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特許7553578フェノキシ樹脂、樹脂組成物、硬化物、電気・電子回路用積層板、及びフェノキシ樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-09
(45)【発行日】2024-09-18
(54)【発明の名称】フェノキシ樹脂、樹脂組成物、硬化物、電気・電子回路用積層板、及びフェノキシ樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/20 20060101AFI20240910BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20240910BHJP
   C08G 59/14 20060101ALI20240910BHJP
   C08G 18/00 20060101ALI20240910BHJP
   C08G 18/79 20060101ALI20240910BHJP
   C08G 18/58 20060101ALI20240910BHJP
   C08G 18/64 20060101ALI20240910BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240910BHJP
【FI】
C08G59/20
C08G65/48
C08G59/14
C08G18/00 030
C08G18/79 070
C08G18/58
C08G18/64 007
H05K1/03 610L
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022547507
(86)(22)【出願日】2021-08-27
(86)【国際出願番号】 JP2021031624
(87)【国際公開番号】W WO2022054615
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2020151968
(32)【優先日】2020-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(74)【代理人】
【識別番号】100100192
【弁理士】
【氏名又は名称】原 克己
(74)【代理人】
【識別番号】100198269
【弁理士】
【氏名又は名称】久本 秀治
(74)【代理人】
【識別番号】100226894
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 夏詩子
(72)【発明者】
【氏名】秋葉 圭太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 洋
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/175511(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/128726(WO,A1)
【文献】特開平05-320611(JP,A)
【文献】特開2011-046782(JP,A)
【文献】特開2018-024774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G
H05K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される重量平均分子量が10,000~200,000であるポリカルボジイミド含有のフェノキシ樹脂。
【化1】
(ここで、Xはジオキシ基を含む2価の基であり、Yは独立に水素原子又はグリシジル基であり、nは15~500である。Zは独立に水素原子又は式(1a)であり、少なくとも1つは式(1a)である。Rは独立に炭素数1~18の2価の炭化水素基であり、mは2~50であり、Qは一般式(2)の1つの水酸基から水素原子を除いた残基である。)
【請求項2】
請求項1に記載のフェノキシ樹脂とエポキシ樹脂を含み、フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂との固形分の質量比が、99/1~1/99である樹脂組成物。
【請求項3】
更に硬化剤を含む請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂の固形分の合計100質量部に対し、硬化剤を固形分で0.1~100質量部含む請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
硬化剤がフェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類、及び活性エステル系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項3又は4に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
請求項3~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
【請求項7】
請求項3~5のいずれか1項に記載の樹脂組成物を用いてなる電気・電子回路用積層板。
【請求項8】
下記一般式(2)で表されるフェノキシ樹脂に、下記一般式(3)で表される末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物を反応させて得られる、重量平均分子量が10,000~200,000であるポリカルボジイミド含有のフェノキシ樹脂の製造方法。
【化2】
(ここで、Xはジオキシ基を含む2価の基であり、Yは独立に水素原子又はグリシジル基であり、nは15~500である。)
【化3】
(ここで、Rは独立に炭素数1~18の2価の炭化水素基であり、mは2~50である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電特性及び耐熱性に優れた硬化物が得られるフェノキシ樹脂に関する。また、該フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂と硬化剤とを含む樹脂組成物及び該樹脂組成物からなる電気・電子回路用積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は耐熱性、接着性、耐薬品性、耐水性、機械的強度及び電気特性等に優れていることから、塗料、土木、接着、電気材料用途等の分野で広く使用されている。そして種々の方法で高分子量化することで製膜性が付与される。その高分子量化されたエポキシ樹脂はフェノキシ樹脂と称される。特にビスフェノールA型のフェノキシ樹脂は、主に塗料用ワニスのベース樹脂、フィルム成形用のベース樹脂としてや、エポキシ樹脂ワニスに添加して流動性の調整や硬化物としたときの靭性改良、接着性改良の目的に使用される。また、リン原子や臭素原子を骨格中に有するものは、エポキシ樹脂組成物や熱可塑性樹脂に配合される難燃剤として使用されている。
【0003】
電気・電子回路用積層板等の電気材料用途となるフェノキシ樹脂には誘電特性及び耐熱性が要求される。
【0004】
このような要求に対して、分子鎖中に嵩高い構造を導入しミクロブラウン運動を抑制することで耐熱性を向上させる方法が提案されている。特許文献1には、フルオレン構造を導入したビスフェノール化合物と2官能エポキシ樹脂を反応させ、耐熱性に優れたフェノキシ樹脂が開示されている。しかし、この方法で得られたフェノキシ樹脂は優れた耐熱性を示すものの、誘電特性に劣るという問題がある。
【0005】
一方、フェノキシ樹脂に特定の構造を導入することで誘電特性を向上させる方法が提案されている。特許文献2では、ジエステル化合物と2官能エポキシ樹脂を反応させ成膜性に優れるフェノキシ樹脂が開示されている。しかしながら、該フェノキシ樹脂は誘電特性にも優れるものの、耐熱性が満足できるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-84467号公報
【文献】特開2016-89165号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明の課題は、誘電特性及び耐熱性に優れたフェノキシ樹脂を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明者はフェノキシ樹脂について鋭意検討した結果、特定の構造(ポリカルボジイミド)を有するフェノキシ樹脂が、誘電特性及び耐熱性に優れることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち本発明は、下記一般式(1)で表される重量平均分子量が10,000~200,000であるポリカルボジイミド含有のフェノキシ樹脂である。
【化1】
Xはジオキシ基を含む2価の基であり、Yは独立に水素原子又はグリシジル基であり、nは15~500であり、Zは独立に水素原子又は式(1a)であり、少なくとも1つは式(1a)である。Rは独立に炭素数1~18の2価の炭化水素基であり、mは2~50であり、Qは一般式(2)の1つの水酸基から水素原子を除いた残基である。
【0010】
また本発明は、前記フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂を含み、フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂との固形分の質量比が、99/1~1/99である樹脂組成物である。そして、更に硬化剤を含む樹脂組成物である。
【0011】
前記硬化剤は、前記フェノキシ樹脂とエポキシ樹脂の固形分の合計100質量部に対し、固形分で0.1~100質量部含むことが好ましく、フェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類、及び活性エステル系硬化剤からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
また本発明は、前記樹脂組成物を硬化してなる硬化物であり、前記樹脂組成物を用いてなる電気・電子回路用積層板である。
【0013】
更に本発明は、前記一般式(2)で表されるフェノキシ樹脂に、下記一般式(3)で表される末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物を反応させて得られる重量平均分子量が10,000~200,000である前記ポリカルボジイミド含有のフェノキシ樹脂の製造方法である。
【化2】
ここで、R及びmは前記式(1a)における定義と同義である。
【0014】
本発明によれば、誘電特性及び耐熱性に優れた硬化物が得られるフェノキシ樹脂を提供することができる。このため、本発明のポリカルボジイミド含有のフェノキシ樹脂及び樹脂組成物は、接着剤、塗料、土木用建築材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。本発明のポリカルボジイミド含有のフェノキシ樹脂及びそれを含む樹脂組成物は、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D-LSI用インターチップフィル材料、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等に好適に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のポリカルボジイミド含有のフェノキシ樹脂(以下、本発明のフェノキシ樹脂ともいう)は、前記式(1)で表される重量平均分子量(Mw)が10,000~200,000であるフェノキシ樹脂である。
ここで、Mwが10,000より小さいと、製膜性や機械物性(特に耐折性)が低下する恐れがあり好ましくない。Mwが200,000より大きいと相溶性が低下する恐れがあり、樹脂の取り扱いが困難となる場合があり好ましくない。Mwは、15,000~160,000が好ましく、20,000~140,000がより好ましく、20,000~120,000が更に好ましい。なお、フェノキシ樹脂のMwは実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定することができる。
【0016】
本発明のフェノキシ樹脂は、側鎖にポリカルボジイミドを導入することで低極性となり、優れた誘電特性効果が得られる。また、低吸湿性や溶剤溶解性も良好になる。
【0017】
本発明のフェノキシ樹脂は、本発明の製造方法で有利に得ることができる。
【0018】
前記式(1)において、Xはジオキシ基を含む2価の基を表す。ジオキシ基を含む2価の基としては例えば、芳香族骨格、脂肪族骨格、脂環式骨格が挙げられる。芳香族骨格の例としては、ビスフェノール型、ベンゼン型、ナフタレン型、ビフェニル型、フルオレン型及びDOPO型等が挙げられ;脂肪族骨格の例としては、アルキレングリコール骨格等が挙げられ;脂環式骨格の例としては、水素化ビスフェノール骨格等が挙げられる。
【0019】
芳香族骨格は芳香族ジオール化合物の水酸基から水素原子を2個除いた残骨格を表し、具体的に、ビスフェノールA、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールAF、ビスフェノールAD、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールトリメチルシクロヘキサン及びビスフェノールシクロヘキサン等のビスフェノール型、ヒドロキノン、レゾルシン、カテコール及び炭素原子数1~10のアルキル基を置換基として有していてもよいジヒドロキシフェニル類等のベンゼン型、ジヒドロキシナフタレンや炭素原子数1~10のアルキル基を置換基として有していてもよいジヒドロキシナフタレン類等のナフタレン型、ジヒドロキシビフェニルや炭素原子数1~10のアルキル基を置換基として有していてもよいジヒドロキシビフェニル類等のビフェニル型、ビスフェノールフルオレン、及びビスクレゾールフルオレン等の炭素原子数1~10のアルキル基を置換基として有していてもよいビスフェノールフルオレン類等のフルオレン型、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(DOPO-HQ)、10-(2,7-ジヒドロキシナフチル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(DOPO-NQ)や炭素原子数1~10のアルキル基、アリール基もしくはアラルキル基を置換基として有していてもよいDOPO-HQ類等DOPO型等が挙げられる。
【0020】
脂肪族骨格は脂肪族ジオール化合物の水酸基から水素原子を2個除いた残骨格を表し、具体的に、エチレングリコール、プロピレングリコール及びブチレングリコール等のアルキレングリコール骨格が挙げられる。
【0021】
脂環式骨格は脂環式ジオール化合物の水酸基から水素原子を2個除いた残骨格を表し、具体的に、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールF及び水素化ビスフェノールアセトフェノン等の水素化ビスフェノール骨格が挙げられる。
【0022】
式(1)において、nは繰り返し数であり、平均値である。その値の範囲は15以上500以下である。成形性及び取り扱い性の観点から、好ましくは17以上400以下であり、より好ましくは20以上300以下である。n数はGPC法により得られた数平均分子量(Mn)より算出することができる。
【0023】
式(1)において、Zは水素原子又は式(1a)で表され、少なくとも1つは式(1a)であって、その構造内にカルボジイミドを有する。
【0024】
前記式(1a)において、Rは独立に炭素数1~18の2価の炭化水素基であり、具体的には、炭素数1~18の2価の脂肪族炭化水素基、炭素数3~13の2価の脂環族炭化水素基、炭素数6~14の2価の芳香族炭化水素基、又は炭素数3~12の2価の複素環基であり、複数のRは同一であっても異なっていてもよい。この基は末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物の原料ジイソシアネート化合物由来であり、ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を2つ除いた残基である。
【0025】
炭素数1~18の2価の脂肪族炭化水素基としては、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、sec-ブチレン基、t-ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ステアリレン基、2-フェニルイソプロピレン基、フェニルメチレン基、ベンジレン基、ジフェニレンエーテル基、α,α-ジメチレンベンジル基、α,α-メチレンフェニレンベンジル基、α,α-ジトリフルオロメチレンベンジル基等の2価基が挙げられる。
【0026】
炭素数3~13の2価の脂環族炭化水素基としては、具体的には、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、ビシクロヘプチレン基、ビシクロオクチレン基、トリシクロヘプチレン基、アダマンチレン基等の2価基やジシクロヘキシレンメタンの2価基が挙げられる。また、これらの脂環構造に置換基として炭素数1~4のアルキル基を含むものや、炭素数1~4のアルキレン基を含むもの等も含まれる。
【0027】
炭素数6~14の2価の芳香族炭化水素基としては、具体的には、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、アントラニレン基、ペリレニレン基、ピレニレン基等が挙げられる。また、これらの芳香環構造に置換基として炭素数1~4のアルキル基を含むものや、炭素数1~4のアルキレン基を含むもの等も含まれる。
【0028】
炭素数3~12の2価の複素環基としては、具体的には、イミダゾールジイル基、ベンゾイミダゾールジイル基、ピロールジイル基、フランジイル基、チオフェンジイル基、ベンゾチオフェンジイル基、オキサジアゾリンジイル基、インドリンジイル基、カルバゾールジイル基、ピリジンジイル基、キノリンジイル基、イソキノリンジイル基、ベンゾキノンジイル基、ピラロジンジイル基、イミダゾリジンジイル基、ピペリジンジイル基等が挙げられる。
【0029】
前記式(1a)において、Qはウレタン結合を介した分子内又は分子間における前記式(2)の1つの水酸基から水素原子を除いた残基である。
【0030】
前記式において、mは、2~50の整数であり、好ましくは2~30の整数である。
【0031】
本発明のフェノキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されないが、2,000~100,000g/eq.の範囲が好ましい。この範囲であれば、本発明のフェノキシ樹脂はそれ自体が硬化反応に関与し、架橋構造に組み込まれることが可能である。
【0032】
本発明のフェノキシ樹脂は、従来のフェノキシ樹脂(a)と、前記一般式(3)で表される末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物をウレタン化反応させて得る。
【0033】
前記フェノキシ樹脂(a)は従来知られている方法で得ることができる。2官能フェノール化合物類と、エピハロヒドリンとをアルカリ金属化合物存在下で反応させて製造する方法(以下、「一段法」と称する)や、2官能エポキシ樹脂類と2官能フェノール化合物類とを触媒存在下で反応させて製造する方法(以下、「二段法」と称する)が挙げられる。フェノキシ樹脂(a)はいずれの製造方法により得られるものであってもよいが、一般的にフェノキシ樹脂は一段法よりも二段法の方が得やすいため、二段法を使用することが好ましい。
【0034】
フェノキシ樹脂(a)の重量平均分子量は、一段法ではエピハロヒドリンと2官能フェノール化合物類の仕込みモル比を、二段法では2官能エポキシ樹脂類と2官能フェノール化合物類の仕込みモル比を適宜調整することで、目的の範囲のものを製造することができる。
【0035】
一段法及び二段法の製造で使用される2官能フェノール化合物としては、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールB、ビスフェノールE、ビスフェノールC、ビスフェノールアセトフェノン、ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニルエーテル、ジヒドロキシビフェニルチオエーテル等のビスフェノール類、4,4’-ビフェノール、2,4’-ビフェノール等のビフェノール類、1,1-ビ-2-ナフトール、カテコール、レゾルシン、ハイドロキノン、ジヒドロキシナフタレン、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、10-(2,7-ジヒドロキシナフチル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等が挙げられる。
また、これらの2官能フェノール化合物は複数種を併用してもよい。
【0036】
まず、一段法について説明する。
一段法の場合は、2官能フェノール化合物類1モルに対して、エピハロヒドリン0.985~1.0モル、好ましくは0.99~1.0モル、より好ましくは0.995~1.0モルを、アルカリ金属化合物の存在下、非反応性溶媒中で反応させ、エピハロヒドリンが消費され、重量平均分子量が10,000以上になるように縮合反応させることにより、フェノキシ樹脂(a)を得ることができる。なお、反応終了後に、副生した塩を濾別又は水洗により除去する必要がある。
【0037】
一段法で使用されるアルカリ金属化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物や、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩や、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属アルコキシドや、酢酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム等の有機酸のアルカリ金属塩や、アルカリ金属フェノキシド、水素化ナトリウム、水素化リチウム等が挙げられる。
【0038】
この反応は常圧下又は減圧下で行うことができる。反応温度は通常、常圧下の反応の場合は20~200℃が好ましく、30~170℃がより好ましく、40~150℃が更に好ましく、50~100℃が特に好ましい。減圧下の反応の場合は20~100℃が好ましく、30~90℃がより好ましく、35~80℃が更に好ましい。反応温度がこの範囲内であれば、副反応が起こりにくく反応を進行させやすい。反応圧力は通常、常圧である。また、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱により使用溶媒の蒸発・凝縮・還流法、間接冷却法、又はこれらの併用により行われる。
【0039】
非反応性溶媒としては、フェノキシ樹脂を溶解するものであればどのようなものでもよい。例えば、芳香族系溶媒、ケトン系溶媒、アミド系溶媒、グリコールエーテル系溶媒、エステル系溶媒、アルコール系溶媒等が挙げられる。また、これらの溶媒は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
芳香族系溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0041】
ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-オクタノン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン、ジオキサン、ジイソブチルケトン、イソホロン、メチルシクロへキサノン、アセトフェノン等が挙げられる。
【0042】
アミド系溶媒としては、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、2-ピロリドン、N-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0043】
グリコールエーテル系溶媒としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテルエチレングリコールモノアルキルエーテル類や、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類や、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル類や、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールジアルキルエーテル類や、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジブチルエーテル等のポリエチレングリコールジアルキルエーテル類や、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル等のプロピレングリコールジアルキルエーテル類や、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジブチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールジブチルエーテル等のポリプロピレングリコールジアルキルエーテル類や、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類や、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のポリエチレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類や、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類等が挙げられる。
【0044】
エステル系溶媒としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸ベンジル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、バレロラクトン、ブチロラクトン等が挙げられる。
【0045】
アルコール系溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。
【0046】
また、その他の溶媒としては、例えば、ジメチルスルフォキシド、スルホラン、γ-ブチロラクトン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる
【0047】
次に、二段法について説明する。
二段法の原料エポキシ樹脂となる2官能エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂、ジフェニルスルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ジフェニルジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、アルキレングリコール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ベンゼン型エポキシ樹脂、脂肪族環状エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂はアルキル基、アリール基等の悪影響のない置換基で置換されていてもよい。これらのエポキシ樹脂は複数種を併用してもよい。
【0048】
二段法の場合は、触媒を使用することができ、エポキシ基とフェノール性水酸基との反応を進めるような触媒能を持つ化合物であればどのようなものでもよい。
【0049】
触媒として、例えば、第3級アミン、環状アミン類、イミダゾール類、有機リン化合物、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。また、2官能エポキシ樹脂の製造時に使用されるアルカリ金属化合物も使用可能である。これらの触媒は単独でも、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0050】
第3級アミンとしては、例えば、トリエチルアミン、トリ-n-プロピルアミン、トリ-n-ブチルアミン、トリエタノールアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
環状アミン類としては、例えば、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン(DABCO)、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5(DBN)、N-メチルモルホリン、ピリジン、4-(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
有機リン化合物としては、例えば、トリ-n-プロピルホスフィン、トリ-n-ブチルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン、パラメチルホスフィン、1,2-ビス(ジメチルホスフィノ)エタン、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のホスフィン類や、テトラメチルホスホニウムブロミド、テトラメチルホスホニウムヨージド、テトラメチルホスホニウムヒドロキシド、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムクロリド、トリメチルシクロヘキシルホスホニウムブロミド、トリメチルベンジルホスホニウムクロリド、トリメチルベンジルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムブロミド、トリフェニルメチルホスホニウムヨージド、トリフェニルエチルホスホニウムクロリド、トリフェニルエチルホスホニウムブロミド、トリフェニルエチルホスホニウムヨージド、トリフェニルベンジルホスホニウムクロリド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロミド等のホスホニウム塩類等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
第4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムクロリド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヨージド、テトラプロピルアンモニウムブロミド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムヨージド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
以上に挙げた触媒の中でも、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1,4-ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5、2-エチル-4-メチルイミダゾール、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ(t-ブチル)ホスフィン、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンが好ましく、特に4-(ジメチルアミノ)ピリジン、1,8-ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7、1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]ノネン-5、2-エチル-4-メチルイミダゾール、トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィンが好ましい。
【0056】
触媒の使用量は、反応固形分中、通常0.001~1質量%であるが、これらの化合物を触媒として使用した場合、得られるフェノキシ樹脂中にこれらの触媒が残渣として残留し、プリント配線板の絶縁特性を悪化させたり、組成物のポットライフを短縮させたりする恐れがあるので、フェノキシ樹脂中の触媒由来の窒素含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。また、フェノキシ樹脂中の触媒由来のリン含有量は、0.5質量%以下が好ましく、0.3質量%以下がより好ましい。
【0057】
二段法の場合、溶媒を用いてもよく、その溶媒としてはフェノキシ樹脂を溶解し、反応に悪影響のないものであればどのようなものでもよい。例えば、前記一段法で例示した溶媒と同様のものが例示される。これらの溶媒は1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0058】
使用する溶媒の量は反応条件に応じて適宜選択することができるが、例えば、二段法の場合は固形分濃度が35~95質量%が好ましい。また、反応中に高粘性生成物が生じる場合は反応途中で溶媒を添加して反応を続けることができる。反応終了後、溶媒は必要に応じて蒸留等により除去することもできるし、更に追加することもできる。
【0059】
反応温度は、使用する触媒が分解しない程度の温度範囲で行う。反応温度が高すぎると触媒が分解して反応が停止したり、生成するフェノキシ樹脂が劣化したりする恐れがある。反応温度が低すぎると反応が十分に進まずに目的の分子量にならない恐れがある。そのため反応温度は、50~230℃が好ましく、100~210℃がより好ましく、120~200℃が更に好ましい。また、反応時間は通常1~12時間であり、3~10時間が好ましい。アセトンやメチルエチルケトンのような低沸点溶媒を使用する場合には、オートクレーブを使用して高圧下で反応を行うことで反応温度を確保することができる。また、反応熱の除去が必要な場合は、通常、反応熱による使用溶媒の蒸発・凝縮・還流法、間接冷却法、又はこれらの併用により行われる。
【0060】
このようにして得られたフェノキシ樹脂(a)中の水酸基を、前記一般式(3)で表される、末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物を用いてウレタン化することで本発明のフェノキシ樹脂が得られる。
【0061】
前記した末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物としては、脂肪族ポリカルボジイミド化合物、脂環族ポリカルボジイミド化合物、芳香族ポリカルボジイミド化合物等の末端にイソシアネート基を有するものが挙げられる。当該末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物は、公知のものを制限なく用いることができるが、前述のR基に由来するジイソシアネート化合物を、公知のカルボジイミド化触媒(例えば、3-メチル-1-フェニル-3-ホスホレン-1-オキシドなど)を用いて重合させて得られたものであってもよい。
脂肪族ポリカルボジイミド化合物の具体例としては、ポリヘキサメチレンカルボジイミド等が挙げられる。
脂環族ポリカルボジイミド化合物の具体例としては、ポリ(4,4’-ジシクロヘキシルメタンカルボジイミド)、ポリ(5-メチレン-3,3,5-トリメチルシクロヘキシルカルボジイミド)等が挙げられる。
芳香族ポリカルボジイミド化合物の具体例としては、ポリm-フェニレンカルボジイミド、ポリp-フェニレンカルボジイミド、ポリトリレンカルボジイミド、ポリ(ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(メチルジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)及びポリ(4,4’-ジフェニルメタンカルボジイミド)等が挙げられる。
これらのカルボジイミド化合物は単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0062】
前記した末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物と、フェノキシ樹脂(a)とを反応させる際の仕込み割合は、目的のウレタン化比率と同様の仕込み比率でもよいし、反応性が低い場合には水酸基に対し過剰に前記成分を仕込み、目的のウレタン化率まで反応させた後、未反応のポリカルボジイミド化合物を除去してもよい。
【0063】
フェノキシ樹脂(a)が有する水酸基をウレタン化する場合、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N-メチルモルホリン等のアミン、酢酸カリウム、ステアリン酸亜鉛、オクチル酸錫等の金属塩、ジブチルスズマレート及びジブチル錫ジラウレート等の有機金属化合物等が挙げられる。通常、窒素雰囲気下で、反応温度20~120℃で行うのが好ましい。
【0064】
本発明の製造方法において、反応用の溶媒を用いてもよく、その溶媒としては、フェノキシ樹脂を溶解するものであればどのようなものでもよい。例えば、フェノキシ樹脂(a)の一段法及び二段法の製造方法で例示した溶媒と同様の物が挙げられる。これらの溶媒はフェノキシ樹脂(a)の調製で用いたものと同じものでもよいし、異なるものでもよい。また、1種のみで用いてもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0065】
本発明においては、前述した一般式(1)で表されるフェノキシ樹脂とともに、エポキシ樹脂や硬化剤等を用いることで樹脂組成物とすることができる。ここで、エポキシ樹脂としては、特に制限されないが、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであることが好ましい。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂等の、各種エポキシ樹脂を使用することができる。これらは1種のみでも2種以上の混合体としても使用することができる。
【0066】
本発明の樹脂組成物において、一般式(1)のフェノキシ樹脂と前記エポキシ樹脂との配合量は、固形分の質量比(フェノキシ樹脂/エポキシ樹脂)で、99/1~1/99であることが好ましく、より好ましくは95/5~5/95、更に好ましくは80/20~20/80とすることがよい。エポキシ樹脂を配合することによりフェノキシ樹脂そのものよりも更に耐熱性や可撓性に優れた材料を得ることができる。また、耐候性などのほかの特徴も付与することもできる。一方、エポキシ樹脂の含有量が前記上限値以下であることにより、フェノキシ樹脂の効果が十分に発揮され、誘電特性、耐熱性を十分に得ることができる傾向があるために好ましい。
【0067】
また、本発明の樹脂組成物に用い得る硬化剤としては、特に制限はなく一般的にエポキシ樹脂硬化剤として知られているものはすべて使用できる。耐熱性を高める観点から好ましいものとしてフェノール系硬化剤、アミド系硬化剤、イミダゾール類及び活性エステル系硬化剤等が挙げられる。
硬化剤の配合量としては、より耐熱性を向上させる観点から、前記のフェノキシ樹脂及びエポキシ樹脂の固形分の合計100質量部に対して、0.1~100質量部とすることが好ましく、より好ましくは0.5~80質量部、更に好ましくは1~60質量部とすることがよい。
【0068】
また、本発明の樹脂組成物には溶剤を含むことができる。溶剤としては、前記のフェノキシ樹脂(a)の一段法及び二段法で例示した溶媒と同様のものが挙げられる。
【0069】
さらに、本発明の樹脂組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、以上で挙げたもの以外の成分を含んでいてもよい。このようなその他の成分としては、エポキシ樹脂を除く熱硬化性樹脂や光硬化性樹脂、硬化促進剤(ただし、前記「硬化剤」に含まれるものを除く。)、紫外線防止剤、酸化防止剤、カップリング剤、可塑剤、フラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、無機フィラー、有機フィラー等が挙げられる。
【0070】
そして、このような樹脂組成物を硬化させて硬化物を得ることができる。硬化物とする際の硬化方法は、エポキシ樹脂組成物中の配合成分や配合量によっても異なるが、通常、80~280℃で60~360分の加熱条件が挙げられる。この加熱は80~160℃で10~90分の一次加熱と、120~200℃で60~150分の二次加熱との二段処理を行うことが好ましく、また、ガラス転移温度(Tg)が二次加熱の温度を超える配合系においては更に150~280℃で60~120分の三次加熱を行うことが好ましい。このように二次加熱、三次加熱を行うことは硬化不良や溶剤の残留を低減する観点から好ましい。
樹脂半硬化物を作製する際には、加熱等により形状が保てる程度にエポキシ樹脂組成物の硬化反応を進行させることが好ましい。エポキシ樹脂組成物が溶剤を含んでいる場合には、通常、加熱、減圧、風乾等の手法で大部分の溶剤を除去するが、樹脂半硬化物中に5質量%以下の溶剤を残留させてもよい。
【0071】
そして、このようにして得られる本発明の硬化物は、製膜性に優れ、またこれを含むエポキシ樹脂組成物は、耐薬品性(耐溶剤性)に優れた硬化物を与えるという効果を奏する。このため、接着剤、塗料、土木建築用材料、電気・電子部品の絶縁材料等、様々な分野に適用可能であり、特に、電気・電子分野における絶縁注型、積層材料、封止材料等として有用である。本発明の樹脂組成物(硬化物)は、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子回路用積層板、フィルム状接着剤、液状接着剤等の接着剤、半導体封止材料、アンダーフィル材料、3D-LSI用インターチップフィル、絶縁シート、プリプレグ、放熱基板等に好適に使用できる。
【0072】
本発明の樹脂組成物は、特に、電気・電子回路用積層板の用途に好適に用いることができる。本発明において「電気・電子回路用積層板」とは、本発明の樹脂組成物を含む層と導電性金属層とを積層したものであり、本発明の樹脂組成物を含む層と導電性金属層とを積層したものであれば、電気・電子回路ではなくとも、例えばキャパシタも含む概念として用いられる。なお、電気・電子回路用積層板中には2種以上の樹脂組成物からなる層が形成されていてもよく、少なくとも1つの層において本発明の樹脂組成物が用いられていればよい。また、2種以上の導電性金属層が形成されていてもよい。
電気・電子回路用積層板における樹脂組成物からなる層の厚みは通常10~200μm程度である。また、導電性金属層の厚みは通常0.2~70μm程度である。この際、導電性金属としては、銅、アルミニウム等の金属や、これらの金属を含む合金が挙げられる。
【0073】
ここで、本発明における電気・電子回路用積層板の製造方法としては、公知の方法を用いることができるが、例えば次のような方法が挙げられる。
(1)ガラス繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維、セルロース、ナノファイバーセルロース等の無機及び/又は有機の繊維材料を用いた不織布やクロス等に、本発明の樹脂組成物を含浸させてプリプレグとし、導電性金属箔及び/又はメッキにより導電性金属層を設けた後、フォトレジスト等を用いて回路を形成し、こうした層を必要数重ねて積層板とする。
(2)前記(1)のプリプレグを心材とし、その上(片面又は両面)に、エポキシ樹脂組成物からなる層と導電性金属層を積層する(ビルドアップ法)。この樹脂組成物からなる層は有機及び/又は無機のフィラーを含んでいてもよい。
(3)心材を用いず、樹脂組成物からなる層と導電性金属層のみを交互に積層して電気・電子回路用積層板とする。
【実施例
【0074】
以下、本発明を実施例及び比較例に基づいて更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。特に断りがない限り、部は「質量部」を表し、%は「質量%」を表す。分析方法、測定方法を以下に示す。また、各種当量の単位は全て「g/eq.」である。
【0075】
(1)重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn):
GPC測定により求めた。具体的には、本体HLC8320GPC(東ソー株式会社製)にカラム(TSKgel SuperH-H、SuperH2000、SuperHM-H、SuperHM-H、以上東ソー株式会社製)を直列に備えたものを使用し、カラム温度は40℃にした。また、溶離液はDMF(20mM臭化リチウム含有品)を使用し、0.3mL/分の流速とし、検出器は示差屈折率検出器を使用した。測定試料は固形分で0.1gを10mLのDMFに溶解し、0.45μmのマイクロフィルターでろ過したものを20μL使用した。標準ポリエチレンオキシド(東ソー株式会社製、SE-2、SE-5、SE-8、SE-15、SE-30、SE-70、SE-150)より求めた検量線より換算して、Mwを求めた。なお、データ処理は東ソー株式会社製GPC8020モデルIIバージョン6.00を使用した。
【0076】
(2)不揮発分:
JIS K 7235規格に準拠して測定した。乾燥温度は200℃で、乾燥時間は60分間とした。
【0077】
(3)ガラス転移温度(Tg):
IPC-TM-650 2.4.25.c規格に準拠して測定した。具体的には、厚さ4mm、直径3mmの試料を、示差走査熱量測定装置EXSTAR6000 DSC6200(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いて、10℃/分の昇温条件で、20~280℃の範囲で2サイクル測定し、得られたセカンドスキャンの測定チャートの中間点ガラス転移温度(Tmg)で表した。
【0078】
(4)誘電特性:
空洞共振器摂動法にて1GHzで測定した際の比誘電率で評価した。具体的には、PNAネットワークアナライザN5230A(アジレント・テクノロジー株式会社製)及び空洞共振器CP431(関東電子応用開発株式会社製)を使用して、室温23℃、湿度50%RHの測定環境下、幅2.0mm×長さ80mm×厚み100μmの試験片を用いて測定を行った。
【0079】
実施例、比較例の使用する略号を以下の通りである。
【0080】
[2官能エポキシ樹脂]
A1:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、エポトートYD-128、エポキシ当量186)
A2:フルオレン型エポキシ樹脂(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、ESF-300、エポキシ当量250)
A3:ビフェニル型エポキシ樹脂(三菱ケミカル株式会社製、YX-4000、エポキシ当量186)
【0081】
[2官能フェノール化合物]
B1:ビスフェノールA(日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製、水酸基当量114)
B2:10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド(三光化学株式会社製、HCA-HQ、水酸基当量162)
【0082】
[触媒]
D1:トリス(2,6-ジメトキシフェニル)ホスフィン(東京化成工業株式会社製)
【0083】
[溶媒・溶剤]
S1:シクロヘキサノン
S2:メチルエチルケトン(MEK)
S3:ジエチレングリコールジメチルエーテル
【0084】
[末端にイソシアネート基を有するポリカルボジイミド化合物]
E1:ポリカルボジイミド(日清紡ケミカル株式会社製、カルボジライトV-05)
E2:合成例5で得られたポリカルボジイミド溶液
E3:合成例6で得られたポリカルボジイミド溶液
【0085】
合成例1(比較例1)
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管、及び滴下装置を備えたガラス製反応容器に、室温下で、A1を100部、B1を58部、反応溶媒としてS1を40部仕込み、窒素ガスを流し撹拌しながら130℃まで昇温し、触媒としてD1を0.2部添加した後、160℃まで昇温し、同温度で7時間反応を行った。希釈溶剤としてS1を40部、S2を160部使用して希釈混合して、不揮発分約40%のフェノキシ樹脂ワニス(G1)を得た。
【0086】
合成例2~4(比較例2~4)
表1に示す各原料の仕込み量(部)に従い、合成例1と同様操作を行い、フェノキシ樹脂ワニス(G2~G4)を得た。なお、表中の「モル比」は、2官能フェノール化合物に対する2官能エポキシ樹脂のモル比を表す。
【0087】
【表1】
【0088】
合成例5
4ツ口フラスコ中にトリレンジイソシアネート(以下、「TDI」と略す、2,4体=80%、2,6体=20%)を5.4部及びクロロベンゼンを55部入れ、カルボジイミド化触媒として3-メチル-1-フェニル-3-ホスホレン-1-オキシド(以下、「ホスホレンオキシド」と略す)を0.012部添加し、窒素雰囲気下120℃で攪拌しながら2時間反応させて、ポリカルボジイミド溶液(E2)を得た。得られたポリカルボジイミド溶液の赤外吸収スペクトルには2120cm-1にカルボジイミド結合の示す強い吸収と、2240cm-1にイソシアネート基の示す強い吸収が認められた。また、GPC分析により、Mnは5,000であった。
【0089】
合成例6
合成例5と同様の反応装置に、TDIを6.9部のイソホロンジイソシアネートに替え、クロロベンゼンを70部に変えた以外は、合成例5と同様の操作を行い、ポリカルボジイミド溶液(E3)を得た。得られたポリカルボジイミド溶液の赤外吸収スペクトルには2120cm-1と2240cm-1に強い吸収が認められた。また、GPC分析により、Mnは4,700であった。
【0090】
実施例1
撹拌装置、温度計、窒素ガス導入装置、冷却管、及び滴下装置を備えたガラス製反応容器に、室温下で、G1を100部、E1を0.03部、ジブチルスズマレートを0.005部仕込み、窒素ガスを流し撹拌しながら60℃まで昇温し、2時間反応を行い、不揮発分約40%のフェノキシ樹脂ワニス(R1)を得た。
【0091】
実施例2~6
表2に示す各原料の仕込み量(部)に従い、実施例1と同様操作を行い、フェノキシ樹脂ワニスを得た。
【0092】
【表2】
【0093】
合成例1~4、実施例1~6で得た樹脂ワニスG1~G4、R1~R6を、乾燥後の膜厚が100μmとなるよう鉄板に塗布し、乾燥機を用いて200℃、1時間乾燥して樹脂フィルムを得た。
フェノキシ樹脂ワニスでMwを、樹脂フィルムでTg及び誘電特性をそれぞれ測定した。その結果を表3に示す。樹脂ワニスG1~G4を使用した例は比較例である。
【0094】
【表3】
【0095】
表3からわかるように、実施例1~6に示す本発明のフェノキシ樹脂は誘電特性及び耐熱性に優れる。