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特許7552485室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物並びに物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物並びに物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20240910BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/5419
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021067212
(22)【出願日】2021-04-12
(65)【公開番号】P2022162389
(43)【公開日】2022-10-24
【審査請求日】2023-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】打它 晃
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-182978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00- 83/16
C09D183/00-183/16
C09J183/00-183/16
C09K 3/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基を分子鎖両末端に有する下記一般式(1)で示される23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
〔式中、R1は独立に、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基及び炭素原子数2~10のアルコキシアルキル基から選択される基である。R2は独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~18の一価炭化水素基である。aは結合するケイ素原子毎に独立に0、1又は2であるが、R1がアルキル基又はアルコキシアルキル基である場合は、aは結合するケイ素原子毎に独立に0又は1であり、R1が水素原子である場合は、aは2である。nはジオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sとなる数である。Yは独立に、酸素原子、炭素原子数1~20の非置換もしくは置換の二価炭化水素基、又は下記式(2)で示される基である。
【化2】
(式中、R2は上記の通りであり、Zは独立に炭素原子数1~20の非置換又は置換の二価炭化水素基である。波線はケイ素原子に対する結合位置を示す。)〕
(B)(A)、(C)、(D)成分以外の、ケイ素原子に結合した加水分解性基を分子中に3個以上有する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~40質量部、
(C)分子中にトリオルガノシリル基で封鎖されたカテコール構造と加水分解性シリル基とを有する下記一般式(3)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(ただし、該部分加水分解縮合物は、下記一般式(3)で示される加水分解性オルガノシラン化合物における下記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基の加水分解性シリル基が加水分解し縮合してなるトリオルガノシリル基封鎖カテコール構造を有する部分加水分解縮合物である。):0.1~10質量部、及び
【化3】
〔式中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基及び下記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基から選ばれる基又は原子であり、R3~R6の少なくとも1個は下記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基であり、R7は独立に炭素原子数1~10の非置換もしくは置換一価脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~10のアリール基である。
【化4】
(式中、R8、R9はそれぞれ独立に炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、又は炭素原子数6~10のアリール基であり、bは0、1又は2であり、mは1~10の整数である。波線はベンゼン環に対する結合位置を示す。)〕
(D)硬化触媒:0.01~3質量部
を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項2】
一般式(3)において、R7がメチル基又はエチル基である請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項3】
一般式(3)のR3~R6において、R4及び/又はR5が式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基であり、それ以外のR3~R6が独立に水素原子又は炭素原子数1~10の非置換もしくは置換一価炭化水素基である請求項1又は2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項4】
更に(E)成分として、下記一般式(5)で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物を(A)成分100質量部に対して0.01~5質量部含むものである請求項1~3のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化5】
(式中、R10は窒素原子を少なくとも1個有する炭素原子数1~20の一価炭化水素基である。R11、R12はそれぞれ独立に、炭素原子数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基であり、cは0、1又は2である。)
【請求項5】
更に、(F)成分として少なくとも1種の無機充填剤を含むものである請求項1~4のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
請求項6に記載の硬化物を有する物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に関し、特に、金属及び樹脂に対して接着性を有し、エンジンオイルやロングライフクーラントに対する耐薬品性を有し、かつ良好なゴム物性を有する硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物並びに該硬化物を有する物品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のエンジンやエンジンコントロールユニットなどの電装部材周辺のシールについては、従来、コルク、有機ゴム、アスベストなどで作られた耐薬品性のガスケット、パッキング材が使用されているが、これらには在庫管理及び作業工程が煩雑であるという不利があり、更に、それらのシール性能には信頼性がないという欠点がある。そのため、この種の用途には液体ガスケットとして室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を利用したFIPG方式(Formed In Place Gasket)が採用されている。
【0003】
近年、自動車の燃費向上・軽量化の観点から、自動車エンジンや各種電装部材に使用する金属を一部樹脂化する試みが行われている。それらの部材として採用される樹脂は、一般的に機械特性やエンジンオイル、ロングライフクーラントに対する耐久試験に対し変化率が少ない樹脂、即ち力学的及び化学的に非常に安定な樹脂が選択される。化学的に安定性が高い樹脂は、活性基を有していない、もしくは非常に少ないため、良好な接着性を得ること、更にはその接着性を安定して保持することが難しいとされている。樹脂への接着性を改善させる手法としては、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に、アミノシランカップリング剤のオリゴマーを添加する方法(特許第3714861号公報:特許文献1)などが知られているが、アミノシランカップリング剤のオリゴマーを耐エンジンオイル、耐ロングライフクーラントを必要とする用途の組成物に配合すると、耐薬品性が劣ることから使用することができなかった。また、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の充填剤を選定する方法(特開2004-292724号公報:特許文献2)や、硬化触媒として使用するチタン触媒の構造を選定する方法(特許第4438937号公報、特許第4530136号公報、特許第4658654号公報、特許第4530177号公報:特許文献3~6)が知られているが、これらの組成物は硬化物を得るために時間を要することや、耐薬品性能が従来から使用されているFIPGと比較すると劣る問題があった。また、各種被着体に対する接着向上手法として、芳香族化合物にアルコキシシリル基を導入してポリブチレンテレフタレートやハイインパクトポリスチロールに対する接着性を向上させた報告があるが、より難接着であるポリフェニレンサルファイドに対する接着性や耐薬品性については報告されていない(特許第3518399号公報:特許文献7)。
【0004】
上記のような耐薬品性、接着性への要求を満足するため、我々は、近年、水中接着剤として卓越したムラサキイガイの接着タンパク質の特殊な化学構造と、それを巧みに利用した接着機構についての研究に着目した。接着のメカニズムについてはまだ多くの謎が残されているが、接着剤に含まれるカテコール構造を有する化合物が重要な役割を果たしていることが知られている。
【0005】
特許文献8(特開2010-144148号公報)では、ポリドーパミン薄膜を形成させることにより、メッキ処理されたリードフレームとエポキシ樹脂もしくはシリコーン樹脂との密着性を向上させている。非特許文献1(J.Am.Chem.Soc.2012,134,20139-20145)では、シリル基で保護したビニル基含有カテコール化合物とメルカプト基含有シリコーンとをエンチオール反応させることでシリル基保護カテコール基含有シリコーンを合成し、接着性組成物用の成分として使用している。
【0006】
上記のようにカテコール構造を有する化合物を接着性組成物の成分として使用している例はあるが、これまで分子内に加水分解性シリル基とシリル基で保護されたカテコール構造とを有する有機ケイ素化合物、及びこれを配合した、湿気硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の報告はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第3714861号公報
【文献】特開2004-292724号公報
【文献】特許第4438937号公報
【文献】特許第4530136号公報
【文献】特許第4658654号公報
【文献】特許第4530177号公報
【文献】特許第3518399号公報
【文献】特開2010-144148号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】J.Am.Chem.Soc.2012,134,20139-20145
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、金属及び樹脂に対して接着性を有し、エンジンオイルやロングライフクーラントに対する耐薬品性を有し、かつ良好なゴム物性を有する硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物並びに該硬化物を有する物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物において、1分子中に加水分解性シリル基とシリル基で保護されたカテコール構造を有する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を用いることにより、エンジニアリングプラスチック(ナイロン66、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド等)に対する接着性を向上させ、更にエンジンオイルやロングライフクーラントなどの薬剤に対する耐薬品性が改善されることを見出し、本発明をなすに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び硬化物並びに物品を提供するものである。
[1]
(A)ケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基を分子鎖両末端に有する下記一般式(1)で示される23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sであるジオルガノポリシロキサン:100質量部、
【化1】
〔式中、R1は独立に、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基及び炭素原子数2~10のアルコキシアルキル基から選択される基である。R2は独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~18の一価炭化水素基である。aは結合するケイ素原子毎に独立に0、1又は2であるが、R1がアルキル基又はアルコキシアルキル基である場合は、aは結合するケイ素原子毎に独立に0又は1であり、R1が水素原子である場合は、aは2である。nはジオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sとなる数である。Yは独立に、酸素原子、炭素原子数1~20の非置換もしくは置換の二価炭化水素基、又は下記式(2)で示される基である。
【化2】
(式中、R2は上記の通りであり、Zは独立に炭素原子数1~20の非置換又は置換の二価炭化水素基である。波線はケイ素原子に対する結合位置を示す。)〕
(B)(A)、(C)、(D)成分以外の、ケイ素原子に結合した加水分解性基を分子中に3個以上有する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物:0.1~40質量部、
(C)分子中にトリオルガノシリル基で封鎖されたカテコール構造と加水分解性シリル基とを有する下記一般式(3)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(ただし、該部分加水分解縮合物は、下記一般式(3)で示される加水分解性オルガノシラン化合物における下記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基の加水分解性シリル基が加水分解し縮合してなるトリオルガノシリル基封鎖カテコール構造を有する部分加水分解縮合物である。):0.1~10質量部、及び
【化3】
〔式中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基及び下記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基から選ばれる基又は原子であり、R3~R6の少なくとも1個は下記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基であり、R7は独立に炭素原子数1~10の非置換もしくは置換一価脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~10のアリール基である。
【化4】
(式中、R8、R9はそれぞれ独立に炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、又は炭素原子数6~10のアリール基であり、bは0、1又は2であり、mは1~10の整数である。波線はベンゼン環に対する結合位置を示す。)〕
(D)硬化触媒:0.01~3質量部
を含有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[2]
一般式(3)において、R7がメチル基又はエチル基である[1]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[3]
一般式(3)のR3~R6において、R4及び/又はR5が式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基であり、それ以外のR3~R6が独立に水素原子又は炭素原子数1~10の非置換もしくは置換一価炭化水素基である[1]又は[2]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[4]
更に(E)成分として、下記一般式(5)で示されるシランカップリング剤及び/又はその部分加水分解縮合物を(A)成分100質量部に対して0.01~5質量部含むものである[1]~[3]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化5】
(式中、R10は窒素原子を少なくとも1個有する炭素原子数1~20の一価炭化水素基である。R11、R12はそれぞれ独立に、炭素原子数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基であり、cは0、1又は2である。)
[5]
更に、(F)成分として少なくとも1種の無機充填剤を含むものである[1]~[4]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
[6]
[1]~[5]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物。
[7]
[6]に記載の硬化物を有する物品。

【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特に、樹脂に対する接着性に優れると共に、優れたゴム物性を有し、かつ良好な耐薬品性を有する硬化物を与える室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその硬化物並びに該硬化物を有する物品を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。特に記述がない限り、「室温」とは温度23℃±5℃、湿度50%RH±5%RHの状態をいう。
【0014】
[(A)成分]
(A)成分はケイ素原子に結合した水酸基及び/又は加水分解性シリル基を分子鎖両末端に有するジオルガノポリシロキサンであり、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の主成分である。該ジオルガノポリシロキサンの分子構造は直鎖状である。該ジオルガノポリシロキサンは分子鎖にシルアルキレン構造(-Si-R-Si-)を有するものであってもよい。前記式においてRは、炭素原子数1~20、好ましくは1~6の非置換又は置換の二価炭化水素基であり、炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子もしくはシアノ基で置換されているものであってもよい。
【0015】
ここで、Rの二価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、2-メチルプロピレン基等のアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基;これらアルキレン基とアリーレン基とが結合した基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されたものなどが挙げられる。二価炭化水素基は直鎖状であっても分岐構造を有していてもよいが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等の直鎖アルキレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。
【0016】
該(A)成分のジオルガノポリシロキサンは、23℃における粘度が20~1,000,000mPa・s、好ましくは100~300,000mPa・s、更に好ましくは1,000~200,000mPa・s、特に好ましくは5,000~100,000mPa・sである。ジオルガノポリシロキサンの粘度が上記下限値(20mPa・s)未満であると、後述する(B)成分が多量に必要となるため、経済的に不利となる。また、ジオルガノポリシロキサンの粘度が上記上限値(1,000,000mPa・s)超では、作業性が低下するので、好ましくない。本発明において、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)にて測定することができる。
【0017】
(A)成分のジオルガノポリシロキサンが有する加水分解性シリル基とは、アルコキシ基、又はアルコキシアルコキシ基である。ジオルガノポリシロキサンの各末端に存在するケイ素原子に結合した水酸基及び加水分解性シリル基の数は、末端にケイ素原子に結合した水酸基を有する場合は、分子鎖の両末端に、ケイ素原子に結合した水酸基(即ち、シラノール基又はヒドロキシシリル基)を一つずつ有する。また、末端にアルコキシ基又はアルコキシアルコキシ基を有する場合は、分子鎖の両末端に、ケイ素原子に結合するアルコキシ基又はケイ素原子に結合するアルコキシアルコキシ基を、2つ(即ち、ジアルコキシシリル基又はジアルコキシアルコキシシリル基)又は3つ(即ち、トリアルコキシシリル基又はトリアルコキシアルコキシシリル基)ずつ有する。
【0018】
アルコキシ基は、炭素原子数1~10のアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられる。アルコキシアルコキシ基は、全炭素原子数2~10のアルコキシアルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシメトキシ基が挙げられる。(A)成分のジオルガノポリシロキサンとしては、特に、ジオルガノポリシロキサンの両末端に水酸基、メトキシ基、又はエトキシ基を有するものが好ましい。
【0019】
ケイ素原子に結合した水酸基及び加水分解性シリル基以外の、ケイ素原子に結合する有機基としては、非置換又は置換の、炭素原子数1~18、好ましくは炭素原子数1~10の一価炭化水素基が挙げられる。該一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子又はシアノ基で置換したもの、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β-シアノエチル基、γ-シアノプロピル基等のシアノアルキル基が例示される。中でもメチル基であることが好ましい。
【0020】
上記(A)ジオルガノポリシロキサンは、下記一般式(1)で表される化合物である。
【化6】
〔式中、R1は独立に、水素原子、炭素原子数1~10のアルキル基及び炭素原子数2~10のアルコキシアルキル基から選択される基である。R2は独立に、非置換又は置換の炭素原子数1~18の一価炭化水素基である。aは結合するケイ素原子毎に独立に0、1又は2であるが、R1がアルキル基又はアルコキシアルキル基である場合は、aは結合するケイ素原子毎に独立に0又は1であり、R1が水素原子である場合は、aは2である。nはジオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が20~1,000,000mPa・sとなる数である。Yは独立に、酸素原子、炭素原子数1~20の非置換もしくは置換の二価炭化水素基、又は下記式(2)で示される基である。
【化7】
(式中、R2は上記の通りであり、Zは独立に炭素原子数1~20の非置換又は置換の二価炭化水素基である。波線はケイ素原子に対する結合位置を示す。)〕
【0021】
上記式(1)中、R1は、独立に、水素原子;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、及びオクチル基等の炭素原子数1~10のアルキル基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、及びエトキシメチル基等の炭素原子数2~10のアルコキシアルキル基から選択される基である。好ましくは、水素原子、メチル基、又はエチル基である。
2は、独立に、非置換又は置換の、炭素原子数1~18、好ましくは炭素原子数1~10の一価炭化水素基である。該一価炭化水素基としては、上述したケイ素原子に結合した水酸基及び加水分解性シリル基以外のケイ素原子に結合する有機基が挙げられ、中でもメチル基であることが好ましい。
aは結合するケイ素原子毎に独立に0、1又は2であるが、R1がアルキル基又はアルコキシアルキル基である場合は、aは結合するケイ素原子毎に独立に0又は1であり、R1が水素原子である場合は、aは2である。
nは、ジオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が、20~1,000,000mPa・s、好ましくは100~300,000mPa・s、更に好ましくは1,000~200,000mPa・s、特に好ましくは5,000~100,000mPa・sとなる数であり、例えば、30~3,000の整数、好ましくは50~2,500の整数、更に好ましくは100~2,000の整数、特には250~1,500程度の整数であればよい。なお、分子中のジオルガノシロキサン単位の繰り返し数(n)は、例えば、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0022】
上記式(1)中、Yは、独立に、酸素原子、炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~6の非置換もしくは置換の二価炭化水素基、又は下記式(2)で示される基である。
【化8】
(式中、R2は上記の通りであり、Zは独立に炭素原子数1~20、好ましくは炭素原子数1~6の、非置換又は置換の二価炭化水素基である。波線はケイ素原子に対する結合位置を示す。)
【0023】
ここで、Y及びZの二価炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、2-メチルプロピレン基等のアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基;これらアルキレン基とアリーレン基とが結合した基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部がハロゲン原子又はシアノ基で置換されたものなどが挙げられる。二価炭化水素基は直鎖状であっても分岐構造を有していてもよいが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等の直鎖アルキレン基が好ましく、特にエチレン基が好ましい。
Yは、酸素原子もしくはエチレン基であることが特に好ましい。
【0024】
上記ジオルガノポリシロキサンは、従来公知の方法で製造することができる。該ジオルガノポリシロキサンは、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0025】
[(B)成分]
(B)成分は、ケイ素原子に結合した加水分解性基を分子中に3個以上有する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物(該オルガノシラン化合物を部分的に加水分解して生成する、分子中に残存加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは3個以上含有するオルガノシロキサンオリゴマー)である。(B)成分は上記(A)成分と縮合反応して架橋構造を形成する。但し、本発明において、該(B)成分は上記(A)成分、並びに後述する(C)成分、(D)成分及び(E)成分とは異なる化合物である。
【0026】
(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物又はその部分加水分解縮合物(オルガノシロキサンオリゴマー)が有する加水分解性基としては、全炭素原子数1~10である、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、アシロキシ基、アルケノキシ基、ケトオキシム基、アミノキシ基、及びアミド基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等のアルコキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基;アセトキシ基、オクタノイルオキシ基等のアシロキシ基;ビニロキシ基、イソプロペノキシ基、1-エチル-2-メチルビニルオキシ基等のアルケノキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、メチルイソブチルケトオキシム基等のケトオキシム基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基;N-メチルアセトアミド基、N-エチルアセトアミド基等のアミド基が挙げられる。
【0027】
上記加水分解性基以外の、ケイ素原子に結合する有機基としては、非置換又は置換の、炭素原子数1~18、好ましくは炭素原子数1~10の一価炭化水素基が挙げられる。該一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、オクタデシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子又はシアノ基で置換したもの、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化アルキル基等が挙げられる。中でも、有機基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基が好ましい。なお、(B)成分の加水分解性シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物は、加水分解性基以外には分子中に、ケイ素原子に結合する一価炭化水素基として窒素原子を含む官能性基を有する一価炭化水素基を含有しないものである。
【0028】
(B)成分の加水分解性オルガノシラン化合物としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等のアルコキシシラン;メチルトリス(ジメチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、エチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン、メチルトリス(メチルイソブチルケトオキシム)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン(又はビニルトリブタノキシムシラン)等のケトオキシムシラン;メチルトリ(メトキシメトキシ)シラン、エチルトリ(メトキシメトキシ)シラン、ビニルトリ(メトキシメトキシ)シラン、フェニルトリ(メトキシメトキシ)シラン、メチルトリ(エトキシメトキシ)シラン、エチルトリ(エトキシメトキシ)シラン、ビニルトリ(エトキシメトキシ)シラン、フェニルトリ(エトキシメトキシ)シラン、テトラ(メトキシメトキシ)シラン、テトラ(エトキシメトキシ)シラン等のアルコキシアルコキシシラン;メチルトリス(N,N-ジエチルアミノキシ)シラン等のアミノキシシラン;メチルトリス(N-メチルアセトアミド)シラン、メチルトリス(N-ブチルアセトアミド)シラン、メチルトリス(N-シクロヘキシルアセトアミド)シラン等のアミドシラン;メチルトリイソプロペノキシシラン、ビニルトリイソプロペノキシシラン、フェニルトリイソプロペノキシシラン等のアルケノキシシラン;メチルトリアセトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン等のアセトキシシランが挙げられる。
【0029】
(B)成分の上記加水分解性オルガノシラン化合物の部分加水分解縮合物であるオルガノシロキサンオリゴマーの重量平均分子量は特に制限されるものでないが、上記シラン化合物が2~100個、好ましくは2~20個重合したオリゴマーであるのが好ましい。該オルガノシロキサンオリゴマーは、複数の重合度を有するオリゴマーの混合物であってもよい。
【0030】
(B)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明においては、本発明の効果を妨げない範囲で、一分子中に加水分解性基を2個有する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物をその他の成分として併用してもよい。
【0031】
(B)成分の量は、(A)成分100質量部に対して0.1~40質量部であり、好ましくは1~20質量部である。(B)成分の量が上記下限値(0.1質量部)未満では、硬化性や保存性の低下を招くおそれがある。また、(B)成分の量が上記上限値(40質量部)を超えると、価格的に不利になるばかりか、硬化物の伸びが低下したり、耐久性の悪化を招いたりするおそれがある。
【0032】
[(C)成分]
(C)成分は、下記一般式(3)で示される、1分子中にトリオルガノシリル基で封鎖されたカテコール構造(即ち、カテコール中に存在する2個のヒドロキシ基がいずれもトリオルガノシリル基で封鎖・保護された構造)と加水分解性シリル基とを有する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物であり、トリオルガノシリル基封鎖カテコール構造に由来する高い接着性を本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物に付与する。
【化9】
〔式中、R3~R6はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基及び下記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基から選ばれる基又は原子であり、R3~R6の少なくとも1個は下記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基であり、R7は独立に炭素原子数1~10の非置換もしくは置換一価脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~10のアリール基である。
【化10】
(式中、R8、R9はそれぞれ独立に炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、又は炭素原子数6~10のアリール基であり、bは0、1又は2であり、mは1~10の整数である。波線はベンゼン環に対する結合位置を示す。)〕
【0033】
上記一般式(3)で示される(C)成分の加水分解性オルガノシラン化合物において、R3~R6は、それぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基及び下記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基から選ばれる基又は原子であり、非置換又は置換一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等の、炭素原子数1~10、好ましくは炭素原子数1~6、より好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等の炭素原子数2~6のアルケニル基などの一価脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素原子数6~10のアリール基;ベンジル基等の炭素原子数7~10のアラルキル基;クロロメチル基、トリフルオロプロピル基等の炭素原子数1~6のハロゲン置換アルキル基などの、炭素原子数1~10、好ましくは炭素原子数1~6の非置換又は置換一価炭化水素基が挙げられる。
上記式(3)で示される加水分解性オルガノシラン化合物において、R3~R6のうち、少なくとも1個(即ち、1~4個)、好ましくは1~3個、より好ましくは1個又は2個は、上記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基である。R3~R6の中でもR4及び/又はR5が式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基であることが好ましい。また、R3~R6のうち、上記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基以外の残余のR3~R6は、好ましくは水素原子又は炭素原子数1~6のアルキル基、より好ましくは水素原子、メチル基、又はエチル基である。
【0034】
上記一般式(3)で示される(C)成分の加水分解性オルガノシラン化合物において、R7は独立に炭素原子数1~10の非置換もしくは置換一価脂肪族炭化水素基又は炭素原子数6~10のアリール基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基等の、炭素原子数1~10、好ましくは炭素原子数1~6、より好ましくは炭素原子数1~3のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等の炭素原子数2~6のアルケニル基などの一価脂肪族炭化水素基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等の炭素原子数6~10のアリール基;クロロメチル基、トリフルオロプロピル基等の炭素原子数1~6のハロゲン置換アルキル基などのハロゲン置換一価脂肪族炭化水素基等が挙げられるが、好ましくは炭素原子数1~6のアルキル基、より好ましくはメチル基又はエチル基である。
【0035】
上記式(4)で表される加水分解性シリル基含有一価炭化水素基(加水分解性シリル基置換アルキル基)において、R8、R9はそれぞれ独立に炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数6~10のアリール基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられるが、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基である。
mは1~10の整数であり、好ましくは1~6、より好ましくは2~4の整数である。bは0、1又は2であり、好ましくは0又は1である。
【0036】
(C)成分の有機ケイ素化合物(加水分解性オルガノシラン化合物)の製造方法としては、公知の方法で製造でき、具体的には、アルキル基で保護されたカテコール骨格及び末端アルケニル基を有する化合物とトリオルガノハイドロジェンシランを触媒存在下で反応(脱水素縮合反応及び脱アルカン縮合反応)させる、あるいは末端アルケニル基及びカテコール骨格を有する化合物をヘキサオルガノジシラザンで保護する(トリオルガノシリル化する)ことにより、トリオルガノシリル基で封鎖されたカテコール構造及び末端アルケニル基を有する化合物を製造し、次いで、該トリオルガノシリル基で封鎖されたカテコール構造及び末端アルケニル基を有する化合物と、加水分解性シリル基を有するハイドロジェンオルガノシラン化合物とを、触媒の存在下でヒドロシリル化することにより製造することができる。
【0037】
(C)成分の具体的な構造例としては以下のものが挙げられる。なお、Meはメチル基、Etはエチル基、Prはプロピル基、Phはフェニル基を表す。
【化11】
【0038】
(C)成分の量は、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部であり、好ましくは0.2~8質量部であり、更に好ましくは0.3~5質量部であり、最も好ましくは0.5~2質量部である。(C)成分の量が上記下限値(0.1質量部)未満であると、所望の接着性が得られない。また、(C)成分の量が上記上限値(10質量部)を超えると、ゴム物性の低下を招く。
【0039】
[(D)成分]
(D)成分は硬化触媒である。硬化触媒としては、例えば組成物の硬化促進剤として従来から一般的に使用されている縮合触媒、例えば、ジブチルスズメトキサイド、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジオクテート、ジオクチルスズジバーサテート、ジメチルスズジメトキサイド、ジメチルスズジアセテート等の有機スズ化合物;テトラプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラ-2-エチルヘキシルチタネート、ジメトキシチタンジアセチルアセトナート等の有機チタン化合物;ヘキシルアミン、テトラメチルグアニジンやこれらの塩などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
(D)成分の量は、(A)成分100質量部に対して0.01~3質量部、好ましくは0.02~2.5質量部、更に好ましくは0.03~2質量部である。(D)成分の量が上記下限値未満であると、触媒効果が得られない。また、(D)成分の量が上記上限値を超えると、組成物の保存性や外観が悪化する場合がある。
【0041】
[(E)成分]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、(E)成分として、下記一般式(5)で示されるシランカップリング剤(即ち、窒素官能性基含有一価炭化水素基を有する加水分解性オルガノシラン化合物)及び/又はその部分加水分解縮合物(該オルガノシラン化合物を部分的に加水分解して生成する、分子中に残存加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは3個以上含有するオルガノシロキサンオリゴマー)を配合することができる。
【化12】
(式中、R10は窒素原子を少なくとも1個有する炭素原子数1~20の一価炭化水素基である。R11、R12はそれぞれ独立に、炭素原子数1~10の非置換又は置換一価炭化水素基であり、cは0、1又は2であり、好ましくは0又は1である。)
【0042】
上記式(5)中、R10は窒素原子を持つ基(例えば、非置換又は置換アミノ基、非置換又は置換イミノ基、アミド基、ウレイド基、グアニジル基、イソシアネート基等)を少なくとも1個有する炭素原子数1~20の一価炭化水素基であり、具体的には、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピル基、γ-アミノプロピル基、N-フェニル-γ-アミノプロピル基、γ-ウレイドプロピル基、γ-イソシアネートプロピル基、γ-(2-ブタンイミノ)プロピル基、γ-ホルムアミノプロピル基、γ-テトラメチルグアニジルプロピル基等の窒素原子を少なくとも1個有する炭素原子数1~20、特に炭素原子数3~14の一価炭化水素基が挙げられる。これらの中でもγ-アミノプロピル基、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピル基が好ましい。
また、R11、R12は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10、特に炭素原子数1~6の非置換又は置換一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子又はシアノ基で置換したもの、例えば、3-クロロプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β-シアノエチル基、γ-シアノプロピル基等のシアノアルキル基が例示される。中でもメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基が好ましい。
【0043】
式(5)で示されるシランカップリング剤として、具体的には、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリプロポキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-(2-ブタンイミノ)プロピルトリメトキシシラン、γ-(2-ブタンイミノ)プロピルトリエトキシシラン、γ-ホルムアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ホルムアミノプロピルトリエトキシシラン、γ-テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン等が例示できる。これらの中でもγ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシランが好ましい。
【0044】
(E)成分を配合する場合の量は、(A)成分100質量部に対して好ましくは0.01~5質量部であり、より好ましくは0.1~4質量部であり、更に好ましくは0.3~3質量部であり、最も好ましくは0.5~2質量部である。(E)成分の量が上記下限値(0.01質量部)未満であると、所望の接着性が得られないおそれがある。また、(E)成分の量が上記上限値(5質量部)を超えると、価格的に不利になるばかりか、伸びの低下、耐薬品性の低下又は耐久性の悪化を招くおそれがある。
【0045】
[(F)成分]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、(F)成分として無機充填剤を配合することができる。該無機質充填剤は、本組成物にゴム物性を付与するための補強性、非補強性充填剤である。本充填剤としては、表面処理又は無処理の、焼成シリカ、煙霧質シリカ[別名:煙霧状シリカ、ヒュームドシリカ]等の乾式シリカ、沈降性シリカ、ゾル-ゲル法シリカ等の湿式シリカなどのシリカ系充填剤、カーボンブラック、タルク、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム等が例示され、その中でも炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、酸化アルミニウムが好ましく、より好ましくは無機質充填剤の表面が疎水化処理された、炭酸カルシウム、煙霧質シリカ、沈降性シリカ、カーボンブラック、酸化アルミニウムである。この場合、これら無機質充填剤は、水分量が少ないことが好ましい。
なお、該表面処理剤の種類、量や処理方法等については特に制限はないが、代表的には、クロロシラン、アルコキシシラン、オルガノシラザン等の有機ケイ素化合物や、脂肪酸、パラフィン、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等の処理剤が適用できる。
【0046】
(F)成分の無機質充填剤は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
(F)成分を用いる場合の配合量は、(A)成分100質量部に対して1~500質量部の範囲が好ましく、より好ましくは20~300質量部の範囲である。1質量部未満では十分なゴム強度が得られないため、使用用途に適さないという問題が生じる場合があり、500質量部を超えるとカートリッジからの吐出性が悪化し、並びに保存安定性が低下するほか、得られるゴム物性の機械特性も低下してしまうおそれがある。
【0047】
また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物には、上記成分以外に一般に知られている添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で使用しても差し支えない。添加剤としては、チクソ性向上剤としてのポリエーテル、可塑剤としてのシリコーンオイル、イソパラフィン等が挙げられ、必要に応じて顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、防かび剤、抗菌剤、海洋生物忌避剤等の生理活性添加剤、ブリードオイルとしてのフェニルシリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、シリコーンと非相溶の有機液体等の表面改質剤、トルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の溶剤も添加できる。
【0048】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、上記(A)~(D)成分及び必要により(E)、(F)成分やその他の添加剤等を公知の方法により混合することによって調製することができる。
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、室温硬化性の組成物であり、その硬化条件としては特に制限されるものではなく、例えば、組成物(室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)を2mmの型枠に流し込み、23℃、50%RHで7日間養生(静置)することによって厚さ2mmの硬化物(シリコーンゴムシート)を得ることができる。
【0049】
また、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、金属及び樹脂に対する接着性を有し、エンジンオイルやロングライフクーラントに対する耐薬品性を有し、かつ良好なゴム物性を有する硬化物を与えるものである。
【0050】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化物を有する物品としては、例えば、自動車エンジン用オイルシール、トランスミッション用オイルシール、冷却クーラント用オイルシール、パワーコントロールユニットやエンジンコントロールユニット、バッテリーパックなどの電装部品用気密シール等が挙げられる。
【実施例
【0051】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、実施例及び比較例はすべて適切な混合機として、プラネタリミキサー((株)井上製作所製)を用いた。また、下記例中、特に記載のない粘度(回転粘度計による測定値)などの物性値は、23℃での値を示す。
【0052】
本発明に使用する、1分子中に加水分解性シリル基とシリル基で保護されたカテコール構造を有するシラン化合物の合成例について以下に示す。なお、合成された化合物は1H-NMRにて同定を行い、合成を確認した。また、以下構造式において、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。
【0053】
[合成例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、オイゲノール164g(1モル)、トルエン400g、ペンタフルオロフェニルホウ素0.4gを納め、トリエチルシラン244g(2.1モル)を内温90℃で2時間かけて滴下した。その後、室温まで冷却した後、キョーワード500(協和化学工業(株)製)2gを投入し、2時間撹拌した。その後、濾過、ストリップを行うことで、下記式(6)で示される有機ケイ素化合物を374g得ることができた。1H-NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(6)に示す構造を有する生成物であることを確認した。
【化13】
【0054】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、上記で得られた有機ケイ素化合物(6)を189g(0.5モル)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として0.5×10-4モル)を納め、トリメトキシシラン61g(0.5モル)を内温75~85℃で2時間かけて滴下した。その後、80℃で1時間撹拌し、ストリップを行うことで、下記式(7)で示される有機ケイ素化合物を含有する溶液を247g得ることができた。1H-NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(7)に示す構造を有する生成物であることを確認した。得られた有機ケイ素化合物をシランAとする。
【化14】
【0055】
[合成例2]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた2Lセパラブルフラスコに、アリルカテコール150g(1モル)、トルエン400gを納め、ヘキサメチルジシラザン323g(2.0モル)を内温60℃で4時間かけて滴下した。その後、ストリップを行うことで、下記式(8)で示される有機ケイ素化合物を289g得ることができた。1H-NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(8)に示す構造を有する生成物であることを確認した。
【化15】
【0056】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、上記で得られた有機ケイ素化合物(8)を147g(0.5モル)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として0.5×10-4モル)を納め、トリメトキシシラン61g(0.5モル)を内温75~85℃で2時間かけて滴下した。その後、80℃で1時間撹拌し、ストリップを行うことで、下記式(9)で示される有機ケイ素化合物を含有する溶液を197g得ることができた。1H-NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(9)に示す構造を有する生成物であることを確認した。得られた有機ケイ素化合物をシランBとする。
【化16】
【0057】
[比較合成例1]
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、オイゲノール164g(1モル)、トルエン400gを納め、ヘキサメチルジシラザン162g(1モル)を内温60℃で4時間かけて滴下した。その後、ストリップを行うことで、下記式(10)で示される有機ケイ素化合物を229g得ることができた。1H-NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(10)に示す構造を有する生成物であることを確認した。
【化17】
【0058】
撹拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに、上記で得られた有機ケイ素化合物(10)を118g(0.5モル)、白金-1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液(白金原子として0.5×10-4モル)を納め、トリメトキシシラン61g(0.5モル)を内温75~85℃で2時間かけて滴下した。その後、80℃で1時間撹拌し、ストリップを行うことで、下記式(11)で示される有機ケイ素化合物を含有する溶液を171g得ることができた。1H-NMRスペクトルにより反応生成物は下記化学構造式(11)に示す構造を有する生成物であることを確認した。得られた有機ケイ素化合物をシランCとする。
【化18】
【0059】
[実施例1]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ヒドロキシジメチルシリル基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン(式(1)において、Y=酸素原子、n=約600、以下、同じ。)100質量部に、(F)表面がパラフィンにて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部と、(F)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ10質量部を加えて混合した後、(B)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン10質量部を加え、減圧下で混合した。次に(C)上記合成例1で得たシランAを1質量部と、(D)ジオクチルスズジバーサテート0.1質量部とを加え、減圧下で完全に混合し、組成物1を得た。
【0060】
[実施例2]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ヒドロキシジメチルシリル基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部に、(F)表面がパラフィンにて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部と、(F)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ10質量部を加えて混合した後、(B)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン10質量部を加え、減圧下で混合した。次に(C)上記合成例2で得たシランBを1質量部と、(D)ジオクチルスズジバーサテート0.1質量部とを加え、減圧下で完全に混合し、組成物2を得た。
【0061】
[実施例3]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ヒドロキシジメチルシリル基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部に、(F)表面がパラフィンにて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部と、(F)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ10質量部を加えて混合した後、(B)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン10質量部を加え、減圧下で混合した。次に(C)上記合成例2で得たシランBを1質量部と、(E)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン1質量部と、(D)ジオクチルスズジバーサテート0.1質量部とを加え、減圧下で完全に混合し、組成物3を得た。
【0062】
[実施例4]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ヒドロキシジメチルシリル基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部に、(F)表面がパラフィンにて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部と、(F)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ10質量部を加えて混合した後、(B)ビニルトリメトキシシラン10質量部を加え、減圧下で混合した。次に(C)上記合成例2で得たシランBを1質量部と、(E)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン1質量部と、(D)ジオクチルスズジバーサテート0.1質量部とを加え、減圧下で完全に混合し、組成物4を得た。
【0063】
[実施例5]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がトリメトキシシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(式(1)において、Y=酸素原子、n=約600。)100質量部に、(F)表面がパラフィンにて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部と、(F)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ10質量部を加えて混合した後、(B)ビニルトリメトキシシラン10質量部を加え、減圧下で混合した。次に(C)上記合成例2で得たシランBを1質量部と、(E)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン1質量部と、(D)ジオクチルスズジバーサテート0.1質量部とを加え、減圧下で完全に混合し、組成物5を得た。
【0064】
[比較例1]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ヒドロキシジメチルシリル基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部に、(F)表面がパラフィンにて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部と、(F)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ10質量部を加えて混合した後、(B)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン10質量部を加え、減圧下で混合した。次に(E)γ-アミノプロピルトリメトキシシランを1質量部と、(D)ジオクチルスズジバーサテート0.1質量部とを加え、減圧下で完全に混合し、組成物6を得た。
【0065】
[比較例2]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ヒドロキシジメチルシリル基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部に、(F)表面がパラフィンにて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部と、(F)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ10質量部を加えて混合した後、(B)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン10質量部を加え、減圧下で混合した。次に(C’)上記比較合成例1で得られたシランCを1質量部と、(D)ジオクチルスズジバーサテート0.1質量部とを加え、減圧下で完全に混合し、組成物7を得た。
【0066】
[比較例3]
(A)23℃における粘度が20,000mPa・sの分子鎖両末端がシラノール基(ヒドロキシジメチルシリル基)で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部に、(F)表面がパラフィンにて処理された重質炭酸カルシウム(商品名;MCコートP-20、丸尾カルシウム(株)製)100質量部と、(F)表面がジメチルジクロロシランにて処理された煙霧質シリカ10質量部を加えて混合した後、(B)ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン10質量部を加え、減圧下で混合した。次に(C’)上記比較合成例1で得られたシランCを1質量部と、(E)γ-アミノプロピルトリメトキシシランを1質量部と、(D)ジオクチルスズジバーサテート0.1質量部とを加え、減圧下で完全に混合し、組成物8を得た。
【0067】
得られた組成物の配合組成を表1、2に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
【表2】
【0070】
[試験方法]
上記実施例、比較例で調製された組成物(室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)を2mmの型枠に流し込み、23℃、50%RHで7日間養生して2mm厚のゴムシートを得た。JIS K 6249に準じて2mm厚シートよりゴム物性(硬さ、切断時伸び、引張強度)を測定した。
【0071】
また、この組成物より、幅25mm、長さ100mmのアルミニウム及び自動車エンジン用樹脂として有力視されているナイロン66(PA66)(商品名;ザイデル80G33HS1L、デュポン(株)製)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)(商品名;ジュラネックス3300、ポリプラスチック(株)製)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)(商品名;サースティールGS-40、東ソー(株)製)を用いて接着面積2.5mm2、接着厚さ1mmのせん断接着試験体(同じ材料同士の接着試験体)を作製し、23℃、50%RHで7日間養生した。この試験体を用いてアルミニウム及び各樹脂に対するせん断接着力と凝集破壊率をJIS K 6249に規定する方法に準じて測定し、凝集破壊率を比較した。
【0072】
また、耐薬品性(耐エンジンオイル性)能を確認するため、得られた硬化後のシリコーンゴムシート及びせん断接着試験体をエンジンオイル[商品名:トヨタキャッスルオイル SN 0W-20]に浸漬し、120℃にて10日間放置して、その後製造初期と同様の試験を行うことで、耐薬品性の確認試験を行った。
【0073】
更に、耐薬品性(耐LLC性)能を確認するため、得られた硬化後のシリコーンゴムシート及びせん断接着試験体をLLCと水道水の50質量%溶液[商品名:トヨタスーパーロングライフクーラント]に浸漬し、100℃にて10日間放置して、その後製造初期と同様の試験を行うことで、耐薬品性の確認試験を行った。
なお、ゴム物性(硬さ、切断時伸び、引張強度)、せん断接着力、凝集破壊率の各試験結果は3回の試験結果(N=3)の平均値を示す。
【0074】
これらの結果を表3に示す。
【0075】
【表3】
【0076】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いた実施例1~5では、アルミニウム、PA66、PBT、PPSに対して初期から良好な接着性を示した。更に耐エンジンオイル及び耐LLC試験後も良好な接着性を維持した。耐LLC試験後のPBTに関しては被着体の劣化が大きく、被着体破壊となった。一方、比較例1、3では本発明にかかる(C)成分を含まず、(E)成分を含有するため、耐久試験(例えば耐薬品性4(耐LLC性)の確認試験)後の物性低下が大きい。また、比較例2、3ではトリオルガノシリル基で封鎖されたカテコール構造を有さない(即ち、カテコール中に存在する2個のヒドロキシ基の一方がトリメチルシリル基で封鎖・保護されているものの、他方がメチル基で封鎖・保護された構造である)(C’)成分を含有するが、樹脂への接着性(初期接着性)向上効果は見られなかった。
以上の結果より、本発明による室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が有効であることがわかる。