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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】表示媒体及び表示物品
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240910BHJP
   B42D 25/391 20140101ALI20240910BHJP
【FI】
G02B5/30
B42D25/391
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022517571
(86)(22)【出願日】2021-03-31
(86)【国際出願番号】 JP2021013915
(87)【国際公開番号】W WO2021220708
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2023-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2020079432
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 顕
【審査官】池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-139510(JP,A)
【文献】特開2007-279129(JP,A)
【文献】特開2014-174471(JP,A)
【文献】特開2014-141057(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0306386(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B42D 25/391
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材上に設けられた表示層とを備え、
前記表示層が、第一表示部分と第二表示部分とを含み、
前記第一表示部分と前記第二表示部分とが、接しているか、又は、200μm以下の距離をあけて隣り合っており、
前記第一表示部分の透過スペクトルが、可視波長範囲の全体における透過率の最大値及び最小値の中間にある基準値に対し、前記最大値が前記基準値+10%以下であり、前記最小値が前記基準値-10%以上であり、
前記第二表示部分の透過スペクトルが、可視波長範囲の全体における透過率の最大値及び最小値の中間にある基準値に対し、前記最大値が前記基準値+10%以下であり、前記最小値が前記基準値-10%以上であり、
前記第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと、前記第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとは、前記可視波長範囲における透過率の平均値の差が-10%以上10%以下であり、
前記表示層に波長380nm~780nmの波長範囲を有する非偏光が照射された場合、下記要件(i)~(iii)を満たし、
前記第一表示部分が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第一反射波長範囲を有する第一反射層を含み、
前記第一反射波長範囲の下限が、400nm以下であり、
前記第一反射波長範囲の上限が、700nm以上であり、
前記第二表示部分が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第二反射波長範囲を有する第二反射層を含み、
前記第二反射波長範囲の下限が、400nm以下であり、
前記第二反射波長範囲の上限が、650nm以上700nm未満である、表示媒体。
(i)前記非偏光が、前記第一表示部分で反射されて、第一反射光が得られる。
(ii)前記非偏光が、前記第二表示部分で反射されて、第二反射光が得られる。
(iii)前記第一反射光と、前記第二反射光とは、少なくとも波長範囲異なる。
【請求項2】
前記第一反射層が反射できる円偏光の回転方向Dと、第二反射層が反射できる円偏光の回転方向DIIとが、同じである、請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
前記基材、前記表示層、及び、位相差層を、この順に備え、
前記位相差層の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、請求項1又は2に記載の表示媒体。
【請求項4】
基材と、前記基材上に設けられた表示層とを備え、
前記表示層が、第一表示部分と第二表示部分とを含み、
前記第一表示部分と前記第二表示部分とが、接しているか、又は、200μm以下の距離をあけて隣り合っており、
前記第一表示部分の透過スペクトルが、可視波長範囲の全体における透過率の最大値及び最小値の中間にある基準値に対し、前記最大値が前記基準値+10%以下であり、前記最小値が前記基準値-10%以上であり、
前記第二表示部分の透過スペクトルが、可視波長範囲の全体における透過率の最大値及び最小値の中間にある基準値に対し、前記最大値が前記基準値+10%以下であり、前記最小値が前記基準値-10%以上であり、
前記第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと、前記第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとは、前記可視波長範囲における透過率の平均値の差が-10%以上10%以下であり、
前記表示層に波長380nm~780nmの波長範囲を有する非偏光が照射された場合、下記要件(i)~(iii)を満たし、
前記基材が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる偏光分離波長範囲を有する偏光分離層を含み、
前記第一表示部分が、一の方向に遅相軸を有し、
前記第一表示部分の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下であり(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、
前記第二表示部分が、前記第一表示部分の遅相軸の方向に対して非平行な方向に遅相軸を有し、
前記第二表示部分の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、表示媒体。
(i)前記非偏光が、前記第一表示部分を透過して前記基材で反射されて前記第一表示部分を透過して、第一反射光が得られる。
(ii)前記非偏光が、前記第二表示部分を透過して前記基材で反射されて前記第二表示部分を透過して、第二反射光が得られる。
(iii)前記第一反射光と、前記第二反射光とは、少なくとも偏光状態が異なる。
【請求項5】
前記基材が、有色層を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の表示媒体。
【請求項6】
下地物品と、前記下地物品に設けられた請求項1~5のいずれか一項に記載の表示媒体と、を備える、表示物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体及び表示物品に関する。
【背景技術】
【0002】
円偏光板は、一般に、右回りの回転方向を有する円偏光(即ち、右円偏光)及び左回りの回転方向を有する円偏光(即ち、左円偏光)の一方を選択的に透過させる機能を有する。このような機能を活用して、従来から、円偏光板は、真正性の識別用途に用いられることがあった(特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-128833号公報
【文献】特表2005-534112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、前記の円偏光板の機能は、真正性の識別用途以外の用途においても活用しうると考え、新たな表示態様を創出することを試みた。
【0005】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、従来には無い新たな表示態様を実現できる表示媒体及び表示物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、下記の表示媒体によれば、従来には無い新たな表示態様を実現できることを見い出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、以下のものを含む。
【0007】
〔1〕 基材と、前記基材上に設けられた表示層とを備え、
前記表示層が、第一表示部分と第二表示部分とを含み、
前記第一表示部分と前記第二表示部分とが、接しているか、又は、200μm以下の距離をあけて隣り合っており、
前記第一表示部分の透過スペクトルが、可視波長範囲の全体において、略一定であり、
前記第二表示部分の透過スペクトルが、可視波長範囲の全体において、略一定であり、
前記第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと、前記第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが、略同一であり、
前記表示層に非偏光が照射された場合、下記要件(i)~(iii)を満たす、表示媒体。
(i)非偏光が、前記第一表示部分で反射されるか、又は、前記第一表示部分を透過して前記基材で反射されて前記第一表示部分を透過して、第一反射光が得られる。
(ii)非偏光が、前記第二表示部分で反射されるか、又は、前記第二表示部分を透過して前記基材で反射されて前記第二表示部分を透過して、第二反射光が得られる。
(iii)前記第一反射光と、前記第二反射光とは、波長範囲及び偏光状態のいずれかが異なる。
〔2〕 前記第一表示部分が、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第一反射波長範囲を有する第一反射層を含み、
前記第二表示部分が、一方の回転方向DIIの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第二反射波長範囲を有する第二反射層を含み、
前記第一反射層が反射できる円偏光の回転方向Dと、前記第二反射層が反射できる円偏光の回転方向DIIとが、逆である、〔1〕に記載の表示媒体。
〔3〕 前記第一表示部分が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第一反射波長範囲を有する第一反射層を含み、
前記第一反射波長範囲の下限が、400nm以下であり、
前記第一反射波長範囲の上限が、700nm以上であり、
前記第二表示部分が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第二反射波長範囲を有する第二反射層を含み、
前記第二反射波長範囲の下限が、400nm以下であり、
前記第二反射波長範囲の上限が、650nm以上700nm未満である、〔1〕に記載の表示媒体。
〔4〕 前記基材が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる偏光分離波長範囲を有する偏光分離層を含み、
第一表示部分の波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/2}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/2}×550nm+30nm」以下であり(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、
第二表示部分の波長550nmにおける面内レターデーションが、0nm以上30nm以下である、〔1〕に記載の表示媒体。
〔5〕 前記基材、前記表示層、及び、位相差層を、この順に備え、
前記位相差層の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔6〕 前記基材が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる偏光分離波長範囲を有する偏光分離層を含み、
前記第一表示部分が、一の方向に遅相軸を有し、
前記第一表示部分の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下であり(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、
前記第二表示部分が、前記第一表示部分の遅相軸の方向に対して非平行な方向に遅相軸を有し、
前記第二表示部分の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、〔1〕に記載の表示媒体。
〔7〕 前記基材が、有色層を備える、〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の表示媒体。
〔8〕 下地物品と、前記下地物品に設けられた〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の表示媒体と、を備える、表示物品。
【0008】
上述した課題は、下記の表示媒体によっても解決できる。
〔9〕 基材と、前記基材上に設けられた表示層とを備え、
前記表示層が、第一表示部分と第二表示部分とを含み、
前記第一表示部分と前記第二表示部分とが、接しているか、又は、200μm以下の距離をあけて隣り合っており、
前記第一表示部分が、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第一反射波長範囲を有する第一反射層を含み、
前記第一反射波長範囲が、可視波長範囲の全体を含み、
前記第二表示部分が、一方の回転方向DIIの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第二反射波長範囲を有する第二反射層を含み、
前記第二反射波長範囲が、可視波長範囲の全体を含み、
前記第一反射層が反射できる円偏光の回転方向Dと、前記第二反射層が反射できる円偏光の回転方向DIIと、が、逆である、表示媒体。
〔10〕 基材と、前記基材上に設けられた表示層とを備え、
前記表示層が、第一表示部分と第二表示部分とを含み、
前記第一表示部分と前記第二表示部分とが、接しているか、又は、200μm以下の距離をあけて隣り合っており、
前記第一表示部分が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第一反射波長範囲を有する第一反射層を含み、
前記第一反射波長範囲の下限が、400nm以下であり、
前記第一反射波長範囲の上限が、700nm以上であり、
前記第二表示部分が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第二反射波長範囲を有する第二反射層を含み、
前記第二反射波長範囲の下限が、400nm以下であり、
前記第二反射波長範囲の上限が、650nm以上700nm未満である、表示媒体。
〔11〕 基材と、前記基材上に設けられた表示層とを備え、
前記表示層が、第一表示部分と第二表示部分とを含み、
前記第一表示部分と前記第二表示部分とが、接しているか、又は、200μm以下の距離をあけて隣り合っており、
前記基材が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる偏光分離波長範囲を有する偏光分離層を含み、
第一表示部分の波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/2}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/2}×550nm+30nm」以下であり(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、
第二表示部分の波長550nmにおける面内レターデーションが、0nm以上30nm以下である、表示媒体。
〔12〕 基材と、前記基材上に設けられた表示層とを備え、
前記表示層が、第一表示部分と第二表示部分とを含み、
前記第一表示部分と前記第二表示部分とが、接しているか、又は、200μm以下の距離をあけて隣り合っており、
前記基材が、一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる偏光分離波長範囲を有する偏光分離層を含み、
前記第一表示部分が、一の方向に遅相軸を有し、
前記第一表示部分の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下であり(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、
前記第二表示部分が、前記第一表示部分の遅相軸の方向に対して非平行な方向に遅相軸を有し、
前記第二表示部分の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下である(ただし、nは、0以上の整数を表す。)、表示媒体。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来には無い新たな表示態様を実現できる表示媒体及び表示物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を模式的に示す上面図である。
図2図2は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を、図1の線II-IIで切った断面を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体の、第一表示部分と第二表示部分との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の第一実施形態の変形例としての表示媒体を模式的に示す断面図である。
図5図5は、本発明の第一実施形態の変形例としての表示媒体の、第一表示部分と第二表示部分との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。
図6図6は、本発明の第一実施形態の別の変形例としての表示媒体を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を模式的に示す上面図である。
図8図8は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を、図7の線VIII-VIIIで切った断面を模式的に示す断面図である。
図9図9は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体の、第一表示部分と第二表示部分との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。
図10図10は、本発明の第二実施形態の変形例としての表示媒体を模式的に示す断面図である。
図11図11は、本発明の第二実施形態の別の変形例としての表示媒体を模式的に示す断面図である。
図12図12は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体を模式的に示す上面図である。
図13図13は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体を、図12の線XIII-XIIIで切った断面を模式的に示す断面図である。
図14図14は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体の、第一表示部分と第二表示部分との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。
図15図15は、本発明の第三実施形態の変形例としての表示媒体を模式的に示す断面図である。
図16図16は、本発明の第三実施形態の変形例としての表示媒体の、第一表示部分と第二表示部分との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。
図17図17は、本発明の第三実施形態の別の変形例としての表示媒体を模式的に示す断面図である。
図18図18は、本発明の第四実施形態に係る表示媒体を模式的に示す上面図である。
図19図19は、本発明の第四実施形態に係る表示媒体を、図18の線XX-XXで切った断面を模式的に示す断面図である。
図20図20は、本発明の第四実施形態に係る表示媒体の、第一表示部分と第二表示部分との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。
図21図21は、本発明の第四実施形態の変形例としての表示媒体を模式的に示す断面図である。
図22図22は、実施例101で製造した表示媒体を模式的に示す上面図である。
図23図23は、実施例102で製造した表示媒体を模式的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態及び例示物を示して本発明について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において、任意に変更して実施できる。
【0012】
以下の説明において、可視波長範囲とは、波長400nm以上650nm以下の波長範囲を表す。前記の400nm以上650nmの波長範囲は、「特定波長範囲」ということがある。
【0013】
以下の説明において、正面方向とは、別に断らない限り、厚み方向に平行な方向を表す。
【0014】
以下の説明において、面内方向とは、別に断らない限り、厚み方向に垂直な方向を表す。
【0015】
以下の説明において、傾斜方向とは、別に断らない限り、厚み方向に平行でも垂直でもない方向を表す。
【0016】
以下の説明において、層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0017】
以下の説明において、「円偏光」には、本発明の効果を著しく損なわない範囲であれば、楕円偏光も包含されうる。
【0018】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±4°、好ましくは±3°、より好ましくは±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0019】
以下の説明において、「長尺」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有する形状をいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムの形状をいう。長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下でありうる。
【0020】
[1.表示媒体の概要]
本発明の表示媒体は、基材と、この基材上に設けられた表示層とを備える。表示層は、基材上に直接又は間接的に設けられうる。表示層が基材上に「直接」設けられる、とは、基材と表示層との間に、他の層が無いことを言う。また、表示層が基材上に「間接的に」設けられる、とは、基材と表示層との間に、他の層があることをいう。
【0021】
表示層は、第一表示部分と、前記第一表示部分とは面内方向において異なる位置に設けられた第二表示部分とを含む。第一表示部分と第二表示部分とは、互いに接している。又は、第一表示部分と第二表示部分とは、小さい距離をあけて隣り合っている。前記の距離は、具体的には、通常200μm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、更に好ましくは20μm以下、特に好ましくは10μm以下である。中でも、第一表示部分と第二表示部分とが距離をあけずに接していることが特に好ましい。
【0022】
前記の表示媒体では、第一表示部分と第二表示部分とが、(1)接しているか、又は(2)小さい距離をあけて隣り合っているので、非偏光下における肉眼による観察では、第一表示部分と第二表示部分との境界の視認が難しい。よって、通常、第一表示部分及び第二表示部分を区別して視認することの困難性が高められる。
【0023】
非偏光下における肉眼による観察の際に第一表示部分と第二表示部分との視覚による区別の困難性を高める観点から、通常、第一表示部分の透過スペクトルは、可視波長範囲の全体において、略一定である。「透過スペクトルが可視波長範囲の全体において略一定」とは、可視波長範囲における光の透過率が波長に依らず略一定であることを表し、具体的には、可視波長範囲における透過率のバラツキが小さいことを表す。前記のバラツキの大きさは、通常±10%、好ましくは±5%である。すなわち、可視波長範囲における透過率の最大値及び最小値の中間にある基準値(基準値=(最小値+最大値)/2)に対し、最大値は、通常は基準値+10%以下であり、好ましくは基準値+5%以下である。また、最小値は、通常は基準値-10%以上であり、好ましくは基準値-5%以上である。第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲の全体において略一定である場合、第一表示部分は、無彩色でありうる。本発明者の検討によれば、有彩色に比べて、無彩色の第一表示部分は、非偏光下における肉眼による観察の際に、第二表示部分との視覚による区別の困難性を効果的に高めることができる。透過率及び透過スペクトルは、別に断らない限り、分光光度計(例えば、日本分光社製「V-550」)を用いて測定しうる。
【0024】
非偏光下における肉眼による観察の際に第一表示部分と第二表示部分との視覚による区別の困難性を高める観点から、通常、第二表示部分の透過スペクトルは、可視波長範囲の全体において、略一定である。第二表示部分に係る「透過スペクトルが可視波長範囲の全体において略一定」の意味は、第一表示部分と同じである。第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲の全体において略一定である場合、第二表示部分は、無彩色でありうる。本発明者の検討によれば、有彩色に比べて、無彩色の第二表示部分は、非偏光下における肉眼による観察の際に、第一表示部分との視覚による区別の困難性を効果的に高めることができる。
【0025】
非偏光下における肉眼による観察の際に第一表示部分と第二表示部分との視覚による区別の困難性を高める観点から、通常、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと、第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとは、略同一である。「可視波長範囲における透過スペクトルが略同一」とは、可視波長範囲における光の透過率の平均値が同じであるか近いことを表し、具体的には、可視波長範囲における透過率の平均値の差が小さいことを表す。前記の平均値の差の大きさは、通常±10%、好ましくは±5%である。すなわち、可視波長範囲における透過率の平均値の差は、通常-10%以上、好ましくは-5%以上であり、通常10%以下、好ましくは5%以下である。第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一である場合、第一表示部分の色相と第二表示部分の色相とは、同じか近いものでありうる。色相が同じか近い第一表示部分と第二表示部分とは、非偏光下における肉眼による観察の際に、視覚による区別の困難性を高めることができる。特に、第一表示部分及び第二表示部分が無彩色である場合に、視覚による区別の困難性を効果的に高めることができる。
【0026】
本発明者の検討によれば、第一表示部分及び第二表示部分が有彩色である場合、第一表示部分及び第二表示部分の透過スペクトルが略同一であっても、極小さな違いがあれば、第一表示部分及び第二表示部分を視覚によって容易に区別できることが判明している。例えば、特許文献1に記載のように第一表示部分と第二表示部分とが同系色である場合でも、その色が有彩色であると、第一表示部分及び第二表示部分は視覚によって容易に区別されうる。このような有彩色での事情に鑑みれば、無彩色の第一表示部分及び第二表示部分が非偏光下における肉眼による観察の際に視覚による区別の困難性を効果的に高められることは、デザイン上、有益である。
【0027】
特定の条件での観察の際に第一表示部分と第二表示部分との視覚による区別を明確にする観点から、表示媒体は、表示層に非偏光が照射された場合、下記要件(i)~(iii)を満たすことが望ましい。
(i)非偏光が、第一表示部分で反射されるか、又は、第一表示部分を透過して基材で反射されて再び第一表示部分を透過して、第一反射光が得られる。
(ii)非偏光が、第二表示部分で反射されるか、又は、第二表示部分を透過して基材で反射されて再び第二表示部分を透過して、第二反射光が得られる。
(iii)第一反射光と、第二反射光とが、波長範囲及び偏光状態のいずれかが異なる。
【0028】
前記の要件(i)は、基材とは反対側にある光源からの非偏光によって表示層が照らされた場合に、第一反射光が得られることを表す。例えば、第一表示部分が円偏光分離機能を有している場合、非偏光が第一表示部分で反射されて、第一反射光が得られる。「円偏光分離機能」とは、右回り及び左回りのうちの一方の回転方向の円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させる機能を意味する。また、例えば、第一表示部分が非偏光を透過しうる場合、非偏光が第一表示部分を透過して基材で反射され、再び第一表示部分を透過して、第一反射光が得られる。
【0029】
前記の要件(ii)は、基材とは反対側にある光源からの非偏光によって表示層が照らされた場合に、第二反射光が得られることを表す。例えば、第二表示部分が円偏光分離機能を有している場合、非偏光が第二表示部分で反射されて、第二反射光が得られる。また、例えば、第二表示部分が非偏光を透過しうる場合、非偏光が第二表示部分を透過して基材で反射され、再び第二表示部分を透過して、第二反射光が得られる。
【0030】
前記の要件(iii)は、第一反射光と、第二反射光とが、波長範囲及び偏光状態のいずれかが異なることを表す。前記のように第一反射光と第二反射光とが波長範囲及び偏光状態のいずれかが異なる場合、特定の条件での観察において、観察者は、第一表示部分と第二表示部分とを視覚によって明確に区別できる。
【0031】
したがって、上述した要件(i)~(iii)が満たされる場合、非偏光下における肉眼による観察では第一表示部分と第二表示部分とを視覚によって区別することが難しいが、特定の条件での観察によっては第一表示部分と第二表示部分とを視覚によって明確に区別できる。したがって、上述した要件を満たす第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層を備える表示媒体によれば、従来には無かった新たな表示態様を実現でき、複雑且つ自由度の高い意匠を作成することができる。特に、非偏光下における肉眼による観察では第一表示部分と第二表示部分との区別が困難でありながら、特定の条件での観察によっては区別が明確となることは、一般の観察者には意外性のある表示となりうるので、その観察者に大きなインパクトを与えることが期待できる。
以下、上述した表示媒体の実施形態を、図面を示して説明する。
【0032】
[2.第一実施形態]
図1は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を模式的に示す上面図である。また、図2は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体を、図1の線II-IIで切った断面を模式的に示す断面図である。
図1及び図2に示すように、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10は、基材100と、この基材100上に設けられた表示層200とを備える。
【0033】
[2.1.基材100]
基材100は、表示層200を支持しうる部材であり、通常、支持層110を備える。この支持層110を形成する材料に特に制限は無く、有機材料、無機材料、及び、それらを組み合わせた複合材料を用いうる。支持層110の材料の具体例としては、樹脂、紙、布、皮革、金属、合金、ガラス等が挙げられる。中でも、表示媒体10の製造が容易である点、及び、柔軟性に優れる点から、樹脂が好ましい。
【0034】
樹脂としては、通常、熱可塑性樹脂を用いる。この熱可塑性樹脂は、重合体と、必要に応じて任意の成分を含みうる。重合体としては、例えば、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、ポリメチルメタクリレート、ポリスルホン、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、及び脂環式構造含有重合体などが挙げられる。また、重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び加工性の観点から、脂環式構造含有重合体が好適である。脂環式構造含有重合体は、主鎖及び/又は側鎖に脂環式構造を有する重合体であり、例えば、特開2007-057971号公報に記載のものを用いうる。
【0035】
支持層110の面内レターデーションは、制限は無い。本実施形態では、面内レターデーションの小さい光学等方性の支持層110を用いた例を示して説明する。この光学等方性の支持層110の測定波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは0~30nm、より好ましくは0~20nm、特に好ましくは0~10nmでありうる。
【0036】
基材100は、光を透過させる透明な部材であってもよく、光を透過させない非透明な部材であってもよい。本実施形態では、光を透過させうる透明な基材100を例に示して説明する。
【0037】
基材100の形状は、制限は無い。基材100の形状は、板状、シート状、フィルム状等でありうる。中でも、表示媒体10を薄くする観点から、フィルム状の基材100が好ましい。特に、長尺のフィルムを基材100として用いた場合、ロールトゥロール法を用いて表示媒体10を効率良く製造することが可能である。
【0038】
基材100の厚みは、特段の制限は無いが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは500μm以下、特に好ましくは200μm以下である。
【0039】
[2.2.表示層200]
表示層200は、基材100の面100Uに設けられる。表示層200は、基材100の表面100Uの全体に設けられていてもよいが、通常は、基材100の表面100Uの一部に設けられる。
例えば、厚み方向から見て特定の形状を有する表面100Uのエリアに、表示層200が設けられていてもよい。この場合、表示層200が、厚み方向から見て特定の形状を有することができる。よって、表示媒体10を観察した観察者が、当該形状を視認することが可能となる。
また、例えば、厚み方向から見て特定の形状を有する表面100Uのエリア以外のエリアに、表示層200が設けられていてもよい。この場合、表示層200が設けられていないエリアが、厚み方向から見て特定の形状を有することができる。よって、表示媒体10を観察した観察者が、当該形状を視認することが可能となる。
したがって、いずれの場合も、表示媒体10のデザイン性を高めることができる。
【0040】
前記の特定の形状としては、例えば、文字、数字、記号、絵等が挙げられる。ただし、特定の形状は、前記の例に限定されない。本実施形態では、図1に示すように、厚み方向から見て矩形の形状を有する表示層200が設けられた例を示して説明する。
【0041】
表示層200は、第一表示部分210と第二表示部分220とを含む。第一表示部分210と第二表示部分220とは、接しているか、又は、小さい距離をあけて隣り合っている。本実施形態では、第一表示部分210と第二表示部分220とが、距離をあけずに接している例を示して説明する。
【0042】
厚み方向から見た第一表示部分210の形状及び第二表示部分220の形状は、表示媒体10のデザインに応じて設定することが好ましい。これらの形状としては、例えば、文字、数字、記号、絵等が挙げられる。ただし、第一表示部分210の形状及び第二表示部分220の形状は、前記の例に限定されない。中でも、第一表示部分210及び第二表示部分220の一方の全周に、第一表示部分210及び第二表示部分220の他方が接するように形状を設定することが、デザイン性の観点から好ましい。本実施形態では、図1に示すように、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示部分210と、この第一表示部分210の周囲に設けられた矩形の形状を有する第二表示部分220とを含む表示層200を例に示して説明する。
【0043】
本実施形態では、図2に示すように、第一表示部分210は、円偏光分離機能を発揮できる第一反射波長範囲を有する第一反射層211を含む。よって、第一反射層211は、第一反射波長範囲において、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。したがって、通常は、第一反射層211を含む第一表示部分210が円偏光分離機能を発揮できるので、第一表示部分210は、第一反射波長範囲において、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。第一反射波長範囲における第一反射層211及び第一表示部分210の非偏光に対する反射率は、通常30%~50%、好ましくは40%~50%である。反射率は、別に断らない限り、紫外可視分光光度計(日本分光社製「UV-Vis 770」)により積分球を用いて測定しうる。
【0044】
第一反射波長範囲は、可視波長範囲の全体を含む。よって、通常、第一反射波長範囲の下限は400nm以下であり、第一反射波長範囲の上限は650nm以上である。通常30%~50%の反射率を示す第一反射波長範囲が可視波長範囲の全体を含むので、第一反射層211は、無彩色の銀色でありうる。よって、この第一反射層211を含む第一表示部分210は、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有する銀色の部分でありうる。
【0045】
第二表示部分220は、図2に示すように、円偏光分離機能を発揮できる第二反射波長範囲を有する第二反射層221を含む。よって、第二反射層221は、第二反射波長範囲において、一方の回転方向DIIの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。したがって、通常は、第二反射層221を含む第二表示部分220が円偏光分離機能を発揮できるので、第二表示部分220は、第二反射波長範囲において一方の回転方向DIIの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。第二反射波長範囲における第二反射層221及び第二表示部分220の非偏光に対する反射率は、通常30%~50%、好ましくは40%~50%である。
【0046】
第二反射波長範囲は、可視波長範囲の全体を含む。よって、通常、第二反射波長範囲の下限は400nm以下であり、第二反射波長範囲の上限は650nm以上である。通常30%~50%の反射率を示す第二反射波長範囲が可視波長範囲の全体を含むので、第二反射層221は、無彩色の銀色でありうる。よって、この第二反射層221を含む第二表示部分220は、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有する銀色の部分でありうる。
【0047】
また、第一表示部分210の可視波長範囲における透過スペクトルと、第二表示部分220の可視波長範囲における透過スペクトルと、は、略同一となっている。よって、非偏光下における肉眼による観察の際に、第一表示部分と第二表示部分との視覚による区別の困難性を高めることができる。
【0048】
本実施形態では、第一反射層211が反射できる円偏光の回転方向Dと、第二反射層221が反射できる円偏光の回転方向DIIと、が、逆である。したがって、表示層200は、上述した要件(i)~(iii)を満たすことができる。具体的には、表示層200に非偏光が照射された場合、非偏光の一部が、第一表示部分210で反射されて、回転方向Dの円偏光として第一反射光が得られる。また、非偏光の一部が、第二表示部分で反射されて、回転方向DIIの円偏光として第二反射光が得られる。よって、第一反射光と、第二反射光とが、偏光状態の異なる円偏光(詳細には、回転方向が異なる円偏光)となりうる。
【0049】
第一反射層211及び第二反射層221は、例えば、液晶性化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成できる。ここで、便宜上「液晶組成物」と称する材料は、2種類以上の物質の混合物のみならず、単一の物質からなる材料をも包含する。また、以下の説明において、液晶組成物の硬化物で形成されている層を「液晶硬化層」と呼ぶことがある。詳細には、液晶組成物に含まれる液晶性化合物をコレステリック規則性を有するように配向させた状態で、その液晶組成物を硬化させた硬化物によれば、円偏光分離機能を有する層を形成できる。
【0050】
コレステリック規則性とは、ある平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。即ち、ある層の内部の分子がコレステリック規則性を有する場合、分子は、層の内部のある第一の平面上では分子軸が一定の方向になるよう並ぶ。層の内部の、当該第一の平面に重なる次の第二の平面では、分子軸の方向が、第一の平面における分子軸の方向と、少し角度をなしてずれる。当該第二の平面にさらに重なる次の第三の平面では、分子軸の方向が、第二の平面における分子軸の方向から、さらに角度をなしてずれる。このように、重なって配列している平面において、当該平面中の分子軸の角度が順次ずれて(ねじれて)いく。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は、通常はらせん構造であり、光学的にカイラルな構造である。前記の液晶組成物の硬化物には、コレステリック規則性を有するように配向した液晶性化合物の分子が含まれるので、その硬化物で形成された層は、通常、円偏光分離機能を発揮できる。この層における反射は、円偏光を、そのキラリティを維持したまま反射する。液晶組成物の硬化物に含まれる「液晶性化合物」には、未反応の液晶性化合物だけでなく、重合反応及び架橋反応等の反応をした液晶性化合物も含まれる。また、以下の説明では、コレステリック規則性を有するように液晶性化合物を配向させた状態で液晶組成物を硬化させた硬化物で形成された層を「CLC層」ということがある。
【0051】
CLC層が円偏光分離機能を発揮する具体的な波長は、一般に、CLC層におけるらせん構造のピッチに依存する。らせん構造のピッチとは、らせん構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離である。このらせん構造のピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。ピッチを調整する方法としては、例えば、特開2009-300662号公報に記載の方法を用いうる。具体例を挙げると、コレステリック液晶組成物において、カイラル剤の種類を調整したり、カイラル剤の量を調整したりする方法が挙げられる。特に、層内において、らせん構造のピッチの大きさが連続的に変化していると、単一のCLC層により広い波長範囲に亘る円偏光分離機能を得ることができる。
【0052】
第一反射層211及び第二反射層221のように広い波長範囲で円偏光分離機能を発揮できるCLC層としては、例えば、(i)らせん構造のピッチの大きさを段階的に変化させたCLC層、及び、(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたCLC層、等が挙げられる。
【0053】
(i)らせん構造のピッチを段階的に変化させたCLC層は、例えば、らせん構造のピッチが異なる複数のCLC層を積層することによって得ることができる。積層は、予めらせん構造のピッチが異なる複数のCLC層を作製した後に、各層を接着剤を介して貼り合わせることによって行なうことができる。または、積層は、あるCLC層を形成した上に、別のCLC層を順次形成していくことによって行なうこともできる。
【0054】
(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたCLC層は、例えば、液晶組成物の層に、1回以上の活性エネルギー線の照射処理及び/又は加温処理を含む広帯域化処理を施した後で、その液晶組成物の層を硬化させて得ることができる。前記の広帯域化処理によれば、らせん構造のピッチを厚み方向において連続的に変化させることができるので、CLC層が円偏光分離機能を発揮できる波長範囲(反射帯域)を拡張することができ、そのため、広帯域化処理と呼ばれる。
【0055】
CLC層は、1層のみからなる単層構造の層でもよく、2層以上の層を含む複層構造の層であってもよい。CLC層に含まれる層の数は、製造のし易さの観点から、1~100であることが好ましく、1~20であることがより好ましい。
【0056】
CLC層の製造方法に制限はないが、通常は、コレステリック液晶組成物を用いて製造しうる。コレステリック液晶組成物とは、当該液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させた場合に、液晶性化合物がコレステリック規則性を有した液晶相(コレステリック液晶相)を呈することができる組成物をいう。具体的なCLC層の製造方法としては、例えば、特開2014-174471号公報、特開2015-27743号公報に記載の方法が挙げられる。このようなコレステリック液晶組成物を用いる製造方法では、コレステリック規則性におけるねじれ方向は、液晶組成物が含むカイラル剤の構造により適宜選択できる。例えば、ねじれを右回りとする場合には、右旋性を付与するカイラル剤を含むコレステリック液晶組成物を用い、ねじれ方向を左回りとする場合には、左旋性を付与するカイラル剤を含むコレステリック液晶組成物を用いうる。
【0057】
第一表示部分210は、その全体として、第一反射層211を含んでいてもよい。この場合、第一表示部分210それ自体を、CLC層として形成しうる。また、第二表示部分220は、その全体として、第二反射層221を含んでいてもよい。この場合、第二表示部分220それ自体を、CLC層として形成しうる。このような第一表示部分210及び第二表示部分220は、例えば、CLC層を用意する工程と、その用意したCLC層を基材100の面100Uに貼り合わせる工程と、を含む方法(転写法)によって、形成できる。しかし、第一表示部分210及び第二表示部分220の形成を簡単にする観点では、第一表示部分210及び第二表示部分220が、それぞれ、フレーク状の第一反射層211及び第二反射層221を含むことが好ましい。
【0058】
フレーク状の第一反射層211及び第二反射層221は、円偏光分離機能を発揮できるフレーク状の顔料として用いることができる。そして、これらの顔料を含む層は、第一反射層211及び第二反射層221自体と同じく、円偏光分離機能を発揮できる。顔料がフレーク状であるので、当該顔料を含む層を形成する際に与えられるせん断力により、通常は、それら顔料の主面と、当該顔料を含む層の層平面とは、平行に又は平行に近くなるように配向される。よって、顔料が効果的に受光できるので、第一表示部分210及び第二表示部分220の反射能力を高めることができる。フレーク状の第一反射層211及び第二反射層221としては、例えば、上述したCLC層の破砕物として得られるCLC層のフレークを用いうる。このようなフレークは、例えば、特許第6142714号公報に記載の製造方法により製造できる。
本実施形態では、図2に示すように、CLC層のフレークとしての第一反射層211及び第二反射層221を顔料として含む第一表示部分210及び第二表示部分220を例に示して説明する。
【0059】
顔料としてのフレークの粒径は、装飾性を得る上で、1μm以上が好ましい。中でも、フレークの粒径は、当該フレークを含む層の厚み以上であることが望ましい。この場合、各フレークを、フレークの主面と当該フレークを含有する層の層平面とが平行又は鋭角をなすように配向させやすい。そのため、フレークが効果的に受光できるようになるので、当該フレークを含有する層の反射能力を高めることができる。フレークの粒径の上限は、成形性及び印刷適性を得る観点から、500μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。ここで、フレークの粒径とは、当該フレークの同面積の円の直径をいう。
【0060】
第一表示部分210及び第二表示部分220は、第一反射層211及び第二反射層221等の顔料に組み合わせて、任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分としては、顔料を結着させるバインダーが挙げられる。バインダーとしては、例えば、ポリエステル系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリスチレン系ポリマー、ポリアミド系ポリマー、ポリウレタン系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー、ポリカーボネート系ポリマー、ポリビニル系ポリマー等の重合体が挙げられる。バインダーの量は、顔料100重量部に対して、好ましくは20重量部以上、より好ましくは40重量部以上、特に好ましくは60重量部以上であり、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは800重量部以下、特に好ましくは600重量部以下である。
【0061】
フレーク状の第一反射層211を含む第一表示部分210は、例えば、フレーク状の顔料としての第一反射層211、溶媒、及び、必要に応じて任意の成分を含むインキを塗布し、乾燥させることにより、製造しうる。また、フレーク状の第二反射層221を含む第二表示部分220は、例えば、フレーク状の顔料としての第二反射層221、溶媒、及び、必要に応じて任意の成分を含むインキを塗布し、乾燥させることにより、製造しうる。塗布方法に制限は無いが、効率的な表示媒体10の製造の観点では、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法が好ましい。中でも、第一表示部分210及び第二表示部分220を隙間なく形成する観点では、毛抜き(trapping)印刷法が特に好ましい。具体例を挙げると、表示層200は、基材100上に、フレーク状の第一反射層211を含む第一のインキを印刷し、乾燥して、第一表示部分210を形成する工程と;基材100上に、フレーク状の第二反射層221を含む第二のインキを印刷し、乾燥して、第二表示部分220を形成する工程と;を含む方法により、形成できる。
【0062】
インキが含みうる溶媒としては、水等の無機溶媒を用いてもよく、ケトン溶媒、アルキルハライド溶媒、アミド溶媒、スルホキシド溶媒、ヘテロ環化合物、炭化水素溶媒、エステル溶媒、およびエーテル溶媒などの有機溶媒を用いてもよい。溶媒の量は、顔料100重量部に対して、好ましくは40重量部以上、より好ましくは60重量部以上、特に好ましくは80重量部以上であり、好ましくは1000重量部以下、より好ましくは800重量部以下、特に好ましくは600重量部以下である。
【0063】
前記のインキは、バインダーとしての重合体の代わりに、又は重合体と組み合わせて、その重合体の単量体を含みうる。この場合、インキを塗布し、乾燥させた後で単量体を重合させることにより、第一表示部分210及び第二表示部分220を形成できる。単量体を含む場合は、インキは、重合開始剤を含むことが好ましい。
【0064】
表示層200、及び、当該表示層200に含まれる第一表示部分210及び第二表示部分220の厚みは、好ましくは2μm以上、より好ましくは3μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。表示層200の厚みが前記範囲にある場合に、表示層200がその光学特性を充分に発揮できる。
【0065】
[2.3.第一実施形態に係る表示媒体10の表示態様]
図3は、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10の、第一表示部分210と第二表示部分220との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。この図3では、第一表示部分210及び第二表示部分220を含む表示層200において反射する光の経路を概略的に示す。実際の表示媒体10では、下記に説明する以外にも、様々な光の吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を概略的に説明する。また、図3では、第一反射層211及び第二反射層221の図示を省略する。
【0066】
一表示態様として、図3に示すように、表示媒体10の表示層200側に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光LI1が照射された場合を例に挙げて説明する。この場合、第一表示部分210が形成されたエリアでは、回転方向Dの円偏光が第一表示部分210で反射され、第一反射光LR1が得られる。また、反射された円偏光以外の光LT1は、第一表示部分210を透過し、更に基材100を透過して、表示媒体10の外部に出ていく。他方、第二表示部分220が形成されたエリアでは、回転方向DIIの円偏光が第二表示部分220で反射され、第二反射光LR2が得られる。また、反射された円偏光以外の光LT2は、第二表示部分220を透過し、更に基材100を透過して、表示媒体10の外部に出ていく。
【0067】
通常、観察者は、前記の第一反射光LR1及び第二反射光LR2を見ることにより、表示層200の像を視認する。観察者が肉眼で観察する場合、その観察者は、第一反射光LR1及び第二反射光LR2の両方を見ることができる。よって、観察者は、第一表示部分210及び第二表示部分220の両方の像を視認できる。ただし、第一表示部分210及び第二表示部分220を区別して視認することの困難性が高いので、観察者にとって、第一表示部分210及び第二表示部分220とを見分けることは難しい。
【0068】
観察者が、右円偏光及び左円偏光の一方のみを透過させる円偏光板を通して観察する場合、その観察者は、第一反射光LR1及び第二反射光LR2の一方のみを見ることができるので、第一表示部分210及び第二表示部分220の片方のみの像を視認できる。具体的には、回転方向Dの円偏光のみを透過させる円偏光板を通して観察する場合、その観察者は、第一反射光LR1を見て第一表示部分210を視認できるが、第二表示部分220は視認できない。また、回転方向DIIの円偏光のみを透過させる円偏光板を通して観察する場合、その観察者は、第二反射光LR2を見て第二表示部分220を視認できるが、第一表示部分210は視認できない。
【0069】
このように、本発明の第一実施形態に係る表示媒体10は、非偏光下での肉眼による観察で視認される表示層200の像と、特定の条件での観察(例えば、円偏光板を通した観察)で視認される表示層200の像とを、相違させることができる。よって、複雑且つ自由度の高い意匠を作成することができ、更には意外性のある表示態様を実現できるので、観察者に大きなインパクトを与えることができる。特に、非偏光下での肉眼による観察では第一表示部分210と第二表示部分220とを区別して視認することが困難でありながら、特定の条件での観察では区別して視認することが可能となる。
【0070】
[2.4.第一実施形態に係る表示媒体の変形例]
第一実施形態に係る表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、表示媒体は、上述した基材100及び表示層200に組み合わせて、更に任意の要素を備えていてもよい。
【0071】
図4は、本発明の第一実施形態の変形例としての表示媒体11を模式的に示す断面図である。図4においては、図1図3に示した表示媒体10と同じ要素は、図1図3で用いたのと同じ符号を付して示す。
図4に示すように、表示媒体11は、基材100及び表示層200に組み合わせて、更に位相差層300を備えていてもよい。この場合、表示媒体11は、厚み方向において、基材100、表示層200及び位相差層300を、この順に備える。
【0072】
位相差層300は、1/4波長板として機能できる面内レターデーションを有することが好ましい。1/4波長板として機能できる具体的な面内レターデーションは、測定波長550nmにおいて、好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、より好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-20nm」以上、特に好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-10nm」以上であり、好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下、より好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+20nm」以下、特に好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+10nm」以下である。ここで、nは、0以上の整数を表す。測定波長550nmにおいて前記範囲の面内レターデーションReを有する位相差層300は、通常、可視波長範囲の広い範囲で1/4波長板として機能できる。
【0073】
図5は、本発明の第一実施形態の変形例としての表示媒体11の、第一表示部分210と第二表示部分220との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。この図5では、第一表示部分210及び第二表示部分220を含む表示層200において反射する光の経路を概略的に示す。実際の表示媒体11では、下記に説明する以外にも、様々な光の吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を概略的に説明する。また、図5では、第一反射層211及び第二反射層221の図示を省略する。
【0074】
一表示態様として、図5に示すように、表示媒体11の位相差層300側に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光LI1が照射された場合を例に挙げて説明する。この場合、位相差層300を通して第一表示部分210及び第二表示部分220に照射光LI1が進入する。第一表示部分210が形成されたエリアでは、照射光LI1の一部が、回転方向Dの円偏光として第一表示部分210で反射され、第一反射光LR3が得られる。この第一反射光LR3は、位相差層300を透過することによって直線偏光となって、表示媒体11の外部に出ていく。他方、第二表示部分220が形成されたエリアでは、照射光LI1の一部が、回転方向DIIの円偏光として第二表示部分220で反射され、第二反射光LR4が得られる。この第二反射光LR4は、位相差層300を透過することによって直線偏光となって、表示媒体11の外部に出ていく。位相差層300を透過する前の第一反射光LR3の回転方向Dと第二反射光LR4の回転方向DIIとが逆であるので、位相差層300を透過した後の第一反射光LR3の直線偏光の振動方向と第二反射光LR4の直線偏光の振動方向とは、垂直である。「直線偏光の振動方向」とは、別に断らない限り、直線偏光の電場の振動方向を表す。
【0075】
通常、観察者は、前記の第一反射光LR3及び第二反射光LR4を見ることにより、表示層200の像を視認する。観察者が肉眼で観察する場合、その観察者は、第一反射光LR3及び第二反射光LR4の両方を見ることができる。よって、観察者は、第一表示部分210及び第二表示部分220の両方の像を視認できる。ただし、第一表示部分210及び第二表示部分220を区別して視認することの困難性が高いので、観察者にとって、第一表示部分210及び第二表示部分220とを見分けることが難しい。
【0076】
観察者が、厚み方向の回転軸を中心にして表示媒体11を、直線偏光板の透過軸に対して相対的に回転させながら、直線偏光板を通して観察する場合、その観察者は、1以上の回転角において、第一表示部分210の像が視認できるが、第二表示部分220の像は視認できない。また、別の1以上の回転角において、その観察者は、第一表示部分210の像が視認できず、第二表示部分220の像を視認できる。具体的には、第一表示部分210からの反射光LR3の直線偏光の振動方向と直線偏光板の透過軸とが平行になる回転角では、第一反射光LR3が直線偏光板を透過できるので、観察者は、第一表示部分210の像を視認できるが、第二反射光LR4が直線偏光板で遮られるので、観察者は、第二表示部分220の像を視認できない。また、第二表示部分220からの反射光LR4の直線偏光の振動方向と直線偏光板の透過軸とが平行になる回転角では、第一反射光LR3が直線偏光板で遮られるので、観察者は、第一表示部分210の像は視認できないが、第二反射光LR4が直線偏光板を透過できるので、観察者は、第二表示部分220の像を視認できる。
【0077】
別の表示態様として、厚み方向の回転軸を中心にして表示媒体11を、直線偏光の振動方向に対して相対的に回転させながら、表示媒体11の位相差層300側に、直線偏光が照射された場合を例に挙げて説明する。この場合、直線偏光は、位相差層300を透過して表示層200の第一表示部分210及び第二表示部分220に進入する。1以上の回転角において、直線偏光は、位相差層300を透過することによって回転方向Dの円偏光に変換されるので、第一表示部分210では反射光が得られるが、第二表示部分220では反射光が得られない。よって、観察者が肉眼で観察する場合、観察者は、第一表示部分210の像を視認できるが、第二表示部分220の像を視認できない。また、別の1以上の回転角において、直線偏光は、位相差層300を透過することによって回転方向DIIの円偏光に変換されるので、第一表示部分210では反射光が得られないが、第二表示部分220では反射光が得られる。よって、観察者が肉眼で観察する場合、観察者は、第一表示部分210の像を視認できないが、第二表示部分220の像を視認できる。
【0078】
このように、前記の表示媒体11でも、非偏光下での肉眼による観察で視認される表示層200の像と、特定の条件での観察(例えば、直線偏光板を通した観察、及び、直線偏光で照らした状態での観察)で視認される表示層200の像とを、相違させることができる。よって、表示媒体10と同じ利点を得ることができる。
【0079】
表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、上述した例では透明な基材100を用いた表示媒体10及び11を示して説明したが、表示媒体は、非透明な基材を備えていてもよい。以下、非透明な基材を用いた表示媒体の例を説明する。
【0080】
図6は、本発明の第一実施形態の別の変形例としての表示媒体12を模式的に示す断面図である。図6においては、図1図5に示した表示媒体10及び11と同じ要素は、図1図5で用いたのと同じ符号を付して示す。
図6に示すように、表示媒体12は、透明な基材100の代わりに非透明な基材400を備えること以外は、上述した表示媒体10と同じに設けられている。よって、表示媒体12は、基材400と、この基材400上に形成された表示層200とを備える。
【0081】
基材400は、支持層110に組み合わせて有色層410を備える。有色層410が可視波長範囲の一部又は全部で光を透過させないので、基材400が非透明となっている。ここで示す例では、基材400が、支持層110及び有色層410を表示層200側からこの順に備える例を示して説明する。ただし、基材400は、有色層410及び支持層110を表示層200側からこの順に備えていてもよい。また、基材400は、支持層110を省略して、有色層410自体が表示層200を支持できるように設けてもよい。
【0082】
有色層410は、可視波長範囲の一部又は全部の光を遮りうる材料で形成できる。有色層410の材料としては、例えば、顔料及び染料等の着色剤を含む樹脂;紙;皮革;布;木材;金属;金属化合物;などが挙げられる。これらの材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
非透明な基材400を備える表示媒体12によれば、上述した表示媒体10と同じ利点を得ることができる。さらに、有色層410によれば、当該有色層410を備える基材400自体によって多様なデザインを表現できる。したがって、表示態様の自由度を高めることに効果的に貢献できる。また、有色層410によれば、基材400を透過する光の一部又は全部を遮ることができるので、表示層200の視認性を高めることができる。
【0084】
表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、上述した例では第一表示部分210及び第二表示部分220を含む表示層200を用いた表示媒体10~12を示して説明したが、表示層は、第一表示部分210及び第二表示部分220に組み合わせて更に任意の表示部分を含んでいてもよい。
【0085】
表示媒体は、更に任意の層を備えていてもよい。任意の層としては、例えば、接着剤層;表示媒体の滑り性を良くするマット層;耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層;反射防止層;防汚層;等が挙げられる。接着剤は、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤(感圧接着剤等)をも包含する。
【0086】
任意の層が、光を透過させる透明な層である場合、任意の層は、面内レターデーションを有していてもよいが、面内レターデーションの小さい光学等方性の層であることが好ましい。例えば、測定波長550nmにおける任意の層の面内レターデーションは、好ましくは0~20nm、より好ましくは0~10nm、特に好ましくは0~5nmである。
【0087】
[3.第二実施形態]
図7は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を模式的に示す上面図である。また、図8は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体を、図7の線VIII-VIIIで切った断面を模式的に示す断面図である。
図7及び図8に示すように、本発明の第二実施形態に係る表示媒体20は、基材100と、この基材100上に設けられた表示層500とを備える。表示媒体20の基材100は、第一実施形態で説明した基材100と同じでありうる。
【0088】
[3.1.表示層500]
表示層500は、下記の点(A1)及び(A2)以外は、第一実施形態で説明した表示層200と同じでありうる。
(A1)第一表示部分510が含む第一反射層511の第一反射波長範囲、及び、第二表示部分520が含む第二反射層521の第二反射波長範囲が、特定の要件を満たす。
(A2)第一反射層511が反射できる円偏光の回転方向Dと、第二反射層521が反射できる円偏光の回転方向DIIと、が、同じでもよく、逆でもよい。
【0089】
よって、表示層500は、基材100の面100Uに設けられている。また、表示層500は、円偏光分離機能を発揮できる第一反射波長範囲を有する第一反射層511を含む第一表示部分510と、円偏光分離機能を発揮できる第二反射波長範囲を有する第二反射層521を含む第二表示部分520と、を含む。第一表示部分510と第二表示部分520とは、接しているか、又は、小さい距離をあけて隣り合っている。また、第一反射波長範囲及び第二反射波長範囲が可視波長範囲の全体を含む。よって、第一表示部分510及び第二表示部分520は、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有する銀色の部分でありうる。また、第一表示部分510の可視波長範囲における透過スペクトルと、第二表示部分520の可視波長範囲における透過スペクトルと、が、略同一となっている。
【0090】
さらに、第一表示部分510に含まれる第一反射層511が、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第一反射波長範囲を有する。よって、第一表示部分510は、通常、第一反射波長範囲において、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。また、第二表示部分520に含まれる第二反射層521が、一方の回転方向DIIの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる第二反射波長範囲を有する。よって、第二表示部分520は、通常、第二反射波長範囲において一方の回転方向DIIの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。前記の点(A2)のように、第一反射層511が反射できる円偏光の回転方向Dと、第二反射層521が反射できる円偏光の回転方向DIIとは、同じでもよく、逆でもよい。
【0091】
本実施形態においては、前記の(A1)で記載したように、第一反射波長範囲及び第二反射波長範囲が、特定の要件を満たす。
具体的には、第一反射層511の第一反射波長範囲の下限は、通常400nm以下である。また、第一反射波長範囲の上限は、通常700nm以上、好ましくは720nm以上、特に好ましくは750nm以上である。第一反射層511及びそれを含む第一表示部分510は、前記の下限から上限まで連続した第一反射波長範囲において、円偏光分離機能を発揮できる。第一反射波長範囲の下限及び上限は、第一反射層511に対する入射角5°で測定される値を表す。
さらに、第二反射層521の第二反射波長範囲の下限は、通常400nm以下である。また、第二反射波長範囲の上限は、通常700nm未満、好ましくは680nm以下であり、通常650nm以上である。第二反射層521及びそれを含む第二表示部分520は、前記の下限から上限まで連続した第二反射波長範囲において、円偏光分離機能を発揮できる。第二反射波長範囲の下限及び上限は、第二反射層521に対する入射角5°で測定される値を表す。
【0092】
前記の要件を満たすので、表示層500は、上述した要件(i)~(iii)を満たすことができる。具体的には、表示層500に非偏光が照射された場合、非偏光の一部が、第一表示部分510で反射されて、第一反射波長範囲の円偏光として第一反射光が得られる。また、非偏光の一部が、第二表示部分520で反射されて、第二反射波長範囲の円偏光として第二反射光が得られる。よって、第一反射光と、第二反射光とが、波長範囲の異なる円偏光となりうる。
【0093】
これにより、第一表示部分510と第二表示部分520とは、カラーフロップの程度が異なりうる。「カラーフロップ」とは、観察角に応じて視認される色が変化する現象をいう。
【0094】
以下、カラーフロップに関して詳細に説明する。CLC層のように円偏光分離機能を発揮できる層は、当該円偏光分離機能を発揮できる波長範囲が、反射角に応じてシフトしうる。例えば、CLC層では、円偏光を反射できる具体的な波長は、一般に、コレステリック規則性の螺旋ピッチに依存する。ここで、前記の螺旋ピッチとは、コレステリック規則性を有する分子が形成するらせん構造のピッチを表す。この螺旋ピッチは、具体的には、らせん構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離である。例えば、らせん構造において分子軸が捩れる時の回転軸を表す螺旋軸と、CLC層の法線とが平行である場合、反射角θで反射される円偏光の波長λと、螺旋ピッチpとは、通常、式(W1)および式(W2)の関係を有する。
【0095】
式(W1):λc=n×p×cosθ
式(W2):no×p×cosθ≦λ≦ne×p×cosθ
【0096】
式(W1)及び式(W2)において、λcは円偏光が反射される波長範囲の中心波長を表し、noは液晶性化合物の短軸方向の屈折率を表し、neは液晶性化合物の長軸方向の屈折率を表し、nは(ne+no)/2を表し、pは螺旋ピッチを表す。この例から分かるように、CLC層は、当該CLC層に含まれる分子のコレステリック規則性の螺旋ピッチに依存して、異なる波長の円偏光を反射しうる。また、反射される円偏光の波長は、その円偏光の反射角θに応じて変化しうる。通常は、反射角θが大きいほど、反射される円偏光の波長が短波長側にシフトする。このように反射角θが大きくなるほど反射される円偏光の波長が低波長側にシフトする現象が、「ブルーシフト」と呼ばれる。
【0097】
第一反射波長範囲は、前記の下限及び上限から分かるように、可視波長範囲の全体を含む。よって、通常、自然光等の非偏光の下において表示媒体を反射角が小さい方向(例えば、正面方向)から観察した場合、第一反射層511及び第一表示部分510は、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有する銀色の部分でありうる。さらに、上限から分かるように、第一反射波長範囲が可視波長範囲よりも長波長の範囲まで大きく広がっているので、第一反射層511及び第一表示部分510は、反射される円偏光の波長が反射角の増大によって短波長側にシフトしても、その円偏光は有彩色に呈色しないか、又は呈色の程度が小さい。したがって、第一反射層511及び第一表示部分510は、カラーフロップの程度が小さい。よって、自然光等の非偏光の下において表示媒体20を反射角が大きい傾斜方向から観察した場合も、第一反射層511及び第一表示部分510は、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有する銀色の部分でありうる。
【0098】
他方、第二反射波長範囲は、前記の下限及び上限から分かるように、可視波長範囲の全体を含む。よって、通常、自然光等の非偏光の下において表示媒体を反射角が小さい方向(例えば、正面方向)から観察した場合、第二反射層521及び第二表示部分520は、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有する銀色の部分でありうる。しかし、上限から分かるように、第二反射波長範囲は可視波長範囲よりも長波長の範囲にまでは大きく広がっていないので、第二反射層521及び第二表示部分520は、反射される円偏光の波長が反射角の増大によって短波長側にシフトすると、その円偏光は有彩色に呈色しうる。したがって、第二反射層521及び第二表示部分520は、カラーフロップの程度が大きい。よって、自然光等の非偏光の下において表示媒体20を反射角が大きい傾斜方向から観察した場合、第二反射層521及び第二表示部分530は、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有することができず、有彩色に呈色しうる。
【0099】
前記のような第一表示部分510及び第二表示部分520を含む表示層500は、例えば、第一実施形態で説明した表示層200と同じ方法で形成できる。よって、表示層500は、例えば、その全体が液晶組成物の硬化物によってCLC層として形成されていてもよい。また、表示層500は、例えば、フレーク状のCLC層、及び、必要に応じてバインダー等の任意の成分を含む層として形成されていてもよい。中でも、表示層500は、表示媒体20の効率的な製造の観点から、印刷法により、フレーク状のCLC層を含む層として形成されることが好ましい。
【0100】
[3.2.第二実施形態に係る表示媒体20の表示態様]
図9は、本発明の第二実施形態に係る表示媒体20の、第一表示部分510と第二表示部分520との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。この図9では、第一表示部分510及び第二表示部分520を含む表示層500において反射する光の経路を概略的に示す。実際の表示媒体20では、下記に説明する以外にも、様々な光の吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を概略的に説明する。また、図9では、第一反射層511及び第二反射層521の図示を省略する。
【0101】
一表示態様として、図9に示すように、表示媒体20の表示層500側に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光LI1が照射された場合を例に挙げて説明する。この場合、第一実施形態と同じく、第一表示部分510が形成されたエリアでは、回転方向Dの円偏光が第一表示部分510で反射され、第一反射光LR1が得られる。他方、第二表示部分520が形成されたエリアでは、回転方向DIIの円偏光が第二表示部分520で反射され、第二反射光LR2が得られる。観察者が肉眼で観察する場合、その観察者は、第一反射光LR1及び第二反射光LR2の両方を見ることができるので、第一表示部分510及び第二表示部分520の両方の像を視認できる。
【0102】
反射角θが小さい方向においては、カラーフロップによる影響が小さいので、観察者は、第一表示部分510と第二表示部分520とを、いずれも同じ無彩色で視認できる。よって、第一表示部分510及び第二表示部分520を区別して視認することの困難性が高いので、観察者にとって、第一表示部分510及び第二表示部分520とを見分けることは難しい。
【0103】
他方、反射角θが大きい方向においては、カラーフロップによる影響が大きいので、観察者は、第一表示部分510と第二表示部分520とを、異なる色で視認できる。通常は、第一表示部分510は無彩色で視認され、第二表示部分520は有彩色で視認される。よって、観察者は、第一表示部分510及び第二表示部分520とを明確に区別して視認できるので、第一表示部分510及び第二表示部分520とを明確に見分けることができる。
【0104】
このように、本発明の第二実施形態に係る表示媒体20は、表示層500に対して垂直な正面方向での観察で視認される表示層500の像と、表示層500に対して垂直でも平行でもない傾斜方向での観察で視認される表示層500の像とを、相違させることができる。よって、複雑且つ自由度の高い意匠を作成することができ、更には意外性のある表示態様を実現できるので、観察者に大きなインパクトを与えることができる。特に、正面方向での観察では第一表示部分510と第二表示部分520とを区別して視認することが困難でありながら、傾斜方向での観察では区別して視認することが可能となる点は、従来には無かった新たな表示態様の提供に大きく貢献できる。
【0105】
さらに、第一反射層511が反射できる円偏光の回転方向Dと第二反射層521が反射できる円偏光の回転方向DIIとが逆である場合には、本実施形態に係る表示媒体20は、第一実施形態に係る表示媒体10と同じ表示態様を実現できるので、第一実施形態に係る表示媒体10と同じ利点を得ることができる。
【0106】
[3.3.第二実施形態に係る表示媒体の変形例]
第二実施形態に係る表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、表示媒体は、上述した基材100及び表示層500に組み合わせて、更に任意の要素を備えていてもよい。任意の要素の例としては、位相差層が挙げられる。
【0107】
図10は、本発明の第二実施形態の変形例としての表示媒体21を模式的に示す断面図である。図10においては、図7図9に示した表示媒体20と同じ要素は、図7図9で用いたのと同じ符号を付して示す。図10に示すように、表示媒体21は、基材100及び表示層500に組み合わせて、更に位相差層300を備えていてもよい。この場合、表示媒体21は、厚み方向において、基材100、表示層500及び位相差層300を、この順に備える。位相差層300は、1/4波長板として機能できる面内レターデーションを有することが好ましい。
【0108】
位相差層300を備える表示媒体21においても、上述した表示媒体20と同じく、カラーフロップが生じうる。よって、表示媒体21は、上述した表示媒体20と同じ表示態様を実現できるので、表示媒体20と同じ利点を得ることができる。
さらに、第一反射層511が反射できる円偏光の回転方向Dと第二反射層521が反射できる円偏光の回転方向DIIとが逆である場合には、表示媒体21は、第一実施形態において説明した位相差層300を備える表示媒体11と同じ表示態様を実現できるので、表示媒体11と同じ利点を得ることができる。
【0109】
表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、表示媒体は、非透明な基材を備えていてもよい。非透明な基材としては、有色層を備える基材が挙げられる。
【0110】
図11は、本発明の第二実施形態の別の変形例としての表示媒体22を模式的に示す断面図である。図11においては、図7図10に示した表示媒体20及び21と同じ要素は、図7図10で用いたのと同じ符号を付して示す。
図11に示すように、表示媒体22は、透明な基材100の代わりに、有色層410を備える非透明な基材400を備えること以外は、上述した表示媒体20と同じに設けられている。有色層410を備える基材400としては、第一実施形態で説明した非透明な基材400と同じものを用いうる。
【0111】
非透明な基材400を備える表示媒体22によれば、上述した表示媒体20と同じ利点を得ることができる。さらに、有色層410によれば、当該有色層410を備える基材400自体によって多様なデザインを表現できる。したがって、表示態様の自由度を高めることに効果的に貢献できる。また、有色層410によれば、基材400を透過する光の一部又は全部を遮ることができるので、表示層500の視認性を高めることができる。
【0112】
表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、表示層は、第一表示部分510及び第二表示部分520に組み合わせて更に任意の表示部分を含んでいてもよい。また、表示媒体は、第一実施形態で説明したように、接着剤層等の任意の層を備えていてもよい。
【0113】
[4.第三実施形態]
図12は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体を模式的に示す上面図である。また、図13は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体を、図12の線XIII-XIIIで切った断面を模式的に示す断面図である。
図12及び図13に示すように、本発明の第三実施形態に係る表示媒体30は、基材600と、この基材600上に設けられた表示層700とを備える。
【0114】
[4.1.基材600]
表示媒体30の基材600は、円偏光分離機能を発揮できる偏光分離波長範囲を有する偏光分離層610を含む。偏光分離層610は、偏光分離波長範囲において、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。偏光分離波長範囲における偏光分離層610の非偏光に対する反射率は、通常30%~50%、好ましくは40%~50%である。
【0115】
偏光分離波長範囲は、通常、可視波長範囲の一部又は全体を含む。よって、偏光分離波長範囲は、可視波長範囲の全体を含んでいてもよい。このような偏光分離波長範囲を有する偏光分離層610は、可視波長範囲の全体の円偏光を反射できるので、無彩色の銀色でありうる。また、偏光分離波長範囲は、可視波長範囲の一部のみを含んでいてもよい。このような偏光分離波長範囲を有する偏光分離層610は、可視波長範囲の一部の円偏光を選択的に反射できるので、偏光分離波長範囲に対応した有彩色でありうる。
【0116】
偏光分離層610は、面内方向において、基材600の一部に形成されていてもよく、基材600の全体に形成されていてもよい。通常、偏光分離層610上に、直接又は間接的に、表示層700が形成される。
【0117】
前記のような偏光分離層610は、円偏光分離機能を発揮できる波長範囲としての偏光分離波長範囲が必ずしも可視波長範囲の全体を含んでいなくてもよいこと以外、第一実施形態で説明した表示層200の第一表示部分210及び第二表示部分220と同じく形成しうる。よって、偏光分離層610は、例えば、CLC層であってもよい。また、偏光分離層610は、フレーク状のCLC層、及び、必要に応じてバインダー等の任意の成分を含む層であってもよい。このようにCLC層を含む偏光分離層610は、表示層200の第一表示部分210及び第二表示部分220と同じ方法で形成しうる。
【0118】
基材600は、偏光分離層610に組み合わせて、更に任意の層を備えていてもよい。本実施形態では、支持層110と、この支持層110上に形成された偏光分離層610とを備える基材600を例に示して説明する。この例では、基材600の面内方向の全体に偏光分離層610が形成されているので、基材600自体も、偏光分離波長範囲において、一方の回転方向Dの円偏光を反射し、その逆の回転方向の円偏光を透過させることができる。
【0119】
[4.2.表示層700]
表示層700は、基材600の面600Uに設けられる。表示層700は、第一実施形態に係る表示層200と同じく、基材600の面600Uの全体に設けられていてもよいが、通常は、基材600の面600Uの一部に設けられる。
【0120】
表示層700は、第一表示部分710と第二表示部分720とを含む。第一表示部分710と第二表示部分720とは、接しているか、又は、小さい距離をあけて隣り合っている。厚み方向から見た第一表示部分710の形状及び第二表示部分720の形状は、第一実施形態と同じく、表示媒体30のデザインに応じて設定することが好ましい。本実施形態では、図12に示すように、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示部分710と、この第一表示部分710の周囲に接するように設けられた矩形の形状を有する第二表示部分720とを含む表示層700を例に示して説明する。
【0121】
本実施形態では、第一表示部分710は、可視波長範囲の全体において同程度の透過率を有する透明な層となっている。この第一表示部分710は、通常、無彩色の透明な層でありうる。よって、第一表示部分710は、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有しうる。可視波長範囲における第一表示部分710の非偏光に対する透過率は、通常80%~100%、好ましくは90%~100%、より好ましくは95%~100%、特に好ましくは98%~100%である。
【0122】
第二表示部分720は、可視波長範囲の全体において同程度の透過率を有する透明な層となっている。この第二表示部分720は、通常、無彩色の透明な層でありうる。よって、第二表示部分720は、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有しうる。可視波長範囲における第二表示部分720の非偏光に対する透過率の範囲は、可視波長範囲における第一表示部分710の非偏光に対する透過率の範囲と同じでありうる。
【0123】
第一表示部分710の透過率と第二表示部分720の透過率とは、近いことが好ましく、同じであることがより好ましい。具体的には、第一表示部分710の可視波長範囲における透過スペクトルと、第二表示部分720の可視波長範囲における透過スペクトルと、が、略同一となるように、両者の透過率が設定されうる。
【0124】
本実施形態では、第一表示部分710と第二表示部分720とが、異なる面内レターデーションを有する。したがって、表示層700は、上述した要件(i)~(iii)を満たすことができる。具体的には、表示層700に非偏光が照射された場合、非偏光が、第一表示部分710を透過して、基材600に進入する。基材600では、非偏光の一部が偏光分離層610で反射され、再び第一表示部分710を透過して、第一反射光が得られる。また、非偏光が、第二表示部分720を透過して、基材600に進入する。基材600では、非偏光の一部が偏光分離層610で反射され、再び第二表示部分720を透過して、第二反射光が得られる。基材600においては、偏光分離層610が光を反射するので、基材600で反射された直後の光は、円偏光となっている。前記の円偏光は、第一表示部分710を透過することによって、第一表示部分710の面内レターデーションに対応した偏光状態の変化を生じうるので、第一反射光は、第一の偏光状態の偏光でありうる。また、前記の円偏光は、第二表示部分720を透過することによって、第二表示部分720の面内レターデーションに対応した偏光状態の変化を生じうるので、第二反射光は、第二の偏光状態の偏光でありうる。この際、第一表示部分710と第二表示部分720とは異なる面内レターデーションを有するので、第一反射光と、第二反射光とは、偏光状態が異なりうる。
【0125】
第一表示部分710は、通常、1/2波長板として機能できる面内レターデーションを有する。1/2波長板として機能できる具体的な面内レターデーションは、測定波長550nmにおいて、好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm-30nm」以上、より好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm-20nm」以上、特に好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm-10nm」以上であり、好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm+30nm」以下、より好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm+20nm」以下、特に好ましくは「{(2n+1)/2}×550nm+10nm」以下である。ここで、nは、0以上の整数を表す。測定波長550nmにおいて前記範囲の面内レターデーションReを有する第一表示部分710は、通常、可視波長範囲の広い範囲で1/2波長板として機能できる。よって、基材600で反射した円偏光は、第一表示部分710でその回転方向を逆にされる。したがって、第一表示部分710を透過した第一反射光は、回転方向Dとは逆回転の円偏光でありうる。
【0126】
他方、第二表示部分720は、通常、小さい面内レターデーションを有する。第二表示部分720の具体的な面内レターデーションは、測定波長550nmにおいて、好ましくは0~30nm、より好ましくは0~20nm、特に好ましくは0~10nmでありうる。測定波長550nmにおいて前記範囲の面内レターデーションReを有する第二表示部分720は、通常、可視波長範囲の広い範囲で光学等方性を示すことができる。よって、基材600で反射した円偏光は、第二表示部分720を透過しても、回転方向が変化しない。したがって、第二表示部分720を透過した第二反射光は、回転方向Dの円偏光でありうる。
【0127】
第一表示部分710及び第二表示部分720の波長分散性には、特段の制限は無い。よって、第一表示部分710及び第二表示部分720は、それぞれ独立に、順波長分散性を有していてもよく、逆波長分散性を有していてもよい。順波長分散性とは、測定波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(450)及びRe(550)が、下記式(R1)を満たすことをいう。順波長分散性を有する層は、一般に、測定波長が長いほど、面内レターデーションが小さい。また、逆波長分散性とは、測定波長450nm及び550nmにおける面内レターデーションRe(450)及びRe(550)が、下記式(R2)を満たすことを言う。逆波長分散性を有する層は、一般に、測定波長が長いほど、面内レターデーションが大きい。
Re(450)>Re(550) (R1)
Re(450)<Re(550) (R2)
【0128】
第一表示部分710は、図13に示すように、1/2波長板として機能できる面内レターデーションを有するλ/2層711を備えうる。このλ/2層711としては、例えば、樹脂フィルムを適切な条件で延伸した延伸フィルムを用いてもよいが、液晶性化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層を用いることが好ましい。詳細には、液晶組成物に含まれる液晶性化合物をネマチック相及びスメクチック相等の液晶相を呈するように配向させた状態で、その液晶組成物を硬化させた硬化物により、λ/2層711を液晶硬化層として形成することが好ましい。液晶組成物の硬化物によれば、面内レターデーションを有するλ/2層711を、効率良く製造できる。
【0129】
上述した範囲の面内レターデーションを有するλ/2層711としての液晶硬化層は、例えば、液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させた状態で、その液晶組成物を硬化させることにより、製造できる。具体例を挙げると、液晶組成物に含まれる液晶性化合物を配向させて、液晶組成物の相をネマチック相及びスメクチック相等の液晶相にする。このような液晶相の液晶組成物を硬化させると、液晶性化合物の配向方向は固定されうる。よって、前記の硬化によって得られた硬化物を含む液晶硬化層は、前記のように配向した液晶性化合物を含みうるので、液晶性化合物の種類、液晶性化合物の配向状態、厚み等の要素に応じた面内レターデーションを有することができる。したがって、前記の液晶硬化層としてλ/2層711が得られる。
【0130】
第一表示部分710は、その全体として、λ/2層711を含んでいてもよい。この場合、第一表示部分710それ自体を、λ/2層711として形成しうる。このような第一表示部分710は、例えば、λ/2層711を用意する工程と、その用意したλ/2層711を基材600の面600Uに貼り合わせる工程と、を含む方法(転写法)によって、形成できる。しかし、第一表示部分710の形成を簡単にする観点では、第一表示部分710が、フレーク状のλ/2層711を含むことが好ましい。
【0131】
フレーク状のλ/2層711は、1/2波長の面内レターデーションを有するフレーク状の顔料として用いることができる。顔料がフレーク状であるので、当該顔料を含む層を形成する際に与えられるせん断力により、通常は、それら顔料の主面と、当該顔料を含む層の層平面とは、平行に又は平行に近くなるように配向される。また、第一表示部分710の厚みを適切に設定した場合、通常、λ/2層711同士の重なり合いを抑制できる。したがって、フレーク状のλ/2層711を顔料として含む層は、λ/2層711自体と同じく、1/2波長の面内レターデーションを有することができる。フレーク状のλ/2層711は、例えば、1/2波長板として機能できる面内レターデーションを有する液晶硬化層を粉砕してフレークとして製造できる。顔料としてのフレークの粒径の範囲は、第一実施形態において説明した第一反射層211に用いうるフレークの粒径と同じ範囲でありうる。
本実施形態では、図13に示すように、液晶硬化層を粉砕したフレークとしてのλ/2層711を顔料として含む第一表示部分710を例に示して説明する。
【0132】
第一表示部分710は、λ/2層711等の顔料に組み合わせて、バインダー等の任意の成分を含んでいてもよい。バインダーの例及び量は、第一実施形態で説明した第一表示部分210におけるものと同じでありうる。
【0133】
このようなフレーク状のλ/2層711を含む第一表示部分710は、例えば、第一実施形態で説明した第一表示部分210と同じ方法で形成できる。中でも、第一表示部分710は、印刷法を用いて形成することが好ましく、毛抜き印刷法が特に好ましい。
【0134】
第二表示部分720は、図13に示すように、上述した小さい面内レターデーションを有する光学等方層721を備えうる。この光学等方層721としては、例えば、光学等方性を有する樹脂層を用いてもよいが、液晶性化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層を用いることが好ましい。詳細には、液晶組成物に含まれる液晶性化合物が等方相を呈した状態で、その液晶組成物を硬化させた硬化物により、光学等方層721を液晶硬化層として形成することが好ましい。液晶組成物の硬化物によれば、上述した小さい面内レターデーションを有する光学等方層721を、効率良く製造できる。
【0135】
上述した小さい面内レターデーションを有する光学等方層721としての液晶硬化層は、例えば、液晶組成物に含まれる液晶性化合物が等方相を呈した状態で、その液晶組成物を硬化させることにより、製造できる。具体例を挙げると、液晶組成物に含まれる液晶性化合物を透明点(NI点)以上に加熱する。これにより、液晶性化合物の分子の配向方向がランダムになるので、当該液晶組成物の相が等方相になる。このような等方相の液晶組成物を硬化させると、液晶性化合物の配向方向は固定されうる。よって、前記の硬化によって得られた硬化物を含む液晶硬化層は、等方相の液晶性化合物を含みうるので、小さい面内レターデーションを有することができる。したがって、前記の液晶硬化層として光学等方層721が得られる。
【0136】
第二表示部分720は、その全体として、光学等方層721を含んでいてもよい。この場合、第二表示部分720それ自体を、光学等方層721として形成しうる。このような第二表示部分720は、例えば、光学等方層721を用意する工程と、その用意した光学等方層721を基材600の面600Uに貼り合わせる工程と、を含む方法(転写法)によって、形成できる。しかし、第一表示部分710と同じ質感の第二表示部分720を簡単に形成する観点では、第二表示部分720が、フレーク状の光学等方層721を含むことが好ましい。
【0137】
フレーク状の光学等方層721は、小さい面内レターデーションを有するフレーク状の顔料として用いることができる。したがって、フレーク状の光学等方層721を顔料として含む層は、光学等方層721自体と同じく、小さい面内レターデーションを有することができる。フレーク状の光学等方層721は、例えば、小さい面内レターデーションを有する液晶硬化層を粉砕してフレークとして製造できる。顔料としてのフレークの粒径の範囲は、第一実施形態において説明した第一反射層211に用いうるフレークの粒径と同じ範囲でありうる。
本実施形態では、図13に示すように、液晶硬化層を粉砕したフレークとしての光学等方層721を顔料として含む第二表示部分720を例に示して説明する。
【0138】
第二表示部分720は、光学等方層721等の顔料に組み合わせて、バインダー等の任意の成分を含んでいてもよい。バインダーの例及び量は、第一実施形態で説明した第二表示部分220におけるものと同じでありうる。
【0139】
このようなフレーク状の光学等方層721を含む第二表示部分720は、例えば、第一実施形態で説明した第二表示部分220と同じ方法で形成できる。中でも、第二表示部分720は、印刷法を用いて形成することが好ましく、毛抜き印刷法が特に好ましい。
【0140】
表示層700、及び、当該表示層700に含まれる第一表示部分710及び第二表示部分720の厚みは、第一実施形態で説明したのと同じ範囲でありうる。
【0141】
[4.3.第三実施形態に係る表示媒体30の表示態様]
図14は、本発明の第三実施形態に係る表示媒体30の、第一表示部分710と第二表示部分720との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。この図14では、基材600の偏光分離層610において反射する光の経路を概略的に示す。実際の表示媒体30では、下記に説明する以外にも、様々な光の吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を概略的に説明する。また、図14では、λ/2層711及び光学等方層721の図示を省略する。
【0142】
一表示態様として、図14に示すように、表示媒体30の表示層700側に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光LI1が照射された場合を例に挙げて説明する。この場合、第一表示部分710が形成されたエリアでは、照射光LI1は、第一表示部分710を透過して、基材600に進入する。基材600では、照射光LI1の一部が、回転方向Dの円偏光LR5として偏光分離層610で反射される。この円偏光LR5が、第一表示部分710を透過することにより回転方向を逆にされて、第一反射光LR6が得られる。また、反射された円偏光以外の光LT3は、基材600を透過して、表示媒体30の外部に出ていく。他方、第二表示部分720が形成されたエリアでは、照射光LI1は、第二表示部分720を透過して、基材600に進入する。基材600では、照射光LI1の一部が、回転方向Dの円偏光LR7として偏光分離層610で反射される。この円偏光LR7が、回転方向を維持したまま第二表示部分720を透過して、第二反射光LR8が得られる。また、反射された円偏光以外の光LT4は、基材600を透過して、表示媒体30の外部に出ていく。
【0143】
通常、観察者は、前記の第一反射光LR6及び第二反射光LR8を見ることにより、表示層700の像を視認する。観察者が肉眼で観察する場合、その観察者は、第一反射光LR6及び第二反射光LR8の両方を見ることができる。よって、観察者は、第一表示部分710及び第二表示部分720の両方の像を視認できる。第一表示部分710及び第二表示部分720が透明であるので、通常、観察者は、第一表示部分710及び第二表示部分720を呈色した層としては視認しない。この場合でも、観察者は、第一表示部分710及び第二表示部分720を、その周囲のエリア(即ち、第一表示部分710及び第二表示部分720が形成されていない基材600の面600Uのエリア)とは異なる光の屈折及び散乱を示す部分として、視認しうる。ただし、第一表示部分710及び第二表示部分720を区別して視認することの困難性が高いので、観察者にとって、第一表示部分710及び第二表示部分720とを見分けることは難しい。
【0144】
観察者が、右円偏光及び左円偏光の一方のみを透過させる円偏光板を通して観察する場合、その観察者は、第一反射光LR6及び第二反射光LR8の一方のみを見ることができるので、第一表示部分710及び第二表示部分720の片方のみの像を視認できる。具体的には、回転方向Dとは逆の回転方向の円偏光のみを透過させる円偏光板を通して観察する場合、その観察者は、第一反射光LR6を見て第一表示部分710を視認できるが、第二表示部分720は視認できない。また、回転方向Dの円偏光のみを透過させる円偏光板を通して観察する場合、その観察者は、第一表示部分710は視認できないが、第二反射光LR8を見て第二表示部分720を視認できる。
【0145】
このように、本発明の第三実施形態に係る表示媒体30は、非偏光下での肉眼による観察で視認される表示層700の像と、特定の条件での観察(例えば、円偏光板を通した観察)で視認される表示層700の像とを、相違させることができる。よって、複雑且つ自由度の高い意匠を作成することができ、更には意外性のある表示態様を実現できるので、観察者に大きなインパクトを与えることができる。特に、非偏光下での肉眼による観察では第一表示部分710と第二表示部分720とを区別して視認することが困難でありながら、特定の条件での観察では区別して視認することが可能となる。
【0146】
[4.4.第三実施形態に係る表示媒体の変形例]
第三実施形態に係る表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、表示媒体は、上述した基材600及び表示層700に組み合わせて、更に任意の要素を備えていてもよい。任意の要素の例としては、位相差層が挙げられる。
【0147】
図15は、本発明の第三実施形態の変形例としての表示媒体31を模式的に示す断面図である。図15においては、図12図14に示した表示媒体30と同じ要素は、図12図14で用いたのと同じ符号を付して示す。図15に示すように、表示媒体31は、基材600及び表示層700に組み合わせて、更に位相差層300を備えていてもよい。この場合、表示媒体31は、厚み方向において、基材600、表示層700及び位相差層300を、この順に備える。位相差層300は、1/4波長板として機能できる面内レターデーションを有することが好ましい。
【0148】
図16は、本発明の第三実施形態の変形例としての表示媒体31の、第一表示部分710と第二表示部分720との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。この図16では、基材600の偏光分離層610において反射する光の経路を概略的に示す。実際の表示媒体31では、下記に説明する以外にも、様々な光の吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を概略的に説明する。また、図16では、λ/2層711及び光学等方層721の図示を省略する。
【0149】
一表示態様として、図16に示すように、表示媒体31の位相差層300側に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光LI1が照射された場合を例に挙げて説明する。この場合、第一表示部分710が形成されたエリアでは、照射光LI1は、位相差層300及び第一表示部分710を透過して、基材600に進入する。基材600では、照射光LI1の一部が、回転方向Dの円偏光LR11として偏光分離層610で反射される。この円偏光LR11が、第一表示部分710を透過することにより回転方向を逆にされて、第一反射光LR12が得られる。この第一反射光LR12は、位相差層300を透過することによって直線偏光となって、表示媒体31の外部に出ていく。他方、第二表示部分720が形成されたエリアでは、照射光LI1は、位相差層300及び第二表示部分720を透過して、基材600に進入する。基材600では、照射光LI1の一部が、回転方向Dの円偏光LR13として偏光分離層610で反射される。この円偏光LR13が、回転方向を維持したまま第二表示部分720を透過して、第二反射光LR14が得られる。この第二反射光LR14は、位相差層300を透過することによって直線偏光となって、表示媒体31の外部に出ていく。位相差層300を透過する前の第一反射光LR12の回転方向と第二反射光LR14の回転方向とが逆であるので、位相差層300を透過した後の第一反射光LR12の直線偏光の振動方向と第二反射光LR14の直線偏光の振動方向とは、垂直である。
【0150】
通常、観察者は、前記の第一反射光LR12及び第二反射光LR14を見ることにより、表示層700の像を視認する。観察者が肉眼で観察する場合、その観察者は、第一反射光LR12及び第二反射光LR14の両方を見ることができる。よって、観察者は、第一表示部分710及び第二表示部分720の両方の像を視認できる。ただし、第一表示部分710及び第二表示部分720を区別して視認することの困難性が高いので、観察者にとって、第一表示部分710及び第二表示部分720とを見分けることが難しい。
【0151】
観察者が、厚み方向の回転軸を中心にして表示媒体31を、直線偏光板の透過軸に対して相対的に回転させながら、直線偏光板を通して観察する場合、その観察者は、1以上の回転角において、第一表示部分710の像が視認できるが、第二表示部分720の像は視認できない。また、別の1以上の回転角において、その観察者は、第一表示部分710の像が視認できず、第二表示部分720の像を視認できる。具体的には、第一表示部分710からの反射光LR12の直線偏光の振動方向と直線偏光板の透過軸とが平行になる回転角では、第一反射光LR12が直線偏光板を透過できるので、観察者は、第一表示部分710の像を視認できるが、第二反射光LR14が直線偏光板で遮られるので、観察者は、第二表示部分720の像を視認できない。また、第二表示部分720からの反射光LR14の直線偏光の振動方向と直線偏光板の透過軸とが平行になる回転角では、観察者は、第一反射光LR12が直線偏光板で遮られるので、観察者は、第一表示部分710の像は視認できないが、第二反射光LR14が直線偏光板を透過できるので、観察者は、第二表示部分720の像を視認できる。
【0152】
別の表示態様として、厚み方向の回転軸を中心にして表示媒体31を、直線偏光の振動方向に対して相対的に回転させながら、表示媒体31の位相差層300側に、直線偏光が照射された場合を例に挙げて説明する。この場合、直線偏光は、位相差層300を透過して表示層700の第一表示部分710及び第二表示部分720に進入する。1以上の回転角において、直線偏光は、位相差層300を透過することによって回転方向Dとは逆の回転方向の円偏光に変換される。よって、第一表示部分710が形成されたエリアでは、第一表示部分710を透過し、基材600の偏光分離層610で反射され、再び第一表示部分710及び位相差層300を透過した反射光を得ることができるが、第二表示部分720が形成されたエリアでは、反射光が得られない。よって、観察者が肉眼で観察する場合、観察者は、第一表示部分710の像を視認できるが、第二表示部分720の像を視認できない。また、別の1以上の回転角において、直線偏光は、位相差層300を透過することによって回転方向Dの円偏光に変換される。よって、第一表示部分710が形成されたエリアでは、反射光が得られないが、第二表示部分720が形成されたエリアでは、第二表示部分720を透過し、基材600の偏光分離層610で反射され、再び第二表示部分720及び位相差層300を透過した反射光を得ることができる。よって、観察者が肉眼で観察する場合、観察者は、第一表示部分710の像を視認できないが、第二表示部分720の像を視認できる。
【0153】
このように、前記の表示媒体31でも、非偏光下での肉眼による観察で視認される表示層700の像と、特定の条件での観察(例えば、直線偏光板を通した観察、及び、直線偏光で照らした状態での観察)で視認される表示層700の像とを、相違させることができる。よって、表示媒体30と同じ利点を得ることができる。
【0154】
表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、表示媒体は、有色層を含む基材を備えていてもよい。
【0155】
図17は、本発明の第三実施形態の別の変形例としての表示媒体32を模式的に示す断面図である。図17においては、図12図16に示した表示媒体30及び31と同じ要素は、図12図16で用いたのと同じ符号を付して示す。
図17に示すように、表示媒体32は、基材600の代わりに、有色層410を含む基材800を備えること以外は、上述した表示媒体30と同じに設けられている。よって、表示媒体32は、基材800と、この基材800上に形成された表示層700とを備える。
【0156】
基材800は、支持層110及び偏光分離層610に組み合わせて有色層410を含む。通常、基材800は、偏光分離層610及び有色層410を、表示層700側からこの順に備える。基材800は、支持層110を省略して、偏光分離層610及び有色層410が表示層700を支持できるように設けてもよい。有色層410としては、第一実施形態で説明したのと同じものを用いうる。
【0157】
有色層410を含む基材800を備える表示媒体32によれば、上述した表示媒体30と同じ利点を得ることができる。さらに、有色層410によれば、当該有色層410を備える基材800自体によって多様なデザインを表現できる。したがって、表示態様の自由度を高めることに効果的に貢献できる。
【0158】
表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、表示層は、第一表示部分710及び第二表示部分720に組み合わせて更に任意の表示部分を含んでいてもよい。また、表示媒体は、第一実施形態で説明したように、接着剤層等の任意の層を備えていてもよい。
【0159】
[5.第四実施形態]
図18は、本発明の第四実施形態に係る表示媒体を模式的に示す上面図である。また、図19は、本発明の第四実施形態に係る表示媒体を、図18の線XX-XXで切った断面を模式的に示す断面図である。
図18及び図19に示すように、本発明の第四実施形態に係る表示媒体40は、基材600と、この基材600上に設けられた表示層900とを備える。表示媒体40の基材600は、第三実施形態で説明した基材600と同じでありうる。
【0160】
[5.1.表示層900]
表示層900は、下記の点(A3)及び(A4)以外は、第三実施形態で説明した表示層700と同じでありうる。
(A3)第一表示部分910及び第二表示部分920が、第三実施形態とは異なる特定の面内レターデーションを有する。
(A4)第一表示部分910の遅相軸の方向と、第二表示部分920の遅相軸の方向とが、非平行である。
【0161】
よって、表示層900は、基材600の面600Uに設けられている。また、表示層900は、特定の面内レターデーションを有する第一表示部分910及び第二表示部分920と、を含む。第一表示部分910と第二表示部分920とは、接しているか、又は、小さい距離をあけて隣り合っている。また、第一表示部分910は、可視波長範囲の全体において同程度の透過率を有する透明な層となっているので、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有しうる。さらに、第二表示部分920は、可視波長範囲の全体において同程度の透過率を有する透明な層となっているので、可視波長範囲の全体において略一定な透過スペクトルを有しうる。また、第一表示部分910の透過率と第二表示部分920の透過率とが近いことにより、第一表示部分910の可視波長範囲における透過スペクトルと、第二表示部分920の可視波長範囲における透過スペクトルと、が、略同一でありうる。
【0162】
本実施形態においては、前記の式(A3)で記載したように、第一表示部分910及び第二表示部分920の両方が、1/4波長板として機能できる面内レターデーションを有する。よって、第一表示部分910の測定波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、より好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-20nm」以上、特に好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-10nm」以上であり、好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下、より好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+20nm」以下、特に好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+10nm」以下である。ここで、nは、0以上の整数を表す。また、第二表示部分920の測定波長550nmにおける面内レターデーションは、好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-30nm」以上、より好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-20nm」以上、特に好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm-10nm」以上であり、好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+30nm」以下、より好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+20nm」以下、特に好ましくは「{(2n+1)/4}×550nm+10nm」以下である。ここで、nは、0以上の整数を表す。第一表示部分910の面内レターデーションと第二表示部分920の面内レターデーションとは、同じでもよく、異なっていてもよい。
【0163】
また、前記の式(A4)で記載したように、第一表示部分910は、一の方向に遅相軸を有する。さらに、第二表示部分920は、第一表示部分910の遅相軸の方向に対して非平行な方向に、遅相軸を有する。この際、第一表示部分910の遅相軸と第二表示部分920の遅相軸とがなす角度は、両者の交差遅相軸のなす角度の鋭角側で、好ましくは5°以上、より好ましくは15°以上、特に好ましくは40°以上であり、更に好ましくは60°以上、更に好ましくは75°以上であり、90°であることが特に好ましい。前記の遅相軸がなす角度は、厚み方向から見た角度を表す。
【0164】
前記の要件を満たすので、表示層900は、上述した要件(i)~(iii)を満たすことができる。具体的には、表示層900に非偏光が照射された場合、非偏光が、第一表示部分910を透過して、基材600に進入する。基材600では、非偏光の一部が偏光分離層610で反射され、再び第一表示部分910を透過して、第一反射光が得られる。また、非偏光が、第二表示部分920を透過して、基材600に進入する。基材600では、非偏光の一部が偏光分離層610で反射され、再び第二表示部分920を透過して、第二反射光が得られる。第三実施形態と同じく、基材600で反射された直後の光は、円偏光となっている。この円偏光は、第一表示部分910又は第二表示部分920を透過することによって直線偏光に変換されるので、第一反射光及び第二反射光は直線偏光でありうる。この際、第一表示部分910と第二表示部分920とが異なる方向に遅相軸を有するので、第一反射光の直線偏光の振動方向と、第二反射光の直線偏光の振動方向とは、異なりうる。このように直線偏光の振動方向が異なる点で、第一反射光と第二反射光とは、偏光状態が異なりうる。
【0165】
第一表示部分910は、1/4波長板として機能できる面内レターデーションを有するλ/4層911を備えうる。また、第二表示部分920は、1/4波長板として機能できる面内レターデーションを有するλ/4層921を備えうる。λ/4層911及びλ/4層921としては、例えば、樹脂フィルムを適切な条件で延伸した延伸フィルムを用いてもよいが、液晶性化合物を含む液晶組成物の硬化物で形成された液晶硬化層を用いることが好ましい。このような液晶硬化層は、例えば、第三実施形態で説明したλ/2層と同じ方法によって製造できる。
【0166】
前記のような第一表示部分910及び第二表示部分920を含む表示層900は、例えば、第三実施形態で説明した表示層700の第一表示部分710と同じ方法で形成できる。よって、表示層900は、例えば、その全体が液晶組成物の硬化物によって液晶硬化層として形成されていてもよい。また、表示層900は、例えば、フレーク状の液晶硬化層、及び、必要に応じてバインダー等の任意の成分を含む層として形成されていてもよい。中でも、第一表示部分910及び第二表示部分920の遅相軸の方向を簡単に調整する観点から、表示層900は、転写法によって液晶硬化層として形成されることが好ましい。本実施形態では、第一表示部分910及び第二表示部分920の全体が、それぞれ、液晶硬化層としてのλ/4層911及びλ/2層921として形成された例を示す。
【0167】
[5.2.第四実施形態に係る表示媒体40の表示態様]
図20は、本発明の第四実施形態に係る表示媒体40の、第一表示部分910と第二表示部分920との境界部の近傍を模式的に示す断面図である。この図20では、基材600の偏光分離層610において反射する光の経路を概略的に示す。実際の表示媒体40では、下記に説明する以外にも、様々な光の吸収及び反射が発生しうるが、以下の説明では、作用の説明の便宜上、主な光の経路を概略的に説明する。
【0168】
一表示態様として、図20に示すように、表示媒体40の表示層900側に、右円偏光及び左円偏光の両方を含む非偏光等の照射光LI1が照射された場合を例に挙げて説明する。この場合、第一表示部分910が形成されたエリアでは、照射光LI1は、第一表示部分910を透過して、基材600に進入する。基材600では、照射光LI1の一部が、偏光分離層610が反射可能な回転方向Dの円偏光LR15として偏光分離層610で反射される。この円偏光LR15が、第一表示部分910を透過することにより直線偏光に変換されて、第一反射光LR16が得られる。また、反射された円偏光以外の光LT7は、基材600を透過して、表示媒体40の外部に出ていく。他方、第二表示部分920が形成されたエリアでは、照射光LI1は、第二表示部分920を透過して、基材600に進入する。基材600では、照射光LI1の一部が、偏光分離層610が反射可能な回転方向Dの円偏光LR17として偏光分離層610で反射される。この円偏光LR17が、第二表示部分920を透過することにより直線偏光に変換されて、第二反射光LR18が得られる。また、反射された円偏光以外の光LT8は、基材600を透過して、表示媒体40の外部に出ていく。
【0169】
通常、観察者は、前記の第一反射光LR16及び第二反射光LR18を見ることにより、表示層900の像を視認する。観察者が肉眼で観察する場合、その観察者は、第一反射光LR16及び第二反射光LR18の両方を見ることができる。よって、観察者は、第三実施形態と同じく、第一表示部分910及び第二表示部分920の両方の像を視認できる。ただし、第一表示部分910及び第二表示部分920を区別して視認することの困難性が高いので、観察者にとって、第一表示部分910及び第二表示部分920を見分けることは難しい。
【0170】
観察者が、厚み方向の回転軸を中心にして表示媒体40を、直線偏光板の透過軸に対して相対的に回転させながら、直線偏光板を通して観察する場合、その観察者は、1以上の回転角において、第一表示部分910の像が視認できるが、第二表示部分920の像は視認できない。また、別の1以上の回転角において、その観察者は、第一表示部分910の像が視認できず、第二表示部分920の像を視認できる。具体的には、第一表示部分910からの第一反射光LR16の直線偏光の振動方向と直線偏光板の透過軸とが平行になる回転角では、第一反射光LR16が直線偏光板を透過できるので、観察者は、第一表示部分910の像を視認できるが、第二反射光LR18が直線偏光板で遮られるので、観察者は、第二表示部分920の像を視認できない。また、第二表示部分920からの反射光LR18の直線偏光の振動方向と直線偏光板の透過軸とが平行になる回転角では、第一反射光LR16が直線偏光板で遮られるので、観察者は、第一表示部分910の像は視認できないが、第二反射光LR18が直線偏光板を透過できるので、観察者は、第二表示部分920の像を視認できる。
【0171】
別の表示態様として、厚み方向の回転軸を中心にして表示媒体40を、直線偏光の振動方向に対して相対的に回転させながら、表示媒体40の表示層900側に、直線偏光が照射された場合を例に挙げて説明する。この場合、直線偏光は、表示層900の第一表示部分910及び第二表示部分920を透過して、基材600に進入する。1以上の回転角において、直線偏光は、第一表示部分910を透過することによって、偏光分離層610が反射可能な回転方向Dの円偏光に変換される。よって、第一表示部分910が形成されたエリアでは、第一表示部分910を透過し、基材600の偏光分離層610で反射され、再び第一表示部分910を透過した反射光を得ることができる。しかし、前記の回転角では、直線偏光は、第二表示部分920を透過することによって、偏光分離層610が反射可能な回転方向Dとは逆の回転方向の円偏光に変換される。よって、第二表示部分920が形成されたエリアでは、反射光が得られない。したがって、観察者が肉眼で観察する場合、観察者は、第一表示部分910の像を視認できるが、第二表示部分920の像を視認できない。また、別の1以上の回転角において、直線偏光は、第一表示部分910を透過することによって、偏光分離層610が反射可能な回転方向Dとは逆の円偏光に変換される。よって、第一表示部分910が形成されたエリアでは、反射光が得られない。しかし、前記の回転角では、直線偏光は、第二表示部分920を透過することによって、偏光分離層610が反射可能な回転方向Dの円偏光に変換される。よって、第二表示部分920が形成されたエリアでは、第二表示部分920を透過し、基材600の偏光分離層610で反射され、再び第二表示部分920を透過した反射光が得られる。したがって、観察者が肉眼で観察する場合、観察者は、第一表示部分910の像を視認できないが、第二表示部分920の像を視認できる。
【0172】
このように、本発明の第四実施形態に係る表示媒体40は、非偏光下での肉眼による観察で視認される表示層900の像と、特定の条件での観察(例えば、直線偏光板を通した観察、及び、直線偏光で照らした状態での観察)で視認される表示層900の像とを、相違させることができる。よって、複雑且つ自由度の高い意匠を作成することができ、更には意外性のある表示態様を実現できるので、観察者に大きなインパクトを与えることができる。特に、非偏光下での肉眼による観察では第一表示部分910と第二表示部分920とを区別して視認することが困難でありながら、特定の条件での観察では区別して視認することが可能となる点は、従来には無かった新たな表示態様の提供に大きく貢献できる。
【0173】
[5.3.第四実施形態に係る表示媒体の変形例]
表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、表示媒体は、有色層を含む基材を備えていてもよい。
【0174】
図21は、本発明の第四実施形態の変形例としての表示媒体41を模式的に示す断面図である。図21においては、図18図20に示した表示媒体40と同じ要素は、図18図20で用いたのと同じ符号を付して示す。
図21に示すように、表示媒体41は、基材600の代わりに、有色層410を含む基材800を備えること以外は、上述した表示媒体40と同じに設けられている。よって、表示媒体41は、基材800と、この基材800上に形成された表示層900とを備える。基材800は、第三実施形態で説明した基材800と同じでありうる。
【0175】
有色層410を含む基材800を備える表示媒体41によれば、上述した表示媒体40と同じ利点を得ることができる。さらに、有色層410によれば、当該有色層410を備える基材800自体によって多様なデザインを表現できる。したがって、表示態様の自由度を高めることに効果的に貢献できる。
【0176】
表示媒体は、更に変更して実施してもよい。例えば、表示層は、第一表示部分910及び第二表示部分920に組み合わせて更に任意の表示部分を含んでいてもよい。また、表示媒体は、第一実施形態で説明したように、接着剤層等の任意の層を備えていてもよい。
【0177】
[6.表示物品]
本発明の一実施形態に係る表示物品は、下地物品と、この下地物品に設けられた前記の表示媒体と、を備える。支持物品に表示媒体を設けることにより、表示媒体による表示態様を支持物品に付与できるので、デザイン性に優れた表示物品を得ることができる。
【0178】
支持物品は、表示媒体が設けられる対象であり、その範囲に制限は無い。支持物品の例としては、衣類等の布製品;カバン、靴等の皮革製品;ネジ等の金属製品;値札等の紙製品;カード、プラスチック紙幣類のプラスチック製品;タイヤ等のゴム製品;が挙げられるが、これらの例に限定されない。
【0179】
また、上述した表示媒体は、従来の技術によっては製造の困難性が高いので、表示物品の偽造の困難性を高めることができる。さらに、表示媒体は真正性の識別用途に用いることができ、例えば、表示媒体を付された表示物品を真正なもの、表示媒体を付されていない物品を非真正なものと識別する用途に用いることができる。
【実施例
【0180】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0181】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下の操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中にて行った。
【0182】
以下の説明において、市販の接着剤としては、別に断らない限り、日東電工社製の透明粘着テープ「LUCIACS CS9621T」(厚み25μm、可視光透過率90%以上、面内レターデーション3nm以下)を用いた。
【0183】
[CLC層の反射率の測定方法]
複層部材から支持フィルムを剥離して、CLC層を得た。このCLC層に、非偏光(波長300nm~950nm)を入射したときの反射率を、紫外可視分光光度計(日本分光社製「UV-Vis 770」)により積分球を用いて測定した。
【0184】
[CLC層が反射する円偏光の回転方向の測定方法]
CLC層に非偏光を照射し、その反射光を、右円偏光板及び左円偏光板を介して観察して、反射光としての円偏光の回転方向が右回りか左回りかを特定した。
【0185】
[面内レターデーション及び遅相軸方向の測定方法]
面内レターデーション及び遅相軸方向は、測定波長550nmにおいて、位相差計(Axometrics社製「Axoscan」)を用いて測定した。
【0186】
[顔料の平均粒子径の測定]
レーザー・散乱法により顔料の粒子径分布を測定し、粒子径分布から平均粒子径を測定した。測定機器として、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、LA-960)を用いた。
【0187】
[表示媒体の評価方法]
(1)裸眼による正面方向からの表示媒体の評価方法:
表示媒体を、水平な台に、基材を下にして置いた。非偏光光源としての蛍光灯で表示媒体を照らした状態で、表示媒体の面に対して垂直な正面方向から、表示媒体を裸眼で観察した。
「同一_銀」:第一表示部分と第二表示部分とが、同じ銀色の層として視認された。第一表示部と第二表示部とを区別して視認することはできなかった。
「同一_透明」:第一表示部分と第二表示部分とが、同じ透明な層として視認された。第一表示部と第二表示部とを区別して視認することはできなかった。
「識別_色差」:第一表示部分と第二表示部分とが、異なる色の層として視認された。第一表示部と第二表示部とを区別して視認できた。
【0188】
(2)裸眼による傾斜方向からの表示媒体の評価方法:
表示媒体を、水平な台に、基材を下にして置いた。非偏光光源としての蛍光灯で表示媒体を照らした状態で、表示媒体の面に対して平行でも垂直でもない傾斜方向から、表示媒体を裸眼で観察した。
「識別_銀/青」:第一表示部分が、銀色の層として視認された。また、第二表示部分は、ブルーシフトが生じて、青色の層として視認された。第一表示部分と第二表示分とを区別して視認できた。
【0189】
(3)円偏光板を用いた表示媒体の評価方法:
表示媒体を、水平な台に、基材を下にして置いた。非偏光光源としての蛍光灯で表示媒体を照らした状態で、表示媒体の面に対して垂直な正面方向から、表示媒体を円偏光板を通して観察した。円偏光板としては、右円偏光板及び左円偏光板を用いた。
「可視/不可視」:右円偏光板及び左円偏光板の一方を通した観察では、第一表示部分の像が視認でき、第二表示部分の像は視認できなかった。さらに、右円偏光板及び左円偏光板の他方を通した観察では、第一表示部分の像が視認できず、第二表示部分の像は視認できた。
【0190】
(4)直線偏光板を用いた表示媒体の評価方法:
表示媒体を、水平な台に、基材を下にして置いた。非偏光光源としての蛍光灯で表示媒体を照らした状態で、表示媒体の面に対して垂直な正面方向から、表示媒体を直線偏光板を通して観察した。直線偏光板としては、市販の偏光サングラスを用いた。また、観察は、厚み方向の回転軸を中心にして表示媒体を回転させながら行った。
「可視/不可視」:1以上の回転角において、第一表示部分の像が視認でき、第二表示部分の像は視認できなかった。また、別の1以上の回転角において、第一表示部分の像が視認できず、第二表示部分の像は視認できた。
【0191】
(5)偏光照射下での表示媒体の評価方法:
表示媒体を、水平な台に、基材を下にして置いた。直線偏光で表示媒体を照らした状態で、表示媒体の面に対して垂直な正面方向から、表示媒体を裸眼で観察した。観察は、厚み方向の回転軸を中心にして表示媒体を回転させながら行った。
「可視/不可視」:1以上の回転角において、第一表示部分の像が視認でき、第二表示部分の像は視認できなかった。また、別の1以上の回転角において、第一表示部分の像が視認できず、第二表示部分の像は視認できた。
【0192】
[製造例1.広帯域CLC層(右)の製造]
下記式(X1)で表される光重合性の液晶性化合物100部と、下記式(X2)で表される光重合性の非液晶性化合物25部と、カイラル剤(BASF社製「LC756」)8部と、光重合開始剤(チバ・ジャパン社製「イルガキュア907」)5部と、界面活性剤(AGCセイミケミカル社製「S-420」)0.15部と、溶媒としてのシクロペンタノン320部とを混合して、液晶組成物を調製した。
【0193】
【化1】
【0194】
支持フィルムとして、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製「A4100」;厚み100μm)を用意した。この支持フィルムをフィルム搬送装置の繰り出し部に取り付け、当該支持フィルムを長尺方向に搬送しながら、以下の操作を行った。
【0195】
該支持フィルムの表面に、搬送方向と平行な長尺方向へラビング処理を施した。次に、ラビング処理を施した該支持フィルムの面に、ダイコーターを用いて液晶組成物を塗工して、液晶組成物の層を形成した。この液晶組成物の層に、120℃で4分間加熱する配向処理を施して、液晶組成物がコレステリック液晶相を呈するように配向させた。その後、液晶組成物の層に、広帯域化処理を施した。この広帯域化処理では、5mJ/cm~30mJ/cmの弱い紫外線の照射と100℃~120℃の加温処理とを交互に複数回繰り返すことで、円偏光分離機能を発揮できる波長範囲が所望の波長幅を有するように制御した。その後、800mJ/cmの紫外線を液晶組成物の層に照射して、液晶組成物の層を硬化させた。これにより、支持フィルムと円偏光分離機能を有するCLC層(厚み5.2μm)とを備える複層部材(CLC_W)を得た。
【0196】
この複層部材(CLC_W)のCLC層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、CLC層は、400nmから780nmまでの波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。また、上述した測定方法でCLC層で反射される円偏光の回転方向を測定したところ、右回りであった。CLC層は、自然光の下で目視で観察したところ、銀色であった。
【0197】
[製造例2.広帯域CLC層(左)の製造]
カイラル剤(BASF社製「LC756」)8部の代わりに下記式(X3)で表される化合物(X3)16部を用いたこと以外は、製造例1と同じ方法により、支持フィルム及び円偏光分離機能を有するCLC層(厚み5.2μm)を備える複層部材(CLC_rW)を製造した。この複層部材のCLC層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、CLC層は、400nmから780nmまでの波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。また、上述した測定方法でCLC層で反射される円偏光の回転方向を測定したところ、左回りであった。CLC層は、自然光の下で目視で観察したところ、銀色であった。
【0198】
【化2】
【0199】
[製造例3.中帯域CLC層(右)の製造]
広帯域化処理における条件(紫外線照射の回数及び時間、並びに、加熱処理の回数及び時間)を変更したこと以外は、製造例1と同じ方法により、支持フィルム及び円偏光分離機能を有するCLC層(厚み5.2μm)を備える複層部材(CLC_M)を製造した。この複層部材(CLC_M)のCLC層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、CLC層は、400nmから680nmまでの波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。また、上述した測定方法でCLC層で反射される円偏光の回転方向を測定したところ、右回りであった。CLC層は、自然光の下で目視で観察したところ、銀色であった。
【0200】
[製造例4.中帯域CLC層(左)の製造]
カイラル剤(BASF社製「LC756」)8部の代わりに前記式(X3)で表される化合物(X3)16部を用いたこと以外は、製造例3と同じ方法により、支持フィルム及び円偏光分離機能を有するCLC層(厚み5.2μm)を備える複層部材(CLC_rM)を製造した。この複層部材のCLC層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、CLC層は、400nmから680nmまでの波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。また、上述した測定方法でCLC層で反射される円偏光の回転方向を測定したところ、左回りであった。CLC層は、自然光の下で目視で観察したところ、銀色であった。
【0201】
[製造例5.赤色CLC層(右)の製造]
カイラル剤(BASF社製「LC756」)の量を7部に変更したこと、及び、広帯域化処理を実施しなかったこと以外は、製造例1と同じ方法により、支持フィルム及び円偏光分離機能を有するCLC層(厚み3.5μm)を備える複層部材(CLC_R)を製造した。この複層部材(CLC_R)のCLC層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、CLC層は、650nm付近に中心波長を有し、半値幅が20nm程度の波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。また、上述した測定方法でCLC層で反射される円偏光の回転方向を測定したところ、右回りであった。CLC層は、自然光の下で目視で観察したところ、赤色であった。
【0202】
[製造例6.赤色CLC層(左)の製造]
カイラル剤(BASF社製「LC756」)7部の代わりに前記式(X3)で表される化合物(X3)14部を用いたこと以外は、製造例5と同じ方法により、支持フィルム及び円偏光分離機能を有するCLC層(厚み3.5μm)を備える複層部材(CLC_rR)を製造した。この複層部材(CLC_rR)のCLC層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、CLC層は、650nm付近に中心波長を有し、半値幅が20nm程度の波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。また、上述した測定方法でCLC層で反射される円偏光の回転方向を測定したところ、左回りであった。CLC層は、自然光の下で目視で観察したところ、赤色であった。
【0203】
[製造例7.緑色CLC層(右)の製造]
広帯域化処理を実施しなかったこと以外は、製造例1と同じ方法により、支持フィルム及び円偏光分離機能を有するCLC層(厚み3.5μm)を備える複層部材(CLC_G)を製造した。この複層部材(CLC_G)のCLC層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、CLC層は、550nm付近に中心波長を有し、半値幅が20nm程度の波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。また、上述した測定方法でCLC層で反射される円偏光の回転方向を測定したところ、右回りであった。CLC層は、自然光の下で目視で観察したところ、緑色であった。
【0204】
[製造例8.緑色CLC層(左)の製造]
カイラル剤(BASF社製「LC756」)8部の代わりに前記式(X3)で表される化合物(X3)16部を用いたこと以外は、製造例7と同じ方法により、支持フィルム及び円偏光分離機能を有するCLC層(厚み3.5μm)を備える複層部材(CLC_rG)を得た。この複層部材(CLC_rG)のCLC層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、CLC層は、550nm付近に中心波長を有し、半値幅が20nm程度の波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。また、上述した測定方法でCLC層で反射される円偏光の回転方向を測定したところ、左回りであった。CLC層は、自然光の下で目視で観察したところ、緑色であった。
【0205】
[製造例9.青色CLC層(右)の製造]
カイラル剤(BASF社製「LC756」)の量を10部に変更したこと、及び、広帯域化処理を実施しなかったこと以外は、製造例1と同じ方法により、支持フィルム及び円偏光分離機能を有するCLC層(厚み3.5μm)を備える複層部材(CLC_B)を製造した。この複層部材(CLC_B)のCLC層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、CLC層は、450nm付近に中心波長を有し、半値幅が20nm程度の波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。また、上述した測定方法でCLC層で反射される円偏光の回転方向を測定したところ、右回りであった。CLC層は、自然光の下で目視で観察したところ、青色であった。
【0206】
[製造例10.青色CLC層(左)の製造]
カイラル剤(BASF社製「LC756」)10部の代わりに前記式(X3)で表される化合物(X3)20部を用いたこと以外は、製造例9と同じ方法により、支持フィルム及び円偏光分離機能を有するCLC層(厚み3.5μm)を備える複層部材(CLC_rB)を得た。この複層部材(CLC_rB)のCLC層の反射率を、上述した測定方法で測定した。測定の結果、CLC層は、450nm付近に中心波長を有し、半値幅が20nm程度の波長範囲に、非偏光に対する反射率が40%以上となる波長範囲を有していた。また、上述した測定方法でCLC層で反射される円偏光の回転方向を測定したところ、左回りであった。CLC層は、自然光の下で目視で観察したところ、青色であった。
【0207】
[製造例11.λ/4層の製造]
国際公開第2017/057005号の実施例1に従い、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された長尺のフィルムとしての支持フィルムと、この支持フィルム上に形成されたλ/4層としての液晶硬化層とを備える複層部材(Q1)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=138nm、液晶硬化層の厚み=2.3μm、支持フィルムの長手方向に対して液晶硬化層の遅層軸がなす角度は45°であった。
【0208】
[製造例12:λ/2層の製造]
1/2波長板として機能できる面内レターデーションが得られるように液晶硬化層の厚みを変更したこと以外は、製造例11と同じ方法により、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された長尺のフィルムとしての支持フィルムと、この支持フィルム上に形成されたλ/2層としての液晶硬化層とを備える複層部材(H1)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=280nm、液晶硬化層の厚み=4.6μm、支持フィルムの長手方向に対して液晶硬化層の遅層軸がなす角度は45°であった。
【0209】
[製造例13:光学等方層の製造]
液晶性化合物の配向方向がランダムとなるように配向温度を透明点以上に変更したこと以外は、製造例11と同じ方法により、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された長尺のフィルムとしての支持フィルムと、この支持フィルム上に形成された光学等方層としての液晶硬化層とを備える複層部材(N)を製造した。液晶硬化層の面内レターデーションRe=0nm、液晶硬化層の厚み=2.4μmであった。
【0210】
[製造例14.λ/4フィルムの製造]
熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された樹脂フィルム(日本ゼオン社製「ZEONORフィルム」;押出成形によって製造されたフィルム。未延伸品)を用意した。この樹脂フィルムを、延伸温度130℃で一方向に延伸して、1/4波長板として機能できる面内レターデーションを有する位相差フィルム(R1)を得た。この位相差フィルム(R1)の厚みは47μm、面内レターデーションは143nmであった。
【0211】
[実施例群I.第一実施形態に対応する実施例]
[実施例101]
(基材の用意)
光学等方性の基材として、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された透明フィルム(厚み100μm)を用意した。
【0212】
(第一表示部分の形成)
製造例1で得た複層部材(CLC_W)から支持フィルムを剥離し、得られたCLC層を粉砕して、CLC層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのCLC顔料(W)を得た。このCLC顔料(W)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(W)を得た。このインキ(W)を、基材の片面の矩形部分にスクリーン印刷し、乾燥して、第一表示部分を形成した。
【0213】
(第二表示部分の形成)
製造例2で得た複層部材(CLC_rW)から支持フィルムを剥離し、得られたCLC層を粉砕して、CLC層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのCLC顔料(rW)を得た。このCLC顔料(rW)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(rW)を得た。このインキ(rW)を、基材の片面の、第一表示部分に隣接する矩形部分にスクリーン印刷し、乾燥して、第二表示部分を形成した。これにより、基材と、第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層とを備える表示媒体を得た。
【0214】
図22は、実施例101で製造した表示媒体1を模式的に示す上面図である。図22に示すように、表示媒体1の基材2の面2Uには表示層3が形成された。表示層3は、矩形の第一表示部分3aと矩形の第二表示部分3bとを含んでいた。また、第一表示部分3aと第二表示部分3bとは、隙間なく接していた。この表示媒体1を、上述した方法で評価した。
【0215】
(透過スペクトルの測定)
表示媒体の評価後に、基材を剥離して、表示層の第一表示部分及び第二表示部分を得た。第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを、分光光度計(日本分光社製「V-550」)を用いて、波長380nm~780nmの波長範囲において測定した。
【0216】
測定の結果、可視波長範囲において、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であった。よって、第一表示部分の透過スペクトルが、可視波長範囲において略均一であることが確認された。
また、測定の結果、可視波長範囲において、第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であった。よって、第二表示部分の透過スペクトルが、可視波長範囲において略均一であることが確認された。
さらに、測定の結果、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であった。よって、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと、第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であることが確認された。
【0217】
[実施例102]
第一表示部分及び第二表示部分の形状を変更したこと以外は実施例101と同じ方法により、表示媒体の製造及び評価を行った。具体的には、インキ(W)を、基材の片面の文字「T」の部分にスクリーン印刷し、乾燥して、第一表示部分を形成した。また、インキ(rW)を、基材の片面の、第一表示部分の周囲にスクリーン印刷し、乾燥して、第二表示部分を形成した。
【0218】
図23は、実施例102で製造した表示媒体4を模式的に示す上面図である。前記の方法により、図23に示すように、基材5と、基材5の面5Uに形成された表示層6とを備える表示媒体4を得た。表示層6は、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示部分6aと、この第一表示部分6aの周囲に設けられた第二表示部分6bとを含んでいた。第一表示部分6aと第二表示部分6bとは、隙間なく接していた。この表示媒体4を、上述した方法で評価した。
【0219】
また、表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0220】
[実施例103]
実施例102と同じ方法により、基材上に表示層を形成した。その後、表示層が形成された部分を含む基材の全面に、接着剤を介して、製造例14で製造した位相差フィルム(R1)を貼り合わせた。これにより、基材、表示層、接着剤層及び位相差フィルム(R1)をこの順で備える表示媒体を得た。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0221】
[実施例104]
実施例101で用意したのと同じ透明フィルムと、有色層としての黒色の紙とを、接着剤を介して貼り合わせて、有色層を含む基材を得た。この基材の透明フィルム側の面に、実施例102と同じ方法により、表示層を形成した。その後、表示層が形成された部分を含む基材の全面に、接着剤を介して、製造例14で製造した位相差フィルム(R1)を貼り合わせた。これにより、基材(有色層、接着剤層、及び、透明フィルム)、表示層、接着剤層、並びに、位相差フィルム(R1)をこの順で備える表示媒体を得た。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0222】
[実施例105]
(基材の表面での潜像の形成)
光学等方性の基材として、熱可塑性ノルボルネン樹脂で形成された透明フィルム(厚み100μm)を用意した。この基材の表面の矩形のエリアに、接着剤層を形成した。具体的には、粘着力を有する市販の接着剤を矩形に切り取り、基材に貼り付けた。これにより、基材の表面に、接着剤によって矩形の潜像が形成された。
【0223】
(第一表示部分の形成)
製造例1で得た複層部材(CLC_W)のCLC層に対して、国際公開第2019/189246号の実施例1記載の方法で、20μm幅で複数の亀裂を垂直に交差するように形成して、20μm角の格子状の亀裂を形成した。亀裂の深さは、CLC層の厚みより深く、且つ、支持フィルムまで切断しない深さに、プレス圧によって調整した。前述した加工をした複層部材(CLC_W)を、基材上に接着剤によって形成された潜像よりも小さい文字「T」の形状に切り出した。切り出された複層部材(CLC_W)のCLC層側の面と、前記の基材の接着剤側の面とを貼り合わせた。その後、複層部材(CLC_W)の支持フィルムを剥離した。CLC層が基材上に残ったので、基材上には、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示部分が形成された。
【0224】
(第二表示部分の形成)
製造例2で得た複層部材(CLC_rW)のCLC層に対して、前記の複層部材(CLC_W)と同じく国際公開第2019/189246号の実施例1記載の方法で、20μm角の格子状の亀裂を形成した。この複層部材(CLC_rW)のCLC層側の面と、前記の基材の接着剤側の面とを、貼り合わせた。その後、複層部材(CLC_rW)の支持フィルムを剥離した。接着剤層が無いエリア、及び、第一表示部分が形成されたエリアでは、複層部材(CLC_rW)のCLC層は基材上に残らず、支持フィルムと一緒に剥離された。それ以外のエリア(即ち、接着剤層上の第一表示部分が形成されていないエリア)では、複層部材(CLC_rW)のCLC層が基材上に残り、支持フィルムだけが剥離された。よって、基材上の第一表示部分の周囲のエリアに、第二表示部分が形成された。これにより、図23に示すように、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示部分6aと、この第一表示部分6aの周囲に設けられた第二表示部分6bとを含む表示層6を備える表示媒体4が得られた。第一表示部分6aと第二表示部分6bとは、隙間なく接していた。この表示媒体4を、上述した方法で評価した。
【0225】
(透過スペクトルの測定)
表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0226】
[実施例群II.第二実施形態に対応する実施例]
[実施例201]
製造例4で得た複層部材(CLC_rM)から支持フィルムを剥離し、得られたCLC層を粉砕して、CLC層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのCLC顔料(rM)を得た。このCLC顔料(rM)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(rM)を得た。
【0227】
前記のインキ(rM)をインキ(rW)の代わりに用いたこと以外は、実施例101と同じ方法により、表示媒体を製造した。図22に示すように、得られた表示媒体1は、基材2と、基材2の面2Uに形成された第一表示部分3a及び第二表示部分3bを含む表示層3とを備えていた。第一表示部分3aと第二表示部分3bとは、隙間なく接していた。この表示媒体1を、上述した方法で評価した。
【0228】
(透過スペクトルの測定)
また、表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0229】
[実施例202]
第一表示部分及び第二表示部分の形状を変更したこと以外は実施例201と同じ方法により、表示媒体の製造及び評価を行った。具体的には、インキ(W)を、基材の片面の文字「T」の部分にスクリーン印刷し、乾燥して、第一表示部分を形成した。また、インキ(rM)を、基材の片面の、第一表示部分の周囲にスクリーン印刷し、乾燥して、第二表示部分を形成した。これにより、図23に示すように、基材5と、基材5の面5Uに形成された第一表示部分6a及び第二表示部分6bを含む表示層6とを備える表示媒体4を得た。第一表示部分6aと第二表示部分6bとは、隙間なく接していた。この表示媒体4を、上述した方法で評価した。
【0230】
また、表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0231】
[実施例203]
実施例202と同じ方法により、基材上に表示層を形成した。その後、表示層が形成された部分を含む基材の全面に、接着剤を介して、製造例14で製造した位相差フィルム(R1)を貼り合わせた。これにより、基材、表示層、接着剤層及び位相差フィルム(R1)をこの順で備える表示媒体を得た。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0232】
[実施例204]
実施例101で用意したのと同じ透明フィルムと、有色層としての黒色の紙とを、接着剤を介して貼り合わせて、有色層を含む基材を得た。この基材の透明フィルム側の面に、実施例202と同じ方法により、表示層を形成した。その後、表示層が形成された部分を含む基材の全面に、接着剤を介して、製造例14で製造した位相差フィルム(R1)を貼り合わせた。これにより、基材(有色層、接着剤層、及び、透明フィルム)、表示層、接着剤層、並びに、位相差フィルム(R1)をこの順で備える表示媒体を得た。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0233】
[実施例205]
製造例2で得た複層部材(CLC_rW)の代わりに、製造例4で得た複層部材(CLC_rM)を用いたこと以外は、実施例105と同じ方法により、表示媒体を製造した。
【0234】
具体的には、実施例105と同じ方法により、基材の表面の矩形のエリアに、潜像として接着剤層を形成した。その後、CLC層に格子状の亀裂を形成され、更に接着剤層よりも小さい文字「T」の形状に切り出された複層部材(CLC_W)のCLC層側の面を、基材の接着剤側の面と貼り合わせた。複層部材(CLC_W)の支持フィルムを剥離して、接着剤層上に、文字「T」の形状を有する第一表示部分を形成した。次いで、基材の接着剤側の面と、CLC層に格子状の亀裂が形成された複層部材(CLC_rM)のCLC層側の面とを、貼り合わせた。複層部材(CLC_rM)の支持フィルムを剥離して、接着剤層上の第一表示部分が形成されていないエリアに、第二表示部を形成した。これにより、図23に示すように、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示部分6aと、この第一表示部分6aの周囲に設けられた第二表示部分6bとを含む表示層6を備える表示媒体4が得られた。第一表示部分6aと第二表示部分6bとは、隙間なく接していた。この表示媒体4を、上述した方法で評価した。
【0235】
(透過スペクトルの測定)
表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0236】
[実施例206]
製造例3で得た複層部材(CLC_M)から支持フィルムを剥離し、得られたCLC層を粉砕して、CLC層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのCLC顔料(M)を得た。このCLC顔料(M)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(M)を得た。
【0237】
前記のインキ(M)をインキ(rM)の代わりに用いたこと以外は、実施例202と同じ方法により、表示媒体を製造した。具体的には、インキ(W)を、基材の片面の文字「T」の部分にスクリーン印刷し、乾燥して、第一表示部分を形成した。また、インキ(M)を、基材の片面の、第一表示部分の周囲にスクリーン印刷し、乾燥して、第二表示部分を形成した。これにより、図23に示すように、基材5と、基材5の面5Uに形成された第一表示部分6a及び第二表示部分6bを含む表示層6とを備える表示媒体4を得た。第一表示部分6aと第二表示部分6bとは、隙間なく接していた。この表示媒体4を、上述した方法で評価した。
【0238】
また、表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0239】
[実施例群III.第三実施形態に対応する実施例]
[実施例301]
(基材の用意)
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)を、基材として用意した。
【0240】
(第一表示部分の形成)
製造例12で得た複層部材(H1)から支持フィルムを剥離し、得られた液晶硬化層を粉砕して、液晶硬化層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのλ/2顔料(H1)を得た。λ/2顔料(H1)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(H1)を得た。インキ(H1)を、基材のCLC層側の面の矩形部分にスクリーン印刷し、乾燥して、第一表示部分を形成した。
【0241】
(第二表示部分の形成)
製造例13で得た複層部材(N)から支持フィルムを剥離し、得られた液晶硬化層を粉砕して、液晶硬化層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmの光学等方性の顔料(N)を得た。この顔料(N)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(N)を得た。このインキ(N)を、基材のCLC層側の面の矩形部分にスクリーン印刷し、乾燥して、第二表示部分を形成した。これにより、基材と、第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層とを備える表示媒体を得た。図22に示すように、得られた表示媒体1は、基材2と、基材2のCLC層側の面2Uに形成された第一表示部分3a及び第二表示部分3bを含む表示層3とを備えていた。第一表示部分3aと第二表示部分3bとは、隙間なく接していた。この表示媒体1を、上述した方法で評価した。
【0242】
(透過スペクトルの測定)
また、表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0243】
[実施例302]
第一表示部分及び第二表示部分の形状を変更したこと以外は実施例301と同じ方法により、表示媒体の製造及び評価を行った。具体的には、インキ(H1)を、基材のCLC層側の面の文字「T」の部分にスクリーン印刷し、乾燥して、第一表示部分を形成した。また、インキ(N)を、基材のCLC層側の面の、第一表示部分の周囲にスクリーン印刷し、乾燥して、第二表示部分を形成した。これにより、図23に示すように、基材5と、基材5のCLC層側の面5Uに形成された第一表示部分6a及び第二表示部分6bを含む表示層6とを備える表示媒体4を得た。第一表示部分6aと第二表示部分6bとは、隙間なく接していた。この表示媒体4を、上述した方法で評価した。
【0244】
また、表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0245】
[実施例303]
実施例302と同じ方法により、基材上に表示層を形成した。その後、表示層が形成された部分を含む基材の全面に、接着剤を介して、製造例14で製造した位相差フィルム(R1)を貼り合わせた。これにより、基材、表示層、接着剤層及び位相差フィルム(R1)をこの順で備える表示媒体を得た。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0246】
[実施例304]
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の支持フィルム側の面に、有色層としての黒色の紙を、接着剤を介して貼り合わせて、有色層を含む基材を得た。この基材のCLC層側の面に、実施例302と同じ方法により、表示層を形成した。その後、表示層が形成された部分を含む基材の全面に、接着剤を介して、製造例14で製造した位相差フィルム(R1)を貼り合わせた。これにより、基材(有色層、接着剤層、支持フィルム、及び、CLC層)、表示層、接着剤層、並びに、位相差フィルム(R1)をこの順で備える表示媒体を得た。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0247】
[実施例305]
(基材の表面での潜像の形成)
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)のCLC層側の面の矩形のエリアに、接着剤層を形成した。具体的には、粘着力を有する市販の接着剤を矩形に切り取り、複層部材(CLC_W)のCLC層側の面に貼り付けた。これにより、基材の表面に、接着剤によって矩形の潜像が形成された。
【0248】
(第一表示部分の形成)
製造例12で得た複層部材(H1)の液晶硬化層に対して、国際公開第2019/189246号の実施例1記載の方法で、20μm幅で複数の亀裂を垂直に交差するように形成して、20μm角の格子状の亀裂を形成した。亀裂の深さは、液晶硬化層層の厚みより深く、且つ、支持フィルムまで切断しない深さに、プレス圧によって調整した。前述した加工をした複層部材(H1)を、基材上に接着剤によって形成された潜像よりも小さい文字「T」の形状に切り出した。切り出された複層基材(H1)の液晶硬化層側の面と、前記の基材の接着剤側の面とを貼り合わせた。その後、複層部材(H1)の支持フィルムを剥離した。液晶硬化層が基材上に残ったので、基材上には、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示部分が形成された。
【0249】
(第二表示部分の形成)
製造例13で得た複層部材(N)の液晶硬化層に対して、前記の複層部材(H1)と同じく国際公開第2019/189246号の実施例1記載の方法で、20μm角の格子状の亀裂を形成した。この複層部材(N)の液晶硬化層側の面と、前記の基材の接着剤側の面とを、貼り合わせた。その後、複層部材(N)の支持フィルムを剥離した。接着剤層が無いエリア、及び、第一表示部分が形成されたエリアでは、複層部材(N)の液晶硬化層は基材上に残らず、支持フィルムと一緒に剥離された。それ以外のエリア(即ち、接着剤層上の第一表示部分が形成されていないエリア)では、複層部材(N)の液晶硬化層が基材上に残り、支持フィルムだけが剥離された。よって、基材上の第一表示部分の周囲のエリアに、第二表示部分が形成された。これにより、図23に示すように、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示部分6aと、この第一表示部分a6の周囲に設けられた第二表示部分6bとを含む表示層6を備える表示媒体4が得られた。第一表示部分6aと第二表示部分6bとは、隙間なく接していた。この表示媒体4を、上述した方法で評価した。
【0250】
(透過スペクトルの測定)
表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0251】
[実施例306]
基材として、製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の代わりに、製造例3で製造した複層部材(CLC_M)を用いた。以上の事項以外は、実施例302と同じ方法により、基材と、基材のCLC層側の面に形成された第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層とを備える表示媒体を製造した。第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0252】
[実施例307]
基材として、製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の代わりに、製造例5で製造した複層部材(CLC_R)を用いた。以上の事項以外は、実施例302と同じ方法により、基材と、基材のCLC層側の面に形成された第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層とを備える表示媒体を製造した。第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0253】
[実施例308]
基材として、製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の代わりに、製造例9で製造した複層部材(CLC_B)を用いた。以上の事項以外は、実施例302と同じ方法により、基材と、基材のCLC層側の面に形成された第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層とを備える表示媒体を製造した。第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0254】
[実施例309]
基材として、製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の代わりに、製造例7で製造した複層部材(CLC_G)を用いた。以上の事項以外は、実施例302と同じ方法により、基材と、基材のCLC層側の面に形成された第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層とを備える表示媒体を製造した。第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0255】
[実施例310]
基材として、製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の代わりに、製造例8で製造した複層部材(CLC_rG)を用いた。以上の事項以外は、実施例302と同じ方法により、基材と、基材のCLC層側の面に形成された第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層とを備える表示媒体を製造した。第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0256】
[実施例311]
製造例7で製造した複層部材(CLC_G)の支持フィルム側の面に、有色層としての黒色の紙を、接着剤を介して貼り合わせて、有色層を含む基材を得た。この基材のCLC層側の面に、実施例302と同じ方法により、表示層を形成した。その後、表示層が形成された部分を含む基材の全面に、接着剤を介して、製造例14で製造した位相差フィルム(R1)を貼り合わせた。これにより、基材(有色層、接着剤層、支持フィルム、及び、CLC層)、表示層、接着剤層、並びに、位相差フィルム(R1)をこの順で備える表示媒体を得た。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0257】
[実施例群IV.第四実施形態に対応する実施例]
[実施例401]
(基材の表面での潜像の形成)
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)のCLC層側の面の矩形のエリアに、接着剤層を形成した。具体的には、粘着力を有する市販の接着剤を矩形に切り取り、複層部材(CLC_W)のCLC層側の面に貼り付けた。これにより、基材の表面に、接着剤によって矩形の潜像が形成された。
【0258】
(第一表示部分の形成)
製造例11で得た複層部材(Q1)の液晶硬化層に対して、国際公開第2019/189246号の実施例1記載の方法で、20μm幅で複数の亀裂を垂直に交差するように形成して、20μm角の格子状の亀裂を形成した。亀裂の深さは、液晶硬化層層の厚みより深く、且つ、支持フィルムまで切断しない深さに、プレス圧によって調整した。前述した加工をした複層部材(Q1)を、基材上に接着剤によって形成された潜像の半分の範囲に、貼り合わせた。この貼り合わせは、複層部材(Q1)の液晶硬化層が基材上の接着剤に接するように行った。その後、複層部材(Q1)の支持フィルムを剥離した。液晶硬化層が基材上に残ったので、基材上には、矩形の第一表示部分が形成された。この第一表示部分は、厚み方向に垂直な一方向に遅相軸を有していた。
【0259】
(第二表示部分の形成)
前記の基材の接着剤側の面と、前記のように亀裂を形成された液晶硬化層を備える複層部材(Q1)の液晶硬化層側の面とを、貼り合わせた。この貼り合わせは、複層部材(Q1)の液晶硬化層がある部分が、基材の接着剤側の面に接するように行った。また、この貼り合わせは、第一表示部分の遅相軸に対して、複層部材(Q1)が有する液晶硬化層の遅相軸が45°の角度をなすように行った。その後、複層部材(Q1)の支持フィルムを剥離した。接着剤層が無いエリア、及び、第一表示部分が形成されたエリアでは、複層部材(Q1)の液晶硬化層は基材上に残らず、支持フィルムと一緒に剥離された。それ以外のエリア(即ち、接着剤層上の第一表示部分が形成されていないエリア)では、複層部材(Q1)の液晶硬化層が基材上に残り、支持フィルムだけが剥離された。よって、基材上の第一表示部分に隣接するエリアに、第二表示部分が形成された。これにより、図22に示すように、基材2と、基材2のCLC層側の面2Uに形成された第一表示部分3a及び第二表示部分3bを含む表示層3とを備える表示媒体1が得られた。第一表示部分3aと第二表示部分3bとは、隙間なく接していた。この表示媒体1を、上述した方法で評価した。
【0260】
(透過スペクトルの測定)
表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0261】
[実施例402]
(基材の表面での潜像の形成)
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)のCLC層側の面の矩形のエリアに、接着剤層を形成した。具体的には、粘着力を有する市販の接着剤を矩形に切り取り、複層部材(CLC_W)のCLC層側の面に貼り付けた。これにより、基材の表面に、接着剤によって矩形の潜像が形成された。
【0262】
(第一表示部分の形成)
製造例11で得た複層部材(Q1)の液晶硬化層に対して、国際公開第2019/189246号の実施例1記載の方法で、20μm幅で複数の亀裂を垂直に交差するように形成して、20μm角の格子状の亀裂を形成した。亀裂の深さは、液晶硬化層層の厚みより深く、且つ、支持フィルムまで切断しない深さに、プレス圧によって調整した。前述した加工をした複層部材(Q1)を、基材上に接着剤によって形成された潜像よりも小さい文字「T」の形状に切り出した。切り出された複層部材(Q1)の液晶硬化層側の面と、前記の基材の接着剤側の面とを貼り合わせた。その後、複層部材(Q1)の支持フィルムを剥離した。液晶硬化層が基材上に残ったので、基材上には、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示部分が形成された。この第一表示部分は、厚み方向に垂直な一方向に遅相軸を有していた。
【0263】
(第二表示部分の形成)
前記のように亀裂を形成された液晶硬化層を備える複層部材(Q1)の液晶硬化層側の面と、前記の基材の接着剤側の面とを、貼り合わせた。この貼り合わせは、第一表示部分の遅相軸に対して、複層部材(Q1)が有する液晶硬化層の遅相軸が45°の角度をなすように行った。その後、複層部材(Q1)の支持フィルムを剥離した。接着剤層が無いエリア、及び、第一表示部分が形成されたエリアでは、複層部材(Q1)の液晶硬化層は基材上に残らず、支持フィルムと一緒に剥離された。それ以外のエリア(即ち、接着剤層上の第一表示部分が形成されていないエリア)では、複層部材(Q1)の液晶硬化層が基材上に残り、支持フィルムだけが剥離された。よって、基材上の第一表示部分の周囲のエリアに、第二表示部分が形成された。これにより、図23に示すように、厚み方向から見て文字「T」の形状を有する第一表示部分6aと、この第一表示部分6aの周囲に設けられた第二表示部分6bとを含む表示層6を備える表示媒体4が得られた。第一表示部分6aと第二表示部分6bとは、隙間なく接していた。この表示媒体4を、上述した方法で評価した。
【0264】
(透過スペクトルの測定)
表示媒体の評価後に、実施例101と同じ方法によって、第一表示部分及び第二表示部分の非偏光に対する透過スペクトルを測定した。測定の結果、第一表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第一表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;第二表部分の透過率のバラツキが±5%の範囲内であるので、第二表示部分の透過スペクトルが可視波長範囲において略均一であること;及び、第一表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、第二表示部分の可視波長範囲における透過率の平均値と、の差が、±5%の範囲内であるので、第一表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルと第二表示部分の可視波長範囲における透過スペクトルとが略同一であること;が確認された。
【0265】
[実施例403]
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の支持フィルム側の面に、有色層としての黒色の紙を、接着剤を介して貼り合わせて、有色層を含む基材を得た。この基材のCLC層側の面に、実施例402と同じ方法により、表示層を形成した。これにより、有色層、接着剤層、支持フィルム、及び、CLC層をこの順に備える基材と、この基材上に形成された第一表示部分及び第二表示部分とを含む表示層とを備える表示媒体を得た。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0266】
[実施例404]
第一表示部分の遅相軸に対して第二表示部分の遅相軸が90°の角度をなすように、基材と複層部材(Q1)との貼り合わせ角度を変更した。以上の事項以外は、実施例403と同じ方法により、基材(有色層、接着剤層、支持フィルム、及び、CLC層)及び表示層を備える表示媒体を製造した。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0267】
[実施例405]
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の代わりに、製造例3で製造した複層部材(CLC_M)を用いた。以上の事項以外は、実施例403と同じ方法により、基材(有色層、接着剤層、支持フィルム、及び、CLC層)及び表示層を備える表示媒体を製造した。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0268】
[実施例406]
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の代わりに、製造例5で製造した複層部材(CLC_R)を用いた。以上の事項以外は、実施例403と同じ方法により、基材(有色層、接着剤層、支持フィルム、及び、CLC層)及び表示層を備える表示媒体を製造した。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0269】
[実施例407]
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の代わりに、製造例9で製造した複層部材(CLC_B)を用いた。以上の事項以外は、実施例403と同じ方法により、基材(有色層、接着剤層、支持フィルム、及び、CLC層)及び表示層を備える表示媒体を製造した。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0270】
[実施例408]
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の代わりに、製造例7で製造した複層部材(CLC_G)を用いた。以上の事項以外は、実施例403と同じ方法により、基材(有色層、接着剤層、支持フィルム、及び、CLC層)及び表示層を備える表示媒体を製造した。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0271】
[実施例409]
製造例1で製造した複層部材(CLC_W)の代わりに、製造例8で製造した複層部材(CLC_rG)を用いた。以上の事項以外は、実施例403と同じ方法により、基材(有色層、接着剤層、支持フィルム、及び、CLC層)及び表示層を備える表示媒体を製造した。表示層に含まれる第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0272】
[比較例1]
製造例5で得た複層部材(CLC_R)から支持フィルムを剥離し、得られたCLC層を粉砕して、CLC層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのCLC顔料(R)を得た。このCLC顔料(R)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(R)を得た。
【0273】
製造例6で得た複層部材(CLC_rR)から支持フィルムを剥離し、得られたCLC層を粉砕して、CLC層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのCLC顔料(rR)を得た。このCLC顔料(rR)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(rR)を得た。
【0274】
第一表示部分を形成するためのインキとして、インキ(W)の代わりにインキ(R)を用いた。また、第二表示部分を形成するためのインキとして、インキ(rW)の代わりにインキ(rR)を用いた。以上の事項以外は実施例102と同じ方法により、基材と、基材上に形成された第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層とを備える表示媒体を得た。第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0275】
[比較例2]
製造例7で得た複層部材(CLC_G)から支持フィルムを剥離し、得られたCLC層を粉砕して、CLC層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのCLC顔料(G)を得た。このCLC顔料(G)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(G)を得た。
【0276】
製造例8で得た複層部材(CLC_rG)から支持フィルムを剥離し、得られたCLC層を粉砕して、CLC層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのCLC顔料(rG)を得た。このCLC顔料(rG)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(rG)を得た。
【0277】
第一表示部分を形成するためのインキとして、インキ(W)の代わりにインキ(G)を用いた。また、第二表示部分を形成するためのインキとして、インキ(rW)の代わりにインキ(rG)を用いた。以上の事項以外は実施例102と同じ方法により、基材と、基材上に形成された第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層とを備える表示媒体を得た。第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0278】
[比較例3]
製造例9で得た複層部材(CLC_B)から支持フィルムを剥離し、得られたCLC層を粉砕して、CLC層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのCLC顔料(B)を得た。このCLC顔料(B)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(B)を得た。
【0279】
製造例10で得た複層部材(CLC_rB)から支持フィルムを剥離し、得られたCLC層を粉砕して、CLC層のフレークを得た。得られたフレークを篩を用いて分級し、篩を通過したフレークを回収して、平均粒子径45μmのCLC顔料(rB)を得た。このCLC顔料(rB)5部、スクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)85部、及び、当該スクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)5部を混合して、インキ(rB)を得た。
【0280】
第一表示部分を形成するためのインキとして、インキ(W)の代わりにインキ(B)を用いた。また、第二表示部分を形成するためのインキとして、インキ(rW)の代わりにインキ(rB)を用いた。以上の事項以外は実施例102と同じ方法により、基材と、基材上に形成された第一表示部分及び第二表示部分を含む表示層とを備える表示媒体を得た。第一表示部分と第二表示部分とは、隙間なく接していた。この表示媒体を、上述した方法で評価した。
【0281】
[結果]
実施例及び比較例の結果を、下記の表に示す。
【0282】
【表1】
【0283】
【表2】
【符号の説明】
【0284】
10、11、12、20、21、22、30、31、32、40、41 表示媒体
100 基材
100U 基材の面
110 支持層
200 表示層
210 第一表示部分
211 第一反射層
220 第二表示部分
221 第二反射層
300 位相差層
400 基材
410 有色層
500 表示層
510 第一表示部分
511 第一反射層
520 第二表示部分
521 第二反射層
600 基材
600U 基材の面
610 偏光分離層
700 表示層
710 第一表示部分
711 λ/2層
720 第二表示部分
721 光学等方層
800 基材
900 表示層
910 第一表示部分
911 λ/4層
920 第二表示部分
921 λ/4層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23