(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】茶園用除草機及び除草機構
(51)【国際特許分類】
A01B 39/18 20060101AFI20240911BHJP
A01M 21/02 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
A01B39/18 A
A01M21/02
(21)【出願番号】P 2023040112
(22)【出願日】2023-03-14
【審査請求日】2023-03-14
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、農業機械技術クラスター事業、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000145116
【氏名又は名称】株式会社寺田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100178951
【氏名又は名称】長谷川 和家
(72)【発明者】
【氏名】水上 智道
(72)【発明者】
【氏名】雪丸 誠一
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2023-112613(JP,A)
【文献】特開2023-112614(JP,A)
【文献】特開2006-197870(JP,A)
【文献】実開昭54-092931(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 39/00 - 41/06; A01B 45/00 - 45/02
A01D 46/04
A01M 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端帯によって走行する左右一対の走行装置と、
前記左右一対の走行装置を連結し茶うねをまたぐことが可能な門型フレームと、
前記左右一対の走行装置それぞれの後方に設けられた除草機構と、を備え、
前記除草機構は、前記走行装置が走行する茶うね間側から樹冠下に張り出し、該樹冠下の雑草に接触して除草する樹冠下除草部材を備えた樹冠下処理ユニットと、
前記樹冠下除草部材を地表からの距離を一定に保つように調整可能な処理位置保持手段と、を有するものであることを特徴とする茶園用除草機。
【請求項2】
前記樹冠下処理ユニットは、
前記樹冠下除草部材が着脱可能に固定された保持体と、
前記保持体を、走行方向に対して水平面内で交わる方向に揺動可能とする揺動手段と、
前記保持体を、前記茶うね間側から前記樹冠下に付勢する付勢手段と、を有するものであることを特徴とする請求項1記載の茶園用除草機。
【請求項3】
前記樹冠下処理ユニットは、前記走行装置が走行する茶うね間の両側における前記樹冠下にそれぞれ位置する一対の前記保持体を有するものであることを特徴とする請求項2記載の茶園用除草機。
【請求項4】
前記付勢手段は、一対の前記保持体を互いに離間する方向に付勢しつつ接続する伸縮自在な連結部材であることを特徴とする請求項3記載の茶園用除草機。
【請求項5】
前記除草機構は、前記走行装置が走行する茶うね間の雑草に接触して除草する茶うね間除草部材を備えた茶うね間処理ユニットを有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の茶園用除草機。
【請求項6】
前記樹冠下除草部材は、走行方向に対して水平面内で交差する方向に延在する刃部を有し、前記走行装置の走行に伴い走行方向へ移動することにより、該刃部が雑草の根元に接触して除草する除草刃であることを特徴とする請求項1又は2記載の茶園用除草機。
【請求項7】
前記処理位置保持手段は、地面に接触し前記走行装置の走行に伴い走行方向へ回転可能に軸支されたローラを有するものであることを特徴とする請求項1又は2記載の茶園用除草機。
【請求項8】
無端帯によって走行する左右一対の走行装置、及び該左右一対の走行装置を連結し茶うねをまたぐことが可能な門型フレームを備えた走行車体に取り付けられる除草機構であって、
前記左右一対の走行装置それぞれの後方に設けられ、
前記走行装置が走行する茶うね間側から樹冠下に張り出し、該樹冠下の雑草に接触して除草する樹冠下除草部材を備えた樹冠下処理ユニットを有するものであることを特徴とする除草機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹冠下の除草が可能な茶園用除草機、及びこの茶園用除草機に用いられる除草機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
消費者の安全・安心に対するニーズの高まりから、有機栽培や農薬の使用量が少ない茶栽培が求められている。農薬には除草剤も含まれるため、除草作業を手作業で行うことによって、除草剤の使用量の削減が図られているのが現状である。しかしながら、手作業による除草作業には非常に多くの労力を要し、さらに、雇用労働力の確保も困難になってきている。これまで、茶園で使用可能なハンディタイプの除草機等も提案されてはいるものの、生産者においては、茶園のうね間(茶うね間)を走行する除草機等による除草作業の機械化が望まれている。
【0003】
しかしながら、茶樹は永年作物(樹木)であり、他の永年作物よりも植え付け間隔が狭く、管理作業を容易にするためうねの形で密集して植栽されている。さらに、機械摘採を容易にするため、樹高を維持する台切り更新(台刈り)が繰り返される。このため、雨落ち部の空間(樹冠下の高さ方向の間隔)が狭く、特に、植栽から数十年経過したような茶園では、側枝から発根し、樹冠下自体がほとんど存在しない場合もある。これらの茶園の特異性によって、これまでは、茶うね間を走行する除草機等の導入が阻まれてきたというのが実情である。
【0004】
そこで、本発明者らは、茶うねをまたいで走行し、茶うね間及び雨落ち部(茶園における樹冠外縁部直下付近の途上表面)を効率的に除草可能な茶園用除草機を提案している(特許文献1及び特許文献2参照)。特許文献1及び特許文献2に記載された茶園用除草機は、左右一対の走行装置それぞれの後方に設けられた除草機構を備え、この除草機構は、上下方向に延在する軸を中心に横回転する回転体を有している。
【0005】
これら特許文献1及び特許文献2記載の茶園用除草機によれば、除草機構が走行装置の後方に設けられているため、植え付け間隔が狭く密集して植栽されている茶園であっても、茶うね間を走行させることができる。また、回転体が横回転するものであるため、高さ方向の寸法を抑えることができ、樹冠下の高さ方向の間隔が狭い場合や樹冠下自体がほとんど存在しない場合であっても、除草処理部を樹冠下に挿入しやすくなる。これらの結果、除草作業の機械化を図ることが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特願2022-014531号
【文献】特願2022-014532号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2記載の茶園用除草機は、茶うね間や雨落ち部においては十分な除草効果を得ることができるものの、樹冠下については十分に除草できない場合がある。この理由としては、茶樹の植栽方法や生育の状態により樹冠下の広さや茶樹幹の位置が異なっており、単純に回転体の直径を大きくすれば解決される問題ではないことによる。
【0008】
以上のことより、本発明は、茶うねをまたいで走行しながら、樹冠下を効率的に除草可能な茶園用除草機、及びこの茶園用除草機に用いられる除草機構を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1手段は、無端帯によって走行する左右一対の走行装置と、
前記左右一対の走行装置を連結し茶うねをまたぐことが可能な門型フレームと、
前記左右一対の走行装置それぞれの後方に設けられた除草機構と、を備え、
前記除草機構は、前記走行装置が走行する茶うね間側から樹冠下に張り出し、該樹冠下の雑草に接触して除草する樹冠下除草部材を備えた樹冠下処理ユニットと、
前記樹冠下除草部材を地表からの距離を一定に保つように調整可能な処理位置保持手段と、を有するものであることを特徴とする茶園用除草機である。
【0010】
本出願において、樹冠下とは、雨落ち部の幹側(内側)をいうものとする。また、樹冠下のうち、茶うね間側の領域を茶うね間側樹冠下領域と称することがある。前述したように、樹冠下の広さや茶樹幹の位置が異なっているため、前記樹冠下除草部材は、樹冠下のうち、少なくとも茶うね間側樹冠下領域の雑草に接触して除草するものであればよい。
【0011】
本発明の第1手段では、前記除草機構が前記走行装置の後方に設けられている。このため、従来の茶園管理機において、走行装置の後方に設けられているカルチベータや肥料散布機と同様の配置となる。この結果、植え付け間隔が狭く密集して植栽されている茶園であっても、茶うね間を走行させることができる。
【0012】
さらに、前記樹冠下処理ユニットは、前記走行装置が走行する茶うね間側から樹冠下に張り出し、該樹冠下の雑草に接触して除草する前記樹冠下除草部材を備えているため、該樹冠下除草部材によって樹冠下を効率的に除草することができる。
【0013】
また、例えばソリ状の前記処理位置保持手段が地面に接地することによって、地面の起伏に追従し、前記樹冠下除草部材が常に除草作業に好適な所望の高さとなるよう下降端の制限が可能である。
【0014】
本発明の第2手段は、前記第1手段において、前記樹冠下処理ユニットは、
前記樹冠下除草部材が着脱可能に固定された保持体と、
前記保持体を、走行方向に対して水平面内で交わる方向に揺動可能とする揺動手段と、
前記保持体を、前記茶うね間側から前記樹冠下に付勢する付勢手段と、を有するものである。
【0015】
すなわち、本発明の第2手段では、前記樹冠下除草部材が固定された前記保持体が、茶樹幹等に接触した場合には、前記揺動手段によって茶うね間側に退避する。そして、茶樹幹等を回避した後は、前記付勢手段によって、前記保持体を樹冠下に押し戻すように構成されている。
【0016】
本発明の第2手段によれば、茶樹幹等の損傷を回避することができ、さらに、茶樹幹ぎりぎりまでの範囲の除草が可能となる。
【0017】
本発明の第3手段は、前記第1または第2手段において、前記樹冠下処理ユニットは、前記走行装置が走行する茶うね間の両側における前記樹冠下にそれぞれ位置する一対の前記保持体を有するものである。
【0018】
本発明の第3手段によれば、前記走行装置が走行する茶うね間の両側における前記樹冠下を除草することができ、除草時間が短縮され、作業効率が向上する。
【0019】
本発明の第4手段は、前記第3手段において、前記付勢手段は、一対の前記保持体を互いに離間する方向に付勢しつつ接続する伸縮自在な連結部材である。
【0020】
本発明の第4手段によれば、前記保持体に伸縮自在な部材を設ける必要がなくなり、構造が簡易となる。
【0021】
本発明の第5手段は、前記第1または第2手段において、前記除草機構は、前記走行装置が走行する茶うね間の雑草に接触して除草する茶うね間除草部材を備えた茶うね間処理ユニットを有するものである。
【0022】
本発明の第5手段によれば、茶うね間の除草も可能となる。ここで、前記茶うね間除草部材は、前述した特許文献1及び特許文献2記載の茶園用除草機のような回転体であってもよい。また、前記茶うね間除草部材は、前記走行装置の走行に伴い走行方向へ移動することにより、刃部が雑草の根元に接触して除草する除草刃であってもよい。
【0023】
本発明の第6手段は、前記第1または第2手段において、前記樹冠下除草部材は、走行方向に対して水平面内で交差する方向に延在する刃部を有し、前記走行装置の走行に伴い走行方向へ移動することにより、該刃部が雑草の根元に接触して除草する除草刃である。
【0024】
ここで、前記刃部は、走行方向に対して水平面内で直交する方向に延在するものであってもよいし、走行方向に対して水平面内で直交する方向から、やや斜めに傾いた方向に延在するものであってもよい。
【0025】
本発明の第6手段によれば、走行方向に対して水平面内で交差する方向に延在する前記刃部を有する前記除草刃を採用しているため、高さ方向の寸法(厚み)を抑えることができる。これにより、樹冠下の高さ方向の間隔が狭い場合や樹冠下自体がほとんど存在しない場合であっても、前記除草刃が樹冠下まで挿入しやすくなり、樹冠下をより効率的に除草することができる。
【0026】
また、前記刃部が雑草の根元に接触して除草するものであり、前記除草刃自体は運動を行わない。このため、回転体が回転して除草する態様に比べ、茶樹幹等に接触した際の損傷を抑えることができる。また、配線等も不要となり、茶樹幹等に絡まってしまう虞もない。
【0027】
本発明の第7手段は、前記第1または第2手段において、前記処理位置保持手段は、地面に接触し前記走行装置の走行に伴い走行方向へ回転可能に軸支されたローラを有するものである。
【0028】
本発明の第7手段によれば、前記ローラによって、茶うね間に堆積した茶枝葉を引きずること等が抑えられ、地表から前記樹冠下除草部材までの距離を良好に維持することが可能となる。
【0029】
本発明の第8手段は、無端帯によって走行する左右一対の走行装置、及び該左右一対の走行装置を連結し茶うねをまたぐことが可能な門型フレームを備えた走行車体に取り付けられる除草機構であって、
前記左右一対の走行装置それぞれの後方に設けられ、
前記走行装置が走行する茶うね間側から樹冠下に張り出し、該樹冠下の雑草に接触して除草する樹冠下除草部材を備えた樹冠下処理ユニットを有するものである。
【0030】
本発明の第8手段は、本発明の第1~7手段における茶園用除草機の前記除草機構として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、茶うねをまたいで走行しながら、樹冠下を効率的に除草可能な茶園用除草機、及びこの茶園用除草機に用いられる除草機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の茶園用除草機の一例を示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す除草機構の一つを抜き出して示す斜視図である。
【
図6】
図2に示す除草機構の一つを拡大して示す図である。
【
図7】
図3に示す除草処理ユニットを拡大して示す図である。
【
図8】保持体が揺動する様子を説明するための図である。
【
図9】第2実施形態の除草機構の一つを抜き出して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の茶園用除草機1の一例を示す斜視図であり、
図2は、
図1に示す茶園用除草機1の背面図であり、
図3は、
図1に示す茶園用除草機1の側面図である。なお、
図1及び
図3では、茶園用除草機1の走行方向を白抜きの矢印で示しており、
図2では、紙面奥側に向かう方向が走行方向となる。以下、茶園用除草機1の走行方向を基準として、前(前側、前方)、後(後側、後方)、左(左側)、右(右側)を用いて説明する。すなわち、
図2において両矢印で示すように、茶園用除草機1の走行方向に対して水平面内で直交する方向が左右方向となる。
【0034】
また、茶園用除草機1の構成を明確に示すため、
図2にのみ茶うねTを模式的に示し、
図1及び
図3では茶うねを省略している。
図2に示すように、本出願において樹冠下Jとは、雨落ち部Oの幹側(内側)をいうものとする。また、前述したように、茶樹の植栽方法や生育の状態により樹冠下Jの広さや茶樹幹の位置が異なっているが、樹冠下Jのうち、茶うね間U側の領域を概念的に茶うね間側樹冠下領域JOと称して説明する。
【0035】
本発明の茶園用除草機における除草機構は、茶うね間処理ユニットを備えなくても成立する技術思想であるが、本実施形態では、詳しくは後述するように、樹冠下処理ユニット6と、茶うね間処理ユニット5とを備えた除草機構3を例に挙げて説明する(
図4等参照)。ここで、茶うね間処理ユニット5を備えない態様としては、施肥作業などの後処理として茶うね間Uをカルチベータなどにより耕起し、茶うね間U部分への除草処理が不要な場合などが想定される。
【0036】
図1~
図3に示すように、茶園用除草機1は、走行車体2と除草機構3を有している。走行車体2は、無端帯によって走行する左右一対の走行装置21,21と、左右一対の走行装置21,21を連結し茶うねT(
図2参照)をまたぐことが可能な門型フレーム22と、を備えている。また、走行車体2には運転席23が設けられ、運転席23には、走行装置21等を操作する、操縦かん、操作レバー及びスイッチ類などが配置されている。この走行車体2は、茶園においては、門型フレーム22が茶うねTをまたいだ状態で、左右一対の走行装置21,21が茶うね間Uを走行する。
【0037】
本実施形態では、走行車体2として、施肥や防除のための乗用型茶園管理機を採用している。この乗用型茶園管理機は、作業内容に応じて、走行装置21の後方に耕耘機構(カルチ機構)や肥料散布機構等が設けられるものである。このため、走行車体2には、耕耘機構等を上下動させる油圧シリンダ24が設けられている。なお、油圧シリンダ24等に接続された油圧ホースは、図面が煩雑になるため図示は省略している。また、走行車体2として、摘採装置を備えた乗用型茶葉摘採機を採用してもよく、この態様の場合には、油圧シリンダ24を乗用型茶葉摘採機に設ければよい。
【0038】
図3に示すように、除草機構3は、茶うね間処理ユニット5と、茶うね間処理ユニット5に取り付けられた樹冠下処理ユニット6と、これら茶うね間処理ユニット5及び樹冠下処理ユニット6を上下動させる上下動ユニット4とを備えている。なお、以下の説明では、茶うね間処理ユニット5と樹冠下処理ユニット6を併せて除草処理ユニットWUと称することがある。
【0039】
図3(b)は、同図(a)の一点鎖線で囲んだA部の拡大図である。また、
図3(b)では、除草処理ユニットWUを上昇させた状態を細線で示し、除草処理ユニットWUが下降して、処理位置保持手段の一例である処理位置保持部材52によって支持されている状態を太線で示している。本実施形態では、自重によって除草処理ユニットWUが下降し、詳しくは後述する処理位置保持部材52によって支持する形態を採用している。
【0040】
図3(b)に示すように、上下動ユニット4は、走行装置21に設けられた第1取付部41に、持ち上げアーム43の基部が、左右方向に延在する第1軸42によって回動自在に取り付けられている。持ち上げアーム43は、走行装置21の後端部分との干渉を避けるため、「へ」の字状に屈曲したものであり、その先端が、左右方向に延在する第2軸44によって、茶うね間処理ユニット5側に回動自在に取り付けられている。また、第2軸44によって、リンクプレート45の一端側が回動自在に取り付けられ、リンクプレート45の他端側とリンクシャフト47の一端側が、左右方向に延在する第3軸46によって回動自在に連結されている。リンクシャフト47の他端側は、左右方向に延在する第4軸48によって、走行装置21に設けられた第2取付部49に回動自在に取り付けられている。
【0041】
また、油圧シリンダ24のロッド241が、持ち上げアーム43に取り付けられており、油圧シリンダ24を駆動させることで、除草処理ユニットWUが上昇し、また、除草処理ユニットWUは自重によって下降する。ここで、持ち上げアーム43、リンクプレート45、リンクシャフト47、及び第1軸42~第4軸48は、平行リンク機構と略同様の作用を奏するものである。これにより、除草処理ユニットWUを、角度を維持した状態で上下動させることができる。
【0042】
図4は、
図1に示す除草機構3の一つを抜き出して示す斜視図であり、
図5は、
図4に示す除草機構3の底面図である。また、
図6は、
図2に示す除草機構3の一つを拡大して示す図である。すなわち、
図6では、紙面奥側に向かう方向が走行方向になる。また、
図6では、除草機構3と、茶うね間U、雨落ち部O、茶うね間側樹冠下領域JOとの関係を示すため、茶うねTの一部を模式的に示している。
図7は、
図3に示す除草処理ユニットWUを拡大して示す図である。
【0043】
図4~
図7に示すように、本実施形態の茶うね間処理ユニット5は、平面視略長方形状の除草刃保持板53と、この除草刃保持板53の下面に設けられた取付片533に、不図示の固定手段によって着脱自在に固定された3つの除草刃7とを備えている。また、本実施形態の樹冠下処理ユニット6は、左右一対の保持体62,62と、左右一対の保持体62,62それぞれの下面に設けられた取付片623に、不図示の固定手段によって着脱自在に固定された樹冠下除草刃8とを備えている。除草刃7と樹冠下除草刃8は、破損した場合等は、容易に取り替えることができる。除草刃7と樹冠下除草刃8とは、大きさが樹冠下除草刃8の方がやや大きいという違いだけで、略同様の構成を有するため、除草刃7と樹冠下除草刃8とを併せて説明する。
【0044】
図7では、除草刃7,樹冠下除草刃8を抜き出して、一点鎖線の四角で囲んで示している。具体的には、除草刃7,樹冠下除草刃8を左右方向から見た図を左側に示し、除草刃7,樹冠下除草刃8を走行方向の後方側から見た図を右側に示している。
図6及び
図7に示すように、それぞれの除草刃7,樹冠下除草刃8は、左右方向(うね間幅方向)に延在する底部71,81と、この底部71,81の幅方向両端それぞれから立ち上がる立上部72,82を有し、走行方向に見て上向きコ字状の板材からなるものである。なお、除草刃7,樹冠下除草刃8は、底部71,81と立上部72,82との接続部が円弧状に形成されている。また、底部71,81は、左右方向に見て、下側に鈍角頂点を持つ逆三角形状に形成されている。
【0045】
また、
図7に示すように、本実施形態の除草刃7,樹冠下除草刃8は、底部71,81と立上部72,82の前側部分に、平刃からなる刃部7a,8aを有している。すなわち、除草刃7,樹冠下除草刃8は、鋤状のものであり、走行方向に対して水平面内で交差する方向に延在する刃部7a,8aを有するものである。除草刃7は、茶うね間除草部材の一例に相当する。また、樹冠下除草刃8は、樹冠下除草部材の一例に相当し、茶うね間U側から樹冠下Jに張り出し、樹冠下Jの雑草に接触して除草するものである。なお、刃部7a,8aは、底部71,81の前側部分にのみ設ける態様としてもよい。
【0046】
図7では、左右方向に見て、除草刃7,樹冠下除草刃8の下端部分が、やや後方に傾く姿勢に設定されている。これにより、底部71,81の刃部7a,8aが、やや斜め下方に向く姿勢に設定されている。なお、
図6及び
図7に示すように、除草刃7,樹冠下除草刃8の立上部72,82と、取付片533,623との固定箇所は、垂下片531,622によって後側から補強されている。
【0047】
図4、
図5及び
図7に示すように、本実施形態では、上下動ユニット4が連結するガードフレーム51を有している。ガードフレーム51は、除草刃保持板53の上方に設けられた、平面視で後ろ向きコ字状の部材である。また、ガードフレーム51は、走行方向の前側から後側に向けて上方向へ角度(例えば10°程度)をもつものである。これにより、樹冠下Jの高さ方向の間隔が狭い場合や樹冠下J自体がほとんど存在しない場合であっても、ガードフレーム51によって、樹冠下Jの枝葉を押し上げ(すくい上げ)、除草刃7を挿入させる空間の確保が可能になる(
図6等参照)。
【0048】
図4~
図7に示すように、樹冠下処理ユニット6は、前述した、樹冠下除草刃8が下面に固定された左右一対の保持体62,62の他、左右方向に延在しガードフレーム51に取り付けられた枠状の枠体61と、保持体62を走行方向に対して水平面内で交わる方向に揺動可能とする揺動ロッド64と、左右一対の保持体62,62を互いに離間する方向(外側)に付勢しつつ接続するガススプリング65と、を有している。揺動ロッド64は、揺動手段の一例に相当し、ガススプリング65は、付勢手段の一例に相当する。枠体61は、
図7に示すように、両端部が、ガードフレーム51の後方側部分に固定された支持部511に、角度調整軸512によって軸支されている。また、支持部511には円弧状の長孔が形成されており、この長孔に挿入された、ボルトとナットからなる固定部材513によって所定の角度で固定される。これにより、除草刃7に対する樹冠下除草刃8の高さ(深さ)位置を調整することができる。
【0049】
図4に示すように、揺動ロッド64は、左右一対の保持体62,62それぞれに対して、2本ずつ設けられ、その一端側が枠体61に軸支され、他端側に設けられたボス部641が、保持体62と軸支プレート642によって軸支されて平行リンクを構成するものである。また、左右一対の保持体62,62は、互いに離間する方向に付勢するガススプリング65によって接続されている。このガススプリング65の両端部は、左右一対の保持体62,62それぞれの軸支プレート642に軸支されている。また、本実施形態では、左右一対の保持体62,62それぞれの外側には、平面視内向きコ字状のガードパイプ621が設けられている。
【0050】
図7に示すように、処理位置保持部材52は、ガードフレーム51に取り付けられた取付部521と、この取付部521に対して、上下方向にスライド可能に設けられたスライドバー522と、スライドバー522の下端部分に設けられたローラフレーム523と、ローラフレーム523に軸支されたローラ524とを有している。なお、本実施形態では、ローラ524としてゴムタイヤを採用している。処理位置保持部材52は、取付部521に対してスライドバー522をスライドさせることによって、除草処理ユニットWUの高さ位置を調整することができる。
図7では、除草刃7の刃部7aや樹冠下除草刃8の刃部8aが、地表面よりも数mm程度低くなるように調整した様子を示している。すなわち、処理位置保持部材52は、除草刃7の刃部7a及び樹冠下除草刃8の刃部8aの地表からの距離(
図7では-数mm)を一定に保つものである。
【0051】
ここで、茶うね間Uには一般的に、剪定及び中切り更新に伴う茶枝葉が堆積している。この堆積した茶枝葉等を引きずってしまうと、その茶枝葉等を乗り越えるときに持ち上がってしまう等、茶うね間Uの起伏に対する追従が困難となり、除草作業に支障をきたす虞がある。さらに、引きずった茶枝葉等が、走行装置21のクローラ等に巻き込まれてしまう虞もある。この点、処理位置保持部材52のローラ524は、走行装置21の走行に伴い、茶うね間U上を回転しながら移動する。このため、茶うね間Uに堆積した茶枝葉等を引きずることなく地表の凹凸に追従し、除草処理ユニットWUの高さ位置を良好に維持することができる。
【0052】
図5及び
図6に示すように、本実施形態では、茶うね間Uの中央に除草刃7を1つ配置し、その除草刃7よりもやや後方であって、左右方向に間隔をあけて2つの除草刃7,7を配置して、左右対称の構成を採用している。また、前側の1つの除草刃7と後側の2つの除草刃7,7とは、走行方向においてオーバーラップする状態で配置している。さらに、これらの除草刃7によって、茶うね間Uの幅方向(走行方向に対して水平面内で直交する方向のうね間幅方向)全域を処理可能な態様としている。樹冠下除草刃8は、樹冠下Jにおける茶うね間側樹冠下領域JO側の部分から、茶うね間Uにおける樹冠下J側の部分にかけて位置している。
【0053】
これらにより、
図2及び
図6に示すように、茶うねTをまたいで茶園用除草機1を走行させることにより、茶うね間U及び茶うね間側樹冠下領域JOを効率的に除草することができる。また、樹冠下処理ユニット6は、走行装置21が走行する茶うね間Uの両側における茶うね間側樹冠下領域JO側にそれぞれ位置する一対の保持体62を有するものである。これにより、茶うね間Uの両側における茶うね間側樹冠下領域JOを除草することができる。すなわち、茶園用除草機1がまたいでいる茶畝Tの茶うね間側樹冠下領域JOと、並列に植栽され隣接する茶畝Tの茶うね間側樹冠下領域JOとを、それぞれ同時に除草を行うことができる。これにより、除草時間が短縮され、作業効率が向上する。なお、後側の除草刃7と樹冠下除草刃8とは、走行方向においてオーバーラップする状態で配置しているため、雨落ち部O等の未処理部の発生を防止することができる。
【0054】
図8は、保持体62が揺動する様子を説明するための図である。具体的には、
図8(a)は、樹冠下処理ユニット6の平面図であり、同図(b)は、同図(a)を後側から見た図である。また、保持体62が揺動した状態を一点鎖線で示している。
【0055】
図2に示すように、茶うねTをまたいで茶園用除草機1を走行する際に、例えば、
図8に示す左側の保持体62におけるガードパイプ621等が茶樹幹等に接触すると、同図(b)において実線の矢印で示すように、ガススプリング65が縮む。それと併せて、
図8(a)において円弧状の実線の矢印で示すように、保持体62が茶うね間U側(
図6参照)に揺動する。これにより、茶樹幹等を回避し、茶樹幹等の損傷を抑えることができる。さらに、本実施形態では、ガードパイプ621が設けられているため、このガードパイプ621によっても、茶樹幹等の損傷をより抑えることができる。
【0056】
茶樹幹等を回避した後は、
図8(b)において破線の矢印で示すように、ガススプリング65が伸びる。それと併せて、
図8(a)において円弧状の破線の矢印で示すように、保持体62が、茶うね間側樹冠下領域JO(
図6参照)に張り出した元に位置に復帰する。これにより、茶樹幹ぎりぎりまでの範囲の除草が可能となる。
【0057】
次に、これまで説明してきた茶園用除草機1を用いた除草処理の一例を説明する。
【0058】
茶園用除草機1を用いて、茶うね間U及び茶うね間側樹冠下領域JOの除草処理を行う場合には、事前に除草機構3を走行車体2の走行装置21の後方に装着しておく。そして、
図7を用いて前述したように、必要に応じて、除草刃7に対する樹冠下除草刃8の刃部8aの高さを調整する。
【0059】
次いで、処理位置保持部材52におけるスライドバー522(
図7参照)を上下方向にスライドさせ、除草処理ユニットWUの高さ位置を調整する。この調整は、例えば
図7に示すように、除草刃7の刃部7aや樹冠下除草刃8の刃部8aが、地表面よりも数mm程度低くなるように調整する。これにより、除草刃7の刃部7aや樹冠下除草刃8の刃部8aの地表面からの距離を一定に保つことが可能になる。
【0060】
その後、
図3(b)の細線で示すように、除草機構3の除草処理ユニットWUを油圧シリンダ24によって上昇させ、その状態で茶園に向けて茶園用除草機1を走行させる。茶園へ到着したら、門型フレーム22によって茶うねTを跨ぎ、除草機構3が茶うね間Uの上方に来た時に、除草処理ユニットWUを自重によって下降させ、
図7に示すように、茶うね間U上に接地した処理位置保持部材52によって除草処理ユニットWUを支持させる。
【0061】
その状態で、茶園用除草機1を、茶うねTを跨いで茶うね間Uに沿って走行させる。茶園用除草機1の走行に伴い、除草刃7及び樹冠下除草刃8は、処理高さを維持したまま走行方向へ進む。その際、処理位置保持部材52のローラ524が地面に接地することにより地面の起伏に追従し、除草刃7及び樹冠下除草刃8が常に除草作業に好適な所望の高さとなるよう維持される。これにより、茶うね間Uや茶うね間側樹冠下領域JOに存在する雑草の根元に接触して除草(掻き取り処理)する。また、保持体62におけるガードパイプ621等が茶樹幹等に接触した場合は、茶うね間U側に揺動して茶樹幹等を回避し、回避後は再び元の位置に戻る動きになる。これにより、茶樹幹等の損傷を抑えつつ、茶うね間側樹冠下領域JOを除草することができる。
【0062】
樹冠下処理ユニット6が樹冠下Jの終端部へ到達した時点で、除草処理ユニットWUを油圧シリンダ24によって上昇させ、その状態で、次の処理対象の茶うね間Uの開始端部へ移動し、処理対象とする茶うね間U及び茶うね間側樹冠下領域JOのすべての処理が完了するまで繰り返す。
【0063】
このように、茶園用除草機1を用いて除草処理を行うことで、茶うね間Uと、茶うね間側樹冠下領域JOを除草することができる。
【0064】
本発明の茶園用除草機における除草機構は、前述したように、茶うね間処理ユニットを備えなくても成立する技術思想であり、さらに、他の茶うね間処理ユニットを採用することも可能である。
【0065】
次に、他の茶うね間処理ユニットを採用した第2実施形態について説明する。以下に説明する第2実施形態においては、
図1~
図8に示す第1実施形態との相違点を中心に説明し、
図1~
図8に示す第1実施形態における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。
【0066】
図9は、第2実施形態の除草機構3の一つを抜き出して示す斜視図であり、
図10は、
図9に示す除草機構3の底面図である。また、
図11は、第1実施形態の
図6に対応する図であり、
図12は、第1実施形態の
図7に対応する図である。
【0067】
図9~
図12に示すように、第2実施形態の茶うね間処理ユニット5’は、走行方向に対して左右一対の回転部材54,54を備えている。回転部材54の下端部分には、茶うね間除草部材としての回転体9が設けられている。回転部材54は、走行車体2の油圧源から供給される圧油によって駆動する油圧モータ541やカップリング等を有しており、
図12において概念的に示す軸Sを中心に、回転体9を横回転させることができる。また、本実施形態の回転部材54それぞれは、互いに伝達されるギヤ542を有している。これにより、歯車伝達によって、一対の回転体9,9は回転数が同期され、かつ逆方向に回転するように構成されている。
【0068】
回転体9は、回転バー91と、この回転バー91の下面側に設けられた複数のねじりコイルばね92とを有している。複数のねじりコイルばね92は、軸Sを中心とした回転バー91の延在方向の両側に、本実施形態では4つずつ並べて設けられている。回転バー91は、軸Sを中心に横方向に回転するものであり、これにより、回転体9も横回転する。
【0069】
また、それぞれのねじりコイルばね92は、コイル部が回転バー91の下面側に固定され、アーム部の下端部分に、雑草に接触して除草する爪材9aが設けられている。
【0070】
図10に示す、左側における回転体9の回転バー91は、反時計回りに回転するものであり、
図10に示す、右側における回転体9の回転バー91は、時計回りに回転するものである。これにより、茶うね間Uを効率的に除草することが可能となる。
【0071】
以上説明したように、本発明の茶園用除草機によれば、茶うねをまたいで走行しながら、樹冠下を効率的に除草することが可能となる。
【0072】
本発明は上述の実施形態に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことが出来る。例えば、前述した実施形態では、走行方向に見て上向きコ字状の板材からなる、除草刃7,樹冠下除草刃8を例に挙げて説明したが、除草刃7,樹冠下除草刃8には、中央側にも1又は複数の立上部を有する、例えば走行方向に見て上向きヨ字状等の板材も含まれる。また、刃部が設けられた板材の幅方向両端それぞれが、上下方向に延在する部材によって支持されるものであってもよい。さらに、底部71,81の幅方向の一端側に立上部72,82を有し、走行方向に見てL字状(逆L字状)の板材であってもよい。
【0073】
また、前述した実施形態では、ローラ524を有する処理位置保持部材52を用いているが、構成を簡易にするため、ソリ状の部材を地面に接触させ地表面からの距離を一定に保つ処理位置保持部材を用いてもよい。さらに、前述した実施形態では、除草処理ユニットWUを自重によって接地する構成としているが、茶園用除草機1全体の重量バランスが保てる範囲で錘を設けてもよい。また、除草刃7や樹冠下除草刃8を押さえつけるスプリング機構等を設けてもよい。さらに、前述した実施形態では、樹冠下Jの広さや茶樹幹の位置が異なっているため、茶うね間側樹冠下領域JOを除草する態様を説明したが、茶うね間側樹冠下領域JOよりも茶樹幹側の領域を除草する態様も採用可能である。
【0074】
なお、以上説明した各実施形態の記載それぞれにのみ含まれている構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態に適用してもよい。
【符号の説明】
【0075】
1 茶園用除草機
2 走行車体
21 走行装置
22 門型フレーム
24 油圧シリンダ
3 除草機構
4 上下動ユニット
5 茶うね間処理ユニット
52 処理位置保持部材
524 ローラ
53 除草刃保持板
6 樹冠下処理ユニット
7 除草刃
7a 刃部
71 底部
72 立上部
8 樹冠下除草刃
8a 刃部
9 回転体
9a 爪材
T 茶うね
U 茶うね間
O 雨落ち部
J 樹冠下
JO
WU 除草処理ユニット
【要約】
【課題】茶うねをまたいで走行しながら、樹冠下を効率的に除草可能な茶園用除草機、及びこの茶園用除草機に用いられる除草機構を提供する。
【解決手段】無端帯によって走行する左右一対の走行装置21と、左右一対の走行装置21を連結し茶うねTをまたぐことが可能な門型フレーム22と、左右一対の走行装置21それぞれの後方に設けられた除草機構3と、を備え、除草機構3は、走行装置21が走行する茶うね間U側から樹冠下Jに張り出し、樹冠下Jの雑草に接触して除草する樹冠下除草刃8を備えた樹冠下処理ユニット6と、樹冠下除草刃8を地表からの距離を一定に保つように調整可能な処理位置保持部材52と、を有するものである。
【選択図】
図5