(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】管理システム、メンテナンススケジュール決定方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20240910BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20240910BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06N20/00
G01M17/007 H
(21)【出願番号】P 2021527717
(86)(22)【出願日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 JP2020024941
(87)【国際公開番号】W WO2020262510
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-06-07
(31)【優先権主張番号】P 2019121850
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和哉
【審査官】宮地 匡人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-036679(JP,A)
【文献】特開2008-310579(JP,A)
【文献】特開2018-147385(JP,A)
【文献】国際公開第2019/059321(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
G06N 20/00
G01M 17/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両又は該車両の一部である供試体の性能を分析する分析装置、及び、該分析装置による分析を支援する関連装置をそれぞれ含む複数の分析システムから、各分析システムに含まれる装置が有する複数の構成部品に係る情報として、前記構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報の少なくとも1つを取得する取得部と、
複数の分析システムの稼働スケジュールを取得する稼働スケジュール取得部と、
複数の分析システムに含まれる装置の構成部品に係る情報及び前記複数の分析システムの稼働スケジュールと、効率的なメンテナンススケジュールとの対応を学習した学習済モデルを記憶した記憶部と、
前記取得部が取得した複数の分析システムに含まれる装置の構成部品に関する情報と、前記稼働スケジュール取得部が取得した複数の分析システムの稼働スケジュールとを前記学習済モデルへ入力して、前記複数の分析システムの
効率的なメンテナンススケジュールを決定する決定部と
を備える、管理システム。
【請求項2】
前記決定部は、前記分析システムによる分析の実施効率、又は、前記分析システムのメンテナンス効率が高くなるように、前記メンテナンススケジュールを決定する、請求項
1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記学習済モデルは、メンテナンススケジュールに係る報酬が多く得られるよう強化学習がなされたモデルである、
請求項
1又は請求項
2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記学習済モデルは、前記分析システムの稼働率が高い場合に高い報酬を与えた強化学習により学習されたモデルである、
請求項
1から請求項
3までのいずれか1つに記載の管理システム。
【請求項5】
前記学習済モデルは、前記分析システムのメンテナンスに係る負担が低い場合に高い報酬を与えた強化学習により学習されたモデルである、
請求項
1から請求項
4までのいずれか1つに記載の管理システム。
【請求項6】
前記学習済モデルは、前記分析システムの不具合の発生頻度が低い場合に高い報酬を与えた強化学習により学習されたモデルである、
請求項
1から請求項
5までのいずれか1つに記載の管理システム。
【請求項7】
前記分析システムの関連装置には、前記車両又は前記供試体が発生するトルクを吸収するダイナモメータを含み、
前記分析装置は、前記車両又は前記供試体から排出されるガスを分析する、請求項
1から請求項
6までのいずれか1つに記載の管理システム。
【請求項8】
車両又は該車両の一部である供試体の性能を分析する分析装置、及び、該分析装置による分析を支援する関連装置をそれぞれ含む複数の分析システムから、各分析システムに含まれる装置が有する複数の構成部品に係る情報として、前記構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報の少なくとも1つを取得する取得部と、
複数の分析システムの稼働スケジュールを取得する稼働スケジュール取得部と、
前記取得部が取得した情報に基づいて、前記構成部品毎のメンテナンスの期日を決定する第1決定部と、
前記稼働スケジュール取得部が取得した稼働スケジュールに基づき、前記分析システムを稼働する期間を避けて、且つ、前記第1決定部が決定した期日に基づき、前記分析システム毎に、メンテナンス期日が早く到達する構成部品のメンテナンス日に、メンテナンス期日が遅く到達する構成部品のメンテナンス日を揃えた
複数の分析システムのメンテナンススケジュールを決定する第2決定部と
を備える、管理システム。
【請求項9】
前記第2決定部は、前記第1決定部が決定したメンテナンス期日が所定期間内の複数の構成部品について、メンテナンス日を揃えたメンテナンススケジュールを決定する、請求項
8に記載の管理システム。
【請求項10】
決定したメンテナンススケジュールを、所定の端末装置へ通知する通知部を備える、
請求項1から請求項
9までのいずれか1つに記載の管理システム。
【請求項11】
決定したメンテナンススケジュールを基に、メンテナンスを行う日付、メンテナンスを行う装置、及び、メンテナンスを行う構成部品を対応付けて表示する、
請求項1から請求項10までのいずれか1つに記載の管理システム。
【請求項12】
前記学習済モデルは、複数の構成部品について日毎のメンテナンスの実施又は非実施を示す情報を複数日に亘って決定した情報を前記メンテナンススケジュールとして出力する、
請求項1から請求項7までのいずれか1つに記載の管理システム。
【請求項13】
情報処理装置が、
車両又は該車両の一部である供試体の性能を分析する分析装置、及び、該分析装置による分析を支援する関連装置をそれぞれ含む複数の分析システムから、各分析システムに含まれる装置が有する複数の構成部品に係る情報として、前記構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報の少なくとも1つを取得し、
複数の分析システムの稼働スケジュールを取得し、
複数の分析システムに含まれる装置の構成部品に係る情報及び前記複数の分析システムの稼働スケジュールと、効率的なメンテナンススケジュールとの対応を学習した学習済モデルを記憶部に記憶しておき、
取得した複数の分析システムに含まれる装置の構成部品に関する情報と、取得した複数の分析システムの稼働スケジュールとを前記学習済モデルへ入力して、前記複数の分析システムの
効率的なメンテナンススケジュールを決定する、
メンテナンススケジュール決定方法。
【請求項14】
情報処理装置が、
車両又は該車両の一部である供試体の性能を分析する分析装置、及び、該分析装置による分析を支援する関連装置をそれぞれ含む複数の分析システムから、各分析システムに含まれる装置が有する複数の構成部品に係る情報として、前記構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報の少なくとも1つを取得し、
複数の分析システムの稼働スケジュールを取得し、
取得した情報に基づいて、前記構成部品毎のメンテナンスの期日を決定し、
取得した稼働スケジュールに基づき、前記分析システムを稼働する期間を避けて、且つ、決定した期日に基づき、前記分析システム毎に、メンテナンス期日が早く到達する構成部品のメンテナンス日に、メンテナンス期日が遅く到達する構成部品のメンテナンス日を揃えた複数の分析システムのメンテナンススケジュールを決定する、
メンテナンススケジュール決定方法。
【請求項15】
複数の分析システムに含まれる装置の構成部品に係る情報及び前記複数の分析システムの稼働スケジュールと、効率的なメンテナンススケジュールとの対応を学習した学習済モデルを記憶した記憶部を備えるコンピュータに、
車両又は該車両の一部である供試体の性能を分析する分析装置、及び、該分析装置による分析を支援する関連装置をそれぞれ含む複数の分析システムから、各分析システムに含まれる装置が有する複数の構成部品に係る情報として、前記構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報の少なくとも1つを取得し、
複数の分析システムの稼働スケジュールを取得し、
取得した複数の分析システムに含まれる装置の構成部品に関する情報と、取得した複数の分析システムの稼働スケジュールとを前記学習済モデルへ入力して、前記複数の分析システムの
効率的なメンテナンススケジュールを決定する
処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
車両又は該車両の一部である供試体の性能を分析する分析装置、及び、該分析装置による分析を支援する関連装置をそれぞれ含む複数の分析システムから、各分析システムに含まれる装置が有する複数の構成部品に係る情報として、前記構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報の少なくとも1つを取得し、
複数の分析システムの稼働スケジュールを取得し、
取得した情報に基づいて、前記構成部品毎のメンテナンスの期日を決定し、
取得した稼働スケジュールに基づき、前記分析システムを稼働する期間を避けて、且つ、決定した期日に基づき、前記分析システム毎に、メンテナンス期日が早く到達する構成部品のメンテナンス日に、メンテナンス期日が遅く到達する構成部品のメンテナンス日を揃えた複数の分析システムのメンテナンススケジュールを決定する
処理を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自動車等の車両に係る分析を行う分析システムのメンテナンスを管理する管理システム、メンテナンススケジュール決定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両又はその一部である供試体の開発及び評価を行うため、例えば供試体が排出する排ガスの成分を分析する分析装置が用いられる。分析装置の分析精度を維持するために、定期的な調整及び部品交換等のメンテナンスが必要不可欠である。
【0003】
特許文献1においては、デバイス管理装置に接続された全ての試験用デバイスに関し、特に緊急性の高い保守管理情報を簡易的かつ優先的に表示できるようにし、確実な保守点検ができるように図った試験システムが提案されている。この試験システムのデバイス管理装置は、試験用デバイスから出力される情報をディスプレイ上で消去可能、切り替え可能又は移動可能に表示する。デバイス管理装置は、試験用デバイスの感度低下を示す感度アラーム情報、試験用デバイスの蓄積稼働時間に係るアラーム情報である蓄積稼働時間アラーム情報、及び、試験用デバイスの検査日時の接近又は徒過を示す情報である検査日時アラーム情報の3つのアラーム情報については、各アラーム情報が示す内容に応じて形態が変化する3つのアラームアイコンを、この情報の表示の如何にかかわらず、優先して表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分析装置には定期的なメンテナンスが必要不可欠であるが、メンテナンス中には分析装置が利用できないため、効率的なメンテナンスを行うことが望まれる。
【0006】
本開示は、斯かる事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、分析装置の効率的なメンテナンスを実現し得るメンテナンススケジュールを決定する管理システム、メンテナンススケジュール決定方法及びコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る管理システムは、車両又は該車両の一部である供試体の性能を分析する分析装置、及び、該分析装置による分析を支援する関連装置をそれぞれ含む複数の分析システムから、各分析システムに含まれる装置が有する複数の構成部品に係る情報として、前記構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報の少なくとも1つを取得する取得部と、前記取得部が取得した情報に基づいて、前記分析システムのメンテナンススケジュールを決定する決定部とを備える。
【0008】
また、本開示に係る管理システムは、前記決定部が、分析システムに含まれる装置の構成部品に係る情報の入力に応じて効率的なメンテナンススケジュールを出力するよう学習された学習済モデルを用い、前記取得部が取得した情報を前記学習済モデルへ入力して前記分析システムのメンテナンススケジュールを決定する。
【0009】
また、本開示に係る管理システムは、前記決定部が、前記分析システムによる分析の実施効率、又は、前記分析システムのメンテナンス効率が高くなるように、前記メンテナンススケジュールを決定する。
【0010】
また、本開示に係る管理システムは、前記学習済モデルが、メンテナンススケジュールに係る報酬が多く得られるよう強化学習がなされたモデルである。
【0011】
また、本開示に係る管理システムは、前記学習済モデルが、前記分析システムの稼働率が高い場合に高い報酬を与えた強化学習により学習されたモデルである。
【0012】
また、本開示に係る管理システムは、前記学習済モデルが、前記分析システムのメンテナンスに係る負担が低い場合に高い報酬を与えた強化学習により学習されたモデルである。
【0013】
また、本開示に係る管理システムは、前記学習済モデルが、前記分析システムの不具合の発生頻度が低い場合に高い報酬を与えた強化学習により学習されたモデルである。
【0014】
また、本開示に係る管理システムは、前記学習済モデルが、複数の分析システムの構成部品に係る情報の入力に応じて、複数の分析装置のメンテナンススケジュールを出力し、前記取得部は、複数の分析システムから構成部品に係る情報を取得し、前記決定部は、前記取得部が取得した複数の分析システムに含まれる装置の構成部品に係る情報を前記学習済モデルへ入力して、複数の分析システムのメンテナンススケジュールを決定する。
【0015】
また、本開示に係る管理システムは、前記分析システムの稼働スケジュールを取得する稼働スケジュール取得部を備え、前記学習済モデルは、前記分析システムに含まれる装置の前記構成部品に係る情報と前記分析システムの稼働スケジュールとの入力に応じてメンテナンススケジュールを出力する。
【0016】
また、本開示に係る管理システムは、前記分析システムの関連装置には、前記車両又は前記供試体が発生するトルクを吸収するダイナモメータを含み、前記分析装置は、前記車両又は前記供試体から排出されるガスを分析する。
【0017】
また、本開示に係る管理システムは、前記取得部は、複数の分析システムから情報を取得し、前記決定部は、前記取得部が取得した情報に基づいて、前記構成部品毎のメンテナンスの期日を決定する第1決定部と、前記第1決定部が決定した期日に基づき、前記分析システム毎に、メンテナンス期日が早く到達する構成部品のメンテナンス日に、メンテナンス期日が遅く到達する構成部品のメンテナンス日を揃えたメンテナンススケジュールを決定する第2決定部とを含む。
【0018】
また、本開示に係る管理システムは、前記第2決定部は、前記第1決定部が決定したメンテナンス期日が所定期間内の複数の構成部品について、メンテナンス日を揃えたメンテナンススケジュールを決定する。
【0019】
また、本開示に係る管理システムは、前記分析システムの稼働スケジュールを取得する稼働スケジュール取得部を備え、前記第2決定部は、前記稼働スケジュール取得部が取得した稼働スケジュールに基づき、前記分析システムを稼働する期間を避けて、前記分析システムのメンテナンススケジュールを決定する。
【0020】
また、本開示に係る管理システムは、前記決定部が決定したメンテナンススケジュールを、所定の端末装置へ通知する通知部を備える。
【0021】
また、本開示に係るメンテナンススケジュール決定方法は、車両又は該車両の一部である供試体の性能を分析する分析装置、及び、該分析装置による分析を支援する関連装置をそれぞれ含む複数の分析システムから、各分析システムに含まれる装置が有する複数の構成部品に係る情報として、前記構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報の少なくとも1つを取得し、取得した情報に基づいて、前記分析システムのメンテナンススケジュールを決定する。
【0022】
また、本開示に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに、車両又は該車両の一部である供試体の性能を分析する分析装置、及び、該分析装置による分析を支援する関連装置をそれぞれ含む複数の分析システムから、各分析システムに含まれる装置が有する複数の構成部品に係る情報として、前記構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報の少なくとも1つを取得し、取得した情報に基づいて、前記分析システムのメンテナンススケジュールを決定する。
【0023】
また、本開示に係る学習済モデルの生成方法は、車両又は該車両の一部である供試体の性能を分析する分析装置、及び、該分析装置による分析を支援する関連装置を含む複数の分析システムに含まれる装置が有する複数の構成部品に係る情報として、前記構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報の少なくとも1つを入力として受け付けて、前記分析システムのメンテナンススケジュールを出力する学習モデルに対し、前記分析システムの稼働率、前記分析システムのメンテナンスに係る負担、又は、前記分析システムの不具合の発生頻度に応じた報酬を与えて強化学習を行うことにより学習済モデルを生成する。
【0024】
本開示においては、自動車等の車両又はこの車両の一部である供試体に係る分析を行う分析装置が有する種々の構成部品に関するメンテナンススケジュールを、予め学習された学習済モデルを利用して決定する。学習済モデルは、分析装置の構成部品に係る情報の入力に応じて効率的な分析装置のメンテナンススケジュールを出力する。分析装置の構成部品に係る情報には、例えば構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報等が含まれ得る。これらの情報のうちの少なくとも1つを取得して学習済モデルへ入力し、学習済モデルが出力するメンテナンススケジュールを取得することにより、分析装置のメンテナンススケジュールを決定することができる。適切に学習させた学習済モデルを用いてメンテナンススケジュールを決定することによって、分析装置の効率的なメンテナンスが期待できる。
【0025】
また本開示においては、分析装置による車両又は供試体の分析処理の実施効率、又は、分析装置のメンテナンス効率が高くなるように、メンテナンススケジュールを決定する。これにより、分析装置の効率的なメンテナンスが期待できる。
【0026】
また本開示においては、学習済モデルは、メンテナンススケジュールに係る報酬が多く得られるように予め学習がなされる。これにより学習がなされた学習済モデルは、構成部品に係る情報の入力に対して分析装置の効率的なメンテナンススケジュールを出力することができる。
【0027】
また、本開示においては、分析装置の稼働率が高い場合に高い報酬を与える強化学習を行うことにより、メンテナンススケジュールを出力する学習済モデルを生成する。これにより、分析装置の稼働率が高くなるようにメンテナンススケジュールが決定され、効率的なメンテナンスが実現できる。
【0028】
また、本開示においては、分析装置のメンテナンスに係る負荷(例えばメンテナンスの回数、時間又は費用等)が低い場合に高い報酬を与える強化学習を行うことにより、メンテナンススケジュールを出力する学習済モデルを生成する。これにより、メンテナンスに係る負荷が低くなるようにメンテナンススケジュールが決定され、効率的なメンテナンスが実現できる。
【0029】
また、本開示においては、分析装置の不具合の発生頻度が低い場合に高い報酬を与える強化学習を行うことにより、メンテナンススケジュールを出力する学習済モデルを生成する。これにより、分析装置の不具合の発生を抑えるようにメンテナンススケジュールが決定され、分析装置を効率的に利用することができる。
【0030】
また、本開示においては、学習済モデルが複数の分析装置の構成部品に係る情報を入力に応じて、複数の分析装置のメンテナンススケジュールを出力する。学習済モデルは、例えば複数の分析装置についてメンテナンススケジュールに係る報酬が多く得られるよう学習がなされる。複数の分析装置からそれぞれ情報を取得して学習済モデルへ入力することにより、複数の分析装置の構成部品についてメンテナンススケジュール決定することができる。
【0031】
また、本開示においては、分析装置の稼働スケジュールを学習済モデルが更に入力として受け付け、稼働スケジュールに応じたメンテナンススケジュールを出力する。これにより例えば学習済モデルは、分析装置を稼働させる必要がある期間を避けてメンテナンススケジュールを決定することができ、分析装置の効率的なメンテナンスが実現できる。
【0032】
また、本開示においては、分析装置の構成部品に係る情報を入力として受け付け、構成部品のメンテナンススケジュールを出力する学習モデルに対し、分析装置の稼働率、分析装置のメンテナンスに係る負荷(例えばメンテナンスの回数、時間若しくは費用等)又は分析装置の不具合の発生頻度等に応じた報酬を与える強化学習を行うことにより学習済モデルを生成する。これにより、分析装置の稼働率、メンテナンスに係る負荷又は分析装置の不具合等を考慮したメンテナンススケジュールを決定することができ、効率的なメンテナンスが実現できる。
【0033】
また、本開示においては、自動車等の車両又はこの車両の一部である供試体に係る分析を行う複数の分析装置から複数の構成部品に係る情報として例えば構成部品の故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報等の少なくとも1つを取得し、構成部品毎のメンテナンスの期日を決定する。次いで、構成部品毎の期日に基づき、メンテナンス期日が早く到達する構成部品のメンテナンス日に、メンテナンス期日が遅く到達する構成部品のメンテナンス日を揃えたメンテナンススケジュールを分析装置毎に決定する。これにより、各分析装置が有する複数の構成部品のメンテナンスの期日を考慮して、複数の分析装置のメンテナンススケジュールを決定することができ、複数の分析装置の効率的なメンテナンスが期待できる。
【0034】
また、本開示においては、構成部品毎に決定されたメンテナンス期日が所定期間内の複数の構成部品について、メンテナンス日を揃えたメンテナンススケジュールを決定する。これにより、メンテナンス期日が必要以上に隔たった複数の構成部品についてメンテナンス日が揃えられることを防止できる。
【0035】
また、本開示においては、分析装置の稼働スケジュールを更に取得し、分析装置を稼働する期間を避けて、分析装置のメンテナンススケジュールを決定する。これにより、分析装置が稼働しない期間にメンテナンスを行い、稼働する必要がある期間に分析装置を確実に稼働させることができる。
【発明の効果】
【0036】
本開示による場合は、分析システムの効率的なメンテナンスを実現し得るメンテナンススケジュールを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本実施の形態に係る車両試験設備の管理システムの概要を説明するための模式図である。
【
図2】本実施の形態に係る管理サーバの構成を示すブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係るスケジュール決定モデルの一構成例を示す模式図である。
【
図4】管理サーバによる分析結果の表示画面の一例を示す模式図である。
【
図5】管理サーバによるアラート通知画面の一例を示す模式図である。
【
図6】管理サーバによる期限通知画面の一例を示す模式図である。
【
図7】管理サーバによる感度履歴画面の一例を示す模式図である。
【
図8】管理サーバによるメンテナンススケジュール表示画面の一例を示す模式図である。
【
図9】管理サーバによるメンテナンススケジュール表示画面の別の例を示す模式図である。
【
図10】本実施の形態に係る管理サーバが行うメンテナンススケジュール決定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図11】本実施の形態に係る管理サーバが行うスケジュール決定モデルの学習処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】構成部品毎のメンテナンス期日の一例を示す模式図である。
【
図13】分析装置毎にまとめたメンテナンススケジュールの一例を示す模式図である。
【
図14】分析装置の稼働スケジュールの一例を示す模式図である。
【
図15】稼働スケジュールを考慮したメンテナンススケジュールの一例を示す模式図である。
【
図16】実施の形態2に係る管理サーバが行うメンテナンススケジュール決定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本開示の実施形態に係る分析装置の管理システムの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0039】
<システム概要>
図1は、本実施の形態に係る分析装置の管理システムの概要を説明するための模式図である。本実施の形態に係る管理システムは、例えば自動車等の車両又はこの車両の一部である供試体から排出される排気ガスに含まれる成分を分析する分析装置のメンテナンススケジュールを管理するシステムである。図示の例では、例えば自動車の製造工場又は試験場等に複数の建屋1~3が設けられており、各建屋1~3の内部に複数の分析装置が設置されている。例えば建屋1には3つの分析装置A1~A3が設置されており、各分析装置A1~A3は独立して稼働し、個々に自動車の排気ガスの分析を実施することができる。また各分析装置A1~A3は、個々に排気ガスの分析を行う分析部を複数備えてもよい。これにより各分析装置A1~A3は、複数の分析対象について同時的又は並行的に分析処理を進めることができる。
【0040】
なお、供試体は、例えば内燃機関を備えた車両又はエンジン等の車両の一部であってよく、内燃機関及び電気モータを備えたHV(Hybrid Vehicle)又はその一部であってよく、電気モータ及びバッテリを備えたEV(Electric Vehicle)又はその一部であってよく、電気モータ及び燃料電池を備えたFV(Fuel cell Vehicle)又はその一部であってよい。また、分析装置は、供試体から排出される排ガスの成分を分析するだけではなく、供試体の性能を分析するものであればよい。例えば、分析装置は、供試体の走行性能を分析するものであってよく、タイヤ、ブレーキ、エンジン又はパワートレイン等の性能を試験するものであってよく、供試体が消費する燃料の消費量、電気モータが消費する電気の消費量(電費)又は燃料電池が消費する水素等の消費量を算出するものであってよい。
【0041】
各分析装置A1~A3は、自動運転装置(図示は省略する)及びダイナモメータD1~D3等との協働により、自動車の排気ガスの分析を行う。自動運転装置は、自動車のアクセル及びブレーキ等の操作を自動で行う装置である。ダイナモメータD1~D3は、自動車のエンジン等が発生するトルクを吸収し、エンジン等の回転数及びトルク等を制御する装置である。分析装置A1~A3が備えるダイナモメータD1~D3は、シャシダイナモメータ、エンジンダイナモメータ又はブレーキダイナモメータ等のいずれであってもよい。例えばシャシダイナモメータは、自動車の車輪を載せるローラを用いるローラ方式又は車軸に連結される連結方式等があり、自動車の走行状態を再現するための装置である。自動運転装置及びシャシダイナモメータの連携により自動車を疑似走行させ、走行中に排出される自動車の排気ガスを分析装置が取得してその成分等を分析する。ただし、自動運転装置は必須ではなく、自動運転装置に代えて人が自動車を運転して分析を行ってもよい。本実施の形態において分析装置A1~A3は、シャシダイナモメータを用いて供試体である車両を試験するものとするが、これに限るものではない。例えば分析装置A1~A3は、エンジンダイナモメータを用いてエンジンの性能を試験するものであってもよく、ダイナモメータを用いてパワートレインの性能を試験するものであってもよい。
【0042】
各分析装置A1~A3には、定期的に交換が必要な構成部品が複数備えられている。本実施の形態においては、交換が必要な構成部品としてフィルタ及びポンプを例に挙げて説明を行う。各構成部品には交換時期が定められており、分析装置A1~A3のメンテナンスにおいて構成部品の交換が行われる。ただし分析装置A1~A3の構成部品はフィルタ及びポンプに限るものではなく、これ以外の種々の構成部品が分析装置A1~A3に備えられてよい。また分析装置A1~A3のメンテナンスは、構成部品の交換のみではなく、構成部品の検査又は調整等の作業が含まれ得る。図示の例において分析装置A1は、交換が必要な構成部品として3つのフィルタF11~F13と3つのポンプP11~P13とを備えている。分析装置A2は、3つのフィルタF21~F23と、3つのポンプP21~P23とを備えている。分析装置A3は、3つのフィルタF31~F33と、3つのポンプP31~P33とを備えている。
【0043】
各分析装置A1~A3は、有線又は無線の通信を行うことによって、管理サーバ10との間で情報の送受信を行うことができる。管理サーバ10は、建屋1~3とは別の例えば監理事務所等に設けられ、自動車の製造工場又は試験場等を管理する管理者が利用する装置である。本実施の形態において管理サーバ10は、各建屋1~3に設けられた各分析装置A1~A3から種々の情報を取得して保持している。管理サーバ10は、取得した種々の情報に基づいて、各分析装置A1~A3の構成部品のメンテナンス(交換)の期日を判定し、各分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを決定する処理を行う。また管理サーバ10は、例えば決定したメンテナンススケジュールに応じて、分析装置A1~A3のメンテナンス会社等へメンテナンスの依頼等を行ってもよい。
【0044】
管理サーバ10は、各分析装置A1~A3から、構成部品に関する情報として、構成部品の故障に繋がる事象を示す警告情報、前記構成部品の検出感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の品質寿命期限に係る情報を取得する。故障に繋がる事象を示す警告情報は、例えば警告及びその事前通知情報(Alarm/Pre-caution)、並びに、性能確認の実施周期の事前通知情報(Notification for Quality Check)等の少なくとも1つの情報が含まれ得る。警告及び事前通知情報は、いずれも構成部品の故障に係る情報を管理者等へ通知する情報であり、構成部品の劣化等が進むにしたがってまず事前通知情報が出力され、更に劣化等が進むと警告が出力される。分析装置A1~A3は、フィルタ、ポンプ又は各種分析部等の構成物品の性能等に関する値と所定の第1閾値とを比較して、第1閾値を超えた場合に事前通知情報を出力する。更に分析装置A1~A3は、構成部品の性能等に関する値が、第1閾値よりも更に厳しい条件に設定された第2閾値を超えた場合に警告を出力する。また、性能確認の実施周期の事前通知情報は、フィルタ、ポンプ又は各種分析部等の構成物品の性能確認を実施する周期を事前に通知するものである。分析装置A1~A3は、この実施周期に達する時点から所定期間前の段階で、この事前通知情報を出力する。
【0045】
前記構成部品の検出感度若しくは性能に係る情報には、例えば性能の経時変化情報(Quality Check)、流量(Flow Rate)、バックグラウンドとしての全炭化水素の濃度(THC Background)、各種分析計の感度(Sensitivity)及びリアクタの圧力(Reactor Pressure)等の種々の情報の少なくとも1つが含まれ得る。前記構成部品の品質寿命期限に係る情報には、例えば構成部品の累積稼働時間(累積使用時間)及びその事前通知情報(Notification for Hour-Meter)、又は、定められた交換時期までの残日数等の少なくとも1つの情報である。ただし、上記の情報は一例であってこれに限るものではなく、管理サーバ10は分析装置A1~A3からこれら以外のどのような情報を取得してもよい。
【0046】
本実施の形態において管理サーバ10は、定期的な交換が必要な構成部品であるフィルタ及びポンプのメンテナンスの期日を判断し得る情報を、各分析装置A1~A3から少なくとも取得する。例えば構成部品に使用時間の上限が定められている場合、管理サーバ10は、構成部品の使用時間の情報を取得して上限と比較することによりメンテナンスの時期を判断することができる。また例えば構成部品の性能劣化に応じてメンテナンスが行われる場合、管理サーバ10は、構成部品の性能を示す情報を取得し、性能劣化の判断基準となる閾値との比較を行うことによりメンテナンスの期日を判断することができる。なおこれらのメンテナンス期日の判断方法は一例であって、これに限るものではない。
【0047】
管理サーバ10は、分析装置A1~A3から取得した情報に基づいて、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを決定する。管理サーバ10は、例えば分析装置A1~A3の稼働率をできるだけ高めるように、分析装置A1~A3のメンテナンスに係る回数、時間及び費用等の負担をできるだけ低減するように、又は、分析装置A1~A3の不具合の発生頻度をできるだけ低減するように、メンテナンススケジュールを決定する。本実施の形態において管理サーバ10は、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを決定するAI(Artificial Intelligence)を搭載しており、分析装置A1~A3から取得した種々の情報に基づいてAIがメンテナンススケジュールを決定する。
【0048】
また管理サーバ10は、分析装置A1~A3の稼働スケジュール、即ち分析装置A1~A3を利用した分析を実施する日程に関する情報の入力を受け付けることができる。稼働スケジュールが入力された場合、管理サーバ10のAIは、分析装置A1~A3を稼働する必要がある日又は時間を避けて、且つ、この稼働日時に分析装置A1~A3が利用可能な状態となっているように、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを決定する。ただし、管理サーバ10による分析装置A1~A3の稼働スケジュールの入力受付は必須ではなく、管理サーバ10は稼働スケジュールを考慮したスケジュールの決定を行わない構成であってもよい。
【0049】
また管理サーバ10は、分析装置A1~A3から取得した種々の情報、及び、AIにより決定されたメンテナンススケジュール等を、ディスプレイ等の装置に様々な態様で表示することができる。管理者等は、管理サーバ10が表示する情報に基づいて、分析装置A1~A3の稼働状態及び異常の有無等を把握することができる。
【0050】
<装置構成>
図2は、本実施の形態に係る管理サーバ10の構成を示すブロック図である。本実施の形態に係る管理サーバ10は、処理部(プロセッサ)11、記憶部(ストレージ)12、通信部(トランシーバ)13、表示部(ディスプレイ)14及び入力部(入力デバイス)15等を備えて構成されている。処理部11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)又はGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を用いて構成されている。処理部11は、記憶部12に記憶されたサーバプログラム12aを読み出して実行することにより、分析装置A1~A3から情報を取得する処理、及び、取得した情報に基づいてメンテナンススケジュールを決定する処理等を行う。
【0051】
記憶部12は、例えばハードディスク等の大容量の記憶装置を用いて構成されている。記憶部12は、処理部11が実行する各種のプログラム、及び、処理部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施の形態において記憶部12は、処理部11が実行するサーバプログラム12aと、学習済モデル(識別器)としてスケジュール決定モデル12bとを記憶している。
【0052】
通信部13は、有線又は無線のネットワークを介して、種々の装置との間で通信を行うことができる。本実施の形態において通信部13は、ネットワークを介して複数の建屋1~3に設けられた複数の分析装置A1~A3及びダイナモメータD1~D3等の装置との間で通信を行う。通信部13は、処理部11から与えられたデータを他の装置へ送信すると共に、他の装置から受信したデータを処理部11へ与える。
【0053】
表示部14は、液晶ディスプレイ等を用いて構成されており、種々の画像及び文字等を表示する。表示部14は、処理部11の処理に基づいて種々の画像表示を行う。入力部15は、例えばキーボード及びマウス等の入力装置を用いて構成されている。また入力部15は、表示部14の表面に設けられたタッチセンサを用いて構成されていてもよい。入力部15は、ユーザによる種々の入力操作を受け付けて、受け付けた操作の内容を処理部21へ通知する。
【0054】
なお記憶部12は、管理サーバ10に接続された外部記憶装置であってよい。また管理サーバ10は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。また管理サーバ10は、上記の構成に限定されず、例えば可搬型の記憶媒体に記憶された情報を読み取る読取部等を含んでもよく、表示部14及び入力部15等を備えずに外部装置として接続される構成であってもよい。
【0055】
サーバプログラム12aは、例えば管理サーバ10の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよい。例えばサーバプログラム12aは、遠隔の他のサーバ装置等が配信するものを管理サーバ10が通信にて取得してもよい。例えばサーバプログラム12aは、メモリカード又は光ディスク等の記録媒体99に記録されたサーバプログラム12aを管理サーバ10が読み出して記憶部12に記憶してもよい。例えばサーバプログラム12aは、記録媒体99に記録されたものを書込装置が読み出して管理サーバ10の記憶部12に書き込んでもよい。サーバプログラム12aは、ネットワークを介した配信の態様で提供されてもよく、記録媒体99に記録された態様で提供されてもよい。
【0056】
スケジュール決定モデル12bは、管理サーバ10のAIを実現するためのものであり、予め強化学習がなされた学習済モデルである。学習済モデルは、入力値に対して所定の演算を行い、演算結果を出力するものであり、記憶部12にはこの演算を規定する関数の係数及び閾値等のデータがスケジュール決定モデル12bとして記憶される。スケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3から取得した情報を入力とし、この入力に対して分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを出力するように学習された学習済モデルである。サーバプログラム12aを実行する処理部11が、スケジュール決定モデル12bとして記憶されたデータを読み込むことによって、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを決定するための演算を処理部11が実行することが可能となる。
【0057】
また本実施の形態に係る管理サーバ10は、記憶部12に記憶されたサーバプログラム12aを処理部11が読み出して実行することにより、情報取得部11a、稼働スケジュール取得部11b、メンテナンススケジュール決定部11c、表示処理部11d及び学習処理部11e等がソフトウェア的な機能ブロックとして実現される。情報取得部11aは、通信部13にて分析装置A1~A3との通信を行い、分析装置A1~A3から所定の情報を繰り返し取得する処理を行う。情報取得部11aは、取得した情報を記憶部12に記憶して蓄積する。
【0058】
稼働スケジュール取得部11bは、入力部15にて管理者による稼働スケジュールの入力操作を受け付けることにより、分析装置A1~A3の稼働スケジュールを取得する処理を行う。ただし、管理サーバ10はメンテナンススケジュールの決定に稼働スケジュールを考慮しない構成であってもよく、この場合に管理サーバ10は稼働スケジュール取得部11bを備えていなくてよい。稼働スケジュール取得部11bは、取得した稼働スケジュールの情報を記憶部12に記憶する。又は、管理サーバ10にスケジュール管理用のアプリケーションプログラムがインストールされている場合等には、管理者はこのアプリケーションプログラムを利用して分析装置A1~A3の稼働スケジュールを入力し、稼働スケジュール取得部11bは、このアプリケーションプログラムから稼働スケジュールのデータを取得してもよい。稼働スケジュール取得部11bが取得する稼働スケジュールは、例えば分析装置A1が4月15日の10時から16時まで自動車の試験を実施する等の情報である。
【0059】
メンテナンススケジュール決定部11cは、管理対象の分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを決定する処理を行う。メンテナンススケジュール決定部11cは、記憶部12に記憶されたスケジュール決定モデル12bを利用してメンテナンススケジュールを決定する。メンテナンススケジュール決定部11cは、分析装置A1~A3による分析の実施効率、又は、分析装置のメンテナンス効率が高くなるように、メンテナンススケジュールを決定する。スケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3から取得できる情報、及び、分析装置A1~A3の稼働スケジュールを入力として受け付け、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを出力するように予め強化学習がなされた学習済モデルである。スケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3による分析の実施効率、又は、分析装置のメンテナンス効率が高くなるメンテナンススケジュールを出力するように強化学習がなされる。メンテナンススケジュール決定部11cは、情報取得部11aが取得した情報と、稼働スケジュール取得部11bが取得した稼働スケジュールとをスケジュール決定モデル12bへ入力し、スケジュール決定モデル12bが出力するメンテナンススケジュールを取得することで、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを決定する。
【0060】
表示処理部11dは、表示部14に対して種々の情報を表示する処理を行う。例えば表示処理部11dは、メンテナンススケジュール決定部11cが決定した分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを表示部14に表示する。また例えば表示処理部11dは、情報取得部11aが取得した分析装置A1~A3に係る種々の情報を、種々の表示形態で表示部14に表示する。
【0061】
学習処理部11eは、スケジュール決定モデル12bを学習(再学習)する処理を行う。学習処理部11eは、分析装置A1~A3に関する情報及び稼働スケジュールの入力情報と、この入力情報に対してスケジュール決定モデル12bが決定したメンテナンススケジュールに対する報酬とを対応付けた学習用データを用いて、スケジュール決定モデル12bの強化学習を行う。学習処理部11eは、例えば1ヶ月に1回の頻度で、この1ヶ月間に蓄積された情報を用いて、スケジュール決定モデル12bを再学習する。学習処理部11eは、この期間に蓄積された情報に基づいて、メンテナンススケジュールに対する報酬を算出する処理を行ってよい。なおスケジュール決定モデル12bの学習処理は別のサーバ装置にて行い、管理サーバ10は学習用データとして利用される情報の蓄積のみを行ってもよい。
【0062】
<スケジュール決定モデル>
図3は、本実施の形態に係るスケジュール決定モデル12bの一構成例を示す模式図である。本実施の形態においてスケジュール決定モデル12bは、複数のニューロンが相互に結合したニューラルネットワークの構造を有する。既存の技術であるため詳しい説明は省略するが、ニューロンは複数の入力に対して演算を行い、演算結果として1つの値を出力する素子である。ニューロンは、演算に用いられる重み付けの係数及び閾値等の情報を有している。ニューラルネットワークの学習モデルは、複数個の入力値を受け付ける入力層と、入力層にて受け付けられたデータに対して演算処理を行う中間層と、中間層の演算結果を集約して複数個の値を出力する出力層とを備えている。深層学習及び強化学習等の学習処理は、予め与えられた多数の学習用データを用いて、ニューラルネットワークを構成する各ニューロンの係数及び閾値等に適切な値を設定する処理である。
【0063】
本実施の形態に係るスケジュール決定モデル12bは、ニューラルネットワークの学習モデルに対して強化学習がなされた学習済モデルであり、例えばDQN(Deep Q-Network)の強化学習の手法が採用され得る。スケジュール決定モデル12bは、状態Sのベクトル情報が入力層へ入力され、状態Sに対して行うべき行動Aに相当するベクトル情報を出力層から出力する。
【0064】
本実施の形態において、スケジュール決定モデル12bへ入力される状態Sは、分析装置A1~A3の各構成部品についての情報を所定の順序で並べたベクトル情報と、各分析装置A1~A3の稼働スケジュールとの2種の情報を含む。ただし、スケジュール決定モデル12bへの入力に稼働スケジュールの情報を含まなくてもよい。この場合、本例のスケジュール決定モデル12bへは各構成部品についての情報を所定の順序で並べたベクトル情報が入力される。
【0065】
各構成部品についての情報には、各構成部品の製造者等により定められた交換又は点検等までの残日数と、各構成部品についての感度の限界値に対する比率(%)とが含まれる。なお本例では各構成部品の性能劣化の判断基準の指標として感度を用いるが、感度以外の情報を採用してもよい。各構成部品の感度の比率は、各構成部品を用いて測定される分析結果等の数値、又は、各構成部品の劣化程度を検知するセンサ等が出力する数値(感度)等を、各構成部品の製造者等により定められた交換又は点検等が必要と判断される限界値で割り算することで得られる比率を百分率で示したものであり、各構成部品の交換又は点検等の要否を判別し得る数値情報である。図示の例において入力情報の状態Sには、フィルタF11の残日数20日及び感度の比率80%と、フィルタF12の残日数12日及び感度の比率90%と、…、ポンプ33の残日数45日及び感度の比率20%とが含まれている。なおこれらの情報は、情報取得部11aが各分析装置A1~A3から直接的に取得する情報であってもよく、取得した情報に基づいて所定の演算等を施すことで得られる情報であってもよい。
【0066】
また本例で示すスケジュール決定モデル12bへ入力される各構成部品についての情報は一例であって、これに限るものではない。スケジュール決定モデル12bへの入力情報は、管理サーバ10が分析装置A1~A3から取得することができる種々の情報、例えば構成部品の故障に繋がる事象を示す警告情報、構成部品の検出感度若しくは性能に係る情報、又は、構成部品の品質寿命期限に係る情報の中から少なくとも1つの情報が採用される。いずれの情報を採用するかは、例えば分析装置A1~A3及びその構成部品の構造又は性能等に応じて予め決定される。
【0067】
また各分析装置A1~A3の稼働スケジュールは、例えば所定長(32ビット又は64ビット等)のビット列として表され、MSB(Most Significant Bit)側から順番に1日後、2日後、3日後…の稼働の有無が1(稼働)又は0(非稼働)の2値で格納されている。図示の例では、分析装置A1について1日後、4日後及び5日後に稼働し、分析装置A2について1日後、3日後、4日後及び6日後に稼働し、分析装置A3について3日後及び4日後に稼働することを示す稼働スケジュールが入力されている。ただし、スケジュール決定モデル12bは、稼働スケジュールの入力を受け付けず、構成部品に関する情報に基づいてメンテナンススケジュールを決定する構成であってもよい。
【0068】
スケジュール決定モデル12bが出力する行動Aは、分析装置A1~A3の各構成部品について交換又は点検等のためのメンテナンススケジュールである。例えばメンテナンススケジュールは、各構成部品について所定長(例えば32ビット又は64ビット等)のビット列として表され、MSB(Most Significant Bit)側から順番に1日後、2日後、3日後…のメンテナンス実施の有無が1(メンテナンス実施)又は0(メンテナンス非実施)の2値で格納されている。図示の例では、フィルタF11及びF12について3日後にメンテナンスを実施し、…、ポンプP33について5日後にメンテナンスを実施するメンテナンススケジュールが出力されている。なお構成部品のメンテナンスが必要ないと判断される場合には、スケジュール決定モデル12bは、ビット列の全てに0の値が格納されたメンテナンススケジュールを出力し得る。
【0069】
管理サーバ10のメンテナンススケジュール決定部11cは、情報取得部11aが取得した分析装置A1~A3に関する情報と、稼働スケジュール取得部11bが取得した分析装置A1~A3の稼働スケジュールとを基に、スケジュール決定モデル12bへ入力する情報(状態S)を生成する。メンテナンススケジュール決定部11cは、生成した情報をスケジュール決定モデル12bへ入力し、この入力に応じて出力される情報(行動A)を取得する。スケジュール決定モデル12bが出力する情報は、分析装置A1~A3の各構成部品のメンテナンススケジュールである。メンテナンススケジュール決定部11cは、取得した各構成部品のメンテナンススケジュールに基づいて、各分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを決定する。
【0070】
スケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3の各構成部品に関する情報及び稼働スケジュールに基づいて、各分析装置A1~A3の構成部品のメンテナンススケジュールを適切に決定するよう、予め強化学習がなされた学習済モデルである。例えばスケジュール決定モデル12bは、入力された稼働スケジュールを避けて、且つ、稼働日にはメンテナンスが完了しているように、メンテナンススケジュールを決定する。また例えばスケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3の稼働率をできるだけ高めるように、メンテナンススケジュールを決定する。また例えばスケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3のメンテナンスに係る回数、時間及び費用等の負担をできるだけ低減するように、メンテナンススケジュールを決定する。また例えばスケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3の不具合の発生頻度をできるだけ低減するように、メンテナンススケジュールを決定する。
【0071】
またスケジュール決定モデル12bは、管理サーバ10にて強化学習がなされた学習済モデルである。管理サーバ10の学習処理部11eは、状態S及び行動Aに対する報酬Rが設定された学習用データを用いて強化学習を行う。学習用データの報酬Rは、状態Sに対して優れた行動Aを行うものに対して高い値が設定される。本実施の形態において学習用データの報酬Rでは、状態Sとして入力される分析装置A1~A3に関する情報に対し、行動Aとして決定されるメンテナンススケジュールが効率的なものであるほど高い値が設定され、効率的でないものほど低い値が設定される。メンテナンススケジュールが効率的であるか否かについては、例えば分析装置A1~A3の稼働率、メンテナンスに係る負担又は分析装置の不具合の発生頻度等に基づいて判断される。この判断は、本システムの設計者等が行ってもよく、管理サーバ10等の装置が行ってもよい。
【0072】
学習用データは、予め作成されたものを使用してもよく、管理サーバ10が蓄積した情報に基づいて自ら作成してもよい。少なくとも最初の学習処理においては予め作成された学習用データが用いられ、この学習用データは例えばシミュレータを用いたシミュレーションの結果に基づいて作成され得る。2回目以降の学習処理(再学習処理)においては、管理サーバ10が決定したメンテナンススケジュールに従ってメンテナンスを行った結果をフィードバックして報酬Rが設定された学習用データを用いることが好ましい。この場合、管理サーバ10には、メンテナンスの結果に応じて報酬Rを算出する報酬算出部が備えられる。報酬算出部は、例えば分析装置A1~A3のメンテナンスの実施後の所定期間について、分析装置A1~A3の稼働実績に関する情報を収集する。報酬算出部は、例えば1ヶ月等の所定期間における分析装置A1~A3のメンテナンスに費やした費用及び時間等の情報を収集する。報酬算出部は、これらの収集した情報に基づいて、実施効率又はメンテナンス効率等の高いメンテナンススケジュールに対して高い報酬Rが設定されるように、学習用データの報酬Rを決定する。
【0073】
本実施の形態においては、管理サーバ10が分析装置A1~A3から蓄積した情報に基づいて、例えば1ヶ月毎に分析装置A1~A3の稼働率、メンテナンスの負担(回数、時間及び費用等)、又は、不具合の発生頻度等を算出して、これらの算出結果に応じて報酬Rを設定した学習用データを生成する。学習用データの生成は、管理サーバ10が行ってもよく、他の手段にて行われてもよい。本実施の形態においては、管理サーバ10の学習処理部11eが例えば1ヶ月毎に学習用データを生成し、生成した学習用データを用いてスケジュール決定モデル12bの強化学習を行うことによって、記憶部12に記憶されたスケジュール決定モデル12bを更新する。このときに学習処理部11eは、分析装置A1~A3の稼働率が高いほど高い報酬を与え、分析装置A1~A3のメンテナンスの負荷が低い場合に高い報酬を与え、不具合の発生頻度が低いほど高い報酬を与えるように、学習用データを生成する。
【0074】
例えば管理サーバ10は、全ての稼働スケジュールに対して分析装置A1~A3を問題なく稼働させることができた場合を稼働率100%として最高値の報酬R=100を与え、稼働スケジュールに対して分析装置A1~A3を稼働させることができなかった場合には、稼働できなかった比率に応じて報酬Rを減じることで、報酬Rを算出することができる。また例えば管理サーバ10は、1ヶ月間でメンテナンスに要した時間の合計を算出し、合計時間が閾値を超えなかった場合に最高値の報酬R=100を与え、合計時間が閾値を1時間超える毎に報酬を10減じることで報酬Rを算出することができる。また例えば管理サーバ10は、1ヶ月間でメンテナンスに要した費用の合計を算出し、メンテナンス費用が閾値を超えなかった場合に最高値の報酬R=100を与え、メンテナンス費用が閾値を10万円超える毎に報酬を10減じることで報酬Rを算出することができる。また例えば管理サーバ10は、不具合が全く発生していない場合に最高の報酬R=100を与え、不具合が発生する毎に報酬を10減じることで報酬Rを算出することができる。なおこれらの報酬Rの算出方法は一例であって、これに限るものではなく、これら以外の種々の方法で報酬Rを決定してよい。また上記の複数の算出方法を組み合わせて、報酬Rを決定してもよい。
【0075】
学習処理部11eは、学習用データの状態S及び行動Aに対して設定された報酬Rが最大となるように、スケジュール決定モデル12bのニューラルネットワークを構成する各ニューロンの係数及び閾値等を決定する。学習処理部11eが行う強化学習には、例えばDQNのアルゴリズムを採用することができる。
【0076】
なお本実施の形態においてスケジュール決定モデル12bは強化学習により予め学習がなされたものとするが、学習の方法は強化学習に限らない。例えば入力値及び出力値が対応付けられた教師データを用いる教師あり学習、又は、教師データを用いない教師なし学習等の学習方法によりスケジュール決定モデル12bの学習を行ってもよい。強化学習を行う場合についても、本実施の形態においてはDQNの手法を採用するものとしたが、これに限るものではなく、DQN以外の手法を採用してもよい。
【0077】
<情報表示処理>
本実施の形態に係る管理サーバ10は、分析装置A1~A3から取得した情報を適宜に加工して表示部14に表示することができる。以下に、いくつかの表示画面の例を示す。
図4は、管理サーバ10による分析結果の表示画面の一例を示す模式図である。管理サーバ10は、分析装置A1~A3から取得した自動車の排気ガスに含まれる成分の分析結果を、試験の実行中にリアルタイムで又は試験の完了後に表示することができる。本例の分析結果の表示画面では、この画面が分析結果の表示画面であることを示す「分析結果」のタイトル101aが最上部に表示され、この下方に「分析装置A1」、「分析装置A2」及び「分析装置A3」の3つの分析装置A1~A3のラベル101bが水平方向に並べて表示されている。各ラベル101bの下方には各分析装置A1~A3の分析結果を表示する領域101cが設けられており、各領域101cには分析結果として排気ガスに含まれる成分の名称及び含有量を示す数値の組が、垂直方向に並べて表示されている。また分析結果の表示領域101cの下方には、各分析装置A1~A3の操作を行うためのアイコンが並べられた領域101dがそれぞれ設けられている。分析結果の表示画面の最下部には、分析結果の表示画面に関する設定操作又はこの画面から他の画面への切替操作等を行うためのアイコンが並べられた領域101eが設けられている。管理サーバ10を使用する管理者は、分析結果の表示画面に基づいて、各分析装置A1~A3にて行われた分析結果の確認及び検証等を行うことができる。
【0078】
図5は、管理サーバ10によるアラート通知画面の一例を示す模式図である。管理サーバ10は、分析装置A1~A3から故障又は異常等に関する情報を取得した場合に、これを管理者へ通知すべく、表示部14にてアラート通知を行う。本例のアラート通知の画面では、この画面がアラート通知画面であることを示す「アラート通知」のタイトル102aが最上部に表示される。タイトル102aの下方には、右側寄りに対象装置を選択する選択領域102bが設けられ、左側寄りにアラート内容を表示するアラート領域102cが設けられている。選択領域102bには、管理サーバ10が故障又は異常等に関する情報を取得した分析装置A1~A3及びダイナモメータD1~D3の名称が一覧表示され、管理者はこれらの中からアラート内容を確認する対象装置を1つ選択することができる。図示の例では分析装置A1が選択されており、選択された分析装置A1が強調表示されている。
【0079】
アラート領域102cには、選択された分析装置A1に関するアラートの情報が表示される。アラート領域102cの上部には「アラート」及び「ユニット」のラベルが付され、「アラート」ラベルの下方にアラートの内容が表示され、「ユニット」ラベルの下方にはアラート内容に対応するユニット(構成部品)の名称が表示される。本例では、アラートの内容として「冷却ファン停止」が表示され、対応するユニットとして「ファンB2」が表示されている。アラート通知画面の最下部には、アラート通知画面に関する設定操作又はこの画面から他の画面への切替操作等を行うためのアイコンが並べられた領域102dが設けられている。管理サーバ10を使用する管理者は、アラート通知画面に基づいて、各分析装置A1~A3について故障又は異常等の有無、及び、故障又は異常等の内容を確認することができる。
【0080】
図6は、管理サーバ10による期限通知画面の一例を示す模式図である。管理サーバ10は、分析装置A1~A3から取得した情報に基づいて、分析装置A1~A3が備える構成部品のうち、交換又は検査等を行う必要がある期限を超過したものに関する情報を、期限通知画面にて通知する。本例の期限通知画面では、この画面が期限通知画面であることを示す「期限通知」のタイトル103aが最上部に表示される。タイトル103aの下方には、右側寄りに対象装置を選択する選択領域103bが設けられ、左側寄りに期限切れに関する情報を表示する通知領域103cが設けられている。選択領域103bには、期限を超過した構成部品を有する分析装置A1~A3及びダイナモメータD1~D3の名称が一覧表示され、管理者はこれらの中から通知内容を確認する対象装置を1つ選択することができる。図示の例では分析装置A1が選択されており、選択された分析装置A1が強調表示されている。
【0081】
通知領域103cには、選択された分析装置A1の構成部品の期限超過に関する情報が表示される。通知領域103cの上部には「ユニット」及び「状態」のラベルが付され、「ユニット」ラベルの下方に期限超過したユニット(構成部品)の名称が表示され、「状態」ラベルの下方にはユニットに対応する期限超過の状態が表示される。本例では、ユニットとして「フィルタF11」が表示され、状態として「期限超過3時間」であることが示されている。また本例では、ユニットとして「フィルタF12」が表示され、状態として期限切れまで「残り3日」であることが示されている。期限通知画面の最下部には、期限通知画面に関する設定操作又はこの画面から他の画面への切替操作等を行うためのアイコンが並べられた領域103dが設けられている。管理サーバ10を使用する管理者は、期限通知画面に基づいて、各分析装置A1~A3の構成部品について交換又は検査等の期限を超過したものが存在するか否か、及び、どの程度期限を超過しているか等を確認することができる。
【0082】
図7は、管理サーバ10による感度履歴画面の一例を示す模式図である。管理サーバ10は、分析装置A1~A3の排気ガス分析の感度として、例えば分析ユニットのゼロ点の感度の変化を表示することができる。本例の感度履歴画面では、この画面が感度履歴画面であることを示す「感度履歴」のタイトル104aが最上部に表示される。タイトル104aの下方には、右側寄りに対象装置を選択するプルダウンメニュー104bが設けられ、左側寄りに分析対象のガスを選択するプルダウンメニュー104cが設けられている。本例では、分析装置A1のCH4を分析するユニットが選択されている。
【0083】
2つのプルダウンメニュー104b,104cの下方にはグラフ表示領域104dが設けられている。グラフ表示領域104dには、横軸を時間とし、縦軸をゼロ点に対するずれ量とするグラフが表示される。このグラフには、一点鎖線で示す第1閾値と、二点鎖線で示す第2閾値とが表示される。例えば、ゼロ点に対するずれ量が第1閾値を超えた場合にメンテナンスを促すアラート表示が行われ、第2閾値を超えた場合には分析を行うことが禁止される。グラフ表示領域104dの下方には、アラート表示領域104eが設けられており、ゼロ点に対するずれ量が第1閾値又は第2閾値を超えた場合等にメッセージ表示が行われる。感度履歴画面の最下部には、感度履歴画面に関する設定操作又はこの画面から他の画面への切替操作等を行うためのアイコンが並べられた領域104fが設けられている。管理サーバ10を使用する管理者は、感度履歴画面に基づいて、各分析装置A1~A3の感度低下の有無等を確認することができる。
【0084】
図8は、管理サーバ10によるメンテナンススケジュール表示画面の一例を示す模式図である。管理サーバ10は、スケジュール決定モデル12bを利用してメンテナンススケジュール決定部11cが決定した分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを、メンテナンススケジュール表示画面にて表示する。本例のメンテナンススケジュール表示画面では、この画面がメンテナンススケジュール表示画面であることを示す「メンテナンススケジュール」のタイトル105aが最上部に表示される。タイトル105aの下方には、メンテナンススケジュール表示領域105bが設けられている。
【0085】
メンテナンススケジュール表示領域105bの上部には、「日付」、「装置」及び「構成部品」のラベルが水平方向に並べて表示されている。この3つのラベルの下方に、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールが一覧表示される。なお本画面で表示されるメンテナンススケジュールは、管理サーバ10が推奨するメンテナンススケジュールであり、このスケジュールにてメンテナンスを行うか否かは管理者の判断にゆだねられる。本例では、2019年3月25日に分析装置A1のフィルタF11,F12,F13のメンテナンスが推奨され、同日に分析装置A2のポンプP21,P22,P23のメンテナンスが推奨されている。また2019年4月8日に分析装置A3のフィルタF31,F32,F33のメンテナンスが推奨されている。メンテナンススケジュール表示画面の最下部には、メンテナンススケジュール表示画面に関する設定操作又はこの画面から他の画面への切替操作等を行うためのアイコンが並べられた領域105cが設けられている。管理サーバ10を使用する管理者は、メンテナンススケジュール表示画面に基づいて、各分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを検討することができる。
【0086】
図9は、管理サーバ10によるメンテナンススケジュール表示画面の別の例を示す模式図である。管理サーバ10は、
図8に示したメンテナンススケジュール表示画面に代えて、
図9に示すメンテナンススケジュール表示画面を表示部14に表示してもよい。
図9に示すメンテナンススケジュール表示画面では、この画面がメンテナンススケジュール表示画面であることを示す「メンテナンススケジュール」のタイトル106aが最上部に表示される。タイトル106aの下方には、複数のメンテナンススケジュールの候補を切り替えて表示するためのタブ106bが設けられている。本例において管理サーバ10のスケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールについて複数の候補を出力することができるものとする。管理サーバ10は、スケジュール決定モデル12bが出力した複数のメンテナンススケジュールから例えば評価値等の高低に応じて3つの候補を抽出し、「候補1」、「候補2」及び「候補3」のタブに対応付けてメンテナンススケジュールを表示する。管理者は、タブ106bのいずれか1つを選択することにより、対応するメンテナンススケジュールを確認することができる。
【0087】
メンテナンススケジュール表示画面において、タブ106bの下方には、メンテナンススケジュール表示領域106cが設けられている。メンテナンススケジュール表示領域106cには、タブ106bにて選択された候補のメンテナンススケジュールが表示される。またメンテナンススケジュール表示領域106cの上部には、「日付」、「装置」、「構成部品」、「期限」及び「感度」等のラベルが水平方向に並べて表示されている。この5つのラベルの下方に、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールが一覧表示される。「日付」、「装置」及び「構成部品」については
図8に示すメンテナンススケジュール表示画面のものと同じであるが、
図9に示すメンテナンススケジュール表示画面では各構成部品について「期限」及び「感度」の情報が個別に表示される。「期限」のラベルに対しては、決定されたメンテナンスの日付に対して、構成部品の期限までの残日数の情報が表示される。「感度」のラベルに対しては、構成部品についての感度の限界値に対する比率(%)の情報が表示され、この情報はメンテナンスの日付に対して予測される感度を基に算出される。
【0088】
本例では、2019年3月25日に分析装置A1のフィルタF11,F12,F13のメンテナンスが推奨されている。メンテナンス日である3月25日におけるフィルタF11の期限は残り3日であり、感度は80%に達すると予測されている。またフィルタF12の期限は残り1日であり、感度は95%に達すると予測されている。フィルタF13の期限は残り7日であり、感度は70%に達すると予測されている。また本例では、2019年3月25日に分析装置A2のポンプP21,P22,P23のメンテナンスが推奨されている。メンテナンス日である3月25日におけるポンプP21の期限は残り1日であり、感度は95%に達すると予測されている。またポンプP22の期限は残り1日であり、感度は90%に達すると予測されている。ポンプP23の期限は残り6日であり、感度は75%に達すると予測されている。
【0089】
メンテナンススケジュール表示画面の最下部には、メンテナンススケジュール表示画面に関する設定操作又はこの画面から他の画面への切替操作等を行うためのアイコンが並べられた領域106dが設けられている。管理サーバ10を使用する管理者は、タブ106bに対する選択操作を行うことによって、メンテナンススケジュールの複数の候補を切り替えて表示し、各分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを検討することができる。
【0090】
なお、
図4~
図9に示した画面表示は、一例であって、これに限るものではない。管理サーバ10は、例示した画面以外に、種々の情報を通知する種々の画面を表示部14に表示してよい。
【0091】
<フローチャート>
図10は、本実施の形態に係る管理サーバ10が行うメンテナンススケジュール決定処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る管理サーバ10の処理部11の情報取得部11aは、通信部13にて分析装置A1~A3との通信を行い、分析装置A1~A3の構成部品についての所定の情報を取得する(ステップS1)。このときに取得する情報は、各構成部品のメンテナンスの期日を決定し得る情報であり、例えば構成部品の交換等の期限、又は、構成部品の感度若しくは劣化度等を示す情報とすることができる。
【0092】
また処理部11の稼働スケジュール取得部11bは、分析装置A1~A3について定められている稼働スケジュールの情報を取得する(ステップS2)。このときに稼働スケジュール取得部11bは、あらかじめ入力された稼働スケジュールのデータを読み出すことで稼働スケジュールを取得してもよく、又は、入力部15を介して管理者から入力される稼働スケジュールを取得してもよい。ただし、管理サーバ10は稼働スケジュールを考慮したメンテナンススケジュールの決定を行わなくてよく、この場合には本フローチャートのステップS2における稼働スケジュールの取得は行われなくてよい。稼働スケジュールの取得及び稼働スケジュールを考慮したメンテナンススケジュールの決定は、管理サーバ10が行う必須の処理ではなく、オプション的な処理であってよい。
【0093】
次いで処理部11のメンテナンススケジュール決定部11cは、記憶部12に記憶されたスケジュール決定モデル12bを読み出す(ステップS3)。メンテナンススケジュール決定部11cは、ステップS1にて取得した情報及びステップS2にて取得した稼働スケジュールに基づいて、スケジュール決定モデル12bへ入力する情報を生成し、生成した情報をスケジュール決定モデル12bへ入力する(ステップS4)。このときにメンテナンススケジュール決定部11cは、取得した情報及び稼働スケジュールに基づいて、
図3に状態Sとして示した形式の入力情報を生成する。
【0094】
次いでメンテナンススケジュール決定部11cは、スケジュール決定モデル12bが出力する情報を取得する(ステップS5)。ここでスケジュール決定モデル12bから出力される情報は、
図3に行動Aとして示した形式の情報であり、分析装置A1~A3の構成部品についてのメンテナンススケジュールを示している。処理部11の表示処理部11dは、ステップS5にて取得したメンテナンススケジュールを、例えば
図8に示した表示態様で表示部14に表示し(ステップS6)、処理を終了する。
【0095】
図11は、本実施の形態に係る管理サーバ10が行うスケジュール決定モデル12bの学習処理の手順を示すフローチャートである。本実施の形態に係る管理サーバ10の処理部11の情報取得部11aは、周期的に分析装置A1~A3からの情報を取得している(ステップS21)。情報取得部11aは、取得した情報を記憶部12に記憶する(ステップS22)。管理サーバ10は、例えば1ヶ月に1回の所定タイミングでスケジュール決定モデル12bの再学習を行っている。処理部11は、スケジュール決定モデル12bの再学習を実施するタイミングに至ったか否かを判定する(ステップS23)。再学習のタイミングに至っていない場合(S23:NO)、処理部11は、ステップS21へ処理を戻し、分析装置A1~A3の情報の取得及び記憶を繰り返し行う。
【0096】
再学習のタイミングに至った場合(S23:YES)、処理部11の学習処理部11eは、前回の学習処理の実施以降に記憶部12に記憶して蓄積された分析装置A1~A3に関する情報を読み出す(ステップS24)。学習処理部11eは、ステップS24にて読み出した情報に基づいて、状態Q及び行動Aに対する報酬Rを決定し、これらの組である学習用データを生成する(ステップS25)。学習処理部11eは、記憶部12に記憶されたスケジュール決定モデル12bを読み出す(ステップS26)。学習処理部11eは、ステップS26にて読み出したスケジュール決定モデル12bに対し、ステップS25にて生成した学習用データを用いて強化学習の学習処理を行う(ステップS27)。学習処理部11eは、強化学習を終えたスケジュール決定モデル12bを記憶部12に記憶して(ステップS28)、処理を終了する。
【0097】
<まとめ>
以上の構成の本実施の形態に係る分析装置の管理システムでは、自動車等の車両又はこの車両の一部である供試体に係る分析を行う分析装置A1~A3が有する種々の構成部品に関するメンテナンススケジュールを、予め学習されたスケジュール決定モデル12bを利用して管理サーバ10が決定する。スケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3の構成部品に係る情報を入力として受け付け、構成部品のメンテナンススケジュールを出力するように予め学習がなされた学習済モデルである。またスケジュール決定モデル12bは、メンテナンススケジュールに係る報酬が多く得られるように予め学習がなされる。管理サーバ10は、分析装置A1~A3から構成部品に係る情報を取得し、取得した情報をスケジュール決定モデル12bへ入力することにより、構成部品のメンテナンススケジュールを決定することができる。強化学習等により適切に学習がなされたスケジュール決定モデル12bを用いてメンテナンススケジュールを決定することによって、分析装置A1~A3の効率的なメンテナンスが期待できる。
【0098】
また本実施の形態においては、分析装置A1~A3の構成部品に係る情報として、として例えば故障に繋がる警告情報、前記構成部品の感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の寿命期限に係る情報等の少なくとも1つの情報を管理サーバ10が取得する。これにより、分析装置A1~A3の構成部品のメンテナンスの要否を精度よく判断することが可能となる。
【0099】
また本実施の形態においては、スケジュール決定モデル12bが複数の分析装置A1~A3の構成部品に係る情報を入力として受け付け、複数の分析装置A1~A3の構成部品についてのメンテナンススケジュールを出力する。複数の分析装置A1~A3からそれぞれ情報を取得してスケジュール決定モデル12bへ入力することにより、管理サーバ10は、複数の分析装置A1~A3の構成部品についてメンテナンススケジュールを決定することができる。
【0100】
また本実施の形態においては、分析装置A1~A3の稼働率が高い場合に高い報酬を与える強化学習を行うことにより、メンテナンススケジュールを決定するスケジュール決定モデル12bを生成する。これにより、分析装置A1~A3の稼働率が高くなるようにメンテナンススケジュールが決定され、効率的なメンテナンスが実現できる。
【0101】
また本実施の形態においては、分析装置のメンテナンスに係る負荷(例えばメンテナンスの回数、時間又は費用等)が低い場合に高い報酬を与える強化学習を行うことにより、メンテナンススケジュールを決定するスケジュール決定モデル12bを生成する。これにより、分析装置A1~A3のメンテナンスに係る負荷が低くなるようにメンテナンススケジュールが決定され、効率的なメンテナンスが実現できる。
【0102】
また本実施の形態においては、分析装置A1~A3の不具合の発生頻度が低い場合に高い報酬を与える強化学習を行うことにより、メンテナンススケジュールを決定するスケジュール決定モデル12bを生成する。これにより、分析装置A1~A3の不具合の発生を抑えるようにメンテナンススケジュールが決定され、分析装置A1~A3を効率的に利用することができる。
【0103】
また本実施の形態においては、分析装置A1~A3の稼働スケジュールをスケジュール決定モデル12bが更に入力として受け付け、稼働スケジュールに応じたメンテナンススケジュールを決定する。これにより例えばスケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3を稼働させる必要がある期間を避けてメンテナンススケジュールを決定することができ、分析装置A1~A3の効率的なメンテナンスが実現できる。
【0104】
また本実施の形態においては、分析装置A1~A3の構成部品に係る情報を入力として受け付け且つ構成部品のメンテナンススケジュールを出力する学習モデルに対し、分析装置A1~A3の稼働率、分析装置A1~A3のメンテナンスに係る負荷、又は、分析装置A1~A3の不具合の発生頻度等に応じた報酬を与える強化学習を行って学習済のスケジュール決定モデル12bを生成する。これによりスケジュール決定モデル12bは、分析装置A1~A3の稼働率、メンテナンスに係る負荷又は分析装置A1~A3の不具合等を考慮したメンテナンススケジュールを決定することができ、効率的なメンテナンスが実現できる。
【0105】
なお本実施の形態においては、管理サーバ10の管理対象となる分析装置を、分析装置A1~A3の3つとしたが、これに限るものではなく、管理対象緒分析装置は2つ以下又は4つ以上であってよい。また
図4~
図9に示した画面表示は、一例であってこれに限るものではなく、管理サーバ10はどのような画面表示を行ってもよい。また分析装置A1~A3の構成部品としてフィルタ及びポンプを挙げたが、構成部品はこれら以外のどのようなものであってもよい。分析装置A1~A3の構成部品のメンテナンスは、交換に限らず、調整及び校正等の作業を含み得る。
【0106】
<実施の形態2>
実施の形態2に係る管理サーバ10は、スケジュール決定モデル12bを用いたスケジュールの決定を行うのではなく、予め定められた規則に従ってスケジュールを決定する。実施の形態2に係る管理サーバ10は、
図2に示したブロック図において、記憶部12のスケジュール決定モデル12bと、処理部11の学習処理部11eを備えていない。以下、実施の形態2に係る管理サーバ10のメンテナンススケジュール決定部11cによるメンテナンススケジュールの決定方法を説明する。
【0107】
実施の形態2に係る管理サーバ10のメンテナンススケジュール決定部11cは、情報取得部11aが取得した分析装置A1~A3に関する情報に基づいて、分析装置A1~A3の各構成部品についてのメンテナンス期日を決定する。このときにメンテナンススケジュール決定部11cは、例えば構成部品に使用時間の上限が定められている場合、構成部品の使用時間の情報を取得して上限と比較することによりメンテナンスの期日を判断することができる。また例えば構成部品の性能等の劣化に応じてメンテナンスが行われる場合、メンテナンススケジュール決定部11cは、構成部品の性能を示す感度等の情報を取得し、性能劣化の判断基準となる閾値との比較を行うことによりメンテナンスの期日を判断することができる。なおこれらのメンテナンス期日の判断方法は一例であって、これに限るものではない。
【0108】
図12は、構成部品毎のメンテナンス期日の一例を示す模式図である。図示の例では、分析装置A1のフィルタF11及び分析装置A2のフィルタF22のメンテナンス期日が2019年4月1日と決定されている。また、分析装置A2のフィルタF21のメンテナンス期日は2019年4月8日と決定され、分析装置A3のフィルタF31のメンテナンス期日は2019年4月15日と決定されている。分析装置A3のポンプP31のメンテナンス期日は2019年4月22日と決定され、分析装置A1のポンプP11のメンテナンス期日は2019年4月29日と決定され、分析装置A3のポンプP33のメンテナンス期日は2019年5月6日と決定されている。分析装置A3のフィルタF33のメンテナンス期日は2019年5月13日と決定され、分析装置A1のポンプP12のメンテナンス期日は2019年5月20日と決定されている。
【0109】
次いでメンテナンススケジュール決定部11cは、分析装置A1~A3毎にメンテナンス日が同じ日となるように、メンテナンス期日の差が所定期間(例えば2ヶ月)以内の構成部品について、メンテナンス期日が最も早い構成部品に合せてメンテナンス日をまとめる。
図13は、分析装置毎にまとめたメンテナンススケジュールの一例を示す模式図であり、
図12に示したメンテナンス期日に基づいて分析装置A1~A3毎のメンテナンススケジュールを決定した例を示している。
図12によれば分析装置A1の構成部品の中でメンテナンス期日が最も早いのはフィルタF11であるため、メンテナンススケジュール決定部11cは、フィルタF11のメンテナンス期日である2019年4月1日から2ヶ月以内にメンテナンス期日に達する構成部品のポンプP11,P12をフィルタF11と同じ日にメンテナンスを行うよう、分析装置A1のフィルタF11及びポンプP11,P12のメンテナンスス日を2019年4月1日に決定する。
【0110】
同様に分析装置A2の構成部品の中でメンテナンス期日が最も早いのはフィルタF22であるため、メンテナンススケジュール決定部11cは、フィルタF22のメンテナンス期日である2019年4月1日から2ヶ月以内にメンテナンス期日に達する構成部品のフィルタF21をフィルタF22と同じ日にメンテナンスを行うよう、分析装置A2のフィルタF21,F22のメンテナンスス日を2019年4月1日に決定する。同様に分析装置A3の構成部品の中でメンテナンス期日が最も早いのはフィルタF31であるため、メンテナンススケジュール決定部11cは、フィルタF31のメンテナンス期日である2019年4月15日から2ヶ月以内にメンテナンス期日に達する構成部品のフィルタF33及びポンプP31,P33をフィルタF31と同じ日にメンテナンスを行うよう、分析装置A3のフィルタF31,F33及びポンプP31,P33のメンテナンスス日を2019年4月15日に決定する。
【0111】
次いでメンテナンススケジュール決定部11cは、稼働スケジュール取得部11bが取得した分析装置A1~A3の稼働スケジュールに基づいて、メンテナンススケジュールを調整する。
図14は、分析装置A1~A3の稼働スケジュールの一例を示す模式図である。本例では、2019年3月25日に分析装置A3を稼働させ、2019年4月1日に分析装置A1,A2を稼働させ、2019年4月8日に分析装置A1,A2を稼働させ、2019年4月15日に分析装置A3を稼働させる予定が定められている。
【0112】
図15は、稼働スケジュールを考慮したメンテナンススケジュールの一例を示す模式図である。メンテナンススケジュール決定部11cは、2019年4月1日に分析装置A1,A2を稼働させる必要があることから、2019年4月1日の分析装置A1,A2のメンテナンスをこの日以前の2019年3月25日に変更する。同様に、メンテナンススケジュール決定部11cは、2019年4月15日に分析装置A3を稼働させる必要があることから、2019年4月15日の分析装置A3のメンテナンスをこの日以前の2019年4月8日に変更する。なお本例では、稼働スケジュールに重なったメンテナンスについて、余裕を見て1週間前を新たなメンテナンス日としているが、1日前等を新たなメンテナンス日としてもよい。
【0113】
なお実施の形態2に係る管理サーバ10は、稼働スケジュールを考慮したメンテナンススケジュールの調整を行わなくてもよい。この場合には、
図13に示したメンテナンススケジュールが管理サーバ10により決定されたメンテナンススケジュールとして表示される。
【0114】
図16は、実施の形態2に係る管理サーバ10が行うメンテナンススケジュール決定処理の手順を示すフローチャートである。実施の形態2に係る管理サーバ10の処理部11の情報取得部11aは、通信部13にて分析装置A1~A3との通信を行い、分析装置A1~A3の構成部品についての所定の情報を取得する(ステップS41)。このときに取得する情報は、各構成部品のメンテナンスの期日を決定し得る情報であり、例えば構成部品の交換等の期限、又は、構成部品の感度若しくは劣化度等を示す情報とすることができる。処理部11のメンテナンススケジュール決定部11cは、取得した種々の情報に基づいて、分析装置A1~A3の構成部品毎のメンテナンス期日を決定する(ステップS42)。メンテナンススケジュール決定部11cは、分析装置A1~A3毎に、メンテナンス期日の差が所定期間内の複数の構成部品について、最もメンテナンス期日が早い構成部品に合せて、メンテナンス日をまとめる(ステップS43)。
【0115】
次いで処理部11の稼働スケジュール取得部11bは、分析装置A1~A3について定められている稼働スケジュールの情報を取得する(ステップS44)。メンテナンススケジュール決定部11cは、取得した稼働スケジュールに基づき、分析装置A1~A3の稼働日を避けるように、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを変更し(ステップS45)、処理を終了する。なお管理サーバ10は、本フローチャートにおけるステップS44の稼働スケジュールの情報を取得する処理と、ステップS45の稼働スケジュールに基づくメンテナンススケジュールを変更する処理とを行わなくてもよい。この場合に管理サーバ10は、ステップS43の処理を終えた後でメンテナンススケジュール決定処理を終えてよく、ステップS43において複数の構成部品のメンテナンス日をまとめたメンテナンススケジュールを処理結果として出力する。実施の形態2に係る管理サーバ10による稼働スケジュールを考慮したメンテナンススケジュールの決定は、オプション的な処理である。
【0116】
以上の構成の実施の形態2に係る管理サーバ10は、自動車に係る分析を行う複数の分析装置A1~A3から複数の構成部品に係る情報を取得し、構成部品毎のメンテナンス期日を決定する。管理サーバ10は、決定した構成部品毎のメンテナンス期日に基づいて、分析装置A1~A3毎のメンテナンススケジュールを決定する。これにより管理サーバ10は、各分析装置A1~A3が有する複数の構成部品のメンテナンス期日を考慮して、複数の分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを決定することができ、複数の分析装置A1~A3の効率的なメンテナンスが期待できる。
【0117】
また実施の形態2に係る管理サーバ10は、分析装置A1~A3の稼働スケジュールを取得し、分析装置A1~A3の稼働日を避けて、分析装置A1~A3のメンテナンススケジュールを決定する。これにより、分析装置A1~A3が稼働しない期間にメンテナンスを行い、稼働する必要がある期間に分析装置A1~A3を確実に稼働させることができる。
【0118】
なお実施の形態2において
図12~
図15に示したメンテナンススケジュール及び稼働スケジュール等は、一例であってこれに限るものではない。また実施の形態2に係る管理サーバ10は、分析装置A1~A3毎にメンテナンススケジュールをまとめているが、これに限るものではなく、例えば建屋1~3毎にメンテナンススケジュールをまとめてもよい。
【0119】
なお、実施の形態2に係る管理システムのその他の構成は、実施の形態1に係る管理システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0120】
<実施の形態3>
実施の形態3に係る管理システムは、管理サーバ10が決定したメンテナンススケジュールに関する情報を、予め定められた管理者の端末装置へ送信することによって通知を行う。端末装置は、例えばスマートフォン、タブレット型端末装置又はPC(パーソナルコンピュータ)等の種々の情報処理装置であってよい。管理サーバ10は、例えば携帯電話通信網又は無線LAN(Local Area Network)等の無線通信を利用して、可搬型の端末装置への通知を行うことができる。
【0121】
管理サーバ10は、例えば通知先となる管理者の端末装置の識別情報、又は、管理者のメールアドレス若しくは電話番号等の情報をデータベースに記憶している。通知先は、1人であってもよく、複数であってもよい。また分析装置毎又は建屋毎等に通知先が異なっていてもよい。管理サーバ10は、スケジュールの決定を行った後、データベース登録された通知先へ決定したメンテナンススケジュールに関する情報を送信することで、管理者等に通知を行う。
【0122】
また管理サーバ10は、メンテナンススケジュール以外にも、例えば分析装置の異常を検出した場合、又は、分析装置の構成部品の交換時期が迫っている場合等に、管理者等の端末装置へ通知を行ってよい。
【0123】
なお、実施の形態3に係る管理システムのその他の構成は、実施の形態1に係る管理システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0124】
<実施の形態4>
上述の実施の形態1~3においては、分析装置のメンテナンススケジュールを管理する管理システムについて説明したが、管理システムの管理対象は分析装置のみでなく、分析装置と共に使用される周辺の様々な装置、分析装置による分析を支援する様々な関連装置が管理対象に含まれていてよい。
【0125】
実施の形態4に係る車両試験設備の管理システムは、分析装置と、この分析装置と共に用いられる自動運転装置及びダイナモメータ等の車両試験設備(関連装置)とを含む分析システムのメンテナンススケジュールを管理する。管理対象となる分析システムは複数であってよい。実施の形態4に係る管理サーバ10は、分析システムに含まれる分析装置から構成部品に関する情報を取得すると共に、自動運転装置及びダイナモメータ等の車両試験設備から構成部品に関する情報を取得する。管理サーバ10は、自動運転装置及びダイナモメータ等の車両試験設備から、例えば構成部品の故障に繋がる事象を示す警告情報、前記構成部品の検出感度若しくは性能に係る情報、又は、前記構成部品の品質寿命期限に係る情報等を、構成部品に関する情報として取得する。また管理サーバ10は、自動運転装置及びダイナモメータ等の車両試験設備から、例えば定期的な交換が必要な構成部品について、メンテナンスの期日を判断し得る情報を取得する。
【0126】
管理サーバ10は、取得したこれらの情報に基づいて、自動運転装置及びダイナモメータ等の車両試験設備を含む分析システムの異常の有無の判断、及び、分析システムに含まれるこれらの装置の構成部品の交換時期の判断等を行うことができる。管理サーバ10は、例えば
図5に示したアラート通知画面、又は、
図6に示した期限通知画面において、自動運転装置及びダイナモメータ等の車両試験設備に関する通知を行うことができる。
【0127】
また実施の形態4に係る管理サーバ10は、取得したこれらの情報に基づいて、分析装置、並びに、自動運転装置及びダイナモメータ等の車両試験設備を含む分析システムのメンテナンススケジュールを決定する。管理サーバ10は、分析システムの稼働率をできるだけ高めるように、分析システムのメンテナンスに係る回数、時間及び費用等の負担をできるだけ低減するように、又は、分析システムの不具合の発生頻度をできるだけ低減するように、メンテナンススケジュールを決定する。管理サーバ10によるメンテナンススケジュールの決定方法は、実施の形態1にて説明したスケジュール決定モデル12bを用いる方法、又は、実施の形態2にて説明した所定の規則に従ってスケジュールを決定する方法のいずれが採用されてもよい。
【0128】
管理サーバ10は、決定した分析システムのメンテナンススケジュールを、例えば
図8又は
図9に示したメンテナンススケジュール表示画面に表示する。メンテナンススケジュール表示画面において管理サーバ10は、分析装置のメンテナンススケジュール、自動運転装置のメンテナンススケジュール、及び、ダイナモメータのメンテナンススケジュール等を表示する。
【0129】
なお、実施の形態4に係る管理システムのその他の構成は、実施の形態1に係る管理システムと同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0130】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0131】
1~3 建屋
10 管理サーバ
11 処理部
11a 情報取得部(取得部)
11b 稼働スケジュール取得部
11c メンテナンススケジュール決定部(決定部)
11d 表示処理部
11e 学習処理部
12 記憶部
12a サーバプログラム(コンピュータプログラム)
12b スケジュール決定モデル(学習済モデル)
13 通信部
14 表示部
15 入力部
99 記録媒体
A1~A3 分析装置
F11~F13,F21~F23,F31~F33 フィルタ(構成部品)
P11~P13,P21~P23,P31~P33 ポンプ(構成部品)