(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】形状測定機及び形状測定機のアライメント方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/20 20060101AFI20240911BHJP
G01B 11/24 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G01B5/20 C
G01B11/24 A
(21)【出願番号】P 2021028748
(22)【出願日】2021-02-25
【審査請求日】2023-12-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】森山 克文
(72)【発明者】
【氏名】森井 秀樹
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/187191(WO,A1)
【文献】特開2018-163093(JP,A)
【文献】特開2011-174779(JP,A)
【文献】特開2016-83729(JP,A)
【文献】特開2008-70181(JP,A)
【文献】特開2009-300153(JP,A)
【文献】特開2013-50451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 5/00 - 5/30
G01B 11/00 - 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置されたステージを回転軸周りに回転させるステージ回転機構と、
検出方向に沿って前記ワークの表面形状を検出するプローブと、
前記プローブをプローブ回転軸周りに回転させるプローブ回転機構と、
前記プローブを直動移動方向に沿って移動させる直動機構と、
前記直動移動方向に沿って、少なくとも2つのプローブ位置の間で前記プローブを移動させ、前記プローブ位置ごとに、前記プローブの検出方向と、前記直動移動方向に垂直な平面との交点の位置を検出する検出手段と、
前記プローブ回転機構を制御して、前記交点の位置が略一致するように、前記プローブを回転させる駆動制御手段と、
を備える形状測定機。
【請求項2】
回転角度算出手段を備え、
前記検出手段は、前記2つのプローブ位置ごとに、前記プローブの検出方向と、前記直動移動方向に垂直な平面との交点の位置を検出し、
前記回転角度算出手段は、2つの交点の間の距離と、2つのプローブ位置の間の距離に基づいて、前記直動移動方向に対する前記プローブの検出方向の傾きを算出し、
前記駆動制御手段は、前記プローブ回転機構を制御して、前記傾きだけ前記プローブを回転させる、請求項1に記載の形状測定機。
【請求項3】
前記プローブは、前記ワークに接触して前記ワークの形状を検出する接触子であって、前記検出方向に沿って移動可能な接触子を備え、
前記検出手段は、前記接触子を移動させたときに、前記直動移動方向と交差する同一平面上と前記接触子が接触する位置を前記交点として検出する、請求項1又は2に記載の形状測定機。
【請求項4】
前記プローブは、前記ワークに測定光を照射して前記ワークの形状を検出し、
前記検出手段は、前記測定光を受光する撮像面を備え、前記撮像面における前記測定光の像の位置を前記交点として検出する、請求項1又は2に記載の形状測定機。
【請求項5】
検出方向に沿ってワークの表面形状を検出するプローブを、直動移動方向に沿って、少なくとも2つのプローブ位置の間で移動させ、前記プローブ位置ごとに、前記プローブの検出方向と、前記直動移動方向に垂直な平面との交点の位置を検出する工程と、
プローブ回転機構を制御して、前記交点の位置が略一致するように、前記プローブを回転させる工程と、
を含む形状測定機のアライメント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は形状測定機及び形状測定機のアライメント方法に係り、特にワークの外面、又はワークに形成された穴の内面の形状を測定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、検出器のプローブとワークとを回転軸を中心に相対的に回転させることにより、ワークの形状(真円度等)を測定する形状測定機が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような形状測定機を用いてワークの外面および内面の形状を精度よく測定するためには、回転軸とワークの中心軸とを一致させる必要がある。回転軸とワークの中心軸とが一致していない場合、測定ワークの直径が小さいほど測定の誤差は大きくなる。
【0003】
特許文献1には、回転テーブル上に載置された円筒状のワークの内周面に検出器のプローブ(接触子)を当接させてワークの内周面の内面形状を測定する技術が開示されている。特許文献1に記載の技術では、回転軸とワークの中心軸とを一致させるために、事前に検出器のプローブをワークの外周面に当接させ、回転テーブルを回転させながら低倍率でワークの振れを見て、振れが小さくなるようにワークの載置位置を調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような形状測定機を用いてワークの細穴の内面形状を測定する場合、プローブと回転軸との相対的な位置合わせ(プローブアライメント)が重要となる。このプローブアライメントでは、ワークの形状と、プローブのワーキングディスタンスとの関係によっては、回転軸及びワークの中心軸からプローブの位置をずらして配置する場合がある。
【0006】
ここで、プローブのワーキングディスタンスとは、プローブによって測定可能な距離の範囲である。接触式のプローブの場合、ワーキングディスタンスは、プローブの先端部の可動範囲に依存する。一方、非接触式(例えば、ToF(Time-of-Flight)方式)のプローブの場合、ワーキングディスタンスは、測定光の到達距離、反射光の検出精度及び外乱光の影響等に依存する。
【0007】
図18及び
図19は、ワークの形状とプローブの位置との関係を説明するための図である。
図18及び
図19では、円筒状のワークW1及びW2の中心軸(穴H1及びH2の中心軸)と回転軸Cとが一致しており、ワークW1及びW2に形成された穴H1及びH2の直径をそれぞれR
H1及びR
H2とし、プローブの接触子Pの直径をR
Pとする。
【0008】
なお、図中の矢印A1及びA2は、接触子Pの変位の検出方向を示している。接触子Pの変位の検出方向は、接触式のプローブの場合には、プローブの先端部の可動方向であり、非接触式のプローブの場合には、測定光の出射方向である。
【0009】
図18は、接触子Pによって測定可能な距離の最小値(以下、最小ワーキングディスタンス(最小WD)という。)が(R
H1-R
P)/2よりも大きい場合を示している。この場合、ワークW1に形成された穴H1の内面の形状を測定するためには、接触子Pと穴H1の内面との間の距離WDを最小WDよりも大きくする必要がある。したがって、この場合、
図18に示すように、接触子Pの位置を回転軸Cからずらす必要がある。
【0010】
図19は、接触子Pによって測定可能な距離の最大値(以下、最大ワーキングディスタンス(最大WD)という。)が(R
H2-R
P)/2よりも小さい場合を示している。この場合、ワークW2に形成された穴H2の内面の形状を測定するためには、接触子Pと穴H2の内面との間の距離WDを最大WD未満にする必要がある。したがって、この場合も、
図19に示すように、接触子Pの位置を回転軸Cからずらす必要がある。
【0011】
上記のように、接触子Pの位置を回転軸Cからずらして配置した場合、形状(真円度等)の測定精度を確保するため、接触子Pの検出方向(検出ストローク)と、接触子Pの移動方向とを平行にする必要がある。
【0012】
図20は、接触子Pの移動方向と検出方向との傾きがワークの形状の測定値に与える影響について説明するための図である。なお、
図20では、図示の便宜上、移動前後のワークW10及びW12の表面の変位を誇張して示している。
【0013】
図20に示す例では、接触子Pの移動方向A
HがX軸に平行であるのに対して、接触子Pによる変位の検出方向A
Pは、接触子Pの移動方向A
Hに対して角度θ傾斜している。ワークWを回転軸Cの周りに回転させて、位置W10から位置W12に移動した場合、接触子Pによって検出されるワークWの表面の変位は、接触子Pの検出方向A
Pに沿う表面位置の変位(測定値)D
Fとなる。
【0014】
X方向に沿う表面の変位(真値)をDTとすると、DF=DT/cosθとなる。一例としてθ=5°とすると、測定値DFは、真値DTに対して約0.4%大きな値になる。
【0015】
上記のように、接触子Pの検出方向APが接触子Pの移動方向AHに対して傾いている場合には、ワークWの表面の変位を正確に検出することが困難である。この接触子Pの検出方向APと接触子Pの移動方向AHとを平行にする必要がある。
【0016】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、プローブの検出方向と移動方向とを調整して変位の測定精度を向上させることが可能な形状測定機及び形状測定機のアライメント方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様に係る形状測定機は、ワークが載置されたステージを回転軸周りに回転させるステージ回転機構と、検出方向に沿ってワークの表面形状を検出するプローブと、プローブをプローブ回転軸周りに回転させるプローブ回転機構と、プローブを直動移動方向に沿って移動させる直動機構と、直動移動方向に沿って、少なくとも2つのプローブ位置の間でプローブを移動させ、プローブ位置ごとに、プローブの検出方向と、直動移動方向に垂直な平面との交点の位置を検出する検出手段と、プローブ回転機構を制御して、交点の位置が略一致するように、プローブを回転させる駆動制御手段とを備える。
【0018】
本発明の第2の態様に係る形状測定機は、第1の態様において、回転角度算出手段を備え、検出手段は、2つのプローブ位置ごとに、プローブの検出方向と、直動移動方向に垂直な平面との交点の位置を検出し、回転角度算出手段は、2つの交点の間の距離と、2つのプローブ位置の間の距離に基づいて、直動移動方向に対するプローブの検出方向の傾きを算出し、駆動制御手段は、プローブ回転機構を制御して、傾きだけプローブを回転させる。
【0019】
本発明の第3の態様に係る形状測定機は、第1又は第2の態様において、プローブは、ワークに接触してワークの形状を検出する接触子であって、検出方向に沿って移動可能な接触子を備え、検出手段は、接触子を移動させたときに、直動移動方向と交差する同一平面上と接触子が接触する位置を交点として検出する。
【0020】
本発明の第4の態様に係る形状測定機は、第1又は第2の態様において、プローブは、ワークに測定光を照射してワークの形状を検出し、検出手段は、測定光を受光する撮像面を備え、撮像面における測定光の像の位置を交点として検出する。
【0021】
本発明の第5の態様に係る形状測定機のアライメント方法は、検出方向に沿ってワークの表面形状を検出するプローブを、直動移動方向に沿って、少なくとも2つのプローブ位置の間で移動させ、プローブ位置ごとに、プローブの検出方向と、直動移動方向に垂直な平面との交点の位置を検出する工程と、プローブ回転機構を制御して、交点の位置が略一致するように、プローブを回転させる工程とを含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、プローブの検出方向とプローブの直動移動方向とを平行にすることができる。これにより、プローブの移動方向に対する検出方向の傾きが変位検出に与える影響を防止することができ、ワークの形状の測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定機を示す正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定機の制御系を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、カメラによるプローブの撮影位置の一例を示した図である。
【
図4】
図4は、各撮影位置におけるカメラの撮影画像の一例を示した説明図である。
【
図5】
図5は、第1撮影画像と第3撮影画像との合成画像を示した図である。
【
図6】
図6は、第2撮影画像と第4撮影画像との合成画像を示した図である。
【
図7】
図7は、本発明の一実施形態に係る形状測定機のアライメント方法を示すフローチャートである(接触式)。
【
図8】
図8は、プローブアライメント工程及びスクリーン設置工程を説明するための図である。
【
図9】
図9は、プローブ位置検出工程を説明するための図である。
【
図10】
図10は、プローブを回転角度θ回転させた状態を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本発明の一実施形態に係る形状測定機のアライメント方法を示すフローチャートである(非接触式)。
【
図12】
図12は、プローブ位置検出工程を説明するための図である。
【
図13】
図13は、プローブを回転角度θ回転させた状態を説明するための図である。
【
図14】
図14は、プローブがステージの回転軸に対して傾いている状態を示す図である。
【
図15】
図15は、プローブの検出方向を直動移動方向と平行にした状態を直動移動方向に沿って見た場合を示す図である。
【
図16】
図16は、カメラの撮像面が直動移動方向に対して傾いている例を示す図である。
【
図17】
図17は、カメラの撮像面が直動移動方向に対して傾いている例を示す図である。
【
図18】
図18は、ワークの形状とプローブ(接触子)の位置との関係を説明するための図である。
【
図19】
図19は、ワークの形状とプローブ(接触子)の位置との関係を説明するための図である。
【
図20】
図20は、プローブ(接触子)の移動方向と検出方向との傾きがワークの形状の測定値に与える影響について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に従って本発明に係る形状測定機及び形状測定機のアライメント方法の実施の形態について説明する。
【0025】
[形状測定機]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定機を示す正面図である。
【0026】
図1に示す形状測定機10は、ワークWの外形及び円筒状のワークWに形成された細穴Hの内面形状(真円度等)を測定可能な装置である。
図1に示す例では、細穴Hは、ワークWの中心軸に沿って形成された貫通穴である。細穴Hの内径は、極小径(例えば、内径が500μm以下)である。
図1において、X方向、Y方向及びZ方向は互いに直交する方向であり、X方向は水平方向、Y方向はX方向に直交する水平方向、Z方向は鉛直方向である。
【0027】
図1に示すように、形状測定機10は、本体ベース12、ステージ回転機構14、ステージ18、コラム20、キャリッジ22、アーム24、変位検出器26、検出器駆動機構28、カメラ32、カメラ用ブラケット34及び制御装置50を備える。
【0028】
ステージ回転機構(高精度回転機構)14は、ワークWを回転軸C周りに回転させるための回転機構であり、後述するステージ18をZ方向に平行な回転軸Cを中心に高精度に回転させるものである。ステージ回転機構14は、本体ベース12上に回転可能に設けられた回転体16を備えており、回転体16の上面にステージ18が支持されている。ステージ回転機構14は、回転軸Cを中心に回転体16を高精度に回転させるモータ(不図示)と、回転体16の回転角度を検出するエンコーダ(不図示)とを備える。
【0029】
ステージ18は、ワークWを載置するものである。ステージ18は、ワークWを直接支持固定するものであってもよいし、ワーク設置治具(不図示)を介してワークWを支持固定するものであってもよい。
【0030】
ステージ18は、回転体16の支持面(上面)に支持されており、回転体16と一体となって回転軸Cを中心に回転可能に構成される。これにより、ステージ18に支持固定されたワークWは、ステージ18と一体となって回転軸Cを中心に回転可能である。なお、ステージ18及び回転体16は「ステージ回転機構」の一例である。
【0031】
ステージ18は、直動機構と、傾斜機構(チルチング機構)とを備えている(いずれも不図示)。直動機構は、不図示のモータの駆動によりステージ18をX方向及びY方向に移動させて、回転軸Cに直交するXY平面(水平面)におけるステージ18の位置を調整させる。傾斜機構は、不図示のモータの駆動によりステージ18をX方向及びY方向の周りに回転させて、XY平面に対するステージ18の傾きを調整する。
【0032】
本体ベース12上には、Z方向に平行に延びるコラム(支柱)20が立設される。コラム20は、下端部が本体ベース12の上面に固定される。
【0033】
キャリッジ22は、Z方向に移動可能にコラム20に支持される。キャリッジ22は、不図示のモータの駆動によりZ方向に移動可能に構成される。
【0034】
アーム24は、XY方向に移動可能にキャリッジ22に支持される。アーム24は、直動機構70及び母線出し機構72(
図2参照)によりそれぞれ水平方向(XY方向)に移動可能に構成される。直動機構70及び母線出し機構72は、それぞれアーム24を水平方向に移動させるための駆動源(モータ等)を備えている。
【0035】
アーム24及びコラム20の側面には、それぞれX方向及びZ方向に沿ってスケールが設けられている。制御装置50は、このスケールの目盛を不図示のセンサを用いて読み取ることにより、プローブ30のXZ方向の位置を検出可能となっている。
【0036】
変位検出器26は、検出器駆動機構28を介してアーム24に支持される。変位検出器26はプローブ30を有する。プローブ30は、ワークWの表面(外表面又はワークWに形成された穴Hの内面)の形状を検出するものである。プローブ30は、その先端部をワークWの表面に接触させてワークWの表面形状を検出可能な接触式のプローブであってもよいし、ワークWの表面に接触することなく、ワークWの表面形状を検出可能な非接触式のプローブであってもよい。
【0037】
接触式のプローブは、ワークWの表面に接触可能な接触子を有し、ワークWの表面に接触させたときの接触子の変位を検出することにより表面形状を検出するものである。接触式のプローブとしては、例えば、LVDT(Linear Variable Differential Transformer)、干渉計、光三角測量方式、薄膜歪み測定等の各種手法が適用されたプローブを用いることができる。また、接触式のプローブとしては、共振周波数で接触式プローブの接触子を加振しておき、接触によって共振点が変化することを利用する方式を適用してもよい。
【0038】
非接触式のプローブは、ワークWの表面に接触することなく、その表面形状を検出することができるものであれば特に限定されない。非接触式のプローブとしては、例えば、レーザー干渉計、白色干渉計、SD-OCT(Spectral Domain-Optical Coherence Tomography)、SS-OCT(Swept Source-Optical Coherence Tomography)等の各種手法が適用されたプローブを用いることができる。
【0039】
検出器駆動機構28は、アーム24と変位検出器26との間に介在して設けられている。検出器駆動機構28は、直動機構と、傾斜機構とを備えている(いずれも不図示)。直動機構は、不図示のモータの駆動により変位検出器26をX方向及びY方向に移動させて、回転軸Cに直交するXY平面(水平面)におけるプローブ30の位置を調整させる。傾斜機構は、不図示のモータの駆動により変位検出器26をX方向及びY方向の周りに回転させて、XY平面に対するプローブ30の傾きを調整する。したがって、検出器駆動機構28(直動機構及び傾斜機構)によってプローブ30の水平方向(X方向及びY方向)の位置及び傾斜を調整することにより、プローブ30と回転軸Cとの相対的な位置合わせ(プローブアライメント)を行うことが可能となる。
【0040】
また、検出器駆動機構28は、回転軸(プローブ回転軸)AXの周りに回転させるための駆動源(例えば、モータ等)を備えている。検出器駆動機構28は、「プローブ回転機構」の一例である。
【0041】
カメラ32は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)カメラなどのエリアセンサカメラ(2次元センサカメラ)である。カメラ32は、カメラ用ブラケット34を介して回転体16に連結(支持)されている。カメラ32は、その撮影方向が回転軸Cに直交し且つ回転軸C側(回転中心側)を向くように配置されている。また、カメラ32の焦点が回転軸Cに合うように調整されている。これにより、カメラ32は、回転体16と一体となって回転軸C周りに回転可能であると共に、その回転軸Cを中心とした回転軌道K上の任意の撮影位置(周方向位置)においてカメラ32によるプローブ30の撮影が可能となっている。カメラ32は、「検出手段」の一例である。
【0042】
なお、本実施形態では、カメラ32をステージ18の外側に配置したが、カメラ32はステージ18上に配置してもよい。
【0043】
図2は、本発明の第1の実施形態に係る形状測定機の制御系を示すブロック図である。
【0044】
制御装置50は、形状測定機10の各部の動作(ワークWの表面形状の測定動作や後述するプローブアライメント動作などを含む)を制御する。制御装置50は、例えば、パーソナルコンピュータ又はマイクロコンピュータ等の汎用のコンピュータによって実現される。制御装置50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ストレージデバイス(HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等)及び入出力インターフェース等を備えている。制御装置50では、ストレージデバイスに記憶されている制御プログラム等の各種プログラムがRAMに展開され、RAMに展開されたプログラムがCPUによって実行されることにより、形状測定機10内の各部の機能が実現され、入出力インターフェースを介して各種の演算処理又は制御処理が実行される。なお、制御装置50は「駆動制御手段」及び「回転角度算出手段」の一例である。
【0045】
制御装置50には、ユーザからの操作入力を受け付ける操作部52(例えば、キーボード及びマウス等)と、操作UI(User Interface)及び検出結果を表示するための表示部54とが設けられている。
【0046】
図2に示すように、制御装置50は、変位演算部56及び駆動制御部58を備えている。
【0047】
変位演算部56は、変位検出器26が検出したワークWの表面の変位の検出結果に基づいてワークWの変位を算出し、ワークWの表面の形状(例えば、ワークWの外形又は穴Hの真円度等)を測定する。
【0048】
駆動制御部58は、直動機構70、母線出し機構72、検出器駆動機構28及びステージ回転機構14を制御して、ワークWとプローブ30の相対位置を調整する。
【0049】
撮影制御部60は、カメラ32により撮影した画像を処理して、プローブ30の位置を検出する。撮影制御部60は、ステージ回転機構14を制御して、回転体16と一体となって回転軸C周りにカメラ32を回転させることにより、プローブ30に対するカメラ32の撮影位置(周方向位置)を回転軸Cを中心とした周方向に変化させる。これにより、回転軸Cを中心とするカメラ32の回転軌道K(
図10参照)上の任意の撮影位置からカメラ32によるプローブ30の撮影が可能になる。
【0050】
[基本アライメント]
ここで、本実施形態の前提となるプローブ30の基本アライメントの概要について説明する。この基本アライメントは、カメラ32を用いてプローブ30と回転軸Cとの相対的な位置合わせを行うものである。
図3は、カメラ32によるプローブ30の撮影位置の一例を示した図である。
図3に示す例では、回転軸Cを中心とするカメラ32の回転軌道K上において互いに90度ずつずれた4つの撮影位置P1~P4で、カメラ32によるプローブ30の撮影が行われる。
【0051】
本実施形態において、4つの撮影位置P1~P4からカメラ32によりプローブ30を撮影する方向はX方向またはY方向であり、検出器駆動機構28においてプローブ30を直動又は傾斜させる制御方向(移動軸方向)と同一方向となっている。すなわち、第1撮影位置P1と第3撮影位置P3は第1方向(Y方向)において互いに対向する位置同士である。また、第2撮影位置P2と第4撮影位置P4は第2方向(X方向)において互いに対向する位置同士である。
【0052】
図4は、各撮影位置P1~P4においてカメラ32により撮影された撮影画像の一例を示した図である。なお、
図4において、第1撮影画像100A~第4撮影画像100Dは第1撮影位置P1~第4撮影位置P4でそれぞれ撮影された撮影画像である。
【0053】
プローブ30と回転軸Cとの相対ずれが存在する場合、例えば、
図4に示すように、各撮影位置P1~P4でカメラ32により撮影された撮影画像100A~100Dにおいて、撮影位置(すなわち、カメラ32によるプローブ30の撮影方向)の違いに応じて、プローブ30の姿勢(位置及び傾き)が異なる。
【0054】
例えば、第1方向(Y方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第1撮影位置P1及び第3撮影位置P3)のうち、一方の撮影位置(第1撮影位置P1)から撮影した第1撮影画像100Aでは、プローブ30Aは第2方向(X方向)の一方側に傾いているのに対して、他方の撮影位置(第3撮影位置P3)から撮影した第3撮影画像100Cでは、プローブ30Cは第2方向(X方向)の他方側に傾いている。また、第2方向(X方向)の位置についても互いに反対側に向かってずれている。
【0055】
第2方向(X方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第2撮影位置P2及び第4撮影位置P4)においてそれぞれ第2撮影画像100Bと第4撮影画像100Dについても同様であり、プローブ30B、30Dの位置及び傾きが互いに反対側にずれている。
【0056】
図5は、第1方向(Y方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第1撮影位置P1及び第3撮影位置P3)から撮影した第1撮影画像100Aと第3撮影画像100Cとを合成した第1合成画像102Aを示した図である。
【0057】
図5に示すように、第1撮影画像100Aと第3撮影画像100Cとを合成した第1合成画像102Aにおいて、第1撮影画像100Aにおけるプローブ30Aの中心軸(第1プローブ中心軸)L1と、第3撮影画像100Cにおけるプローブ30Cの中心軸(第3プローブ中心軸)L3との間の第1中線ML1が、XZ平面内における回転軸Cの位置(すなわち、第1方向(Y方向)からプローブ30を見た場合の回転軸Cの位置)を示している。なお、第1中線ML1とは、第1合成画像102Aにおいて、第1プローブ中心軸L1及び第3プローブ中心軸L3の横方向(X方向)の中央を縦方向(Z方向)に通る直線をいう。換言すれば、第1合成画像102Aにおいて、第1プローブ中心軸L1と第3プローブ中心軸L3との間を左右(X方向)に2等分する直線を第1中線ML1という。
【0058】
第1合成画像102Aにおける第1中線ML1は、回転軸Cの位置を示している。すなわち、第1中線ML1は、第1合成画像102A(XZ平面内)においてプローブ30の移動目標となる線を示しており、プローブ30が第1中線ML1に一致するようにプローブ30の姿勢(位置Dx及び傾きα)を調整することで、XZ平面内における回転軸Cとプローブ30との相対ずれをなくすことが可能となる。
【0059】
図6は、第2方向(X方向)において互いに対向する2つの撮影位置(第2撮影位置P2及び第4撮影位置P4)から撮影した第2撮影画像100Bと第4撮影画像100Dとを合成した合成画像102Bを示した図である。
【0060】
図6に示すように、第2撮影画像100Bと第4撮影画像100Dとを合成した第2合成画像102Bにおいて、第2撮影画像100Bにおけるプローブ30Bの中心軸(第2プローブ中心軸)L2と、第4撮影画像100Dにおけるプローブ30Dの中心軸(第4プローブ中心軸)L4との間の第2中線ML2が、YZ平面内における回転軸Cの位置(すなわち、第2方向(X方向)からプローブ30を見た場合の回転軸Cの位置)を示している。なお、第2中線ML2とは、第2合成画像102Bにおいて、第2プローブ中心軸L2及び第4プローブ中心軸L4の横方向(X方向)の中央を縦方向(Z方向)に通る直線をいう。換言すれば、第2合成画像102Bにおいて、第2プローブ中心軸L2と第4プローブ中心軸L4との間を左右(X方向)に2等分する直線を第2中線ML2という。
【0061】
第2合成画像102Bにおける第2中線ML2は、回転軸Cの位置を示している。すなわち、第2中線ML2は、第2合成画像102B(YZ平面内)においてプローブ30の移動目標となる線を示しており、プローブ30が第2中線ML2に一致するようにプローブ30の姿勢(位置Dy及び傾きβ)を調整することで、YZ平面内における回転軸Cとプローブ30との相対ずれをなくすことが可能となる。
【0062】
したがって、回転軸Cを中心とするカメラ32の回転軌道K上において互いに90度ずつずれた4つの撮影位置P1~P4においてカメラ32が撮影した撮影画像に基づき、上述した2つの中線ML1、ML2を算出することで、プローブ30の移動目標となる回転軸C(回転中心)を検出することができ、回転軸Cとプローブ30との相対ずれを各方向(X方向及びY方向)独立して調整することが可能となる。
【0063】
本実施形態におけるプローブ30の基本アライメントでは、撮影制御部60は、
図5に示した第1合成画像102Aにおいて、2つのプローブ30のうちいずれか一方のプローブを基準プローブ(本例では第1撮影画像100Aにおけるプローブ30A)とした場合、第1中線ML1に対して基準プローブのプローブ中心軸を平行とするための傾斜角(Y方向を中心とする回転角)を傾斜移動量αとして検出する。また、撮影制御部60は、基準プローブのプローブ中心軸を傾斜移動量αだけ傾斜させて第1中線ML1と平行にした場合に、基準プローブのプローブ中心軸を第1中線ML1に一致させるために必要なX方向の移動距離を直動移動量Dxとして検出する。なお、直動移動量Dxは、検出器駆動機構28におけるX方向の移動軸に沿った方向の距離に相当する(
図5参照)。
【0064】
また、撮影制御部60は、
図6に示した第2合成画像102Bにおいて、2つのプローブ30のうちいずれか一方のプローブを基準プローブ(本例では第2撮影画像100Bにおけるプローブ30B)とした場合、第2中線ML2に対して基準プローブのプローブ中心軸を平行とするための傾斜角(X方向を中心とする回転角)を傾斜移動量βとして検出する。また、撮影制御部60は、基準プローブのプローブ中心軸を傾斜移動量βだけ傾斜させて第2中線ML2と平行にした場合に、基準プローブのプローブ中心軸を第2中線ML2に一致させるために必要なY方向の移動距離を直動移動量Dyとして検出する。なお、直動移動量Dyは、検出器駆動機構28におけるY方向の移動軸に沿った方向の距離に相当する(
図6参照)。
【0065】
なお、撮影制御部60は、エッジ抽出等の公知の画像処理により、各合成画像102A10Bから、プローブ中心軸C1~C4、中線ML1、ML2、直動移動量Dx、Dy、傾斜移動量α、βを算出することが可能である。
【0066】
このようにして、撮影制御部60が、各撮影位置でカメラ32が撮影した撮影画像に基づき、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを各方向独立して検出すると、駆動制御部58が、撮影制御部60が検出した結果に基づき、検出器駆動機構28を制御する。具体的には、駆動制御部58は、検出器駆動機構28を制御して、プローブ30を、X方向に直動移動量Dxだけ移動させると共にY方向に直動移動量Dyだけ移動させ、かつ、X方向を中心に傾斜移動量βだけ傾斜させると共にY方向を中心に傾斜移動量αだけ傾斜させる。なお、検出器駆動機構28を移動又は傾斜させる方向(向き)は、
図5及び
図6に示した合成画像102A10Bにおいて、どのプローブを基準プローブとするかに応じて定められる。
【0067】
以上のようにして、駆動制御部58が、撮影制御部60が検出した結果に基づき、検出器駆動機構28を制御してプローブ30の姿勢を変化させると、三次元空間内においてプローブ30と回転軸Cとの相対ずれがなくなる。以上により、プローブ30の基本アライメントが完了する。
【0068】
なお、カメラ32の撮影位置は、必ずしも上記の態様に限定されるものではない。例えば、カメラ32の回転軌道K上の少なくとも3つの撮影位置からカメラ32によりプローブ30を撮影するものであってもよい。また、カメラ32の撮影方向が検出器駆動機構28の制御方向(X方向及びY方向)と一致している態様を示したが、必ずしもこの態様に限定されず、例えば、カメラ32の撮影方向が検出器駆動機構28の制御方向とは異なる方向であってもよい。
【0069】
[実施例1(接触式のプローブの場合)]
次に、接触式のプローブを用いる場合のアライメント方法(実施例1)について説明する。
図7は、実施例1に係る形状測定機のアライメント方法を示すフローチャートである(接触式)。
【0070】
(ステップS10)
まず、カメラ32によりプローブ30を撮影して接触子P1の位置を検出しながら、プローブ30のアライメントを行う。
【0071】
接触式のプローブ30は、ワークWに接触するときの測定力をコントロールするための測定力コントロール機能(リトラクト機構)を有している(
図8参照)。接触子P1は、リトラクト機構により、接触子P1が検出ストロークA
Pのストローク端に位置する通常状態、ワークWの表面に接触して押し込まれているリトラクト状態、及び検出ストロークA
Pの中心Pcに位置するストローク中心状態(中立位置、測定力がゼロとなる位置)に設定可能となっている。
【0072】
図8に示すように、ステップS10では、プローブ30のリトラクト機構により接触子P1を検出ストロークA
Pの中心Pcに移動させる。そして、上記基本アライメントを行って、回転軸Cを中心とするカメラ32の回転軌道K上において互いに90度ずつずれた4つの撮影位置P1~P4においてカメラ32が撮影した撮影画像に基づき、プローブ30と回転軸Cとの相対ずれを検出して、検出器駆動機構28によりプローブ30と回転軸Cとの相対的な位置合わせを行う。ステップS10では、上記基本アライメントにより、プローブ30の軸芯(回転軸AX)とステージ18の回転軸Cとが一致するように位置合わせを行う。これにより、プローブ30の接触子P1の中心がステージ18の回転軸Cが一致する。
【0073】
(ステップS12)
次に、プローブ30とカメラ32との間にスクリーン80を設置する。ここで、スクリーン80は、例えば、透明なガラス板、樹脂板等であり、直動移動方向に対して垂直になるように設置される。なお、カメラ32は、透明なスクリーン80を通して接触子P1の位置を検出可能に配置されていればよく、カメラ32の光軸方向がスクリーン80に対して垂直になるように配置されていてもよいし、やや傾いていてもよい。これにより、
図8に示すように、カメラ32は、透明なスクリーン80を通して接触子P1の位置を検出可能となる。
【0074】
(ステップS14)
次に、i=1として、下記のループ(ステップS16からS22)を実行する。
【0075】
(ステップS16からS22)
まず、
図9に示すように、直動機構70により変位検出器26を直動移動させて、プローブ30をプローブ位置30(i=1)に移動させる(ステップS16)。そして、プローブ30のリトラクト機構により、プローブ30の接触子P1をスクリーン80の位置まで移動させ、撮影制御部60によりスクリーン上における接触子P1の位置Po1を検出する(ステップS18)。ステップS18では、接触子P1をスクリーン80に接触させてもよい。
【0076】
次に、プローブ30を中立位置に戻し、i=2として(ステップS20のYes。ステップS22)、直動機構70により変位検出器26を位置30(i=1)から距離ΔR直動移動させて、プローブ30をプローブ位置30(i=2)に移動させる(ステップS16)。そして、上記と同様に、プローブ30のリトラクト機構により、プローブ30の接触子P1をスクリーン80の位置まで移動させ、撮影制御部60によりスクリーン上における接触子P1の位置Po2を検出する(ステップS18)。
【0077】
上記のように、ステップS16からS22のループを2回繰り返した後に(ステップS20のNo)、ステップS24に進む。
【0078】
(ステップS24)
次に、撮影制御部60は、位置(i=1、2)ごとに検出したスクリーン上における接触子P1の位置Po1とPo2との間の距離D(母線調整方向に沿う距離)を検出する。
【0079】
ここで、変位検出器26の検出ストロークAPの直動移動方向に対する傾き(回転角度)をθとすると、距離Dは、下記の式(1)により表される。
【0080】
D=ΔRtanθ …(1)
式(1)から下記の式(2)が得られる。
【0081】
θ=arctan(D/ΔR) …(2)
撮影制御部60は、上記のループにより得られた位置Po1とPo2との間の距離Dと、2回目のステップS16における直動移動方向の移動距離ΔRを式(2)に代入して回転角度θを算出する。
【0082】
なお、上記のループでは、n=2としたが、n>2としてもよい。この場合、複数の位置について求めた距離Dの最大値からθを求めてもよい。
【0083】
(ステップS26)
検出器駆動機構28により変位検出器26を回転角度θ回転させる。これにより、
図10に示すように、変位検出器26の検出ストロークA
Pと直動移動方向(X方向)とが略平行になる。なお、ステップS26の後に、ステップS16からS22のループを繰り返して、変位検出器26の検出ストロークA
Pの直動移動方向に対する傾きθが十分に小さい値(≒0)になっていることを確認するようにしてもよい。
【0084】
実施例1によれば、プローブ30の検出ストロークAPとプローブ30の直動移動方向とを平行にすることができる。これにより、プローブ30の移動方向に対する検出ストロークAPの傾きが変位検出に与える影響を防止することができ、ワークWの形状の測定精度を向上させることができる。
【0085】
なお、実施例1では、接触子P1の位置を検出するためにスクリーン80を用いたが、リトラクト機能により各位置iから接触子P1を直動移動方向の所定の座標に移動させたときの位置を検出することができれば、スクリーン80を用いなくてもよい。したがって、実施例1では、直動移動方向と交差する平面(仮想的なスクリーン)と接触子P1の検出方向との交点を検出すればよい。
【0086】
[実施例2(非接触式のプローブの場合)]
次に、非接触式のプローブを用いる場合のアライメント方法(実施例2)について説明する。
図11は、実施例2に係る形状測定機のアライメント方法を示すフローチャートである(非接触式)。
【0087】
(ステップS30)
次に、i=1として、下記のループ(ステップS32からS38)を実行する。
【0088】
(ステップS32からS38)
まず、
図12に示すように、直動機構70により変位検出器26を直動移動させて、プローブ30を位置30(i=1)に移動させる(ステップS32)。そして、プローブ30の先端部P2から測定光Lを出射させて、撮影制御部60によりカメラ32の撮像面P
IMG上における測定光Lの像(測定光Lを受光する画素位置)の位置IMG1を検出する(ステップS34)。
【0089】
次に、i=2として(ステップS36のYes。ステップS38)、直動機構70により変位検出器26を位置30(i=1)から距離ΔR直動移動させて、プローブ30を位置30(i=2)に移動させる(ステップS32)。そして、上記と同様に、プローブ30の先端部P2から測定光Lを出射させて、撮影制御部60によりカメラ32の撮像面PIMG上における測定光Lの像の位置IMG2を検出する(ステップS34)。
【0090】
上記のように、ステップS32からS38のループを2回繰り返した後に(ステップS36のNo)、ステップS40に進む。
【0091】
(ステップS40)
次に、撮影制御部60は、位置(i=1、2)ごとに検出した測定光Lの像の位置IMG1とIMG2との間の距離D(母線調整方向に沿う距離)を検出する。
【0092】
ここで、変位検出器26の検出方向の直動移動方向に対する傾き(回転角度)をθとすると、距離Dは、下記の式(3)により表される。
【0093】
D=ΔRtanθ …(3)
式(3)から下記の式(4)が得られる。
【0094】
θ=arctan(D/ΔR) …(4)
撮影制御部60は、上記のループにより得られた位置IMG1とIMG2との間の距離Dと、2回目のステップS32における直動移動方向の移動距離ΔRを式(4)に代入して回転角度θを算出する。
【0095】
なお、上記のループでは、n=2としたが、n>2としてもよい。この場合、複数の位置について求めた距離Dの最大値からθを求めてもよい。
【0096】
(ステップS42)
検出器駆動機構28により変位検出器26を回転角度θ回転させる。これにより、
図13に示すように、変位検出器26の検出方向と直動移動方向(X方向)とが略平行になる。なお、ステップS42の後に、ステップS32からS38のループを繰り返して、変位検出器26の検出方向の直動移動方向に対する傾きθが十分に小さい値(≒0)になっていることを確認するようにしてもよい。
【0097】
図11に示す例(非接触センサの例)によれば、プローブ30の検出方向とプローブ30の直動移動方向とを平行にすることができる。これにより、プローブ30の移動方向に対する検出方向の傾きが変位検出に与える影響を防止することができ、ワークWの形状の測定精度を向上させることができる。
【0098】
(プローブアライメント)
実施例2(非接触式のプローブの例)では、実施例1とは異なり、検出方向の傾きの調整の前にプローブアライメントを行っていない。これは以下に説明する理由によるものである。
【0099】
図14は、プローブ30がZ方向(ステージ18の回転軸C)に対して傾いている状態を示す図である。
【0100】
図14に示すように、プローブ30がZ方向(ステージ18の回転軸C)に対して傾いている場合でも、実施例2と同様の工程により、測定光Lの像IMG1及びIMG2の撮像面P
IMG上における位置を略一致させることができる。これにより、プローブ30の検出方向を直動移動方向と平行にすることが可能である。
【0101】
図15は、プローブ30の検出方向を直動移動方向と平行にした状態(プローブ30を直動移動方向に沿って見た場合)を示す図である。
【0102】
図15では、直動移動方向(X方向、
図14(a)のΔRに沿うR方向)と、プローブ30の先端部P2から測定光Lを出射するときの検出方向とが平行となっている。また、回転軸Cに対する検出方向のずれ(母線調整方向に沿うずれ)は、母線調整により解消することができる。したがって、プローブ30が回転軸Cに対して傾いていたとしても、この傾きは、ワークWの形状の測定精度に影響を与えないので、実施例2では、プローブアライメント工程を省略することができる。
【0103】
[カメラ32(撮像面PIMG)の設置角度]
なお、実施例2において、カメラ32の撮像面PIMGは、直動移動方向に対して垂直である必要はなく、傾いていてもよい。
【0104】
図16及び
図17は、カメラ32の撮像面P
IMGが直動移動方向に対して傾いている例を示す図である。
【0105】
図16に示すように、撮像面P
IMGが直動移動方向に垂直な方向(母線移動方向)に対して角度φ傾いていた場合、撮像面P
IMGにおける測定光Lの像の距離Dは、D=ΔRtanθcosφとなる。この場合でも、
図17に示すように、プローブ30を直動移動方向に移動させたときに、測定光Lの像IMG1及びIMG2の撮像面P
IMG上における位置が略一致するようにするという調整原理は変わらない。したがって、回転角度θを式(4)から直接算出せずに、例えば、D≒0となるまで、プローブ30を所定の角度ずつ回転させながら、
図11のステップS32からS38のループを繰り返す。これにより、プローブ30の検出方向と直動移動方向とを平行にすることができる。
【0106】
また、φが十分に小さい場合(φ≒0)には、cosφ≒1-φ
2/2≒1と近似できるため、
図11のフローチャートの工程により、プローブ30の検出方向と直動移動方向とを平行にすることができる。
【0107】
したがって、カメラ32の撮像面PIMGの設置角度については、高い精度は要求されない。
【0108】
また、実施例1のスクリーン80が直動移動方向に対して傾いている場合にも、同様にD≒0となるまで、プローブ30を所定の角度ずつ回転させながら、
図7のステップS16からS22を繰り返すことにより、プローブ30の検出方向と直動移動方向とを平行にすることができる。
【0109】
したがって、実施例1及び2のいずれの例でも、直動移動方向と交差する平面(仮想的なスクリーン)とプローブ0の検出方向との交点の検出を繰り返すことにより、プローブ30の検出方向と直動移動方向とを平行にすることができる。
【符号の説明】
【0110】
10…形状測定機、12…本体ベース、14…ステージ回転機構、16…回転体、18…ステージ、20…コラム、22…キャリッジ、24…アーム、26…変位検出器、28…検出器駆動機構、30…プローブ、32…カメラ、34…カメラ用ブラケット、50…制御装置、52…操作部、54…表示部、56…変位演算部、58…駆動制御部、60…撮影制御部、70…直動機構、72…母線出し機構