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特許7552600Fe-Co-Si-B-Nb系ターゲット
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】Fe-Co-Si-B-Nb系ターゲット
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20240910BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20240910BHJP
   C22C 19/07 20060101ALI20240910BHJP
   C22C 30/00 20060101ALI20240910BHJP
   C22C 33/02 20060101ALI20240910BHJP
   B22F 3/15 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C22C38/00 304
C22C38/00 303S
C22C19/07 C
C22C30/00
C22C33/02 M
B22F3/15
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021542883
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2020031823
(87)【国際公開番号】W WO2021039711
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2019153616
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(72)【発明者】
【氏名】福岡 淳
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-163911(JP,A)
【文献】特開平02-263409(JP,A)
【文献】特開平11-328619(JP,A)
【文献】特開2011-026702(JP,A)
【文献】特開2013-084322(JP,A)
【文献】特開2018-188726(JP,A)
【文献】特開2010-285659(JP,A)
【文献】特開2017-208147(JP,A)
【文献】特開2016-149170(JP,A)
【文献】特開2015-222609(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/34
C22C 38/00
C22C 19/07
C22C 30/00
C22C 33/02
B22F 3/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子比における組成式が(Fe1-a-bCoNi100-X-Y-ZSiNb0.05≦a≦0.95、b≦0.30、15≦X+Y≦35、0.3≦X/Y≦2.0、1≦Z≦20で表わされ、残部が不可避的不純物からなり、5点の測定点で測定を行なったビッカース硬さの平均値が250~1100HVであるFe-Co-Si-B-Nb系ターゲット。
【請求項2】
前記5点の測定点で測定を行なったビッカース硬さの平均値が500~1000HVである請求項1に記載のFe-Co-Si-B-Nb系ターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、軟磁性膜を形成するために用いるFe-Co-Si-B-Nb系ターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子機器をはじめとする各種製品の小型化、軽量化が進んでおり、機能性薄膜が適用されている。例えば、特許文献1においては、磁気ヘッド等のコア材料に適した軟磁性膜として、Feを主成分とし、Nb、Nb-TaおよびTaからなる群から選択された金属元素と、B(ボロン)およびB-Siからなる群より選択された半金属元素と、N(窒素)を含む軟磁性膜が提案されている。このFe-Si-B-Nb-Nで構成される軟磁性膜は、従来のCo-Nb-Zr系合金からなる軟磁性膜よりも、低保磁力、低磁歪および高飽和磁束密度等の優れた軟磁気特性と良好な熱安定性を有しており、さらに耐食性および耐摩耗性にも優れている点で有用な技術である。
【0003】
そして、上述したFe-Si-B-Nb-N系で構成される軟磁性膜は、例えば、スパッタ法により形成することができる。具体的には、Feを主成分とし、Nb、Nb-TaおよびTaよりなる群から選択された金属元素と、BおよびB-Siよりなる群より選択された半金属元素を含むFe-Si-B-Nb系合金をターゲットとして用いて、Ar等の不活性スパッタガス中に窒素ガスを周期的に混合することで、膜厚方向に組成変調させた膜を成膜し、その後、熱処理する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平2-163911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されるFe-Si-B-Nb系合金ターゲットは、ターゲットの形状寸法に加工する機械加工時に、ターゲット本体の割れや欠け、脱落が発生する可能性が高い、いわゆる難削材である。このため、機械加工時に、切削工具のチップの摩耗や破損を招き、得られるターゲットの表面に凹凸を誘発させたり、場合によっては、ターゲット本体を破損させてしまう場合がある。
【0006】
本発明の目的は、Fe-Si-B-Nb系ターゲット(以下、単に「ターゲット」ともいう。)の機械加工において、切削工具のチップの摩耗や破損を抑制し、ターゲット本体の割れや欠けの発生を抑制でき、ターゲット表面における凹凸の発生も抑制できる、Fe-Co-Si-B-Nb系ターゲットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のターゲットは、原子比における組成式が(Fe1-a-bCoNi100-X-Y-ZSiNb、a≦0.95、b≦0.30、15≦X+Y≦35、0.3≦X/Y≦2.0、1≦Z≦20で表わされ、残部が不可避的不純物からなり、5点の測定点で測定を行なったビッカース硬さの平均値が250~1100HVである。
【0008】
本発明のターゲットは、上記の5点の測定点で測定を行なったビッカース硬さの平均値が500~1000HVであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、ターゲットの機械加工において、切削工具のチップの摩耗や破損を抑制し、ターゲット本体の割れや欠けの発生を抑制でき、ターゲット表面における凹凸の発生も抑制できる。このため、上述した軟磁気特性、熱安定性、耐食性、耐摩耗性等に優れる部材の製造に有用な技術となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のターゲットは、JIS Z 2244で規定されるビッカース硬さが250~1100HVの範囲である。
本発明のターゲットは、5点の測定点で測定を行なったビッカース硬さの平均値を250~1100HVという特定範囲にすることで、ターゲットの形状寸法にするための切削加工や研磨加工といった機械加工を施す際に、ターゲット本体の割れや欠けの発生を抑制できることに加え、表面における凹凸の発生も抑制できる。このため、本発明のターゲットは、平滑な表面を有するターゲットとなり、異常放電の誘発や、ノジュールが飛散して被処理材に付着することを抑制できる。好ましくは、上記の5点の測定点で測定を行なったビッカース硬さの全てを250~1100HVという特定範囲にすることである。
【0011】
また、本発明のターゲットは、ビッカース硬さを250HV以上にすることで、例えば、フライス盤や旋盤等のチップに構成刃先が生成されることを抑制できる。すなわち、本発明のターゲットは、切削加工を進めるにつれて、構成刃先の成長に伴うチップの切り込み量が次第に大きくなることが抑制され、切削開始時と切削完了時でターゲットの寸法差を小さくできることに加え、構成刃先の剥離に伴うチップの破損を抑制することもできる。
【0012】
また、ターゲットのエロージョン領域に、例えば、Fe系合金マトリックス相の中に、低硬度の部位が存在してしまうと、低硬度の部位のみが残存したり、脱落したりする場合があり、ターゲットのエロージョン領域の表面が粗くなり、成膜時に異常放電の起点となりやすくなる。このため、本発明のターゲットは、ビッカース硬さを250HV以上にする。そして、上記と同様の理由から、本発明の実施形態に係るターゲットは、ビッカース硬さを500HV以上にすることが好ましく、550HV以上にすることがより好ましい。
【0013】
本発明のターゲットは、ビッカース硬さを1100HV以下にすることで、例えば、フライス盤や旋盤等のチップの摩耗量を抑えることができる。すなわち、本発明のターゲットは、切削加工を進めるにつれて、チップの磨耗に伴うチップの切り込み量が次第に小さくなり、切削開始時と切削完了時でターゲットの寸法差が大きくなることを抑制できることに加え、チップの破損を抑制することもできる。そして、上記と同様の理由から、本発明の実施形態に係るターゲットは、ビッカース硬さを1000HV以下にすることが好ましく、950HV以下にすることがより好ましい。
【0014】
本発明でいうビッカース硬さは、上述したターゲット本体の割れや欠けの発生を抑制することに加え、成膜時の異常放電の発生を抑制する観点から、ターゲットのエロージョン面における任意の5点の測定点で測定したビッカース硬さの平均値が250~1100HVの範囲にあることをいう。そして、ビッカース硬さの測定位置は、ターゲットのエロージョン面の平面方向において、外周部に相当する任意の4つの位置と、中央部に相当する位置の合計5か所とする。このとき、荷重は9.8Nとし、加圧時間は10秒とする。
また、本発明の実施形態に係るターゲットは、ビッカース硬さを250~1100HVにする観点から、金属組織中にFe-Si-B-Nb系の複合化合物相を有しないことが好ましい。
【0015】
本発明のターゲットは、原子比における組成式が(Fe1-a-bCoNi100-X-Y-ZSiNb、a≦0.95、b≦0.30、15≦X+Y≦35、0.3≦X/Y≦2.0、1≦Z≦20で表わされ、残部が不可避的不純物からなる。Co、Ni、Si、B、Nbの含有量は、軟磁気特性、熱安定性、耐食性、耐摩耗性を大きく損なわない範囲で適宜調整することができる。
本発明のターゲットは、SiとBの合計量、すなわち組成式のX+Yを15以上にすることにより、低い保磁力を備える軟磁性膜を得ることができる。そして、本発明の実施形態に係るターゲットは、上記と同様の理由から、X+Yを20以上にすることが好ましい。
また、本発明のターゲットは、X+Yを35以下にすることにより、高い飽和磁束密度を備える軟磁性膜を得ることができる。そして、本発明の実施形態に係るターゲットは、上記と同様の理由から、X+Yを33以下にすることが好ましい。
【0016】
本発明のターゲットは、SiとBの比率、すなわち組成式のX/Yを0.3以上2.0以下にすることにより、熱安定性を備える軟磁性膜を得ることができる。そして、本発明の実施形態に係るターゲットは、上記と同様の理由から、X/Yを0.7以上1.6以下にすることが好ましい。
【0017】
本発明のターゲットは、Nbの含有量、すなわち組成式のZを1以上にすることにより、耐食性を備える軟磁性膜を得ることができる。そして、本発明の実施形態に係るターゲットは、上記と同様の理由から、Zを3以上にすることが好ましい。
また、本発明のターゲットは、Zを20以下にすることにより、高い飽和磁束密度を備える軟磁性膜を得ることができる。そして、本発明の実施形態に係るターゲットは、上記と同様の理由から、Zを10以下にすることが好ましい。
尚、本発明のターゲットは、Nbの一部または全てをTaに置換することでも、上記と同様の効果を得ることができる。
【0018】
本発明のターゲットは、Feの一部を、CoおよびNiから選択される一種以上の元素で置換することにより、磁歪を低減して高い透磁率を備える軟磁性膜を得ることができる。Feに対するCoの置換量、すなわち組成式のaは0.95以下とする。また、Feに対するNiの置換量、すなわち組成式のbは0.30以下とする。そして、本発明の実施形態に係るターゲットは、上記と同様の理由から、aを0.50以上にすることが好ましい。
また、本発明の実施形態に係るターゲットは、aを0.90以下、bを0.10以下にすることにより、高い飽和磁束密度を備える軟磁性膜を得ることができる点で好ましい。そして、本発明の実施形態に係るターゲットは、上記と同様の理由から、aを0.60以下、bを0.05以下にすることがより好ましい。
【0019】
本発明のターゲットは、例えば、粉末焼結法で得ることができる。具体的には、上記した成分組成となるように、純金属粉末や合金粉末を混合した混合粉末を加圧焼結することにより得ることができる。合金粉末としては、組織にFe-Si-B-Nb系の複合化合物相を極力形成させないようにするために、Fe-Si合金粉末、Fe-B合金粉末、Fe-Nb合金粉末、Fe-Si-B合金粉末、Fe-Si-Nb合金粉末、Fe-B-Nb合金粉末、Fe-Co-Si合金粉末、Fe-Co-B合金粉末、Fe-Co-Nb合金粉末、Fe-Co-Si-B合金粉末、Fe-Co-Si-Nb合金粉末、Fe-Co-B-Nb合金粉末、Fe-Ni-Si合金粉末、Fe-Ni-B合金粉末、Fe-Ni-Nb合金粉末、Fe-Ni-Si-B合金粉末、Fe-Ni-Si-Nb合金粉末、Fe-Ni-B-Nb合金粉末、Fe-Co-Ni-Si合金粉末、Fe-Co-Ni-B合金粉末、Fe-Co-Ni-Nb合金粉末、Fe-Co-Ni-Si-B合金粉末、Fe-Co-Ni-Si-Nb合金粉末、Fe-Co-Ni-B-Nb合金粉末、Fe-Co合金粉末、Fe-Ni合金粉末、Co-Ni合金粉末、Fe-Co-Ni合金粉末を用いることが好ましい。
そして、加圧焼結としては、例えば、熱間静水圧プレス(HIP)法、ホットプレス法、通電焼結法等を適用することができる。
【0020】
加圧焼結は、焼結温度700~1300℃、加圧圧力30~200MPa、1~10時間の条件で行なうことが好ましい。
焼結温度は、700℃以上にすることで、粉末の焼結を進行させることができ、空孔の発生を抑制することができる。また、焼結温度は、1300℃以下にすることで、粉末の溶解を抑制できる。
また、加圧圧力は、30MPa以上にすることで、焼結の進行を促進し、空孔の発生を抑制することができる。また、加圧圧力は、200MPa以下にすることで、焼結時にターゲットへの残留応力の導入が抑制され、焼結後の割れの発生を抑制することができる。
また、焼結時間は、1時間以上にすることで、焼結の進行を促進し、空孔の発生を抑制することができる。また、焼結時間は、10時間以下にすることで、製造効率の低下を抑制できる。
【実施例
【0021】
先ず、Fe粉末、Co粉末、Si粉末、B粉末およびNb粉末を準備した。そして、本発明例1となるターゲットを得るために、原子比における組成式が(Fe0.90Co0.1067Si13.514.5Nb、(a=0.10、b=0、X+Y=28、X/Y=0.9、Z=5)となるように、上記で準備した各粉末を秤量した後にV型混合機で混合して混合粉末を得た。そして、この混合粉末を軟鉄製のカプセルに充填して、450℃、4時間の条件で脱ガス封止をした。そして、750℃、122MPa、1時間の条件で、HIPによって上記カプセルを加圧焼結して、焼結体を作製した。
【0022】
本発明例2となるターゲットを得るために、Fe粉末、Co粉末、Si粉末、B粉末およびNb粉末を準備し、原子比における組成式(Fe0.70Co0.3067Si13.514.5Nb、(a=0.30、b=0、X+Y=28、X/Y=0.9、Z=5)となるように、上記で準備した各粉末を秤量した後に、V型混合機で混合して混合粉末を得た。そして、この混合粉末を軟鉄製のカプセルに充填して、450℃、4時間の条件で脱ガス封止をした。そして、750℃、122MPa、1時間の条件で、HIPによって上記カプセルを加圧焼結して、焼結体を作製した。
【0023】
本発明例3となるターゲットを得るために、Fe粉末、Co粉末、Si粉末、B粉末およびNb粉末を準備し、原子比における組成式(Fe0.95Co0.0584Si3.511.5Nb、(a=0.05、b=0、X+Y=15、X/Y=0.3、Z=1)となるように、上記で準備した各粉末を秤量した後に、V型混合機で混合して混合粉末を得た。そして、この混合粉末を軟鉄製のカプセルに充填して、450℃、4時間の条件で脱ガス封止をした。そして、950℃、122MPa、1時間の条件で、HIPによって上記カプセルを加圧焼結して、焼結体を作製した。
【0024】
本発明例4となるターゲットを得るために、Fe粉末、Co粉末、Si粉末、B粉末およびNb粉末を準備し、原子比における組成式(Fe0.05Co0.9545Si23.311.7Nb20、(a=0.95、b=0、X+Y=35、X/Y=2.0、Z=20)となるように、上記で準備した各粉末を秤量した後に、V型混合機で混合して混合粉末を得た。そして、この混合粉末を軟鉄製のカプセルに充填して、450℃、4時間の条件で脱ガス封止をした。そして、950℃、122MPa、1時間の条件で、HIPによって上記カプセルを加圧焼結して、焼結体を作製した。
【0025】
本発明例5となるターゲットを得るために、Fe粉末、Co粉末、Ni粉末、Si粉末、B粉末およびNb粉末を準備し、原子比における組成式(Fe0.60Co0.10Ni0.3067Si13.514.5Nb、(a=0.1、b=0.3、X+Y=28、X/Y=0.9、Z=5)となるように、上記で準備した各粉末を秤量した後に、V型混合機で混合して混合粉末を得た。そして、この混合粉末を軟鉄製のカプセルに充填して、450℃、4時間の条件で脱ガス封止をした。そして、950℃、122MPa、1時間の条件で、HIPによって上記カプセルを加圧焼結して、焼結体を作製した。
【0026】
比較例となるターゲットを得るために、原子比における組成式がFe67-Si13.5-B14.5-Nb(a=0、b=0、X+Y=28、X/Y=0.9、Z=5)であるガスアトマイズ粉を準備し、軟鉄製のカプセルに充填して、450℃、4時間の条件で脱ガス封止をした。そして、950℃、122MPa、1時間の条件で、HIPによって上記カプセルを加圧焼結して、焼結体を作製した。
【0027】
上記で得た各焼結体に機械加工を施してターゲットを作製した。このとき、本発明例1~本発明例5となるターゲットは、いずれも、機械加工の際に、割れが発生せず、また、仕上げ加工後の表面に凹凸が発生せず、表面が平滑な状態であることが確認できた。
一方、比較例となるターゲットは、機械加工の際に、割れが発生し、ターゲット形状に機械加工することができなかった。
【0028】
上記で得た各焼結体について、ターゲットのエロージョン面となる面の平面方向において、外周部に相当する4つの位置と、中央部に相当する位置の合計5か所のビッカース硬さを測定した。尚、測定間隔は、圧痕どうしで測定の影響を受けない距離を設けて測定した。そして、ビッカース硬さは、JIS Z 2244に準じ、株式会社明石製作所製のMVK-Eを用いて、荷重を9.8Nとし、加圧時間を10秒としたときの値を測定した。その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
比較例となるターゲットは、ビッカース硬度の平均値が1100HVを超えていた。
これに対して、本発明例1~本発明例5のターゲットは、いずれも、ビッカース硬度の平均値が250~1100HVの範囲にあることが確認できた。
これにより、本発明のターゲットは、機械加工の際に、割れや欠けの発生が抑制され、また、仕上げ加工後の表面に凹凸が発生せず、表面が平滑なターゲットであることが確認できた。これにより、本発明のターゲットは、異常放電の誘発や、ノジュールが飛散して被処理材に付着することが抑制された、軟磁性膜を形成するためのターゲットとして有用となることが期待できる。