IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱レイヨン株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】顕色剤及び感熱記録材料
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/333 20060101AFI20240910BHJP
   B41M 5/323 20060101ALI20240910BHJP
   B41M 5/337 20060101ALI20240910BHJP
   B43K 5/00 20060101ALI20240910BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20240910BHJP
   C07C 311/60 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B41M5/333 220
B41M5/323 220
B41M5/337 210
B43K5/00
B43K7/00
C07C311/60
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021561509
(86)(22)【出願日】2020-11-26
(86)【国際出願番号】 JP2020044072
(87)【国際公開番号】W WO2021107037
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】P 2019215645
(32)【優先日】2019-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020174646
(32)【優先日】2020-10-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河井 潤也
(72)【発明者】
【氏名】稲田 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】上原 久俊
【審査官】福田 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-324127(JP,A)
【文献】特開昭61-018754(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104649945(CN,A)
【文献】国際公開第2016/119349(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0109658(US,A1)
【文献】特開平06-258871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/28-5/48
B43K 5/00
B43K 7/00
C07C 311/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物を含む顕色剤。
【化1】

(上記式(1)中、a、A、Lは下記の通りである。
aは1から5から選ばれる整数であり、
Aは、それぞれ独立してフルオロ基又はパーフルオロアルキル基であり、
Lは、下記式(2)で表される何れかの官能基である。
【化2】

上記式(2)中、Rは炭素数1~4のアルキル基とする。は式(1)中の硫黄原子との結合部位を示す。)
【請求項2】
前記式(1)中、aが1又は2である請求項1に記載の顕色剤。
【請求項3】
前記式(1)中、Aがm-位又はp-位に置換している請求項1又は2に記載の顕色剤。
【請求項4】
前記式(1)中、Aがm-位に置換している請求項3に記載の顕色剤。
【請求項5】
前記式(1)中、aが1である請求項3又は4に記載の顕色剤。
【請求項6】
前記式(1)中、Aがフルオロ基又はトリフルオロメチル基である請求項1~5のいずれか1項に記載の顕色剤。
【請求項7】
前記式(1)中、Lはフェニル基、o-トルイル基、m-トルイル基又はp-トルイル基のいずれかから選ばれる請求項1乃至6のいずれか1項に記載の顕色剤。
【請求項8】
支持体及び支持体上に設けられた感熱記録層を有する感熱記録材料であって、該感熱記録層が、請求項1乃至のいずれか1項に記載の顕色剤を含む感熱記録材料。
【請求項9】
前記感熱記録層がロイコ染料を含む、請求項に記載の感熱記録材料。
【請求項10】
前記感熱記録層が増感剤を含む、請求項又はに記載の感熱記録材料。
【請求項11】
前記感熱記録層が安定剤を含む、請求項乃至10のいずれか1項に記載の感熱記録材料。
【請求項12】
請求項1~のいずれか1項に記載の顕色剤を含むインキ。
【請求項13】
請求項12に記載のインキを収容してなる筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発色感度及び保存安定性に優れた感熱記録材料を与えることのできる顕色剤、及び該顕色剤を用いて得られる感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無色ないし淡色の塩基性(電子供与性)ロイコ染料(以下「染料」と略称することがある)及び染料と加熱した時に反応して発色させる電子受容性顕色剤(以下「顕色剤」と略称することがある)を主成分とする感熱記録層を有する感熱記録材料は、広く実用化されている。
【0003】
このような顕色剤に用いられる化合物の多くは2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン(ビスフェノールS)等に代表されるフェノール構造を主体とする化合物である。一方、環境負荷の懸念から、顕色剤としてフェノール構造を有さない化合物を用いるための検討も行われている。
【0004】
例えば、特許文献1には、特定のスルホニルウレア構造を有する化合物を顕色剤として用いた感熱記録体において、ビスフェノールAよりも記録像の発色濃度に優れていることが開示されている。
また、特許文献2には、p-トルエンスルホニルオキシフェニル部位を有するスルホニルウレア構造化合物を顕色剤として用いた感熱記録体において、保存安定性、即ち塗布された紙の未呈色部の光、熱及び湿気に対する耐性、並びに画像の綿実油、可塑剤、熱、湿気、及び水に対して優れた耐性を示すことが開示されている。さらに、得られた記録紙は高い動的感度を示すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第2679459号
【文献】特許第4601174号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らの検討によれば、上記特許文献1及び特許文献2で示されているスルホニルウレア構造を有する特定の化合物を顕色剤に用いた場合において、必ずしも十分な発色感度と保存安定性とを両立する感熱記録材料は得られなかった。即ち、本発明の課題は、発色感度及び保存安定性の点でさらに優れた感熱記録材料を与えることのできる顕色剤、及び該顕色剤を用いて得られる感熱記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等が鋭意検討した結果、特定の置換基を有するスルホニルウレア化合物を顕色剤に用いることにより上記課題を解決し得ることを見出した。即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
【0008】
[1]下記式(1)で表される化合物を含む顕色剤。
【化1】

(上記式(1)中、a、A、Lは下記の通りである。
aは1から5から選ばれる整数であり、
Aは、それぞれ独立してフルオロ基又はパーフルオロアルキル基であり、
Lは、下記式(2)で表される何れかの官能基である。
【化2】

上記式(2)中、Rは炭素数1~4のアルキル基とする。は式(1)中の硫黄原子との結合部位を示す。)
[2]前記式(1)中、aが1又は2である[1]に記載の顕色剤。
[3]前記式(1)中、Aがm-位又はp-位に置換している[1]又は[2]に記載の顕色剤。
[4]前記式(1)中、Aがm-位に置換している[3]に記載の顕色剤。
[5]前記式(1)中、aが1である[3]又は[4]に記載の顕色剤。
[6]前記式(1)中、Aがフルオロ基又はトリフルオロメチル基である[1]乃至[5]のいずれかに記載の顕色剤。
[7]前記式(1)中、Lはフェニル基、o-トルイル基、m-トルイル基又はp-トルイル基のいずれかから選ばれる[1]乃至[6]のいずれかに記載の顕色剤。
[8]粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度が0.70以上であり、相対濃度比4.0/0.5が0.85以上である、顕色剤。
但し、
相対濃度比4.0/0.5は、顕色剤の粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度を1としたときの、該顕色剤の粒子径D50が4.0μmである場合の画像濃度の比であり、
画像濃度は、
ロイコ染料及び顕色剤を含み増感剤を含まない感熱記録層と、支持体とを有する感熱記録材料に対し、感熱プリンターを使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで印字して測定するものとする。
[9]相対濃度比5.0/0.5が0.85以上である、[8]に記載の顕色剤。
但し、
相対濃度比5.0/0.5は、顕色剤の粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度を1としたときの、該顕色剤の粒子径D50が5.0μmである場合の画像濃度の比である。
[10]粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度が0.90以上である、[8]又は[9]に記載の顕色剤。
[11]粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度が0.95以上であり、相対濃度比2.5/0.5が0.90以上である、顕色剤。
但し、
相対濃度比2.5/0.5は、顕色剤の粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度を1としたときの、該顕色剤の粒子径D50が2.5μmである場合の画像濃度の比であり、
画像濃度は、
ロイコ染料及び顕色剤を含み増感剤を含まない感熱記録層と、支持体とを有する感熱記録材料に対し、感熱プリンターを使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで印字して測定するものとする。
[12]相対濃度比4.0/0.5が0.90以上である、[11]に記載の顕色剤。
但し、
相対濃度比4.0/0.5は、顕色剤の粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度を1としたときの、該顕色剤の粒子径D50が4.0μmである場合の画像濃度の比である。
[13]相対濃度比5.0/0.5が0.85以上である、[11]又は[12]に記載の顕色剤。
但し、
相対濃度比5.0/0.5は、顕色剤の粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度を1としたときの、該顕色剤の粒子径D50が5.0μmである場合の画像濃度の比である。
[14]融点が150℃未満である、[8]乃至[13]のいずれかに記載の顕色剤。
[15]融点が140℃未満である、[8]乃至[14]のいずれかに記載の顕色剤。
[16]分子量が500未満である、[8]乃至[15]のいずれかに記載の顕色剤。
[17]ノンフェノール顕色剤である、請求項[8]乃至[16]のいずれかに記載の顕色剤。
[18]粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度が0.95以上であり、融点が150℃未満であり、分子量が500未満である、ノンフェノール顕色剤。
但し、
画像濃度は、
ロイコ染料及び顕色剤を含み増感剤を含まない感熱記録層と、支持体とを有する感熱記録材料に対し、感熱プリンターを使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで印字して測定するものとする。
[19]下記式(3)で表される[8]乃至[18]のいずれかに記載の顕色剤。
【化3】

(上記式(3)中、a’、b、n、R’、Z、X、Y、Vは下記の通りである。
a’及びbは、それぞれ0もしくは1の整数であり、
Zは、CH基又はSO基であり、
Yは、O原子、NH基、NHCH基、SONH基、又はNHSO基であり、
nは、0~5から選ばれる整数であり、
R’は、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルケニル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、アミノスルホニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、又はヒドロキシル基であり、
Xは、O原子、又はS原子であり、
Vは、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルケニル基、又は下記式(4)で表される何れかの官能基である。
【化4】

上記式(4)中、mは、0~5から選ばれる整数であり、Rは、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルケニル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、アミノスルホニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、又はヒドロキシル基であり、は式(3)中のYのO原子、NH基のN原子、NHCH基のC原子、SONH基のN原子、NHSO基のS原子、又はXと二重結合を形成するC原子との結合部位を示す。)
[20]支持体及び支持体上に設けられた感熱記録層を有する感熱記録材料であって、該感熱記録層が、[1]乃至[19]のいずれかに記載の顕色剤を含む感熱記録材料。
[21]前記感熱記録層がロイコ染料を含む、[20]に記載の感熱記録材料。
[22]前記感熱記録層が増感剤を含む、[20]又は[21]に記載の感熱記録材料。
[23]前記感熱記録層が安定剤を含む、[20]乃至[22]のいずれかに記載の感熱記録材料。
[24][1]~[19]のいずれかに記載の顕色剤を含むインキ。
[25][24]に記載のインキを収容してなる筆記具。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発色感度及び保存安定性に優れた感熱記録材料を与えることのできる顕色剤、及び該顕色剤を用いて得られる感熱記録材料が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本発明において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0011】
〔顕色剤〕
本発明の第一の形態に係る顕色剤は、下記式(1)で表される化合物を含む顕色剤である。なお、本明細書において、式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と称することがある。
【化5】

(上記式(1)中、a、A、Lは下記の通りである。
aは1から5から選ばれる整数であり、
Aは、それぞれ独立してフルオロ基又はパーフルオロアルキル基であり、
Lは、下記式(2)で表される何れかの官能基である。
【化6】

上記式(2)中、Rは炭素数1~4のアルキル基とする。は式(1)中の硫黄原子との結合部位を示す。)
【0012】
本発明の第一の形態に係る顕色剤は、発色感度及び保存安定性に優れるという顕著な効果を奏する。上記顕色剤がこのような優れた効果を奏するのは、次の理由によるものと推定される。即ち、スルホニルウレア化合物に対して置換基としてフルオロ基又はパーフルオロアルキル基を導入することにより、N-H部位の酸性度及び/又は水素結合供与能が向上し、ロイコ色素と反応し易くなることで発色感度が向上し、同時に、発色状態を安定化させることで保存安定性が高まるためと思われる。また、置換基としてフルオロ基又はパーフルオロアルキル基を有することにより、会合性及び/又は結晶性が適度に抑制されることで、融解に要するエネルギーを下げ過ぎることなくアモルファス安定性を効果的に高めることができ、準安定状態である発色状態の保存安定性が高まるためと考えられる。また、置換基としてフルオロ基又はパーフルオロアルキル基を有することにより、ロイコ染料や増感剤との分子レベルの混じり易さ(相溶性)が適度に調整されることで高い発色感度と保存安定性が両立できると考えられる。また、高極性なスルホニルウレア基に起因する親水性部位と、フルオロ基やパーフルオロアルキル基に起因する疎水性部位とを分子内に持つことで、様々な保存条件下における保存安定性を同時に高めることができると考えられる。具体的には、湿気、水、アルコール等に対する耐性を高めながら、油やグリース等に対する耐性を高いレベルで同時に高めることができると考えられる。
【0013】
上記式(1)中、aは、1から5から選ばれる整数であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1である。aが大きいと、疎水性が高くなることで水中での分散性が低下したり、分子量が大きくなることで融解時に分子が動きにくくなったり、ロイコ染料や増感剤との相溶性が低下し過ぎることで顕色性能が低下すると考えられる。
上記式(1)中、Aにおけるパーフルオロアルキル基の炭素数は1~12である。好ましくは炭素数6以下、さらに好ましくは4以下、特に好ましくは炭素数1(トリフルオロメチル基)である。炭素数が大きいパーフルオロアルキル基では疎水性が高すぎて水中での分散性が低下したり、分子量が大きくなることで融解時に分子が動きにくくなったり、ロイコ染料や増感剤との相溶性が低下し過ぎることで顕色性能が低下すると考えられる。Aはそれぞれ独立してフルオロ基又はパーフルオロアルキル基であるが、aが2以上の場合は全てのAが同一の置換基であってもよいし異なってもよく、全てのAが同一の置換基であることがより好ましい。Aとしては、適度な疎水性と相溶性を与えることから、フルオロ基又はトリフルオロメチル基が好ましく、中でも相溶性が高いことで高い発色感度が実現し易いことから、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0014】
Aにおけるフルオロ基又はパーフルオロ基の置換位置は、特に限定はないが、結晶性を抑制し適度なアモルファス安定性を与えることから、o-位又はm-位が好ましい。一方で、隣接するN-H部位から空間的に離れておりロイコ色素との反応性を阻害しないことから、m-位又はp-位が好ましい。適度なアモルファス性と反応性を両立し易いことから、m-位が特に好ましい。なお、aが2以上の場合は、少なくとも一つのAがm-位であることが好ましい。
【0015】
Lは、上記式(2)で表される何れかの官能基、即ちフェニル基及び一置換のフェニル基からなる官能基から選ばれるいずれか一つである。
上記式(2)中、Rは炭素数1~4のアルキル基であり、熱運動が抑えられて保存安定性が向上し易いことから、好ましくは、メチル基又はエチル基であり、特にメチル基が好ましい。
上記式(2)で表される官能基は、好ましくは、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基又はp-トリル基である。
【0016】
本発明の第一の形態に係る顕色剤の特に好ましい態様において、上記式(1)中、aは2以下であり、Aはフルオロ基または炭素数4以下のパーフルオロ基であり、フルオロ基またはパーフルオロ基の置換位置はm-位又はp-位であり、上記式(2)中、Rはメチル基又はエチル基である。
【0017】
上記式(1)の具体例としては、限定するわけではないが、下記が挙げられる。
【化7】

【化8】
【0018】
本発明の第二の形態に係る顕色剤は、以下の条件(i)乃至(iii)の少なくとも一つを満たすものを含む。
【0019】
(i)粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度が0.70以上であり、相対濃度比4.0/0.5が0.85以上である。
(ii)粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度が0.95以上であり、相対濃度比2.5/0.5が0.90以上である。
(iii)粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度が0.70以上であり、相対濃度比2.5/0.5が0.96以上である。
【0020】
上記(i)乃至(iii)において、画像濃度は、ロイコ染料及び顕色剤を含み増感剤を含まない感熱記録層と、支持体とを有する感熱記録材料に対し、感熱プリンターを使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで印字したものを、X-Rite社製分光濃度・測色計(eXact)により測定することによって得られる値である。
また、相対濃度比は、特定の粒子径D50を有する顕色剤を用いた際の画像濃度の、基準となる粒子径D50を有する顕色剤を用いた際の画像濃度に対する比を表す。例えば、相対濃度比4.0/0.5は、顕色剤の粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度を1としたときの、該顕色剤の粒子径D50が4.0μmである場合の画像濃度の比である。
【0021】
上記(i)を満たす顕色剤は、相対濃度比4.0/0.5が0.87以上であることが好ましく、相対濃度比4.0/0.5が0.90以上であることがより好ましい。
また、相対濃度比5.0/0.5が0.85以上であることが好ましく、相対濃度比5.0/0.5が0.87以上であることがより好ましく、0.90以上であることがさらに好ましい。また、粒子径D50が0.5μmである場合の画像濃度が0.90以上であることがより好ましく、0.95以上であることがさらに好ましく、1.00以上であることがさらに好ましい。
【0022】
上記(ii)を満たす顕色剤は、相対濃度比3.0/0.5が0.90以上であることが好ましく、相対濃度比4.0/0.5が0.90以上であることがより好ましい。
また、相対濃度比5.0/0.5が0.85以上であることが好ましく、相対濃度比7.0/0.5が0.85以上であることがより好ましい。
【0023】
上記(iii)を満たす顕色剤は、相対濃度比3.0/0.5が0.93以上であることが好ましい。
【0024】
感熱紙の発色感度を高める方法として、顕色剤を湿式研磨により微粒子化して表面積を大きくすることで、熱融解時にロイコ色素との反応点を増やす方法が知られている。一般的に顕色剤は粒子径D50が2.0μm以下で使用されるが、一方で、工業的に湿式研磨するには多くのユーティリティーコストと時間を費やすなどの弊害も生じる。本形態の顕色剤は、湿式研磨後の粒子径D50が2.5μm以上であっても、D50が0.5μmの時の発色感度と比較して画像濃度の低下が小さい、即ち粒子径が大きくても高い発色感度を維持することが可能である。本発明がこのような優れた効果を奏するのは、一つには、次の理由によるものと推定される。即ち、本形態の顕色剤は、一般的な顕色剤と比較して低融点であることと分子量が小さいことを併せ持つため、粒子径D50が大きくてもすぐに熱で融解して発色感度を高く保つことができると考えられる。具体的には、D50が0.5μmの時の画像濃度が一定以上であることで、高い発色感度を有しており、更に相対濃度比が一定以上であることで、粒子径が大きくても高い発色感度を維持することができる。なお、粒子径D50とは、体積基準の累積分布50vol%の時の粒子径を意味する。
【0025】
本形態の顕色剤の粒子径D50は、特に限定するわけではないが、0.1μm以上であってよく、0.2μm以上であってよい。より好ましくは、0.5μm以上であり、さらに好ましくは、2.5μm以上、3.0μm以上、4.0μm以上、5.0μm以上である。また、10.0μm未満であることが好ましく、8.0μm未満であることがより好ましい。D50が大きい顕色剤を使用すると、熱エネルギーを与えない状態における顕色剤と染料の相溶性が低くなるため、地肌部(白色部)の発色を抑制できる。一方、D50が小さい顕色剤を使用すると、感熱紙として良好な感度を有する感熱紙を得ることができ、かつ、紙へ塗工後に表面が凸凹になり爪などの擦れや摩擦熱により顕色剤とロイコ色素が発色してしまうステッキングという現象の発生を抑制できる。
【0026】
本形態の顕色剤の融点としては、特に限定するわけではないが、120℃以上150℃未満が好ましい。より好ましくは120℃以上140℃未満、さらに好ましくは120℃以上135℃未満である。上記範囲のようにある程度高い融点を有する顕色剤は、増感剤の有無にかかわらず、60℃以上の耐熱試験や感熱紙の乾燥工程において、白色部が発色しづらい点で好適である。また、ある程度低い融点を有する顕色剤は、粒子径D50が2.5μm以上であっても、熱により十分融解するため、D50が0.5μmの時の画像濃度と同程度の画像濃度が得られるため好ましい。
【0027】
本形態の顕色剤の分子量としては、特に限定するわけではないが、500未満が好ましい。より好ましくは450未満であり、さらに好ましくは400未満であり、さらに好ましくは380未満である。顕色剤の分子量を上記範囲内とすると、D50が上記範囲内である微粒子を用いた際に、十分な発色感度を得られやすい。
【0028】
本形態の顕色剤は、特に限定するわけではないが、上記融点と、上記分子量の特徴を併せ持つことにより、上記の粒子径の範囲において、より優れた発色感度を有すると考えられる。
本形態において、上記(i)乃至(iii)を充足する顕色剤は、特段の限定は無いが、電子受容性を有し、ロイコ染料と反応し発色することが出来る部分構造を有し、上記範囲内の融点及び/又は分子量を有する化合物を合成し、湿式研磨を行うなどの方法で得ることができる。ロイコ染料と反応し発色することが出来る部分構造としては、フェノール型の部分構造と非フェノール型の部分構造のどちらでも良く、非フェノール型の部分構造として具体的には、スルホニルウレア(-NHCONHSO-)、ウレア(-NHCONH-)、チオウレア(-NHCSNH-)、スルホンアミド(-NHSO-)、ウレタン(-NHCOO-)、アミド(-CONH-)、ヒドラジル(-NHNH-)又はカルボン酸(-COOH)が挙げられる。中でも、ロイコ染料との相溶性に優れていることから、スルホニルウレア(-NHCONHSO-)、ウレア(-NHCONH-)、チオウレア(-NHCSNH-)、スルホンアミド(-NHSO-)、ウレタン(-NHCOO-)が好ましく、中でもロイコ染料との反応性が優れていることからスルホニルウレア(-NHCONHSO-)が特に好ましい。
【0029】
本形態の顕色剤は、フェノール型又はノンフェノール型の化合物を含む顕色剤であってよいが、環境負荷の観点から、ノンフェノール型の化合物を含む顕色剤がより好ましい。
【0030】
本発明の第三の形態に係る顕色剤は、上記融点と、上記分子量と、上記粒子径の特徴を全て有するノンフェノール型の顕色剤である。
【0031】
本発明の第二及び第三の形態に係る顕色剤に含まれるノンフェノール型の化合物は、好ましくは、下記一般式(3)で表される化合物である。
【化9】

(上記式(3)中、a’、b、n、R’、Z、X、Y、Vは下記の通りである。
a’及びbは、それぞれ0もしくは1の整数であり、
Zは、CH基又はSO基であり、
Yは、O原子、NH基、NHCH基、SONH基、又はNHSO基であり、
nは、0~5から選ばれる整数であり、
R’は、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルケニル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、アミノスルホニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、又はヒドロキシル基であり、
Xは、O原子、又はS原子であり、
Vは、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルケニル基、又は下記式(4)で表される何れかの官能基である。
【化10】

上記式(4)中、mは、0~5から選ばれる整数であり、Rは、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルケニル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、アミノスルホニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、又はヒドロキシル基であり、は式(3)中のYのO原子、NH基のN原子、NHCH基のC原子、SONH基のN原子、NHSO基のS原子、又はXと二重結合を形成するC原子との結合部位を示す。)
【0032】
上記式(3)中、a’及びbは、それぞれ0もしくは1の整数であり、Zは、CH基、又はSO基であり、Yは、O原子、NH基、NHCH基、SONH基、又はNHSOであり、上記融点と、上記分子量を考慮すると、好ましくはa’かbのどちらか一方が0であり、さらに好ましくは、a’が0であり、bが1である。
【0033】
上記式(3)中、nは、0から5から選ばれる整数であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1である。nが大きいと、疎水性が高くなることで水中での分散性が低下したり、分子量が大きくなることで融解時に分子が動きにくくなったり、ロイコ染料や増感剤との相溶性が低下し過ぎることで顕色性能が低下すると考えられる。
上記式(3)中、R’は、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルケニル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、アミノスルホニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、又はヒドロキシル基であり、好ましくは炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、アミノスルホニル基、アミノ基、又はニトロ基であり、炭素鎖が大きすぎると疎水性が高すぎて水中での分散性が低下したり、分子量が大きくなることで融解時に分子が動きにくくなったり、ロイコ染料や増感剤との相溶性が低下し過ぎることで顕色性能が低下すると考えられること、分子量が大きくなり発色感度が十分に発揮できないことから、さらに好ましくは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルケニル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、ハロゲン原子、炭素数1のパーフルオロアルキル基、アミノスルホニル基、アミノ基、又はニトロ基であり、特に好ましくはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。R’はそれぞれ独立して上記の置換基のいずれかであるが、nが2以上の場合は全てのR’が同一の置換基であってもよいし異なってもよく、全てのR’が同一の置換基であることがより好ましい。
【0034】
R’の置換位置は、特に限定はないが、結晶性を抑制し適度なアモルファス安定性を与えることから、o-位又はm-位が好ましい。一方で、隣接するN-H部位から空間的に離れておりロイコ色素との反応性を阻害しないことから、m-位又はp-位が好ましい。適度なアモルファス性と反応性を両立し易いことから、m-位が特に好ましい。なお、nが2以上の場合は、少なくとも一つのR’がm-位であることが好ましい。
【0035】
上記式(3)中、Xは、O原子、又はS原子であり、臭気抑制や顕色剤としての安定性の観点からO原子が特に好ましい。
【0036】
上記式(3)中、Vは、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルケニル基、又は上記式(4)で表される何れかの官能基である。
【0037】
上記式(4)中、mは、0~5から選ばれる整数であり、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、特に好ましくは1もしくは0である。mが大きいと、疎水性が高くなることで水中での分散性が低下したり、分子量が大きくなることで融解時に分子が動きにくくなったり、ロイコ染料や増感剤との相溶性が低下し過ぎることで顕色性能が低下すると考えられる。Rは、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルケニル基、分岐しても分岐しなくてもよい炭素数1~8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、アミノスルホニル基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、又はヒドロキシル基であり、好ましくは炭素数1~8のアルキル基、炭素数1~8のアルケニル基、炭素数1~8のアルキルオキシ基、ハロゲン原子、パーフルオロアルキル基、アミノスルホニル基、アミノ基、又はニトロ基であり、炭素鎖が大きすぎると疎水性が高すぎて水中での分散性が低下したり、分子量が大きくなることで融解時に分子が動きにくくなったり、ロイコ染料や増感剤との相溶性が低下し過ぎることで顕色性能が低下すると考えられること、分子量が大きくなり発色感度が十分に発揮できないことから、さらに好ましくは、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルケニル基、炭素数1~3のアルキルオキシ基、ハロゲン原子、炭素数1のパーフルオロアルキル基、アミノスルホニル基、アミノ基、又はニトロ基であり、特に好ましくはフルオロ基又はトリフルオロメチル基である。Rはそれぞれ独立して上記の置換基のいずれかであるが、mが2以上の場合は全てのRが同一の置換基であってもよいし異なってもよく、全てのRが同一の置換基であることがより好ましい。
【0038】
の置換位置は、特に限定はないが、結晶性を抑制し適度なアモルファス安定性を与えることから、o-位又はm-位が好ましい。一方で、隣接するN-H部位から空間的に離れておりロイコ色素との反応性を阻害しないことから、m-位又はp-位が好ましい。適度なアモルファス性と反応性を両立し易いことから、m-位が特に好ましい。なお、mが2以上の場合は、少なくとも一つのRがm-位であることが好ましい。
【0039】
上記式(3)の具体例としては、限定するわけではないが、式(1)の具体例として示した化合物に加えて、下記が挙げられる。
【化11】

【化12】
【0040】
[顕色剤の用途]
本実施形態の顕色剤は、筆記具用のインク、また、それを収容してなる筆記具(例えば、フリクションボールペン、万年筆)等の用途に使用することができる。
【0041】
〔感熱記録材料〕
本発明の別の形態である感熱記録材料は、支持体及び支持体上に設けられた感熱記録層を有する感熱記録材料であって、該感熱記録層が、本発明の実施形態に係る顕色剤を含むものである。なお、「感熱記録材料」とは支持体の上に感熱記録層を有するものであれば、その形態は紙、フィルム、合成紙、カード等のいずれであってもよい。また、感熱記録材料は、支持体上に感熱記録層を有するものであるが、後述するように必要に応じて保護層やアンダー層・バック層・中間層等を有していてもよい。ここで「支持体上」とは、支持体の少なくとも一方の面の上をいい、通常は片面である。また、「支持体上に有する」とは支持体の少なくとも一部に当該層が存在すればよい。
【0042】
[感熱記録層]
本発明の別の形態である感熱記録材料は、感熱記録層を有し、該感熱記録層において本発明の実施形態に係る顕色剤を含むものである。感熱記録層は本発明の第一乃至第三の形態に係る顕色剤に加え、ロイコ染料、本発明の第一乃至第三の形態に係る顕色剤以外の顕色剤(以下「その他の顕色剤」と称することがある)、増感剤、安定剤、バインダー、架橋剤、顔料、滑剤、その他の添加剤等を含んでいてもよい。
【0043】
<ロイコ染料>
本実施形態において、感熱記録層はロイコ染料を含むことが好ましい。ロイコ染料は通常、塩基性であり、従来、感圧又は感熱記録紙分野で公知のもの全て使用することができる。ロイコ染料として、具体的には、トリフェニルメタン系ロイコ染料、フルオラン系ロイコ染料、フルオレン系ロイコ染料、ジビニル系ロイコ染料等が好ましい。以下に代表的な無色ないし淡色の染料(染料前駆体)の具体例を示す。また、これらのロイコ染料(ロイコ染料前駆体)は、1種のみを使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。ロイコ染料は本発明の実施形態に係る顕色剤100重量部に対し、10~200重量部で使用することが好ましく、より好ましくは15~150重量部であり、さらに好ましくは20~100重量部である。
【0044】
トリフェニルメタン系ロイコ染料としては、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド[別名クリスタルバイオレットラクトン];3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)フタリド[別名マラカイトグリーンラクトン]等が挙げられる。
【0045】
フルオラン系ロイコ染料としては、3-ジエチルアミノ-6-メチルフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-クロロフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-(m-メチルアニリノ)フルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-オクチルアニリノフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-オクチルアミノフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ベンジルアミノフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-ジベンジルアミノフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-メチルフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-クロロ-7-p-メチルアニリノフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン;3-ジエチルアミノ-7-メチルフルオラン;3-ジエチルアミノ-7-クロロフルオラン;3-ジエチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン;3-ジエチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン;3-ジエチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン;3-ジエチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン;3-ジエチルアミノ-ベンゾ[a]フルオラン;3-ジエチルアミノ-ベンゾ[c]フルオラン;3-ジブチルアミノ-6-メチル-フルオラン;3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o,p-ジメチルアニリノ)フルオラン;3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン;3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン;3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン;3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン;3-ジブチルアミノ-6-メチル-クロロフルオラン;3-ジブチルアミノ-6-エトキシエチル-7-アニリノフルオラン;3-ジブチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン;3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-p-メチルアニリノフルオラン;3-ジブチルアミノ-7-(o-クロロアニリノ)フルオラン;3-ジブチルアミノ-7-(o-フルオロアニリノ)フルオラン;3-ジ-ペンチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-ジ-ペンチルアミノ-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン;3-ジ-ペンチルアミノ-7-(m-トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン;3-ジ-ペンチルアミノ-6-クロロ-7-アニリノフルオラン;3-ジ-ペンチルアミノ-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン;3-ピロリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-ピペリジノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-(N-メチル-N-プロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-(N-メチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-(N-エチル-N-シクロヘキシルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-(N-エチル-N-キシルアミノ)-6-メチル-7-(p-クロロアニリノ)フルオラン;3-(N-エチル-p-トルイジノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-6-クロロ-7-アニリノフルオラン;3-(N-エチル-N-テトラヒドロフルフリルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-(N-エチル-N-エトキシプロピルアミノ)-6-メチル-7-アニリノフルオラン;3-シクロヘキシルアミノ-6-クロロフルオラン;2-(4-オキサヘキシル)-3-ジメチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン;2-(4-オキサヘキシル)-3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン;2-(4-オキサヘキシル)-3-ジプロピルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン;2-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;2-メトキシ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;2-クロロ-3-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;2-クロロ-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;2-ニトロ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;2-アミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;2-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;2-フェニル-6-メチル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;2-ベンジル-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;2-ヒドロキシ-6-p-(p-フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;3-メチル-6-p-(p-ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;3-ジエチルアミノ-6-p-(p-ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;2,4-ジメチル-6-[(4-ジメチルアミノ)アニリノ]フルオラン等が挙げられる。
【0046】
フルオレン系ロイコ染料としては、3,6,6’-トリス(ジメチルアミノ)スピロ[フルオレン-9,3’-フタリド];3,6,6’-トリス(ジエチルアミノ)スピロ[フルオレン-9,3’-フタリド]等が挙げられる。
【0047】
ジビニル系ロイコ染料としては、3,3-ビス[2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル]-4,5,6,7-テトラブロモフタリド;3,3-ビス[2-(p-ジメチルアミノフェニル)-2-(p-メトキシフェニル)エテニル]-4,5,6,7-テトラクロロフタリド;3,3-ビス[1,1-ビス(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル]-4,5,6,7-テトラブロモフタリド;3,3-ビス[1-(4-メトキシフェニル)-1-(4-ピロリジノフェニル)エチレン-2-イル]-4,5,6,7-テトラクロロフタリド等が挙げられる。
【0048】
その他のロイコ染料としては、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド;3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-オクチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド;3-(4-シクロヘキシルエチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド;3,3-ビス(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド;3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(3’-ニトロ)アニリノラクタム;3,6-ビス(ジエチルアミノ)フルオラン-γ-(4’-ニトロ)アニリノラクタム;1,1-ビス[2’,2’,2”,2”-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル]-2,2-ジニトリルエタン;1,1-ビス[2’,2’,2”,2”-テトラキス-(p-ジメチルアミノフェニル)-エテニル]-2-β-ナフトイルエタン;1,1-ビス[2’,2’,2”,2”-テトラキス(p-ジメチルアミノフェニル)エテニル]-2,2-ジアセチルエタン;ビス[2,2,2’,2’-テトラキス(p-ジメチルアミノフェニル)エテニル]-メチルマロン酸ジメチルエステル等が挙げられる。
【0049】
<その他の顕色剤>
感熱記録層は、本発明の効果を阻害しない範囲で、本発明の第一乃至第三の形態に係る顕色剤以外の顕色剤を含有していてもよい。その他の顕色剤としては、従来の感圧又は感熱記録紙の分野で公知のものはすべて使用可能であり、特に制限されるものではないが好ましくは電子受容性顕色剤である。その他の顕色剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。その他の顕色剤を使用する場合、その使用量は、本発明の第一乃至第三の形態に係る顕色剤100重量部に対して、好ましくは、1~5000重量部、より好ましくは、5~1000重量部、さらに好ましくは、10~500重量部である。
その他の顕色剤を使用することにより、高い発色感度を維持すると共に、耐熱性、耐湿性、耐水性等の画像保存性がさらに向上した優れた感熱記録材料とすることができる。
その他の顕色剤としては、従来の感圧又は感熱記録紙の分野で公知のものは全て使用可能であり、特に限定されない。その他の顕色剤としては、ビスフェノール系化合物、ウレア系化合物及びノボラック型フェノール系化合物が好ましい。
【0050】
ビスフェノール系化合物としては、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ジ(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)スルフィド、2,2’-チオビス(3-tert-オクチルフェノール)、2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノール)、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4-ヒドロキシフェニル-4’-ベンジルオキシフェニルスルホン、3,4-ジヒドロキシフェニル-4’-メチルフェニルスルホン、2,4-ビス(フェニルスルホニル)フェノール、特許第3913820号に記載のビスフェノールスルホン架橋型化合物、特許第4004289号に記載のビスフェノールスルホン誘導体等が挙げられる。
【0051】
ウレア系化合物としては、4,4’-ビス(3-(フェノキシカルボニルアミノ)メチルフェニルウレイド)ジフェニルスルホン、特許第4601174号に記載のN-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、特開2011-105638号公報に記載の4,4’-ビス(3-トシルウレイド)ジフェニルメタン、特開2016-165835号公報に記載のN-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、特開2017-165091号公報に記載のN-[2-(アセトキシ)フェニル]-N’-フェニルウレア、N-[3-(アセトキシ)フェニル]-N’-フェニルウレア、N-[2-(ベンゾイルオキシ)フェニル]-N’-フェニルウレア、N-[3-(ベンゾイルオキシ)フェニル]-N’-フェニルウレア、国際公開2017/047572号に記載のN-(m-トリルアミノカルボニル)-フェニルアラニン、N-(p-トルエンスルホニル)-フェニルアラニン、N-(ベンジルオキシカルボニル)-バリン、N-(m-トリルアミノカルボニル)-メチオニン、N-(m-トリルアミノカルボニル)-チロシン、N-(m-トリルアミノカルボニル)-フェニルグリシン、N-(m-トリルアミノカルボニル)-バリン、N-(m-トリルアミノカルボニル)-システイン-S-ベンジル、N-(m-トリルアミノカルボニル)-β-アラニン、N-フェニルアミノチオカルボニル-グリシルグリシン、N-(p-トルエンスルホニルアミノカルボニル)-フェニルアラニン-メチルエステル、N-(p-トルエンスルホニル)-β-アラニン、N-(p-トリルアミノカルボニル)-メチオニン、N-(フェニルアミノカルボニル)-メチオニンなどのアミノ酸誘導体等が挙げられる。
【0052】
ノボラック型フェノール系化合物としては、国際公開第02/098674号に記載のフェノール-ホルマリン縮合物等が挙げられる。
【0053】
以上に挙げた化合物の他に、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム等の無機酸性物質、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4-ヒドロキシ安息香酸ベンジル、特開平8-59603号公報に記載のアミノベンゼンスルホンアミド誘導体、ビス(4-ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5-ジ(4-ヒドロキシフェニルチオ)-3-オキサペンタン、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p-ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,4-ビス[α-メチル-α-(4’-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3-ビス[α-メチル-α-(4’-ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、国際公開第02/081229号、特開2002-301873号公報に記載の化合物、N,N’-ジ-m-クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、p-クロロ安息香酸、没食子酸ステアリル、ビス[4-(オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]2水和物、4-[2-(p-メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、4-[3-(p-トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸、5-[p-(2-p-メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸の芳香族カルボン酸、及びこれらの芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属塩との塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等が挙げられる。特開平10-258577号公報に記載の高級脂肪酸金属複塩及び多価ヒドロキシ芳香族化合物等の金属キレート錯体等が挙げられる。
【0054】
上述のその他の顕色剤の中で、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、4,4’-イソプロピリデンジフェノール、2,2’-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、特許第3913820号に記載のジフェニルスルホン架橋型化合物、特許第4004289号に記載のジフェニルスルホン誘導体、国際公開第02/098674号に記載のフェノール-ホルマリン縮合物、4,4’-ビス(3-(フェノキシカルボニルアミノ)メチルフェニルウレイド)ジフェニルスルホン、特許第4601174号に記載のN-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、特開2011-105638号公報に記載の4,4’-ビス(3-トシルウレイド)ジフェニルメタン、特開2016-165835号公報に記載のN-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミド、国際公開2017/047572号に記載のN-(m-トリルアミノカルボニル)-フェニルアラニン、N-(m-トリルアミノカルボニル)-メチオニンが好ましく、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-プロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-イソプロポキシジフェニルスルホン、4-ヒドロキシ-4’-アリルオキシジフェニルスルホン、ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)スルホン、特許第3913820号に記載のビスフェノールスルホン架橋型化合物、特許第4004289号に記載のビスフェノールスルホン誘導体、特許第4601174号に記載のN-(p-トルエンスルホニル)-N’-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)ウレア、特開2011-105638号公報に記載の4,4’-ビス(3-トシルウレイド)ジフェニルメタン、特開2016-165835号公報に記載のN-[2-(3-フェニルウレイド)フェニル]ベンゼンスルホンアミドがより好ましい。これらを使用することにより、感熱記録材料の発色感度を維持しつつ、画像保存性(耐熱性、耐可塑剤性、耐湿性、耐水性、耐グリース性)等を向上させることができる。
【0055】
<増感剤>
本実施形態では、公知の増感剤を使用してもよい。増感剤には、特に限定は無いが、例えば、1,2-ジ-(3-メチルフェノキシ)エタン、2-ベンジルオキシナフタレン、炭素数10~21の脂肪酸アミド(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等)、エチレンビスアミド、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、p-ベンジルビフェニル、ジフェニルスルホン、4-ビフェニル-p-トリルエーテル、m-ターフェニル、1,2-ジフェノキシエタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(p-クロロベンジル)、シュウ酸ジ(p-メチルベンジル)、テレフタル酸ジベンジル、p-ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、ジ-p-トリルカーボネート、フェニル-α-ナフチルカーボネート、1,4-ジエトキシナフタレン、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸フェニルエステル、o-キシレン-ビス-(フェニルエーテル)、4-(m-メチルフェノキシメチル)ビフェニル、4,4’-エチレンジオキシ-ビス-安息香酸ジベンジルエステル、ジベンゾイルオキシメタン、1,2-ジ(3-メチルフェノキシ)エチレン、ビス[2-(4-メトキシ-フェノキシ)エチル]エーテル、p-ニトロ安息香酸メチル、p-トルエンスルホン酸フェニル等を使用することができる。これらの中でも、1,2-ジ-(3-メチルフェノキシ)エタン、1,2-ジフェノキシエタン、炭素数10~21の脂肪酸アミド(例えば、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等)、2-ベンジルオキシナフタレン、ジフェニルスルホン、p-トルエンスルホンアミド及びシュウ酸-ジ-p-メチルベンジルエステルが好ましく、低エネルギーでも高い発色感度を示す1,2-ジ-(3-メチルフェノキシ)エタンが特に好ましい。これらの増感剤は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。増感剤を使用する場合、その使用量は、本発明の実施形態に係る顕色剤100重量部に対して、好ましくは25~250重量部であり、より好ましくは50~150重量部である。
【0056】
<安定剤>
感熱記録材料の画像保存性を向上させるために、感熱記録層に安定剤を使用してもよい。安定剤とは、画像の保存性を向上させる効果があるものをいう。安定剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、紫外線吸収剤(例えば、ベンゾフェノン系化合物、トリアゾール系化合物)、酸化防止剤等が挙げられる。これらの中でもヒンダードフェノール系化合物が、記録部の画像保存性(耐熱性、耐湿性、耐水性、耐可塑剤性等)を向上させる点で好ましい。
ヒンダードフェノール系化合物は、1分子中に、通常1個以上、15個以下、好ましくは2個以上、6個以下のヒドロキシフェニル基を有する化合物である。ヒンダードフェノール系化合物の分子量は、通常200以上、2000以下、好ましくは250以上、1800以下、より好ましくは300以上、1500以下である。ヒンダードフェノール系化合物の融点は、好ましくは100℃以上、300℃以下である。
さらに、ヒンダードフェノール系化合物に含まれるヒドロキシフェニル基の少なくとも1個において、フェノール性水酸基の位置を1位とした場合、2位又は6位のいずれかの炭素原子が水素原子と結合しているもの(即ち、2位又は6位に置換基が存在しないこと)が好ましい。
【0057】
ヒンダードフェノール系化合物として具体的には、特公昭39-4469号公報又は特開昭56-40629号公報に記載されているトリス(ヒドロキシフェニル)アルカン、1,1,3-トリス置換ブタン系化合物等が挙げられる。これらは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ヒンダードフェノール系化合物は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。感熱記録材料においてヒンダードフェノール系化合物を使用する場合、その含有量は、本発明の実施形態に係る顕色剤100重量部に対し、好ましくは1~100重量部、より好ましくは1~70重量部、さらに好ましくは1~50重量部である。ヒンダードフェノール系化合物の含有量がかかる範囲より少ない場合は、記録部の耐湿性、耐水性、耐熱性が低下する可能性があり、また加熱による白紙部の発色を抑制できない可能性がある。またかかる範囲よりも多い場合は、発色感度の低下、記録部の耐可塑剤性が低下する可能性がある。
【0058】
<バインダー>
感熱記録層を形成するために、バインダーを使用することが好ましい。バインダーとしては、例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アミド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリスチレン、スチレン-無水マレイン酸共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体等のスチレン共重合体、エチルセルロール及びアセチルセルロース等のセルロース誘導体、カゼイン、アラビヤゴム、酸化澱粉、エーテル化澱粉、ジアルデヒド澱粉、エステル化澱粉、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂等が挙げられる。バインダーの使用量は、感熱記録層の固形分中、5~25重量%程度が適当である。
バインダーは、一般に、溶液、乳濁液、分散液、ペースト又はこれらの組合せとして使用される。溶液、乳濁液又は分散液の溶媒、或いはペーストの媒体としては、例えば、水、アルコール、ケトン類、エステル類、炭化水素等が挙げられる。
【0059】
<架橋剤>
架橋剤としては、例えば、グリオキザール、メチロールメラミン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、ホウ砂、ホウ酸、ミョウバン、塩化アンモニウム等が挙げられる。架橋剤を使用する場合、その使用量は、本発明の実施形態に係る顕色剤100重量部に対して、好ましくは0.5~500重量部である。
【0060】
<顔料>
顔料としては、例えば、シリカ(コロイダルシリカを除く)、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の無機又は有機顔料等が挙げられる。顔料を使用する場合、その使用量は、本発明の実施形態に係る顕色剤100重量部に対して、好ましくは25~1000重量部である。
【0061】
<滑剤>
滑剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ワックス類、シリコーン樹脂類等が挙げられる。滑剤を使用する場合、その使用量は、本発明の実施形態に係る顕色剤100重量部に対して、好ましくは0.5~500重量部である。
【0062】
<その他の添加剤>
その他の添加剤としては、例えば、分散剤、消泡剤、蛍光染料等が挙げられる。その他の添加剤を使用する場合、その使用量は、本発明の実施形態に係る顕色剤100重量部に対して、好ましくは0.5~500重量部である。
【0063】
[支持体]
感熱記録材料で使用する支持体の形状、構造、大きさ、材料等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。支持体の形状としては、シート状、ロール状、平板状等が挙げられる。支持体は、単層構造であっても、積層構造であってもよい。支持体の大きさは、目的とする感熱記録材料の用途等に応じて適宜選択することができる。支持体の材料としては、例えば、プラスチックフィルム、合成紙、上質紙、古紙パルプ、再生紙、片艶紙、耐油紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、微塗工紙、樹脂ラミネート紙、剥離紙等が挙げられる。またこれらを組み合わせた複合シートを支持体として使用してもよい。
支持体の厚さとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、30~2,000μmが好ましく、50~1,000μmがより好ましい。
【0064】
[保護層]
感熱記録材料において、感熱記録層上に、保護層を設けてもよい。一般に、感熱記録層上に保護層を設けて、感熱記録材料の画像保存性を向上させると、発色感度が低下する。しかしながら、感熱記録材料に使用される顕色剤は発色感度が良好であるため、感熱記録層上に保護層を設けても、感熱紙として必要な発色感度を維持することができる。保護層に使用する各種成分の種類及び量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではない。
【0065】
[アンダー層・バック層・中間層]
感熱記録材料においては、発色感度をさらに高める目的で、主に顔料及びバインダーから構成されるアンダー層を、支持体と感熱記録層との間に設けることもできる。また感熱記録材料のカールの矯正を図るために、支持体の感熱記録層が存する面とは反対側の面に、バック層を設けてもよい。本発明の感熱記録材料における各層の一態様として、保護層/感熱記録層/アンダー層/支持体/バック層の順に積層された態様が挙げられるが、これに限定されない。
さらに、支持体と前記アンダー層との間、前記アンダー層と感熱記録層との間、感熱記録層と前記保護層との間、及び/又は支持体と前記バック層との間に、中間層を形成してもよい。
【0066】
[感熱記録材料の製造方法]
感熱記録材料は、塩基性ロイコ染料及び本発明の第一乃至第三のいずれかの形態に係る顕色剤、並びに必要に応じてその他の顕色剤、ヒンダードフェノール系化合物、増感剤等を含有する塗液を支持体の少なくとも片面上の、少なくとも一部に塗布及び乾燥して感熱記録層を形成することによって、製造することができる。この塗液は、周知慣用技術に従って塗布することができる。塗布手段に特に限定はなく、例えば、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、ベントブレードコーター、ベベルブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーター等の各種コーターを備えたオフマシン塗工機又はオンマシン塗工機を使用することができる。
【0067】
感熱記録層を形成するための塗液は、例えば、本発明の第一乃至第三のいずれかの形態に係る顕色剤、並びに必要に応じてロイコ染料、その他の顕色剤、ヒンダードフェノール系化合物、増感剤等を配合し、ボールミル、アトライター、サンドグライダー等の粉砕機又は適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒子径になるまで微粒化した後、それらにバインダー等を加えて形成することができる。この塗液に用いる溶媒としては、水、アルコール等を用いることができる。塗液の固形分は、通常、20~40重量%である。
感熱記録層の塗布量は、その組成や感熱記録材料の用途等により適宜選択することができるが、通常、乾燥重量で1~20g/m、好ましくは2~12g/mの範囲である。
【0068】
また、保護層、アンダー層、バック層及び中間層も、上述した感熱記録層と同様に、その構成成分を含む塗液を塗布及び乾燥することによって形成することができる。さらに、各層を形成した感熱記録材料に、本分野において公知の処理(例えば、スーパーカレンダー等による平滑化処理)を施してもよい。
【0069】
[感熱記録材料の用途]
本実施形態の感熱記録材料は、紙、フィルム、ICカード等の用途に好適に使用することができる。
【実施例
【0070】
以下の実施例及び比較例において、支持体の片面にアンダー層を設けた紙を使用し、該アンダー層上に感熱記録層(感熱発色層)を形成した。なお以下の実施例及び比較例における「部」及び「%」は、特段の記載が無い限り、それぞれ「重量部」及び「重量%」を示す。
【0071】
<比較合成例1>
4-メチル-N-(フェニルアミノカルボニル)ベンゼンスルホンアミドの合成
【化13】
【0072】
アニリン及びp-トルエンスルホニルイソシアネートを原料に用いて、特許文献1(特許第2679459号)と同様の操作により、目的物を得た。
重DMSO溶媒中で測定したプロトンNMRスペクトル(400MHz)におけるケミカルシフト(δppm)は下記の通りであった。
δ:2.37(s,3H),6.98-7.02(m,1H),7.23-7.27(m,2H),7.31-7.33(m,2H),7.42(d,2H,J=8.4Hz),7.85(d,2H,J=8.4Hz),8.81(s,1H),10.68(brs,1H)
【0073】
<比較合成例2>
N-(p-トルエンスルホニル)-N′-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素の合成
【化14】
【0074】
特許文献2(特許第4601174号)の合成例4を参考に、同様の操作により、目的物を得た。
重DMSO溶媒中で測定したプロトンNMRスペクトル(400MHz)におけるケミカルシフト(δppm)は下記の通りであった。
δ:2.40(s,6H),6.57-6・61(m,1H), 7.18-7.26(m,3H), 7.44(d,4H,J=8.4Hz),7.72(d,2H,J=8.4Hz), 7.85(d,2H,J=8.4Hz),9.09(s,1H),10.8(brs,1H)
【0075】
<比較合成例3>
4-メチル-N-[[(3-クロロフェニル)アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドの合成
【化15】
【0076】
比較合成例1において、アニリンの代わりに3-クロロアニリン(東京化成社より購入)を同じモル比で使用した以外は比較合成例1と同様の操作により、目的物を得た。
重DMSO溶媒中で測定したプロトンNMRスペクトル(400MHz)におけるケミカルシフト(δppm)は下記の通りであった。
δ:2.40(s,3H),7.04-7.07(m,1H),7.19-7.23(m,1H),7.25-7.29(m,1H),7.42(d,2H,J=8.4Hz),7.50-7.52(m,1),7.84(d,2H,J=8.4Hz),9.04(s,1H),10.9(brs,1H)
【0077】
<合成例1>
4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドの合成
【化16】
【0078】
比較合成例1において、アニリンの代わりに2-(トリフルオロメチル)アニリン(東京化成社より購入)を同じモル比で使用した以外は比較合成例1と同様の操作により、目的物を得た。
重クロロホルム溶媒中で測定したプロトンNMRスペクトル(400MHz)におけるケミカルシフト(δppm)は下記の通りであった。
δ:2.47(s,3H),7.25-7.30(m,1H),7.36(d,2H,J=8.2Hz),7.56(t,1H,J=8.0Hz),7.66(d,1H,J=8.0Hz),7.87(d,2H,J=8.2Hz),7.99(d,1H,J=8.0Hz),8.77(brs,1H)
【0079】
<合成例2>
4-メチル-N-[[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドの合成
【化17】
【0080】
比較合成例1において、アニリンの代わりに3-(トリフルオロメチル)アニリン(東京化成社より購入)を同じモル比で使用した以外は比較合成例1と同様の操作により、目的物を得た。
重メタノール溶媒中で測定したプロトンNMRスペクトル(400MHz)におけるケミカルシフト(δppm)は下記の通りであった。
δ:2.43(s,3H),7.32(d,1H,J=~8Hz),7.38-7.44(m,3H),7.53(d,1H,J=~8Hz),7.77(s,1H),7.92(d,2H,J=~8Hz)
重DMSO溶媒中で測定したプロトンNMRスペクトル(400MHz)におけるケミカルシフト(δppm)は下記の通りであった。
δ:2.35(s,3H),7.32(d,1H,J=7.2Hz),7.39(d,2H,J=8.4Hz),7.43-7.51(m,2H),7.77(s,1H),7.82(d,2H,J=8.4Hz),9.16(s,1H),10.95(brs,1H)
【0081】
<合成例3>
N-[[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドの合成
【化18】
【0082】
比較合成例1において、アニリンの代わりに3-(トリフルオロメチル)アニリン(東京化成社より購入)を、p-トルエンスルホニルイソシアネートの代わりにベンゾンスルホニルイソシアネートをそれぞれ同じモル比で使用した以外は比較合成例1と同様の操作により、目的物を得た。
重DMSO溶媒中で測定したプロトンNMRスペクトル(400MHz)におけるケミカルシフト(δppm)は下記の通りであった。
δ:7.32-7.34(m,1H),7.46-7.62(m,4H),7.65-7.70(m,1H),7.76-7.80(m,1H),7.92-7.95(m,2H),9.22(s,1H),11.1(brs,1H)
【0083】
<合成例4>
4-メチル-N-[[(3-フルオロフェニル)アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドの合成
【化19】
【0084】
比較合成例1において、アニリンの代わりに3-フルオロアニリン(東京化成社より購入)を同じモル比で使用した以外は比較合成例1と同様の操作により、目的物を得た。
重DMSO溶媒中で測定したプロトンNMRスペクトル(400MHz)におけるケミカルシフト(δppm)は下記の通りであった。
δ:2.35(s,3H),6.77-6.82(m,1H),7.03-7.05(m,1H),7.22-7.28(m,2H),7.39(d,2H,J=~8Hz),7.81(d,2H,J=~8Hz),9.03(s,1H),10.8(brs,1H)
【0085】
<合成例5>
4-メチル-N-[[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドの合成
【化20】
【0086】
比較合成例1において、アニリンの代わりに4-(トリフルオロメチル)アニリン(東京化成社より購入)を同じモル比で使用した以外は比較合成例1と同様の操作により、目的物を得た。
重DMSO溶媒中で測定したプロトンNMRスペクトル(400MHz)におけるケミカルシフト(δppm)は下記の通りであった。
δ:2.35(s,3H),7.38-7.42(m,2H),7.49-7.53(m,2H),7.56-7.60(m,2H),7.80-7.84(m,2H),9.23(s,1H),10.9(brs,1H)
【0087】
<合成例6>
4-メチル-N-[[[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドの合成
【化21】
【0088】
比較合成例1において、アニリンの代わりに3,5-ビス(トリフルオロメチル)アニリン(東京化成社より購入)を同じモル比で使用した以外は比較合成例1と同様の操作により、目的物を得た。
重DMSO溶媒中で測定したプロトンNMRスペクトル(400MHz)におけるケミカルシフト(δppm)は下記の通りであった。
δ:2.35(s,3H),7.38-7.42(m,2H),7.68(s,1H),7.80-7.84(m,2H),7.99(s,2H),9.51(s,1H),11.35(brs,1H)
【0089】
<感熱記録層の塗液>
下記のA液~E液を、それぞれ準備した。なお、A液及びB液においては、各成分の平均粒子径が0.5μmになるまで、アイメックス社製レディーミル(RMB-02)で湿式研磨を行った。なお、ここでの平均粒子径は、体積基準分布での平均径であり、日機装社製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(Microtrac MT3000II)で測定した。
【0090】
<A液>
・4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミド :40.0部
・ポリビニルアルコール(10%水溶液) :50.0部
・水 :10.0部
<B液>
・3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン(山本化成社製、商品名「ODB-2」) :36.5部
・ポリビニルアルコール(10%水溶液) :60.0部
・水 :3.5部
<C液>
・60%固形分の炭酸カルシウム分散液(奥多摩工業社製、商品名「タマパールTP-123CS」)
<D液>
・36%ステアリン酸亜鉛分散液(中京油脂社製、商品名「ハイドリンZ-8-36」)
<E液>
・10%ポリビニルアルコール水溶液(日本合成社製、商品名「ゴーセノールNH-18」の10%水溶液)
【0091】
[実施例1]
下記の割合で各液を混合して、感熱記録層の塗液を調製した。
A液 :18.89部
B液 :10.00部
C液 :17.87部
D液 : 6.00部
E液 :19.62部
次いで、支持体である上質紙の片面にアンダー層を設け、該アンダー層の上に、感熱記録層の乾燥重量が3g/mになるように、感熱記録層の塗液を塗布及び乾燥(送風乾燥機、60℃、2分間)して、感熱記録層を形成した。ついでアンダー層及び感熱記録層を形成した支持体を、スーパーカレンダーで平滑度が500~1000秒になるように処理して、感熱記録材料を得た。これをスーパーカレンダーで1kgf/cmの圧力をかけ平滑にし、感熱記録材料を得た。
【0092】
[実施例2]
A液の4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドを4-メチル-N-[[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドに変更したこと以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0093】
[実施例3]
A液の4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドをN-[[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドに変更したこと以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0094】
[実施例4]
A液の4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドを4-メチル-N-[[(3-フルオロフェニル)アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドに変更したこと以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0095】
[実施例5]
A液の4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドを4-メチル-N-[[[4-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドに変更したこと以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0096】
[実施例6]
A液の4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドを4-メチル-N-[[[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドに変更したこと以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0097】
[比較例1]
A液の4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドを4-メチル-N-(フェニルアミノカルボニル)ベンゼンスルホンアミドに変更したこと以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0098】
[比較例2]
A液の4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドをN-(p-トルエンスルホニル)-N′-(3-p-トルエンスルホニルオキシフェニル)尿素に変更したこと以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0099】
[比較例3]
A液の4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドを4-メチル-N-[[(3-クロロフェニル)アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドに変更したこと以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0100】
<発色感度>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH-M2/PS)を使用して階調パターンの印字を行ない、印加エネルギー0.26mJ/dot及び0.36mJ/dotでの画像濃度をX-Rite社製分光濃度・測色計(eXact)で測定した。結果を表1に示す。なお、本試験の画像濃度はその値が大きいほど発色感度が良好であることを示す。
【0101】
<耐熱性>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH-M2/PS)を使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで市松模様に印字した感熱記録材料を、温度60℃の環境下で24時間放置した後、画像濃度をX-Rite社製分光濃度・測色計(eXact)で測定した。表1には試験後の画像濃度を示した。
【0102】
<耐可塑剤性>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH-M2/PS)を使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで市松模様に印字した感熱記録材料の表裏に、三菱樹脂製のダイアラップを接触させて20℃で2時間及び/又は24時間放置した後、画像濃度をX-Rite社製分光濃度・測色計(eXact)で測定した。表1には試験後の画像濃度を示した。
【0103】
<耐湿性>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH-M2/PS)を使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで市松模様に印字した感熱記録材料を、温度40℃及び湿度90%の環境下で24時間放置した後、画像濃度をX-Rite社製分光濃度・測色計(eXact)で測定した。表1には試験後の画像濃度を示した。
【0104】
<耐水性>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH-M2/PS)を使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで市松模様に印字した感熱記録材料を、水道水に20℃で24時間浸し、風乾したあと画像濃度をX-Rite社製分光濃度・測色計(eXact)で測定した。表1には試験後の画像濃度を示した。
【0105】
<耐アルコール性>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH-M2/PS)を使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで市松模様に印字した感熱記録材料を、25%エタノール水に20分浸し、取り出して室温で24時間放置した後、画像濃度をX-Rite社製分光濃度・測色計(eXact)で測定した。表1には試験後の画像濃度を示した。
【0106】
<耐油性>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH-M2/PS)を使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで市松模様に印字した感熱記録材料の印字部に、植物性油(日清オイリオグループ株式会社製)を一滴垂らし、軽く拭きあげて20℃で24時間放置した後、印字部の印字濃度をX-Rite社製分光濃度・測色計(eXact)で測定した。表1には試験後の画像濃度を示した。
【0107】
<耐グリース性>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH-M2/PS)を使用して印加エネルギー0.36mJ/dotで市松模様に印字した感熱記録材料の印字部に、スキンミルク(ニベア花王株式会社製)を一滴垂らし、軽く拭きあげて20℃で24時間放置した後、印字部の印字濃度をX-Rite社製分光濃度・測色計(eXact)で測定した。表1には試験後の画像濃度を示した。
【0108】
【表1】
【0109】
表1の結果から明らかなように、実施例1~4は、従来の顕色剤を用いた比較例1~3に比べて発色感度が向上した。小さい熱量での発色感度が良いことから動的感度に優れていることが分かる。同時に、大きい熱量での発色感度(飽和感度)も向上していることが分かる。
また、表1の結果から明らかなように、実施例1~6は、全般的に耐久性試験後の画像濃度にも優れていることが分かる。特に、実施例1では、耐水性試験において、試験後でも高い画像濃度を維持した。また、実施例2及び3では耐熱性、耐可塑性、耐湿性、耐油性及び耐グリース性試験において、試験後でも高い画像濃度を示した。また、実施例4~6では耐可塑性、耐湿性及び耐グリース性試験において、試験後でも高い画像濃度を示した。
【0110】
以上のように、式(1)又は式(3)に該当する化合物からなる顕色剤を用いることにより、発色感度と共に耐久性試験後の画像濃度にも優れた、バランスの良い感熱記録材料を提供することができる。
【0111】
次に、以下の通り、顕色剤として使用される成分の湿式研磨後の平均粒子径を変更して上記の発色感度試験を行い、印字エネルギー0.36mJ/dotの画像濃度において、顕色剤の平均粒子径D50が0.5μmの時の画像濃度に対する相対濃度比を算出した。
【0112】
[実施例2b]
A液の4-メチル-N-[[[2-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドを4-メチル-N-[[[3-(トリフルオロメチル)フェニル]アミノ]カルボニル]ベンゼンスルホンアミドに変更したこと以外は実施例1と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0113】
[実施例7]~[実施例12]
平均粒子径D50がそれぞれ表2に示す値になるまで湿式研磨を行ったこと以外は実施例2bと同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0114】
[比較例1b]
比較例1と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0115】
[比較例3b]、[比較例4]、[比較例5]
平均粒子径D50がそれぞれ表2に示す値になるまで湿式研磨を行ったこと以外は比較例1bと同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0116】
[比較例2b]
比較例2と同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0117】
[比較例6]~[比較例8]
平均粒子径D50がそれぞれ表2に示す値になるまで湿式研磨を行ったこと以外は比較例2bと同様にして、感熱記録材料を製造した。
【0118】
【表2】
【0119】
以上のように、本発明により、粒子径が大きくなっても画像濃度の低下率が小さく、良好な画像濃度の感熱記録材料を提供することができる。