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特許7552218樹脂組成物、樹脂付き金属箔、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージ
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  • 特許-樹脂組成物、樹脂付き金属箔、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂付き金属箔、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08F 299/02 20060101AFI20240910BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 5/057 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 79/04 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240910BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240910BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240910BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240910BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20240910BHJP
   B32B 15/082 20060101ALI20240910BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20240910BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20240910BHJP
   B32B 27/04 20060101ALI20240910BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08F299/02
C08L71/12
C08L27/12
C08K5/057
C08K5/3415
C08L63/00 A
C08L79/04 Z
C08K3/013
C08L53/02
H05K1/03 610H
H05K3/46 S
B32B15/08 J
B32B15/082 Z
B32B27/20 Z
B32B27/30 A
B32B27/04
C08J5/24 CER
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020169851
(22)【出願日】2020-10-07
(65)【公開番号】P2022061729
(43)【公開日】2022-04-19
【審査請求日】2023-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田端 栞
(72)【発明者】
【氏名】染川 淳生
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 圭芸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 香織
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 陽佳
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸雄
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-035051(JP,A)
【文献】特開2002-129006(JP,A)
【文献】特開2016-089137(JP,A)
【文献】国際公開第2019/172342(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 299/02
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
H05K 1/03、3/46
B32B 1/00-43/00
B29B 11/16、15/08-15/14
C08J 5/04-5/10、5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)と、フッ素樹脂フィラー(B)と、チタネートカップリング剤(X)と、を含有する樹脂組成物であって、
前記(A)成分が、分子末端にエチレン性不飽和結合含有基を有する、樹脂組成物
【請求項2】
前記(A)成分が、分子の両末端にエチレン性不飽和結合含有基を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が有する前記エチレン性不飽和結合含有基が、(メタ)アクリル基である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(A)成分の重量平均分子量(Mw)が、500~7,000である、請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィラー、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィラー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)フィラー、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)フィラー及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)フィラーからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(B)成分の平均粒子径が0.1~10μmである、請求項1~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分の含有量が、樹脂組成物の固形分に対して1質量%以上50質量%未満である、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記(B)成分の含有量が、樹脂組成物の固形分に対して1~40質量%である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記(X)成分がヒドロキシ基と炭化水素基とを有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記炭化水素基が、炭素数1~4の炭化水素基と炭素数5~30の炭化水素基とを含む、請求項9に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
さらに、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びマレイミド化合物からなる群から選択される1種以上の熱硬化性樹脂(C)を含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記(C)成分として前記マレイミド化合物を含有し、且つ、該マレイミド化合物が、N-置換マレイミド基を少なくとも2個以上有するマレイミド化合物(c1)由来の構造単位と第1級アミノ基を有するアミン化合物(c2)由来の構造単位と、を有する変性マレイミド化合物である、請求項11に記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記変性マレイミド化合物が、下記一般式(C-1)で表される化合物である、請求項12に記載の樹脂組成物。
【化1】

(式中、Xc1及びXc2は、各々独立に、2価の有機基である。)
【請求項14】
前記(A)成分と前記(C)成分との含有割合[(A)/(C)]が、質量比で、5/95~80/20である、請求項11~13のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項15】
さらに、熱可塑性エラストマー(D)、硬化促進剤(E)及び無機充填材(F)からなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1~14のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂組成物の層を金属箔上に有する、樹脂付き金属箔。
【請求項17】
請求項1~15のいずれか1項に記載の樹脂組成物とシート状繊維補強基材とを含有してなるプリプレグ。
【請求項18】
(i)請求項16に記載の樹脂付き金属箔又は(ii)請求項17に記載のプリプレグ及び金属箔、を含有してなる積層板。
【請求項19】
(i)請求項16に記載の樹脂付き金属箔、(ii)請求項17に記載のプリプレグ又は(iii)請求項18に記載の積層板、を含有してなる多層プリント配線板。
【請求項20】
請求項19に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂付き金属箔、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピュータなどでは、使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載されるプリント配線板には高周波化対応が必要となり、伝送損失の低減を可能とする高周波数帯における誘電特性に優れる基板材料が求められている。近年、このような高周波信号を扱うアプリケーションとして、上述した電子機器のほかに、ITS分野(自動車、交通システム関連)及び室内の近距離通信分野でも高周波無線信号を扱う新規システムの実施計画及び実用化が進んでいる。したがって、今後、これらの機器に搭載するプリント配線板に対しても、低伝送損失基板材料が要求されると予想される。
【0003】
従来、高周波特性に優れる熱可塑性ポリマーとしては、ポリフェニレンエーテル(PPE)系樹脂が使用されてきた。例えば、ポリフェニレンエーテルとエポキシ樹脂を含有する樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)、ポリフェニレンエーテルとシアネート樹脂とを含有する樹脂組成物(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-069046号公報
【文献】特公昭61-018937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年は、6GHzを超える周波数帯の電波が使用される第五世代移動通信システム(5G)アンテナ及び30~300GHzの周波数帯の電波が使用されるミリ波レーダーにも利用可能な10GHz帯以上における誘電特性(低誘電率及び低誘電正接;以下、高周波特性と称することがある)がさらに改善された樹脂組成物の開発が切望されている。すなわち、樹脂組成物には、従来よりも一層優れた高周波特性を有することが望まれている。
さらに、樹脂組成物の層を金属箔上に有する樹脂付き金属箔を金属張積層板の製造に用いることがあるが、この樹脂付き金属箔は、通常、サイズを調整するために切断機で切断して使用する。このとき、樹脂付き金属箔の端部の粉落ちが原因で切断機の刃(以下、スリット刃とも称する。)に樹脂粉が付着することがある。このようにスリット刃が汚染されることで、切断面における波うち及び樹脂割れが発生したり、スリット刃に付着した樹脂が樹脂付き金属箔へ落下することで製品が汚染されたりするという問題がある。
本発明者等は、上記課題を解決するために、優れた高周波特性を有する成分の配合を検討したところ、樹脂組成物の高周波特性は向上するものの、銅箔引き剥がし強度が低下するという問題が生じることが判明した。
【0006】
本発明は、このような現状に鑑み、10GHz帯以上の高周波数帯において優れた誘電特性を発現し、樹脂付き金属箔の切断時に端部の粉落ちが抑制され、且つ、銅箔引き剥がし強度に優れる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた樹脂付き金属箔、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリフェニレンエーテル誘導体、フッ素樹脂フィラー及びチタネートカップリング剤を含有する樹脂組成物が、優れた高周波特性を発現すると共に、樹脂付き金属箔の切断時に端部の粉落ちが抑制され、且つ、銅箔引き剥がし強度に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の一実施形態は、下記[1]~[20]に関するものである。
[1]ポリフェニレンエーテル誘導体(A)と、フッ素樹脂フィラー(B)と、チタネートカップリング剤(X)と、を含有する樹脂組成物。
[2]前記(A)成分が、分子末端にエチレン性不飽和結合含有基を有する、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記(A)成分が有する前記エチレン性不飽和結合含有基が、(メタ)アクリル基である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記(A)成分の重量平均分子量(Mw)が、500~7,000である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記(B)成分が、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィラー、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィラー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)フィラー、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)フィラー及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)フィラーからなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記(B)成分の平均粒子径が0.1~10μmである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]前記(B)成分の含有量が、樹脂組成物の固形分に対して1質量%以上50質量%未満である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]前記(B)成分の含有量が、樹脂組成物の固形分に対して1~40質量%である、上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]前記(X)成分がヒドロキシ基と炭化水素基とを有する、上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]前記炭化水素基が、炭素数1~4の炭化水素基と炭素数5~30の炭化水素基とを含む、上記[9]に記載の樹脂組成物。
[11]さらに、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びマレイミド化合物からなる群から選択される1種以上の熱硬化性樹脂(C)を含有する、上記[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12]前記(C)成分として前記マレイミド化合物を含有し、且つ、該マレイミド化合物が、N-置換マレイミド基を少なくとも2個以上有するマレイミド化合物(c1)由来の構造単位と第1級アミノ基を有するアミン化合物(c2)由来の構造単位と、を有する変性マレイミド化合物である、上記[11]に記載の樹脂組成物。
[13]前記変性マレイミド化合物が、下記一般式(C-1)で表される化合物である、上記[12]に記載の樹脂組成物。
【化1】

(式中、Xc1及びXc2は、各々独立に、2価の有機基である。)
[14]前記(A)成分と前記(C)成分との含有割合[(A)/(C)]が、質量比で、5/95~80/20である、上記[11]~[13]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[15]さらに、熱可塑性エラストマー(D)、硬化促進剤(E)及び無機充填材(F)からなる群から選択される1種以上を含有する、上記[1]~[14]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[16]上記[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物の層を金属箔上に有する、樹脂付き金属箔。
[17]上記[1]~[15]のいずれかに記載の樹脂組成物とシート状繊維補強基材とを含有してなるプリプレグ。
[18](i)上記[16]に記載の樹脂付き金属箔又は(ii)上記[17]に記載のプリプレグ及び金属箔、を含有してなる積層板。
[19](i)上記[16]に記載の樹脂付き金属箔、(ii)上記[17]に記載のプリプレグ又は(iii)上記[18]に記載の積層板、を含有してなる多層プリント配線板。
[20]上記[19]に記載の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、10GHz帯以上の高周波数帯において優れた誘電特性を発現し、樹脂付き金属箔の切断時に端部の粉落ちが抑制され、且つ、銅箔引き剥がし強度に優れる樹脂組成物、該樹脂組成物を用いた樹脂付き金属箔、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板及び半導体パッケージを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例及び比較例における樹脂付き銅箔切断時の端部粉落ちの評価時に使用した切断機が有するスリット刃の写真である。
図2】実施例及び比較例において、樹脂付き銅箔切断時の端部粉落ちの評価が「A」の場合のスリット刃の様子を示す模式図である。
図3】実施例及び比較例において、樹脂付き銅箔切断時の端部粉落ちの評価が「C」の場合のスリット刃の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。数値範囲「AA~BB」という表記においては、両端の数値AA及びBBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明及び本実施形態に含まれる。
なお、本実施形態において、「樹脂成分」とは、樹脂組成物を構成する固形分のうち、後述する無機充填材等の無機化合物並びに難燃剤及び難燃助剤を除く、すべての成分と定義する。
また、本実施形態における固形分とは、水分、後述する溶媒等の揮発する物質以外の樹脂組成物中の成分のことをいう。すなわち、固形分は、25℃付近の室温で液状、水飴状又はワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない。
【0012】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)[以下、「(A)成分」と略称することがある]と、フッ素樹脂フィラー(B)[以下、「(B)成分」と略称することがある]と、チタネートカップリング剤(X)[以下、「(X)成分」と略称することがある]と、を含有する樹脂組成物である。本実施形態の樹脂組成物は、熱硬化性樹脂組成物であることが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物において、前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(X)成分の合計含有量は、樹脂組成物の固形分に対して、好ましくは15質量%以上、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%である。前記(A)成分、前記(B)成分及び前記(X)成分の合計含有量の上限に特に制限はなく、樹脂組成物の固形分に対して、100質量%であってもよいし、80質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよく、50質量%以下であってもよく、45質量%以下であってもよい。
以下、本実施形態の樹脂組成物に含有される各成分について説明する。
【0013】
<ポリフェニレンエーテル誘導体(A)>
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)としては、特に制限されず、公知のポリフェニレンエーテル誘導体、例えば後述する一般式(A-2)で表される構造単位を有するものを用いることができる。特に、高周波特性の観点並びに必要に応じて使用する熱硬化性樹脂(C)及び熱可塑性エラストマー(D)との相容性の観点から、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)は、分子末端にエチレン性不飽和結合含有基を有するポリフェニレンエーテル誘導体であることが好ましく、分子の両末端にエチレン性不飽和結合含有基を有するポリフェニレンエーテル誘導体であることがより好ましい。
なお、本明細書において、「エチレン性不飽和結合含有基」とは、付加反応が可能な炭素-炭素二重結合を含有する置換基を意味し、芳香環の二重結合は含まないものとする。
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0014】
前記エチレン性不飽和結合含有基としては、例えば、ビニル基、アリル基、1-メチルアリル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、スチリル基等の不飽和脂肪族炭化水素基;マレイミド基、下記一般式(A-1)で表される基等のヘテロ原子とエチレン性不飽和結合とを含む基などが挙げられる。これらの中でも、高周波特性及び導体との接着性の観点から、下記一般式(A-1)で表される基が好ましい。
【0015】
【化2】

(式中、Ra1は、水素原子又は炭素数1~20のアルキル基を示す。*は結合位置を示す。)
【0016】
a1が示す炭素数1~20のアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基又は環状アルキル基のいずれであってもよく、直鎖状アルキル基であることが好ましい。
上記アルキル基の炭素数は、1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3がさらに好ましく、1が特に好ましい。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基等が挙げられ、これらの中でも、メチル基が好ましい。
上記一般式(A-1)で表される基は、高周波特性及び導体との接着性の観点から、(メタ)アクリル基[すなわち、上記一般式(A-1)におけるRa1が、水素原子又はメチル基である基]であることが好ましく、メタクリル基であることがより好ましい。なお、本実施形態において、「(メタ)アクリル基」とは、アクリル基又はメタクリル基を意味する。
【0017】
なお、本明細書において、マレイミド基、上記一般式(A-1)で表される基等のように、一部に不飽和脂肪族炭化水素基を有しているが、その基全体として見たときに不飽和脂肪族炭化水素基とは言えない基は、上記「不飽和脂肪族炭化水素基」に含まれないものとする。
【0018】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)が1分子中に有するエチレン性不飽和結合含有基の数は、特に限定されないが、2~5個が好ましく、2~3個がより好ましく、2個がさらに好ましい。エチレン性不飽和結合含有基の数が上記下限値以上であると、優れた高周波特性並びに後述する熱硬化性樹脂(C)及び熱可塑性エラストマー(D)との良好な相容性が得られる傾向にある。一方、エチレン性不飽和結合含有基の数が上記上限値以下であると、優れた流動性及び成形性が得られる傾向にある。
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)は、前述の通り、エチレン性不飽和結合含有基を分子末端に有していることが好ましく、さらに、分子末端以外にもエチレン性不飽和結合含有基を有していてもよいが、分子末端のみにエチレン性不飽和結合含有基を有することがより好ましい。ポリフェニレンエーテル誘導体(A)は、分子末端にメタクリル基を有するポリフェニレンエーテルであることが好ましく、分子の両末端にメタクリル基を有するポリフェニレンエーテルであることがより好ましい。前記メタクリル基は、酸素原子と結合していてもよく、つまり、メタクリロイル基であってもよい。
【0019】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)は、フェニレンエーテル結合を有するものであり、下記一般式(A-2)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0020】
【化3】

(式中、Ra2は、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。na1は、0~4の整数を示す。)
【0021】
上記一般式(A-2)中のRa2が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
a1は0~4の整数を示し、1又は2が好ましく、2であることがより好ましい。なお、na1が1又は2である場合、Ra2はベンゼン環上のオルト位(但し、酸素原子の置換位置を基準とする。)に置換していることが好ましい。また、na1が2以上の整数である場合、複数のRa2同士は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記一般式(A-2)で表される構造単位は、下記一般式(A-2’)で表される構造単位であることが好ましい。
【0022】
【化4】
【0023】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)は、高周波特性及び導体との接着性の観点から、下記一般式(A-3)で表される化合物であることが好ましい。
【0024】
【化5】

(式中、Ra2及びna1は、上記一般式(A-2)における説明の通りである。Ra3及びRa4は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。na2及びna3は、各々独立に、0~4の整数を示す。na4及びna5は、各々独立に、0~20の整数を示し、na4及びna5の合計は、1~30の整数である。Xa1は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合を示す。Ya1及びYa2は、各々独立に、上記エチレン性不飽和結合含有基を示す。)
【0025】
上記一般式(A-3)中のRa3及びRa4が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明は、上記一般式(A-2)中のRa2が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明と同じである。
a2及びna3は、0~4の整数を示し、0~3の整数が好ましく、2又は3が好ましい。na2が2以上の整数である場合、複数のRa3同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。na3が2以上の整数である場合、複数のRa4同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
a4及びna5は、0~20の整数を示し、1~20の整数が好ましく、2~15の整数がより好ましく、3~10の整数がさらに好ましい。na4又はna5が2以上の整数である場合、複数のna1同士は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
a4及びna5の合計は、1~30の整数であり、2~25の整数が好ましく、5~20の整数がより好ましく、7~15の整数がさらに好ましい。
【0026】
上記一般式(A-3)中のXa1が示す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。
a1が示す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。
a1が示す基の中でも、高周波特性及び導体との接着性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
a1及びYa2が示すエチレン性不飽和結合含有基の好ましい態様については上記した通りである。
上記一般式(A-3)で表される化合物は、高周波特性及び導体との接着性の観点から、下記一般式(A-4)で表される化合物であることが好ましい。
【0027】
【化6】

(式中、na4及びna5は、上記一般式(A-3)における説明の通りである。Ra5及びRa6は、各々独立に、水素原子又はメチル基を示す。Xa2は、メチレン基又はイソプロピリデン基を示す。)
【0028】
〔ポリフェニレンエーテル誘導体(A)の重量平均分子量(Mw)〕
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、500~7,000が好ましく、800~5,000がより好ましく、1,000~3,000がさらに好ましく、1,200~2,500が特に好ましい。(A)成分の重量平均分子量(Mw)が上記下限値以上であると、ポリフェニレンエーテルの優れた誘電特性を有し、且つ耐熱性に優れる硬化物が得られる傾向にある。(A)成分の重量平均分子量(Mw)が上記上限値以下であると、優れた成形性が得られる傾向にある。
なお、本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した値であり、より詳細には実施例に記載の測定方法により求めた値である。
【0029】
ポリフェニレンエーテル誘導体(A)の合成方法は、公知のポリフェニレンエーテルの合成方法及び変性方法を適用することができ、特に限定されるものではない。
【0030】
((A)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物中におけるポリフェニレンエーテル誘導体(A)の含有量は、特に限定されないが、樹脂成分の総和100質量部に対して、1~80質量部が好ましく、1~45質量部がより好ましく、1~20質量部がさらに好ましく、2~10質量部が特に好ましい。(A)成分の含有量が上記下限値以上であると、より優れた高周波特性及び低吸湿性が得られる傾向にある。(A)成分の含有量が上記上限値以下であると、より優れた耐熱性、成形性及び加工性が得られる傾向にある。
【0031】
<フッ素樹脂フィラー(B)>
本実施形態の樹脂組成物は、フッ素樹脂フィラー(B)を含有することにより、優れた高周波特性が得られると共に、樹脂付き金属箔の切断時に端部の粉落ちが効果的に抑制される。当該効果は、前記(A)成分と(B)成分とを組み合わせることで顕著に発現する。樹脂組成物へフッ素樹脂そのものを含有させる場合よりも、フッ素樹脂フィラー(B)を含有させることで高周波特性の改善効果及び樹脂付き金属箔の切断時に端部の粉落ち抑制効果が大きくなる。
フッ素樹脂フィラー(B)の形状としては、例えば、粒子状、粉末状、針状、柱状、板状、燐片状等が挙げられる。これらの中でも、粒子状が好ましい。
フッ素樹脂フィラー(B)は、有機溶剤と混合されたスラリーを用いてもよい。前記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン化合物などが挙げられる。
フッ素樹脂フィラー(B)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0032】
フッ素樹脂フィラー(B)としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィラー、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)フィラー、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)フィラー、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体(ETFE)フィラー、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)フィラー等が挙げられる。これらの中でも、高周波特性及び樹脂付き金属箔の切断時に端部の粉落ち抑制の観点から、フッ素樹脂フィラー(B)としては、PTFEフィラーが好ましい。また、フッ素樹脂フィラー(B)の表面は、無機充填剤で被覆されていてもよい。
フッ素樹脂フィラー(B)の平均粒子径は、好ましくは0.1~10μm、より好ましくは0.2~5μm、さらに好ましくは0.5~4.0μm、特に好ましくは1.5~4.0μmである。ここで、平均粒子径は、例えば、レーザー回折粒度分布測定により算出することができ、以下同様である。
【0033】
((B)成分の含有量)
フッ素樹脂フィラー(B)の含有量は、樹脂組成物の固形分に対して、好ましくは1質量%以上50質量%未満、より好ましくは1~45質量%、さらに好ましくは1~40質量%、特に好ましくは5~40質量%であり、15~40質量%であってもよいし、25~40質量%であってもよい。フッ素樹脂フィラー(B)の含有量が前記下限値以上であれば、充分な高周波特性が得られる傾向にある。一方、フッ素樹脂フィラー(B)の含有量が樹脂組成物の固形分に対して50質量%未満であれば、金属箔及び樹脂組成物中の有機成分との密着性の低下を抑制でき、耐熱性及び銅箔引きはがし強さが低下するのを避けられる傾向にある。
【0034】
<チタネートカップリング剤(X)>
本実施形態の樹脂組成物は、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)及びフッ素樹脂フィラー(B)に加えてチタネートカップリング剤(X)を含有する。これにより、本実施形態の樹脂組成物は、優れた高周波特性を発現し、樹脂付き金属箔の切断時に端部の粉落ちが抑制されると共に、銅箔引き剥がし強度にも優れる。
チタネートカップリング剤(X)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、シランカップリング剤と併用してもよい。
【0035】
チタネートカップリング剤(X)としては、銅箔引き剥がし強度の観点から、ヒドロキシ基と炭化水素基とを有することが好ましい。前記ヒドロキシ基がフッ素樹脂フィラー(B)との親和性を有すると考えられるため、チタネートカップリング剤(X)がヒドロキシ基を有することで、前記ヒドロキシ基はフッ素樹脂フィラー(B)側へ配向する。そのため、前記炭化水素基はフッ素樹脂フィラー(B)側とは反対方向へ配向する傾向があると考えられる。そして、前記炭化水素基は、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)並びに必要に応じて配合する熱硬化性樹脂(C)及び熱可塑性エラストマー(D)等が有する炭化水素基との親和性が高いため、チタネートカップリング剤(X)がポリフェニレンエーテル誘導体(A)並びに必要に応じて配合する熱硬化性樹脂(C)及び熱可塑性エラストマー(D)等とフッ素樹脂フィラー(B)とのバインダとしての役割を果たすと推察する。その結果、樹脂組成物中の銅箔との親和性の高い部位が樹脂組成物の外側へ配向することになり、銅箔引き剥がし強度が高まる傾向になるものと推察する。
なお、チタネートカップリング剤(X)がヒドロキシ基と炭化水素基とを有することで、フッ素樹脂フィラー(B)の樹脂組成物中での凝集抑制効果が高まる傾向にある。
【0036】
チタネートカップリング剤(X)はリン原子を有していてもよいし、リン酸基を有していてもよい。チタネートカップリング剤(X)が有するヒドロキシ基は、リン酸基由来のヒドロキシ基であってもよい。
チタネートカップリング剤(X)が有する前記炭化水素基は、炭素数1~4の炭化水素基と炭素数5~30の炭化水素基とを含む態様であってもよい。特に、チタネートカップリング剤(X)が有する前記炭化水素基が炭素数5~30の炭化水素基を含むことにより、銅箔引き剥がし強度が高まる傾向にあると共に、フッ素樹脂フィラー(B)の樹脂組成物中での凝集抑制効果も高まる傾向にある。
炭素数1~4の炭化水素基の炭素数は、2~4であってもよいし、3であってもよい。炭素数5~30の炭化水素基の炭素数は、5~20であってもよいし、6~18であってもよいし、6~15であってもよいし、6~12であってもよいし、6~10であってもよい。
【0037】
チタネートカップリング剤(X)は、銅箔引き剥がし強度の観点から、下記一般式(X-1)又は下記一般式(X-2)で表されるチタネートカップリング剤であることが好ましく、下記一般式(X-1)で表されるチタネートカップリング剤であることがより好ましい。
【化7】

(式中、Rx1は、有機基を示す。Rx2は、ヒドロキシ基と炭化水素基とを有する有機基を示す。3つのRx2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【化8】

(式中、Rx3は、有機基を示す。2つのRx3は互いに結合していてもよい。Rx4は、ヒドロキシ基と炭化水素基とを有する有機基を示す。2つのRx3は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。2つのRx4は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
【0038】
(一般式(X-1)中の各基の説明)
x1が示す有機基に特に制限はないが、炭素数1~10のアルキル基を有する有機基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましく、炭素数1~5のアルキル基であってもよく、炭素数2~4のアルキル基であってもよく、炭素数3のアルキル基であってもよい。Rx1はイソプロピル基であってもよい。
x1が示す有機基は、ケト基、エーテル基等を有していてもよいし、有していなくてもよい。
x2が示す「ヒドロキシ基と炭化水素基とを有する有機基」において、前記炭化水素基の炭素数は、特に制限されるものではないが、5~30であることが好ましく、5~20であってもよいし、6~18であってもよいし、6~15であってもよいし、6~12であってもよいし、6~10であってもよい。前記炭化水素基は、オクチル基であってもよい。
3つのRx2は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
x2が示す「ヒドロキシ基と炭化水素基とを有する有機基」は、特に制限されるものではないが、リン酸基を有していてもよく、例えば、下記一般式(X-3)で表される有機基であってもよい。
【0039】
【化9】

(式中、Rx5及びRx6は、それぞれ独立に、炭化水素基を示す。*は結合位置を示す。)
【0040】
前記一般式(X-3)中、Rx5及びRx6が示す炭化水素基の炭素数は、特に制限されるものではないが、5~30であることが好ましく、5~20であってもよいし、6~18であってもよいし、6~15であってもよいし、6~12であってもよいし、6~10であってもよい。前記炭化水素基は、オクチル基であってもよい。
x5とRx6は、同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0041】
(一般式(X-2)中の各基の説明)
x3が示す有機基に特に制限はないが、炭素数1~10のアルキル基を有する有機基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基であることがより好ましく、炭素数1~5のアルキル基であってもよく、炭素数2~4のアルキル基であってもよく、炭素数3のアルキル基であってもよい。
2つのRx3は互いに結合していてもよい。具体的には、2つのRx3は互いに結合して、例えば、置換又は無置換のアルキレン基等になっていてもよい。前記アルキレン基の炭素数は、1~5であってもよいし、1~3であってもよいし、2であってもよい。アルキレン基が有していてもよい置換基としては、例えば、オキシ基(=O)等が挙げられる。
x4が示す「ヒドロキシ基と炭化水素基とを有する有機基」において、前記炭化水素基の炭素数は、特に制限されるものではないが、5~30であることが好ましく、5~20であってもよいし、6~18であってもよいし、6~15であってもよいし、6~12であってもよいし、6~10であってもよい。前記炭化水素基は、オクチル基であってもよい。
2つのRx3は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。2つのRx4は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0042】
(チタネートカップリング剤(X)の添加方法)
チタネートカップリング剤(X)の樹脂組成物への添加方法は、フッ素樹脂フィラー(B)を配合した樹脂組成物へチタネートカップリング剤(X)を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよい。また、予め有機溶媒中にフッ素樹脂フィラー(B)を分散させたスラリーにチタネートカップリング剤(X)を添加後、好ましくは撹拌し、得られたスラリーを(A)成分及び必要に応じてその他の成分を含有する樹脂組成物へ添加する方法を採用してもよい。予め有機溶媒中にフッ素樹脂フィラー(B)を分散させたスラリーにチタネートカップリング剤(X)を添加する方法を採用することで、スラリー中のフッ素樹脂フィラー(B)の沈降抑制効果を得ることができる。
【0043】
((X)成分の含有量)
チタネートカップリング剤(X)の含有量は、特に制限されるものではないが、フッ素樹脂フィラー(B)に対して、好ましくは0.1~10質量%、より好ましくは0.1~5質量%、さらに好ましくは0.3~2.5質量%、特に好ましくは0.5~2.0質量%である。チタネートカップリング剤(X)の含有量が前記下限値以上であることにより、銅箔引き剥がし強度が高くなる傾向にある。チタネートカップリング剤(X)の含有量が前記上限値以下であることにより、チタネートカップリング剤(X)が有する基、例えばリン酸基等、の分解に起因する耐熱性の低下を抑制できる傾向にある。
【0044】
<熱硬化性樹脂(C)>
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、エポキシ樹脂、シアネート樹脂及びマレイミド化合物からなる群から選択される1種以上の熱硬化性樹脂(C)を含有することが好ましい。これらの中でも、高周波特性、絶縁信頼性、導体との接着性及び難燃性の観点から、熱硬化性樹脂(C)は、マレイミド化合物を含有することが好ましい。
熱硬化性樹脂(C)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0045】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂であることが好ましい。ここで、エポキシ樹脂は、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂、グリシジルアミンタイプのエポキシ樹脂、グリシジルエステルタイプのエポキシ樹脂等に分類される。これらの中でも、グリシジルエーテルタイプのエポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂は、主骨格の違いによっても種々のエポキシ樹脂に分類され、上記それぞれのタイプのエポキシ樹脂において、さらに、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の脂環式エポキシ樹脂;脂肪族鎖状エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂等のナフタレン骨格含有型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂;キシリレン型エポキシ樹脂;ジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂などに分類される。
エポキシ樹脂を用いる場合、必要に応じて、エポキシ樹脂の硬化剤、硬化助剤等を併用してもよい。
【0046】
(シアネート樹脂)
シアネート樹脂としては、例えば、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン、ビス(4-シアナトフェニル)エタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナトフェニル)メタン、2,2-ビス(4-シアナトフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、α,α’-ビス(4-シアナトフェニル)-m-ジイソプロピルベンゼン、フェノール付加ジシクロペンタジエン重合体のシアネートエステル化合物、フェノールノボラック型シアネートエステル化合物、クレゾールノボラック型シアネートエステル化合物等が挙げられる。
シアネート樹脂を用いる場合、必要に応じて、シアネート樹脂の硬化剤、硬化助剤等を併用してもよい。
【0047】
(マレイミド化合物)
マレイミド化合物としては、N-置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物(c1)[以下、単に「マレイミド化合物(c1)」又は「(c1)成分」と略称することがある。]及びその誘導体からなる群から選択される1種以上であることが好ましい。
なお、上記「その誘導体」としては、N-置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物と、後述するジアミン化合物等のアミン化合物との付加反応物などが挙げられる。
【0048】
マレイミド化合物(c1)としては、N-置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物であれば特に限定されない。マレイミド化合物(c1)の具体例としては、例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等の芳香族マレイミド化合物;1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、ピロリロン酸バインダ型長鎖アルキルビスマレイミド等の脂肪族マレイミド化合物などが挙げられる。これらの中でも、導体との接着性及び機械特性の観点から、マレイミド化合物(c1)としては、芳香族マレイミド化合物が好ましく、芳香族ビスマレイミド化合物がより好ましく、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミドがさらに好ましい。
【0049】
マレイミド化合物(c1)としては、下記一般式(C1-1)で表される化合物が好ましい。
【0050】
【化10】

(式中、Xc1は2価の有機基を示す。)
【0051】
上記一般式(C1-1)中のXc1が示す2価の有機基としては、下記一般式(C1-2)、(C1-3)、(C1-4)又は(C1-5)で表される基が挙げられる。
【0052】
【化11】

(式中、Rc1は、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。nc1は、0~4の整数を示す。*は結合位置を示す。)
【0053】
c1が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~3の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基がより好ましい。
c1は0~4の整数を示し、入手容易性の観点から、0~2の整数が好ましく、0であることがより好ましい。nc1が2以上の整数である場合、複数のRc1同士は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
【化12】

(式中、Rc2及びRc3は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。Xc2は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、単結合、又は下記一般式(C1-3-1)で表される2価の基を示す。nc2及びnc3は、各々独立に、0~4の整数を示す。*は結合位置を示す。)
【0055】
c2及びRc3が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明は、上記一般式(C1-2)中のRc1が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明と同じである。
c2が示す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、炭素数1~3のアルキレン基が好ましく、メチレン基がより好ましい。
c2が示す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。該アルキリデン基としては、イソプロピリデン基が好ましい。
c2及びnc3は、0~4の整数を示し、入手容易性の観点から、0~2の整数が好ましく、0又は2がより好ましい。nc2が2以上の整数である場合、複数のRc2同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。nc3が2以上の整数である場合、複数のRc3同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
c2が示す一般式(C1-3-1)で表される2価の基は以下の通りである。
【0056】
【化13】

(式中、Rc4及びRc5は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。Xc3は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合を示す。nc4及びnc5は、各々独立に、0~4の整数を示す。*は結合位置を示す。)
【0057】
c4及びRc5が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明は、上記一般式(C1-2)中のRc1が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明と同じである。
c3が示す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基としては、上記一般式(C1-3)中のXc2が示す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基と同じものが挙げられる。これらの中でも、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
c3が示す基の中でも、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましく、イソプロピリデン基がより好ましい。
c4及びnc5は0~4の整数を示し、入手容易性の観点から、0~2の整数が好ましく、0であることがより好ましい。nc4が2以上の整数である場合、複数のRc4同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。nc5が2以上の整数である場合、複数のRc5同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0058】
【化14】

(式中、nc6は、1~10の整数を示す。*は結合位置を示す。)
【0059】
c6は、入手容易性の観点から、1~5の整数が好ましく、1~3の整数がより好ましい。
【0060】
【化15】

(式中、Rc6及びRc7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基を示す。nc7は、1~8の整数を示す。*は結合位置を示す。)
【0061】
c6及びRc7が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明は、上記一般式(C1-2)中のRc1が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明と同じである。
c7は1~8の整数を示し、1~3の整数が好ましく、1であることがより好ましい。
c7が2以上の整数である場合、複数のRc6同士、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよく、複数のRc7同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0062】
上記一般式(C1-1)中のXc1としては、高周波特性の観点から、下記式(Xc1-1)~(Xc1-3)のいずれかで表される2価の基であることが好ましく、下記式(Xc1-3)で表される2価の基であることがより好ましい。
【0063】
【化16】

(式中、*は、マレイミド基中の窒素原子との結合位置を示す。)
【0064】
マレイミド化合物としては、有機溶媒への溶解性、相容性、導体との接着性及び高周波特性の観点から、マレイミド化合物(c1)の誘導体が好ましい。
マレイミド化合物(c1)の誘導体としては、マレイミド化合物(c1)由来の構造単位と、第1級アミノ基を有するアミン化合物(c2)[以下、「アミン化合物(c2)」又は「(c2)成分」と略称することがある。]由来の構造単位と、を有する変性マレイミド化合物(Z)[以下、「変性マレイミド化合物(Z)」又は「(Z)成分」と略称することがある。]であることが好ましい。
つまり、本実施形態の樹脂組成物は、(C)成分として前記マレイミド化合物を含有し、且つ、該マレイミド化合物が、N-置換マレイミド基を少なくとも2個以上有するマレイミド化合物(c1)由来の構造単位と第1級アミノ基を有するアミン化合物(c2)由来の構造単位と、を有する変性マレイミド化合物である態様が好ましい。
なお、変性マレイミド化合物(Z)に含まれる(c1)成分由来の構造単位及び(c2)成分由来の構造単位は、各々について、1種類であってもよく、2種類以上の組み合わせであってもよい。
【0065】
変性マレイミド化合物(Z)は、(c1)成分が有するマレイミド基と(c2)成分が有する第1級アミノ基とが付加反応してなる、下記式(C-1)で表される構造を含む化合物であることが好ましい。
【化17】

(*は他の構造への結合位置を示す。)
【0066】
(c1)成分由来の構造単位としては、例えば、下記一般式(C1-6)で表される基及び下記一般式(C1-7)で表される基からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【0067】
【化18】

(式中、Xc1は上記一般式(C1-1)中のXc1と同じであり、*は他の構造への結合位置を示す。)
【0068】
変性マレイミド化合物(Z)中における(c1)成分由来の構造単位の含有量は、特に限定されないが、50~95質量%が好ましく、70~92質量%がより好ましく、85~90質量%がさらに好ましい。(c1)成分由来の構造単位の含有量が上記範囲内であると、高周波特性がより良好となり、且つ、良好なフィルムハンドリング性が得られる傾向にある。
【0069】
アミン化合物(c2)は、アミノ基を2個以上有する化合物が好ましく、アミノ基を2個有するジアミン化合物がより好ましい。
アミン化合物(c2)としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、1,4-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン化合物;第1級アミノ基を有するアミン変性シロキサン化合物などが挙げられる。
【0070】
これらの中でも、(c2)成分としては、有機溶媒への溶解性、(c1)成分との反応性、及び耐熱性に優れるという観点から、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、及び4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましい。また、高周波特性及び低吸水性に優れるという観点からは、(c2)成分としては、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンが好ましい。また、導体との接着性、伸び、破断強度等の機械特性に優れるという観点からは、(c2)成分としては、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましい。さらに、有機溶媒への溶解性、合成時の反応性、耐熱性、導体との接着性に優れることに加えて、高周波特性及び低吸湿性に優れるという観点からは、(c2)成分としては、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリンが好ましい。
【0071】
アミン化合物(c2)としては、下記一般式(C2-1)で表される化合物が好ましい。
【0072】
【化19】

(式中、Xc4は2価の有機基を示す。)
【0073】
(c2)成分は、上記一般式(C2-1)中のXc4が、下記一般式(C2-2)で表される2価の基である芳香族ジアミン化合物[以下、「芳香族ジアミン化合物(C2-2)」と略称することがある。]を含有することが好ましい。
【0074】
【化20】

(式中、Rc11及びRc12は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、炭素数1~5のアルコキシ基、水酸基又はハロゲン原子を示す。Xc5は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、フルオレニレン基、単結合、又は下記一般式(C2-2-1)若しくは(C2-2-2)で表される2価の基を示す。nc8及びnc9は、各々独立に、0~4の整数を示す。*は結合位置を示す。)
【0075】
上記一般式(C2-2)中のRc11及びRc12が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
c5が示す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。
c5が示す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。
c8及びnc9は、0~4の整数を示し、入手容易性の観点から、0又は1が好ましい。nc8又はnc9が2以上の整数である場合、複数のRc11同士又は複数のRc12同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記一般式(C2-2)中のXc5が示す一般式(C2-2-1)で表される2価の基は以下の通りである。
【0076】
【化21】

(式中、Rc13及びRc14は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。Xc6は炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、m-フェニレンジイソプロピリデン基、p-フェニレンジイソプロピリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合を示す。nc10及びnc11は、各々独立に、0~4の整数を示す。*は結合位置を示す。)
【0077】
上記一般式(C2-2-1)中のRc13及びRc14が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明は、上記一般式(C2-2)中のRc11及びRc12が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明と同じである。
c6が示す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基についての説明は、上記一般式(C2-2)中のXc5が示す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基についての説明と同じである。
c10及びnc11は0~4の整数を示し、入手容易性の観点から、0~2の整数が好ましく、0であることがより好ましい。nc10が2以上の整数である場合、複数のRc13同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。nc11が2以上の整数である場合、複数のRc14同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
上記一般式(C2-2)中のXc5が示す一般式(C2-2-2)で表される2価の基は以下の通りである。
【0078】
【化22】

(式中、Rc15は、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子を示す。Xc7及びXc8は、各々独立に、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合を示す。nc12は、0~4の整数を示す。*は結合位置を示す。)
【0079】
上記一般式(C2-2-2)中のRc15が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明は、上記一般式(C2-2)中のRc11及びRc12が示す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基についての説明と同じである。
c7及びXc8が示す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基としては、上記一般式(C2-2)中のXc5が示す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基と同じものが例示される。これらの中でも、Xc7及びXc8としては、炭素数2~5のアルキリデン基であることが好ましく、イロプロピリデン基であることがより好ましい。
c12は0~4の整数を示し、入手容易性の観点から、0~2の整数が好ましく、0であることがより好ましい。nc12が2以上の整数である場合、複数のRc15同士は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
また、(c2)成分は、上記一般式(C2-1)中のXc4が、下記一般式(C2-3)で表される構造単位を含有する2価の基であるアミン変性シロキサン化合物を含有していてもよく、上記一般式(C2-1)中のXc4が、下記一般式(C2-4)で表される2価の基である末端アミン変性シロキサン化合物[以下、「末端アミン変性シロキサン化合物(C2-4)」と略称することがある。]を含有していてもよい。
【0081】
【化23】

(式中、Rc16及びRc17は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を表す。*は結合位置を示す。)
【0082】
【化24】

(式中、Rc16及びRc17は、上記一般式(C2-3)中のものと同じであり、Rc18及びRc19は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示す。Xc9及びXc10は、各々独立に、2価の有機基を示し、nc13は、2~100の整数を示す。*は結合位置を示す。)
【0083】
上記一般式(C2-3)及び(C2-4)中のRc16~Rc19が示す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
c16~Rc19が示す置換フェニル基におけるフェニル基が有する置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数2~5のアルキニル基等が挙げられる。該炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該炭素数2~5のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基等が挙げられる。該炭素数2~5のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
c9及びXc10が示す2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-又はこれらが組み合わされた2価の連結基等が挙げられる。該アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1~10のアルキレン基が挙げられる。該アルケニレン基としては、例えば、炭素数2~10のアルケニレン基が挙げられる。該アルキニレン基としては、例えば、炭素数2~10のアルキニレン基が挙げられる。該アリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~20のアリーレン基が挙げられる。
これらの中でも、Xc9及びXc10としては、アルキレン基、アリーレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。
c13は、2~100の整数を示し、2~50の整数が好ましく、3~40の整数がより好ましく、5~30の整数がさらに好ましい。nc13が2以上の整数である場合、複数のRc16同士又は複数のRc17同士は、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0084】
(c2)成分由来の構造単位としては、例えば、下記一般式(C2-5)で表される基及び下記一般式(C2-6)で表される基からなる群から選択される1種以上が挙げられる。
【化25】

(式中、Xc4は上記一般式(C2-1)中のXc4と同じであり、*は他の構造への結合位置を示す。)
【0085】
変性マレイミド化合物(Z)中における(c2)成分由来の構造単位の含有量は、特に限定されないが、5~50質量%が好ましく、8~30質量%がより好ましく、10~15質量%がさらに好ましい。(c2)成分由来の構造単位の含有量が上記範囲内であると、高周波特性に優れ、且つより良好な耐熱性、難燃性及びガラス転移温度が得られる傾向にある。
【0086】
変性マレイミド化合物(Z)中における(c1)成分由来の構造単位と、(c2)成分由来の構造単位の合計含有量は、特に限定されないが、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましく、100質量%(すなわち、(c1)成分由来の構造単位及び(c2)成分由来の構造単位のみからなるもの)であることが特に好ましい。
【0087】
変性マレイミド化合物(Z)中における(c1)成分由来の構造単位と、(c2)成分由来の構造単位との含有比率は、特に限定されないが、(c2)成分の-NH基由来の基(-NHも含む)の合計当量(Ta2)に対する、(c1)成分に由来するマレイミド基由来の基(マレイミド基も含む)の合計当量(Ta1)の当量比(Ta1/Ta2)が、好ましくは0.05~10、より好ましくは1~5となる含有比率である。当量比(Ta1/Ta2)が上記範囲内であると、高周波特性に優れ、且つより良好な耐熱性、難燃性及びガラス転移温度が得られる傾向にある。
【0088】
マレイミド化合物は、高周波特性、絶縁信頼性、有機溶媒への溶解性、導体との接着性、成形性等の観点から、下記一般式(C-2)で表される化合物を含有することが好ましい。
【0089】
【化26】

(式中、Xc1及びXc4は、上記一般式(c1-1)及び(c2-1)における説明の通りである。)
【0090】
(変性マレイミド化合物(Z)の製造方法)
(Z)成分は、例えば、(c1)成分と(c2)成分とを有機溶媒中で反応させることで製造することができる。
具体的には、(c1)成分、(c2)成分、必要によりその他の成分を反応器に所定量仕込み、(c1)成分と(c2)成分とをマイケル付加反応[以下、「プレ反応」と称することがある。]を行うことにより、変性マレイミド化合物(Z)が得られる。
反応条件は特に限定されないが、ゲル化を抑制しつつ、良好な反応性及び作業性が得られるという観点からは、反応温度は50~160℃、反応時間は1~10時間が好ましい。
【0091】
プレ反応では、必要に応じて反応触媒を使用してもよい。反応触媒としては、例えば、p-トルエンスルホン酸等の酸性触媒;トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン等のアミン類;メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール等のイミダゾール類;トリフェニルホスフィン等のリン系触媒などが挙げられる。これらは1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、反応触媒の配合量に特に制限はないが、(c1)成分及び(c2)成分の合計量100質量部に対して、例えば、0.01~5質量部である。
【0092】
また、プレ反応では、必要に応じて有機溶媒を追加又は濃縮して反応原料の固形分濃度及び反応液粘度を調整してもよい。反応原料の固形分濃度は、特に限定されないが、10~90質量%が好ましく、20~80質量%がより好ましい。反応原料の固形分濃度が上記下限値以上であると、十分な反応速度が得られ、製造コストの面で有利となる傾向にあり、上記上限値以下であると、より良好な溶解性が得られ、撹拌効率が良くなり、ゲル化し難くなる傾向にある。
【0093】
変性マレイミド化合物(Z)の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、400~10,000が好ましく、1,000~5,000がより好ましく、1,500~4,000がさらに好ましく、2,000~3,000が特に好ましい。
【0094】
((C)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物が熱硬化性樹脂(C)を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、高周波特性、耐熱性及び成形性の観点から、樹脂成分の総和100質量部に対して、5~80質量部が好ましく、5~60質量部がより好ましく、10~50質量部がさらに好ましく、25~45質量部が特に好ましい。
【0095】
本実施形態の樹脂組成物が熱硬化性樹脂(C)を含有する場合、ポリフェニレンエーテル誘導体(A)と熱硬化性樹脂(C)との含有割合[(A)/(C)]は、特に限定されないが、質量比で、5/95~80/20が好ましく、6/94~60/40がより好ましく、8/92~40/60がさらに好ましく、10/90~20/80が特に好ましい。上記含有割合[(A)/(C)]が5/95以上であると、より優れた高周波特性及び低吸湿性が得られる傾向にある。上記含有割合[(A)/(C)]が80/20以下であると、より優れた耐熱性、成形性及び加工性が得られる傾向にある。
【0096】
本実施形態の樹脂組成物は、さらに、熱可塑性エラストマー(D)、硬化促進剤(E)及び無機充填材(F)からなる群から選択される1種以上を含有することが好ましい。次にこれらの各成分について説明する。
【0097】
<熱可塑性エラストマー(D)>
本実施形態の樹脂組成物は、熱可塑性エラストマー(D)を含有することにより、高周波特性、成形性、導体との接着性、はんだ耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数のバランスが良くなる傾向にある。
熱可塑性エラストマー(D)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0098】
熱可塑性エラストマー(D)としては、下記一般式(D-1)で表される構造単位を有する熱可塑性エラストマーが挙げられ、スチレン由来の構造単位(すなわち、下記一般式(D-1)においてRd1が水素原子であり、nd1が0である構造単位)を有する熱可塑性エラストマー(以下、スチレン系熱可塑性エラストマーと称することがある)であることが好ましい。
【0099】
【化27】

(式中、Rd1は、水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を示し、Rd2は、炭素数1~5のアルキル基を示す。nd1は、0~5の整数を示す。)
【0100】
d1が示す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。
d1が示す基の中でも、水素原子が好ましい。
d2が示す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基は、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
d1は、0~5の整数を示し、0~2の整数が好ましく、0であることがより好ましい。
d1が2以上の整数である場合、複数のRd1同士は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0101】
熱可塑性エラストマー(D)が有する化合物由来の構造単位以外の構造単位としては、ブタジエン由来の構造単位、イソプレン由来の構造単位、マレイン酸由来の構造単位、無水マレイン酸由来の構造単位等が挙げられる。
上記ブタジエン由来の構造単位及び上記イソプレン由来の構造単位は、水素添加されていることが好ましい。水素添加されている場合、ブタジエン由来の構造単位はエチレン単位とブチレン単位とが混合した構造単位となり、イソプレン由来の構造単位はエチレン単位とプロピレン単位とが混合した構造単位となる。
【0102】
熱可塑性エラストマー(D)としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)の水素添加物等の水添スチレン系熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数の観点から、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物が好ましい。
【0103】
スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)の水素添加物としては、例えば、ブタジエンブロック中の炭素-炭素二重結合を完全水添してなるスチレン-エチレン-ブチレン-スチレン共重合体(SEBS)と、ブタジエンブロック中の1,2-結合部位の炭素-炭素二重結合を部分水添してなるスチレン-ブタジエン-ブチレン-スチレン(SBBS)が挙げられる。なお、SEBSにおける完全水添とは、通常、全体の炭素-炭素二重結合に対して90%以上であり、95%以上であってもよく、99%以上であってもよく、実質的に100%であってもよい。また、SBBSにおける部分水添率は、例えば、全体の炭素-炭素二重結合に対して60~85%である。
【0104】
SEBSにおいて、スチレン由来の構造単位の含有率[以下、「スチレン含有率」と略称することがある。]は、特に限定されないが、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数の観点から、5~80質量%が好ましく、10~70質量%がより好ましく、15~60質量%がさらに好ましく、20~50質量%が特に好ましい。
SEBSのメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、230℃、荷重2.16kgf(21.2N)の測定条件において、0.1~20g/10minが好ましく、1~15g/10minがより好ましく、2~10g/10minがさらに好ましく、3~7g/10minが特に好ましい。
【0105】
SBBSにおいて、スチレン含有率は、特に限定されないが、高周波特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び熱膨張係数の観点から、40~80質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましく、55~75質量%がさらに好ましい。
SBBSのMFRは、特に限定されないが、190℃、荷重2.16kgf(21.2N)の測定条件において、0.1~10g/10minが好ましく、0.5~8g/10minがより好ましく、1~6g/10minがさらに好ましい。
【0106】
熱可塑性エラストマー(D)は、無水マレイン酸等によって酸変性されたものであってもよい。酸変性された熱可塑性エラストマー(D)の酸価は、特に限定されないが、2~20mgCHONa/gが好ましく、5~15mgCHONa/gがより好ましく、7~13mgCHONa/gがさらに好ましい。
【0107】
((D)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物が熱可塑性エラストマー(D)を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、樹脂成分の総和100質量部に対して、2~40質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましく、8~25質量部がさらに好ましく、10~20質量部が特に好ましい。熱可塑性エラストマー(D)の含有量が上記下限値以上であると、より優れた高周波特性及び耐吸湿性が得られる傾向にある。熱可塑性エラストマー(D)の含有量が上記上限値以下であると、良好な耐熱性、成形性及び加工性が得られる傾向にある。
【0108】
<硬化促進剤(E)>
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤(E)を含有することにより、硬化性が向上し、より優れた高周波特性、耐熱性、導体との接着性、弾性率及びガラス転移温度が得られる傾向にある。
本実施形態の樹脂組成物が硬化促進剤(E)を含有する場合、使用する熱硬化性樹脂(C)成分の種類に合わせて好適な硬化促進剤(E)を適宜選択すればよい。
硬化促進剤(E)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0109】
(E)成分としては、例えば、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、有機金属塩、酸性触媒、有機過酸化物等が挙げられる。なお、本実施形態において、イミダゾール系硬化促進剤は、アミン系硬化促進剤に分類しないものとする。
アミン系硬化促進剤としては、例えば、トリエチルアミン、ピリジン、トリブチルアミン、ジシアンジアミド等の第1級~第3級アミンを有するアミン化合物;第4級アンモニウム化合物などが挙げられる。
イミダゾール系硬化促進剤としては、例えば、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、イソシアネートマスクイミダゾール(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物等)等のイミダゾール化合物が挙げられる。
リン系硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン等の第3級ホスフィン;p-ベンゾキノンのトリ-n-ブチルホスフィン付加反応物等の第4級ホスホニウム化合物などが挙げられる。
有機金属塩としては、例えば、マンガン、コバルト、亜鉛等のカルボン酸塩などが挙げられる。
酸性触媒としては、例えば、p-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3,2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ジ(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
これらの中でも、より優れた高周波特性、耐熱性、導体との接着性、弾性率及びガラス転移温度が得られるという観点から、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤が好ましく、ジシアンジアミド、イミダゾール系硬化促進剤、第4級ホスホニウム化合物がより好ましく、これらを併用することがさらに好ましい。このとき、有機過酸化物も併用してもよいが、硬化物の物性の観点から、有機過酸化物を含有しないことが好ましい。
【0110】
((E)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物が硬化促進剤(E)を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、熱硬化性樹脂(C)100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましく、0.1~5質量部がさらに好ましく、0.5~4質量部が特に好ましい。硬化促進剤(E)の含有量が上記範囲内であると、より良好な高周波特性、耐熱性、保存安定性及び成形性が得られる傾向にある。
【0111】
<無機充填材(F)>
本実施形態の樹脂組成物は、無機充填材(F)を含有することにより、より優れた低熱膨張性、高弾性率性、耐熱性及び難燃性が得られる傾向にある。
無機充填材(F)は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0112】
無機充填材(F)としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー(焼成クレー等)、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。これらの中でも、熱膨張係数、弾性率、耐熱性及び難燃性の観点から、無機充填材(F)としては、シリカ、アルミナ、マイカ、タルクが好ましく、シリカ、アルミナがより好ましく、シリカがさらに好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられる。乾式法シリカとしては、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材(F)としては、溶融球状シリカが好ましい。
【0113】
無機充填材(F)の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01~20μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましく、0.2~1μmがさらに好ましく、0.3~0.8μmが特に好ましい。
【0114】
本実施形態の樹脂組成物が無機充填材(F)を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、熱膨張係数、弾性率、耐熱性及び難燃性の観点から、固形分に対して、1~40質量%が好ましく、5~35質量%がより好ましく、10~35質量%がさらに好ましく、15~35質量%がよりさらに好ましい。
【0115】
無機充填材(F)を用いる場合、無機充填材(F)の分散性及び無機充填材(F)と樹脂組成物中の有機成分との密着性を向上させる目的で、必要に応じて、カップリング剤を併用してもよい。カップリング剤としては、前記チタネートカップリング剤(X)であってもよいし、それ以外のカップリング剤、例えばシランカップリング剤等であってもよい。カップリング剤としてチタネートカップリング剤(X)を用いる場合は、前記のチタネートカップリング剤(X)の含有量の範囲内とすることが好ましい。
カップリング剤は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
カップリング剤を用いる場合、その処理方式は、樹脂組成物中に無機充填材(F)を配合した後、カップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよいが、予め乾式又は湿式でカップリング剤によって表面処理した無機充填材を使用する方式が好ましい。この方式を採用することで、より効果的に無機充填材(F)の特長を発現させることができる。
また、無機充填材(F)は、必要に応じて、予め有機溶媒中に分散させたスラリーとして用いてもよい。
【0116】
<難燃剤、難燃助剤、密着性向上剤>
本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、難燃剤、難燃助剤及び密着性向上剤からなる群から選択される1種以上を含有していてもよい。これらの成分は、各々について、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、本実施形態の樹脂組成物は、これらの成分を含有しないものであってもよい。
【0117】
(難燃剤)
難燃剤としては、例えば、無機系のリン系難燃剤;有機系のリン系難燃剤;水酸化アルミニウムの水和物、水酸化マグネシウムの水和物等の金属水和物などが挙げられる。なお、金属水酸化物は無機充填材にも該当し得るが、難燃性を付与し得る材料の場合には難燃剤に分類する。
無機系のリン系難燃剤としては、例えば、赤リン;リン酸一アンモニウム、リン酸二アンモニウム、リン酸三アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム;リン酸アミド等の無機系含窒素リン化合物;リン酸;ホスフィンオキシドなどが挙げられる。
有機系のリン系難燃剤としては、例えば、芳香族リン酸エステル、ホスホン酸ジエステル及びホスフィン酸エステル;ホスフィン酸の金属塩、有機系含窒素リン化合物、環状有機リン化合物等が挙げられる。ここで、「金属塩」としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アルミニウム塩、チタン塩、亜鉛塩等が挙げられる。
【0118】
(難燃剤の含有量)
本実施形態の樹脂組成物が難燃剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、樹脂成分の総和100質量部に対して、例えば、0.1質量部以上であり、1質量部以上であってもよく、5質量部以上であってもよく、10質量部以上であってもよく、また、40質量部以下であってもよく、30質量部以下であってもよく、25質量部以下であってもよく、20質量部以下であってもよい。また、本実施形態の樹脂組成物は難燃剤を含有していなくてもよい。
【0119】
(難燃助剤)
難燃助剤としては、例えば、三酸化アンチモン、モリブデン酸亜鉛等の無機系難燃助剤などが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物が難燃助剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、樹脂成分の総和100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。難燃助剤の含有量が上記範囲内であると、より良好な耐薬品性が得られる傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物は難燃助剤を含有していなくてもよい。
【0120】
(密着性向上剤)
密着性向上剤としては、例えば、トリアジン誘導体、カルボジイミド等の含窒素化合物などが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物が密着性向上剤を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、樹脂成分の総和100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。密着性向上剤の含有量が上記範囲内であると、より良好な銅箔引きはがし強度が得られる傾向にある。また、本実施形態の樹脂組成物は密着性向上剤を含有していなくてもよい。
【0121】
<有機溶媒>
本実施形態の樹脂組成物は、取り扱いを容易にするという観点及び後述するプリプレグを製造し易くする観点から、有機溶媒を含有するワニス状の樹脂組成物であってもよい。
有機溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0122】
本実施形態の樹脂組成物が有機溶媒を含有する場合、その含有量は、特に限定されないが、本実施形態の樹脂組成物の固形分濃度が、30~90質量%となる量が好ましく、40~80質量%となる量がより好ましく、40~60質量%となる量がさらに好ましい。有機溶媒の含有量が上記範囲内であると、樹脂組成物の取り扱い性が容易となり、基材への含浸性及び製造されるプリプレグの外観が良好となる。さらに、後述するプリプレグ中の樹脂の固形分濃度の調整が容易となり、所望の厚みを有するプリプレグの製造がより容易となる傾向にある。
【0123】
<その他の成分>
さらに、本実施形態の樹脂組成物は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、必要に応じて、上記各成分以外の樹脂材料、カップリング剤、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤及び滑剤からなる群から選択される1種以上[以下、「その他の成分」と略称することがある。]を含有していてもよい。これらの成分は、各々について、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。また、本実施形態の樹脂組成物は、これらの成分を含有しないものであってもよい。
本実施形態の樹脂組成物が上記その他の成分を含有する場合、その各々の含有量は、特に限定されないが、樹脂成分の総和100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上であり、また、10質量部以下であってもよく、5質量部以下であってもよく、1質量部以下であってもよい。
また、本実施形態の樹脂組成物が含有する樹脂成分中における(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の合計含有量は、特に限定されないが、樹脂成分の総和100質量部に対して、80質量部以上が好ましく、90質量部以上がより好ましく、95質量部以上がさらに好ましい(但し、いずれも100質量部を含む。)。
【0124】
<誘電特性(高周波特性)>
本実施形態の樹脂組成物を、後述する実施例に記載の方法によって試験片とした際の10GHzにおける誘電率(Dk)は、特に限定されないが、3.0以下が好ましく、2.7以下がより好ましく、2.5以下がさらに好ましい。上記誘電率(Dk)は小さい程好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、2.0以上であってもよく、2.3以上であってもよい。
本実施形態の樹脂組成物を、後述する実施例に記載の方法によって試験片とした際の10GHzにおける誘電正接(Df)は、特に限定されないが、0.0045以下が好ましく、0.0040以下がより好ましく、0.0035以下がさらに好ましい。上記誘電正接(Df)は小さい程好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、0.0020以上であってもよく、0.0025以上であってもよい。
なお、誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)は、空洞共振器摂動法に準拠した値であり、より詳細には、実施例に記載の方法によって測定された値である。また、本明細書において、単に誘電率というとき、比誘電率を意味する。
【0125】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)成分、(B)成分及び必要に応じて併用される任意成分を公知の方法で混合することで製造することができる。この際、各成分は、上記有機溶媒中で撹拌しながら溶解又は分散させてもよい。混合順序、温度、時間等の条件は、特に限定されず任意に設定することができる。
【0126】
[樹脂付き金属箔]
本実施形態の樹脂付き金属箔は、本実施形態の樹脂組成物の層を金属箔上に有するものである。
該樹脂付き金属箔は、具体的には、本実施形態の樹脂組成物を金属箔上に塗布し、乾燥炉中で樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させることにより製造することができる。乾燥条件は、特に限定されないが、乾燥温度は、好ましくは80~180℃、より好ましくは110~160℃である。塗工する方法に特に制限はなく、例えば、ダイコーター、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター等の公知の塗工機を用いることができる。
樹脂付き金属箔の金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられるが、その他の金属箔を使用することもできる。これらの中でも、銅箔が好ましい。
【0127】
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、本実施形態の樹脂組成物とシート状繊維補強基材とを含有してなるものである。
該プリプレグは、本実施形態の樹脂組成物とシート状繊維補強基材とを用いて形成することができ、例えば、本実施形態の樹脂組成物を、シート状繊維補強基材に含浸又は塗工し、乾燥炉中で、80~200℃の温度で1~30分間加熱乾燥し、樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させることにより製造することができる。
本実施形態のプリプレグ中における樹脂組成物由来の固形分含有量は、特に限定されないが、30~90質量%が好ましく、35~80質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましく、45~60質量%が特に好ましい。プリプレグ中における樹脂組成物由来の固形分含有量が上記範囲内であると、積層板とした際により良好な成形性が得られる傾向にある。
【0128】
プリプレグのシート状繊維補強基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている公知のものが用いられる。シート状繊維補強基材の材質としては、例えば、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらのシート状繊維補強基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有する。また、シート状繊維補強基材の厚みは特に制限されず、例えば、0.02~0.5mmのものを用いることができる。また、樹脂組成物の含浸性、積層板とした際の耐熱性、耐吸湿性及び加工性の観点から、カップリング剤等で表面処理したもの、機械的に開繊処理を施したもの等を使用できる。
【0129】
樹脂組成物をシート状繊維補強基材に含浸又は塗工させる方法としては、次のホットメルト法又はソルベント法を採用できる。
ホットメルト法は、樹脂組成物に有機溶媒を含有させず、(1)該樹脂組成物との剥離性の良い塗工紙に一旦塗工し、それをシート状繊維補強基材にラミネートする方法、又は(2)ダイコーターによりシート状繊維補強基材に直接塗工する方法である。
一方、ソルベント法は、樹脂組成物に有機溶媒を含有させ、得られた樹脂組成物にシート状繊維補強基材を浸漬して、樹脂組成物をシート状繊維補強基材に含浸させ、その後、乾燥させる方法である。
【0130】
[積層板]
本実施形態の積層板は、(i)本実施形態の樹脂付き金属箔又は(ii)本実施形態のプリプレグ及び金属箔、を含有してなる積層板である。
本実施形態の積層板は、本実施形態の樹脂付き金属箔1枚を加熱加圧成形するか、又は樹脂付き金属箔2枚を金属箔が外層となるように配置してから加熱加圧成形することによって積層板を得ることができる。また、本実施形態のプリプレグ1枚の片面若しくは両面に金属箔を配置するか、又は本実施形態のプリプレグを2枚以上重ねたものの片面若しくは両面に金属箔を配置し、次いで加熱加圧成形することによって積層板を得ることもできる。金属箔を有する積層板は、金属張積層板と称されることもある。
金属箔の金属としては、電気絶縁材料用途で用いられるものであれば特に制限されないが、導電性の観点から、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素を1種以上含有する合金であってもよく、銅、アルミニウムが好ましく、銅がより好ましい。
【0131】
[多層プリント配線板]
本実施形態の多層プリント配線板は、(i)本実施形態の樹脂付き金属箔、(ii)本実施形態のプリプレグ又は(iii)本実施形態の積層板、を含有してなるものである。本実施形態の多層プリント配線板は、本実施形態の樹脂付き金属箔、プリプレグ又は積層板を用いて、公知の方法によって、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔のエッチング等による回路形成加工及び多層化接着加工を行うことによって製造することができる。
【0132】
[半導体パッケージ]
本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態の多層プリント配線板に半導体素子を搭載してなるものである。
本実施形態の半導体パッケージは、例えば、本実施形態の多層プリント配線板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を公知の方法によって搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造できる。
【0133】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、これらは本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態とは異なる種々の態様で実施することができる。
【実施例
【0134】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明する。ただし、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0135】
なお、各例において、重量平均分子量(Mw)は以下の方法によって測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製、商品名]を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
装置:
ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラム:ガードカラム;「TSK Guardcolumn HHR-L」+カラム;「TSKgel G4000HHR」+「TSKgel G2000HHR」(すべて東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0136】
[製造例1:変性マレイミド化合物(Z1)の製造]
温度計、撹拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積5リットルの反応容器に、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン100質量部と、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン(日本化薬株式会社製、商品名:KAYAHARD(登録商標)A-A)13.5質量部と、プロピレングリコールモノメチルエーテル171質量部と、を投入し、還流させながら2時間反応させた。これを還流温度にて3時間かけて濃縮し、固形分濃度が65質量%の変性マレイミド化合物(Z1)含有液を製造した。得られた変性マレイミド樹脂(Z1)の重量平均分子量(Mw)は、約2,700であった。
【0137】
[実施例1~2、比較例1~3]
(樹脂組成物の調製)
表1に記載の各成分を表1に記載の配合組成に従って、トルエン58質量部及びメチルイソブチルケトン10質量部と共に、室温で撹拌及び混合して、固形分濃度45~55質量%の樹脂組成物を調製した。但し、X-1及びY-1は、予め、25℃でメチルイソブチルケトン(MIBK)中で、B-1と混合及び撹拌しておいた。
なお、各実施例及び比較例においてフィラー含有量を統一するために、フッ素樹脂フィラー(B)の含有量と無機充填材(F)の含有量の合計が等しくなるように調整されている。
(樹脂付き銅箔の作製)
各例で得た樹脂組成物を、厚さ0.0195mmの銅箔(MT18FL1.5、三井金属鉱業株式会社製)に塗工機により塗工し、120℃で3分間加熱乾燥して、塗布厚さ25μmの樹脂付き銅箔を作製した。
(積層板の作製及び樹脂版の作製)
また、該樹脂組成物を、厚さ0.050mmのPETフィルムに塗工機により塗工し、120℃で3分間加熱乾燥して、塗布厚さ25μmの樹脂付きPETフィルムを作製した。この樹脂付きPETフィルムの樹脂面同士を、真空加圧ラミネート(温度110℃、圧力0.5MPa)で張り合わせた。さらに、片面のPETフィルムを剥離して、剥離面同士を張り合わせ、樹脂厚さが325μmとなるまで積層した。この樹脂厚さ325μmの樹脂付きPETフィルムの両面PETを剥離し、樹脂の上下に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(BF-ANP18、M面のRz:1.5μm、CIRCUIT FOIL社製)を、M面が樹脂に接するように積層し、この積層体を厚さ300μmの型枠に配置した。次いで、温度230℃、圧力3.0MPa、時間90分間の条件で加熱加圧成形して、両面銅張積層板を作製した。この両面銅張積層板の外層銅箔を、銅エッチング液(過硫酸アンモニウムの10質量%溶液、三菱ガス化学株式会社製)に浸漬することにより除去し、厚さ300μmの樹脂板を作製した。
【0138】
[評価方法]
下記方法に従って各測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
【0139】
(1.誘電特性(高周波特性)の測定)
各例で作製した樹脂板を、長さ60mm、幅2mmに切り出したものを試験片として、空洞共振器摂動法により誘電率及び誘電正接を測定した。測定器にはアジレントテクノロジー社製のベクトル型ネットワークアナライザ「N5227A」、空洞共振器には株式会社関東電子応用開発製の「CP129」(10GHz帯共振器)、測定プログラムには「CPMA-V2」をそれぞれ使用した。測定は、周波数10GHz、測定温度25℃の条件下で行った。
【0140】
(2.樹脂付き銅箔切断時の端部粉落ちの評価)
各例で作製した樹脂付き銅箔を切断機「リファインドスリッターW-650」(スリット刃のサイズ;98mm×66mm、厚み;2mm、図1参照、ソルテック工業株式会社製)で切断した際に、スリット刃に付着した樹脂粉量を目視で観察した。スリット刃への樹脂粉付着量がほとんどない場合(図2参照)を「A」、スリット刃への樹脂粉付着量が多い場合(図3参照)を「C」と判断した。
【0141】
(3.銅箔引き剥がし強度の測定)
各例で作製した両面銅張積層板の銅箔を部分的にエッチングして、3mm幅の銅箔ラインを形成した。次に、恒温槽設置型剥離試験機(株式会社島津製作所製)を用い、温度25℃の環境下に設定し、銅箔ラインを、接着面に対して90°方向に50mm/分の速度で引き剥がした際の荷重を測定した。
【0142】
【表1】
【0143】
表1における各材料の略号等は、以下の通りである。
[(A)成分:ポリフェニレンエーテル誘導体]
・A-1:分子末端(両末端)にメタクリル基を有するポリフェニレンエーテル(重量平均分子量(Mw);1,700)。前記一般式(A-4)で表される化合物に相当する。
[(B)成分:フッ素樹脂フィラー]
・B-1:PTFEフィラー;アドマテックス株式会社製、粒子状、平均粒子径:3μm
[(X)成分:チタネートカップリング剤]
・X-1:プレンアクト(登録商標)38S;味の素ファインテクノ株式会社製、下記構造式参照
【化28】

[(X)成分以外のカップリング剤:シランカップリング剤]
・Y-1:KBM-903;3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製
[(C)成分:熱硬化性樹脂]
・C-1:製造例1で調製した変性マレイミド化合物(Z1)
[(D)成分:熱可塑性エラストマー]
・D-1:タフテック(登録商標)M1913;旭化成株式会社製、無水マレイン酸変性水添スチレン系熱可塑性エラストマー(SEBS)、酸価10mgCHONa/g、スチレン含有率30%、MFR5.0g/10min(MFRの測定条件:ISO1133に準拠して、230℃、荷重2.16kgにて測定した。)
[(E)成分:硬化促進剤]
・E-1:p-ベンゾキノンのトリ-n-ブチルホスフィン付加反応物
・E-2:2-ウンデシルイミダゾール
・E-3:ジシアンジアミド
[(F)成分:無機充填材]
・F-1:球状溶融シリカ:平均粒子径0.5μm、メチルイソブチルケトン70質量%スラリー
【0144】
表1に示した結果から明らかなように、本実施形態の樹脂組成物を用いて作製した実施例1~2の樹脂付き銅箔及び積層板は、比較例1~3の樹脂付き銅箔及び積層板よりも、高周波特性に優れており、樹脂付き金属箔の切断時に端部の粉落ちが抑制されており、且つ、銅箔引き剥がし強度に優れていることが分かる。
特に、チタネートカップリング剤(X)を使用しなかった比較例2に対してシランカップリング剤を使用したのが比較例3であるが、銅箔引き剥がし強度に変化が無かった。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本実施形態の樹脂組成物は、10GHz帯以上の高周波数帯において優れた誘電特性を発現し、樹脂付き金属箔の切断時に端部の粉落ちが抑制され、且つ、銅箔引き剥がし強度に優れるものであるため、該樹脂組成物を用いて得られる樹脂付き金属箔、プリプレグ、積層板、多層プリント配線板、半導体パッケージ等は、高周波信号を扱う電子部品用途に好適である。
図1
図2
図3