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  • 特許-銅粉の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】銅粉の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 9/20 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
B22F9/20 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021086747
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2021188132
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2024-03-19
(31)【優先権主張番号】P 2020092427
(32)【優先日】2020-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185018
【弁理士】
【氏名又は名称】宇佐美 亜矢
(74)【代理人】
【識別番号】100134441
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 由利
(72)【発明者】
【氏名】山岡 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】村上 明弘
(72)【発明者】
【氏名】水野 しおり
(72)【発明者】
【氏名】岡田 浩
(72)【発明者】
【氏名】行延 雅也
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-144234(JP,A)
【文献】特開2017-133083(JP,A)
【文献】国際公開第2009/060803(WO,A1)
【文献】特開2015-108183(JP,A)
【文献】特開2005-97677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 9/00-9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅酸化物粉を、ポリオール溶媒中で還元して銅粉を得る銅粉の製造方法であって、
第1のポリオール溶媒を用いて前記銅酸化物粉から銅核を発生させる工程と、
前記第1のポリオール溶媒よりも平均分子量の小さい第2のポリオール溶媒を用いて前記銅核を粒成長させる工程と、
を含む銅粉の製造方法。
【請求項2】
前記第2のポリオール溶媒の平均分子量は、前記第1のポリオール溶媒の平均分子量よりも10%以上小さい請求項1に記載の銅粉の製造方法。
【請求項3】
前記第2のポリオール溶媒は、前記第1のポリオール溶媒にポリオールを混合して調製されることを特徴とする請求項1又請求項2に記載の銅粉の製造方法。
【請求項4】
前記銅酸化物粉は、酸化銅及び亜酸化銅からなる群より選択される1種以上である請求項1~3のいずれかに記載の銅粉の製造方法。
【請求項5】
前記銅酸化物粉に含有される水分量は10質量%以下である請求項1~4のいずれかに記載の銅粉の製造方法。
【請求項6】
前記銅核を発生させる工程は、前記銅核を含む亜酸化銅粉における前記銅核の割合が、前記銅核を含む亜酸化銅粉の全量に対してモル分率で0.1~0.5となる段階までである請求項1~5のいずれかに記載の銅粉の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオール中で銅化合物を還元して得る銅粉の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅粉は、電子部品である積層セラミックコンデンサ(MLCC:multilayer ceramic capacitor)の内部電極・外部電極や多層セラミック基板の電極などを形成するための導電ペーストの材料としても利用されている。近年、積層セラミックコンデンサでは小型化・大容量化に伴い、内部電極の薄層化が進んでいるため、この用途では、上記導電ペースト(内部電極ペースト)に用いられる銅粉も微細であることが求められる。さらに、銅粉には、連結粒子が少ない単分散(単分散粒子)であることや、耐酸化性に優れていることが望まれている。
【0003】
銅粉の製造方法としては、いわゆる電解法が最も一般的である。しかし、この方法で得られる銅粉は粗大な凝集体となり易い。微細な銅粉を得る方法として、例えば特許文献1では、酸化銅をカップリング剤の存在下で湿式還元する方法や、特許文献2では銅塩化物を気相還元する方法が開示され、そして不均化反応を利用した方法が提案されている。しかし、これらの方法で得られる銅粉は、何れも表面活性が高く、ペーストとして使用する際に樹脂硬化のための加熱によって酸化されたり、有機物の揮散を目的とする焼成時に雰囲気中にわずかに存在する酸素による酸化が進行したりすることがあり、微細化、単分散性、耐酸化性を全て満たすことはできなかった。
【0004】
そこで、上記問題を解決するものとして、特許文献3や特許文献4に、銅酸化物粉をポリオール溶媒中で加熱して還元する方法(ポリオール法)が開示されている。この方法で得られる銅粉(ポリオール銅粉)は、単分散性と耐酸化性に優れており、上述した導電体ペーストに好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平2-34708号公報
【文献】特開昭62-63604号公報
【文献】特開昭59-173206号公報
【文献】特開平5-222413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献3、4に記載の方法(ポリオール法)で得られる銅粉(ポリオール銅粉)は、銅粉表面に形成されている有機被膜由来のガス成分が焼成時に発生する点に着目すると、積層セラミックコンデンサの内部電極に上記銅粉を用いた場合、誘電体層との間に空隙(デラミネーション)が生じるおそれがあった。
【0007】
本発明は、銅酸化物粉をポリオール溶媒中で還元して銅粉を得るポリオール法において、得られる銅粉の焼成時のガス発生量を制御できる銅粉の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、還元反応の進行により銅酸化物粉から銅核が出現した時点の前後でポリオール溶媒を変更することで、得られる銅粉の粒径は変更前のポリオール溶媒を用いた場合と近しく、銅粉焼成時のガス発生量は変更後のポリオール溶媒を用いた場合に近しいものになることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下のものを提供する。
【0009】
本発明の態様によれば、銅酸化物粉を、ポリオール溶媒中で還元して銅粉を得る銅粉の製造方法であって、第1のポリオール溶媒を用いて銅酸化物粉から銅核を発生させる工程と、第1のポリオール溶媒よりも平均分子量の小さい第2のポリオール溶媒を用いて銅核を粒成長させる工程と、を含む、銅粉の製造方法が提供される。
【0010】
また、上記銅粉の製造方法において、第1のポリオール溶媒と第2のポリオール溶媒の平均分子量は10%以上異なることが好ましい。また、銅酸化物粉は、酸化銅及び亜酸化銅からなる群より選択される1種以上であるのが好ましい。また、銅酸化物粉に含有される水分量は10質量%以下であるのが好ましい。また、前記銅核を発生させる工程は、銅核を含む亜酸化銅粉における銅核の割合が、銅核を含む亜酸化銅粉全量に対してモル分率で0.1~0.5となる段階までとするのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本実施形態に係る銅粉の製造方法によれば、銅酸化物粉をポリオール溶媒中で還元して銅粉を得るポリオール法において、得られる銅粉の焼成時のガス発生量を簡便に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の銅粉の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る具体的な実施形態(以下、「本実施形態」という)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。また、本明細書にて、「X~Y」(X、Yは任意の数値)との表記は、「X以上Y以下」の意味である。
【0014】
ポリオール法では、銅酸化物粉をポリオール溶媒中に懸濁させて加熱すると、ポリオール溶媒が還元剤として作用し、銅粉までの還元が進行する。銅酸化物粉として酸化銅(CuO)を用いた場合は、酸化銅(CuO)から亜酸化銅(CuO)を経由して銅(Cu)への還元が生じ、銅酸化物として亜酸化銅(CuO)を用いた場合は、亜酸化銅(CuO)が銅(Cu)に還元され、いずれの場合も最終的に銅粉(以下「ポリオール銅粉」と称す場合もある)が得られる。得られた銅粉は、純水等により洗浄してろ過後、必要に応じて再度洗浄して乾燥する処理が行われる。具体的には、洗浄の一例として、還元により得られた銅粉(ポリオール銅粉)を沈降させデカンテーションをした後、純水等を供給して撹拌洗浄する方法等が用いられる。ろ過の一例として、遠心分離により脱水する方法等が用いられる。
【0015】
本実施形態に係る銅粉の製造方法は、銅酸化物粉を、ポリオール溶媒中で還元して銅粉を得る銅粉の製造方法であって、第1のポリオール溶媒を用いて銅酸化物粉から銅核を発生させる還元工程S1と、第1のポリオール溶媒よりも平均分子量の小さい第2のポリオール溶媒を用いて銅核を粒成長させる還元工程S2とを含む(図1参照)。本実施形態に係る銅粉の製造方法は、例えば、銅酸化物粉を、第1のポリオール溶媒の液温を第1のポリオール溶媒の沸点-50℃以上、第1のポリオール溶媒の沸点±0℃以下の温度に加熱して銅酸化物粉から銅核を発生させる還元工程S1と、溶媒を第1のポリオール溶媒よりも平均分子量が小さい第2のポリオール溶媒に変更して、前記の銅核を、第2のポリオール溶媒の液温を第2のポリオール溶媒の沸点-50℃以上、第2のポリオール溶媒の沸点±0℃以下の温度に加熱して銅粉まで粒成長させる還元工程S2と、を含む。本実施形態に係る銅粉の製造方法は、ポリオール溶媒を、第1のポリオール溶媒から第1のポリオール溶媒よりも平均分子量の小さい第2のポリオール溶媒に変更し、第2のポリオール溶媒を用いて、銅酸化物粉から発生した銅核を粒成長させることを特徴とする。本実施形態に係る銅粉の製造方法では、例えば銅酸化物粉として酸化銅を用いた場合、還元反応の進行によって亜酸化銅を経由して銅へと還元されるが、その途中段階である銅核を含む亜酸化銅粉(亜酸化銅から銅への還元の途中)の段階(還元工程S1)で、ポリオール溶媒を還元工程S1で用いるポリオール溶媒よりも平均分子量が小さいポリオール溶媒に変更する(還元工程S2)ことで、ポリオール法により得られる銅粉(ポリオール銅粉)の焼結時のガス発生量が制御できる。
なお、第1のポリオール溶媒や第2のポリオール溶媒は、後述するポリオールの種類から複数を混合して用いることもできるが、複数のポリオールの種類を混合する場合は、最も沸点の低いポリオールの沸点を、混合したポリオール溶媒の沸点とみなす。例えば、第2のポリオール溶媒としてジエチレングリコール(沸点:245℃)とエチレングリコール(沸点:197℃)を混合する場合には、第2のポリオール溶媒の沸点は197℃とみなす。
【0016】
本実施形態に係る銅粉の製造方法について詳細に説明する。図1は、本実施形態の銅粉の製造方法の一例を示すフローチャートである。
【0017】
(還元工程S1)
還元工程S1は、ポリオール法により、第1のポリオール溶媒を用いて銅酸化物粉から銅核を発生させる工程である。例えば、還元工程S1では、原料の銅酸化物粉を第1のポリオール溶媒に懸濁させて反応液とし、第1のポリオール溶媒の液温を第1のポリオール溶媒の沸点-50℃以上、第1のポリオール溶媒の沸点±0℃以下の温度に加熱して銅核を含む亜酸化銅粉を得る工程である。第1のポリオール溶媒の沸点-50℃以上、第1のポリオール溶媒の沸点±0℃以下の温度とは、例えば、第1のポリオール溶媒の沸点が300℃である場合、250℃(沸点-50℃)以上、300℃(沸点±0℃)以下を意味する。
【0018】
原料である銅酸化物粉としては、酸化銅及び亜酸化銅からなる群より選択される1種以上の粉末とするのが好ましい。原料である銅酸化物粉に含有される水分量は10質量%以下であるのが好ましい。ポリオール法において系内に水が存在すると、ポリオール溶媒の酸化が進行し、生成したアルデヒド化合物により、酸化銅(CuO)の全量が亜酸化銅(CuO)となる前にポリオール銅粉の生成が開始される。銅酸化物粉中の水分量が10質量%を超えると、この作用が顕著となり、均質な銅粉(ポリオール銅粉)が得られないことがある。
【0019】
還元工程S1で得る銅核を含む亜酸化銅粉における銅核の割合は、ポリオール反応により発生した銅核を含んでいれば特に限定されないが、得られる銅粉を焼成する際に発生するガス量の制御だけでなく銅粉の粒径制御を求められる場合には、銅核を含む亜酸化銅粉全量に対してモル分率で0.1~0.5であるのが好ましく、0.2~0.4であるのがより好ましい。このような場合には、還元工程S1で発生させる銅核の量は、上記の銅核の割合とするのが好ましい。また、還元工程S1は、銅核の量が上記の銅核の割合となるまでの段階とするのが好ましい。前記の好ましい段階となるポリオール反応の時間及び温度等の条件は、予備実験などにより求めることができる。
【0020】
銅粉表面に形成されている有機被膜はポリオール溶媒が酸化、分解、重合した際の生成物である点に着目すると、有機被膜由来のガス成分を減少させるためには、還元に用いるポリオール溶媒の低分子量化が有効であると考えられるが、還元の反応温度が溶媒の沸点以上に上げられないことから、ポリオール溶媒を低分子量のものに変更すると、得られる銅粉は反応温度の低下により粒径が増大し、変更前のポリオール溶媒を用いて還元した場合に得られる銅粉と同一の粒径とならないといった問題がある。本実施形態の銅粉の製造方法では、還元工程S1において発生させる銅核の量を上記の好ましい範囲にする場合、本実施形態のように還元工程S1と還元工程S2で用いるポリオール溶媒を変更しても、還元後に得られる銅粉(ポリオール銅粉)の粒径を、より確実に、変更前のポリオール溶媒のみを用いて銅粉を製造した時の粒径とほぼ同様にすることができる。
【0021】
本実施形態において、後述する還元工程S2では、還元工程S1で得られた銅核の粒成長のために亜酸化銅粉が消費されるとともに、銅粒子表面で有機被膜が形成される。銅核を含む亜酸化銅粉における銅核の割合が、亜酸化銅と銅核の混合物に対してモル分率で0.1よりも小さい場合、粒成長の核となる銅粒子の数が少ないため、第1のポリオール溶媒のみで銅酸化物粉をポリオール法により還元した場合よりも粗大な粒径を持つ銅粉となることがある。従って、得られる銅粉の粒径制御も重視する場合には、銅核を含む亜酸化銅粉における銅核の割合が、亜酸化銅と銅核の混合物に対してモル分率で0.1以上とするのが好ましい。一方、銅核を含む亜酸化銅粉における銅核の割合が、亜酸化銅と銅核の混合物に対してモル分率で0.5よりも大きい場合、還元工程S2で消費可能な亜酸化銅が少ないため、第2のポリオール溶媒によって形成される有機被膜の割合が少なく、得られる銅粉の有機被膜が還元工程S1で第1のポリオール溶媒によって形成されたものが多くなるため、ガス発生量の制御の効果が小さくなることがある。なお、本実施形態において、銅核を含む亜酸化銅粉における銅核の割合は、還元反応中の反応溶液(銅成分が懸濁したポリオール)を時間経過毎にろ過し、銅成分の質量と還元反応前の銅成分の質量差から銅核の割合を求めることができ、また、銅成分の組成分析からも上記銅核の割合を求めることができる。従って、同一条件で事前に還元工程S1における時間経過と銅核の割合について予備評価を行い、得られた結果から還元工程S1の時間を決めておく等を行うのが好ましい。
【0022】
銅酸化物粉として亜酸化銅粉とした場合には、還元工程S1は、亜酸化銅の一部が還元されて銅核を含む状態となる段階までであり、好ましくは上記の通り、銅核の割合が銅核を含む亜酸化銅粉全量に対してモル分率で0.1~0.5となるまでの段階である。
【0023】
上記のような還元工程S1と還元工程S2で用いるポリオール溶媒を変更した場合に、還元後に得られる銅粉(ポリオール銅粉)のガス発生量が変化するメカニズムについては、詳細は不明であるが、以下のように推定される。ポリオール溶媒中の還元反応過程において、銅酸化物から銅粉が形成されるとともに、ポリオール溶媒中のポリオール分子やポリオール分子の酸化形態であるアルデヒド化合物やカルボキシル化合物同士が分解または重合し、様々な有機物が生成され、これが銅粒子表面に物理的または化学的に結合することで有機被膜を形成する。そのため有機被膜を構成する有機物はポリオール溶媒に由来しており、ポリオール溶媒に用いられるポリオール分子が低分子量であれば、これから生成する種々の有機物も低分子量となりやすいと考えられる。すなわち還元工程S1で用いる第1のポリオール溶媒の平均分子量よりも還元工程S2で用いる第2のポリオール溶媒の平均分子量が小さい場合は、得られる銅粉の有機被膜は比較的に低分子量となり、その結果、焼結時のガス発生量が低減する。なお、還元後に得られる銅粉(ポリオール銅粉)のガス発生量が変化するメカニズムは、上述のメカニズムに限定されない。
【0024】
上記の還元工程S1と還元工程S2で用いるポリオール溶媒を変更した場合でも、還元後に得られる銅粉(ポリオール銅粉)の粒径が変化しないメカニズムについては、詳細は不明であるが、以下のように推定される。還元工程S1で発生した銅核がある一定以上の存在割合となれば、溶媒中の銅イオンの過飽和度は局所的にも自発的核発生が生じる臨界過飽和度を超えにくくなり、新たな銅核の発生が抑制されるとともに、銅酸化物から溶出した銅イオンは、すでに存在している銅核の粒成長に使用される。そのため還元工程S1と還元工程S2とでポリオール溶媒を変更しても、例えば銅核を含む亜酸化銅粉における銅核の割合が前述の割合の範囲内であれば、還元工程S1で形成された銅核の粒子数から増減することがないため、得られる銅粉の粒径はほぼ変化しない。なお、上記の還元工程S1と還元工程S2で用いるポリオール溶媒を変更した場合でも、還元後に得られる銅粉(ポリオール銅粉)の粒径が変化しないメカニズムについては、上述のメカニズムに限定されない。還元工程S1については、後にさらに説明する。
【0025】
(還元工程S2)
還元工程S2は、ポリオール法により、第1のポリオール溶媒よりも平均分子量の小さい第2のポリオール溶媒を用いて銅核を粒成長させる工程である。還元工程S2では、還元工程S1で得られた銅核を含む亜酸化銅粉を第2のポリオールで処理することにより、銅核を粒成長させる。還元工程S2では、例えば、第2のポリオール溶媒に懸濁させて反応液とし、第2のポリオール溶媒の液温を第2のポリオール溶媒の沸点-50℃以上、第2のポリオール溶媒の沸点±0℃以下の温度に加熱して、銅核を銅粉(ポリオール銅粉)に粒成長させる工程である。なお、還元工程S2に供するものには、銅核を含む亜酸化銅粉に加えて、酸化銅粉が含まれていてもよい。
還元工程S1で得られた銅核を含む亜酸化銅粉を還元工程S2に供する方法は特に限定されない。例えば、銅核を含む亜酸化銅粉を第1のポリオール溶媒から分離して、分離した銅核を含む亜酸化銅粉を第2のポリオール溶媒に懸濁させることで、還元工程S2に供する方法や、第2のポリオール溶媒を第1のポリオール溶媒にポリオールを混合する場合は、還元工程S1終了後の反応液にポリオールを追加混合して、第2のポリオール溶媒を調製する方法、等を用いることができる。また、還元工程S1で得られた銅核を含む亜酸化銅粉を分離する方法は、特に限定されず任意の方法を用いることができる。
【0026】
本実施形態に係る銅粉の製造方法では、還元工程S2において、第1のポリオール溶媒よりも平均分子量が小さい第2のポリオール溶媒を用いる。また、第2のポリオール溶媒の平均分子量は、第1のポリオール溶媒の平均分子量よりも10%以上小さいのが好ましい。なお、本実施形態において、第2のポリオール溶媒の平均分子量は第1のポリオール溶媒の平均分子量よりも10%以上小さいとは、第1のポリオール溶媒の平均分子量をMW1、第2のポリオール溶媒の平均分子量MW2、としたときに、MW2≦MW1-(MW1×0.1)=0.9×MW1を満たすことを意味する。上記説明した通り、第2のポリオール溶媒の平均分子量を第1のポリオール溶媒の平均分子量よりも小さくすると、得られる銅粉の有機被膜が低分子量となり、焼結時のガス発生量が低減する。第1のポリオール溶媒の平均分子量と第2のポリオール溶媒の平均分子量との差が10%以上になると、この効果が顕著になる。なお、第1のポリオール溶媒及び第2のポリオール溶媒を後述するポリオールの種類から複数を混合して用いる場合の平均分子量は、ポリオールの含有割合に応じた重みづけをした加重平均により計算する。
さらに、第2のポリオール溶媒は、第1のポリオール溶媒にポリオールを混合して、第2のポリオール溶媒の平均分子量が第1のポリオール溶媒の平均分子量よりも10%以上小さくしてもよい。
【0027】
なお、還元工程S2に供する銅核を含む亜酸化銅粉は、還元工程S1の後に洗浄工程を経たものであってもよい。洗浄は水等のポリオール以外の溶媒を用いて行ってもよい。例えば、水系の溶媒を用いて洗浄を行う場合、洗浄後の銅核を含む亜酸化銅粉に含有される水分量が10質量%以下となるように、ろ過等の固液分離を行って、加熱あるいは乾燥を施すことが好ましい。
また、還元工程S1終了後の銅核を含む亜酸化銅粉を有する反応液を冷却し、還元工程S1に用いたポリオールに、ポリオールを混合して第2のポリオール溶媒を調製し、還元工程S2に供してもよい。この場合、簡単に処理をすることができる。
【0028】
第1のポリオール溶媒及び第2のポリオール溶媒についてさらに説明する。本実施形態に係る銅粉の製造方法では、上記のように第1のポリオール溶媒よりも第2のポリオール溶媒の平均分子量が小さいものとしている。すなわち、第1のポリオール溶媒及び第2のポリオール溶媒はそれぞれ異なる組成である。ここで、上記第1のポリオール溶媒及び第2のポリオール溶媒はそれぞれ異なる組成を持つポリオール溶媒とは、溶媒全体の組成が異なることを意味し、例えば、第1のポリオール溶媒と第2のポリオール溶媒との間において、用いるポリオールの種類としては少なくとも一部が共通であり、溶媒全体の組成として異なる態様を含む。この態様は、例えば、第1のポリオール溶媒及び第2のポリオール溶媒は、それぞれがエチレングリコールを含むポリオールの混合物であり、互いの平均分子量が異なる態様でもよい。
【0029】
第1のポリオール溶媒及び第2のポリオール溶媒として用いられるポリオール(ポリオール溶媒)は、銅酸化物粉に対して還元作用を有する多価アルコールであり、2~6個のOH基を有することが好ましい。第1のポリオール溶媒及び第2のポリオール溶媒は、例えば、製造する銅粉の特性等に応じて適宜選択されるが、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、及びフェニルジグリコールから選ばれる1種以上が好ましい。なお、ポリオール法に用いる溶媒には、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、他の成分を含有させてもよい。
【0030】
本実施形態に係る銅粉の製造方法では、還元工程S1で用いられる第1のポリオール溶媒と、還元工程S2で用いられる第2のポリオール溶媒は、上記ガス発生量の制御の観点から、それぞれの溶媒の平均分子量が10%以上異なるものとするのが好ましく、それぞれの溶媒の平均分子量が20%以上異なるものとするのがさらに好ましい。上記の平均分子量の差が10%よりも少ないと、前述したように有機被膜を構成する種々の有機物の分子量の変化が乏しく、上記のガス発生量の制御の効果が小さくなる。上述の複数の観点から、第2のポリオール溶媒は、分子量が小さい方が好ましく、例えば、エチレングリコールであるのが好ましい。また、第1のポリオール溶媒は、実施例に示すように、従来法である1種のポリオール溶媒を用いた方法の際に選択する組成と同様の組成のポリオール溶媒を用いることができる。
【0031】
なお、上記した還元工程S1又は還元工程S2におけるポリオール溶媒(第1のポリオール溶媒又は第2のポリオール溶媒)を加熱する温度(加熱温度)は、その液温をポリオールの沸点-50℃以上、ポリオールの沸点±0℃以下とするのが好ましく、ポリオール溶媒の沸点に対してポリオールの沸点-40℃以上、ポリオールの沸点-5℃以下とするのがさらに好ましい。上記加熱温度をポリオール溶媒の沸点に対して-50℃よりも低い温度とした場合、還元反応が十分に進まずに亜酸化銅(CuO)が残留することによって得られる銅粉(ポリオール銅粉)中の酸素含有量が高くなることもあり、かつ反応時間が大幅に延びて生産性も悪化する。また、上記加熱温度をポリオールの沸点よりも高くすると、ポリオールの揮発による減少(消費)が著しくなり、十分に還元できなくなるおそれがある。ここで、ポリオール溶媒として複数のポリオールの混合物を用いる場合には、最も沸点の低いポリオールの沸点をポリオール溶媒の沸点とする。
【0032】
上記の還元工程S2により、単分散のポリオール銅粉を得ることができる。なお、還元工程S2のポリオール反応の温度、時間等の条件は、予備実験を行うことにより求めることができる。
【0033】
本実施形態の銅粉の製造方法では、得られるポリオール銅粉の炭素含有量を従来の方法よりも低減させることができ、例えば、還元工程S1で用いる第1のポリオール溶媒を途中で溶媒を変更することなく銅酸化物粉から銅粉を還元させたときに得られたポリオール銅粉の炭素含有量に対して、顕著に抑制(制御)することができる。よって、本実施形態の銅粉の製造方法では、得られるポリオール銅粉の焼結時のガス発生量を、還元工程S1で用いる第1のポリオール溶媒を途中で溶媒を変更することなく銅酸化物粉から銅粉を還元させたときに得られたポリオール銅粉のガス発生量に対して、顕著に抑制(制御)することができる。なお、本実施形態において、銅粉(ポリオール銅粉)のガス発生量は、後に説明する実施例に記載した方法により算出した値である。
【0034】
本実施形態の銅粉の製造方法は、上述のように従来のポリオール法で用いていたポリオール溶媒と、該ポリオール溶媒よりも平均分子量が小さいポリオール溶媒を用いてポリオール反応を行うため、簡便に実施することができる。
【0035】
以上のように、本実施形態の銅粉の製造方法は、銅酸化物粉を、ポリオール溶媒中で還元して銅粉を得る銅粉の製造方法であって、第1のポリオール溶媒を用いて銅酸化物粉から銅核を発生させる工程と、第1のポリオール溶媒よりも平均分子量の小さい第2のポリオール溶媒を用いて銅核を粒成長させる工程と、を含む。なお、本実施形態に係る銅粉の製造方法において、上記以外の構成は任意の構成である。上記本実施形態に係る銅粉の製造方法によれば、銅酸化物粉をポリオール溶媒中で還元して銅粉を得るポリオール法において、得られる銅粉の焼成時のガス発生量を簡便に制御することができる。
【実施例
【0036】
以下、本発明の実施例を比較例と共に示してさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、物性値の測定方法は以下の通りである。
【0037】
(1)平均粒径
得られた銅粉(ポリオール銅粉)の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒子径測定装置(LA950V2、株式会社堀場製作所製)を用いて体積基準で相対粒子数が50%となる粒子径とした。
(2)ガス発生量
得られた銅粉(ポリオール銅粉)のガス発生量は、熱重量測定装置(TG-DTA:TG-DTA 2020SA、Bruker-AXS製)を用いて、He不活性ガス雰囲気中で10℃/分で昇温したときの室温から700℃までの質量減少率を測定した。また熱重量測定により発生したガスを質量分析装置(Q-MS:MS9600、Bruker-AXS製)を用いて、m/z=44(二酸化炭素に相当する)のマススペクトルを測定し、150℃から700℃の範囲におけるマススペクトルの強度ピーク面積(摂氏温度―マススペクトル強度のグラフにおいてグラフと摂氏温度を表す軸との間の面積)を算出し、このマススペクトルの強度ピーク面積をガス発生量の指標とした。また、得られた銅粉(ポリオール銅粉)の含有炭素量は炭素硫黄分析装置(CS844、LECO製)を用いて測定した。
【0038】
(実施例1)
銅酸化物粉として酸化銅(CuO)粉(古河ケミカルズ株式会社製、品番:FCO-M6)30gを200mlセパラブルフラスコに入れ、ジエチレングリコール(略称:DEG、沸点:245℃、分子量106)100gを加え入れ、ポリオール溶媒を230℃に加熱し、45分撹拌しながらその温度に保持し、還元反応を行なった(還元反応S1)。反応液を冷却した後、銅核を含む亜酸化銅粉を得た。銅核を含む亜酸化銅粉における銅核の割合は、銅核を含む亜酸化銅粉全量に対してモル分率で0.4であった。銅核を含む亜酸化銅粉における銅核の割合は、同一条件で行った事前試験で、45分間還元反応を行った時点の銅核の割合を評価して得られた値である。なお、銅核を含む亜酸化銅粉における銅核の割合は、45分間還元反応に供した反応溶液(銅成分が懸濁したポリオール)をろ過し、その質量と、酸化銅が全量亜酸化銅に還元された時の質量との差から計算した。また45分間還元反応に供した時点で、銅成分として酸化銅は残留していないことも確認している。
【0039】
銅核を含む亜酸化銅粉を遠心分離により固液分離し、銅核を含む亜酸化銅粉を、エチレングリコール(略称:EG、沸点:197℃、分子量62)100gに分散させ、液温190℃に加熱し、60分間撹拌しながらその温度に保持し、還元反応を行なった(還元反応S2)。反応液を冷却した後、生成したポリオール銅粉を遠心分離し、洗浄し、乾燥した。
【0040】
得られたポリオール銅粉の粒度分布測定を行なったところ、平均粒径0.46μmの単分散粒子であることがわかった。炭素含有量は0.14重量%で、熱重量測定における質量減少率は0.38%、m/z=44のマススペクトルの強度ピーク面積は8.9×10-9であった。製造条件、及び、測定結果を表1に示す。
【0041】
(実施例2)
実施例1と同様の操作により、モル分率で0.4の銅核を含む亜酸化銅粉まで還元し、反応液を冷却した後、エチレングリコール30gを加え入れ、液温190℃に加熱し、60分間撹拌しながらその温度に保持し、還元反応を行なった。このポリオール溶媒はジエチレングリコールとエチレングリコールの混合溶媒であり、平均分子量は各重量比から96であった。反応液を冷却した後、生成したポリオール銅粉を遠心分離し、洗浄し、乾燥した。
【0042】
得られたポリオール銅粉の粒度分布測定を行なったところ、平均粒径0.45μmの単分散粒子であることがわかった。炭素含有量は0.17重量%で、熱重量測定における質量減少率は0.40%、m/z=44のマススペクトルの強度ピーク面積は9.4×10-9であった。製造条件、及び、測定結果を表1に示す。
【0043】
(実施例3)
ジエチレングリコールの代わりにトリエチレングリコールを用い、還元工程S1での加熱温度を260℃、撹拌時間を30分間以外は実施例1と同様の操作により、モル分率で0.4の銅核を含む亜酸化銅粉を得た。銅核を含む亜酸化銅粉を遠心分離により固液分離し、銅核を含む亜酸化銅粉を、エチレングリコール(略称:EG、沸点:197℃、分子量62)100gに分散させ、液温190℃に加熱し、60分間撹拌しながらその温度に保持し、還元反応を行なった。反応液を冷却した後、生成したポリオール銅粉を遠心分離し、洗浄し、乾燥した。
【0044】
得られたポリオール銅粉の粒度分布測定を行なったところ、平均粒径0.22μmの単分散粒子であることがわかった。炭素含有量は0.25重量%で、熱重量測定における質量減少率は0.63%、m/z=44のマススペクトルの強度ピーク面積は7.6×10-9であった。製造条件、及び、測定結果を表1に示す。
【0045】
(実施例4)
実施例3と同様の操作により、モル分率で0.4の銅核を含む亜酸化銅粉まで還元し、反応液を冷却した後、エチレングリコール30gを加え入れ、液温190℃に加熱し、60分間撹拌しながらその温度に保持し、還元反応を行なった。このポリオール溶媒はトリエチレングリコールとエチレングリコールの混合溶媒であり、平均分子量は各重量比から130であった。反応液を冷却した後、生成したポリオール銅粉を遠心分離し、洗浄し、乾燥した。
【0046】
得られたポリオール銅粉の粒度分布測定を行なったところ、平均粒径0.21μmの単分散粒子であることがわかった。炭素含有量は0.25重量%で、熱重量測定における質量減少率は0.61%、m/z=44のマススペクトルの強度ピーク面積は7.9×10-9であった。製造条件、及び、測定結果を表1に示す。
【0047】
(実施例5)
ジエチレングリコールの代わりにテトラエチレングリコールを用い、還元工程S1での加熱温度を300℃、撹拌時間を20分間とした以外は実施例1と同様の操作により、モル分率で0.4の銅核を含む亜酸化銅粉を得た。銅核を含む亜酸化銅粉を遠心分離により固液分離し、銅核を含む亜酸化銅粉を、エチレングリコール(略称:EG、沸点:197℃、分子量62)100gに分散させ、液温190℃に加熱し、60分間撹拌しながらその温度に保持し、還元反応を行なった。反応液を冷却した後、生成したポリオール銅粉を遠心分離し、洗浄し、乾燥した。
【0048】
得られたポリオール銅粉の粒度分布測定を行なったところ、平均粒径0.19μmの単分散粒子であることがわかった。炭素含有量は0.29重量%で、熱重量測定における質量減少率は0.68%、m/z=44のマススペクトルの強度ピーク面積は8.0×10-9であった。製造条件、及び、測定結果を表1に示す。
【0049】
(実施例6)
実施例5と同様の操作により、モル分率で0.4の銅核を含む亜酸化銅粉まで還元し、反応液を冷却した後、エチレングリコール30gを加え入れ、液温190℃に加熱し、60分間撹拌しながらその温度に保持し、還元反応を行なった。このポリオール溶媒はトリエチレングリコールとエチレングリコールの混合溶媒であり、平均分子量は各重量比から164であった。反応液を冷却した後、生成したポリオール銅粉を遠心分離し、洗浄し、乾燥した。
【0050】
得られたポリオール銅粉の粒度分布測定を行なったところ、平均粒径0.18μmの単分散粒子であることがわかった。炭素含有量は0.34重量%で、熱重量測定における質量減少率は0.84%、m/z=44のマススペクトルの強度ピーク面積は8.9×10-9であった。製造条件、及び、測定結果を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
銅酸化物粉として酸化銅(CuO)粉(古河ケミカルズ株式会社製、品番:FCO-M6)30gを200mlセパラブルフラスコに入れ、ジエチレングリコール100gを加え入れ、ポリオール溶媒を230℃に加熱し、90分撹拌しながらその温度に保持し、還元反応を行った。反応液を冷却した後、生成したポリオール銅粉を遠心分離し、洗浄し、乾燥した。
【0052】
得られたポリオール銅粉の粒度分布測定を行なったところ、平均粒径0.45μmの単分散粒子であることがわかった。炭素含有量は0.20重量%で、熱重量測定における質量減少率は0.47%、m/z=44のマススペクトルの強度ピーク面積は15.8×10-9であった。製造条件、及び、測定結果を表1に示す。
【0053】
(比較例2)
ジエチレングリコールの代わりにトリエチレングリコールを用い、ポリオール溶媒を260℃に加熱し、60分撹拌したこと以外は、比較例1と同様に操作し、ポリオール銅粉を得た。
【0054】
得られたポリオール銅粉の粒度分布測定を行なったところ、平均粒径0.22μmの単分散粒子であることがわかった。炭素含有量は0.29重量%で、熱重量測定における質量減少率は0.71%、m/z=44のマススペクトルの強度ピーク面積は8.4×10-9であった。製造条件、及び、測定結果を表1に示す。
【0055】
(比較例3)
ジエチレングリコールの代わりにテトラエチレングリコールを用い、ポリオール溶媒を300℃に加熱し、60分撹拌したこと以外は、比較例1と同様に操作し、ポリオール銅粉を得た。
【0056】
得られたポリオール銅粉の粒度分布測定を行なったところ、平均粒径0.17μmの単分散粒子であることがわかった。炭素含有量は0.43重量%で、熱重量測定における質量減少率は0.97%、m/z=44のマススペクトルの強度ピーク面積は10.5×10-9であった。製造条件、及び、測定結果を表1に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
(評価結果)
実施例1、実施例2と比較例1、実施例3、実施例4と比較例2、実施例5、実施例6と比較例3とを比較すると、それぞれ、実施例は比較例に対して、粒径はほぼ同一であるが、還元途中でポリオール溶媒を低分子量のものに変更することで炭素含有量とHe不活性ガス雰囲気中で室温から700℃まで加熱した際の質量減少率は減少し、マススペクトルの強度ピーク面積の減少からもガス発生量が低減したことが示される。
【0059】
実施例及び比較例から、本実施形態に係る銅粉の製造方法は、銅酸化物粉をポリオール溶媒中で還元して銅粉を得るポリオール法において、得られる銅粉の焼成時のガス発生量を簡便に抑制(制御)することができることが確認される。
【0060】
なお、本発明の技術範囲は、上述の実施形態等で説明した態様に限定されない。上述の実施形態等で説明した要件の1つ以上は、省略されることがある。また、上述の実施形態等で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、法令で許容される限りにおいて、上述の実施形態等で引用した全ての文献の開示を援用して本文の記載の一部とする。
図1