(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】推定システム、推定装置、推定方法及び推定プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/3554 20140101AFI20240910BHJP
【FI】
G01N21/3554
(21)【出願番号】P 2023087625
(22)【出願日】2023-05-29
(62)【分割の表示】P 2021116724の分割
【原出願日】2021-07-14
【審査請求日】2023-05-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002789
【氏名又は名称】弁理士法人IPX
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】吉川 たかし
(72)【発明者】
【氏名】根崎 孝介
(72)【発明者】
【氏名】増井 之人
(72)【発明者】
【氏名】野呂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高良 洋平
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-072047(JP,A)
【文献】特開2021-047064(JP,A)
【文献】特開2000-146834(JP,A)
【文献】特開昭63-263450(JP,A)
【文献】特開平05-164690(JP,A)
【文献】実開昭62-176747(JP,U)
【文献】特開2010-107223(JP,A)
【文献】特開2001-116689(JP,A)
【文献】特開2016-141828(JP,A)
【文献】特開2001-133402(JP,A)
【文献】特開2008-050076(JP,A)
【文献】特開昭61-215949(JP,A)
【文献】特開2021-001075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/958
G01N 33/22-33/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に存在する製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定装置であって、
含水モデル情報取得部と、含水指数情報取得部と、含水量推定部とを備え、
前記含水モデル情報取得部は、前記物質の、800nm~1100nm、1160nm~1340nm及び1440~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、前記物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得するように構成され、
前記含水指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を取得するように構成され、
前記含水量推定部は、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を推定するように構成され、
前記物質は、ヤード内にパイル状に積まれた石炭又は鉄鉱石であり、
推定対象である前記物質の2つの前記光学特性は、前記ヤードの上空から平面視した場合の二次元位置情報と関連付けられたものであり、
前記含水指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を前記ヤードの上空から平面視した場合の前記二次元位置情報と関連付けて取得するように構成され、
前記含水量推定部は、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を二次元位置ごとに推定するように構成される
推定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の推定装置において、
前記含水モデル情報は、前記含水指数と前記物質の含水量との線形関係を示す
推定装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の推定装置において、
前記光学特性は、吸収率、反射率又は透過率である
推定装置。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の推定装置において、
推定対象である前記物質の前記光学特性は、ハイパースペクトルカメラ又はマルチスペクトルカメラを用いて測定される
推定装置。
【請求項5】
請求
項4に記載の推定装置において、
推定対象である前記物質の前記光学特性は、飛行体に取り付けられた前記ハイパースペクトルカメラ又は前記マルチスペクトルカメラによって測定される
推定装置。
【請求項6】
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の推定装置において、
前記含水モデル情報取得部は、前記物質の、800nm~1100nmの波長範囲内の第1の波長と、1440~2400nmの波長範囲内の第2の波長と、の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、前記物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得するように構成される
推定装置。
【請求項7】
屋外に存在する製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定システムであって、
含水モデル情報取得部と、含水指数情報取得部と、含水量推定部とを備え、
前記含水モデル情報取得部は、前記物質の、800nm~1100nm、1160nm~1340nm及び1440~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、前記物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得するように構成され、
前記含水指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を取得するように構成され、
前記含水量推定部は、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を推定するように構成され、
前記物質は、ヤード内にパイル状に積まれた石炭又は鉄鉱石であり、
推定対象である前記物質の2つの前記光学特性は、前記ヤードの上空から平面視した場合の二次元位置情報と関連付けられたものであり、
前記含水指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を前記ヤードの上空から平面視した場合の前記二次元位置情報と関連付けて取得するように構成され、
前記含水量推定部は、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を二次元位置ごとに推定するように構成される
推定システム。
【請求項8】
屋外に存在する製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定方法であって、
含水モデル情報取得工程と、含水指数情報取得工程と、含水量推定工程とを備え、
前記含水モデル情報取得工程では、前記物質の、800nm~1100nm、1160nm~1340nm及び1440~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、前記物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得し、
前記含水指数情報取得工程では、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を取得し、
前記含水量推定工程では、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を推定し、
前記物質は、ヤード内にパイル状に積まれた石炭又は鉄鉱石であり、
推定対象である前記物質の2つの前記光学特性は、前記ヤードの上空から平面視した場合の二次元位置情報と関連付けられたものであり、
前記含水指数情報取得工程では、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を前記ヤードの上空から平面視した場合の前記二次元位置情報と関連付けて取得し、
前記含水量推定工程では、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を二次元位置ごとに推定する
推定方法。
【請求項9】
請求項8に記載の推定方法において、
前記含水指数情報取得工程では、推定対象である前記物質の2つの前記光学特性をハイパースペクトルカメラ又はマルチスペクトルカメラを用いて測定し、測定された2つの光学特性に基づいて、前記含水指数情報を取得する
推定方法。
【請求項10】
請求項9に記載の推定方法において、
前記含水指数情報取得工程では、推定対象である前記物質の2つの前記光学特性を、飛行体に取り付けられた前記ハイパースペクトルカメラ又は前記マルチスペクトルカメラによって測定する
推定方法。
【請求項11】
屋外に存在する製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定プログラムであって、
コンピュータを、含水モデル情報取得部、含水指数情報取得部及び含水量推定部として機能させ、
前記含水モデル情報取得部は、前記物質の、800nm~1100nm、1160nm~1340nm及び1440~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、前記物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得するように構成され、
前記含水指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を取得するように構成され、
前記含水量推定部は、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を推定するように構成され、
前記物質は、ヤード内にパイル状に積まれた石炭又は鉄鉱石であり、
推定対象である前記物質の2つの前記光学特性は、前記ヤードの上空から平面視した場合の二次元位置情報と関連付けられたものであり、
前記含水指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を前記ヤードの上空から平面視した場合の前記二次元位置情報と関連付けて取得するように構成され、
前記含水量推定部は、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を二次元位置ごとに推定するように構成される
推定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推定システム、推定装置、推定方法及び推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄原料や発電燃料としての鉄鉱石や石炭等の物質については、その含水量を適切な範囲内に維持することが必要である。これらの物質は、乾燥しすぎると粉塵が発生し、一方で、含水量が多すぎると搬送時の詰まりが起こったり、乾燥のための熱量が多く必要になりエネルギー効率が低下したりすることがある。
【0003】
そこで、乾燥している場合には散水をし、含水量が多すぎる場合には遮水剤等の薬剤を散布して、含水量を適切な範囲に維持するために、それらの物質中に含まれる含水量を把握する必要がある。
【0004】
物質中に含まれる含水量を把握し、粉塵防止の目的で散水を行うため、例えば特許文献1には、近赤外線式含水率計を用いて鉄鉱石のパイルの表面の含水量を測定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような製鉄原料、発電原料である物質中の含水量測定においては、測定距離の違いや、屋外で測定する場合の気象条件の違いが含水量の測定値に影響を及ぼす。したがって、気象条件や測定距離について同一の条件ごとに校正しないと、製鉄原料、発電原料である物質中の含水量を正確に測定することができない。
【0007】
一方で、製鉄原料や発電原料については、その含水量を適切な範囲内に維持する観点から、その物質に添加した薬剤(防塵剤)について、原料表層において薬剤により形成された固結層の有無を把握する必要があることもある。
【0008】
本発明では上記事情に鑑み、測定距離及び気象条件にかかわらず、製鉄原料、発電原料である物質中の含水量及び薬剤の含有量のうち、少なくともいずれかを精度よく推定することができる推定システム、推定装置、推定方法及び推定プログラムを提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定装置が提供される。この推定装置は、含水モデル情報取得部と、含水指数情報取得部と、含水量推定部とを備える。含水モデル情報取得部は、物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得するように構成される。含水指数情報取得部は、推定対象である物質の含水指数を示す含水指数情報を取得するように構成される。含水量推定部は、含水モデル情報と、含水指数情報とに基づいて、推定対象である物質の含水量を推定するように構成される。
【0010】
具体的には、次に記載の各態様で提供されてもよい。
前記推定装置において、前記含水モデル情報は、前記含水指数と前記物質の含水量との線形関係を示す推定装置。
前記推定装置において、前記光学特性は、吸収率、反射率又は透過率である推定装置。
前記推定装置において、推定対象である前記物質の前記光学特性は、ハイパースペクトルカメラ又はマルチスペクトルカメラを用いて測定される推定装置。
前記推定装置において、推定対象である前記物質の2つの前記光学特性は、二次元位置情報と関連付けられたものであり、前記含水指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を二次元位置情報と関連付けて取得するように構成され、前記含水量推定部は、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を二次元位置ごとに推定するように構成される推定装置。
前記推定装置において、推定対象である前記物質の前記光学特性は、飛行体に取り付けられた前記ハイパースペクトルカメラ又は前記マルチスペクトルカメラによって測定される推定装置。
製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の薬剤の含有量を推定する推定装置であって、薬剤含有モデル情報取得部と、含有指数情報取得部と、含有量推定部とを備え、前記薬剤含有モデル情報取得部は、前記物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含有指数と、前記物質中の薬剤の含有量又は含有の有無との関係を示す薬剤含有モデル情報を取得するように構成され、前記含有指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含有指数を示す含有指数情報を取得するように構成され、前記含有量推定部は、前記薬剤含有モデル情報と、前記含有指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質中の薬剤の含有量又は含有の有無を推定するように構成される推定装置。
製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定システムであって、含水モデル情報取得部と、含水指数情報取得部と、含水量推定部とを備え、前記含水モデル情報取得部は、前記物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、前記物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得するように構成され、前記含水指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を取得するように構成され、前記含水量推定部は、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を推定するように構成される推定システム。
製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の薬剤の含有量を推定する推定システムであって、薬剤含有モデル情報取得部と、含有指数情報取得部と、含有量推定部とを備え、前記薬剤含有モデル情報取得部は、前記物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含有指数と、前記物質中の薬剤の含有量又は含有の有無との関係を示す薬剤含有モデル情報を取得するように構成され、前記含有指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含有指数を示す含有指数情報を取得するように構成され、前記含水量推定部は、前記薬剤含有モデル情報と、前記含有指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質中の薬剤の含有量又は含有の有無を推定するように構成される推定システム。
製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定方法であって、含水モデル情報取得工程と、含水指数情報取得工程と、含水量推定工程とを備え、前記含水モデル情報取得工程では、前記物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、前記物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得し、前記含水指数情報取得工程では、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を取得し、前記含水量推定工程では、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を推定する推定方法。
前記推定方法において、光学特性測定工程及び光学特性取得工程をさらに備え、前記光学特性測定工程では、推定対象である前記物質の2つの前記光学特性をハイパースペクトルカメラ又はマルチスペクトルカメラを用いて測定し、前記光学特性取得工程では、推定対象である前記物質の2つの前記光学特性を取得する推定方法。
前記推定方法において、前記光学特性は、二次元位置情報と関連付けられたものであり、前記含水指数情報取得工程では、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す含水指数情報を二次元位置情報と関連付けて取得し、前記前記含水量推定工程では、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を二次元位置ごとに推定する推定方法。
前記推定方法において、前記光学特性測定工程では、推定対象である前記物質の2つの前記光学特性を、飛行体に取り付けられた前記ハイパースペクトルカメラ又は前記マルチスペクトルカメラによって測定する推定方法。
製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の薬剤の含有量を推定する推定方法であって、薬剤含有モデル情報取得工程と、含有指数情報取得工程と、含有量推定工程とを備え、前記薬剤含有モデル情報取得工程では、前記物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含有指数と、前記物質中の薬剤の含有量又は含有の有無との関係を示す薬剤含有モデル情報を取得し、前記含有指数情報取得工程では、推定対象である前記物質の前記含有指数を示す含有指数情報を取得し、前記含水量推定工程では、前記薬剤含有モデル情報と、前記含有指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質中の薬剤の含有量又は含有の有無を推定する推定方法。
製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定プログラムであって、コンピュータを、含水モデル情報取得部、含水指数情報取得部及び含水量推定部として機能させ、前記含水モデル情報取得部は、前記物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、前記物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得するように構成され、前記含水指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含水指数を示す光学特性情報を取得するように構成され、前記含水量推定部は、前記含水モデル情報と、前記含水指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質の含水量を推定するように構成される推定プログラム。
製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の薬剤の含有量を推定する推定プログラムであって、コンピュータを、薬剤含有モデル情報取得部、含有指数情報取得部及び含有量推定部として機能させ、前記薬剤含有モデル情報取得部は、前記物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含有指数と、前記物質中の薬剤の含有量又は含有の有無との関係を示す薬剤含有情報を取得するように構成され、前記含有指数情報取得部は、推定対象である前記物質の前記含有指数を示す含有指数情報を取得するように構成され、前記含水量推定部は、前記薬剤含有モデル情報と、前記含有指数情報とに基づいて、推定対象である前記物質中の薬剤の含有量又は含有の有無を推定するように構成される推定プログラム。
もちろん、この限りではない。
【0011】
本発明によれば、測定距離及び気象条件の少なくともいずれかにかかわらず、製鉄原料、発電原料である物質中の含水量及び薬剤の含有量のうち、少なくともいずれかを精度よく推定することができる推定システム、推定装置、推定方法及び推定プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る推定システムを示す概略図である。
【
図2】本実施形態に係る推定装置の機能構成を示す概略図である。
【
図3】本実施形態に係る推定装置のハードウェア構成を示す概略図である。
【
図4】本実施形態に係る推定方法のフローチャート図である。
【
図5】石炭Aの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
【
図6】石炭Bの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
【
図7】石炭Cの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
【
図8】石炭Dの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
【
図9】鉄鉱石Eの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
【
図10】鉄鉱石Fの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
【
図11】鉄鉱石Gの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0014】
本実施形態に係るソフトウェアを実現するためのプログラムは、コンピュータが読み取り可能な非一時的な記録媒体(Non-Transitory Computer-Readable Medium)として提供されてもよいし、外部のサーバからダウンロード可能に提供されてもよいし、外部のコンピュータで当該プログラムを起動させてクライアント端末でその機能を実現(いわゆるクラウドコンピューティング)するように提供されてもよい。
【0015】
また、本実施形態において「部」とは、例えば、広義の回路によって実施されるハードウェア資源と、これらのハードウェア資源によって具体的に実現されうるソフトウェアの情報処理とを合わせたものも含みうる。また、本実施形態においては様々な情報を取り扱うが、これら情報は、例えば電圧・電流を表す信号値の物理的な値、0又は1で構成される2進数のビット集合体としての信号値の高低、又は量子的な重ね合わせ(いわゆる量子ビット)によって表され、広義の回路上で通信・演算が実行され得る。
【0016】
また、広義の回路とは、回路(Circuit)、回路類(Circuitry)、プロセッサ(Processor)、及びメモリ(Memory)等を少なくとも適当に組み合わせることによって実現される回路である。すなわち、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等を含むものである。
【0017】
<含水量の推定>
〔推定システム・推定装置〕
本実施形態に係る推定システムは、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定システムである。具体的に、この推定システムは、含水モデル情報取得部と、含水指数情報取得部と、含水量推定部とを備えるものである。このうち、含水モデル情報取得部は、推定対象である物質と同一の物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得するように構成される。また、含水指数情報取得部は、推定対象である物質の含水指数を示す含水指数情報を取得するように構成される。さらに、含水量推定部は、含水モデル情報と、含水指数情報とに基づいて、推定対象である物質の含水量を推定するように構成される。
【0018】
ここで、「製鉄原料」とは、製鉄所等の製鉄設備における製鉄の原料及び燃料として使用されるものをいい、例えば石炭、鉄鋼、ダスト、スラグ、コークス、焼結鉱の他、石灰石、ドロマイト等の副原料等が挙げられる。また、「発電燃料」とは、発電所等の発電設備における発電の燃料として使用されるものをいい、例えば石炭、バイオマス燃料等が挙げられる。
【0019】
また、含水量とは、絶対的な質量であってもよいし、物質の単位質量あたりの含水量、すなわち含水率をも含む概念である。
【0020】
また、必須の構成ではないが、本実施形態に係る推定システムは、光学特性情報取得部、含水指数情報算出部、含水モデル管理部及び出力制御部のうち、1又は2以上を備えてもよい。なお、以下で説明する
図1には、これら全てを備える推定システムについて主として説明する。
【0021】
〔推定システムの機能的構成〕
図1は、本実施形態に係る推定システムの概略図である。この推定システム1は、推定装置2と、出力装置3と、光学特性情報測定装置4とを備える。
【0022】
このうち、推定装置2は、推定システム1における物質S中の含水量の推定のための情報処理を制御するものである。
図2は、本実施形態に係る推定装置の機能構成を示す概略模式図である。この
図2に示すように、本実施形態に係る推定装置2は、含水モデル情報取得部21、含水指数情報取得部22、推定部23、光学特性情報取得部24及び含水指数情報算出部25を備える。また、図示しないが、推定措置2は、含水モデル管理部及び出力制御部を備える。なお、出力装置3は、出力部の一例である。また、光学特性情報測定装置4は、光学特性情報測定部の一例であるが、以下では特に区別せず説明する。
【0023】
[推定システムの機能]
以下、推定システム1の各部の機能について具体的に説明する。
【0024】
(含水モデル情報取得部)
含水モデル情報取得部21は、物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得するように構成されるものである。
【0025】
800nm~2400nmの波長範囲内では、水分子が吸収を示す波長ピークが複数存在する。したがって、この波長範囲内で測定する反射率は、実際の物質Sの含水量と相関性が高い。特に、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数は、2つの波長における影響を反映しているため、実際の物質Sの含水量と特に相関性が高く、物質Sの含水指数と含水量との関係を示す含水モデル情報を用いることに測定距離及び気象条件にかかわらず、精度よく物質Sの含水量を推定することができる。
【0026】
なお、上述した2つの波長を選択するための波長範囲としては、800nm~2400nmの波長範囲内であれば特に限定されないが、800nm~1100nm、1160nm~1340nm及び1440nm~2400nmの範囲内であることが好ましい。1100nm超1160nm未満、1340nm超1440nm未満の範囲は大気中の水分が寄与する可能性がある。したがって、測定距離や天候(晴天、曇天)の影響を小さくして測定するためには、大気の水分の影響を受けにくい波長域を選定することが好ましい。具体的には、1110~1150nm、1350~1430nmの波長範囲内の光は大気水分の影響を受けやすいため、これらの波長範囲を除外することが好ましい。光学特性として、800nm~1100nm、1160nm~1340nm及び1440nm~2400nmの波長範囲内の光に対する物質Sの光学特性を用いることにより、測定距離及び気象条件にかかわらず、より精度よく物質Sの含水量を推定することができる。
【0027】
光学特性としては、特に限定されないが、吸収率、反射率又は透過率を用いることが好ましく、反射率を用いることが好ましい。
【0028】
ここで、「物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数」(以下、「差の関数」ということもある。)について説明する。一例として、2つの光の波長として1050nm及び1330nmを選択し、光学特性として反射率を選択する場合について具体的に説明する。波長1050nmの光に対する反射率をR1050、波長1330nmの光に対する反射率をR1330とすると、2つの光学特性の差はR1330-R1050と示される。差の関数はf(R1330-R1050)と示される。
【0029】
これを一般化すると、波長inm、jnmの光に対する光学特性をそれぞれOi、Ojとすると、2つの光学特性の差はOj-Oiと示され、差の関数はf(Oj-Oi)と示される。なお、Oi、Ojは、それぞれ同一の光学特性であっても、異なる光学特性であってもよい。「同一の光学特性」とは、例えばOi、Ojともに反射率であるような場合をいい、「異なる光学特性」とは、例えばOiは反射率、Ojは吸収率であるような場合をいう。
【0030】
また、差の関数の形態としては、O
j-Oiの関数であれば特に限定されるものではなく、O
j-O
i、C(O
j-O
i)、C/(O
j-O
i)、C
Oj-Oi、e
Oj-Oi、log(O
j-O
i)(式中、Cは任意の定数である。)等の関数を用いることができる。また、差の関数としては、式中にさらに、O
i、O
jが含まれていてもよく、例えば、以下の式(1)~(3)のようなものを用いることもできる。
【数1】
【数2】
【数3】
【0031】
一実施形態において、差の関数としては、正規化分光反射指数(NDSI;Normalization Difference Spectral Index)を用いることもできる。具体的に、この正規化分光反射指数は、波長inm、jnmの光に対する反射率をそれぞれR
i、R
jとすると、以下の式(4)で表される。
【数4】
【0032】
含水モデル情報としては、物質の含水指数と含水量との関係を示すものであれば特に限定されないが、例えば含水指数と含水量との関係を示す関数、ルックアップテーブル又はそれらの関係の学習済モデル等を用いることができる。
【0033】
含水モデル情報として、物質の含水指数と含水量との関係を示す関数を用いる場合において、このような関数を作成する方法の一例について説明する。想定し得る含水量の範囲をカバーするように(想定し得る含水量の上限を上回るものと、下限を下回るものが少なくとも1点ずつ存在すると好ましいが、その限りではない。)含水量を変化させた複数の含水量既知の物質を用意する。それぞれについて、800nm~2400nmの波長範囲内で、一定間隔(例えば10nm)ごとに刻み、刻んだ波長のうちから2つの波長を選択し、これらの波長に対する、含水量既知の物質の光学特性をそれぞれ測定する。2つの波長に対する2つの光学特性の差と、含水量(既知)とについて回帰分析を行い、特に決定係数が高い2つの波長を求め、その波長における関数を、物質の含水指数と含水量との関係を示す関数として用いる。また、このような関数については、測定距離及び気象条件を変えて、決定係数を一定以上(例えば、R2>0.8)となる2つの波長の組み合わせを用いて、推定の精度をより高めることもできる。また、さらに物質の銘柄にかかわらずに物質の含水量を推定したい場合には、物質の銘柄を変えて決定係数を一定以上(例えば、R2>0.8)となる2つの波長の組み合わせを用いればよい。
【0034】
2つの波長を選択する波長範囲としては、上述したとおり、800nm~2400nmの波長範囲内であれば特に宇限定されないが、850nm以上、900nm以上であることが好ましい。2つの波長を選択する波長範囲としては、2300nm以下、2200nm以下、2100nm以下、2000nm以下、1900nm以下、1800nm以下、1700nm以下であることが好ましい。
【0035】
刻みの間隔としては、特に限定されないが、5nm以上、6nm以上、7nm以上、8nm以上、9nm以上、10nm以上であることが好ましい。刻みの間隔が所要量以上であることにより、含水モデルの作成を容易にすることができる。一方、刻みの間隔としては、50nm以下、45nm以下、40nm以下、30nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下であることが好ましい。刻みの間隔が所要量以下であることにより、含水モデルを精度よく作成することができる。
【0036】
回帰分析としては、特に限定されないが、単回帰分析、重回帰分析等を用いることができる。
【0037】
一実施形態において、含水モデル情報は、含水指数と物質の含水量との線形関係のモデルであることが好ましい。線形関係の含水モデル情報を作成する場合、例えば単回帰分析によって含水モデルを作成すればよい。
【0038】
[含水指数情報取得部]
含水指数情報取得部22は、推定対象である物質Sの含水指数を示す含水指数情報を取得するように構成されるものである。
【0039】
含水指数は、例えば後述する含水指数情報算出部23において算出するものである。
【0040】
含水指数情報取得部22において取得する含水指数を有する物質は、含水量の推定対象である物質Sである。これに対し、含水モデル情報を作成するために用いる物質は、事前に含水量を既知とした試料としての物質である。
【0041】
含水指数情報取得部22において取得する含水指数情報は、含水モデル情報を作成する場合に用いた2つの光学特性に係る2つの波長と、同一の波長で測定した光学特性から算出されるものである。
【0042】
[含水量推定部]
含水量推定部23は、含水モデル情報と、含水指数情報とに基づいて、推定対象である物質Sの含水量を推定するように構成されるものである。
【0043】
含水量推定部23において、例えば上述したような含水モデル情報として、物質の含水指数と含水量との関係を示す関数を用いる場合、その関数に、含水指数情報取得部22において取得した含水情報指数を代入して、含水指数を推定することができる。
【0044】
[光学特性情報取得部]
光学特性情報取得部24は、推定対象である物質Sの、2つの光学特性を示す光学特性情報を取得するように構成されるものである。
【0045】
光学特性情報は、例えば後述する光学特性情報測定装置4により測定する。
【0046】
光学特性情報取得部24において取得する光学特性を有する物質は、含水量の推定対象である物質Sである。これに対し、含水モデル情報を作成するために用いる物質は、事前に含水量を既知とした試料としての物質である。なお、両者は、測定距離及び測定する気象条件が同一であっても異なってもよい。本実施形態に係る推定装置によれば、測定距離及び測定する気象条件が同一でなくても、物質の含有量を精度よく推定することができる。
【0047】
光学特性情報取得部24において取得する光学特性情報は、含水モデル情報を作成する場合に用いた2つの光学特性に係る2つの波長と、同一の波長で測定した光学特性である。
【0048】
また、光学特性情報取得部24において取得する光学特性情報と、差の関数を算出するために用いる2つの光学特性とは、それぞれ同一の光学特性を用いることが好ましいが、相互に変換が可能である場合、異なる光学特性を用いてもよい。
【0049】
[含水指数情報算出部]
含水指数情報算出部25は、推定対象である物質Sの2つの波長に対する2つの光学特性と、差の関数に基づき、推定対象である物質Sの含水指数を算出するように構成されるものである。
【0050】
具体的には、例えば事前に設定した差の関数に、推定対象である物質Sの2つの波長に対する2つの光学特性を代入して、推定対象である物質Sの含水指数を算出する。
【0051】
この含水指数情報算出部25において用いる2つの光学特性は、光学特性情報取得部24において取得した光学特性であってよい。
【0052】
[含水モデル情報管理部]
含水モデル情報管理部は、含水モデル情報を記憶して管理するように構成されるものである。
【0053】
含水モデル情報管理部としては、各種記憶装置を用いることができる。
【0054】
[出力制御部]
出力制御部は、推定部23において推定された物質Sの含水量の出力を制御するように構成されるものである。
【0055】
[出力部]
出力部3は、推定部23において推定された物質Sの含水量を出力するように構成されるものである。
【0056】
具体的に、出力部3の出力方法としては、後述する光学特性測定装置4の取得方法にもよるが、物質Sのパイル等の広い範囲に物質Sが配置されている場合等には、その範囲を一定の範囲(面積)に分けて光学特性を測定し、特定の範囲(面積)ごとに推定された含水量を出力してもよく、また、物質Sのパイル等が広い範囲に物質Sが配置されている場合等には、その範囲を一定の範囲(面積)に分けて光学特性を測定し、その全部又は一部を積算してより大きい範囲の光学特性を出力してもよい。光学特性の測定範囲を一定の範囲(面積)に分ける場合において、その測定範囲、出力範囲は等分しても不等分してもよく、また、例えばパイルごと等、測定範囲や出力範囲を一定の単位に分けて光学特性を測定し、推定された含水量を出力してもよく、例えば測定範囲をパイルよりも小さな単位で均等に分けて、分けた範囲の中でパイルの含まれる範囲を積算して、パイルごとに推定された含水量を出力してもよい。このように、光学特性の測定範囲やその分け方と、出力範囲やその分け方は、用途等に応じて適宜組み合わせることができる。
【0057】
また、含水量の大小で区分けし、ヤードの画像や模式図の中のパイルの上に着色したり、文字で示したりしてもよい。
【0058】
[光学特性情報測定部]
光学特性情報測定部4は、推定対象である物質Sの光学特性情報を測定するように構成されるものである。
【0059】
上述したとおり、光学特性の測定範囲やその分け方は、用途等に応じて適宜選択することができ、光学特性情報測定部4も、光学特性の測定範囲やその分け方に応じて適宜選択すればよく、光学特性を測定できるものであれば特に限定されない。例えば、ヤード内にパイル状に積まれた物質Sを測定する場合には、光学特性情報測定部として、ハイパースペクトルカメラやマルチスペクトルカメラを用いることができる。この場合において、ハイパースペクトルカメラやマルチスペクトルカメラは、ヤード上空から測定する必要がある。そこで、このような光学特性情報測定部を、物質Sのパイルの最大高さよりも高い位置を飛行することができる飛行体(例えば、ドローン等の無人飛行体UAV))等や、パイルの最大高さよりも高い位置まで伸長することができるリクレーマー等のブームに取り付けて用いればよい。すなわち、このような場合においては、推定対象である物質Sの光学特性は、ハイパースペクトルカメラ又はマルチスペクトルカメラを用いて測定され、特に飛行隊に取り付けられたハイパースペクトルカメラ又はマルチスペクトルカメラを用いて測定される。
【0060】
光学特性情報測定部を飛行体やブームに取り付けて用いる場合において、例えば推定対象である物質の2つの光学特性は、二次元位置情報と関連付けられたものであることが好ましい。ここで、「二次元位置情報」とは、ヤード等の地面を上空から平面視した場合の二次元平面上の位置情報をいう。また、光学特性が「二次元位置情報と関連付けられた」とは、光学特性が二次元位置のどの位置のものであるかが特定可能な状態で存在することをいう。また、このような場合において、含水指数情報取得部は、推定対象である物質の含水指数を示す含水指数情報を二次元位置情報と関連付けて取得するように構成され、含水量推定部は、含水モデル情報と、含水指数情報とに基づいて、推定対象である物質の含水量を二次元位置ごとに推定するように構成される。
【0061】
光学特性情報測定部4の配置される高さとしては、特に限定されないが、ヤードから20m以上200m以下高い位置に配置されることが好ましい。具体的に、パイル情報測定部4の配置される高さとしては、例えば25m以上、30m以上、35m以上、40m以上、45m以上、50m以上、55m以上、60m以上、65m以上、70m以上、75m以上、80m以上、85m以上、90m以上、95m以上、100m以上、105m以上、110m以上、115m以上、120m以上、125m以上、130m以上、135m以上であってよく、また、195m以下、190m以下、185m以下、180m以下、175m以下、170m以下、165m以下、160m以下であってもよい。
【0062】
光学特性情報測定部4によって測定した光学特性情報は、光学特性情報取得部24と通信して送信してもよいし、光学特性情報測定部4に記録媒体を付してパイル情報をそこに記録し、その記録媒体を介して、光学特性情報取得部24にパイル情報を取得させてもよい。
【0063】
このような推定システムによれば、測定距離及び気象条件にかかわらず、製鉄原料、発電原料である物質S中の含水量及び薬剤の含有量のうち、少なくともいずれかを精度よく推定することができる。そして、この推定結果に基づき、種々の対応を行うことができる。
【0064】
具体的な対応としては、例えば、物質Sの含水量が少なく粉塵発生のリスクが高い場合には、粉塵発生を抑制する防塵剤の添加又は散水を行い、物質Sの含水量が多い場合には、防塵剤の添加又は散水を行わない。
【0065】
防塵剤としては、特に限定されないが、ワックスエマルション溶液や、樹脂エマルション溶液、シリコーンオイル、鉱物油や重油等を用いることができる。ワックスエマルションは、ワックスの原料について、天然ワックスと合成ワックスとに分けられる。このうち、天然ワックスとしては、特に限定されないが、動物系ワックス(蜜蝋、鯨蝋等)、植物系ワックス(カルナバ蝋、ライスワックス、キャンデリラワックス等)、石油系ワックス(パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等)、鉱物系ワックス(モンタンワックス、セレシンワックス等)等が挙げられる。また、合成ワックスとしては、特に限定されないが、ポリエチレンワックス、天然ワックス変性物、油脂類の硬化油等を用いることができる。エマルジョン樹脂溶液のエマルジョン樹脂としては、特に限定されず、例えばアクリル系樹脂、アクリル系共重合樹脂、酢酸ビニル系樹脂、合成ゴム、ウレタン樹脂、アスファルト(乳化剤)、アクリル・スチレン系エマルション、スチレン・ブタジエン系エマルション、エチレン・酢酸ビニル系、エマルション、バーサチック酸アクリル酸等を用いることができる。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、有機官能性シリコーンオイル(官能基として、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、フェニル基、長鎖アルキル基、水素基等)を用いることができる。なお、このような樹脂エマルション溶液からなる防塵剤は、パイルの表面に疎水性の被膜を形成するものである。
【0066】
遮水剤の添加は、例えば遮水剤添加装置や遮水剤添加部(いずれも図示せず。)を用いて行うことができる。
【0067】
一方、物質Sの含水量が多い場合には、水を散水する。
【0068】
散水は、例えば散水装置や散水部(いずれも図示せず)を用いて行うことができる。
【0069】
〔推定装置のハードウェア構成〕
図3は、本実施形態に係る推定装置2のハードウェア構成を示す概略図である。
図3に示されるように、推定装置2は、通信部26と、記憶部27と、制御部28とを有し、これらの構成要素が推定装置2の内部において通信バス29を介して電気的に接続されている。以下、これらの構成要素についてさらに説明する。
【0070】
通信部26は、USB、IEEE1394、Thunderbolt、有線LANネットワーク通信等といった有線型の通信手段が好ましいが、無線LANネットワーク通信、3G/LTE/5G等のモバイル通信、Bluetooth(登録商標)通信等を必要に応じて含めることができる。すなわち、これら複数の通信手段の集合として実施することがより好ましい。これにより推定装置2と通信可能な他の機器との間で情報や命令のやりとりが実行される。
【0071】
記憶部27は、前述の記載により定義される様々な情報を記憶する。これは、例えばソリッドステートドライブ(Solid State Drive:SSD)等のストレージデバイスとして、または、プログラムの演算に係る一時的に必要な情報(引数、配列等)を記憶するランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)等のメモリとして実施され得る。また、記憶部27は、これらの組合せであってもよい。また、記憶部27は、後述する制御部28が読み出し可能な各種のプログラムを記憶している。
【0072】
制御部28は、推定装置2に関連する全体動作の処理・制御を行う。この制御部28は、例えば中央処理装置(Central Processing Unit:CPU、図示せず。)である。制御部28は、記憶部27に記憶された所定のプログラムを読み出すことによって、推定装置2に係る種々の機能を実現するものである。すなわち、ソフトウェア(記憶部27に記憶されている。)による情報処理がハードウェア(制御部28)によって具体的に実現されることで、
図4に示されるように、制御部28における各機能部として実行され得る。なお、
図4においては、単一の制御部28として表記されているが、実際はこれに限るものではなく、機能ごとに複数の制御部28を有するように構成してもよく、また、単一の制御部と複数の制御部を組合せてもよい。
【0073】
〔推定方法〕
本実施形態に係る推定方法は、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定方法である。具体的に、この推定方法は、含水モデル情報取得工程と、含水指数情報取得工程と、含水量推定工程とを備える。このうち、含水モデル情報取得工程では、物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得し、含水指数情報取得工程では、推定対象である物質の含水指数を示す含水指数情報を取得し、含水量推定工程では、含水モデル情報と、含水指数情報とに基づいて、推定対象である物質の含水量を推定する。
【0074】
図4は、本実施形態に係る推定方法のフローチャート図である。
図4に示すとおり、本実施形態に係る推定方法においては、含水モデル情報を取得する(含水モデル情報取得工程S1)とともに、含水指数情報を取得して(含水指数情報取得工程S2)、これらを入力情報として、物質中の含水量を推定する(含水量推定工程S3)。ここで、含水モデル情報取得工程S1及び含水指数情報取得工程S2について、順序の先行は問わず、含水モデル情報取得工程S1が先であっても、含水指数情報取得工程S2が先であってもよいし、含水モデル情報取得工程S1及び含水指数情報取得工程S2を同時に行ってもよい。
【0075】
含水モデル情報取得工程、含水指数情報取得工程及び含水量推定工程は、上述した含水モデル情報取得部、含水指数情報取得部及び含水量推定部の動作と同様であるので、ここでの具体的な説明は省略する。
【0076】
なお、本実施形態に係る推定方法においては、光学特性情報取得工程、含水指数情報算出工程、含水モデル管理工程、出力制御工程、出力工程、光学特性情報測定工程、遮水剤添加工程及び散水工程を設けてもよい。これらはそれぞれ、光学特性情報取得部、含水指数情報算出部、含水モデル管理部、出力制御部、出力部、光学特性情報測定部、遮水剤添加部及び散水部の動作と同様であるので、ここでの具体的な説明は省略する。
【0077】
〔推定プログラム〕
本実施形態に係る推定プログラムは、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の含水量を推定する推定プログラムである。具体的に、この推定プログラムは、コンピュータを、含水モデル情報取得部、含水指数情報取得部及び含水量推定部として機能させるものである。このうち、含水モデル情報取得部は、物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含水指数と、物質中の含水量との関係を示す含水モデル情報を取得するように構成されるものである。また、含水指数情報取得部は、推定対象である物質の含水指数を示す光学特性情報を取得するように構成されるものである。さらに、含水量推定部は、含水モデル情報と、含水指数情報とに基づいて、推定対象である物質の含水量を推定するように構成されるものである。
【0078】
<薬剤の含有量又は含有の有無の推定>
物質中の有機系の処理剤である遮水剤の含有量も、上述した物質中の含水量の推定と同様の方法で精度よく推定することができる。
【0079】
なお、物質中の含水量の推定に関する上述した説明は全て(必須の構成でないものとして記載したものを含む。)、本項における薬剤の含有量の推定に適用することができる。この場合において、物質中の含水量の推定に関する「含水量」は「薬剤の含有量」に、「含水モデル情報」は「含有モデル情報」に、「含水指数」は「含有指数」に、置き換えて適用する。一方で、含有の有無の推定の詳細は後述する。
【0080】
〔推定システム〕
本実施形態に係る推定システムは、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の薬剤の含有量を推定する推定システムである。具体的に、この推定システムは、薬剤含有モデル情報取得部と、含有指数情報取得部と、含有量推定部とを備えるものである。このうち、薬剤含有モデル情報取得部は、物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含有指数と、物質中の薬剤の含有量又は含有の有無との関係を示す薬剤含有モデル情報を取得するように構成されるものである。また、含有指数情報取得部は、推定対象である物質の含有指数を示す含有指数情報を取得するように構成されるものである。さらに、含水量推定部は、薬剤含有モデル情報と、含有指数情報とに基づいて、推定対象である物質中の薬剤の含有量又は含有の有無を推定するように構成されるものである。
【0081】
〔推定装置〕
本実施形態に係る推定装置は、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の薬剤の含有量を推定する推定装置である。具体的に、この推定装置は、薬剤含有モデル情報取得部と、含有指数情報取得部と、含有量推定部とを備えるものである。このうち、薬剤含有モデル情報取得部は、物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含有指数と、物質中の薬剤の含有量又は含有の有無との関係を示す薬剤含有モデル情報を取得するように構成されるものである。また、含有指数情報取得部は、推定対象である物質の含有指数を示す含有指数情報を取得するように構成されるものである。さらに、含有量推定部は、薬剤含有モデル情報と、含有指数情報とに基づいて、推定対象である物質中の薬剤の含有量又は含有の有無を推定するように構成されるものである。
【0082】
〔推定方法〕
本実施形態に係る推定方法は、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の薬剤の含有量を推定する推定方法である。具体的に、この推定方法は、薬剤含有モデル情報取得工程と、含有指数情報取得工程と、含有量推定工程とを備える。このうち、薬剤含有モデル情報取得工程では、物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含有指数と、物質中の薬剤の含有量又は含有の有無との関係を示す薬剤含有モデル情報を取得する。また、含有指数情報取得工程では、推定対象である物質の含有指数を示す含有指数情報を取得する。さらに、含水量推定工程では、薬剤含有モデル情報と、含有指数情報とに基づいて、推定対象である物質中の薬剤の含有量又は含有の有無を推定する。
【0083】
〔推定プログラム〕
本実施形態に係る推定プログラムは、製鉄原料及び/又は発電燃料である物質中の薬剤の含有量を推定する推定プログラムである。具体的に、この推定プログラムは、コンピュータを、薬剤含有モデル情報取得部、含有指数情報取得部及び含有量推定部として機能させるものである。このうち、薬剤含有モデル情報取得部は、物質の、800nm~2400nmの波長範囲内の異なる2つの波長の光に対する2つの光学特性の差の関数として算出する含有指数と、物質中の薬剤の含有量又は含有の有無との関係を示す薬剤含有情報を取得するように構成されるものである。また、含有指数情報取得部は、推定対象である物質の含有指数を示す含有指数情報を取得するように構成されるものである。さらに、含水量推定部は、薬剤含有モデル情報と、含有指数情報とに基づいて、推定対象である物質中の薬剤の含有量又は含有の有無を推定するように構成されるものである。
【0084】
一方で、薬剤の含有の有無の推定に際しては、薬剤含有モデル情報として、例えば含有指数に対する閾値を用いることができる。薬剤含有モデル情報として閾値を用いる場合、このような薬剤含有モデル情報は、薬剤を含有する(含有量既知の)物質の含有指数と、薬剤を含有しない物質の含有指数を対比して算出することができる。この場合、含水量推定部では、推定対象である物質の含有指数が、閾値以上であるか(又は閾値を超えるか)否かで、薬剤の含有の有無を推定することができる。
【0085】
本発明は、以上で述べた実施形態に何ら限定されることなく、変更を加えて実施することができる。
【実施例】
【0086】
以下、本発明について実施例を示してより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0087】
〔実施例1〕
予備実験として、石炭について、含水量が3、5、7、9質量%にそれぞれ含水量の調整をし、マルチスペクトルカメラを用いて、波長900~1700nmの波長範囲において反射スペクトルを測定した。この波長範囲において10nm刻み(900、910、920・・・1680、1690、1700nm)で81個の波長に対する反射率を、式(4)のRi,Rjにそれぞれ代入し、Ri81通り、Rj81通り、計6561通りの組み合わせについてそれぞれNDSI値を算出し、上述した4つの試料の含水量を用いて単回帰分析を行った。実験結果から、決定係数の高い波長の組み合わせとして、i=1020nm、j=1330nmを選択した。
【0088】
それぞれ銘柄が異なる石炭A~Dについて、水分量を調整した試料を一定量、平板プレート上に測り取り、マルチスペクトルカメラ(エバ・ジャパン株式会社製 SIS-I)を用いて、波長900~1700nmの波長範囲において、晴天及び曇天のそれぞれで反射スペクトルを測定した。反射スペクトルのうち、2つの波長としてi=1020nm、j=1330nmを選択し、式(4)を用いて算出したNDSI値と石炭の含水率実測値との関係を調査した。
【0089】
図5は、石炭Aの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
図6は、石炭Bの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
図7は、石炭Cの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
図8は、石炭Dの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
【0090】
石炭A~Dにおいて、決定係数R2は、それぞれ0.875(石炭A)、0.8449(石炭B)、0.9569(石炭C)、0.9348(石炭D)であり、晴天、曇天にかかわらず、石炭の含水率実測値とNDSI値とは高い相関関係を有することが分かった。
【0091】
〔実施例2〕
石炭の代わりに、鉄鉱石を用いて予備実験を行い、2つの波長としてi=950nm、j=1330nmを選択した。
【0092】
それぞれ銘柄が異なる鉄鉱石E~Gについて、水分量を調整した試料を一定量、平板プレート上に測り取り、マルチスペクトルカメラを用いて、波長900~1700nmの波長範囲において、晴天及び曇天のそれぞれで反射スペクトルを測定した。反射スペクトルのうち、2つの波長としてi=1020nm、j=1330nmを選択し、式(4)を用いて算出したNDSI値と石炭の含水率実測値との関係を調査した。
【0093】
図9は、鉄鉱石Eの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
図10は、鉄鉱石Fの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
図11は、鉄鉱石Gの含水率実測値対NDSI値のプロットである。
【0094】
鉄鉱石E~Gにおいて、決定係数R2は、それぞれ0.7991(鉄鉱石E)、0.9288(鉄鉱石F)、0.8912(鉄鉱石G)であり、晴天、曇天にかかわらず、鉄鉱石の含水率実測値とNDSI値とは高い相関関係を有することが分かった。
【0095】
〔実施例3〕
石炭H~Kに、薬剤(防塵剤としての酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合体とアクリルスチレン共重合体の混合エマルション水溶液、10質量%)を、霧吹きで平板プレート上の石炭に噴霧し、2L/m3-石炭に調整した後、2日間室温で乾燥させて、薬剤を含有する石炭H~Kを作製した。
【0096】
薬剤を含有しない石炭H~Kそれぞれ1試料、及び薬剤を含有する石炭H~Kそれぞれ2試料について、実施例1と同様にして、NDSI値を、i=1020nm及びj=1330nmの波長の組み合わせ並びにi=950nm及びj=1330nmの波長の組み合わせで算出し、NDSI値を算出した。表1にこれらの結果を示す。
【0097】
表1から、石炭H~Kにおいても、NDSI値の閾値を例えば16とすることで、石炭H~K中の薬剤の含有を推定できることが分かった。
【0098】
【符号の説明】
【0099】
1 推定システム
2 推定装置
21 含水モデル情報取得部
22 含水指数情報取得部
23 推定部
24 光学特性情報取得部
25 含水指数情報算出部
26 通信部
27 記憶部
28 制御部
29 通信バス
3 出力装置
4 光学特性情報測定装置
S 物質