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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】熱交換器および伝熱管外表面の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   F28G 1/08 20060101AFI20240910BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20240910BHJP
   F28F 9/00 20060101ALI20240910BHJP
   F28G 15/04 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
F28G1/08
F28D7/16 A
F28F9/00 331
F28G15/04
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023191017
(22)【出願日】2023-11-08
【審査請求日】2023-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】恩川 立基
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-107289(JP,U)
【文献】特開2009-180435(JP,A)
【文献】中国実用新案第215893396(CN,U)
【文献】特開2005-134079(JP,A)
【文献】特開2012-207813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28G 1/08,15/04
F28F 9/00,9/24
F28D 7/10,7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体管と、
該胴体管内に平行に配置された複数の伝熱管と、
該伝熱管が挿通された貫通孔を有し、該伝熱管の延在方向に進退可能なかき取り板と、
該かき取り板を進退移動させるための駆動手段と、
該伝熱管内に第1流体を流通させる第1流体流通手段と、
該胴体管の内面と該伝熱管との間のチャンバ内に第2流体を流通させる第2流体流通手段と
を有し、該かき取り板が移動することによって前記貫通孔の内周面が伝熱管の外周面と摺動して伝熱管外周面の付着物がかき取られる熱交換器において、
前記第2流体流通手段は、前記胴体管の管軸方向の一端側に設けられた給排口(8)と、他端側に設けられた給排口(9)とを有しており、
該給排口(8)として、前記胴体管の周方向に配置位置を異ならせて配置された複数個の給排口(8a,8b)が設けられており、
該給排口(9)として、前記胴体管の周方向に配置位置を異ならせて配置された複数個の給排口(9a,9b)が設けられている熱交換器であって、
給排口(8a)から他の給排口(8b)へ、又は給排口(9a)から他の給排口(9b)へ流体を流して汚れ物質を流出させるブローを行う
ことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記給排口(8)として、前記胴体管の管軸を挟んで配置された給排口(8a,8b)が設けられ、
前記給排口(9)として、前記胴体管の管軸を挟んで配置された給排口(9a,9b)が設けられている
請求項1の熱交換器。
【請求項3】
前記チャンバの一端側及び他端側に管板が設けられ、該管板の該チャンバと反対側が前記第1流体の給排室となっており、
前記伝熱管内が該給排室に連通している請求項1の熱交換器。
【請求項4】
前記かき取り板に、該かき取り板同士又は該かき取り板と前記管板とが近接したときに該かき取り板同士の間又は該かき取り板と該管板との間に介在してスペースを形成するための凸部が設けられている請求項の熱交換器。
【請求項5】
前記駆動手段は、シリンダ及びピストンロッドを備えたシリンダ機構であり、該ピストンロッドの先端が前記かき取り板に連結されている請求項3の熱交換器。
【請求項6】
前記胴体管の一端側の前記給排室を貫通するロッド挿通管が設けられており、
該ロッド挿通管内に前記ピストンロッドが挿通され、
該胴体管外に前記シリンダが配置されている請求項5の熱交換器。
【請求項7】
前記駆動手段は、一端が前記かき取り板に連結されたワイヤロープと、該ワイヤロープを巻き取るためのウインチとを有する請求項3の熱交換器。
【請求項8】
前記胴体管の一端側の前記給排室を貫通するワイヤロープ誘導管が設けられており、
該ワイヤロープ誘導管内に前記ワイヤロープが挿通され、
該胴体管外に前記ウインチが配置されている請求項7の熱交換器。
【請求項9】
前記胴体管の一端側から他端側に向って第1ないし第n(nは2以上の整数)の前記かき取り板が配置されており、各かき取り板には前記ワイヤロープを挿通させる小孔が設けられている請求項8の熱交換器。
【請求項10】
nは3以上であり、前記第1及び第nのかき取り板を駆動させるように、先端が第1のかき取り板に連結された第1のワイヤロープと、先端が第nのかき取り板に連結された第nのワイヤロープとが設けられており、
第1及び第n以外のかき取り板は、隣接するかき取り板に対し、連結用ワイヤロープによって連結されている請求項9の熱交換器。
【請求項11】
前記かき取り板に、前記貫通孔とは別に、該かき取り板を挟んで一方の側と他方の側とを連通する流通孔が設けられており、該かき取り板が熱交換器のバッフルとして機能するようになっている請求項1の熱交換器。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項の熱交換器の伝熱管の外表面を洗浄する方法であって、
前記かき取り板を前記胴体管の一端側へ移動させる第1の移動工程と、
その後、該一端側の前記給排口(8a)を通して洗浄水を前記チャンバ内に供給し、前記給排口(8b)を通して洗浄排水をチャンバ外へ流出させる第1のブロー工程と
を有する熱交換器の伝熱管外表面の洗浄方法。
【請求項13】
さらに、前記かき取り板を前記一端側から他端側へ移動させる第2の移動工程と、
その後、該他端側の前記給排口(9a)を通して洗浄水を前記チャンバ内に供給し、前記給排口(9b)を通して洗浄排水をチャンバ外へ流出させる第2のブロー工程を有する
請求項12の熱交換器の伝熱管外表面の洗浄方法。
【請求項14】
前記熱交換器は請求項4の熱交換器であり、
前記第1の移動工程を行うことによって、前記一端側の管板と最も該一端側のかき取り板の凸部とが当接し、かつ、隣接するかき取り板の凸部同士が当接し、
前記第2の移動工程を行うことによって、前記他端側の管板と最も該他端側のかき取り板の凸部とが当接する
請求項13の熱交換器の伝熱管外表面の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱交換器に係り、特に伝熱管の外表面に付着した汚れをかき取って装置系外に排出する機構を備えた熱交換器に関する。また、本発明は、この熱交換器の伝熱管外表面の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
伝熱管の外表面に付着した汚れをかき取って装置系外に排出する物理的な洗浄機構を有する熱交換器の該洗浄機構として、かき取りレバー方式(特許文献1)や移動掃除板方式(特許文献2)が知られている。
【0003】
特許文献1には、樹脂製のシェルアンドチューブ式熱交換器において、複数のバッフルをチューブに沿って往復摺動させることによりチューブ表面に付着した汚れをかき取る構成が開示されている。しかし、チューブ表面に付着した汚れがスライムのように粘着性の高い汚れである場合、かき取られたスライム等がバッフルに付着して残留するおそれがある。
【0004】
特許文献2には、エアシリンダを用いて硬質ゴムまたはプラスチック製の掃除板(伝熱管クリーニング装置)を往復摺動させ、伝熱管の外表面の汚れをかき取る構成が開示されている。しかし、特許文献2の熱交換器は、開放型温水槽に伝熱管を浸漬する構造であるため、伝熱管の外表面近傍における流速を大きくできず伝熱効率が悪いという問題があった。また、かき取った汚れは温水槽底面に落下し、底部の排出口から排水されることになっているが、底部の流速が大きいのは堰の最下部に設けられた隙間付近のみであり、堰から離れた場所に落下した汚れはそのまま堆積することが予想される。また、伝熱管クリーニング装置の洗浄対象は伝熱管のみであり、温水槽内の他の構造物(槽内壁面、底面、堰、掃除板など)は洗浄できないため、温水槽内の汚れ濃度が上がって伝熱管への汚れの付着速度が上がるため、定期的な手動洗浄が必要になることが推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-207813号公報
【文献】特開2013-032889号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、伝熱管の外表面に付着した汚れをかき取り、かき取った汚れを装置系外に効率よく排出することができる熱交換器および伝熱管外表面の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の熱交換器は、胴体管と、該胴体管内に平行に配置された複数の伝熱管と、該伝熱管が挿通された貫通孔を有し、該伝熱管の延在方向に進退可能なかき取り板と、該かき取り板を進退移動させるための駆動手段と、該伝熱管内に第1流体を流通させる第1流体流通手段と、該胴体管の内面と該伝熱管との間のチャンバ内に第2流体を流通させる第2流体流通手段とを有し、該かき取り板が移動することによって前記貫通孔の内周面が伝熱管の外周面と摺動して伝熱管外周面の付着物がかき取られる熱交換器において、前記第2流体流通手段は、前記胴体管の管軸方向の一端側に設けられた給排口(8)と、他端側に設けられた給排口(9)とを有しており、該給排口(8)として、前記胴体管の周方向に配置位置を異ならせて配置された複数個の給排口(8a,8b)が設けられており、該給排口(9)として、前記胴体管の周方向に配置位置を異ならせて配置された複数個の給排口(9a,9b)が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様では、前記給排口(8)として、前記胴体管の管軸を挟んで配置された給排口(8a,8b)が設けられ、前記給排口(9)として、前記胴体管の管軸を挟んで配置された給排口(9a,9b)が設けられている。
【0009】
本発明の一態様では、前記チャンバの一端側及び他端側に管板が設けられ、該管板の該チャンバと反対側が前記第1流体の給排室となっており、前記伝熱管内が該給排室に連通している。
【0010】
本発明の一態様では、前記かき取り板に、該かき取り板同士又は該かき取り板と前記管板とが近接したときに該かき取り板同士の間又は該かき取り板と該管板との間に介在してスペースを形成するための凸部が設けられている。
【0011】
本発明の一態様では、前記駆動手段は、シリンダ及びピストンロッドを備えたシリンダ機構であり、該ピストンロッドの先端が前記かき取り板に連結されている。
【0012】
本発明の一態様では、前記胴体管の一端側の前記給排室を貫通するロッド挿通管が設けられており、該ロッド挿通管内に前記ピストンロッドが挿通され、該胴体管外に前記シリンダが配置されている。
【0013】
本発明の一態様では、前記駆動手段は、一端が前記かき取り板に連結されたワイヤロープと、該ワイヤロープを巻き取るためのウインチとを有する。
【0014】
本発明の一態様では、前記胴体管の一端側の前記給排室を貫通するワイヤロープ誘導管が設けられており、該ワイヤロープ誘導管内に前記ワイヤロープが挿通され、該胴体管外に前記ウインチが配置されている。
【0015】
本発明の一態様では、前記胴体管の一端側から他端側に向って第1ないし第n(nは2以上の整数)の前記かき取り板が配置されており、各かき取り板には前記ワイヤロープを挿通させる小孔が設けられている。
【0016】
本発明の一態様では、nは3以上であり、前記第1及び第nのかき取り板を駆動させるように、先端が第1のかき取り板に連結された第1のワイヤロープと、先端が第nのかき取り板に連結された第nのワイヤロープとが設けられており、第1及び第n以外のかき取り板は、隣接するかき取り板に対し、連結用ワイヤロープによって連結されている。
【0017】
本発明の一態様では、前記かき取り板に、前記貫通孔とは別に、該かき取り板を挟んで一方の側と他方の側とを連通する流通孔が設けられており、該かき取り板が熱交換器のバッフルとして機能するようになっている。
【0018】
本発明の伝熱管外表面の洗浄方法は、本発明の熱交換器の伝熱管の外表面を洗浄する方法であって、前記かき取り板を前記胴体管の一端側へ移動させる第1の移動工程と、その後、該一端側の前記給排口(8a)を通して洗浄水を前記チャンバ内に供給し、前記給排口(8b)を通して洗浄排水をチャンバ外へ流出させる第1のブロー工程とを有する。
【0019】
本発明の伝熱管外表面の洗浄方法の一態様は、さらに、前記かき取り板を前記一端側から他端側へ移動させる第2の移動工程と、その後、該他端側の前記給排口(9a)を通して洗浄水を前記チャンバ内に供給し、前記給排口(9b)を通して洗浄排水をチャンバ外へ流出させる第2のブロー工程を有する。
【0020】
本発明の伝熱管外表面の洗浄方法の一態様にあっては、前記第1の移動工程を行うことによって、前記一端側の管板と最も該一端側のかき取り板の凸部とが当接し、かつ、隣接するかき取り板の凸部同士が当接し、前記第2の移動工程を行うことによって、前記他端側の管板と最も該他端側のかき取り板の凸部とが当接する。
【発明の効果】
【0021】
本発明の熱交換器及び伝熱管外表面の洗浄方法によると、かき取り板を胴体管の端部側まで移動させることにより、伝熱管外表面から汚れがかき取られる。このかき取られた汚れは、給排口から洗浄水をブローすることにより、胴体管外に効率よく排出される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施の形態に係る熱交換器の、胴体管内を透視状態として示す正面図(図1(a))と、背面図(図1(b))である。
図2図1(a)のII-II線に沿う断面図である。
図3】かき取り板の斜視図である。
図4】伝熱管とかき取り板との構成を示す斜視図である。
図5図1の熱交換器のかき取り工程を示す正面図である。
図6】別の実施の形態に係る熱交換器の胴体管内を透視状態として示す正面図である。
図7図6の伝熱管とかき取り板との構成を示す斜視図である。
図8図6の熱交換器のかき取り工程を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0024】
<シリンダ方式>
図1~5は、シリンダ方式を用いる第1の実施の形態を示している。図1に示すように、本実施形態に係る熱交換器1は、円筒形の胴体管2と、胴体管2内に設けられた複数本の伝熱管3とを備える。本実施形態では、円筒形の胴体管2の軸心線方向を上下方向とする構成としているが、本発明の熱交換器は、胴体管の軸心線方向は水平方向であってもよく、斜め方向であってもよい。
【0025】
胴体管2の軸心線方向の両端側の鏡板部には、第1流体の給排口4,5が設けられている。胴体管2の頂部側の給排口4の近傍には、上管板6が板面を水平方向にして設けられている。
【0026】
上管板6の外周縁は、胴体管2の内周面に溶接等により水密的に固着されている。胴体管2の底部側の給排口5の近傍には、下管板7が板面を水平方向にして設けられている。下管板7の外周縁は、胴体管2の内面に溶接等により水密的に固着されている。
【0027】
上管板6の上側が給排室21となっており、下管板7の下側が給排室22となっている。上管板6と下管板7との間がチャンバ20となっている。
【0028】
胴体管2の側面の上部(上管板6の直下)には第2流体の給排口8(8a,8b)が設けられており、胴体管2の側面の下部(下管板7の直上)には第2流体の給排口9(9a,9b)が設けられている。第2流体は、チャンバ20内を給排口8から給排口9へ(又はその逆に)流れる。
【0029】
第2流体の給排口8,9は、後述のように、伝熱管の外表面の汚れを排出するために、それぞれ2個以上配置されることが望ましく、その配置は、胴体管2の円周方向に等間隔で、水平面で同じ高さになるよう配置されることが望ましい。しかし、給排口の数が増えすぎると構造が複雑化しコストアップの要因となるので、給排口8,9の数はそれぞれ2~4個が望ましい。この実施の形態では、給排口8,9としてそれぞれ2個の給排口8a,8b,9a,9bが胴体管2の直径方向に対峙して設けられている。
【0030】
複数本の伝熱管3は、胴体管2のチャンバ20内に上下方向に平行に配置されている。伝熱管3の上端部は上管板6を貫通し、伝熱管3内が給排室21内に連通している。伝熱管3の下端部は下管板7を貫通し、伝熱管3内が給排室22に連通している。給排口4から流入した第1流体は、給排室21から複数の伝熱管3の内部を通過して第2流体と熱交換し、給排室22を経て給排口5から流出する。第1流体の流れ方向はこれと逆でもよい。
【0031】
胴体管2のチャンバ20内には、上下方向に移動可能な複数枚(この実施の形態では3枚)のかき取り板10が水平方向に設けられている。かき取り板10は平面視で円形であり、その直径は胴体管2の内径よりわずかに(概ね2mm以下)小さい程度である。
【0032】
かき取り板10には、伝熱管3の貫通孔14が設けられており、貫通孔14に伝熱管3が挿通されている。貫通孔14の孔径は、伝熱管3の外径と同じか、わずかに(概ね2mm以下)大きい程度である。かき取り板10が上下に移動することにより、伝熱管3の外表面と貫通孔14の内周縁が摺動し、該外表面の汚れがかき取られる。
【0033】
また、かき取り板10には、第2流体がかき取り板10の上側から下側へ、又は下側から上側へ通過できるように、流通孔13が設けられている。
【0034】
この実施の形態では、図2~4に示すように、流通孔13はかき取り板10の外縁部に沿う弦弧形の開口とされているが、かき取り板10の外縁部を弦方向に切り欠いた形状の切り欠き部であってもよい。
【0035】
流通孔13の大きさは、かき取り板10の面積の5~30%程度が好ましい。流通孔13内には、伝熱管3が挿通されてもよく、挿通されなくてもよい。
【0036】
この実施の形態では、1枚のかき取り板10に1個の流通孔13が設けられている。各かき取り板10の流通孔13は、隣接するかき取り板10,10において、胴体管2の軸心線を挟んで対向する位置にあることが望ましい。例えば、上側から奇数番目のかき取り板10にあっては、流通孔13を図1の右側に位置させ、偶数番目のかき取り板10にあっては、流通孔13を図1の左側に位置させる。
【0037】
また、図4に示すように、対向する伝熱管3の位置に流通孔13を設けることにより、対応する伝熱管3の貫通孔14の設置を省略することもできる。
【0038】
流通孔13を有したかき取り板10は、熱交換器1の通常運転時には、チャンバ20内を第2流体が給排口8から給排口9へ(又はその逆に)流れるときの流路長が長くなるようにするための邪魔板としての機能を有する。
【0039】
この実施の形態では図1に示すように、通常運転状態において、給排口8又は9からチャンバ20内に流入した第2流体は、各流通孔13を通り、チャンバ20内をジグザグ状に流れ、給排口9又は8から流出する。第1流体と第2流体とは、各伝熱管3の管壁を介して熱交換する。
【0040】
なお、第1流体と第2流体との流れ方向は並流でも向流でもよい。流れを向流とすることで、並流よりも伝熱効率を向上させることができる。
【0041】
この実施の形態では、かき取り板10は3枚設置されているが、2~7枚程度であればよく、これに限定されない。かき取り板10の枚数を増やすことで、伝熱管3からの汚れ除去能力が向上する。熱交換器1の定常運転状態において、かき取り板10,10の間隔は、略均等であり、胴体管2の上管板6と下管板7との距離の10~35%、特に15~25%程度が好ましい。かき取り板10の厚さは1mm~20mm、特に2mm~10mm程度が好ましい。
【0042】
かき取り板10の上面には凸部11が設けられている。この凸部11は、図5のように、かき取り板10が上昇限まで移動した際に、かき取り板10同士又は上管板6とかき取り板10とが密着状に重ならないようにするスペーサとしての機能を有している。
【0043】
かき取り板10の下面には凸部12が設けられている。この凸部12は、かき取り板10が下降限まで移動した際に、かき取り板10同士又は下管板7とかき取り板10とが密着状に重ならないようにするスペーサとしての機能を有している。
【0044】
この実施の形態では、各凸部11,12は、各かき取り板10の中央部に同軸状に配置されているが、中央部でなくてもよく、また同軸上でなくてもよく、これに限定されない。
【0045】
かき取り板10の移動用駆動装置としては、油圧シリンダや空圧シリンダ等を動力源としたシリンダ方式や、ワイヤ等による牽引方式などが採用される。
【0046】
図1~5は、シリンダ方式を採用している。図1に示すように、かき取り板10の枚数分のシリンダ16(16A,16B,16C)を胴体管2の一端部に、ロッド長手方向が胴体管2の軸心線と平行方向となるように設置してある。各シリンダ16から延出するピストンロッド15(15A,15B,15C)の先端にかき取り板10A,10B,10Cを固定している。
【0047】
図3では図示を省略しているが、かき取り板10Aにはピストンロッド15B,15Cを遊挿させる挿通孔が設けられ、かき取り板10Bにはピストンロッド15Cを遊挿させる挿通孔が設けられている。挿通孔の孔径は、ピストンロッド15の外径よりもわずかに(概ね2mm以下)大きい程度である。
【0048】
図1(a)に示すように、胴体管2の天部側の鏡板部と上管板6との間にロッド挿通管15pが架設されており、ロッド挿通管15p内が給排室21内から隔絶されている。ロッド挿通管15p内はチャンバ20内に連通している。各ピストンロッド15はそれぞれロッド挿通管15p内を通ってチャンバ20内に延出している。ロッド挿通管15pの内周面とピストンロッド15の外周面との間にシール材を設置することで、チャンバ20内の第2流体がロッド挿通管15p内を通って漏洩することを防止している。
【0049】
このように構成された熱交換器において、伝熱管3の外周面に付着した汚れ物質を除去する洗浄を行うには、図1において第1流体及び第2流体の流通を停止させた状態で、シリンダ16を作動させてかき取り板10を上方に移動させる。そうすると、貫通孔14の内周面と伝熱管3の外周面とが擦れ合い、伝熱管3の外周面の汚れ物質(付着物)がかき取られる。かき取られた汚れ物質は、かき取り板10上に落下する。また、胴体管2の内周面に付着していた汚れ物質も、かき取り板10の外周縁によってかき取られ、かき取り板10上に落下する。
【0050】
すべてのかき取り板10A~10Cを各々上昇限すなわち図5の状態にまで上昇させた後、図5の状態に保持する。この実施の形態では、各かき取り板10A~10C同士の間には凸部11,12の合計高さ分の隙間があいており、かき取り板10Aと上管板6との間には凸部11の高さ分の隙間が空いている。また、かき取り板10Cの上面は、給排口8a,8bの下縁と略同レベル又はそれよりも上位に位置している。
【0051】
この状態で、一方の給排口8aから他方の給排口8bへ流体を流すブローを行う。そうすると、各かき取り板10上に溜っていた汚れ物質が、この流体に随伴して給排口8bから流出し、各かき取り板10上には汚れ物質は殆ど残留しないようになる。
【0052】
この作用機構を実現するためには、かき取り板10A~10Cを図5の状態まで上昇させたとき、最下段のかき取り板10Cの上面が給排口8a、8bの下端より上位に配置している必要があるので、その点を踏まえてかき取り板の枚数や凸部の高さなどを設計しておく必要がある。
【0053】
なお、ブローを行うときは、汚れを同じ箇所に蓄積させないために、流入用給排口8aと流出用給排口8bとの間の流れの向きを入れ替える操作を行うことが望ましい。
【0054】
図5の状態における汚れ物質のブローの終了後、各ピストンロッド15を突出させてかき取り板10を下方移動させて図1の元の状態に戻して通常運転に復帰してもよく、図1の状態を経てさらに各かき取り板10を下降限まで移動させ、各かき取り板10が下管板7に載った着底状態としてもよい。かき取り板10が着底状態まで移動する間にかき取られた汚れ物質は、かき取り板10上や下管板7上に溜まる。そこで、着底状態となった後、一方の給排口9aから他方の給排口9bに流体を流し、汚れ物質をブローする。
【0055】
この作用機構を実現するためには、かき取り板10A~10Cを着底状態まで下降させたとき、最上段のかき取り板10Aの下面が給排口9a、9bの上端より下位に配置している必要があるので、その点を踏まえてかき取り板の枚数や凸部の高さなどを設計しておく必要がある。
【0056】
このブロー停止後、図1の元状態とし、通常運転に復帰するか、又はさらに上記のかき取り及びブロー工程を繰り返す。
【0057】
このようにして、伝熱管3等に付着した汚れ物質を十分に除去し、かき取った汚れ物質を速やかに胴体管2外に排出することができる。
【0058】
なお、第2流体としては、生物処理装置の入口水、または、地下からくみ上げられた熱水が例示されるが、これに限定されない。また、ブロー用の洗浄水としては、第2流体を用いてもよく、これとは別の流体を用いてもよい。
【0059】
<ワイヤ駆動方式>
図6~8は、かき取り板10を、ワイヤロープ(以下、ワイヤという。)17及び巻取装置としてのウインチ(図示略)によって移動させるようにしたワイヤ駆動方式を用いる第2の実施の形態に係る熱交換器1’を示している。
【0060】
なおこの実施形態では図3で図示を省略しているピストンロッド15を遊挿させる挿通孔を設けない形状のかき取り板を用いる。また、かき取り板10には凸部11,12の軸心部を通ってかき取り板10を上下方向に貫通する直径10mm程度の小孔18が設けられている。
【0061】
なお、ワイヤ17は、腐食の観点から金属製ではないこと、または樹脂など耐食性物質で被覆されていることが望ましい。
【0062】
この実施の形態では、ワイヤ17の条数はかき取り板10の枚数と同数とされており、図示の例では3条のワイヤ17A,17B、17Cが用いられている。
【0063】
ワイヤ17を上方に延出させるために、ワイヤ誘導管19Aが設けられ、ワイヤ17を下方に延出させるためにワイヤ誘導管19Bが設けられている。
【0064】
ワイヤ誘導管19Aは、下端が上管板6を貫通し、その内部がチャンバ20内に連通している。ワイヤ誘導管19Aの上部は、胴体管2の上側の鏡板部を貫通して上方に延出している。ワイヤ誘導管19Aの上端部にバルブ20Aが設けられている。
【0065】
ワイヤ誘導管19Bは、上端が下管板7を貫通し、その内部がチャンバ20内に連通している。ワイヤ誘導管19Bの下部は、胴体管2の下側の鏡板部を貫通して下方に延出している。ワイヤ誘導管19Bの下端部にバルブ20Bが設けられている。
【0066】
各ワイヤ17は、バルブ20A、ワイヤ誘導管19A、チャンバ20、各かき取り板10の小孔18、ワイヤ誘導管19B及びバルブ20Bに引き通されている。
【0067】
バルブ20A,20Bは、開弁時にはワイヤ17が自由に移動し、閉弁時にはチャンバ20からの流体の流出を阻止しうるよう構成されている。バルブ20A,20Bとしては、例えば径方向に進退可能なゴム等の弾性材料よりなる1対の弁体と、該弁体を進退させるための進退機構とを有したものとされる。1対の弁体を前進させて前端面同士を当接させると、弁体の先端同士が、ワイヤ17を挟み込んだ状態で密着し、閉弁状態となる。弁体を後退させると、バルブ20A,20Bが開弁状態となり、ワイヤ17が自由に移動しうるようになる。
【0068】
3条のワイヤ17のうち、第1のワイヤ17Aは、上段のかき取り板10Aの小孔18部分に留め付けられ、第2のワイヤ17Bは、中段のかき取り板10Bの小孔18部分に留め付けられ、第3のワイヤ17Cは、下段のかき取り板10Cの小孔18部分に留め付けられている。
【0069】
ワイヤ17をかき取り板10の小孔18部分に留め付ける構成の一例について次に説明する。
【0070】
この例では、ワイヤ17を途中で上側ワイヤと下側ワイヤの2本に分断し、上側ワイヤの下端及び下側ワイヤの上端にそれぞれアイ部を設ける。各アイ部をそれぞれボルト等によってかき取り板10の小孔18部分に固定する。
【0071】
ボルトを用いる代わりに、小孔18に直径方向にピンを着脱自在に設け、各アイ部に該ピンを挿通させ、該ピンを小孔18に固定することによってもワイヤ17をかき取り板10に留め付けることができる。
【0072】
アイ部の代りに鉤状フック部を設け、凸部11又は12に予め設けておいたフック係合部材に該フック部を係止させることによってもワイヤ17を小孔18部分に留め付けることができる。
【0073】
かき取り板10の移動用ウインチとして、該ワイヤ17の上端側を巻き取る上側ウインチと、下端側を巻き取る下側ウインチ(いずれも図示略)が設けられている。
【0074】
上側ウインチ及び下側ウインチは、それぞれワイヤ17の条数と同数の台数で設置されており、各ワイヤ17はそれぞれ別個に巻き取り(ワインド)、巻き出し(リリース)可能となっている。
【0075】
上側ウインチでワイヤ17Aの上部を巻き取り、下側ウインチからワイヤ17Aの下部を巻き出すと、かき取り板10Aが上方に移動する。
【0076】
同様に、上側ウインチでワイヤ17B又は17Cの上部を巻き取り、下側ウインチから各々の下部を巻き出すと、ワイヤ17B又は17Cが上方に向って送られ、かき取り板10B又は10Cとが上方に移動する。
【0077】
各ウインチの巻き取り、巻き出しを逆にすると、かき取り板10は下方に移動する。
【0078】
このように構成された熱交換器1’において、伝熱管3の外周面に付着した汚れ物質を除去する洗浄を行うには、第1流体及び第2流体の流通を停止した状態で、ウインチ操作によりワイヤ17A,17B,17Cを上方送りしてかき取り板10A,10B,10Cを図8の上昇限状態まで移動させる。
【0079】
この図8の状態は前記図5の状態と同様である。
【0080】
図8の状態で、給排口8aから給排口8bへ流体を流してブローを行う。
【0081】
ブロー終了後、かき取り板10を下方移動させて図6の元状態に戻して通常運転に復帰してもよく、図6の状態を経てさらに各かき取り板10を下方移動させ、各かき取り板10が下管板7に載った着底状態とし、給排口9aから給排口9bに流体を流してブローしてもよい。
【0082】
このようにして図6~8の実施の形態によっても、伝熱管3等に付着した汚れ物質を十分に除去し、かき取った汚れ物質を速やかに胴体管2外に排出することができる。
【0083】
<ワイヤ駆動方式の別態様>
図6~8では、各かき取り板10A,10B,10Cにそれぞれ移動用ワイヤ17A,17B,17Cを接続し、各ワイヤの上下にそれぞれウインチを設けて各かき取り板10A~10Cを個別に移動させるようにしているが、かき取り板10Bについては、かき取り板10A,10Cに従動するワイヤ構成としてもよい。
【0084】
例えば、移動用ワイヤ17Bを省略し、代りに、かき取り板10Bを連結用ワイヤによってかき取り板10Aに連続して吊支させ、かき取り板10B,10C同士を連結用ワイヤによって連結してもよい。
【0085】
この態様において、かき取り板10A,10Cをウインチ操作によって上方移動させると、この移動途中でまずかき取り板10Aが上管板6に当接するので、ワイヤ17A用ウインチを停止させる。そうすると、かき取り板10Bも一旦停止する。ワイヤ17Cについては、ウインチにより引き続き上方移動させる。
【0086】
このようにしてかき取り板10Cが上方移動していると、その途中でかき取り板10Cがかき取り板10Bに当接し、それ以降はかき取り板10B,10Cが一体的に上方移動する。そして、かき取り板10Bがかき取り板10Aに当接するまで上昇すると、図8の状態となる。
【0087】
また、この図8の状態でワイヤ17Cのみを下方送りするようにウインチを操作し、かき取り板10C,10Bを下方移動させる。やがてかき取り板10Bとかき取り板10A,10C間の連結ワイヤが緊張するので、これ以降はワイヤ17Aも下方送りするようにウインチを操作し、かき取り板10Aも下方移動させる。これにより、やがて図6の元状態に復帰する。
【0088】
その後、さらにワイヤ17A,17Cを下方送りすることにより、かき取り板10A~10Cが着底状態となる。
【0089】
また、図6~8では、各ワイヤの上下にそれぞれウインチを設けるようにしているが、上側ウインチ及び下側ウインチを共通とすることも可能である。つまりウインチでワイヤの上部を巻き取ると、それに伴ってワイヤの下部が巻き出されるようにするものである。
【0090】
このようにかき取り板10Bを従動移動方式、あるいは上側ウインチ及び下側ウインチを共通にする方式とすると、ウインチの数が少なくて済む。また、かき取り板の移動のためのウインチ操作も簡易となる。
【0091】
上記実施の形態は本発明の一例であり、本発明は上記以外の構成とされてもよい。例えば、第2流体の給排口を周方向へ等分位置に4個設け、ブローを2個の場合のブロー方向と直交方向にも行うことができるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1,1’ 熱交換器
2 胴体管
3 伝熱管
4,5 第1流体の給排口
6 上管板
7 下管板
8,9 第2流体の給排口
10 かき取り板
11,12 凸部
13 流通孔
14 貫通孔
15 ピストンロッド
15p ロッド挿通管
16 シリンダ
17 ワイヤ
20 チャンバ
21,22 給排室
【要約】
【課題】伝熱管の外表面に付着した汚れをかき取り、かき取った汚れを装置系外に確実に排出することができる熱交換器および伝熱管外表面の洗浄方法を提供する。
【解決手段】胴体管2と、該胴体管2内に平行に配置された複数の伝熱管3と、該伝熱管3が挿通された貫通孔14を有し、該伝熱管3の延在方向に進退可能なかき取り板10A,10B,10Cと、該かき取り板10A~10Cを進退移動させるための駆動手段と、該伝熱管3内に第1流体を流通させる第1流体流通手段と、該胴体管2の内面と該伝熱管との間のチャンバ20内に第2流体を流通させる第2流体流通手段とを有し、該かき取り板10A~10Cが移動することによって前記貫通孔14の内周面が伝熱管3の外周面と摺動して伝熱管外周面の付着物がかき取られる熱交換器1。胴体管2の給排口(8a,8b,9a,9b)によってかき取り物のブロー排出を行う。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8