリゴンを生成し、前記パス毎に、前記荷電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数の領域の各々における前記ポリゴンによる被覆率を計算し、前記被覆率に基づいて各領域の照射量を算出し、算出した照射量となるように前記照射部を制御する制御部と、
を備え
前記パラメトリック曲線はベジェ曲線であり、
前記制御部は、前記多重描画のnパス目(nは1以上の整数)では、前記複数の制御点の全てを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成し、前記多重描画のmパス目(mは1以上かつn以外の整数)では、前記複数の制御点の端点のみを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成する、荷電粒子ビーム照射装置。
【請求項13】
対象物上に荷電粒子ビームを照射する照射部と、
パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割し、分割後の複数のパラメトリック曲線の各々に対応する複数の制御点の少なくとも一部を使用し、前記荷電粒子ビームの多重描画のパス毎に異なる形状のポリゴンを生成し、前記パス毎に、前記荷電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数の領域の各々における前記ポリゴンによる被覆率を計算し、前記被覆率に基づいて各領域の照射量を算出し、算出した照射量となるように前記照射部を制御する制御部と、
を備え
前記パラメトリック曲線はベジェ曲線であり、
前記制御部は、前記多重描画のnパス目(nは1以上の整数)では、前記複数の制御点の端点と、前記端点以外の制御点のうち第1制御点とを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成し、前記多重描画のmパス目(mは1以上かつn以外の整数)では、前記複数の制御点の端点と、前記端点以外の制御点のうち前記第1制御点とは異なる第2制御点とを順につなぐ線分を用いて前記ポリゴンを生成する、荷電粒子ビーム照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ生成方法、荷電粒子ビーム照射装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。半導体デバイスへ所望の回路パターンを形成するためには、縮小投影型露光装置を用いて、石英上に形成された高精度の原画パターンをウェーハ上に縮小転写する手法が採用されている。高精度の原画パターンの製作には、電子ビーム描画装置によってレジストを露光してパターンを形成する、所謂、電子ビームリソグラフィ技術が用いられている。
【0003】
電子ビーム描画装置として、例えば、マルチビームを用いて一度に多くのビームを照射し、スループットを向上させたマルチビーム描画装置が知られている。このマルチビーム描画装置では、例えば、電子銃から放出された電子ビームが、複数の開口を有するアパーチャ部材を通過することでマルチビームが形成され、各ビームがブランキングプレートにおいてブランキング制御される。遮蔽されなかったビームが、光学系で縮小され、描画対象のマスク上の所望の位置に照射される。
【0004】
マルチビーム描画装置を用いて電子ビーム描画を行う場合、所定サイズで区画分けされたピクセル毎に、入力図形の被覆率を計算し、ビーム毎の照射量を制御する。また、ビーム毎の照射量を決める上記ピクセルより大きな区画(第2区画)を用いて照射量計算を行う場合も同様に当該第2区画での被覆率計算が必要になる。入力図形が曲線を含む場合、ポリゴンに近似することで、比較的容易に被覆率計算を行える。しかし、近似を高精度に行うと、近似ポリゴンの頂点数が増大し、データ処理に多大な時間を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-272120号公報
【文献】特開2010-113624号公報
【文献】特開2014-56371号公報
【文献】特開2012-230668号公報
【文献】特開2007-241878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、曲線を含む図形のピクセル被覆率計算を高速かつ正確に行うデータ生成方法、荷電粒子ビーム照射装置及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によるデータ生成方法は、荷電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数のピクセルの各々におけるポリゴンによる被覆率を計算するデータ生成方法であって、パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割し、分割後の複数のパラメトリック曲線の各々について、該パラメトリック曲線の制御点の端点を結ぶ線分と該パラメトリック曲線とで囲まれた領域の面積を算出し、前記制御点の端点を結ぶ線分を一辺とし、算出した前記面積と同等の面積を有する図形の頂点の位置を算出し、前記頂点を用いて前記ポリゴンを生成するものである。
【0008】
本発明の一態様によるプログラムは、荷電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数のピクセルの各々におけるポリゴンによる被覆率を計算するステップをコンピュータに実行させるプログラムであって、パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割するステップと、分割後の複数のパラメトリック曲線の各々について、該パラメトリック曲線の制御点の端点を結ぶ線分と該パラメトリック曲線とで囲まれた領域の面積を算出するステップと、前記制御点の端点を結ぶ線分を一辺とし、算出した前記面積と同じ面積を有する図形の頂点の位置を算出するステップと、前記頂点を用いて前記ポリゴンを生成するステップと、を前記コンピュータに実行させるものである。
【0009】
本発明の一態様による荷電粒子ビーム照射装置は、対象物上に荷電粒子ビームを照射する照射部と、パターン形状を定義するパラメトリック曲線を、複数のパラメトリック曲線に分割し、分割後の複数のパラメトリック曲線の各々について、該パラメトリック曲線の制御点の端点を結ぶ線分と該パラメトリック曲線とで囲まれた領域の面積を算出し、前記制御点の端点を結ぶ線分を一辺とし、算出した前記面積と同じ面積を有する図形の頂点の位置を算出し、前記頂点を用いてポリゴンを生成し、前記荷電粒子ビームの照射対象を所定サイズで分割した複数のピクセルの各々における前記ポリゴンによる被覆率を計算し、前記被覆率に基づいて各ピクセルの照射量を算出し、算出した照射量となるように前記照射部を制御する制御部と、を備えるものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、曲線を含む図形のピクセル被覆率計算を高速かつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るマルチ荷電粒子ビーム描画装置の概略図である。
図2】成形アパーチャアレイプレートの平面図である。
図3】描画方法を説明するフローチャートである。
図4】描画動作を説明する図である。
図5】ピクセルマップ生成方法を説明するフローチャートである。
図6図6aはBスプライン曲線の例を示す図であり、図6bはベジェ曲線の例を示す図であり、図6cは変換式を示す図である。
図7図7aはベジェ曲線の例を示す図であり、図7bはベジェ曲線の分割例を示す図である。
図8図8aはベジェ曲線の例を示す図であり、図8bはベジェ曲線の分割例を示す図であり、図8c、図8dは分割されたベジェ曲線の例を示す図である。
図9】ベジェ曲線の曲線部の面積を説明する図である。
図10】曲線部と同じ面積の台形の例を示す図である。
図11】曲線部と同じ面積の三角形の例を示す図である。
図12】曲線部と同じ面積の三角形の例を示す図である。
図13図13a、図13bはポリゴン化の例を示す図であり、図13cは近似ポリゴンの重ね合わせを示す図である。
図14図14aはポリゴン化の例を示す図であり、図14bは近似ポリゴンの重ね合わせを示す図である。
図15図15a、図15bはポリゴン化の例を示す図である。
図16図16a、図16bはポリゴン化の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは電子ビームに限るものでなく、イオンビーム等でもよい。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態に係る描画装置100の概略構成図である。図1に示すように、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、マルチ荷電粒子ビーム描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイプレート203、ブランキングアパーチャアレイプレート204、縮小レンズ205、制限アパーチャ部材206、対物レンズ207及び偏向器208が配置されている。
【0014】
描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画対象の基板101が配置される。基板101は、例えば、マスクブランクスや、半導体基板(シリコンウェハ)である。また、XYステージ105上には、位置測定用のミラー210が配置される。
【0015】
制御部160は、制御計算機110、偏向制御回路130、ステージ位置検出器139、及び記憶部140を有している。記憶部140には、描画データが外部から入力され、格納されている。描画データには、基板101上に形成するパターンを記述する複数の図形パターンの情報が定義される。図形パターンは曲線を含み、その形状は、例えば3次Bスプライン曲線で定義されている。
【0016】
制御計算機110は、面積密度算出部111、照射時間算出部112、データ処理部113及び描画制御部114を有する。制御計算機110の各部は、電気回路等のハードウェアで構成されてもよいし、これらの機能を実行するプログラム等のソフトウェアで構成されてもよい。或いは、ハードウェアとソフトウェアの組み合わせにより構成されてもよい。
【0017】
ステージ位置検出器139は、レーザをミラー210に照射すると共に、この反射光を受光し、レーザ干渉法の原理でXYステージ105の位置を検出する。
【0018】
図2は、成形アパーチャアレイプレート203の構成を示す概念図である。図2に示すように、成形アパーチャアレイプレート203には、縦方向(y方向)及び横(x方向)に沿って複数の開口203aが所定の配列ピッチで形成されている。各開口203aは、共に同じ寸法形状の矩形又は円形で形成されると好適である。これらの複数の開口203aを電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成される。
【0019】
ブランキングアパーチャアレイプレート204には、成形アパーチャアレイプレート203の各開口203aの配置位置に合わせて通過孔が形成されている。各通過孔には、対となる2つの電極の組からなるブランカが配置される。ブランカの2つの電極のうち、例えば一方の電極を接地してグラウンド電位に保ち、他方の電極をグラウンド電位またはグラウンド電位以外の電位に切り替えることにより、通過孔を通過するビームの偏向のオフ/オンが切り替えられて、ブランキング制御される。ブランカがビームを偏向しない場合、ビームはオンになる。ブランカがビームを偏向する場合、ビームはオフになる。このように、複数のブランカが、成形アパーチャアレイプレート203の複数の開口203aを通過したマルチビームのうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0020】
電子銃201(放出部)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により成形アパーチャアレイプレート203全体を照明する。電子ビーム200は、すべての開口203aが含まれる領域を照明する。電子ビーム200が、成形アパーチャアレイプレート203の複数の開口203aを通過することによって、例えば矩形形状の複数の電子ビーム(マルチビーム)20が形成される。
【0021】
マルチビーム20は、ブランキングアパーチャアレイプレート204のそれぞれ対応するブランカ内を通過する。ブランカは、それぞれ、個別に通過する電子ビームのうち、オフにするビームをブランキング偏向する。ブランカは、オンにするビームはブランキング偏向しない。ブランキングアパーチャアレイプレート204を通過したマルチビーム20は、縮小レンズ205によって縮小され、制限アパーチャ部材206に形成された中心開口に向かって進む。
【0022】
ここで、ビームオフ状態に制御されるビームは、ブランカによって偏向され、制限アパーチャ部材206の開口の外を通る軌道を通るため、制限アパーチャ部材206によって遮蔽される。一方、ビームオン状態に制御されるビームは、ブランカによって偏向されないので、制限アパーチャ部材206の開口を通過する。このようにブランカの偏向のオン/オフによってブランキング制御が行われ、ビームのオフ/オンが制御される。ブランキングアパーチャアレイプレート204は、マルチビームの各ビームの照射時間を制御する照射時間制御部としての機能を有する。
【0023】
制限アパーチャ部材206は、ブランキングアパーチャアレイプレート204のブランカによってビームオンの状態になるように偏向されたビームを通過させ、ブランキングアパーチャアレイプレート204のブランカによってビームオフの状態になるように偏向されたビームを遮蔽する。そして、ビームオンになってからビームオフになるまでに形成された、制限アパーチャ部材206を通過したビームにより1回分のショットのマルチビームが形成される。
【0024】
制限アパーチャ部材206を通過したマルチビームは、対物レンズ207により焦点が合わされ、基板101上で所望の縮小率のパターン像となる。制限アパーチャ部材206を通過した各ビーム(マルチビーム全体)が、偏向器208によって同方向にまとめて偏向され、基板101上の所望の位置に照射される。
【0025】
XYステージ105が連続移動している場合、少なくとも基板101にビームを照射している間は、ビームの照射位置がXYステージ105の移動に追従するように、偏向器208によって制御される。一度に照射されるマルチビームは、理想的には成形アパーチャアレイプレート203の複数の開口203aの配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。
【0026】
次に、本実施形態に係るパターン描画方法を図3に示すフローチャートに沿って説明する。パターン面積密度算出工程(ステップS1)では、面積密度算出部111が基板101の描画領域を複数のメッシュ領域に仮想分割する。メッシュ領域のサイズは、例えば、1本のビームと同程度のサイズであり、各メッシュ領域がピクセル(単位照射領域)となる。面積密度算出部111は、記憶部140から描画データを読み出し、描画データに定義されたパターンを用いて、各ピクセルのパターン面積密度(被覆率)ρを算出し、各ピクセルの被覆率を定義したピクセルマップを生成する。ピクセルマップの生成方法は後述する。
【0027】
照射時間算出工程(ステップS2)では、照射時間算出部112が、パターン面積密度ρに基準照射量Dを乗じて、各ピクセルに照射されるビームの照射量ρDを算出する。照射時間算出部112は、近接効果等を補正するための補正係数をさらに乗じてもよい。照射時間算出部112は、照射量を、マルチビームを構成する複数のビームそれぞれの電流量で割って、前記複数のビームそれぞれの照射時間を算出する。
【0028】
照射時間制御データ生成工程(ステップS3)では、データ処理部113が、照射時間データを描画シーケンスに沿ったショット順に並び替え、照射時間制御データを生成する。
【0029】
データ転送工程(ステップS4)では、描画制御部114が照射時間制御データを偏向制御回路130へ出力する。偏向制御回路130は、照射時間制御データをブランキングアパーチャアレイプレート204の各ブランカへ出力する。
【0030】
描画工程(ステップS5)では、描画制御部114が描画部150を制御し、基板101に対する描画処理を実行させる。ブランキングアパーチャアレイプレート204の各ブランカは、照射時間制御データに基づいてビームのオン/オフを切り替え、ピクセル毎に所望の露光量を与える。
【0031】
図4は、描画動作を説明するための概念図である。図4に示すように、基板101の描画領域80は、例えば、y方向(第1方向)に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域82に仮想分割される。まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域82の左端に一回のマルチビームの照射で照射可能な照射領域(ビームアレイ)84が位置するように調整し、描画が開始される。
【0032】
第1番目のストライプ領域82を描画する際には、XYステージ105を-x方向に移動させることにより、相対的に+x方向へと描画を進めていく。XYステージ105は所定の速度で連続移動させる。第1番目のストライプ領域82の描画終了後、ステージ位置を-y方向に移動させて、第2番目のストライプ領域82の右端にビームアレイ84が位置するように調整する。続いて、XYステージ105を+x方向に移動させることにより、-x方向に向かって描画を行う。
【0033】
第3番目のストライプ領域82では、+x方向に向かって描画し、第4番目のストライプ領域82では、-x方向に向かって描画する。交互に向きを変えながら描画することで描画時間を短縮できる。また、常に同じ方向、つまり+x方向又は-x方向のいずれかに向かって各ストライプ領域82を描画してもよい。
【0034】
次に、面積密度算出部111によるピクセルマップ生成方法を、図5に示すフローチャートに沿って説明する。
【0035】
面積密度算出部111は、記憶部140から描画データを読み出し、3次Bスプライン曲線で定義された図形パターンの曲線を、3次ベジェ曲線に変換する(ステップS101)。例えば、図6aに示す3次Bスプライン曲線は、図6bに示す3次ベジェ曲線に変換される。図6cは変換式の例を示す。
【0036】
3次ベジェ曲線では、図7aに示すように、4つの制御点で曲線を表現する。つまり、図6bに示す例では、4つの制御点の組を連続させたものが、図形の周囲を囲んでいる。4つの制御点のうち、開始点と終了点の2つの制御点(端点)が曲線上に位置する。
【0037】
面積密度算出部111は、4つの制御点で表されるベジェ曲線を、変曲点の位置でさらに細かいベジェ曲線に分割する(ステップS102)。変曲点は、曲率=(dPx/dt)(dPy/dt)-(dPy/dt)(dPx/dt)=0となる点である。
【0038】
例えば、図7aに示すベジェ曲線K0は、変曲点を1つ含むため、図7bに示すように、2つのベジェ曲線K1、K2に分割される。変曲点で分割した後のベジェ曲線は、4つの制御点を順につないだ直線とは途中で交差しないものとなる。
【0039】
次に、制御点(方向点)がベジェ曲線に十分近接しているかを判定するための指標を算出する(ステップS103)。例えば、図8aに示すように、ベジェ曲線K10が4つの制御点C10、C11、C12、C13で定義される場合を考える。
【0040】
面積密度算出部111は、ベジェ曲線に対する制御点の近接度を示す指標として、制御点C10、C11、C12、C13を頂点とする四角形を囲うバウンディングボックスB1のサイズを算出する。バウンディングボックスB1のサイズは、バウンディングボックスB1の面積でもよいし、バウンディングボックスB1の幅BLx及び/又は高さBLyであってもよい。
【0041】
面積密度算出部111は、算出した指標が所定の閾値より大きい場合(ステップS104_Yes)、制御点(方向点C11,C12)がベジェ曲線から離れていると判定し、ベジェ曲線を再分割して細分化する(ステップS105)。
【0042】
例えば、図8bに示すように、ベジェ曲線K10(第1パラメトリック曲線)を、その中間点(t=0.5)で再分割し、ベジェ曲線K11とベジェ曲線K12とに細分化し、ベジェ曲線K11、K12(第2パラメトリック曲線)を定義する制御点を求める。
【0043】
ベジェ曲線K11は、制御点C20、C21、C22、C23で定義される。ベジェ曲線K12は、制御点C23、C24、C25、C26で定義される。制御点C20、C26は、図8aの制御点C10、C13と同じである。制御点C23が、ベジェ曲線K10を再分割した際の中間点である。
【0044】
図8c、図8dに示すように、面積密度算出部111は、ベジェ曲線K11、K12の各々について、制御点がベジェ曲線に十分近接しているかを判定するための指標を算出する(ステップS103)。例えば、面積密度算出部111は、制御点C20、C21、C22、C23を頂点とする四角形を囲うバウンディングボックスB2の幅BLx及び/又は高さBLyを算出する。また、面積密度算出部111は、制御点C23、C24、C25、C26を頂点とする四角形を囲うバウンディングボックスB2の幅BLx及び/又は高さBLyを算出する。
【0045】
全てのベジェ曲線について、指標が所定の閾値以下となるまで、ベジェ曲線の再分割及び指標算出を繰り返す(ステップS103~S105)。なお、指標を幅、高さに取る場合、閾値の値は被覆率を求める区画のサイズ程度が望ましい。
【0046】
全てのベジェ曲線について、指標が所定の閾値以下になると(ステップS104_No)、面積密度算出部111は、ベジェ曲線の曲線部の面積Acを求める(ステップS106)。図9に示すような、制御点C0、C1、C2、C3で定義されるベジェ曲線Kの場合、曲線部の面積Acは、制御点(端点)C0及びC3を結ぶ線分と、制御点C0、C3間のベジェ曲線とで囲まれる領域(図中斜線部)の面積であり、ベジェ曲線の式とグリーンの定理による線積分によって求めることができる。
【0047】
面積密度算出部111が、制御点C0及びC3を結ぶ線分を底辺とし、面積がステップS106で算出したAcと同等となる図形を生成する(ステップS107)。生成する図形は、台形又は三角形である。ここで、面積が同等とは、同一面積だけでなく、面積の差(誤差)が所定範囲に収まるものを含む。面積がAcと同一となる図形を生成することが好ましく、以下の実施形態では、面積Acの台形や三角形の求め方を説明する。
【0048】
例えば、図10に示すように、制御点C0及びC3を結ぶ線分を底辺(下底)とする台形を生成する。台形は、制御点C0及びC3と、頂点V1及びV2とを頂点とする。頂点V1は制御点C0と制御点C1とを結ぶ線分上に位置する。頂点V2は制御点C2と制御点C3とを結ぶ線分上に位置する。制御点C0の座標を原点(0、0)とし、面積密度算出部111は、頂点V1の座標(P1x、P1y)及び頂点V2の座標(P2x、P2y)を算出する。
【0049】
この台形の高さをh、下底の長さをLB、制御点C0と制御点C1とを結ぶ直線の傾きをα、制御点C2と制御点C3とを結ぶ直線の傾きをβとすると、以下の数式1が成り立つ。
【0050】
(数式1)
a・h+b・h+c=0
a=(1/β-1/α)×0.5
b=2×LB
c=Ac
【0051】
上記数式1から、台形の高さhが求まる。頂点V1の座標(P1x、P1y)及び頂点V2の座標(P2x、P2y)はそれぞれ以下のようになる。
【0052】
P1x=h/α
P1y=h
P2x=LB+h/β
P2y=h
【0053】
このようにして、制御点C0及びC3と、頂点V1及びV2とを頂点とする、面積Acの台形が生成される。
【0054】
また、例えば、図11に示すように、制御点C0及びC3を結ぶ線分を底辺とする、面積Acの三角形を生成する。この三角形は、制御点C0及びC3と、頂点V3とを頂点とする。頂点V3は、制御点C0と制御点C1とを結ぶ直線と、制御点C2と制御点C3とを結ぶ直線とがなす角の二等分線BS上に位置する。制御点C0と制御点C1とを結ぶ直線と、制御点C2と制御点C3とを結ぶ直線との交点をM1とする。また、二等分線BSと、三角形の底辺との交点をM2とする。
【0055】
この三角形の高さをh、底辺の長さをLB、制御点C0から交点M1までの長さをLa、制御点C3から交点M1までの長さをLb、制御点C0から交点M2までの長さをla、制御点C3から交点M2までの長さをlb、二等分線BSの傾きをα、交点M1の座標を(Mx、My)とすると、頂点V3の座標(P3x、P3y)は以下の数式2から求まる。
【0056】
(数式2)
P3x=la+(h/α)
P3y=h=2×Ac/LB
la=La×LB/(La+Lb)
α=My(Mx-la)
【0057】
また、制御点C0及びC3を結ぶ線分を底辺とする、面積Acの三角形は、図12に示すように、制御点C0及びC3を結ぶ線分の垂直二等分線Q上に頂点V4が位置するものであってもよい。この場合、頂点V4の座標(P4x、P4y)は、底辺の長さLBを用いて、以下の数式3から求まる。
【0058】
(数式3)
P4x=LB/2
P4y=h=2×Ac/LB
【0059】
続いて、面積密度算出部111が、各ベジェ曲線の開始点及び終了点(C0、C3)と、ステップS107で求めた頂点とを順につなぐ線分を引き、ポリゴン(多角形)を生成する(ステップS108)。例えば、図10の例では、点C0、V1、V2、C3を順につないでポリゴンを生成する。図11の例では、点C0、V3、C3を順につないでポリゴンを生成する。図12の例では、点C0、V4、C3を順につないでポリゴンを生成する。
【0060】
面積密度算出部111が、生成したポリゴンを従来公知の手法で三角形に分割する(ステップS109)。必ずしも三角形である必要はなく、台形を用いて分割してもよい。
【0061】
面積密度算出部111が、ポリゴンを分割した三角形を用いて、ポリゴンによる各ピクセルの被覆率(面積密度)を算出し、ピクセルマップを生成する(ステップS110)。照射時間算出部112が各ピクセルに照射されるビーム照射量を算出する際に、このピクセルマップが使用される。
【0062】
このように、本実施形態によれば、被覆率を求める区画の大きさに対し頂点間隔が細かくなりすぎない程度にベジェ曲線を分割し、分割後のベジェ曲線による曲線部と同等の面積を持つ図形(台形又は三角形)を生成し、この図形の頂点でポリゴン化を行う。頂点数を抑えつつ区画サイズ程度の領域で面積が保存された高精度の近似ポリゴンが生成できるため、ピクセル被覆率計算を高速かつ正確に行うことができる。
【0063】
[第2の実施形態]
電子ビーム描画では、必要な照射量を複数回の描画(露光)に分ける多重描画が行われることがある。この場合、描画(パス)毎に異なる頂点を用いてポリゴン化を行い、照射量を算出してもよい。
【0064】
まず、図5のステップS101~S105を実行し、指標が所定の閾値以下となるようにベジェ曲線の分割を行う。例えば、図8a、図8bに示すように、ベジェ曲線K10を、その中間点で再分割し、ベジェ曲線K11とベジェ曲線K12とに細分化する。t=0が制御点C10、C20に対応し、t=1が制御点C13、C26に対応する場合、t=0.5が中間点となる。ベジェ曲線K11は、制御点C20、C21、C22、C23で定義される。ベジェ曲線K12は、制御点C23、C24、C25、C26で定義される。
【0065】
ベジェ曲線の分割後、kパス目(kは1以上の整数)の描画における照射量を算出するにあたり、t=0(制御点C20)、t=0.5/k、t=0.5+0.5/k、t=1(制御点C26)の点を順につなぐ線分を引いてポリゴンを生成し、第kピクセルマップを生成する。第kピクセルマップを用いて、各ピクセルに照射されるビーム照射量を算出する。
【0066】
例えば、1パス目(k=1)の描画では、図13aに示すように、t=0、t=0.5、t=1である制御点C20、C23、C26を順につなぐ線分を引いてポリゴンを生成し、第1ピクセルマップを生成する。第1ピクセルマップを用いて、1パス目の描画で各ピクセルに照射されるビーム照射量を算出する。
【0067】
2パス目(k=2)の描画では、図13bに示すように、t=0である制御点C20、t=0.25である点V11、t=0.75である点V12、t=1である制御点C26を順につなぐ線分を引いてポリゴンを生成し、第2ピクセルマップを生成する。第2ピクセルマップを用いて、2パス目の描画で各ピクセルに照射されるビーム照射量を算出する。
【0068】
パス数が2の多重描画では、1パス目のポリゴンと2パス目のポリゴンとを重ね合わせると図13cに示すようなものとなり、ベジェ曲線に近似した形状となる。
【0069】
3パス目(k=3)の描画では、図14aに示すように、t=0である制御点C20、t=0.17である点V13、t=0.67である点V14、t=1である制御点C26を順につなぐ線分を引いてポリゴンを生成し、第3ピクセルマップを生成する。第3ピクセルマップを用いて、3パス目の描画で各ピクセルに照射されるビーム照射量を算出する。
【0070】
パス数が3の多重描画では、1~3パス目のポリゴンを重ね合わせると図14bに示すようなものとなり、ベジェ曲線にさらに近似した形状となる。
【0071】
このように、パス毎に(少なくとも一部が)異なる点でポリゴン化を行い、ピクセルマップを生成することで、頂点数を抑えつつ、近似ポリゴンの誤差を平均化できるため、ピクセル被覆率計算を高速かつ正確に行うことができる。
【0072】
ベジェ曲線の全ての制御点を順につなぐ線分を引き、ベジェ曲線の外側でポリゴンを生成する方法と、ベジェ曲線の制御点のうち端点のみを順につなぐ線分を引き、ベジェ曲線の内側でポリゴンを生成する方法とを組み合わせてもよい。
【0073】
例えば、図15aに示すように、1パス目の描画では、制御点C20~C26を順につなぐ線分を引いて曲線の外側でポリゴンを生成し、ピクセルマップを生成する。このピクセルマップを用いて、1パス目の描画で各ピクセルに照射されるビーム照射量を算出する。
【0074】
図15bに示すように、2パス目の描画では、制御点C20、C23、C26を順につなぐ線分を引いて曲線の内側でポリゴンを生成し、ピクセルマップを生成する。このピクセルマップを用いて、2パス目の描画で各ピクセルに照射されるビーム照射量を算出する。
【0075】
図15aに示す近似ポリゴンと図15bに示す近似ポリゴンの重ね合わせにより、近似誤差の平均化が行われ、ピクセル被覆率計算を精度良く行うことができる。
【0076】
また、各ベジェ曲線の制御点のうち端点と、2つの方向点のいずれか一方とを順につなぐ線分を引いてポリゴンを生成するものであってもよい。多重描画のパス毎にポリゴン生成に使用する方向点を変える。
【0077】
例えば、図16aに示すように、1パス目の描画では、制御点C20、C21、C23、C24、C26を順につなぐ線分を引いてポリゴンを生成し、ピクセルマップを生成する。このピクセルマップを用いて、1パス目の描画で各ピクセルに照射されるビーム照射量を算出する。
【0078】
図16bに示すように、2パス目の描画では、制御点C20、C22、C23、C25、C26を順につなぐ線分を引いてポリゴンを生成し、ピクセルマップを生成する。このピクセルマップを用いて、2パス目の描画で各ピクセルに照射されるビーム照射量を算出する。
【0079】
図16aに示す近似ポリゴンと図16bに示す近似ポリゴンの重ね合わせにより、近似誤差の平均化が行われ、ピクセル被覆率計算を精度良く行うことができる。
【0080】
上記の例では、多重描画のパス毎に異なる形状のポリゴンを生成するにあたり、各ポリゴンが端点を使用する構成について説明したが、必ずしも端点を使用する必要はなく、パス毎に異なる制御点を使用して異なる形状のポリゴンを生成すればよい。
【0081】
上記第1、第2の実施形態では、3次Bスプライン曲線で定義された図形パターンの曲線を3次ベジェ曲線に変換する例について説明したが、パラメトリック曲線の次数は3に限定されない。
【0082】
上記第1、第2の実施形態では、入力図形がBスプラインで表現されている例について説明したが、ベジェ曲線に変換できるものであれば、他のパラメトリック曲線で表現した図形を入力データとしてもよい。
【0083】
ベジェ曲線以外の他のパラメトリック曲線で、上記の処理を行ってもよい。指標が所定の閾値以下になるまで、パラメトリック曲線を分割する。分割後、パラメトリック曲線の曲線部と同等の面積となる図形(台形又は三角形)の頂点を求め、求めた頂点を用いてポリゴン化する。あるいはまた、多重描画のパス毎に異なる点でポリゴン化する。
【0084】
上記実施形態では、分割後のパラメトリック曲線の曲線部と同等の面積となる図形(台形又は三角形)を生成する例について説明したが、生成する図形の面積と、当該図形のドーズ変調率とを組み合わせて、元の曲線部と同等のドーズ量となるようにしてもよい。例えば、曲線部の面積が1.0であった場合、面積0.8の図形を生成し、この図形のドーズ変調率を1.25に設定してもよい。
【0085】
上記実施形態では、基板にパターンを描画する描画装置について説明したが、検査装置など、対象物にビームを照射する他の照射装置にも適用可能である。また、上記実施形態では、マルチビームを用いて一度に多くのビームを照射するマルチビーム照射装置について説明したが、照射対象基板に1本のビームを照射するシングルビーム照射装置についても同様の手法を適用できる。
【0086】
制御計算機110の少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。ソフトウェアで構成する場合には、制御計算機110の少なくとも一部の機能を実現するプログラムをフレキシブルディスクやCD-ROM等の記録媒体に収納し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。
【0087】
また、制御計算機110の少なくとも一部の機能を実現するプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
【0088】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0089】
100 描画装置
110 制御計算機
111 面積密度算出部
112 照射時間算出部
113 データ処理部
114 描画制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16