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特許7552231導電性ペースト、電子部品、及び、積層セラミックコンデンサ
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  • 特許-導電性ペースト、電子部品、及び、積層セラミックコンデンサ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】導電性ペースト、電子部品、及び、積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240910BHJP
   H01B 1/22 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01G4/30 201D
H01B1/22 A
H01G4/30 516
H01G4/30 311D
H01G4/30 517
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020172148
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063752
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2023-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(74)【代理人】
【識別番号】100134441
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 由利
(72)【発明者】
【氏名】中家 香織
(72)【発明者】
【氏名】服部 孝博
【審査官】相澤 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-053348(JP,A)
【文献】特開2002-056716(JP,A)
【文献】特開2004-182951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
H01B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む導電性ペーストであって、
前記分散剤が、一般式(1)で示される2級アミンまたは3級アミンであるアミン系分散剤を含み、かつ、酸系分散剤として高分子界面活性剤を含まず、
前記アミン系分散剤の分子量が50以上200以下である、
導電性ペースト。
【化1】
(ただし、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、又は、ヒドロキシプロピル基を表し、Rは、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表す。)
【請求項2】
前記アミン系分散剤が、前記導電性粉末100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下含み、前記導電性粉末を、導電性ペースト全体に対して、40質量%以上60質量%以下含む、請求項1に記載の導電性ペースト。
【請求項3】
前記分散剤が、下記一般式(2)で示されるアミノ酸系分散剤を前記導電性粉末100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下含む、請求項1または2に記載の導電性ペースト。
【化2】
(ただし、式(2)中、Rは、炭素数10~20の鎖状炭化水素基を表す。)
【請求項4】
前記分散剤は、導電性ペースト全体に対して、0.01質量%以上3質量%以下含有される、請求項1~3のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【請求項5】
前記導電性粉末は、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【請求項6】
前記導電性粉末は、平均粒径が0.05μm以上1.0μm以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【請求項7】
前記セラミック粉末は、ペロブスカイト型酸化物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【請求項8】
積層セラミックコンデンサの内部電極用である、請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性ペースト。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の導電性ペーストを用いて形成された、電子部品。
【請求項10】
誘電体層と内部電極層とを積層した積層体を少なくとも有し、
前記内部電極層は、請求項8に記載の導電性ペーストを用いて形成された、積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ペースト、電子部品、及び、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やデジタル機器などの電子機器の小型化および高性能化に伴い、積層セラミックコンデンサなどを含む電子部品についても小型化および高容量化が望まれている。積層セラミックコンデンサは、複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層した構造を有し、これらの誘電体層及び内部電極層を薄膜化することにより、小型化及び高容量化を図ることができる。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、例えば、次のように製造される。まず、チタン酸バリウム(BaTiO)などの誘電体粉末及びバインダー樹脂を含有する誘電体グリーンシートの表面上に、内部電極用の導電性ペーストを所定の電極パターンで印刷し、乾燥して、乾燥膜を形成する。次に、乾燥膜とグリーンシートとが交互に重なるように積層して積層体を得る。次に、この積層体を加熱圧着して一体化し、圧着体を形成する。この圧着体を切断し、酸化性雰囲気または不活性雰囲気中にて脱バインダー処理を行った後、焼成を行い、焼成チップを得る。次いで、焼成チップの両端部に外部電極用ペーストを塗布し、焼成後、外部電極表面にニッケルメッキなどを施して、積層セラミックコンデンサが得られる。
【0004】
一般的に、内部電極層の形成に用いられる導電性ペーストは、導電性粉末、セラミック粉末、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む。また、導電性ペーストは、導電性粉末などの分散性を向上させるために分散剤を含むことがある。近年の内部電極層の薄膜化に伴い、導電性粉末も小粒径化する傾向がある。導電性粉末の粒径が小さい場合、その粒子表面の比表面積が大きくなるため、導電性粉末(金属粉末)の表面活性が高くなり、分散性の低下や、粘度特性の低下が生じる場合がある。
【0005】
そこで、導電性ペーストの経時的な粘度特性の改善の試みがなされている。例えば、特許文献1には、少なくとも金属成分と、酸化物と、分散剤と、バインダー樹脂とを含有する導電性ペーストであって、金属成分は、その表面組成が、特定の組成比を有するNi粉末であり、分散剤の酸点量は、500~2000μmol/gであり、バインダー樹脂の酸点量は、15~100μmol/gである導電性ペーストが記載されている。そして、特許文献1によれば、この導電性ペーストは、良好な分散性と粘度安定性を有するとされている。
【0006】
また、特許文献2には、導電性粉末、樹脂、有機溶剤、TiBaOを主とするセラミックス粉末の共材、および凝集抑制剤からなる内部電極用導電ペーストであって、前記凝集抑制剤の含有量が0.1重量%以上5重量%以下であり、前記凝集抑制剤が、特定の構造式で示される3級アミン又は2級アミンである内部電極用導電ペーストが記載されている。特許文献2によれば、この内部電極用導電ペーストは、共材成分の凝集を抑制し、長期保管性に優れ、積層セラミックコンデンサの薄膜化を可能とするとされている。
【0007】
一方、内部電極層を薄膜化する際、誘導体グリーンシート表面上に内部電極用の導電性ペーストを印刷して、乾燥させて得られる乾燥膜の密度が高いことが要求される。例えば、特許文献3には、有機溶媒と、界面活性剤と、金属超微粒子とを含有する金属超微粉スラリーであって、前記界面活性剤がオレオイルサルコシンであり、前記金属超微粉スラリー中に、前記金属超微粉を70質量%以上95質量%以下含有し、前記界面活性剤を前記金属超微粉100質量部に対して0.05質量部超2.0質量部未満含有する金属超微粉スラリーが提案されている。特許文献3によれば、超微粒子の凝集を防止することで凝集粒子が存在しない、分散性及び乾燥膜密度に優れる金属超微粉スラリーが得られるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2015-216244号公報
【文献】特開2013-149457号公報
【文献】特開2006-063441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年の電極パターンの薄膜化に伴い、経時的な粘度特性のさらなる向上が要求される。
【0010】
本発明は、このような状況に鑑み、経時的な粘度変化が少ない、導電性ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の態様では、導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む導電性ペーストであって、分散剤が、一般式(1)で示される2級アミンまたは3級アミンを含む、導電性ペーストが提供される。
【化1】
(ただし、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、又は、ヒドロキシプロピル基を表し、Rは、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表し、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表す。)
【0012】
また、アミン系分散剤が、前記導電性粉末100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下含み、前記導電性粉末を、導電性ペースト全体に対して、40質量%以上60質量%以下含むことが好ましい。
【0013】
また、分散剤が、下記一般式(2)で示されるアミノ酸系分散剤を前記導電性粉末100質量部に対して、0.01質量部以上2質量部以下含むことが好ましい。
【化2】
(ただし、式(2)中、Rは、炭素数10~20の鎖状炭化水素基を表す。)
【0014】
また、分散剤は、導電性ペースト全体に対して、0.01質量%以上3質量%以下含有されることが好ましい。また、導電性粉末は、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu及びこれらの合金から選ばれる少なくとも1種の金属粉末を含むことが好ましいまた、導電性粉末は、平均粒径が0.05μm以上1.0μm以下であることが好ましい。また、セラミック粉末は、ペロブスカイト型酸化物を含むことが好ましい。また、導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサの内部電極用であることが好ましい。
【0015】
本発明の第2の態様では、上記導電性ペーストを用いて形成された、電子部品が提供される。
【0016】
本発明の第3の態様では、誘電体層と内部電極とを積層した積層体を少なくとも有し、内部電極は、上記導電性ペーストを用いて形成された、積層セラミックコンデンサが提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、経時的な粘度変化が少ない、導電性ペーストを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態に係る積層セラミックコンデンサを示す斜視図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態の導電性ペーストは、導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む導電性ペーストであって、前記分散剤が、2級アミンまたは3級アミンを含む。以後、本実施形態の導電性粉末、セラミック粉末、分散剤、バインダー樹脂及び有機溶剤を含む。以下、各成分について詳細に説明する。
【0020】
(導電性粉末)
導電性粉末は、特に限定されず、金属粉末を用いることができ、例えば、Ni、Pd、Pt、Au、Ag、Cu、およびこれらの合金から選ばれる1種以上の金属粉末を用いることができる。これらの中でも、導電性、耐食性及びコストの観点から、Ni、またはその合金の粉末が好ましい。Ni合金としては、例えば、Mn、Cr、Co、Al、Fe、Cu、Zn、Ag、Au、PtおよびPdからなる群より選択される少なくとも1種以上の元素とNiとの合金(Ni合金)が用いることができる。Ni合金におけるNiの含有量は、例えば、50質量%以上、好ましくは80質量%以上である。また、Ni粉末は、脱バインダー処理の際、バインダー樹脂の部分的な熱分解による急激なガス発生を抑制するために、数百ppm程度のSを含んでもよい。
【0021】
導電性粉末の平均粒径は、好ましくは0.05μm以上1.0μm以下であり、より好ましくは0.1μm以上0.5μm以下である。導電性粉末の平均粒径が上記範囲である場合、薄膜化した積層セラミックコンデンサの内部電極用の導電性ペーストとして好適に用いることができ、例えば、乾燥膜の平滑性及び乾燥膜密度が向上する。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から求められる値であり、SEMで倍率10,000倍にて観察した画像から、複数の粒子一つ一つの粒径を測定して、得られる平均値である。
【0022】
導電性粉末の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは30質量%以上70質量%未満であり、より好ましくは40質量%以上60質量%以下である。導電性粉末の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0023】
(セラミック粉末)
セラミック粉末としては、特に限定されず、例えば、積層セラミックコンデンサの内部電極用の導電性ペーストである場合、適用する積層セラミックコンデンサの種類により適宜、公知のセラミック粉末が選択される。セラミック粉末としては、例えば、Ba及びTiを含むペロブスカイト型酸化物が挙げられ、好ましくはチタン酸バリウム(BaTiO)である。
【0024】
セラミック粉末としては、チタン酸バリウムを主成分とし、酸化物を副成分として含むセラミック粉末を用いてもよい。酸化物としては、Mn、Cr、Si、Ca、Ba、Mg、V、W、Ta、Nbおよび1種類以上の希土類元素の酸化物が挙げられる。また、セラミック粉末としては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)のBa原子やTi原子を他の原子、例えば、Sn、Pb、Zrなどで置換したペロブスカイト型酸化物強誘電体のセラミック粉末を用いてもよい。
【0025】
内部電極用の導電性ペーストにおいては、積層セラミックコンデンサのグリーンシートを構成する誘電体セラミック粉末と同一組成の粉末を、セラミック粉末として用いてもよい。これにより、焼結工程における誘電体層と内部電極層との界面での収縮のミスマッチによるクラック発生が抑制される。このようなセラミック粉末としては、上記以外に、例えば、ZnO、フェライト、PZT、BaO、Al、Bi、R(希土類元素)、TiOなどの酸化物が挙げられる。なお、セラミック粉末は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0026】
セラミック粉末の平均粒径は、例えば、0.01μm以上0.5μm以下であり、好ましくは0.01μm以上0.3μm以下の範囲である。セラミック粉末の平均粒径が上記範囲であることにより、内部電極用の導電性ペーストとして用いた場合、十分に細く薄い均一な内部電極を形成することができる。平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察から求められる値であり、SEMで倍率50,000倍にて観察した映像から、複数の粒子一つ一つの粒径を測定して、得られる平均値である。
【0027】
セラミック粉末の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは1質量部以上30質量部以下であり、より好ましくは3質量部以上30質量部以下である。
【0028】
セラミック粉末の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは1質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは3質量%以上20質量%以下である。導電性粉末の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0029】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。バインダー樹脂としては、例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルブチラールなどのブチラール樹脂などが挙げられる。中でも、溶剤への溶解性、燃焼分解性の観点などからエチルセルロースを含むことが好ましい。また、内部電極用の導電性ペーストとして用いる場合、グリーンシートとの接着強度を向上させる観点からブチラール樹脂を含む、又は、ブチラール樹脂を単独で使用してもよい。バインダー樹脂は、1種類を用いてもよく、又は、2種類以上を用いてもよい。バインダー樹脂は、例えば、セルロース系樹脂とブチラール樹脂とを用いてもよい。また、バインダー樹脂の分子量は、例えば、20000~200000程度である。
【0030】
バインダー樹脂の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは1質量部以上10質量部以下であり、より好ましくは1質量部以上8質量部以下である。
【0031】
バインダー樹脂の含有量は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下であり、より好ましくは1質量%以上6質量%以下である。バインダー樹脂の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0032】
(有機溶剤)
有機溶剤としては、特に限定されず、上記バインダー樹脂を溶解することができる公知の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、ジヒドロターピニルアセテート、イソボルニルアセテート、イソボルニルプロピネート、イソボルニルブチレート及びイソボルニルイソブチレート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテートなどのアセテート系溶剤、ターピネオール、ジヒドロターピネオールなどのテルペン系溶剤、トリデカン、ノナン、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤などが挙げられる。なお、有機溶剤は、1種類を用いてもよく、2種類以上を用いてもよい。
【0033】
有機溶剤の含有量は、導電性粉末100質量部に対して、好ましくは40質量部以上100質量部以下であり、より好ましくは65質量部以上95質量部以下である。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0034】
有機溶剤の含有量は、導電性ペースト全体に対して、20質量%以上60質量%以下が好ましく、35質量%以上55質量%以下がより好ましい。有機溶剤の含有量が上記範囲である場合、導電性及び分散性に優れる。
【0035】
(分散剤)
本実施形態の導電性ペーストは、2級アミンまたは3級アミンであり、以下に説明するような、特定の構造を有するアミン系分散剤を含む。このようなアミン系分散剤を含むことにより、導電性ペースト中の導電性粉末の分散状態を維持させ、導電性ペーストの経時的な粘度変化を少なくすることができる。
【0036】
アミン系分散剤は、高分子分散剤ではないことが好ましい。アミン系分散剤は、例えば、分子量が500以下であってもよく、分子量が250以下であってもよく、200以下であってもよく、150以下であってもよい。また、アミン系分散剤の分子量の下限は、例えば、50以上であってもよく、60以上であってもよい。
【0037】
また、アミン系分散剤は、下記の一般式(1)で示される、3級アミン、又は、2級アミンであることが好ましい。
【0038】
【化1】
【0039】
(ただし、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、又は、ヒドロキシプロピル基を表し、Rは、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表し、R3は、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基を表す。)
【0040】
上記式(1)のアミン系分散剤は、その分子内に、3級アミン又は2級アミンを構成し、官能基としてはアミノ基を構成する窒素原子(すなわち、上記式(1)中のN)のほかに、R、および、任意にR、Rとして、アルコール系水酸基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基)、及び、別のアミノ基(アミノエチル基、アミノプロピル基)のうち少なくとも1つの基を備える。
【0041】
なお、アミン系分散剤が1級アミンである場合、その分子内に、アルコール系水酸基や、他の1級アミンを構成するアミノ基を備えていても、導電性ペーストの粘度の経時的に変化しやすいので望ましくない。詳細は不明であるが、上記のような2級アミン又は3級アミンであるアミン系分散剤は、備える上記官能基やアルキル基、アルケニル基、アルキニル基による立体障害などが、導電性粉末を構成する金属粒子への吸着へ影響し、その結果、導電性ペーストの粘度の経時的な安定性に影響すると考えられる。
【0042】
上記式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~7のアルキル基、炭素数2~7のアルケニル基、又は、炭素数2~7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、又は、ヒドロキシプロピル基を表す。Rの炭素数が上記範囲である場合、導電性ペースト中の粉末が十分な分散性を有し、溶剤への溶解度に優れる。なお、Rが炭化水素の場合は、直鎖炭化水素基であることが好ましい。
【0043】
上記式(1)中、Rは、ヒドロキシエチル基(例:COH)、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基を表す。
【0044】
上記式(1)中、Rは水素原子、炭素数1から7のアルキル基、炭素数2から7のアルケニル基、炭素数2から7のアルキニル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノエチル基、アミノプロピル基を表す。
【0045】
上記式(1)中、R、R、及びRのいずれか1以上が、ヒドロキシエチル基、又は、ヒドロキシプロピル基である場合、ヒドロキシエチル基としては、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基が挙げられ、中でも2-ヒドロキシエチル基が好ましく、ヒドロキシプロピル基としては、1-ヒドロキシエチル基、2-ヒドロキシエチル基、3-ヒドロキシエチル基が挙げられ、中でも、3-ヒドロキシプロピル基が好ましい。なお、R1、2、及びRは、それぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
【0046】
上記式(1)中、R、Rのいずれか1以上が、アミノエチル基、又は、アミノプロピル基である場合、アミノエチル基としては、1-アミノエチル基、2-アミノエチル基が挙げられ、中でも2-アミノキシエチル基が好ましく、アミノプロピル基としては、1-アミノプロピル基、2-アミノプロピル基、3-アミノプロピル基が挙げられ、中でも3-アミノプロピル基が好ましい。なお、R2、及びRは、それぞれ同一の基であってもよく、異なる基であってもよい。
【0047】
また、上記式(1)のRがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基である場合、炭素数は3以下が望ましい。Rのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基の炭素数が3以下である場合、立体障害が発生しにくくなり、前記金属粒子への吸着へ影響し、その結果、導電性ペーストの粘度の経時的な安定性に繋がる。
【0048】
また、上記式(1)において、R~Rに、アルコール系水酸基またはアミノ基をいくつ備えるかは、導電性粉末の金属粒子の表面の酸化状態など考慮して、適宜選択することができる。アミン系分散剤の分子内に、複数のアミノ基、又は、アミノ基とアルコール系水酸基を備えることで、導電性粉末を構成する金属粒子への吸着へ影響し、その結果、導電性ペーストの粘度の経時的な安定性に繋がると考えられる。
【0049】
なお、上記式(1)のR、R、Rが、ヒドロキシブチル基やアミノブチル基のようにアルコール系水酸基やアミノ基を備え4以上の炭素と水素を含む原子団となると、当該原子団による立体障害により、前記金属粒子へのアミン系分散剤の吸着に悪影響し、導電性ペーストの粘度の経時的な安定性を維持しにくくなる。なお、R1、及びRは、それぞれ同一でもよく、又は、異なっていてもよい。例えば、R及びRのうち、いずれか一方の基(R又はR)がアルキル基である場合、導電性ペースト粘度の経時的な安定性をより向上させるという観点から、他方(R又はR)は、水素原子、アルコール系水酸基(ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基)またはアミノ基(アミノエチル基、アミノプロピル基)であることが好ましい。
【0050】
導電性ペーストに上記アミン系分散剤を用いる場合、導電性粉末を構成する金属粒子への吸着が多くなり、それにより、導電性ペーストに含まれる樹脂成分の当該金属粒子への吸着が抑制されると考えられる。そして、その結果、導電性ペーストの粘度の経時的に増加する変化が抑制されると考えられる。
【0051】
導電性ペーストは、上記アミン系分散剤を、導電性粉末100質量部に対し、0.01質量部以上2質量部以下、好ましくは0.02質量部以上1質量部以下含む。上記アミン系分散剤を上記範囲で含む場合、経時的な粘度変化を抑制し、粘度安定性を向上させることができる。なお、アミン系分散剤の含有量が2質量部を超える場合、導電性ペーストをグリーンシートに印刷した際、印刷面にメッシュ跡が発生したり、ペーストの粘度が大きく低下したりすることがある。
【0052】
アミン系分散剤は、例えば、市販の製品から、上記特性を満たすものを選択して用いることができる。また、上記アミン系分散剤は、従来公知の製造方法を用いて、上記特性を満たすように製造してもよい。
【0053】
また、分散剤は、アミノ酸系分散剤を含んでもよい。アミノ酸系分散剤は、下記の一般式(2)に示されるように、N-アシルアミノ酸骨格を有し、炭素数10以上20以下の鎖状炭化水素基を有することが好ましい。
【0054】
【化2】
【0055】
(ただし、式(2)中、Rは、炭素数10~20の鎖状炭化水素を表す。)
【0056】
上記式(2)中、Rは、炭素数10以上20以下の鎖状炭化水素基を表す。Rは、炭素数が好ましくは15以上20以下である。また、鎖状炭化水素基は、直鎖炭化水素基でもよく、分岐炭化水素基であってもよい。また、鎖状炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、又は、アルキニル基であってもよい。Rは、好ましくは直鎖炭化水素基であり、より好ましくは直鎖アルケニル基であり、二重結合を有する。
【0057】
導電性ペーストは、上記式(2)で示されるアミノ酸系分散剤を、導電性粉末100質量部に対し、0.01質量部以上2質量部以下、好ましくは0.02質量部以上1質量部以下、より好ましくは0.03質量部以上0.6質量部以下含み、0.1質量部以上0.6質量部以下含んでもよい。アミノ酸系分散剤を上記範囲で含む場合、乾燥膜密度を向上させることができる。なお、アミノ酸系分散剤の含有量が2質量部を超える場合、導電性ペーストをグリーンシートに印刷した際、印刷面にメッシュ跡が発生したり、ペーストの粘度が大きく低下したりすることがある。
【0058】
上記式(2)で示されるアミノ酸系分散剤は、例えば、市販の製品から、上記特性を満たすものを選択して用いることができる。また、上記アミノ酸系分散剤は、従来公知の製造方法を用いて、上記特性を満たすように製造してもよい。
【0059】
分散剤(上記アミノ酸系分散剤及びアミン系分散剤を含む)は、前記導電性粉末100質量部に対して、好ましくは0.02質量部以上4質量部以下含有され、より好ましくは0.04質量部以上2質量部以下含有される。分散剤の含有量が上記範囲である場合、導電性ペーストの粘度を適切な範囲に調整することができ、また、シートアタックやグリーンシートの剥離不良を抑制することができる。
【0060】
また、分散剤(上記アミノ酸系分散剤及びアミン系分散剤を含む)は、導電性ペースト全体に対して、好ましくは3質量%以下含有される。分散剤の含有量の上限は、好ましくは2.4質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。分散剤の含有量の下限は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以上である。分散剤の含有量が上記範囲である場合、導電性ペーストの粘度を適切な範囲に調整することができ、また、シートアタックやグリーンシートの剥離不良を抑制することができる。
【0061】
さらに、本実施形態の導電性ペーストにおいて、上記アミン系分散剤が、質量比で上記アミノ酸系分散剤の1倍以上含まれていることが望ましく、2倍以上含まれることがより望ましく、3倍以上含むことがさらに望ましい。上記アミン系分散剤が、上記範囲で含まれることにより、導電性ペーストの粘度の経時的変化をより抑制できる。
【0062】
なお、導電性ペーストは、上記のアミノ酸系分散剤及びアミン系分散剤以外の分散剤を、本発明の効果を阻害しない範囲で含んでもよい。上記以外の分散剤としては、例えば、高級脂肪酸、高分子界面活性剤などを含む酸系分散剤、酸系分散剤以外のカチオン系分散剤、ノニオン系分散剤、両性界面活性剤及び高分子系分散剤などなどを含んでもよい。また、これらの分散剤は、1種または2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0063】
(導電性ペースト)
【0064】
本実施形態に係る導電性ペーストは、上述の成分を含むことにより、導電性ペースト中の導電性粉末の分散状態を維持させ、導電性ペーストの経時的な粘度変化を少なくすることができる。
【0065】
本実施形態の導電性ペーストの製造方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。導電性ペーストは、例えば、上記の各成分を用意し、3本ロールミル、ボールミル、ミキサーなどで攪拌・混練することにより製造することができる。その際、導電性粉末表面に予め分散剤を塗布すると、導電性粉末が凝集することなく十分にほぐれて、その表面に分散剤が行きわたるようになり、均一な導電性ペーストを得やすい。また、バインダー樹脂をビヒクル用の有機溶剤に溶解させ、有機ビヒクルを作製し、ペースト用の有機溶剤へ、導電性粉末、セラミック粉末、有機ビヒクル及び分散剤を添加し、ミキサーで攪拌・混練し、導電性ペーストを作製してもよい。
【0066】
導電性ペーストは、積層セラミックコンデンサなどの電子部品に好適に用いることができる。積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートを用いて形成される誘電体層及び導電性ペーストを用いて形成される内部電極層を有する。
【0067】
積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートに含まれる誘電体セラミック粉末と導電性ペーストに含まれるセラミック粉末とが同一組成の粉末であることが好ましい。本実施形態の導電性ペーストを用いて製造される積層セラミックコンデンサは、誘電体グリーンシートの厚さが、例えば3μm以下である場合でも、シートアタックやグリーンシートの剥離不良が抑制される。
【0068】
導電性ペーストは、導電性ペーストの製造24時間経過後の粘度を基準とした場合、その製造後から27日間静置後(製造後28日後)の粘度変化量は、好ましくは-5~+15Pa・s以内である。なお、上記導電性ペーストの粘度は、例えば、実施例に記載した方法((アントンパール社製 レオメータM501)にてフローカーブ測定において回転数4sec-1)の条件で測定する方法)等により測定することができる。
【0069】
[電子部品]
以下、本発明の電子部品等の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面においては、適宜、模式的に表現することや、縮尺を変更して表現することがある。また、部材の位置や方向などを、適宜、図1などに示すXYZ直交座標系を参照して説明する。このXYZ直交座標系において、X方向およびY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向(上下方向)である。
【0070】
図1A及び図1Bは、実施形態に係る電子部品の一例である、積層セラミックコンデンサ1を示す図である。積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層12及び内部電極層11を交互に積層したセラミック積層体10と外部電極20とを備える。
【0071】
以下、上記導電性ペーストを使用した積層セラミックコンデンサの製造方法について説明する。まず、セラミックグリーンシートからなる誘電体層上に、導電性ペーストを印刷して、乾燥し、乾燥膜を形成する。この乾燥膜を上面に有する複数の誘電体層を、圧着により積層させて積層体を得た後、積層体を焼成して一体化することにより、内部電極層11と誘電体層12とが交互に積層したセラミック積層体10を作製する。その後、セラミック積層体10の両端部に一対の外部電極20を形成することにより積層セラミックコンデンサ1が製造される。以下に、より詳細に説明する。
【0072】
まず、未焼成のセラミックシートであるセラミックグリーンシートを用意する。このセラミックグリーンシートとしては、例えば、チタン酸バリウム等の所定のセラミックの原料粉末に、ポリビニルブチラール等の有機バインダーとターピネオール等の溶剤とを加えて得た誘電体層用ペーストを、PETフィルム等の支持フィルム上にシート状に塗布し、乾燥させて溶剤を除去したもの等が挙げられる。なお、セラミックグリーンシートからなる誘電体層の厚みは、特に限定されないが、積層セラミックコンデンサの小型化の要請の観点から、0.05μm以上3μm以下が好ましい。
【0073】
次いで、このセラミックグリーンシートの片面に、スクリーン印刷法等の公知の方法によって、上述の導電性ペーストを印刷(塗布)して乾燥し、乾燥膜を形成したものを複数枚、用意する。なお、印刷後の導電性ペースト(乾燥膜)の厚みは、内部電極層11の薄層化の要請の観点から、乾燥後1μm以下とすることが好ましい。
【0074】
次いで、支持フィルムから、セラミックグリーンシートを剥離するとともに、セラミックグリーンシートからなる誘電体層とその片面に形成された乾燥膜とが交互に配置されるように積層した後、加熱・加圧処理により積層体を得る。なお、積層体の両面に、導電性ペーストを塗布していない保護用のセラミックグリーンシートを更に配置する構成としても良い。
【0075】
次いで、積層体を所定サイズに切断してグリーンチップを形成した後、当該グリーンチップに対して脱バインダー処理を施し、還元雰囲気下において焼成することにより、セラミック積層体10を製造する。なお、脱バインダー処理における雰囲気は、大気またはNガス雰囲気にすることが好ましい。脱バインダー処理を行う際の温度は、例えば200℃以上400℃以下である。また、脱バインダー処理を行う際の、上記温度の保持時間を0.5時間以上24時間以下とすることが好ましい。また、焼成は、内部電極層に用いる金属の酸化を抑制するために還元雰囲気で行われ、また、積層体の焼成を行う際の温度は、例えば、1000℃以上1350℃以下であり、焼成を行う際の、温度の保持時間は、例えば、0.5時間以上8時間以下である。
【0076】
グリーンチップの焼成を行うことにより、グリーンシート中の有機バインダーが完全に除去されるとともに、セラミックの原料粉末が焼成されて、セラミック製の誘電体層12が形成される。また乾燥膜中の有機ビヒクルが除去されるとともに、ニッケル粉末またはニッケルを主成分とする合金粉末が焼結もしくは溶融、一体化されて、内部電極が形成され、誘電体層12と内部電極層11とが複数枚、交互に積層された積層セラミック焼成体が形成される。なお、酸素を誘電体層の内部に取り込んで信頼性を高めるとともに、内部電極の再酸化を抑制するとの観点から、焼成後の積層セラミック焼成体に対して、アニール処理を施してもよい。
【0077】
そして、作製した積層セラミック焼成体に対して、一対の外部電極20を設けることにより、積層セラミックコンデンサ1が製造される。例えば、外部電極20は、外部電極層21及びメッキ層22を備える。外部電極層21は、内部電極層11と電気的に接続される。なお、外部電極20の材料としては、例えば、銅やニッケル、またはこれらの合金が好適に使用できる。なお、電子部品は、積層セラミックコンデンサに限定されず、積層セラミックコンデンサ以外の電子部品であってもよい。
【実施例
【0078】
以下、本発明を実施例と比較例に基づき詳細に説明するが、本発明は実施例によって何ら限定されるものではない。
【0079】
[評価方法]
(導電性ペーストの粘度の評価)
導電性ペーストの粘度は、導電性ペーストの製造24時間経過後を基準時点とし、その基準時点と、室温(25℃)で製造後、8日間、14日間、27日間静置後にレオメータ(アントンパール社製 レオメータM501)にてフローカーブ測定において回転数4sec-1で測定した。そして、基準時点より1日間静置後の粘度を基準粘度として、22日間、及び、92日間静置後のそれぞれの粘度から基準粘度を減算して、粘度の変化量を算出した。
[使用材料]
(導電性粉末)
導電性粉末としては、Ni粉末(SEM平均粒径0.2μm)を使用した。
【0080】
(セラミック粉末)
セラミック粉末としては、チタン酸バリウム(BaTiO;SEM平均粒径0.06μm)を使用した。
【0081】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂としては、エチルセルロース樹脂、及び、ポリビニルブチラール樹脂(PVB樹脂)を使用した。なお、バインダー樹脂は、ターピネオールに溶解させたビヒクルとして準備したものを用いた。
【0082】
(分散剤)
(1)アミン系分散剤として、上記一般式(1)中、R=CH、R=COH、R=COHで示される分散剤a、上記一般式(1)中、R=H、R=COH、R=Hで示される分散剤b、上記一般式(1)中、R=CH、R=COH、R=Hで示される分散剤c、上記一般式(1)中、R=CH、R=COH、R=CHで示される分散剤d、上記一般式(1)中、R=COH、R=COH、R=COHで示される分散剤e、上記一般式(1)中、R=H、R=COH、R=COHで示される分散剤f、上記一般式(1)中、R=H、R=CNH、R=CNHで示される分散剤g、及び、一般式(3)で示される分散剤h(デヒドロアビエチルアミン)を用いた。
【0083】
【化3】
【0084】
(2)アミノ酸系分散剤として、上記一般式(2)中、R=C1733(直鎖炭化水素基)で示される分散剤cを用いた。
(有機溶剤)
有機溶剤としては、ターピネオールを使用した。
【0085】
[実施例1]
Ni粉末50質量%、セラミック粉末3.8質量%、エチルセルロース樹脂とポリビニルブチラール樹脂からなるビヒクル中のバインダー樹脂を合計で3質量%、アミノ酸系分散剤を0.05質量%、アミン系分散剤として分散剤aを0.5質量%、及び、ターピネオールを全体として100質量%となるよう配合し、これらの材料を混合して導電性ペーストを作製した。
【0086】
[実施例2~6]
アミン系分散剤として分散剤aを表1に記載したアミン系分散剤に変えた以外は実施例1と同様にして、導電性ペーストを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0087】
[比較例1]
アミン系分散剤を用いなかった以外は実施例1と同様に導電性ペーストを作成した。結果を表1に示す。
[比較例2]
アミン系分散剤として分散剤aを分散剤bに変えた以外は実施例1と同様にして、導電性ペーストを作成し、評価した。結果を表1に示す。
[比較例3]
アミン系分散剤として分散剤aを分散剤hに変えた以外は実施例1と同様にして、導電性ペーストを作成し、評価した。結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
(評価結果)
上記一般式(1)で示されるアミン系分散剤を添加した実施例1~6の導電性ペーストは、アミン系分散剤を添加しない比較例1、及び、1級のアミン系分散剤を添加した比較例2の導電性ペーストよりも、基準時点より8日間、14日間、27日間間静置後の粘度の変化量が小さかった。
【0090】
また、一般式(3)で示される1級のアミン系分散剤を添加した比較例3の導電性ペーストは、比較例1の導電性ペーストと比較して、長期間保存後(8~27日間)の粘度変化は小さくなったものの、十分ではなかった。
【符号の説明】
【0091】
1…積層セラミックコンデンサ
10…セラミック積層体
11…内部電極層
12…誘電体層
20…外部電極
21…外部電極層
22…メッキ層

図1