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特許7553134画像解析装置、画像解析方法及びプログラム
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  • 特許-画像解析装置、画像解析方法及びプログラム 図1
  • 特許-画像解析装置、画像解析方法及びプログラム 図2
  • 特許-画像解析装置、画像解析方法及びプログラム 図3
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  • 特許-画像解析装置、画像解析方法及びプログラム 図5
  • 特許-画像解析装置、画像解析方法及びプログラム 図6
  • 特許-画像解析装置、画像解析方法及びプログラム 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】画像解析装置、画像解析方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/254 20170101AFI20240910BHJP
【FI】
G06T7/254
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023032529
(22)【出願日】2023-03-03
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100196380
【弁理士】
【氏名又は名称】森 匡輝
(72)【発明者】
【氏名】石井 抱
(72)【発明者】
【氏名】島崎 航平
(72)【発明者】
【氏名】王 飛躍
【審査官】新井 則和
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-105828(JP,A)
【文献】特開2022-139623(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037891(WO,A1)
【文献】特開2010-230423(JP,A)
【文献】特開2001-251552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/254
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解析対象の画像である対象画像を取得する対象画像取得部と、
参照画像群を構成する複数の参照画像を記憶する記憶部と、
前記対象画像と前記参照画像とに基づいて、前記解析対象の変位量を演算する演算部と、を備え、
前記参照画像群は、
1ピクセルの範囲内でオフセットされた複数の異なる画像を含み、
前記演算部は、
複数の前記参照画像と前記対象画像とに基づいて、前記参照画像ごとに前記解析対象の変位量である基礎変位量を演算し、
演算された複数の前記基礎変位量に基づいて、前記解析対象の変位量を算出する、
ことを特徴とする画像解析装置。
【請求項2】
取得された前記参照画像の元画像に基づいて、複数の前記参照画像を生成する参照画像生成部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項3】
前記演算部は、
複数の前記参照画像と前記対象画像とに基づいて、位相限定相関法により前記基礎変位量を演算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項4】
前記演算部は、
前記参照画像及び前記対象画像を、エッジ保存平滑化フィルタでフィルタリングして、前記解析対象の変位量を演算する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項5】
前記演算部は、
前記基礎変位量を平均して、前記解析対象の変位量を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の画像解析装置。
【請求項6】
画像解析装置が、
解析対象の画像である対象画像と、1ピクセルの範囲内でオフセットされた複数の異なる画像を含む複数の参照画像とに基づいて、前記参照画像ごとに前記解析対象の変位量である基礎変位量を演算し、
演算された複数の前記基礎変位量に基づいて、前記解析対象の変位量を算出する、
ことを特徴とする画像解析方法。
【請求項7】
コンピュータを、
解析対象の画像である対象画像を取得する対象画像取得部、
1ピクセルの範囲内でオフセットされた複数の異なる画像を含む参照画像群を構成する複数の参照画像を記憶する記憶部、
複数の前記参照画像と前記対象画像とに基づいて、前記参照画像ごとに前記解析対象の変位量である基礎変位量を演算し、演算された複数の前記基礎変位量に基づいて、前記解析対象の変位量を算出する演算部、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解析装置、画像解析方法及びプログラムに関し、より詳細には対象の変位を解析する画像解析装置、画像解析方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像解析によって、被写体である対象の変位を解析する技術が開発されている。例えば、特許文献1では、画像解析によって測定された対象の変位に基づいて、構造物の応力変動分布を測定することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-205875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、デジタル画像相関法(DIC:Digital Image Correlation)を用いて被写体である解析対象の変位を解析している。デジタル画像相関法では、参照画像と解析対象画像との相関に基づいて、解析対象の変位が演算される。近年の撮影画像の高精細化、コンピュータの演算速度の向上等により、このような画像解析による対象の変位解析の応用範囲は拡大している。これにともなって、より高速、高精度に被写体の変位解析を行うことができる画像解析技術が求められている。
【0005】
しかしながら、実際に産業用作業機械等の変位解析を、デジタル画像相関法を用いて精度よく行うことは難しい。例えば、工作機械の振動解析のように高速の変位を解析する場合、高速で解析対象を撮影することが求められる。高速撮影するために露光時間が短くなると、画像ノイズが増加して解析精度が低下する。また、高速でデジタル画像相関法による解析を行う場合、演算負荷を小さくするために画像サイズを小さくすることが一般的である。しかしながら、画像サイズが小さくなるとノイズの影響が大きくなり、解析精度は低下する。
【0006】
また、産業用作業機械の多くは、表面形状が複雑であるとともに、表面性状がマーカー貼付に適さない。したがって、変位解析のためのマーカーの貼付が困難である場合が多い。また、表面の形状、色等が性能面から制限されることによって、画像解析のための特徴抽出が難しい場合がある。これらの要因から、画像解析による変位解析の精度を高めることは難しい。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、対象の変位解析の精度を向上させることができる画像解析装置、画像解析方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、この発明の第1の観点に係る画像解析装置は、
解析対象の画像である対象画像を取得する対象画像取得部と、
参照画像群を構成する複数の参照画像を記憶する記憶部と、
前記対象画像と前記参照画像とに基づいて、前記解析対象の変位量を演算する演算部と、を備え、
前記参照画像群は、
1ピクセルの範囲内でオフセットされた複数の異なる画像を含み、
前記演算部は、
複数の前記参照画像と前記対象画像とに基づいて、前記参照画像ごとに前記解析対象の
変位量である基礎変位量を演算し、
演算された複数の前記基礎変位量に基づいて、前記解析対象の変位量を算出する。
【0010】
また、画像解析装置は、
取得された前記参照画像の元画像に基づいて、複数の前記参照画像を生成する参照画像生成部を備える、
こととしてもよい。
【0011】
また、前記演算部は、
複数の前記参照画像と前記対象画像とに基づいて、位相限定相関法により前記基礎変位量を演算する、
こととしてもよい。
【0012】
また、前記演算部は、
前記参照画像及び前記対象画像を、エッジ保存平滑化フィルタでフィルタリングして、前記解析対象の変位量を演算する、
こととしてもよい。
【0013】
また、前記演算部は、
前記基礎変位量を平均して、前記解析対象の変位量を算出する、
こととしてもよい。
【0014】
また、本発明の第2の観点に係る画像解析方法では、
画像解析装置が、
解析対象の画像である対象画像と、1ピクセルの範囲内でオフセットされた複数の異なる画像を含む複数の参照画像とに基づいて、前記参照画像ごとに前記解析対象の変位量である基礎変位量を演算し、
演算された複数の前記基礎変位量に基づいて、前記解析対象の変位量を算出する。
【0015】
また、本発明の第3の観点に係るプログラムは、
コンピュータを、
解析対象の画像である対象画像を取得する対象画像取得部、
1ピクセルの範囲内でオフセットされた複数の異なる画像を含む参照画像群を構成する複数の参照画像を記憶する記憶部、
複数の前記参照画像と前記対象画像とに基づいて、前記参照画像ごとに前記解析対象の変位量である基礎変位量を演算し、演算された複数の前記基礎変位量に基づいて、前記解析対象の変位量を算出する演算部、
として機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の画像解析装置、画像解析方法及びプログラムによれば、複数の参照画像ごとに解析対象画像との相関を演算して解析対象の変位解析を行うので、画像解析による解析対象の変位解析の精度を向上させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施の形態に係る画像解析装置の機能ブロック図である。
図2】実施の形態に係る画像解析の流れを示す概念図である。
図3】実施の形態に係る画像解析の流れを示すフローチャートである。
図4】オフセット処理による参照画像生成の例を示す概念図である。
図5】(A)は解析対象画像の例、(B)は(A)の解析対象画像における参照画像の枚数と誤差との関係を示すグラフである。
図6】(A)は解析対象画像の例、(B)は(A)の解析対象画像における通常のPOCの場合と実施の形態に係るMFPOCの場合の誤差を示すグラフである。
図7図6(A)の画像にノイズの影響を付加した解析対象画像における通常のPOCの場合と実施の形態に係るMFPOCの場合の誤差を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る画像解析装置1について説明する。図1の機能ブロック図に示すように、本実施の形態に係る画像解析装置1は、カメラユニット20と接続され、カメラユニット20で撮影された対象画像Itに基づいて被写体である解析対象の変位解析を行う。
【0019】
画像解析装置1は、例えばコンピュータ装置であり、図1に示すように、制御部11、記憶部12、表示部13、入力部14を備える。
【0020】
制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等から構成されており、画像解析装置1の動作を制御する。また、制御部11は、カメラユニット20で撮影された対象画像Itに基づいて、解析対象の変位状態を解析する。制御部11は、制御部11のROM、記憶部12等に記憶されている各種動作プログラム及びデータをRAMに読み込んでCPU及びGPUを動作させることにより、図1に示される制御部11の各機能を実現させる。これにより、制御部11は、参照画像生成部111、対象画像取得部112、演算部113として動作する。
【0021】
参照画像生成部111は、解析のために対象画像Itと対比される複数の参照画像Irで構成される参照画像群を生成する。参照画像Irは、被写体である解析対象を撮影した複数の異なる画像である。参照画像Irは、時系列で撮影された複数の画像でもよいし、撮像位置を変化させた複数の画像でもよい。本実施の形態に係る参照画像生成部111は、カメラユニット20から取得した元画像を、x軸方向、y軸方向にそれぞれサブピクセル単位でオフセットさせ、複数の参照画像Irを生成する。
【0022】
対象画像取得部112は、カメラユニット20を制御して、解析対象を被写体とする画像である対象画像Itを撮影する。また、対象画像取得部112は、撮影された対象画像Itの画像データをカメラユニット20から取得する。
【0023】
演算部113は、対象画像取得部112で取得された対象画像Itの画像データに基づいて、解析対象の変位状態を解析する。変位状態の解析は、例えば、解析対象を複数の部分に分割した解析要素ごとに行われる。より具体的には、撮影された画像を予め定められた所定の大きさの範囲に分割して解析要素とし、解析要素ごとの変位状態を演算する。変位状態の演算方法は、特に限定されない。本実施の形態に係る演算部113は、デジタル画像相関法(Digital Image Correlation)を用いて各解析要素の変位量を算出する。これにより、演算部113は、解析対象の変位状態を演算することができる。また、演算部113は、変位量の時間変化に基づいて、各解析要素の速度、歪み、軌跡等の振動情報を演算することとしてもよい。
【0024】
記憶部12は、ハードディスク、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリであり、参照画像Irと対象画像Itとに基づいて解析対象の変位状態を演算するプログラム、演算部113で演算された解析対象の変位情報等を記憶する。
【0025】
表示部13は、コンピュータ装置である画像解析装置1に備えられた表示用デバイスであり、例えば液晶ディスプレイである。表示部13は、演算部113で演算された解析対象の変位状態等の解析結果、各種の解析条件等を表示する。
【0026】
入力部14は、解析の開始、終了指示、参照画像Irの生成に係る設定等を入力するための入力デバイスである。入力部14は、画像解析装置1に備えられたキーボード、タッチパネル、マウス等である。
【0027】
カメラユニット20は、解析対象を含む画像である対象画像Itを撮影する撮像装置である。例えば、解析対象の振動状態を解析する場合、カメラユニット20は所定のフレームレートで解析対象を含む画像を撮影し、各時刻の対象画像Itの画像データを出力する。
【0028】
続いて、画像解析処理の流れを示す図2の概念図及び図3のフローチャートを参照しつつ、画像解析装置1を用いた画像解析について説明する。本実施の形態では、解析対象である産業用作業機械の変位状態を解析する場合の画像解析処理を例として説明する。
【0029】
まず、参照画像設定工程として、参照画像Irの設定を行う。具体的には、参照画像生成部111は、カメラユニット20を制御して、動作前の静止状態の解析対象の画像を撮影する。そして参照画像生成部111は、撮影された画像のデータをカメラユニット20から取得する(ステップS11)。
【0030】
参照画像生成部111は、ステップS11で取得した画像を元画像として、複数の異なる参照画像Irからなる参照画像群を生成する(ステップS12)。本実施の形態に係る参照画像Irは、元画像をオフセットして生成される画像である。具体的には、参照画像生成部111は、元画像をx座標方向とy座標方向とに、それぞれサブピクセル単位(0.1ピクセル間隔)で、-0.5~+0.5ピクセルオフセットさせた画像を参照画像Irとして生成する。この場合、x軸方向のオフセットとy軸方向のオフセットとの組み合わせによって121枚の参照画像Irが生成される。元画像をオフセットして参照画像Irを生成する場合のオフセット量は特に限定されないが、上記のようにサブピクセル単位でオフセットさせた画像を用いることにより、サブピクセルレベルの微小変位を精度よく解析することができる。
【0031】
サブピクセル単位でのオフセット処理は、例えば、以下のような手順で行うことができる(図4)。参照画像生成部111は、元画像をx軸方向、y軸方向にそれぞれ10倍に拡大する。拡大には、最近傍補間(Nearest neighbor interpolation)、双一次補間(Bilinear interpolation)、双三次補間(Bicubic interpolation)等を用いることができる。図4の例では、双一次補間を用いることとしている。これにより、演算付加を過大にすることなく、精度のよい補間を行うことができる。参照画像生成部111は、拡大された元画像をオフセットし、元画像のサイズに縮小(1/10倍)する。これにより、サブピクセル単位でのオフセット画像を生成することができる。
【0032】
図5(B)は、図5(A)に示す解析対象画像について、元画像をオフセット処理して参照画像Irを生成する場合における、参照画像Irの枚数と誤差との関係の例を示すグラフである。本例では、参照画像Irのオフセット間隔を0.1ピクセルとし、参照画像Irの枚数NをN=(2k+1),k∈(3,10)として、誤差を算出している。図5(B)に示すように、変数k、すなわち枚数Nが大きくなるほど誤差は小さくなり、kが一定の値以上になると誤差の低減効果は小さなものとなる。本例では、いずれの画像についても、k=5すなわち-0.5~+0.5ピクセルのオフセット範囲で誤差は十分小さくなり、演算負荷に対する誤差低減効果が大きいと考えられる。
【0033】
参照画像生成部111は、生成した参照画像Irからなる参照画像群を記憶部12に記憶させる。参照画像Irが生成され、参照画像設定が完了した後、解析対象の動作が開始されるとともに、解析対象の画像解析が開始される。
【0034】
前処理工程として、対象画像取得部112は、カメラユニット20を制御して、動作中の解析対象を撮像する。そして、対象画像取得部112は、カメラユニット20から対象画像Itの画像データを取得する(ステップS13)。
【0035】
演算部113は、ステップS13で対象画像取得部112が取得した対象画像Itのフィルタリング処理を行う(ステップS14)。フィルタリング処理は、解析精度を高めるために行われるものであり、適用されるフィルタは、対象画像Itの特徴に基づいて、多様なフィルタから適宜選択することができる。
【0036】
例えば、対象画像Itのノイズを除去するためには、ガウシアンフィルタのような平滑化アルゴリズムを用いることができる。しかしながら、ガウシアンフィルタを適用すると、対象画像Itにおける解析対象のエッジ等の特徴が平滑化され、解析精度が低下する場合があると考えられる。そこで、本実施の形態では、エッジ保存平滑化フィルタを用いてフィルタリング処理を行う。エッジ保存平滑化フィルタを用いることにより、対象画像Itの特徴を保存しつつ、ノイズ除去を行うことができるので、デジタル画像相関法による画像解析の精度を向上させることができる。使用するエッジ保存平滑化フィルタは特に限定されず、メディアンフィルタ(Median Filter)、ガイド付きフィルタ(Guided Filter)、バイラテラルフィルタ(Bilateral Filter)等種々のフィルタを用いることができる。本実施の形態では、バイラテラルフィルタを用いてフィルタリング処理を行う。
【0037】
また、フィルタリング処理は、参照画像Irについて行われることとしてもよい。この場合、参照画像生成部111は、元画像について、対象画像Itと同様のエッジ保存平滑化フィルタによるフィルタリング処理を行った後に、オフセット処理等を行って複数の参照画像Irを生成することとすればよい。
【0038】
続いて、解析工程として、演算部113は、フィルタリング処理された対象画像It及び記憶部12に記憶されている参照画像Irに基づいて、解析対象の変位を算出するための画像解析を行う。上述の通り、演算部113は、例えばデジタル画像相関法を用いて、対象画像Itと各参照画像Irとの間で変位量(以下、基礎変位量ともいう。)を演算する(ステップS15)。より具体的には、演算部113は、位相限定相関法(POC:Phase Only Correlation)を用いて対象画像Itの変位量を演算する。
【0039】
【数1】
ただし、lは参照画像Irのインデックスである。
【0040】
本実施の形態では、サブピクセル単位でオフセットされた参照画像Irを用いているので、ステップS15において演算部113は、オフセットの影響を除去して基礎変位量(下式のe)を演算する。
【数2】
ただし、dは参照画像Irのオフセット量である。
【0041】
演算部113は、ステップS15で演算された基礎変位量に基づいて、解析対象の変位量を算出する(ステップS16)。基礎変位量に基づく変位量の算出方法は、特に限定されず、例えば相加平均、加重平均、相乗平均等による平均を用いることができる。本実施の形態では、基礎変位量を相加平均して変位量を算出する。これにより、1つの参照画像Irを用いてデジタル画像相関法により変位を算出する場合と比較して、参照画像Irが有するノイズの影響等、参照画像Irが有する偏った情報の影響を低減し、より精度の高い画像解析を行うことができる。
【0042】
以下、振動解析が終了するまで(ステップS17のNO)、画像解析装置1は、ステップS13~S16の画像解析を行う。画像解析開始時に設定された所定の解析時間の終了、ユーザによる解析終了指示の入力等の終了条件を充足すると(ステップS17のYES)、画像解析装置1は、解析処理を終了する。
【0043】
以下、上記実施の形態に係る画像解析方法に関する検証結果について説明する。以下の表は、画像処理ライブラリであるOpenCVによる通常のPOCを行った場合、複数参照画像を用いたOpenCVによるPOCをコンピュータ装置のCPUで処理した場合、及び本実施の形態に係る複数参照画像を用いたPOC(以下、MFPOCともいう。)をGPU(NVIDIA社製Geforce RTX 2080Ti)を用いて並列処理した場合における処理時間の例である。本例では、比較のため解析対象の画像サイズを64×64ピクセル、128×128ピクセル、256×256ピクセルと変化させて処理速度を測定している。
【0044】
【表1】
上表に示すように、GPUを用いて並列処理することにより、複数参照画像を用いたMFPOCによる変位解析を、通常のPOCと同等の処理時間で行うことができる。したがって、時系列で撮影される対象画像Itを逐次解析処理して、解析対象の振動解析を行うことも可能であると考えられる。
【0045】
図6(B)は、図6(A)に示す異なる画像について、通常のPOCとMFPOCで処理を行った場合の誤差を示すグラフである。また、通常のPOCについて異なる画像サイズで処理を行い、画像サイズと誤差の大きさとの関係を確認した。図6(B)に示すように、通常のPOCは、画像サイズが小さいほど解析誤差が大きくなるという傾向を有している。また、解析対象の画像の特徴、具体的には被写体のエッジ等の特徴が明確でないほど、誤差が大きくなる傾向があると考えられる。これに対し、本実施の形態に係るMFPOCは、小さな画像サイズであっても、誤差を低減できる。また、MFPOCにより、多様な解析対象画像について、安定的に誤差の小さい解析を行うことができる。
【0046】
図7は、図6(A)に示す複数の画像について、ノイズの影響を付加し、通常のPOCとMFPOCで処理を行った場合の誤差を示すグラフである。付加したノイズは、ショットノイズをシミュレートしたポアソンノイズ、及びリードアウトノイズをシミュレートしたガウシアンノイズである。また、画像サイズは、ノイズの影響が大きく反映される64×64ピクセルである。図7に示すように、通常のPOCは、ノイズの影響により誤差が大きくなる傾向を有している。これに対し、MFPOCは、誤差が小さく安定しており、概ね、図6(B)に示す通常のPOCにおけるノイズ無しの画像の場合よりも解析誤差が小さい。
【0047】
以上説明したように、本実施の形態に係る画像解析装置1及びその画像解析方法によれば、複数の参照画像ごとに解析対象画像との相関から基礎変位量を演算し、基礎変位量に基づいて解析対象の変位を算出するので、画像解析による変位解析を精度よく行うことが可能である。
【0048】
また、本実施の形態では、1ピクセルの範囲内、すなわちサブピクセル単位でオフセットされた複数の参照画像Irを用いてデジタル画像相関法を適用しているので、解析対象の変位をサブピクセルレベルで精度よく解析することが可能となる。
【0049】
本実施の形態では、元画像をオフセットして複数の参照画像Irを生成することとしたがこれに限られない。例えば、時系列で撮影された複数の画像を参照画像Irとして用いることとしてもよい。これにより、個々の参照画像Irに含まれるノイズの影響を低減し、解析精度を向上させることができる。
【0050】
また、本実施の形態では、解析処理の開始時に参照画像生成部111が参照画像Irを生成することとしたが、これに限られない。例えば、予め生成され、記憶部12に記憶されている複数の参照画像Irからなる参照画像群を用いて画像解析を行うこととしてもよい。これにより、画像解析開始時の処理を簡略化することができる。また、共通の参照画像Irを用いて画像解析を行うことができるので、各解析回の画像解析データの比較が容易になる。
【0051】
また、本実施の形態では、対象画像取得部112がカメラユニット20で撮影された対象画像Itを取得して、画像解析を行うこととしたが、これに限られない。例えば、解析を行う対象画像Itは、予め記憶部12に記憶されており、演算部113は、記憶部12に記憶された対象画像Itを用いてオフライン処理による画像解析を行うこととしてもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、参照画像Ir及び対象画像Itを解析要素に分割して解析することとしたが、これに限られない。例えば、参照画像Ir及び対象画像Itは、カメラユニット20で撮影された画像のうち、予め設定された所定の関心領域の画像であってもよい。これにより、予め設定された1又は2以上の関心領域のみについて画像解析を行うことができるので、より小さい演算負荷で高速に画像解析することができる。
【0053】
また、上記実施の形態に係る画像解析装置は、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、上記実施の形態に係る画像解析を実行するためのコンピュータプログラムを、インターネット等のネットワークを介して配布し、当該コンピュータプログラムをコンピュータにインストールすることにより、通常のコンピュータシステムを上記の画像解析を実行する画像解析装置として機能させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、産業用作業機械の変位の画像解析に好適である。特に、振動をピックアップ等により直接計測することが難しい物体の振動の逐次画像解析に好適である。
【符号の説明】
【0055】
1 画像解析装置、11 制御部、111 参照画像生成部、112 対象画像取得部、113 演算部、12 記憶部、13 表示部、14 入力部、20 カメラユニット
【要約】
【課題】対象の変位解析の精度を向上させることができる画像解析装置、画像解析方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】画像解析装置1は、解析対象の画像である対象画像を取得する対象画像取得部112と、参照画像群を構成する複数の参照画像を記憶する記憶部12と、対象画像と参照画像とに基づいて、解析対象の変位量を演算する演算部113と、を備える。また、演算部113は、複数の参照画像と対象画像とに基づいて、参照画像ごとに解析対象の変位量である基礎変位量を演算し、演算された複数の基礎変位量に基づいて、解析対象の変位量を算出する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7