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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】棒状成形品
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/04 20060101AFI20240910BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240910BHJP
   B29C 70/10 20060101ALI20240910BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20240910BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240910BHJP
   B29K 105/12 20060101ALN20240910BHJP
【FI】
C08J5/04 CFG
C08L77/00
C08K7/14
B29C70/10
B29C70/42
B29K105:08
B29K105:12
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020068038
(22)【出願日】2020-04-06
(65)【公開番号】P2021165323
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】安岡 翔平
(72)【発明者】
【氏名】高坂 繁行
(72)【発明者】
【氏名】板倉 雅彦
【審査官】脇田 寛泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-263828(JP,A)
【文献】特開2003-105620(JP,A)
【文献】特開2015-183101(JP,A)
【文献】特開2012-116917(JP,A)
【文献】特開平06-287317(JP,A)
【文献】特開2001-179738(JP,A)
【文献】特開平05-208418(JP,A)
【文献】特開平06-107944(JP,A)
【文献】特開平08-142217(JP,A)
【文献】特開2017-024388(JP,A)
【文献】特開2017-148948(JP,A)
【文献】特開2009-269952(JP,A)
【文献】特開平10-138244(JP,A)
【文献】特開2012-052093(JP,A)
【文献】特開2007-277391(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109467751(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B11/16
15/08-15/14
B29C41/00-41/36
41/46-41/52
70/00-70/88
C08J5/04-5/10
5/24
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
F16B23/00-43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ガラス長繊維とポリアミド系樹脂が一体化された長さが4~20mmの樹脂付着繊維束と、
(B)重量平均繊維長が0.01~1mmのガラス短繊維とポリアミド系樹脂との混合物を含有するポリアミド系樹脂組成物からなる棒状成形品であって、
前記組成物中のガラス長繊維とガラス短繊維の合計含有割合が10~70質量%で、ガラス長繊維の含有割合≧ガラス短繊維の含有割合の関係を満たしており、
前記棒状成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長が0.5mm以上であり、
前記棒状成形品10個の曲げ強度(MPa)が、これらの平均値を基準として0.90~1.10倍の範囲内である、棒状成形品であって、
前記棒状成形品が、ピン、ビス、寸切りボルト、六角ボルト、全ねじ六角ボルトから選ばれるものである、棒状成形品。
【請求項2】
前記(A)成分の樹脂付着繊維束と、前記樹脂付着繊維束に含まれているガラス長繊維の長さが4~20mm、前記(B)成分に含まれているガラス短繊維の重量平均繊維長が0.02~0.5mmである、請求項1記載の棒状成形品。
【請求項3】
ガラス長繊維の含有割合とガラス短繊維の合計100質量%中の含有割合が、ガラス長繊維が55~95質量%、ガラス短繊維が5~45質量%である、請求項1または2記載の棒状成形品。
【請求項4】
ガラス長繊維の含有割合とガラス短繊維の合計100質量%中の含有割合が、ガラス長繊維が65~95質量%、ガラス短繊維が5~35質量%である、請求項1または2記載の棒状成形品。
【請求項5】
前記棒状成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長が0.7mm以上である、請求項1~4のいずれか1項記載の棒状成形品。
【請求項6】
前記棒状成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長が1.0mm以上である、請求項1~4のいずれか1項記載の棒状成形品。
【請求項7】
前記棒状成形品10個の曲げ強度(MPa)が、これらの平均値を基準として0.90~1.10倍の範囲内である、請求項1~6のいずれか1項記載の棒状成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボルトやねじなどに利用できる棒状成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂製のボルトは軽量化の点で有利であるが、金属と比べると強度の点で十分ではないため、樹脂に繊維状充填材を配合することで強度が高められている。
特許文献1には、特定ゲートを使用して射出成形することで、長軸方向への繊維状充填材の配向度が高く、曲げ強度が高い棒状成形体の製造方法の発明が記載されている。
【0003】
特許文献2には、平均繊維長が4~20mmの炭素長繊維とプロピレン系樹脂が一体化された樹脂含浸繊維束(A)と、平均繊維長が0.01~0.5mmの炭素短繊維とプロピレン系樹脂との混合物(B)を含有しており、炭素長繊維量と炭素短繊維量の合計含有量が10~30質量%であり、炭素長繊維量≧炭素短繊維量の関係を満たしており、比重が1.15以下である、プロピレン系樹脂組成物から得られる成形品が、自動車部品、電気・電子部品、機械部品、摺動部品、吸音材、建築用の木材代替品、通信機器用筺体、放射線遮蔽材などに使用できることが記載されている(特許請求の範囲および段落番号0040)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-24388号公報
【文献】特許第5255541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高強度で品質のばらつきが小さく、ボルトやねじなどに利用できる棒状成形品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、(A)ガラス長繊維とポリアミド系樹脂が一体化された長さが4~20mmの樹脂付着繊維束と、
(B)重量平均繊維長が0.01~1mmのガラス短繊維とポリアミド系樹脂との混合物を含有するポリアミド系樹脂組成物からなる棒状成形品であって、
前記組成物中のガラス長繊維とガラス短繊維の合計含有割合が10~70質量%で、ガラス長繊維の含有割合≧ガラス短繊維の含有割合の関係を満たしており、
前記棒状成形品中のガラス繊維の重量平均繊維長が0.5mm以上であり、
前記棒状成形品10個の曲げ強度(MPa)が、これらの平均値を基準として0.90~1.10倍の範囲内である、棒状成形品を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の棒状成形体は、高強度(曲げ強度が高い)であり、かつ複数の棒状成形体の間で曲げ強度のばらつきが小さい。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<ポリアミド系樹脂組成物>
(A)成分の樹脂付着繊維束は、長さ方向に揃えた状態で束ねられたガラス長繊維束にポリアミド系樹脂が接触・付着されたものが4~20mmの範囲で切断されたものである。
(A)成分の樹脂付着繊維束は付着状態によって、
ガラス長繊維束の中心部まで樹脂が浸透され(含浸され)、繊維束を構成する中心部の繊維間にまで樹脂が入り込んだ状態のもの(以下「樹脂含浸繊維束」という)、
ガラス長繊維束の表面のみが樹脂で覆われた状態のもの(以下「樹脂表面被覆繊維束」という)、
それらの中間のもの(繊維束の表面が樹脂で覆われ、表面近傍のみに樹脂が含浸され、中心部にまで樹脂が入り込んでいないもの)(以下「樹脂一部含浸繊維束」という)を含むものである。
【0009】
ポリアミド系樹脂は、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010、ポリアミド46、ポリアミドMXD、ポリアミド6T、ポリアミド9T、ポリアミド10T、ポリアミド6I、ポリアミドM5T、ポリアミド6/66、ポリアミド1212、ポリアミド66/6T、ポリアミド66/6I、ポリアミド6T/6I/66から選ばれる1または2以上を使用することができる。
【0010】
ガラス長繊維は、公知のEガラス、Cガラス、Sガラス、Dガラスからなるものを使用することができる。
【0011】
(A)成分の樹脂付着繊維束の長さは4~20mmであり、本発明の好ましい一態様は5~15mmであり、本発明の別の好ましい一態様は7~12mmである。
樹脂付着繊維束の長さと、前記樹脂付着繊維束に含まれているガラス長繊維の長さは同じである。
樹脂付着繊維束の直径は特に制限されるものではないが、例えば0.8~5mmの範囲にすることができる。
【0012】
樹脂付着繊維束に含まれるガラス長繊維は、繊維径(単糸径)6~30μmのものを使用することができる。
繊維束を構成するガラス長繊維の本数は、繊維径17μmのガラス繊維を使用したとき、本発明の好ましい一態様は100~30000本、本発明の別の好ましい一態様は500~20000本、本発明のさらに別の好ましい一態様は1000~10000本である。
【0013】
樹脂付着繊維束は、ダイスを用いた周知の製造方法により製造することができ、例えば、特開平6-313050号公報の段落番号7、特開2007-176227号公報の段落番号23のほか、特公平6-2344号公報(樹脂被覆長繊維束の製造方法並びに成形方法)、特開平6-114832号公報(繊維強化熱可塑性樹脂構造体およびその製造法)、特開平6-293023号公報(長繊維強化熱可塑性樹脂組成物の製造方法)、特開平7-205317号公報(繊維束の取り出し方法および長繊維強化樹脂構造物の製造方法)、特開平7-216104号公報(長繊維強化樹脂構造物の製造方法)、特開平7-251437号公報(長繊維強化熱可塑性複合材料の製造方法および製造装置)、特開平8-118490号公報(クロスヘッドダイおよび長繊維強化樹脂構造物の製造方法)等に記載の製造方法を適用することができる。
また樹脂付着繊維束としては、ダイセルポリマー(株)から販売されている、ポリアミド系樹脂とガラス繊維を含むプラストロン(登録商標)シリーズを使用することもできる。
【0014】
(A)成分の樹脂付着繊維束中のポリアミド系樹脂とガラス長繊維の含有割合は、本発明の好ましい一態様はポリアミド系樹脂90~30質量%、ガラス長繊維10~70質量%であり、本発明の別の好ましい一態様はポリアミド系樹脂80~40質量%、ガラス長繊維20~60質量%であり、本発明のさらに別の好ましい一態様はポリアミド系樹脂70~40質量%、ガラス長繊維30~60質量%である。
【0015】
(A)成分の樹脂付着繊維束は、必要に応じて、公知の添加剤を含有することができる。
公知の添加剤としては、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、可塑剤、軟化剤、分散剤、安定化剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定化剤など)、アンチブロッキング剤、結晶核成長剤、充填剤(シリカやタルクなどの粒状充填剤など)、滑剤などを挙げることができる。
【0016】
(B)成分は、重量平均繊維長が0.01~1mmのガラス短繊維とポリアミド系樹脂との混合物である。
前記混合物は、ガラス短繊維と粉末状のポリアミド系樹脂との混合物でもよいし、ガラス短繊維とポリアミド系樹脂を含むペレットなどの成形品でもよい。
前記混合物は、(A)成分と同じ樹脂添加剤を含有することができる。
【0017】
ポリアミド系樹脂は、(A)成分で使用したものと同じポリアミド系樹脂を使用することができるが、(A)成分で使用したものと異なるポリアミド系樹脂を使用することもできる。
ガラス短繊維は、公知のEガラス、Cガラス、Sガラス、Dガラスからなるものを使用することができる。
【0018】
(B)成分に含まれているガラス短繊維の長さは、本発明の好ましい一態様は0.01~1mmであり、本発明の別の好ましい一態様は0.02~0.5mmである。
【0019】
(B)成分の混合物中のポリアミド系樹脂とガラス短繊維の含有割合は、本発明の好ましい一態様はポリアミド系樹脂20~80質量%、ガラス短繊維80~20質量%であり、本発明の別の好ましい一態様はポリアミド系樹脂30~70質量%、ガラス短繊維70~30質量%であり、本発明のさらに別の好ましい一態様はポリアミド系樹脂40~60質量%、ガラス短繊維60~40質量%である。
【0020】
ポリアミド系樹脂組成物中のガラス長繊維とガラス短繊維の合計含有割合は10~70質量%であり、本発明の好ましい一態様は20~60質量%であり、本発明の別の好ましい一態様は30~60質量%である。
【0021】
ポリアミド系樹脂組成物中のガラス長繊維とガラス短繊維の含有割合は、ガラス長繊維の含有割合≧ガラス短繊維の含有割合の関係を満たしている。
ポリアミド系樹脂組成物中のガラス長繊維とガラス短繊維の含有割合は、ガラス長繊維の含有割合とガラス短繊維の合計100質量%中、本発明の好ましい一態様はガラス長繊維55~95質量%、ガラス短繊維5~45質量%であり、本発明の別の好ましい一態様はガラス長繊維65~95質量%、ガラス短繊維5~35質量%であり、本発明のさらに別の好ましい一態様はガラス長繊維が75~95質量%、ガラス短繊維5~25質量%である。
【0022】
<棒状成形品>
棒状成形品は、棒状成形品の長さ≧棒状成形品の幅方向の長さの関係を満たしているものであればよい。
棒状成形品は、幅方向の断面形状が円形もの、楕円形のもの、多角形のもの、不定形のものなどにすることができる。
棒状成形品の長さは、円柱、角柱であるときの一端面から他端面までの長さである。
幅方向の断面形状が円形のものであるときの幅方向の長さは直径であり、幅方向の断面形状が楕円形のものであるときの幅方向の長さは長軸長さであり、幅方向の断面形状が多角形のものや幅方向の断面形状が不定形のものであるときの幅方向の長さは最大長さである。
【0023】
棒状成形品中に含まれているガラス繊維の重量平均繊維長は0.5mm以上であり、本発明の好ましい一態様の重量平均繊維長は0.7mm以上であり、本発明の別の好ましい一態様の重量平均繊維長は1.0mm以上である。
【0024】
棒状成形品10個の曲げ強度(MPa)は、これらの平均値を基準として0.90~1.10倍の範囲内であり、本発明の好ましい一態様は曲げ強度(MPa)が平均値を基準として0.92~1.08倍の範囲内である。前記数値範囲は、最小値/平均値~最大値/平均値の範囲である。
【0025】
棒状成形品は、公知の射出成形法を適用して製造することができるほか、特開2017-24388号公報および特開2017-24389号公報に記載の棒状成形体の製造方法を適用して製造することができる。
棒状成形品は、ピン、ビス、寸切りボルト、六角ボルト、全ねじ六角ボルトから選ばれるものにすることができる。
【0026】
各実施形態における各構成およびそれらの組み合わせなどは一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲で、適宜構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0027】
(1)(B)成分のガラス短繊維の重量平均繊維長
(B)成分のガラス短繊維500本から求めた。計算式は、特開2006-274061号公報の〔0044〕、〔0045〕を使用した。
【0028】
(2)棒状成形体中のガラス繊維の重量平均繊維長
実施例および比較例で得た棒状成形体について、特開2013-121988号公報の段落番号0063に記載の下記の方法により測定した。
棒状成形品から約3gの試料を切出し、650℃で加熱して灰化させて繊維を取り出した。取り出したガラス繊維の一部(500本)から重量平均繊維長を求めた。計算式は、特開2006-274061号公報の〔0044〕、〔0045〕を使用した。
【0029】
(3)曲げ強度
実施例および比較例で得た棒状成形体について、下記条件にて曲げ強度を測定した。
測定機器:オートグラフAG2000((株)島津製作所製)
試験速度:2mm/min
支点間距離:40mm
【0030】
実施例1、2、比較例1~3
実施例、比較例で使用した(A)成分と(B)成分は、次のとおりである。
(A)成分:ポリアミドMXD6を50質量%、ガラス長繊維50質量%からなる樹脂含浸繊維束(プラストロンPAX-GF50-02;直径2.8mm、長さ9mmの円柱形状;ダイセルポリマー(株))。樹脂含浸繊維束の長さと含有されているガラス繊維長さは同じである。
(B)成分:ポリアミドMXD6を50質量%、ガラス短繊維50質量%からなる円柱状ペレット(プラストロンPAX-SGF50;直径2.4mm、長さ4.0mmの円柱形状;ダイセルポリマー(株))を使用した。樹脂中に含まれるガラス繊維の重量平均繊維長は、0.3mmである。
【0031】
実施例および比較例の各組成物を使用して、次の条件で射出成形して、直径12mm、長さ80mmの丸棒を得た。得られた丸棒の重量平均繊維長と曲げ強度を測定した。各例とも10個を測定し、重量平均繊維長は10個成形品中の平均値である。結果を表1に示す。
(射出成形条件)
射出成形機:日本製鋼所のJ150EII
シリンダー温度:280℃
背圧:2MPa
金型温度:160℃
ゲート:特開2017-24388号公報の実施例1(図4(a))と同じゲートを使用した。
【0032】
【表1】
【0033】
実施例1、2と比較例1~3との対比から、(A)成分と(B)成分を所定割合で併用することで、得られた成形体の曲げ強度を高いレベルにすることができると共に、曲げ強度のバラツキを小さくすることができた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の棒状成形体は、各種ピン、各種ビス、寸切りボルト、六角ボルト、全ねじ六角ボルトなどのボルトとして使用することができる。