(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】液体吐出装置、及び液体吐出方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/18 20060101AFI20240910BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240910BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20240910BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240910BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20240910BHJP
C09D 11/30 20140101ALI20240910BHJP
【FI】
B41J2/18
B41J2/01 401
B41J2/01 451
B41J2/01 501
B41J2/14 301
B41J2/175 101
B41M5/00 120
C09D11/30
(21)【出願番号】P 2020190159
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 逸郎
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-039913(JP,A)
【文献】特開2019-155858(JP,A)
【文献】特開2020-157709(JP,A)
【文献】特開2020-121523(JP,A)
【文献】特開2010-094864(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0145229(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 5/00
C09D 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水、有機溶剤、少なくとも2種類のウレタン樹脂、及び酸化チタンを含有するインクを収容した収容部と、
前記インクを循環させる循環流路を有する個別液室、及び前記個別液室と連通し、前記インクからなる液滴を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、を備え、
前記酸化チタンの前記インクに対する含有量が、20質量%以上30質量%以下であり、
前記酸化チタンの体積平均粒子径が、300nm以上630nm以下であ
り、
前記ウレタン樹脂の前記インクに対する含有量が、15質量%以上25質量%以下であることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂が、ガラス転移温度が25℃未満であるポリカーボネートウレタン樹脂を含有する請求項1に記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂が、ポリエステルウレタン樹脂を含有する請求項2に記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体吐出ヘッドが、前記インクの圧力を検出する圧力センサーと、前記インクの循環速度を制御する循環速度制御部と、を有し、
前記圧力センサーによる検出値が所定値より高い場合に、前記インクの循環速度を速くする請求項1から
3のいずれかに記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記液体吐出ヘッドが、液滴を吐出するピエゾ素子を有し、
前記圧力センサーと前記ピエゾ素子が一体的に形成された請求項
4に記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記ピエゾ素子が、前記インクを吐出しないレベルでインク押し出し方向に負荷をかけて前記圧力を検出する請求項
5に記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドが前記インクを吐出しないときに、前記循環速度制御部が前記インクの循環速度を制御する請求項
6に記載の液体吐出装置。
【請求項8】
水、有機溶剤、少なくとも2種類のウレタン樹脂、及び酸化チタンを含有するインクを個別液室で循環させながら液体吐出ヘッドのノズルから前記インクからなる液滴を吐出する吐出工程を含み、
前記酸化チタンの前記インクに対する含有量が、20質量%以上30質量%以下であり、
前記酸化チタンの体積平均粒子径が、300nm以上630nm以下であ
り、
前記ウレタン樹脂の前記インクに対する含有量が、15質量%以上25質量%以下であることを特徴とする液体吐出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、印刷市場に用いられるインクジェット印刷方式では、マルチパス印刷方式で得られない生産性を実現するため、高速印刷が可能なシングルパス印刷方式を用いることが望ましい。
【0003】
シングルパス印刷方式では、固定式のインクジェットヘッドを使用することが多く、ヘッドのクリーニング頻度が数時間に1回程度となるため、インク偏向が発生せず、不吐出が発生しないインクの設計が必要となる。特に、白色顔料を使用した白色インクでは顔料の比重が高いため、印刷装置を長期間停止させるとノズル内で顔料が沈降してしまい、インクの不吐出が発生してしまうという問題があり、改善が望まれていた。
【0004】
そこで、例えば、酸化チタンの顔料表面の処理と特定の分散剤を組み合わせることにより酸化チタンの沈降を抑制することが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、シングルパス印刷方式でも隠蔽性に優れ、高い印刷安定性を有する液体吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するための手段としての本発明の液体吐出装置は、水、有機溶剤、少なくとも2種類のウレタン樹脂、及び酸化チタンを含有するインクを収容した収容部と、前記インクを循環させる循環流路を有する個別液室、及び前記個別液室と連通し、前記インクの液滴を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、を備え、前記酸化チタンの前記インクに対する含有量が、20質量%以上30質量%以下であり、前記酸化チタンの体積平均粒子径が、300nm以上630nm以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シングルパス印刷方式でも隠蔽性に優れ、高い印刷安定性を有する液体吐出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの一例を示す外観斜視説明図である。
【
図2】
図2は、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図である。
【
図3】
図3は、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドのノズル配列方向と平行な方向の一部断面説明図である。
【
図4】
図4は、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドのノズル板の平面説明図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図5C】
図5Cは、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図5D】
図5Dは、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図5E】
図5Eは、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図5F】
図5Fは、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図6A】
図6Aは、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの共通液室部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の液体吐出装置における液体吐出ヘッドの共通液室部材を構成する各部材の平面説明図である。
【
図7】
図7は、本発明の液体循環システムの一例を示すブロック図である。
【
図10】
図10は、本発明の液体吐出装置の一例を示す要部平面説明図である。
【
図11】
図11は、本発明の液体吐出装置の一例を示す要部側面説明図である。
【
図12】
図12は、本発明の液体吐出装置における液体吐出ユニットの他の一例を示す要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(液体吐出装置、及び液体吐出方法)
本発明の液体吐出装置は、水、有機溶剤、少なくとも2種類のウレタン樹脂、及び酸化チタンを含有するインクを収容した収容部と、前記インクを循環させる循環流路を有する個別液室、及び前記個別液室と連通し、前記インクからなる液滴を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、を備え、前記酸化チタンの前記インクに対する含有量が、20質量%以上30質量%以下であり、前記酸化チタンの体積平均粒子径が、300nm以上630nm以下であり、更に必要に応じて、その他の部などを備える。
【0010】
本発明の液体吐出方法は、水、有機溶剤、少なくとも2種類のウレタン樹脂、及び酸化チタンを含有するインクを個別液室で循環させながら液体吐出ヘッドのノズルから前記インクからなる液滴を吐出する吐出工程を含み、前記酸化チタンの前記インクに対する含有量が、20質量%以上30質量%以下であり、前記酸化チタンの体積平均粒子径が、300nm以上630nm以下であり、更に必要に応じて、その他の工程を含む。
【0011】
本発明の液体吐出方法は、本発明の液体吐出装置により好適に実施することができ、吐出工程は液体吐出ヘッドにより行うことができ、その他の工程はその他の部により行うことができる。
本発明の液体吐出方法、及び本発明の液体吐出装置は、インクジェット印刷方法、及びインクジェット印刷装置として好適に用いられる。
【0012】
本発明の液体吐出装置、及び液体吐出方法は、従来技術の酸化チタンを用いたインクジェット用インク組成物では、酸化チタンの沈降を抑制することにより吐出安定性の向上が見込まれるが、シングルパス印刷方式で使用できるほど長時間の吐出安定性を発揮できないという問題点があることを本発明者らが見出したことに基づくものである。
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意努力した結果、本発明の液体吐出装置、及び液体吐出方法が、シングルパス印刷方式でも隠蔽性に優れ、高い印刷安定性を持つ液体吐出装置、及び液体吐出方法を提供することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
<インク>
前記インクは、水、有機溶剤、少なくとも二種類のウレタン樹脂、及び酸化チタンを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
前記インクは、白色インクとすることができる。
【0014】
-酸化チタン-
前記酸化チタンの含有量は、インク全量に対して、20質量%以上30質量%以下であり、22.5質量%以上27.5質量%以下が好ましい。
前記酸化チタンの体積平均粒子径は、300nm以上630nm以下であり、300nm以上600nm以下が好ましく、300nm以上500nm以下がより好ましい。
本発明の液体吐出装置は、色材として酸化チタンを含有するインクを用い、前記インクに含まれる酸化チタンの含有量が20質量%以上30質量%以下であり、前記酸化チタンの体積平均粒子径が300nm以上630nm以下であることにより、高い隠蔽性を有する印刷を可能とする。本発明の液体吐出装置にこのようなインクを用いることにより、高い隠蔽性を与える印刷を可能とし、更に高い印刷安定性を有する液体吐出装置の提供が可能である。
【0015】
-ウレタン樹脂-
前記ウレタン樹脂としては、少なくとも2種類を併用する限りは、その種類に特に制限はなく、目的に応じてポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるポリウレタン樹脂を適宜選択することができ、例えば、ポリエーテルウレタン樹脂、ポリカーボネートウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂などが挙げられる。少なくとも2種類のウレタン樹脂を併用することにより、ウレタン樹脂同士の相溶性が高いため塗膜の均一が得られ、被記録媒体(基材)への密着性が良好となり、さらに、吐出安定性をより高いものにすることができる。
これらの中でも、密着性の向上の点から、ポリカーボネートウレタン樹脂とポリエステルウレタン樹脂を併用することがより好ましい。
前記ポリオールとしては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0016】
前記ポリウレタン樹脂としては、密着性の向上の点から、ガラス転移温度(Tg)が25℃未満であるポリカーボネートポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。
前記ポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、例えば、示差走査熱量計(TA-60WS及びDSC-60、株式会社島津製作所製)を用いて測定することができる。具体的には、ポリウレタン樹脂4.0mgをアルミニウム製の試料容器に入れ、該試料容器をホルダーユニットに載せ、電気炉中にセットする。次いで、窒素雰囲気下、0℃から昇温速度10℃/minで150℃まで昇温し、その後、150℃から降温速度5℃/minで-80℃まで降温した後、更に昇温速度10℃/minで150℃まで昇温してDSC曲線を計測する。得られたDSC曲線から、DSC-60システム中の解析プログラムを用いて、2回目の昇温時における変曲部からミッドポイント法で解析し、ガラス転移温度(Tg)を求める。
【0017】
前記ウレタン樹脂としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
前記ポリカーボネートウレタン樹脂の市販品としては、例えば、スーパーフレックス650(第一工業製薬株式会社製、Tg:5℃);ユーコートUX-310、ユーコートUX-320、ユーコートUX-300、バーマリンUA-350、バーマリンUA-368T(いずれも、三洋化成工業株式会社製)などが挙げられる。
【0018】
--ポリエーテルポリオール--
前記ポリエーテルポリオールとしては、例えば、活性水素原子を2個以上有する化合物の1種又は2種以上を出発原料として、アルキレンオキサイドを付加重合させたものを使用することができる。
前記活性水素原子を2個以上有する化合物としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等を使用することができる。
また、前記アルキレンオキサイドとしては、例えばエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン、テトラヒドロフラン等を使用することができる。
前記ポリエーテルポリオールとしては、非常に優れた耐擦性を付与可能なインクジェット印刷インク用バインダーを得る観点から、ポリオキシテトラメチレングリコールやポリオキシプロピレングリコールを使用することが好ましい。
【0019】
--ポリカーボネートポリオール--
前記ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、炭酸エステルと、ポリオールを反応させたものを使用することができる。
前記炭酸エステルとしては、メチルカーボネートや、ジメチルカーボネート、エチルカーボネート、ジエチルカーボネート、シクロカーボネート、ジフェニルカーボネート等を使用することできる。
前記炭酸エステルと反応しうるポリオールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,5-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノール-A、ビスフェノール-F、4,4’-ビフェノール等の比較的低分子量のジヒドロキシ化合物や、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールや、ポリヘキサメチレンアジペート、ポリヘキサメチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等のポリエステルポリオール等を使用することができる。
【0020】
--ポリエステルポリオール--
前記ポリエステルポリオールとしては、例えば、低分子量のポリオールとポリカルボン酸とをエステル化反応して得られるものや、ε-カプロラクトン等の環状エステル化合物を開環重合反応して得られるポリエステルや、これらの共重合ポリエステル等を使用することができる。
前記低分子量のポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコ-ル等を使用することができる。
前記ポリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、及びこれらの無水物またはエステル形成性誘導体などを使用することができる。
【0021】
--ポリイソシアネート--
前記ウレタン樹脂を製造する際に使用するポリイソシアネートとしては、例えば、フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族または脂肪族環式構造含有ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記ウレタン樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、10質量%以上30質量%以下が好ましく、15質量%以上25質量%以下がより好ましい。
【0023】
<その他のインク>
前記液体吐出装置には、前記インクと、その他のインクとを併用することができる。
前記その他のインクは、水、有機溶剤、樹脂、及び色材を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。前記その他のインクとしては、例えば、シアンインク、マゼンタインク、イエローインク、ブラックインクなどが挙げられる。
【0024】
以下、インク、及びその他のインク(以下、共通する事項については、総称して単に「インク」と称することがある)に用いる水、有機溶剤、色材、樹脂、添加剤等について説明する。
【0025】
-水-
水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外ろ過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、液体組成物の乾燥性及び吐出信頼性の点から、10質量%以上90質量%以下が好ましく、20質量%~60質量%がより好ましい。
【0026】
-有機溶剤-
本発明に使用する有機溶剤としては特に制限されず、水溶性有機溶剤を用いることができる。例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類や多価アルコールアリールエーテル類などのエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類が挙げられる。
水溶性有機溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ペトリオール等の多価アルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエチルアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等が挙げられる。
湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
【0027】
-色材-
前記インクは、前酸化チタンを色材として含み、酸化チタン以外の色材を併用してもよい。
前記その他のインクの色材としては、特に制限はなく、目的に応じて公知の色材を適宜選択することができる。
【0028】
色材としては特に限定されず、顔料、染料を使用可能である。
顔料としては、無機顔料又は有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、混晶を使用してもよい。
顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンダ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、金色や銀色などの光沢色顔料やメタリック顔料などを用いることができる。
前記無機顔料としては、例えば、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエローに加え、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法などの公知の方法によって製造されたカーボンブラックを使用することができる。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ顔料、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料など)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレートなど)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラックなどを使用できる。これらの顔料のうち、溶媒と親和性の良いものが好ましく用いられる。その他、樹脂中空粒子、無機中空粒子の使用も可能である。
顔料の具体例として、黒色用としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、または銅、鉄(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料があげられる。
さらに、カラー用としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、74、81、83、95、97、98、100、101、104、108、109、110、117、120、138、150、153、155、180、185、213、C.I.ピグメントオレンジ5、13、16、17、36、43、51、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、17、22、23、31、38、48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、48:3、48:4、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81、83、88、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(キナクリドンマゼンタ)、123、146、149、166、168、170、172、177、178、179、184、185、190、193、202、207、208、209、213、219、224、254、264、C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、3、5:1、16、19、23、38、C.I.ピグメントブルー1、2、15(フタロシアニンブルー)、15:1、15:2、15:3、15:4(フタロシアニンブルー)、16、17:1、56、60、63、C.I.ピグメントグリーン1、4、7、8、10、17、18、36などが挙げられる。
【0029】
前記染料としては、特に限定されることなく、酸性染料、直接染料、反応性染料、及び塩基性染料が使用可能であり、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
前記染料として、例えば、C.I.アシッドイエロー 17,23,42,44,79,142、C.I.アシッドレッド 52,80,82,249,254,289、C.I.アシッドブルー 9,45,249、C.I.アシッドブラック 1,2,24,94、C.I.フードブラック 1,2、C.I.ダイレクトイエロー 1,12,24,33,50,55,58,86,132,142,144,173、C.I.ダイレクトレッド 1,4,9,80,81,225,227、C.I.ダイレクトブルー 1,2,15,71,86,87,98,165,199,202、C.I.ダイレクドブラック 19,38,51,71,154,168,171,195、C.I.リアクティブレッド 14,32,55,79,249、C.I.リアクティブブラック 3,4,35などが挙げられる。
【0030】
顔料を分散してインクを得るためには、顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法、顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法、分散剤を用いて分散させる方法などが挙げられる。
顔料に親水性官能基を導入して自己分散性顔料とする方法としては、例えば、顔料(例えばカーボン)にスルホン基やカルボキシル基等の官能基を付加することで、水中に分散可能とする方法が挙げられる。
顔料の表面を樹脂で被覆して分散させる方法としては、顔料をマイクロカプセルに包含させ、水中に分散可能とする方法が挙げられる。これは、樹脂被覆顔料と言い換えることができる。この場合、インクに配合される顔料はすべて樹脂に被覆されている必要はなく、本発明の効果が損なわれない範囲において、被覆されない顔料や、部分的に被覆された顔料がインク中に分散していてもよい。
分散剤を用いて分散させる方法としては、界面活性剤に代表される、公知の低分子型の分散剤、高分子型の分散剤を用いて分散する方法が挙げられる。
分散剤としては、顔料に応じて例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等を使用することが可能である。
竹本油脂社製RT-100(ノニオン系界面活性剤)や、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物も、分散剤として好適に使用できる。
前記分散剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
-顔料分散体-
顔料に、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを得ることが可能である。また、顔料と、その他水や分散剤などを混合して顔料分散体としたものに、水や有機溶剤などの材料を混合してインクを製造することも可能である。
前記顔料分散体は、水、顔料、顔料分散剤、必要に応じてその他の成分を混合、分散し、粒径を調整して得られる。分散は分散機を用いるとよい。
顔料分散体における顔料の粒径については特に制限はなく、顔料の粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
前記顔料分散体における顔料の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な吐出安定性が得られ、また、画像濃度を高める点から、0.1質量%以上50質量%以下が好ましく、0.1質量%以上30質量%以下がより好ましい。
前記顔料分散体は、必要に応じて、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、脱気することが好ましい。
【0032】
-その他の樹脂-
前記液体組成物には、前記ウレタン樹脂以外にもその他の樹脂を含有することができる。
前記その他の樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂などが挙げられる。
これらの樹脂からなる樹脂粒子を用いても良い。樹脂粒子を、水を分散媒として分散した樹脂エマルションの状態で、色材や有機溶剤などの材料と混合してインクを得ることが可能である。前記樹脂粒子としては、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。また、これらは、1種を単独で用いても、2種類以上の樹脂粒子を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
前記市販品としては、例えば、ボンコート5454(スチレン-アクリル樹脂粒子、大日本インキ化学工業株式会社製)、SAE-1014(スチレン-アクリル樹脂粒子、日本ゼオン株式会社製)、サイビノールSK-200(アクリル樹脂粒子、サイデン化学株式会社製)、プライマルAC-22、AC-61(アクリル樹脂粒子、ローム・アンド・ハース製)、ボンコート4001(アクリル樹脂粒子、DIC株式会社製)、NANOCRYL(アクリル樹脂粒子、トーヨーケム株式会社製)などが挙げられる。
【0034】
前記樹脂粒子を水性媒体中に分散させるにあたり、分散剤を利用した強制乳化型のものを用いることもできるが、塗膜に分散剤が残り強度を下げることがあることから、分子構造中にアニオン性基を有する、いわゆる自己乳化型のものが好適である。
その場合の酸価は5~100mgKOH/gとなる範囲でアニオン性基を含有すると水分散性の観点から好ましく、5~50mgKOH/mgであることが、優れた耐擦性や耐薬品性を付与する上で特に好ましい。
前記アニオン性基としては、カルボキシル基、カルボキシレート基、スルホン酸基、スルホネート基などが挙げられる。中でも一部又は全部が塩基性化合物等によって中和されたカルボキシレート基やスルホネート基を使用することが、良好な水分散安定性を維持する上で好ましく、これらアニオン性基を樹脂中に導入するには、これらアニオン性基を持ったモノマーを使用すればよい。
【0035】
前記アニオン性基の中和に使用できる塩基性化合物としては、例えば、アンモニア;トリエチルアミン、ピリジン、モルホリン等の有機アミン;モノエタノールアミン等のアルカノールアミン;Na、K、Li、Ca等を含む金属塩基化合物;などが挙げられる。
強制乳化法を用いる場合、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤のいずれも使用できるが、ノニオン界面活性剤の方が、耐水性が良好となるため望ましい。
【0036】
前記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン誘導体、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン多価アルコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレンポリオール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシアルキレン多環フェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアルカノールアミド、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げらる。これらの中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。
【0037】
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、メチルタウリル酸塩、スルホコハク酸塩、エーテルスルホン酸塩、エーテルカルボン酸塩、脂肪酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシド等が挙げられ、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸塩などが挙げられる。
【0038】
前記界面活性剤の添加量としては、樹脂に対して0.1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。0.1質量%以上30質量%以下の範囲内であれば、好適に樹脂エマルジョンの造膜し、付着性や耐水性に優れたインクが得られ、記録物がブロッキングすることなく好適に用いられる。
【0039】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0040】
インク中の固形分の粒径については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、吐出安定性、画像濃度などの画像品質を高くする点から、最大個数換算で最大頻度が、20nm以上1000nm以下が好ましく、20nm以上150nm以下がより好ましい。固形分は樹脂粒子や顔料の粒子等が含まれる。粒径は、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0041】
前記樹脂粒子の酸価としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、水分散性、及び耐薬品性の点から、40mgKOH/g以上150mgKOH/g以下が好ましく、吐出信頼性の点から、80mgKOH/g以上120mgKOH/g以下がより好ましい。前記酸価は、例えば、電位差自動滴定装置(京都電子工業株式会社製)を用いて測定することができる(JIS K 2501-2003)。
【0042】
前記樹脂粒子の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、良好な定着性、高い画像硬度を得る点から、10nm以上1,000nm以下が好ましく、10nm以上200nm以下がより好ましく、10nm以上100nm以下が特に好ましい。
前記体積平均粒径は、例えば、粒度分析装置(ナノトラック Wave-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)を用いて測定することができる。
【0043】
前記その他の樹脂の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、定着性、インクの保存安定性の点から、インク全量に対して、1質量%以上30質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
ただし、前記インクは、少なくとも2種類のウレタン樹脂を含むため、その他の樹脂を併用する場合には樹脂同士の相溶性の観点から同じ種類のポリオールを用いた樹脂や同じ側鎖を有する樹脂を使用することが好ましい。含まれる樹脂の種類を同じにすることにより、相溶性が高まるため塗膜の均一が得られ、被記録媒体(基材)への密着性が良好となり、さらに、吐出安定性をより高いものにすることができる。
【0044】
-その他の成分-
前記その他の成分としては、例えば、界面活性剤、消泡剤、防腐防黴剤、防錆剤、pH調整剤などが挙げられる。
【0045】
--界面活性剤--
界面活性剤としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤のいずれも使用可能である。
シリコーン系界面活性剤には特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。中でも高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサン等が挙げられ、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが、水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。また、前記シリコーン系界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤を用いることもでき、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物等が挙げられる。
【0046】
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が、起泡性が小さいので特に好ましい。前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩等が挙げられる。前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩等が挙げられる。これらフッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、NH(CH2CH2OH)3などが挙げられる。
【0047】
前記両性界面活性剤としては、例えばラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、ラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記界面活性剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、濡れ性、吐出安定性に優れ、画像品質が向上する点から、インクの全量に対して、0.001質量%以上5質量%以下が好ましく、0.05質量%以上5質量%以下がより好ましい。
【0049】
--消泡剤--
消泡剤としては、特に制限はなく、例えば、シリコーン系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、破泡効果に優れる点から、シリコーン系消泡剤が好ましい。
【0050】
--防腐防黴剤--
防腐防黴剤としては、特に制限はなく、例えば、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オンなどが挙げられる。
【0051】
--防錆剤--
防錆剤としては、特に制限はなく、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0052】
--pH調整剤--
pH調整剤としては、pHを7以上に調整することが可能であれば、特に制限はなく、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミンなどが挙げられる。
【0053】
前記インクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
前記インクの25℃での粘度は、印字濃度や文字品位が向上し、また、良好な吐出性が得られる点から、5mPa・s以上30mPa・s以下が好ましく、5mPa・s以上25mPa・s以下がより好ましい。ここで、粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
前記インクの表面張力としては、記録媒体上で好適にインクがレベリングされ、インクの乾燥時間が短縮される点から、25℃で、35mN/m以下が好ましく、32mN/m以下がより好ましい。
前記インクのpHとしては、接液する金属部材の腐食防止の観点から、7~12が好ましく、8~11がより好ましい。
【0054】
<液体吐出装置>
本発明の液体吐出装置は、水、有機溶剤、少なくとも2種類のウレタン樹脂、及び酸化チタンを含有するインクを収容した収容部と、前記インクを循環させる循環流路を有する個別液室、及び前記個別液室と連通し、前記インクからなる液滴を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドとを、備え、更に必要に応じてその他の部材を備える。
【0055】
前記液体吐出ヘッドは、前記インクの圧力を検出する圧力センサーと、前記インクの循環速度を制御する循環速度制御部と、を有し、前記圧力センサーによる検出値が所定値となるように前記インクの循環速度を制御することが好ましい。また、前記循環速度制御部が、前記圧力センサーによる検出値が所定値より高い場合に、前記インクの循環速度を速くすることが好ましい。これにより、液体吐出装置は、酸化チタン粒子の沈降を抑制することができ、均一な分散を維持することができる。
ここで、前記所定値とは、あらかじめ設定した下限目標値(例えば、正常時の圧力の半分未満)であり、所定値にまで低下した場合、あらかじめ設定した圧力変化率で目標圧力(正常時の圧力)にまで昇圧するようにインク流量を制御する(インクの循環速度を速くする)ことができる。
【0056】
前記液体吐出ヘッドは、液滴を吐出するピエゾ素子を有することが好ましい。
前記圧力センサーとしては、循環する前記インクの圧力を検出できるものであれば、特に制限なく目的に応じて適宜選択することができるが、前記液体吐出ヘッドが、前記ピエゾ素子を有し、前記圧力センサーと前記ピエゾ素子が一体的に形成されたものであることが好ましい。
循環する前記インクの圧力を検出する方法としては、特に制限なく目的に応じて適宜選択することができるが、前記圧力センサーと一体的に形成された前記ピエゾ素子が、前記インクを吐出しないレベルでインク押し出し方向に負荷をかけて前記圧力を検出することが好ましい。
前記循環速度制御部が前記インクの循環速度を制御するタイミングとしては、特に制限なく目的に応じて適宜選択することができ、前記液体吐出ヘッドが前記インクを吐出するときであっても、前記液体吐出ヘッドが前記インクを吐出しないときであっても、いずれか一方、又は両方であってよいが、前記液体吐出ヘッドが前記インクを吐出しないときに前記循環速度制御部が前記インクの循環速度を制御することが好ましい。
【0057】
以下、本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの一例について
図1~12を参照して説明する。
図1は本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの外観斜視説明図、
図2は本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向の断面説明図、
図3は本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と平行な方向の断面説明図、
図4は本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル板の平面説明図、
図5は本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの流路部材を構成する各部材の平面説明図、
図6A及び
図6Bは本発明の実施形態に係る液体吐出ヘッドの共通液室部材を構成する各部材の平面説明図である。
図7は本発明の液体吐出装置における液体循環システムの一例を示すブロック図である。
図8は
図2のA-A’断面図、
図9は
図2のB-B’断面図である。
【0058】
この液体吐出ヘッドは、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3を変位させる圧電アクチュエータ11と、共通液室部材20と、カバー29を備えている。
ノズル板1は、液体を吐出する複数のノズル4を有している。
流路板2は、ノズル4に通じる個別液室6、個別液室6に通じる流体抵抗部7、流体抵抗部7に通じる液導入部8を形成している。また、流路板2は、ノズル板1側から複数枚の板状部材41~45を積層接合して形成され、これらの板状部材41~45と振動板部材3を積層接合して流路部材40が構成されている。
振動板部材3は、液導入部8と共通液室部材20で形成される共通液室10とを通じる開口としてのフィルタ部9を有している。
振動板部材3は、流路板2の個別液室6の壁面を形成する壁面部材である。この振動板部材3は2層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層で形成され、第1層で個別液室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。
【0059】
ここで、ノズル板1には、
図4にも示すように、複数のノズル4が千鳥状に配置されている。
流路板2を構成する板状部材41には、
図5Aに示すように、個別液室6を構成する貫通溝部(溝形状の貫通穴の意味)6aと、流体抵抗部51、循環流路52を構成する貫通溝部51a、52aが形成されている。
同じく板状部材42には、
図5Bに示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6bと、循環流路52を構成する貫通溝部52bが形成されている。
同じく板状部材43には、
図5Cに示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6cと、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53aが形成されている。
同じく板状部材44には、
図5Dに示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6dと、流体抵抗部7なる貫通溝部7aと、液導入部8を構成する貫通溝部8aと、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53bが形成されている。
同じく板状部材45には、
図5Eに示すように、個別液室6を構成する貫通溝部6eと、液導入部8を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部8b(フィルタ下流側液室となる)と、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53cが形成されている。
振動板部材3には、
図5Fに示すように、振動領域30と、フィルタ部9と、循環流路53を構成するノズル配列方向を長手方向とする貫通溝部53dが形成されている。
このように、流路部材を複数の板状部材を積層接合して構成することで、簡単な構成で複雑な流路を形成することができる。
以上の構成により、流路板2及び振動板部材3からなる流路部材40には、各個別液室6に通じる流路板2の面方向に沿う流体抵抗部51、循環流路52及び循環流路52に通じる流路部材40の厚み方向の循環流路53が形成される。なお、循環流路53は後述する循環共通液室50に通じている。
【0060】
一方、共通液室部材20には、供給・循環機構494からインクが供給される共通液室10と循環共通液室50が形成されている。
共通液室部材20を構成する第1共通液室部材21には、
図6Aに示すように、圧電アクチュエータ用貫通穴25aと、下流側共通液室10Aとなる貫通溝部10aと、循環共通液室50となる底の有る溝部50aが形成されている。
同じく第2共通液室部材22には、
図6Bに示すように、圧電アクチュエータ用貫通穴25bと、上流側共通液室10Bとなる溝部10bが形成されている。
また、
図1も参照して、第2共通液室部材22には、共通液室10のノズル配列方向の一端部と供給ポート71を通じる供給口部となる貫通穴71aが形成されている。
同様に、第1共通液室部材21及び第2共通液室部材22には、循環共通液室50のノズル配列方向の他端部(貫通穴71aと反対側の端部)と循環ポート81を通じる貫通穴81a、81bが形成されている。
なお、
図6A及び
図6Bにおいて、底の有る溝部については面塗りを施して示している(以下の図でも同じである)。
このように、共通液室部材20は、第1共通液室部材21及び第2共通液室部材22によって構成され、第1共通液室部材21を流路部材40の振動板部材3側に接合し、第1共通液室部材21に第2共通液室部材22を積層して接合している。
【0061】
ここで、第1共通液室部材21は、液導入部8に通じる共通液室10の一部である下流側共通液室10Aと、循環流路53に通じる循環共通液室50とを形成している。また、第2共通液室部材22は、共通液室10の残部である上流側共通液室10Bを形成している。
このとき、共通液室10の一部である下流側共通液室10Aと循環共通液室50とはノズル配列方向と直交する方向に並べて配置されるとともに、循環共通液室50は共通液室10内に投影される位置に配置される。
これにより、循環共通液室50の寸法が流路部材40で形成される個別液室6、流体抵抗部7及び液導入部8を含む流路に必要な寸法による制約を受けることがなくなる。
そして、循環共通液室50と共通液室10の一部が並んで配置され、循環共通液室50は共通液室10内に投影される位置に配置されることで、ノズル配列方向と直交する方向のヘッドの幅を抑制することができ、ヘッドの大型化を抑制できる。共通液室部材20は、ヘッドタンクや液体カートリッジから液体が供給される共通液室10と循環共通液室50を形成する。
一方、振動板部材3の個別液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
この圧電アクチュエータ11は、
図3に示すように、ベース部材13上に接合した圧電部材を有し、圧電部材にはハーフカットダイシングによって溝加工して1つの圧電部材に対して所要数の柱状の圧電素子12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
ここでは、圧電素子12Aは駆動波形を与えて駆動させる圧電素子とし、圧電素子12Bは駆動波形を与えないで単なる支柱として使用しているが、すべての圧電素子12A、12Bを駆動させる圧電素子として使用することもできる。
そして、圧電素子12Aを振動板部材3の振動領域30に形成した島状の厚肉部である凸部30aに接合している。また、圧電素子12Bを振動板部材3の厚肉部である凸部30bに接合している。
この圧電部材は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、外部電極にフレキシブル配線部材15が接続されている。
【0062】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば、圧電素子12Aに与える電圧を基準電位から下げることによって圧電素子12Aが収縮し、振動板部材3の振動領域30が下降して個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内にインクが流入する。
その後、圧電素子12Aに印加する電圧を上げて圧電素子12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて個別液室6の容積を収縮させることにより、個別液室6内の液体が加圧され、ノズル4からインクが吐出される。
そして、表面張力によってインクが共通液室10から引き込まれインクが充填される。最終的には、供給タンク及び循環タンクや水頭差で規定される負圧と、メニスカスの表面張力とのつり合いにより、メニスカス面が安定するため、次の吐出動作に移行可能となる。
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。また、上述した実施形態では、個別液室6に圧力変動を与える圧力発生手段として積層型圧電素子を用いて説明したが、これに限定されず、薄膜状の圧電素子を用いることも可能である。更に、個別液室6内に発熱抵抗体を配し、発熱抵抗体の発熱によって気泡を生成して圧力変動を与えるものや、静電気力を用いて圧力変動を生じさせるものを使用することができる。
【0063】
次に、本実施形態にかかる液体吐出ヘッドを用いた液体循環システムの一例を、
図7を用いて説明する。
図7は、本実施形態にかかる液体循環システムを示すブロック図である。
図7に示すように、液体循環システムは、メインタンク、液体吐出ヘッド、供給タンク、循環タンク、コンプレッサ、真空ポンプ、送液ポンプ、レギュレータ(R)、供給側圧力センサー、循環側圧力センサーなどで構成されており、更に全体のインク循環速度を調整する循環速度制御部からなる。供給側圧力センサーは、供給タンクと液体吐出ヘッドとの間であって、液体吐出ヘッドの供給ポート71(
図1参照)に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサーは、液体吐出ヘッドと循環タンクとの間であって、液体吐出ヘッドの循環ポート81(
図1参照)に繋がった循環流路側に接続されている。
循環タンクの一方は第一送液ポンプを介して供給タンクと接続されており、循環タンクの他方は第二送液ポンプを介してメインタンクと接続されている。これにより、供給タンクから供給ポート71を通って液体吐出ヘッド内にインクが流入し、循環ポートから排出されて循環タンクへ排出され、更に第一送液ポンプによって循環タンクから供給タンクへ液体が送られることによってインクが循環する。
また、供給タンクにはコンプレッサがつなげられていて、供給側圧力センサーで所定の正圧が検知されるように制御される。一方、循環タンクには真空ポンプがつなげられていて、循環側圧力センサーで所定の負圧が検知されるよう制御される。これにより、液体吐出ヘッド内を通って液体を循環させつつ、メニスカスの負圧を一定に保つことができる。
また、液体吐出ヘッドのノズルから液滴を吐出すると、供給タンク及び循環タンク内のインク量が減少していくため、適宜メインタンクから第二送液ポンプを用いて、メインタンクから循環タンクにインクを補充することが望ましい。メインタンクから循環タンクへの液体補充のタイミングは、循環タンク内のインクの液面高さが所定高さよりも下がったらインク補充を行うなど、循環タンク内に設けた液面センサーなどの検知結果によって制御することができる。
【0064】
次に、液体吐出ヘッド内におけるインクの循環について説明する。
図1に示すように、共通液室部材20の端部に、共通液室に連通する供給ポート71と、循環共通液室50に連通する循環ポート81が形成されている。供給ポート71及び循環ポート81は夫々チューブを介してインクを貯蔵する供給タンク・循環タンク(
図8参照)につなげられている。そして、供給タンクに貯留されている液体は、供給ポート71、共通液室10、液導入部8、流体抵抗部7を経て、個別液室6へ供給される。
更に、個別液室6内の液体が圧電素子12の駆動によりノズル4から吐出される一方で、吐出されずに個別液室6内に留まったインクの一部もしくは全ては流体抵抗部51、循環流路52、53、循環共通液室50、循環ポート81を経て、循環タンクへと循環される。
なお、インクの循環は液体吐出ヘッドの動作時のみならず、動作休止時においても実施することができる。動作休止時に循環することによって、個別液室内の液体は常にリフレッシュされると共に、インクに含まれる成分の凝集や沈降を抑制できるので好ましい。
【0065】
更に、本発明のように、インク内に沈降しやすい酸化チタン粒子を含む場合、インクの循環速度が遅いと、循環流路内にて粒子の沈降や固着が発生する場合がある。すると、循環流路内の抵抗が強くなるため、供給側圧力センサー又は循環側圧力センサーでの検出値が小さくなる。その場合は、インクの循環速度を速めるよう制御することで、沈降部を解消させることができる。
具体的には、供給側圧力センサー又は循環側圧力センサーでの検出値が、あらかじめ設定した下限目標値(一例として、正常時の圧力の半分未満)にまで低下した場合、あらかじめ設定した圧力変化率で目標圧力(正常時の圧力)にまで昇圧するように流量を制御する。検出値が前記目標圧力に到達した時点から予め定められた時間が経過するまでの間、この増加させた流量を維持する。これにより、沈降部を解消することができる。
【0066】
次に、本発明に係る液体吐出装置の一例について
図10及び
図11を参照して説明する。
図10は液体吐出装置の要部平面説明図、
図11は液体吐出装置の要部側面説明図である。
この液体吐出装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404を搭載した液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体組成物を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体組成物を液体吐出ヘッド404に供給するための供給・循環機構494により、液体組成物が液体吐出ヘッド404内に供給・循環される。なお、本例において、供給・循環機構は、供給タンク、循環タンク、コンプレッサ、真空ポンプ、送液ポンプ、レギュレータ(R)等で構成される。また、供給側圧力センサーは、供給タンクと液体吐出ヘッドとの間であって、液体吐出ヘッドの供給ポート71に繋がった供給流路側に接続されている。循環側圧力センサーは、液体吐出ヘッドと循環タンクとの間であって、液体吐出ヘッドの循環ポート81に繋がった循環流路側に接続されている。
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
更に、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
主走査移動機構493、供給・循環機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体組成物を吐出して画像を形成する。
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0067】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図12を参照して説明する。
図12は液体吐出ユニットの要部平面説明図である。
この液体吐出ユニットは、液体組成物を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給・循環機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0068】
本発明において、「液体吐出ヘッド」とは、ノズルから液体組成物としてのインクを吐出・噴射する機能部品である。
吐出される液体組成物は、ヘッドから吐出可能な粘度、及び表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水、有機溶媒等の溶媒、染料、顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸、たんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液等の用途で用いることができる。
【0069】
液体組成物を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
「液体吐出ユニット」とは、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体組成物の吐出に関連する部品の集合体である。例えば、「液体吐出ユニット」は、供給・循環機構、キャリッジ、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていてもよい。
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドと供給・循環機構が一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドと供給・循環機構が一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットの供給・循環機構と液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
また、液体吐出ユニットとして、供給・循環機構若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体組成物が液体吐出ヘッドに供給される。
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0070】
本発明において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体組成物としてのインクを吐出させる装置である。液体組成物を吐出する装置には、液体組成物が付着可能なものに対して液体組成物を吐出することが可能な装置だけでなく、液体組成物を気中及び液中に向けて吐出する装置も含まれる。
この「液体吐出装置」は、液体組成物が付着可能なものの給送、搬送、及び排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
例えば、「液体吐出装置」として、液体組成物を吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
また、「液体吐出装置」は、吐出された液滴によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0071】
上記「液体組成物が付着可能なもの」とは、液体組成物が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布、壁紙などの記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体組成物が付着するすべてのものが含まれる。
上記「液体組成物が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体組成物が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体組成物」は、液体吐出ヘッドから吐出可能な粘度、表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、又は加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水、有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸、たんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは、例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0072】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体組成物が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
また、本発明の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【実施例】
【0073】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に制限されるものではない。
【0074】
(顔料分散体の作製)
<白色顔料分散体の作製例1>
-白色顔料分散液Aの調製-
酸化チタン(商品名:チタニックスJR-301、テイカ株式会社製)45g、顔料分散剤TEGO Dispers651(エボニック社製)10g、水45gを混合し、ビーズミル(リサーチラボ、株式会社シンマルエンタープライゼス製)にて、直径0.3mmのジルコニアビーズを充填率60%、8m/sにて5分間分散し、有効成分濃度45質量%、体積平均粒径320nmの白色顔料分散体Aを得た。
【0075】
<白色顔料分散体の作製例2>
-白色顔料分散液Bの調製-
白色顔料分散液の作製例1において、酸化チタン(商品名:チタニックスJR-301、テイカ株式会社製)を、酸化チタン(商品名:KR-380、チタン工業株式会社製)に変えた以外は、白色顔料分散液の作製例1と同様にして、有効成分濃度45質量%、体積平均粒径620nmの白色顔料分散液Bを調製した。
【0076】
<白色顔料分散体の作製例3>
-白色顔料分散液Cの調製-
白色顔料分散液の作製例1において、酸化チタン(商品名:チタニックスJR-301、テイカ社製)を、酸化チタン(商品名:R-42、堺化学工業株式会社製)に変えた以外は、白色顔料分散液の作製例1と同様にして、有効成分濃度45質量%、体積平均粒径180nmの白色顔料分散液Cを調製した。
【0077】
<ポリカーボネートウレタン樹脂粒子液1の調製例>
撹拌機、還流冷却管及び温度計を挿入した反応容器に、ポリカーボネートジオール(3-メチル-1,5-ペンタンジオールとジフェニルカーボネートの反応生成物)(数平均分子量(Mn):1,200))1,500g、2,2-ジメチロールプロピオン酸(DMPA)220g、及びN-メチルピロリドン(NMP)1,347gを窒素気流下で仕込み、60℃に加熱してDMPAを溶解させた。次いで、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート1,445g(5.5モル)、ジブチルスズジラウリレート(触媒)2.6gを加えて90℃まで加熱し、5時間かけてウレタン化反応を行い、イソシアネート末端ウレタンプレポリマーを得た。この反応混合物を80℃まで冷却し、これにトリエチルアミン149gを添加して混合したものの中から4,340gを抜き出し、強撹拌下、水5,400g、及びトリエチルアミン15gの混合溶液の中に加えた。次いで、氷1,500gを投入し、35質量%の1,6-ヘキサメチレンジアミン水溶液626gを加えて鎖延長反応を行い、固形分濃度が30質量%となるように溶媒を留去し、脂環式ジイソシアネートに由来する構造を有するポリカーボネートウレタン樹脂エマルジョン1を得た。得られたポリカーボネートウレタン樹脂粒子液1の樹脂(固形分)を単離し、樹脂固形分濃度30質量%の水分散体を得、これを最低造膜温度測定用試料とした。前記水分散体を用いて、「造膜温度試験装置」(株式会社井元製作所製)で測定した最低造膜温度(MFT)は20℃であった。Tgは20℃であった。
【0078】
<ポリカーボネートウレタン樹脂粒子液2>
ポリカーボネートウレタン樹脂粒子液2として、ポリカーボネートウレタン樹脂(商品名:スーパーフレックス650、第一工業製薬株式会社、Tg:5℃)を、樹脂固形分濃度30質量%で用いた。
【0079】
<ポリエステルウレタン樹脂粒子液の調整例>
温度計、窒素ガス導入管、撹拌器を備えた窒素置換された容器中で、ポリエステルポリオール(商品名:ポリライトOD-X-2251、DIC株式会社製、平均分子量2,000)200.4g、2,2-ジメチロールプロピオン酸15.7g、イソホロンジイソシアネート48.0g、有機溶剤としてメチルエチルケトン77.1gを、ジブチルスズジラウレート(DMTDL)0.06gを触媒として使用し反応させた。前記反応を4時間継続した後、希釈溶剤としてメチルエチルケトン30.7gを供給し、更に反応を継続した。
得られた反応物の平均分子量が20,000から60,000の範囲に達した時点で、メタノール1.4gを投入し前記反応を終了することによって、ウレタン樹脂の有機溶剤溶液を得た。前記ウレタン樹脂の有機溶剤溶液に48質量%水酸化カリウム水溶液を13.4g加えることにより、前記ウレタン樹脂が有するカルボキシル基を中和し、次いで、水715.3gを加えて十分に撹拌した後、エージング及び脱溶剤することによって、固形分濃度が25質量%のポリエステルウレタン樹脂粒子液を得た。得られたポリエステルウレタン樹脂粒子液について、ポリカーボネートウレタン樹脂粒子液1と同様にしてTgを測定したところ、74℃であった。
【0080】
(実施例1)
白色顔料分散体A45質量%、1.3-ブタンジオール(商品名:1,3-ブタンジオール、ダイセル化学株式会社製)15質量%、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(商品名:エクアミドM-100、出光興産株式会社製)10質量%、ポリカーボネートウレタン樹脂粒子液2(固形分濃度:30質量%、Tg:5℃)2質量%、ポリエステルウレタン樹脂粒子液(固形分濃度:25質量%)20質量%、シロキサン化合物(商品名:FZ2110、東レ・ダウ社製)3質量%、及びイオン交換水の残量(合計100質量%)を混合撹拌した後、平均孔径が0.8μmメンブレンフィルター(商品名:DISMIC-25cs、株式会社アドバンテック製)で濾過して、白色インク1を得た。
【0081】
(実施例2)
白色顔料分散体A45質量%、1.3-ブタンジオール(商品名:1,3-ブタンジオール、ダイセル化学株式会社製)25質量%、調製例に従って得られたポリカーボネートウレタン樹脂粒子液1(固形分濃度:30質量%、Tg:20℃)15質量%、ポリエステルウレタン樹脂粒子液(固形分濃度:25質量%)10質量%、シロキサン化合物(商品名:FZ2110、東レ・ダウ社製)3質量%、及びイオン交換水の残量(合計100質量%)を混合撹拌した後、平均孔径が0.8μmメンブレンフィルター(商品名:DISMIC-25cs、株式会社アドバンテック製)で濾過して、白色インク2を得た。
【0082】
(実施例3~8、及び比較例1~11)
表1~2の処方に従って、実施例3~8の白色インク3~8、及び比較例1~11の白色インクa~kをそれぞれ得た。
【0083】
次に、実施例1の白色インク1を、
図1~9で示した循環機構を有する液体吐出ヘッド、及び微駆動機構を有する
図10のインクジェット吐出装置を用い、シングルパス印刷方式にて平均厚みが10μmになるようにPETフィルム(商品名:TP-188、株式会社きもと製)上に吐出して、実施例1の印字物1を得た。
実施例2~8、並びに比較例1~8及び11についても、白色インク1に代えて白色インク2~8、並びに白色インクa~h及びkをそれぞれ用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例2~8の印字物2~8、並びに比較例1~8及び11の印字物a~h及びkをそれぞれ得た。
【0084】
比較例9及び10の白色インクi及びjについては、GEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)を搭載したインクジェット吐出装置(循環機構無し)を用い、シングルパス印刷方式にて平均厚みが10μmになるようにPETフィルム(商品名:TP-188、株式会社きもと製)上に吐出して、比較例9及び10の印字物i及びjをそれぞれ得た。
【0085】
次に、得られた白色インク、及び印字物について、以下のようにして、諸特性を評価した。結果を表1~3に示した。
【0086】
<隠蔽性>
作製した各印字物について、反射型カラー測色計X-rite939(X-rite社製)で隠蔽性を評価した。
具体的には、JIS K 5600_4_1nに準じて、隠蔽率を求め、以下の基準により隠蔽性を評価した。
[評価基準]
◎:隠蔽率が0.15未満
○:隠蔽率が0.15以上0.18未満
△:隠蔽率が0.18以上0.2未満
×:隠蔽率が0.2以上
【0087】
<吐出安定性>
実施例1~6の白色インク1~6、並びに比較例1~8及び11の印字物a~h及びkについては、
図1~9で示した循環機構を有する液体吐出ヘッド、及び微駆動機構を有する
図10のインクジェット吐出装置を用い、シングルパス印刷方式にて600dpiの解像度で連続100枚印字を行い、吐出乱れや不吐出具合を下記の基準により評価した。
比較例9及び10の白色インクi及びjについては、GEN5ヘッド(リコープリンティングシステムズ株式会社製)を搭載したインクジェット吐出装置を用い、シングルパス印刷方式にてワンパスにて600dpiの解像度で連続100枚印字を行い、吐出乱れや不吐出具合を観察し、下記の基準により吐出安定性を評価した。
[評価基準]
◎:吐出乱れや不吐出は全くみられない
○:10ノズル以下の吐出乱れ、不吐出がある
△:30ノズル以下の吐出乱れ、不吐出がある
×:50ノズル以上の吐出乱れ、不吐出がある
【0088】
<密着性>
作製した前記印字物について、得られた像(印字物)のベタ部をJIS K5600に準じて1mm間隔で基盤目状にカッターナイフで切り込み、セロハン粘着テープ(商品名:スコッチメンディングテープ(18mm)、スリーエムジャパン株式会社製)で引き剥がし、ルーペ(商品名:PEAK No.1961(×10)、東海産業株式会社製)で見ながら、JIS K5600クロスカット試験に準じた下記評価基準に基づいて、下記基材の「密着性」を評価した。
[評価基準]
◎:JIS K5600クロスカット評価ランク分類0レベル
○:JIS K5600クロスカット評価ランク分類1レベル
△:JIS K5600クロスカット評価ランク分類2~3レベル
×:JIS K5600クロスカット評価ランク分類4レベル以下
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 水、有機溶剤、少なくとも2種類のウレタン樹脂、及び酸化チタンを含有するインクを収容した収容部と、
前記インクを循環させる循環流路を有する個別液室、及び前記個別液室と連通し、前記インクからなる液滴を吐出するノズルを有する液体吐出ヘッドと、を備え、
前記酸化チタンの前記インクに対する含有量が、20質量%以上30質量%以下であり、
前記酸化チタンの体積平均粒子径が、300nm以上630nm以下であることを特徴とする液体吐出装置である。
<2> 前記ウレタン樹脂が、ガラス転移温度が25℃未満であるポリカーボネートウレタン樹脂を含有する前記<1>に記載の液体吐出装置である。
<3> 前記液体吐出ヘッドが、前記インクの圧力を検出する圧力センサーと、前記インクの循環速度を制御する循環速度制御部と、を有し、
前記圧力センサーによる検出値が所定値より高い場合に、前記インクの循環速度を速くする前記<1>から<2>のいずれかに記載の液体吐出装置である。
<4> 前記液体吐出ヘッドが、液滴を吐出するピエゾ素子を有し、
前記圧力センサーと前記ピエゾ素子が一体的に形成された前記<3>に記載の液体吐出装置である。
<5> 前記ピエゾ素子が、前記インクを吐出しないレベルでインク押し出し方向に負荷をかけて前記圧力を検出する前記<4>に記載の液体吐出装置である。
<6> 前記液体吐出ヘッドが前記インクを吐出しないときに、前記循環速度制御部が前記インクの循環速度を制御する前記<5>に記載の液体吐出装置である。
<7> 水、有機溶剤、少なくとも2種類のウレタン樹脂、及び酸化チタンを含有するインクを個別液室で循環させながら液体吐出ヘッドのノズルから前記液体組成物からなる液滴を吐出する吐出工程を含み、
前記酸化チタンの前記インクに対する含有量が、20質量%以上30質量%以下であり、
前記酸化チタンの体積平均粒子径が、300nm以上630nm以下であることを特徴とする液体吐出方法である。
【0093】
前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体吐出装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
前記<7>に記載の液体吐出方法は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、前記液体吐出方法は、シングルパス印刷方式でも隠蔽性に優れ、高い印刷安定性を持つ液体吐出方法を提供することを目的とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0094】
【文献】特許第4799987号公報
【文献】特許第4807816号公報
【符号の説明】
【0095】
404 液体吐出ヘッド