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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】脂溶性成分の分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/06 20060101AFI20240910BHJP
【FI】
G01N33/06
【請求項の数】 49
(21)【出願番号】P 2022187808
(22)【出願日】2022-11-24
(65)【公開番号】P2024076291
(43)【公開日】2024-06-05
【審査請求日】2023-12-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】町川 司
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-500372(JP,A)
【文献】特開2006-175331(JP,A)
【文献】特表2005-519273(JP,A)
【文献】特表2007-523352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/00 -33/46
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 1/00 - 1/44
DB名 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580 (JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の(i)~(iV)段階を含む、サンプルA中の被測定対象脂溶性成分の分析方法であって、前記脂溶性成分が、脂肪アシル、グリセロ脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、糖脂質、ポリケチド及びリン脂質から選ばれる成分である、分析方法
(i)被測定対象脂溶性成分と、20℃における密度が1.003g/ml以上の水溶液である親水性溶媒50w/v%以上とを含有するサンプルAを準備又は調整する段階
(ii)次の要件(X)、(Y)、(Z)を満たすように、サンプルAに媒体aを添加してサンプルBを得る段階
要件(X):20℃における媒体aの密度が0.998g/ml未満である
要件(Y):媒体aが、オクタノール/水分配係数が0.50~4.0である少なくとも1種の有機溶媒を含有する
要件(Z):20℃における前記親水性溶媒と媒体aとの密度比(媒体aの密度/前記親水性溶媒の密度)が0.6000~0.8500である
(iii)サンプルBを相分離し、分析検体である上層サンプルC1と、下層サンプルC2とを分離する段階
(iV)サンプルC1を高速液体クロマトグラフィーに付してサンプルC1中の被測定対象脂溶性成分含有量を測定する段階
【請求項2】
前記脂溶性成分が、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、テルペン、脂溶性ビタミン及びスフィンゴ脂質から選ばれる成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記脂溶性成分が、カロテノイド、ステロイド、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、αーリノレン酸、リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リモネン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、δ-テルピネン、p-シメン、ムロロール、カダレン、テトラヒドロキシバクテリオホパン(C35-ペンタサイクリックテルペンアルコール)、ホパン-22-オール、ホプ-22(29)-エン、オルニチルタウリン脂質3-(パルミトイル)-ヒドロキシパルミトイル-オルニチル-タウリン、オルニチン脂質3-(パルミトイル)-ヒドロキシパルミトイル-オルニチン、リゾオルニチン脂質3-ヒドロキシパルミトイル-オルニチン、シス-バクセン酸、レシチン、及びセラミドから選ばれる成分である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(i)段階において、サンプルAが被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
(i)段階において、サンプルAにおける被測定対象脂溶性成分のうち、40w/w%以上が細胞又は組織に含有される、請求項記載の方法。
【請求項6】
(i)段階において、被測定対象脂溶性成分を含む細胞若しくは組織として酢酸菌体を含有する、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
(i)段階において、サンプルAが可溶性糖類を含有する、請求項1又はに記載の方法。
【請求項8】
(i)段階において、サンプルAの前記親水性溶媒に対する可溶性糖類の含有量が、0.1~30w/v%である、請求項記載の方法。
【請求項9】
(i)段階において、サンプルAが、被測定対象脂溶性成分としてセラミドを含有する、請求項1又はに記載の方法。
【請求項10】
(i)段階において、サンプルAが、酢酸菌生成物を含有する、請求項1又はに記載の方法。
【請求項11】
(i)段階において、サンプルAが酢酸を含有する、請求項1又はに記載の方法。
【請求項12】
(i)段階において、サンプルAの前記親水性溶媒に対する酢酸含有量が0.02~15w/v%である、請求項11記載の方法
【請求項13】
(i)段階において、前記親水性溶媒の20℃における密度が1.003g/ml以上1.250g/ml以下である、請求項1又はに記載の方法。
【請求項14】
(i)段階において、前記親水性溶媒のpHが4.5以下である、請求項1又はに記載の方法。
【請求項15】
(i)段階において、サンプルAの総タンパク質含有量が15w/v%以下である、請求項1又はに記載の方法。
【請求項16】
(i)段階において、サンプルAの波長660nmにおける濁度が1.100以上である、請求項1又はに記載の方法。
【請求項17】
(i)段階において、サンプルAが飲食品である、請求項1又はに記載の方法。
【請求項18】
(ii)段階において、媒体aがt-ブチルメチルエーテルを含有する、請求項1又はに記載の方法。
【請求項19】
(ii)段階において、媒体aがさらにメタノールを含有する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
(ii)段階の次に、次の(ii‘)段階を含む、請求項1又はに記載の方法。
(ii‘)サンプルBを10~1440分間混合する段階
【請求項21】
(iii)段階において、下層サンプルC2に沈殿が存在する、請求項1又はに記載の方法。
【請求項22】
(iii)段階の次に、次の(iii‘)段階を含む、請求項1又はに記載の方法。
(iii‘)上層サンプルC1をさらに濃縮する段階
【請求項23】
前記段階(iV)において、高速液体クロマトグラフィーの移動相に少なくとも2種又は3種の有機溶媒を使用する、請求項1又はに記載の方法。
【請求項24】
前記段階(iV)において、高速液体クロマトグラフィーの移動相に少なくとも3種の有機溶媒を使用する、請求項1又は4に記載の方法。
【請求項25】
次の(i)~(iV)段階を含む、サンプルA中の被測定対象脂溶性成分の経時的な含有量変化を分析する方法であって、前記脂溶性成分が、脂肪アシル、グリセロ脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、糖脂質、ポリケチド及びリン脂質から選ばれる成分である、分析方法
(i)被測定対象脂溶性成分と、20℃における密度が1.003g/ml以上の水溶液である親水性溶媒50w/v%以上とを含有するサンプルAを準備又は調整する段階
(ii)次の要件(X)、(Y)、(Z)を満たすように、サンプルAに媒体aを添加してサンプルBを得る段階
要件(X):20℃における媒体aの密度が0.998g/ml未満である
要件(Y):媒体aが、オクタノール/水分配係数が0.50~4.0である少なくとも1種の有機溶媒を含有する
要件(Z):20℃における前記親水性溶媒と媒体aとの密度比(媒体aの密度/前記親水性溶媒の密度)が0.6000~0.8500である
(iii)サンプルBを相分離し、分析検体である上層サンプルC1と、下層サンプルC2とを分離する段階
(iV)サンプルC1を高速液体クロマトグラフィーに付してサンプルC1中の被測定対象脂溶性成分含有量を測定する段階
【請求項26】
前記脂溶性成分が、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、テルペン、脂溶性ビタミン、及びスフィンゴ脂質から選ばれる成分である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記脂溶性成分が、カロテノイド、ステロイド、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、αーリノレン酸、リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リモネン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、δ-テルピネン、p-シメン、ムロロール、カダレン、テトラヒドロキシバクテリオホパン(C35-ペンタサイクリックテルペンアルコール)、ホパン-22-オール、ホプ-22(29)-エン、オルニチルタウリン脂質3-(パルミトイル)-ヒドロキシパルミトイル-オルニチル-タウリン、オルニチン脂質3-(パルミトイル)-ヒドロキシパルミトイル-オルニチン、リゾオルニチン脂質3-ヒドロキシパルミトイル-オルニチン、シス-バクセン酸、レシチン、及びセラミドから選ばれる成分である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
次の(i)~(iii)段階を含む、被測定対象脂溶性成分を含む分析検体の製造方法であって、前記脂溶性成分が、脂肪アシル、グリセロ脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、糖脂質、ポリケチド及びリン脂質から選ばれる成分である、製造方法
(i)被測定対象脂溶性成分と、20℃における密度が1.003g/ml以上の水溶液である親水性溶媒50w/v%以上とを含有するサンプルAを準備又は調整する段階
(ii)次の要件(X)、(Y)、(Z)を満たすように、サンプルAに媒体aを添加してサンプルBを得る段階
要件(X):20℃における媒体aの密度が0.998g/ml未満である
要件(Y):媒体aが、オクタノール/水分配係数が0.50~4.0である少なくとも1種の有機溶媒を含有する
要件(Z):20℃における前記親水性溶媒と媒体aとの密度比(媒体aの密度/前記親水性溶媒の密度)が0.6000~0.8500である
(iii)サンプルBを相分離し、分析検体である上層サンプルC1と、下層サンプルC2とを分離する段階
【請求項29】
前記脂溶性成分が、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、テルペン、脂溶性ビタミン、及びスフィンゴ脂質から選ばれる成分である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記脂溶性成分が、カロテノイド、ステロイド、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、αーリノレン酸、リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リモネン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、δ-テルピネン、p-シメン、ムロロール、カダレン、テトラヒドロキシバクテリオホパン(C35-ペンタサイクリックテルペンアルコール)、ホパン-22-オール、ホプ-22(29)-エン、オルニチルタウリン脂質3-(パルミトイル)-ヒドロキシパルミトイル-オルニチル-タウリン、オルニチン脂質3-(パルミトイル)-ヒドロキシパルミトイル-オルニチン、リゾオルニチン脂質3-ヒドロキシパルミトイル-オルニチン、シス-バクセン酸、レシチン、及びセラミドから選ばれる成分である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
(i)段階において、サンプルAが被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織を含有する、請求項28記載の方法。
【請求項32】
(i)段階において、サンプルAにおける被測定対象脂溶性成分のうち、40w/w%以上が細胞又は組織に含有される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
(i)段階において、被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織として酢酸菌体を含有する、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項34】
(i)段階において、サンプルAが可溶性糖類を含有する、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項35】
(i)段階において、サンプルAの前記親水性溶媒に対する可溶性糖類の含有量が、0.1~30w/v%である、請求項32記載の方法。
【請求項36】
(i)段階において、サンプルAが、被測定対象脂溶性成分としてセラミドを含有する、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項37】
(i)段階において、サンプルAが、酢酸菌生成物を含有する、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項38】
(i)段階において、サンプルAが酢酸を含有する、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項39】
(i)段階において、サンプルAの親水性溶媒に対する酢酸含有量が0.02~15w/v%である、請求項38記載の方法。
【請求項40】
(i)段階において、前記親水性溶媒の20℃における密度が1.003g/ml以上1.250g/ml以下である、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項41】
(i)段階において、前記親水性溶媒のpHが4.5以下である、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項42】
(i)段階において、サンプルAの総タンパク質含有量が15w/v%以下である、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項43】
(i)段階において、サンプルAの波長660nmにおける濁度が1.100以上である、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項44】
(i)段階において、サンプルAが飲食品である、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項45】
(ii)段階において、媒体aがt-ブチルメチルエーテルを含有する、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項46】
(ii)段階において、媒体aがさらにメタノールを含有する、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
(ii)段階の次に、次の(ii‘)段階を含む、請求項28又は32に記載の方法。
(ii‘)サンプルBを10~1440分間混合する段階
【請求項48】
(iii)段階において、下層サンプルC2に沈殿が存在する、請求項28又は32に記載の方法。
【請求項49】
(iii)段階の次に、次の(iii‘)段階を含む、請求項28又は32に記載の方法。
(iii‘)上層サンプルC1をさらに濃縮する段階
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂溶性成分の分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の成分を含有する組成物中に含まれる被測定対象の脂溶性成分を分析する技術は、当該組成物を利用する産業において重要である。
【0003】
従来、組成物から、有機溶媒を用いて特定の成分を回収する方法が知られている。例えば、親水性成分を含有する組成物から成分を高回収する手法として、特許文献1では、水可溶性有機物及び無機酸を含む被処理水に、水酸化物、酸化物、炭酸塩あるいは炭酸水素塩のうち少なくとも1種類以上を添加して前記被処理水を中和する工程の後に、水に対する溶解度が30w/v%以上且つ回収する水可溶性有機物に対する溶解度が1w/v%以下である塩のうち少なくとも1種類以上を添加して、水可溶性有機物と水を分離する工程とを備える水可溶性有機物を高濃度、且つ高回収率で分離・回収する方法が記載されている。
また、組成物から脂溶性成分を抽出して測定するには、通常、クロロホルムなどのような脂溶性成分を溶解して水と相分離しうる有機溶媒を添加して、クロロホルム相に脂溶性成分を抽出して分離し、測定する方法が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-175331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1記載の方法は、脂溶性成分の分析に汎用的に利用できる方法ではなかった。また、クロロホルムを使用する方法では、水相とクロロホルム相が良好に分離せず、また、高速液体クロマトグラフィーのピークが安定しないため、定量分析等の分析精度が悪いという問題があった。
従って、本発明の課題は、脂溶性成分を含有する組成物から、特定の密度比の親水性溶媒と疎水性溶媒とで処理することで、当該脂溶性成分を正確に分析する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは鋭意検討を重ねたところ、所定量の親水性溶媒と、被測定対象脂溶性成分とを含有する組成物を準備又は調整し、被測定対象脂溶性成分の抽出溶媒として、特定の水への溶解度と特定の密度とを具備する有機溶媒を使用し、親水性溶媒と有機溶媒の密度比を調整することにより、相分離が極めて良好となり、被測定対象脂溶性成分を効率よく分析できることを知見した。
すなわち、本発明は、以下の態様を包含する。
【0007】
[項1]次の(i)~(iV)段階を含む、サンプルA中の被測定対象脂溶性成分の分析
方法。
(i)被測定対象脂溶性成分と、親水性溶媒50w/v%以上とを含有するサンプルAを準備又は調整する段階
(ii)次の要件(X)、(Y)、(Z)を満たすように、サンプルAに媒体aを添加してサンプルBを得る段階
要件(X):20℃における媒体aの密度が0.998g/ml未満である
要件(Y):媒体aが、オクタノール/水分配係数が0.50~4.0である少なくとも1種の有機溶媒を含有する
要件(Z):20℃における親水性溶媒と媒体aとの密度比(媒体aの密度/親水性溶媒の密度)が0.6000~0.8500である
(iii)サンプルBを相分離し、分析検体である上層サンプルC1と、下層サンプルC2とを分離する段階
(iV)サンプルC1中の被測定対象脂溶性成分含有量を測定する段階
[項2](i)段階において、サンプルAが被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織を含有する、項1記載の方法。
[項3](i)段階において、サンプルAにおける被測定対象脂溶性成分のうち、40w/w%以上が細胞又は組織に含有される、項2記載の方法。
[項4](i)段階において、被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織として酢酸菌体を含有する、項2又は3記載の方法。
[項5](i)段階において、サンプルAが可溶性糖類を含有する、項1~4のいずれか1項記載の方法。
[項6](i)段階において、サンプルAの親水性溶媒に対する可溶性糖類の含有量が、0.1~30w/v%である、項5記載の方法。
[項7](i)段階において、サンプルAが、被測定対象脂溶性成分としてセラミドを含有する、項1~6のいずれか1項記載の方法。
[項8](i)段階において、サンプルAが、酢酸菌生成物を含有する、項1~7のいずれか1項記載の方法。
[項9](i)段階において、サンプルAが酢酸を含有する、項1~8のいずれか1項記載の方法。
[項10](i)段階において、サンプルAの親水性溶媒に対する酢酸含有量が0.02~15w/v%である、項9記載の方法
[項11](i)段階において、親水性溶媒の20℃における密度が1.003g/ml以上である、項1~10のいずれか1項記載の方法。
[項12](i)段階において、親水性溶媒のpHが4.5以下である、項1~11のいずれか1項記載の方法。
[項13](i)段階において、サンプルAの総タンパク質含有量が15w/v%以下である、項1~12のいずれか1項記載の方法。
[項14](i)段階において、サンプルAの波長660nmにおける濁度が1.100以上である、項1~13のいずれか1項記載の方法。
[項15](i)段階において、サンプルAが飲食品である、項1~14のいずれか1項記載の方法。
[項16](ii)段階において、媒体aがt-ブチルメチルエーテルを含有する、項1~15のいずれか1項記載の方法。
[項17](ii)段階において、媒体aがメタノールを含有する、項1~16のいずれか1項記載の方法。
[項18](ii)段階の次に、次の(ii‘)段階を含む、項1~17のいずれか1項記載の方法。
(ii‘)サンプルBを10~1440分間混合する段階
[項19](iii)段階において、下層サンプルC2に沈殿が存在する、項1~18のいずれか1項記載の方法。
[項20](iii)段階の次に、次の(iii‘)段階を含む、項1~19のいずれか1項記載の方法。
(iii‘)上層サンプルC1をさらに濃縮する段階
[項21](iV)段階が、サンプルC1を高速液体クロマトグラフィーに付す段階である、項1~20記載の方法。
[項22]前記段階(iV)において、高速液体クロマトグラフィーの移動相に少なくと
も3種の有機溶媒を使用する、項1~21のいずれか1項記載の方法。
[項23]
次の(i)~(iV)段階を含む、サンプルA中の被測定対象脂溶性成分の経時的な含有
量変化を分析する方法
(i)被測定対象脂溶性成分と、親水性溶媒50w/v%以上とを含有するサンプルAを準備又は調整する段階
(ii)次の要件(X)、(Y)、(Z)を満たすように、サンプルAに媒体aを添加してサンプルBを得る段階
要件(X):20℃における媒体aの密度が0.998g/ml未満である
要件(Y):媒体aが、オクタノール/水分配係数が0.50~4.0である少なくとも1種の有機溶媒を含有する
要件(Z):20℃における親水性溶媒と媒体aとの密度比(媒体aの密度/親水性溶媒の密度)が0.6000~0.8500である
(iii)サンプルBを相分離し、分析検体である上層サンプルC1と、下層サンプルC2とを分離する段階
(iV)サンプルC1中の被測定対象脂溶性成分含有量を測定する段階
【0008】
[項24]次の(i)~(iii)段階を含む、被測定対象脂溶性成分を含む分析検体の製造方法。
(i)被測定対象脂溶性成分と、親水性溶媒50w/v%以上とを含有するサンプルAを準備又は調整する段階
(ii)次の要件(X)、(Y)、(Z)を満たすように、サンプルAに媒体aを添加してサンプルBを得る段階
要件(X):20℃における媒体aの密度が0.998g/ml未満である
要件(Y):媒体aが、オクタノール/水分配係数が0.50~4.0である少なくとも1種の有機溶媒を含有する
要件(Z):20℃における親水性溶媒と媒体aとの密度比(媒体aの密度/親水性溶媒の密度)が0.6000~0.8500である
(iii)サンプルBを相分離し、分析検体である上層サンプルC1と、下層サンプルC2とを分離する段階
[項25](i)段階において、サンプルAが被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織を含有する、項24記載の方法。
[項26](i)段階において、サンプルAにおける被測定対象脂溶性成分のうち、40w/w%以上が細胞又は組織に含有される、項25記載の方法。
[項27](i)段階において、被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織として酢酸菌体を含有する、項25又は26記載の方法。
[項28](i)段階において、サンプルAが可溶性糖類を含有する、項24~27記載の方法。
[項29](i)段階において、サンプルAの親水性溶媒に対する可溶性糖類の含有量が、0.1~30w/v%である、項28記載の方法。
[項30](i)段階において、サンプルAが、被測定対象脂溶性成分としてセラミドを含有する、項24~29のいずれか1項記載の方法。
[項31](i)段階において、サンプルAが、酢酸菌生成物を含有する、項24~30のいずれか1項記載の方法。
[項32](i)段階において、サンプルAが酢酸を含有する、項24~31のいずれか1項記載の方法。
[項33](i)段階において、サンプルAの親水性溶媒に対する酢酸含有量が0.02~15w/v%である、項32記載の方法
[項34](i)段階において、親水性溶媒の20℃における密度が1.003g/ml以上である、項24~33のいずれか1項記載の方法。
[項35](i)段階において、親水性溶媒のpHが4.5以下である、項24~34のいずれか1項記載の方法。
[項36](i)段階において、サンプルAの総タンパク質含有量が15w/v%以下である、項24~35のいずれか1項記載の方法。
[項37](i)段階において、サンプルAの波長660nmにおける濁度が1.100以上である、項24~36のいずれか1項いずれか1項記載の方法。
[項38](i)段階において、サンプルAが飲食品である、項24~37のいずれか1項記載の方法。
[項39](ii)段階において、媒体aがt-ブチルメチルエーテルを含有する、項24~38のいずれか1項記載の方法。
[項40](ii)段階において、媒体aがメタノールを含有する、項24~39のいずれか1項記載の方法。
[項41](ii)段階の次に、次の(ii‘)段階を含む、項24~40のいずれか1項記載の方法。
(ii‘)サンプルBを10~1440分間混合する段階
[項42](iii)段階において、下層サンプルC2に沈殿が存在する、項24~41のいずれか1項記載の方法。
[項43](iii)段階の次に、次の(iii‘)段階を含む、項24~42のいずれか1項記載の方法。
(iii‘)上層サンプルC1をさらに濃縮する段階
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、脂溶性成分を含有する組成物から、操作的に簡便な手段により当該脂溶性成分を正確に分析する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】比較サンプルの高速液体クロマトグラフィー移動相のグラジェントの経時変化を示す。
図2】試験例サンプルの高速液体クロマトグラフィー移動相のグラジェントの経時変化を示す。
図3】高速液体クロマトグラフィーにおけるピーク評価が良好な例を示す。
図4】高速液体クロマトグラフィーにおけるピーク評価が良好でない例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、数値範囲の規定について複数の上限値及び/又は複数の下限値を示す場合、特に明示されない場合であっても少なくとも上限規定の最大値と下限規定の最小値とを組み合わせた数値範囲の規定が直接的に記載されているものとし、さらに当該上限値のうち任意の上限値と当該下限値のうち任意の下限値とを組み合わせて得られる全ての数値範囲が本発明の一実施形態に含まれるものとする。また、本明細書において、「~」で結ばれた数値範囲は、「~」の前後の数値を下限値及び上限値として含む数値範囲を意味する。複数の下限値と複数の上限値が別個に示されている場合、任意の下限値と上限値を選択し、「~」で結ぶことができるものとする。
【0012】
本発明において、「w/w%」と記載される場合、「湿潤質量換算」の割合を表す。「湿潤質量換算」とは、試料の水分を含む湿潤質量を分母、試料中の対象成分の含有質量を分子として算出される、試料中の対象成分の含有比率を表す。また、本発明において、「w/v%」と記載される場合、試料の容量(100ml)における、試料中の対象成分の含有質量(g)を示す。
【0013】
本発明の一態様は、次の(i)~(iV)段階を含む、サンプルA中の被測定対象脂溶性成分の分析方法である。
(i)被測定対象脂溶性成分と、親水性溶媒50w/v%以上とを含有するサンプルAを準備又は調整する段階
(ii)次の要件(X)、(Y)、(Z)を満たすように、サンプルAに媒体aを添加してサンプルBを得る段階
要件(X):20℃における媒体aの密度が0.998g/ml未満である
要件(Y):媒体aが、オクタノール/水分配係数が0.50~4.0である少なくとも1種の有機溶媒を含有する
要件(Z):20℃における親水性溶媒と媒体aとの密度比(媒体aの密度/親水性溶媒の密度)が0.6000~0.8500である
(iii)サンプルBを相分離し、分析検体である上層サンプルC1と、下層サンプルC2とを分離する段階
(iV)サンプルC1中の被測定対象脂溶性成分含有量を測定する段階
【0014】
<段階(i)>
段階(i)は、被測定対象脂溶性成分と、親水性溶媒50w/v%以上とを含有するサンプルAを準備又は調整する段階である。
以下、段階(i)を詳細に説明する。
【0015】
<組成物>
組成物とは、通常用いられている意味のものとして特に限定されないが、例えば、2種以上の成分が組み合わさってなる物が挙げられる。従って、例えば後述するサンプルA、サンプルB等も、組成物に該当する。
【0016】
<サンプルA>
サンプルAとは、脂溶性成分と、親水性溶媒50w/v%以上とを含有する組成物である。本発明のサンプルAは人工的に調整してもよいし、自然界に存在する組成物であってもよい。
【0017】
<脂溶性成分>
脂溶性成分とは、疎水基を有しており、油脂に溶ける性質を有する成分を指す。脂溶性成分は、疎水基と親水基を共に有する両親媒性のものであってもよいが、水より油脂への溶解度が高いものであることが、本発明においては有用である。また、被測定対象脂溶性成分とは、文字通り、サンプルAに含有される脂溶性成分であって、測定の対象とされる脂溶性成分である。本発明の脂溶性成分としては、例えば動物細胞、植物細胞、微生物などに含まれる脂溶性成分が挙げられ、具体的には、脂肪アシル(Fatty acyls)、グリセロ脂質(Glycerolipids)、スフィンゴ脂質(Sphingolipids)、ステロール脂質(Sterol lipids)、プレノール脂質(Prenol lipids)、糖脂質(Saccharolipids)、ポリケチド(Polyketides)、等が挙げられ、より具体的には脂肪酸(fatty acid)、中性脂肪(neutral fat)、リン脂質(phospholipid)、糖脂質(glycolipid)、ステロール類(sterols)、スフィンゴシン、ジグリセリド、エステル交換油等が挙げられ、特に制限されない。本発明の脂溶性成分のさらに具体的な例としては、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、テルペン、脂溶性ビタミン、スフィンゴ脂質等が挙げられ、さらにより具体的には、カロテノイド、ステロイド、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、EPA(エイコサペンタエン酸)、DPA(ドコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)、αーリノレン酸、リノール酸、アラキドン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、リモネン、α-テルピネン、β-テルピネン、γ-テルピネン、δ-テルピネン、p-シメン、ムロロール、カダレン、テトラヒドロキシバクテリオホパン(C35-ペンタサイクリックテルペンアルコール)、ホパン-22-オール、ホプ-22(29)-エン、オルニチルタウリン脂質3-(パルミトイル)-ヒドロキシパルミトイル-オルニチル-タウリン、オルニチン脂質3-(パルミトイル)-ヒドロキシパルミトイル-オルニチン、リゾオルニチン脂質3-ヒドロキシパルミトイル-オルニチン、シス-バクセン酸、レシチン、セラミド等が挙げられる。なお、これらの成分は、例えばごま油、オリーブ油、アボガド油、アブラナ油、エゴマ油、ツバキ油、米油、ピーナッツ油、パーム油、ココナッツ油、トウモロコシ油、ナタネ油、卵黄油、大豆油、レモン精油、豚脂、鶏油、牛脂、魚油(肝油、ニシン油、イワシ油、サバ油、サケ油等)、バター、高オレイン酸菜種油、パームステアリン、パームオレイン、パーム核油、パーム分別油(PMF)、綿実油、ひまわり油、高オレイン酸ひまわり油、サフラワー油、亜麻仁油、グレープシードオイル、アーモンドオイル、サラダ油、キャノーラ油、乳脂、ギー、カカオバター、アサイー油、アマランス油、リンゴの種子油、カラシ油、ナツメグバター、オクラ種子油、パパイヤ種子油、杏仁油、ペクイ油、紫蘇油、プルーン仁油、キノア油、ラムティル油、米ぬか油、アザミ油、トマト種子油、小麦胚芽油等の天然由来の油脂に含有されるものであってもよく、これらから精製されたものであってもよく、化学的に合成されたものであってもよい。
【0018】
本発明は脂溶性成分の分析方法に係るものであるから、サンプルA中の被測定対象脂溶性成分の含有量は所定量であることが好ましい。本発明のサンプルAにおける被測定対象脂溶性成分含有量は、好ましくは0.0000001~20w/v%、より好ましくは0.0000005~15.0w/v%、さらに好ましくは0.000001~6.0w/v%、さらにより好ましくは0.00001~5.0w/v%、とりわけ好ましくは0.00005~3.0w/v%、特に好ましくは0.0001~0.5w/v%、0.0002~0.005w/v%、0.0002~0.002w/v%であってもよい。また、その上限は、特に限定されるものではないが、例えば19.0w/v%以下、18.0w/v%以下、16.0w/v%以下、15.0w/v%以下、14.0w/v%以下、13.0w/v%以下、11.0w/v%以下、9.0w/v%以下、7.0w/v%以下、5.0w/v%以下、4.5w/v%以下、4.0w/v%以下、3.5w/v%以下、3.0w/v%以下、2.5w/v%以下、2.0w/v%以下、1.5w/v%以下、1.0w/v%以下、0.7w/v%以下、0.5w/v%以下、0.3w/v%以下であることができる。また、その下限値は、特に限定されるものではないが、例えば、0.0000001w/v%以上、0.0000005w/v%以上、0.000001w/v%以上、0.000005w/v%以上、0.00001w/v%以上、0.00005w/v%以上、0.0001w/v%以上、0.0002w/v%以上、0.0003w/v%以上、0.0004w/v%以上、0.00045w/v%以上、0.0005w/v%以上であることができる。
【0019】
本発明は、従来技術では親水性溶媒と有機溶媒の分離に阻害的に働き、本発明の課題が大きくなる観点から、被測定対象脂溶性成分として、サンプルAにスフィンゴ脂質を含有することが好ましく、より好ましくはセラミド、さらに好ましくはヒト型セラミド、さらにより好ましくは、酢酸菌セラミドを含有する。その原理は不明であるが、グルコシル基を有さない酢酸菌セラミド等のヒト型セラミドは、従来技術が特に適用しづらかったため、本発明が有用である。
【0020】
<セラミド>
セラミドは、長鎖塩基であるスフィンゴシンのアミノ基に脂肪酸がアミド結合したものの総称を指し、具体的には天然セラミド又は合成セラミドが挙げられる。天然セラミドはさらに、その構造の違いにより植物型セラミドとヒト型セラミド(グルコシル基を有さない)に分けられる。天然セラミドの具体例としては、スフィンゴシン、ジヒドロスフィンゴシン、N-アシルスフィンガニン等が挙げられる。また、合成セラミドの具体例としては、(N-ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシヘキサデカナミド、(N-ヘキサデシロキシヒドロキシプロピル)-N-ヒドロキシデカナミド等が挙げられる。酢酸菌セラミドとは、酢酸菌によって産生される天然セラミドであり、ヒト型セラミドの一種である。酢酸菌セラミドは、ヒト型セラミドのスフィンゴイド塩基部分のスフィンゴシンの前駆体であるスフィンガニンと脂肪酸がアミド結合した構造を有している。酢酸菌セラミドの例としては、例えばN-アシルスフィンガニン(より具体的には、N-2’-ヒドロキシパルミトイル-スフィンガニン、N-パルミトイル-スフィンガニン、O-1-グルクロニル-N-2’-ヒドロキシパルミトイル-スフィンガニン、N-シス-バクセノイル-スフィンガニン、O-1-グルクロニル-N-パルミトイル-スフィンガニン等)等が挙げられる。
【0021】
本発明のサンプルAが被測定対象脂溶性成分としてスフィンゴ脂質を含有し、より好ましくはセラミド、さらに好ましくは、酢酸菌セラミドを含有する態様である場合、サンプルAの被測定対象脂溶性成分のうち、好ましくは40w/w%以上、より好ましくは50w/w%以上、さらに好ましくは60w/w%以上、さらにより好ましくは70w/w%以上、とりわけ好ましくは80w/w%以上、特に好ましくは90w/w%以上、95w/w%以上、または全量がスフィンゴ脂質、より好ましくはセラミド、さらに好ましくは、酢酸菌セラミドであってもよい。また、本発明のサンプルAが被測定対象脂溶性成分としてスフィンゴ脂質を含有し、より好ましくはセラミド、さらに好ましくは、酢酸菌セラミドを含有する態様である場合、その含有量は、上記被測定対象脂溶性成分の含有量の範囲及び上下限に関する規定を充足することが好ましい。
【0022】
<被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織>
本発明のサンプルAは、被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織を含有することが好ましい。この態様においては、従来技術では、前記細胞又は組織が、有機溶媒と親水性溶媒との分離に際して、乳化剤のように作用してしまい、有機溶媒と親水性溶媒との分離が十分に行えなかったため、本発明が有用である。
【0023】
「細胞」とは、通常用いられている意味のものとして特に限定されず、その由来は動物細胞、植物細胞、細菌、真核生物、古細菌のいずれであってもよく、生死も限定されない。これらの例としては、例えば、動物細胞、植物細胞、大腸菌、酢酸菌、酵母、納豆菌、乳酸菌等が挙げられる。また、「組織」とは、前記細胞の集合体、前記細胞の一部、またはその混合物を指す。
【0024】
本発明のサンプルAにおける被測定対象脂溶性成分は、従来技術が適用しづらく、課題の重要性が大きい観点から、前記細胞又は組織中に所定量含有されることが、特に好ましい。その原理は不明であるが、この態様においては、従来技術では、前記細胞又は組織が、有機溶媒と親水性溶媒との分離に際して、乳化剤のように作用する上、細胞または組織内に被測定対象脂溶性成分が残存してしまうところ、本発明では、親水性溶媒と有機溶媒の密度比を調整することで、重力や浸透圧等によって親水性溶媒と有機溶媒とを分離しやすくし、被測定対象脂溶性成分の有機溶媒への抽出を促進している可能性がある。つまり、本発明の好ましい態様として、サンプルAが被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織を含有する態様、より好ましくは、サンプルAが被測定脂溶性成分を含む細菌、真菌類、古細菌の細胞又は組織を含有する態様、さらに好ましくは、サンプルAが酢酸菌体を含有する態様、特に好ましくは、サンプルAが酢酸菌セラミドを含む酢酸菌体を含有する態様が挙げられる。また、サンプルAに含有される被測定対象脂溶性成分のうち、好ましくは40w/w%以上、より好ましくは50w/w%以上、さらに好ましくは60w/w%以上、さらにより好ましくは70w/w%以上、とりわけ好ましくは80w/w%以上、特に好ましくは85w/w%以上、88w/w%以上、90w/w%以上、91w/w%以上、92w/w%以上、93w/w%以上、94w/w%以上、95w/w%以上、96w/w%以上、98w/w%以上、99w/w%以上、または全量が前記した細胞又は組織に由来してもよい。また、サンプルAが被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織を含有する態様、より好ましくは、サンプルAが被測定脂溶性成分を含む細菌、真菌類、古細菌の細胞又は組織を含有する態様、さらに好ましくは、サンプルAが酢酸菌体を含有する態様、特に好ましくは、サンプルAが酢酸菌セラミドを含む酢酸菌体を含有する態様である場合、サンプルAにおける被測定対象脂溶性成分の含有量は、前記被測定対象脂溶性成分含有量の範囲および上下限に関する規定を充足してもよい。
【0025】
本発明のサンプルAにおける、被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織の含有量は、従来技術が適用しづらく、本発明の解決すべき課題が大きくなる観点から、その含有量は所定量であることが好ましい。当該含有量は、サンプルAの容量に対する質量(乾燥質量)として、例えば10~300mg/100ml、好ましくは15~280mg/100ml、より好ましくは20~260mg/100ml、さらに好ましくは22~240mg/100ml、さらにより好ましくは25~220mg/100ml、とりわけ好ましくは28~210mg/100ml、特に好ましくは30~200mg/100mlであっても良い。また、上限値は特に制限されるものではないが、例えば290mg/100ml以下、270mg/100ml以下、250mg/100ml以下、230mg/100ml以下、210mg/100ml以下、190mg/100ml以下、170mg/100ml以下、150mg/100ml以下、130mg/100ml以下、110mg/100ml以下、100mg/100ml以下、90mg/100ml以下、80mg/100ml以下、70mg/100ml以下であっても良い。また、下限値は特に制限されるものではないが、例えば0.1mg/100ml以上、1.0mg/100ml以上、3.0mg/100ml以上、4.0mg/100ml以上、5.0mg/100ml以上、10mg/100ml以上、15mg/100ml以上、18mg/100ml以上、21mg/100ml以上、25mg/100ml以上、32mg/100ml以上、40mg/100ml以上、50mg/100ml以上であっても良い。なお、サンプルA中の細胞又は組織の含有量(乾燥質量)は、例えば、被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織を含まない組成物に被測定対象脂溶性成分を含む細胞又は組織を添加することでサンプルAを調製する態様においては、そのサンプルAを遠心分離(3000Gで10分間)して得られた沈殿における乾燥重量から、灰分を除いた質量として換算することができる。
【0026】
本発明のサンプルAは、従来技術が適用しづらく、課題の重要性が大きい観点から、特に好ましくは酢酸菌体(酢酸菌体とは、酢酸菌細胞、酢酸菌細胞の集合体、酢酸菌細胞の一部、またはその混合物を指し、前記した細胞または組織の一態様である)を含有する。その原理は不明であるが、酢酸菌は高い耐酸性、耐アルコール性等を有するといった性質があるので、その膜構造に、脂溶性成分と親水性溶媒との分離を阻害する何らかの特徴がある可能性があり、親水性溶媒と有機溶媒との密度比を調整することでこれを解消できる可能性がある。本発明のサンプルAが酢酸菌体を含有する場合、サンプルAに含有される細胞または組織のうち、好ましくは40w/w%以上、より好ましくは50w/w%以上、さらに好ましくは60w/w%以上、さらにより好ましくは70w/w%以上、とりわけ好ましくは80w/w%以上、特に好ましくは90w/w%以上、95w/w%以上、または全量が酢酸菌体であってもよい。また、その含有量は、上記細胞または組織の含有量の範囲及び上下限に関する規定を充足してもよい。
【0027】
ここで、本発明において「乾燥質量」とは、特に断りがない限り、「水分含量」から算出される水分含有量を組成物全体の質量から除いた残分の質量を表す。 水分含量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、減圧加熱乾燥法で90℃に加温することで乾燥基準含水率として測定することができる。具体的には、あらかじめ恒量になったはかり容器(W0)に適量の試料を採取して秤量し(W1)、常圧において、所定の温度(より詳しくは90℃)に調節した減圧電気定温乾燥器中に、はかり容器の蓋をとるか、口を開けた状態で入れ、扉を閉じ、真空ポンプを作動させて、所定の減圧度において一定時間乾燥し、真空ポンプを止め、乾燥空気を送って常圧に戻し、はかり容器を取り出し、蓋をしてデシケーター中で放冷、秤量する(W2)ことを繰り返し、次の計算式で水分含量(質量%)を求める。
【0028】
[数1]
水分(質量%)=(W1-W2)/(W2-W0)×100
【0029】
また、「灰分」とは組成物中に含まれる不揮発性の無機物を指し、日本食品標準成分表2015年版(七訂)分析マニュアルにおける無機質の分析方法に採用される乾式灰化法によって、試料中の含有量を分析できる。
【0030】
<酢酸菌>
本発明のサンプルAに含まれる酢酸菌は、酢酸菌科(Acetobacteraceae)に属する細菌であって、酢酸を生産可能な細菌である限り、特に制限されない。酢酸菌としては、例えばアセトバクター属(Acetobacter)に属する細菌、グルコノバクター属(Gluconobacter)に属する細菌、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)に属する細菌、コマガタエイバクター属(Komagataeibacter)に属する細菌、アサイア属(Asaia)に属する細菌、アシドモナス属(Acidomonas)に属する細菌、アシディフィラム属に属する細菌(Acidiphilium)、アシディスファエラ属に属する細菌(Acidisphaera)、アシドセラ属に属する細菌(Acidocella)、アシドモナス属に属する細菌(Acidomonas)、アサイア属に属する細菌(Asaia)、ベルナピア属に属する細菌(Belnapia)、クラウロコッカス属に属する細菌(Craurococcus)、コザキア属に属する細菌(Kozakia)、リーヒバクター属に属する細菌(Leahibacter)、ムリコッカス属に属する細菌(Muricoccus)、ネオアサイア属に属する細菌(Neoasaia)、オレオモナス属に属する細菌(Oleomonas)、パラクラウロコッカス属に属する細菌(Paracraurococcus)、ロドピラ属に属する細菌(Rhodopila)、ロゼオコッカス属に属する細菌(Roseococcus)、ルブリテピダ属に属する細菌(Rubritepida)、サッカリバクター属に属する細菌(Saccharibacter)、ステラ属に属する細菌(Stella)、スワミナサニア属に属する細菌(Swaminathania)、テイココッカス属に属する細菌(Teichococcus)、ザヴァルジニア属に属する細菌(Zavarzinia)等が挙げられる。
【0031】
アセトバクター属(Acetobacter)の酢酸菌としては、アセトバクター・ポリオキソゲネス(Acetobacter polyoxogenes)、アセトバクター・トロピカリス(Acetobacter tropicalis)、アセトバクター・インドネシエンシス(Acetobacter indonesiensis)、アセトバクター・シジギイ(Acetobacter syzygii)、アセトバクター・シビノンゲンシス(Acetobacter cibinongensis)、アセトバクター・オリエンタリス(Acetobacter orientalis)、アセトバクター・パスツリアヌス(Acetobacter pasteurianus)、アセトバクター・オルレアネンシス(Acetobacter orleanensis)、アセトバクター・ロバニエンシス(Acetobacter lovaniensis)、アセトバクター・アセチ(Acetobacter aceti)、アセトバクター・ポモラム(Acetobacter pomorum)、アセトバクター・マローラム(Acetobacter malorum)などが例示される。
【0032】
グルコノバクター属(Gluconobacter)の酢酸菌としては、グルコノバクター・フラトウリ(Gluconobacter frateurii)、グルコノバクター・セリナス(Gluconobacter cerinus)などが例示される。
【0033】
グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)の酢酸菌としては、グルコンアセトバクター・スウィングシ(Gluconacetobacter swingsii)、グルコンアセトバクター・キシリヌス(Gluconacetobacter xylinus)、グルコンアセトバクター・ジアゾトロフィカス(Gluconacetobacter diazotrophicus)、グルコンアセトバクター・インタメデイウス(Gluconacetobacter intermedius)、グルコンアセトバクター・サッカリ(Gluconacetobacter sacchari)、グルコンアセトバクター・マルタセティ(Gluconacetobacter maltaceti)、グルコンアセトバクター・コンブチャ(Gluconacetobacter kombuchae)、及びグルコンアセトバクター・リックウェフェシエンス(Gluconacetobacter liquefaciens)などが例示される。
【0034】
コマガタエイバクター属(Komagataeibacter)の酢酸菌としては、コマガタエイバクター・ハンゼニイ(Komagataeibacter hansenii)、コマガタエイバクター・ザイリナス(Komagataeibacter xylinus)、コマガタエイバクター・ユーロペウスヨーロッパエウス(Komagataeibacter europaeus)、コマガタエイバクター・オボエディエンス(Komagataeibacter oboediens)などが例示される。
【0035】
アサイア属(Asaia)の酢酸菌としては、アサイア・ボゴレンシス(Asaia bogorensis)、アサイア・シアメンシス(Asaia siamensis)などが例示される。
【0036】
アシドモナス属(Acidomonas)の酢酸菌としては、アシドモナス・メタノリカス(Acidomonas methanolicus)などが例示される。
【0037】
酢酸菌としては、好ましくは、アセトバクター属(Acetobacter)に属する細菌、グルコノバクター属(Gluconobacter)に属する細菌、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)に属する細菌、アサイア属(Asaia)に属する細菌、アシドモナス属(Acidomonas)に属する細菌等が挙げられる。菌体臭、風味及び/又は食感調整作用等の観点から、酢酸菌として、より好ましくはアセトバクター属(Acetobacter)に属する細菌、グルコンアセトバクター属(Gluconacetobacter)、コマガタエイバクター属(Komagataeibacter)に属する細菌等が挙げられ、さらに好ましくは、アセトバクター・マローラム(Acetobacter malorum)、コマガタエイバクター・キシリヌス(Komagataeibacter xylinus NBRC 15237 )、コマガタエイバクター・ユーロペウス(Komagataeibacter europaeus NBRC 3261)が挙げられ、特に好ましくはアセトバクター・マローラム(Acetobacter malorum)挙げられる。
【0038】
アセトバクター・マローラム(Acetobacter malorum)として、好適には、アセトバクター・マローラムNCI1683(Acetobacter malorum NCI1683)株(FERM BP-10595)が挙げられる。アセトバクター・マローラムNCI1683(Acetobacter malorum NCI1683)株(FERM BP-10595)は、ロシアの発酵食品であるスメタナから分離された酢酸菌であり、ユビキノンタイプはQ9であって、16SrRNAの配列が完全に一致することなどから、アセトバクター・マローラム(Acetobacter malorum)(例えば、「インターナショナル ジャーナル・オブ・システマチック・アンド・エボリューショナリー・マイクロバイオロジー(International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology)」、52巻、p.1551-1558、2002年参照)と同定された株であり、独立行政法人 産業技術総合研究所特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に2006年4月7日付けで受託番号FERM BP-10595として寄託された。
【0039】
<酢酸菌生成物>
酢酸菌生成物とは、酢酸菌によって生成される成分全般を指す。本発明の酢酸菌生成物としては、例えば、酢酸、セルロース、多糖類、酢酸菌型セラミド、イソアミルアルコール、イソブタノール、ブタノール、プロパノール、n-アミルアルコール、イソ吉草酸、イソ酪酸、酪酸、プロピオン酸、吉草酸等が挙げられる。
【0040】
<親水性溶媒>
「親水性溶媒」とは、サンプルAの液部を構成する溶媒であり、実質的水溶液であるのが好ましい。水以外に含まれる成分としては、水溶性タンパク質、水溶性アミノ酸、水溶性食物繊維(ペクチン、グルコマンナン等)、可溶性糖類、水溶性ビタミン、水溶性アルコール、ポリフェノール、ミネラル、ミネラル塩、pH調整剤等が挙げられる。
【0041】
なお、親水性溶媒中の水分含有量は、通常50w/w%以上、好ましくは55w/w%以上、より好ましくは60w/w%以上、さらに好ましくは65w/w%以上、さらにより好ましくは70w/w%以上、とりわけ好ましくは80w/w%以上、特に好ましくは90w/w%以上であっても良い。また、その上限値は、特に限定されるものではないが、例えば99.99w/w%以下、99.9w/w%以下、99.0w/w%以下、98.0w/w%以下、97.0w/w%以下、96.0w/w%以下、95.0w/w%以下、94.0w/w%以下、93.0w/w%以下、92.0w/w%以下、91.0w/w%以下、90w/w%以下であっても良い。また、その下限値は、例えば、51w/w%以上、54w/w%以上、59w/w%以上、65w/w%以上、70w/w%以上、73w/w%以上、75w/w%以上、78w/w%以上、80w/w%以上、83w/w%以上、85w/w%以上、88w/w%以上であっても良い。
【0042】
サンプルAにおける親水性溶媒含有量は、本発明の課題の重要性が大きくなる観点から所定値以上であることが好ましい。サンプルAにおける親水性溶媒含有量は、通常50w/v%以上、好ましくは55w/v%以上、より好ましくは60w/v%以上、さらに好ましくは65w/v%以上、さらにより好ましくは70w/v%以上、とりわけ好ましくは80w/v%以上、特に好ましくは90w/v%以上であっても良い。また、その上限値は、特に限定されるものではないが、例えば99.99w/v%以下、99.9w/v%以下、99.0w/v%以下、98.0w/v%以下、97.0w/v%以下、96.0w/v%以下、95.0w/v%以下、94.0w/v%以下、93.0w/v%以下、92.0w/v%以下、91.0w/v%以下、90w/v%以下であっても良い。また、その下限値は、例えば、51w/v%以上、54w/v%以上、59w/v%以上、65w/v%以上、70w/v%以上、73w/v%以上、75w/v%以上、78w/v%以上、80w/v%以上、83w/v%以上、85w/v%以上、88w/v%以上であっても良い。また、本発明のサンプルAにおける親水性溶媒の含有量は、好ましくは50~99.999w/v%、より好ましくは60~99.999w/v%、さらに好ましくは70~99.999w/v%、特に好ましくは80~99.999w/v%、83~99.999w/v%、85~99.999w/v%、88~99.999w/v%、90~99.999w/v%であっても良い。上記の範囲に親水性溶媒の含有量を調整することで、被測定対象脂溶性成分以外の成分を、後述する下層サンプルC2に、効率的に分離でき、結果的に被測定対象脂溶性成分の分析精度が向上する。
【0043】
<可溶性糖類>
本発明のサンプルAは、親水性溶媒に「可溶性糖類」を含有することが好ましい。本発明のサンプルAが可溶性糖類を含有することで、後述する親水性溶媒の密度を所定範囲とするのが容易になる。また、特に本発明のサンプルAが前記細胞又は組織を含有する態様である場合、従来技術では、可溶性糖類と前記細胞又は組織の存在が、有機溶媒相と水相との分離に阻害的に働く。その原理は不明であるが、一般的に可溶性糖類は保水性が高いところ、前記細胞又は組織に可溶性糖類の分子が吸着することで、水相と有機溶媒相との分離を阻害しているものと推察される。本発明は、親水性溶媒と、有機溶媒を含有する媒体aの密度を調整することで、これらの課題を解決できるものであるから、特にサンプルAが前記細胞又は組織を含有し、かつ可溶性糖類を含有する場合、従来技術の課題を解決しつつ、発明の効果を高めることができる。よって、本発明の好ましい態様の一例として、例えば、サンプルAが、被測定対象脂溶性成分を含有する細胞又は組織を含有し、かつ可溶性糖類を含有する態様、サンプルAが被測定脂溶性成分を含む細菌、真菌類、古細菌の細胞又は組織を含有し、かつ可溶性糖類を含有する態様、サンプルAが被測定対象脂溶性成分を含有する酢酸菌体を含有し、かつ可溶性糖類を含有する態様、さらにサンプルAが被測定対象脂溶性成分としてセラミドを含有する酢酸菌体を含有し、かつ可溶性糖類を含有する態様が挙げられる。
【0044】
本発明において「可溶性糖類」とは、水に可溶な糖類をいい、単糖類及び少糖類(単糖が2~10個結合した糖類)の総称をいう。従って、それよりもはるかに多くの糖が結合したでんぷんは含まれない。
【0045】
本発明のサンプルAにおける可溶性糖類含量は、前記従来技術が適用しづらく、解決すべき課題の重要性が大きくなり、かつ本発明の効果が大きくなる観点から、所定の含有量であることが好ましい。当該含有量は、親水性溶媒中の濃度として、例えば0.01~25w/v%の範囲とすることができ、好ましくは0.02~24w/v%、より好ましくは0.05~23w/v%、さらに好ましくは0.08~22w/v%、さらにより好ましくは0.1~21.5w/v%、とりわけ好ましくは0.15~20.5w/v%、特に好ましくは0.20~16.0w/v%であっても良い。また、その上限は、好ましくは25w/v%以下であるが、20w/v%以下、18w/v%以下、17w/v%以下、又は15w/v%以下、又は14w/v%以下、又は13w/v%以下、又は12w/v%以下、又は11w/v%以下、又は10w/v%以下、又は9w/v%以下、又は8w/v%以下、又は7w/v%以下、又は6w/v%以下とすることができる。一方、その下限は限定されないが、0.01w/v%以上、0.05w/v%以上、0.1w/v%以上、0.2w/v%以上、0.3w/v%以上、0.5w/v%以上、0.8w/v%以上、1.0w/v%以上、1.5w/v%以上、2.0w/v%以上であっても良い。
【0046】
本発明のサンプルA中の可溶性糖類含量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)における「利用可能炭水化物(ぶどう糖、果糖、ガラクトース、ショ糖、麦芽糖、乳糖及びトレハロース)」の測定方法に準じて高速液体クロマトグラフィー法を用いて測定し、各測定値を濃度既知の単糖類又は少糖類(2~10糖)標準品との含量と比較して得られた数値を合計することで求める。
【0047】
前記の通り、本発明のサンプルAは脂溶性成分を含有する細胞又は組織を含有し、かつ可溶性糖類を含有することが好ましいが、この態様においては、前記と同様の理由により、従来技術が適用しづらく、解決すべき課題の重要性が大きくなり、かつ本発明の効果が大きくなる観点から、その含有量比が所定範囲内であることが好ましい。具体的には、サンプルA中の細胞又は組織の含有量(mg/100ml)の値を、サンプルAの親水性溶媒100mlに対する可溶性糖類の含有量(g)の値で除した値(これを、値Dという)が所定範囲内であることがより好ましい。本発明のサンプルAにおける値Dの範囲は、好ましくは1~1000、より好ましくは2~700、さらに好ましくは3~500、さらにより好ましくは4~400、とりわけ好ましくは6~300、特に好ましくは8~250である。すなわち、本発明の好ましい態様の一例として、例えば、サンプルAが、脂溶性成分を含有する細胞又は組織を含有し、かつ可溶性糖類を含有し、かつ値Dが上記範囲を充足する態様、さらに、サンプルAが被測定脂溶性成分を含む細菌、真菌類、古細菌の細胞又は組織を含有し、かつ可溶性糖類を含有し、かつ値Dが上記範囲を充足する態様、サンプルAが酢酸菌体を含有し、かつ可溶性糖類を含有し、かつ値Dが上記範囲を充足する態様、さらにはサンプルAがセラミドを含有する酢酸菌体を含有し、かつ可溶性糖類を含有し、かつ値Dが上記範囲を充足する態様が挙げられる。
【0048】
<親水性溶媒の密度>
本発明は、サンプルA中の親水性溶媒と、後述する媒体aの密度を所定範囲にする段階を含むことから、親水性溶媒の密度を所定範囲とすることが好ましい。その原理は不明であるが、親水性溶媒の密度が所定範囲にあることが、有機溶媒と親水性溶媒との相分離を容易にし、かつ、被測定対象脂溶性成分の、サンプルAから有機溶媒への移行を容易にしていると考えられる。当該密度は、例えば、20℃において、好ましくは1.003~1.250g/ml、より好ましくは1.0035~1.230g/ml、さらに好ましくは1.004~1.200g/ml、さらにより好ましくは1.005~1.180g/ml、とりわけ好ましくは1.005~1.155g/ml、特に好ましくは1.005~1.145g/mlであっても良い。また、上限値は特に限定されないが、例えば、20℃において1.230g/ml以下、1.200g/ml以下、1.190g/ml以下、1.160g/ml以下、1.150g/ml以下、1.140g/ml以下、1.130g/ml以下、1,110g/ml以下、1.100g/ml以下、1.090g/ml以下、1.070g/ml以下、1.060g/ml以下、1.040g/ml以下、1.030g/ml以下、1.010g/ml以下であっても良い。また、下限値は特に限定されないが、例えば1.001g/ml以上、1.0015g/ml以上、1.002g/ml以上、1.0025g/ml以上、1.003g/ml以上、1.0035g/ml以上、1.004g/ml以上、1.0045g/ml以上、1.005g/ml以上、1.0055g/ml以上、1.006g/ml以上、1.0065g/ml以上、1.007g/ml以上、1.0075g/ml以上、1.008g/ml以上、1.0085g/ml以上、1.009g/ml以上、1.0095g/ml以上、1.010g/ml以上、1.0150g/ml以上、1.020g/ml以上、1.025g/ml以上、1.030g/ml以上、1.035g/ml以上、1.040g/ml以上、1.045g/ml以上、1.050g/ml以上、1.055g/ml以上、1.060g/ml以上、1.070g/ml以上であっても良い。
【0049】
<段階(ii)>
段階(ii)は、次の要件(X)、(Y)、(Z)を満たすように、サンプルAに媒体aを添加してサンプルBを得る段階である。
以下、段階(ii)を詳細に説明する。
【0050】
<サンプルB>
「サンプルB」とは、サンプルAに、媒体aを添加して得られる組成物である。段階(ii)では、次の要件(X)、(Y)、(Z)を満たすようにサンプルBを得る。
・要件(X):20℃における媒体aの密度が0.998g/ml未満である
・要件(Y):媒体aが、オクタノール/水分配係数が0.50~4.0である少なく とも1種の有機溶媒を含有する
・要件(Z):20℃における親水性溶媒と媒体aとの密度比(媒体aの密度/親水性 溶媒の密度)が0.6000~0.85000である
【0051】
<媒体a>
「媒体a」とは、有機溶媒、又は少なくとも1種の有機溶媒を含有する液体組成物を指 す。サンプルAに対する媒体aの添加量は、所定量であることができ、例えばサンプル Aの容量1mlあたり0.1~100ml、0.5~70ml、1.0~50ml、1 .5~30ml、2.0~10mlであってもよい。また、その上限値は特に限定され ないが、例えば、サンプルAの容量1mlあたり100ml以下、90ml以下、80 ml以下、70ml以下、60ml以下、50ml以下、40ml以下、30ml以下 、20ml以下、10ml以下、5ml以下であってもよい。また、その下限値は特に 限定されないが、例えば、サンプルAの容量1mlあたり0.1ml以上、0.3ml 以上、0.7ml以上、、1.0ml以上、1.5ml以上、2.0ml以上であって もよい。
【0052】
<有機溶媒>
「有機溶媒」とは、有機化合物であって他の物質を溶解する物質の総称を指す。本発明の媒体aに含有される有機溶媒は、前記要件X及びYを満たす限りにおいて特に制限されず、例えばアルコール、脂肪族カルボン酸エステル、ケトン、エーテル等が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等が挙げられ、脂肪族カルボン酸エステルとしては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸等の分枝又は直鎖の飽和脂肪酸のほか、各種の不飽和脂肪酸のアルコールエステル、例えば上記アルコールのエステル等が挙げられる。ケトンとしては、アセトン、エチルメチルケトン、メチルプロピルケトン、イソプロピルメチルケトン、ブチルメチルケトン、イソブチルケトン等が例示される。エーテルとしては、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレンオキシド、テトラヒドロフラン(THF)、フラン、1,4-ジオキサン、アニソール、ベンゾフラン、ジベンゾフラン、クラウンエーテル、t-ブチルメチルエーテル等が挙げられる。また、前記以外にも、例えばジクロロメタン、クロロホルム、酢酸エチル、トルエン、ヘキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等が挙げられる。本発明の媒体aは、好ましくは2種以上の有機溶媒を含有する。また、本発明の媒体aは好ましくはt-ブチルメチルエーテルを含有する。さらに、本発明の媒体aは、とりわけ好ましくはt-ブチルメチルエーテル及び1種以上の有機溶媒を含有し、特に好ましくは、本発明の媒体aは少なくともt-ブチルメチルエーテル及びメタノールを含有する。
【0053】
<t-ブチルメチルエーテル>
本発明の媒体aは、t-ブチルメチルエーテルを含有することが好ましい。t-ブチルメチルエーテル(メチル-t-ブチルエーテル、メチルtert-ブチルエーテル、MTBE、tBMEとも称される)は、「CAS:1634-04-4」で表される有機溶媒である。本発明の媒体aにおけるt-ブチルメチルエーテルの含有割合(t-ブチルメチルエーテルの容量/媒体aの容量)は、好ましくは0.100~0.970、より好ましくは0.200~0.930、さらに好ましくは0.300~0.900、さらにより好ましくは0.400~0.870、とりわけ好ましくは0.450~0.850、特に好ましくは0.500~0.800である。また、その上限値は、特に限定されないが、例えば、0.980以下、0.960以下、0.940以下、0.920以下、0.900以下、0.880以下、0.860以下、0.840以下、0.820以下、0.800以下、0.780以下、0.760以下、0.740以下、0.720以下、0.700以下、0.680以下、0.660以下、0.640以下、0.620以下、0.600以下である。また、下限値は、特に限定されないが、例えば0.100以上、0.140以上、0.180以上、0.220以上、0.260以上、0.280以上、0.320以上、0.360以上、0.400以上、0.440以上、0.480以上、0.520以上である。
【0054】
<メタノール>
本発明の媒体aは、メタノール(CAS:67-56-1)を含有することが好ましい。本発明の媒体aにおけるメタノールの含有割合(メタノールの容量/媒体aの容量)は、好ましくは0.060~0.900、より好ましくは0.090~0.800、さらに好ましくは0.120~0.700、さらにより好ましくは0.150~0.600、とりわけ好ましくは0.180~0.500、特に好ましくは0.210~0.400である。また、そのまた、上限値は、特に限定されないが、例えば、0.950以下、0.0850以下、0.750以下、0.650以下、0.550以下、0.450以下、0.350以下、0.300以下、0.280以下である。また、下限値は、特に限定されないが、例えば0.050以上、0.0800以上、0.110以上、0.120以上、0.140以上、0.160以上、0.180以上、0.200以上、0.220以上、0.240以上である。
【0055】
本発明の媒体aは、t-ブチルメチルエーテル及びメタノールの両方を含有することが好ましい。その含有比(t-ブチルメチルエーテルの容量/メタノールの容量)は特に限定されないが、好ましくは0.300~0.950、より好ましくは0.350~0.930、さらに好ましくは0.400~0.900、さらにより好ましくは0.450~0.870、とりわけ好ましくは0.500~0.850、特に好ましくは0.550~0.830である。また、その上限値は、特に限定されないが、例えば、0.950以下、0.920以下、0.890以下、0.860以下、0.830以下、0.800以下、0.770以下、0.760以下、0.755以下、0.750以下、0.730以下、0.700以下、0.680以下、0.660以下、0.640以下、0.620以下、0.600以下である。また、下限値は、特に限定されないが、例えば0.120以上、0.160以上、0.200以上、0.250以上、0.300以上、0.350以上、0.400以上、0.440以上、0.480以上、0.520以上である。さらに、媒体aにおけるt-ブチルメチルエーテル及びメタノールの合計含有量の割合(t-ブチルメチルエーテルとメタノールの合計容量/媒体aの容量)は、その下限は、例えば0.35以上、0.40以上、0.45以上、0.50以上、0.55以上、0.60以上、0.65以上、0.70以上、0.75以上、0.80以上、0.85以上、0.90以上、0.95以上、1であっても良い。また、その上限は、例えば1以下、0.99以下、0.95以下、0.90以下、0.85以下、0.80以下であっても良い。また、t-ブチルメチルエーテル及びメタノールを、媒体aのオクタノール/水分配係数が所定範囲となるように含有することが好ましく、具体的には0.50以上4.0以下であっても良い。より具体的にその下限は、0.50以上、又は0.60以上、又は0.70以上、又は0.80以上、又は0.90以上であってもよく、その上限は特に制限されないが、通常4.0以下、又は3.9以下、又は3.6、又は3.5以下、又は3.0以下、又は2.5以下、又は2.0以下、又は1.9以下、又は1.8以下、又は1.7以下、又は1.6以下、又は1.5以下、又は1.4以下、又は1.3以下、又は1.2以下、又は1.15以下、又は1.10以下であってもよい。
【0056】
<要件X>
本発明の媒体aは、20℃における密度が、通常0.998g/ml未満である。前記密度は、20℃において、好ましくは0.700~0.995g/ml、より好ましくは0.720~0.900g/ml、さらに好ましくは0.730~0.890g/ml、さらにより好ましくは0.735~0.880g/ml、とりわけ好ましくは0.736~0.850g/ml、特に好ましくは0.739~0.785g/mlであっても良い。また、上限値は特に限定されないが、例えば、20℃において0.995g/ml以下、0.992g/ml以下、0.990g/ml以下、0.985g/ml以下、0.980g/ml以下、0.975g/ml以下、0.970g/ml以下、0.965g/ml以下、0.963g/ml以下、0.960g/ml以下、0.955g/ml以下、0.950g/ml以下、0.945g/ml以下、0.940g/ml以下、0.935g/ml以下、0.930g/ml以下、0.925g/ml以下、0.920g/ml以下、0.915g/ml以下、0.910g/ml以下、0.905g/ml以下、0.900g/ml以下、0.895g/ml以下、0.890g/ml以下、0.885g/ml以下、0.880g/ml以下、0.875g/ml以下、0.870g/ml以下、0.865g/ml以下、0.860g/ml以下、0.855g/ml以下、0.850g/ml以下、0.845g/ml以下、0.840g/ml以下、0.835g/ml以下、0.830g/ml以下、0.825g/ml以下、0.820g/ml以下、0.817g/ml以下、0.814g/ml以下、0.811g/ml以下、0.809g/ml以下、0.806g/ml以下、0.803g/ml以下、0.800g/ml以下、0.797g/ml以下、0.794g/ml以下、0.791g/ml以下、0.788g/ml以下、0.785g/ml以下、0.782g/ml以下、0.779g/ml以下、0.776g/ml以下、0.773g/ml以下、0.770g/ml以下、0.767g/ml以下、0.764g/ml以下、0.761g/ml以下、0.758g/ml以下、0.755g/ml以下であってもよい。また、下限値は特に限定されないが、例えば、20℃において0.660g/ml以上、0.663g/ml以上、0.665g/ml以上、0.668g/ml以上、0.670g/ml以上、0.673g/ml以上、0.675g/ml以上、0.677g/ml以上、0.680g/ml以上、0.683g/ml以上、0.685g/ml以上、0.687g/ml以上、0.690g/ml以上、0.693g/ml以上、0.696g/ml以上、0.700g/ml以上、0.703g/ml以上、0.705g/ml以上、0.707g/ml以上、0.710g/ml以上、0.712g/ml以上、0.715g/ml以上、0.718g/ml以上、0.720g/ml以上、0.723g/ml以上、0.725g/ml以上、0.727g/ml以上、0.730g/ml以上、0.733g/ml以上、0.735g/ml以上、0.738g/ml以上、0.740g/ml以上、0.741g/ml以上、0.742g/ml以上、0.743g/ml以上、0.744g/ml以上、0.745g/ml以上、0.746g/ml以上、0.750g/ml以上、0.751g/ml以上であってもよい。
【0057】
<要件(Y)>
本発明の媒体aは、一定の疎水性を有する有機溶媒を含有し、具体的には、本発明の媒体aは相対的に段階(i)で用いる親水性溶媒に対して疎水性を有する媒体であればよい。具体的には本発明の媒体aが、オクタノール/水分配係数が所定値以上である少なくとも1種の有機溶媒を含有する。前記オクタノール/水分配係数はOECDテストガイドライン107(Adopted:1995年7月27日に改版したもの)に規定されるフラスコ振とう法によって測定することができる。媒体aに含有される少なくとも1種の有機溶媒の、オクタノール/水分配係数は、所定範囲にあることが好ましく、具体的には0.50以上4.0以下であっても良い。より具体的にその下限は、0.50以上、又は0.60以上、又は0.70以上、又は0.80以上、又は0.90以上であってもよい。また、その上限は特に制限されないが、通常4.0以下、又は3.9以下、又は3.6、又は3.5以下、又は3.0以下、又は2.5以下、又は2.0以下、又は1.9以下、又は1.8以下、又は1.7以下、又は1.6以下、又は1.5以下、又は1.4以下、又は1.3以下、又は1.2以下、又は1.15以下、又は1.10以下であってもよい。また、媒体aが上記オクタノール/水分配係数に関する規定を充足しても良い。
また、媒体aにおいて、上記オクタノール/水分配係数を有する有機溶媒が所定割合以上含有されることが好ましい。具体的にはその下限は10w/v%以上、又は20w/v%以上、又は30w/v%以上、又は40w/v%以上、又は50w/v%以上、又は60w/v%以上、又は70w/v%以上、又は80w/v%以上、又は90w/v%以上、又は100w/v%であってもよい。
さらに、媒体aが上記オクタノール/水分配係数に関する規定を充足するように有機溶媒を所定割合含有しても良い。
また、本発明の媒体aが、20℃における水への溶解度が0.0002~10w/v%である少なくとも1種の有機溶媒を含有するものであっても良い。前記溶解度はJISK8001:2017試薬試験方法通則に記載されている方法によって算出できる。すなわち、一定量の溶質を,試料が固体の場合は粉末とした後、水中に入れ、20℃±5℃で5分ごとに強く30秒間振り混ぜるとき、30分以内に溶けるために必要な水の体積(ml)を求めることで測定できる。媒体aに含有される少なくとも1種の有機溶媒の、20℃における水への溶解度は、所定範囲にあることが好ましく、その範囲は、好ましくは0.0005~9.0w/v%、より好ましくは0.005~8.0w/v%、さらに好ましくは0.01~7.0w/v%、さらにより好ましくは0.1~6.0w/v%、とりわけ好ましくは0.5~5.5w/v%、特に好ましくは1.0~5.0w/v%であっても良い。また、上限値は特に限定されないが、例えば、20℃において10.0w/v%以下、9.0w/v%以下、8.0w/v%以下、7.5w/v%以下、7.0w/v%以下、6.5w/v%以下、6.0w/v%以下、5.5w/v%以下、5.3w/v%以下、5.0w/v%以下、4.5w/v%以下であっても良い。また、下限値は特に限定されないが、例えば、20℃において0.002w/v%以上、0.004w/v%以上、0.008w/v%以上、0.012w/v%以上、0.015w/v%以上、0.020w/v%以上、0.080w/v%以上、0.100w/v%以上、0.200w/v%以上、0.400w/v%以上、1.0w/v%以上、1.3w/v%以上、1.5w/v%以上であっても良い。
また、媒体aにおける上記溶解度を有する有機溶媒が10w/v%以上、又は20w/v%以上、又は30w/v%以上、又は40w/v%以上、又は50w/v%以上、又は60w/v%以上、又は70w/v%以上、又は80w/v%以上、又は90w/v%以上、又は100w/v%であってもよい。
さらに、媒体aが上記20℃における水への溶解度に関する規定を充足するように有機溶媒を含有しても良い。
【0058】
<要件Z>
本発明の分析方法は、20℃における親水性溶媒と媒体aとの密度比(媒体aの密度/親水性溶媒の密度)が所定範囲であることが好ましい。その原理は不明であるが、当該密度比が所定範囲にあることで、有機溶媒と親水性溶媒との相分離を容易にし、かつ、被測定対象脂溶性成分の、サンプルAから有機溶媒への移行が容易になると考えられる。20℃における親水性溶媒と媒体aとの密度比(媒体aの密度/親水性溶媒の密度)は、通常0.6000~0.8500、好ましくは0.6020~0.8000、より好ましくは0.6040~0.7900、さらに好ましくは0.6060~0.7800、さらにより好ましくは0.6100~0.7700、とりわけ好ましくは0.6150~0.7600、特に好ましくは0.6200~0.7550、0.6300~0.7530、0.6350~0.7500、0.6400~0.7490である。また、上限値は特に限定されないが、例えば、20℃において0.7950以下、0.7850以下、0.7750以下、0.7650以下、0.7600以下、0.7550以下、0.7530以下、0.7510以下、0.7480以下、0.7450以下、0.7430以下、0.7420以下、0.7410以下、0.7400以下、0.7380以下、0.7360以下、0.7320以下、0.7300以下、0.7210以下、0.7110以下、0.7000以下である。また、下限値は特に限定されないが、例えば、20℃において0.6000以上、0.6010以上、0.6030以上、0.6040以上、0.6050以上、0.6080以上、0.6120以上、0.6140以上、0.6160以上、0.6210以上、0.6250以上、0.6350以上、0.6420以上、0.6500以上、0.6600以上、0.6700以上、0.6750以上、0.6800以上、0.6900以上、0.6950以上、0.7000以上である。
【0059】
<サンプルBの混合;段階(ii‘)>
本発明の分析方法では、サンプルAに媒体aを添加してサンプルBを得ることで、被測定対象脂溶性成分を、有機溶媒に抽出することができる。従って、サンプルBを得る段階では、サンプルBに有機溶媒を効率的に抽出させるために、サンプルBを所定の時間混合する工程(段階(ii‘))があってもよい。前記混合方法としては、例えば振蕩培養機を用いた混合等が挙げられる。前記混合時間は、特に制限されるものではないが、好ましくは10~1440分間、より好ましくは12~1080分間、さらに好ましくは15~540分間、さらにより好ましくは20~480分間、とりわけ好ましくは25~240分間、特に好ましくは30~90分である。また、混合時間の上限は特に限定されないが、例えば1200分間以下、1100分間以下、1000分間以下、900分間以下、800分間以下、700分間以下、600分間以下、500分間以下、300分間以下、200分間以下、180分間以下、150分間以下、120分間以下、80分間で以下ある。また、混合時間の下限は特に限定されないが、例えば、10分間以上、12分間以上、13分間以上、16分間以上、18分間以上、20分間以上、24分間以上、27分間以上、33分間以上、40分間以上、45分間以上、48分間以上である。
【0060】
<段階(iii)>
段階(iii)は、サンプルBを相分離し、分析検体である上層サンプルC1と、下層サンプルC2とを分離する段階である。
以下、段階(iii)を詳細に説明する。
段階(iii)は、
【0061】
<上層サンプルC1>
「上層サンプルC1」とは、サンプルBを相分離させた組成物の上層を指す。本発明の分析方法は、前記要件(X)、(Y)、(Z)を満たすものであるため、上層サンプルC1に被測定対象脂溶性成分が抽出される。従って、上層サンプルC1を回収することで、被測定対象脂溶性成分の分析検体とすることができる。
【0062】
サンプルBを相分離させる方法は特に制限されず、例えば卓上遠心機で遠心する方法等が挙げられる。前記遠心は、例えば20℃で3~30分間、5~15分間、7~12分間、3000rpmで行うことができる。
【0063】
<段階(iii‘)>
前記上層サンプルC1は、そのまま分析検体としてもよいが、さらに濃縮してもよく(段階(iii‘))、当該濃縮産物を分析検体としてもよい。または当該濃縮産物を水や前記有機溶媒、またはそれらの混合物で希釈することで分析検体としてもよい。なお、前記水と有機溶媒の混合物としては、例えば、水、クロロホルム、メタノールを含有する混合物が挙げられる。前記濃縮を行うことで、例えば、被測定対象脂溶性成分が微量である場合等においても、分析精度を上げることができる。なお、前記濃縮方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ロータリーエバポレーターで溶媒を除去する方法等が挙げられ、この態様においては、濃縮物が固形状となってもよい。
【0064】
なお、本発明のサンプルAが、特に被測定対象脂溶性成分を含有する細胞若しくは組織、及び/又は可溶性糖類を含む態様である場合、前記従来技術で前記被測定対象脂溶性成分を抽出し、濃縮を行うと、前記細胞若しくは組織、又は可溶性糖類が有機溶媒に残存し、濃縮物がべたついてしまい、分析に適さなくなる。従って、前記濃縮が容易に行える点からも、本発明は有用である。
【0065】
<下層サンプルC2>
「下層サンプルC2」とは、サンプルBを相分離させた組成物の下層を指す。本発明の分析方法は、前記要件(X)、(Y)、(Z)を満たすものであるため、下層サンプルC2には親水性溶媒の層が形成される。サンプルA中に細胞や組織が含有される場合、この下層サンプルC2には、細胞または組織の沈殿が存在することがある。前記従来技術では、この沈殿が水相と有機溶媒相の界面に存在する場合があるが、本発明方法では、通常この沈殿の過半数が下層サンプルC2に存在し、さらに好ましくは60w/w%以上、さらにより好ましくは70w/w%以上、とりわけ好ましくは80w/w%以上、特に好ましくは90w/w%以上、95w/w%以上、または全量が下層サンプルC2に存在する。
【0066】
本発明において、被測定対象脂溶性成分の種類によっては、前記下層サンプルC2に、被測定対象脂溶性成分が残存することもあり得る。従って、下層サンプルC2を回収したものに媒体aを添加して、再度脂溶性成分を抽出してもよい。
【0067】
<段階(iV)>
段階(iV)は、サンプルC1中の脂溶性成分含有量を測定する段階である。
以下、段階(iV)を詳細に説明する。
【0068】
<脂溶性成分の測定>
サンプルC1中の被測定対象脂溶性成分含有量測定方法は、特に制限されるものではなく、高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)や、ガスクロマトグラフィーを適用できるが、好ましくは高速液体クロマトグラフィー法(HPLC法)が挙げられる。
【0069】
<高速液体クロマトグラフィー>
本発明の段階(iV)は、サンプルC1を高速液体クロマトグラフィーに付す段階を有
することが好ましい。本発明の分析方法では、高速液体クロマトグラフィーにおいて、ドリフト、うねりやノイズが抑制され、目的成分ピーク前後で略水平とすることができる。従って、濃度既知の目的成分のピークと、分析検体における目的成分のピークの面積比の比較が容易になり、測定誤差が小さくなる。高速液体クロマトグラフィーに供する条件は特に制限されるものではないが、本発明は汎用的に使用できるものであるから、様々な脂溶性成分が上層サンプルC1に抽出され得る。従って、高速液体クロマトグラフィーにおける移動相は、複数の有機溶媒を使用することが好ましい。これによって、高速液体クロマトグラフィーにおける各種脂溶性成分のピークを分離させることが容易になる。当該条件としては、例えば、少なくとも2種または3種の有機溶媒を使用して移動相の極性を調整する方法が挙げられる。その一例として、例えば移動相において、極性の小さい溶媒と、極性が大きい溶媒とを、その流量を調整することが好ましく、経時的に移動相の極性を上げる工程を有することが、特に好ましい。前記少なくとも2種または3種の有機溶媒は任意に選択できるが、例えば、メタノール、アセトニトリル、クロロホルム、ヘキサン、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、イソオクタン、Nーヘプタン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、酢酸エチル、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、エタノール、プロパノール、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、t-ブチルメチルエーテル等から選択でき、一例として、メタノール、及びt-ブチルメチルエーテルを採用できる。この態様においては、移動相におけるメタノールの含有割合に対するt-ブチルメチルエーテルの含有割合が3倍以上10倍以下となるように調整する工程を有し、その後、メタノールの含有割合に対するt-ブチルメチルエーテルの含有割合が0.25倍以上0.55倍以下となるように経時的に移動相のメタノールの含有割合に対するt-ブチルメチルエーテルの含有割合を下げる工程を有してもよい。さらに、移動相に使用する少なくとも3種の有機溶媒として、メタノール、t-ブチルメチルエーテル、およびヘキサン(CAS番号110-54-3)を採用してもよい。この態様においては、前記した移動相におけるメタノールの含有割合に対するt-ブチルメチルエーテルの含有割合が3倍以上10倍以下となるように調整する工程において、メタノールとt-ブチルメチルエーテルの合計含有割合に対するヘキサンの含有割合が7倍以上であるように調整する工程を有してもよく、その後、移動相におけるメタノールとt-ブチルメチルエーテルの合計含有割合に対するヘキサンの含有割合が0.1倍以下となるように調整する工程を有しても良い。なお、各種有機溶媒の極性の大きさは、同一温度における比誘電率(溶媒の誘電率と真空の誘電率の比)を比べることで判断でき、比誘電率の値が大きい溶媒の方が、より極性が大きいと判断できる。
【0070】
<濁度>
本発明のサンプルAは、濁度が所定範囲にあることが好ましい。濁度は、攪拌したサンプルを、分光光度計を用いて波長660nmにおける吸光度を測定した数値で特定できる。具体的には、本発明のサンプルAの濁度は、好ましくは、1.100~3.600、より好ましくは1.100~3.400、さらに好ましくは1.100~3.200、さらにより好ましくは1.100~3.000、とりわけ好ましくは1.100~2.800、特に好ましくは1.100~2.700である。また、その上限値は、特に限定されないが、例えば3.800以下、3.700以下、3.600以下、3.400以下、3.200以下、3.000以下、2.800以下、2.700以下、2.500以下、2.400以下、2.200以下、2.000以下であってもよい。また、その下限値は特に限定されないが、例えば、1.010以上、1.030以上、1.060以上、1.090以上、1.110以上、1.130以上、1.150以上、1.200以上、1.300以上であってもよい。
【0071】
<タンパク質>
本発明のサンプルAの好ましい態様は前記の通りであるが、本発明のサンプルAは、サンプルBの相分離を効率的に行う観点から、総タンパク質含有量が所定の範囲であることが好ましい。本発明のサンプルAの総タンパク質含有量は、好ましくは0~15w/v%、より好ましくは0~12w/v%、より好ましくは0~10w/v%、さらに好ましくは0~7.0w/v%、さらにより好ましくは0~4.0w/v%、とりわけ好ましくは0~2.0w/v%、特に好ましくは0~0.8w/v%である。また、下限値は、特に制限されるものではないが、例えば、0.0001w/v%以上、0.01w/v%以上、0.02w/v%以上、0.03w/v%以上、0.04w/v%以上、0.05w/v%以上、0.06w/v%以上、0.07w/v%以上、0.08w/v%以上、0.09w/v%以上、0.10w/v%以上である。また、上限値は、例えば、15w/v%以下、13w/v%以下、11w/v%以下、9.0w/v%以下、8.5w/v%以下、8.0w/v%以下、7.5w/v%以下、7.0w/v%以下、6.5w/v%以下、6.0w/v%以下、5.5w/v%以下、5.0w/v%以下、4.5w/v%以下、4.0w/v%以下、3.5w/v%以下、3.0w/v%以下、2.5w/v%以下、2.0w/v%以下、1.5w/v%以下、1.0w/v%以下、0.7w/v以下、0.6w/v%以下、0.4w/v%以下、0.3w/v%以下である。サンプルAのタンパク質含有量は、例えばケルダール法によって測定できる。
【0072】
<pH>
本発明のサンプルAの好ましい態様は前記の通りであるが、本発明のサンプルAは、殺菌効果を付与して脂溶性成分の抽出を安全に行う観点、上層サンプルBの総分離を阻害するタンパク質等の物質を変性させられる観点から、親水性溶媒のpHが所定の範囲内であることが好ましい。pHの調整は、例えば、サンプルAに有機酸や有機酸塩(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、グルコン酸カリウム、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び酢酸等)を含有させることで行える。本発明の親水性溶媒のpHは、好ましくは7以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは4.5以下、さらにより好ましくは4.4以下、とりわけ好ましくは4以下、特に好ましくは3.9以下、3.8以下、3.6以下、3.3以下である。また、pHの下限は特に制限されないが、好ましくは1.3以上、1.5以上、1.7以上、1.9以上、2.1以上である。本発明の親水性溶媒のpHの好ましい範囲は、1.2~7、1.5~5、1.7~4.5、1.9~3.6、2.1~3.5である。pHの調整方法は、特に制限されないが、例えば、サンプルAに各種有機酸や、緩衝作用を有するナトリウム塩を含有させることで実施できる。有機酸の種類は特に制限されるものではないが、殺菌効果が高いという観点から、酢酸を含有することが好ましい。
【0073】
<酢酸>
酢酸とは、酢酸分子(CH3COOH)と酢酸イオン(CH3COO-)をいい、酢酸の含有量とは、これらを合計した濃度を指し、高速液体クロマトグラフィー法によって測定できる。本発明の食酢における酢酸の由来は、特に限定されず、例えば、市販の酢酸であることもできるし、食酢によって含有されるものであってもよいし、酢酸菌に由来するものであってもよい。但し、サンプルAに含有される酢酸の過半数が食酢及び/または酢酸菌由来であることが好ましい。本発明のサンプルAにおける酢酸含有量は、親水性溶媒中の濃度として、好ましくは0.02~15w/v%、より好ましくは0.02~10w/v%、さらに好ましくは0.02~8.0w/v%、よりさらに好ましくは0.02~7.0w/v%、とりわけ好ましくは0.02~5w/v%、特に好ましくは0.02~4.0w/v%である。酢酸の含有量の下限値は特に限定されず、例えば0.01w/v%以上、0.02w/v%以上、0.1w/v%以上、0.2w/v%以上、0.7w/v%以上、1.0w/v%以上、1.5w/v%以上、2.0w/v%以上、2.5w/v%以上、又は4w/v%以上であることができ、上限値は、例えば21w/v%以下、19w/v%以下、17w/v%以下、15w/v%以下、13w/v%以下、11w/v%以下、9w/v%以下、8w/v%以下、7w/v%以下、又は6w/v%以下、5.0w/v%以下、4.5w/v%以下、4.0w/v%以下、3.0w/v%以下、1.0w/v%以下であることができる。
【0074】
<食酢>
食酢とは、酢酸を有効成分とする酸味のある調味料を指す。食酢の種類としては、特に限定されないが、酢酸や氷(ひょう)酢酸を水で薄め、酢の風味に調味した合成酢や、日本農林規格に定められた醸造酢、穀物酢、果実酢、米酢、米黒酢、りんご酢、ぶどう酢、又はエタノールを原料とした酢酸発酵によって製造される酒精酢、中国酢、シェリー酢等が挙げられる。尚、前記果実酢に用いることができる果実としては、例えば後述する果実が挙げられる。本発明のサンプルAが食酢を含有する場合、サンプルAに含有される酢酸のうち、好ましくは50w/w%以上、より好ましくは60w/w%以上、さらにより好ましくは70w/w%以上、とりわけ好ましくは80w/w%以上、特に好ましくは85w/w%以上、90w/w%以上、95w/w%以上、又は全量が食酢に由来してもよい。また、食酢含有量全体に対する醸造酢の割合(質量%)は、好ましくは50w/w%以上、より好ましくは60w/w%以上、さらにより好ましくは70w/w%以上、とりわけ好ましくは80w/w%以上、特に好ましくは90w/w%以上、95w/w%以上、100w/w%(全量)であってもよい。
【0075】
<ナトリウム>
「ナトリウム」とは、ナトリウムイオンをいい、日本食品標準成分表2015年版(七訂)の「ナトリウム」に準じ、原子吸光法を用いて測定したものである。本発明のサンプルAにおけるナトリウムの含有量は、特に制限されるものではないが、例えば、親水性溶媒中の濃度として、0.01w/v%以上15w/v%以下の範囲であればよい。具体的には、その下限は通常0.01w/v%以上であるが、0.03w/v%以上、又は0.05w/v%以上、又は0.07w/v%以上、又は0.1w/v%以上、又は0.3w/v%以上、又は0.5w/v%以上、又は0.6w/v%以上、又は0.7w/v%以上、又は0.8w/v%以上、又は1.0w/v%以上である。一方、その上限は、例えば10w/v%以下、又は8.5w/v%以下、又は8.0w/v%以下、又は7.5w/v%以下、又は7.0w/v%以下、又は6.5w/v%以下、又は6.0w/v%以下、又は5.5w/v%以下、又は5.0w/v%以下、又は3.0w/v%以下、又は2.0w/v%以下、又は1.0w/v%以下、0.5w/v%以下、0.3w/v%以下とすることができる。本発明の分析方法は前記要件(Z)を満たすため、ナトリウム含有量の調整によって親水性溶媒の密度調整を行ってもよいが、水への溶解度が高く、かつ安全性にも優れる観点から、可溶性糖類で行う方がより簡便である。
【0076】
なお、本発明は脂溶性成分の分析方法に関するものであるから、サンプルA中の総脂質含有量は、所定範囲内であることが好ましい。当該脂質含有量は、日本食品標準成分表2015年版(七訂)に準じ、ジエチルエーテルによるソックスレー抽出法で測定する。本発明のサンプルAの脂質含有量は、本発明の技術的意義が大きくなる観点から、サンプルA中の濃度として、好ましくは45w/v%以下、より好ましくは35w/v%以下、さらに好ましくは25w/v%以下、さらにより好ましくは15w/v%以下、とりわけ好ましくは10w/v%以下、特に好ましくは7w/v%以下である。また、その上限は、45w/v%以下、又は40w/v%以下、又は30w/v%以下が好ましく、一方、その下限は、限定はされないが、0.001w/v%以上、又は0.002w/v%以上、又は0.003w/v%以上、又は0.005w/v%以上とすることができる。
【0077】
本発明は汎用的に使用できる分析方法であるが、前記従来技術が適用しづらく、解決すべき課題の重要性が大きくなる観点から、サンプルAが飲食品であることが、特に好ましい。
【0078】
<飲食品>
「飲食品」とは、通常用いられている意味のものとして特に限定されず、そのまま喫食に供される飲食品、そのまま喫食に供される飲食品の調製用組成物等(飲料調製用の濃縮物、調味料等)が挙げられる。飲食品は、水を50w/v%以上含むものであることが好ましい。また、飲食品をそのまま前述のサンプルAとして用いてもよく、前記したサンプルAにおける水分含有量を充足することが好ましい。さらに、本明細書にて開示するサンプルAにおける各種成分の含有量の範囲を充足してもよい。
また、本発明の飲食品は、好ましくは飲料、飲料調製用の濃縮物、又は調味料であってもよい。
【0079】
そのまま喫食に供される飲食品としては、特に制限されないが、例えば飲料、菓子類、汁物(スープ)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは飲料が挙げられる。
【0080】
飲料としては、例えば果汁含有飲料(例えば柑橘類(みかん、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、柚子、カボス、スダチ、ベルガモット、ピンクグレープフルーツ、八朔、カラマンシー、シークワーサー等)、熱帯果実(パイナップル、バナナ、グアバ、マンゴー、アセロラ、パパイヤ、パッションフルーツ等)、ライチ、イチゴ、リンゴ、モモ、ブドウ(白ブドウ、赤ブドウ等)、カシス、ラズベリー、ざくろ、ウメ、梨、杏、スモモ、キウイフルーツ、メロン、ブルーベリー、アサイー等のフルーツジュース、エード、ニアウォーター、美容系飲料、スムージー等)、乳製品含有飲料(例えば乳等の乳及びその加工品である脱脂粉乳や全脂粉乳、濃縮乳、ヨーグルト、生クリーム、練乳、バター、脱脂乳、クリームパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、ホエイパウダー、バターミルクパウダー等の乳成分を含む飲料)、野菜飲料(例えばトマト、ニンジン、かぼちゃ等のジュース、スムージー、青汁等)、清涼飲料水(例えばスポーツドリンク、レモネード等のエード、果実風味ドリンク)、炭酸飲料、ゼリー飲料、穀物飲料(例えば米、豆乳、アーモンドを主原料とする穀物飲料類等)、茶系飲料(例えば紅茶、ウーロン茶、緑茶、黒茶、抹茶、ジャスミン茶、ローズヒップ茶、カモミール茶、ほうじ茶の他、ブレンド茶(はと麦、大麦、玄米、大豆、とうもろこし等の穀物、柿の葉、びわの葉、クマ笹、アマチャヅル、アシタバ、ドクダミ等の葉、昆布、ベニバナ、しいたけ、レイシ等))、コーヒー飲料、粉末飲料(例えばココア、青汁等)、酒(例えばビール、発泡酒等のビールテイスト飲料、果実酒、日本酒等の醸造酒、焼酎、ウイスキー、ブランデー、スピリッツ等の蒸留酒、蒸留酒に糖類等の副原料を混合するリキュール等の混成酒、さらにこれら酒類に果汁や香料、乳化香料(油溶性香料を水に安定的に分散するように乳化した香料製剤)、炭酸ガス等を加えたカクテル、フィズ、チューハイ等)等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは果汁含有飲料が挙げられる。
【0081】
本発明の果汁含有飲料の果汁含有率(ストレート果汁換算)は特に制限されないが、湿潤質量換算で、例えば、0.05w/v%以上100w/v%以下の範囲とすることができる。具体的には、その下限は、通常0.05w/v%以上であるが、0.1w/v%以上、又は0.15w/v%以上、又は0.2w/v%以上が好ましく、一方、その上限は、100w/v%以下、又は90w/v%以下とすることができる。
【0082】
本発明において「果汁」とは、果実の搾汁液又は抽出等によって得られる果実の液部をいい、果実を裏ごし又はすりおろし処理したピューレ、おろしを使用する場合は、その内の液部をいう。本発明の液状調味料に使用する果汁としては、例えば、柑橘(例えば、レモン、バレンシアオレンジ、ネーブルオレンジ、グレープフルーツ、ライム、シークワーサー、ダイダイ、ユズ、カボス、スダチ、シトロン、ブッシュカン、ナツミカン、ハッサク、ヒュウガナツ、スウィーティー、デコポン、イヨカン、タンカン、セミノール、ブンタン、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、ポンカン、紀州ミカン、キンカン、ユコウ、ザボン、バンペイユ等)、リンゴ、パイナップル、桃、ぶどう、いちご、梨、バナナ、キウイ、カシス、アセロラ、ブルーベリー、ラズベリー、柿、アプリコット、グアバ、プラム、マンゴー、パパイヤ、ライチ等に由来する果汁が挙げられる。これらの果汁は、1種又は2種以上を用いることができる。また、上記果汁は、凍結、濃縮、還元等の加工を行ったものも用いることもできる。
【0083】
また、上記果汁は、クエン酸含量が湿潤質量換算で、0.1w/v%以上、又は0.25w/v%以上、又は0.5w/v%以上、又は0.75w/v%以上、又は1.0w/v%以上、又は1.5w/v%以上であることが好ましく、果汁のJAS規格(果実飲料の日本農林規格 平成25年12月24日農林水産省告示第3118号)においてクエン酸規格として規格されている果汁が好ましく、なかでもレモン果汁、ライム果汁、カボス果汁が好ましい。また上記果汁は、糖度が1.0w/v%以上、又は1.5w/v%以上、又は2.0w/v%以上、又は2.5w/v%以上であることが好ましく、果汁のJAS規格(果実飲料の日本農林規格 平成25年12月24日農林水産省告示第3118号)において糖度規格として規格されている果汁が好ましく、なかでも柑橘果汁(糖度規格がない果汁を除く)又はリンゴ果汁が好ましい。
【0084】
本発明において、「果汁含有率(ストレート果汁換算)」とは、果実を搾汁して得られるストレート果汁を100%としたときのw/v%濃度をいい、飲食品に配合される果汁の含有率(w/v%)に、果汁の濃縮倍率を乗じて算出することができる。例えば、濃縮倍率が5倍であるリンゴ果汁を飲食品に10w/v%で配合した場合には、果汁含有率(ストレート換算)は50w/v%となる。また、各果汁の濃縮倍率は、例えば、JAS規格(果実飲料の日本農林規格 平成25年12月24日農林水産省告示第3118号)に示される各種果実のストレート果汁の糖用屈折計示度の基準又は酸度基準の最低値に基づいて、換算することができる。
【0085】
菓子類とは、甘味や塩味などの味覚を強調し、あるいは食感などの触覚を工夫し、各種の匂いで嗅覚などの食味感覚の嗜好品として製造、調理された食品である。より具体的には、例えば、ゼリー、プディング、チョコレート、バー(スナックバー)、冷菓(アイスクリーム、シャーベット等)等が挙げられ、これらの中でも、好ましくはゼリー、冷菓(アイスクリーム、シャーベット等)が挙げられ、その中でも特に好ましくはゼリーが挙げられる。
【0086】
汁物(スープ)は、肉類、魚介類、卵、乳、野菜、果物、ハーブ、海藻等の具材を適当な方法で調理して得られた、水を多く含む食品である。汁物として、具体的には、例えばミネストローネ、サンラータン、白湯スープ、チゲスープ等が挙げられる。
【0087】
喫食に供される飲食品の調製用組成物としては、特に制限されないが、例えば飲料の調製用組成物、デザートソース・クリーム、調味料、レトルト食品等が挙げられる。これらの中でも、好ましくは飲料の調製用組成物、デザートソース・クリーム、調味料等が挙げられ、より好ましくは飲料の調製用組成物が挙げられる。
【0088】
飲料の調製用組成物としては、例えば飲料の濃縮タイプが挙げられる。これは、適当な飲料(例えば、水、又は上記で例示された飲料)で希釈してから、飲用に供される。推奨される希釈倍率は、例えば1.1~50倍、好ましくは2~20倍、より好ましくは3~12倍、さらに好ましくは4~8倍である。
【0089】
デザートソース・クリームとは、飲料や、菓子類(ゼリー、ケーキ、アイスクリーム等)にかけたり、載せたり、混ぜたりして、風味、テクスチャー、色をデザートに加える液体状、粉末状、又は半固体状のソースやクリームであり、具体的には、例えばキャラメルソース、カスタードソース、チョコレートソースや、ラズベリーソース、ストロベリーソース、ブルーベリーソース、アップルソース、ザクロソースなどのフルーツソース等が挙げられる。
【0090】
調味料としては、特に制限されないが、例えばタレ(ゴマだれ等のゴマ含有調味料、焼肉だれ等)、ドレッシング(ノンオイルドレッシング、分離ドレッシング、乳化ドレッシング等)、調味酢(例えば汎用性調味酢、酢の物用調味酢、すし飯用調味酢、酢漬け(例えばピクルス等)用調味液、甘酢等)、米飯用調味料、ぽん酢調味料、だし含有調味料(例えばめんつゆ、鍋つゆ等)、納豆用調味料、漬物用調味料、肉用調味料、食酢、ウスターソース、ケチャップ、オイスターソース、サルサ、サンバルソース、チリソース、辛味スパイス含有調味料、チャツネ、マスタード、マヨネーズ等が挙げられる。また、本発明の調味料としては、アミノ酸や核酸を含有するものであってもよい。
【0091】
<アミノ酸>
本発明において、「アミノ酸」とは、アミノ酸とその塩をいい、アミノ酸の種類は特に限定されない。本発明の飲食品に含まれるアミノ酸は、原料となる食材に含まれるものでもよく、当該食材とは別に外部から添加されるものでもよい。また、外部からアミノ酸を添加する場合、精製抽出された高純度の製剤を添加してもよく、アミノ酸を含む何らかの素材(例えば果汁)、または素材加工品(例えば抽出物、濃縮果汁)の形態で添加してもよい。但し、当該飲食品に含有されるアミノ酸の過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましい。アミノ酸を含むものとしては、例えばアミノ酸系調味料が挙げられ、アミノ酸系調味料の例としては、L-グルタミン酸ナトリウム、DL-アラニン、グリシン、L-又はDL-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-又はDL-メチオニン、L-リシン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アルギニン等が挙げられる。これらのアミノ酸は、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で含有してもよい。
【0092】
本発明のサンプルAの総アミノ酸含有量は、特に制限されるものではないが、例えば、0.3~1500mg/100ml、好ましくは0.5~1200mg/100ml、より好ましくは0.8~1000mg/100ml、さらにより好ましくは1.0~800mg/100ml、とりわけ好ましくは2.0~500mg/100ml、特に好ましくは3.0~250mg/100mlである。また、上限値は、例えば、1600mg/100ml以下、1400mg/100ml以下、1100mg/100ml以下、900mg/100ml以下、750mg/100ml以下、650mg/100ml以下、600mg/100ml以下、550mg/100ml以下、450mg/100ml以下、400mg/100ml以下、350mg/100ml以下、300mg/100ml以下、240mg/100ml以下、200mg/100ml以下、180mg/100ml以下、160mg/100ml以下、140mg/100ml以下、120mg/100ml以下、110mg/100ml以下、100mg/100ml以下、90mg/100ml以下、80mg/100ml以下、70mg/100ml以下、60mg/100ml以下、50mg/100ml以下、40mg/100ml以下、30mg/100ml以下である。また、下限値は、例えば0.01mg/100ml以上、0.02mg/100ml以上、0.05mg/100ml以上、0.1mg/100ml以上、0.2mg/100ml以上、0.4mg/100ml以上、0.6mg/100ml以上、0.8mg/100ml以上、1.1mg/100ml以上、1.5mg/100ml以上、2.0mg/100ml以上、2.4mg/100ml以上、3.5mg/100ml以上、4.0mg/100ml以上、4.5mg/100ml以上、5.5mg/100ml以上、6.5mg/100ml以上、7.5mg/100ml以上、8.5mg/100ml以上、10mg/100ml以上である。アミノ酸分析は、高速液体クロマトグラフィー法によって行える。
【0093】
<核酸>
本発明において、「核酸」とは、核酸とその塩をいう。本発明の飲食品に含まれる核酸は、原料となる食材に含まれるものでもよく、当該食材とは別に外部から添加されるものでもよい。本発明の飲食品の製造時に外部から核酸を添加する場合、精製抽出された高純度の製剤を添加してもよく、核酸を含む何らかの素材加工品(例えば抽出物)の形態で添加してもよい。但し、当飲食品に含有される核酸の過半(より好ましくは全部)が何らかの食材由来であることが好ましい。核酸を含むものとしては、例えばアミノ酸系調味料があげられ、核酸系調味料の例としては、例えば、5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-ウリジル酸二ナトリウム、5’-シチジル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチドカルシウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウム等が挙げられる。これらの核酸は、1種のみを単独で含有してもよく、2種以上を任意の組み合わせや任意の比率で含有してもよい。
【0094】
レトルト食品としては、レトルトパウチ又は缶内に調理済み又は半調理済みの食品が詰められてなるものである限り、特に制限されない。詰められる食品としては、例えば、上記した食品そのもの、又は簡単な調理(例えば、食材を加えて加熱調理するなど)により上記した食品を得ることができるもの等が挙げられる。
【0095】
本発明はまた、サンプルA中の被測定対象脂溶性成分の経時的な含有量変化を分析する方法に関する。
【0096】
前記の通り、本発明はサンプルA中の被測定対象脂溶性成分の含有量を精度よく分析できる方法であるから、サンプルAを所定期間保管した場合における、被測定対象脂溶性成分の含有量変化を分析できる。前記期間は、特に制限されるものではないが、例えば10年間以内、5年間以内、4年間以内、3年間以内、2年間以内、1年6月間以内、1年間以内であってもよい。
【0097】
本発明はまた、被測定対象脂溶性成分を含む分析検体の製造方法に関する。
【0098】
本発明が、被測定対象脂溶性成分を含む分析検体の製造方法である場合、前述の通り、前記上層サンプルC1を回収することで、被測定対象脂溶性成分の分析検体を製造できる。また、上層サンプルC1をさらに濃縮し、当該濃縮産物を分析検体としてもよい。さらに、当該濃縮産物を水や前記有機溶媒、またはそれらの混合物で希釈することで分析検体としてもよい。なお、前記水と有機溶媒の混合物としては、例えば、水、クロロホルム、メタノールを含有する混合物が挙げられる。従って、本明細書に開示した(i)~(iii)段階、(ii‘)段階、(iii‘)段階に係る条件を、そのまま本発明の被測定対象脂溶性成分を含む分析検体の製造方法に適用できる。
【実施例
【0099】
以下、本発明を実施例に則して更に詳細に説明するが、これらの実施例はあくまでも説明のために便宜的に示す例に過ぎず、本発明は如何なる意味でもこれらの実施例に限定されない。
【0100】
<有機溶媒を含有する媒体の調製>
表1の組成に従って、t-ブチルメチルエーテル(関東化学;純度99.8w/w%)、メタノール(関東化学;純度99.8w/w%)、クロロホルム(関東化学;純度99.0w/w%)を混合し、対照溶媒と試験溶媒(媒体a)を調製した。なお、t-ブチルメチルエーテル、メタノール、クロロホルムは、関東化学製の試薬(HPLC用)を使用した。
【0101】
【表1】
【0102】
<段階(i):サンプルAの調製>
レモン果汁、りんご果汁、黒酢、りんご酢、酢酸菌体(セラミド含有量0.8w/w%)、上白糖、酢酸、香料、乳化香料を適宜混合し、表2に示すようにサンプルAを調製した。なお、酢酸菌体中のセラミド含有量は、特開2007-306882号公報に記載されている方法と同様にして行い、凍結乾燥した酢酸菌体を、公知のブライ・デイヤー(Bligh-dyer)法に従い、クロロホルム:メタノール:水=1:2:0.8の組成の有機溶媒にて全脂質の抽出を行った後、高速液体クロマトグラフィーに供することで行った。
【0103】
<比較例1、比較例2における分析検体の調製>
比較例1、比較例2では、前記によってサンプルAを調製した後、対照溶媒を、サンプルAの容量1mlあたり3.6mlとなるように添加し、ボルテックス(ボルテックスミキサー:Pasolina:NS-80)で撹拌した後、20分間超音波に供した。その後、10分間、3000rpmで遠心した(冷却遠心機2800;KUBOTA)。
【0104】
次に、上澄を0.45μmPTFEフィルターで濾過し、100mlナスフラスコに採取した。
【0105】
次に、沈殿物に対して、適宜水及び対照溶媒を添加して、前記と同様に遠心、濾過し、最初に上澄を採取したものと同じ100mlナスフラスコに採取した。
【0106】
次に、ナスフラスコに採取した試料をロータリーエバポレーターに供して溶媒を除去(試料を濃縮)し、得られた残渣に再度対照溶媒を所定量添加し、高速液体クロマトグラフィー用の検体とし、当該検体をバイアルへ封入し、高速液体クロマトグラフィーに供し、ELSDにて検出した。なお、検体中のセラミド含有量の定量に際しては、濃度既知のセラミド標品(長良サイエンス社製;Ceramide from Acetobacter malorum(Ceramide mix))を、前記と同様に高速液体クロマトグラフィーに供し、検量線を作成した。
【0107】
<高速液体クロマトグラフィー>
高速液体クロマトグラフィーには、次の機器を使用した。
・液体クロマトグラフ装置(島津製作所;LC-20AD)
・オートサンプラー(島津製作所;SIL-20AC HT)
・通信モジュール(島津製作所;CBM-20A)
・カラムオーブン(島津製作所;CTO-20AC)
・ELSD検出器(島津製作所;ELSD-LTII)
・HRLカラム(島津製作所;Shim-Pack HRC-SIL4.6mmfwai*25cm)
・カラム:(島津製作所; SHIM-PACK HRC-SIL(250mmkakeru4.6mm))
【0108】
また、高速液体クロマトグラフィーは次の条件で行った。
移動相:図1に示すようにメタノールとクロロホルムの流量を経時的に調整した
流速:1.0mL/min
Injection:4μL
オートサンプラー温度:15℃
検出器ELSD温度:40℃
ELSD検出感度:Gain 8
カラム温度:50℃
【0109】
<段階(ii):試験例におけるサンプルBの調製>
試験例では、前記によってサンプルAを調製した後、試験溶媒を、サンプルAの容量1mlあたり5.2mlとなるように添加してサンプルBを得、ボルテックスで攪拌した後、振盪機(マルチシェイカー;EYELA;MULTI SHAKER MMS)で1時間、20℃で振盪(120rpm)した(段階(ii‘))。その後、10分間静置した。
【0110】
<段階(iii):試験例における上層サンプルC1及び下層サンプルC2の調製>
次に、サンプルBを卓上遠心機で20℃、10分間、3000rpmで遠心し、上層サンプルC1と下層サンプルC2を得た。
【0111】
次に、上層サンプルC1を100mlナスフラスコに採取した。
【0112】
また、下層サンプルC2に対して、適宜水及び試験溶媒を、添加して、再度振蕩、遠心し、その上層を、サンプルC1を採取したものと同じナスフラスコに採取した。
【0113】
次に、ナスフラスコに採取した試料を、ロータリーエバポレーターに供して溶媒を除去(試料を濃縮;段階(iii‘))し、得られた残渣に対し、クロロホルム:メタノール:超純水(MilliQウォーター)比が60:30:4.5となる溶媒を添加し、分析検体とした。当該検体をバイアルへ封入し、高速液体クロマトグラフィーに供し、ELSDにて検出した。なお、検体中のセラミド含有量の定量に際しては、濃度既知のセラミド標品(長良サイエンス社製;Ceramide from Acetobacter malorum(Ceramide mix))を、前記と同様に高速液体クロマトグラフィーに供し、検量線を作成した。
【0114】
<高速液体クロマトグラフィー>
高速液体クロマトグラフィーは、次の条件で行った。
・カラム:Diol-HILICカラム(YMC:YMC-Triart Diol-HILIC4.6×250mm、基材:有機シリカハイブリッド、粒子径:1.9μm, 3μm, 5μm、細孔径:12nm、使用pHレンジ2~10)
・移動相:図2に示すようにヘキサン、t-ブチルメチルエーテル、メタノールの流量を経時的に調整した
・流速:1.0mL/min
・Injection:10μL
・オートサンプラー温度:20℃
・検出器ELSD温度:40℃
・ELSD検出感度:Gain6
・カラム温度:30℃
【0115】
<ピーク評価>
高速液体クロマトグラフィーのピークを観察し、図3のようにベースラインにおけるドリフト、うねりやノイズが抑制され、目的成分ピーク前後で略水平となっている場合は評価〇、図4のようにそうでない場合は評価×とした。なお、図3は試験例4の、図4は比較例2の結果である。
【0116】
<誤差評価>
各分析検体で3回反復試験を行い、分析検体中の酢酸菌体含有量に対するセラミド含有量(w/w%)を算出した。測定結果に基づく算出値(n=3)が、いずれも0.8w/w%から誤差範囲±15%未満(酢酸菌体含有量に対するセラミド含有量が0.68~0.92w/w%)の範囲にある場合、誤差評価〇とした。その他の場合は、誤差評価×とした。測定値の誤差は、酢酸菌体含有量に対するセラミド含有量を原料状態で測定し、酢酸菌体配合量から組成物中のセラミド含有量を計算した値を理論値として算出した。
【0117】
<結果>
結果を表2に示す。なお、比較例2では、試料をロータリーエバポレーターで濃縮した際に試料が湿け、べたついてしまい、脂溶性成分以外の夾雑物が分析検体に含有されることが推察された。また、試験例1、3、及び4では乳化香料、脱脂粉乳、香料等をサンプルAに配合したが、優れた結果が得られた。
【0118】
【表2】
図1
図2
図3
図4