(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】光変調デバイス
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20240910BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240910BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240910BHJP
G02F 1/13363 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G02F1/1337
G02F1/13 505
G02F1/1335 510
G02F1/13363
(21)【出願番号】P 2022575243
(86)(22)【出願日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 KR2021009926
(87)【国際公開番号】W WO2022025684
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-12-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0095864
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギム、ミン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】オー、ドン ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ジュン スン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジン ホン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン ウン
【審査官】植田 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2016-0100575(KR,A)
【文献】国際公開第2012/020628(WO,A1)
【文献】特表2018-532869(JP,A)
【文献】特表2020-518017(JP,A)
【文献】特表2020-518013(JP,A)
【文献】特開2017-181636(JP,A)
【文献】特表2017-513051(JP,A)
【文献】特表2018-507443(JP,A)
【文献】特表2015-529349(JP,A)
【文献】特開2011-190303(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0036948(KR,A)
【文献】特開2015-168686(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104961894(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
G02F 1/13
G02F 1/1333
G02F 1/1335-1/13363
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ第1表面と第2表面を有し、相互の第1表面が対向するように対向配置されている第1基板および第2基板と、
前記第1基板および前記第2基板の間に存在する液晶層と、を含み、
前記第1基板の前記第1表面上には、下記化学式1の置換基を3個以上有する化合物を含むシリコーン粘着剤層または接着剤層が存在し、
[化学式1]
【化1】
化学式1で、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基であり、かつ、R
1~R
3のうち少なくとも二つは、アルキル基であり、
前記シリコーン粘着剤層または接着剤層は前記液晶層に接して存在する、光変調デバイス。
【請求項2】
下記式1を満たし、
[式1]
T
2
≦3×T
1
式1で、T
1
は、前記液晶層を垂直配向させ、直交偏光子の間に位置させた後に測定した初期透過率であり、T
2
は、前記T
1
の透過率を示す前記液晶層を垂直配向させた状態で100℃で5分維持した後に、前記直交偏光子の間に位置させた後に測定した透過率である、請求項1に記載の光変調デバイス。
【請求項3】
透過率T
2
が2%以下である、請求項1又は2に記載の光変調デバイス。
【請求項4】
前記液晶層は、垂直配向状態およびツイスト配向状態をスイッチングできるように形成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項5】
化学式1で、R
1~R
3のうちいずれか一つは、水素原子であり、残りの二つは、アルキル基である、請求項
1から4のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項6】
化学式1で、R
1~R
3のうちいずれか一つは、水素原子であり、残りの二つは、炭素数1~20の直鎖状アルキル基である、請求項
1から5のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項7】
化学式1の置換基を3個以上有する化合物は、前記化学式1の置換基を3個~10個含む、請求項
1から6のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項8】
化学式1の置換基を3個以上有する化合物は、下記化学式2で表され、
[化学式2]
【化2】
化学式2で、R
4~R
7は、それぞれ独立して、水素、アルキル基または下記化学式1の置換基であり、かつ、R
4~R
7のうち3個以上は、下記化学式1の置換基であり、
[化学式1]
【化3】
化学式1で、R
1~R
3は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基であり、かつ、R
1~R
3のうち少なくとも二つは、アルキル基である、請求項
1から7のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項9】
前記シリコーン粘着剤層または前記接着剤層は、化学式1の置換基を3個以上有する化合物を1~50重量%の比率で含む、請求項
1から8のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項10】
下記数式1によるK値が2μm以上であり、
[数式1]
K=A×B×D
数式1で、Aは、下記数式2によって定められる値であり、Bは、化学式1の置換基を3個以上有する化合物が含む前記化学式1の置換基の数であり、Dは、前記シリコーン粘着剤層または前記接着剤層の厚さ(単位:μm)であり、
[数式2]
A=S/(S+O)
数式2で、Sは、前記シリコーン粘着剤層または前記接着剤層に含まれた化学式1の置換基を3個以上有する化合物の重さであり、Oは、前記化学式1の置換基を3個以上有する化合物を除いた前記シリコーン粘着剤層または前記接着剤層の重さである、請求項
1~9のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項11】
数式1のAが0.01~0.5の範囲内にある、請求項10に記載の光変調デバイス。
【請求項12】
数式1のDが0.5~50μmの範囲内にある、請求項10または11に記載の光変調デバイス。
【請求項13】
前記第1基板には液晶配向膜が形成されていない、請求項1から12のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項14】
前記第2基板の前記第1表面には液晶配向膜が形成されている、請求項1から13のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項15】
前記第1基板または前記第2基板は、波長550nmの光に対する面内位相差が500nm以上である、請求項1から14のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項16】
前記第1基板または前記第2基板の前記第2表面上に配置された偏光層をさらに含む、請求項1から15のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項17】
前記第1基板または前記第2基板と液晶層の間に存在し、下記数式3を満たす光学異方性フィルムをさらに含み、
[数式3]
nz<ny
数式3で、nyは、前記光学異方性フィルムの進相軸方向の波長550nmに対する屈折率であり、nzは、前記光学異方性フィルムの厚さ方向の波長550nmに対する屈折率である、請求項1から16のいずれか一項に記載の光変調デバイス。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか一項に記載の光変調デバイスを含むウィンドウ。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか一項に記載の光変調デバイスを含むサンルーフ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月31日付で提出された韓国特許出願第10-2020-0095864号に基づいて優先権を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は、光変調デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
二つの基板の間に液晶化合物などを含む光変調層を位置させた光変調デバイスは、多様な用途に使用されている。
【0004】
光変調デバイスが目的とする性能を示すためには、前記基板の間で前記液晶化合物の配向状態を制御することが重要である。したがって、光変調層が液晶層である場合には、通常、液晶化合物の配向を調節するために、液晶層の両側共に液晶配向膜を形成する。
【0005】
特許文献1には、液晶層の一側に液晶配向膜を形成し、他側に液晶配向膜の代わりに接着層を形成した構造の光変調デバイスを開示する。
【0006】
特許文献1に開示された接着層は、液晶配向力を有するので、液晶層の一方に液晶配向膜を適用することなく、目的とする液晶化合物の配向が可能な点を記載する。
【0007】
特許文献1に開示された光変調デバイスは、接着剤を一方の基板に適用したので、対向配置された二つの基板の接着力を良好に維持できるという長所を有する。
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された接着層だけでは、液晶化合物の配向を十分に安定的に維持することが容易でなく、特に高温条件で液晶化合物の配向が壊れて、光学的欠陥が発生する問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本出願は、光変調デバイスを提供する。本出願は、粘着剤層または接着剤層を適用して対向配置された基板間の接着力を確保すると同時に、液晶化合物の配向を安定的に維持し、特に高温でも目的とする液晶化合物の配向状態を具現できる光変調デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本明細書において角度を定義する垂直、平行、直交または水平の用語と角度の数値は、目的効果を損傷させない範囲での実質的な垂直、平行、直交または水平と前記数値を意味する。前記垂直、平行、直交または水平と数値の範囲は、製造誤差(error)または偏差(variation)などの誤差を含むものである。例えば、前記それぞれの場合は、約±10度以内の誤差、約±9度以内の誤差、約±8度以内の誤差、約±7度以内の誤差、約±6度以内の誤差、約±5度以内の誤差、約±4度以内の誤差、約±3度以内の誤差、約±2度以内の誤差、約±1度以内の誤差、約±0.8度以内の誤差、約±0.6度以内の誤差または約±0.4度以内の誤差を含んでもよい。
【0012】
本明細書において言及する物性のうち測定温度が当該物性に影響を及ぼす場合に、特に別に規定しない限り、前記物性は、常温で測定した物性である。用語「常温」は、特に加温または減温されない状態での温度であり、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、例えば、約15℃以上、18℃以上、20℃以上または約23℃以上であり、かつ、約27℃以下の温度を意味し得る。また、特に別に規定しない限り、本明細書において言及する温度の単位は、℃である。
【0013】
本明細書において言及する位相差、屈折率および屈折率異方性は、特に別に規定しない限り、波長約550nmの光に対する位相差、屈折率および屈折率異方性を意味する。
【0014】
特に別に規定しない限り、本明細書において言及するいずれか二つの方向が成す角度は、前記二つの方向が成す鋭角または鈍角のうち鋭角であるか、または時計回りにおよび反時計回りに測定された角度のうち小さい角度でありうる。したがって、特に別に規定しない限り、本明細書において言及する角度は、正数である。ただし、場合によって、時計回りにまたは反時計回りに測定された角度間の測定方向を表示するために、前記時計回りに測定された角度および反時計回りに測定された角度のうちいずれか一つの角度を正数で表記し、他の一つの角度を負数で表記することもできる。
【0015】
本出願は、光変調デバイスに関する。用語「光変調デバイス」は、少なくとも二つ以上の異なる光の状態の間をスイッチングできるデバイスを意味し得る。前記で異なる光の状態は、少なくとも透過率、反射率、色および/またはヘイズが異なる状態を意味し得る。
【0016】
光変調デバイスが具現できる状態の例としては、透過、遮断、高反射、低反射および/または特定色を示す色モード状態などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0017】
一例として、前記光変調デバイスは、少なくとも前記透過および遮断モード状態の間をスイッチングできるデバイスでありうる。
【0018】
前記透過モード状態での光変調デバイスの透過率が少なくとも10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上または80%以上程度でありうる。前記透過モードでの透過率は、他の例として、100%以下、95%以下、90%以下または85%以下程度であってもよい。しかしながら、透過モードでの透過率は、高いほど有利であるから、その上限が特に限定されるものではない。
【0019】
前記遮断モード状態で光変調デバイスの透過率は、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下でありうる。前記遮断モードでの透過率は、他の例として、0%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上または25%以上程度であってもよい。しかしながら、遮断モードでは、透過率が低いほど有利であるから、前記遮断モード状態の透過率の下限は、特に限定されない。
【0020】
前記透過率は、例えば、直進光透過率でありうる。直進光透過率は、前記デバイスに入射した光に対する前記入射方向と同一方向に透過した光の比率の百分率である。例えば、前記デバイスがフィルムまたはシート形態であれば、前記フィルムまたはシート表面の法線方向に並んでいる方向に入射した光のうち、前記法線方向に並んでいる方向に前記デバイスを透過した光の百分率を前記透過率と定義できる。
【0021】
前記透過率は、それぞれ可視光領域、例えば、約400~700nmまたは約380~780nmの範囲内のいずれか一つの波長に対する透過率であるか、前記可視光領域全体に対する透過率であるか、前記可視光領域全体に対する透過率のうち最大または最小透過率であるか、または、前記可視光領域内の透過率の平均値でありうる。
【0022】
本出願の光変調デバイスは、一例として、前記透過モードおよび遮断モード状態で選択されたいずれか一つの状態および他の一つの状態の間をスイッチングできるように設計可能である。必要に応じて、前記状態の他に、他の第3の状態またはそれ以上の状態も具現されてもよい。
【0023】
前記光変調デバイスのスイッチングは、外部シグナルの印加、例えば、電圧などのような電気的シグナルの印加の有無によって調節できる。例えば、前記外部シグナルの印加がない状態で光変調デバイスは、前記に記述した状態のうちいずれか一つの状態を維持し、電圧が印加されると、他の状態にスイッチングされることができる。印加される電圧の強度、周波数および/または形態を変更することによって、また、モードの状態を変更したり、あるいは前記第3の他のモード状態を具現することもできる。
【0024】
本出願の光変調デバイスは、対向配置された二つの基板と前記基板の間に位置する光変調層を有する光変調フィルム層を含んでもよい。
図2は、前記構造の一例を示す図である。図示のように、光変調デバイスは、対向配置された第1基板100と第2基板200を含む。前記第1および第2基板は、それぞれ、第1表面と第2表面を有することができる。前記で第1表面は、基板の一つの主表面であり、第2表面は、それと反対側の主表面を意味し得る。
【0025】
第1基板100の一つの表面(例えば、第1表面)上には、機能性層が形成され、他の第2基板200の一つの表面(例えば、第1表面)には、液晶配向膜2001が形成されていてもよい。前記で機能性層は、後述する接着剤層または粘着剤層でありうる。前記対向配置された第1基板100と第2基板200の間に光変調層600が位置する。光変調層の種類は、特に限定されず、通常、液晶層が光変調層として使用できる。光変調層が液晶層である場合に、通常、第1および第2基板100、200の両表面ともに液晶配向膜が形成されるが、第1基板100上に液晶配向膜の代わりに粘着剤層または接着剤層を形成し、第2基板200にのみ液晶配向膜を形成することによって、特定用途(例えば、smart windowやeye wear)に非常に有用な液晶化合物の配向状態が得られることもできる。このような場合には、前記第1基板には、液晶配向膜が形成されない。また、図示してはいないが、光変調デバイスの第1および第2基板のうちいずれか一つの基板には、第1および第2基板の間隔(cell gap)を維持するスペーサーが存在するが、第1基板100上の機能性層が粘着剤層または接着剤層1001である場合に、前記スペーサーに前記粘着剤層または接着剤層1001が付着されて、第1および第2基板間の合着力を大きく改善できる。
【0026】
前記基板としては、特に限定されずに、公知の基板素材が使用できる。例えば、基板としては、ガラス基板、結晶性または非結晶性シリコーン基板または石英基板などの無機基板やプラスチック基板などが使用できる。プラスチック基板としては、TAC(triacetyl cellulose)基板;ノルボルネン誘導体基板などのCOP(cyclo olefin copolymer)基板;PMMA(poly(methyl methacrylate)基板;PC(polycarbonate)基板;PE(polyethylene)基板;PP(polypropylene)基板;PVA(polyvinyl alcohol)基板;DAC(diacetyl cellulose)基板;Pac(Polyacrylate)基板;PES(poly ether sulfone)基板;PEEK(polyetheretherketon)基板;PPS(polyphenylsulfone)、PEI(polyetherimide)基板;PEN(polyethylenemaphthatlate)基板;PET(polyethyleneterephtalate)基板などのポリエステル基板;PI(polyimide)基板;PSF(polysulfone)基板;PAR(polyarylate)基板または非晶質フッ素樹脂などを含む基板が使用できるが、これらに限定されるものではない。このような基板の厚さは、特に限定されず、好適な範囲で選択できる。
【0027】
一例において、前記基板としては、光学的非等方性のフィルムを適用することもできる。このような光学的非等方性を有するフィルムは、通常、機械的物性も非等方性であり、このような非等方性を活用してさらに優れた耐久性などを有する光変調デバイスを提供できる。
【0028】
一例として、前記非等方性フィルムは、面内位相差が、約500nm以上でありうる。前記面内位相差は、波長550nmの光に対する値であり、下記数式Aに規定される物理量である。前記位相差フィルムの面内位相差は、他の例として、600nm以上、700nm以上、800nm以上、900nm以上、1000nm以上、1100nm以上、1200nm以上、1300nm以上、1400nm以上、1500nm以上、2000nm以上、2500nm以上、3000nm以上、3500nm以上、4000nm以上、4500nm以上、5000nm以上、5500nm以上、6000nm以上、6500nm以上、7000nm以上、7500nm以上、8000nm以上、8500nm以上、9000nm以上または9500nm以上であるか、100000nm以下、90000nm以下、80000nm以下、70000nm以下、60000nm以下、50000nm以下、40000nm以下、30000nm以下、20000nm以下、15000nm以下、14000nm以下、13000nm以下、12000nm以下、10000nm以下、9500nm以下、9000nm以下、8500nm以下、8000nm以下、7500nm以下、7000nm以下、6500nm以下、6000nm以下、5500nm以下、5000nm以下または4500nm以下程度であってもよい。
【0029】
基板に適用できる前記フィルムの具体的な種類は、前記言及した範囲の面内位相差を示す限り、特に限定されない。例えば、延伸により光学的異方性を付与した異方性高分子フィルムなどが適用可能である。高分子フィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルムまたはポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、ポリノルボルネンフィルムなどの環状オレフィンポリマー(COP:Cycloolefin polymer)フィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリアクリレートフィルム、PVA(poly(vinyl alcohol))フィルムまたはTAC(Triacetyl cellulose)フィルムなどのセルロースエステル系ポリマーフィルム、ポリエステルフィルムまたはポリカーボネートフィルムや前記ポリマーを形成する単量体のうち2種以上の単量体の共重合体フィルムなどが挙げられる。
【0030】
一例において、前記フィルムとしては、PET(poly(ethylene terephthalate))フィルムなどのようなポリエステルフィルムが適用可能である。すなわち、前述した範囲の面内位相差を示すフィルムは、当業界において公知となっており、高分子フィルムの場合、前記のようなフィルムは、光学的に大きい非等方性はもちろん、製造過程での延伸などにより機械的物性も非対称性を示す。当業界に公知となったこのような位相差フィルムの代表的な例としては、延伸PET(poly(ethylene terephthalate))フィルムなどのような延伸ポリエステルフィルムである。
【0031】
したがって、一例において、前記フィルムとしては、PETフィルムのようなポリエステルフィルムを適用できるが、本出願において基板に適用可能なフィルムの種類がこれらに限定されるものではない。
【0032】
また、前記面内位相差は、下記数式Aによる物理量である。
【0033】
[数式A]
Rin=d×(nx-ny)
【0034】
数式Aで、Rinは、面内位相差であり、nxは、フィルムの遅相軸方向の屈折率であり、nyは、フィルムの進相軸方向の屈折率であり、dは、フィルムの厚さである。前記で遅相軸と進相軸の意味は、当業界において公知となっている。
【0035】
前記非等方性フィルムが第1および第2基板に同時に適用される場合に、それら間の遅相軸が互いに平行または垂直となるように前記基板が配置されていてもよい。
【0036】
前記基板の間に存在する光変調層は、外部シグナルの印加の有無によって、単独であるいは他の構成要素と連携して、光の透過度、反射度、ヘイズおよび/または色などを変更できる機能性層である。このような光変調層は、本明細書において能動光変調層と呼ばれる。
【0037】
本明細書において外部シグナルとは、光変調層(例えば、液晶層)内に含まれる光変調物質(例えば、液晶化合物)の挙動に影響を与えることができる外部の要因、例えば電圧などの電気的シグナルを意味し得る。したがって、外部シグナルがない状態とは、外部で電気的シグナルの印加がない状態を意味し得る。前記外部信号がない状態は、初期状態とも呼ばれる。
【0038】
本出願において光変調層の種類は、前記に記述した機能を有するものであれば、特に限定されず、公知の光変調層が適用可能である。前記光変調層は、例えば、液晶層、電気変色物質層、光変色物質層、電気泳動物質層または分散粒子配向層でありうる。
一例において、光変調層としては、前記液晶層が適用可能である。液晶層は、液晶化合物を含む層である。本明細書において用語「液晶層」の範囲には、液晶化合物を含んでいる層が全部含まれ、例えば、液晶化合物(液晶ホスト)と二色性染料を含むいわゆるゲストホスト層やキラルドーパントなどその他添加剤を液晶化合物と共に含む層も、本明細書において規定する液晶層の一種である。前記液晶層は、外部シグナルの印加の有無によって配向方向が変わるように形成された液晶化合物を含んでもよい。液晶化合物としては、外部シグナルの印加によってその配向方向が変更されうるものであれば、すべての種類の液晶化合物が使用できる。例えば、液晶化合物としては、スメクチック(smectic)液晶化合物、ネマチック(nematic)液晶化合物またはコレステリック(cholesteric)液晶化合物などが使用できる。また、外部シグナルの印加によってその配向方向が変更されうるように、液晶化合物は、例えば重合性基または架橋性基を有しない化合物であるか、有するとしても、重合および架橋されない状態で存在する化合物でありうる。
【0039】
液晶層は、誘電率異方性が正数または負数の液晶化合物を含んでもよい。液晶の誘電率異方性の絶対値は、本出願の目的を考慮して適宜選択できる。用語「誘電率異方性△ε」は、液晶の水平誘電率ε//と垂直誘電率ε⊥の差ε//-ε⊥を意味し得る。本明細書において用語「水平誘電率ε//」は、液晶分子のディレクターと印加電圧による電場の方向が実質的に水平となるように電圧を印加した状態で前記電場の方向に沿って測定した誘電率値を意味し、垂直誘電率ε⊥は、液晶分子のディレクターと印加電圧による電場の方向が実質的に垂直となるように電圧を印加した状態で前記電場の方向に沿って測定した誘電率値を意味し得る。
【0040】
例えば、前記液晶層の屈折率異方性△nは、0.01~0.5の範囲内にありえる。前記屈折率異方性は、他の例として、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上または0.085以上であるか、0.45以下、0.4以下、0.35以下、0.3以下、0.25以下、0.2以下、0.15以下または0.1以下程度でありうる。液晶層の屈折率異方性は、目的に応じて選択されるものであり、前記に限定されるものではない。
【0041】
液晶層の駆動モードは、例えば、DS(Dynamic Scattering)モード、ECB(Electrically Controllable Birefringence)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe-Field Wwitching)モード、OCB(Optially Compensated Bend)モード、VA(Vertical Alignment)モード、MVA(Multi-domain Vertical Alignment)モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、HAN(Hybrid Aligned Nematic)モード、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モードまたはR-TN(Reversed Twisted Nematic)モードなどが挙げられる。
【0042】
本出願の液晶層は、前記モードのうち少なくともツイスト(twisted)配向を具現できるように設計(形成)されていてもよい。前記ツイスト配向は、液晶層内の液晶化合物が仮想のらせん軸を基準としてねじれた形態で配向された状態を意味し、このようなツイスト配向は、液晶層の液晶化合物が水平配向された状態、垂直配向された状態、傾斜配向された状態またはスプレー配向された状態で具現されてもよい。また、前記ツイスト配向は、液晶層の前記初期状態で具現されたり、あるいは外部シグナルが印加された状態で具現されることもできる。
【0043】
一例として、前記液晶層は、少なくとも垂直配向状態および前記ツイスト配向状態の間をスイッチングできるように設計(形成)されていてもよい。例えば、前記二つの状態のうちいずれか一つの状態を初期状態で具現したり、外部シグナル(例えば、電圧などの電気的シグナル)が印加されると、他の状態にスイッチングされることができる。一例において、前記初期状態では、前記垂直配向状態が具現されてもよい。
【0044】
本出願の光変調デバイスは、前記のような液晶層の配向状態(特に、前記垂直配向状態)が高温でも安定的に維持できるように設計可能である。
【0045】
例えば、前記それぞれ第1表面と第2表面を有し、相互の第1表面が対向するように対向配置されている第1および第2基板と、前記第1および第2基板の間に存在する液晶層と、を含む光変調デバイスは、下記式1を満たすことができる。
【0046】
[式1]
T2≦3×T1
【0047】
式1で、T1は、前記液晶層を垂直配向させ、直交偏光子の間に位置させた後に測定した初期透過率であり、T2は、前記T1の透過率を示す液晶層を垂直配向させた状態で100℃で5分維持した後に、前記直交偏光子の間に位置させた後に測定した透過率である。
【0048】
前記でT1とT2の単位は、%である。また、前記で初期透過率T1は、常温で測定し、透過率T2は、前記100℃で5分間維持した後に、温度をそのまま100℃に維持した状態で測定する。
【0049】
また、前記透過率T1およびT2の測定波長は、可視光波長(380nm~770nm)である。
【0050】
図1は、前記T
1およびT
2を確認する過程を示す図である。
【0051】
図1のように、2枚の直交偏光子101、102の間に前記液晶層または光変調デバイス200を位置させた状態で前記透過率T
1およびT
2を測定できる。この際、透過率は、
図1に示されたように、2枚の直交偏光子101、102のうちいずれか一つの偏光子101側に光が入射(
図1の矢印方向)するようにした後に、他の偏光子102側で測定した透過率である。
【0052】
直交偏光子は、2枚の偏光子の光吸収軸が互いに垂直な状態を意味する。通常、2枚の偏光子のうち一つの偏光子の光吸収軸を固定した状態で他の一つの偏光子の光吸収軸を前記光吸収軸に対して回転させることによって透過率を測定するときに、最も低い透過率が現れる地点が2枚の偏光子の光吸収軸が互いに垂直な地点と見なす。
【0053】
液晶層が垂直配向状態の場合に、
図1のように、2枚の直交偏光子の間に位置し、透過率を測定すると、透過率は低く測定される。したがって、前記T
1は、非常に低い数値で示される。液晶層が垂直配向された状態で高温で一定時間維持(100℃で5分維持)される間、液晶層の垂直配向性が損傷したり、低下する場合に、前記で測定されるT
2は、T
1と比べて高く示される。前記T
1およびT
2を測定する過程で光変調デバイスの第1および/または第2基板が非等方性基板の場合に、当該基板の遅相軸を2枚の偏光子のうちいずれか一つの偏光子の光吸収軸と平行に配置する。
【0054】
しかしながら、本出願の光変調デバイスでは、液晶層の配向性(特に垂直配向性)が高温でも安定的に維持できるので、前記T2は、T1の3倍以下(3×T1以下)になり得る。前記T2は、他の例として、T1の2.5倍以下(2.5×T1以下)、T1の2倍以下(2×T1以下)、T1の1.5倍以下(1.5×T1以下)またはT1の1倍以下(T1以下)程度であってもよい。前記T2の下限は、特に限定されず、一例として、T1の0.5倍以上(0.5×T1以上)、T1の0.7倍以上(0.7×T1以上)またはT1の0.9倍以上(0.9×T1以上)であってもよい。一例において、T1 とT2は、実質的に同じでもよい。
【0055】
前記T2の具体的な数値は、特に限定されないが、一例として、2%以下程度でありうる。T2は、他の例として、1.8%以下、1.6%以下、1.4%以下、1.2%以下、1%以下、0.8%以下、0.6%以下、0.4%以下または0.2%以下程度でありうる。T2の下限は限定されず、例えば、T2は、0%以上でありうる。
【0056】
前記T1とT2の測定方法は、実施例において具体的に記述する。
【0057】
液晶層である光変調層は、前記液晶化合物を基本的に含み、必要な場合にさらなる成分も含んでもよい。
【0058】
例えば、光変調層である液晶層は、液晶化合物と共にいわゆるキラルドーパント(chiral dopant)を含むこともできる。このようなキラルドーパントは、液晶化合物にらせん構造の配向、すなわち前記ツイスト配向を誘導できる。
【0059】
キラルドーパント(Chiral dopant)としては、液晶性、例えば、ネマチック規則性を損傷させないで目的とする回転(twisting)を誘導できるものであれば、特に限定されずに使用できる。液晶分子に回転を誘導するためのキラルドーパントは、分子構造中にキラルリティ(chirality)を少なくとも含む必要がある。キラルドーパントは、例えば、一つまたは二つ以上の非対称炭素(asymmetric carbon)を有する化合物、キラルアミンまたはキラルスルホキシドなどのヘテロ原子上に非対称点(asymmetric point)を有する化合物またはクムレン(cumulene)またはビナフトール(binaphthol)などの軸不斉を有する光学活性部位(axially asymmetric,optically active site)を有する化合物が挙げられる。キラルドーパントは、例えば、分子量が1,500以下の低分子化合物でありうる。キラルドーパントとしては、市販のキラルネマチック液晶、例えば、Merck社製の市販のキラルドーパント液晶S811またはBASF社のLC756などが適用可能である。
【0060】
キラルドーパントの比率も特に限定されないが、光変調層の厚さd(cell gap)と前記キラルドーパントの添加によって発生する液晶化合物のらせん構造のピッチ(前記ツイスト配向のピッチ)pの比率d/pが後述するK値を満足させることができるように添加できる。
【0061】
キラルドーパントが適用されたいわゆるツイスト配向の光変調層(液晶層)のピッチpは、Wedge cellを利用した計測方法で測定でき、D.PodolskyyなどのSimple method for accurate measurements of the cholesteric pitch using a stripe-wedge Grandjean-Cano cell(Liquid Crystals,Vol.35,No.7,July 8、2008,789-791)に記載された方式で測定できる。また、キラルドーパントの含有量(重量%)は、100/(HTP(Helixcal Twisting power)×ピッチ(nm)の数式によって計算され、目的とするピッチpを考慮して適正比率で選択できる。
【0062】
液晶層は、前記ツイスト配向のピッチpと光変調層(液晶層)の厚さd(cell)の比率d/pは、1未満になるように設計可能である。前記比率d/pは、他の例として、0.95以下、0.9以下、0.85以下、0.8以下、0.75以下、0.7以下、0.65以下、0.6以下、0.55以下、0.5以下、0.45以下、0.4以下、0.35以下、0.3以下、0.25以下または0.2以下であるか、0.1以上、0.15以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上、0.4以上、0.45以上または0.5以上程度であってもよい。
【0063】
液晶層は、前記ツイスト配向のピッチpが、1~100μmの範囲内となるように設計可能である。前記比率は、他の例として、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上、6μm以上、7μm以上、8μm以上、9μm以上、10μm以上、11μm以上、12μm以上、13μm以上、14μm以上、15μm以上、16μm以上、17μm以上、18μm以上、19μm以上または19.5μm以上であるか、95μm以下、90μm以下、85μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下または25μm以下程度であってもよい。
【0064】
前記液晶層の厚さd(cell gap)は、0.5μm~50μmの範囲内にありえる。前記厚さd(cell gap)は、他の例として、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上、3μm以上または3.5μm以上、4μm以上、4.5μm以上、5μm以上、5.5μm以上、6μm以上、6.5μm以上、7μm以上、7.5μm以上、8μm以上、8.5μm以上、9μm以上、9.5μm以上または10μm以上であるか、48μm以下、46μm以下、44μm以下、42μm以下、38μm以下、36μm以下、34μm以下、32μm以下、30μm以下、28μm以下、26μm以下、24μm以下、22μm以下、20μm以下、18μm以下、16μm以下、14μm以下、12μm以下または10μm以下程度であってもよい。
【0065】
前記のような設計を通じて本出願の目的がより効率的に達成される光変調デバイスを提供できる。
【0066】
前記光変調層(液晶層)には、その他必要なさらなる成分(例えば、二色性色素など)が含まれていてもよい。
【0067】
光変調デバイスにおいて第1基板の第1表面上に接着剤層または粘着剤層を形成する場合に、当該粘着剤層または接着剤層の種類は、特に限定されないが、下記化学式1の化合物(以下、ケイ素化合物と呼ばれる)と配合されて、目的とする効果を発揮することが容易であるという観点から、シリコーン系粘着剤層またはシリコーン系接着剤層が適用可能である。例えば、当業界においていわゆるOCA(Optically Clear Adhesive)またはOCR(Opticall Clear Resin)と公知となった多様な類型のシリコーン系粘着剤またはシリコーン系接着剤が存在し、このような粘着剤または接着剤は、後述するケイ素化合物を含む状態で液晶配向膜と組み合わせて液晶化合物の好適な配向を誘導できる。
【0068】
すなわち、前記ケイ素化合物を含むシリコーン系粘着剤または接着剤が有する特有の表面特性は、液晶配向膜(特に、垂直配向膜)と組み合わせて目的に適した液晶化合物の配向状態を誘導できる。
【0069】
前記シリコーン系粘着剤または接着剤は、硬化性シリコーン接着剤または粘着剤組成物(以下、単に硬化性シリコーン組成物と呼ぶ)の硬化物が使用できる。硬化性シリコーン組成物の種類は、特に限定されず、例えば加熱硬化性シリコーン組成物または紫外線硬化性シリコーン組成物が使用できる。
【0070】
一例において、前記硬化性シリコーン組成物は、付加硬化性シリコーン組成物として、(1)分子中に二つ以上のアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンおよび(2)分子中に二つ以上のケイ素結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサンを含んでもよい。前記のようなシリコーン化合物は、例えば、白金触媒などの触媒の存在下で、付加反応により硬化物を形成できる。
【0071】
前記(1)オルガノポリシロキサンは、シリコーン硬化物を構成する主成分として、1分子中に少なくとも二つのアルケニル基を含む。この際、アルケニル基の具体的な例には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などが含まれ、このうち、ビニル基が通常適用されるが、これらに限定されるものではない。前記(1)オルガノポリシロキサンにおいて、前述したアルケニル基の結合位置は、特に限定されない。例えば、前記アルケニル基は、分子鎖の末端および/または分子鎖の側鎖に結合されていてもよい。また、前記(1)オルガノポリシロキサンにおいて、前述したアルケニルの他に含まれ得る置換基の種類としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、これらのうち、メチル基またはフェニル基が通常適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
前記(1)オルガノポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状または一部が分岐状を成す直鎖状などのように、いかなる形状でも有することができる。通常、前記のような分子構造のうち、特に直鎖状の分子構造を有するものが適用されるが、これに限定されるものではない。
【0073】
前記(1)オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖メチルビニルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルビニルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、R1
2SiO2/2で表されるシロキサン単位とR1
2R2SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1
2R2SiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1R2SiO2/2で表されるシロキサン単位とR1SiO3/2で表されるシロキサン単位またはR2SiO3/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体および前記のうち二つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記で、R1は、アルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などでありうる。また、前記でR2は、アルケニル基であり、具体的には、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基またはヘプテニル基などでありうる。
【0074】
前記付加硬化性シリコーン組成物において、(2)オルガノポリシロキサンは、前記(1)オルガノポリシロキサンを架橋させる役割を行うことができる。前記(2)オルガノポリシロキサンにおいて、水素原子の結合位置は、特に限定されず、例えば、分子鎖の末端および/または側鎖に結合されていてもよい。また、前記(2)オルガノポリシロキサンにおいて、前記ケイ素結合水素原子の他に含まれ得る置換基の種類は、特に限定されず、例えば、(1)オルガノポリシロキサンにおいて言及したような、アルキル基、アリール基、アラルキル基またはハロゲン置換アルキル基などが挙げられ、これらのうち、通常、メチル基またはフェニル基が適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
前記(2)オルガノポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、例えば、直鎖状、分岐状、環状、網状または一部が分岐状を成す直鎖状などのように、いかなる形状でも有することができる。前記のような分子構造のうち、通常、直鎖状の分子構造を有することが適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0076】
前記(2)オルガノポリシロキサンのより具体的な例としては、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェン共重合体、分子鎖両末端トリメチルシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルハイドロジェンシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖ジメチルシロキサン-メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキサン基封鎖メチルフェニルポリシロキサン、R1
3SiO1/2で表されるシロキサン単位とR1
2HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1
2HSiO1/2で表されるシロキサン単位とSiO4/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体、R1HSiO2/2で表されるシロキサン単位とR1SiO3/2で表されるシロキサン単位またはHSiO3/2で表されるシロキサン単位を含むオルガノポリシロキサン共重合体および前記のうち二つ以上の混合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。前記で、R1は、アルケニル基以外の炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはヘプチル基などのアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基またはナフチル基などのアリール基;ベンジル基またはフェネチル基などのアラルキル基;クロロメチル基、3-クロロプロピル基または3,3,3-トリフルオロプロピル基などのハロゲン置換アルキル基などでありうる。
【0077】
前記(2)オルガノポリシロキサンの含有量は、好適な硬化が行われ得るほどに含まれると、特に限定されない。例えば、前記(2)オルガノポリシロキサンは、前述した(1)オルガノポリシロキサンに含まれる一つのアルケニル基に対して、ケイ素結合水素原子が0.5~10個となる量で含まれ得る。このような範囲で硬化を十分に進行させ、耐熱性を確保できる。
【0078】
前記付加硬化性シリコーン組成物は、硬化のための触媒として、白金または白金化合物をさらに含んでもよい。このような、白金または白金化合物の具体的な種類は、特に限定されない。触媒の比率も、好適な硬化が行われ得るレベルに調節すればよい。
【0079】
前記付加硬化性シリコーン組成物は、貯蔵安定性、取り扱い性および作業性向上の観点から、必要な好適な添加剤を適正比率でさらに含むこともできる。
【0080】
他の例として、前記シリコーン組成物は、縮合硬化性シリコーン組成物であり、例えば(a)アルコキシ基含有シロキサンポリマー;および(b)水酸基含有シロキサンポリマーを含んでもよい。
【0081】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、下記化学式Iで表される化合物でありうる。
【0082】
[化学式I]
R1
aR2
bSiOc(OR3)d
【0083】
化学式Iで、R1およびR2は、それぞれ独立して、水素原子または置換あるいは非置換の一価炭化水素基を示し、R3は、アルキル基を示し、R1、R2およびR3がそれぞれ複数個存在する場合には、互いに同じでも異なっていてもよく、aおよびbは、それぞれ独立して、0以上、1未満の数を示し、a+bは、0超過、2未満の数を示し、cは、0超過、2未満の数を示し、dは、0超過、4未満の数を示し、a+b+c×2+dは、4である。
【0084】
化学式Iの定義において、一価炭化水素基は、例えば、炭素数1~8のアルキル基、フェニル基、ベンジル基またはトリル基などであってもよく、この際、炭素数1~8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基またはオクチル基などでありうる。また、化学式1の定義において、一価炭化水素基は、例えば、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシジル基、グリシドキシ基またはウレイド基などの公知の置換基で置換されていてもよい。
【0085】
化学式Iの定義において、R3のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基またはブチル基などが挙げられる。アルキル基のうち、メチル基またはエチル基などが通常適用されるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
化学式Iのポリマーのうち、分岐状または3次架橋されたシロキサンポリマーが使用できる。また、この(a)シロキサンポリマーには、目的を損傷させない範囲内で、具体的には、脱アルコール反応を阻害しない範囲内で水酸基が残存していてもよい。
【0087】
前記(a)シロキサンポリマーは、例えば、多官能のアルコキシシランまたは多官能クロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造できる。この分野における平均的技術者は、目的とする(a)シロキサンポリマーによって好適な多官能アルコキシシランまたはクロロシランを容易に選択でき、それを使用した加水分解および縮合反応の条件も、容易に制御することができる。一方、前記(a)シロキサンポリマーの製造時には、目的によって、好適な一官能のアルコキシシランを併用使用することもできる。
【0088】
前記(a)シロキサンポリマーとしては、例えば、信越シリコーン社のX40-9220またはX40-9225、GE東レシリコーン社のXR31-B1410、XR31-B0270またはXR31-B2733などのような、市販のオルガノシロキサンポリマーが使用できる。
【0089】
前記縮合硬化性シリコーン組成物に含まれる、(b)水酸基含有シロキサンポリマーとしては、例えば、下記化学式IIで表される化合物が使用できる。
【0090】
【0091】
化学式IIで、R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子または置換あるいは非置換の一価炭化水素基を示し、R4およびR5がそれぞれ複数個存在する場合には、これらは互いに同じでも異なっていてもよく、nは、5~2,000の整数を示す。
【0092】
化学式IIの定義において、一価炭化水素基の具体的な種類としては、例えば、前記化学式Iの場合と同じ炭化水素基が挙げられる。
【0093】
前記(b)シロキサンポリマーは、例えば、ジアルコキシシランおよび/またはジクロロシランなどを加水分解および縮合させることによって製造できる。この分野における平均的技術者は、目的とする(b)シロキサンポリマーによって好適なジアルコキシシランまたはジクロロシランを容易に選択でき、それを使用した加水分解および縮合反応の条件も、容易に制御することができる。前記のような(b)シロキサンポリマーとしては、例えば、GE東レシリコーン社のXC96-723、YF-3800、YF-3804などのような、市販の二官能オルガノシロキサンポリマーが使用できる。
【0094】
前記に記述した付加硬化型あるいは縮合硬化型シリコーン組成物は、本出願において適用されるシリコーン粘着剤または接着剤を形成するための材料の一例である。すなわち、基本的に当業界においてOCAまたはOCRなどと知られたシリコーン粘着剤または接着剤が全部本出願において適用可能である。
【0095】
前記粘着剤または接着剤あるいはそれを形成する硬化性組成物の類型は、特に限定されず、目的とする用途によって適宜選択できる。例えば、固状、半固状または液状の粘着剤または接着剤または硬化性組成物が使用できる。固状または半固状の粘着剤または接着剤または硬化性組成物は、接着対象が合着される前に硬化することができる。液状の粘着剤または接着剤または硬化性組成物は、いわゆる光学透明レジン(OCR;Optical Clear Resin)と呼ばれ、接着対象が合着された後に硬化することができる。一例によれば、前記粘着剤または接着剤または硬化性組成物としては、いわゆるポリジメチルシロキサン系(Polydimethyl siloxane-based)粘着剤または接着剤または硬化性組成物またはポリメチルビニルシロキサン系(Polymethylvinyl siloxane-based)粘着剤または接着剤または硬化性組成物またはアルコキシシリコーン系(Alkoxy silicone-based)粘着剤または接着剤または硬化性組成物などが使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0096】
前記シリコーン粘着剤層または接着剤層には、特定のケイ素化合物が含まれる。前記ケイ素化合物としては、下記化学式1の置換基を3個以上有する化合物が適用可能である。
このような化合物は、シリコーン粘着剤層または接着剤層の表面特性などを制御して液晶化合物の配向を効果的に形成および維持でき、このような配向が高温条件でも安定的に維持されるようにすることができる。
【0097】
【0098】
化学式1で、R1~R3は、それぞれ独立して、水素原子またはアルキル基であり、かつ、R1~R3のうち少なくとも二つは、アルキル基でありうる。また、化学式1で、*は、当該部位が連結されることを意味する。
【0099】
化学式1で、アルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基でありうる。このようなアルキル基は、任意に一つ以上の置換基により置換されているか、あるいは非置換のアルキル基でありうる。
【0100】
一例において、前記化学式1のアルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖状または分岐鎖状アルキル基であるか、直鎖状アルキル基でありうる。
【0101】
一例として、化学式1のR1~R3のうちいずれか一つは、水素原子であり、残りの二つは、前記アルキル基でありうる。また、一例として、前記化学式1のR1~R3のうちいずれか一つは、水素原子であり、残りの二つは、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖状または分岐鎖状アルキル基であるか、直鎖状アルキル基であってもよく、このようなアルキル基は、任意に一つ以上の置換基で置換されているか、非置換アルキル基でありうる。
【0102】
前記化学式1の置換基を3個以上有する化合物は、前記化学式1の置換基を3個~10個、3個~9個、3個~8個、3個~7個、3個~6個、3個~5個または3個~4個含んでもよい。
【0103】
前記化合物としては、前記化学式1の置換基を含む多様な種類の化合物が適用可能であり、一つの例示は、下記化学式2で表される化合物である。
【0104】
【0105】
化学式2で、R4~R7は、それぞれ独立して、水素、アルキル基または前記化学式1の置換基であり、かつ、R4~R7のうち3個以上または全部は、前記化学式1の置換基である。
【0106】
化学式2で、アルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖状、分岐鎖状または環状のアルキル基でありうる。このようなアルキル基は、任意に一つ以上の置換基により置換されているか、あるいは非置換のアルキル基でありうる。
【0107】
一例において、前記化学式2のアルキル基は、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8または炭素数1~4の直鎖状または分岐鎖状アルキル基であるか、直鎖状アルキル基でありうる。
【0108】
シリコーン粘着剤層または接着剤層内で前記化学式1の置換基を3個以上有する化合物(ケイ素化合物)の比率は、特に限定されないが、前記比率は、1~50重量%の範囲内で調節できる。前記比率は、他の例として、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、10重量%以上、11重量%以上、12重量%以上、13重量%以上、14重量%以上または15重量%以上であるか、49重量%以下、48重量%以下、47重量%以下、46重量%以下、45重量%以下、44重量%以下、43重量%以下、42重量%以下、41重量%以下、30重量%以下、39重量%以下、38重量%以下、37重量%以下、36重量%以下、35重量%以下、34重量%以下、33重量%以下、32重量%以下、31重量%以下、30重量%以下、29重量%以下、28重量%以下、27重量%以下、26重量%以下、25重量%以下、24重量%以下、23重量%以下、22重量%以下、21重量%以下、20重量%以下、19重量%以下、18重量%以下、17重量%以下、16重量%以下、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下または10重量%以下程度であってもよい。前記比率の範囲で目的とする液晶化合物の配向性および高温安定性をより効果的に確保できる。
【0109】
一例として、前記化学式1の置換基を有する化合物(ケイ素化合物)は、下記数式1によるK値が2μm以上になるように選択および適用可能である。
【0110】
[数式1]
K=A×B×D
【0111】
数式1で、Aは、下記数式2によって定められる値であり、Bは、化学式1の置換基を3個以上有する化合物(ケイ素化合物)が含む前記化学式1の置換基の数であり、Dは、シリコーン粘着剤層または接着剤層の厚さである。前記でシリコーン粘着剤層または接着剤層の厚さDの単位は、μmである。
【0112】
[数式2]
A=S/(S+O)
【0113】
数式2で、Sは、シリコーン粘着剤層または接着剤層に含まれた化学式1の置換基を3個以上有する化合物(ケイ素化合物)の重さであり、Oは、前記化学式1の置換基を3個以上有する化合物を除いた前記粘着剤層または接着剤層の重さである。前記SおよびOの重さの単位は、互いに同一であれば、多様な単位が使用できるが、一般的には、gが適用される。
【0114】
前記数式1のK値は、他の例として、2.5以上または3以上であるか、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下または4.5以下程度でありうる。このような範囲内で目的とする液晶化合物の配向と高温配向安定性をより安定的に確保できる。
【0115】
前記数式1で、Aは、例えば、0.01~0.5の範囲内にありえる。前記Aは、他の例として、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.06以上、0.07以上、0.08以上、0.09以上、0.10以上、0.11以上、0.12以上、0.13以上、0.14以上または0.15以上であるか、0.49以下、0.48以下、0.47以下、0.46以下、0.45以下、0.44以下、0.43以下、0.42以下、0.41以下、0.39以下、0.38以下、0.37以下、0.36以下、0.35以下、0.34以下、0.33以下、0.32以下、0.31以下、0.30以下、0.29以下、0.28以下、0.27以下、0.26以下、0.25以下、0.24以下、0.23以下、0.22以下、0.21以下、0.20以下、0.19以下、0.18以下、0.17以下、0.16以下、0.15以下、0.14以下、0.13以下、0.12以下、0.11以下または0.10以下程度であってもよい。前記比率の範囲で目的とする液晶化合物の配向性および高温安定性をより効果的に確保できる。このような範囲内で目的とする液晶化合物の配向と高温配向安定性をより安定的に確保できる。
【0116】
前記数式1のD、すなわち前記シリコーン粘着剤層または接着剤層の厚さは、例えば、0.5μm~50μmの範囲内にありえる。前記厚さd(cell gap)は、他の例として、1μm以上、1.5μm以上、2μm以上、2.5μm以上、3μm以上または3.5μm以上、4μm以上、4.5μm以上、5μm以上、5.5μm以上、6μm以上、6.5μm以上、7μm以上、7.5μm以上、8μm以上、8.5μm以上、9μm以上、9.5μm以上または10μm以上であるか、48μm以下、46μm以下、44μm以下、42μm以下、38μm以下、36μm以下、34μm以下、32μm以下、30μm以下、28μm以下、26μm以下、24μm以下、22μm以下、20μm以下、18μm以下、16μm以下、14μm以下、12μm以下または10μm以下程度であってもよい。このような範囲内で目的とする液晶化合物の配向と高温配向安定性をより安定的に確保できる。
【0117】
第1基板の第1表面に前記のような粘着剤層または接着剤層が形成される場合に、第1基板には、液晶配向膜は形成されなくてもよい。
【0118】
光変調デバイスにおいて第2基板の第1表面上に形成されてもよい液晶配向膜の種類は、特に限定されない。前記配向膜としては、目的とする初期配向などを考慮して公知の垂直あるいは水平配向膜やその他配向膜を適用できる。配向膜の類型も、ラビング配向膜のような接触式配向膜や、光配向膜のような非接触式配向膜が適用可能である。一例において、前記配向膜としては、垂直配向膜が使用できる。例えば、垂直配向膜と前述した粘着剤層または接着剤層の組み合わせは、多様な用途に適した液晶化合物の配向状態を誘導できる。
【0119】
光変調層である液晶層において前記液晶配向膜および/または粘着剤層または接着剤層と液晶配向膜により形成される、液晶化合物の初期配向は、垂直配向、水平配向、傾斜配向またはスプレー配向でありうる。また、前記垂直配向、水平配向、傾斜配向状態またはスプレー配向状態で液晶化合物は、ツイストされて、前記ツイスト配向またはコレステリック配向状態で存在したり、そうでなくてもよい。前記初期配向は、前述した初期状態での液晶化合物の配向を意味する。
【0120】
前記水平配向、傾斜配向、垂直配向またはスプレー配向の意味は、当業界において公知となった通りである。光変調層の液晶化合物は、初期状態で前記水平配向、傾斜配向、垂直配向またはスプレー配向の状態を維持し、外部シグナルによってそれとは異なる配向状態に変更されうる。
【0121】
一例において、前記光変調層における液晶化合物の初期配向は、垂直配向または垂直配向と類似した配向状態であり、外部シグナルの印加時に前記ツイスト配向が具現されてもよい。このような配向状態は、前記液晶配向膜として垂直配向膜を適用することによって得られる。このような配向は、いわゆるR-TN(Reversed Twisted Nematic)配向を具現する素子において有用である。
【0122】
前記垂直配向または垂直配向と類似した配向状態で光変調層の面内位相差(波長550nm基準)は、例えば、約30nm以下、25nm以下、20nm以下、15nm以下、10nm以下または5nm以下であるか、0nm以上または0nm超過でありうる。
【0123】
前記面内位相差は、前記数式2によって求められ、この場合、数式2で、nx、nyおよびdは、それぞれ光変調層の遅相軸方向の屈折率、進相軸方向の屈折率および厚さである。
【0124】
光変調デバイスは、前記第1および第2基板の間隔(spacer)を維持するスペーサーをさらに含んでもよい。スペーサーとしては、通常的に適用されるスペーサーであり、ボールスペーサー、カラムスペーサーまたは隔壁型スペーサーあるいは前記のうち二つ以上の組み合わせが適用可能である。好適な例として、前記スペーサーとしては、前記隔壁型スペーサーが使用でき、特に前記隔壁が少なくとも一つの閉図形を形成している隔壁型スペーサーが適用可能である。前記隔壁型スペーサーが形成する閉図形としては、六角形(例えば、正六角形など)や四角形(例えば、正方形または矩形)が挙げられる。前記閉図形が六角形、特に正六角形である隔壁型スペーサーは、いわゆるハニカム(honeycomb)型スペーサーとも呼ばれる。このようなハニカム型または四角形の隔壁型スペーサーは、公知のように、基板上に形成された隔壁型スペーサーの形態を基板の法線方向から観察したとき、前記隔壁型スペーサーにより形成される図形がハニカム型または四角形である場合を意味する。前記ハニカム型は、通常、正六角形の組み合わせからなり、四角形の場合、正方形、矩形または正方形と矩形の組み合わせなどがありえる。第1および第2基板間の付着力を考慮して、スペーサーとしては、隔壁型スペーサーを適用できるが、これらに限定されるものではない。
【0125】
スペーサーのピッチなども、目的とする付着力やセルギャップの維持効率などを考慮して適宜選択できる。例えば、隔壁型スペーサーが適用される場合、前記隔壁型スペーサーのピッチが50μm~2,000μmの範囲内でありうる。隔壁型スペーサーにおいてピッチを求める方式は公知となっている。例えば、隔壁型スペーサーがハニカム型であれば、前記ハニカムを成す六角形において向かい合う辺の間隔を通じてピッチを求め、四角形である場合に、四角形の辺の長さを通じてピッチを求める。前記ハニカムを成す六角形において向かい合う辺の間隔や、四角形の辺の長さが一定でない場合には、それらの平均値をピッチと規定することができる。
【0126】
前記隔壁型スペーサーが閉図形を構成する場合に、例えば、前記閉図形の面積(すなわち、例えば、六角形や四角形の面積)は、例えば、約1~200mm2の範囲内でありうる。隔壁型スペーサーにより複数の閉図形が形成され、当該閉図形の面積がそれぞれ異なる場合には、前記面積は算術平均値である。
【0127】
前記隔壁型スペーサーの線幅、例えば、前記ハニカムを成す六角形や四角形の各辺の幅は、例えば、約5μm~50μmの範囲内にありえる。前記線幅は、他の例として、約10μm以上または15μm以上であるか、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下または20μm以下程度であってもよい。
【0128】
前記のような範囲でセルギャップが適切に維持され、基板間の付着力も良好に維持できる。例えば、第1基板に前記粘着剤層または接着剤層が形成される場合に、隔壁型スペーサーとの組み合わせは、非常に優れた基板間の接着力を付与できる。
【0129】
前記光変調デバイスの各基板には、光変調層に外部シグナルを印加するための構成要素として、電極層が形成されていてもよい。例えば、第1基板において第1表面と前記機能性層(液晶配向膜、粘着剤または接着剤層の間(
図2で100と1001の間))および/または第2基板において第1表面と液晶配向膜の間(
図2で200と2001の間)(スペーサーが存在する場合、スペーサーおよび配向膜の間)には電極層が存在できる。第2基板の場合、第1表面にまず電極層を形成し、その上部にスペーサーおよび配向膜を順次形成することが一般的であるから、スペーサーが存在する場合、電極層は、第2基板の第1表面とスペーサーおよび配向膜の間に位置してもよい。
【0130】
電極層としては、公知の透明電極層が適用可能であり、例えば、いわゆる導電性高分子層、導電性金属層、導電性ナノワイヤー層またはITO(Indium Tin Oxide)などの金属酸化物層が前記電極層に使用できる。その他にも、透明電極層を形成できる多様な素材および形成方法が公知となっており、これを限定せずに適用できる。
【0131】
光変調デバイスは、前記光変調デバイスを基本的に含み、必要に応じてさらなる他の構成を含むこともできる。すなわち、駆動モードによっては、前記光変調デバイス単独でも、前述した透過、遮断、高反射および/または低反射モードの具現およびそれら間のスイッチングが可能であるが、このようなモードの具現またはスイッチングを容易にするために、さらなる構成を含むことも可能である。
【0132】
例えば、前記デバイスは、前記光変調デバイスの一側または両側に配置された偏光層(受動偏光層)をさらに含んでもよい。
図3は、前記構造の例示であり、
図2の構造において光変調デバイスの一面にのみ偏光層400が配置された場合であり、
図4は、
図2の構造において光変調デバイスの両面に偏光層400が配置された場合である。また、スペーサーとして前記隔壁型スペーサーが適用され、その形態が四角形(正方形または矩形)の場合に、前記四角形の辺と前記偏光層の吸収軸は、互いに実質的に垂直または水平を成すように配置されることが好適である。
【0133】
用語「偏光層」は、自然光または非偏光を偏光に変化させる素子を意味し得る。一例において、前記偏光層は、直線偏光層でありうる。直線偏光層は、選択的に透過する光がいずれか一つの方向に振動する直線偏光であり、選択的に吸収または反射する光が前記線偏光の振動方向と直交する方向に振動する直線偏光である場合を意味する。すなわち、前記直線偏光層は、面方向に互いに直交する透過軸および吸収軸または反射軸を有することができる。
【0134】
前記偏光層は、吸収型偏光層または反射型偏光層でありうる。前記吸収型偏光層としては、例えば、PVA(poly(vinyl alcohol))延伸フィルムなどのような高分子延伸フィルムにヨードを染着した偏光層または配向された状態で重合された液晶をホストとし、前記液晶の配向によって配列された二色性染料をゲストとするゲスト-ホスト型偏光層が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0135】
前記反射型偏光層としては、例えば、いわゆるDBEF(Dual Brightness Enhancement Film)と公知となっている反射型偏光層やLLC(Lyotropic liquid crystal)のような液晶化合物をコーティングして形成される反射型偏光層が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0136】
図4のように、光変調デバイスの両側共に前記偏光層が配置された構造であってもよい。このような場合に、前記両側に配置された偏光層の透過軸が成す角度は、85度~95度の範囲内または略垂直でありうる。
【0137】
一例として、前記光学デバイスは、偏光層を含まずに構成されることもできる。例えば、前記液晶層にさらなる成分として二色性染料を配合した後に、偏光層を適用せずに、光学デバイスが構成されることもできる。
【0138】
光変調デバイスは、前記構成にさらに必要な他の構成を含んでもよい。
【0139】
例えば、光変調デバイスは、下記数式3の屈折率の関係を満たす光学異方性フィルムをさらに含んでもよい。このようなフィルムは、基板や、光変調層を光学的に補償して、前記デバイスの性能をより改善できる。
【0140】
[数式3]
nz<ny
【0141】
数式3で、nyは、光学異方性フィルムの進相軸方向の波長550nmに対する屈折率であり、nzは、光学異方性フィルムの厚さ方向の波長550nmに対する屈折率である。
【0142】
前記数式3の関係を満たす光学異方性フィルムは、いわゆるネガティブ(Negative)Cプレートの性質を示すフィルムである。
【0143】
このような光学異方性フィルムの厚さ方向位相差は、例えば、波長550nmを基準として0nm未満から-600nm以上の範囲内でありうる。前記光学異方性フィルムは、光学デバイス内に1層または2層以上存在することもできるが、前記厚さ方向位相差は、光学異方性フィルムが1層存在する場合には、当該1層のフィルムの厚さ方向位相差であり、2層以上複数個存在する場合には、モードフィルムの厚さ方向位相差の合計である。
【0144】
また、前記厚さ方向位相差は、下記数式4によって定められる物理量である。
【0145】
[数式4]
Rth=d×(nz-ny)
【0146】
数式4で、Rthは、厚さ方向位相差であり、nzは、フィルムの厚さ方向の屈折率であり、nyは、フィルムの進相軸方向の屈折率であり、dは、フィルムの厚さである。前記で厚さ方向と進相軸の意味は、当業界において公知となっている。
【0147】
前記光学異方性フィルムとしては、公知の位相差フィルムであり、前記数式3を満たすフィルムを適用でき、当業界では、このような種類のフィルムとして、例えば、延伸高分子フィルムや液晶フィルムなどが多様に知られている。
【0148】
前記光学異方性フィルムは、第1および/または第2基板に存在できるが、例えば、第1および/または第2基板の第1表面上に形成されてもよい。この際、光学異方性フィルムは、第1および/または2基板と光変調層の間に存在でき、前記第1表面上に液晶配向膜や前記粘着剤層または接着剤層(液晶配向膜など)が形成される場合には、第1および/または2基板と前記液晶配向膜などの間に形成されてもよく、前記第1表面上に電極層が形成される場合には、第1および/または第2基板と前記電極層の間に形成されることもできる。
【0149】
光変調デバイスは、前記構成の他にも、必要な場合に他の構成を含むこともできる。例えば、前記第1基板の第1表面上に形成される粘着剤層または接着剤層の他に、他の構成要素を付着させるための粘着剤層や接着剤層、ハードコーティングフィルム、反射防止フィルムおよび/またはNIR(Near-Infrared)遮断(cut)層などのように、光変調デバイスの駆動または使用に必要な任意の他の構成を追加してもよい。
【0150】
前記光変調デバイスを製造する方式は、特に限定されず、各構成要素として前記要素が適用されること以外には、公知の方式を通じて前記デバイスを製造できる。
【0151】
このような光学デバイスは、多様な用途に使用でき、例えば、サングラスやAR(Argumented Reality)またはVR(Virtual Reality)用アイウェア(eyewear)などのアイウェア類、建物の外壁や車両用サンルーフなどに使用できる。本出願は、光変調装置を含む窓および光変調装置を含むサンルーフを提供することができる。
【発明の効果】
【0152】
本出願は、オートクレーブ工程などのように圧力が加えられるカプセル化工程後にも、設計された光学特性を安定的に維持できる光変調デバイス、光学デバイスまたはその製造方法を提供できる。また、本出願は、上下基板間の接着力を効果的に確保しつつ、光変調層の配向状態も安定的に維持できる光変調デバイス、それを含む光学デバイスまたはその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【
図1】透過率T
1およびT
2を測定する過程を示す図である。
【
図2】本出願の例示的な光変調デバイスの模式図である。
【
図3】本出願の例示的な光変調デバイスの模式図である。
【
図4】本出願の例示的な光変調デバイスの模式図である。
【
図5】実施例1の光変調デバイスの高温配向安定性を評価した結果である。
【
図6】比較例1の光変調デバイスの高温配向安定性を評価した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0154】
以下、実施例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲が下記実施例によって限定されるものではない。
【0155】
1.透過率の測定
実施例または比較例で製造された光変調デバイスに対して透過率T1およびT2を測定した。測定に適用された光変調デバイスは、第1および第2基板の第2表面にPVA(poly(vinyl alcohol))偏光層を付着する前のデバイスである。また、実施例または比較例の光変調デバイスは、初期配向が垂直配向になるように構成したデバイスであるから、別途の電源を印加せず、透過率T1およびT2を測定した。
【0156】
オリンパスBX51偏光顕微鏡に内蔵された偏光子の光吸収軸が互いに直交するように設定し、顕微鏡のメタルハライド光源をオンとした後に、Linkam LTS420 hot stageを顕微鏡ステージ上に設置した。前記Linkam LTS420 hot stage上にサンプル(前記光変調デバイス)を位置させた。この際、光変調デバイスの基板の遅相軸は、BX51偏光顕微鏡に内蔵される偏光子のうち一つの偏光子の光吸収軸と平行にした。前記状態で透過率T1を測定した。透過率は、StellarNet社のBlue-Wave、UVN分光器を顕微鏡に設置して測定し、測定波長は、可視光の波長範囲(約380nm~770nm)に設定した。
【0157】
透過率T1を測定した後に、前記Linkam LTS420 hot stageの温度を100℃に設定し、その状態で5分間維持した。
【0158】
前記高温条件で維持した後に、透過率T1と同じ方法で透過率T2を測定した。ただし、透過率T2は、Linkam LTS420 hot stageを使用して100℃で5分間維持直後に温度をそのまま維持した状態で測定した。
【0159】
2.位相差の評価
フィルムの面内位相差値(Rin)は、Agilent社のUV/VIS spectroscope 8453装備を利用して波長550nmの光に対して測定した。UV/VIS spectroscopeに2枚の偏光子を透過軸が互いに直交するように設置し、前記2枚の偏光子の間に高分子フィルムの遅相軸が2枚の偏光子の透過軸とそれぞれ45度を成すように設置した後、波長による透過度を測定した。波長による透過度グラフにおいて各ピーク(peak)の位相遅延次数(Phase retardation order)を求める。具体的に、波長による透過度グラフにおいて、波形は、下記数式Aを満たし、サイン(Sine)波形で最大ピークTmaxの条件は、下記数式Bを満たす。数式Aで、λmaxである場合、数式AのTと数式BのTは、同一なので、数式を展開する。n+1、n+2およびn+3に対しても数式を展開し、nとn+1数式を整理してRを消去してnをλnおよびλn+1数式で整理すると、下記数式Cが導き出される。数式AのTと数式BのTが同一であることに基づいてnとλを知ることができるので、各λn、λn+1、λn+2およびλn+3に対してRを求める。4ポイントに対して波長によるR値の直線傾向線を求め、数式550nmに対するR値を算定する。直線傾向線の関数は、Y=ax+bであり、aおよびbは、定数である。前記関数のxに550nmを代入したときのY値が波長550nmの光に対するRin値である。
【0160】
[数式A]
T=sin2[(2πR/λ)]
【0161】
[数式B]
T=sin2[((2n+1)π/2)]
【0162】
[数式C]
n=(λn-3λn+1)/(2λn+1+1-2λn)
【0163】
前記でRは、面内位相差Rinを意味し、λは、波長を意味し、nは、サイン波形の頂点の次数を意味する。
【0164】
3.厚さの評価
液晶層とシリコーン粘着剤層の厚さは、測定装備(F20、Filmetric社製)を使用して確認した。前記で液晶層の厚さは、cell gapであり、スペーサーの高さを通じて確認した。
【0165】
実施例1.
光変調デバイスの製造
光変調デバイスの第1基板として、一面にITO(Indium Tin Oxide)電極層が蒸着されている厚さ145μm程度のPET(poly(ethylene terephthalate))フィルム(SKC、高延伸PET製品)を使用した。前記PETフィルムの面内位相差(550nm)は、略10,000nm程度であった。前記PETフィルムのITO電極層の表面にシリコーン粘着剤層を形成した。
【0166】
前記シリコーン粘着剤層は、溶媒であるトルエンにシリコーン粘着剤前駆体が約60重量%の固形分の濃度で溶解しているシリコーン粘着剤前駆体溶液(Shin-Etsu Chemical製、KR-3700)に触媒(Shin-Etsu、CAT-PL-56)および下記化学式Aの化合物を添加して製造した粘着剤溶液を前記ITO層上にバーコーティングし、約150℃程度で5分間維持して、8μm程度の厚さで形成した。前記でシリコーン粘着剤前駆体、触媒および化学式Aの化合物の重量比(前駆体(溶媒除外):触媒:化学式Aの化合物)は、60:0.5:6.7である。
【0167】
前記粘着剤溶液内でシリコーン粘着剤前駆体(Shin-Etsu Chemical製、KR-3700)、触媒(Shin-Etsu,CAT-PL-56)および化学式Aの化合物の重量比は、約60:0.5:6.7であるから、形成された粘着剤層内で下記数式2によるA値は、約0.1である。
【0168】
第2基板として、第1表面にITO(Indium Tin Oxide)層が蒸着されている厚さ80μm程度のPET(poly(ethylene terephthalate))フィルム(Toyobo製、SRF製品)を使用した。前記PETフィルムの面内位相差(550nm)は、略9,000程度であった。前記PETフィルムのITO層上に四角形の隔壁型スペーサーとして、ピッチが約350μm程度であり、線幅が約10μm程度であり、高さが6μm程度である隔壁型スペーサーを約9%の面積比(全体基板面積のうちスペーサーが占める面積の比率)で形成した。前記スペーサー上に垂直配向膜(5661LB3,Nissan社)を形成した。前記配向膜は、前記配向膜材料(5661LB3、Nissan社)を溶媒に約2.2重量%の固形分を有するように希釈し、#2バーコーティング後に100℃で10分程度維持して形成した。前記垂直配向膜は、一方向にラビング処理して形成した。前記ラビング方向は、第2基板の遅相軸方向に垂直となるようにした。
【0169】
次に、前記第2基板の垂直配向膜の表面に液晶組成物をコーティングし、前記第1基板の粘着剤層を前記液晶組成物のコーティングされた面と対向するようにしてラミネートした。この際、第1および第2基板の遅相軸は、互いに平行するように位置を調節した。
【0170】
前記で液晶組成物としては、液晶化合物(Merck、MAT-19-1205)およびキラルドーパント(Merck、S811)を含む組成物を使用した。前記キラルドーパントの含有量は、ツイスト配向のピッチ(キラルピッチ)pが約20μm程度になるように調節した。
【0171】
次に、前記第1および第2基板の第2表面にそれぞれPVA(poly(vinyl alcohol))偏光層を付着した。この際、前記第2基板に付着したPVA偏光層の吸収軸は、第2基板の遅相軸に垂直となるようにし、第1基板に付着したPVA偏光層の吸収軸は、第1基板の遅相軸に水平となるようにした。
【0172】
[数式2]
A=S/(S+O)
【0173】
数式2で、Sは、粘着剤層内のケイ素化合物(実施例1の場合、化学式Aの化合物)の重さであり、Oは、前記ケイ素化合物を除いた粘着剤層の重さである。
【0174】
【0175】
実施例2.
シリコーン粘着剤層の厚さを約10μm程度で形成したことを除いては、実施例1と同一に光変調デバイスを製作した。
【0176】
実施例3.
数式2のA値が約0.125になるように化学式Aの化合物の比率を調節し、シリコーン粘着剤層の厚さが約6μm程度になるようにしたことを除いては、実施例1と同一に光変調デバイスを製作した。
【0177】
実施例4.
化学式Aの化合物の代わりに化学式Bの化合物を適用し、数式2のA値が約0.15になるように前記化学式Bの化合物の比率を調節し、シリコーン粘着剤層の厚さが約8μm程度になるようにしたことを除いては、実施例1と同一に光変調デバイスを製作した。
【0178】
【0179】
比較例1.
化学式Aの化合物の代わりに化学式Cの化合物を適用し、数式2のA値が約0.15になるように前記化学式Cの化合物の比率を調節し、シリコーン粘着剤層の厚さが約4μm程度になるようにしたことを除いては、実施例1と同一に光変調デバイスを製作した。
【0180】
【0181】
比較例2.
化学式Aの化合物の代わりに比較例1の化学式Cの化合物を適用し、数式2のA値が約0.15になるように前記化学式Cの化合物の比率を調節し、シリコーン粘着剤層の厚さが約15μm程度になるようにしたことを除いては、実施例1と同一に光変調デバイスを製作した。
【0182】
比較例3.
化学式Aの化合物の代わりに化学式Dの化合物を適用し、シリコーン粘着剤層の厚さが約5μm程度になるようにしたことを除いては、実施例1と同一に光変調デバイスを製作した。
【0183】
【0184】
比較例4.
化学式Aの化合物の代わりに比較例3の化学式Dの化合物を適用し、シリコーン粘着剤層の厚さが約12μm程度になるようにしたことを除いては、実施例1と同一に光変調デバイスを製作した。
【0185】
比較例5.
化学式Aの化合物の代わりに化学式Eの化合物を適用し、シリコーン粘着剤層の厚さが約3.6μm程度になるようにしたことを除いては、実施例1と同一に光変調デバイスを製作した。
【0186】
【0187】
比較例6.
化学式Aの化合物の代わりに比較例5の化学式Eの化合物を適用し、シリコーン粘着剤層の厚さが約14μm程度になるようにしたことを除いては、実施例1と同一に光変調デバイスを製作した。
【0188】
前記実施例および比較例の粘着剤層に対するK値を下記表1および表2に整理して記載した。
【0189】
【0190】
【0191】
前記実施例および比較例の光変調デバイスに対して前記確認した透過率T1およびT2を下記表3に整理して記載した。
【0192】
【0193】
表3の結果から、本出願による光変調デバイスは、高温維持前後に設計された液晶配向性(垂直配向性)が安定的に維持されて、透過率T1およびT2が同一に測定されることを確認できる。光変調デバイスの高温での垂直配向性を他の方式でさらに確認した。垂直配向性は、光変調デバイスの一側で光を照射しつつ、前記デバイスに外部シグナルを印加しない状態で温度調節装置(LTS-350、Linkam)を使用して前記デバイスの周辺温度を変化させることによって評価した。光変調層の両側に直交偏光層が配置されている状態であるから、垂直配向が適切に維持されると、前記光が照射される側とは反対側の光変調デバイスにおいて光漏れが誘発されない。前記デバイスの温度を100℃に維持した状態で前記方式で垂直配向性を評価し、その結果を下記表4に整理した。下記表4で、Pは、光漏れが発生しない場合(垂直配向が安定的に維持される場合)であり、Nは、光漏れが発生した場合(垂直配向状態が維持されない場合)である。
【0194】
【0195】
表4に整理されたように、実施例のデバイスは、高温でも初期状態の垂直配向が安定的に維持されて、光漏れが発生しなかったが、比較例のデバイスが高温で垂直配向状態が壊れて、光漏れが発生することが観測された。
【0196】
図5は、実施例1に対して前記光漏れを評価した結果であり、
図6は、比較例1に対する結果である。