(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、吐出ユニット、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/14 20060101AFI20240910BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 609
B41J2/18
(21)【出願番号】P 2020186763
(22)【出願日】2020-11-09
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】坂東 佳憲
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-237323(JP,A)
【文献】特開2016-159514(JP,A)
【文献】特開2017-159561(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0297381(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106553448(CN,A)
【文献】特開2020-151941(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元マトリクス状に配置された液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、
2以上の前記圧力室に通じる複数の共通供給流路支流と、
2以上の前記圧力室に通じる複数の共通回収流路支流と、
前記複数の共通供給流路支流に通じる共通供給流路本流と、
前記複数の共通回収流路支流に通じる共通回収流路本流と、を有し、
前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流とは交互に並べて配置され、
前記圧力室を介して通じている前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流とを
前記圧力室を迂回して通じるバイパス流路を有し、
前記バイパス流路には前記ノズルがなく、
異なる前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流とを通じる複数の前記バイパス流路には、流体抵抗が異なる前記バイパス流路が含まれている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
同じ前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流とに通じる少なくとも2つの前記バイパス流路を有し、
前記共通供給流路支流から前記ノズルまでの供給側個別流路の流体抵抗をRf、
前記ノズルから前記共通回収流路支流までの回収側個別流路の流体抵抗をRr、
前記共通供給流路支流の入口から上流側の前記バイパス流路までの流体抵抗をR1、
前記共通回収流路支流に通じる最上流の前記回収側個別流路から前記共通回収流路支流の出口までの流体抵抗をR2、とするとき、
Rf×R2-Rr×R1>0
の関係である
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記共通供給流路本流の上流側に接続される前記共通供給流路支流に通じる前記バイパス流路の流体抵抗が、前記共通供給流路本流の下流側に接続される前記共通供給流路支流に通じる前記バイパス流路の流体抵抗よりも大きい
ことを特徴とする請求項2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
同じ前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流とに通じる少なくとも2つの前記バイパス流路を有し、
前記共通供給流路支流から前記ノズルまでの供給側個別流路の流体抵抗をRf、
前記ノズルから前記共通回収流路支流までの回収側個別流路の流体抵抗をRr、
前記共通供給流路支流の入口から最下流の前記供給側個別流路までの流体抵抗をR3、
下流側の前記バイパス流路から前記共通回収流路支流の出口までの流体抵抗をR4、とするとき、
Rf×R4-Rr×R3<0
の関係である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記共通供給流路本流の下流側に接続される前記共通供給流路支流に通じる前記バイパス流路の流体抵抗が、前記共通供給流路本流の上流側に接続される前記共通供給流路支流に通じる前記バイパス流路の流体抵抗よりも大きい
ことを特徴とする請求項4に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載の液体吐出ヘッドが複数配列されている
ことを特徴とする吐出ユニット。
【請求項7】
請求項1ないし5いずれかに記載の液体吐出ヘッド、請求項6に記載の吐出ユニットの少なくともいずれかを備えている
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド、吐出ユニット、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドとして、複数のノズルを二次元マトリクス状に配置し、共通供給流路本流から共通供給流路支流を通じて圧力室に液体を供給し、圧力室から共通回収流路支流を通じて共通回収流路本流に液体を回収するものがある。
【0003】
従来、回収流路支流と供給流路支流とを通じるバイパス流路を備え、バイパス流路の抵抗値は回収流路支流が通じる回収流路本流の液体回収口に近い側に向かうに従って順次小さくなるようにしたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、複数のノズルを二次元マトリクス状に配置した場合、共通流路本流(共通供給流路本流、共通回収流路本流)の方向でメニスカス圧の差が発生して吐出特性がばらつくという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、吐出特性のばらつきを低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る吐出ヘッドは、
二次元マトリクス状に配置された液体を吐出する複数のノズルと、
前記複数のノズルに各々連通する複数の圧力室と、
2以上の前記圧力室に通じる複数の共通供給流路支流と、
2以上の前記圧力室に通じる複数の共通回収流路支流と、
前記複数の共通供給流路支流に通じる共通供給流路本流と、
前記複数の共通回収流路支流に通じる共通回収流路本流と、を有し、
前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流とは交互に並べて配置され、
前記圧力室を介して通じている前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流とを前記圧力室を迂回して通じるバイパス流路を有し、
前記バイパス流路には前記ノズルがなく、
異なる前記共通供給流路支流と前記共通回収流路支流とを通じる複数の前記バイパス流路には、流体抵抗が異なる前記バイパス流路が含まれている
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吐出特性のばらつきを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドをノズル面側から見た外観斜視説明図である。
【
図2】同じくノズル面と反対側から見た外観斜視説明図である。
【
図4】同じく流路構成部材の分解斜視説明図である。
【
図7】本発明の第1実施形態における流路構成の説明に供する共通流路本流と共通流路支流の平面説明図である。
【
図8】同じく共通流路支流とバイパス流路及び圧力室を含む個別流路に係る部分の要部平面説明図である。
【
図9】比較例におけるメニスカス圧のばらつきの説明に供する説明図である。
【
図10】比較例におけるメニスカス圧のばらつきの説明に供する説明図である。
【
図11】本発明の第1実施形態におけるバイパス流路の流体抵抗の調整とメニスカス圧の関係の説明に供する説明図である。
【
図12】同実施形態における共通供給流路支流から共通回収流路支流に至る等価回路図である。
【
図13】同等価回路の記号の説明に供する説明図である。
【
図15】本発明の第2実施形態におけるバイパス流路の流体抵抗の調整とメニスカス圧の関係の説明に供する説明図である。
【
図16】本発明の第3実施形態におけるバイパス流路の流体抵抗の調整とメニスカス圧の関係の説明に供する説明図である。
【
図17】本発明の第4実施形態に係るヘッドの流路構成の説明図である。
【
図18】同じく共通供給流路支流から共通回収流路支流に至る等価回路図である。
【
図19】本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の一例の概略側面説明図である。
【
図20】同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について
図1ないし
図6を参照して説明する。
図1は同実施形態に係る液体吐出ヘッドをノズル面側から見た外観斜視説明図、
図2は同じくノズル面と反対側から見た外観斜視説明図、
図3は同じく分解斜視説明図、
図4は同じく流路構成部材の分解斜視説明図、
図5は
図4の要部拡大斜視説明図、
図6は同じく流路部分の断面斜視説明図である。
【0011】
ヘッド100は、循環型の液体吐出ヘッドであり、ノズル板110と、流路板(個別流路部材)120と、圧電素子140を含む振動板部材130と、共通流路支流部材150と、ダンパ部材160と、共通流路本流部材170、フレーム部材180と、配線部材(フレキシブル配線基板)145などを備えている。配線部材145にはヘッドドライバ(ドライバIC)146が実装されている。本実施形態では、個別流路部材120と振動板部材130とによって、圧電素子140が配置されたアクチュエータ基板102を構成している。
【0012】
ノズル板110には、液体を吐出する複数のノズル111を有している。複数のノズル111は、二次元状にマトリクス配置されている。
【0013】
個別流路部材120は、複数のノズル111に各々連通する複数の圧力室(個別液室)121と、複数の圧力室121に各々通じる複数の個別供給流路122と、複数の圧力室121に各々通じる複数の個別回収流路123とを形成している。
【0014】
振動板部材130は、圧力室121の変形な可能な壁面である振動板131を形成し、振動板131には圧電素子140が一体に設けられている。また、振動板部材130には、個別供給流路122に通じる供給側開口132と、個別回収流路123に通じる回収側開口133とが形成されている。圧電素子140は、振動板131を変形させて圧力室121内の液体を加圧する圧力発生手段(圧力発生素子)である。
【0015】
共通流路支流部材150は、2以上の個別供給流路122に通じる複数の共通供給流路支流152と、2以上の個別回収流路123に通じる複数の共通回収流路支流153とを交互に隣接して形成している。
【0016】
共通流路支流部材150には、個別供給流路122の供給側開口132と共通供給流路支流152を通じる供給口154となる貫通孔と、個別回収流路123の回収側開口133と共通回収流路支流153を通じる回収口155となる貫通孔が形成されている。
【0017】
また、共通流路支流部材150は、複数の共通供給流路支流152に通じる1又は複数の共通供給流路本流156の一部156aと、複数の共通回収流路支流153に通じる1又は複数の共通回収流路本流157の一部157aを形成している。
【0018】
ダンパ部材160は、共通供給流路支流152の供給口154と対面する(対向する)供給側ダンパと、共通回収流路支流153の回収口155と対面する(対向する)回収側ダンパを有している。
【0019】
ここで、共通供給流路支流152及び共通回収流路支流153は、同じ部材である共通流路支流部材150に交互に並べて配列された溝部を、変形可能な壁面を形成するダンパ部材160で封止することで構成している。
【0020】
共通流路本流部材170は、複数の共通供給流路支流152に通じる共通供給流路本流156と、複数の共通回収流路支流153に通じる共通回収流路本流157を形成する。
【0021】
フレーム部材180には、共通供給流路本流156の一部156bと、共通回収流路本流157の一部157bが形成されている。
【0022】
共通供給流路本流156の一部156bはフレーム部材180に設けた供給ポート181に通じ、共通回収流路本流157の一部157bはフレーム部材180に設けた回収ポート182に通じている。
【0023】
このヘッド100においては、圧電素子140に駆動パルスを印加することによって圧電素子140が撓み変形をして圧力室121内の液体を加圧することにより、ノズル111から液体が滴状に吐出される。
【0024】
また、ヘッド100から液体を吐出する動作を行わないとき、あるいは、ノズル111から吐出されなかった液体は、回収ポート182及び供給ポート181が接続される循環経路を介して循環する。
【0025】
次に、第1実施形態における流路構成について
図7及び
図8を参照して説明する。
図7は共通流路本流と共通流路支流の平面説明図、
図8は共通流路支流とバイパス流路及び圧力室を含む個別流路に係る部分の要部平面説明図である。
【0026】
共通供給流路本流156に複数の共通供給流路支流152が接続され、共通回収流路本流157に複数の共通回収流路支流153が接続されている。複数の供給流路支流152と複数の回収流路支流153とは交互に並べて配置されている。共通供給流路本流156、共通供給流路支流152における液体の流れ方向を実線矢印で示し、共通回収流路本流157、共通回収流路支流153における液体の流れ方向を破線矢印で示している。
【0027】
共通供給流路支流152の共通供給流路本流156に繋がる入口152a側には、共通供給流路本流156の流れの方向において隣り合う共通供給流路支流152と共通回収流路支流153とを通じるバイパス流路191Aが設けられている。
【0028】
共通回収流路支流153の共通回収流路本流157に繋がる出口153b側には、共通供給流路本流156の流れの方向において隣り合う共通供給流路支流152と共通回収流路支流153とを通じるバイパス流路191Bが設けられている。
【0029】
つまり、本実施形態では、同じ共通供給流路支流152及び共通回収流路支流153に通じる2つのバイパス流路191A、191Bを有している。そして、2つのバイパス流路191A、191Bの内、共通供給流路支流152の流れの方向(共通回収流路支流153の流れの方向も同じ)において、バイパス流路191Aが上流側のバイパス流路、バイパス流路191Bが下流側のバイパス流路となる。
【0030】
ここでは、
図8に示すように、簡略化のため、1つの共通供給流路支流152と共通回収流路支流153に8個のノズル111が通じているものとする。そして、共通供給流路本流156の流れの方向において、最上流側の共通供給流路支流152の入口側から並ぶ8個のノズル111をノズル番号N1~N8とし、次の共通供給流路支流152の入口152a側から並ぶ8個のノズル111をノズル番号N9~N16というようにする。
【0031】
ここで、上記第1実施形態の流路構成において、バイパス流路の流体抵抗を、異なる共通流路支流間で同じにした比較例について
図9及び
図10を参照して説明する。
【0032】
図9は、異なる共通供給流路支流152及び共通回収流路支流153間におけるバイパス流路191(191A、191B)の流体抵抗を同一として、液体を循環したときのメニスカス圧分布を示している。
【0033】
図9の横軸は共通供給流路本流156の供給ポート181側からの流れの方向におけるノズル位置(チャンネルCh)を、縦軸は共通供給流路支流152内での流れの方向に並ぶ8個のノズル111を示している。
【0034】
この
図9から分かるように、バイパス流路191の流体抵抗を、共通供給流路支流152及び共通回収流路支流153間で同じにした場合には、共通供給流路支流152の流れ方向と共通供給流路本流156の流れ方向において、メニスカス圧のばらつきが発生する。
【0035】
図10は、共通供給流路本流の流れの方向における上流側の共通供給流路支流と下流側の共通供給流路支流の各支流内での流れの方向における圧力室位置(ノズル位置)とメニスカス圧との関係を示している。
【0036】
この
図10から分かるように、共通供給流路本流156の流れの方向における上流側の共通供給流路支流152に通じるノズル111のメニスカス圧は、下流側の共通供給流路支流152に通じるノズルメニスカス圧よりも高くなっている。
【0037】
次に、本発明の第1実施形態におけるバイパス流路の流体抵抗の調整とメニスカス圧の関係について
図11を参照して説明する。
図11は同説明に供する説明図である。
【0038】
本実施形態では、バイパス流路191Aの流体抵抗を調整している。
【0039】
図11は、バイパス流路191Aの流体抵抗を調整したときの共通供給流路本流156の流れの方向における上流側の共通供給流路支流152と下流側の共通供給流路支流152の各支流内での流れの方向における圧力室位置(ノズル位置)とメニスカス圧との関係を示している。
【0040】
ここでは、共通供給流路本流156の流れの方向における上流側の共通供給流路支流152と共通回収流路支流153とを通じるバイパス流路191Aの流体抵抗を調整した。
【0041】
この結果、本実施形態では、共通供給流路本流156の流れの方向において、異なる共通供給流路支流152と共通回収流路支流153とを通じる複数のバイパス流路191Aには、他のバイパス流路191Aと流体抵抗が異なるバイパス流路191Aを含んでいることになる。
【0042】
図11から分かるように、
図10の比較例に対し、共通供給流路本流156の流れの方向における上流側の共通供給流路支流152に通じるノズル111のメニスカス圧が低くなっており、下流側の共通供給流路支流152に通じるノズル111のメニスカス圧と近くなっている。
【0043】
したがって、バイパス流路191Aの流体抵抗の調整をヘッド全体に適用することにより、共通流路本流の流れ方向における各共通流路支流間でのメニスカス圧の差を低減することができる。
【0044】
そこで、バイパス流路191の流体抵抗を変化させたときのメニスカス圧の変化と流体抵抗の調整量について
図12ないし
図14を参照して説明する。
図12は共通供給流路支流から共通回収流路支流に至る等価回路図、
図13は同等価回路の記号の説明に供する説明図、
図14は同じく流路部分の断面説明図である。
【0045】
図14における共通供給流路支流152に開口する供給口154からノズル111までの流路部分を
図13に示す供給側個別流路128とする。
図14におけるノズル111から共通回収流路支流153に開口する回収口155までの流路部分を
図13に示す回収側個別流路129とする。
【0046】
図12において、
Pin_kは、k番目の共通供給流路支流152の入口152a(共通供給流路本流156との接続部)の圧力
Pout_kは、k番目の共通供給流路支流152とつながる共通回収流路支流153の出口153b(共通回収流路本流157との接続部)の圧力
Pch_k_nは、k番目の共通供給流路支流152とつながる共通供給流路支流152の入口からn番目のノズル111のメニスカス圧
Q1_kは、k番目の共通供給流路支流152の入口152aでの流量
Qbin_kは、k番目の共通供給流路支流152とつながるバイパス流路191Aの流量
Qbout_kは、k番目の共通供給流路支流152とつながるバイパス流路191Bの流量
Rbf1は、共通供給流路支流152の入口152aからバイパス流路191Aまでの流体抵抗(
Rbf2は、共通供給流路支流152内のバイパス流路191Aから最上流の供給側個別流路128までの流体抵抗
Rbf3は、共通供給流路支流152内の供給側個別流路128間の流体抵抗
Rbf4は、共通供給流路支流152内の供給側個別流路128からバイパス流路191Bまでの流体抵抗
Rbr1は、共通回収流路支流153内のバイパス流路191Bから出口153b(共通回収流路本流157との接続部)までの流体抵抗
Rbr2は、共通回収流路支流153内のバイパス流路191Aから最上流の回収側個別流路129(ノズル番号N1に通じる流路)までの流体抵抗
Rbr3は、共通回収流路支流153内の回収側個別流路129間の流体抵抗
Rbr4は、共通回収流路支流153内の最下流の回収側個別流路129(ノズル番号N8に通じる流路)からバイパス流路191Bまでの流体抵抗
Rbin_kは、k番目の共通供給流路支流152と通じるバイパス流路191Aの流体抵抗
Rbout_kは、k番目の共通供給流路支流152と通じるバイパス流路191Bの流体抵抗
Rfは、共通供給流路支流152からノズル111までの流体抵抗(
図14参照)
Rrは、ノズル111から共通回収流路支流153までの流体抵抗(
図14参照)
PA、PB、PC、PDは、点A、B、C、Dの圧力
とする。
【0047】
図13において、
R1は、共通供給流路支流152の入口152aから上流側のバイパス流路191Aまでの流体抵抗、
R2は、共通回収流路支流153に通じる最上流の回収側個別流路129(ノズル番号N1に通じる流路)から共通回収流路支流153の出口153bまでの流体抵抗、
R3は、共通供給流路支流152の入口152aから最下流の供給側個別流路128(ノズル番号N8に通じる流路)までの流体抵抗をR3、
R4は、下流側のバイパス流路191Bから共通回収流路支流153の出口153bまでの流体抵抗、である。
【0048】
まず、バイパス流路191Aの流体抵抗Rbin_kを変化させたときのメニスカス圧の変化について説明する。
【0049】
バイパス流路191Aの流体抵抗Rbin_kが変化した場合、バイパス流路191Aの流量Qbin_kがΔQbin_k変化する。このとき、圧力PAは-ΔQbin_k×Rbf1、圧力PBはΔQbin_k×{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}変化する。
【0050】
これにより、メニスカス圧力Pch_k_1は、ΔQbin_k×[Rf×{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}‐Rr×Rbf1]/(Rf+Rr)変化する。つまり、流体抵抗Rbin_kによってメニスカス圧力Pch_k_1が変化する。
【0051】
次に、第1実施形態におけるバイパス流路191Aの流体抵抗の調整について説明する。
【0052】
第1実施形態の場合、共通供給流路本流156の流れの方向における上流側をa番目、下流側をb番目とすると、メニスカス圧力Pch_a_1が元(
図10)よりも低くなっている。
【0053】
つまり、(Qbin_a-Qbin_b)×[Rf×{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}-Rr×Rbf1]が負になるように、バイパス流路191Aの流体抵抗Rbin_kで考える。このとき、(Rbin_a-Rbin_b)×[Rf×{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}-Rr×Rbf1]が正になるようにバイパス流路191Aの流体抵抗Rbinを変化させている。
【0054】
前述した
図10の結果になるときのPch_b_1-Pch_a_1=ΔPとすると、第1実施形態では、Rbin_aをQbin_a=Qbin_b+ΔP×(Rf+Rr)/[Rf×{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}-Rr×Rbf1]となるように設定している。これにより、
図12のようにメニスカス圧力Pch_a_1とメニスカス圧力Pch_b_1が一致する。
【0055】
このときのバイパス流路191Aの流体抵抗Rbin_aは、およそRbin_a=「Qbin_b×Rbin_b×[Rf×{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}-Rr×Rbf1]-ΔP×(Rf+Rr)×{Rbr1+Rbr2+Rbr3×(n-1)+Rbr4+Rbf1})」/「Qbin_b×[Rf×{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}-Rr×Rbf1]+ΔP×(Rf+Rr)」である。
【0056】
これにより、メニスカス圧のばらつきが低減されている。
【0057】
ここで、[Rf×{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}-Rr×Rbf1]は正の値、つまり、[{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}/Rbf1]は大きく設定できることが好ましい。ヘッド100を小さくするためには、共通供給流路支流152内の支流入口152aからバイパス流路191Aまでの距離は短い方が良く、流体抵抗Rbf1は小さい方が好ましい。
【0058】
言い換えれば、[{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}/Rbf1]は大きく設定できることが好ましい。[{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}/Rbf1]の取りうる最大値が(Rr/Rf)の制約を受けない条件が好ましい。
【0059】
このときの共通供給流路本流156の流れの方向における上流側のバイパス流路191Aの流体抵抗Rbin_aと、同じく下流側のバイパス流路191Aの流体抵抗Rbin_bの大小関係は、Rbin_a>Rbin_bとなる。つまり、共通供給流路本流156の上流側に接続される共通供給流路支流152に通じるバイパス流路191Aの流体抵抗Rbinが、共通供給流路本流156の下流側に接続される共通供給流路支流152に通じるバイパス流路191Aの流体抵抗よりも大きい。
【0060】
以上において、
図13に示すように、{Rbr1+Rbr3×(n-1)+Rbr4}は流体抵抗R2であり、流体抵抗Rbf1は流体抵抗R1であるので、
Rf×R2-Rr×R1>0
となり、この関係を満たすことで、メニスカス圧のばらつきを低減できる。
【0061】
次に、本発明の第2実施形態について
図15も参照して説明する。
図15はバイパス流路の流体抵抗の調整とメニスカス圧の関係の説明に供する説明図である。
【0062】
本実施形態に係る液体吐出ヘッドの流路構成は、前記第1実施形態と同様である。本実施形態では、バイパス流路191Bの流体抵抗を調整している。
【0063】
図15は、バイパス流路191Bの流体抵抗を調整したときの共通供給流路本流156の流れの方向における上流側の共通供給流路支流152と下流側の共通供給流路支流152の各支流内での流れの方向における圧力室位置(ノズル位置)とメニスカス圧との関係を示している。
【0064】
ここでは、共通供給流路本流156の流れの方向における下流側の共通供給流路支流152と共通回収流路支流153とを通じるバイパス流路191Bの流体抵抗を調整した。
【0065】
この結果、本実施形態では、共通供給流路本流156の流れの方向において、異なる共通供給流路支流152と共通回収流路支流153とを通じる複数のバイパス流路191Bには、他のバイパス流路191Bと流体抵抗が異なるバイパス流路191Bを含んでいることになる。
【0066】
図15から分かるように、
図10の比較例に対し、共通供給流路本流156の流れの方向における下流側の共通供給流路支流152に通じるノズル111のメニスカス圧が高くなっており、上流側の共通供給流路支流152に通じるノズル111のメニスカス圧と近くなっている。
【0067】
したがって、バイパス流路191Bの流体抵抗の調整をヘッド全体に適用することにより、共通流路本流の流れ方向における各共通流路支流間でのメニスカス圧の差を低減することができる。
【0068】
次に、バイパス流路191Bの流体抵抗Rbout_kを変化させたときのメニスカス圧の変化について説明する。
【0069】
バイパス流路191Bの流体抵抗Rbout_kが変化した場合、バイパス流路191Bの流量Qbout_kがΔQbout_k変化する。このとき、圧力PCは、-ΔQbout_k×{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}、圧力PDはΔQbout_k×Rbr1変化する。
【0070】
これにより、メニスカス圧力Pch_k_nは、ΔQbout_k×[Rf×Rbr1-Rr×{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}]/(Rf+Rr)変化する。つまり、バイパス流路191Bの流体抵抗Rbout_kによってメニスカス圧力Pch_k_nが変化する。
【0071】
次に、第2実施形態におけるバイパス流路191Bの流体抵抗の調整について説明する。
【0072】
本実施形態の場合、上流側をa番目、下流側をb番目とすると、メニスカス圧力Pch_b_nが元よりも高くなっている。
【0073】
つまり、(Qbout_b-Qbout_a)×[Rf×Rbr1-Rr×{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}]が正になるように、Rbut_kで考える。このとき、(Rbout_b-Rbout_a)×[Rf×Rbr1-Rr×{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}]が負になるようにバイパス流路191Bの流体抵抗を変化させている。
【0074】
前述した
図10の結果になるときのPch_a_n-Pch_b_n=ΔPとすると、第2実施形態では、バイパス流路191Bの流体抵抗Rbout_bを、Qbout_b=Qbout_a+ΔP×(Rf+Rr)/[Rf×Rbr1-Rr×{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}]となるように設定しているので、
図15のようにメニスカス圧力Pch_a_nとメニスカス圧力Pch_b_nが一致する。
【0075】
このときのバイパス流路191Bの流体抵抗Rbiout_bは、およそRbout_b=[Qbout_a×Rbout_a×[Rf×Rbr1-Rr×{Rbf1+Rbr2+Rbr3×(n-1)}]-ΔP×(Rf+Rr)×{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)+Rbf4+Rbr1}」/「Qbout_a×[Rf×Rbr1-Rr×{Rbf1+Rbr2+Rbr3×(n-1)}]+ΔP×(Rf+Rr)]である。
【0076】
これにより、メニスカス圧のばらつきが低減されている。
【0077】
[Rf×Rbr1-Rr×{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}]は負の値、つまり[{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}/Rbr1]>(Rr/Rf)であることが好ましい。
【0078】
ヘッド100を小さくするためには、バイパス流路191Bから共通回収流路支流153内の支流出口153bまでは短い方が良く、流体抵抗Rbr1は小さい方が好ましい。
【0079】
言い換えれば、[{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}/Rbr1}は大きく設定できることが好ましい。[{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}/Rbr1]の取りうる最大値が(Rr/Rf)の制約を受けない条件が好ましい。
【0080】
このときの共通供給流路本流156の流れの方向におけるバイパス流路191Bの流体抵抗Rbout_aとバイパス流路191Bの流体抵抗Rbout_bの大小関係は、Rbout_a<Rbout_bとなる。つまり、共通供給流路本流156の下流側に接続される共通供給流路支流152に通じるバイパス流路191Bの流体抵抗が、共通供給流路本流156の上流側に接続される共通供給流路支流152に通じるバイパス流路191Bの流体抵抗Rboutよりも大きい。
【0081】
以上において、
図13に示すように、流体抵抗Rbr1は流体抵抗R4、{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}は流体抵抗R3であるので、
Rf×R4-Rr×R3<0
となり、この関係を満たすことで、メニスカス圧のばらつきを低減できる。
【0082】
次に、本発明の第3実施形態について
図16も参照して説明する。
図16はバイパス流路の流体抵抗の調整とメニスカス圧の関係の説明に供する説明図である。
【0083】
本実施形態に係る液体吐出ヘッドの流路構成は、前記第1実施形態と同様である。本実施形態では、バイパス流路191A及びバイパス流路191Bの流体抵抗を調整している。
【0084】
図16は、バイパス流路191Aの流体抵抗を調整したときの共通供給流路本流156の流れの方向における上流側の共通供給流路支流152と下流側の共通供給流路支流152の各支流内での流れの方向における圧力室位置(ノズル位置)とメニスカス圧との関係を示している。
【0085】
ここでは、共通供給流路本流156の流れの方向における上流側の共通供給流路支流152と共通回収流路支流153とを通じるバイパス流路191Aの流体抵抗と、共通供給流路本流156の流れの方向における下流側の共通供給流路支流152と共通回収流路支流153とを通じるバイパス流路191Bの流体抵抗とを調整した。
【0086】
この結果、本実施形態では、共通供給流路本流156の流れの方向において、異なる共通供給流路支流152と共通回収流路支流153とを通じる複数のバイパス流路191A、バイパス流路191Bには、他のバイパス流路191Bと流体抵抗が異なるバイパス流路191A、191Bを含んでいることになる。
【0087】
図16から分かるように、
図10の比較例に対し、共通供給流路本流156の流れの方向における上流側の共通供給流路支流152に通じるノズル111のメニスカス圧と、下流側の共通供給流路支流152に通じるノズル111のメニスカス圧との差が小さくなっている。
【0088】
したがって、バイパス流路191Bの流体抵抗の調整をヘッド全体に適用することにより、共通流路本流の流れ方向における各共通流路支流間でのメニスカス圧の差を低減することができる。
【0089】
次に、本実施形態におけるバイパス流路191A、191Bの流体抵抗の調整について説明する。
【0090】
本実施形態の場合、共通供給流路本流156の流れの方向における上流側をa番目、下流側をb番目と、
図10のときに対する流量Qbin_aの流量変化量をΔQbin_a、流量Qbout_bの流量変化量をΔQout_bとする。
【0091】
このとき、メニスカス圧力Pch_a_1、Pch_a_n、Pch_b_1、Pch_b_nの変化量ΔPch_a_1、ΔPch_a_n、ΔPch_b_1、ΔPch_b_nは、次のように表せる。
【0092】
ΔPch_a_1=ΔQbin_a×{Rf×(Rbr1+Rbr3×n+Rbr4)-Rr×Rbf1}/(Rf+Rr)
ΔPch_a_n=ΔQbin_a×{Rf×(Rbr1+Rbr4)-Rr×Rbf1}/(Rf+Rr)
ΔPch_b_1=ΔQbout_b×{Rf×Rbr4-Rr×(Rbf1+Rbf2)}/(Rf+Rr)
ΔPch_b_n=ΔQbout_b×[Rf×Rbr4-Rr×{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}]/(Rf+Rr)
【0093】
図10のときのPch_b_1-Pch_a_1=ΔP1、Pch_a_n-Pch_b_n=ΔPnとすると、第3実施形態では、
ΔP1=ΔPch_a_1-ΔPch_b_1
ΔPn=-ΔPch_a_n+ΔPch_b_n
となる。
【0094】
つまり、ΔQbin_a、ΔQbout_bが、
ΔQbin_a=(ΔP1×M4+ΔPn×M2)/(M1×M4-M2×M3)
ΔQbout_b=(ΔP1×M3+ΔPn×M1)/(M1×M4-M2×M3)
となる。
【0095】
ただし、
M1={Rf×(Rbr1+Rbr3×n+Rbr4)-Rr×Rbf1}/(Rf+Rr)
M2={Rf×(Rbr1+Rbr4)-Rr×Rbf1}/(Rf+Rr)
M3={Rf×Rbr4-Rr×(Rbf1+Rbf2)}/(Rf+Rr)
M4=[Rf×Rbr4-Rr×{Rbf1+Rbf2+Rbf3×(n-1)}]/(Rf+Rr)
となるようにバイパス流路191Aの流体抵抗Rbin_aとバイパス流路191Bの流体抵抗Rbout_bを設定している。
【0096】
次に、本発明の第4実施形態について
図17及び
図18を参照して説明する。
図17は同実施形態に係るヘッドの流路構成の説明図、
図18は同じく共通供給流路支流から共通回収流路支流に至る等価回路図である。
【0097】
本実施形態では、同一の共通供給流路支流152がバイパス流路191A、191B及び圧力室121(個別供給流路122、個別回収流路123を含む)を介して異なる共通回収流路支流153に連通している。また、同一の共通回収流路支流153がバイパス流路191A、191B及び圧力室121(個別供給流路122、個別回収流路123を含む)を介して異なる共通供給流路支流152に連通している。
【0098】
言い換えれば、共通供給流路本流156の流れの方向において、共通供給流路支流152は、両側に隣り合う2つの共通回収流路支流153にバイパス流路191A、191B及び圧力室121(個別供給流路122、個別回収流路123を含む)を介して通じている。同様に、共通供給流路本流156の流れの方向において、共通回収流路支流153は、両側に隣り合う2つの共通供給流路支流152にバイパス流路191A、191B及び圧力室121(個別供給流路122、個別回収流路123を含む)を介して通じている。
【0099】
図18を参照して、本実施形態では、Pin_k>Pin_k+1、Pout_k>Pout_k+1となる。したがって、Rbin2_k=Rbin1_k+1=Rbin2_k+1、Rbout2_k=Rbout1_k+1=Rbout2_kのとき、Pch2_k_1>Pch1_k+1_1>Pch2_k+1、Pch2_k_n>Pch1_k+1_n>Pch2_k+nとなる。
【0100】
バイパス流路191Aの流体抵抗Rbin2_kを変化させた場合のメニスカス圧Pch2_k_1の変化量は、ΔPch2_k_1=ΔQbin_k×{Rf×(Rbr1+Rbr3×n+Rbr4)-Rr×Rbf1}/(Rf+Rr)となる。これは、前記第1実施形態と同様の式であり、前記第1実施形態と同様に、メニスカス圧のばらつきを低減できる。
【0101】
また、バイパス流路191Bの流体抵抗Rbout2_k+1変化させた場合のメニスカス圧Pch2_k+1_nの変化量は、ΔPch2_k+1_n=ΔQbout_k×{Rf×Rbr4-Rr×(Rbf1+Rbf2+Rbf3×n)}/(Rf+Rr)となる。これは、前記第2実施形態と同様の式であり、前記第2実施形態と同様に、実施例2と同様の式となるので、実施例2と同様のメニスカス圧のばらつきを低減できる。
【0102】
さらに、バイパス流路191Aの流体抵抗Rbin2_kとバイパス流路191Bの流体抵抗Rbout2_k+1を変化させることで、前記第1実施形態と前記第2実施形態を組み合わせた前記第3実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0103】
なお、ここでは、k番目とk+1番目で説明したが、他の組み合わせでも同様の効果を得ることができる。
【0104】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の一例について
図19及び
図20を参照して説明する。
図19は同印刷装置の概略側面説明図、
図20は同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
【0105】
印刷装置1は、液体を吐出する装置であり、シート材Pを搬入する搬入部10と、前処理部20と、印刷部30と、乾燥部40と、反転機構部60と、搬出部50とを備えている。
【0106】
印刷装置1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材Pに対し、前処理手段である前処理部20で必要に応じて前処理液を付与(塗布)し、印刷部30で液体を付与して所要の印刷を行い、乾燥部40でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、シート材Pを搬出部50に排出する。
【0107】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備え、シート材Pを前処理部20に供給する。
【0108】
前処理部20は、例えばインクを凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液をシート材Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布部21などを備えている。
【0109】
印刷部30は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転部材)であるドラム31と、ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部32を備えている。
【0110】
また、印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシート材Pを受け取ってドラム31との間でシート材Pを渡す渡し胴34と、ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取って乾燥部40に渡す受け渡し胴35を備えている。
【0111】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴34に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴34の回転に伴って搬送される。渡し胴34により搬送されたシート材Pは、ドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。
【0112】
ドラム31の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シート材Pの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0113】
そして、渡し胴34からドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によってドラム31上に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0114】
液体吐出部32は、液体吐出手段である吐出ユニット33(33A~33D)を備えている。例えば、吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う吐出ユニットを使用することもできる。
【0115】
吐出ユニット33は、例えば、
図15に示すように、複数のノズル111を二次元マトリクス状に配列した本発明に係る複数の液体吐出ヘッド(ヘッド)100をベース部材331に千鳥状に配置したフルライン型ヘッドである。
【0116】
液体吐出部32の各吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム31に担持されたシート材Pが液体吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像が印刷される。
【0117】
液体吐出部32で液体が付与されたシート材Pは、ドラム31から受け渡し胴35に渡され、受け渡し胴35によって乾燥部40にシート材Pを移送する搬送機構部41に渡される。
【0118】
乾燥部40は、搬送機構部41によって搬送されるシート材Pを加熱手段42で加熱して、シート材P上に付着した液体を乾燥させる。これにより、液体中の水分等の液分が蒸発し、シート材P上に液体中に含まれる着色剤が定着し、また、シート材Pのカールが抑制される。
【0119】
反転機構部60は、乾燥部40を通過したシート材Pに対して両面印刷を行うときに、スイッチバック方式で、シート材Pを反転する機構であり、反転されたシート材Pは両面搬送経路61を通じて渡し胴34よりも上流側に逆送される。
【0120】
搬出部50は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ51を備えている。乾燥部40から反転機構部60を介して搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ51上に順次積み重ねられて保持される。
【0121】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0122】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0123】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構、液体循環装置の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0124】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0125】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0126】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0127】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0128】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0129】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0130】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0131】
なお、ここでは、「液体吐出ユニット」について、液体吐出ヘッドとの組み合わせで説明しているが、「液体吐出ユニット」には上述した液体吐出ヘッドを含むヘッドモジュールやヘッドユニットと上述したような機能部品、機構が一体化したものも含まれる。
【0132】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、ヘッドモジュール、ヘッドユニットなどを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0133】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0134】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0135】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0136】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0137】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0138】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0139】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0140】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0141】
1 印刷装置(液体を吐出する装置)
30 印刷部
33 吐出ユニット
100 液体吐出ヘッド
102 アクチュエータ基板
110 ノズル板
111 ノズル
120 個別流路部材
121 圧力室
122 個別供給流路
123 個別回収流路
128 供給側個別流路
129 回収側個別流路
130 振動板部材
140 圧電素子
150 共通流路支流部材
152 共通供給流路支流
153 共通回収流路支流
156 共通供給流路本流
157 共通回収流路本流
170 共通流路本流部材