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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】黄色顔料組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20240910BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20240910BHJP
   C08K 7/14 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240910BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08L23/08
C08K3/22
C08K7/14
C08L77/00
C08L101/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021560081
(86)(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-24
(86)【国際出願番号】 EP2020059900
(87)【国際公開番号】W WO2020208021
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2023-03-30
(31)【優先権主張番号】19168703.7
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(72)【発明者】
【氏名】シュピース,パトリク
(72)【発明者】
【氏名】エルトマン,トルシュテン
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-124799(JP,A)
【文献】特開2000-327794(JP,A)
【文献】特開平10-114864(JP,A)
【文献】特表2018-538414(JP,A)
【文献】米国特許第06464772(US,B1)
【文献】米国特許第06458197(US,B1)
【文献】特開昭63-008458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン、C 1~6 -アルキルアクリレート、アクリル酸及び無水マレイン酸のコポリマーに分散されたバナジン酸ビスマス顔料を含む顔料組成物であって、
成分C1として、5~60質量%のバナジン酸ビスマス、
成分C2として、5~60質量%のエチレン、C 1~6 -アルキルアクリレート、アクリル酸及び無水マレイン酸のコポリマー
成分C3として、10~70質量%の、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレンとコモノマーとしての少なくとも1つのC3~12-オレフィンとの、成分C2とは異なるコポリマー、
成分C4として、0~10質量%のさらなる成分、
を含み、
成分C1~C4の総量が100質量%である、顔料組成物。
【請求項2】
前記C 1~6 -アルキルアクリレートが、n-ブチルアクリレートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、ホウ酸を含まない、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の顔料組成物を、着色剤として熱可塑性ポリマー組成物に使用する方法。
【請求項5】
熱可塑性ポリマー及び請求項1から3のいずれか一項に記載の顔料組成物を、熱可塑性成形組成物のバナジン酸ビスマス含有量が0.1~2.0質量%の範囲となる量で含む、熱可塑性成形組成物。
【請求項6】
成分Aとして、30~95質量%の少なくとも1種のポリアミド又はコポリアミド、
成分Bとして、0~50質量%のガラス繊維、
成分Cとして、0.2~7質量%の請求項1から3のいずれか一項に記載の顔料組成物、
成分Dとして、0~2質量%の少なくとも1種の有機顔料、
成分Eとして、0~50質量%のさらなる添加剤
を含む熱可塑性成形組成物であって、
成分A~Eの総量が100質量%である、熱可塑性成形組成物。
【請求項7】
0.1~2.0質量%の範囲の、前記熱可塑性成形組成物のバナジン酸ビスマス含有量を有する、請求項6に記載の成形組成物。
【請求項8】
前記組成物が、成分Dとして、0.1~2.0質量%の少なくとも1種の黄色有機顔料を含む、請求項6又は7に記載の成形組成物。
【請求項9】
組成物の成分を混合することを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の顔料組成物、又は請求項5から8のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物を調製する方法。
【請求項10】
請求項5から8のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物を、繊維、ホイル又は成形品の製造に使用する方法。
【請求項11】
請求項5から8のいずれか一項に記載の熱可塑性成形組成物で作られた成形品、繊維又はホイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄色顔料組成物、熱可塑性ポリマー組成物における着色剤としてのその使用方法、対応する熱可塑性成形組成物、繊維、ホイル又は成形品を製造するためのその使用方法、及びそれぞれの繊維、ホイル又は成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性成形組成物を得るためには、黄色の無機及び/又は有機の顔料を使用することができる。有機黄色顔料の一例として、monoazo-ca-pigment BAYPLAST(登録商標)Yellow G Granがある。無機黄色顔料であるバナジン酸ビスマスは、ホウ酸を添加することにより熱劣化に対して安定化させたバナジン酸ビスマスのマスターバッチの形態で使用されることが多い。典型的な市販のバナジン酸ビスマス顔料は、シリケート又はアルミナでカプセル化されている。このカプセル化は、特に射出成形を目的としたポリアミド成形組成物において、熱劣化に対する十分な安定性を提供しない。
【0003】
好ましくは、ホウ酸は熱可塑性成形組成物にもはや使用されるべきではないので、顔料の熱劣化に対して安定である代替のバナジン酸ビスマスのマスターバッチが求められている。短時間で熱劣化が起こるため、単にホウ酸を除外するだけでは成功しなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の根底にある目的は、熱可塑性成形組成物、特にホウ酸又はホウ素化合物を含有せず、熱劣化に対して安定であるポリアミド含有熱可塑性成形組成物を着色するためのマスターバッチとして使用することができるバナジン酸ビスマス顔料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、エチレンと、(メタ)アクリル酸、C1~12-アルキル(メタ)アクリレート及び無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーに分散されたバナジン酸ビスマス顔料を含む顔料組成物Cによって達成される。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明によれば、バナジン酸ビスマス顔料が、エチレンと、(メタ)アクリル酸、C1~12-アルキル(メタ)アクリレート及び無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマーに安定に分散させることができ、得られた顔料組成物が、保存時、熱可塑性ポリマーへの配合時、及び例えば射出成形により成形品を得るための熱可塑性ポリマーの加工時の熱劣化に対して安定であることが見出された。
【0007】
バナジン酸ビスマス顔料は急速に熱劣化してしまうため、既知のバナジン酸ビスマスのマスターバッチで単にホウ酸を除外することは成功しなかった。
【0008】
また、ポリエチレンのマスターバッチにバナジン酸ビスマス顔料を使用することも、熱劣化を防ぐには不十分であった。
【0009】
アクリル酸、アクリレート又は無水マレイン酸基から選択される有機酸基を有するエチレンコポリマーに含有又は分散させることでのみ、所望の熱安定性を有するバナジン酸ビスマスのマスターバッチが得られる。本発明によれば、特に、無水マレイン酸含有エチレンコポリマーを添加することにより、バナジン酸ビスマス顔料の色安定性を著しく向上させることができることが見出された。好ましくは、マスターバッチは、バナジン酸ビスマス顔料及びコポリマーから調製され、その後、熱可塑性成形組成物を配合又は射出成形する際に着色剤として使用される。また、顔料組成物又は熱可塑性成形組成物を調製するために、バナジン酸ビスマス顔料及びコポリマーを別個の化合物として直接配合することも可能である。
【0010】
バナジン酸ビスマスは、式BiVOを有する無機化合物である。これは、複合無機着色顔料(CICP)の代表的なものである明るい黄色の固体である。より具体的には、バナジン酸ビスマスは混合金属酸化物である。バナジン酸ビスマスは、Colour Index(登録商標)Internationalにおいて、C.I.Pigment Yellow 184としても知られている。顔料として使用される場合、それは高い彩度及び優れた隠蔽力を持つ。自然界では、バナジン酸ビスマスは、形成された特定の多形に応じて、プケライト、クリノビスバナイト、及びドリーライト(dreyerite)という鉱物として見つけることができる。
【0011】
バナジン酸ビスマス顔料は典型的に、単斜晶(クリノビスバナイト)又は正方晶(ドリーライト)構造を有する純粋なバナジン酸ビスマスをベースとするものである。これらは、一連のpH制御された沈殿反応から形成することができる(これらの反応は、所望の最終相に応じてモリブデンの存在又は不在下で行うことができることに留意することが重要である)。また、母体酸化物(parent oxides)(Bi及びV)から出発し、高温焼成を行って純粋な生成物を得ることも可能である。
【0012】
バナジン酸ビスマス顔料は、アルミニウム及び/又はシリカでコーティングすることができる。
【0013】
本発明による典型的な顔料組成物は、顔料組成物の量に基づいて、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%、最も好ましくは20~40質量%の量のバナジン酸ビスマスを含む。
【0014】
同様に、コポリマーの量は、好ましくは5~60質量%、より好ましくは10~50質量%、最も好ましくは20~40質量%であり得る。
【0015】
コポリマーは、コポリマーの総量に基づいて、好ましくは50~97質量%、より好ましくは60~95質量%、最も好ましくは70~90質量%のエチレンを含有する。コモノマーは、好ましくは、アクリル酸、C1~6-アルキルアクリレート、無水マレイン酸、又はそれらの混合物である。
【0016】
エチレンとアクリレート、アクリル酸及び無水マレイン酸とのコポリマーを使用することが特に好ましい。具体的には、エチレン、n-ブチルアクリレート、アクリル酸及び無水マレイン酸のコポリマーを使用することが好ましい。適切なコポリマーは、BASF SEからLupolen(登録商標)KR 1270として入手可能である。このコポリマーは、典型的には、耐衝撃性改質ポリマーとしてポリアミド組成物に使用されており、例えば、US 8,629,206 B2及びUS 2016/0130381 A1を参照されたい。
【0017】
カルボン酸基を含有するコポリマーは、単独で本発明の顔料組成物の調製に使用することができる。この場合、顔料組成物は、バナジン酸ビスマス顔料、及びマトリックスポリマーとしての酸基含有コポリマーからなる。
【0018】
また、顔料組成物にさらなるポリマー、好ましくはポリオレフィンを添加することも可能である。ポリオレフィンは、好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレンとコモノマーとしての少なくとも1つのC3~12-オレフィンとのコポリマーであり得る。このコポリマーは、カルボン酸基を含有する上記のコポリマーとは異なるべきである。好ましくは、このさらなるポリマーは、(メタ)アクリル酸、C1~12-アルキル(メタ)アクリレート及び無水マレイン酸コモノマーを含まない。
【0019】
ポリオレフィン性の特性に応じて、このさらなる(コ)ポリマーは、上記のコポリマーと均質に混和することができる。これらのさらなるポリオレフィンのうち好ましいものは、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレン/プロピレンコポリマーである。ポリエチレンが最も好ましい。
【0020】
このポリオレフィンと上記のコポリマーとの質量比は、好ましくは3:1~1:3、より好ましくは2:1~1:2、最も好ましくは1:1~5:3の範囲である。
【0021】
好ましい顔料組成物Cは、
成分C1として、5~60質量%、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~40質量%のバナジン酸ビスマス、
成分C2として、5~60質量%、好ましくは10~50質量%、より好ましくは20~40質量%の、エチレンと、(メタ)アクリル酸、C1~12-アルキル(メタ)アクリレート及び無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマー、
成分C3として、10~70質量%、好ましくは20~60質量%、より好ましくは30~50質量%の、ポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレンとコモノマーとしての少なくとも1つのC3~12-オレフィンとの、成分C2とは異なるコポリマー、
成分C4として、0~10質量%、好ましくは0~5質量%、より好ましくは0~2質量%のさらなる成分、
を含み、ここで、成分C1~C4の総量が100質量%である。
【0022】
さらなる成分C4は、さらなる着色剤、例えば有機顔料、特に黄色の有機顔料、例えばBAYPLAST(登録商標)Yellow Gであり得る。追加のさらなる成分は、通常に使用されるアジュバントであり得る。
【0023】
顔料組成物Cは、着色剤として熱可塑性ポリマー組成物に使用することができる。これらの熱可塑性ポリマー組成物は、射出成形ができる典型的な熱可塑性ポリマーをベースとすることができる。好ましくは、熱可塑性ポリマーは、少なくとも1種のポリアミドを含有する。より好ましくは、熱可塑性ポリマー組成物において、ポリマーの大部分は、ポリアミド、特に脂肪族ポリアミドである。
【0024】
好ましい熱可塑性成形組成物は、熱可塑性ポリマー、及び熱可塑性成形組成物のバナジン酸ビスマス含有量が0.1~2.0質量%、好ましくは0.2~1.0質量%、より好ましくは0.3~0.5質量%の範囲となる量の顔料組成物を含む。
【0025】
顔料組成物がその中に含まれるポリマーは、任意の所望の好適なポリマーから選択することができる。例として、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリオレフィン、又はこれらの2種以上で作られたポリマーのブレンドが含まれる。
【0026】
また、本発明は、
成分Aとして、30~95質量%の、少なくとも1種の、例えば脂肪族のポリアミド又はコポリアミド、
成分Bとして、0~50質量%のガラス繊維、
成分Cとして、0.2~7質量%の上記で定義された顔料組成物、
成分Dとして、0~2質量%の少なくとも1種の有機顔料、
成分Eとして、0~50質量%のさらなる添加剤
を含む熱可塑性成形組成物にも関し、
ここで、成分A~Eの総量は100質量%である。
【0027】
この熱可塑性成形組成物は、好ましくは0.1~2.0質量%、より好ましくは0.2~1.0質量%、最も好ましくは0.3~0.5質量%のバナジン酸ビスマス含有量を有する。
【0028】
成分Aは、30~95質量%、好ましくは40~89.5質量%、より好ましくは26~74質量%の量で存在するポリアミド又はコポリアミドを含むことが特に好ましい。
【0029】
本発明で好ましく使用されるポリアミドは、例えば、ジカルボン酸及びジアミンから、又はジカルボン酸及びジアミンの塩から、アミノカルボン酸から、アミノニトリルから、ラクタムから、及びそれらの混合物から選択される出発モノマーの反応によって製造される。ここでは、任意の所望の脂肪族ポリアミドの出発モノマーを含むことができる。ポリアミドは、非結晶性、結晶性、又は半結晶性であり得る。さらに、ポリアミドは、任意の所望の好適な粘度、及びそれぞれの分子量を有することができる。特に好適なポリアミドは、任意のタイプの、脂肪族、半結晶性、又は半芳香族、又は非結晶性の構造を有する。
【0030】
これらのポリアミドの固有粘度は、一般に90~350ml/g、好ましくは110~240ml/gであり、ISO 307に従って25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%の溶液で決定される。
【0031】
少なくとも5000の分子量(質量平均)を有する半結晶性又は非結晶性の樹脂が好ましく、これらは、例えば、以下の米国特許番号2,071,250、2,071,251、2,130,523、2,130,948、2,241,322、2,312,966、2,512,606及び3,393,210に記載されている。これらの例は、7~11個の環員を有するラクタムに由来するポリアミド、例えばポリカプロラクタム及びポリカプリルラクタム、及びまたジカルボン酸とジアミンとの反応によって得られるポリアミドである。
【0032】
使用できるジカルボン酸は、6~12個、特に6~10個の炭素原子を有するアルカンジカルボン酸、及び芳香族ジカルボン酸である。ここでは、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びドデカン二酸(=デカンジカルボン酸)が挙げられる。
【0033】
特に好適なジアミンは、2~12個、特に6~8個の炭素原子を有するアルカンジアミン、及びまたジ(4-アミノシクロヘキシル)メタン又は2,2-ジ(4-アミノシクロヘキシル)プロパンである。
【0034】
好ましいポリアミド及びコポリアミドは脂肪族のものである。
【0035】
好ましいポリアミドは、特に5~95質量%の割合のカプロラクタム単位を有する、ポリヘキサメチレンアジパミド(PA 66)及びポリヘキサメチレンセバカミド(PA 610)、ポリカプロラクタム(PA 6)、及びまたナイロン-6/6,6コポリアミドである。PA 6、PA 66、及びナイロン-6/6,6コポリアミドが特に好ましい。
【0036】
また、例えば、1,4-ジアミノブタンとアジピン酸を高温で縮合することによって得ることができるポリアミド(ナイロン-4,6)も挙げられる。この構造を有するポリアミドの製造方法は、例えば、EP-A 38 094、EP-A 38 582及びEP-A 39 524に記載されている。
【0037】
他の例としては、2種以上の上述したモノマーの共重合によって得ることができるポリアミド、及び任意の所望の混合比での複数のポリアミドの混合物が挙げられる。
【0038】
以下の非網羅的なリストには、上述したポリアミド、及びまた本発明の目的のための他のポリアミドが含まれる(モノマーは括弧の間に記載されている):
PA 26(エチレンジアミン、アジピン酸)
PA 210(エチレンジアミン、セバシン酸)
PA 46(テトラメチレンジアミン、アジピン酸)
PA 66(ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸)
PA 69(ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸)
PA 610(ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸)
PA 612(ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸)
PA 613(ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸)
PA 1212(1,12-ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸)
PA 1313(1,13-ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸)
PA 4(ピロリドン)
PA 6(ε-カプロラクタム)
PA 7(エタノーラクタム(ethanolactam))
PA 8(カプリルラクタム)
PA9(9-アミノノナン酸)
PA11(11-アミノウンデカン酸)
PA12(ラウロラクタム)。
【0039】
これらのポリアミド及びその製造は知られている。それらの製造に関する詳細は、当業者であれば、Ullmanns Enzyklopaedie der Technischen Chemie [Ullmann’s Encyclopedia Of Industrial Chemistry],第4版,第19巻,39~54頁,Verlag Chemie,Weinheim,1980年、及びまたUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第A21巻,179~206頁,VCH Verlag,Weinheim 1992年、及びまたStoeckhert,Kunststoff Lexikon[Plastics Encyclopedia],425~428頁,Hanser Verlag,Munich 1992年(キーワード「ポリアミド」[Polyamides]参照)に見出す。
【0040】
特に好ましくは、ナイロン-6又はナイロン-6,6を使用する。
【0041】
さらに、本発明において、ポリアミドに官能化化合物を提供することが可能であり、これらの官能化化合物はカルボキシ基又はアミノ基に結合することができ、例えば少なくとも1つのカルボキシ基、ヒドロキシ基又はアミノ基を有する。これらは、好ましくは、例えば少なくとも3つのカルボキシ基又はアミノ基を有する分岐効果を有するモノマー、例えばエポキシ基、ヒドロキシ基、イソシアナト基、アミノ基及び/又はカルボキシ基によってカルボキシ基又はアミノ基に結合することができるモノマーであり、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、アミド基、イミン基、イミド基、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、C-C二重結合又はC-C三重結合から選択される官能基、又はカルボキシ基又はアミノ基に結合することができるポリマーブロックを有する。
【0042】
官能化化合物の使用により、得られるポリアミドの特性プロファイルを広い範囲で所望のように調整することができる。
【0043】
例えば、トリアセトンジアミン化合物を官能化モノマーとして使用することができる。これらは、好ましくは、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン又は4-アミノ-1-アルキル-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンを含み、これらのアルキル基は、1~18個の炭素原子を有するか、又はベンジル基に置換されている。存在するトリアセトンジアミン化合物の量は、それぞれの場合に1モルのポリアミドのアミド基に基づいて、好ましくは0.03~0.8モル%、特に好ましくは0.06~0.4モル%である。さらなる詳細は、DE-A-44 13 177を参照することができる。
【0044】
成分Bとして、熱可塑性成形組成物は、ガラス繊維を含有することができる。存在する場合、ガラス繊維の量は、好ましくは5~50質量%、より好ましくは10~40質量%、最も好ましくは25~35質量%である。任意の所望の好適なガラス繊維を、チョップドガラスの形態で、又はロービングの形態で使用することが可能である。チョップドガラス繊維の直径は約10μmであることが好ましい。ガラス繊維は、表面処理、例えばシラン化することができる。ガラス繊維の同時使用は特に有利である。
【0045】
成分Cは上記の通りである。成分Cの量は、好ましくは0.3~5.0質量%、より好ましくは0.5~2.0質量%である。
【0046】
成分Dが存在する場合、成分A~Eの総量に基づいて、好ましくは0.1~2.0質量%、より好ましくは0.2~1.0質量%、最も好ましくは0.3~0.5質量%の量で使用される。少なくとも1種の有機顔料は、好ましくは少なくとも1種の黄色有機顔料である。そのような顔料がすでに成分Cの一部、例えば成分C4として存在する場合、成分Dは存在しない。
【0047】
本発明の熱可塑性成形組成物は、成分Eとして、0~50質量%、好ましくは0~30質量%、より好ましくは0~20質量%のさらなる添加剤を含むことができる。前記添加剤は、他の充填剤、安定剤、酸化遅延剤、熱による分解及び紫外線による分解からの保護剤、難燃剤、潤滑剤及び離型剤、染料及び顔料などの着色剤、核剤、可塑剤などを含むことができる。使用可能な添加剤の詳細については、WO 2008/074687の31~37頁も参照することができる。
【0048】
0.1~20質量%の成分Eが存在することが最も好ましく(成分Aの量はそれに応じて減少する)、ここで、成分Eは安定剤及び潤滑剤を含む。例えば、酸化亜鉛を安定剤として、ステアリン酸カルシウムを潤滑剤として使用することができる。従来のポリアミド成形組成物の酸化防止剤、例えばBASF SE社からIrganox(登録商標)の商標で販売されている酸化防止剤を使用することができる。
【0049】
リン含有有機ポリマーは、成分E(の一部)として、単独で又は他の難燃性物質及び相乗剤と組み合わせて使用することができる。
【0050】
他の難燃性物質としては、例えば、赤リン、少なくともフェノキシホスファゼン単位を有する環状フェノキシホスファゼン、又は(ジ)ホスフィン酸塩が挙げられる。
【0051】
さらに、メラミンとリン酸との反応生成物を使用すること、又は金属ホウ酸塩を使用することも可能である。
【0052】
メラミンとリン酸との好ましい反応生成物は、本質的に等モル量のメラミン又はメラミンの縮合物と、リン酸、ピロリン酸、又はポリリン酸を好適なプロセスで反応させることにより得られる生成物である。窒素下での加熱によってメラミンホスフェートを縮合することにより得ることができるメラミンポリホスフェートを使用することが特に好ましい。メラミンポリホスフェートの一般式は(CHPOである。
【0053】
メラミンホスフェートにおけるリン酸成分としては、例えば、オルトリン酸、亜リン酸、次亜リン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸又は四リン酸が挙げられる。オルトリン酸又はピロリン酸とメラミンとの付加物を縮合することによって得られるメラミンポリホスフェートが特に好ましい。メラミンポリホスフェートの縮合度は、好ましくは5以上である。あるいは、メラミンポリホスフェートはポリリン酸とメラミンとの等モル付加塩であり得る。また、非環状のポリリン酸と一緒に、環状のポリメタリン酸を使用することも可能である。メラミンポリホスフェートの付加塩は、一般に、メラミンとポリリン酸の混合物の水性スラリーを反応させ、その後、ろ過により分離し、洗浄し、乾燥することにより得られる粉末である。メラミンポリホスフェートの粒径は、広い範囲内で調整することができ、これに関連してEP-A-2 100 919の段落[0026]も参照することができる。
【0054】
好適なホスフィネート塩は、一般式[RP(=O)-O] m+を有する。好適な(ジ)ホスフィネートは、一般式[O-P(=O)R-O-R-O-P(=O)R-O]2- m+(式中、R及びRは、互いに独立して、直鎖又は分岐状のC1~6-アルキル部分又はC6~10-アリール部分であり、Rは、直鎖又は分岐状のC1~10-アルキレン部分、C6~10-アリーレン部分、C7~10-アルキルアリーレン部分、又はC7~10-アリール-アルキレン部分であり、Mは、Ca、Mg、Al又はZnであり、mは、2n=mxから決定されたMの原子価であり、nは1又は3の値であり、xは1又は2の値である)を有する。m又はnの値が2以上の場合、部分R~Rは各位置で自由に選択することができる。
【0055】
好適なホスフィン酸塩の例としては、ジメチルホスフィネート、エチルメチルホスフィネート、ジエチルホスフィネート、メチル-n-プロピルホスフィネート、メタンジ(メチルホスフィネート)、ベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィネート)、メチルフェニルホスフィネート、及びジフェニルホスフィネートが挙げられる。金属成分Mは、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、又は亜鉛イオンである。
【0056】
好適なホスフィネート塩の例としては、カルシウムジメチルホスフィネート、マグネシウムジメチルホスフィネート、アルミニウムジメチルホスフィネート、亜鉛ジメチルホスフィネート、カルシウムエチルメチルホスフィネート、マグネシウムエチルメチルホスフィネート、アルミニウムエチルメチルホスフィネート、亜鉛エチルメチルホスフィネート、カルシウムジエチルホスフィネート、マグネシウムジエチルホスフィネート、アルミニウムジエチルホスフィネート、亜鉛ジエチルホスフィネート、カルシウムメチル-n-プロピルホスフィネート、マグネシウムメチル-n-プロピルホスフィネート、アルミニウムメチル-n-プロピルホスフィネート、亜鉛メチル-n-プロピルホスフィネート、カルシウムメチルフェニルホスフィネート、マグネシウムメチルフェニルホスフィネート、アルミニウムメチルフェニルホスフィネート、亜鉛メチルフェニルホスフィネート、カルシウムジフェニルホスフィネート、マグネシウムジフェニルホスフィネート、アルミニウムジフェニルホスフィネート、及び亜鉛ジフェニルホスフィネートが挙げられる。
【0057】
好適なジホスフィネート塩の例としては、カルシウムメタンジ(メチルホスフィネート)、マグネシウムメタンジ(メチルホスフィネート)、アルミニウムメタンジ(メチルホスフィネート)、亜鉛メタンジ(メチルホスフィネート)、カルシウムベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィネート)、マグネシウムベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィネート)、アルミニウムベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィネート)、亜鉛ベンゼン-1,4-ジ(メチルホスフィネート)が挙げられる。
【0058】
ホスフィネート塩、特にアルミニウムエチルメチルホスフィネート、アルミニウムジエチルホスフィネート、及び亜鉛ジエチルホスフィネートを使用することが特に好ましい。アルミニウムジエチルホスフィネートを使用することが特に好ましい。
【0059】
(ジ)ホスフィネート塩は、任意の所望の好適な粒径で使用することができ、EP-A-2 100 919の段落[0032]を参照されたい。
【0060】
また、上記の難燃剤と一緒に、又はその代替として、他の難燃剤、例えばトリアジンをベースとするもの、金属水和物をベースとするもの、及びシリコーンをベースとするものを成分Eの添加剤として併用することも可能である。トリアジンをベースとする典型的な難燃性物質はメラミンシアヌレートである。
【0061】
他のさらなる難燃性物質は、金属化合物、例えば水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸亜鉛、酸化鉄、及び酸化ホウ素であることができ、EP-A-2 100 919の段落[0046]~[0048]も参照されたい。
【0062】
相乗効果を有する他の難燃性物質は、例えばUS 2010/0261818の段落[0064]及び[0065]に記載されている。
【0063】
熱可塑性成形組成物は、成分Eとして少なくとも1種の衝撃改質ポリマーを含むことができる。
【0064】
使用される成分Eは、0~20質量%、好ましくは0~10質量%、特に0~8質量%の、成分Cのコポリマーとは異なる少なくとも1種の衝撃改質ポリマーを含む。衝撃改質ポリマーが存在する場合、その最小量は0.1質量%、好ましくは1質量%、特に3質量%である。成分Aの最大可能量は、それに応じて減少し、成分A~Eの総量が100質量%になるようにする。成分Eの併用は必須ではないが、これを使用することで、得られるポリアミド成形組成物の耐衝撃性を向上させることができる。ここで関与する衝撃改質ポリマーは、成分Aのポリアミドの衝撃改質のために典型的に使用されるものである。エラストマー、例えば天然又は合成ゴム及び他のエラストマーが含まれることが好ましい。
【0065】
使用することができる合成ゴムとして挙げられるのは、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、ヒドリンゴム(ECO)、及びアクリレートゴム(ASA)である。また、シリコーンゴム、ポリオキシアルキレンゴム及び他のゴムを使用することも可能である。
【0066】
熱可塑性エラストマーとしては、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー(SEBS)、及びスチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー(SEPS)が挙げられる。
【0067】
さらに、樹脂、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、フルオロ樹脂、シリコーン樹脂、イミド樹脂、アミド-イミド樹脂、エポキシ樹脂、ウレア樹脂、アルキド樹脂(alkyd resins)、又はメラミン樹脂をブレンドポリマーとして使用することができる。
【0068】
さらに、エチレンコポリマー、例えばエチレンと1-オクテン、1-ブテン又はプロピレンとのコポリマーをブレンドポリマーとして使用することができ、これらはWO 2008/074687に記載されている。上述のタイプのエチレン-α-オレフィンコポリマーのモル質量は、好ましくは10000~500000g/mol、好ましくは15000~400000g/mol(数平均モル質量)の範囲である。また、直鎖ポリオレフィン、例えばポリエチレン又はポリプロピレンを使用することも可能である。
【0069】
さらなる添加剤は、他の成分A~Dの一部を形成しない化合物又は材料である。したがって、例えばポリオレフィンが成分Cに使用される場合、そのようなポリマーは成分Eの一部を形成することはできない。しかしながら、成分Cがカルボキシル基を持たないポリオレフィンを含有しない場合、そのようなポリマーは成分Eの一部を形成することができる。したがって、異なる成分A~E、及びC1~C4は相互に排他的である。
【0070】
好適なポリウレタンについては、EP-B-1 984 438、DE-A-10 2006 045 869及びEP-A-2 223 904を参照することができる。
【0071】
他の好適な熱可塑性樹脂は、JP-A-2009-155436の段落[0028]に記載されている。
【0072】
成分Eとして好適な他のポリマーは、EP-A-2 100 919の段落[0044]に記載されている。0119].
成分E(の一部)として使用することができる他の充填剤は、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、及び他の充填剤、例えば石膏繊維、合成ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、タルク粉末、チョークである。
【0073】
本発明の成形組成物は、成分A~Eを混合することによって製造される。この目的のためには、押出機、例えば単軸又は二軸押出機、又は他の従来の塑性加工装置、例えばBrabenderミキサー又はBanburyミキサーが有利に使用される。
【0074】
ここでは、個々の成分の混合の順序は、自由に選択することができる。
【0075】
本発明の成形組成物は、向上された破断時の引張ひずみ及びシャルピー衝撃耐性を組み合わせた向上された難燃性を特徴としている。それらは、成形品、繊維、又はホイルの製造に適している。
【0076】
また、本発明は上記の熱可塑性成形組成物で作られた対応する成形品、繊維、又はホイルを提供する。
【0077】
以下の実施例は、本発明のさらなる説明を提供する。
【実施例
【0078】
まず、顔料のマスターバッチを調製した。二軸押出機を用いて、220℃の温度でマスターバッチを調製した。色差計又は分光光度計を用いて、色値を得た。
【0079】
【表1】
【0080】
これらのマスターバッチを、ガラス繊維強化ポリアミド6成形組成物において着色剤として使用した。それぞれの結果を表2に示す。
【0081】
すべての質量は質量%である。
【0082】
【表2】