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  • 特許-形状測定装置及び形状測定方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】形状測定装置及び形状測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/25 20060101AFI20240910BHJP
   G06T 7/521 20170101ALI20240910BHJP
   G06T 7/33 20170101ALI20240910BHJP
【FI】
G01B11/25 H
G06T7/521
G06T7/33
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020187074
(22)【出願日】2020-11-10
(65)【公開番号】P2022076619
(43)【公開日】2022-05-20
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110004222
【氏名又は名称】弁理士法人創光国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】宮田 薫
【審査官】多田 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-192228(JP,A)
【文献】特開2019-049572(JP,A)
【文献】特表2002-525746(JP,A)
【文献】登録実用新案第3195609(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B11/00-11/30
G06T 7/00-7/90
G06V10/00-20/90
30/418
40/16
40/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部が第1相対位置において測定対象物を撮像することにより生成された第1撮像画像に基づいて、前記測定対象物の少なくとも一部の形状を示す第1形状データと当該第1形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第1位置情報とを作成し、前記撮像部が前記第1相対位置と異なる第2相対位置において前記測定対象物を撮像することにより生成された第2撮像画像に基づいて、前記測定対象物において前記第1形状データと少なくとも一部が異なる第2形状データと当該第2形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第2位置情報とを作成する形状データ作成部と、
前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データ又は前記第2形状データの少なくともいずれかの座標を変換することにより、基準第1形状データ及び基準第2形状データを作成する基準データ作成部と、
(1)前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成し、又は(2)前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、当該座標位置を変化させた後の前記第1形状データの座標を変換することにより、前記変化第1形状データを作成し、又は(3)前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、の距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、前記変化第1形状データを作成する変化後データ作成部と、
前記変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、前記基準第1形状データと前記基準第2形状データとを結合した結合形状データを出力する出力部と、
を有する形状測定装置。
【請求項2】
前記出力部は、前記撮像部が撮像する際の形状測定装置もしくは測定対象物の少なくとも一方の振動量を取得し、取得した当該振動量が許容値以下であり、且つ、前記変化第1形状データが前記所定条件を満たす場合に、前記結合形状データを出力する、
請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記出力部は、前記撮像部が撮像する際の形状測定装置の温度、測定対象物の温度又は周囲環境の温度の少なくとも一つを取得し、取得した当該温度が許容値以下であり、且つ、前記変化第1形状データが前記所定条件を満たす場合に、前記結合形状データを出力する、
請求項1又は2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記基準データ作成部は、複数の比較基準点の複数の組み合わせのそれぞれに対応する前記基準第1形状データ及び前記基準第2形状データを作成し、
前記変化後データ作成部は、前記第1位置情報が示す複数の比較基準点の座標位置を変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、前記第2形状データの座標を変換した変化第2形状データであって、前記複数の組み合わせに対応する複数の前記変化第形状データを作成し、
前記出力部は、前記基準第形状データと前記変化第形状データとの差が最も小さくなる前記組み合わせに対応する前記基準第形状データと、最も小さい前記差を特定するのに用いた前記基準第形状データとを結合した前記結合形状データを出力する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記基準第1形状データと前記変化第1形状データとの差が閾値を超える場合に、当該基準第2形状データと前記基準第1形状データとを結合した前記結合形状データを出力しない、
請求項1からのいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記出力部は、前記基準第1形状データと前記変化第1形状データとの差が閾値を超える場合に、当該基準第1形状データにおいて当該変化第1形状データとの違いが基準値以上である箇所を除去した修正第1形状データを作成し、当該修正第1形状データと前記基準第2形状データとを結合した修正結合形状データを出力する、
請求項1からのいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項7】
前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの全て又は一部の前記比較基準点の位置を第1変化量だけ変化させた後の複数の前記比較基準点の位置のそれぞれと、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの全て又は一部の前記比較基準点の位置を第1変化量とは異なる第2変化量だけ変化させている、または当該比較基準点の位置を変化させていない対応する前記比較基準点の位置との距離の総和が最小になるように、少なくとも一方の前記第1形状データの座標を変換し、変換後の当該第1形状データと、変換前の当該第1形状データとの差が閾値を超える場合に、当該第1形状データを位置合わせに使用することができないと判定する形状データ診断部をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項8】
前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの全て又は一部の前記比較基準点の位置を第1変化量だけ変化させた後の複数の前記比較基準点の位置のそれぞれと、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの全て又は一部の前記比較基準点の位置を第1変化量とは異なる第2変化量だけ変化させている、または当該比較基準点の位置を変化させていない対応する前記比較基準点の位置との距離の総和が最小になるように、少なくとも一方の前記第2形状データの座標を変換し、変換後の当該第2形状データと、変換前の当該第2形状データとの差が閾値を超える場合に、当該第2形状データを位置合わせに使用することができないと判定する形状データ診断部をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項9】
前記基準第1形状データと前記変化第1形状データとの差が閾値を超える場合に、前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像から新たな前記比較基準点を抽出する抽出部と、
前記抽出部が抽出した前記新たな比較基準点により前記基準データ作成部が作成した前記基準第1形状データと、前記新たな比較基準点により前記変化後データ作成部が作成した前記変化第1形状データとの差が閾値以下であるか否かを判定する形状データ診断部と、をさらに備える、
請求項1からのいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項10】
前記変化後データ作成部は、前記第1位置情報又は前記第2位置情報が示す前記比較基準点の座標位置を変化させる前記変化量を変更し、当該変化量を変更する度に変更後の当該変化量に対応する前記変化第1形状データを作成し、
前記出力部は、前記変化後データ作成部が作成した複数の前記変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、前記結合形状データを出力する、
請求項1からのいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項11】
前記変化後データ作成部は、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を第1変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を第2変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、当該座標位置を変化させた後の前記第1形状データの座標を変換することにより、前記変化第1形状データを作成し、
前記変化後データ作成部は、前記第1変化量及び前記第2変化量を変更し、当該第1変化量及び当該第2変化量を変更する度に変更後の当該第1変化量及び当該第2変化量に対応する前記変化第1形状データを作成し、
前記出力部は、前記変化後データ作成部が作成した複数の前記変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、前記結合形状データを出力する、
請求項1からのいずれか一項に記載の形状測定装置。
【請求項12】
撮像部が第1相対位置において測定対象物を撮像することにより生成された第1撮像画像に基づいて、前記測定対象物の少なくとも一部の形状を示す第1形状データと当該第1形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第1位置情報とを作成し、前記撮像部が前記第1相対位置と異なる第2相対位置において前記測定対象物を撮像することにより生成された第2撮像画像に基づいて、前記測定対象物において前記第1形状データと少なくとも一部が異なる第2形状データと当該第2形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第2位置情報とを作成する形状データ作成部と、
前記測定対象物の複数の参照用基準点の位置を示す情報を取得する取得部と、
前記第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、前記取得部が取得した対応する参照用基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、基準第1形状データを作成し、前記第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、前記取得部が取得した対応する前記参照用基準点の位置との距離が近づくように、前記第2形状データの座標を変換することにより、基準第2形状データを作成する基準データ作成部と、
前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、対応する前記参照用基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、第1変化形状データを作成し、又は前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置と、前記複数の参照用基準点のうちの少なくとも一部の前記参照用基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の参照用基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成する変化後データ作成部と、
前記変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、前記基準第1形状データと前記基準第2形状データとを結合した結合形状データを出力する出力部と、
を備える、形状測定装置。
【請求項13】
コンピュータが実行する、
撮像部が第1相対位置において測定対象物を撮像することにより生成された第1撮像画像に基づいて、前記測定対象物の少なくとも一部の形状を示す第1形状データと当該第1形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第1位置情報とを作成し、前記撮像部が前記第1相対位置と異なる第2相対位置において前記測定対象物を撮像することにより生成された第2撮像画像に基づいて、前記測定対象物において前記第1形状データと少なくとも一部が異なる第2形状データと当該第2形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第2位置情報とを作成するステップと、
前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データ又は前記第2形状データの少なくともいずれかの座標を変換することにより、基準第1形状データ及び基準第2形状データを作成するステップと、
(1)前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成し、又は(2)前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置と、の距離が近づくように、当該座標位置を変化させた後の前記第1形状データの座標を変換することにより、前記変化第1形状データを作成し、又は(3)前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、の距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、前記変化第1形状データを作成するステップと、
前記変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、前記基準第1形状データと前記基準第2形状データとを結合した結合形状データを出力するステップと、
を有する形状測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の形状を測定する形状測定装置及び形状測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
測定対象物の撮像画像を解析することにより、測定対象物の形状を測定する形状測定装置が知られている。形状測定装置による三次元測定では、測定対象物のサイズが大きい場合には、一つの計測位置からの撮像画像のみを用いると三次元測定が行えない欠損領域が生じることがある。特許文献1には、複数の測定位置から三次元測定を行い、これらの測定位置のそれぞれに対応する複数の三次元測定データを統合することにより、欠損領域を狭めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-184340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の三次元測定データを統合する場合、三次元測定データを統合する際の位置合わせが良好でないことに起因して、三次元測定の精度が低下することがあるという問題があった。
【0005】
本発明はこの点に鑑みてなされたものであり、三次元測定の精度を向上させることができる形状測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様の形状測定装置は、撮像部が第1相対位置において測定対象物を撮像することにより生成された第1撮像画像に基づいて、前記測定対象物の少なくとも一部の形状を示す第1形状データと当該第1形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第1位置情報とを作成し、前記撮像部が前記第1相対位置と異なる第2相対位置において前記測定対象物を撮像することにより生成された第2撮像画像に基づいて、前記測定対象物において前記第1形状データと少なくとも一部が異なる第2形状データと当該第2形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第2位置情報とを作成する形状データ作成部と、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データ又は前記第2形状データの少なくともいずれかの座標を変換することにより、基準第1形状データ及び基準第2形状データを作成する基準データ作成部と、(1)前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成し、又は(2)前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、当該座標位置を変化させた後の前記第1形状データの座標を変換することにより、前記変化第1形状データを作成し、又は(3)前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、の距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、前記変化第1形状データを作成する変化後データ作成部と、前記変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、前記基準第1形状データと前記基準第2形状データとを結合した結合形状データを出力する出力部と、を有する。
【0007】
前記出力部は、前記撮像部が撮像する際の形状測定装置もしくは測定対象物の少なくとも一方の振動量を取得し、取得した当該振動量が許容値以下であり、且つ、前記変化第1形状データが前記所定条件を満たす場合に、前記結合形状データを出力してもよい。
【0008】
前記出力部は、前記撮像部が撮像する際の形状測定装置の温度、測定対象物の温度又は周囲環境の温度の少なくとも一つを取得し、取得した当該温度が許容値以下であり、且つ、前記変化第1形状データが前記所定条件を満たす場合に、前記結合形状データを出力してもよい。
【0009】
前記基準データ作成部は、複数の比較基準点の複数の組み合わせのそれぞれに対応する前記基準第1形状データ及び前記基準第2形状データを作成し、前記変化後データ作成部は、前記複数の組み合わせに対応する複数の前記変化第1形状データを作成し、前記出力部は、前記基準第1形状データと前記変化第1形状データとの差が最も小さくなる前記組み合わせに対応する前記基準第2形状データと当該基準第1形状データとを結合した前記結合形状データを出力してもよい。
【0010】
前記出力部は、前記基準第1形状データと前記変化第1形状データとの差が閾値を超える場合に、当該基準第2形状データと前記基準第1形状データとを結合した前記結合形状データを出力しなくてもよい。前記出力部は、前記基準第1形状データと前記変化第1形状データとの差が閾値を超える場合に、当該基準第1形状データにおいて当該変化第1形状データとの違いが基準値以上である箇所を除去した修正第1形状データを作成し、当該修正第1形状データと前記基準第2形状データとを結合した修正結合形状データを出力してもよい。
【0011】
前記形状測定装置は、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの全て又は一部の前記比較基準点の位置を第1変化量だけ変化させた後の複数の前記比較基準点の位置のそれぞれと、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの全て又は一部の前記比較基準点の位置を第1変化量とは異なる第2変化量だけ変化させている、または当該比較基準点の位置を変化させていない対応する前記比較基準点の位置との距離の総和が最小になるように、少なくとも一方の前記第1形状データの座標を変換し、変換後の当該第1形状データと、変換前の当該第1形状データとの差が閾値を超える場合に、当該第1形状データを位置合わせに使用することができないと判定する形状データ診断部をさらに備えてもよい。
【0012】
前記形状測定装置は、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの全て又は一部の前記比較基準点の位置を第1変化量だけ変化させた後の複数の前記比較基準点の位置のそれぞれと、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの全て又は一部の前記比較基準点の位置を第1変化量とは異なる第2変化量だけ変化させている、または当該比較基準点の位置を変化させていない対応する前記比較基準点の位置との距離の総和が最小になるように、少なくとも一方の前記第2形状データの座標を変換し、変換後の当該第2形状データと、変換前の当該第2形状データとの差が閾値を超える場合に、当該第2形状データを位置合わせに使用することができないと判定する形状データ診断部をさらに備えてもよい。
【0013】
前記形状測定装置は、前記基準第1形状データと前記変化第1形状データとの差が閾値を超える場合に、前記第1撮像画像及び前記第2撮像画像から新たな前記比較基準点を抽出する抽出部と、前記抽出部が抽出した前記新たな比較基準点により前記基準データ作成部が作成した前記基準第1形状データと、前記新たな比較基準点により前記変化後データ作成部が作成した前記変化第1形状データとの差が閾値以下であるか否かを判定する形状データ診断部と、をさらに備えてもよい。
【0014】
前記変化後データ作成部は、前記第1位置情報又は前記第2位置情報が示す前記比較基準点の座標位置を変化させる前記変化量を変更し、当該変化量を変更する度に変更後の当該変化量に対応する前記変化第1形状データを作成し、前記出力部は、前記変化後データ作成部が作成した複数の前記変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、前記結合形状データを出力してもよい。
【0015】
前記変化後データ作成部は、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を第1変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を第2変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、当該座標位置を変化させた後の前記第1形状データの座標を変換することにより、前記変化第1形状データを作成し、前記変化後データ作成部は、前記第1変化量及び前記第2変化量を変更し、当該第1変化量及び当該第2変化量を変更する度に変更後の当該第1変化量及び当該第2変化量に対応する前記変化第1形状データを作成し、前記出力部は、前記変化後データ作成部が作成した複数の前記変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、前記結合形状データを出力してもよい。
【0016】
本発明の第2の態様の形状測定装置は、撮像部が第1相対位置において測定対象物を撮像することにより生成された第1撮像画像に基づいて、前記測定対象物の少なくとも一部の形状を示す第1形状データと当該第1形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第1位置情報とを作成し、前記撮像部が前記第1相対位置と異なる第2相対位置において前記測定対象物を撮像することにより生成された第2撮像画像に基づいて、前記測定対象物において前記第1形状データと少なくとも一部が異なる第2形状データと当該第2形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第2位置情報とを作成する形状データ作成部と、前記測定対象物の複数の参照用基準点の位置を示す情報を取得する取得部と、前記第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、前記取得部が取得した対応する参照用基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、基準第1形状データを作成し、前記第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、前記取得部が取得した対応する前記参照用基準点の位置との距離が近づくように、前記第2形状データの座標を変換することにより、基準第2形状データを作成する基準データ作成部と、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、対応する前記参照用基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、第1変化形状データを作成し、又は前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置と、前記複数の参照用基準点のうちの少なくとも一部の前記参照用基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の参照用基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成する変化後データ作成部と、前記変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、前記基準第1形状データと前記基準第2形状データとを結合した結合形状データを出力する出力部と、を備える。
【0017】
本発明の第3の態様の形状測定方法は、コンピュータが実行する、撮像部が第1相対位置において測定対象物を撮像することにより生成された第1撮像画像に基づいて、前記測定対象物の少なくとも一部の形状を示す第1形状データと当該第1形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第1位置情報とを作成し、前記撮像部が前記第1相対位置と異なる第2相対位置において前記測定対象物を撮像することにより生成された第2撮像画像に基づいて、前記測定対象物において前記第1形状データと少なくとも一部が異なる第2形状データと当該第2形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第2位置情報とを作成するステップと、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データ又は前記第2形状データの少なくともいずれかの座標を変換することにより、基準第1形状データ及び基準第2形状データを作成するステップと、(1)前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成し、又は(2)前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点の位置と、の距離が近づくように、当該座標位置を変化させた後の前記第1形状データの座標を変換することにより、前記変化第1形状データを作成し、又は(3)前記第2位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、前記第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の前記比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、の距離が近づくように、前記第1形状データの座標を変換することにより、前記変化第1形状データを作成するステップと、前記変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、前記基準第1形状データと前記基準第2形状データとを結合した結合形状データを出力するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、三次元測定の精度を向上させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る形状測定装置の概要について説明するための図である。
図2】第1の実施形態に係る形状測定装置の概要について説明するための図である。
図3】第1の実施形態に係る形状測定装置の概要について説明するための図である。
図4】形状測定装置の構成を示す図である。
図5】形状データ作成部が抽出した比較基準点の例を示す図である。
図6】形状データ作成部による比較基準点の抽出の別の例を示す図である。
図7】形状データ作成部による比較基準点の抽出の別の例を示す図である。
図8】マーカを含む投影画像の例を示す図である。
図9】第1形状データと他の形状データとが位置合わせ可能か否かを形状データ診断部が判定するための方法を示す図である。
図10】3個の形状データを位置合わせする場合の例を示す図である。
図11】形状測定装置による複数の形状データの位置合わせの処理手順を示すフローチャートである。
図12】変形例において形状測定装置による複数の形状データの位置合わせの処理手順を示すフローチャートである。
図13】変形例において形状測定装置による複数の形状データの位置合わせの処理手順を示すフローチャートである。
図14】第2の実施形態の形状測定装置の構成を示す図である。
図15】第3の実施形態の形状測定装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
<第1の実施形態>
[形状測定装置100の概要]
図1から図3は、第1の実施形態に係る形状測定装置100の概要について説明するための図である。図1(a)は、形状測定装置100による測定対象物の測定の様子を示す。図1(b)は、形状測定装置100による測定対象物の撮像の様子を示す。図1(a)に示すように、形状測定装置100は、投影部1及び撮像部2を収容又は連結する測定ヘッド10と、制御部3とを備える。
【0021】
投影部1は、発光ダイオード又はレーザ等の光源を有している投影装置である。投影部1は、所定のパターンを含む投影画像を測定対象物の測定面に投影する。パターンは、例えば、縞のパターンである。また、投影部1の数は、1台に限定されず、形状測定装置100は、任意の台数の投影部を備えてもよい。投影部1は、位置によって輝度が変化するパターンを含む投影画像を測定対象物に投影する。
【0022】
撮像部2は、レンズ21及び撮像素子22を有している。撮像部2は、測定対象物を撮像することにより、撮像画像を生成する。撮像部2は、投影部1が投影画像を測定対象物に投影する際に、測定対象物に投影された投影画像を撮像することにより撮像画像を生成する。撮像部2の数は、1台に限定されず、形状測定装置100は、任意の台数の撮像部を備えてもよい。
【0023】
撮像部2及び投影部1は、測定ヘッド10に固定されている。測定対象物の測定時には、可動ステージ又はロボット等を用いて測定ヘッド10又は測定対象物を移動させることにより、撮像部2は、複数の相対位置からの測定対象物の撮像画像を生成する。
【0024】
制御部3は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御部3は、測定対象物を撮像部2に撮像させることにより、撮像画像を生成する。このとき、制御部3は、測定ヘッド10又は測定対象物を移動させて、測定対象物に対する撮像部2の相対位置を変化させる。例えば、制御部3は、ロボットを用いて測定ヘッド10を移動させたり、可動ステージを用いて測定対象物を移動させたりして相対位置を変化させる。制御部3は、これらの複数の相対位置において撮像部2に測定対象物を撮像させる。
【0025】
また、測定ヘッド10には、複数の撮像部2又は複数の投影部1の少なくともいずれかが設けられてもよい。制御部3は、撮像画像を生成する撮像部2を切り替えることにより、測定対象物に対する撮像部2の相対位置を変化させてもよい。図1の例では、制御部3は、投影部1と撮像部2とを一体として移動させるが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部3は、投影部1と撮像部2とを独立して移動させてもよい。また、測定ヘッド10は一つに限らず、複数の測定ヘッド10にそれぞれ取り付けられた撮像部2を用いて、複数の相対位置において測定対象物を撮像してもよい。複数の測定ヘッド10において投影部1と撮像部2は、互いに位置関係をずらして配置されていてもよい。
【0026】
図1(b)は、撮像部2による測定対象物の撮像の様子を示す。制御部3は、測定対象物の測定面を第1相対位置において撮像部2に撮像させることにより、第1撮像画像を生成する。図1(b)において、撮像部2の撮像範囲を破線で示す。図1(b)の例では、測定対象物の測定面のサイズが撮像部2の撮像範囲よりも大きいため、測定面の一部は、撮像部2の撮像範囲外にある。制御部3は、測定対象物を第2相対位置において撮像することにより、第2撮像画像を生成する。図2の例では、制御部3は、撮像部2を平行移動させているが、制御部3は、撮像部2を回転移動させてもよい。
【0027】
制御部3は、撮像部2が生成した第1撮像画像を解析することにより、測定対象物の少なくとも一部の形状を示す第1形状データを作成する。制御部3は、撮像部2が生成した第2撮像画像を解析することにより、第1形状データと少なくとも一部が異なる第2形状データを作成する。第1形状データ及び第2形状データは、例えば、測定対象物の輪郭線又は複数の頂点等の特徴点、マーカ等の位置を示す座標データを含む。
【0028】
図2(a)及び図2(b)は、第1形状データと第2形状データとの位置合わせの例を示す図である。図2(a)は、制御部3が作成した第1形状データ及び第2形状データの例を示す。図2(b)は、制御部3が第1形状データと第2形状データとを位置合わせした様子を示す図である。
【0029】
制御部3は、第1形状データと第2形状データとを位置合わせするための各種の処理を実行する。制御部3は、第1撮像画像及び第2撮像画像から、例えば、測定対象物のエッジ若しくは起伏、測定対象物に特有のテクスチャ等の複数の特徴点、又は測定対象物若しくは治具に取り付けられたマーカ等を比較基準点として抽出する。例えば、制御部3は、測定対象物又は治具に取り付けられたマーカが円である場合には、円の中心位置を比較基準点として抽出する。制御部3は、比較基準点の座標を示す情報に加えて、測定対象物の表面において比較基準点を通過する法線ベクトルを示す情報を第1撮像画像及び第2撮像画像から抽出してもよい。
【0030】
制御部3は、第1撮像画像から抽出した比較基準点の測定対象物上の位置を特定することにより、第1形状データにおける比較基準点の位置を示す第1位置情報を作成する。制御部3は、第2撮像画像から抽出した比較基準点の測定対象物上の位置を特定することにより、第2形状データにおける比較基準点の位置を示す第2位置情報を作成する。図2においては、第1撮像画像および第2撮像画像から抽出した比較基準点をそれぞれ第1形状データ上、及び第2形状データ上に丸印で示している。
【0031】
制御部3は、第1位置情報及び第2位置情報を用いて、第1形状データと第2形状データを位置合わせする。より詳しくは、制御部3は、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、第2形状データの座標を変換する。第2形状データの座標は、第2形状データに含まれる複数の画素の座標である。以下、位置合わせ後の第1形状データを基準第1形状データとも呼び、位置合わせ後の第2形状データを基準第2形状データとも呼ぶ。図2(b)は、制御部3による位置合わせ後の基準第1形状データ及び基準第2形状データを示す。図2(b)の例では、制御部3は、第1形状データの座標を変換することなく基準第1形状データを作成する。代わりに、制御部3は、第1形状データの座標を変換したり、第1形状データと第2形状データの両者の座標を変換して位置合わせを行ったりしてもよい。
【0032】
制御部3が十分な数の比較基準点を一定の広がりをもって抽出した場合、第1形状データと第2形状データとの位置合わせは比較的高い精度で行われる。一方、制御部3が抽出した比較基準点の数が少なかったり、比較基準点の分布が偏っていたりする場合、第1形状データと第2形状データとの位置合わせの精度が低下することがある。
【0033】
このため、制御部3は、第1形状データと第2形状データとの位置合わせの良否を判定する。図3(a)及び図3(b)は、制御部3による第1形状データと第2形状データとの位置合わせの良否を判定する方法を示す図である。
【0034】
図3(a)に示すように、制御部3は、第1位置情報が示す複数の比較基準点のうち、一部又は全ての比較基準点の位置を所定の変化量だけ変化させる。所定の変化量は、例えば形状測定装置100の測定性能(例えば測定誤差の最大値又は標準偏差値)に基づいて決定される大きさである。また、この変化を与える量又は向きは、例えば比較基準点ごとにランダムなものであってもよく、事前に取得した既知の誤差分布に対応するものであってもよい。制御部3が位置を変化させる前の比較基準点を破線の丸印で示し、制御部3が位置を変化させた後の比較基準点を実線の丸印で示す。図3(a)及び図3(b)に示すように、制御部3は、第1位置情報が示す一部又は全ての比較基準点の位置を変化させた後、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、第2形状データの座標を変換する。なお、制御部3は、第1位置情報が示す複数の比較基準点と、第2位置情報が示す複数の比較基準点との一方又は両方の位置に変化を与えてもよい。
【0035】
第1位置情報が示す一部又は全ての比較基準点の位置を変化させることにより、位置合わせ後の第2形状データ(以下、変化第2形状データともいう)の座標が変動する。比較基準点の位置を変化させる前に第1形状データ及び第2形状データを位置合わせした場合の基準第2形状データを図3(b)の破線で示し、比較基準点の位置を変化させた後に第1形状データ及び第2形状データを位置合わせした場合の第2形状データ(以下、変化第2形状データともいう)を図3(b)の実線で示す。
【0036】
制御部3は、基準第2形状データと変化第2形状データとの差を特定する。制御部3は、基準第2形状データと変化第2形状データとの差が閾値以下であることを条件として、基準第1形状データと基準第2形状データとの位置合わせが良好であると判定する。このとき、制御部3は、基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを作成する。制御部3は、作成した結合形状データを出力する。このようにして、制御部3は、基準第1形状データと基準第2形状データとの位置合わせの良否を判定するので、基準第1形状データと基準第2形状データとの位置合わせが不良であることに起因して、測定対象物の形状の測定精度が低下することを抑制することができる。
【0037】
なお、制御部3は、複数の比較基準点の位置に変化を与える際に、個々の比較基準点に与える変化量を変えて、その都度、位置合わせを行うようにしてもよい。制御部3は、この時に生じる複数の位置合わせの誤差の最大値又は標準偏差値等の統計量を指標として、閾値による判定を行ってもよい。
【0038】
[形状測定装置の構成]
図4は、形状測定装置100の構成を示す図である。形状測定装置100は、一以上の形状測定方法を用いて測定対象物の三次元形状を測定する。形状測定方法は、本明細書の例では、光パターン投影法であるが、光切断法、ステレオ法、光波干渉法などを適用してもよい。形状測定方法は、非接触式のものであってもよく、接触式のものであってもよい。
【0039】
形状測定装置100は、撮像部2、制御部3、表示部4及び記憶部5を備える。制御部3は、形状データ作成部301、基準データ作成部302、変化後データ作成部303、出力部304及び形状データ診断部305を備える。
【0040】
表示部4は、制御部3が生成した文字、画像、又は形状等のデータを表示する。例えば、表示部4は、測定対象物の形状の測定結果を表示する。記憶部5は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスク等の記憶媒体を含む。記憶部5は、制御部3が実行するプログラムを記憶している。制御部3は、記憶部5に記憶されたプログラムを実行することにより、形状データ作成部301、基準データ作成部302、変化後データ作成部303、出力部304及び形状データ診断部305として機能する。
【0041】
形状データ作成部301は、測定対象物の形状を測定する。形状データ作成部301は、第1相対位置において測定対象物の測定面を撮像部2に撮像させることにより、第1撮像画像を生成する。形状データ作成部301は、測定対象物の測定面を第2相対位置において撮像部2に撮像させることにより、第2撮像画像を生成する。第2相対位置は、第1相対位置とは異なる位置である。第1相対位置は、例えば、撮像部2により最初に撮像が行われた位置であり、第2相対位置は、撮像部2により2番目以降に撮像が行われた位置であるが、本発明はこれに限定されず、第1相対位置と第2相対位置との番号付けの方法は任意であってもよい。例えば、第2相対位置は、撮像部2により最初に撮像が行われた位置であってもよく、第1相対位置は、撮像部2により2番目以降に撮像が行われた位置であってもよい。
【0042】
形状データ作成部301は、第2相対位置において、第1相対位置とは異なる向きで測定対象物を撮像してもよい。本明細書の例では、形状データ作成部301は、測定対象物に対し、投影画像を投影部1により投影し、投影画像が投影された状態において測定対象物の第1撮像画像及び第2撮像画像を生成する。この際に、形状データ作成部301は、投影する画像を変えて撮像したり、無投影の状態で撮像したりして、複数の画像を生成するようにしてもよい。
【0043】
形状データ作成部301は、生成した第1撮像画像に基づいて、測定対象物の少なくとも一部の形状を示す第1形状データを作成する。より詳しくは、形状データ作成部301は、第1撮像画像において測定対象物に投影された投影画像の歪み等を解析することにより、測定対象物の形状を測定する。形状データ作成部301は、この測定結果に基づいて、第1形状データを作成する。同様にして、形状データ作成部301は、生成した第2撮像画像に基づいて、測定対象物において第1形状データと少なくとも一部が異なる第2形状データを作成する。
【0044】
形状データ作成部301は、第1撮像画像及び第2撮像画像から測定対象物のエッジ若しくは起伏、測定対象物に特有のテクスチャ等の複数の特徴点、又は測定対象物や治具に取り付けられたマーカ等の特徴点を比較基準点として抽出する。形状データ作成部301は、第1撮像画像から抽出した複数の比較基準点の測定対象物上又は治具上の位置をそれぞれ特定することにより、第1形状データにおける複数の比較基準点の位置を示す第1位置情報を作成する。同様にして、形状データ作成部301は、第2撮像画像から抽出した複数の比較基準点の測定対象物上又は治具上の位置をそれぞれ特定することにより、第2形状データにおける複数の比較基準点を示す第2位置情報を作成する。
【0045】
形状データ作成部301は、所定の大きさ以上の範囲に広がって分布する十分な個数の比較基準点を抽出することが望ましい。図5(a)及び図5(b)は、形状データ作成部301が抽出した比較基準点の例を示す図である。図5(a)は、形状データ作成部301が抽出した比較基準点の個数及び広がりが良好である例を示し、図5(b)は、形状データ作成部301が抽出した比較基準点の個数及び広がりが良好でない例を示す。図5(a)には、形状データ作成部301が作成した第1形状データ及び第2形状データを示す。図5(a)の丸印は、比較基準点を示す。両矢印は、第1位置情報が示す比較基準点と、第2位置情報が示す比較基準点とが、測定対象物上の共通の特徴点に対応することを示す。図5(a)に示す比較基準点は、図5(b)に示す比較基準点に比べて、個数が多く、より広い範囲に分布している。
【0046】
形状データ作成部301は、作成した第1形状データと、第1形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第1位置情報とを作成する。形状データ作成部301は、作成した第1形状データ及び第1位置情報を基準データ作成部302及び変化後データ作成部303へ出力する。形状データ作成部301は、作成した第2形状データと、第2形状データを取得した際に得られる複数の比較基準点の座標を示す第2位置情報とを作成する。形状データ作成部301は、作成した第2形状データ及び第2位置情報を基準データ作成部302及び変化後データ作成部303へ出力する。
【0047】
また、形状データ作成部301は、第1撮像画像または第2撮像画像に基づいて形状データを作成する例に限定されず、記憶部5に予め記憶されている第1形状データと、第2形状データと、第1位置情報と、第2位置情報とを記憶部5から取得してもよい。なお、第1形状データおよび第1位置情報と、第2形状データおよび第2位置情報とは、それぞれ別の形状測定装置で取得したものであってもよい。このようにすると、例えばある形状測定装置では測定できない箇所を、別の形状測定装置を用いることで測定できるようにすることで、より広範囲で測定対象物を測定することができる。例えば、光パターン投影法による形状測定装置では、影の影響等によって測定できない箇所を、別の形状測定装置を利用して測定し、その結果を統合することが考えられる。
【0048】
[投影画像による比較基準点の抽出]
形状データ作成部301は、マーカを含む投影画像を測定対象物に投影し、測定対象物に投影されたマーカの位置を比較基準点として撮像画像から抽出してもよい。例えば、形状データ作成部301は、測定ヘッド10内の投影部1とは別に設けられた副投影部を用いて、マーカを含む投影画像を投影する。また、形状データ作成部301は、測定ヘッド10内の投影部1を用いてこの投影画像を投影してもよい。
【0049】
図6及び図7は、形状データ作成部301による比較基準点の抽出の別の例を示す図である。図6は、形状データ作成部301が測定対象物にマーカを副投影部61により投影する様子を示す図である。図7は、測定対象物に投影されたマーカを含む投影画像の例を示す図である。形状データ作成部301は、測定対象物に対する副投影部61の相対位置を固定した状態で、副投影部からマーカとして利用可能な投影画像を測定対象物に投影する。このとき、形状データ作成部301は、測定対象物に投影されたマーカの位置を比較基準点として第1撮像画像及び第2撮像画像から抽出してもよい。
【0050】
また、形状データ作成部301は、測定ヘッド10内に複数の撮像部2が設けられる場合には、測定ヘッド10内の投影部1からマーカを含む投影画像を投影してもよい。形状データ作成部301は、投影画像が投影された状態の測定対象物の第1撮像画像を第1の撮像部により生成し、同じ状態の測定対象物の第2撮像画像を第2の撮像部により生成する。形状データ作成部301は、測定対象物に投影されたマーカの位置を比較基準点として第1撮像画像及び第2撮像画像から抽出してもよい。また、複数の測定ヘッドを用いる場合にも、測定ヘッドとは別に用意された副投影部を用いたり、測定ヘッド内の投影部を用いたりして、マーカを含む投影画像を投影して、同様な処理を行ってもよい。
【0051】
測定対象物上に投影された複数のマーカを図7に丸印で示す。マーカとして利用する投影画像は、測定ヘッド10に含まれる投影部1が投影する投影画像を用いる場合と、副投影部61が投影する投影画像を用いる場合との両方において任意の輝度分布、任意の枚数であってよい。形状データ作成部301は、測定対象物に投影されたマーカを比較基準点として第1撮像画像及び第2撮像画像から抽出することにより、比較基準点の個数又は分布を調整することができる。また、形状データ作成部301は、測定対象物のエッジ等の特徴点から抽出した比較基準点と、測定対象物に投影されたマーカの位置に対応する比較基準点とを組み合わせて利用してもよい。
【0052】
図8(a)及び図8(b)は、マーカを含む投影画像の例を示す図である。形状データ作成部301は、図8(a)に示す黒色のパターンの中心位置、又は図8(b)に示す縞パターンの濃淡により特定される位置を比較基準点として抽出することができる。
【0053】
[比較基準点を使用した形状データの位置合わせ]
基準データ作成部302は、第1形状データと第2形状データとを位置合わせして、位置合わせした後の比較基準点の位置を示す基準第1形状データ及び基準第2形状データを作成する。例えば、基準データ作成部302は、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、第1形状データまたは第2形状データの少なくともいずれかの座標を変換することにより、基準第1形状データ及び基準第2形状データを作成する。
【0054】
第1形状データと、第2形状データとの位置合わせの誤差eは、以下の式(1)により表される。
【数1】
式(1)中、Nは、比較基準点の数であり、aは、第1位置情報が示すi番目の比較基準点の座標であり、bは、第2位置情報が示すi番目の比較基準点の座標である。これらの同一の順番は、空間上に存在する同じ比較基準点を表すものとする。一般に、第1形状データと第2形状データとでは、それぞれ異なる個数の比較基準点を観測するが、位置合わせの誤差を算出するのに使用されるのは、第1形状データと第2形状データとで共通に観測された比較基準点である。基準データ作成部302は、誤差eが最小になるように複数の比較基準点の座標bを位置合わせする。このとき、基準データ作成部302は、複数の比較基準点の座標bに対応する第2形状データの座標を複数の比較基準点の座標bとともに変換して基準第2形状データとする。
【0055】
本明細書の例では、基準データ作成部302は、第1形状データと第2形状データとの位置合わせにおいて第1形状データの座標を変換しないが、基準データ作成部302は、第1形状データ及び第2形状データの両方の座標を変換することにより誤差eを最小にしてもよい。基準データ作成部302は、第1形状データと第2形状データとの位置合わせにおいて第1形状データの座標のみを変換することにより誤差eを最小にしてもよい。基準データ作成部302は、作成した第1基準形状データ及び第2基準形状データを出力部304へ出力する。
【0056】
[比較基準点への変化の付与]
変化後データ作成部303は、第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部又は全ての比較基準点の位置を所定の変化量だけ変化させる。所定の変化量は、例えば、形状測定装置100の測定精度に応じて定められる。一例としては、変化後データ作成部303は、複数の比較基準点の個々の位置を、特定の分布になるように、又はランダムな分布になるように、向き又は大きさの少なくともいずれかを変化させてもよい。所定の変化量は、複数の比較基準点の個々の位置を変化させる向き又は大きさの少なくともいずれかの最大値又は標準偏差値を規定するものであってもよい。
【0057】
変化後データ作成部303は、第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の位置を所定の変化量だけ変化させた後、これらの複数の比較基準点の位置と、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、第1形状データの座標を変換し、変化第1形状データとする。より詳しくは、変化後データ作成部303は、上述の式(1)において第2位置情報が示す比較基準点の座標をaとし、第1位置情報が示す比較基準点の座標をbとし、式(1)に示す誤差eが最小になるように第1位置情報が示す複数の比較基準点bの座標を位置合わせする。基準データ作成部302は、複数の比較基準点の座標bに対応する第1形状データの座標を比較基準点の座標bとともに変換する。変化後データ作成部303は、変換後の第1形状データである変化第1形状データを出力部304へ出力する。
【0058】
また、変化後データ作成部303は、第2位置情報が示す比較基準点の代わりに、第1位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部又は全部の座標位置を所定の変化量だけ変化させてもよい。変化後データ作成部303は、第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置を変化させた場合と同様に、第1位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の位置を所定の変化量だけ変化させた後、これらの複数の比較基準点の位置と、第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、座標位置を変化させた後の第1形状データの座標を変換し、変化第1形状データとしてもよい。
【0059】
この他、変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す比較基準点と第2位置情報が示す比較基準点の両方を変化させてもよい。変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す前記複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の座標位置を所定の第1変化量だけ変化させる。変化後データ作成部303は、第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の座標位置を所定の第2変化量だけ変化させる。変化後データ作成部303は、第1位置情報及び第2位置情報が示す比較基準点の位置を変化させた後、座標位置を変化させた後の第1位置情報に対応する複数の比較基準点の位置と、座標位置を変化させた後の第2位置情報に対応する複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成してもよい。
【0060】
[位置合わせの良否の判定]
出力部304は、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データが所定条件を満たすか否かを判定する。出力部304は、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データとの差を特定する。例えば、出力部304は、2つの形状データにおける対応する座標のずれ量を2つの形状データの差として特定する。出力部304は、所定条件として、2つの形状データの差が閾値以下であるか否かを判定する。閾値は、例えば、形状測定装置100に要求される測定精度に応じて定められる。また、出力部304は、形状データ同士の差を求める際に、第2形状データと基準第1形状データとのずれ量、および第2形状データと変化第1形状データとのずれ量を算出し、その両者の差を、指標として用いてもよい。
【0061】
出力部304は、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを作成する。本明細書の例では、出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差が閾値以下であることを所定条件として、変化第1形状データがこの所定条件を満たす場合に、第1形状データと第2形状データとの位置合わせは良好であると判定し、結合形状データを作成する。出力部304は、作成した結合形状データを出力する。例えば、出力部304は、作成した結合形状データを表示部4に出力する。このようにすることで、出力部304は、位置合わせが不良となる形状データの利用を避けられるため、高精度な結果が得られるようになる。
【0062】
出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差が閾値を超える場合に、第1形状データと第2形状データとの位置合わせは不良であると判定する。このとき、出力部304は、基準第1形状データにおいて変化第1形状データとの違いが基準値以上である箇所を除去した修正第1形状データを作成する。例えば、出力部304は、2つの形状データにおける対応する座標のずれ量が閾値以上となる部分を除去することにより、修正第1形状データを作成する。閾値は、例えば、形状測定装置100に要求される測定精度に応じてそれぞれ定められる。出力部304は、基準データ作成部302が作成した基準第2形状データと、作成した修正第1形状データとを結合した修正結合形状データを作成する。
【0063】
出力部304は、作成した修正結合形状データを表示部4に出力する。出力部304は、通信インターフェースを介して、外部装置に修正結合形状データを出力してもよい。出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差が比較的少ない箇所を利用して修正結合形状データを作成するので、作成される形状データの精度が向上する。出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差が閾値を超える場合には、結合形状データ及び修正結合データを出力しなくてもよい。
【0064】
また、出力部304は、作成した結合形状データとともに、基準第1形状データと変化第1形状データとの差を示す数値情報、又は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差を示すカラーマップ等を表示部4に出力してもよい。このとき、出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差が閾値以下であるか否かの判定を行わなくてもよい。このようにして、出力部304は、ユーザが第1形状データと第2形状データとの位置合わせの良否を判断できるようにしてもよい。
【0065】
また、出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差が閾値以下であることを所定条件として、変化第1形状データがこの所定条件を満たすと判定する例に限定されない。例えば、出力部304は、基準第1形状データと変化第2形状データを比較してもよい。出力部304は、変化第1形状データにおいて基準第2形状データに対応する座標のずれ量を特定し、特定したずれ量が閾値以下である場合に、変化第1形状データが所定条件を満たすと判定してもよい。閾値は、例えば、形状測定装置100に要求される測定精度に応じて定められる。このとき、出力部304は、特定したずれ量が閾値以下である場合に、基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを作成してもよい。
【0066】
[単一の形状データを用いた位置合わせ]
形状データ診断部305は、第1形状データと第2形状データとを位置合わせする前に、第1形状データが他の形状データと位置合わせすることが可能であるか否かを判定する。その際に、形状データ診断部305は、その判定結果をユーザに予め通知してもよい。図9(a)及び図9(b)は、第1形状データと他の形状データとが位置合わせ可能か否かを形状データ診断部305が判定するための方法を示す図である。図9 (a)は、位置合わせ前の2つの第1形状データを示す。図9(b)は、比較基準点を変化させた後の位置合わせの様子を示す。
【0067】
形状データ診断部305は、第1形状データを複製し、一方の第1位置情報が示す複数の比較基準点のうちの全て又は一部の比較基準点の位置を第1変化量だけ変化させる。例えば、形状データ診断部305は、図3(a)の例と同様にして、比較基準点の位置を第1変化量だけ変化させる。この時、形状データ診断部305は、個々の比較基準点ごとにランダム状に異なる変化量を与えるようにしてもよい。また、形状データ診断部305は、他方の第1形状データについては、同様に第1位置情報が示す複数の比較基準点の全て又は一部の位置を第2変化量だけ変化させてもよいし、もしくは比較基準点の位置を変化させなくてもよい。第2変化量は、第1変化量とは異なる変化に対応するものである。形状データ診断部305は、与える第1変化量及び第2変化量については、形状測定装置100の測定精度などに基づいて決めるようにすればよい。
【0068】
形状データ診断部305は、第1変化量だけ変化させた比較基準点を含む複数の比較基準点の位置のそれぞれと、第2変化量だけ変化させた又は位置を変化させていない比較基準点を含む対応する比較基準点の位置との距離の総和が最小になるように、少なくとも一方の第1位置情報が示す比較基準点の座標を変換する。例えば、形状データ診断部305は、第1変化量だけ変化させた比較基準点を含むi番目の比較基準点の座標を上述の式(1)のaとし、第2変化量だけ変化させた比較基準点を含む対応する比較基準点の座標をbとし、誤差eが最小になるように複数の比較基準点の座標bを位置合わせする。このとき、形状データ診断部305は、座標bの比較基準点に対応する第1形状データの座標を比較基準点の座標bとともに変換する。図9(b)の例では、形状データ診断部305は、座標aの比較基準点に対応する第1形状データの座標を変換しない。
【0069】
この例では、2つの第1形状データを用いる例を示したが、形状データ診断部305は、さらに多くの第1形状データを用意し、その個々の形状データに対して、比較基準点の座標に異なった位置変化量を与えるようにして、同様の位置合わせを複数回試行してもよい。このようにすることで、形状データ診断部305は、位置変化量として多様な変化を考慮することができるため、より信頼性の高い判定を行うことができる。
【0070】
図9(b)には、形状データ診断部305が第1変化量だけ変化させた比較基準点を含む複数の比較基準点に対応する第1形状データを破線で示し、形状データ診断部305が第2変化量だけ変化させた比較基準点を含む複数の比較基準点に対応する第1形状データを実線で示す。
【0071】
形状データ診断部305は、変換後の第1形状データと、変換前の同じ第1形状データとの差が閾値を超える場合に、この第1形状データを他の形状データとの位置合わせに使用することができないと判定する。2つの第1形状データの差は、例えば、2つの第1形状データにおける対応する座標のずれ量である。例えば、形状データ診断部305は、第1形状データが他の形状データとの位置合わせに使用することができないことを示すメッセージを表示部4に表示する。閾値は、例えば、形状測定装置100による形状の測定に要求される精度に応じて定められる。
【0072】
一方、形状データ診断部305は、変換後の第1形状データと、変換前の同じ第1形状データとの差が閾値以下である場合に、この第1形状データを位置合わせに使用できないことを通知しない。同様にして、形状データ診断部305は、複数取得した個々の形状データに対して診断を実施する。このようにして選定された複数の形状データを用いて、異なる形状データの位置合わせをすることで、位置合わせの高精度化と効率化とができる。また、形状データ診断部305は、第1形状データが他の形状データと位置合わせすることが可能であるか否かを判定する場合と同様にして、第2形状データが他の形状データと位置合わせすることが可能であるか否かを判定してもよい。
【0073】
[振動量又は温度に応じて位置合わせの良否を判定する変形例]
出力部304は、撮像部2が撮像する際の形状測定装置100もしくは測定対象物の少なくとも一方の振動量を取得する。例えば、出力部304は、例えば、出力部304は、測定ヘッド10に取り付けた3軸加速度センサ(不図示)により測定ヘッド10の振動量を測定し、この測定結果を取得する。振動量は、例えば、撮像部2が測定対象物を撮像する際の撮像部2又は測定対象物の振動の大きさを示す値である。出力部304は、撮像部2が撮像する際の形状測定装置100の温度、測定対象物の温度又は周囲環境の温度の少なくとも一つを取得する。例えば、出力部304は、形状測定装置100の測定ヘッド10の温度を測定する温度センサ(不図示)から温度の測定結果を取得する。
【0074】
出力部304は、取得した振動量が許容値以下であるか否かを判定する。振動量の許容値は、例えば、測定対象物の測定において要求される精度に応じて決定される。出力部304は、振動量が許容値以下であり、且つ、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データが上述した所定条件を満たす場合に、基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを出力してもよい。
【0075】
また、出力部304は、取得した温度が許容値以下であるか否かを判定してもよい。温度の許容値は、例えば、測定対象物の測定において要求される精度に応じて決定される。出力部304は、取得した温度が許容値以下であり、且つ、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データが上述した所定条件を満たす場合に、基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを出力してもよい。このようにして、出力部304は、比較基準点とは異なる指標を併用して形状データの位置合わせの良否を判定するので、判定の精度をより向上させることができる。
【0076】
[3個以上の形状データの位置合わせ]
基準データ作成部302は、3個以上の形状データを位置合わせしてもよい。図10は、3個の形状データA~Cを位置合わせする場合の例を示す図である。形状データAを太い実線で示す。形状データBを破線で示す。形状データCを細い実線で示す。図10の例では、基準データ作成部302は、3個以上の形状データA~Cを一つずつ逐次的に位置合わせする。また、基準データ作成部302は、位置合わせの順番がより適切になるように変更しながら位置合わせしてもよい。基準データ作成部302は、複数の形状データを同時に位置合わせしてもよい。
【0077】
図10に示すように、基準データ作成部302が形状データAと形状データBとを位置合わせしたとする。このとき、出力部304は、形状データAと形状データBとの位置合わせは不良であると判定したものとする。
【0078】
このとき、基準データ作成部302は、形状データAと形状データCとの位置合わせ、又は形状データBと形状データCとの位置合わせを試みる。例えば、基準データ作成部302は、図10に示すように、形状データBと形状データCとを位置合わせする。この場合に、出力部304は、形状データBと形状データCとの位置合わせは良好であると判定し、形状データBと形状データCとを結合した結合形状データB+Cを作成する。
【0079】
次に、基準データ作成部302は、形状データAと結合形状データB+Cとを位置合わせする。このとき、出力部304は、形状データAと結合形状データB+Cとの位置合わせは良好であると判定し、形状データAと結合形状データB+Cとを結合した結合形状データA+B+Cを作成する。結合形状データB+Cは、結合によって比較基準点の数が増加し、これによって形状データAとの位置合わせが良好にできるようになる。このようにして、基準データ作成部302は、位置合わせの順番を適切に選択することにより、複数の形状データの位置合わせの精度を向上させ、且つ形状データを破棄せずに効率よく利用することができる。
【0080】
[位置合わせにおいて第1形状データの座標を変換する変形例]
変化後データ作成部303は、比較基準点を用いた位置合わせにおいて第1形状データの座標を変換して変化第1形状データを作成する代わりに、第2形状データの座標を変換してもよい。変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部又は全ての比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させる。変化後データ作成部303は、第1形状データの座標を変換する場合と同様にして、第1位置情報が示す複数の比較基準点の座標位置を変化させた後の複数の比較基準点の位置と、第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、第2形状データの座標を変換する。以下、座標変換後の第2形状データを変化第2形状データともいう。
【0081】
このとき、変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す比較基準点の代わりに、第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部又は全部の座標位置を所定の変化量だけ変化させてもよい。変化後データ作成部303は、第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の位置を所定の変化量だけ変化させた後、これらの複数の比較基準点の位置と、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、座標位置を変化させた後の第2形状データの座標を変換し、変化第2形状データとしてもよい。
【0082】
出力部304は、変化後データ作成部303が作成した変化第2形状データが所定条件を満たすか否かを判定する。出力部304は、変化後データ作成部303が作成した変化第2形状データが所定条件を満たす場合に、第1形状データと第2形状データとの位置合わせは良好であると判定する。例えば、出力部304は、基準第2形状データと変化第2形状データとの差が閾値以下である場合に、第1形状データと第2形状データとの位置合わせは良好であると判定する。このとき、出力部304は、基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを出力する。
【0083】
一方、出力部304は、変化後データ作成部303が作成した変化第2形状データが所定条件を満たさない場合、第1形状データと第2形状データとの位置合わせは不良であると判定する。例えば、出力部304は、基準第2形状データと変化第2形状データとの差が閾値を超える場合に、第1形状データと第2形状データとの位置合わせは不良であると判定する。このとき、出力部304は、基準第2形状データにおいて変化第2形状データとの違いが基準値以上である箇所を除去した修正第2形状データを作成する。出力部304は、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと、作成した修正第2形状データとを結合した修正結合形状データを作成する。出力部304は、作成した修正結合形状データを表示部4に出力する。
【0084】
[複数の形状データとの位置合わせの処理手順]
図11は、形状測定装置100による複数の形状データの位置合わせの処理手順を示すフローチャートである。この処理手順は、例えば、制御部3が有する操作受付部(不図示)が測定対象物の形状の測定を指示するユーザの操作を受け付けたときに開始する。まず、形状データ作成部301は、第1相対位置及び第2相対位置において測定対象物を撮像部2に撮像させることにより生成された第1撮像画像及び第2撮像画像に基づいて、第1形状データ及び第2形状データを生成する(S101)。
【0085】
基準データ作成部302は、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、第2形状データの座標を変換することにより、基準第1形状データ及び基準第2形状データを作成する(S102)。変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す複数の比較基準点のうちの一部又は全ての比較基準点の位置を所定の変化量だけ変化させる。なお、変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置を変化させる代わりに、第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの一部又は全ての比較基準点の位置を所定の変化量だけ変化させたり、第1位置情報が示す比較基準点と第2位置情報が示す比較基準点との両方を変化させたりしてもよい。
【0086】
変化後データ作成部303は、比較基準点の位置を変化させた後、これらの複数の比較基準点の位置と、第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成する(S103)。
【0087】
出力部304は、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データとの差を特定する。出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差が閾値以下であるか否かを判定する(S104)。出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差が閾値以下である場合に(S104のYES)、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを表示部4に出力する(S105)。操作受付部は、ユーザが測定対象物の測定の終了を指示する操作を受け付けたか否かを判定する(S106)。操作受付部は、ユーザが測定対象物の測定の終了を指示する操作を受け付けたと判定した場合に(S106のYES)、処理を終了する。
【0088】
出力部304は、S104の判定において基準第1形状データと変化第1形状データとの差が閾値を超える場合に(S104のNO)、基準第1形状データにおいて変化第1形状データとの違いが基準値以上である箇所を除去した修正第1形状データを作成する。このとき、出力部304は、全ての箇所で位置ずれ量が大きい場合には、修正第1形状データを作成しない。出力部304は、基準データ作成部302が作成した基準第2形状データと、作成した修正第1形状データとを結合した修正結合形状データを作成する。出力部304は、作成した修正結合形状データを表示部4に出力し(S107)、S106の判定に移る。操作受付部は、S106の判定においてユーザが測定対象物の測定の終了を指示する操作を受け付けていないと判定した場合に(S106のNO)、S101の処理に戻る。
【0089】
また、出力部304は、S104の判定において基準第1形状データと変化第1形状データとの差が閾値を超える場合に(S104のNO)、S107の処理を省略してS106の処理に移ってもよい。出力部304は、S103において変化後データ作成部303が変化第1形状データを作成した後、S104の判定を省略してS107の処理に移ってもよい。
【0090】
[第1位置情報が示す比較基準点を変化させる変化量を変更する変形例]
変化後データ作成部303は、第1位置情報又は第2位置情報が示す比較基準点の座標位置を変化させる変化量を変更してもよい。変化後データ作成部303は、この変化量を変更する度に変更後の変化量に対応する変化第1形状データを作成する。出力部304は、変化後データ作成部303が作成した複数の変化第1形状データが所定条件を満たす場合に、結合形状データを出力してもよい。
【0091】
図12は、本変形例において形状測定装置100による複数の形状データの位置合わせの処理手順を示すフローチャートである。図12のS101からS103、S105及びS106は、図11のS101からS103、S105及びS106とそれぞれ同様であるため、説明を省略する。
【0092】
変化後データ作成部303は、S103において変化第1形状データを作成した後、第2位置情報が示す全ての比較基準点の座標位置を変化させるための変化量を変更する(S201)。例えば、変化後データ作成部303は、第2位置情報が示す全ての比較基準点を変化させる方向又は距離の少なくともいずれかを変更する。出力部304は、変化後データ作成部303が変化量を変更した変更回数が目標値以上であるか否かを判定する(S202)。
【0093】
出力部304は、変化後データ作成部303が変化量を変更した変更回数が目標値以上である場合に(S202のYES)、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データとの差を変化後データ作成部303が変化量を変更する度に特定する。出力部304は、特定した複数の差の統計量を特定する。統計量は、例えば、最大値又は標準偏差値である。
【0094】
出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差の統計量が閾値以下であるか否かを判定する(S203)。出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差の統計量が閾値以下であると判定した場合に(S203のYES)、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを表示部4に出力し(S105)、S106の判定に移る。
【0095】
出力部304は、S202の判定において変化後データ作成部303が変化量を変更した変更回数が目標値未満である場合に(S202のNO)、S103の処理に戻る。このとき、変化後データ作成部303は、第2位置情報が示す比較基準点の位置を変更後の変化量だけ変化させた後、これらの複数の比較基準点の位置と、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成する(S103)。また、変化後データ作成部303は、変化量を変更する度に変化第1形状データを作成する代わりに、変更後の変化量に対応する変化第2形状データを作成してもよい。
【0096】
出力部304は、S203の判定において基準第1形状データと変化第1形状データとの差の統計量が閾値より大きいと判定した場合に(S203のNO)、基準第1形状データにおいて変化第1形状データとの差の統計量が基準値以上である箇所を除去した修正第1形状データを作成する。このとき、出力部304は、全ての箇所で位置ずれ量が大きい場合には、修正第1形状データを作成しない。出力部304は、基準データ作成部302が作成した基準第2形状データと、作成した修正第1形状データとを結合した修正結合形状データを作成する。出力部304は、作成した修正結合形状データを表示部4に出力し(S204)、S106の判定に移る。
【0097】
本変形例によれば、変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す複数の比較基準点に変化を与える際に、変化の与え方を変えることによって、基準第1形状データと、変化第1形状データとの差の統計量を算出するので、第1形状データと第2形状データとの位置合わせの良否をより精度よく判定することができる。
【0098】
本変形例では、出力部304は、基準第1形状データと変化第1形状データとの差の統計量が閾値以下である場合に、結合形状データを表示部4に出力する場合の例について説明した。しかしながら、本発明は、基準第1形状データと変化第1形状データとを比較する例に限定されない。例えば、出力部304は、変化後データ作成部303が変更したいずれかの変化量に対応する変化第1形状データと、変化後データ作成部303が変更した別の変化量に対応する変化第1形状データとの差が閾値以下である場合に、変化第1形状データが所定条件を満たすと判定し、基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを表示部4等に出力してもよい。一方、出力部304は、変化後データ作成部303が変更したいずれかの変化量に対応する変化第1形状データと、別の変化量に対応する変化第1形状データとの差が閾値より大きい場合に、結合形状データを出力しなくてもよい。
【0099】
[第1位置情報及び第2位置情報が示す比較基準点の変化量を変更する変形例]
変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す比較基準点を第1変化量だけ変化させ、第2位置情報が示す比較基準点を第2変化量だけ変化させる。変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す比較基準点の座標位置を変化させる第1変化量と、第2位置情報が示す比較基準点の座標位置を変化させる第2変化量とをそれぞれ変更してもよい。変化後データ作成部303は、第1変化量及び第2変化量を変更する度に、変更後の第1変化量及び第2変化量に対応する変化第1形状データを作成してもよい。
【0100】
図13は、本変形例において形状測定装置100による複数の形状データの位置合わせの処理手順を示すフローチャートである。図13のS101、S102及びS106は、図11のS101、S102及びS106とそれぞれ同様であり、図13のS204は、図12のS204と同様であるため、説明を省略する。
【0101】
変化後データ作成部303は、S301において第1位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の座標位置を第1変化量だけ変化させる。変化後データ作成部303は、第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の座標位置を第2変化量だけ変化させる。変化後データ作成部303は、第1位置情報及び第2位置情報が示す複数の比較基準点の座標位置をそれぞれ変化させた後、座標位置を変化させた後の第1位置情報に対応する複数の比較基準点の位置と、座標位置を変化させた後の第2位置情報に対応する複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、座標位置を変化させた後の第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成する(S301)。
【0102】
変化後データ作成部303は、第1変化量及び第2変化量の両方を変更する(S302)。例えば、変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す全ての比較基準点を変化させる方向又は距離と、第2位置情報が示す全ての比較基準点を変化させる方向又は距離とをそれぞれ変更する。出力部304は、変化後データ作成部303が第1変化量及び第2変化量の両方を変更した変更回数が目標値以上であるか否かを判定する(S303)。
【0103】
出力部304は、変化後データ作成部303が第1変化量及び第2変化量の両方を変更した変更回数が目標値以上である場合に(S303のYES)、変化後データ作成部303が作成した複数の変化第1形状データが所定条件を満たすか否かを判定する。出力部304は、複数の変化第1形状データが所定条件を満たす場合に(S304のYES)、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを出力する。
【0104】
より詳しくは、出力部304は、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データとの差を変化後データ作成部303が変化量を変更する度に特定する。出力部304は、特定した複数の差の統計量を特定する。統計量は、例えば、最大値又は標準偏差値である。出力部304は、特定した複数の差の統計量が閾値以下である場合に、複数の変化第1形状データが所定条件を満たすと判定し(S304のYES)、結合形状データを出力する(S305)。
【0105】
出力部304は、S303の判定において変化後データ作成部303が第1変化量及び第2変化量の両方を変更した変更回数が目標値未満である場合に(S303のNO)、S301の処理に戻る。変化後データ作成部303は、第1変化量及び第2変化量を変更する度に、S301において変更後の第1変化量及び第2変化量に対応する変化第1形状データを作成する(S301)。出力部304は、S304の判定において変化後データ作成部303が作成した複数の変化第1形状データが所定条件を満たさない場合に(S304のNO)、S204の処理に移る。
【0106】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、第1形状データと第2形状データとの位置合わせが不良であると判定した場合に、新たな比較基準点を抽出する場合の例について説明する。図14は、第2の実施形態の形状測定装置500の構成を示す図である。図14に示す形状測定装置500は、抽出部501をさらに備える点を除いて図4と同様である。図4と同様の構成については図4と同じ符号を付して説明を省略する。
【0107】
抽出部501は、第1形状データと第2形状データとの位置合わせが不良であると出力部304が判定した場合に、新たな比較基準点を抽出する。例えば、抽出部501は、基準データ作成部302が作成した基準第2形状データと、変化後データ作成部303が作成した変化第2形状データとの差が閾値を超えると出力部304が判定した場合に、第1撮像画像及び第2撮像画像から新たな比較基準点を抽出する。具体的には、抽出部501は、第1撮像画像と第2撮像画像との間において共通する測定対象物のエッジ若しくは起伏、又はテクスチャ等の複数の特徴点を再検索し、発見した特徴点を新たな比較基準点として抽出する。抽出部501は、抽出した新たな比較基準点を基準データ作成部302、変化後データ作成部303及び出力部304へ通知する。
【0108】
基準データ作成部302は、形状データ作成部301が抽出した比較基準点と、抽出部501が抽出した新たな比較基準点とを用いて、第1形状データと第2形状データとを再度位置合わせすることにより、基準第1形状データ及び基準第2形状データを再度作成する。基準データ作成部302は、作成した基準第1形状データ及び基準第2形状データを出力部304へ出力する。
【0109】
変化後データ作成部303は、抽出部501が抽出した新たな比較基準点を含む複数の比較基準点であって、第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の位置を所定の変化量だけ変化させる。変化後データ作成部303は、一部の比較基準点の位置を変化させた後、これらの複数の比較基準点の位置と、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置との距離が近づくように、第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを再度作成する。変化後データ作成部303は、第2形状データの座標を変換することにより、変化第2形状データを作成してもよい。
【0110】
形状データ診断部305は、図4の形状データ診断部305と同様の処理に加えて、抽出部501が抽出した新たな比較基準点を含む複数の比較基準点により基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと、新たな比較基準点を含む複数の比較基準点により変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データとの差を特定する。形状データ診断部305は、特定した差が閾値以下であるか否かを判定する。形状データ診断部305は、判定結果を出力部304へ出力する。
【0111】
出力部304は、新たな比較基準点を含む複数の比較基準点により基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと、新たな比較基準点により変化後データ作成部が作成した変化第1形状データとの差が閾値以下であると形状データ診断部305が判定したことを条件として、新たな比較基準点を基準第1形状データ及び基準第2形状データとともに表示部4に表示させる。一方、出力部304は、特定した差が閾値を超える場合には、新たな比較基準点を基準第1形状データ及び基準第2形状データとともに表示部4に表示させない。出力部304は、特定した差が閾値以下である場合に、基準第1形状データ及び基準第2形状データを結合した結合形状データを表示してもよい。
【0112】
このとき、抽出部501は、新たな比較基準点の抽出を繰り返してもよい。このようにして、抽出部501は、第1形状データと第2形状データとの位置合わせが不良であると出力部304が判定した場合に新たな比較基準点を抽出するので、第1形状データと第2形状データとの位置合わせの精度を向上させることができる。
【0113】
第2の実施形態では、第1形状データと第2形状データとの位置合わせが不良であると出力部304が判定した場合に、抽出部501が新たな比較基準点を抽出する場合の例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、基準データ作成部302は、第1形状データと第2形状データとの位置合わせが不良であると出力部304が判定した場合に、位置合わせに用いる比較基準点を変更してもよい。例えば、基準データ作成部302は、位置ずれ量が比較的大きい比較基準点を使わないようにして、位置ずれ量が比較的小さい比較基準点を用いて位置合わせを行ってもよい。このようにして、基準データ作成部302は、複数の比較基準点のうち、不良の比較基準点を使わないようにすることができる。
【0114】
<第3の実施形態>
第1の実施形態及び第2の実施形態では、第1位置情報が示す比較基準点の位置と、第2位置情報が示す比較基準点の位置と距離が最小になるように、第1形状データ又は第2形状データの座標を変換する場合の例について説明した。これに対し、第3の実施形態では、第1位置情報が示す比較基準点の位置と、測定対象物においてその位置が予めわかっている参照用基準点の位置が最小になるように、第1形状データ又は第2形状データの座標を変換する場合の例について説明する。
【0115】
図15は、第3の実施形態の形状測定装置600の構成を示す図である。形状測定装置600は、図4の形状測定装置100と比較すると、取得部601をさらに備える点において異なる。図15において取得部601以外の機能ブロックについては図4と同様であるため、同様の符号を付して説明を省略する。
【0116】
取得部601は、測定対象物上又は治具上等の複数の参照用基準点の位置を示す情報を取得する。参照用基準点は、測定対象物においてその位置が予めわかっている特徴点である。例えば、形状測定装置100と比較してより高精度な測定が可能な外部測定装置(不図示)を用いて同じ測定対象物上又は治具上の撮像画像からエッジ、起伏、又はマーカ等の複数の特徴点が参照用基準点として抽出され、抽出した複数の参照用基準点の位置が比較的高い精度で測定されたものとする。記憶部5には、この外部測定装置において測定された参照用基準点の位置を示す情報が予め記憶されている。取得部601は、複数の参照用基準点の位置を示す情報を記憶部5から取得する。
【0117】
基準データ作成部302は、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、取得部601が取得した対応する参照用基準点の位置との距離が近づくように、第1形状データの座標を変換することにより、基準第1形状データを作成する。例えば、基準データ作成部302は、上述の式(1)において、i番目の参照用基準点の座標をaとし、第1位置情報が示すi番目の比較基準点をbとして、誤差eが最小になるように複数の比較基準点の座標bを位置合わせする。同様にして、基準データ作成部302は、第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、取得部601が取得した対応する参照用基準点の位置との距離が近づくように、第2形状データの座標を変換することにより、基準第2形状データを作成する。
【0118】
変化後データ作成部303は、図4の例と同様に、第1位置情報及び第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部または全ての比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させる。所定の変化量は、例えば、形状測定装置600の測定精度に応じて定められる。変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後、座標位置を変化させた後の複数の比較基準点の位置と、対応する参照用基準点の位置との距離が近づくように、第1形状データの座標を変換することにより、変化第1形状データを作成する。
【0119】
変化後データ作成部303は、同様にして、第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後、座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の比較基準点の位置と、対応する参照用基準点の位置との距離が近づくように、第2形状データの座標を変換することにより、変化第2形状データを作成する。
【0120】
出力部304は、変化第1形状データが所定条件を満たすか否かを判定する判定部として機能する。出力部304は、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データとの差を特定する。例えば、出力部304は、2つの形状データにおける対応する座標のずれ量を2つの形状データの差として特定する。
【0121】
出力部304は、所定条件として、2つの形状データの差が閾値以下であるか否かを判定する。閾値は、例えば、形状測定装置100に要求される測定精度に応じて定められる。また、出力部304は、形状データ同士の差を求める際に、第2形状データと基準第1形状データとのずれ量、および第2形状データと変化第1形状データとのずれ量を算出し、その両者の差を、指標として用いてもよい。
【0122】
出力部304は、第2変化形状データが所定条件を満たすか否かを判定する。出力部304は、基準データ作成部302が作成した基準第2形状データと、変化後データ作成部303が作成した変化第2形状データとの差を特定する。例えば、出力部304は、2つの形状データにおける対応する座標のずれ量を2つの形状データの差として特定する。出力部304は、所定条件として、2つの形状データの差が閾値以下であるか否かを判定する。閾値は、例えば、形状測定装置100に要求される測定精度に応じて定められる。また、出力部304は、形状データ同士の差を求める際に、第1形状データと基準第2形状データとのずれ量を算出し、第1形状データと変化第2形状データとのずれ量を算出し、算出した2つのずれ量の差を、指標として用いてもよい。
【0123】
出力部304は、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データ又は変化第2形状データが所定条件を満たす場合に、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを作成する。一方、出力部304は、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データ又は変化第2形状データが所定条件を満たさない場合に、結合形状データを作成しない。また、出力部304は、変化後データ作成部303が作成した変化第1形状データ及び変化第2形状データの両方が所定条件を満たす場合に、基準データ作成部302が作成した基準第1形状データと基準第2形状データとを結合した結合形状データを作成してもよい。
【0124】
第3の実施形態では、変化後データ作成部303は、第1位置情報又は第2位置情報が示す複数の比較基準点のうちの少なくとも一部の比較基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させる場合の例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。変化後データ作成部303は、参照用基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させてもよい。
【0125】
例えば、変化後データ作成部303は、複数の参照用基準点のうちの少なくとも一部の参照用基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させる。変化後データ作成部303は、所定の変化量は、例えば、参照用基準点の位置を測定した外部測定装置の精度から想定される誤差の最大値である。変化後データ作成部303は、複数の参照用基準点のうちの少なくとも一部の参照用基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後、第1位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、座標位置を変化させた後の複数の参照用基準点の位置との距離が近づくように、第1形状データの座標を変換することにより、第1変化形状データを作成してもよい。
【0126】
同様にして、変化後データ作成部303は、第2位置情報が示す複数の比較基準点の位置と、複数の参照用基準点のうちの少なくとも一部の参照用基準点の座標位置を所定の変化量だけ変化させた後の複数の参照用基準点の位置との距離の総和が最小になるように、第2形状データの座標を変換することにより、第2変化形状データを作成してもよい。また、変化後データ作成部303は、第1位置情報が示す比較基準点と、参照用基準点との両方を変化させてもよい。
【0127】
出力部304は、3つ以上の形状データを結合する場合には、例えば、例えば、第1の実施形態において説明した手法を用いて、第1位置情報が示す比較基準点と第2位置情報が示す比較基準点との距離を最小にする手法により1つの結合形状データを作成させてもよく、第3の実施形態において説明した手法を用いて、比較基準点と参照用基準点との距離を最小にすることにより1つの結合形状データを作成させてもよい。また、出力部304は、第1の実施形態において説明した手法と、第3の実施形態において説明した手法とを組み合わせてもよい。例えば、出力部304は、第1の実施形態において説明した手法を用いて一部の形状データを結合させ、第3の実施形態において説明した手法を用いて、残りの形状データを結合させることにより、1つの結合形状データを作成してもよい。
【0128】
[比較基準点の組み合わせを選択する変形例]
形状データ作成部301は、複数の比較基準点からなる複数の組み合わせを作成してもよい。例えば、形状データ作成部301は、複数のマーカを含む投影画像を測定対象物に投影し、投影された複数のマーカを抽出して特定した比較基準点の第1の組み合わせを作成する。形状データ作成部301は、測定対象物のエッジ若しくは起伏、又は測定対象物に特有のテクスチャ等の複数の特徴点を抽出して特定した比較基準点の第2の組み合わせを作成する。
【0129】
基準データ作成部302は、複数の比較基準点の複数の組み合わせのそれぞれに対応する基準第1形状データ及び基準第2形状データを作成する。例えば、基準データ作成部302は、比較基準点の第1の組み合わせを用いた位置合わせにより、基準第1形状データ及び基準第2形状データを作成する。基準データ作成部302は、比較基準点の第2の組み合わせを用いた位置合わせにより、基準第1形状データ及び基準第2形状データを作成する。
【0130】
変化後データ作成部303は、比較基準点の複数の組み合わせのそれぞれに対応する複数の変化第2形状データを作成する。例えば、変化後データ作成部303は、比較基準点の第1の組み合わせに対応する変化第2形状データを作成する。変化後データ作成部303は、比較基準点の第2の組み合わせに対応する変化第2形状データを作成する。
【0131】
出力部304は、基準第2形状データと変化第2形状データとの差が最も小さくなる組み合わせを特定する。例えば、出力部304は、比較基準点の第1の組み合わせに対応する基準第2形状データと、比較基準点の第1の組み合わせに対応する変化第2形状データとの差を特定する。同様に、出力部304は、比較基準点の第2の組み合わせに対応する基準第2形状データと、比較基準点の第2の組み合わせに対応する変化第2形状データとの差を特定する。
【0132】
出力部304は、特定した2つの差を比較することにより、基準第2形状データと変化第2形状データとの差が最も小さくなる比較基準点の組み合わせを特定する。出力部304は、特定した組み合わせに対応する基準第1形状データと、最も小さい差を特定するのに用いた基準第2形状データとを結合した結合形状データを作成し、作成した結合形状データを出力する。出力部304は、複数の比較基準点の組み合わせのうち、形状データの位置合わせが最も良好になる組み合わせを用いるので、位置合わせの精度を向上させることができる。
【0133】
また、形状データ作成部301は、任意の組み合わせを作成してもよい。例えば、形状データ作成部301は、投影された複数のマーカを抽出して特定した比較基準点、測定対象物のエッジ若しくは起伏、又は測定対象物に特有のテクスチャ等の複数の特徴点を抽出して特定した比較基準点等の異なるタイプの比較基準点を同じ組み合わせに含めてもよい。
【0134】
[本実施形態に係る形状測定装置による効果]
以上のとおり、出力部304が、位置合わせが良好に行われた第1形状データと第2形状データを用いて作成された測定対象物の形状データを出力することにより、三次元測定の精度を向上させることができる。これによって、出力部304は、良好な測定精度で測定可能な測定範囲を拡大することができる。
【0135】
なお、形状測定装置は、比較基準点を用いて第1形状データと第2形状データとを位置合わせする方法と、第1相対位置から第2相対位置へ測定ヘッド10を移動させたり姿勢を変化させたりする際の移動量又は姿勢変化量を用いて第1形状データと第2形状データとを位置合わせする方法とのうち、位置合わせがより良好であると出力部304が判定した方法を用いて2つの形状データを位置合わせしてもよい。
【0136】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0137】
1 投影部
2 撮像部
3 制御部
4 表示部
5 記憶部
10 測定ヘッド
21 レンズ
22 撮像素子
61 副投影部
100 形状測定装置
301 形状データ作成部
302 基準データ作成部
303 変化後データ作成部
304 出力部
305 形状データ診断部
500 形状測定装置
501 抽出部
600 形状測定装置
601 取得部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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