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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】組成物および弾性体
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/02 20060101AFI20240910BHJP
   C08L 91/06 20060101ALI20240910BHJP
   C08F 297/04 20060101ALI20240910BHJP
   D01F 6/46 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08L53/02
C08L91/06
C08F297/04
D01F6/46 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023098442
(22)【出願日】2023-06-15
(62)【分割の表示】P 2020539539の分割
【原出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2023113949
(43)【公開日】2023-08-16
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2018159038
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】磯部 浩輔
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貞治
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄太
【審査官】中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-139326(JP,A)
【文献】特表2002-514232(JP,A)
【文献】特開2001-316594(JP,A)
【文献】特開昭51-122153(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 53/02
C08L 91/06
C08F 297/04
D01F 6/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックおよび少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックを有するブロック共重合体、および、ワックスを含有する組成物であって、
前記ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量が、5~55質量%であり、
前記ワックスが、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を含有し、直鎖状炭化水素と分岐鎖状炭化水素との重量比が、直鎖状炭化水素/分岐鎖状炭化水素で表される重量比で、75/25~99/1であり、
前記ワックスの融点が80℃未満であり、
前記ワックス中の前記直鎖状炭化水素および前記分岐鎖状炭化水素の合計量が90質量%以上であり、
前記組成物中の前記ワックスの含有量が、前記ブロック共重合体100重量部に対して、0.1~5重量部である組成物。
【請求項2】
前記共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位以外の単量体単位の含有量が、20質量%以下である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記共役ジエン重合体ブロックのビニル結合含有量が1~20モル%の範囲である請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体の重量平均分子量が、40,000~500,000である請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
Arが芳香族ビニル重合体ブロックを表し、Dが共役ジエン重合体ブロックを表し、Xがカップリング剤の残基を表し、nが2以上の整数を表すものとした場合において、
前記ブロック共重合体が、Ar-Dとして表される芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体、およびAr-D-Arまたは(Ar-D)n-Xとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体、ならびにこれらの混合物から選択されるブロック共重合体である請求項1~4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記ブロック共重合体が、Ar-D-Arまたは(Ar-D)n-Xとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体を含む請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ブロック共重合体が、さらに、Ar-Dとして表される芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体を含む請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記ブロック共重合体が、イソプレン重合体ブロックを有する請求項1~7のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の組成物から得られる弾性体。
【請求項10】
衛生材料用弾性体である請求項9に記載の弾性体。
【請求項11】
フィルムまたは糸である請求項9または10に記載の弾性体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ビニル重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとを有するブロック共重合体を含有する組成物に関し、さらに詳しくは、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができる組成物、および、該組成物から得られる弾性体に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーの中でも、特に弾性に富み、柔軟であることから、紙おむつや生理用品等の衛生用品に用いられる伸縮性フィルムの材料としての利用が、その代表的な用途の1つとなっている。
【0003】
紙おむつや生理用品等の衛生用品には、装着者の動きに対する追従性やフィット性が求められることから、各部に伸縮性フィルムが用いられている。例えば、紙オムツの一種であるパンツ型オムツ等の衛生用品では、装着者が激しく動いたり、長時間の装着を行なったりしても、ずれを生じさせないことが必要であることから、用いられる伸縮性フィルムには、高い弾性率と小さい永久伸びとを併せ持つことが要求される。
【0004】
特許文献1では、フィルム状に成形した後、高い弾性率と小さい永久伸びとが高いレベルで両立され、さらには、良好な成形性で成形可能なブロック共重合体組成物として、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックと、少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックとを有してなるブロック共重合体100重量部に対して、芳香族ビニル重合体25~150重量部、および脂肪酸アミド0.2~10重量部を含有するブロック共重合体組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-69565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができる組成物を提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、色相および低臭気性に優れており、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができる組成物を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、第1の目的を達成するために鋭意検討した結果、構造の異なる3種のブロック共重合体を組み合わせて用い、なおかつ、各ブロック共重合体を構成する幾つかのブロックの重量平均分子量、および、各ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量を適切に調整すると、優れた成形性を有する組成物が得られ、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明によれば、
一般式(A):Ar1-D-Ar2
(式中、Ar1は、重量平均分子量が5000~20000の芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロック、Ar2は、重量平均分子量が20000超~400000の芳香族ビニル重合体ブロックを表す)で表されるブロック共重合体A、
一般式(B):Ar1-D-Ar2
(式中、Ar1およびAr2は、それぞれ、重量平均分子量が5000~20000の芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロックを表す)で表されるブロック共重合体B、および、
一般式(C):(Ar-D-X
(式中、Arは、芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロック、nは、2以上の整数、Xは、カップリング剤の残基を表す)で表されるブロック共重合体Cを含有し、
前記ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位の含有量が、前記ブロック共重合体Aを構成する全単量体単位に対して、40~50重量%であり、
前記ブロック共重合体Bの芳香族ビニル単量体単位の含有量が、前記ブロック共重合体Bを構成する全単量体単位に対して、20~30重量%であり、
前記ブロック共重合体Cの芳香族ビニル単量体単位の含有量が、前記ブロック共重合体Cを構成する全単量体単位に対して、20重量%未満である
組成物(以下、「第1の組成物」ということがある)が提供される。
【0009】
本発明の第1の組成物において、共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量が1~20モル%であり、共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量が40000~400000であることが好ましい。
本発明の第1の組成物において、共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量が1~20モル%であり、共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量が40000~400000であることが好ましい。
本発明の第1の組成物において、前記ブロック共重合体Aおよび前記ブロック共重合体Bが、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する製造方法により得られたものであることが好ましい。
本発明の第1の組成物において、一般式(C)におけるnが2~4の整数であることが好ましい。
本発明の第1の組成物において、共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量が1~20モル%であり、共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量が20000~200000であることが好ましい。
本発明の第1の組成物において、前記ブロック共重合体Cが、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とを重合してジブロック鎖を形成し、前記ジブロック鎖とカップリング剤とを反応させてカップリングを行う製造方法により得られたものであることが好ましい。
本発明の第1の組成物は、一般式(D):Ar-D
(式中、Arは、芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロックを表す)で表されるブロック共重合体Dをさらに含有し、前記ブロック共重合体Dの芳香族ビニル単量体単位の含有量が、前記ブロック共重合体Dを構成する全単量体単位に対して、20重量%未満であることが好ましい。
本発明の第1の組成物は、ワックスをさらに含有し、前記ワックスが、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を含有し、直鎖状炭化水素(n-体)と分岐鎖状炭化水素(iso-体)との重量比(n-体/iso-体)が、30/70~99/1であり、前記ワックスの融点が80℃未満であり、前記組成物中の前記ワックスの含有量が、前記組成物中のブロック共重合体の合計100重量部に対して、0.1~5重量部であることが好ましい。
【0010】
また、本発明者らは、第2の目的を達成するために鋭意検討した結果、ブロック共重合体に対して、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を特定の重量比で含有しており、比較的低い融点を有するワックスを添加することによって、色相および低臭気性に優れた組成物が得られ、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
また、本発明によれば、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックおよび少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックを有するブロック共重合体、および、ワックスを含有する組成物であって、前記ワックスが、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を含有し、直鎖状炭化水素(n-体)と分岐鎖状炭化水素(iso-体)との重量比(n-体/iso-体)が、30/70~99/1であり、前記ワックスの融点が80℃未満であり、前記組成物中の前記ワックスの含有量が、前記ブロック共重合体100重量部に対して、0.1~5重量部である組成物(以下、「第2の組成物」ということがある)が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、上記の第1および第2の組成物から得られる弾性体が提供される。
【0013】
前記弾性体は、衛生材料用弾性体であることが好ましい。
前記弾性体または前記衛生材料用弾性体は、フィルムまたは糸であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができる第1の組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、色相および低臭気性に優れており、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができる第2の組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第1の組成物は、ブロック共重合体A、ブロック共重合体Bおよびブロック共重合体Cを含有する。
【0016】
(ブロック共重合体A)
ブロック共重合体Aは、下記の一般式(A)で表される共重合体である。
一般式(A):Ar1-D-Ar2
(式中、Ar1は、重量平均分子量が5000~20000の芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロック、Ar2は、重量平均分子量が20000超~400000の芳香族ビニル重合体ブロックを表す)
【0017】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0018】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、たとえば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2-メチル-4,6-ジクロロスチレン、2,4-ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンを用いることが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、2つの芳香族ビニル重合体ブロックは、同じ芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよいし、異なる芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよい。
【0019】
また、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)は、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)に含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)などの共役ジエン単量体、α,β-不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体などが挙げられる。芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)における芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。すなわち、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)は、実質的に、1種または2種以上の芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが好ましく、スチレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0020】
ブロック共重合体Aにおいて、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)と芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)とは、重量平均分子量が異なる。本発明の第1の組成物は、このような非対称のブロック共重合体Aを含有することから、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができる。
【0021】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量は、5000~20000であり、より好ましくは6000~18000であり、さらに好ましくは7000~16000である。
【0022】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量は、20000超400000以下であり、より好ましくは25000~300000であり、さらに好ましくは30000~200000である。
【0023】
共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0024】
共役ジエン重合体ブロック(D)の共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、ミルセン、ファルネセンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエンおよび/またはイソプレンを用いることが好ましく、イソプレンを用いることが特に好ましい。これらの共役ジエン単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。さらに、共役ジエン重合体ブロック(D)の不飽和結合の一部に対し、水素添加反応が行われていてもよい。
【0025】
また、共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。共役ジエン重合体ブロック(D)に含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、α,β-不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。共役ジエン重合体ブロック(D)における共役ジエン単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、実質的に0重量%であることが特に好ましい。すなわち、共役ジエン重合体ブロック(D)は、実質的に、1種または2種以上の共役ジエン単量体単位のみからなるものであることが好ましく、イソプレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0026】
共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量(共役ジエン重合体ブロック(D)中の全共役ジエン単量体単位において、1,2-ビニル結合単位と3,4-ビニル結合単位が占める割合)は、特に限定されないが、1~20モル%であることが好ましく、2~15モル%であることがより好ましく、3~10モル%であることが特に好ましい。ビニル結合含有量が多すぎると、得られる弾性体の柔軟性が損なわれる傾向がある。
【0027】
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、好ましくは40000~400000であり、より好ましくは45000~350000であり、さらに好ましくは50000~300000である。
【0028】
ブロック共重合体Aの重量平均分子量(すなわち、ブロック共重合体A全体の重量平均分子量)は、好ましくは65000~800000であり、より好ましくは70000~700000であり、さらに好ましくは75000~650000である。
【0029】
なお、本発明において、各重合体ブロックの重量平均分子量およびブロック重合体全体の重量平均分子量は、高速液体クロマトグラフィの測定による、ポリスチレン換算の値として求めるものとする。
【0030】
また、各重合体ブロックの重量平均分子量およびブロック重合体全体の重量平均分子量は、重合反応によってブロック共重合体を得る際に用いる、各重合体ブロックを形成するための各単量体の使用量や、重合開始剤の量を調節することにより、調整することができる。
【0031】
ブロック共重合体Aの芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体Aを構成する全単量体単位に対して、40~50重量%である。本発明の第1の組成物は、上記含有量で芳香族ビニル単量体単位を含有する非対称のブロック共重合体Aを含有することから、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができる。
【0032】
ブロック共重合体Aは、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する製造方法により得られたものであることが好ましい。したがって、ブロック共重合体Aは、カップリング剤の残基を含まないことが好ましい。このような製造方法の詳細は後述する。
【0033】
(ブロック共重合体B)
ブロック共重合体Bは、下記の一般式(B)で表される共重合体である。
一般式(B):Ar1-D-Ar2
(式中、Ar1およびAr2は、それぞれ、重量平均分子量が5000~20000の芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロックを表す)
【0034】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0035】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)と同様のものが挙げられる。
【0036】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)は、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)と同様のものが挙げられ、その含有量も、同様とすればよい。また、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)も、実質的に、1種または2種以上の芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが好ましく、スチレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0037】
ブロック共重合体Bにおいて、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)は、いずれも、5000~20000の範囲内の重量平均分子量を有する。本発明の第1の組成物は、このような対称のブロック共重合体Bを含有することから、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができる。
【0038】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量は、5000~20000であり、より好ましくは6000~18000であり、さらに好ましくは7000~16000である。
【0039】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量は、上記の範囲内であれば、それぞれ等しいものであっても、互いに異なるものであってもよいが、実質的に等しいものであることが好ましい。また、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量は、ブロック共重合体Aの比較的小さい重量平均分子量を有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量と、実質的に等しいことが好ましい。
【0040】
共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0041】
共役ジエン重合体ブロック(D)の共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した共役ジエン重合体ブロック(D)と同様のものが挙げられる。
【0042】
また、共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、共役ジエン重合体ブロック(D)と同様のものが挙げられ、その含有量およびビニル結合含有量も同様とすればよい。また、共役ジエン重合体ブロック(D)も、実質的に、1種または2種以上の共役ジエン単量体単位のみからなるものであることが好ましく、イソプレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0043】
共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましい。
【0044】
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、好ましくは40000~400000であり、より好ましくは45000~350000であり、さらに好ましくは50000~300000である。
【0045】
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、ブロック共重合体Aの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量と実質的に等しいことが好ましい。
【0046】
ブロック共重合体Bの重量平均分子量(すなわち、ブロック共重合体B全体の重量平均分子量)は、好ましくは65000~800000であり、より好ましくは70000~700000であり、さらに好ましくは75000~600000である。
【0047】
ブロック共重合体Bの芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体Bを構成する全単量体単位に対して、20~30重量%である。本発明の第1の組成物は、上記含有量で芳香族ビニル単量体単位を含有する対称のブロック共重合体Bを含有することから、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができる。
【0048】
ブロック共重合体Bは、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する製造方法により得られたものであることが好ましい。したがって、ブロック共重合体Bは、カップリング剤の残基を含まないことが好ましい。このような製造方法の詳細は後述する。
【0049】
(ブロック共重合体C)
ブロック共重合体Cは、下記の一般式(C)で表される共重合体である。
一般式(C):(Ar-D-X
(式中、Arは、芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロック、nは、2以上の整数、Xは、カップリング剤の残基を表す)
【0050】
ブロック共重合体Cは、カップリング剤の残基(X)を介して、n個のジブロック体(Ar-D)がお互いに結合した構造を有する。一般式(C)におけるnは、ブロック共重合体C中の分岐数を表す。ブロック共重合体Cは、異なる数でジブロック体が結合した2種以上のブロック共重合体の混合物であってもよい。nは、2以上の整数であり、好ましくは2~8の整数であり、より好ましくは2~4の整数である。カップリング剤の残基(X)は、n価のカップリング剤の残基であれば特に限定されないが、ケイ素原子含有カップリング剤の残基であることが好ましく、ハロゲン化シランまたはアルコキシシランの残基であることがより好ましい。カップリング剤の残基を構成するカップリング剤の例としては、後述するものが挙げられる。
【0051】
ブロック共重合体Cとしては、なかでも、nが2のブロック共重合体C1、nが3のブロック共重合体C2、および、nが4のブロック共重合体C3の混合物であることが特に好ましい。この場合におけるブロック共重合体C1~C3の重量比(C1/C2/C3)としては、好ましくは40~80/30~10/30~10である。
【0052】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0053】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)と同様のものが挙げられる。
【0054】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)は、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)と同様のものが挙げられ、その含有量も、同様とすればよい。また、ブロック共重合体Cにおける各々の芳香族ビニル重合体ブロックは、同じ芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよいし、異なる芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよい。また、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)も、実質的に、1種または2種以上の芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが好ましく、スチレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0055】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量は、好ましくは4000~18000であり、より好ましくは5000~16000であり、さらに好ましくは6000~14000である。
【0056】
ブロック共重合体Cが複数有する芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量は、上記の範囲内であれば、それぞれ等しいものであっても、互いに異なるものであってもよいが、実質的に等しいものであることが好ましい。
【0057】
共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0058】
共役ジエン重合体ブロック(D)の共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した共役ジエン重合体ブロック(D)と同様のものが挙げられる。また、ブロック共重合体Cにおける各々の共役ジエン重合体ブロックは、同じ共役ジエン単量体単位により構成されていてもよいし、異なる共役ジエン単量体単位により構成されていてもよい。
【0059】
また、共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、共役ジエン重合体ブロック(D)と同様のものが挙げられ、その含有量およびビニル結合含有量も同様とすればよい。また、共役ジエン重合体ブロック(D)も、実質的に、1種または2種以上の共役ジエン単量体単位のみからなるものであることが好ましく、イソプレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0060】
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、好ましくは20000~200000であり、より好ましくは25000~180000であり、さらに好ましくは30000~150000である。
【0061】
ブロック共重合体Cが複数有する共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、上記の範囲内であれば、それぞれ等しいものであっても、互いに異なるものであってもよいが、実質的に等しいものであることが好ましい。
【0062】
ブロック共重合体Cの重量平均分子量(すなわち、ブロック共重合体C全体の重量平均分子量)は、好ましくは60000~800000であり、より好ましくは80000~600000である。
【0063】
ブロック共重合体Cの芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体Cを構成する全単量体単位に対して、20重量%未満であり、より好ましく18重量%未満であり、さらに好ましく16重量%未満であり、下限は特に限定されないが、5重量%以上であってよい。本発明の第1の組成物は、上記含有量で芳香族ビニル単量体単位を含有し、カップリング剤の残基をも含有するブロック共重合体Cを含有することから、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができる。
【0064】
ブロック共重合体Cは、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とを重合してジブロック鎖を形成し、ジブロック鎖とカップリング剤とを反応させてカップリングを行う製造方法により得られたものであることが好ましい。したがって、ブロック共重合体Cは、カップリング剤の残基を含む。このような製造方法の詳細は後述する。
【0065】
(ブロック共重合体D)
本発明の第1の組成物は、ブロック共重合体Dをさらに含有してもよい。ブロック共重合体Dは、下記の一般式(D)で表される共重合体である。
一般式(D):Ar-D
(式中、Arは、芳香族ビニル重合体ブロック、Dは、共役ジエン重合体ブロックを表す)
【0066】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)は、芳香族ビニル単量体を重合して得られる芳香族ビニル単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0067】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)と同様のものが挙げられる。
【0068】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)は、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)と同様のものが挙げられ、その含有量も、同様とすればよい。また、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)も、実質的に、1種または2種以上の芳香族ビニル単量体単位のみからなるものであることが好ましく、スチレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0069】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量は、好ましくは4000~18000であり、より好ましくは5000~16000であり、さらに好ましくは6000~14000である。
【0070】
芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量は、ブロック共重合体Cの芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量と、実質的に等しいことが好ましい。
【0071】
共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体を重合して得られる共役ジエン単量体単位を主たる繰り返し単位として構成される重合体ブロックである。
【0072】
共役ジエン重合体ブロック(D)の共役ジエン単量体単位を構成するために用いられる共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、たとえば、上述した共役ジエン重合体ブロック(D)と同様のものが挙げられる。
【0073】
また、共役ジエン重合体ブロック(D)は、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよく、共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、共役ジエン重合体ブロック(D)と同様のものが挙げられ、その含有量およびビニル結合含有量も同様とすればよい。また、共役ジエン重合体ブロック(D)も、実質的に、1種または2種以上の共役ジエン単量体単位のみからなるものであることが好ましく、イソプレン単位のみからなるものであることが特に好ましい。
【0074】
共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量は、ブロック共重合体Cの共役ジエン重合体ブロック(D)のビニル結合含有量と実質的に等しいことが好ましい。
【0075】
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、好ましくは20000~200000であり、より好ましくは25000~180000であり、さらに好ましくは30000~150000である。
【0076】
共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量は、ブロック共重合体Cの共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量と実質的に等しいことが好ましい。
【0077】
ブロック共重合体Dの重量平均分子量(すなわち、ブロック共重合体D全体の重量平均分子量)は、好ましくは30000~200000であり、より好ましくは40000~180000である。
【0078】
ブロック共重合体Dの芳香族ビニル単量体単位の含有量は、ブロック共重合体Dを構成する全単量体単位に対して、20重量%未満であり、好ましくは18重量%未満である、さらに好ましく16重量%未満であり、下限は特に限定されないが、5重量%以上であってよい。本発明の第1の組成物は、上記含有量で芳香族ビニル単量体単位を含有するブロック共重合体Dを含有する場合、成形性に一層優れており、膜厚変動がさらに少なく、永久伸びがさらに小さい弾性体を得ることができる。
【0079】
本発明の第1の組成物は、上述したブロック共重合体A~Cを含有し、任意でブロック共重合体Dをさらに含有する。本発明の第1の組成物におけるブロック共重合体A~Cの重量比(A/B/C)としては、好ましくは10~40/10~40/80~20であり、より好ましくは15~40/15~40/70~25であり、さらに好ましくは20~35/20~35/60~30である。
【0080】
本発明の第1の組成物がブロック共重合体Dをさらに含有する場合のブロック共重合体Dの含有量としては、ブロック共重合体A~Cを含めた本発明の第1の組成物中の、好ましくは1~20重量%であり、より好ましくは2~18重量%であり、さらに好ましくは3~16重量%である。
【0081】
ブロック共重合体A~Dは、常法にしたがって製造することが可能であり、最も一般的な製造法としては、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とをそれぞれ逐次的に重合して重合体ブロックを形成し、必要に応じて、カップリング剤を反応させてカップリングを行う方法を挙げることができる。また、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する方法を用いてもよい。また、従来の重合法に従って、それぞれの重合体を別個に製造し、必要に応じて、他の重合体成分などを配合した上で、それらを混練や溶液混合などの常法に従って混合することにより、製造することができる。また、後述するように、ブロック共重合体AおよびBを同時に製造したり、ブロック共重合体CおよびDを同時に製造したりすることも可能である。
【0082】
また、本発明では、市販のブロック共重合体を用いることも可能であり、例えば、「クインタック(登録商標)」(日本ゼオン社製)、「JSR-SIS(登録商標)」(JSR社製)、「Vector(登録商標)」(DEXCO polymers社製)、「アサプレン(登録商標)」・「タフプレン(登録商標)」・「タフテック(登録商標)」(旭化成ケミカルズ社製)、「セプトン(登録商標)」(クラレ社製)、「クレイトン(登録商標)」(クレイトン社製)などを使用することができる。
【0083】
ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bは、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する方法により、製造することが好ましい。
【0084】
より詳細には、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bは、以下の製造方法により、製造することが好ましい。すなわち、
溶媒中で、重合開始剤の存在下で、芳香族ビニル単量体を含む単量体を重合することで、芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液を得る第1重合工程と、
芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液に、共役ジエン単量体を含む単量体を添加し、重合することで、ジブロック鎖を含有する溶液を得る第2重合工程と、
ジブロック鎖を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を含む単量体を添加し、重合することで、トリブロック鎖を含有する溶液を得る第3重合工程と、
トリブロック鎖を含有する溶液に、トリブロック鎖が有する活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加し、活性末端の一部を失活させて、ブロック共重合体Bおよびトリブロック鎖を含有する溶液を得る停止工程と、
トリブロック鎖およびブロック共重合体Bを含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を含む単量体を添加し、重合することで、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液を得る第4重合工程と、
を備える製造方法が好ましい。
【0085】
上記の製造方法では、まず、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を重合する(第1重合工程)。用いられる重合開始剤としては、一般的に芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とに対し、アニオン重合活性があることが知られている有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、有機ランタノイド系列希土類金属化合物などを用いることができる。有機アルカリ金属化合物としては、分子中に1個以上のリチウム原子を有する有機リチウム化合物が特に好適に用いられ、その具体例としては、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウム、ジアルキルアミノリチウム、ジフェニルアミノリチウム、ジトリメチルシリルアミノリチウムなどの有機モノリチウム化合物や、メチレンジリチウム、テトラメチレンジリチウム、ヘキサメチレンジリチウム、イソプレニルジリチウム、1,4-ジリチオ-エチルシクロヘキサンなどの有機ジリチウム化合物、さらには、1,3,5-トリリチオベンゼンなどの有機トリリチウム化合物などが挙げられる。これらのなかでも、有機モノリチウム化合物が特に好適に用いられる。
【0086】
重合開始剤として用いる有機アルカリ土類金属化合物としては、たとえば、n-ブチルマグネシウムブロミド、n-ヘキシルマグネシウムブロミド、エトキシカルシウム、ステアリン酸カルシウム、t-ブトキシストロンチウム、エトキシバリウム、イソプロポキシバリウム、エチルメルカプトバリウム、t-ブトキシバリウム、フェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ステアリン酸バリウム、エチルバリウムなどが挙げられる。また、他の重合開始剤の具体例としては、ネオジム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むランタノイド系列希土類金属化合物/アルキルアルミニウム/アルキルアルミニウムハライド/アルキルアルミニウムハイドライドからなる複合触媒や、チタン、バナジウム、サマリニウム、ガドリニウムなどを含むメタロセン型触媒などの有機溶媒中で均一系となり、リビング重合性を有するものなどが挙げられる。なお、これらの重合開始剤は、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
【0087】
重合開始剤の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよく、特に限定されないが、使用する全単量体100gあたり、好ましくは0.01~20ミリモル、より好ましくは0.05~15ミリモル、さらに好ましくは0.1~10ミリモルである。
【0088】
重合に用いる溶媒は、重合開始剤に不活性なものであれば特に限定されるものではなく、たとえば、鎖状炭化水素溶媒、環式炭化水素溶媒またはこれらの混合溶媒が使用される。鎖状炭化水素溶媒としてはn-ブタン、イソブタン、1-ブテン、イソブチレン、トランス-2-ブテン、シス-2-ブテン、1-ペンテン、トランス-2-ペンテン、シス-2-ペンテン、n-ペンタン、イソペンタン、neo-ペンタン、n-ヘキサンなどの、炭素数4~6の鎖状アルカンおよびアルケンを例示することができる。また、環式炭化水素溶媒の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族化合物;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素化合物;を挙げることができる。これらの溶媒は、1種類を単独で使用しても2種以上を混合して使用してもよい。
【0089】
重合に用いる溶媒の量は、特に限定されないが、最終的に得られるブロック共重合体の溶液におけるブロック共重合体の濃度が、好ましくは5~60重量%の範囲、より好ましくは10~55重量%の範囲、特に好ましくは20~50重量%の範囲になるように設定することが好ましい。
【0090】
また、各重合体ブロックの構造を制御するために、重合に用いる反応器にルイス塩基化合物を添加してもよい。ルイス塩基化合物としては、たとえば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのエーテル類;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、キヌクリジンなどの第三級アミン類;カリウム-t-アミルオキシド、カリウム-t-ブチルオキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類;トリフェニルホスフィンなどのホスフィン類;などが挙げられる。これらのルイス塩基化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられ、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択される。
【0091】
重合反応時にルイス塩基化合物を添加する時期は特に限定されず、目的とする各ブロック共重合体の構造に応じて適宜決定すればよい。たとえば、重合を開始する前に予め添加してもよいし、一部の重合体ブロックを重合してから添加してもよく、さらには、重合を開始する前に予め添加した上で一部の重合体ブロックを重合した後さらに添加してもよい。
【0092】
重合反応温度は、好ましくは10~150℃、より好ましくは30~130℃、さらに好ましくは40~90℃である。重合に要する時間は条件によって異なるが、通常、48時間以内、好ましくは0.5~10時間である。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体および溶媒を液相に維持するに充分な圧力の範囲で行えばよく、特に限定されない。
【0093】
以上のような条件で、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を重合することにより、芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液を得ることができる。なお、重合により得られる芳香族ビニル重合体ブロック鎖は、通常、活性末端を有するものとなる。また、得られる芳香族ビニル重合体ブロック鎖は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)または芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)を形成することとなるものであるため、この第1重合工程において用いる単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。
【0094】
次いで、第1重合工程において得られた芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液に、共役ジエン単量体を主成分として含む単量体を添加し、重合を行う(第2重合工程)。これにより、ジブロック鎖を含有する溶液を得ることができる。なお、重合により得られるジブロック鎖は、通常、活性末端を有するものとなる。また、第2重合工程において得られるジブロック鎖は、上記第1重合工程において得られた芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)または芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)を形成することとなる重合体鎖に、共役ジエン重合体ブロック(D)または共役ジエン重合体ブロック(D)を形成することとなる重合体鎖がさらに結合されたものとなるため、この第2重合工程において用いる単量体の量は、共役ジエン重合体ブロック(D)および共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。また、重合反応温度は、重合時間、重合圧力は、上記第1重合工程と同様の範囲内で制御すればよい。
【0095】
次いで、第2重合工程において得られたジブロック鎖を含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を添加し、重合を行う(第3重合工程)。これにより、トリブロック鎖を含有する溶液を得ることができる。なお、重合により得られるトリブロック鎖は、通常、活性末端を有するものとなる。また、第3重合工程において得られるトリブロック鎖は、上記第2重合工程において得られた芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)または芳香族ビニル重合体ブロック(Ar1)および共役ジエン重合体ブロック(D)または共役ジエン重合体ブロック(D)を形成することとなる重合体鎖に、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の一部、または、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)を形成することとなる重合体鎖がさらに結合されたものとなるため、この第3重合工程において用いる単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。また、重合反応温度は、重合時間、重合圧力は、上記第1重合工程と同様の範囲内で制御すればよい。
【0096】
次いで、第3重合工程において得られたトリブロック鎖を含有する溶液に、トリブロック鎖が有する活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加する(停止工程)。これにより、トリブロック鎖が有する活性末端の一部が失活して、活性末端が失活したブロック共重合体が得られる。このブロック共重合体が一般式(B):Ar1-D-Ar2で表されるブロック共重合体Bとなる。
【0097】
重合停止剤は、活性末端と反応して活性末端を失活させることができ、1つの活性末端と反応した後は別の活性末端と反応しないものであれば特に限定されないが、得られる組成物の吸湿を抑制する観点からは、ハロゲン原子を含有しない化合物である重合停止剤であることが好ましく、なかでも、活性末端と反応した際に金属アルコキシド、金属アリールオキシド、または金属水酸化物を生じさせる重合停止剤が特に好ましい。重合停止剤として特に好ましく用いられる化合物としては、水、メタノールやエタノールなどの1価アルコール、フェノールやクレゾールなどの1価フェノール類が挙げられる。
【0098】
重合停止剤の使用量は、第1の組成物を構成するブロック共重合体Aとブロック共重合体Bとの重量比に応じて決定され、トリブロック鎖が有する活性末端に対して1モル当量未満となる量であれば特に限定されないが、通常、活性末端に対して重合停止剤が0.18~0.91モル当量となる範囲であり、0.35~0.80モル当量となる範囲であることが好ましい。
【0099】
以上のようにして、活性末端を有するトリブロック鎖を含有する溶液に、その活性末端に対して1モル当量未満となる量で重合停止剤を添加すると、活性末端を有するトリブロック鎖のうちの一部の活性末端が失活し、その活性末端が失活した重合体は、ブロック共重合体Bとなる。そして、重合停止剤と反応しなかった活性末端を有するトリブロック鎖の残りの一部は、未反応のまま溶液中に残ることとなる。
【0100】
次いで、停止工程において得られたトリブロック鎖およびブロック共重合体Bを含有する溶液に、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を添加し、重合を行う(第4重合工程)。これにより、一般式(A):Ar1-D-Ar2で表されるブロック共重合体A、および、ブロック共重合体Bを含有する溶液を得ることができる。第4重合工程において得られるブロック共重合体Aは、上記第3重合工程において得られたトリブロック鎖の活性末端に、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の一部を形成することとなる重合体鎖がさらに結合されたものとなるため、この第4重合工程において用いる単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar2)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。また、重合反応温度は、重合時間、重合圧力は、上記第1重合工程と同様の範囲内で制御すればよい。
【0101】
第4重合工程の後、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを含有する溶液から、重合体成分を回収してもよい(回収工程)。回収の方法は、常法に従えばよく、特に限定されない。たとえば、反応終了後に、必要に応じて、水、メタノール、エタノール、プロパノール、塩酸、クエン酸などの重合停止剤を添加し、さらに必要に応じて、酸化防止剤などの添加剤を添加してから、溶液に直接乾燥法やスチームストリッピングなどの公知の方法を適用することにより、回収することができる。スチームストリッピングなどを適用して、重合体成分がスラリーとして回収される場合は、押出機型スクイザーなどの任意の脱水機を用いて脱水して、所定値以下の含水率を有するクラムとし、さらにそのクラムをバンドドライヤーあるいはエクスパンション押出乾燥機などの任意の乾燥機を用いて乾燥すればよい。以上のようにして得られるブロック共重合体は、常法に従い、ペレット形状などに加工してから使用に供してもよい。
以上のようにして、ブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bを製造することができる。
【0102】
ブロック共重合体Cは、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とを重合してジブロック鎖を形成し、ジブロック鎖とカップリング剤とを反応させてカップリングを行う方法により製造することが好ましい。
【0103】
より詳細には、ブロック共重合体Cは、以下の製造方法により、製造することが好ましい。すなわち、
溶媒中で、重合開始剤の存在下で、芳香族ビニル単量体を含む単量体を重合することで、芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液を得る第1重合工程と、
芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液に、共役ジエン単量体を含む単量体を添加し、重合することで、ジブロック鎖を含有する溶液を得る第2重合工程と、
ジブロック鎖を含有する溶液に、カップリング剤を添加して、ブロック共重合体Cを得る反応工程と、
を備える製造方法が好ましい。
【0104】
上記の製造方法では、まず、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を重合する(第1重合工程)。第1重合工程において用いる溶媒およびその使用量、重合開始剤およびその使用量は、上述したブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの好適な製造方法における第1重合工程と、同様であってよい。また、上述したブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの好適な製造方法における第1重合工程と同様に、ルイス塩基化合物を添加してもよい。また、上述したブロック共重合体Aおよびブロック共重合体Bの好適な製造方法における第1重合工程と同様の重合反応温度、重合時間および重合圧力を採用できる。
【0105】
以上のような条件で、溶媒中で重合開始剤を用いて、芳香族ビニル単量体を主成分として含む単量体を重合することにより、芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液を得ることができる。なお、重合により得られる芳香族ビニル重合体ブロック鎖は、通常、活性末端を有するものとなる。また、得られる芳香族ビニル重合体ブロック鎖は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)を形成することとなるものであるため、この第1重合工程において用いる単量体の量は、芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。
【0106】
次いで、第1重合工程において得られた芳香族ビニル重合体ブロック鎖を含有する溶液に、共役ジエン単量体を主成分として含む単量体を添加し、重合を行う(第2重合工程)。これにより、ジブロック鎖を含有する溶液を得ることができる。なお、重合により得られるジブロック鎖は、通常、活性末端を有するものとなる。また、第2重合工程において得られるジブロック鎖は、上記第1重合工程において得られた芳香族ビニル重合体ブロック(Ar)を形成することとなる重合体鎖に、共役ジエン重合体ブロック(D)を形成することとなる重合体鎖がさらに結合されたものとなるため、この第2重合工程において用いる単量体の量は、共役ジエン重合体ブロック(D)の重量平均分子量に応じて決定すればよい。また、重合反応温度は、重合時間、重合圧力は、上記第1重合工程と同様の範囲内で制御すればよい。
【0107】
次いで、ジブロック鎖を含有する溶液に、カップリング剤を添加する(反応工程)。これにより、ジブロック鎖が有する活性末端と、カップリング剤とが反応して、2以上のジブロック鎖がカップリング剤の残基を介して結合し、ブロック共重合体Cが形成される。
【0108】
カップリング剤は、ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に2個以上有するものであれば特に限定されないが、ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に2~8個有するカップリング剤が好ましく、ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に2~4個有するカップリング剤がより好ましい。また、カップリング剤は、ケイ素原子を含有することが好ましく、ハロゲン化シランおよびアルコキシシランがより好ましい。
【0109】
ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に2個有するカップリング剤(2官能のカップリング剤)としては、例えば、ジクロロシラン、モノメチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシランなどの2官能性ハロゲン化シラン;ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどの2官能性アルコキシシラン;ジクロロエタン、ジブロモエタン、メチレンクロライド、ジブロモメタンなどの2官能性ハロゲン化アルカン;ジクロロスズ、モノメチルジクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、モノエチルジクロロスズ、ジエチルジクロロスズ、モノブチルジクロロスズ、ジブチルジクロロスズなどの2官能性ハロゲン化スズ;ジブロモベンゼン、安息香酸、CO、2―クロロプロペンなどを用いることができる。これらのなかでも、2官能性ハロゲン化シランまたは2官能性アルコキシシランが特に好ましく用いられる。これらの2官能のカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0110】
ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に3個有するカップリング剤(3官能のカップリング剤)としては、例えば、トリクロロエタン、トリクロロプロパンなどの3官能性ハロゲン化アルカン;メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシランなどの3官能性ハロゲン化シラン;メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランなどの3官能性アルコキシシラン;などが挙げられる。これらの3官能のカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0111】
ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基を1分子中に4個有するカップリング剤(4官能のカップリング剤)としては、例えば、四塩化炭素、四臭化炭素、テトラクロロエタンなどの4官能性ハロゲン化アルカン;テトラクロロシラン、テトラブロモシランなどの4官能性ハロゲン化シラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどの4官能性アルコキシシラン;テトラクロロスズ、テトラブロモスズなどの4官能性ハロゲン化スズ;などが挙げられる。これらの4官能のカップリング剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0112】
ブロック共重合体Cのnの数、すなわちブロック共重合体Cの分岐数は、カップリング剤の種類、使用量、添加のタイミング、ルイス塩基化合物の使用量などを調整することにより、調整することができる。また、メタノールなどの反応停止剤を用いて、カップリング率を調整して、ブロック共重合体Cの分岐数を調整することもできる。また、ジブロック鎖が有する活性末端と反応し得る官能基の数が異なる2種以上のカップリング剤を組み合わせて用いることにより、ブロック共重合体Cの分岐数を調整することもできる。さらに、これらの手段によって、第2重合工程で得られたジブロック鎖を未反応のまま残留させ、最終的にブロック共重合体Dとして回収してもよい。
【0113】
カップリング剤の使用量は、目的とするブロック共重合体Cの分岐数に応じて、適切な量に調整される。カップリング剤の使用量としては、ジブロック鎖が有する活性末端に対して、好ましくは0.05~0.9モル当量であり、より好ましくは0.20~0.70モル当量である。
【0114】
反応温度は、好ましくは10~150℃、より好ましくは30~130℃、さらに好ましくは40~90℃である。反応に要する時間は条件によって異なるが、通常、48時間以内、好ましくは0.5~10時間である。
【0115】
反応工程の後、ブロック共重合体Cおよび任意でブロック共重合体Dを含有する溶液から、重合体成分を回収してもよい(回収工程)。回収の方法は、常法に従えばよく、特に限定されない。たとえば、反応終了後に、必要に応じて、水、メタノール、エタノール、プロパノール、塩酸、クエン酸などの重合停止剤を添加し、さらに必要に応じて、酸化防止剤などの添加剤を添加してから、溶液に直接乾燥法やスチームストリッピングなどの公知の方法を適用することにより、回収することができる。スチームストリッピングなどを適用して、重合体成分がスラリーとして回収される場合は、押出機型スクイザーなどの任意の脱水機を用いて脱水して、所定値以下の含水率を有するクラムとし、さらにそのクラムをバンドドライヤーあるいはエクスパンション押出乾燥機などの任意の乾燥機を用いて乾燥すればよい。以上のようにして得られるブロック共重合体は、常法に従い、ペレット形状などに加工してから使用に供してもよい。
以上のようにして、ブロック共重合体Cおよび任意でブロック共重合体Dを製造することができる。
【0116】
本発明の第1の組成物は、ブロック共重合体A~Cに加えて、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂を含有してもよい。ブロック共重合体A~Cおよびポリオレフィン系熱可塑性樹脂を含有する第1の組成物からは、容易に伸縮性フィルムを得ることができる。また、得られる伸縮性フィルムと不織布とを積層することにより、伸縮性積層体を得てもよく、この場合、伸縮性フィルムと不織布とは強固に接着する。伸縮性積層体は、たとえば、押出成形により、不織布上に該組成物を押し出すことにより製造できる。本発明で用いるポリオレフィン系熱可塑性樹脂としては、オレフィンを主たる繰り返し単位とする熱可塑性を有する樹脂であれば特に限定されず、α-オレフィンの単独重合体、2種以上のα-オレフィンの共重合体、およびα-オレフィンとα-オレフィン以外の単量体との共重合体の何れであってもよく、また、これらの(共)重合体を変性したものであってもよい。
【0117】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂の具体例としては、エチレン、プロピレン等のα-オレフィンの単独重合体または共重合体、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセンポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレン、メタロセンポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテンなどのα-オレフィン単独重合体;エチレンと他のα-オレフィンとの共重合体、例えば、エチレン-プロピレンランダム共重合体、エチレン-プロピレンブロック共重合体、エチレン-ブテン-1共重合体、エチレン-プロピレン-ブテン-1共重合体およびエチレン-環状オレフィン共重合体;α-オレフィンを主体とする、α-オレフィンとカルボン酸不飽和アルコールとの共重合体およびその鹸化物、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体;α-オレフィンを主体とする、α-オレフィンとα,β-不飽和カルボン酸エステルまたはα,β-不飽和カルボン酸等との共重合体、例えば、エチレン-α,β-不飽和カルボン酸エステル共重合体(エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体など)、エチレン-α,β-不飽和カルボン酸共重合体(エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体等);ポリエチレンやポリプロピレンなどのα-オレフィン(共)重合体をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸および/またはその無水物で変性した酸変性オレフィン樹脂;エチレンとメタクリル酸との共重合体などにNaイオンやZnイオンなどを作用させたアイオノマー樹脂;これらの混合物;を挙げることができる。これらの中でも、ポリエチレンまたはエチレンと他のα-オレフィンとの共重合体が好ましく、その中でも、メタロセン触媒を用いて製造されるポリエチレンまたはエチレンと他のα-オレフィンとの共重合体が特に好ましい。
【0118】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂の重量平均分子量は、特に限定されるものではないが、通常10000~5000000の範囲で選択され、好ましくは50000~800000の範囲で選択される。また、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂の比重およびメルトインデックスも特に限定されるものではないが、比重が、通常0.80~0.95g/cmの範囲で選択され、好ましくは0.85~0.94g/cmの範囲で選択され、メルトインデックスは、ASTM D-1238(G条件、200℃、5kg)に準拠して測定される値として、通常1~1000g/10分の範囲で選択され、好ましくは3~500g/10分の範囲で選択される。
【0119】
ポリオレフィン系熱可塑性樹脂の含有量は、ブロック共重合体A~Cの合計100重量部に対して、好ましくは3~50重量部であり、より好ましくは5~40重量部であり、さらに好ましくは8~30重量部である。なお、ポリオレフィン系熱可塑性樹脂は1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0120】
本発明の第1の組成物は、さらに、必要に応じて、脂肪酸アミド、ポリエチレンワックス、酸化防止剤、粘着付与樹脂、軟化剤、抗菌剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、滑剤等を含有してもよい。
【0121】
脂肪酸アミドは、脂肪族モノアミドであっても、脂肪族ビスアミドであってもよい。脂肪族モノアミドは、炭化水素基と1個のアミド基(-NHCO)とが結合してなる化合物であれば特に限定されないが、炭素数12以上の高級飽和脂肪酸のモノアミド(すなわち、炭素数12以上の鎖状アルキル基と1個のアミド基(-NHCO)とが結合してなる化合物)が好ましく用いられる。
【0122】
脂肪酸モノアミドの具体例としては、ラウリン酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸モノアミド;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸モノアミド;等が挙げられる。
【0123】
脂肪酸アミドの含有量は、ブロック共重合体A~Cの合計100重量部に対して、好ましくは0.2~10重量部であり、より好ましくは0.3~8重量部であり、さらに好ましくは0.5~6重量部である。
【0124】
ポリエチレンワックスは、エチレン単量体単位を主たる構成単位とするワックスである。本発明で用いられるポリエチレンワックスは、特に限定されるものではないが、140℃における粘度が20~6,000mPa・sであるものが好ましく用いられる。
【0125】
ポリエチレンワックスは、一般的に、エチレンの重合又はポリエチレンの分解により製造されるが、本発明では、どちらのポリエチレンワックスを用いてもよい。また、ポリエチレンワックスは市販品を入手可能であり、その具体例としては、「A-C ポリエチレン」(Honeywell社製)、「三井ハイワックス」(三井化学社製)、「サンワックス」(三洋化成工業社製)、「エポレン」(Eastman Chemical社製)を挙げることができる。
【0126】
酸化防止剤は、特に限定されず、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール等のヒンダードフェノール系化合物;ジラウリルチオプロピオネート等のチオジカルボキシレートエステル類;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト等の亜燐酸塩類;を使用することができる。
【0127】
酸化防止剤の含有量は、ブロック共重合体A~Cの合計100重量部に対して、好ましくは10重量部以下であり、より好ましくは0.05~5重量部である。
【0128】
本発明の第1の組成物は、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を含有するワックスをさらに含有することが好ましい。直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を含有するワックスを含有することによって、本発明の第1の組成物は、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができることに加えて、色相および低臭気性に優れており、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができる。
【0129】
本発明で用いるワックスは、天然ワックスであってもよいし、合成ワックスであってもよいが、好ましくは天然ワックスであり、より好ましくは石油ワックスである。
石油ワックスを中心にその他の天然ワックスや合成ワックスを一部混合した配合ワックスを使用してもよい。また、これらのワックスの機能や加工性を改良する目的で少量の樹脂等をワックスにさらに配合したものを使用してもかまわない。また、本発明の第1の組成物は、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を含有するワックス以外の他のワックスを含有してもよいが、色相および低臭気性に優れており、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得る観点からは、他のワックスを含有しないことが好ましい。
【0130】
直鎖状炭化水素は、直鎖状脂肪族飽和炭化水素であることが好ましい。直鎖状炭化水素は、ノルマルパラフィンと呼ばれることがある。分岐鎖状炭化水素は、分岐鎖状脂肪族飽和炭化水素であることが好ましい。分岐鎖状炭化水素は、イソパラフィンと呼ばれることがある。直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素としては、石油ワックスに含有される直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素が好ましい。
【0131】
本発明で用いるワックスには、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素以外に、環状炭化水素が含まれていてもよいが、ワックス中の直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素の合計量が50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましく、90質量%以上であることが最も好ましい。
【0132】
ワックス中の直鎖状炭化水素(n-体)と分岐鎖状炭化水素(iso-体)との重量比(n-体/iso-体)としては、30/70~99/1であり、好ましくは50/50~97/3であり、より好ましくは70/30~95/5であり、最も好ましくは75/25~90/10である。重量比(n-体/iso-体)が上記範囲内にあることによって、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができる。
【0133】
ワックスの融点は、80℃未満であり、好ましくは76℃以下であり、より好ましくは73℃以下であり、好ましくは30℃以上であり、より好ましくは40℃以上であり、さらに好ましくは45℃以上である。ワックスの融点は、示差走査熱量計などを用いることによって、測定することができる。ワックスの融点が高すぎると、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることが困難になる。ワックスの融点が低すぎると輸送・保管中にブロッキングし易く、また加工時に溶融し易くハンドリング性が悪くなる。
【0134】
本発明の第1の組成物におけるワックスの含有量としては、組成物中のブロック共重合体の合計100重量部に対して、好ましくは0.1~5重量部であり、より好ましくは0.3~3.5重量部であり、さらに好ましくは0.5~2重量部である。ワックスの含有量が多すぎると、永久伸びが小さい弾性体を得ることが困難になるおそれがあり、ワックスの含有量が少なすぎると、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることが困難になるおそれがある。組成物中のブロック共重合体の重量とは、たとえば、本発明の第1の組成物がブロック共重合体A~Cを含有する場合には、ブロック共重合体A~Cの合計の重量であり、本発明の第1の組成物がブロック共重合体A~Dを含有する場合には、ブロック共重合体A~Dの合計の重量である。
【0135】
本発明の第1の組成物を得るにあたり、ブロック共重合体A~Cとその他の成分とを混合する方法は特に限定されない。例えば、それぞれの成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱等により除去する方法、各成分をスクリュー押出機やニーダー等で溶融混合する方法を挙げることができる。これらの中でも、混合をより効率的に行う観点からは、溶融混合が好適である。なお、溶融混合を行う際の温度は、特に限定されるものではないが、通常100~250℃の範囲である。
【0136】
ブロック共重合体A~Cとその他の成分を溶融混合する場合、その他の成分とブロック共重合体A~Cをより均一に混合させるために、ブロック共重合体A~Cのうち1つ以上の成分の全部または一部とその他の成分を予め単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等で混練してマスターバッチペレットを作製しておくことが好ましい。上記のうち、特に二軸押出機を使用することが混練性、クリーニング性、コストの観点で好ましい。
【0137】
弾性体を製造する際に、ブロック共重合体A~Cを供給すると同時に、上記マスターバッチペレットを供給して均一に混合することで、生産性良くかつその他の成分がブロック共重合体A~Cに高度に均一に分散した弾性体を得ることができる。
【0138】
マスターバッチペレットを作製するために使用するブロック共重合体A~Cのうち1つ以上の成分は、マスターバッチペレットの作製に必要な量だけを、マスターバッチペレットの作製に割り振ればよく、弾性体を製造する際にブロック共重合体A~Cの供給量とマスターバッチペレットの供給量を調節することで、上述したブロック共重合体A~Cの組成比とすることができる。
【0139】
本発明の第2の組成物は、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックおよび少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックを有するブロック共重合体、および、ワックスを含有する。
【0140】
(ブロック共重合体)
本発明の第2の組成物に用いるブロック共重合体は、少なくとも1つの芳香族ビニル重合体ブロックおよび少なくとも1つの共役ジエン重合体ブロックを有する。芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体により形成される芳香族ビニル単量体単位を含有し、共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体から形成される共役ジエン単量体単位を含有する。
【0141】
芳香族ビニル単量体単位を形成する芳香族ビニル単量体は、芳香族ビニル化合物であれば特に限定されないが、たとえば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2-エチルスチレン、3-エチルスチレン、4-エチルスチレン、2,4-ジイソプロピルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、5-t-ブチル-2-メチルスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、2-メチル-4,6-ジクロロスチレン、2,4-ジブロモスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンを用いることが好ましい。これらの芳香族ビニル単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ブロック共重合体が複数の芳香族ビニル重合体ブロックを有する場合において、各々の芳香族ビニル重合体ブロックは、同じ芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよいし、異なる芳香族ビニル単量体単位により構成されていてもよい。
【0142】
また、芳香族ビニル重合体ブロックは、芳香族ビニル単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。芳香族ビニル重合体ブロックに含まれ得る芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)などの共役ジエン単量体、α,β-不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体などが挙げられる。芳香族ビニル重合体ブロックにおける芳香族ビニル単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、実質的に0質量%であることが特に好ましい。
【0143】
共役ジエン単量体単位を形成する共役ジエン単量体は、共役ジエン化合物であれば特に限定されないが、たとえば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエンなどが挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエンおよび/またはイソプレンを用いることが好ましく、イソプレンを用いることが特に好ましい。これらの共役ジエン単量体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、ブロック共重合体が複数の共役ジエン重合体ブロックを有する場合において、各々の共役ジエン重合体ブロックは、同じ共役ジエン単量体単位により構成されていてもよいし、異なる共役ジエン単量体単位により構成されていてもよい。さらに、共役ジエン重合体ブロックの不飽和結合の一部に対し、水素添加反応が行われていてもよい。
【0144】
また、共役ジエン重合体ブロックは、共役ジエン単量体単位が主たる繰り返し単位となる限りにおいて、それ以外の単量体単位を含んでいてもよい。共役ジエン重合体ブロックに含まれ得る共役ジエン単量体単位以外の単量体単位を構成する単量体としては、スチレン、α-メチルスチレンなどの芳香族ビニル単量体、α,β-不飽和ニトリル単量体、不飽和カルボン酸または酸無水物単量体、不飽和カルボン酸エステル単量体、非共役ジエン単量体が例示される。共役ジエン重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位以外の単量体単位の含有量は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、実質的に0質量%であることが特に好ましい。
【0145】
共役ジエン重合体ブロックのビニル結合含有量(共役ジエン重合体ブロック中の全共役ジエン単量体単位において、1,2-ビニル結合単位と3,4-ビニル結合単位が占める割合)は、特に限定されないが、1~20モル%の範囲であることが好ましく、2~15モル%の範囲であることがより好ましく、3~10モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0146】
本発明の第2の組成物に用いるブロック共重合体は、芳香族ビニル重合体ブロックおよび共役ジエン重合体ブロックをそれぞれ少なくとも1つ有してなるものであれば、それぞれの重合体ブロックの数やそれらの結合形態は特に限定されない。本発明の第2の組成物に用いるブロック共重合体の形態の具体例としては、Arが芳香族ビニル重合体ブロックを表し、Dが共役ジエン重合体ブロックを表し、Xがカップリング剤の残基を表し、nが2以上の整数を表すものとした場合において、Ar-Dとして表される芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体、Ar-D-Arまたは(Ar-D)n-Xとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体、D-Ar-Dまたは(D-Ar)n-Xとして表される共役ジエン-芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体、Ar-D-Ar-Dとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体、およびこれらの2種以上を任意の組み合わせで混合してなるブロック共重合体の混合物を挙げることができるがこれらに限定されない。本発明の第2の組成物において、特に好ましく用いられるブロック共重合体としては、Ar-Dとして表される芳香族ビニル-共役ジエンブロック共重合体、およびAr-D-Arまたは(Ar-D)n-Xとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体、ならびにこれらの混合物から選択されるブロック共重合体を挙げることできる。
また、Ar-D-Arまたは(Ar-D)n-Xとして表される芳香族ビニル-共役ジエン-芳香族ビニルブロック共重合体において、それぞれの芳香族ビニルブロック(Ar)の分子鎖長は同じであってもよいし、異なる分子鎖長のものが含まれていてもよい。
【0147】
本発明の第2の組成物に用いるブロック共重合体の重量平均分子量は、特に限定されないが、通常40,000~500,000の範囲で選択され、好ましくは50,000~400,000の範囲で選択される。
【0148】
本発明の第2の組成物に用いるブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、特に限定されないが、好ましくは5~60質量%の範囲であり、より好ましくは7~55質量%の範囲、さらに好ましくは10~50質量%の範囲である。なお、ブロック共重合体が、実質的に、芳香族ビニル単量体単位および共役ジエン単量体単位のみにより構成されている場合であれば、Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従って、ブロック共重合体をオゾン分解し、次いで水素化リチウムアルミニウムにより還元すれば、共役ジエン単量体単位部分が分解され、芳香族モノビニル単量体単位部分を取り出すことができるため、このような方法により、芳香族ビニル単量体単位含有量を測定することができる。
【0149】
以上述べたような、芳香族ビニル重合体ブロックおよび共役ジエン重合体ブロックを有してなるブロック共重合体は、常法にしたがって製造することが可能であり、最も一般的な製造法としては、アニオンリビング重合法により、芳香族ビニル単量体と共役ジエン単量体とをそれぞれ逐次的に重合して重合体ブロックを形成し、必要に応じて、カップリング剤を反応させてカップリングを行う方法を挙げることができる。また、芳香族ビニル単量体、共役ジエン単量体、次いで芳香族ビニル単量体の順に逐次的に重合して重合体ブロックを形成する方法を用いてもよい。
【0150】
また、本発明の第2の組成物に用いるブロック共重合体として、市販のブロック共重合体を用いることも可能であり、例えば、「クインタック(登録商標)」(日本ゼオン社製)、「JSR-SIS(登録商標)」(JSR社製)、「Vector(登録商標)」(DEXCO polymers社製)、「アサプレン(登録商標)」・「タフプレン(登録商標)」・「タフテック(登録商標)」(旭化成ケミカルズ社製)、「セプトン(登録商標)」(クラレ社製)などを使用することができる。
【0151】
本発明の第2の組成物に用いるブロック共重合体としては、本発明の第1の組成物として上述したブロック共重合体A~Dを含有する組成物が特に好ましい。ブロック共重合体として、ブロック共重合体A~Dを含有する組成物を含有することによって、本発明の第2の組成物は、色相および低臭気性に優れており、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができることに加えて、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができる。
【0152】
(ワックス)
本発明の第2の組成物に用いるワックスは、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を含有する。直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を含有するワックスを含有することによって、本発明の第2の組成物は、色相および低臭気性に優れており、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができる。
【0153】
本発明の第2の組成物に用いるワックスとしては、本発明の第1の組成物のために用いるワックスとして詳述したものを用いることができる。
【0154】
本発明の第2の組成物におけるワックスの含有量としては、ブロック共重合体100重量部に対して、好ましくは0.1~5重量部であり、より好ましくは0.3~3.5重量部であり、さらに好ましくは0.5~2重量部である。ワックスの含有量が多すぎると、永久伸びが小さい弾性体を得ることが困難になるおそれがあり、ワックスの含有量が少なすぎると、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることが困難になるおそれがある。
【0155】
本発明の第2の組成物を得るにあたり、ブロック共重合体とワックスなどのその他の成分とを混合する方法は特に限定されない。例えば、それぞれの成分を溶剤に溶解し均一に混合した後、溶剤を加熱等により除去する方法、各成分をスクリュー押出機やニーダー等で溶融混合する方法を挙げることができる。これらの中でも、混合をより効率的に行う観点からは、溶融混合が好適である。なお、溶融混合を行う際の温度は、特に限定されるものではないが、通常100~250℃の範囲である。
【0156】
ブロック共重合体とワックスなどのその他の成分を溶融混合する場合、その他の成分とブロック共重合体をより均一に混合させるために、ブロック共重合体の一部とその他の成分を予め単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等で混練してマスターバッチペレットを作製しておくことが好ましい。上記のうち、特に二軸押出機を使用することが混練性、クリーニング性、コストの観点で好ましい。
【0157】
弾性体を製造する際に、ブロック共重合体を供給すると同時に、上記マスターバッチペレットを供給して均一に混合することで、生産性良くかつその他の成分がブロック共重合体に高度に均一に分散した弾性体を得ることができる。
【0158】
本発明の第2の組成物は、上述したポリオレフィン系熱可塑性樹脂をさらに含有してもよい。また、本発明の第2の組成物は、必要に応じて、脂肪酸アミド、酸化防止剤、粘着付与樹脂、軟化剤、抗菌剤、光安定剤、紫外線吸収剤、染料、滑剤等を含有してもよい。
【0159】
本発明の第1の組成物は、成形性に優れており、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい弾性体を得ることができる。したがって、本発明の第1の組成物は、弾性体に好適に利用でき、特に衛生材料用弾性体に好適に利用できる。また、以下の用途に好適に利用できる。
【0160】
本発明の第2の組成物は、色相および低臭気性に優れており、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができる。したがって、本発明の第2の組成物は、弾性体に好適に利用でき、特に衛生材料用弾性体に好適に利用できる。また、以下の用途に好適に利用できる。
【0161】
本発明の第1および第2の組成物および弾性体は、例えば、フィルム、糸(弾性ストランド)、手袋、エラスティックバンド、コンドーム、OA機器、事務用等の各種ロール、電気電子機器用防振シート、防振ゴム、衝撃吸収シート、衝撃緩衝フィルム・シート、住宅用制振シート、制振ダンパー材等に用いられる成形材料用途、粘着テープ、粘着シート、粘着ラベル、ゴミ取りローラー等に用いられる粘着剤用途、衛生用品や製本に用いられる接着剤用途、衣料、スポーツ用品等に用いられる弾性繊維用途等の用途に用いることができる。
【0162】
本発明の第1および第2の組成物および弾性体は、フィルムに好適に利用でき、特に衛生材料用弾性フィルムに好適に利用できる。本発明の弾性体およびフィルムは、本発明の第1および第2の組成物から得られるものであることから、強くて伸縮性に富み、しかも膜厚変動が少なく、永久伸びが小さい。また、本発明の第1および第2の組成物および弾性体は、糸(弾性ストランド)としても好適に利用できる。
【0163】
本発明のフィルムの厚さは、特に限定されず、用途に応じて調整されるが、紙おむつや生理用品等の衛生用品用のフィルムとする場合には、通常0.01~5mm、好ましくは0.01~1mm、より好ましくは0.02~0.2mmである。
【0164】
本発明の第1および第2の組成物をフィルムに成形する方法は、特に限定されず、従来公知のフィルム成形法を適用できるが、平滑なフィルムを良好な生産性で得る観点からは、押出成形が好適であり、中でもT-ダイを用いた押出成形が特に好適である。
【0165】
T-ダイを用いた押出成形の具体例としては、単軸押出機や二軸押出機に装着したT-ダイから、150~250℃で溶融した組成物を押出し、引き取りロールで冷却しながら、巻き取る方法が挙げられる。引き取りロールで冷却する際に、フィルムを延伸してもよい。また、フィルムを巻き取る際に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、不織布又は離型紙からなる基材の上に組成物の溶融物をコーティングしながらフィルム化してもよいし、組成物の溶融物をこれらの基材で挟み込むようにしてフィルム化してもよい。そのようにして得られたフィルムは、基材と一体の形態のままで使用しても、基材から剥がして使用してもよい。
【0166】
本発明の弾性体およびフィルムは、膜厚の均一性に優れる。
本発明の弾性体およびフィルムが膜厚の均一性に優れることは、例えば、試料となるフィルムを成形時の溶融流れ方向に沿って30cmの長さで切り取り、このフィルムの中央部において、溶融流れ方向に沿った2cm間隔毎、15点についてフィルムの厚さを、デジタル測厚器(東洋精機社製、測定精度:0.001mm単位)を用いて測定し、これら測定値から求められる、膜厚の平均値に対する膜厚の標準偏差の比(標準偏差/平均値)の割合が、通常、30%以下、好ましくは20%以下であることから確認することができる。
【0167】
本発明の弾性体およびフィルムの永久伸びは、通常、5%以下、好ましくは2%以下である。フィルムの永久伸びは、実施例に記載した方法により求めることができる。
【0168】
本発明の弾性体およびフィルムは、その用途に応じて、単層のまま用いることもできるし、他の部材と積層して多層体として使用することもできる。単層のまま用いる場合の具体例としては、紙おむつや生理用品等の衛生用品に用いられる伸縮性フィルム、光学フィルム等を保護するための保護フィルム、容器の収縮包装や熱収縮ラベルとして用いられる熱収縮性フィルムとしての利用を挙げることができる。多層体とする場合の具体例としては、本発明のフィルムをスリット加工した後、これにホットメルト接着剤等を塗布してテープとし、このテープを縮めた状態で不織布、織布、プラスチックフィルム、又はこれらの積層体に接着し、テープの縮みを緩和することにより、伸縮性のギャザー部材を形成する場合を挙げることができる。さらに、その他用途に応じ、公知の方法に従って適宜加工し、例えば、伸縮性シップ用基材、手袋、手術用手袋、指サック、止血バンド、避妊具、ヘッドバンド、ゴーグルバンド、輪ゴム等の伸縮性部材として用いることもできる。
【実施例
【0169】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。以下において、特記しない限り「部」は重量基準である。なお、試験、評価は以下によった。
【0170】
〔各ブロック共重合体の重量平均分子量〕
流速0.35ml/分のテトラヒドロフランをキャリアとする高速液体クロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として、重量平均分子量を求めた。装置は、東ソー社製HLC8320、カラムは昭和電工社製Shodex KF-404HQを3本連結したもの(カラム温度40℃)、検出器は示差屈折計および紫外検出器を用い、分子量の較正は東ソー社製の標準ポリスチレン(500から300万)の12点で実施した。
【0171】
〔ブロック共重合体混合物における各ブロック共重合体の重量比〕
上記の高速液体クロマトグラフィにより得られたチャートの各ブロック共重合体に対応するピークの面積比から求めた。
【0172】
〔各ブロック共重合体のスチレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
Rubber Chem. Technol.,45,1295(1972)に記載された方法に従い、ブロック共重合体をオゾンと反応させ、水素化リチウムアルミニウムで還元することにより、ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックを分解した。具体的には、以下の手順で行なった。すなわち、モレキュラーシーブで処理したジクロロメタン100mlを入れた反応容器に、試料を300mg溶解した。この反応容器を冷却槽に入れ-25℃としてから、反応容器に170ml/minの流量で酸素を流しながら、オゾン発生器により発生させたオゾンを導入した。反応開始から30分経過後、反応容器から流出する気体をヨウ化カリウム水溶液に導入することにより、反応が完了したことを確認した。次いで、窒素置換した別の反応容器に、ジエチルエーテル50mlと水素化リチウムアルミニウム470mgを仕込み、氷水で反応容器を冷却しながら、この反応容器にオゾンと反応させた溶液をゆっくり滴下した。そして、反応容器を水浴に入れ、徐々に昇温して、40℃で30分間還流させた。その後、溶液を撹拌しながら、反応容器に希塩酸を少量ずつ滴下し、水素の発生がほとんど認められなくなるまで滴下を続けた。この反応の後、溶液に生じた固形の生成物をろ別し、固形の生成物は、100mlのジエチルエーテルで10分間抽出した。この抽出液と、ろ別した際のろ液とをあわせ、溶媒を留去することにより、固形の試料を得た。このようにして得られた試料につき、上記の重量平均分子量の測定法に従い、重量平均分子量を測定し、その値をスチレン重合体ブロックの重量平均分子量とした。
【0173】
〔各ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量〕
それぞれ上記のようにして求められた、ブロック共重合体の重量平均分子量から、対応するスチレン重合体ブロックの重量平均分子量を引き、その計算値に基づいてイソプレン重合体ブロックの重量平均分子量を求めた。
【0174】
〔各ブロック共重合体のイソプレン重合体ブロックのビニル結合含有量〕
プロトンNMRの測定に基づき求めた。
【0175】
〔各ブロック共重合体のスチレン単位含有量〕
上記の高速液体クロマトグラフィの測定における、示差屈折計と紫外検出器との検出強度比に基づいて求めた。なお、予め、異なるスチレン単位含有量を有する共重合体を用意し、それらを用いて、検量線を作成した。
【0176】
〔膜厚の均一性(膜厚変動)〕
フィルムを成形時の溶融流れ方向に沿って30cmの長さで切り取り、このフィルムの中央部において、溶融流れ方向に沿った2cm間隔毎、15点についてフィルムの厚さを、デジタル測厚器(東洋精機社製、測定精度:0.001mm単位)を用いて測定し、これら測定値の平均値および標準偏差を得て、膜厚の平均値に対する膜厚の標準偏差の比(標準偏差/平均値)の割合を求め、以下の基準で評価した。比が小さいものほど、フィルムの膜厚の均一性が高いといえ、成形に用いた組成物の成形性が優れているといえる。
〇:20%以下
△:20%超30%以下
×:30%超
【0177】
〔フィルムの永久伸び〕
ASTM 412に準拠してORIENTEC社製のテンシロン万能試験機RTC-1210を用いて測定した。具体的には、サンプル形状はDieAを使用し、伸張前の標線間距離を40mmとしてフィルムを伸び率200%で伸張させ、そのままの状態で10分間保持した後、はね返させることなく急に収縮させて、10分間放置後、標線間距離を測定し、下式に基づいて永久伸びを求めた。
永久伸び(%)=(L1-L0)/L0×100
L0:伸張前の標線間距離(mm)
L1:収縮させて10分間放置後の標線間距離(mm)
なお、この測定では、2枚のフィルムを用いて、一方を成形時の溶融流れ方向(MD)に沿って測定し、他方を成形時の溶融流れ垂直方向(CD)に沿って測定し、以下の基準で評価した。
溶融流れ方向(MD)の永久伸び
〇:2%以下
△:2%超5%以下
×:5%超
溶融流れ垂直方向(CD)の永久伸び
〇:2%以下
△:2%超5%以下
×:5%超
【0178】
〔フィルムの耐オゾンクラック性〕
フィルムをチャック間距離4.0cmのテンションホルダーに固定した。次にチャック間距離を5.0cmまで伸ばし、フィルムを25%伸長状態で固定した。固定したフィルムを、30℃、50%RH、オゾン濃度5pphmの恒温槽中に放置し、肉眼でクラックが確認できるまでの時間を測定し、以下の基準で評価した。
〇:2時間を超えてもクラックが発生しなかった。
×:2時間以内にクラックが発生した。
【0179】
〔フィルム色相〕
フィルムのガードナー色数を、JIS K0071-2に従い測定し、以下の基準で評価した。
〇:ガードナー色数が2未満
×:ガードナー色数が2以上
【0180】
〔フィルム臭気〕
フィルムについて、臭気対策研究協会発行の臭気の嗅覚測定法における臭気強度表示法に従って、官能試験を行った。
具体的には、まず、サイズを100mm×300mmとしたフィルムを、120mLの耐熱性容器に入れて、アルミ箔でフタをした。そして、このフィルムの入った耐熱性容器を、オーブンに入れて、温度140℃、20分間の条件で加熱し、加熱後の臭気の確認を行った。臭気の確認は、6人のパネルにより行った。本試験においては、嗅覚疲労を防ぐため、6人のパネルを3人ずつの2班に分けて、1班ずつ臭気を嗅ぐという方法を採用した。また、臭気を嗅ぐサンプルの順番は、無作為とした。
0:無臭
1:やっと認知できる臭い(検知閾値濃度)
2:何の臭いであるか判る弱い臭い(認知閾値濃度)
3:楽に感知できる臭い
4:強い臭い
5:強烈な臭い
なお、官能試験の結果は、6人のパネルの判定値のうち、最大値と最小値をそれぞれ除き、残りの4人の判定値を平均することにより求め、以下の基準で評価した。
〇:官能試験の値が、3点未満
×:官能試験の値が、3点以上
【0181】
〔製造例1〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.3kg、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下、「TMEDA」と称する)1.4ミリモル、スチレン1.04kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n-ブチルリチウム92.9ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50~60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン5.66kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合した。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、引き続き50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン1.04kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、活性末端を有するトリブロック鎖を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。次いで、重合停止剤としてメタノール63.4ミリモルを添加して、混合することにより、活性末端を有するトリブロック鎖のうちの一部の活性末端を失活させて、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体B1を形成させた。この後、さらに引き続き50~60℃を保つように温度制御しながら、スチレン0.98kgを1時間にわたり連続的に添加した。スチレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、活性末端を有するトリブロック鎖を形成させた。スチレンの重合転化率は100%であった。最後に、重合停止剤としてメタノール63.4ミリモルを添加して、混合することにより、トリブロック鎖の活性末端を全て失活させて、スチレン-イソプレン-スチレントリブロック共重合体A1を形成させた。得られた反応液の一部を取り出し、上記測定方法に従ってブロック共重合体を評価した。結果を表2に示す。
【0182】
以上のようにして得られた反応液100部(重合体成分を30部含有)に、酸化防止剤として、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85~95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、ブロック共重合体A1およびブロック共重合体B1を含有する混合物を回収した。
【0183】
上記混合物におけるブロック共重合体A1とブロック共重合体B1との重量比(ブロック共重合体A1/ブロック共重合体B1)は40/60であった。
【0184】
〔製造例2~4〕
スチレン、イソプレンなどの原料の使用量を、表1に示すように変更した以外は、製造例1と同様にして、反応液および混合物を得た。評価結果を表2に示す。
【0185】
【表1】
【0186】
【表2】
【0187】
〔製造例5〕
耐圧反応器に、シクロヘキサン23.2kg、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAと称する)1.5ミリモル、スチレン1.20kgを添加し、40℃で攪拌しているところに、n-ブチルリチウム101.7ミリモルを添加し、50℃に昇温しながら1時間重合した。スチレンの重合転化率は100%であった。引き続き、50~60℃を保つように温度制御しながら、反応器にイソプレン6.53kgを1時間にわたり連続的に添加した。イソプレンの添加を完了した後、さらに1時間重合し、活性末端を有するジブロック鎖を形成させた。イソプレンの重合転化率は100%であった。次いで、カップリング剤として、ジメチルジクロロシラン25.4ミリモルおよびテトラメトキシシラン9.7ミリモルを添加して2時間カップリング反応を行い、スチレン-イソプレンカップリングブロック共重合体C1を形成させた。この後、重合停止剤としてメタノール203ミリモルを添加して、混合することにより、ジブロック鎖の活性末端を全て失活させて、スチレン-イソプレンジブロック共重合体D1を形成させた。得られた反応液の一部を取り出し、上記測定方法に従ってブロック共重合体を評価した。結果を表4に示す。
【0188】
以上のようにして得られた反応液100部に、酸化防止剤として、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール0.3部を加えて混合し、混合溶液を少量ずつ85~95℃に加熱された温水中に滴下して溶媒を揮発させて析出物を得て、この析出物を粉砕し、85℃で熱風乾燥することにより、ブロック共重合体C1およびブロック共重合体D1を含有する混合物を回収した。
【0189】
上記混合物におけるブロック共重合体C1とブロック共重合体D1との重量比(ブロック共重合体C1/ブロック共重合体D1)は90/10であった。
【0190】
〔製造例6~7〕
スチレン、イソプレンなどの原料の使用量を、表3に示すように変更した以外は、製造例4と同様にして、反応液および混合物を得た。評価結果を表4に示す。
【0191】
【表3】
【0192】
【表4】
【0193】
〔実施例1〕
製造例1で得られた混合物および製造例5で得られた混合物を、表5に記載の各ブロック共重合体の重量比となるように混合して、組成物を調製した。得られた組成物を、T-ダイを装着した二軸押出機に投入した。そして、この二軸押出機内において、これらを200℃で加熱溶融、混練し、これを20分間連続してPET製離型フィルムに挟み込むようにして押し出すことにより、平均厚さ0.05mmのフィルム状に成形した。このようにして得られた実施例1のフィルムについて、膜厚変動および永久伸びを測定した。結果を表5に示す。なお、フィルムの成形条件の詳細は、以下のとおりである。
【0194】
(フィルムの成形条件)
配合物処理速度 : 5kg/時間
フィルム引き取り速度 : 4m/分
押出機温度 : 投入口100℃、T-ダイ200℃に調整
スクリュー : フルフライト
押出機L/D : 30
T-ダイ : 幅200mm、リップ0.5mm
【0195】
〔実施例2~3、比較例1~4〕
表5に示す各ブロック共重合体の重量比に変更した以外は、実施例1と同様にして、組成物およびフィルムを得て、同様に評価した。結果を表5に示す。
【0196】
【表5】
【0197】
表5の結果が示すように、構造の異なる3種のブロック共重合体を組み合わせて用い、なおかつ、各ブロック共重合体を構成する各ブロックの重量平均分子量、および、各ブロック共重合体中の芳香族ビニル単量体単位の含有量を適切に調整した場合には、優れた成形性を有する組成物が得られ、膜厚変動が少なく、永久伸びが小さいフィルムを得ることができた(実施例1~3)。
【0198】
一方、構造の異なる3種のブロック共重合体を組み合わせて用いた場合であっても、芳香族ビニル単量体単位の含有量が多すぎるブロック共重合体が含まれると、組成物の成形性が十分でなく、得られるフィルムの膜厚の変動が大きく、永久伸びも大きかった(比較例1~4)。
【0199】
〔実施例4〕
実施例1で調製した組成物100部と、表7に記載の配合を有する添加剤3部とを、T-ダイを装着した二軸押出機に投入した。そして、この二軸押出機内において、これらを200℃で加熱溶融、混練し、これを20分間連続してPET製離型フィルムに挟み込むようにして押し出すことにより、平均厚さ0.05mmのフィルム状に成形した。このようにして得られた実施例4のフィルムについて、膜厚変動および永久伸びを測定した。結果を表8に示す。なお、フィルムの成形条件の詳細は、以下のとおりである。また、表7に示した添加剤の重量比(n-体/iso-体)および融点を表6に示す。
【0200】
(フィルムの成形条件)
配合物処理速度 : 5kg/時間
フィルム引き取り速度 : 4m/分
押出機温度 : 投入口100℃、T-ダイ200℃に調整
スクリュー : フルフライト
押出機L/D : 30
T-ダイ : 幅200mm、リップ0.5mm
【0201】
〔実施例5~14〕
添加剤の種類および量を表8に記載のとおりに変更した以外は、実施例4と同様にして、フィルムを得て、同様に評価した。結果を表8に示す。
【0202】
〔参考例5~11〕
添加剤の種類および量を表9に記載のとおりに変更した以外は、実施例4と同様にして、フィルムを得て、同様に評価した。結果を表9に示す。
【0203】
【表6】
【0204】
【表7】
【0205】
【表8】
【0206】
【表9】
【0207】
表8の結果が示すように、ブロック共重合体に対して、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を特定の重量比で含有しており、比較的低い融点を有するワックスを添加した場合には、色相および低臭気性に優れた組成物が得られ、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができた(実施例4~14)。
【0208】
一方、表9の結果が示すように、比較的高い融点を有するワックスを添加した場合には、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができなかった(参考例5)。
また、表9の結果が示すように、比較的高い融点を有し、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を、適切な重量比で含有していないワックスを用いた場合にも、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができなかった(参考例6~8)。
また、表9の結果が示すように、直鎖状炭化水素および分岐鎖状炭化水素を、適切な重量比で含有していないワックスを用いた場合にも、耐オゾンクラック性に優れる弾性体を得ることができなかった(参考例11)。
また、表9の結果が示すように、ワックス以外の添加剤を用いた場合には、得られた組成物の色相が劣っており、得られた組成物の臭気も強かった(参考例9~10)。