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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】亀裂検出装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/22 20060101AFI20240911BHJP
   G01N 21/956 20060101ALI20240911BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G01B11/22 Z
G01N21/956 A
H01L21/78 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021013536
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022117055
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】永井 龍太郎
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133997(JP,A)
【文献】特開昭58-070540(JP,A)
【文献】特開2000-105203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01N 21/84-21/958
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工物の内部に亀裂を形成する前に、対物レンズの主光軸から偏心した検出光により前記被加工物を上面側から偏射照明して、前記被加工物の下面からの反射光を検出し、前記反射光の事前測定値を取得する事前測定手段と、
前記被加工物の内部に亀裂を形成した後に、前記主光軸から偏心した検出光により前記被加工物を上面側から偏射照明して、前記被加工物の下面からの反射光を検出し、前記反射光の本測定値を取得する本測定手段と、
前記事前測定値を用いて前記本測定値を補正し、前記被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出手段と、
を備える亀裂検出装置。
【請求項2】
前記亀裂検出手段は、前記事前測定値をV、本測定値をV、kを正の係数、M=V/Vとしたときに、補正後の測定値Iを下記の式により算出する、請求項1記載の亀裂検出装置。
【数1】
【請求項3】
被加工物の内部に亀裂を形成する前に、対物レンズの主光軸から偏心した検出光により被加工物を上面側から偏射照明して、前記被加工物の下面からの反射光を検出し、前記反射光の事前測定値を取得する事前測定工程と、
前記被加工物の内部に亀裂を形成した後に、前記主光軸から偏心した検出光により前記被加工物を上面側から偏射照明して、前記被加工物の下面からの反射光を検出し、前記反射光の本測定値を取得する本測定工程と、
前記事前測定値を用いて前記本測定値を補正し、前記被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出工程と、
を備える亀裂検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は亀裂検出装置及び方法に係り、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを非破壊で検出する亀裂検出装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハ等の被加工物の内部に集光点を合わせてレーザ光を分割予定ラインに沿って照射し、分割予定ラインに沿って被加工物内部に切断の起点となるレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置(レーザダイシング装置ともいう。)が知られている。レーザ加工領域が形成された被加工物は、その後、エキスパンド又はブレーキングといった割断プロセスによって分割予定ラインで割断されて個々のチップに分断される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、レーザ加工装置により被加工物にレーザ加工領域を形成すると、レーザ加工領域から被加工物の厚さ方向に亀裂(クラック)が伸展する。被加工物の内部に形成された亀裂は、被加工物を分断する際の起点となるため、その亀裂の伸展度合いが被加工物の分断後のチップの品質に影響を与える。
【0004】
このため、レーザ加工装置によりレーザ加工領域を形成した後、割断プロセスの前において、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出することにより、割断プロセスにおけるチップへの分断の良否を予測することが可能となる。
【0005】
特許文献1には、被加工物に対して検出光を偏射照明して、被加工物からの反射光を受光することにより、被加工物の内部に形成された亀裂の深さを検出する亀裂検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-133997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の亀裂検出装置は、被加工物に検出光を照射して、被加工物の表面及び裏面で反射された反射光を検出するものである。より具体的には、特許文献1に記載の亀裂検出装置は、被加工物の裏面(上面)に検出光を照射して、被加工物の表面(下面)で反射された反射光が亀裂によって遮られて反射光の光量が低下することを利用して亀裂深さを検出する。
【0008】
ところで、被加工物の表面の性状によっては、亀裂検出のための検出光を照射して反射光を検出する際に反射率のむらが生じ得る。例えば、被加工物が半導体ウェーハの場合、半導体ウェーハの表面にはデバイスが形成されているため、半導体ウェーハの表面のデバイスのパターンの影響により反射率のむらが生じる。また、半導体ウェーハ以外の被加工物の場合でも、被加工物の表面に形成された構造物等により反射率のむらが生じる。この場合、反射光の検出信号には、亀裂に関する情報(亀裂に起因する反射光の光量の変化に関する情報)だけでなく、被加工物の表面の性状に起因する反射率のむらに関する情報(反射率のむらに起因する反射光の光量の変化に関する情報)が含まれてしまう。
【0009】
上記のように、被加工物の裏面に検出光を照射して被加工物の内部に形成された亀裂の深さ位置を検出する場合、被加工物の表面の性状により生じる反射率のむらのために、亀裂の深さ位置の検出精度が低下するという問題がある。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、被加工物の表面の性状により生じる反射率のむらの影響を抑制して、被加工物の内部に形成された亀裂の位置を精度よく検出することが可能な亀裂検出装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る亀裂検出装置は、主光軸に沿って検出光を出射する光源部と、主光軸と同軸のレンズ光軸を有し、光源部から出射した検出光を被加工物の上面側から入射させて被加工物の内部に集光させる対物レンズと、被加工物の内部に亀裂を形成する前に、主光軸から偏心した検出光により被加工物を偏射照明して、被加工物の下面からの反射光を検出し、反射光の事前測定値を取得する事前測定手段と、被加工物の内部に亀裂を形成した後に、主光軸から偏心した検出光により被加工物を偏射照明して、被加工物からの反射光を検出し、反射光の本測定値を取得する本測定手段と、事前測定値を用いて本測定値を補正し、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出手段とを備える。
【0012】
本発明の第2の態様に係る亀裂検出装置は、第1の態様において、亀裂検出手段は、事前測定値をV、本測定値をV、kを正の係数、M=V/Vとしたときに、補正後の測定値Iを下記の式により算出する。
【数1】
【0013】
本発明の第3の態様に係る亀裂検出方法は、被加工物の内部に亀裂を形成する前に、対物レンズの主光軸から偏心した検出光により被加工物を上面側から偏射照明して、被加工物の下面からの反射光を検出し、反射光の事前測定値を取得する事前測定工程と、被加工物の内部に亀裂を形成した後に、主光軸から偏心した検出光により被加工物を偏射照明して、被加工物からの反射光を検出し、反射光の本測定値を取得する本測定工程と、事前測定値を用いて本測定値を補正し、被加工物の内部に形成された亀裂の亀裂深さを検出する亀裂検出工程とを備える。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、被加工物の内部に形成された亀裂の深さを精度よく検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置を示すブロック図である。
図2図2は、被加工物に対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
図3図3は、被加工物に対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
図4図4は、被加工物に対して検出光の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。
図5図5は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である(図2に対応)。
図6図6は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である(図3に対応)。
図7図7は、光検出器に受光される反射光の様子を示した図である(図4に対応)。
図8図8は、被加工物からの反射光が対物レンズ瞳に到達する経路を説明するための図である。
図9図9は、ウェーハの内部における検出光及び反射光の光路を模式的に示す図である。
図10図10は、本測定データ及び補正後データに基づく亀裂検出結果を比較して示す表である。
図11図11は、本実施形態に係る亀裂検出装置の測定値補正演算機能を示すブロック図である。
図12図12は、本発明の一実施形態に係る亀裂検出方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明に係る亀裂検出装置及び方法の実施の形態について説明する。
【0017】
[亀裂検出装置]
図1は、本発明の一実施形態に係る亀裂検出装置を示すブロック図である。
【0018】
亀裂検出装置10は、被加工物であるウェーハWの内部にレーザ加工領域を形成するレーザ加工装置(不図示)と組み合わせて使用される装置であり、例えば、レーザ加工装置の加工ヘッドと一体的に移動可能に設けられる。以下の説明では、亀裂検出装置10に係る構成要素について説明し、レーザ加工装置の構成については説明を省略する。
【0019】
本実施形態に係る亀裂検出装置10は、シリコンウェーハ等のウェーハWに対して検出光L1を照射し、ウェーハWからの反射光L2を検出することで、ウェーハWの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さを検出する。なお、以下の説明では、ウェーハWが載置されるステージ510をXY平面と平行な平面とし、Z方向をウェーハWの厚さ方向とする3次元直交座標系を用いる。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る亀裂検出装置10は、光源部100、照明光学系200、界面検出用光学系300、亀裂検出用光学系400、制御部500、集光点位置移動機構502、対物レンズ504、操作部506及び表示部508を含んでいる。
【0021】
光源部100は、検出光L1を出射する。検出光L1は、ウェーハWの界面位置の検出、及びウェーハWの内部に形成された亀裂Kの検出に用いられる。ここで、ウェーハWがシリコンウェーハの場合、検出光L1としては、ウェーハWに対して透過性を有する光、例えば、波長1,000nm以上の赤外光を用いる。
【0022】
光源部100は、光源102A、102B及び102C並びにハーフミラー104を含んでいる。光源102A、102B及び102C並びにハーフミラー104は、対物レンズ504のレンズ光軸と同軸の主光軸AXに沿って配置されている。
【0023】
光源102A、102B及び102Cは、主光軸AXに沿って検出光L1を出射する。光源102A、102B及び102Cとしては、例えば、レーザ光源(赤外線レーザ光源、レーザーダイオード)、又はLED(Light Emitting Diode)光源を用いることができる。
【0024】
光源102Aは、対物レンズ504の対物レンズ瞳504aの略全面を照明することが可能なレーザ開口を有している。光源102Aは、後述の界面検出に用いられる。
【0025】
光源102B及び102Cは、対物レンズ504の対物レンズ瞳504aのうち、主光軸AX(レンズ光軸)から偏心した一部のみを照明することが可能なレーザ開口をそれぞれ有している。光源102B及び102Cは、後述の亀裂検出に用いられる。
【0026】
なお、本実施形態では、界面検出用の開口(光源102A)と亀裂検出用の開口(光源102B及び102C)を別々に設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば、1つの開口を兼用して、遮光手段を用いて界面検出用の開口と亀裂検出用の開口とを切り替えてもよい。
【0027】
ハーフミラー104は、界面検出用の光源102Aから出射される検出光L1を反射し、亀裂検出用の光源102B及び102Cから出射される検出光L1を透過させる。以下、図示は省略するが、光源102A、102B及び102Cから出射される検出光L1をそれぞれL1(A)、L1(B)及びL1(C)とする。
【0028】
なお、本実施形態では、ハーフミラー104に代えて、全反射ミラー又はダイクロイックミラーを用いることも可能である。この場合、界面検出時に光路上のハーフミラー104の位置にミラーを挿入し、亀裂検出時に光路からミラーを退避させればよい。
【0029】
光源102A、102B及び102Cは、それぞれ制御部500と接続されており、制御部500により光源102A、102B及び102Cの出射制御が行われる。
【0030】
制御部500は、例えば、パーソナルコンピュータ又はワークステーションにより実現される。制御部500は、亀裂検出装置10の各部の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、制御プログラムを格納するストレージデバイス(図11の符号512。例えば、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等)及びCPUの作業領域として使用可能なSDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)を含んでいる。制御部500は、操作部506を介して操作者による操作入力を受け付け、操作入力に応じた制御信号を亀裂検出装置10の各部に送信して各部の動作を制御する。
【0031】
操作部506は、操作者による操作入力を受け付ける手段であり、例えば、キーボード、マウス又はタッチパネル等を含んでいる。
【0032】
表示部508は、亀裂検出装置10の操作のための操作GUI(Graphical User Interface)及び画像(例えば、亀裂の検出結果等)を表示する装置である。表示部508としては、例えば、液晶ディスプレイを用いることができる。
【0033】
照明光学系200は、光源部100から出射された検出光L1を対物レンズ504に導光する。照明光学系200は、リレーレンズ202及び206と、ミラー204(例えば、全反射ミラー)とを含んでいる。
【0034】
光源部100から出射された検出光L1は、リレーレンズ202を透過して、ミラー204により反射されて光路が折り曲げられる。ミラー204によって反射された検出光L1は、リレーレンズ206を透過した後、ハーフミラー304及びハーフミラー302によって順次反射されて対物レンズ504に向けて出射される。
【0035】
ウェーハWによって反射されてハーフミラー302を透過して戻ってきた戻り光(観察光)は、観察光学系600(例えば、フォトディテクタ等)を用いて観察可能となっている。なお、観察光学系600を用いない場合には、ハーフミラー302に代えてダイクロイックミラー又は全反射ミラーを用いることができる。
【0036】
対物レンズ504は、照明光学系200から出射された検出光L1をウェーハWに集光(合焦)させる。対物レンズ504は、ウェーハWに対向する位置に配置され、主光軸AXと同軸に配置される。
【0037】
集光点位置移動機構502は、検出光L1の集光点の位置をZ方向(対物レンズ504の光軸方向)に変化させる。集光点位置移動機構502は、対物レンズ504をZ方向に移動させるアクチュエータ(例えば、ピエゾアクチュエータ。不図示)を含んでいる。集光点位置移動機構502は、制御部500の制御に従ってピエゾアクチュエータを駆動することにより、対物レンズ504をZ方向に移動させる。これにより、対物レンズ504とウェーハWとのZ方向の相対距離を変化させて、検出光L1の集光点のZ方向における位置を調整(微調整)することができる。
【0038】
また、集光点位置移動機構502は、ステージ510に対して亀裂検出装置10をZ方向に移動させるZ駆動機構を含んでいてもよい。Z駆動機構は、亀裂検出装置10をZ方向に移動させることにより、ピエゾアクチュエータよりも大きな調整幅で、対物レンズ504とウェーハWとのZ方向の位置合わせ(粗調整)を行う。
【0039】
上記のように、Z駆動機構による集光点の位置調整(粗調整)と、ピエゾアクチュエータによる集光点の位置調整(微調整)とを組み合わせる場合、ピエゾアクチュエータのみの場合に比べて、検出光L1の集光点のZ方向の位置の調整の自由度(調整幅)が広がる。これにより、様々な厚みのウェーハWに対して亀裂検出等が可能となる。
【0040】
なお、Z駆動機構は、ステージ510をZ方向に駆動させる機構であってもよいし、亀裂検出装置10とステージ510の両方をZ方向に駆動させる機構であってもよい。また、Z駆動機構は、レーザ加工装置の加工ヘッドを移動させる駆動機構を兼ねていてもよい。
【0041】
対物レンズ504によって集光され、ウェーハWによって反射された反射光L2は、界面検出用光学系300及び亀裂検出用光学系400に導光され、それぞれ、ウェーハWの界面検出及び亀裂の検出に用いられる。
【0042】
[亀裂検出の手順]
本実施形態では、ウェーハWの表面Wa(ステージ510に接する面であって、デバイスが形成された面)の界面の検出を行い、その後、ウェーハWの表面Waの界面位置を基準として亀裂深さを検出する例について説明する。
【0043】
なお、本実施形態では、ウェーハWの表面Waを基準として亀裂深さの検出を行うようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、ウェーハWの裏面Wbを基準として亀裂深さの検出を行ってもよいし、ウェーハWの表面Wa及び裏面Wbの双方の界面位置をそれぞれ基準として検出した亀裂深さの平均値をとるようにすることも可能である。
【0044】
[界面検出用光学系]
まず、ウェーハWの界面検出について説明する。
【0045】
界面検出用光学系300は、ウェーハWの界面(表面Wa又は裏面Wb)の検出を行うための光学系であり、ハーフミラー302、ハーフミラー304、リレーレンズ306、ハーフミラー308及び光検出器310を含んでいる。
【0046】
ウェーハWの界面として、ウェーハWの表面Waを検出するときには、制御部500は、光源102Aを発光させて、検出光L1(A)をウェーハWの裏面(上面)Wb側に照射する。
【0047】
光源102Aからの検出光L1(A)は、対物レンズ504の対物レンズ瞳504aと略同じ大きさの開口を有するレーザ光であり、ハーフミラー304及びハーフミラー302によって順次反射されて対物レンズ504に導光される。検出光L1(A)は、対物レンズ504の対物レンズ瞳504aの略全面に照射される。
【0048】
ここで、検出光L1(A)がウェーハWにより反射された反射光をL2(A)とする。反射光L2(A)は、ハーフミラー302によって反射され、ハーフミラー304を透過した後リレーレンズ306に導光される。リレーレンズ306を透過した反射光L2(A)は、ハーフミラー308によって反射されて光検出器310に導光される。
【0049】
光検出器310は、ウェーハWからの反射光L2(A)を受光して、ウェーハWの界面の検出を行うための装置であり、検出器本体310A及びピンホールパネル310Bを含んでいる。
【0050】
検出器本体310Aとしては、受光した光を電気信号に変換して制御部500に出力するフォトディテクタ(例えば、フォトダイオード)又は赤外線カメラ等を用いることができる。
【0051】
ピンホールパネル310Bには、入射光の一部を透過させるためのピンホールが形成されている。ピンホールパネル310Bは、検出器本体310Aの受光面に対して上流側に配置されており、ピンホールパネル310Bのピンホールが反射光L2(A)の光軸上に位置するように配置されている。ピンホールパネル310Bのピンホールの位置は、対物レンズ504の集光点(前側焦点位置)と光学的に共役関係にある(コンフォーカルピンホール)。また、ピンホールパネル310Bのピンホールの大きさは、対物レンズ504の回折限界程度に調整されている。
【0052】
ウェーハWにより反射された反射光L2(A)は、対物レンズ504の集光点と光学的に共役な位置にあるピンホールパネル310Bのピンホールの位置に集光する。そして、対物レンズ504の集光点が反射面となるウェーハWの表面Waと一致した場合、検出光L1(A)の光束はウェーハWの表面Waで反射されて、平行光束となって対物レンズ504を透過して戻ってくる。したがって、検出器本体310Aから出力される信号D(図10参照)は、対物レンズ504の集光点が反射面となるウェーハWの表面Waの位置と一致したときに鋭いピークを有することになる。
【0053】
制御部500は、光源102Aからの検出光L1(A)をウェーハWに照射しながら、集光点位置移動機構502により対物レンズ504とウェーハWとの間の相対距離を変化させて、検出光L1(A)の集光点の位置(すなわち、対物レンズ504の前側焦点位置)をZ方向に移動させる。これにより、検出光L1(A)の集光点がZ方向に走査される。制御部500は、検出光L1(A)の集光点がZ方向に走査されたときのウェーハWからの反射光L2(A)を光検出器310により検出し、この光検出器310からの信号のピークを検出することにより、ウェーハWの表面Waの界面位置Z(0)を検出する。
【0054】
なお、本実施形態では、コンフォーカル法を用いてウェーハWの界面検出を行うようにしたが、本発明はこれに限定されない。例えば、非点収差法、白色干渉法等のその他の焦点検出方法を用いてもよい。
【0055】
[亀裂検出用光学系]
次に、ウェーハWの内部に形成された亀裂Kの検出について説明する。
【0056】
亀裂検出用光学系400は、リレーレンズ402、光検出器404及び406を含んでいる。
【0057】
ウェーハWの内部に形成された亀裂Kを検出するときには、制御部500は、光源102B及び102Cを発光させて、検出光(プローブ光)L1(B)及びL1(C)をウェーハWに照射する。ここで、制御部500、亀裂検出用光学系400は、それぞれ事前測定手段、本測定手段及び亀裂検出手段の一部として機能する。光源102B及び102Cは、それぞれ主光軸AXからずれた位置にレーザ開口を有している。これにより、主光軸AXに対して偏心した検出光L1(B)及びL1(C)がウェーハWに照射される。
【0058】
検出光L1(B)及びL1(C)がウェーハWによりそれぞれ反射された反射光L2(B)及びL2(C)は、ハーフミラー302によって反射された後、ハーフミラー304、リレーレンズ306及びハーフミラー308を順次透過してリレーレンズ402に入射する。リレーレンズ402を透過した反射光L2(B)及びL2(C)は、光検出器404及び406により受光される。
【0059】
なお、界面検出用光学系300では、ハーフミラー308に代えて全反射ミラー又はダイクロイックミラー等を用いることも可能である。この場合、界面検出時に光路上のハーフミラー308の位置にミラーを挿入し、亀裂検出時に光路上からミラーを退避させればよい。
【0060】
光検出器404及び406は、ウェーハWからの反射光L2(B)及びL2(C)を受光して、ウェーハWの内部の亀裂Kの検出を行うための装置である。光検出器404及び406としては、受光した光を電気信号に変換して制御部500に出力するフォトディテクタ(例えば、フォトダイオード)又は赤外線カメラ等を用いることができる。
【0061】
光検出器404及び406は対物レンズ瞳504aと共役位置に配置され、さらに、検出光L1(B)及びL1(C)を受光するよう対物レンズ504の光軸からずれた位置に配置されている。
【0062】
図2から図4は、ウェーハWに対して検出光L1の偏射照明が行われたときの様子を示した説明図である。図2は対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在する場合、図3は対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在しない場合、図4は対物レンズ504の集光点と亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置)とが一致する場合をそれぞれ示している。
【0063】
また、図5から図7は、光検出器404及び406に受光される反射光L2の様子を示した図であり、それぞれ図2から図4に示した場合に対応するものである。
【0064】
また、図8は、ウェーハWからの反射光L2が対物レンズ瞳504aに到達する経路を説明するための図である。なお、ここでは、検出光L1は、対物レンズ瞳504aの一方側(図8の右側)の第1領域G1を通過して、ウェーハWに対して偏射照明が行われる場合について説明する。
【0065】
図2に示すように、対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在する場合には、検出光L1は亀裂Kで全反射して、その反射光L2は主光軸AXに対して検出光L1の光路と同じ側の経路をたどって、対物レンズ瞳504aの検出光L1と同じ側の領域に到達する成分となる。すなわち、図8に示すように、光源部100からの検出光L1が対物レンズ504を介してウェーハWに照射されるときの検出光L1の経路をR1としたとき、ウェーハWの内部の亀裂Kで全反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して同じ側(図8の右側)の経路R2をたどって対物レンズ瞳504aの第1領域G1を通過する。
【0066】
図3に示すように、対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在しない場合には、検出光L1はウェーハWの表面Waで反射し、その反射光L2は対物レンズ瞳504aの検出光L1と反対側の領域に到達する成分となる。すなわち、図8に示すように、ウェーハWの表面Waで反射した反射光L2は、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して反対側(図8の左側)の経路R3をたどって対物レンズ瞳504aの第2領域G2を通過する。
【0067】
図4に示すように、対物レンズ504の集光点と亀裂Kの下端位置とが一致する場合には、検出光L1は、反射光成分L2aと非反射光成分L2bとに分割される。反射光成分L2aは、亀裂Kで全反射した後、表面Waで反射して、対物レンズ瞳504aの検出光L1と同じ側の領域に到達し、非反射光成分L2bは、亀裂Kで全反射されずにウェーハWの表面Waで反射して対物レンズ瞳504aの検出光L1と反対側の領域に到達する。すなわち、図8に示すように、反射光L2のうち、ウェーハWの内部の亀裂Kで全反射した反射光成分L2aは、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して同じ側(図8の右側)の経路R2をたどって対物レンズ瞳504aの第1領域G1を通過するとともに、亀裂Kで全反射されずにウェーハWの表面Waで反射した非反射光成分L2bは、検出光L1の経路R1とは主光軸AXに対して反対側(図8の左側)の経路R3をたどって対物レンズ瞳504aの第2領域G2を通過する。
【0068】
光検出器404及び406は、それぞれが対物レンズ瞳504aの第1領域G1及び第2領域G2と光学的に共役な位置となるように配置されている。これにより、光検出器404及び406は、それぞれ対物レンズ瞳504aの第1領域G1及び第2領域G2を通過した光を選択的に受光可能となっている。
【0069】
ここで、図2に示す例(対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在する場合)では、光検出器404及び406のうち、光検出器404の受光面404Cに反射光L2が入射する。このため、図5に示すように、光検出器404の受光面404Cから出力される検出信号のレベルが光検出器406の受光面406Cから出力される検出信号のレベルよりも高くなる。
【0070】
一方、図3に示す例(対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在しない場合)では、光検出器404及び406のうち、光検出器406の受光面406Cに反射光が入射する。このため、図6に示すように、光検出器406の受光面406Cから出力される検出信号のレベルが光検出器404の受光面404Cから出力される検出信号のレベルよりも高くなる。
【0071】
また、図4に示す例(対物レンズ504の集光点と亀裂Kの下端位置とが一致する場合)では、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cに反射光L2の各成分L2a、L2bがそれぞれ入射する。このため、図7に示すように、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cから出力される検出信号のレベルが略等しくなる。
【0072】
このように、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cで受光される光量は、対物レンズ504の集光点に亀裂Kが存在するか否かによって変化する。本実施形態では、このような性質を利用して、ウェーハWの内部に形成された亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置を示す亀裂端位置)を検出することができる。
【0073】
具体的には、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cから出力される検出信号の出力をそれぞれD1及びD2としたとき、対物レンズ504の集光点における亀裂Kの存在を判断するための評価値Sは、次式で表すことができる。
【0074】
S=(D1-D2)/(D1+D2)
上記の式において、S=0の条件を満たすとき、すなわち、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cによって受光される光量が一致するとき、対物レンズ504の集光点と亀裂下端位置(又は亀裂上端位置)とが一致した状態を示す。
【0075】
制御部500(図1参照)は、集光点位置移動機構502を制御して検出光L1の集光点をZ方向に移動させ、ウェーハWの表面Waの界面位置からウェーハWの厚さ方向(Z方向)に順次変化させながら、光検出器404及び406の受光面404C及び406Cから出力される検出信号を順次取得し、この検出信号に基づいて上記の式で示される評価値Sを算出し、この評価値S及び集光点位置情報を評価することによって亀裂Kの亀裂深さ(亀裂下端位置又は亀裂上端位置)を検出することができる。
【0076】
[ウェーハWの表面の性状を考慮した亀裂検出]
次に、上記の亀裂検出装置10において、ウェーハWの表面の性状により生じる反射率のむらの影響を抑制する亀裂検出について説明する。
【0077】
本実施形態では、ウェーハWの表面(下面)Waの性状(デバイス面)に起因して生じる反射率のむらの影響を抑制するため、下記の手順により、亀裂Kの亀裂上端位置K及び亀裂下端位置Kを算出する。
【0078】
まず、ウェーハWの内部に亀裂Kを形成する前(レーザ加工前)に、事前測定を実施して、ウェーハWに照射する検出光L1a及びL1bの集光点位置をZ方向に走査したときに得られる反射光L2a及びL2bの検出信号の変化を示す事前測定データを取得する(図9参照)。次に、ウェーハWの内部に亀裂Kを形成した後(レーザ加工後)に、事前測定の場合と同様に、ウェーハWからの反射光L2a及びL2bの測定を実施して、ウェーハWに照射する検出光L1a及びL1bの集光点位置をZ方向に走査したときに得られる反射光L2a及びL2bの検出信号の変化を示す本測定データを取得する。そして、事前測定データを反射率データと見立てて、本測定データを補正し、補正後の本測定データ(以下、補正後データという。)から亀裂Kの亀裂上端位置K及び亀裂下端位置Kを算出する。
【0079】
次に、本実施形態に係る亀裂検出の手順の概要について、図9を参照して説明する。図9は、ウェーハWの内部における検出光L1a及びL1b並びに反射光L2a及びL2bの光路を模式的に示す図である。なお、図9では、図面の簡略化のため、ウェーハWの裏面Wb及びウェーハWの断面のハッチングを省略している。また、対物レンズ504を簡略化して示している。
【0080】
また、図9に示す例では、図中右側(以下、a側という。)及び図中左側(以下、b側という。)からそれぞれ入射する検出光をそれぞれL1a(第1の検出光)及びL1b(第2の検出光)とし、検出光L1a及びL1bがウェーハWの表面Waで反射された反射光をそれぞれL2a(第1の反射光)及びL2b(第2の反射光)とする。ここで、a側及びb側は、それぞれ図8の第1領域G1及び第2領域G2に対応している。
【0081】
図9のa側(図8の第1領域G1側)からウェーハWに入射する検出光L1aは、ウェーハWの表面Waで反射された後、反射光L2aとして図9のb側(図8の第2領域G2側)で対物レンズ504側に戻って光検出器406によって検出される。一方、図9のb側からウェーハWに入射する検出光L1bは、ウェーハWの表面Waで反射された後、反射光L2bとして図9のa側に戻って光検出器404によって検出される。
【0082】
事前測定では、ウェーハWの内部に亀裂Kが未形成の状態であるため、亀裂Kによって検出光L1a及びL1b並びに反射光L2a及びL2bが遮られることはない。検出光L1a及びL1bの集光点をZ方向に走査すると、検出光L1a及びL1bがウェーハWの表面Waで反射される反射点の位置がそれぞれY方向に沿う矢印Aa及びAbに沿って移動する。事前測定データは、検出光L1a及びL1bの集光点をZ方向に走査したときの反射光L2a及びL2bの検出信号の変化に示すデータであるから、ウェーハWの表面Waの性状(デバイス面)に起因して生じるY方向の反射率のむらに関する情報を含んでいる。
【0083】
本実施形態では、この事前測定データを用いて本測定データを補正し、補正後データを用いて亀裂の深さ位置を検出することにより、ウェーハWの表面Waの性状の亀裂検出結果に対する影響を抑制する。すなわち、事前測定データにおいて、反射率のむらにより反射光L2a及びL2bの光量が減少している場合に、反射光L2a及びL2b光量の減少分を補う補正を行う。
【0084】
より具体的には、事前測定データにおけるセンサ値(事前測定値)をV、本測定データにおけるセンサ値(本測定値)をVとしたとき、補正後データにおけるセンサ値Iは次の式(1)により求められる。
【0085】
【数2】
但し、Mは、事前測定値Vと本測定値Vとの比(V/V)を示す。
【0086】
ここで、kは任意係数(正の係数)である。これは、事前測定データと本測定データでウェーハWの表面のWaの反射率が等しい(センサ値が等しくなる)場合、(V/V)が1になるため、表示するグラフのレンジによっては、補正後データと本測定データの違いが見えづらくなる。いわば、係数kは、補正後データのグラフを見やすくするための係数である。例えば、グラフのレンジとして10-0Vレンジを採用する場合、一例でk=8にして補正演算を行う。
【0087】
式(1)によれば、本測定データにおけるセンサ値Vに、本測定データにおけるセンサ値Vと、事前測定データにおけるセンサ値Vとの比をかけることにより、事前測定データにおいてセンサ値Vが減少している部分について反射光L2a及びL2b光量の減少分を補う補正を行うことができる。
【0088】
図10は、本測定データ及び補正後データに基づく亀裂検出結果を比較して示す表である。図10には、上段から順に、事前測定データ、本測定データ及び補正後データのグラフを示しており、各データのグラフDa及びDbは、それぞれ反射光L2a及びL2bの検出信号を示している。各グラフの横軸は、検出光L1a及びL1bの集光点の位置を示す集光点位置移動機構502のピエゾ移動量であり、縦軸は検出信号のセンサ値である。
【0089】
図10の事前測定データのグラフに破線で示すラインDRefは、検出光L1a及びL1bがウェーハWの表面Waで全反射されたと仮定した場合(すなわち、表面Waが全反射面のミラーウェーハの場合)の出力値を示している。なお、検出光L1a及びL1bの光量が等しい場合には、各反射光L2a及びL2bのDRefは一致するが、図示の便宜上、縦軸方向にずらして示している。
【0090】
事前測定データのグラフDa及びDbにおいてラインDRefより下回っている(反射率が低い)箇所は、ウェーハWの表面の性状(デバイス面)の影響を受けている箇所と考えられる。
【0091】
この事前測定データを用いて本測定データを、式(1)を用いて補正することにより、補正後データが得られる。なお、補正後データでは、補正に用いる係数kが異なるので、グラフDa及びDbにおけるセンサ値の最大値が互いに異なっている。
【0092】
図10のグラフには、本測定データ及び補正後データを用いてそれぞれ求めた亀裂上端位置K及び亀裂下端位置Kの位置(検出値)を図示している。図10の表の右端欄の数値は、ウェーハWを割断して亀裂Kの顕微鏡で目視したときの亀裂上端位置K及び亀裂下端位置Kの目視の測定値(以下、目視値という。)と、各検出値との比較結果を示している。
【0093】
図10に示すように、本測定データ(補正なし)を用いて求めた亀裂上端位置K及び亀裂下端位置Kの検出値と目視値との差は、それぞれ10μm及び8.4μmである。これに対して、補正後データを用いて求めた亀裂上端位置K及び亀裂下端位置Kの検出値と目視値との差は、それぞれ5.3μm及び6.3μmである。上記の結果から、補正後データを用いて求めた検出値の方が、本測定データ(補正なし)を用いて求めた検出値と比較して、上端及び下端のいずれの場合も目視値との差が小さくなっていることが分かる。つまり、上記の結果から、事前測定データを用いてウェーハWの表面Waの影響を除去することにより、亀裂検出の精度を向上させることができる。
【0094】
図11は、本実施形態に係る亀裂検出装置の測定値補正演算機能を示すブロック図である。
【0095】
図11に示すように、亀裂検出装置10の制御部500は、亀裂Kの亀裂上端位置K及び亀裂下端位置Kの測定値を補正するための測定値補正演算機能700を備えている。
【0096】
制御部500は、レーザ加工前に事前測定を行った後に事前測定データData1を取得し、ストレージデバイス512に保存する。図11に示すように、事前測定データData1は、a側から入射する検出光L1aから得られる検出信号(a側事前測定値。グラフDaに対応。)と、b側から入射する検出光L1bから得られる検出信号(b側事前測定値。グラフDbに対応。)とを含んでいる。
【0097】
次に、制御部500は、レーザ加工後に本測定を行い、本測定データData2を取得する。本測定データData2は、事前測定データData1と同様、a側から入射する検出光L1aから得られる検出信号(a側測定値(本測定値)。グラフDaに対応。)と、b側から入射する検出光L1bから得られる検出信号(b側測定値(本測定値)。グラフDbに対応。)とを含んでいる。制御部500は、本測定が終了すると、本測定データData2を測定値補正演算機能700に入力する。
【0098】
測定値補正演算機能700は、ストレージデバイス512から事前測定データData1を読み出して、本測定データData2を補正する。すなわち、式(1)により、a側事前測定値を用いてa側測定値を補正し、b側事前測定値を用いてb側測定値を補正して、補正後データData3を生成する。制御部500は、補正後データData3を用いて亀裂検出を行う。上記のように、事前測定データData1を用いて、ウェーハWの表面Waの性状の影響を抑制することにより、亀裂深さの検出精度の向上を実現することができる。
【0099】
なお、事前測定は、被加工物であるウェーハWごとに実施してもよいし、一部のウェーハWについてのみ実施してもよい。例えば、複数枚の同種のウェーハWのレーザ加工を行う場合等には、そのうちの1枚又は一部のウェーハWをサンプルとして抽出し、サンプルのウェーハWについてのみ実施する。そして、サンプルのウェーハWから得られた事前測定データData1又はその平均値のデータを用いて、サンプル以外のウェーハWから得られた本測定データData2を補正するようにしてもよい。また、ウェーハWの種類(例えば、ウェーハWの大きさ、厚み、材質、ウェーハWの表面Waに形成されるデバイスの種類等)ごとに、事前測定データData1をあらかじめ用意しておき、操作部506を用いてウェーハWの種類を指定することにより、事前測定データData1をストレージデバイス512から呼び出せるようにしてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、a側の検出光L1aとb側の検出光L1bの2つの検出光を用いて亀裂検出を行ったが、いずれか一方の検出光のみを用いて亀裂検出を行うことも可能である。
【0101】
[亀裂検出方法]
図12は、本発明の一実施形態に係る亀裂検出方法を示すフローチャートである。
【0102】
まず、被加工物であるウェーハWと対物レンズ504の相対位置を調整し(ステップS10)、事前測定を行う(ステップS12:事前測定工程)。事前測定工程では、ウェーハWの内部に亀裂Kが未形成の状態で、検出光L1a及びL1bの集光点をZ方向に走査することにより、検出光L1a及びL1bがウェーハWの表面Waで反射される反射点の位置をそれぞれY方向に沿う矢印Aa及びAbに沿って移動させる。これにより、ウェーハWの表面Waの性状(デバイス面)に起因して生じるY方向の反射率のむらに関する情報を含む事前測定データを取得することができる。ここで、事前測定を行う際には、ウェーハWの表面(下面)Waのピークと、裏面(上面)Wbのピークが共に確認可能となるように、ウェーハWと対物レンズ504の相対位置の調整を行う(ステップS14)。
【0103】
次に、レーザ加工を行って、ウェーハWの内部に亀裂Kを形成した後に(ステップS16)、本測定を行う(ステップS18:本測定工程)。本測定工程では、ウェーハWの内部に亀裂Kを形成した状態で、事前測定工程と同様に、検出光L1a及びL1bの集光点をZ方向に走査することにより、本測定データを取得する。
【0104】
次に、測定値補正演算機能700により、測定値ステップS12の事前測定データData1を用いて、ステップS18の本測定データData2を補正し、補正後データData3を生成する。そして、補正後データData3を用いて亀裂Kの検出を行う(ステップS20:亀裂検出工程)。
【0105】
[別の実施形態]
なお、上記の実施形態では、レーザ加工後の本測定データData2のセンサ値Vとレーザ加工前の事前測定データData1のセンサ値Vの比を用いて補正後データData3を生成したが、本発明はこれに限定されない。例えば、レーザ加工後の本測定データData2からレーザ加工前の事前測定データData1を差し引いて、その差分(I=V-V)を補正後データData3として亀裂Kを検出することも可能である。
【0106】
なお、事前測定データData1をあらかじめ用意しておく場合等には、事前測定と本測定とを別々に行うことになる。この場合、異なる時間に測定したデータ間では、データ取得時における光源部100の光源強度の変動などの光量変動が生じ得る。
【0107】
したがって、別の実施形態のように、差分を用いて補正後データData3を生成する場合には、光源変動の影響を考慮する必要がある。例えば、本測定時における光源部100の光量が事前測定時よりも低下していた場合、本測定時の反射光L2a及びL2bの光量が低下するため、本測定データData2のセンサ値を上げるか、又は事前測定データData1のセンサ値を下げるための関数を加えるか、又はそのような係数をかけることが考えられる。
【0108】
これに対して、上記の実施形態のように、レーザ加工後の本測定データData2のセンサ値Vとレーザ加工前の事前測定データData1のセンサ値Vの比を用いて補正後データData3を生成する場合、各データの取得時における光源部100の光量の変動を考慮する必要がない。したがって、上記の実施形態によれば、より簡単な演算で、亀裂深さの検出精度に対するウェーハWの表面Waの性状の影響を抑制することができる。
【符号の説明】
【0109】
10…亀裂検出装置、100…光源部、102A、102B、102C…光源、104…ハーフミラー、200…照明光学系、202…リレーレンズ、204…ミラー、206…リレーレンズ、300…界面検出用光学系、302…ハーフミラー、304…ハーフミラー、306…リレーレンズ、308…ハーフミラー、310…光検出器、400…亀裂検出用光学系、402…リレーレンズ、404、406…光検出器、500…制御部、502…集光点位置移動機構、504…対物レンズ、506…操作部、508…表示部、510…ステージ、512…ストレージデバイス、700…測定値補正演算機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12