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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】搬送装置、印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/06 20060101AFI20240910BHJP
   B65H 29/58 20060101ALI20240910BHJP
   B41J 29/46 20060101ALI20240910BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B65H7/06
B65H29/58 A
B41J29/46 Z
B41J29/38 302
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020173616
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2021091547
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-08-24
(31)【優先権主張番号】P 2019216216
(32)【優先日】2019-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【弁護士】
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】中垣 敏博
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-220966(JP,A)
【文献】特開2016-212188(JP,A)
【文献】特開2008-162745(JP,A)
【文献】特開2017-171476(JP,A)
【文献】特開平06-191705(JP,A)
【文献】特開2017-124890(JP,A)
【文献】特開2013-241264(JP,A)
【文献】特開2017-019172(JP,A)
【文献】特開2010-173761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 7/06
B65H 29/58
B41J 29/46
B41J 29/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材が搬送される第1搬送路と、
前記第1搬送路と異なる方向へ前記シート材が搬送される第2搬送路と、
前記シート材の搬送先を前記第1搬送路と前記第2搬送路とで切り替える切り替え部と、
前記切り替え部における前記シート材の有無を検知するシート材検知手段と、
前記切替え部の制御をする手段と、を備え、
前記制御をする手段は、所定の条件により前記シート材の搬送が停止した後、前記シート材検知手段で前記シート材無しが検知されたら、前記シート材の搬送先を前記第1搬送路から前記第2搬送路に切り替える制御をし、
前記第1搬送路上での前記シート材の搬送不良を検知する搬送不良検知手段を備え、
前記所定の条件は、前記搬送不良検知手段で前記搬送不良が検知されたという条件であり、
前記搬送不良検知手段で前記搬送不良が検知されたとき、前記第1搬送路上の前記シート材の搬送を停止させ、表示手段に前記第1搬送路上の前記シート材の取り除きを指示する表示をし、
前記第1搬送路上の前記シート材をインチング動作で搬送する手段を備え、
前記インチング動作では、少なくとも、前記切り替え部に跨る前記シート材と、前記第1搬送路上にある前記シート材とを搬送可能である
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
シート材が搬送される第1搬送路と、
前記第1搬送路と異なる方向へ前記シート材が搬送される第2搬送路と、
前記シート材の搬送先を前記第1搬送路と前記第2搬送路とで切り替える切り替え部と、
前記切り替え部における前記シート材の有無を検知するシート材検知手段と、
前記切替え部の制御をする手段と、を備え、
前記制御をする手段は、所定の条件により前記シート材の搬送が停止した後、前記シート材検知手段で前記シート材無しが検知されたら、前記シート材の搬送先を前記第1搬送路から前記第2搬送路に切り替える制御をし、
前記第1搬送路は、
前記シート材を担持する担持回転体と、
前記担持回転体に上流側から前記シート材を受け渡す入口回転体と、
前記担持回転体から下流側に前記シート材を受け渡す出口回転体と、で構成され、
前記入口回転体は、前記シート材を掴むグリッパを備え、
前記切り替え部で前記第1搬送路から前記第2搬送路に切り替えるとき、前記入口回転体の前記グリッパは前記切り替え部から退避する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項3】
シート材が搬送される第1搬送路と、
前記第1搬送路と異なる方向へ前記シート材が搬送される第2搬送路と、
前記シート材の搬送先を前記第1搬送路と前記第2搬送路とで切り替える切り替え部と、
前記切り替え部における前記シート材の有無を検知するシート材検知手段と、
前記切替え部の制御をする手段と、を備え、
前記制御をする手段は、所定の条件により前記シート材の搬送が停止した後、前記シート材検知手段で前記シート材無しが検知されたら、前記シート材の搬送先を前記第1搬送路から前記第2搬送路に切り替える制御をし、
前記切り替え部よりも上流側の搬送経路上の前記シート材と、前記シート材の表裏を反転した両面搬送経路上の前記シート材を前記第2搬送路に搬送する
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項4】
シート材が搬送される第1搬送路と、
前記第1搬送路と異なる方向へ前記シート材が搬送される第2搬送路と、
前記シート材の搬送先を前記第1搬送路と前記第2搬送路とで切り替える切り替え部と、
前記切り替え部における前記シート材の有無を検知するシート材検知手段と、
前記切替え部の制御をする手段と、を備え、
前記制御をする手段は、所定の条件により前記シート材の搬送が停止した後、前記シート材検知手段で前記シート材無しが検知されたら、前記シート材の搬送先を前記第1搬送路から前記第2搬送路に切り替える制御をし、
前記切り替え部は、前記第2搬送路を前記第1搬送路に対して進退させる進退部材を備え、
前記進退部材が前記第1搬送路から退避したときに前記シート材が自重で前記第2搬送路に案内される
ことを特徴とする搬送装置。
【請求項5】
前記第1搬送路は、
前記シート材を担持する担持回転体と、
前記担持回転体に上流側から前記シート材を受け渡す入口回転体と、
前記担持回転体から下流側に前記シート材を受け渡す出口回転体と、で構成されていることを特徴とする請求項1、3、4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記第1搬送路上での前記シート材の搬送不良を検知する搬送不良検知手段を備え、
前記所定の条件は、前記搬送不良検知手段で前記搬送不良が検知されたという条件であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
前記搬送不良検知手段で前記搬送不良が検知されたとき、前記第1搬送路上の前記シート材の搬送を停止させ、表示手段に前記第1搬送路上の前記シート材の取り除きを指示する表示をする
ことを特徴とする請求項に記載の搬送装置。
【請求項8】
前記切り替え部よりも上流側の搬送経路上の前記シート材と、前記シート材の表裏を反転した両面搬送経路上の前記シート材を前記第2搬送路に搬送する
ことを特徴とする請求項1、2、4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項9】
パージ動作を指示する手段を備え、
前記パージ動作を指示する手段が操作されたときに、前記シート材の搬送方向を切替え、前記シート材を、前記第2搬送路を介してパージ用排出部に排出する
ことを特徴とする請求項に記載の搬送装置。
【請求項10】
前記切り替え部は、前記第1搬送路と前記第2搬送路とを切り替える分岐爪を備える
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の搬送装置。
【請求項11】
前記切り替え部は、前記第2搬送路を前記第1搬送路に対して進退させる進退部材を備え、
前記進退部材が前記第1搬送路から退避したときに前記シート材が自重で前記第2搬送路に案内される
ことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載の搬送装置。
【請求項12】
前記シート材のスキューを検知する手段を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし11のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項13】
前記シート材の幅を検知する手段を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項14】
前記シート材の長さを検知する手段を備えている
ことを特徴とする請求項1ないし13のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項15】
前記シート材に印刷を施す画像形成部と、
請求項1ないし14のいずれかに記載の搬送装置とを備えている
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート材を搬送する装置において、装置内でシート材の浮き、しわ、折れなどが生じると搬送不良が発生する。そこで、シート材の浮き、しわ、折れなど搬送不良を生じる状態(これを、単に「搬送不良」という。)が発生したときに、当該シート材の搬送を停止し、後続のシート材などを所定のパージ用のトレイ部に排出するものがある。
【0003】
従来、媒体の供給位置から画像形成領域へ向かう方向へ媒体を搬送する第一搬送部と、画像形成領域を媒体が非通過となる第二搬送部と、第一搬送部の媒体の搬送方向における画像形成領域の上流側に設けられ、搬送不良と判定された媒体は第二搬送部へ案内し、正常搬送と判定された媒体は第一搬送部へ案内する切替部とを備えるものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-19172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したようにシート材の搬送不良が生じたときに搬送を停止する場合、特許文献1に開示の構成にあっては、搬送不良を生じたシート材が切替部に跨って停止することがある。そのため、切替部に跨って停止したシート材と後続のシート材が衝突してジャムが発生し、生産性が低下するという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、生産性の低下を抑制することを目的とする
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係る搬送装置は、
シート材が搬送される第1搬送路と、
前記第1搬送路と異なる方向へ前記シート材が搬送される第2搬送路と、
前記シート材の搬送先を前記第1搬送路と前記第2搬送路とで切り替える切り替え部と、
前記切り替え部における前記シート材の有無を検知するシート材検知手段と、
前記切替え部の制御をする手段と、を備え、
前記制御をする手段は、所定の条件により前記シート材の搬送が停止した後、前記シート材検知手段で前記シート材無しが検知されたら、前記シート材の搬送先を前記第1搬送路から前記第2搬送路に切り替える制御をし、
前記第1搬送路上での前記シート材の搬送不良を検知する搬送不良検知手段を備え、
前記所定の条件は、前記搬送不良検知手段で前記搬送不良が検知されたという条件であり、
前記搬送不良検知手段で前記搬送不良が検知されたとき、前記第1搬送路上の前記シート材の搬送を停止させ、表示手段に前記第1搬送路上の前記シート材の取り除きを指示する表示をし、
前記第1搬送路上の前記シート材をインチング動作で搬送する手段を備え、
前記インチング動作では、少なくとも、前記切り替え部に跨る前記シート材と、前記第1搬送路上にある前記シート材とを搬送可能である
構成とした。
【0008】
本発明によれば、生産性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の概略説明図である。
図2】同じくドラム周りの拡大説明図である。
図3】シート材の搬送不良の説明に供する説明図である。
図4】同実施形態のパージ動作の制御に係る部分の説明に供するブロック説明図である。
図5】搬送動作を停止したときの装置内に残存するシート材の位置の一例を示す説明図である。
図6】インチング動作の説明に供する説明図である。
図7】インチング動作後の状態を示す説明図である。
図8】パージ動作の制御の説明に供するフロー図である。
図9】同じくパージスイッチを押下したときの一例の説明する説明図である。
図10】本発明の第2実施形態においてパージスイッチを押下したときの状態を説明する説明図である。
図11】同実施形態のパージ動作の制御に係る部分の説明に供するブロック説明図である。
図12】シート長、シート幅、スキューの検出方法の一例の説明に供する斜視説明図である。
図13】本発明の第3実施形態におけるパージ動作の制御の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る印刷装置について図1及び図2を参照して説明する。図1は同印刷装置の概略説明図、図2は同じくドラム周りの拡大説明図である。
【0011】
印刷装置(印刷システム)1は、シート材Pを搬入する搬入部10と、印刷部70と、搬出部50とを備えている。印刷部70は、狭義の意味での印刷装置であり、本発明に係る搬送装置を含み、シート材Pを搬送して、シート材Pに印刷を施す画像形成部30と、画像が形成されたシート材Pを乾燥する乾燥部40と、両面機構部60とを備えている。また、搬入部10と印刷部70との間にシート材Pに前処理液などの塗布液を付与(塗布)する前処理部を配置することもできる。
【0012】
印刷装置1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材Pに対し、印刷部70の画像形成部30で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部40でシート材Pに付着した液体を乾燥(定着)させた後、シート材Pを搬出部50に排出する。
【0013】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備え、シート材Pを画像形成部30に供給する。
【0014】
画像形成部30は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転体)であるドラム31と、ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部32を備えている。
【0015】
また、画像形成部30は、上流側から送り込まれたシート材Pを受け取ってドラム31との間でシート材Pを受け渡す入口回転体34と、ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取って乾燥部40に受け渡す出口回転体35を備えている。
【0016】
入口回転体34は、上流側の搬送経路(以下、「搬入経路」という。)301を搬送ローラ対302などで搬送されるシート材Pを、外周部に備えた把持手段であるグリッパ341によって受け取り位置a(図2参照)でシート材Pの先端を把持して受け取る。
【0017】
そして、入口回転体34の回転に伴ってシート材Pが搬送され、搬送されたシート材Pはドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。
【0018】
ここで、搬入経路301をシート材Pが搬送されるとき、搬送ローラ対302で搬送速度を調整して、入口回転体34のグリッパ341とシート材Pの先端位置とのタイミングを調整する。また、スキュー検知手段と補正手段によって、シート材Pの搬送方向と直交する方向に対する傾きと搬送位置を補正しながら、シート材Pを受取り位置へと搬送する。
【0019】
また、搬入経路301には、シート材Pの幅を検知する幅検知手段と、シート材Pの長さを検知する長さ検知手段が配置されている。これにより、設定したシートサイズに対して測定値が異なっているときには印刷動作を停止し、ドラム31上へ液体を吐出することを防止している。
【0020】
ドラム31の表面にも把持手段であるグリッパ311が設けられており、シート材Pの先端がグリッパ311によって把持される。ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0021】
これにより、入口回転体34からドラム31へ受け渡されたシート材Pは、グリッパ311によって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によってドラム31の周面に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0022】
液体吐出部32は、液体吐出手段である液体吐出ヘッドを含む吐出ユニット33(33A~33D)を備えている。例えば、吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う吐出ユニットを使用することもできる。
【0023】
なお、図2に示すように、画像形成部30は、液体吐出部32の各吐出ユニット33の吐出面(ノズル面)をキャッピングするキャップ38を備えている。吐出ユニット33は矢印方向に進退可能に配置され、キャップ38はドラム31の軸方向に移動可能に配置されている。キャッピング時は吐出ユニット33がドラム31の周面から離れる方向に移動して、その下方にキャップ38が進入してキャッピングが行われる。
【0024】
液体吐出部32の各吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム31に担持されたシート材Pが液体吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が形成(印刷)される。
【0025】
画像が形成されたシート材Pは、ドラム31から出口回転体35に渡される。出口回転体35は、ドラム31のシート材Pを外周部に備えた把持手段であるグリッパ351によって受け取る。そして、出口回転体35の回転に伴ってシート材Pを渡し位置bで乾燥部40に渡す。
【0026】
乾燥部40は、出口回転体35から渡されるシート材Pを搬送する搬送ベルト41と、搬送ベルト41で搬送されるシート材Pを加熱する加熱手段42とを備えている。搬送ベルト41は駆動ローラ401と従動ローラ402に掛け回された無端状ベルトである。
【0027】
乾燥部40は、画像形成部30でシート材P上に付着した液体を乾燥させる。これにより、液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。乾燥部40を通過したシート材Pは、排出経路701を通じて搬出部50に搬送され、又は、両面機構部60に送られる。
【0028】
両面機構部60は、シート材Pの両面に印刷を行うときに、乾燥部40を通過したシート材Pを受け入れて表裏反転する反転経路61と、反転経路61で反転されたシート材Pを搬入経路301に再度給送する両面経路62とを備えている。反転経路61及び両面経路62には、複数の搬送ローラ対601が配置されている。
【0029】
搬出部50は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ51を備えている。乾燥部40から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ51上に順次積み重ねられて保持される。
【0030】
なお、本実施形態では印刷手段が液体吐出手段を備える例で説明しているが、液体吐出以外の手段、例えば電子写真方式で印刷を行う印刷装置にも適用できる。
【0031】
次に、本実施形態における第1搬送路について説明する。
【0032】
本実施形態では、入口回転体34、ドラム31及び出口回転体35の周面によって第1搬送路111を構成している。
【0033】
ここで、ドラム31に備えた搬送駆動源を利用し、入口回転体34、出口回転体35は、ギヤで連結し、ドラム31、入口回転体34、出口回転体35が連動して搬送駆動し、第1搬送路111をシート材Pが搬送される構成としている。ただし、入口回転体34、ドラム31及び出口回転体35を個別の駆動源で駆動する構成とすることもできる。
【0034】
第1搬送路111の駆動源は、第1操作手段としてのインチングスイッチ81の操作によって、独立して駆動させることが可能となっている。これにより、印刷装置1が停止した状態であっても、インチングスイッチ81の手動操作で、入口回転体34、ドラム31、出口回転体35を回転駆動(インチング動作)させることができる。
【0035】
なお、「インチング」とは、インチングスイッチ81(インチグボタン)を押しているときだけドラム31を印刷動作時よりも低速で回転させ、インチングスイッチ81(インチグボタン)を離した際にドラム31の回転を停止させる動作である。ドラム31上に残留するシート材Pをユーザが取り除く際にユーザのボタン操作により行われる。
【0036】
また、印刷時の搬送方向への回転のみだけでなく、回転方向選択手段により、正転/逆転を選択できる構成としている。これにより、ドラム31、入口回転体34、出口回転体35の周面に残留したシート材Pの処理、メンテナンス時のグリッパ341、311、351の点検/交換や、ドラム31の周面の清掃、吸引孔を備えたプレートの清掃/交換なども行うことができる。
【0037】
また、印刷装置1には、後述する表示手段811が備えられており、表示手段811を通じて装置の状態をユーザに通知できる。
【0038】
次に、本実施形態の第2搬送路に係る構成について説明する。
【0039】
ドラム31の下方であって、入口回転体34と出口回転体35との間にはパージ用排出部であるパージトレイ91が配置されている。そして、搬入経路301の延長上には、入口回転体34の受け取り位置から斜め下方に向かう第2搬送路92が設けられ、第2搬送路92には搬送ローラ対93が配置されている。また、パージトレイ91には、シート材Pを検知するパージ排出センサ94が配置され、パージすべきシート材Pがパージトレイ91に排出されたことを検知する。
【0040】
また、入口回転体34がシート材Pを受け取る受け取り位置aの下流側を第1搬送路111と第2搬送路92とを切り替える切り替え部95として、切り替え部95には切替手段としての分岐爪96が配置されている。
【0041】
さらに、パージトレイ91へのシート材Pの排出などを指示するパージスイッチ82を備えている。また、反転経路61には、反転パージトレイ97が設けられている。
【0042】
なお、インチングスイッチ81、パージスイッチ82は、ユーザによる手動操作ではなく、装置によって自動で操作される構成とすることもできる。
【0043】
次に、第1搬送路におけるシート材の検知に係る構成について図3も参照して説明する。図3は同シート材の搬送不良の説明に供する説明図である。
【0044】
第1搬送路111には、ドラム31の周面におけるシート材Pの厚み方向の変位を検知する搬送不良検知手段112が配置されている。搬送不良検知手段112は、図3(a)に示すように、シート材Pの耳折れe1、浮きe2、シワe3などの搬送不良を検知する。なお、ここでいう「搬送不良」とは実際に搬送が不能になった状態ではなく、シート材が搬送不良を生じる状態になっていることを意味する。
【0045】
つまり、ドラム31上にシートPを吸着したとき、シートPの姿勢が傾いていたりすると、シートPの先端がグリッパ311から外れて耳折れe1をしていたり、浮きe2やシワe3が発生する。
【0046】
この状態で、シート材Pが図3(b)に示すように、ドラム31の周面と吐出ユニット33のヘッドとの間のギャップGに進入した場合、シート材Pと吐出ユニット33との干渉によってヘッドが損傷することがある。
【0047】
そこで、ドラム31上で搬送不良を検知した場合、ドラム31の周面と最上流の吐出ユニット33Aのヘッドとの間のギャップGにシート材Pが侵入する前に、搬送駆動を停止する。
【0048】
また、切り替え部95におけるシート材Pの有無を検知するシート材検知手段を構成する第1センサ113及び第2センサ114を配置している。
【0049】
第1センサ113は、切り替え部95よりも上流側に配置されている。ここでは、第1センサ113は、入口回転体34の上流側であって、搬入経路301上でシート材Pの有無を検知可能な位置に配置されている。
【0050】
第2センサ114は、切り替え部95よりも下流側に配置されている。ここでは、第2センサ114は、入口回転体34の周面におけるシート材Pの有無を検知可能な位置に配置されている。
【0051】
第1センサ113及び第2センサ114がいずれもシート材Pを検知しているとき、切り替え部95にシート材Pがあることになる。
【0052】
次に、パージ動作の制御に係る部分について図4のブロック説明図を参照して説明する。
【0053】
搬送制御手段801は、パージ動作などの搬送動作に係る制御を司り、切り替え部95における第1搬送路111と第2搬送路92との切り替えを制御する手段を兼ねている。
【0054】
搬送制御手段801は、搬送不良検知手段112が搬送不良を検知したときに、搬送系駆動部802を介してドラム31、搬送ベルト41、搬送ローラ対群803(搬送ローラ対302、搬送ローラ対601など)に動作を停止させて、搬送動作を停止する。
【0055】
搬送制御手段801は、インチングスイッチ81でインチング動作が指示されたとき、搬送系駆動部802を介してドラム31及びこれに同動する入口回転体34、出口回転体35を駆動するインチング動作の制御を行う。
【0056】
搬送制御手段801は、パージスイッチ82でパージ動作が指示されたとき、シート材検知手段115(第1センサ113、第2センサ114)で切り替え部95にシート材Pが有ることが検知されたとき、表示手段811に、インチング動作を行うように指示する表示を行う。
【0057】
搬送制御手段801は、パージスイッチ82でパージ動作が指示されたとき、シート材検知手段115(第1センサ113、第2センサ114)で切り替え部95にシート材Pが無いことが検知された後、切り替え駆動部812を介して分岐爪96を第1搬送路111から第2搬送路92にシート材Pが搬送されるように切り替え、シート材Pを搬送する。
【0058】
搬送制御手段801は、搬送不良が検知された搬送動作が停止されたとき、所要の残存するシート材Pの搬出部50への搬出、反転パージトレイ97への排出、パージトレイ91への排出などの動作を制御する。
【0059】
次に、印刷装置1の印刷部70において搬送不良が発生して搬送動作を停止したときの一例について図5を参照して説明する。図5は搬送動作を停止したときの装置内に残存するシート材の位置の一例を示す説明図である。
【0060】
ここでは、第1搬送路111上のシート材P10において、搬送不良検知手段112によって後端に浮きe2の搬送不良がある検知されたとしている。
【0061】
このとき、ドラム31と吐出ユニット33のギャップGへのシート材Pの浮きe2の部分の侵入を防止するため、搬送不良検知手段112でシート材Pの搬送不良が生じたと判断されたときには、搬送制御手段801によって直ちにドラム31などの回転駆動を停止する。
【0062】
ただし、ドラム31、入口回転体34、出口回転体35の慣性力によって、ある程度の一定距離が制動距離として必要となるため、シート材Pの搬送不良停止位置は、搬送不良検知手段112よりも少し進んだ位置にて停止する。したがって、搬送不良検知手段112から、吐出ユニット33のヘッドまでの距離は、この制動距離以上を確保する必要がある。
【0063】
一方、搬送制御手段801によって、乾燥部40、排出経路701、両面機構部60に残存するシート材Pのうち、すでに印刷が正常に終了しているシート材P1は搬出部50へと搬送し、裏面(第2面)印刷が未完了のシート材P8,P9については反転経路61の下にある反転パージトレイ(第2パージトレイ)97へと搬送される。両面経路62から搬入経路301に残存するシート材P7,P6、P5,P4、P11についてはその場で停止する。
【0064】
また、吐出ユニット33は上方へと移動した後に、キャップ38でノズル面がキャップされることで、ドラム31にシート材Pが進入しても、ヘッドを損傷することはない。
【0065】
これらの処理を完了した後、残存するシート材P(残紙)の位置とジャムの状態を表示手段811に表示してユーザに通知する。
【0066】
次に、第1搬送路に残存するシート材Pの処理について図6及び図7を参照して説明する。図6はインチング動作の説明に供する説明図、図7はインチング動作後の状態を示す説明図である。
【0067】
上述したように、搬送不良検知手段112によって搬送不良が検知されたときには、シート材Pの搬送を停止する。このとき、この例では、図5に示すように、切り替え部95を跨いでシート材P3が停止している。そのため、パージトレイ91に搬入経路301のシート材P11、両面経路62のシート材P4~P7を搬送しようとすると、シート材P3に衝突してジャムが発生する。
【0068】
そこで、第1操作手段としてのインチングスイッチ81を使用して、入口回転体34、ドラム31、出口回転体35の周面で構成されている第1搬送路111上の残存するシート材Pの処理を行う。
【0069】
搬入経路301の延長上には、パージトレイ91に通じる第2搬送路92が配置され、搬入経路301、両面経路62のシート材Pをドラム31下のパージトレイ91に搬送することができる。
【0070】
前述した図5で示すような状態でシート材Pが停止しているとき、インチングスイッチ81が操作されることで、図6に示すように、入口回転体34、ドラム31、出口回転体35は矢印方向にインチング動作が行われる。
【0071】
これにより、シート材P2、シート材P10、シート材P3は、図7に示すように、順次、乾燥部40の搬送ベルト41に移動され、第1搬送路111から取り除かれ、切り替え部95に跨るシート材Pがすべて取り除かれる。
【0072】
そこで、パージスイッチ82を操作することで、切り替え部95の分岐爪96が第2搬送路92側に切り替わり、以後のパージ動作によって、搬入経路301のシート材P11、両面経路62のシート材P4~P7はパージトレイ91に排出される。
【0073】
次に、パージ動作の制御について図8及び図9を参照して説明する。図8はパージ動作の制御の説明に供するフロー図、図9は同じくパージスイッチを押下したときの一例の説明する説明図である。
【0074】
パージスイッチ82が押し下げられると、シート検知手段115(第1センサ113及び第2センサ114)の各検知結果から切り替え部95に跨ってシート材Pがないか否かを判別する(ステップS1、以下単に「S1」というように表記する。)。ここでは、受け取り位置a(図8では簡略化のため「受取位置(切替部)と表記している。」にシート材Pが無いか否かを判別している。
【0075】
なお、本実施の形態に代えて、切り替え部95の近傍にシート検知手段としてのセンサを設けてもよい。また、第1センサ113及び第2センサ114のうちいずれか一つのみを設け、当該1つのセンサのみを、シートの有無を検知するシート検知手段として用いてもよい。
【0076】
このステップS1の判別の結果、受け取り位置a(切り替え部95)に跨るシート材Pが有れば、インチングスイッチ81の操作により、受け取り位置a(切り替え部95)に跨るシート材Pを取り除く必要があるため、表示手段811にその旨を表示して通知する(S2)。
【0077】
これに対して、受け取り位置a(切り替え部95)に跨るシート材Pが無ければ、分岐爪96を第2搬送路92に切り替え可能か否かを判別する(S3)。
【0078】
つまり、図9に示すように、パージスイッチ82を押下したときに、入口回転体34のグリッパ341が受け取り位置a(切り替え部95)にあると、第2搬送路92が塞がれる。そこで、入口回転体34のグリッパ341が第2搬送路92を開放する位置までグリッパ341を移動させる必要がある。
【0079】
なお、入口回転体34のグリッパ341の位置は、反射型センサでグリッパ341が退避位置にあることを検知する。入口回転体34やドラム31の回転角度の位相を検知してグリッパ341の位置を検知することもできる。
【0080】
そして、分岐爪96を第2搬送路92に切り替えることができないときには、インチングスイッチ81の操作により、グリッパ341を退避位置に移動するように、表示手段811にその旨を表示して通知する(S4)。
【0081】
これに対し、分岐爪96を第2搬送路92に切り替えることができるときには、分岐爪96を第2搬送路92側に切り替える(S5)。
【0082】
その後、搬入経路301の搬送ローラ対302、両面経路62の搬送ローラ対601などの駆動を開始する(S6)。これにより、シート材P11、P4、P5、P6、P7がパージトレイ91へと搬送されて集約される。
【0083】
そして、規定時間が経過したか否かを判別し(S7)、規定時間が経過したときには、搬入経路301の搬送ローラ対302、両面経路62の搬送ローラ対601などの駆動を終了して停止する(S8)。
【0084】
その後、パージトレイ91に収容したシート材Pがあるか否かを判別し(S9)、パージトレイ91に収容したシート材Pがあれば、パージトレイ91のシート材Pの除去をユーザに通知する(S10)。
【0085】
このように、シート材検知手段でシート材無しが検知された後に第1搬送路から第2搬送路に切り替える制御をするので、残シート材を処理するときのジャムの発生を防止でき、生産性の低下を抑制できる。
【0086】
次に、本発明の第2実施形態について図10を参照して説明する。図10は同実施形態においてパージスイッチを押下したときの状態を説明する説明図である。
【0087】
本実施形態では、第2搬送路92は、入口回転体34に対して実線図示の位置と破線図示の位置との間で進退する進退部材である上下動部材98によって形成している。
【0088】
上下動部材98は、例えば、入口回転体34の周面に対して1mm程度の隙間となる第1位置(シート材Pが第1搬送路11に案内される位置)と、3~10mm程度の隙間となる退避位置である第2位置(シート材Pが第2搬送路92に案内される位置)との間で移動することができる。
【0089】
そして、パージスイッチ82が押下されたときに、図10に示すように、上下動部材98が入口回転体34の周面から離間する第2位置まで下降移動し、シート材Pは自重で第2搬送路92上に垂れ落ちて案内される。
【0090】
これにより、第2搬送路92が入口回転体34のグリッパ341による影響を受けない位置まで下降することになり、グリッパ341が受け取り位置aにあっても、シート材Pは自重で第2搬送路92に沿って移動できる。
【0091】
つまり、本実施形態では、上下動部材98によって第1搬送路111と第2搬送路92とを切替る切替手段を構成している。
【0092】
したがって、前記第1実施形態の図8で説明したフロー図において、パージスイッチ82が押下されたときには、上下動部材98を下降させる処理を行うことで、グリッパ341を退避位置に移動させる動作が不要になる。
【0093】
これにより、ダウンタイムのさらなる低減が可能となる。
【0094】
ここで、同第2実施形態におけるパージ動作の制御に係る部分について図11のブロック説明図を参照して説明する。
【0095】
ここでは、搬送制御手段801は、切替え駆動部52を介して、進退部材98を進退させて第1搬送路111と第2搬送路92とを切り替える制御を行う。その他の構成は、前記第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0096】
次に、シート長、シート幅及びスキューの検出方法の一例について図12を参照して説明する。図12は同説明に供する斜視説明図である。
【0097】
搬入経路301に備えられたセンサ113の上流の搬送ローラ対302には、同様に、センサ120が配置されている。
【0098】
また、シート材Pの幅方向のエッジを検出可能なラインセンサで構成されるセンサ130、131、132が配置されている。搬送ローラ対302の上流側及び下流側にセンサ130、131が配置され、センサ131と幅方向反対側にセンサ132が配置されている。
【0099】
また、搬送ローラ対302は、従動ローラ302aと駆動ローラ302bで構成され、従動ローラ302aにはロータリエンコーダとセンサが備えられ、回転量(回転距離)を測定できる構成としている。
【0100】
ここで、シート長(シート材Pの長さ)の検出を行うときには、搬入経路301を搬送されるシート材Pの先端が、センサ113をONしたときから従動ローラ302aの回転距離の計測を開始する。
【0101】
その後、シート材Pの後端がセンサ120をOFFしたときに、計測を終了し、その計測値とセンサ113とセンサ120間の物理的な距離を加算することで、シート長が算出される。シート長を検出する方法は、必要な精度によって変えてもよく、例えば、単純にセンサ113をシート材PがONしてからOFFするまでの時間とシート材Pの搬送速度の乗算から算出しても良い。
【0102】
また、シート幅(シート材Pの幅)、スキューの検出を行うときには、搬入経路301を搬送されるシート材Pの先端が、センサ113をONしたことを契機に、一定時間後に、センサ130、131、132が各々シート材Pのエッジを読取る。
【0103】
センサ131、132の読取り値から、シート材Pの物理的な距離を検出することでシート幅を判定する。さらに、センサ130、131の読取り値の差分からシート材Pのスキュー量を算出する。
【0104】
次に、本発明の第3実施形態について図13を参照して説明する。図13は同実施形態におけるパージ動作の制御を説明するフロー図である。
【0105】
第3実施形態におけるパージ動作の制御フローは、前記第1実施形態と比較して、ステップS4の部分のみが異なる。
【0106】
つまり、本実施形態では、ステップS3において分岐爪96を第2搬送路92に切り替えることができない場合(S3で「N」の場合)、搬送制御手段801は、ドラム31を回転駆動することによってドラム31の回転に連動する入口回転体34を回転駆動することにより、分岐爪96の切り替え動作を妨げない位置までグリッパ341を移動させる(S4)。その後、分岐爪96を第2搬送路92側に切り替える(S5)。
【0107】
これにより、入口回転体34のグリッパ341の位置によらず、分岐爪96を自動で第2搬送路92へ切り替えることができる。
【0108】
本実施形態のステップS4において、グリッパ341の位置は反射型センサで検知してもよい。また、エンコーダを用いて入口回転体34やドラム31の回転角度の位相を検知することにより、グリッパ341の位置を検知してもよい。
【符号の説明】
【0109】
1 印刷装置
10 搬入部
20 前処理部
30 画像形成部
31 ドラム
32 液体付与部
34 入口回転体
35 出口回転体
40 乾燥部
50 搬出部
60 両面機構部
70 印刷部
91 パージトレイ
92 第2搬送路
93 搬送ローラ対
95 切り替え部
96 分岐爪
98 上下動部材(進退部材)
111 第1搬送路
112 搬送不良検知手段
115 シート材検知手段
801 搬送制御手段
811 表示手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13