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特許7552782半導体用フィルム状接着剤、半導体用フィルム状接着剤の製造方法、接着剤テープ、半導体装置の製造方法及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】半導体用フィルム状接着剤、半導体用フィルム状接着剤の製造方法、接着剤テープ、半導体装置の製造方法及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240910BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20240910BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20240910BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20240910BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240910BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20240910BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01L23/30 B
C09J7/30
C09J163/00
C09J11/06
C09J4/02
B32B27/38
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023070817
(22)【出願日】2023-04-24
【審査請求日】2024-07-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100211018
【弁理士】
【氏名又は名称】財部 俊正
(72)【発明者】
【氏名】石毛 紘之
(72)【発明者】
【氏名】木村 亮介
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎
(72)【発明者】
【氏名】祖父江 省吾
【審査官】清水 稔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/115191(WO,A1)
【文献】特開2022-186809(JP,A)
【文献】特開2010-123911(JP,A)
【文献】特開2009-239138(JP,A)
【文献】国際公開第2020/100696(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/110785(WO,A1)
【文献】特表2011-515839(JP,A)
【文献】国際公開第2013/146141(WO,A1)
【文献】特表2021-531374(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1414393(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
C09J 7/30
C09J 163/00
C09J 11/06
C09J 4/02
B32B 27/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚さ方向に沿って、フラックス化合物を含まない第1の接着剤領域と、フラックス化合物を含む第2の接着剤領域とを有し、
前記第1の接着剤領域が、第1のエポキシ樹脂と、第1のイミダゾール系硬化剤と、(メタ)アクリル化合物と、を含み、
前記第2の接着剤領域が、第2のエポキシ樹脂と、第2のイミダゾール系硬化剤と、前記フラックス化合物と、を含む、半導体用フィルム状接着剤。
【請求項2】
前記第1の接着剤領域が、ラジカル重合開始剤を含まない、請求項1に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【請求項3】
前記第1のエポキシ樹脂及び前記第2のエポキシ樹脂の少なくとも一方が、25℃で液状のエポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【請求項4】
前記第1のエポキシ樹脂及び前記第2のエポキシ樹脂の少なくとも一方が、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂を含む、請求項1に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【請求項5】
第1のイミダゾール系硬化剤及び第2のイミダゾール系硬化剤の少なくとも一方がトリアジン環を有する、請求項1に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【請求項6】
前記第1の接着剤領域における、前記(メタ)アクリル化合物の含有量に対する前記第1のエポキシ樹脂の含有量の比が、質量比で、3~11である、請求項1に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【請求項7】
前記(メタ)アクリル化合物が、(メタ)アクリロイル基を2~8有する多官能(メタ)アクリル化合物を含む、請求項1に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【請求項8】
前記フラックス化合物が、ポリカルボン酸を含む、請求項1に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【請求項9】
前記第1の接着剤領域の厚さが1~50μmであり、
前記第2の接着剤領域の厚さが、前記第1の接着剤領域の厚さの0.5~2倍である、請求項1に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【請求項10】
非導電性である、請求項1に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【請求項11】
半導体チップと基体とを接合するとともに、前記半導体チップと前記基体との隙間を封止するために用いられる、請求項1に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体用フィルム状接着剤の製造方法であって、
第1の接着剤層、及び、第2の接着剤層のうちの一方を他方の上に設ける工程を備え、
前記第1の接着剤層が、フラックス化合物を含まず、前記第1のエポキシ樹脂と、前記第1のイミダゾール系硬化剤と、前記(メタ)アクリル化合物と、を含む層であり、
前記第2の接着剤層が、前記第2のエポキシ樹脂と、前記第2のイミダゾール系硬化剤と、前記フラックス化合物と、を含む層である、半導体用フィルム状接着剤の製造方法。
【請求項13】
請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体用フィルム状接着剤と、
前記半導体用フィルム状接着剤上であって、前記第2の接着剤領域からみて、前記第1の接着剤領域側とは反対側に設けられたバックグラインドテープと、を備える、接着剤テープ。
【請求項14】
半導体チップと、前記第1の接着剤領域の前記第2の接着剤領域とは反対側の面が前記半導体チップ側を向くように前記半導体チップ上に設けられた、請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体用フィルム状接着剤と、を備える、フィルム状接着剤付き半導体チップを用意する工程と、
前記フィルム状接着剤付き半導体チップを、前記フィルム状接着剤側から基体上に配置し、加熱することにより、前記半導体チップの接続部と前記基体の接続部とを電気的に接続するとともに、前記半導体チップと前記基体との隙間を封止する工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【請求項15】
第1接続部を有する半導体チップと、前記第1接続部と電気的に接続された第2接続部を有する基体と、前記半導体チップと前記基体とを接合するとともに、前記半導体チップと前記基体との隙間を充填する封止部と、を備え、
前記封止部が、請求項1~11のいずれか一項に記載の半導体用フィルム状接着剤の硬化物である、半導体装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体用フィルム状接着剤、半導体用フィルム状接着剤の製造方法、接着剤テープ、半導体装置の製造方法及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップと基板とを接続するには、金ワイヤ等の金属細線を用いるワイヤーボンディング方式が広く適用されている。一方、半導体装置に対する高機能化、高集積化、高速化等の要求に対応するため、半導体チップ又は基板にバンプと呼ばれる導電性突起を形成して、半導体チップと基板とを直接接続するフリップチップ接続方式(FC接続方式)が広まりつつある。
【0003】
例えば、半導体チップ及び基板間の接続に関して、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)等に盛んに用いられているCOB(Chip On Board)型の接続方式もFC接続方式に該当する。また、FC接続方式は、半導体チップ上に接続部(例えば、バンプ及び配線)を形成して、半導体チップ間を接続するCOC(Chip On Chip)型の接続方式にも広く用いられている。
【0004】
また、さらなる小型化、薄型化及び高機能化が強く要求されるパッケージでは、上述した接続方式を用いてチップを積層し多段化した、チップスタック型パッケージ、POP(Package On Package)、TSV(Through-Silicon Via)等も広く普及し始めている。このような積層・多段化技術は、半導体チップ等を三次元的に配置することから、二次元的に配置する手法と比較してパッケージを小さくできる。また、半導体の性能向上、ノイズ低減、実装面積の削減、省電力化等にも有効であることから、次世代の半導体配線技術として注目されている。
【0005】
ところで、一般に接続部同士の接続には、接続信頼性(例えば絶縁信頼性)を十分に確保する観点から、金属接合が用いられている。上記接続部(例えば、バンプ及び配線)に用いられる主な金属としては、はんだ、スズ、金、銀、銅、ニッケル等があり、これらの複数種を含んだ導電材料も用いられている。接続部に用いられる金属は、表面が酸化して酸化膜が生成してしまうこと、及び、表面に酸化物等の不純物が付着してしまうことにより、接続部の接続面に不純物が生じる場合がある。このような不純物が残存すると、半導体チップと基板との間、又は2つの半導体チップの間における接続信頼性(例えば絶縁信頼性)が低下し、上述した接続方式を採用するメリットが損なわれてしまうことが懸念される。
【0006】
また、これらの不純物の発生を抑制する方法として、OSP(Organic Solderbility Preservatives)処理等で知られる接続部を酸化防止膜でコーティングする方法があるが、この酸化防止膜は接続プロセス時のはんだ濡れ性の低下、接続性の低下等の原因となる場合がある。
【0007】
そこで、上述の酸化膜及び不純物を除去する方法として、半導体材料にフラックス剤を含有する単層フィルムを用いた方法(例えば、特許文献1参照)、熱硬化性樹脂層と酸成分を含有する熱可塑性樹脂層とからなる二層フィルムを用いた方法等が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開2013/125086号
【文献】国際公開2016/117350号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示の一側面は、充分な封止性を確保しつつ、フィレットの発生量を抑えることができる、半導体用フィルム状接着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、以下の[1]~[15]を提供する。
【0011】
[1]
厚さ方向に沿って、フラックス化合物を含まない第1の接着剤領域と、フラックス化合物を含む第2の接着剤領域とを有し、
前記第1の接着剤領域が、第1のエポキシ樹脂と、第1のイミダゾール系硬化剤と、(メタ)アクリル化合物と、を含み、
前記第2の接着剤領域が、第2のエポキシ樹脂と、第2のイミダゾール系硬化剤と、前記フラックス化合物と、を含む、半導体用フィルム状接着剤。
【0012】
[2]
前記第1の接着剤領域が、ラジカル重合開始剤を含まない、[1]に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【0013】
[3]
前記第1のエポキシ樹脂及び前記第2のエポキシ樹脂の少なくとも一方が、25℃で液状のエポキシ樹脂を含む、[1]又は[2]に記載の半導体用フィルム状接着剤。
【0014】
[4]
前記第1のエポキシ樹脂及び前記第2のエポキシ樹脂の少なくとも一方が、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤。
【0015】
[5]
第1のイミダゾール系硬化剤及び第2のイミダゾール系硬化剤の少なくとも一方がトリアジン環を有する、[1]~[4]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤。
【0016】
[6]
前記第1の接着剤領域における、前記(メタ)アクリル化合物の含有量に対する前記第1のエポキシ樹脂の含有量の比が、質量比で、3~11である、[1]~[5]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤。
【0017】
[7]
前記(メタ)アクリル化合物が、(メタ)アクリロイル基を2~8有する多官能(メタ)アクリル化合物を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤。
【0018】
[8]
前記フラックス化合物が、ポリカルボン酸を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤。
【0019】
[9]
前記第1の接着剤領域の厚さが1~50μmであり、
前記第2の接着剤領域の厚さが、前記第1の接着剤領域の厚さの0.5~2倍である、[1]~[8]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤。
【0020】
[10]
非導電性である、[1]~[9]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤。
【0021】
[11]
半導体チップと基体とを接合するとともに、前記半導体チップと前記基体との隙間を封止するために用いられる、[1]~[10]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤。
【0022】
[12]
[1]~[11]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤の製造方法であって、
第1の接着剤層、及び、第2の接着剤層のうちの一方を他方の上に設ける工程を備え、
前記第1の接着剤層が、フラックス化合物を含まず、前記第1のエポキシ樹脂と、前記第1のイミダゾール系硬化剤と、前記(メタ)アクリル化合物と、を含む層であり、
前記第2の接着剤層が、前記第2のエポキシ樹脂と、前記第2のイミダゾール系硬化剤と、前記フラックス化合物と、を含む層である、半導体用フィルム状接着剤の製造方法。
【0023】
[13]
[1]~[11]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤と、
前記半導体用フィルム状接着剤上であって、前記第2の接着剤領域からみて、前記第1の接着剤領域側とは反対側に設けられたバックグラインドテープと、を備える、接着剤テープ。
【0024】
[14]
半導体チップと、前記第1の接着剤領域の前記第2の接着剤領域とは反対側の面が前記半導体チップ側を向くように前記半導体チップ上に設けられた、[1]~[11]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤と、を備える、フィルム状接着剤付き半導体チップを用意する工程と、
前記フィルム状接着剤付き半導体チップを、前記フィルム状接着剤側から基体上に配置し、加熱することにより、前記半導体チップの接続部と前記基体の接続部とを電気的に接続するとともに、前記半導体チップと前記基体との隙間を封止する工程と、を備える、半導体装置の製造方法。
【0025】
[15]
第1接続部を有する半導体チップと、前記第1接続部と電気的に接続された第2接続部を有する基体と、前記半導体チップと前記基体とを接合するとともに、前記半導体チップと前記基体との隙間を充填する封止部と、を備え、
前記封止部が、[1]~[11]のいずれかに記載の半導体用フィルム状接着剤の硬化物である、半導体装置。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、充分な封止性を確保しつつ、フィレットの発生量を抑えることができる、半導体用フィルム状接着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本開示の半導体用フィルム状接着剤の一実施形態を示す模式断面図である。
図2図2の(a)は、本開示の半導体装置の一実施形態を示す模式断面図であり、図2の(b)は、本開示の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
図3図3は、本開示の半導体装置の他の一実施形態を示す模式断面図である。
図4図4は、本開示の半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。
図5図5は、図4に続く工程を模式的に示す工程断面図である。
図6図6は、図5に続く工程を模式的に示す工程断面図である。
図7図7は、図6に続く工程を模式的に示す工程断面図である。
図8図8は、図7に続く工程を模式的に示す工程断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル、及び、それに対応するメタクリルの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」等の他の類似の表現においても同様である。また、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。また、以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該複数の物質の合計量を意味する。
【0029】
以下、場合により図面を参照しつつ本開示の実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0030】
<半導体用フィルム状接着剤>
一実施形態の半導体用フィルム状接着剤(以下、単に「フィルム状接着剤」という。)は、半導体チップ等の接続部材の接続(接合)及び封止に用いられる接着剤であり、半導体チップと基体とを接合するとともに、半導体チップと基体との隙間を封止するために好適に用いられる。
【0031】
図1は、一実施形態のフィルム状接着剤を示す模式断面図である。同図に示されるフィルム状接着剤1は、厚さ方向(図1の上下方向)に沿って、フラックス化合物を含まない第1の接着剤領域2と、フラックス化合物を含む第2の接着剤領域3とを有する。第1の接着剤領域2は、エポキシ樹脂と、イミダゾール系硬化剤と、(メタ)アクリル化合物と、を含み、第2の接着剤領域は、エポキシ樹脂と、イミダゾール系硬化剤と、上記フラックス化合物と、を含む。以下では、第1の接着剤領域2を構成する接着剤を第1の接着剤といい、第2の接着剤領域3を構成する接着剤を第2の接着剤という。また、第1の接着剤に含まれるエポキシ樹脂及びイミダゾール系硬化剤をそれぞれ第1のエポキシ樹脂及び第1のイミダゾール系硬化剤といい、第2の接着剤に含まれるエポキシ樹脂及びイミダゾール系硬化剤をそれぞれ第2のエポキシ樹脂及び第2のイミダゾール系硬化剤という。
【0032】
第1の接着剤領域2及び第2の接着剤領域3は、所定の厚みを有しており、例えば、図1に示すように、フィルム状接着剤1の主面方向(図1の左右方向)に沿って延在している。第1の接着剤領域2及び第2の接着剤領域3は、層状であってもよい。すなわち、第1の接着剤領域2及び第2の接着剤領域3は、それぞれ第1の接着剤層及び第2の接着剤層であってもよい。第1の接着剤領域2と第2の接着剤領域3との境界は、必ずしも明瞭ではなく、視認可能でない場合もある。なお、図1において、第1の接着剤領域2と第2の接着剤領域3とは互いに隣接しているが、第1の接着剤領域2と第2の接着剤領域3との間に、第1の接着剤領域2及び第2の接着剤領域3とは異なる領域(例えば第1の接着剤と第2接着剤との混合物を含む領域)が存在していてもよい。
【0033】
ところで、近年、パッケージの高機能化及び高集積化に伴い、層間のギャップ及び配線間のピッチが狭くなってきていることから、接続時に流動した接着剤が接続部材(例えば半導体チップ)の端からはみ出しやすくなっており、フィレットと呼ばれるはみ出し部分が形成されやすくなってきている。このようなフィレットは接続部材の破損の原因となり得るため、充分な封止性を確保しつつ、フィレットの発生量を低減する手法の開発が求められている。フィレットを抑制するために単に流動性の低い接着剤を用いる場合、接続部材の接続部間が接着剤で充分に埋め込まれずにボイド等の不具合の原因となることがあるため、単に接着剤の流動性を低くするだけでは上記問題の解決は困難である。
【0034】
一方、本発明者らの検討結果、上記フィルム状接着剤によれば、充分な封止性を確保しつつ、接続部材同士の接続を行う際のボイドの発生及び接着剤の過剰な流動によるフィレットの発生を抑制し得ることが明らかになった。このような効果が奏される理由は定かではないが、第1の接着剤領域2及び第2の接着剤領域3が上記特定の組成を有することから、第1の接着剤領域2が貼り付け時にはボイドの発生の原因となる未充填部を生じさせにくい適度な流動性を有しつつ、接続時には第2の接着剤領域3よりも早く硬化してフィレットの発生の原因となる過度な流動を生じ難いこと、第2の接着剤領域3が第1の接着剤領域2よりも流動しやすく、未封止部を生じさせ難いこと等が原因と推察される。
【0035】
第1の接着剤領域2の厚さ(フィルム状接着剤1の厚さ方向の長さ)は、フィルム状接着剤1が貼り付けられる接続部材における接続部の高さとの関係で適宜設定されてよい。上記接続部の高さをy1とし、第1の接着剤領域2の厚さをx1とすると、x1とy1との関係は、第1の接着剤の硬化物が接続部間に介入し難くなり、接続信頼性をさらに向上させることができる観点から、x1<y1を満たすことが好ましく、1.0x1<y1≦1.5x1を満たすことがより好ましい。具体的には、第1の接着剤領域2の厚さは、1~50μmであってよく、3~50μm、4~30μm又は5~20μmであってもよい。
【0036】
第2の接着剤領域3の厚さは、第1の接着剤領域2の厚さの0.5~2倍であってよく、0.5~2.5倍又は0.5~3倍であってもよい。具体的には、第2の接着剤領域3の厚さ(フィルム状接着剤1の厚さ方向の長さ)は、1~50μmであってよく、3~50μm、4~30μm又は5~20μmであってもよい。
【0037】
フィルム状接着剤1の厚さ(例えば第1の接着剤領域2の厚さと第2の接着剤領域3の厚さの合計)は、接続部材が有する接続部との関係で適宜設定されてよい。接続部の高さの和をxとし、フィルム状接着剤の総厚をyとした場合、xとyとの関係は、圧着時の接続性及び接着剤の充填性の観点から、0.70x≦y≦1.3xを満たすことが好ましく、0.80x≦y≦1.2xを満たすことがより好ましい。第1の接着剤の硬化物が接続部の間に介入し難くなり、接続信頼性がより一層向上する観点では、y>xを満たすことが好ましい。具体的には、フィルム状接着剤1の厚さは、2~100μmであってよく、6~100μm、8~60μm又は10~40μmであってもよい。
【0038】
以下、第1の接着剤領域2を構成する第1の接着剤、及び、第2の接着剤領域3を構成する第2の接着剤について説明する。
【0039】
(第1の接着剤)
第1の接着剤は、第1のエポキシ樹脂と、第1のイミダゾール系硬化剤と、(メタ)アクリル化合物と、を含み、フラックス化合物を含まない。ここで、第1の接着剤がフラックス化合物を含まないとは、第1の接着剤におけるフラックス化合物の含有量が、現状の検出限界以下(例えば、第1の接着剤の全量基準で0.01質量%以下)であることを意味する。
【0040】
[第1のエポキシ樹脂]
第1のエポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物である。第1のエポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂及び各種多官能エポキシ樹脂を使用することができる。これらは単独で又は2種以上の混合物として使用することができる。これらの中でも、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂(トリフェノールメタン骨格含有エポキシ樹脂)を用いる場合、フィレットの発生量がより低減される傾向がある。
【0041】
第1のエポキシ樹脂は、高温での接続時に分解して揮発成分が発生することを抑制する観点から、接続時の温度が250℃の場合は、250℃における熱重量減少量率が5%以下のエポキシ樹脂を用いることが好ましく、接続時の温度が300℃の場合は、300℃における熱重量減少量率が5%以下のエポキシ樹脂を用いることが好ましい。
【0042】
第1のエポキシ樹脂としては、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、25℃で液状のエポキシ樹脂(以下、単に「液状エポキシ樹脂」という。)を用いてもよい。ここで、「25℃で液状」とは、E型粘度計で測定した25℃における粘度が400Pa・s以下であることをいう。液状エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、ビスフェノールAD型のグリシジルエーテル、ビスフェノールS型のグリシジルエーテル、ビスフェノールF型のグリシジルエーテル、水添加ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、エチレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、プロピレンオキシド付加体ビスフェノールA型のグリシジルエーテル、ナフタレン樹脂のグリシジルエーテル、3官能型又は4官能型のグリシジルアミン等が挙げられる。
【0043】
第1の接着剤における液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルム表面の割れ及びひびの発生を抑制しやすい観点から、第1の接着剤に含まれる第1のエポキシ樹脂の全量を基準として、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。液状エポキシ樹脂の含有量は、フィルムのタック性が過剰に高まることを抑制しやすい観点、及び、エッジフュージョンを抑制しやすい観点から、第1のエポキシ樹脂の全量を基準として、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0044】
第1のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、100~3000g/eqであってよく、100~2000g/eq又は100~1500g/eqであってもよい。第1のエポキシ樹脂のエポキシ当量が上記範囲にあると、加熱時の反応性と流動性のバランスが良好となりやすい。
【0045】
第1の接着剤における第1のエポキシ樹脂の含有量は、フィレットの発生を抑制しやすくする観点では、第1の接着剤の全量基準で、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。第1のエポキシ樹脂の含有量は、良好な封止性が得られやすくなる観点、及び、ボイドの発生が抑制されやすくなる観点では、第1の接着剤の全量を基準として、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0046】
第1の接着剤における第1のエポキシ樹脂の含有量は、上記(メタ)アクリル化合物の含有量との関係で設定されてもよい。第1の接着剤における、(メタ)アクリル化合物の含有量に対する第1のエポキシ樹脂の含有量の比が、質量比で、3~11であると、高い接続信頼性が得られやすくなり、フィレットの発生量もより低減される傾向がある。上記比は、フィレットの発生量がさらに低減される観点から、5以上、7以上又は9以上であってもよく、上記効果に加えて、良好な封止性が得られやすくなる観点、及び、ボイドの発生が抑制されやすくなる観点から、10以下であってもよい。
【0047】
[第1のイミダゾール系硬化剤]
イミダゾール系硬化剤としては、例えば、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノ-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾールトリメリテイト、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾリウムトリメリテイト、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-ウンデシルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-エチル-4’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジン、2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加体、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、及び、エポキシ樹脂とイミダゾール類の付加体が挙げられる。また、これらをマイクロカプセル化した潜在性硬化剤を用いることもできる。これらは単独で又は2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、より良好な封止性が得られやすくなる観点及びボイドの発生を抑制しやすくなる観点では、トリアジン環を有する化合物が好ましく用いられる。
【0048】
第1の接着剤における第1のイミダゾール系硬化剤の含有量は、加熱時の硬化性が向上する観点から、第1の接着剤に含まれる第1のエポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。第1のイミダゾール系硬化剤の含有量は、接続部間への第1の接着剤の介入をより起こり難くすることができる観点では、第1のエポキシ樹脂100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0049】
[(メタ)アクリル化合物]
(メタ)アクリル化合物は、分子内に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物である。(メタ)アクリル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ナフタレン型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、フェノールアラルキル型、ビフェニル型、トリフェニルメタン型、ジシクロペンタジエン型、フルオレン型、アダマンタン型又はイソシアヌル酸型の骨格を含有する(メタ)アクリル化合物;各種多官能(メタ)アクリル化合物(前記骨格を含有する(メタ)アクリル化合物を除く)等を使用することができる。多官能(メタ)アクリル化合物としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート(ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等)、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの中でも、多官能(メタ)アクリル化合物が好ましく、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレートがより好ましい。多官能(メタ)アクリル化合物の官能基数((メタ)アクリロイル基の数)は、好ましくは2~8であり、より好ましくは3~7であり、さらに好ましくは4~6である。
【0050】
(メタ)アクリル化合物の分子量は、例えば、400~2000である。(メタ)アクリル化合物の分子量は、2000より小さいことが好ましく、1000以下であることがより好ましい。(メタ)アクリル化合物の分子量が小さいほど反応が進行しやすく、硬化反応率が高くなる。
【0051】
(メタ)アクリル化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
第1の接着剤における(メタ)アクリル化合物の含有量は、フィレットの発生量をより低減する観点では、第1の接着剤の全量を基準として、1質量%以上が好ましく、3質量%以上がより好ましく、5質量%以上がさらに好ましい。(メタ)アクリル化合物の含有量は、封止性を向上させる観点及びボイドの発生を抑制する観点では、第1の接着剤の全量を基準として、10質量%以下が好ましく、7質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。これらの観点から、(メタ)アクリル化合物の含有量は、第1の接着剤の全量を基準として、1~10質量%が好ましく、3~7質量%がより好ましく、3~5質量%がさらに好ましい。
【0053】
[その他の成分]
第1の接着剤は、上記以外の成分(その他の成分)をさらに含有してもよい。
【0054】
例えば、第1の接着剤は、エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂(熱により熱硬化剤との反応によって硬化する化合物)を含んでいてもよい。エポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。第1の接着剤がエポキシ樹脂以外の熱硬化性樹脂を含有する場合、第1の接着剤における第1のエポキシ樹脂の含有量は、第1の接着剤に含まれる熱硬化性樹脂の全量を基準として、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。第1のエポキシ樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂の全量を基準として、100質量%であってもよい。
【0055】
また、例えば、第1の接着剤は、イミダゾール系硬化剤以外の熱硬化剤を含んでいてもよい。イミダゾール系硬化剤以外の熱硬化剤としては、フェノール樹脂系硬化剤、酸無水物系硬化剤、アミン系硬化剤、ホスフィン系硬化剤等が挙げられる。第1の接着剤がイミダゾール系硬化剤以外の熱硬化剤を含有する場合、第1の接着剤における第1のイミダゾール系硬化剤の含有量は、加熱を低温で実施した場合に速やかに硬化を進行させることができる、接続部に酸化膜が生じることを抑制するフラックス活性により、接続信頼性を向上させることができるといった観点から、第1の接着剤に含まれる熱硬化剤の全量を基準として、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。第1のイミダゾール系硬化剤の含有量は、熱硬化剤の全量を基準として、100質量%であってもよい。
【0056】
また、例えば、第1の接着剤は、(メタ)アクリル化合物以外のラジカル重合性化合物(熱、光、放射線、電気化学的作用等によるラジカルの発生に伴い、ラジカル重合反応が可能である化合物)を含んでいてもよい。(メタ)アクリル化合物以外のラジカル重合性化合物としては、ビニル化合物等が挙げられる。第1の接着剤が(メタ)アクリル化合物以外のラジカル重合性化合物を含有する場合、第1の接着剤における(メタ)アクリル化合物の含有量は、第1の接着剤に含まれるラジカル重合性化合物の全量を基準として、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。(メタ)アクリル化合物の含有量は、ラジカル重合性化合物の全量を基準として、100質量%であってもよい。
【0057】
また、例えば、第1の接着剤は熱可塑性樹脂を含有していてもよい。熱可塑性樹脂は、耐熱性の向上及びフィルム形成性の向上に寄与する。熱可塑性樹脂としては、例えば、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂及びアクリルゴムが挙げられる。これらの中でも、優れた耐熱性及びフィルム形成性が得られやすくなる観点から、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリルゴム、シアネートエステル樹脂及びポリカルボジイミド樹脂が好ましく、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂及びアクリルゴムがより好ましい。これらの熱可塑性樹脂は単独で又は2種以上の混合物若しくは共重合体として使用することもできる。
【0058】
熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、例えば10000以上であり、20000以上又は30000以上であってもよい。このような熱可塑性樹脂によれば、第1の接着剤の耐熱性及びフィルム形成性を一層向上させることができる。熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、耐熱性の向上効果が得られやすくなる観点から、1000000以下であってよく、500000以下であってもよい。なお、本明細書において、重量平均分子量とは、高速液体クロマトグラフィー(株式会社島津製作所製、商品名:C-R4A)を用いて、ポリスチレン換算で測定したときの重量平均分子量を意味する。測定には、例えば、下記の条件を用いることができる。
検出器:LV4000 UV Detector(株式会社日立製作所製、商品名)
ポンプ:L6000 Pump(株式会社日立製作所製、商品名)
カラム:Gelpack GL-S300MDT-5(計2本)(日立化成株式会社製、商品名)
溶離液:THF/DMF=1/1(容積比)+LiBr(0.03mol/L)+H3PO4(0.06mol/L)
流量:1mL/分
【0059】
熱可塑性樹脂のガラス転移温度(Tg)は、フィルム状接着剤1の接続部材(例えば半導体チップ)への貼付性に優れる観点から、120℃以下が好ましく、100℃以下がより好ましく、85℃以下がさらに好ましい。上記Tgとは、DSC(パーキンエルマー社製、商品名:DSC-7型)を用いて、サンプル量10mg、昇温速度10℃/分、測定雰囲気:空気の条件で測定したときのTgである。
【0060】
第1の接着剤における熱可塑性樹脂の含有量は、第1の接着剤の耐熱性及びフィルム形成性が向上しやすくなる観点から、第1の接着剤の全量基準で、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。熱可塑性樹脂の含有量は、フィレットの発生を抑制しやすくする観点では、第1の接着剤の全量を基準として、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0061】
また、例えば、第1の接着剤は、フィラー(充填剤)を含有していてもよい。フィラーは、第1の接着剤の粘度、第1の接着剤の硬化物の物性等の制御に有効である。具体的には、フィラーを用いることで、接続時のボイド発生の抑制、第1の接着剤の硬化物の吸湿率の低減等を図ることができる。フィラーは、無機フィラー(無機粒子)であっても、有機フィラー(有機粒子)であってもよい。無機フィラーとしては、ガラス、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、窒化ホウ素等の絶縁性無機フィラーが挙げられる。これらの中でも、シリカ、アルミナ、酸化チタン及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましく、シリカ、アルミナ及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることがより好ましい。有機フィラーとしては、例えば、樹脂フィラー(樹脂粒子)が挙げられる。樹脂フィラーとしては、ポリウレタン、ポリイミド等が挙げられる。樹脂フィラーによれば、260℃等の高温での柔軟性を付与することができる。なお、熱可塑性樹脂で構成される有機フィラーは、上記熱可塑性樹脂には該当しないものとする。
【0062】
絶縁信頼性にさらに優れる観点から、フィラーは絶縁性であることが好ましい。第1の接着剤は、銀、はんだ、カーボンブラック等の導電性材料を含むフィラー(導電性フィラー)を含有していないことが好ましい。
【0063】
フィラーの物性は、表面処理によって適宜調整されてもよい。フィラーは、分散性又は接着力が向上する観点から、表面処理を施したフィラーであってよい。表面処理剤としては、グリシジル系(エポキシ系)、アミン系、フェニル系、フェニルアミノ系、(メタ)アクリル系、ビニル系の化合物等が挙げられる。
【0064】
フィラーの平均粒径は、例えば、0.5~1.5μmである。フィラーの平均粒径は、フリップチップ接続時のかみ込み防止の観点から、1.5μm以下が好ましく、視認性(透明性)に優れる観点から、1.0μm以下がより好ましい。なお、フィラーの平均粒径は、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径であり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0065】
第1の接着剤におけるフィラーの含有量は、放熱性が低くなることが抑制される観点、及び、ボイドの発生、吸湿率が大きくなること等を抑制しやすい観点から、第1の接着剤の全量を基準として、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。フィラーの含有量は、接続部へのフィラーの噛み込み(トラッピング)が生じることを抑制する観点から、第1の接着剤の全量を基準として、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0066】
フィラーが無機フィラーと有機フィラーとを含む場合、第1の接着剤における無機フィラーの含有量は、第1の接着剤に含まれるフィラーの全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上又は80質量%以上であってよく、98質量%以下、95質量%以下又は90質量%以下であってよく、60~98質量%、70~95質量%又は80~90質量%であってよい。
【0067】
また、例えば、第1の接着剤は、ラジカル重合開始剤を含有していてもよい。ラジカル重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤であってよく、熱ラジカル重合開始剤であってもよい。
【0068】
光ラジカル重合開始剤は、例えば、150~750nmの範囲内の波長を含む光(例えば紫外光)の照射により分解して遊離ラジカルを発生する化合物であり、オキシムエステル構造、ビスイミダゾール構造、アクリジン構造、α-アミノアルキルフェノン構造、アミノベンゾフェノン構造、N-フェニルグリシン構造、アシルフォスフィンオキサイド構造、ベンジルジメチルケタール構造、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造、α-ヒドロキシアセトフェノン構造等の構造を有する公知の光重合開始剤が挙げられる。
【0069】
熱ラジカル重合開始剤としては、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、ジラウロイルパーオキサイド、1-シクロヘキシル-1-メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t-ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(2-エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、t-ヘキシルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、ジ(3-メチルベンゾイル)パーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジ(4-メチルベンゾイル)パーオキサイド、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイン酸、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシラウレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(3-メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート、t-ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジブチルパーオキシトリメチルアジペート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1’-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリン酸)、1,1’-アゾビス(1-シクロヘキサンカルボニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。
【0070】
第1の接着剤におけるラジカル重合開始剤の含有量は、フィレットの抑制、ボイドの低減、及び封止性の向上といった効果をさらに高める観点から、第1の接着剤に含まれる(メタ)アクリル化合物100質量部に対して、0.1質量部未満であることが好ましく、0.01質量部以下であることがより好ましい。同様の観点から、第1の接着剤は、ラジカル重合開始剤を含まないことがさらに好ましい。ここで、第1の接着剤がラジカル重合開始剤を含まないとは、第1の接着剤におけるラジカル重合開始剤の含有量が、現状の検出限界以下(例えば、第1の接着剤の全量基準で0.01質量%以下)であることを意味する。
【0071】
第1の接着剤には、酸化防止剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、レベリング剤、イオントラップ剤等の添加剤がさらに含有されていてもよい。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの含有量については、各添加剤の効果が発現するように適宜調整すればよい。
【0072】
(第2の接着剤)
第2の接着剤は、第2のエポキシ樹脂と、第2のイミダゾール系硬化剤と、フラックス化合物と、を含む。
【0073】
[第2のエポキシ樹脂及び第2のイミダゾール系硬化剤]
第2のエポキシ樹脂及び第2のイミダゾール系熱硬化剤としては、第1のエポキシ樹脂及び第1のイミダゾール系硬化剤として例示したものと同じものを使用することができ、それらの好ましい態様も同じである。第1のエポキシ樹脂と第2のエポキシ樹脂とは同じであっても異なっていてもよく、第1のイミダゾール系硬化剤と第2のイミダゾール系硬化剤とは同じであっても異なっていてもよい。
【0074】
第2の接着剤における第2のエポキシ樹脂の含有量は、フィレットの発生を抑制しやすくする観点では、第2の接着剤の全量基準で、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。第2のエポキシ樹脂の含有量は、良好な封止性及び接着性が得られやすくなる観点では、第2の接着剤の全量を基準として、50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。
【0075】
第2の接着剤における第2のイミダゾール系硬化剤の含有量は、加熱時の硬化性が向上する観点から、第2の接着剤に含まれる第2のエポキシ樹脂100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、2質量部以上がより好ましく、3質量部以上がさらに好ましい。第2のイミダゾール系硬化剤の含有量は、接続部間への第2の接着剤の介入をより起こり難くすることができる観点では、第2の接着剤に含まれる第2のエポキシ樹脂100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、7質量部以下がより好ましく、5質量部以下がさらに好ましい。
【0076】
[フラックス化合物]
フラックス化合物は、フラックス活性を有する化合物である。フラックス化合物としては、はんだ等の表面の酸化膜を還元除去して、金属接合を容易にするものであれば、特に制限なく公知のものを用いることができる。フラックス化合物は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0077】
フラックス化合物は、充分なフラックス活性が得られ、より優れた接続信頼性が得られる観点から、カルボキシ基を有する化合物(カルボン酸)であることが好ましく、2つ以上のカルボキシ基を有するポリカルボン酸であることがより好ましい。ポリカルボン酸のカルボキシ基の数は2つであることが好ましい。ポリカルボン酸は、カルボキシ基を1つ有する化合物(モノカルボン酸)と比較して、接続時の高温によって揮発し難い。そのため、該化合物によれば、ボイドの発生を一層抑制できる。また、ポリカルボン酸の中でも、カルボキシ基を2つ有する化合物は、カルボキシ基を3つ以上有する化合物と比較して、保管時・接続作業時等におけるフィルム状接着剤1の粘度上昇の抑制効果に優れる。
【0078】
カルボキシ基を有するフラックス化合物としては、下記式(1)で表される基を有する化合物が好ましく用いられる。
【0079】
【化1】
【0080】
式(1)中、Rは、水素原子又は電子供与性基を示す。
【0081】
耐リフロー性に優れる観点及び接続信頼性にさらに優れる観点では、Rが電子供与性であることが好ましい。本実施形態では、第2の接着剤が、エポキシ樹脂を含有した上で、式(1)で表される基を有する化合物のうち、Rが電子供与性基である化合物をさらに含有することがより好ましい。この場合、フリップチップ接続方式においても、耐リフロー性及び接続信頼性により優れる半導体装置の作製が容易となる。
【0082】
電子供与性基としては、例えば、アルキル基、水酸基、アミノ基、アルコキシ基、アルキルアミノ基等が挙げられる。電子供与性基としては、他の成分(例えば、エポキシ樹脂)と反応しにくい基が好ましく、具体的には、アルキル基、水酸基又はアルコキシ基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0083】
アルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよいが、直鎖状であることが好ましい。アルキル基としては、炭素数1~10のアルキル基が好ましく、炭素数1~5のアルキル基がより好ましい。アルキル基の炭素数は、多いほど電子供与性及び立体障害が大きくなる傾向にある。炭素数が上記範囲であるアルキル基は、電子供与性及び立体障害のバランスに優れる。
【0084】
カルボキシ基を2つ有するフラックス化合物としては、下記式(2)で表される化合物を好適に用いることができる。下記式(2)で表される化合物によれば、半導体装置の耐リフロー性及び接続信頼性を一層向上させることができる。
【0085】
【化2】
【0086】
式(2)中、Rは式(1)と同義である。Rは、水素原子又は電子供与性基を示し、nは0又は1以上の整数を示す。
【0087】
によって示される電子供与性は、Rとして説明した上述の電子供与性基の例と同じである。RはRと同じであっても異なっていてもよい。複数存在するRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0088】
式(2)におけるnは、1以上であることが好ましい。nが1以上であると、nが0である場合と比較して、接続時の高温によってもフラックス化合物が揮発し難く、ボイドの発生を一層抑制することができる。また、式(2)におけるnは、15以下であることが好ましく、11以下であることがより好ましく、6以下又は4以下であってもよい。nが15以下であると、一層優れた接続信頼性が得られる。
【0089】
上記のようなフラックス化合物の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等のジカルボン酸、並びに、これらのジカルボン酸の2位に電子供与性基が置換した化合物(例えば2-メチルグルタル酸)などが挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂及びイミダゾール系硬化剤との組み合わせにより、フィレットの抑制、ボイドの低減、及び封止性の向上といった効果がさらに向上する観点から、2-メチルグルタル酸が好ましく用いられる。
【0090】
フラックス化合物の融点は、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましく、130℃以下がさらに好ましい。このようなフラックス化合物は、エポキシ樹脂とイミダゾール系硬化剤との硬化反応が生じる前にフラックス活性が充分に発現しやすい。そのため、このようなフラックス化合物を用いることで、接続信頼性に一層優れる半導体装置を得ることができる。フラックス化合物は、室温(25℃)で固形であるものが好ましい。フラックス化合物の融点は、25℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。なお、本明細書中、融点が150℃以下とは、融点の上限点が150℃以下であることを意味し、融点が25℃以上とは、融点の下限点が25℃以上であることを意味する。
【0091】
第2の接着剤におけるフラックス化合物の含有量は、フラックス効果がより良好に得られる観点から、第2の接着剤の全量基準で、0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましい。フラックス化合物の含有量は、半導体装置作製時のウェハの反り量を低減する観点から、第2の接着剤の全量基準で、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。
【0092】
[その他の成分]
第2の接着剤は、第1の接着剤に含まれ得るその他の成分として例示した成分を含んでいてもよい。第1の接着剤中の熱可塑性樹脂と、第2の接着剤中の熱可塑性樹脂とは、同じであっても異なっていてもよい。フィラー等のその他の成分についても同様である。
【0093】
第2の接着剤における熱可塑性樹脂の含有量は、第2の接着剤の耐熱性及びフィルム形成性が向上しやすくなる観点から、第2の接着剤の全量基準で、5質量%以上が好ましく、7質量%以上がより好ましく、10質量%以上がさらに好ましい。熱可塑性樹脂の含有量は、フィレットの発生を抑制しやすくする観点では、第2の接着剤の全量を基準として、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。
【0094】
第2の接着剤におけるフィラーの含有量は、放熱性が低くなることが抑制される観点、及び、ボイドの発生、吸湿率が大きくなること等を抑制しやすい観点から、第2の接着剤の全量を基準として、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、35質量%以上がさらに好ましい。フィラーの含有量は、接続部へのフィラーの噛み込み(トラッピング)が生じることを抑制する観点から、第2の接着剤の全量を基準として、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0095】
第2の接着剤におけるラジカル重合開始剤の含有量は、第2の接着剤の全量基準で0.01質量部以下であってよい。すなわち、第2の接着剤はラジカル重合開始剤を含まなくてよい。
【0096】
フラックス化合物の中にはラジカルと反応するものがあること、及び、ラジカル重合性化合物が存在することで加熱時に硬化反応が急速に進行し、接続部間に硬化物が介入しやすくなることから、第2の接着剤は、ラジカル重合性化合物を含有しないことが好ましい。ラジカル重合性化合物の含有量は、第2の接着剤の全量を基準として、0.5質量%以下が好ましく、0.05質量%以下がより好ましく、0質量%がさらに好ましい。
【0097】
フィルム状接着剤1は、非導電性であることが好ましい。すなわち、フィルム状接着剤1は、いわゆるNCF(Non Conductive Film)であることが好ましい。
【0098】
以上説明したフィルム状接着剤1は、第1の接着剤領域2側(第2の接着剤領域3とは反対側)の面上、及び/又は、第2の接着剤領域3側(第1の接着剤領域2とは反対側)の面上に、支持フィルム、保護フィルム等の基材が設けられた状態で提供されてよい。本開示では、基材と、該基材上に設けられたフィルム状接着剤とを備える積層体を接着剤テープという。
【0099】
基材としては、後述するフィルム状接着剤の製造方法で用いられる基材として例示される基材を用いることができるが、フィルム状接着剤1の第2の接着剤領域3側に設けられる基材は、バックグラインドテープであることが好ましい。すなわち、本開示の好適な他の一実施形態は、上記フィルム状接着剤1と、該フィルム状接着剤1上であって、第2の接着剤領域3からみて、第1の接着剤領域2側とは反対側に設けられたバックグラインドテープと、を備える、接着剤テープ(バックグラインドテープ付き接着剤テープ)である。
【0100】
バックグラインドテープは、通常、一方の主面側が粘着層となるように構成されているが、この場合、バックグラインドテープは、粘着層側の面がフィルム状接着剤1側となるように(例えば、粘着層とフィルム状接着剤とが接するように)、フィルム状接着剤1上に設けられる。基材の厚さ(例えば、バックグラインドテープの厚さ)は、20~300μmであってよい。
【0101】
接着剤テープは、後述するフィルム状接着剤の製造方法、すなわち、基材上に塗液を塗布し、塗膜を形成し乾燥させる方法により得られた、基材とフィルム状接着剤との積層体であってよく、フィルム状接着剤1に基材を貼り付ける(例えば、フィルム状接着剤1と基材とをラミネートする)ことにより得られた積層体であってもよい。基材がバックグラインドテープである場合、バックグラインドテープの粘着層の上で塗液の塗布及び乾燥が行われると、粘着層の破壊、粘着剤と接着剤との間の成分移行等の不具合が生じる可能性があるため、フィルム状接着剤1にバックグラインドテープを貼り付けることにより接着剤テープを得ることが好ましい。
【0102】
<半導体用フィルム状接着剤の製造方法>
フィルム状接着剤1の製造方法の一実施形態は、第1の接着剤層、及び、第2の接着剤層のうちの一方を他方の上に設ける工程を備える。ここで、第1の接着剤層は、上記第1の接着剤で構成される層(すなわち、フラックス化合物を含まず、第1のエポキシ樹脂と、第1のイミダゾール系硬化剤と、(メタ)アクリル化合物と、を含む層)であり、フィルム状接着剤1において第1の接着剤領域2を形成する。第2の接着剤層は、上記第2の接着剤で構成される層(すなわち、第2のエポキシ樹脂と、第2のイミダゾール系硬化剤と、フラックス化合物と、を含む層)であり、フィルム状接着剤1において第2の接着剤領域3を形成する。
【0103】
一実施形態において、上記工程は、例えば、上記第1の接着剤層を備える第1の接着剤フィルムと、上記第2の接着剤層を備える第2の接着剤フィルムとを貼り合わせる工程であってよい。この実施形態では、フィルム状接着剤1の製造方法が、上記第1の接着剤フィルムと、上記第2の接着剤フィルムとを用意する工程をさらに備えてよい。
【0104】
第1の接着剤フィルムを用意する工程は、基材(例えばフィルム状の基材)上に第1の接着剤層を形成することを含んでいてもよい。基材上に第1の接着剤層を形成する場合、例えば、まず、第1のエポキシ樹脂と、第1のイミダゾール系硬化剤と、(メタ)アクリル化合物と、必要に応じて添加される他の成分(フィラー、熱可塑性樹脂、添加剤等)とを、有機溶剤中に加え、攪拌混合、混練等により、溶解又は分散させて、第1の接着剤を含む塗液を調製する。その後、離型処理を施した基材上に、上記塗液をナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター等を用いて塗布して塗膜を形成した後、加熱により塗膜中から有機溶剤を減少させる。これにより、基材上に第1の接着剤層を形成することができる。
【0105】
塗液の調製に用いる有機溶剤としては、各成分を均一に溶解又は分散し得る特性を有するものが好ましく、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トルエン、ベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブ、ジオキサン、シクロヘキサノン、及び酢酸エチルが挙げられる。これらの有機溶剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。塗液を調製する際の攪拌混合及び混練は、例えば、攪拌機、らいかい機、3本ロール、ボールミル、ビーズミル又はホモディスパーを用いて行うことができる。
【0106】
基材としては、有機溶剤を揮発させる際の加熱条件に耐え得る耐熱性を有するものであれば特に制限はなく、ポリプロピレンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム及びポリエーテルイミドフィルムを例示できる。基材は、これらのフィルムからなる単層のものに限られず、2種以上の材料からなる多層フィルムであってもよい。基材は、表面に離型処理が施されたフィルムであってもよい。
【0107】
基材上の塗膜から有機溶剤を揮発させる際の乾燥条件は、有機溶剤が充分に揮発する条件とすることが好ましく、具体的には、50~200℃、0.1~90分間の加熱を行うことが好ましい。実装後のボイド又は粘度調整に影響がなければ、有機溶剤は、第1の接着剤全量に対して1.5質量%以下まで除去されることが好ましい。
【0108】
第2の接着剤フィルムを用意する工程は、基材上に第2の接着剤層を形成することを含んでいてもよい。第2のエポキシ樹脂と、第2のイミダゾール系硬化剤と、フラックス化合物と、必要に応じて添加される他の成分(フィラー、熱可塑性樹脂、添加剤等)とを用いること以外は、第1の接着剤層の形成方法と同様の方法により基材上に第2の接着剤層を形成することができる。
【0109】
第1の接着剤フィルムと第2の接着剤フィルムとを貼り合わせる方法としては、例えば、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等の方法が挙げられる。ラミネートは、例えば、30~120℃の加熱条件下で行ってよい。
【0110】
フィルム状接着剤1は、例えば、基材上に第1の接着剤層及び第2の接着剤層のうちの一方を形成した後、得られた第1の接着剤層又は第2の接着剤層上に、第1の接着剤層及び第2の接着剤層のうちの他方を形成することにより得てもよい。第1の接着剤層及び第2の接着剤層は、上述した方法により形成することができる。
【0111】
フィルム状接着剤1は、例えば、基材上に第1の接着剤と第2の接着剤とを実質的に同時に形成することにより得てもよい。第1の接着剤と第2の接着剤とを同時に塗工作製する方法としては、例えば、逐次塗工方式、多層塗工方式等の塗工方法が挙げられる。
【0112】
<半導体装置>
次に、上記実施形態の半導体用フィルム状接着剤を用いて製造される半導体装置について説明する。
【0113】
図2は、半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。図2(a)に示す半導体装置100は、互いに対向する半導体チップ20及び基体25と、半導体チップ20及び基体25の互いに対向する面にそれぞれ配置された配線(第1接続部及び第2接続部)15と、半導体チップ20及び基体25の配線15を互いに接続する接続バンプ30と、半導体チップ20と基体25との隙間を充填する接着剤(第1の接着剤及び第2の接着剤)の硬化物からなる封止部40とを有している。半導体チップ20及び基体25は、配線15及び接続バンプ30によりフリップチップ接続されている。配線15及び接続バンプ30は、接着剤の硬化物により封止されており外部環境から遮断されている。封止部40は、第1の接着剤の硬化物を含む上部部分40aと、第2の接着剤の硬化物を含む下部部分40bとを有している。
【0114】
図2(b)に示す半導体装置200は、互いに対向する半導体チップ20及び基体25と、半導体チップ20及び基体25の互いに対向する面にそれぞれ配置されたバンプ(第1接続部及び第2接続部)32と、半導体チップ20と基体25との隙間を充填する接着剤(第1の接着剤及び第2の接着剤)の硬化物からなる封止部40とを有している。半導体チップ20及び基体25は、対向するバンプ32が互いに接続されることによりフリップチップ接続されている。バンプ32は、接着剤の硬化物により封止されており外部環境から遮断されている。封止部40は、第1の接着剤の硬化物を含む上部部分40aと、第2の接着剤の硬化物を含む下部部分40bとを有している。
【0115】
半導体チップ20としては、特に限定はなく、シリコン、ゲルマニウム等の同一種類の元素から構成される元素半導体から構成される半導体チップ、ガリウムヒ素、インジウムリン等の化合物半導体から構成される半導体チップを用いることができる。
【0116】
基体25としては、半導体チップ20を搭載するために用いられるものであれば特に制限はなく、例えば、半導体チップ、半導体ウエハ、配線回路基板等が挙げられる。
【0117】
基体25として用いることができる半導体チップの例は、上記半導体チップ20の例と同じであり、基体25として半導体チップ20と同じ半導体チップを用いてもよい。
【0118】
基体25として用いることができる半導体ウエハとしては、特に限定はなく、上記半導体チップ20に例示した半導体チップが複数連結した構成を有するものであってよい。
【0119】
基体25として用いることができる配線回路基板としては、特に制限はなく、ガラスエポキシ、ポリイミド、ポリエステル、セラミック、エポキシ、ビスマレイミドトリアジン等を主な成分とする絶縁基板の表面に、金属膜の不要な個所をエッチング除去して形成された配線(配線パターン)15を有する回路基板、上記絶縁基板の表面に金属めっき等によって配線15が形成された回路基板、上記絶縁基板の表面に導電性物質を印刷して配線15が形成された回路基板などを用いることができる。
【0120】
配線15、バンプ32等の接続部は、主成分として、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えばスズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅等)、ニッケル、スズ、鉛などを含有しており、複数の金属を含有していてもよい。
【0121】
上記金属の中でも、接続部の電気伝導性・熱伝導性に優れたパッケージとする観点では、金、銀及び銅が好ましく、銀及び銅がより好ましい。コストが低減されたパッケージとする観点では、安価な材料である、銀、銅及びはんだが好ましく、銅及びはんだがより好ましく、はんだがさらに好ましい。室温において金属の表面に酸化膜が形成すると生産性が低下すること及びコストが増加することがあるため、酸化膜の形成を抑制する観点では、金、銀、銅及びはんだが好ましく、金、銀、はんだがより好ましく、金、銀がさらに好ましい。
【0122】
上記配線15及びバンプ32の表面には、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えば、スズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅等)、スズ、ニッケルなどを主な成分とする金属層が、例えばメッキにより形成されていてもよい。この金属層は単一の成分のみで構成されていても、複数の成分から構成されていてもよい。また、上記金属層は、単層又は複数の金属層が積層された構造をしていてもよい。
【0123】
半導体装置は、半導体装置100及び200に示すような構造(パッケージ)が複数積層されたものであってもよい。この場合、半導体装置100及び200は、金、銀、銅、はんだ(主成分は、例えばスズ-銀、スズ-鉛、スズ-ビスマス、スズ-銅、スズ-銀-銅等)、スズ、ニッケルなどを含むバンプ、配線等で互いに電気的に接続されていてもよい。
【0124】
半導体装置を複数積層する手法としては、図3に示すように、例えばTSV(Through-Silicon Via)技術が挙げられる。図3に示す半導体装置500では、インターポーザ50上に形成された配線15が半導体チップ20の配線15と接続バンプ30を介して接続されることにより、半導体チップ20とインターポーザ50とはフリップチップ接続されている。半導体チップ20とインターポーザ50との隙間には接着剤(第1の接着剤及び第2の接着剤)の硬化物が充填されており、封止部40を構成している。上記半導体チップ20におけるインターポーザ50と反対側の表面上には、配線15、接続バンプ30及び封止部40を介して半導体チップ20が繰り返し積層されている。半導体チップ20の表裏におけるパターン面の配線15は、半導体チップ20の内部を貫通する孔内に充填された貫通電極34により互いに接続されている。なお、貫通電極34の材質としては、銅、アルミニウム等を用いることができる。
【0125】
このようなTSV技術により、通常は使用されない半導体チップの裏面からも信号を取得することが可能となる。さらには、半導体チップ20内に貫通電極34を垂直に通すため、対向する半導体チップ20間、並びに、半導体チップ20及びインターポーザ50間の距離を短くし、柔軟な接続が可能である。本実施形態の半導体用フィルム状接着剤は、このようなTSV技術において、対向する半導体チップ20間、並びに、半導体チップ20及びインターポーザ50間の半導体用フィルム状接着剤として適用することができる。
【0126】
また、エリヤバンプチップ技術等の自由度の高いバンプ形成方法では、インターポーザを介さないでそのまま半導体チップをマザーボードに直接実装できる。本実施形態の半導体用フィルム状接着剤は、このような半導体チップをマザーボードに直接実装する場合にも適用することができる。なお、本実施形態の半導体用フィルム状接着剤は、2つの配線回路基板を積層する場合に、基板間の隙間(空隙)を封止する際にも適用することができる。
【0127】
<半導体装置の製造方法>
次に、上記実施形態の半導体用フィルム状接着剤を用いた半導体装置の製造方法について説明する。
【0128】
一実施形態の半導体装置の製造方法は、例えば、半導体チップと、第1の接着剤領域の第2の接着剤領域とは反対側の面が前記半導体チップ側を向くように半導体チップ上に設けられた、上記実施形態の半導体用フィルム状接着剤と、を備える、フィルム状接着剤付き半導体チップを用意する工程と、フィルム状接着剤付き半導体チップを、フィルム状接着剤側から基体上に配置し、加熱することにより、半導体チップの接続部と基体の接続部とを電気的に接続するとともに、半導体チップと基体との隙間を封止する工程と、を備える。半導体装置の製造方法は、上記実施形態の半導体用フィルム状接着剤を、第1の接着剤領域側から、半導体チップ若しくはその前駆体の接続面に貼り付ける工程をさらに備えていてもよい。ここで、半導体チップの前駆体とは、加工によって半導体チップとなる部材を意味する。半導体チップの前駆体の具体例は、半導体ウエハである。半導体チップの前駆体として半導体ウエハを用いる場合、半導体装置の製造方法は、半導体ウエハ又はフィルム状接着剤付き半導体ウエハをダイシングする工程をさらに備えていてもよい。
【0129】
半導体装置の製造方法では、上述したバックグラインドテープ付き接着剤テープを用いてもよい。この場合、半導体装置の製造方法は、バックグラインドテープ付き接着剤テープを、半導体用フィルム状接着剤側から、半導体チップの前駆体である半導体ウエハの接続面に貼り付けるラミネート工程と、接着剤テープが貼り付けられた半導体ウエハを接着剤テープとは反対側から研削するバックグラインド工程と、をさらに備えてよい。
【0130】
以下では、半導体チップの前駆体(半導体ウエハ)を用いる態様を例に挙げて、半導体装置の製造方法についてより詳細に説明する。
【0131】
図4図8は、半導体装置の製造方法の一実施形態を模式的に示す工程断面図である。一実施形態の製造方法は、以下に示す工程(a)~(e)を含む。
工程(a):一方の主面(接続面)に接続部(第1接続部)5を有する半導体ウエハAと、半導体ウエハAの該主面上に、第1の接着剤領域2側の面が半導体ウエハA側となるように設けられた、フィルム状接着剤1と、を備える積層体6を用意する工程(図4参照。)
工程(b):積層体6のフィルム状接着剤1が設けられている側とは反対側(半導体ウエハAの接続部5が設けられている側とは反対側)を研削するバックグラインド工程(図5参照。)
工程(c):積層体6を個片化し、接続部5を有するフィルム状接着剤付き半導体チップ8を得る工程(図6参照。)
工程(d):フィルム状接着剤付き半導体チップ8を、個片化されたフィルム状接着剤1a側からピックアップする工程(図7参照。)
工程(e):フィルム状接着剤付き半導体チップ8を、一方の主面(接続面)に接続部(第2接続部)10を有する基体9の該主面上に、フィルム状接着剤1a側から配置し、加熱することにより、フィルム状接着剤付き半導体チップ8の接続部5と、基体9の接続部10とを、電気的に接続するとともに、半導体チップ8と基体9との隙間を封止する工程(図8参照。)
なお、あらかじめ厚さが調整された半導体ウエハを用いる場合には、工程(b)は実施しなくてもよい。
【0132】
(工程(a))
工程(a)は、あらかじめ作製された積層体6を用意する工程であってよく、積層体6を作製する工程であってもよい。積層体6は、例えば、以下の方法により作製してよい。
【0133】
まず、フィルム状接着剤1の第2の接着剤領域3側に基材4が設けられた接着剤テープを用意し、これを所定の装置に配置する(図4(a)参照。)。基材4は、例えばバックグラインドテープである。次いで、一方の主面に接続部5(配線、バンプ等)を有する半導体ウエハAを準備し、半導体ウエハAの該主面(接続部5が設けられている面、接続面)上にフィルム状接着剤1を貼り付ける。これにより、半導体ウエハA、第1の接着剤領域2、第2の接着剤領域3がこの順に積層された積層体6が得られる(図4(b)参照。)。
【0134】
フィルム状接着剤1の貼付は、加熱プレス、ロールラミネート、真空ラミネート等によって行うことができる。フィルム状接着剤1の供給面積及び厚みは、半導体ウエハ及び基体のサイズ、接続部の高さ等によって適宜設定される。なお、図4では、フィルム状接着剤1の厚さが半導体ウエハAの接続部5の高さよりも大きく、接続部5がフィルム状接着剤1によって被覆されているが、フィルム状接着剤1の厚さが接続部5の高さよりも小さくてもよい。
【0135】
(工程(b))
工程(b)では、例えばグラインダーGを用いて、積層体6の半導体ウエハAを研削する(図5(a)及び図5(b)参照。)。これにより、半導体ウエハAが薄化される。研削後の半導体ウエハの厚さは、例えば、10μm~300μmであってよい。半導体装置の小型化、薄型化の観点から、半導体ウエハの厚さを20μm~100μmとすることが好ましい。
【0136】
(工程(c))
工程(c)では、例えば、まず、積層体6の半導体ウエハA側にダイシングテープ7を貼り付け、これを所定の装置に配置する(図6(a)参照。)。基材4は、ダイシングテープ7への積層体6の貼り付け前又は貼り付け後に剥離してよい。次いで、積層体6をダイシングソウDによりダイシングする。こうして、積層体6が個片化され、半導体チップA’上にフィルム状接着剤1aを備えるフィルム状接着剤付き半導体チップ8が得られる(図6(b)参照。)。半導体チップA’のフィルム状接着剤1a側の面には接続部5が設けられている。フィルム状接着剤1aは第1の接着剤領域(第1の接着剤からなる領域)2aと第2の接着剤領域(第2の接着剤からなる領域)3aとを有している。
【0137】
(工程(d))
工程(d)では、例えば、ダイシングテープ7をエキスパンド(拡張)することにより、上記ダイシングにより得られたフィルム状接着剤付き半導体チップ8を互いに離間させつつ、ダイシングテープ7側からニードルNで突き上げられたフィルム状接着剤付き半導体チップ8を、フィルム状接着剤1a側からピックアップツールPでピックアップする(図7参照。)。ピックアップされたフィルム状接着剤付き半導体チップ8は、ボンディングツールに受け渡されて工程(e)でのボンディングに使用される。
【0138】
(工程(e))
工程(e)では、例えば、まず、一方面に接続部10(第2接続部)を有する半導体チップ搭載用の基体9を用意し、フィルム状接着剤付き半導体チップ8と基体9との位置合わせを行う。次いで、ボンディングツールを用いて、フィルム状接着剤付き半導体チップ8を、フィルム状接着剤1a側から基体9の接続部10(配線、バンプ等)が設けられた主面上に配置し加熱することにより、フィルム状接着剤付き半導体チップ8と基体9とを接合する(図8(a)及び図8(b)参照。)。これにより、フィルム状接着剤付き半導体チップ8の接続部5と基体9の接続部10とが電気的に接続されるとともに、半導体チップA’と基体9との間にフィルム状接着剤1aの硬化物からなる封止部1a’が形成され、半導体チップ8と基体9との隙間が封止されて、フィルム状接着剤付き半導体チップ8と基体9との接合体である半導体装置11が得られる。封止部1a’は、第1の接着剤の硬化物を含む上部分2a’と、第2の接着剤の硬化物を含む下部分3a’を有している。
【0139】
接続部5及び接続部10の一方にはんだバンプが用いられる場合(例えば、接続部5又は接続部10が、はんだバンプが設けられた配線である場合)、接続部5と接続部10とがはんだ接合されることにより電気的かつ機械的に接続される。
【0140】
工程(e)の加熱は半導体チップを配置しながら行ってよく、半導体チップを配置した後に行ってもよい。工程(e)の加熱及び配置は、熱圧着であってよい。工程(e)は、位置合わせをした後に仮固定する工程(仮固定工程)と、加熱処理することによって、接続部に設けられたバンプ(例えばはんだバンプ)を溶融させて半導体チップA’と基体9とを接合するとともに接続部を封止する工程(封止工程)とを含んでいてもよい。仮固定の段階では、金属接合を形成することが必ずしも必要ではないため、仮固定工程は、低荷重、短時間及び低温度で実施することができる。そのため、工程(e)において仮固定工程と封止工程とを実施する場合、生産性が向上するとともに接続部の劣化を抑制することができる。
【0141】
仮固定のために加えられる荷重は、接続部(バンプ)の数、接続部(バンプ)の高さばらつきの吸収、接続部(バンプ)の変形量等の制御を考慮して適宜設定される。荷重は、ボイドを排除し、接続部を接触させやすくする観点では、大きいほど好ましい。荷重は、例えば、接続部(例えばバンプ)1個辺り、0.009N~0.2Nが好ましい。
【0142】
封止工程での加熱は、接続部の金属の融点以上に加熱可能な装置を用いて行ってよい。加熱温度は、フィルム状接着剤の硬化が進行する温度が好ましく、完全に硬化する温度がより好ましい。加熱温度及び加熱時間は適宜設定される。
【0143】
封止工程での加熱時間は、接続部を構成する金属の種類により異なるが、生産性が向上する観点では、短時間であるほど好ましい。接続部にはんだバンプが用いられる場合、加熱時間は20秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましく、5秒以下がさらに好ましい。銅-銅又は銅-金の金属接続の場合は、接続時間は60秒以下が好ましい。
【0144】
封止工程では、加熱及び加圧が可能な装置を用いて、加熱とともに加圧を行ってもよい。すなわち、封止工程での加熱は、熱圧着による加熱であってよい。この場合、荷重(接続荷重)は、接続部材のサイズ、接続部の数、高さのばらつき、加圧による接続部の変形量等を考慮して設定される。接続荷重は、例えば、大気圧を超えて1MPa以下であってよい。ボイド抑制及び接続性向上の観点では、荷重が大きいほど好ましく、フィレット抑制の観点では、荷重が小さいほど好ましい。これらの観点から、荷重は0.05~0.5MPaであることが好ましい。圧着時間(接続時間)は、接続部を構成する金属の種類により異なるが、生産性が向上する観点から短時間であるほど好ましい。接続部がはんだバンプである場合、圧着時間は20秒以下が好ましく、10秒以下がより好ましく、5秒以下がさらに好ましい。なお、圧着機を用いた直接的な加圧ではフィレットに圧着機の熱が伝わり難いため、フィレットまで充分に効果させやすい観点から、気圧による加圧が好ましい。一括封止及びフィレット抑制の観点からも、加熱時の加圧は気圧による加圧(加圧リフロー炉、加圧オーブン等による加圧)とすることが好ましい。
【0145】
半導体チップA’と基体9とを接続した後、オーブン等で加熱処理を行って、さらに接続信頼性を高めてもよい。
【実施例
【0146】
以下、実施例により本開示をより具体的に説明するが、本開示は実施例に限定されるものではない。
【0147】
実施例及び比較例で使用した材料の詳細は以下のとおり。
(液状エポキシ樹脂)
・YX7110B80:柔軟性エポキシ、三菱ケミカル株式会社製、商品名「jERYX7110B80」、「jER」は登録商標(以下同じ)
・YL983U:ビスフェノールF型液状エポキシ、三菱ケミカル株式会社製、商品名「jERYL983U」
(固形エポキシ樹脂)
・EP1032:トリフェノールメタン骨格含有多官能固形エポキシ、三菱ケミカル株式会社製、商品名「jER1032H60」
(イミダゾール系硬化剤)
・2PHZ-PW:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、四国化成工業株式会社製、商品名
・2MAOK-PW:2,4-ジアミノ-6-[2’-メチルイミダゾリル-(1’)]-エチル-s-トリアジンイソシアヌル酸付加体、四国化成工業株式会社製、商品名
(フェノキシ樹脂)
・ZX-1356-2:フェノキシ樹脂、東都化成株式会社製、商品名、Tg=約71℃、重量平均分子量Mw=約63000
(アクリル化合物)
A-DPH:ジペンタエリスリトールポリアクリレート、新中村化学工業株式会社製、商品名
(有機フィラー)
・EXL-2655:コアシェルタイプ有機微粒子、ロームアンドハースジャパン(株)製、商品名
(シリカフィラー)
・KE180G-HLA:シリカフィラー、株式会社アドマテックス製、商品名
(フラックス化合物)
・2-メチルグルタル酸:アルドリッチ社製、融点=約78℃
【0148】
<実施例1~7及び比較例1>
(第1の接着剤フィルムの作製)
表1に示す成分を、NV値([乾燥後の塗料分質量]/[乾燥前の塗料分質量]×100)が60%になるように有機溶剤(メチルエチルケトン)に添加し、混合液を得た。この際、各成分の添加量は表1に示す量(単位:質量部)とした。その後、上記混合液に、Φ1.0mmのビーズ及びΦ2.0mmのビーズを加え、ビーズミル(フリッチュ・ジャパン株式会社、遊星型微粉砕機P-7)で30分撹拌した。ビーズの添加量は、混合液の不揮発分量(有機溶剤以外の成分の合計量)と同質量とした。撹拌後、ビーズをろ過によって除去した。これにより、第1の接着剤層形成用の塗液1A~8Aを得た。
【0149】
得られた塗液1A~8Aを用いて、第1の接着剤層1A~8Aをそれぞれ備える第1の接着剤フィルム(第1の接着剤フィルム1A~8A)を得た。具体的には、まず、塗液を、基材フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「ピューレックスA54」)上に、乾燥後の膜厚が4.5μmとなるように、小型精密塗工装置(廉井精機)で塗工した。次いで、塗膜をクリーンオーブン(ESPEC製)で乾燥(80℃/10min)することにより、第1の接着剤層を備える第1の接着剤フィルムを得た。
【0150】
【表1】
【0151】
(第2の接着剤フィルムの作製)
表2に示す成分を、NV値が60%になるように有機溶剤(メチルエチルケトン)に添加し、混合液を得た。この際、各成分の添加量は表2に示す量(単位:質量部)とした。その後、上記混合液に、Φ1.0mmのビーズ及びΦ2.0mmのビーズを加え、ビーズミル(フリッチュ・ジャパン株式会社、遊星型微粉砕機P-7)で30分撹拌した。ビーズの添加量は、混合液の不揮発分量(有機溶剤以外の成分の合計量)と同質量とした。撹拌後、ビーズをろ過によって除去し、第2の接着剤層形成用の塗液1B及び塗液2Bを得た。
【0152】
得られた塗液1Bを、基材フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、商品名「ピューレックスA54」)上に、乾燥後の膜厚が4.5μmとなるように、小型精密塗工装置(廉井精機)で塗工した。次いで、塗膜をクリーンオーブン(ESPEC製)で乾燥(80℃/10min)することにより、第2の接着剤層1Bを備える第2の接着剤フィルム1Bを得た。また、塗液1Bに代えて塗液2Bを用いたこと以外は同様にして、第2の接着剤層2Bを備える第2の接着剤フィルム2Bを得た。
【0153】
【表2】
【0154】
(フィルム状接着剤の作製)
上記で作製した第1の接着剤フィルム1A~8Aのいずれか1つと、第2の接着剤フィルム1B又は2Bとを、表3に示す組み合わせでラミネートすることで、第1の接着剤層と第2の接着剤層とを積層し、実施例1~7及び比較例1のフィルム状接着剤(総厚9.0μm)を作製した。ラミネート温度は50℃とした。
【0155】
<比較例2>
上記「第2の接着剤フィルムの作製」と同様にして第2の接着剤層1Bを備える第2の接着剤フィルム1Bを得た後、得られた第2の接着剤層1Bを2層積層して、比較例2のフィルム状接着剤(総厚9.0μm)を得た。
【0156】
<評価>
実施例1~7及び比較例1~2で得られたフィルム状接着剤を用いて、以下の手順で接続構造体(半導体装置)を作製した。また、得られた接続構造体を用いて、以下に示す方法で、フィレット長さ、ボイド及び封止性の評価を行った。結果を表3に示す。
【0157】
(接続構造体の作製)
実施例1~7及び比較例1~2で得られたフィルム状接着剤を所定のサイズ(縦8mm×横8mm×厚さ9.0μm)に切り抜き、評価用サンプルを作製した。次いで、評価用サンプルをはんだバンプ付き半導体チップ(チップサイズ:縦7.3mm×横7.3mm×厚さ0.15mm、バンプ高さ:銅ピラー+はんだ計約40μm、バンプ数328)の該はんだバンプが設けられている面(接続面)に貼付し、評価サンプルとはんだバンプ付き半導体チップとの積層体を得た。この際、実施例1~7及び比較例1では、第1の接着剤層側(第2の接着剤層とは反対側)からはんだバンプ付き半導体チップに貼付した。次に、フリップ実装装置「FCB3」(パナソニック製、商品名)を用いて、上記積層体を評価サンプル側からガラスエポキシ基板(ガラスエポキシ基材:420μm厚、銅配線:9μm厚)上に実装した。実装は、圧着ヘッド温度を350℃とし、圧着時間を3秒とし、圧着圧力を0.5MPaとする条件で行った。これにより、ガラスエポキシ基板と、はんだバンプ付き半導体チップとがデイジーチェーン接続された接続構造体(半導体装置)を得た。
【0158】
(フィレット量)
上記で得られた接続構造体を、デジタルマイクロスコープVHX-6000(キーエンス製)を用いて、半導体チップ側から観察し、半導体チップの周囲4辺よりはみ出した接着剤(フィレット)の長さを測定した。各辺におけるフィレットの長さとしては、はみ出した接着剤の端部から半導体チップまでの最短距離の最大値を採用した。フィレット量は、4辺のそれぞれで測定したフィレットの長さの平均値により評価した。該平均値が100μm未満であれば、フィレットの発生量が充分に低減されていると判断し、上記平均値が100μm以上である場合をフィレット抑制効果が不十分であると判断した。
【0159】
(ボイド)
上記で得られた接続構造体について、超音波映像診断装置(商品名「Insight-300」、インサイト製)により外観画像を撮り、スキャナGT-9300UF(EPSON社製、商品名)でチップ上の接着剤層(半導体用フィルム状接着剤の硬化物からなる層)の画像を取り込み、画像処理ソフトAdobe Photoshop(登録商標)を用いて、色調補正、二階調化によりボイド部分を識別し、ヒストグラムによりボイド部分の占める割合を算出した。チップ上の接着剤部分の面積を100%として、ボイド発生率が5%以下の場合を「A」とし、5%より多く10%以下の場合を「B」とし、10%より多い場合を「C」として評価した。
【0160】
(封止性)
上記で得られた接続構造体を、半導体・FPD検査顕微鏡MX63(OLYMPUS製)を用いて、半導体チップ側から観察し、チップ四角の未充填部分の長さを測定した。未充填部分の長さは、チップ四角から充填部位までの最短距離の最大値を採用した。封止性は未充填部分の長さが500μm未満であれば「A」、500μm以上であれば「B」として評価した。
【0161】
【表3】
【符号の説明】
【0162】
1,1a…半導体用フィルム状接着剤、2,2a…第1の接着剤領域、3,3a…第2の接着剤領域、4…基材、5…接続部(第1接続部)、9…基体、10…接続部(第1接続部)、11…半導体装置、15…配線(第1接続部及び第2接続部)、20…半導体チップ、25…基体、30…接続バンプ、32…バンプ(第1接続部及び第2接続部)、40…封止部、100,200,500…半導体装置、A…半導体ウエハ、A’…半導体チップ。

【要約】
【課題】充分な封止性を確保しつつ、フィレットの発生量を抑えることができる、半導体用フィルム状接着剤を提供すること。
【解決手段】厚さ方向に沿って、フラックス化合物を含まない第1の接着剤領域と、フラックス化合物を含む第2の接着剤領域とを有し、第1の接着剤領域が、第1のエポキシ樹脂と、第1のイミダゾール系硬化剤と、(メタ)アクリル化合物と、を含み、第2の接着剤領域が、第2のエポキシ樹脂と、第2のイミダゾール系硬化剤と、フラックス化合物と、を含む、半導体用フィルム状接着剤。
【選択図】なし


図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8