(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】基板加熱装置および基板処理システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/312 20060101AFI20240910BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20240910BHJP
C08J 7/00 20060101ALI20240910BHJP
F26B 3/30 20060101ALI20240910BHJP
F26B 9/06 20060101ALI20240910BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
H01L21/312 B
H01L21/31 E
C08J7/00 301
C08J7/00 CFG
F26B3/30
F26B9/06 Z
H05B3/10 B
(21)【出願番号】P 2020151778
(22)【出願日】2020-09-10
【審査請求日】2023-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189337
【氏名又は名称】宮本 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 士朗
(72)【発明者】
【氏名】小針 倫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 茂
(72)【発明者】
【氏名】西ノ原 拓磨
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-027919(JP,A)
【文献】特開2014-175667(JP,A)
【文献】特開2011-195371(JP,A)
【文献】特開2019-021910(JP,A)
【文献】特開2008-041698(JP,A)
【文献】特開2001-168104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312
H01L 21/31
C08J 7/00
F26B 3/30
F26B 9/06
H05B 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収容可能な収容空間が内部に形成されたチャンバと、
前記収容空間に配置されるとともに、前記基板を赤外線によって加熱可能な基板加熱部と、
前記チャンバの内面と前記基板加熱部との間に設けられ、前記赤外線を吸収し、かつ、1mm以下の厚みを有する遮熱板と、を含
み、
前記遮熱板は、前記赤外線の照射方向に対して間隔をあけて複数設けられており、
前記複数の遮熱板は、オーバーラップして段違いに配置されている
基板加熱装置。
【請求項2】
前記遮熱板は、溶液を塗布した前記基板の周辺に設けられている
請求項1に記載の基板加熱装置。
【請求項3】
前記複数の遮熱板のうち最も前記基板の側の面は、鏡面よりも前記赤外線の吸収率が高い
請求項
1または2に記載の基板加熱装置。
【請求項4】
前記複数の遮熱板のうち最も前記基板の側の面は、黒色である
請求項
1から3のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項5】
前記複数の遮熱板のうち最も前記チャンバの内面の側の面は、鏡面である
請求項
1から
4のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項6】
前記遮熱板は、金属製である
請求項1から
5のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項7】
前記チャンバは、
前記基板の上方に位置する天板と、
前記基板の下方に位置し、前記天板と対向する底板と、
前記基板の周囲を囲む周壁と、を含み、
前記遮熱板は、前記天板、前記底板および前記周壁のそれぞれに設けられている
請求項1から
6のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項8】
前記基板には、ポリイミドを形成するための溶液が塗布されている
請求項1から
7のいずれか一項に記載の基板加熱装置。
【請求項9】
請求項1から
8の何れか一項に記載の基板加熱装置を含む基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板加熱装置および基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、チャンバ内に配置された基板を赤外線等で加熱する装置がある(例えば、特許文献1参照)。例えば、赤外線装置は、チャンバ内に収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、赤外線がチャンバ内面に照射されるため、加熱によりチャンバが変形したり劣化したりしてしまう可能性が高い。また、チャンバの変色によりチャンバ内面の赤外線反射率が変化することで、基板加熱部の出力や基板温度の安定性に影響をあたえ、基板加熱時の安定性が損なわれてしまう可能性が高い。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明は、チャンバの変形や劣化を抑制するとともに、基板加熱時の安定性を向上させることが可能な基板加熱装置および基板処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る基板加熱装置は、基板を収容可能な収容空間が内部に形成されたチャンバと、前記収容空間に配置されるとともに、前記基板を赤外線によって加熱可能な基板加熱部と、前記チャンバの内面と前記基板加熱部との間に設けられ、前記赤外線を吸収し、かつ、1mm以下の厚みを有する遮熱板と、を含む。
この構成によれば、チャンバの内面と基板加熱部との間に設けられた遮熱板を含むことで、チャンバの内面に向かう赤外線を遮熱板で遮ることができる。チャンバの内面に向かう赤外線は遮熱板で吸収されるため、赤外線はチャンバの内面に直接照射されない。そのため、加熱によりチャンバが変形したり劣化したりすることを抑制することができる。また、チャンバの変色によりチャンバ内面の赤外線反射率が変化することを抑制することができる。したがって、チャンバの変形や劣化を抑制するとともに、基板加熱時の安定性を向上させることができる。
加えて、遮熱板の厚みが1mm以下であることにより、遮熱板の厚みが1mmを超える場合と比較して、遮熱板の熱容量を小さくすることができる。そのため、遮熱板の熱飽和が早く、熱が均一になりやすい。また、遮熱板が冷めやすくなるため、メンテナンス性に優れる。さらに、遮熱板の薄型化および軽量化に寄与する。
【0007】
上記の基板加熱装置において、前記遮熱板は、溶液を塗布した前記基板の周辺に設けられていてもよい。
この構成によれば、基板からチャンバの内面に向かうヒュームを遮熱板で遮ることができるため、チャンバの内面への昇華物の付着を抑制することができる。そのため、昇華物付着によりチャンバ内面の赤外線反射率が変化することを抑制することができる。したがって、基板加熱時の安定性を向上させることができる。
【0008】
上記の基板加熱装置において、前記遮熱板は、前記赤外線の照射方向に対して間隔をあけて複数設けられていてもよい。
この構成によれば、複数の遮熱板によりチャンバの内面に向かう熱を段階的に抑えることができるため、加熱によりチャンバが変形したり劣化したりすることをより効果的に抑制することができる。
【0009】
上記の基板加熱装置において、前記複数の遮熱板のうち最も前記基板の側の面は、鏡面よりも前記赤外線の吸収率が高くてもよい。
この構成によれば、赤外線の吸収による遮熱板の加熱を促進することができる。これにより、基板からチャンバの内面に向かうヒュームが遮熱板の表面で冷却されて昇華物となることを抑制することができる。したがって、遮熱板への昇華物の付着を抑制することができる。
【0010】
上記の基板加熱装置において、前記複数の遮熱板のうち最も前記基板の側の面は、黒色であってもよい。
この構成によれば、遮熱板で赤外線が効果的に吸収されるため、遮熱板の加熱をより効果的に促進することができる。したがって、遮熱板への昇華物の付着をより効果的に抑制することができる。
【0011】
上記の基板加熱装置において、前記複数の遮熱板のうち最も前記チャンバの内面の側の面は、鏡面であってもよい。
この構成によれば、複数の遮熱板のうち最もチャンバの内面の側の面で赤外線を反射することができる。これにより、複数の遮熱板のうち最もチャンバの内面の側の面が黒色である場合と比較して、チャンバ内の温度均一性を高めることができる。さらに、鏡面になることで放射率が下がるため、遮熱板からの再輻射によりチャンバへの熱の伝わりが抑制され、チャンバの温度上昇を抑制する効果を高めることができる。
【0012】
上記の基板加熱装置において、前記遮熱板は、金属製であってもよい。
この構成によれば、遮熱板がガラスの場合と比較して、熱飽和が早く、熱が均一になりやすい。
【0013】
上記の基板加熱装置において、前記チャンバは、前記基板の上方に位置する天板と、前記基板の下方に位置し、前記天板と対向する底板と、前記基板の周囲を囲む周壁と、を含み、前記遮熱板は、前記天板、前記底板および前記周壁のそれぞれに設けられていてもよい。
この構成によれば、基板からチャンバの天板、底板および周壁のそれぞれに向かうヒュームを遮熱板で遮ることができるため、チャンバの天板、底板および周壁のそれぞれへの昇華物の付着を抑制することができる。
【0014】
上記の基板加熱装置において、前記基板には、ポリイミドを形成するための溶液が塗布されていてもよい。
この構成によれば、ポリイミドの形成時において、チャンバの変形や劣化を抑制するとともに、基板加熱時の安定性を向上させることができる。
【0015】
本発明の一態様に係る基板処理システムは、上記の基板加熱装置を含むことを特徴とする。
この構成によれば、基板処理システムにおいて、チャンバの変形や劣化を抑制するとともに、基板加熱時の安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、チャンバの変形や劣化を抑制するとともに、基板加熱時の安定性を向上させることが可能な基板加熱装置および基板処理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】第一実施形態に係る基板加熱装置の斜視図である。
【
図2】第一実施形態に係る基板加熱装置の断面図である。
【
図3】第一実施形態に係るヒータユニットの平面図である。
【
図4】第一実施形態に係る赤外線ヒータの平面図である。
【
図5】第一実施形態に係る複数の遮熱板の支持状態を示す斜視図である。
【
図6】第二実施形態に係る遮熱部の構成の一例を示す平面図である。
【
図8】第二実施形態に係る遮熱部の貫通孔を示す平面図である。
【
図9】第二実施形態に係る中心保持部の一例を示す図である。
【
図10】第二実施形態に係る周辺保持部の一例を示す図である。
【
図11】第二実施形態に係る遮熱部の構成の他の例を示す平面図である。
【
図13】第三実施形態に係る防着板を示す平面図である。
【
図14】第四実施形態に係る基板加熱装置の断面図である。
【
図15】第五実施形態に係る基板加熱装置の断面図である。
【
図16】実施形態の第一変形例に係る保持部を示す図である。
【
図17】実施形態の第二変形例に係る遮熱部の構成を示す断面図である。
【
図18】第一実施例に係る遮熱板の効果を説明するための図である。
【
図19】第二実施例に係る遮熱板の効果を説明するための図である。
【
図20】第三実施例に係る基板加熱時の処理条件の説明図である。
【
図21】第三実施例の比較例に係る基板加熱装置の断面図である。
【
図22】第三実施例の実施例1に係る基板加熱装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の説明においては、XYZ直交座標系を設定し、このXYZ直交座標系を参照しつつ各部材の位置関係について説明する。水平面内の所定方向をX方向、水平面内においてX方向と直交する方向をY方向、X方向及びY方向のそれぞれと直交する方向(すなわち鉛直方向)をZ方向とする。
【0019】
<第一実施形態>
<基板加熱装置>
図1は、第一実施形態に係る基板加熱装置1の斜視図である。
図1に示すように、基板加熱装置1は、チャンバ2、圧力調整部3、ガス供給部4、ヒータユニット6(基板加熱部)、ブロック体7、温度検知部9、圧力検知部14、気体液化回収部11、冷却部17(
図2参照)、遮熱部30、遮蔽部40、遮蔽支持部50及び制御部15を備える。制御部15は、基板加熱装置1の構成要素を統括制御する。
なお、
図1においては、チャンバ2を二点鎖線で示している。
【0020】
<チャンバ>
チャンバ2の内部には、基板10を収容可能な収容空間2Sが形成されている。基板10及びヒータユニット6は、共通のチャンバ2に収容されている。チャンバ2は、直方体の箱状に形成されている。
【0021】
図2に示すように、チャンバ2は、上下に分離可能な分割構造を有する。チャンバ2は、下方に開口する箱状に形成された上部構造体21と、上方に開口する箱状に形成された下部構造体22と、上部構造体21と下部構造体22とを分離可能に連結する連結部23と、を備える。
【0022】
上部構造体21は、矩形板状の天板25と、天板25の外周縁に繋がる矩形枠状の上部周壁26と、を備える。
下部構造体22は、天板25と対向する矩形板状の底板27と、底板27の外周縁に繋がる矩形枠状の下部周壁28と、を備える。下部周壁28には、不活性ガスをチャンバ2内に供給するためのゲート29が設けられている。
【0023】
例えば、上部構造体21と下部構造体22との連結を解除し上部構造体21を分離すると、下部構造体22は上方に開口する。下部構造体22が上方に開口した状態で、基板10の搬入及び搬出が可能となる。下部構造体22内に基板10を搬入した後に上部構造体21と下部構造体22とを連結することにより、基板10を密閉空間で収容可能である。例えば、上部構造体21と下部構造体22とをシール部材等を介して隙間なく連結することにより、チャンバ2内の気密性を向上することができる。
【0024】
<圧力調整部>
圧力調整部3は、チャンバ2内の圧力を調整可能である。
図1に示すように、圧力調整部3は、チャンバ2に接続された真空配管3aを含む。真空配管3aは、Z方向に延在する円筒状の配管である。例えば、真空配管3aは、X方向に間隔をあけて複数配置されている。
図1においては、1つの真空配管3aのみを示している。なお、真空配管3aの設置数は限定されない。真空配管3aはチャンバ2に接続されていればよく、真空配管3aの接続部位は限定されない。
図2の例では、真空引きのラインがチャンバ2の底板27に設けられている(
図2中矢印Vacuum)。
【0025】
例えば、圧力調整部3は、ポンプ機構等の圧力調整機構を備えている。圧力調整機構は、真空ポンプ13を備えている。真空ポンプ13は、真空配管3aにおいてチャンバ2との接続部(上端部)とは反対側の部分(下端部)から延びるラインに接続されている。
【0026】
圧力調整部3は、ポリイミド膜(ポリイミド)を形成するための溶液(以下「ポリイミド形成用液」という。)が塗布された基板10の収容空間2Sの雰囲気の圧力を調整可能である。例えば、ポリイミド形成用液は、ポリアミック酸又はポリイミドパウダーを含む。ポリイミド形成用液は、矩形板状をなす基板10の第一面10a(上面)にのみ塗布されている。
なお、基板10への塗布物(被処理物)は、ポリイミド形成用液に限定されず、基板10に所定の膜を形成するためのものであればよい。
【0027】
また、圧力調整部3は、収容空間2Sの雰囲気の圧力を調整可能とするものであるが、別途、この圧力調整部3内には、収容空間2Sに窒素(N2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスを供給する機構(以下「不活性ガス供給機構」ともいう。)が設けられていてもよい。これにより、収容空間2Sを所望の圧力条件とするよう調整することができる。
また、後述するガス供給部4のように、圧力調整部3とは別に不活性ガス供給機構が設けられていてもよい。
【0028】
<ガス供給部>
ガス供給部4は、チャンバ2の内部雰囲気の状態を調整可能である。ガス供給部4は、チャンバ2に接続されたガス供給配管4aを含む。ガス供給配管4aは、Z方向に延在する円筒状の配管である。例えば、ガス供給配管4aは、X方向に間隔をあけて複数配置されている。
図1においては、1つのガス供給配管4aのみを示している。なお、ガス供給配管4aの設置数は限定されない。真空配管3aは、チャンバ2に接続されていればよく、ガス供給配管4aの接続部位は限定されない。
【0029】
ガス供給部4は、収容空間2Sに不活性ガスを供給することによって収容空間2Sの状態を調整可能である。ガス供給部4は、窒素(N
2)、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)等の不活性ガスをチャンバ2内へ供給する。
図2の例では、N
2供給部がチャンバ2の天板25及び下部周壁28のそれぞれに2つずつ設けられている(
図2中矢印N
2)。なお、ガス供給部4は、基板降温時にガスを供給することで、前記ガスを基板冷却に使用してもよい。
【0030】
ガス供給部4は、クリーンドライエアー(CDA)を供給することによって収容空間2Sの状態を調整可能である。
図2の例では、CDA供給部がチャンバの天板25及び底板27のそれぞれに2つずつ設けられている(
図2中矢印CDA)。例えば、ガス供給部4は、ガス供給配管4a内を通る気体中の微細な塵埃を除去するためのダストフィルタと、水分を除去するためのミストフィルタと、を備えていてもよい。
【0031】
ガス供給部4により、チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度を調整することができる。チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度(質量基準)は、低いほど好ましい。具体的には、チャンバ2の内部雰囲気の酸素濃度を、100ppm以下とすることが好ましく、20ppm以下とすることがより好ましい。
例えば、基板10に塗布されたポリイミド形成用液を硬化するときの雰囲気において、このように酸素濃度を好ましい上限以下とすることにより、ポリイミド形成用液の硬化を進行しやすくすることができる。
なお、
図2中矢印EXHは、チャンバ2内の気体をチャンバ2外に排出するために下部周壁28に設けられた排気ラインを示す。
【0032】
<ヒータユニット>
図1に示すように、ヒータユニット6は、チャンバ2内の上方に配置されている。
図2に示すように、ヒータユニット6は、天板25に支持されている。ヒータユニット6と天板25との間には、ヒータユニット6を支持する支持部材19が設けられている。ヒータユニット6は、チャンバ2内の天板25寄りで定位置に固定されている。ヒータユニット6の赤外線ヒータ140は、支持部材19によって天板25に吊り下げられている。
【0033】
図3は、第一実施形態に係るヒータユニット6の平面図である。
図4は、第一実施形態に係る赤外線ヒータ140の平面図である。
図3に示すように、ヒータユニット6は、複数(例えば本実施形態では20台)の赤外線ヒータ140を備える。複数の赤外線ヒータ140は、個別に制御可能とされている。制御部15(
図1参照)は、複数の赤外線ヒータ140を個別に制御可能である。
【0034】
図1に示すように、赤外線ヒータ140は、基板10を赤外線によって加熱可能である。赤外線ヒータ140は、基板10を段階的に加熱可能である。例えば、基板10の加熱温度範囲は、200℃以上かつ600℃以下の範囲である。赤外線ヒータ140は、基板10の第一面10a(一方面)の側に配置されている。赤外線ヒータ140は、チャンバ2の天板25の側に配置されている。
【0035】
例えば、赤外線ヒータ140のピーク波長範囲は、1.5μm以上4μm以下の範囲である。なお、赤外線ヒータ140のピーク波長範囲は、上記範囲に限らず、要求仕様に応じて種々の範囲に設定することができる。
【0036】
図4に示すように、赤外線ヒータ140は、複数個所で折り曲げられた管状をなしている。赤外線ヒータ140の外形は、平面視で矩形状をなしている。例えば、赤外線ヒータ140の各辺の長さは、250mm程度である。例えば、赤外線ヒータ140は、石英管で形成されている。
【0037】
赤外線ヒータ140は、ストレート部群141と、ベンド部群142と、第一カバー部143と、第二カバー部144と、第一導入部145と、第二導入部146と、を備える。
【0038】
ストレート部群141は、複数(例えば、本実施形態では9つ)のストレート部141a~141iを備える。ストレート部141a~141iは、第一方向V1に長手を有する直管状をなしている。ストレート部141a~141iは、第一方向V1と直交(交差)する第二方向V2に並んで複数配置されている。複数のストレート部141a~141iは、第二方向V2に実質的に同じ間隔U1(中心軸間のピッチ)をあけて配置されている。ストレート部141a,141b,141c,141d,141e,141f,141g,141h,141iは、第二方向V2の一方側から他方側に向けてこの順に配置されている。
【0039】
ベンド部群142は、複数(例えば、本実施形態では8つ)のベンド部142a~142hを備える。ベンド部142a~142hは、外方に凸をなすように折り曲げられている。ベンド部142a~142hは、隣り合う2つのストレート部141a~141iの端部を連結している。例えば、ベンド部142aは、ストレート部141aの一端部とストレート部141bの一端部とを連結している。すなわち、ベンド部142a~142hは、赤外線ヒータ140のうち隣り合う2つのストレート部141a~141iの端部を連結するように屈曲する屈曲部である。平面視で、ベンド部142a~142hは、外方に凸をなすU字管状をなしている。ベンド部142a,142b,142c,142d,142e,142f,142g,142hは、第二方向V2の一方側から他方側に向けてこの順に配置されている。
【0040】
第一カバー部143および第二カバー部144は、複数のベンド部142a~142hを外方から覆うように第二方向V2に直線状に延びている。
第一カバー部143は、4つのベンド部142b,142d,142f,142hを第一方向V1の一方側から覆っている。
第二カバー部144は、4つのベンド部142a,142c,142e,142gを第一方向V1の他方側から覆っている。
【0041】
第一カバー部143は、第二方向V2の一方側のストレート部141aの一端部に連結されている。第一カバー部143は、第二方向V2に長手を有する直管状をなしている。第一カバー部143とベンド部142b,142d,142f,142hとの間の間隔U2(中心軸間のピッチ)は、隣り合う2つのストレート部141a~141iの間の間隔U1と実質的に同じ大きさとされている。
【0042】
第二カバー部144は、第二方向V2の他方側のストレート部141iの一端部に連結されている。第二カバー部144は、L字管状をなしている。すなわち、第二カバー部144は、第二方向V2に長手を有するカバー本体144aと、カバー本体144aの一端部に連結されるとともに第一方向V1に長手を有する延在部144bと、を備えている。第二カバー部144とベンド部142a,142c,142e,142gとの間の間隔U3(中心軸間のピッチ)は、隣り合う2つのストレート部141a~141iの間の間隔U1と実質的に同じ大きさとされている。
【0043】
第一導入部145は、赤外線ヒータ140の一端に設けられている。第一導入部145は、赤外線ヒータ140の一辺の一方側に配置されている。具体的に、第一導入部145は、第一カバー部143の一端に設けられている。第一導入部145の一部は、平面視で赤外線ヒータ140の外形内に入り込んでいる。
【0044】
第二導入部146は、赤外線ヒータ140の他端に設けられている。第二導入部146は、赤外線ヒータ140の一辺の他方側に配置されている。第二導入部146は、第二方向V2において第一導入部145とは反対側に配置されている。具体的に、第二導入部146は、第二カバー部144における延在部144bの一端に設けられている。第二導入部146の一部は、平面視で赤外線ヒータ140の外形内に入り込んでいる。
【0045】
図3に示すように、ヒータユニット6は、複数(例えば本実施形態では20台)の赤外線ヒータ140を敷き詰めて構成されている。
ヒータユニット6は、一対の第一赤外線ヒータ群140Aと、一対の第二赤外線ヒータ群140Bと、を備える。第一赤外線ヒータ群140Aと第二赤外線ヒータ群140Bとは、第二方向V2に交互に敷き詰めて配置されている。
【0046】
第一赤外線ヒータ群140Aは、複数(例えば本実施形態では5台)の第一赤外線ヒータ140a1~140a5を備える。一対の第一赤外線ヒータ群140Aは、合計10台の第一赤外線ヒータ140a1~140a5を備える。複数の第一赤外線ヒータ140a1~140a5は、第一方向V1(一方向)に敷き詰めて配置されている。第一赤外線ヒータ140a1,140a2,140a3,140a4,140a5は、第一方向V1の一方側から他方側に向けてこの順に配置されている。
【0047】
第二赤外線ヒータ群140Bは、複数(例えば本実施形態では5台)の第二赤外線ヒータ140b1~140b5を備える。一対の第二赤外線ヒータ群140Bは、合計10台の第二赤外線ヒータ140b1~140b5を備える。複数の第二赤外線ヒータ140b1~140b5は、第一方向V1に敷き詰めて配置されている。第二赤外線ヒータ140b1,140b2,140b3,140b4,140b5は、第一方向V1と平行な方向の一方側から他方側に向けてこの順に配置されている。
【0048】
第二赤外線ヒータ140b1~140b5は、平面視で第一赤外線ヒータ140a1~140a5と同じ形状を有している。第二赤外線ヒータ140b1~140b5は、平面視で第一赤外線ヒータ140a1~140a5を反転(180度回転)させた形状を有している。具体的に、第二赤外線ヒータ140b1~140b5は、平面視で、第一赤外線ヒータ140a1~140a5を、その中心を起点として、右回り(時計回り)に180度回転させた形状を有している。
【0049】
<ブロック体>
図1に示すように、ブロック体7は、チャンバ2内の下方に配置されている。ブロック体7は、チャンバ2の内面に固定可能なブロック状の部品である。ブロック体7は、基板10の第一面10aとは反対側の第二面10b(下面)の側に配置されている。
図2に示すように、ブロック体7は、チャンバ2の底板27の側に配置されている。ブロック体7は、矩形板状をなしている。ブロック体7には、基板10を下方から支持する支持ピン8が設けられている。
【0050】
支持ピン8は、基板10の第二面10bを支持可能である。支持ピン8は、上下に延びる棒状の部材である。支持ピン8の先端(上端)は、基板10の第二面10bに当接している。支持ピン8は、第二面10bと平行な方向(X方向及びY方向)に間隔を空けて複数設けられている。複数の支持ピン8は、それぞれ略同じ長さに形成されている。複数の支持ピン8の先端は、第二面10bと平行な面内(XY平面内)に配置されている。
【0051】
<温度検知部>
温度検知部9は、収容空間2Sに配置されている。温度検知部9は、基板10の温度を検知可能である。例えば、温度検知部9は、熱電対である。温度検知部9は、支持ピン8に取り付けられている。温度検知部9は、実質的に水平方向に延在している。温度検知部9の先端は、基板10の第二面10bに対向している。
【0052】
温度検知部9の先端は、基板10とブロック体7との間に配置されている。温度検知部9の先端の位置は、ブロック体7よりも基板10に近い。温度検知部9の先端は、基板10の第二面10bに近接している。温度検知部9の先端と基板10の第二面10bとの間の離反距離は、複数の温度検知部9のそれぞれにおいて実質的に同じとされている。
【0053】
温度検知部9は、X方向およびY方向のそれぞれに間隔をあけて複数配置されている。本実施形態において、温度検知部9は、3行3列(すなわち、X方向に3個かつY方向に3個)の計9個配置されている。
図2においては、X方向に間隔をあけて配置された3個の温度検知部9を示す。温度検知部9は、基板10に設定された複数(例えば9つ)のゾーン毎に配置されている。温度検知部9の先端は、基板10の各ゾーンの温度を検知するセンサとして機能する。
【0054】
なお、温度検知部9の数は9個に限らない。温度検知部9の数は、任意の数に設定可能である。例えば、複数の温度検知部9は、基板10の各ゾーンに対応する位置に配置されることが好ましい。
また、温度検知部9は、熱電対に限らない。例えば、温度検知部9は、放射温度計等の非接触温度センサであってもよい。例えば、温度検知部9は、非接触温度センサに限らず、接触式温度センサであってもよい。
【0055】
<圧力検知部>
圧力検知部14(
図1参照)は、収容空間2Sの圧力(以下「チャンバ内圧力」ともいう。)を検知可能である。例えば、圧力検知部14の本体部(センサ)は、チャンバ2内に配置されている。例えば、圧力検知部14の表示部(圧力表示器)は、チャンバ2外に配置されている。例えば、圧力検知部14は、デジタル圧力センサである。なお、
図1では圧力検知部14を1つのみ図示しているが、圧力検知部14の数は1つに限らず、複数であってもよい。
【0056】
<気体液化回収部>
図1に示すように、気体液化回収部11は、圧力調整部3(真空ポンプ13)のラインに接続されている。気体液化回収部11は、圧力調整部3のラインにおいて真空ポンプ13よりも下流側に配置されている。気体液化回収部11は、真空配管3aを通る気体を液化するとともに、基板10に塗布されたポリイミド形成用液から揮発した溶媒を回収可能である。
【0057】
仮に、気体液化回収部11が圧力調整部3のラインにおいて真空ポンプ13よりも上流側に配置されている場合、上流側で液化した液体が次の減圧時に気化されることがあり、真空引き時間が遅延してしまう可能性がある。これに対し、本実施形態によれば、気体液化回収部11が圧力調整部3のラインにおいて真空ポンプ13よりも下流側に配置されていることで、下流側で液化した液体は次の減圧時に気化されることがないため、真空引き時間が遅延することを回避することができる。
【0058】
<冷却部>
冷却部17は、チャンバ2を冷却可能である。
図2に示すように、冷却部17は、チャンバ2の構成部材の内部に配置されるとともに、冷媒を通過可能とする冷媒通過部18を備える。例えば、冷媒は、水等の液体である。冷媒通過部18には、不図示のポンプによって冷媒が流れるようになっている。図示はしないが、冷媒通過部18には冷媒の供給口及び排出口が設けられている。なお、冷媒は、水等の液体に限定されない。例えば、冷媒は、空気等の気体であってもよい。
【0059】
冷媒通過部18は、チャンバ2に複数設けられている。
図2の例では、冷媒通過部18は、チャンバ2の天板25、底板27及び下部周壁28(ゲート29)のそれぞれに設けられている。これにより、チャンバ2の天板25、底板27及び下部周壁28(ゲート29)のそれぞれの温度を一定に保つことができる。
なお、冷媒通過部18は、チャンバ2のすべての壁部に設けられているとよい。
【0060】
<遮熱部>
図2に示すように、遮熱部30は、チャンバ2の内面とヒータユニット6との間に配置されている。遮熱部30は、ポリイミド形成用液が塗布された基板10の周辺に設けられている。遮熱部30は、複数の遮熱板31を備える。遮熱部30は、複数の遮熱板31をその厚み方向に間隔をあけて配置した構造体である。例えば、複数の遮熱板31の配置間隔は、各遮熱板31の熱膨張を許容しうる大きさに設定されている。本実施形態では、遮熱部30は、3枚の遮熱板31を備える。遮熱板31は、赤外線を吸収可能である。例えば、遮熱板31は、ステンレス鋼(SUS)等の金属で形成されている。
【0061】
3枚の遮熱板31は、それぞれ略同じ厚みを有する。各遮熱板31は、全体的に一様な厚みを有する。遮熱板31は、1mm以下の厚みを有する。例えば、遮熱板31の厚みは、0.3mm以上1mm以下である。
【0062】
遮熱板31の熱容量を小さくする観点からは、遮熱板31の厚みを0.5mm以下とすることが好ましく、0.3mm以下とすることが更に好ましい。なお、遮熱板31の厚みの下限値は、上記に限らず、遮熱板31の強度・剛性を確保し得る範囲で設定されればよい。
【0063】
遮熱部30は、チャンバ2に複数設けられている。
図2の例では、遮熱部30は、チャンバ2の天板25、上部周壁26、底板27(ブロック体7)及び下部周壁28(ゲート29)のそれぞれに臨むように設けられている。これにより、ヒータユニット6からの赤外線がチャンバ2の天板25、上部周壁26、底板27及び下部周壁28(ゲート29)に対して直に照射されることを防ぐことができる。
【0064】
図示はしないが、チャンバ2の天板25に臨む遮熱部30には、支持部材19と重なる部分に貫通孔が形成されている。一方、底板27(ブロック体7)に臨む遮熱部30には、支持ピン8と重なる部分に貫通孔が形成されている。
【0065】
3枚の遮熱板31は、赤外線の照射方向V1に対して間隔をあけて設けられている。チャンバ2の天板25や底板27に臨む3枚の遮熱板31は、赤外線の照射方向V1に対して略平行に間隔をあけて設けられている。チャンバ2の上部周壁26や下部周壁28に臨む3枚の遮熱板31は、赤外線の照射方向V1に対して略直交するように水平に間隔をあけて設けられている。
【0066】
以下、3枚の遮熱板31のうち、最も基板10の側に設けられたものを「第一遮熱板31A」、最もチャンバ2の内面の側に設けられたものを「第二遮熱板31B」、第一遮熱板31Aと第二遮熱板31Bとの間に設けられたものを「第三遮熱板31C」ともいう(
図5参照)。
【0067】
第一遮熱板31Aは、基板10や遮蔽部40等と間隔をあけて配置されている。例えば、第一遮熱板31Aと遮蔽部40との間隔は、第一遮熱板31Aや遮蔽部40の熱膨張を許容しうる大きさに設定されている。
【0068】
第一遮熱板31Aの基板10の側の面31f1(以下「内側面31f1」ともいう。)は、3枚の遮熱板31のうち最も基板10の側の面である。第一遮熱板31Aの内側面31f1は、鏡面よりも赤外線の吸収率が高い。第一遮熱板31Aの内側面31f1は、黒色である。例えば、第一遮熱板31Aの内側面31f1は、ステンレス鋼板(SUS板)の一面を陽極酸化被膜処理で黒色化したものである。なお、第一遮熱板31Aの内側面31f1は、これに限らず、黒色塗料やカーボンブラック、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等で黒色化されていてもよい。
【0069】
第二遮熱板31Bは、チャンバ2の内面と間隔をあけて配置されている。例えば、チャンバ2の内面と第二遮熱板31Bとの間隔は、チャンバ2の内面や第二遮熱板31Bの熱膨張を許容しうる大きさに設定されている。
【0070】
第二遮熱板31Bのチャンバ2の内面の側の面31f2(以下「外側面31f2」ともいう。)は、3枚の遮熱板31のうち最もチャンバ2の内面の側の面である。第二遮熱板31Bの外側面31f2は、鏡面である。第二遮熱板31Bの外側面31f2は、鏡面仕上げを施されている。具体的に、第二遮熱板31Bの外側面31f2の表面粗さは、Raが0.1μm程度、Rzが1.2μm程度とされている。
【0071】
図5に示すように、遮熱部30は、連結部70によってチャンバ2の内面の定位置に固定されている。連結部70には、ボルト等の連結部材71,72(第一連結部材71及びび第二連結部材72)が含まれる。遮熱部30を構成する複数の遮熱板31は、連結部70によって所定の間隔をあけた状態で支持されている。
【0072】
図5の例では、チャンバ2の下部周壁28に臨む3枚の遮熱板31の支持状態を示す。例えば、3枚の遮熱板31は、ボルト等の第一連結部材71によってそれぞれ間隔をあけた状態で支持されている。例えば、第二遮熱板31Bは、ボルト等の第二連結部材72によってチャンバ2の内面と間隔をあけた状態で支持されている。
【0073】
<遮蔽部>
遮蔽部40は、基板10とヒータユニット6との間に設けられている。遮蔽部40は、基板10を上方から覆うように配置されている。遮蔽部40は、赤外線を透過し、かつ、基板加熱時の昇華物を遮る矩形板状の遮蔽板である。遮蔽部40は、赤外線の照射方向J1に対して略直交するように水平に配置されている。例えば、遮蔽部40は、石英ガラスで形成されている。なお、遮蔽部40は、石英ガラスに限らず、要求仕様に応じて種々の材料で形成することができる。
【0074】
<遮蔽支持部>
遮蔽支持部50は、基板10とヒータユニット6との間に設けられている。遮蔽支持部50は、遮蔽部40を支持する複数の遮蔽支持体51,52を備える。複数の遮蔽支持体51,52は、それぞれ共通である。
【0075】
遮蔽支持体51,52は、赤外線の照射方向J1に対して交差するように延びている。遮蔽支持体51,52は、赤外線の照射方向J1に対して略直交し、且つ、遮蔽部40のX方向端の二辺のそれぞれに対して略平行に延びている。遮蔽支持体51,52は、Y方向に直線状に延びている。遮蔽支持体51,52は、円柱状を有する。なお、遮蔽支持体51,52の形状は、円柱状に限らず、矩形板状等の他の形状であってもよい。
【0076】
図2に示すように、遮蔽部40は、複数の遮蔽支持体51,52に支持されている。複数の遮蔽支持体51,52は、遮蔽部40の一端(X方向の第一辺)に設けられた第一遮蔽支持体51と、遮蔽部40の他端(X方向において第一辺と対向する第二辺)に設けられた第二遮蔽支持体52と、である。
【0077】
第一遮蔽支持体51及び第二遮蔽支持体52のそれぞれの両端部は、下部周壁28のY方向両側面にそれぞれ支持されている。第一遮蔽支持体51及び第二遮蔽支持体52は、互いに略同じ高さに設けられている。本実施形態では、遮蔽部40は、第一遮蔽支持体51及び第二遮蔽支持体52の二本のみで支持されている。第一遮蔽支持体51及び第二遮蔽支持体52の間隔(X方向の間隔)は、基板10の長手方向の長さよりも大きい。
【0078】
<作用効果>
以上のように、本実施形態によれば、基板加熱装置1は、基板10を収容可能な収容空間2Sが内部に形成されたチャンバ2と、収容空間2Sに配置されるとともに、基板10を赤外線によって加熱可能なヒータユニット6と、チャンバ2の内面とヒータユニット6との間に設けられ、赤外線を吸収し、かつ、1mm以下の厚みを有する遮熱板31と、を含む。
この構成によれば、チャンバ2の内面とヒータユニット6との間に設けられた遮熱板31を含むことで、チャンバ2の内面に向かう赤外線を遮熱板31で遮ることができる。チャンバ2の内面に向かう赤外線は遮熱板31で吸収されるため、赤外線はチャンバ2の内面に直接照射されない。そのため、加熱によりチャンバ2が変形したり劣化したりすることを抑制することができる。また、チャンバ2の変色によりチャンバ2内面の赤外線反射率が変化することを抑制することができる。したがって、チャンバ2の変形や劣化を抑制するとともに、基板加熱時の安定性を向上させることができる。
加えて、遮熱板31の厚みが1mm以下であることにより、遮熱板31の厚みが1mmを超える場合と比較して、遮熱板31の熱容量を小さくすることができる。そのため、遮熱板31の熱飽和が早く、熱が均一になりやすい。また、遮熱板31が冷めやすくなるため、メンテナンス性に優れる。さらに、遮熱板31の薄型化および軽量化に寄与する。
【0079】
本実施形態において、遮熱板31は、溶液を塗布した基板10の周辺に設けられていることで、以下の効果を奏する。
基板10からチャンバ2の内面に向かうヒュームを遮熱板31で遮ることができるため、チャンバ2の内面への昇華物の付着を抑制することができる。そのため、昇華物付着によりチャンバ2内面の赤外線反射率が変化することを抑制することができる。したがって、基板加熱時の安定性を向上させることができる。
【0080】
本実施形態において、遮熱板31は、赤外線の照射方向J1に対して間隔をあけて複数設けられていることで、以下の効果を奏する。
複数の遮熱板31によりチャンバ2の内面に向かう熱を段階的に抑えることができるため、加熱によりチャンバ2が変形したり劣化したりすることをより効果的に抑制することができる。
【0081】
本実施形態において、複数の遮熱板31のうち最も基板10の側の面31f1は、鏡面よりも赤外線の吸収率が高いことで、以下の効果を奏する。
赤外線の吸収による遮熱板31の加熱を促進することができる。これにより、基板10からチャンバ2の内面に向かうヒュームが遮熱板31の表面で冷却されて昇華物となることを抑制することができる。したがって、遮熱板31への昇華物の付着を抑制することができる。
【0082】
本実施形態において、複数の遮熱板31のうち最も基板10の側の面31f1は、黒色であることで、以下の効果を奏する。
遮熱板31で赤外線が効果的に吸収されるため、遮熱板31の加熱をより効果的に促進することができる。したがって、遮熱板31への昇華物の付着をより効果的に抑制することができる。
【0083】
本実施形態において、複数の遮熱板31のうち最もチャンバ2の内面の側の面31f2は、鏡面であることで、以下の効果を奏する。
複数の遮熱板31のうち最もチャンバ2の内面の側の面31f2で赤外線を反射することができる。これにより、複数の遮熱板31のうち最もチャンバ2の内面の側の面31f2が黒色である場合と比較して、チャンバ2内の温度均一性を高めることができる。さらに、鏡面になることで放射率が下がるため、遮熱板31からの再輻射によりチャンバ2への熱の伝わりが抑制され、チャンバ2の温度上昇を抑制する効果を高めることができる。
【0084】
本実施形態において、遮熱板31は、金属製であることで、以下の効果を奏する。
遮熱板31がガラスの場合と比較して、熱飽和が早く、熱が均一になりやすい。
【0085】
本実施形態において、チャンバ2は、基板10の上方に位置する天板25と、基板10の下方に位置し、天板25と対向する底板27と、基板10の周囲を囲む周壁26,28と、を含み、遮熱板31は、天板25、底板27および周壁26,28のそれぞれに設けられていることで、以下の効果を奏する。
基板10からチャンバ2の天板25、底板27および周壁26,28のそれぞれに向かうヒュームを遮熱板31で遮ることができるため、チャンバ2の天板25、底板27および周壁26,28のそれぞれへの昇華物の付着を抑制することができる。
【0086】
本実施形態において、基板10には、ポリイミドを形成するための溶液が塗布されていることで、以下の効果を奏する。
この構成によれば、ポリイミドの形成時において、チャンバ2の変形や劣化を抑制するとともに、基板加熱時の安定性を向上させることができる。
【0087】
<第二実施形態>
次に、本発明の第二実施形態について、
図6から
図12を用いて説明する。
第二実施形態では、第一実施形態に対して、遮熱部の構成(遮熱板の配置)が特に異なる。
図6から
図12において、第一実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図6は、第二実施形態に係る遮熱部の構成の一例を示す平面図である。
図6は、チャンバの底板側に設置される遮熱部(以下「底板側遮熱部」ともいう。)の例を示す。
図6は、底板側遮熱部を上方から見た図に相当する。
【0088】
底板側遮熱部230Aは、底板27(ブロック体7)に臨むように設けられている。底板側遮熱部230Aには、支持ピン8と重なる部分に貫通孔235が形成されている(
図8参照)。底板側遮熱部230Aは、複数の遮熱板231A(以下「底板側遮熱板231A」ともいう。)を備える。底板側遮熱部230Aは、複数の底板側遮熱板231Aをオーバーラップさせて段違いに配置した構造体である。底板側遮熱部230Aは、全体として平面視でX方向に長手を有する矩形状をなしている。
【0089】
図7に示すように、例えば、複数の底板側遮熱板231Aのオーバーラップ量231W1(平面視で互いに重なる部分の最大幅)は、15mm以上20mm以下に設定されている。例えば、複数の底板側遮熱板231Aの段差の間隔231W2は、各底板側遮熱板231Aの熱膨張を許容しうる大きさに設定されている。例えば、段差の間隔231W2は、5mm程度に設定されている。
図6に示すように、本実施形態では、底板側遮熱部230Aは、24枚の底板側遮熱板231Aを備える。24枚の底板側遮熱板231Aは、それぞれ略同じ矩形状の外形を有する。
【0090】
底板側遮熱部230Aは、上段、中段及び下段の三段構造を有する。以下、底板側遮熱部230Aのうち、上段(最も基板10の側)に設けられたものを「底板側上段遮熱部」、下段(最も底板27の側)に設けられたものを「底板側下段遮熱部」、中段(底板側上段遮熱部と底板側下段遮熱部との間)に設けられたものを「底板側中段遮熱部」ともいう。
【0091】
底板側上段遮熱部230A1は、4枚の底板側遮熱板231A1(以下「底板側上段遮熱板231A1」ともいう。)を備える。4枚の底板側上段遮熱板231A1は、底板側遮熱部230AのY方向中央側に設けられ、X方向に間隔をあけて配置されている。
【0092】
底板側下段遮熱部230A2は、12枚の底板側遮熱板231A2(以下「底板側下段遮熱板231A2」ともいう。)を備える。12枚の底板側下段遮熱板231A2は、底板側遮熱部230AのY方向中央側に設けられ且つX方向に間隔をあけて配置された4枚のものと、底板側遮熱部230Aの+Y方向側に設けられ且つX方向に間隔をあけて配置された4枚のものと、底板側遮熱部230Aの-Y方向側に設けられ且つX方向に間隔をあけて配置された4枚のものと、を有する。
Y方向中央側の底板側下段遮熱板231A2のX方向端部は、底板側上段遮熱板231A1のX方向端部と平面視で互いに重なっている。
+Y方向側の底板側下段遮熱板231A2の-Y方向端部は、底板側上段遮熱板231A1の+Y方向端部と平面視で互いに重なっている。
-Y方向側の底板側下段遮熱板231A2の+Y方向端部は、底板側上段遮熱板231A1の-Y方向端部と平面視で互いに重なっている。
【0093】
底板側中段遮熱部230A3は、8枚の底板側遮熱板231A3(以下「底板側中段遮熱板231A3」ともいう。)を備える。8枚の底板側中段遮熱板231A3は、底板側遮熱部230Aの+Y方向側に設けられ且つX方向に間隔をあけて配置された4枚のものと、底板側遮熱部230Aの-Y方向側に設けられ且つX方向に間隔をあけて配置された4枚のものと、を有する。
+Y方向側の底板側中段遮熱板231A3の-Y方向角部は、底板側上段遮熱板231A1の+Y方向角部と平面視で互いに重なっている。+Y方向側の底板側中段遮熱板231A3のX方向端部は、+Y方向側の底板側下段遮熱板231A2のX方向端部と平面視で互いに重なっている。+Y方向側の底板側中段遮熱板231A3の-Y方向端部は、Y方向中央側の底板側下段遮熱板231A2の+Y方向端部と平面視で互いに重なっている。
-Y方向側の底板側中段遮熱板231A3の+Y方向角部は、底板側上段遮熱板231A1の-Y方向角部と平面視で互いに重なっている。-Y方向側の底板側中段遮熱板231A3のX方向端部は、-Y方向側の底板側下段遮熱板231A2のX方向端部と平面視で互いに重なっている。-Y方向側の底板側中段遮熱板231A3の+Y方向端部は、Y方向中央側の底板側下段遮熱板231A2の-Y方向端部と平面視で互いに重なっている。
【0094】
各底板側遮熱板231Aは、平面視で支持ピン8と重なる部分に貫通孔235を有する。貫通孔235は、平面視でU字形状を有する(
図8参照)。
各底板側遮熱板231Aは、その中心1点と、その周辺(外周)8点と、で保持される。以下、底板側遮熱板231Aの中心を保持する部品を「中心保持部」、底板側遮熱板231Aの周辺を保持する部品を「周辺保持部」ともいう。
【0095】
図9は、第二実施形態に係る中心保持部の一例を示す図である。
図9に示すように、中心保持部280Aは、底板側遮熱板231Aの中心位置決めを行う(底板側遮熱板231Aの中心部分を固定する)ことが可能である。中心保持部280Aは、ボルト281と、一対のナット282,283と、筒状のスペーサ284と、を備える。
【0096】
例えば、ボルト281は、六角穴付きボルトである。ボルト281は、チャンバ2の内面に取り付け可能な頭部281aと、ナット282,283が螺合可能な雄ねじ部281bと、を有する。例えば、チャンバ2の内面には、頭部281aの六角孔に差し込み可能な取付バー部202aが設けられている。
例えば、ナット282,283は、フランジ付きナットである。一対のナット282,283は、ボルト281の雄ねじ部281bに螺合した状態で、底板側遮熱板231Aを挟んで互いに対向する。
スペーサ284には、ボルト281の雄ねじ部281bが挿通している。例えば、スペーサ284の長さは、底板側遮熱板231Aの設置場所によって変更可能である。
【0097】
例えば、まず、チャンバ2の所定面にボルト281を固定する。次に、底板側遮熱板231Aの設置場所に適した長さのスペーサ284をボルト281の雄ねじ部281bに挿通する。次に、一方のナット282をボルト281の雄ねじ部281bに螺合し、スペーサ284の上端に当接する。次に、底板側遮熱板231Aの貫通孔にボルト281の雄ねじ部281bを挿通し、一方のナット282のフランジ部に底板側遮熱板231Aの下面を当接する。次に、他方のナット283をボルト281の雄ねじ部281bに螺合し、他方のナット283のフランジ部を底板側遮熱板231Aの上面に当接する。例えば、他方のナット283を所定トルクで締め付け、一対のナット282,283のフランジ部で底板側遮熱板231Aを挟み込む。これにより、底板側遮熱板231Aの中心位置決めを行う(底板側遮熱板231Aの中心部分を固定する)ことができる。
【0098】
図10は、第二実施形態に係る周辺保持部の一例を示す図である。
図10に示すように、周辺保持部280Bは、底板側遮熱板231Aの中心以外の部分を下方から支えることが可能である。周辺保持部280Bは、ボルト285と、ナット286と、筒状のスペーサ287と、環状のカラー288と、を備える。
【0099】
例えば、ボルト285は、六角穴付きボルトである。ボルト285は、チャンバ2の内面に取り付け可能な頭部285aと、ナット286が螺合可能な雄ねじ部285bと、を有する。例えば、チャンバ2の内面には、頭部285aの六角孔に差し込み可能な取付バー部202aが設けられている。
例えば、ナット286は、フランジ付きナットである。ナット286は、ボルト285の雄ねじ部285bに螺合した状態で、底板側遮熱板231Aを挟んでカラー288と対向する。
スペーサ287には、ボルト285の雄ねじ部285bが挿通している。例えば、スペーサ287の長さは、底板側遮熱板231Aの設置場所によって変更可能である。
カラー288には、ボルト285の雄ねじ部285bが挿通している。例えば、カラー288の外形は、ナット286のフランジ部の外形と略同じである。
【0100】
例えば、まず、チャンバ2の所定面にボルト285を固定する。次に、底板側遮熱板231Aの設置場所に適した長さのスペーサ287をボルト285の雄ねじ部285bに挿通する。次に、カラー288をボルト285の雄ねじ部285bに挿通し、スペーサ287の上端に当接する。次に、底板側遮熱板231Aの貫通孔にボルト285の雄ねじ部285bを挿通し、カラー288に底板側遮熱板231Aの下面を当接する。次に、ナット286をボルト285の雄ねじ部285bに螺合し、ナット286のフランジ部を底板側遮熱板231Aの上面に隙間286Wをあけて配置する。これにより、底板側遮熱板231Aの中心以外の部分を下方から支えることができる。
【0101】
例えば、隙間286Wの大きさは、1mm程度に設定する。これにより、0.3mm程度の厚みの底板側遮熱板231Aを逃がす構造とすることができる。なお、隙間286Wの大きさは、上記に限らず、底板側遮熱板231Aの厚みに応じて変更可能であり、底板側遮熱板231Aの熱膨張を許容しうる大きさに設定されればよい。
【0102】
図11は、第二実施形態に係る遮熱部の構成の他の例を示す平面図である。
図11は、チャンバの天板側に設置される遮熱部(以下「天板側遮熱部」ともいう。)の例を示す。
図11は、天板側遮熱部を下方から見た図に相当する。
天板側遮熱部230Bは、チャンバ2の天板25に臨むように設けられている。天板側遮熱部230Bには、支持部材19と重なる部分に貫通孔236が形成されている。天板側遮熱部230Bは、複数の遮熱板231B(以下「天板側遮熱板231B」ともいう。)を備える。天板側遮熱部230Bは、複数の天板側遮熱板231Bをオーバーラップさせて段違いに配置した構造体である。天板側遮熱部230Bは、全体として平面視でX方向に長手を有する矩形状をなしている。
【0103】
図12に示すように、例えば、複数の天板側遮熱板231Bのオーバーラップ量231W1(平面視で互いに重なる部分の最大幅)は、15mm以上20mm以下に設定されている。例えば、複数の天板側遮熱板231Bの段差の間隔231W2は、各天板側遮熱板231Bの熱膨張を許容しうる大きさに設定されている。例えば、段差の間隔231W2は、5mm程度に設定されている。
図11に示すように、本実施形態では、天板側遮熱部230Bは、15枚の天板側遮熱板231Bを備える。15枚の天板側遮熱板231Bは、それぞれ略同じ矩形状の外形を有する。
【0104】
天板側遮熱部230Bは、上段、中段及び下段の三段構造を有する。以下、天板側遮熱部230Bのうち、上段(最も天板25の側)に設けられたものを「天板側上段遮熱部」、下段(最も基板10の側)に設けられたものを「天板側下段遮熱部」、中段(天板側上段遮熱部と天板側下段遮熱部との間)に設けられたものを「天板側中段遮熱部」ともいう。
【0105】
天板側上段遮熱部230B1は、8枚の天板側遮熱板231B1(以下「天板側上段遮熱板231B1」ともいう。)を備える。8枚の天板側上段遮熱板231B1は、天板側遮熱部230BのY方向中央側に設けられ且つX方向に間隔をあけて配置された2枚のものと、天板側遮熱部230Bの+Y方向側に設けられ且つX方向に間隔をあけて配置された3枚のものと、天板側遮熱部230Bの-Y方向側に設けられ且つX方向に間隔をあけて配置された3枚のものと、を有する。
【0106】
天板側下段遮熱部230B2は、3枚の天板側遮熱板231B2(以下「天板側下段遮熱板231B2」ともいう。)を備える。3枚の天板側下段遮熱板231B2は、天板側遮熱部230BのY方向中央側に設けられ、X方向に間隔をあけて配置されている。
天板側下段遮熱板231B2のX方向端部は、Y方向中央側の天板側上段遮熱板231B1のX方向端部と平面視で互いに重なっている。
天板側下段遮熱板231B2の+Y方向端部は、+Y方向側の天板側上段遮熱板231B1の-Y方向端部と平面視で互いに重なっている。
天板側下段遮熱板231B2の-Y方向端部は、-Y方向側の天板側上段遮熱板231B1の+Y方向端部と平面視で互いに重なっている。
【0107】
天板側中段遮熱部230B3は、4枚の天板側遮熱板231B3(以下「天板側中段遮熱板231B3」ともいう。)を備える。4枚の天板側中段遮熱板231B3は、天板側遮熱部230Bの+Y方向側に設けられ且つX方向に間隔をあけて配置された2枚のものと、天板側遮熱部230Bの-Y方向側に設けられ且つX方向に間隔をあけて配置された2枚のものと、を有する。
+Y方向側の天板側中段遮熱板231B3の-Y方向角部は、天板側下段遮熱板231B2の+Y方向角部と平面視で互いに重なっている。+Y方向側の天板側中段遮熱板231B3のX方向端部は、+Y方向側の天板側上段遮熱板231B1のX方向端部と平面視で互いに重なっている。+Y方向側の天板側中段遮熱板231B3の-Y方向端部は、Y方向中央側の天板側上段遮熱板231B1の+Y方向端部と平面視で互いに重なっている。
-Y方向側の天板側中段遮熱板231B3の+Y方向角部は、天板側下段遮熱板231B2の-Y方向角部と平面視で互いに重なっている。-Y方向側の天板側中段遮熱板231B3のX方向端部は、-Y方向側の天板側上段遮熱板231B1のX方向端部と平面視で互いに重なっている。-Y方向側の天板側中段遮熱板231B3の+Y方向端部は、Y方向中央側の天板側上段遮熱板231B1の-Y方向端部と平面視で互いに重なっている。
【0108】
各天板側遮熱板231Bは、平面視で支持部材19と重なる部分に貫通孔236を有する。貫通孔236は、平面視で円形状を有する。
各天板側遮熱板231Bは、その中心1点と、その周辺12点と、で保持される。各天板側遮熱板231Bの中心は、中心保持部で保持される。各底板側遮熱板231Bの周辺は、周辺保持部で保持される。例えば、天板側遮熱部230Bの保持部は、上記の底板側遮熱部230Aの保持部280A,280Bと共通のものを用いてもよい。なお、保持部280A,280Bは、底板側遮熱板231A及び天板側遮熱板231Bに限らず、全ての遮熱板に適用可能である。
【0109】
図12は、
図11のXII-XII断面図である。
図12においては、ガス(例えばN
2)の流れを併せて示す。図中矢印N
2は、ガスの流れ方向を示す。
図12に示すように、複数の天板側遮熱板231Bは、天板25(上方)からのガスの供給方向(鉛直下方)に対して略直交するように水平に配置されている。例えば、上方から供給されたガスは、天板側上段遮熱板231B1に向けて下方に流れた後、天板側上段遮熱板231B1の上面に沿って外方に流れる。その後、ガスは、天板側中段遮熱板231B3の上面に沿って外方に流れる。その後、ガスの一部は、他の天板側上段遮熱板231B1の上面に沿って外方に流れる。一方、ガスの他の一部は、天板側下段遮熱板231B2の上面に沿って外方へ流れる。
【0110】
以上のように、本実施形態によれば、複数の遮熱板231A(231B)は、オーバーラップして段違いに配置されていることで、以下の効果を奏する。
チャンバ2の内面が露出しないため、チャンバ2の内面への昇華物の付着を抑制することができる。そのため、昇華物付着によりチャンバ2内面の赤外線反射率が変化することを抑制することができる。したがって、基板加熱時の安定性を向上させることができる。
【0111】
本実施形態において、遮熱板231A(231B)の中心部分は、中心保持部280Aにより固定される。遮熱板231A(231B)の中心以外の部分は、周辺保持部280Bにより厚み方向の一方のみから支持される。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
遮熱板231A(231B)の中心位置決めを行いつつ、遮熱板231A(231B)の熱膨張を許容することができる。
【0112】
<第三実施形態>
次に、本発明の第三実施形態について、
図13を用いて説明する。
第三実施形態では、第一実施形態に対して、チャンバの底板上の態様が特に異なる。
図13において、第一実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0113】
図13は、第三実施形態に係る防着板を示す平面図である。
図13に示すように、チャンバ2の底板27には、チャンバ2の内面への昇華物の付着を防ぐために防着板389が設けられている。防着板389は、底板27の上面に設置されている。防着板389は、平面視でY方向に長手を有する長方形状をなしている。防着板389は、X方向に間隔をあけて複数配置されている。例えば、防着板389は、0.1mm程度の厚みを有するSUS板である。
【0114】
以上のように、本実施形態によれば、防着板389は、底板27の上面に設置されていることで、以下の効果を奏する。
防着板389が設置されている部分は底板27の上面が露出しないため、底板27の上面への昇華物の付着を防止することができる。加えて、防着板389の上面への昇華物の付着を抑制することができる。
【0115】
<第四実施形態>
次に、本発明の第四実施形態について、
図14を用いて説明する。
第四実施形態では、第一実施形態に対して、ガスの流れ方向が特に異なる。
図14において、第一実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0116】
図14は、第四実施形態に係る基板加熱装置の断面図である。
図14に示すように、N
2供給部は、チャンバ2の天板25に4つ設けられている(
図14中矢印N
2)。真空引きのラインは、チャンバ2の底板27に1つ設けられている(
図14中矢印Vacuum)。例えば、真空引きのラインは、チャンバ2の底板27中央に配置されている。遮熱板431(遮熱部430)は、チャンバ2の内面と間隔をあけて配置されている。チャンバ2の内面と遮熱板431との間には、ガスの流路が形成されている。
【0117】
図14中矢印F1は、チャンバ2の内面と遮熱板431との間を通るガスの流れ方向を示す。例えば、上方から供給されたガスは、チャンバ2の天板25と天板側の遮熱板431との間を外方に流れる。その後、ガスは、チャンバ2の周壁26,28と周壁側の遮熱板431との間を下方へ流れる。その後、ガスは、チャンバ2の底板27と底板側の遮熱板431との間を内方へ流れる。その後、ガスは、真空引きのラインへ流れる。本実施形態では、上方から供給されたガスは、チャンバ2の内面を沿うように流れた後、チャンバ2の外部に排出される。
【0118】
図14中矢印G1は、基板加熱時の昇華物の流れ方向を示す。例えば、基板10の上面10aからの昇華物は、基板10と遮蔽部40との間を外方へ流れる。その後、昇華物は、周壁側の遮熱板431と基板10との間を下方へ流れる。その後、昇華物は、底板側の遮熱板431と基板10との間を内方へ流れる。その後、昇華物は、真空引きのラインへ流れる。
【0119】
以上のように、本実施形態によれば、ガスをチャンバ2の内面と遮熱板431との間に流すことで、以下の効果を奏する。
チャンバ2の内面と遮熱板431との間に昇華物が留まることを抑制することができるため、チャンバ2の内面への昇華物の付着を抑制することができる。
【0120】
本実施形態において、真空引きしながらガスをチャンバ2の天板25側から下方へ流すことで、以下の効果を奏する。
チャンバ2の天板25への昇華物の付着を抑制することができる。そのため、清掃時に赤外線ヒータ140を着脱する必要がなく、メンテナンスに過度の時間がかかることを抑制することができる。加えて、チャンバ2の天板25からガスを供給し底板27から排気することで、ダウンフローによる効果により異物の巻き上げが低減され、チャンバ2の内部のパーティクルの低減につながる。
【0121】
<第五実施形態>
次に、本発明の第五実施形態について、
図15を用いて説明する。
第五実施形態では、第四実施形態に対して、真空引きラインの構成が特に異なる。
図15において、第一実施形態及び第四実施形態と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0122】
図15は、第五実施形態に係る基板加熱装置の断面図である。
図15に示すように、真空引きのラインには、昇華物回収部590が設けられている。例えば、昇華物回収部590は、真空引きのラインに対して着脱可能に構成されている。昇華物回収部590は、真空引きのラインにおいて真空ポンプ13よりも上流側に配置されている。昇華物回収部590は、真空引きのラインに入り込んだ昇華物を回収可能な箱状に形成されている。例えば、昇華物回収部590の内部には、複数のフィン591が設けられている。例えば、昇華物回収部590の外部には、昇華物回収部590を冷却可能な冷却部592が設けられている。例えば、冷却部592は、水等の冷媒を流通可能な配管を含んでいてもよい。
【0123】
バルブ595は、真空引きのラインにおいて昇華物回収部590よりも下流側に配置されている。以下、真空引きのラインにおいて、チャンバ2の底部から下方に延びる部分を「第一ライン」、第一ラインの下端から側方に延びる部分を「第二ライン」とする。昇華物回収部590は、第一ラインに接続されている。バルブ595は、第二ラインに接続されている。
【0124】
以上のように、本実施形態によれば、真空引きのラインには、昇華物回収部590が設けられていることで、以下の効果を奏する。
真空引きのラインを通ろうとする昇華物を昇華物回収部590によって回収することができる。したがって、真空引きのラインにおいて昇華物回収部590よりも下流側の部分に昇華物が付着することを抑制することができる。
【0125】
本実施形態において、昇華物回収部590は、真空引きのラインに対して着脱可能に構成されていることで、以下の効果を奏する。
昇華物回収部590を真空引きのラインから取り外した状態で洗浄等ができるため、昇華物回収部590のメンテナンス性が向上する。
【0126】
本実施形態において、昇華物回収部590の内部には、複数のフィン591が設けられていることで、以下の効果を奏する。
昇華物回収部590の内面に加え複数のフィン591の表面に昇華物を付着させることができるため、昇華物の付着効率が向上する。
【0127】
本実施形態において、昇華物回収部590の外部には、昇華物回収部590を冷却可能な冷却部592が設けられていることで、以下の効果を奏する。
昇華物回収部590を冷却することができるため、昇華物の付着効率が向上する。
【0128】
本実施形態において、バルブ595は、真空引きのラインにおいて昇華物回収部590よりも下流側に配置されていることで、以下の効果を奏する。
真空引きのラインを通ろうとする昇華物を昇華物回収部590によって回収することができるため、バルブ595への昇華物の付着を抑制することができる。
【0129】
本実施形態において、昇華物回収部590は、第一ラインに接続されている。バルブ595は、第二ラインに接続されている。以上の構成によって、以下の効果を奏する。
仮に、バルブがチャンバの下面直下に設けられている場合、真空引きのラインを通じて昇華物を回収する際に昇華物がバルブに付着する可能性が高い。これに対し、本実施形態によれば、バルブ595が第二ラインに接続されていることで、バルブ595がチャンバの下面直下から遠く離れるため、昇華物がバルブ595に付着することをより効果的に抑制することができる。
【0130】
<変形例>
なお、上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、設計要求等に基づき種々変更可能である。
上記実施形態においては、基板加熱部は、複数の赤外線ヒータを備えるヒータユニットであるが、これに限らない。例えば、基板加熱部は、単一の赤外線ヒータであってもよい。
【0131】
上記実施形態においては、遮熱板の厚みが1mm以下であるが、これに限らない。例えば、遮熱板の厚みは、1mmを超えていてもよい。例えば、遮熱板の厚みは、上記範囲に限らず、遮熱板の加熱を促進し、遮熱板への昇華物の付着を抑制し得る範囲で設定されているとよい。例えば、遮熱板の厚みは、要求仕様に応じて変更することができる。
【0132】
上記実施形態においては、遮熱板は、溶液を塗布した基板の周辺に設けられているが、これに限らない。例えば、遮熱板は、溶液を塗布していない基板の周辺に設けられていてもよい。例えば、遮熱板は、チャンバの内面と基板加熱部との間に設けられていればよい。
【0133】
上記実施形態においては、遮熱板は、赤外線の照射方向に対して間隔をあけて複数設けられているが、これに限らない。例えば、遮熱板は、赤外線の照射方向に対して1枚のみ設けられていてもよい。例えば、遮熱板の設置数は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0134】
上記実施形態においては、複数の遮熱板のうち最も基板の側の面は、鏡面よりも赤外線の吸収率が高いが、これに限らない。例えば、複数の遮熱板のうち最も基板の側の面は、鏡面の赤外線の吸収率以下であってもよい。例えば、遮熱板の赤外線の吸収率は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0135】
上記実施形態においては、複数の遮熱板のうち最も基板の側の面は、黒色であるが、これに限らない。例えば、遮熱板の色は、黒色に限らず、要求仕様に応じて種々の色を採用することができる。
【0136】
上記実施形態においては、複数の遮熱板のうち最も基板の側の面を黒色とすることにより鏡面よりも赤外線の吸収率を高くしているが、これに限らない。例えば、複数の遮熱板のうち最も基板の側の面を粗くすることにより鏡面よりも赤外線の吸収率を高くしてもよい。例えば、遮熱板の表面にブラスト処理を施すことにより、遮熱板の表面を鏡面よりも粗くすることで表面積を増やして赤外線の吸収率を高くしてもよい。例えば、ブラスト処理による遮熱板の表面粗さは、Raを0.4μm以上6.3μm以下、Rzを1.6μm以上25μm以下とするとよい。
【0137】
上記実施形態においては、複数の遮熱板のうち最もチャンバの内面の側の面は、鏡面であるが、これに限らない。例えば、複数の遮熱板のうち最もチャンバの内面の側の面は、黒色であってもよい。例えば、遮熱板の表面の態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0138】
上記実施形態においては、遮熱板は、金属製であるが、これに限らない。例えば、遮熱板は、ガラスであってもよい。例えば、遮熱板は、要求仕様に応じて種々の材料を採用することができる。
【0139】
上記実施形態においては、チャンバは、基板の上方に位置する天板と、基板の下方に位置し、天板と対向する底板と、基板の周囲を囲む周壁と、を含み、遮熱板は、天板、底板および周壁のそれぞれに設けられているが、これに限らない。例えば、遮熱板は、周壁のみに設けられていてもよい。すなわち、遮熱板は、チャンバの内面と基板加熱部との間の少なくとも一部に設けられていればよい。
【0140】
上記実施形態においては、遮熱板は、締結により固定されているが、これに限らない。例えば、遮熱板は、マグネットにより固定されていてもよい。例えば、遮熱板の保持部は、サマコバ磁石、アルニコ磁石等の耐熱磁石を含んでいてもよい。例えば、保持部が磁石を含む場合、遮熱板は、ステンレス鋼等の着磁性を持つ金属板であるとよい。例えば、遮熱板は、ニッケルの含有量が3%以下のもの、SUS400系等で形成されることが好ましい。
【0141】
図16の例では、保持部680は、円柱状のサマコバ磁石である。保持部680は、第一面680aと、第一面680aとは反対側の第二面680bと、を有する。遮熱板31は、保持部680の第一面680aに磁力で接続される。保持部680の第二面680bは、チャンバ2の内面に磁力で接続される。本変形例によれば、遮熱板31の交換時にボルト等の着脱が不要となるため、清掃時のメンテナンス性が向上する。
【0142】
なお、遮熱板は、締結固定およびマグネット固定の両方により保持されてもよい。例えば、遮熱板は、その中心を締結により固定され、その周辺をマグネットにより固定されてもよい。言い換えると、遮熱板は、その中心を中心保持部で保持され、その周辺を磁石で保持されてもよい。例えば、遮熱板の保持態様は、要求仕様に応じて変更することができる。
【0143】
上記実施形態(
図12の例)においては、複数の天板側遮熱板は、ガスの供給方向に対して一様の間隔で配置されているが、これに限らない。例えば、複数の天板側遮熱板の配置態様、要求仕様に応じて変更することができる。例えば、
図17に示すように、複数の天板側遮熱板231Bは、ガスの供給方向に対して階段状に配置されていてもよい。
図17において、
図12と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0144】
図17の例では、複数の天板側遮熱板231Bは、天板側上段遮熱板231B1、天板側中段遮熱板231B3、天板側下段遮熱板231B2の順に末広がりに配置されている。例えば、上方から供給されたガスは、天板側上段遮熱板231B1に向けて下方に流れた後、天板側上段遮熱板231B1の上面に沿って外方に流れる。その後、ガスは、天板側中段遮熱板231B3の上面に沿って外方に流れる。その後、ガスは、天板側下段遮熱板231B2の上面に沿って外方へ流れる。本変形例によれば、上方から供給されたガスが天板側上段遮熱板231B1、天板側中段遮熱板231B3、天板側下段遮熱板231B2の順に末広がりに流れるため、ガスをより一層スムーズに流すことができる。
【0145】
上記実施形態(
図15の例)においては、基板加熱装置は、遮熱板を備えるが、これに限らない。例えば、基板加熱装置は、遮熱板を備えていなくてもよい。
例えば、本発明の一態様に係る基板加熱装置は、基板を収容可能な収容空間が内部に形成されたチャンバと、前記収容空間に配置されるとともに、前記基板を赤外線によって加熱可能な基板加熱部と、前記基板の加熱時に生じる昇華物を回収可能な昇華物回収部と、を含んでいてもよい。
この構成によれば、昇華物を昇華物回収部によって回収することができるため、チャンバの内面への昇華物の付着を抑制することができる。そのため、昇華物付着によりチャンバ内面の赤外線反射率が変化することを抑制することができる。したがって、基板加熱時の安定性を向上させることができる。さらに、真空バルブや真空ポンプへの昇華物の付着を抑制することで、トラブルの発生を抑えることができる。加えて、昇華物の付着箇所を限定することで、メンテナンス性を向上させることができる。
【0146】
また、上記実施形態の基板加熱装置を含む基板処理システムに本発明を適用してもよい。例えば、基板処理システムは、工場などの製造ラインに組み込まれて用いられ、基板の所定の領域に薄膜を形成するシステムである。図示はしないが、例えば、基板処理システムは、上記基板加熱装置を含む基板処理ユニットと、処理前の基板を収容した搬入用カセットが供給されると共に空の搬入用カセットが回収されるユニットである基板搬入ユニットと、処理後の基板を収容した搬出用カセットが回収されると共に空の搬出用カセットが供給されるユニットである基板搬出ユニットと、基板処理ユニットと基板搬入ユニットとの間で搬入用カセットを搬送すると共に、基板処理ユニットと基板搬出ユニットの間で搬出用カセットを搬送する搬送ユニットと、各ユニットを統括制御する制御ユニットと、を備えている。
この構成によれば、上記基板加熱装置を含むことで、基板処理システムにおいて、チャンバの変形や劣化を抑制するとともに、基板加熱時の安定性を向上させることができる。
【0147】
なお、上記において実施形態又はその変形例として記載した各構成要素は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜組み合わせることができるし、また、組み合わされた複数の構成要素のうち一部の構成要素を適宜用いないようにすることもできる。
【実施例】
【0148】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0149】
<第一実施例>
本願発明者らは、チャンバの内面と基板加熱部との間に遮熱板を設けることによって、チャンバの内面の温度上昇を抑制できることを以下の評価により確認した。
【0150】
(評価対象)
評価対象は、基板の上方に位置するチャンバの天板の中央とした。チャンバ温度として、基板加熱装置にて基板温度400℃の加熱処理を3時間続けた際のチャンバの天板の中央の温度を測定した。
【0151】
(比較例)
比較例は、チャンバの内面と基板加熱部との間に遮熱板が設けられていないものを用いた。すなわち、比較例の基板加熱装置は、遮熱部を備えていない。
【0152】
(実施例)
実施例は、チャンバの内面と基板加熱部との間に遮熱板が設けられているものを用いた。
実施例1では、5mmの厚みを有するガラス製の遮熱板を1枚のみ用いた。
実施例2では、1mmの厚みを有するSUS製の遮熱板を1枚のみ用いた。
実施例3では、1mmの厚みを有するSUS製の遮熱板を3枚用いた。実施例3では、3枚の遮熱板をその厚み方向に間隔をあけて配置した構造体とした(
図2参照)。
【0153】
図18は、第一実施例に係る遮熱板の効果を説明するための図である。
図18において、横軸は時間[min]、縦軸はチャンバ温度[℃]をそれぞれ示す。
図18において、二点鎖線のグラフは比較例、一点鎖線のグラフは実施例1、破線のグラフは実施例2、実線のグラフは実施例3をそれぞれ示す。
【0154】
図18に示すように、実施例は、比較例に対し、基板温度400℃の加熱処理を3時間続ける過程でチャンバ温度が低いことが分かった。
3時間加熱後のチャンバ温度は、比較例が148.1℃、実施例1が126.4℃、実施例2が80.3℃、実施例3が63.4℃であった。
SUS製の遮熱板を設けることで、チャンバ温度の上昇を半分程度に抑えることができ、遮熱板を多層にすることでさらに抑制効果が増すことが分かった。
以上により、チャンバの内面と基板加熱部との間に遮熱板を設けることによって、チャンバの内面の温度上昇を抑制できることが分かった。
【0155】
<第二実施例>
本願発明者らは、遮熱板の内側面(基板の側の面)を黒色とすることによって、遮熱板への昇華物の付着をより効果的に抑制できることを以下の評価により確認した。
【0156】
(評価対象)
評価対象は、平面視で一辺50mmの正方形に形成され、1mmの厚みを有するSUS製の遮熱板(SUS板)とした。遮熱板は、チャンバ内の基板の下方に設置した。遮熱板は、チャンバの底面(底板の上面)から10mmの高さに水平に設置した。遮熱板温度として、基板加熱装置にて基板温度400℃の加熱処理を20min続けた際の遮熱板の温度を測定した。遮熱板温度は、熱電対を遮熱板の裏面(基板の側とは反対側の面)に接触させることにより測定した。
【0157】
(比較例)
比較例は、遮熱板の内側面を鏡面としたものを用いた。比較例では、遮熱板の内側面の表面粗さを、Raが0.02μm、Rzが0.15μmとした。表面粗さは、ミツトヨ社製のSurftest SJ-301により測定した。
【0158】
(実施例)
実施例1では、遮熱板の内側面を鏡面としていないもの(未処理品)を用いた。実施例1では、未処理のSUS板を用いた。実施例1では、遮熱板の内側面の表面粗さを、Raが0.08μm、Rzが1.19μmとした。
実施例2では、遮熱板の内側面をブラスト処理したものを用いた。実施例2では、遮熱板の内側面の表面粗さを、Raが1.19μm、Rzが8.32μmとした。
実施例3では、遮熱板の内側面を黒色としたものを用いた。実施例3では、遮熱板の内側面(未処理のSUS板の一面)を黒体スプレー(キーエンス社製の型番OP-96929)で黒色化した。
【0159】
図19は、第二実施例に係る遮熱板の効果を説明するための図である。
図19において、横軸は時間[min]、縦軸は遮熱板温度[℃]をそれぞれ示す。
図19において、二点鎖線のグラフは比較例、一点鎖線のグラフは実施例1、破線のグラフは実施例2、実線のグラフは実施例3をそれぞれ示す。
【0160】
図19に示すように、実施例は、比較例に対し、基板温度400℃の加熱処理を20min続ける過程で遮熱板温度が高いことが分かった。
遮熱板温度が250℃以上350℃以下の範囲の昇温レートは、比較例が20.9℃/min、実施例1が27.7℃/min、実施例2が45.5℃/min、実施例3が61.0℃/minであった。
【0161】
遮熱板の内側面を黒色(またはブラスト処理)とすることで、昇温レートが最も上昇するとともに、赤外線の吸収率が最も高まることが分かった。
以上により、遮熱板の内側面を黒色(またはブラスト処理)とすることによって、遮熱板への昇華物の付着をより効果的に抑制できることが見込まれた。
【0162】
<第三実施例>
本願発明者らは、チャンバの内面と基板加熱部との間に遮熱板を設けるとともに、チャンバの内面と遮熱板との間にガスを流すことによって、チャンバの内面への昇華物の付着を抑制できることを以下の評価により確認した。
【0163】
(評価対象)
評価対象は、基板の上方に位置するチャンバの天板内面とした。
図20は、第三実施例に係る基板加熱時の処理条件の説明図である。
図20において、横軸は時間[min]、紙面左側の縦軸はチャンバ内の酸素濃度[ppm]、紙面右側の縦軸はチャンバ内の真空度[Pa]をそれぞれ示す。
図20において、実線のグラフは酸素濃度、破線のグラフは真空度をそれぞれ示す。
【0164】
図20に示すように、基板加熱処理は、以下の流れで行った。
まず、チャンバ内の真空度が3Paになるまで真空引きした。次に、真空引きを維持したままチャンバ内にN
2を15L/minの流量で供給し、チャンバ内の真空度が100Paになるまで真空引きした。次に、基板加熱部からの赤外線による基板の加熱を開始した。基板の加熱中、N
2の供給量を一定に保ち、チャンバ内の真空度を100Paに維持した。基板の加熱中、チャンバ内の酸素濃度を1ppm以下に維持した。
【0165】
(比較例)
比較例は、チャンバの内面と基板加熱部との間に遮熱板が設けられていないものであって、基板と基板加熱部との間に遮蔽部が設けられていないものを用いた。すなわち、比較例の基板加熱装置は、遮熱部及び遮蔽部を備えていない(
図21参照)。なお、
図21において
図14と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0166】
(実施例)
実施例は、チャンバの内面と基板加熱部との間に遮熱板が設けられているものであって、基板と基板加熱部との間に遮蔽部が設けられているものを用いた。
実施例1では、チャンバの内面と遮熱板との間にガスを流していない(
図22参照)。なお、
図22において
図14と同様の構成には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。
実施例2では、チャンバの内面と遮熱板との間にガスを流した(
図14参照)。実施例2では、上方から供給したガスを、チャンバの内面を沿うように流した後、チャンバの外部に排出した(
図14参照)。
【0167】
図示はしないが、比較例においては天板内面への昇華物の付着が見受けられた。
実施例1においては、比較例に対し、天板内面への昇華物の付着量が少ないことが分かった。
実施例2においては、天板内面への昇華物の付着がほとんど見受けられなかった。
以上により、チャンバの内面と基板加熱部との間に遮熱板を設けるとともに、チャンバの内面と遮熱板との間にガスを流すことによって、チャンバの内面への昇華物の付着を抑制できることが分かった。
【符号の説明】
【0168】
1…基板加熱装置 2…チャンバ 2S…収容空間 6…ヒータユニット(基板加熱部) 10…基板 25…天板 26…上部周壁(周壁) 27…底板 28…下部周壁(周壁) 31…遮熱板 31A…第一遮熱板(遮熱板) 31B…第二遮熱板(遮熱板) 31C…第三遮熱板(遮熱板) 31f1…第一遮熱板の内側面(複数の遮熱板のうち最も基板の側の面) 31f2…第二遮熱板の外側面(複数の遮熱板のうち最もチャンバの内面の側の面) J1…赤外線の照射方向