(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】基板組立装置
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20240910BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240910BHJP
H10K 71/50 20230101ALI20240910BHJP
H10K 50/84 20230101ALI20240910BHJP
G02F 1/1339 20060101ALN20240910BHJP
G02F 1/13 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
G09F9/00 338
H10K59/10
H10K71/50
H10K50/84
G02F1/1339 505
G02F1/13 101
(21)【出願番号】P 2023140597
(22)【出願日】2023-08-31
(62)【分割の表示】P 2022128567の分割
【原出願日】2018-07-09
【審査請求日】2023-09-27
(73)【特許権者】
【識別番号】316011226
【氏名又は名称】AIメカテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】海津 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】市村 久
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 仁志
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 正行
【審査官】川俣 郁子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-122666(JP,A)
【文献】特開2013-055093(JP,A)
【文献】特開2015-199218(JP,A)
【文献】国際公開第2005/109489(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0034536(KR,A)
【文献】特開2005-165159(JP,A)
【文献】特開2015-153885(JP,A)
【文献】特開2007-294852(JP,A)
【文献】特開2009-294638(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0114348(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0065524(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F1/13-1/1334
1/1339-1/1341
1/1347
1/137-1/141
G09F9/00
H01L21/68
H05B33/00-33/28
44/00
45/60
H10K50/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の基板を下テーブル上に保持し、他方の基板を上テーブルに前記一方の基板に対向させて保持し、いずれか一方の基板に設けた接着剤にて真空チャンバ内で貼り合わせを行う基板組立装置であって、
相互に隣接配置される複数の凸部及び凹部を有する弾性体からなり、前記下テーブルの前記基板を保持する面に接着剤にて貼付されたエンボスシートと、
粗に配される第1のリフタと密に配される第2のリフタとを有し、
前記第1のリフタは前記下テーブルの上面と平行な面内において延在し、
前記第2のリフタは前記下テーブルを貫通可能であって、前記第2のリフタにより基板を所定量上昇させた後、前記第1のリフタにて前記基板を更に上昇させ、
前記下テーブルは、前記第2のリフタが貫通可能な貫通孔を備え、前記第2のリフタにより基板を所定量上昇させたとき、前記貫通孔の内周面と前記第2のリフタの外周面との間隙からパージガス又は大気が前記基板の裏面へと侵入することを特徴とする基板組立装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板組立装置において、
前記下テーブルには、当該下テーブルで前記基板を保持する静電吸着機構を備えることを特徴とする基板組立装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板組立装置において、
前記下テーブルには、当該下テーブルで前記基板を保持する粘着ピン機構を備えることを特徴とする基板組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空中で基板を貼り合わせる液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等を製造する基板組立装置及び基板組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
真空中で基板を貼り合わせる基板組立装置に係る技術として、例えば、特許文献1では、真空引き工程中に、上基板を上下動させることで、上基板と下基板間の離間距離を変動させことで、上基板と下基板との間から気体を効率よく排除する基板組立装置が開示されている。
また、特許文献2では、テーブルへ帯電防止手段を備えたワーク貼り合わせ装置が提案されている。
特許文献3には、テーブルの断熱圧縮・温度変化による歪を低減すべく、ワークの非貼合面と接触する第1及び第2保持部材の表面に凸状部及び凹状部を複数形成し、減圧時(真空引き時)の排気を良好にすることで、微小空間における断熱膨張または断熱圧縮による温度変化のワークへの影響を抑制する真空貼り合わせ装置が開示されている。
【0003】
また、特許文献4では、減圧下で下テーブル側の残留空気膨張による下基板位置ずれの問題を改善するためシート面に凹凸や溝を形成した基板組立装置が開示されている。
特許文献5には、剥離ピン上下機構や粘着パッド上下機構にてずれが発生せず精度良く貼り合わせを行える基板組立装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-80868号公報
【文献】特許5654155号公報
【文献】特許6255546号公報
【文献】特開2003-283185号公報
【文献】特開2005-134687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、真空中で貼り合わせるガラス基板の大型化が進み、特許文献1乃至特許文献3に開示される組立装置では、真空引き時のテーブル溝内等に残留する空気が、高速で排気されることによる静電気発生、或いは、ガラス基板に生ずる撓みが懸念される。
【0006】
また、特許文献4及び特許文献5に開示される組立装置においても、高速化に伴う基板上昇動作での撓みの発生が危惧される。
【0007】
そこで、本発明は、基板の撓みを低減し得る基板組立装置及び基板組立方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る基板組立装置は、一方の基板を下テーブル上に保持し、他方の基板を上テーブルに前記一方の基板に対向させて保持し、いずれか一方の基板に設けた接着剤にて真空チャンバ内で貼り合わせを行う基板組立装置であって、相互に隣接配置される複数の凸部及び凹部を有する弾性体からなり、前記下テーブルの前記基板を保持する面に接着剤にて貼付されたエンボスシートと、粗に配される第1のリフタと密に配される第2のリフタとを有し、前記第1のリフタは前記下テーブルの上面と平行な面内において延在し、前記第2のリフタは前記下テーブルを貫通可能であって、前記第2のリフタにより基板を所定量上昇させた後、前記第1のリフタにて前記基板を更に上昇させ、前記下テーブルは、前記第2のリフタが貫通可能な貫通孔を備え、前記第2のリフタにより基板を所定量上昇させたとき、前記貫通孔の内周面と前記第2のリフタの外周面との間隙からパージガス又は大気が前記基板の裏面へと侵入することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る基板組立装置は、前記下テーブルには、当該下テーブルで前記基板を保持する静電吸着機構を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明に係る基板組立装置は、前記下テーブルには、当該下テーブルで前記基板を保持する粘着ピン機構を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ガラス基板の撓みを低減し得る基板組立装置及び基板組立方法を提供することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施例に係る実施例1の基板組立装置の概略構成図である。
【
図2】
図1に示す基板組立装置を構成する案内機構の説明図である。
【
図4】
図3に示す上テーブル及び下テーブル表面の弾性体の縦断面図である。
【
図5】
図1に示す基板組立装置の動作フローを示すフローチャートである。
【
図6】本発明の他の実施例に係る実施例2の基板組立装置の概略図であって、下テーブルの上面図及び側面図である。
【
図7】実施例2の基板組立装置の動作フローを示すフローチャートである。
【
図8】
図6に示す第2のリフタにより下ガラス基板を所定量上昇させた状態を示す縦断面図である。
【
図9】
図6に示す第1のリフタにより下ガラス基板を所定量上昇させた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書では、真空中で貼り合わせる基板としてガラス基板を一例に説明するが、貼り合わせる基板はガラス基板に限られるものではない。
以下、図面を用いて本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の一実施例に係る実施例1の基板組立装置の概略構成図である。
図1に示すように、基板組立装置1は、架台15と上フレーム5を剛体支持部材として、その内側に上チャンバ7と下チャンバ8を備えている。なお、上フレーム5は架台15側に設けたZ軸駆動機構2を構成するZ軸駆動モータ2aのボールネジ2bを回転駆動することで、上フレーム5に設けたボールネジ受け部2cを介して上フレーム5が架台15に対して上下方向に移動する構成としてある。上フレーム5が上下動する際の案内機構3は4組設けられている。
図2に、
図1に示す基板組立装置を構成する案内機構の説明図を示す。
図2では、案内機構3の一部断面図を示している。
図2に示すように、架台15側に固定された梁17に2つのリニアガイド3aを上フレーム5側に固定された梁18にリニア移動部3bが設けてある。
図2に示すように一方の案内面が他方の案内面に対して垂直となるように組合わされている。
【0023】
図1に戻り、架台15の上方には下テーブル10を支持するための複数の下シャフト12が取り付けてある。各下シャフト12は下チャンバ8内と気密性を保つため真空シール(図示せず)を介して下チャンバ8内に突出している。さらに各下シャフト12と下テーブル10の間にはXYθ方向にそれぞれ独立に可動可能なように構成されたXYθ移動ユニット13が取り付けてある。なお、XYθ移動ユニット13は、上下方向に固定で水平方向に自由に移動可能なボールベア等を使用した機構で構成しても良い。下テーブル10の水平方向(X,Y方向)に図示しない複数の下テーブル水平駆動機構が下チャンバ8の外側に設けてあり、駆動機構に設けた軸で下テーブル側面(下テーブルの厚み方向)を押すことでXYθ方向の位置決めを行えるように構成してある。
さらに、下チャンバ8と上チャンバ7は分割できる構成としてあり、その接続部には図示しないシールリングが設けてあり、これにより上チャンバ7及び下チャンバ8とを合体させ、内部を排気した時の空気の漏れを防止している。
【0024】
上フレーム5とZ軸駆動機構2の接続部には、それぞれロードセル4が設けられている。上フレーム5の内側には、上チャンバ7が取り付けてある。上チャンバ7は上フレーム5から支持軸6cとブラケット7bにより、吊り下げられる構造になっており、上フレーム5を上下動させることによって、上チャンバ7を下チャンバ8より離間させることができる。また、上フレーム5には上テーブル9を支持するため、上チャンバ7内に向かって複数の上シャフト6が設けてある。上シャフト6と上チャンバ7間はチャンバ内の気密を保持するために真空シールで接続されている。さらに上テーブル9は上シャフト6に固定されており、ガラス基板を加圧した時の力をロードセル4で検知できる構造となっている。なお、Z軸駆動機構2は上チャンバ7及び上テーブル9を上下に移動できるようになっており、そのため、上チャンバ7を上フレーム5に設けた支持軸6cと、上テーブル9を上フレーム5に設けた支持軸(上シャフト6)とが別々に設けてある。そのため、上チャンバ7の支持軸6cは、上チャンバ7が下チャンバ8に合体すると、上チャンバ7から下チャンバ8に下側に移動する力が作用しないように、遊びのできる支持構成となっている。すなわち、上チャンバ7上部に所定の高さのブラケット7bを取り付け、そのブラケット7b内部に上チャンバ7の支持軸6cの先端にフランジ部が当たるようにしてある。上チャンバ7を持ち上げるときはこのブラケット7bに支持軸6cのフランジ部が接触(当接)して上チャンバ7及び上テーブル9が一体で上方向に移動できる。すなわち、上シャフト6を上昇させ、上テーブル9を上チャンバ7内で所定量上方に移動すると支持軸6cのフランジ部がブラケット7bに当接して、さらに上昇させると上テーブル9と上チャンバ7が一緒に上方に移動する構成となっている。また、上チャンバ7が下側に移動して下チャンバ8と一体になるまでは上チャンバ7と上テーブル9は一体で移動し、上チャンバ7及び下チャンバ8が一体になった後は上テーブル9が下テーブル10側に単独で移動できるようになっている。
【0025】
また、上記のように本実施例では、上テーブル9及び下テーブル10は、上チャンバ7及び下チャンバ8とは離間して配置しているため、チャンバ内を減圧した時にチャンバは変形するが、この変形が上テーブル9及び下テーブル10に伝達することなく、ガラス基板を水平に保持することができる。
【0026】
上テーブル9には鉄製の弾性体プレート11が設けてある。弾性体プレート11のガラス基板と接触する面全体には弾性体11aが設けてある。弾性体プレート11は上テーブル9に埋め込んだ複数の磁石の磁気力とネジ締結により固定し、交換可能に構成してある。ここで、上テーブル9は、例えば、アルミ合金製であり、また、
図1では省略しているが、下テーブル10にも同様に鉄製の弾性体プレート11が設けてあり、弾性体プレート11のガラス基板と接触する面全体には弾性体11bが設けてある。なお、本実施例では、上テーブル9に弾性体プレート11及び弾性体11aを設け、下テーブル10に弾性体プレート11及び弾性体11bを設ける構成を示すが必ずしもこれに限られるものではない。すなわち、上テーブル9又は下テーブル10のいずれか一方のみに弾性体プレート及び弾性体を設ける構成としても良い。
【0027】
図3は、粘着ピン機構の概略説明図である。
図3に示すように、上チャンバ7上或いは上フレーム5上には上テーブル9とは独立して動作することができる粘着ピン駆動機構14が設置されている。この粘着ピン駆動機構14は、上下駆動用モータ14a、粘着ピン14cを複数取り付けた粘着ピンプレート14b、及び粘着ピン上下機構14dから構成されている。粘着ピンプレート14b及び粘着ピン14cには真空吸着機構を有すると共に粘着ピン14cの先端には粘着シート14eが取り付けられている。また、粘着ピン14cは粘着ピンプレート14bに対して取り外せる構造(ネジ機構により着脱自在にしてある)となっており、交換可能である。粘着ピンプレート14b内は負圧を供給する負圧室と、負圧室から粘着ピン14cの中央部に設けた負圧流路(図示せず)が接続され、粘着ピン14cの先端に設けた開孔に負圧を供給できるようになっている。粘着ピン14cの先端部には開孔部を除いて粘着シート14eが設けてある。なお、粘着ピンプレート14bを上下に移動させる粘着ピン上下機構14dと上チャンバ7との間は蛇腹状の弾性体で接続され、これによって、真空状態を保持できるようにしてある。
【0028】
図4は、
図3に示す上テーブル9及び下テーブル10表面の弾性体(11a,11b)の縦断面図である。
図4では、下テーブル10表面の弾性体11bの縦断面図を示しており、縦断面において上部にガラス基板の裏面が当接し得る構造となっている。従って、厳密には、上テーブル9表面の弾性体11aでは、
図4に示す縦断面図の上下が反転することになる。また、
図4では凸部及び凹部を有する弾性体の断面形状及びそれらの寸法の一例を示すため拡大図として示している。
図4に示すように、下テーブル10表面の弾性体11bは、相互に隣接配置される複数の凸部及び凹部を有する。凸部の高さは例えば25μm、凸部のピッチ(下テーブル10の幅方向に沿ったピッチ)は約500μmである。
また、凸部の下テーブル10の幅方向に沿った長さは約460μmであり、凹部の下テーブル10の幅方向に沿った長さは約40μmである。また、このように相互に隣接配置される複数の凸部及び凹部を有する弾性体(11a,11b)は、図示しないが、上面視、複数の凸部が正方格子状、三角格子状、或いは千鳥格子状に配されている。また、一方、上述のように近年、真空中で貼り合わせるガラス基板の大型化が進み、例えば、ガラス基板の寸法が3m×3mとなっている。従って、このようなガラス基板を保持する上テーブル9及び/又は下テーブル10の幅に対する、弾性体11a及び/又は弾性体11bの幅(上テーブル9及び/又は下テーブル10の幅方向に沿った幅)は、10
-6から10
-4の比率となる。
これにより、真空引き時の弾性体11a及び/又は弾性体11bの凹部(溝部)に残留する空気が排気される際に、大流量の気流が生じることを防止できる。換言すれば、細い排気流路が弾性体11a及び/又は弾性体11bの表面に複数形成されることになり、凹部(溝部)に残留する空気の排気を分散することが可能となる。そしてこの結果として、基板との摩擦帯電によるムラ発生の低減、急速な断熱膨張による温度低下によるムラ発生の防止、基板貼り合わせ精度の向上により、次世代高精細ディスプレイ製造における大型化・薄型化・微細パターン化に対し、色ムラの無いディスプレイ製造に貢献することが可能となる。
【0029】
なお、本実施例では、上テーブル9に弾性体プレート11及び弾性体11aを設け、下テーブル10に弾性体プレート11及び弾性体11bを設ける構成、或いは、上テーブル9又は下テーブル10のいずれか一方のみに弾性体プレート及び弾性体を設ける構成について説明したが、これに限られるものではない。例えば、アルミ合金製の上テーブル9のガラス基板を保持する面に、上述のように相互に隣接配置される複数の凸部及び凹部を有するエンボスシートを接着剤にて貼付する構成としても良い。ここでエンボスシートは、例えばポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate:PETと称される)のシートにエンボス加工を施すことによって波型形状に形成される。また、同様に、アルミ合金製の下テーブル10のガラス基板を保持する面に、上述のように相互に隣接配置される複数の凸部及び凹部を有するエンボスシートを接着剤にて貼付する構成としても良い。或いは、上テーブル9又は下テーブル10のいずれか一方のみにエンボスシートを接着剤にて貼付する構成としても良い。
このように、相互に隣接配置される複数の凸部及び凹部を有するエンボスシートを用いることで、既存の基板組立装置を構成する上テーブル及び/又は下テーブルに上述のエンボスシートを接着剤にて貼付することのみで、本実施例の基板組立装置1を得ることが可能となる。
【0030】
次に、基板組立装置1の動作について説明する。
図5は、
図1に示す基板組立装置1の動作フローを示すフローチャートである。
図5に示すように、ステップS11では、図示しないロボットハンドを用いて貼り合わせ面を下テーブル10側に向けた上ガラス基板を上テーブル9下面に搬入する。上テーブル9から図示しない複数の吸着サポートノズルと粘着ピン駆動機構14(
図3)を下げて、まず上ガラス基板を吸着サポートノズル(図示せず)の先端に吸着する。その後、吸着サポートノズルの先端が粘着ピン面位置になるまで吸着サポートノズルを上昇し、粘着ピン14c(
図3)に設けられた粘着ピン吸引吸着孔(図示せず)に負圧を供給し上ガラス基板を粘着シート14e面に保持する。なお、本実施例では粘着ピン機構とは別に吸着サポートノズルを用いる構成としたがこれに限らず、吸着サポートノズルを設けずに、粘着ピン14cのみを用いて吸引吸着・粘着保持する構成としても良い。粘着ピン14cの先端設けた粘着シート14eに上ガラス基板を保持した状態で粘着ピン14cを上昇させ上ガラス基板が上テーブル9に取り付けた弾性体プレート11の弾性体11a面に接触保持させる。
【0031】
ステップS12では、下ガラス基板面に環状に接着剤(シール剤)が塗布されて、その接着剤で囲まれた領域に適量の液晶を滴下された下ガラス基板を下テーブル10の位置までロボットハンドで搬入し、サポートピン上に載置する。なお、接着剤は、下ガラス基板に設けることに代えて、上ガラス基板側に設けても良く、上下両ガラス基板に設けても良い。
【0032】
次に、サポートピンを先端部がテーブル面又はテーブル面より内側になるまで下テーブル10側に後退させ、下テーブル10に設けられた吸着孔に負圧を供給し保持する。なお、下テーブル10には静電吸着機構が設けてあり、チャンバ内を真空状態にした場合にもガラス基板がずれないように保持できるようにしてある。なお、下テーブル10も上テーブル9と同様に粘着ピン機構を設ける構成としても良い。この場合、粘着ピンの移動距離は上テーブル9に比べて小さく設定できる。
【0033】
ステップS13では、粘着ピン14c及び下テーブル10にそれぞれ上下ガラス基板を保持し終わると、Z軸駆動機構2を動作させて、上フレーム5及び上チャンバ7、上テーブル9を下降させ、上チャンバ7と下チャンバ8とをシールリングを介して合体させ真空チャンバを形成する。この動作と同期して粘着ピン駆動機構14も上下駆動用モータ14aと粘着ピン上下機構14dを使用して上テーブル9との位置関係が変化しないように下降させる。なお、この時上テーブル9に保持された上基板と下テーブル10に保持された下基板の対向面の間隔は数ミリ程度保っておき、上基板と下基板は接触させない。その後、図示していないが下チャンバ8側に設けた排気口から真空チャンバ内の空気を排気して真空チャンバ内を減圧する。真空チャンバ内が貼り合わせをするための減圧状態になると、下ユニット側に設けた焦点深度の深いカメラ(図示せず)を用いて上ガラス基板と下ガラス基板に予め設けてある位置決めマークのずれ量を求める。しかし、カメラの焦点深度の浅い場合は、カメラを上下動作させる機構を設けてまず上ガラス基板の位置決めマークを認識してからカメラを下方に移動させ下ガラス基板の位置決めマークを認識して上下ガラス基板の位置決めマークのずれ量を求める方法をとる。その後、XYθ移動ユニット13を駆動することで下テーブル10を移動して上下基板のXYθ方向のずれを修正する。
なお、この位置決め動作は貼り合わせをするための減圧過程の途中で行うこともできる。
ステップS14では、上下基板の位置合わせが終了すると、Z軸駆動機構2を動作させてフレーム5を介して上テーブル9を移動させると共に、それに同期して粘着ピン駆動機構14を下テーブル10側に移動させることで上下ガラス基板を接触させる。上下ガラス基板が接触した状態で再度上下ガラス基板の位置決めマークのずれ量を確認し、もしずれている場合は再度位置決め動作を行う。確認及び位置決め動作が終了すると更に上テーブル9のみが下降し、加圧を行うと共に粘着ピン14cから上ガラス基板を離脱させる。基板を加圧する際に上テーブル9に取り付いている弾性体プレート11上の弾性体11aが変形することによって基板全体を均一に加圧することができる。なお加圧時に両テーブル上に保持しているガラス基板が位置ずれを起こす場合もあり、時々位置決めマークを観測して位置ずれ補正を行ったほうが良い。
【0034】
ステップ15では、上下のガラス基板を加圧して貼り合わせが終了すると、真空チャンバ内に図示しないパージガスブロー機構よりパージガスを導入する。このとき大気も導入して、大気圧に戻す。ガラス基板は、大気圧に戻すことでさらに押し付け力が作用して、規定の厚みまで加圧される。その状態で、図示していないUV照射機構を動作させて、複数箇所接着剤を硬化させて仮止めを行い、液晶基板の貼り合わせが終了する。
【0035】
上記の動作では粘着ピン14cによる基板の保持は、上下ガラス基板がどちらか一方のガラス基板に設けた接着剤(シール剤)に接触するまでとし、それ以上は粘着ピン14cを下方向に移動させずに上テーブル9のみを下方向に移動させることで粘着ピン14cを基板面から剥すようにしている。なおこのとき、粘着ピン14cをガラス基板の移動方向とは逆方向に移動させることで、確実に基板面から粘着ピン14cを剥すことができる。
なお、基板に加圧力を加える時も粘着ピンも同時に下テーブル10側に移動させて、加圧終了後、大気圧に戻した後で、テーブルは加圧時と同じ状態を保持し、その状態で粘着ピン駆動機構14を上昇させて粘着ピンを基板から離脱することもできる。なお、このとき、粘着ピンの先端の吸引吸着孔へ正圧のガス又は清浄な空気を送り込みながら粘着ピンを上昇させることで、粘着ピンを基板面から容易に剥すことができる。
【0036】
ステップS16では、貼り合わせ後の基板が図示しないロボットハンドを用いて真空チャンバの外へ搬出される。
【0037】
以上の通り本実施例によれば、ガラス基板の撓みを低減し得る基板組立装置及び基板組立方法を提供することが可能となる。
また、本実施例によれば、基板との摩擦帯電によるムラ発生の低減、急速な断熱膨張による温度低下によるムラ発生の防止、基板貼り合わせ精度の向上により、次世代高精細ディスプレイ製造における大型化・薄型化・微細パターン化に対し、色ムラの無いディスプレイ製造に貢献することが可能となる。
【実施例2】
【0038】
図6は、本発明の他の実施例に係る実施例2の基板組立装置の概略図であって、下テーブルの上面図及び側面図である。本実施例では、粗に配される第1のリフタ21と、下テーブル10を貫通可能な密に配される第2のリフタ22とを備える点が上述の実施例1と異なる。以下では実施例1と同様な構成要素に同一符号を付し、実施例1と重複する説明を省略する。
【0039】
図6に、本実施例の基板組立装置1を構成する下テーブル10の上面図と側面図を示している。上面図に示すように、本実施例の基板組立装置1は、一方向に延在する棒状の第1のリフタ21と、側面図に示すように、下テーブル10に設けられた貫通孔23内に配され上下動可能な第2のリフタ22を備える。
図6では説明の便宜上、第1のリフタ21を2本、第2のリフタ22を24本有する場合を示すが、第1のリフタ21及び第2のリフタ22の本数はこれに限られるものではない。但し、
図6に示されるように、第1のリフタ21の配置密度は粗であり、第2のリフタ22の配置密度は密である。換言すれば、第1のリフタ21が粗に配され第2のリフタ22が密に配される構成であれば、第1のリフタ21及び第2のリフタ22の本数は適宜設定すれば良い。
【0040】
図7は、本実施例の基板組立装置の動作フローを示すフローチャートである。
図7におけるステップS21~ステップS25までは、上述の実施例1における
図5に示したステップS11~ステップS15までと同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0041】
ステップS27では、第2のリフタ22が所定量上昇し、貼り合わせ後の基板を所定量だけ下テーブル10の保持面(表面)より突出させて下テーブル10の保持面(表面)より貼り合わせ後の基板を浮かせる。ここで、
図8に、
図6に示す第2のリフタ22により下ガラス基板16を所定量上昇させた状態を示す縦断面図を示す。
図8では、説明の便宜上、下ガラス基板16を所定量上昇させた状態を示しているがこれは貼り合わせ後の基板を意味する。
図8に示すように、第2のリフタ22のピッチP1(下テーブル10の幅方向に沿ったピッチ)は、例えば80mm~100mmであり、第2のリフタ22の直径D1は例えば5mmであり、貫通孔23の孔径は例えば8mmである。また、第2のリフタ22の下テーブル10の保持面(表面)からの上昇量h1は、例えば1mm~3mmである。なお、第2のリフタ22は、例えば、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン;polyetheretherketone)材の樹脂により形成され、下ガラス基板16の裏面と当接する先端部は所定の曲率半径を有する曲面状となっており、下ガラス基板16の裏面への損傷或いは傷の発生を防止できる。パージガスブロー機構より導入されるパージガス、または、大気は
図8に矢印にて示すように、貫通孔23の内周面と第2のリフタ22の外周面との間隙を通過し下ガラス基板16の裏面に吹き付けられる。換言すれば、パージガス、または、大気が貫通孔23の内周面と第2のリフタ22の外周面との間隙から下ガラス基板16の裏面に侵入する。
【0042】
図7に戻り、ステップS27では、第1のリフタ21が所定量上昇し、下ガラス基板16を下テーブル10の保持面(表面)から更に離間させる。ここで、
図9に、
図6に示す第1のリフタ21により下ガラス基板16を所定量上昇させた状態を示す縦断面図を示す。
図9においても
図8と同様に説明の便宜上、下ガラス基板16を所定量上昇させた状態を示しているがこれは貼り合わせ後の基板を意味する。
図9に示すように、第1のリフタ21のピッチP2(下テーブル10の幅方向に沿ったピッチ)は、例えば200mm~250mmであり、第1のリフタ21の下テーブル10の保持面(表面)からの上昇量h2は、例えば100~200mmである。従って、第1のリフタ21の下テーブル10の保持面(表面)からの上昇量h2は、第2のリフタ22の下テーブル10の保持面(表面)からの上昇量h1の略33倍から200倍である。
【0043】
このように、上述のステップS26にて、貼り合わせ後の基板を構成する下ガラス基板16の裏面が下テーブル10の保持面(表面)より離間する初期段階において、パージガス、または、大気が貫通孔23の内周面と第2のリフタ22の外周面との間隙から下ガラス基板16の裏面に侵入する。このとき、下ガラス基板16の裏面と下テーブル10の保持面(表面)との間の負圧は、貫通孔23を介して逃がされ、負圧による貼り合わせ後の基板の撓みを防止することが可能となる。そして、上述のステップS27にて、第1のリフタ21により下ガラス基板16が下テーブル10の保持面(表面)から更に離間させるため、貼り合わせ後の基板の撓みを防止しつつ、好適に貼り合わせ後の基板を下テーブル10の保持面(表面)から更に離間させることが可能となる。そしてこの結果として、ガラス基板の撓みによるムラ発生を防止し、次世代高精細ディスプレイ製造における大型化・薄型化・微細パターン化に対し、色ムラの無いディスプレイ製造に貢献し、品質向上・歩留まり向上・コスト低減・生産性を向上することが可能となる。
【0044】
図7に戻り、ステップS28では、第1のリフタ21により下テーブル10の保持面(表面)から離間された、貼り合わせ後の基板は図示しないロボットハンドに受け渡され、ロボットハンドにより真空チャンバの外へ搬出される。
【0045】
以上の通り本実施例によれば、ガラス基板の撓みを低減し得る基板組立装置及び基板組立方法を提供することが可能となる。
また、本実施例によれば、ガラス基板の撓みによるムラ発生を防止し、次世代高精細ディスプレイ製造における大型化・薄型化・微細パターン化に対し、色ムラの無いディスプレイ製造に貢献し、品質向上・歩留まり向上・コスト低減・生産性を向上することが可能となる。
【0046】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。
例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…基板組立装置
2…Z軸駆動機構
2a…Z軸駆動モータ
2b…ボールネジ
2c…ボールネジ受け部
3…案内機構
3a…リニアガイド
3b…リニア移動部
4…ロードセル
5…上フレーム
6…上シャフト
7…上チャンバ
7b…ブラケット
8…下チャンバ
9…上テーブル
10…下テーブル
11…弾性体プレート
11a,11b…弾性体
12…下シャフト
13…XYθ移動ユニット
14…粘着ピン駆動機構
14a…上下駆動用モータ
14b…粘着ピンプレート
14c…粘着ピン
14d…粘着ピン上下機構
14e…粘着シート
15…架台
16…下ガラス基板
17,18…梁
21…第1のリフタ
22…第2のリフタ
23…貫通孔