(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】非水溶性色素組成物
(51)【国際特許分類】
C09B 67/02 20060101AFI20240910BHJP
C09B 61/00 20060101ALI20240910BHJP
C09B 67/20 20060101ALI20240910BHJP
C09C 1/40 20060101ALI20240910BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C09B67/02 A
C09B61/00 C
C09B67/20 F
C09C1/40
C09C3/08
(21)【出願番号】P 2023551300
(86)(22)【出願日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 JP2022034503
(87)【国際公開番号】W WO2023053980
(87)【国際公開日】2023-04-06
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2021157739
(32)【優先日】2021-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100214673
【氏名又は名称】菅谷 英史
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】関川 周司
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅晃
(72)【発明者】
【氏名】安井 健悟
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-070175(JP,A)
【文献】国際公開第2001/055262(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01798262(EP,A1)
【文献】特開平01-230676(JP,A)
【文献】特開平02-204751(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124785(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 1/00-69/10
C09C 1/40
C09C 3/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化アルミニウムに、少なくともアントシアニン、サフロミン、またはカルタミンから選択される一つ以上のフラボノイド系色素が、電気的な相互作用により物理吸着し、複合体として析出、水に不溶化した非水溶性色素組成物。
【請求項2】
前記少なくともアントシアニン、サフロミン、またはカルタミンから選択されるフラボノイド色素と、水酸化アルミニウムが質量比で、少なくともアントシアニン、サフロミン、またはカルタミンから選択されるフラボノイド色素:水酸化アルミニウム=0.1:99.9~90:10である請求項1記載の非水溶性色素組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の非水溶性色素組成物を含有することを特徴とする食品、化粧品、医薬品または農薬のコーティング材または印字マーカー、文房具、筆記具、印刷インキ、インクジェットインキ、金属インキ、塗料、プラスチック着色剤、カラートナー、蛍光標識剤、蛍光プローブ、または化学センサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水溶性色素組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
環境に優しい色材が求められおり、このような状況下で、フラボノイド色素の活用が検討されている。しかしながらフラボノイド系色素の多くは、水溶性であり、化粧品や食用色素に用いた場合水への溶出やそれに伴う色落ちの問題も起こりやすいことが明らかになっている。そのため現状ではごく限られた用途でしか使用されていない。
【0003】
例えば、天然色素の抽出方法や用途として、経口投与化粧品や、乳製品、ペットフードや繊維の染色方法、コンディショナーとして検討されている(特許文献1、2、3参照)。
【0004】
そこで、フラボノイド系色素の不溶化の検討として、水溶性染料をケイ素化合物のマトリックスでカプセル化し、水不溶化が検討されている(特許文献4参照)。
【0005】
しかし、不溶化の検討がまだまだ不十分であり、フラボノイド系色素のさらな着色剤として用途展開として、さらなる不溶化へのアプローチは必須であり、希求されている課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特表2009-508508号広報
【文献】特開2017-145257号広報
【文献】特開平7-304639号公報
【文献】特表2012-528913号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、水に不溶化したフラボノイド系色素組成物、および該色素組成物を含有した食品、化粧品、医薬品または農薬のコーティング材または印字マーカー、文房具、筆記具、印刷インキ、インクジェットインキ、金属インキ、塗料、プラスチック着色剤、カラートナー、蛍光標識剤、蛍光プローブ、または化学センサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、金属または金属化合物に、フラボノイド系色素が被覆、含浸、複合化、あるいは吸着された非水溶性色素組成物が、水に不溶であることを見出し、さらに該非水溶性色素組成物が着色剤として多種の用途として展開が可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下の態様を包含するものである。
[1]
金属または金属化合物に、フラボノイド系色素が被覆、含浸、複合化、あるいは吸着された非水溶性色素組成物。
[2]
前記フラボノイド系色素と、金属または金属化合物が質量比で、フラボノイド系色素:金属または金属化合物=0.1:99.9~90:10である1記載の非水溶性色素組成物。
[3]
前記フラボノイド系色素がアントシアニン、サフロミン、またはカルタミンである1または2に記載の非水溶性色素組成物。
[4]
前記金属化合物が金属水酸化物または金属酸化物である1~3いずれか1つに記載の非水溶性色素組成物。
[5]
前記金属または金属化合物の金属元素がアルミニウムである1~4いずれか1つに記載の非水溶性色素組成物。
[6]
1~5いずれか1つに記載の非水溶性色素組成物を含有することを特徴とする食品、化粧品、医薬品または農薬のコーティング材または印字マーカー、文房具、筆記具、印刷インキ、インクジェットインキ、金属インキ、塗料、プラスチック着色剤、カラートナー、蛍光標識剤、蛍光プローブ、または化学センサー。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、水に不溶化した色素組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の非水溶性色素組成物について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の一実施態様としての一例であり、これらの内容に特定されるものではない。
【0012】
(フラボノイド系色素)
本発明で使用するフラボノイド系色素は、植物色素の総称であり、ベンゼン環2個が炭素3個で結ばれ、かつ中央のC3が酸素を含むヘテロ環をつくった構造をしている。ヘテロ環の酸化還元状態の違いによってカルコン類、アントシアニジン類、3-デオキシアントシアニン類、フラボン類、イソフラボノイド類、フラボノール類、フラバノン類、アントシアン類、カテキン類(フラバノール類)、フラボノイド重合体などに分類される。植物の葉、花など各部分に含まれ、高等植物に広く分布している。代表的なものは、黄色のカルコン類色素であるサフロミン系色素と、花などの赤・紫・青を現すアントシアニン系色素で、前者は化学的にも安定で染料として利用されるものもあるが、後者は光や水素イオン濃度指数(pH)の違いなどによって変色しやすい不安定な物質で染料としての利用は限られる。フラボノイドは植物体内では3分子の酢酸単位からできるマロニルCoAとフェニルアラニンに由来する桂皮酸類から生成する。フラボノイドは紫外線をよく吸収するので、高等植物はこれらの色素を表皮に含み、紫外線による障害を防いでいるといわれるものである。
【0013】
(赤キャベツ色素)
赤キャベツはフラボノイド系色素を多く含有するため、その抽出物である赤キャベツ色素が着色料として利用されている。赤キャベツ色素は、赤キャベツや紫キャベツの赤い葉より、弱酸性水溶液で抽出して得られる、赤色から紫赤の色素である。主成分がアントシアニンであるため、pHにより大きく色調が異なり、酸性域で赤紫色、中性域で紫~青紫色、アルカリ性域で青緑色を呈する。なお、高pH域では不安定ある。赤キャベツ色素の主成分はアントシアニンで、約11種類があるとされている。そのうち5種類は シアニジンに糖であるソホロースとグルコースが結合したルブロブラジンを基本構造としている。それにp-クマル酸がついたシアニジン-3-パラクマロイルソホロシド-5-グルコシド、もしくはシナピン酸がついたシアニジン-3-シナポイルソホロシド-5-グルコシドの2つのアシル化アントシアニンが全体の約半分を占める。その他は、シナピン酸やフェルラ酸、p-クマル酸が結合したジアシル化アントシアニンが含まれている。アシル化アントシアニンと、ジアシル化アントシアニンが多くを占めるため、アントシアニン色素の中では安定性が高いとされている。赤キャベツ色素は水に易溶であり、アルコールに可溶、油脂には不溶である。pH3の緩衝液中では比較的紫味が少ない赤紫色を示し、その際の可視部の極大吸収波長は530nmである。アブラナ科植物独特の臭いがあるため、脱臭工程を加えるなどして臭いを抑えた赤キャベツ色素製剤が開発されている。アカキャベツ色素は比較的耐熱・耐光性に優れており、アントシアニン系色素の中で最も使用量が多い色素とされている。用途としては、大根の桜漬けの色付けによく使用される他、梅漬や柴漬、甘酢生姜、紅生姜などの漬物や 飲料、冷菓、菓子、ゼリーなどに使用される。
【0014】
(ベニバナ黄色素)
ベニバナは、フラボノイド系色素であるサフロミンとカルタミンを含有するため、その抽出物のベニバナ黄色素が着色料として利用される。サフロミンとカルタミンは、いずれもカルコン骨格を有しており、それゆえフラボノイド系色素として分類される。サフロミンとカルタミンは、どちらも水で容易に抽出される。ベニバナ黄色素は、クチナシ黄色素と比較するとやや青みを帯びた鮮明な黄色を呈し、pHによる色調変化がほとんどなく、水に溶けやすく、アルコールに可溶である。耐光性に優れるが、熱に弱く、加熱すると明度が下がる傾向がある。なお、耐熱性、耐光性はアスコルビン酸の添加で向上することが知られている。タンパク質への染着性は弱く、やや独特の香りがあるため、食品用途では使いづらいことがある。用途としては、耐光性がよく、色調がレモン系であるため、飲料に広く使用される。その他、冷菓や菓子、中華麺などにも使用される。またクチナシ青色素など、青系の色素と合わせて緑色の色素としても使用される。
【0015】
本発明に係るフラボノイド系色素としては、フラボノイド系全般の色素を使用することができるが、アントシアニン色素、サフロミン色素、又はカルタミン色素が、発色、不溶性に関して好ましい。
【0016】
(金属、金属化合物)
本発明で使用する金属および金属化合物は、フラボノイド系色素を不溶化するための担持作用を有するものであれば、如何なるものでも使用することができる。金属単体、金属酸化物、金属水酸化物等であり、特にアルミニウム、アルミニウム水酸化物が好適に使用できる。本発明で使用する金属または金属化合物中の金属元素としては、元素の周期表1~15族に属するもののうち、第1周期及び第2周期のものを除いたものが挙げられる。中でも鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、アルミニウム、チタン等の金属元素の使用が可能であり、それらから選択される1種類以上の金属元素を使用することができる。特に食品、化粧品用途として人体に影響のない金属または金属化合物が好ましく、本発明の実施形態においては、特にアルミニウム、チタン、亜鉛が好ましい。本発明の実施形態において、フラボノイド系色素と金属または金属化合物の物理的吸着をより強固にするために、金属または金属化合物として金属の水酸化物や酸化物が好適に用いられ、特に水酸化アルミニウム、酸化チタン及び酸化亜鉛が好適に用いられる。塩化アルミニウムや4塩化チタン、塩化亜鉛等の塩化物にアルカリを添加し、水酸化アルミニウムや酸化チタン、水酸化亜鉛等のスラリーとしたものを使用したほうが、フラボノイド系色素との物理的吸着がより強くなり、好ましい。さらに、物理的吸着をより強固にするために、金属または金属化合物の表面にフラボノイド系色素が被覆されている状態がより好ましい。被覆の定義として、フラボノイド系色素が金属表面に一部または均一に存在し覆っている状態を示す。金属または金属化合物の粒子の粒径は、用途によって好適な粒径が異なり、金属または金属化合物の粒子の粒子サイズによって色相も異なる。一例として、食品、化粧品用途では100nm~20μm、その他用途では50~500nmが好ましい。
【0017】
(非水溶性色素組成物)
従来フラボノイド系色素単体は染料の形態であるため水溶性である。本発明では、強固に金属または金属化合物に、フラボノイド系色素が被覆、含浸、複合化、あるいは吸着された非水溶性色素組成物とすることで、水に不溶となることを見出したものである。不溶化のメカニズムとしては、下記に一例を示しているが、これに限定されるものではない。
フラボノイド系色素には、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ホルミル基、カルボニル基、アルコキシ基、をはじめとした酸素官能基が数多く存在する。そのため、フラボノイド系色素は、水溶液のpHを変化させた場合、分子電荷が大きく変化する。同様に、金属化合物も水溶液中でのpH変化における粒子電荷の変化が大きい。そのため、これら二つの物質の水分散液のpHを調整することにより、金属化合物とフラボノイド系色素が電気的な相互作用により物理吸着し、複合体として析出、水に不溶化した、と考えている。
【0018】
本発明によって得られた不溶化により、食品や化粧品用途に限定されていたフラボノイド系色素を、通常の顔料と同等の着色材として、食品、化粧品、医薬品または農薬のコーティング材または印字マーカー、文房具、筆記具、印刷インキ、インクジェットインキ、金属インキ、塗料、プラスチック着色剤、カラートナー、蛍光標識剤、蛍光プローブ、または化学センサー等の用途に使用できうる耐性まで向上することができたものである。また、不溶化に伴い、耐熱性、耐光性等の特性向上も期待できる。なお、本発明の非水溶性色素組成物の用途は、上記の用途に限定されるものではない。
【0019】
本発明の非水溶性色素組成物として、フラボノイド系色素と金属または金属化合物の組成の質量比は、任意に設計が可能であり、フラボノイド系色素:金属または金属化合物=0.1:99.9~99.9:0.1の割合で設定して使用することができる。好ましくは、フラボノイド系色素:金属または金属化合物=0.1:99.9~90:10である。
【0020】
(非水溶性色素組成物の製造方法)
本発明の非水溶性色素組成物を製造する方法としては、溶媒中でフラボノイド系色素と金属または金属化合物を混合する方法が、最も均一な非水溶性色素組成物を製造できるため好ましい。
【0021】
溶媒中で各物質を混合する非水溶性色素組成物の製造方法としては、1)まず金属または金属化合物を酸や塩基の希釈水溶液に溶解し、溶液を作成する。2)一方でフラボノイド系色素または、フラボノイド系色素を含有する調剤を水に溶解し、水溶液を作成する。3)次に上記2つの液を混合して混合液を作成する。4)さらに混合液にpH調整剤を添加しpHを調整することで非水溶性色素組成物を含む混合液を作成する。5)得られた非水溶性色素組成物を含む混合液を濾過、乾燥する方法が挙げられる。
【0022】
金属または金属化合物溶液とフラボノイド系色素含有水溶液を混合する方法としては、金属または金属化合物溶液にフラボノイド系色素含有水溶液を混合しても良いし、その逆にフラボノイド系色素含有水溶液に金属または金属化合物溶液を混合しても良いし、これら2つの液を少量ずつ混合しながら作成しても構わない。また、金属または金属化合物溶液は、金属または金属化合物が液中に完全溶解していてもよいし、金属または金属化合物が液中に一部のみ溶解し一部は液中に分散している状態でもよい。また、金属または金属化合物、もしくはフラボノイド系色素の液に、フラボノイド系色素もしくは金属または金属化合物の粉末を加えても良いし、金属または金属化合物、フラボノイド系色素の粉末を混合し水を添加しても良い。混合する温度は、室温でもよいし加熱してもよい。フラボノイド系色素単体の分解温度を考慮し、10~60℃で混合するのが好ましく、20~50℃がより好ましい。また、金属または金属化合物溶液とフラボノイド系色素含有水溶液を混合する際のpHの範囲は、2.0~6.0が好ましく、3.0~5.0に調整することがさらに好ましい。
【0023】
pHを調整する際のpH調整剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどの水溶液が挙げられる。pH調整剤を添加したときの混合液のpHの範囲は、混合液中で金属または金属化合物と、フラボノイド系色素を効率的に吸着させ不溶化させる観点から6.0~8.5が好ましく、6.5~8.0に調整することがさらに好ましい。
【0024】
得られた非水溶性色素組成物を含む混合液を濾過、乾燥し、非水溶性色素組成物を得ることができる。混合液をヌッチェ等のろ過器でろ過したとき、ろ液に着色がないことから、フラボノイド系色素と金属または金属化合物が吸着していることを確認できる。また、得られた非水溶性色素組成物の水含有ウェットケーキは、室温や加熱、真空、減圧乾燥等により乾燥し、ドライの非水溶性色素組成物を得ることができる。乾燥方法、乾燥機は、通常の方法、装置であればいかなるものでも可能であり、限定されるものではない。
【0025】
本発明の非水溶性色素組成物は、上記の水が含有したウェットケーキであっても乾燥したドライの非水溶性色素組成物であっても、用途によって使い分けが可能である。水系の分散液、インキに使用する場合は、ウェットケーキをそのまま使用が可能であり、溶剤分散系で使用する場合は、水系から溶剤系に置換し、使用可能である。ドライの非水溶性色素組成物は、そのままでも使用可能であるし、水、または有機溶媒、樹脂溶液等に再分散させて使用することももちろん可能である。
【0026】
(安定化剤、添加剤)
本発明の非水溶性色素組成物に、他の有機顔料、無機顔料、染料、色素を任意の割合で混合することももちろん可能であり、所望の要求される色相を満たすことができる。
本発明の非水溶性色素組成物を更に耐光性、耐熱性を付与するために、安定化剤や添加剤を添加することもできる。
【0027】
安定化剤、添加剤は、金属又は金属化合物の水溶液または、フラボノイド系色素含有水溶液各々または両方に添加することも可能であるし、作成された非水溶性色素組成物に添加しても良い。
【0028】
本発明の非水溶性色素組成物は、必要に応じて、他の樹脂、ゴム、添加剤、顔料や染料等と混合され最終的な食品、化粧品、医薬品または農薬のコーティング材または印字マーカー、文房具、筆記具、印刷インキ、インクジェットインキ、金属インキ、塗料、プラスチック着色剤、カラートナー、蛍光標識剤、蛍光プローブ、または化学センサー等に調整され使用される。以下、上記用途の一例を示す。
【0029】
(化粧品用途)
本発明の非水溶性色素組成物は、化粧品として使用できる。使用される化粧品には特に制限はなく、本発明の非水溶性色素組成物は、様々なタイプの化粧品に使用することができる。
【0030】
前記化粧品は、機能を有効に発現することができる限り、いかなるタイプの化粧品であってもよい。前記化粧品は、ローション、クリームゲル、スプレー等であってよい。前記化粧品としては、洗顔料、メーク落とし、化粧水、美容液、パック、保護用乳液、保護用クリーム、美白化粧品、紫外線防止化粧品等のスキンケア化粧品、ファンデーション、白粉、化粧下地、口紅、アイメークアップ、頬紅、ネイルエナメル等のメークアップ化粧品、シャンプー、ヘアリンス、ヘアトリートメント、整髪剤、パーマネント・ウェーブ剤、染毛剤、育毛剤等のヘアケア化粧品、身体洗浄用化粧品、デオドラント化粧品、浴用剤等のボディケア化粧品などを挙げることができる。
【0031】
前記化粧品に使用される本発明の非水溶性色素組成物の量は、化粧品の種類に応じて適宜設定することができる。前記化粧品中の含有量が通常0.1~99質量%の範囲であり、一般的には、0.1~10質量%の範囲となるような量であることが好ましい。一方で、着色が目的のメークアップ化粧品では、好ましくは5~80質量%の範囲、さらに好ましくは10~70質量%の範囲、最も好ましくは20~60質量%の範囲となるような量であることが好ましい。前記化粧品に含まれる本発明の非水溶性色素組成物の量が前記範囲であると、着色性等の機能を有効に発現することができ、かつ化粧品に要求される機能も保持することができる。
【0032】
前記化粧品は、化粧品の種類に応じて、本発明の非水溶性色素組成物の他、化粧品成分として許容可能な、担体、顔料、油、ステロール、アミノ酸、保湿剤、粉体、着色剤、pH調整剤、香料、精油、化粧品活性成分、ビタミン、必須脂肪酸、スフィンゴ脂質、セルフタンニング剤、賦形剤、充填剤、乳化剤、酸化防止剤、界面活性剤、キレート剤、ゲル化剤、濃厚剤、エモリエント剤、湿潤剤、保湿剤、鉱物、粘度調整剤、流動調整剤、角質溶解剤、レチノイド、ホルモン化合物、アルファヒドロキシ酸、アルファケト酸、抗マイコバクテリア剤、抗真菌剤、抗菌剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤、抗炎症剤、抗刺激剤、抗腫瘍剤、免疫系ブースト剤、免疫系抑制剤、抗アクネ剤、麻酔剤、消毒剤、防虫剤、皮膚冷却化合物、皮膚保護剤、皮膚浸透増強剤、剥脱剤(exfoliant)、潤滑剤、芳香剤、染色剤、脱色剤、色素沈着低下剤(hypopigmenting agent)、防腐剤、安定剤、医薬品、光安定化剤、及び球形粉末等を含むことができる。
【0033】
前記化粧品は、本発明の非水溶性色素組成物およびその他の化粧品成分を混合することによって製造することができる。
また、本発明の非水溶性色素組成物を含む化粧品は、該化粧品のタイプ等に応じて、通常の化粧品と同様に使用することができる。
【0034】
(インキ、塗料用途)
本発明の非水溶性色素組成物は、インキ、塗料として使用できる。ただし、インキ、塗料の用途、組成について記述するが、これらに限定されるものではない。
また本発明の非水溶性色素組成物は、熱可塑性樹脂のみに分散させてもよいが、熱可塑性樹脂を必須成分として含有する印刷インキ用ビヒクルや塗料用ビヒクル等に分散させることも出来る。
【0035】
熱可塑性樹脂としては、たとえばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン、ポリアルキレンテレフタレートやポリ塩化ビニル樹脂等の樹脂が分散用樹脂として使用できる。
【0036】
たとえば平版印刷用インキのビヒクルは、ロジン変性フェノール樹脂、石油樹脂、アルキッド樹脂等の樹脂を20~50(質量)%、アマニ油、桐油、大豆油等の動植物油を0~30(質量)%、n-パラフィン、イソパラフィン、ナフテン、α-オレフィン、アロマティック等の溶剤を10~60(質量)%、その他可溶化剤、ゲル化剤等の添加剤を数(質量)%の原料から製造される。
【0037】
またグラビア印刷インキ、フレキソ印刷インキ用ビヒクルの場合は、たとえばロジン類、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ビニル樹脂、環化ゴム、塩化ゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ニトロセルロース、酢酸セルロース等から選ばれる一種以上の樹脂を10~50(質量)%、アルコール類、トルエン、n-ヘキサン、酢酸エチル、セロソルブ、酢酸ブチルセロソルブ等の溶剤30~80(質量)%の原料等から製造される。
【0038】
塗料用のビヒクルでは、たとえばアルキド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、水溶性樹脂等の樹脂20~80(質量)%、炭化水素類、アルコール類、ケトン類、水等の溶剤10~60(質量)%の原料等から製造される。
【0039】
(プラスチック用途)
本発明の非水溶性色素組成物はプラスチック着色用途にも使用できる。着色プラスチック成形品を得る場合には、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンやポリ塩化ビニル樹脂等の、射出成形やプレス成形等の熱成形用の熱可塑性樹脂(プラスチック)が用いられるが、本発明の非水溶性色素組成物はこれらの樹脂に従来公知の方法で練り込んで使用することができる。
【0040】
(トナー用途)
本発明の非水溶性色素組成物はトナー着色用途にも使用できる。
静電荷像現像用トナーを得る場合には、たとえばポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、スチレン樹脂、アクリル樹脂等の常温で固形の皮膜形成性の熱可塑性樹脂が分散用樹脂として使用される。
【0041】
本発明の非水溶性色素組成物を構成成分として製造される静電荷像現像用トナーは、トナー中に磁性体を含有する1成分色磁性トナー(磁性一成分現像用カラートナー)、磁性体を含有しない非磁性1成分色カラートナー(非磁性一成分現像用カラートナー)、又は、キャリアーを混合した2成分色現像剤用カラートナー(二成分現像用カラートナー)として用いることができる。
【0042】
1成分色磁性トナーは、通常使用されているものと同様に、例えば着色剤、結着樹脂、磁性粉、電荷制御剤(CCA)や離型剤に代表されるその他添加剤等から構成出来る。
【0043】
静電荷像現像用トナー中に占める非水溶性色素組成物の使用量は特に限定されないが、結着樹脂100質量部に対し0.5~25質量部の割合で使用することが好ましく、着色剤自身の有する帯電性能を一層顕著ならしめる点から結着樹脂100質量部に対し4~10質量部であることが更に好ましい。
【0044】
静電荷像現像用トナーに用いられる結着樹脂としては、前記熱可塑性樹脂として例示した公知慣用のものがいずれも使用できるが、熱又は圧力の適用下で接着性を示す合成樹脂、天然樹脂、天然ゴム、合成ゴム、合成ワックス等がいずれも使用できる。
【0045】
(蛍光標識剤、蛍光プローブ用途)
フラボノイド系色素は蛍光性を有することが知られている。本発明のフラボノイド系色素組成物において、フラボノイド系色素はその構造は維持されることから、蛍光性を利用した用途、例えば蛍光標識剤、蛍光プローブ等に使用することができる。
【0046】
例えば、本発明のフラボノイド系色素組成物における金属または金属化合物に、さらに所望の標的生体分子を分子認識する物質を表面に結合もしくは吸着させることによって蛍光標識剤とすることができる。具体的には検体(例えば、任意の細胞抽出液、溶菌液、培地・培養液、溶液、バッファー)中の標的生体分子(生理活性物質を含む。)を蛍光標識付けすることができる。前記標的生体分子を分子認識する物質としては、抗体、抗原、ペプチド、DNA、RNA、糖鎖、リガンド、受容体、化学物質等が挙げられる。前記標的生体分子との分子認識が、抗原-抗体反応である場合は、免疫染色用試薬とすることも可能である。
【0047】
(化学センサー用途)
フラボノイド系色素はpH変化により、色相が変化する。そのため、この色変化を利用することによって、pHを検出するための化学センサーとして使用することもできる。
【0048】
例えば、環境河川水、地下水、産業排水中に含まれるイオンを簡便に検出することができる。日常的な環境モニタリングや工場排水の管理等において、その手段として、大型の測定機器による機器分析を使用するには、時間、コスト、及び労力の点で問題が多いが、本発明のフラボノイド系色素組成物を用いることで、測定の現場で、簡便にpH変化を観測でき、また、非水溶性であることより、濾別等で回収できるため、水性媒体に色素を流出させることもなく工程管理に使用することも可能である。
【実施例】
【0049】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳述するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
2Lビーカーに塩化アルミニウム(III)六水和物(関東化学株式会社製)46.4gをイオン交換水1000mLに溶解した。続いて、48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)より希釈調製した4.8%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを4.0とし、水酸化アルミニウムのスラリーとした。この溶液に、ベニバナ黄色素粉末(サフラワーY1500、ベニバナ色素85%、デキストリン15%、ダイワ化成株式会社製)5.29gを加え、室温で1時間後、4.8%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを7.0とし、30分攪拌した。濾過後の固体を真空乾燥機(740mmHg)で30℃、14時間乾燥し、粉体(1)19.5gを得た。粉体(1)の収量から、仕込んだベニバナ黄色素分を差し引いて求めた、粉体(1)中の水酸化アルミニウム:ベニバナ黄色素の組成比率は、質量比で、水酸化アルミニウム:ベニバナ黄色素=77:23だった。得られた粉体(1)はベニバナ黄色素と同系の黄色を呈した。10mLバイヤルに粉体(1)10mgと水1.0gを添加後、5分間攪拌し、分散液(1)を作製した。分散液(1)をろ紙上に1滴滴下したところ、滴下部分は円状に黄色く呈色し、その後同心円状に無色透明の液が広がっていく様子が観察された。初めに円状に黄色く呈色した部分は水に不溶化した粉体(1)、その後同心円状に透明の液が広がった部分は水であり、粉体(1)は水に不溶であったことが分かった。
【0051】
(実施例2)
2Lビーカーに塩化アルミニウム(III)六水和物(関東化学株式会社製)46.4gをイオン交換水1000mLに溶解した。続いて、48%水酸化ナトリウム水溶液(関東化学株式会社製)より希釈調製した4.8%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを4.0とし、水酸化アルミニウムのスラリーとした。この溶液に、赤キャベツ色素粉末(富士フィルム和光純薬株式会社製)4.50gを加え、室温で1時間後、4.8%水酸化ナトリウム水溶液を加え、pHを7.0とし、30分攪拌した。濾過後の固体を真空乾燥機(740mmHg)で30℃、14時間乾燥し、粉体(2)18.0gを得た。粉体(2)の収量から、仕込んだ赤キャベツ色素分を差し引いて求めた、粉体(2)中の水酸化アルミニウム:赤キャベツ色素の組成比率は、質量比で、水酸化アルミニウム:赤キャベツ色素=75:25だった。得られた粉体(2)は赤キャベツ色素由来の青紫色を呈した。10mLバイヤルに粉体(2)10mgと水1.0gを添加後、5分間攪拌し、分散液(2)を作製した。分散液(2)をろ紙上に1滴滴下したところ、滴下部分は円状に青紫に呈色し、その後同心円状に無色透明の液が広がっていく様子が観察された。初めに円状に青紫に呈色した部分は水に不溶化した粉体(2)、その後同心円状に透明の液が広がった部分は水であり、粉体(2)は水に不溶であったことが分かった。
【0052】
<比較例1>
10mLバイアルにベニバナ黄色素粉末(サフラワーY1500、ベニバナ色素85%、デキストリン15%、ダイワ化成株式会社製)10mgと水1.0g添加後、5分間攪拌し、分散液(3)を作製した。分散液(3)をろ紙上に1滴滴下したところ、滴下部分を中心に同心円状に黄色の液が均一に広がっていく様子が観察された。これは分散液(3)において、ベニバナ黄色素が水に溶解していることを示している。
【0053】
<比較例2>
10mLバイアルにベニバナ黄色素粉末(サフラワーY1500、ベニバナ色素85%、デキストリン15%、ダイワ化成株式会社製)2.7mgと、実施例1と同様の方法で色素を加えずに作製した水酸化アルミニウム7.7mg、水1.0g添加後、5分間攪拌し、分散液(4)を作製した。分散液(4)をろ紙上に1滴滴下したところ、滴下部分を中心に同心円状に黄色の液が均一に広がっていく様子が観察された。これは分散液(4)において、ベニバナ黄色素が水に溶解していることを示している。
【0054】
<比較例3>
10mLバイアルに赤キャベツ色素粉末(富士フィルム和光純薬株式会社製)10mgと水1.0g添加後、5分間攪拌し、分散液(5)を作製した。分散液(5) をろ紙上に1滴滴下したところ、滴下部分を中心に同心円状に黄色の液が均一に広がっていく様子が観察された。これは分散液(5)において、赤キャベツ色素が水に溶解していることを示している。
【0055】
<比較例4>
10mLバイアルに赤キャベツ色素粉末(富士フィルム和光純薬株式会社製)2.5mgと、実施例1と同様の方法で色素を加えずに作製した水酸化アルミニウム7.5mg、水1.0g添加後、5分間攪拌し、分散液(6)を作製した。分散液(6) をろ紙上に1滴滴下したところ、滴下部分を中心に同心円状に赤紫の液が均一に広がっていく様子が観察された。これは分散液(6)において、赤キャベツ色素が水に溶解していることを示している。