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  • 特許-塗料噴射ノズル及びその制御方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】塗料噴射ノズル及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 5/00 20060101AFI20240910BHJP
   B05C 11/10 20060101ALI20240910BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
B05C5/00 101
B05C11/10
B05D1/26 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020173140
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064482
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-06-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100101878
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 茂
(72)【発明者】
【氏名】丸山 けい子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 将平
(72)【発明者】
【氏名】村井 秀世
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-213520(JP,A)
【文献】特開2020-023177(JP,A)
【文献】特開2019-150798(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C5/00-21/00
B05D1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の圧力で供給された塗料を噴射する塗料噴射ノズルであって、
基体と、
塗料が噴射されるノズル孔と、
前記ノズル孔に塗料を供給する塗料室と、
前記塗料室の中にあって、先端にてノズル孔を閉鎖又は開放するニードル弁と、
前記ニードル弁を前記ノズル孔に対して進退動作させる駆動機構とを備え、
前記ニードル弁の先端部には、該先端部を覆うように合成樹脂層が形成され、
前記ニードル弁が前記ノズル孔を開放する際、前記駆動機構は、前記ニードル弁を前記ノズル孔に対して、前記合成樹脂層の変形戻り速度よりも速く退出動作させることを特徴とする塗料噴射ノズル。
【請求項2】
所定の圧力で供給された塗料を噴射する塗料噴射ノズルであって、
基体と、
塗料が噴射されるノズル孔と、
前記ノズル孔に塗料を供給する塗料室と、
前記塗料室の中にあって、先端にてノズル孔を閉鎖又は開放するニードル弁と、
前記ニードル弁を前記ノズル孔に対して進退動作させる駆動機構とを備え、
前記ニードル弁の先端部には、該先端部を覆うように合成樹脂層が形成され、
前記ニードル弁の先端部は、前記ノズル孔側に対して凹形状を有することを特徴とする塗料噴射ノズル。
【請求項3】
塗料が噴射されるノズル孔に対するニードル弁の進入動作により、前記ノズル孔を前記ニードル弁の先端にて閉鎖する閉鎖手順と、
前記ノズル孔に対する前記ニードル弁の後退動作により、前記ノズル孔を開放する開放手順とを備え、
前記開放手順において、前記ニードル弁の後退速度を、該ニードル弁の先端部を覆う合成樹脂層の変形戻り速度より速く制御することを特徴とする塗料噴射ノズルの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料噴射ノズル及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の製造工程において、例えば車体の表面に2色の塗装(2トーン塗装と称する)を施す場合、スプレーガンによる塗装では霧状に塗料が噴霧されるため、自動車の車体にマスキング処理を施し、その上からスプレーガンによる塗装を行って、境界線を出していた。
【0003】
しかしながら、車体にマスキング処理を施し、塗装後にそれを除去する作業が煩わしく、作業効率が低下するという課題があった。
そのような課題に対し、噴霧幅の狭い塗料噴射ノズルを用いることにより、マスキング処理を行わずに境界線を出す方法が注目されている。
【0004】
例えば、塗料噴射ノズルを用いた塗布装置については、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される塗布(プリント)装置は、塗料が充填されたインクタンクに加圧空気を送り込むことにより高圧の気圧を印加して塗料を遠方に吐出する塗料噴射ノズルが複数配列されたヘッドアレイ(インクジェットノズルヘッド)を備えている。
【0005】
この装置は、さらに前記ヘッドアレイを往復直線移動させるリニアレールと、前記リニアレールをロボットアームにより移動させる多関節ロボットと、それらロボットとインクジェットノズルの駆動制御を行うコントローラとを備えている。前記ヘッドアレイは、塗料色ごとに複数のノズルが横一列に配列されており、配列方向にリニアレール上を移動(走査)しながら各ノズルからの噴霧がなされる。
【0006】
このような塗布装置によれば、走査方向に沿って直線状に配列された複数のノズルから塗料が吐出されるため、少ない走査で所望の膜厚を形成することができ、マスキング処理を施すことなく、速い速度で境界線のある塗布作業を行うことが可能となる。
【0007】
ところで、一般に前記スプレーガンなどのノズル先端部は、図5(a)、(b)に断面図で示すようにノズル先端に形成されたノズル孔51をニードル52の進退動作で開閉するようにしている。即ち、ノズル閉時はノズル孔51にニードル52を前進して挿入し(塞ぎ)、ノズル開時はニードル52を後退させてノズル孔51を開くようになされる。
スプレーガンの場合、前記ノズル孔51の直径は例えば0.3mm、ニードル52の径は1.0mmに形成され、ニードル先端が縮径されて尖った状態に形成されている。
【0008】
一方、塗料噴射ノズルの場合、スプレーガンのノズルよりもノズル孔が小さく形成されている(例えば直径0.1mm)。そのため、ノズル孔に挿入可能なニードル先端を加工することが困難であり、図6(a)、(b)の断面図に示すようにニードル62先端を平面に形成し、ノズル閉時にはニードル62先端面をノズル孔61に当ててノズル孔61を塞ぐようにしている。
【0009】
また、塗料は高粘性であり、流体流れの抵抗が大きい。そのため、特許文献2に開示された塗料噴射ノズルにあっては、ニードル先端周囲とノズル内壁(塗料通路)との隙間、及びニードルストロークを大きく確保し、ノズル先端での塗料詰まりを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2015-027636号公報
【文献】特開2004-142382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、塗料通路幅及びニードルストロークを大きくすると、建て付け精度がばらつきやすく、図7に示すようにノズル閉時においてニードル62先端面が傾き、ニードル62とノズル孔61との間に隙間が生じ、液漏れが生じる虞があった。
液漏れが生じた場合、漏れ出した液の表面張力により吐出液が引っ張られ、吐出液の直進性が妨げられるという課題があった。
【0012】
また、液漏れが生じる場合にはノズル孔61に対しニードル62先端面が傾斜しているため、ノズル孔61において塗料通路の広さの差異が生じ、それが吐出速度の差となり、吐出後の液滴分裂、液滴経路のブレの原因となって、塗布精度が低下するという課題があった。
【0013】
本発明は、前記した点に着目してなされたものであり、塗料噴射ノズルにおいて、ノズル孔の閉時に液漏れの発生を防止し、ノズル開時には安定した塗布精度を得ることのできる塗料噴射ノズル及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記した課題を解決するために、本発明に係る塗料噴射ノズルは、所定の圧力で供給された塗料を吐出する塗料噴射ノズルであって、基体と、前記基体の前面に設けられたノズル孔と、前記ノズル孔に塗料を供給する塗料室と、前記塗料室の中にあって、先端にてノズル孔を閉鎖又は開放するニードル弁と、前記ニードル弁を前記ノズル孔に対して進退動作させる駆動機構とを備え、前記ニードル弁の先端部には、該先端部を覆うように合成樹脂層が形成され、前記ニードル弁が前記ノズル孔を開放する際、前記駆動機構は、前記ニードル弁を前記ノズル孔に対して、前記合成樹脂層の変形戻り速度よりも速く退出動作させることに特徴を有する。
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る塗料噴射ノズルは、所定の圧力で供給された塗料を噴射する塗料噴射ノズルであって、基体と、塗料が噴射されるノズル孔と、前記ノズル孔に塗料を供給する塗料室と、前記塗料室の中にあって、先端にてノズル孔を閉鎖又は開放するニードル弁と、前記ニードル弁を前記ノズル孔に対して進退動作させる駆動機構とを備え、前記ニードル弁の先端部には、該先端部を覆うように合成樹脂層が形成され、前記ニードル弁の先端部は、前記ノズル孔側に対して凹形状を有することに特徴を有する。
また、前記合成樹脂層のヤング率は5.6~8.3MPaの範囲で設定されていることが望ましい。
【0015】
このようにニードル弁の先端部を覆うように所定厚さの合成樹脂層を形成したことにより、ニードル弁の先端でノズル孔を押圧した際、ニードル弁の先端面が傾斜していても合成樹脂層が変形するためノズル孔を塞いでノズル孔を完全に閉鎖することができる。
【0016】
また、前記した課題を解決するために、本発明に係る塗料噴射ノズルの制御方法は、塗料が噴射されるノズル孔に対するニードル弁の進入動作により、前記ノズル孔を前記ニードル弁の先端にて閉鎖する閉鎖手順と、前記ノズル孔に対する前記ニードル弁の後退動作により、前記ノズル孔を開放する開放手順とを備え、前記開放手順において、前記ニードル弁の後退速度を、該ニードル弁の先端部を覆う合成樹脂層の変形戻り速度より速く制御することに特徴を有する。
【0017】
このようにノズル孔を開く際は、ニードル弁の後退速度を合成樹脂層の変形戻りより速くすることで、開栓の瞬間に塗料通路の広さを均一とし、吐出速度の差を無くし、吐出液滴の直進性を保つことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、塗料噴射ノズルにおいて、ノズル孔の閉時に液漏れの発生を防止し、ノズル開時には安定した塗布精度を得ることのできる塗料噴射ノズル及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施の形態に係る塗料噴射ノズルの主要構成を模式的に示すブロック図である。
図2図2は、ノズル孔及びニードル弁の先端部を拡大して示す断面図である。
図3図3(a)~(c)は、ノズル孔及びニードル弁の先端部の状態の変化を示す断面図である。
図4図4は、経過時間に対するニードル弁の変位量を示すグラフである。
図5図5(a)、(b)は、スプレーガンにおけるノズル先端部の開閉動作を説明するための断面図である。
図6図6(a)、(b)は、塗料噴射ノズルにおけるノズル先端部の開閉動作を説明するための断面図である。
図7図7は、塗料噴射ノズルにおける課題を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明にかかる塗料噴射ノズル及びその制御方法の実施の形態につき、図面に基づいて説明する。本実施の形態に係る塗料噴射ノズルは、例えば自動車製造ラインにおける塗布装置に用いられ、例えば(他色の塗装との境界線を有する)2トーン塗装のために塗料を吐出するものである。
【0021】
図1は、本実施の形態に係る塗料噴射ノズルの主要構成を模式的に示すブロック図である。
塗料噴射ノズル100は、基体1の前面に設けられたノズル孔2と、基体1の中に形成されノズル孔2に塗料を供給する塗料室3と、塗料室3の中にあって、先端にてノズル孔2を閉鎖又は開放するニードル弁4と、ニードル弁4の後方に固定される駆動機構としてのピエゾ素子8とを備える。
【0022】
前記塗料室3の側部には、塗料入力通路5が接続され、反対側のインク室3の側部には塗料回収通路6が接続されている。
塗料室3には、図示しない塗料供給部から前記塗料入力通路5を通じて常に塗料が供給され、塗料回収通路6から回収されることによって、塗料が滞留することなく塗料が充填される。ノズル孔2が閉状態にあっては、塗料入力通路5からの塗料流量が調整されることによって塗料室3内に所定の圧力がかかった状態が維持されるようになっている。
【0023】
前記ピエゾ素子8は、図示しない電圧印加部により所定以上の電圧が印加されると、ニードル弁4の軸方向に長さを変化させ、ニードル弁4をノズル孔2に向けて移動させる(前進させる)。この閉鎖手順によりニードル弁4の先端がノズル孔2を閉鎖するようになされている(ノズル孔閉状態)。
【0024】
一方、ピエゾ素子8は、ノズル閉状態から印加電圧が降下されると、ニードル弁4をノズル孔2から離す方向に変形し、ニードル弁4の先端がノズル孔2から離れるようになされている(ノズル孔開状態)。この開放手順によりノズル孔2が開くと、図1に示すように塗料室3内の圧力によりノズル孔2から塗料液滴17がワークWに向けて吐出される。
【0025】
このピエゾ素子8は、基体1中に形成された駆動機構収容空間9に収容され、この駆動機構収容空間9は、前記塗料室3とは、二重のOリング10、11によって分離され、インク室3の塗料が駆動機構収容空間9に流出しないようになされている。
【0026】
図2は、ノズル孔2及びニードル弁4の先端部を拡大して示す断面図である。ノズル孔2の径は例えば0.1mm、長さは例えば1mmに形成されている。前記ニードル弁4の先端面は、ノズル孔2と干渉しないように凹形状に形成されている。また、ニードル弁4の先端部を覆うように、軸方向2mmの範囲にわたり、厚さ0.1mm~0.5mmの範囲(例えば0.2mm)で設定された合成樹脂層20がコーティングされている。
【0027】
合成樹脂層20は、好ましくはヤング率が5.6~8.3Mpaの範囲であり、例えばパーフロロエラストマーにより形成される。
合成樹脂層20のヤング率が5.6MPaより低いと、圧縮した合成樹脂層20の変形戻り速度が遅く、変形戻りが完了する前に再びニードル弁4の先端部でノズル孔2を塞ぐこととなり、液漏れが発生するため、好ましくない。一方、ヤング率が8.3MPaより高いと、圧縮した合成樹脂層20の変形戻り速度が速く、変形戻りが完了した後にニードル弁4の先端部がノズル孔2を開くこととなり、開栓の瞬間に塗料通路の広さが不均一で塗料速度に差が生まれ、吐出液滴の直進性が維持されないため好ましくない。
【0028】
また、合成樹脂層20の洗浄用シンナー水性塗料に対する膨張率は3%未満が望ましく、耐溶剤性は5%未満であることが望ましい。
このようにニードル弁4の先端部に合成樹脂層20を形成することにより、ノズル孔閉時にニードル弁4の先端面が傾斜した状態であっても、図3(a)に示すように合成樹脂層20が押し潰された状態に変形し、ニードル弁4の先端部によりノズル孔2を完全に塞ぐことができる。
【0029】
続いて、このように構成された塗料噴射ノズル100を用いて塗料を吐出する際の動作制御について図3図4を用いて説明する。図3(a)~(c)は、ノズル孔及びニードル弁の先端部の状態の変化を示す断面図である。図4は、経過時間に対するニードル弁の変位量を示すグラフである。尚、この制御は図示しない制御部(コンピュータ)がピエゾ素子8(駆動機構)の動作を制御することによりなされ、具体的には、ピエゾ素子8に印加する電圧の値を制御することによりなされる。
【0030】
前記したように図3(a)の状態(ノズル孔2が完全に閉状態)は、合成樹脂層20が押し潰された状態でニードル弁4の先端部がノズル孔2を塞いだ状態を示している。
この状態からピエゾ素子8に印加された電圧を零にし、ニードル弁4を所定速度(例えば0.25mm/ms以上)で合成樹脂層20の厚み分、例えば0.02mmまで後退開始させる(図4のSq1)。これにより、図3(b)に示すように合成樹脂層20の変形戻りが完了する前にニードル弁4が後退し、ノズル孔2が開く。また、開栓の瞬間に塗料通路の広さが均一とされ、その結果、塗料速度の差が無くなり、吐出液滴の直進性が維持される。
【0031】
ニードル弁4の後退距離が0.02mmを超えると、印可電圧の増加率を低く抑え、ニードル弁4をより低速(例えば0.25mm/ms未満)で0.03mmまで後退させる(図4のSq2)。これにより図3(c)に示すようにノズル孔2は完全に開状態となされる。
【0032】
ノズル孔2の開栓後(図4のSq3)は、合成樹脂層20の変形が元に戻り、ノズル孔2を閉じる際は、ピエゾ素子8への印加電圧を徐々に上昇し(図4のSq4)、ニードル弁4を緩やかに(例えば0.1mm/ms以下)と前進させ、合成樹脂層20が潰れる(変形する)ようニードル弁4の先端部でノズル孔2を押圧しノズル孔2を塞ぐ。これにより、ニードル弁4の先端面が傾斜していても合成樹脂層20によりノズル孔2が完全に塞がれる。
【0033】
尚、ノズル孔2を閉じる際、ニードル弁4を速く前進させると、ノズル孔2付近の塗料が掻き乱されて乱流が発生し、その状態で塗料が押し出されると液滴分離し、塗装精度が低下する。そのため、本実施形態では、上記のようにニードル弁4を緩やかに(例えば0.1mm/ms以下)と前進させるように制御している。
【0034】
以上のように本発明に係る実施の形態によれば、ニードル弁4の先端部を覆うように所定厚さの合成樹脂層20を形成したことにより、ニードル弁4の先端でノズル孔2を押圧した際、ニードル弁4の先端面が傾斜していても合成樹脂層20が変形するためノズル孔2を塞いでノズル孔2を完全に閉状態とすることができる。
また、ノズル孔2を開く際は、ニードル弁4の後退速度を合成樹脂層20の変形戻りより速くすることで、開栓の瞬間に塗料通路の広さを均一とし、吐出速度の差を無くし、吐出液滴の直進性を保つことができる。
また、ノズル孔3を閉じる際は、ニードル弁4の前進速度を緩やかになるよう0.1mm/ms以下に制御することでノズル孔2付近の乱流を抑え、塗装精度の低下を防止することができる。
【0035】
尚、前記した実施の形態においては、合成樹脂層20は、例えばパーフロロエラストマーにより形成されるものとしたが、本発明にあっては、それに限定されるものではない。ヤング率が5.6~8.3Mpaの範囲の他の合成樹脂も採用することができる。
【実施例
【0036】
本実施例では、ニードル弁の先端を覆う合成樹脂層に適した材質について検証した。前記合成樹脂層の材質として実施例1ではパーフロロエラストマー、比較例1ではテフロン(登録商標)(PTFE)、比較例2ではシリコンを用いた。
各材質について本実施の形態の合成樹脂層に適用し、洗浄用シンナー水性塗料に対する膨張率、耐溶剤性(時間)、漏れの発生有無について評価した。
表1に各条件、及び結果を示す。
【0037】
【表1】
【0038】
表1に示す結果から材質としては実施例1のパーフロロエラストマーが好ましく、ヤング率(MPa)は5.6~8.3が望ましいことを確認した。
【符号の説明】
【0039】
1 基体
2 ノズル孔
3 塗料室
4 ニードル弁
8 ピエゾ素子(駆動機構)
20 合成樹脂層
100 塗料噴射ノズル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7