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特許7554061三次元測定機、形状測定方法およびデータ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】三次元測定機、形状測定方法およびデータ処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
G01B11/24 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020097932
(22)【出願日】2020-06-04
(65)【公開番号】P2021189143
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000137694
【氏名又は名称】株式会社ミツトヨ
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼井 利久
(72)【発明者】
【氏名】太田 仁
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-064644(JP,A)
【文献】特開2008-002995(JP,A)
【文献】特開2002-022423(JP,A)
【文献】特開2016-161474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物にレーザ光を照射する照射部と、
前記測定対象物で反射された前記レーザ光を撮像し、1列以上の画素列を含む撮像画像を生成する撮像部と、
前記撮像画像の前記画素列が示す光強度分布について、正規分布を基準とした変化度合いを数値化したパラメータを算出し、算出された前記パラメータが所定の数値条件を満たすか否かを判定し、前記パラメータが前記数値条件を満たすと判定されたデータを有効データとする判定部と、
前記有効データに基づいて、前記測定対象物の形状測定データを生成する形状測定部と、
前記形状測定データをグラフィック処理して表示部に表示させると共に、前記パラメータに対する前記数値条件の設定画面を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記設定画面に入力された設定情報に基づいて、前記パラメータの前記数値条件を設定する条件設定部と、を備え、
前記判定部は、前記パラメータの前記数値条件が更新されるごとに、既に撮像および判定が行われた前記撮像画像について再判定を行うことで前記有効データを更新し、前記形状測定部は、更新された前記有効データに基づいて前記形状測定データを再生成することを特徴とする三次元測定機。
【請求項2】
請求項1に記載の三次元測定機において、
前記判定部は、前記画素列が示す前記光強度分布について、歪度、尖度、分散、ピークレベルまたはピーク数の少なくともいずれかである1以上の前記パラメータを算出し、算出された前記パラメータが前記パラメータ毎に設定された前記数値条件を満たすか否かを判定し、各前記パラメータが前記数値条件を満たすと判定されたデータを前記有効データとすることを特徴とする三次元測定機。
【請求項3】
測定対象物で反射されたレーザ光を撮像することにより取得された1列以上の画素列を含む撮像画像に基づいて行う形状測定方法であって、
前記撮像画像の前記画素列が示す光強度分布について、正規分布を基準とした変化度合いを数値化したパラメータを算出し、算出された前記パラメータが所定の数値条件を満たすか否かを判定し、前記パラメータが前記数値条件を満たすと判定されたデータを有効データとする判定
工程と、
前記有効データに基づいて、前記測定対象物の形状測定データを生成する形状測定工程と、
前記形状測定データをグラフィック処理して表示部に表示させると共に、前記パラメータに対する前記数値条件の設定画面を前記表示部に表示させる表示工程と、
前記設定画面に入力された設定情報に基づいて、前記パラメータの前記数値条件を設定する条件設定工程と、を含み、
前記判定工程は、前記パラメータの前記数値条件が更新されるごとに、既に撮像および判定が行われた前記撮像画像について再判定を行うことで前記有効データを更新し、前記形状測定工程は、更新された前記有効データに基づいて前記形状測定データを再生成することを特徴とする形状測定方法。
【請求項4】
測定対象物で反射されたレーザ光を撮像した画像であって、1列以上の画素列を含む撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像の前記画素列が示す光強度分布について、正規分布を基準とした変化度合いを数値化したパラメータを算出し、算出された前記パラメータが所定の数値条件を満たすか否かを判定し、前記パラメータが前記数値条件を満たすと判定されたデータを有効データとする判定部と、
前記有効データに基づいて、前記測定対象物の形状測定データを生成する形状測定部と、
前記形状測定データをグラフィック処理して表示部に表示させると共に、前記パラメータに対する前記数値条件の設定画面を前記表示部に表示させる表示制御部と、
前記設定画面に入力された設定情報に基づいて、前記パラメータの前記数値条件を設定する条件設定部と、
を備え、
前記判定部は、前記パラメータの前記数値条件が更新されるごとに、既に撮像および判定が行われた前記撮像画像について再判定を行うことで前記有効データを更新し、前記形状測定部は、更新された前記有効データに基づいて前記形状測定データを再生成することを特徴とするデータ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式の三次元測定機、形状測定方法およびデータ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物にレーザ光を照射すると共に測定対象物で反射された光を撮像することで、測定対象物の形状を測定する非接触式の三次元測定機が知られている(例えば特許文献1参照)。
このような非接触型の三次元測定機としては、ライン状のレーザ光を測定対象物に照射するライン式の三次元測定機や、点状のレーザ光を測定対象物に走査させるフライングスポット式の三次元測定機が存在する。いずれのタイプの三次元測定機においても、三角測量法の原理に従って撮像画像の光強度分布に基づく演算処理を行うことにより、レーザ光が照射された測定部位までの距離を算出することが共通している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-141372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述したような非接触式の三次元測定機では、測定対象物の測定部位の状態(例えば形状や反射率等)によって、撮像画像の光強度分布が理想範囲から外れてしまう場合がある。このような場合、測定部位までの距離が正確に算出されず、当該測定部位に対応するデータが測定対象物全体の形状測定データにおけるノイズになってしまう。
【0005】
本発明の目的は、形状測定データにおけるノイズの発生を抑制した三次元測定機、形状測定方法およびデータ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の三次元測定機は、測定対象物にレーザ光を照射する照射部と、前記測定対象物で反射された前記レーザ光を撮像し、1列以上の画素列を含む撮像画像を生成する撮像部と、前記画素列が示す光強度分布について、正規分布を基準とした変化度合いを数値化したパラメータを算出し、算出された前記パラメータが所定の数値条件を満たすか否かを判定する判定部と、前記パラメータが前記数値条件を満たすと判定された前記光強度分布を示す前記画素列に基づいて、前記測定対象物の形状測定データを生成する形状測定部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明では、撮像部により撮像された撮像画像のうち、パラメータが数値条件を満たさない光強度分布を示す画素列は、ノイズを発生させ得るデータとして有効データから除外される。一方、撮像部により撮像された撮像画像のうち、パラメータが数値条件を満たす光強度分布を示す画素列は、信頼性のある有効データとして、測定対象物の形状測定データを生成するために利用される。
すなわち、本発明では、測定対象物の形状測定データを生成するための撮像画像データについて、信頼性に基づく取捨選択が行われる。このため、形状生成データにおけるノイズの発生を抑制することができる。
【0008】
本発明の三次元測定機において、前記判定部は、前記画素列が示す前記光強度分布について、歪度、尖度、分散、ピークレベルまたはピーク数の少なくともいずれかである1以上の前記パラメータを算出し、算出された前記パラメータが前記パラメータ毎に設定された前記数値条件を満たすか否かを判定することが好ましい。
このような本発明によれば、ノイズを発生させ得る撮像画像を有効データから好適に取り除くことができる。
【0009】
本発明の形状測定方法は、測定対象物で反射されたレーザ光を撮像することにより取得された1列以上の画素列を含む撮像画像に基づいて行う形状測定方法であって、前記画素列が示す光強度分布について、正規分布を基準とした変化度合いを数値化したパラメータを算出し、算出された前記パラメータが所定の数値条件を満たすか否かを判定する判定工程と、前記パラメータが前記数値条件を満たすと判定された前記光強度分布を示す前記画素列に基づいて、前記測定対象物の形状測定データを生成する形状測定工程と、を実施することを特徴とする。
本発明によれば、上述した本発明の三次元測定機と同様の効果を奏する。
【0010】
本発明のデータ処理装置は、測定対象物で反射されたレーザ光を撮像した画像であって、1列以上の画素列を含む撮像画像を取得する画像取得部と、前記画素列が示す光強度分布について、正規分布を基準とした変化度合いを数値化したパラメータを算出し、算出された前記パラメータが所定の数値条件を満たすか否かを判定する判定部と、前記パラメータが前記数値条件を満たすと判定された前記光強度分布を示す前記画素列に基づいて、前記測定対象物の形状測定データを生成する形状測定部と、を備えることを特徴とする。
本発明によれば、上述した本発明の三次元測定機と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る三次元測定機の構成を示すブロック図。
図2】前記実施形態に係る三次元測定機の光学的要素を模式的に示す図。
図3】前記実施形態に係る各パラメータの数値条件を設定するための設定画面を示す図。
図4】測定対象物の測定部位、リニアイメージセンサに形成されるビームスポット、および、撮像画像の光強度分布の例を示す図。
図5】測定対象物の測定部位、リニアイメージセンサに形成されるビームスポット、および、撮像画像の光強度分布の他の例を示す図。
図6】測定対象物の測定部位、リニアイメージセンサに形成されるビームスポット、および、撮像画像の光強度分布の他の例を示す図。
図7】測定対象物の測定部位、リニアイメージセンサに形成されるビームスポット、および、撮像画像の光強度分布の他の例を示す図。
図8】測定対象物の測定部位、リニアイメージセンサに形成されるビームスポット、および、撮像画像の光強度分布の他の例を示す図。
図9】測定対象物の測定部位、リニアイメージセンサに形成されるビームスポット、および、撮像画像の光強度分布の他の例を示す図。
図10】前記実施形態に係る第1パラメータを説明する図。
図11】前記実施形態に係る第2パラメータを説明する図。
図12】前記実施形態に係る第3パラメータを説明する図。
図13】前記実施形態に係る第4パラメータを説明する図。
図14】前記実施形態に係る第5パラメータを説明する図。
図15】前記実施形態のプローブモジュールおよび測定対象物の例を示す図。
図16】前記実施形態のプローブモジュールおよび測定対象物の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1において、三次元測定機1は、フライングスポット式の装置であり、レーザ光L(ポイントレーザ)の照射方向を変えながら当該レーザ光Lを測定対象物Wに照射し、測定対象物Wで反射されたレーザ光Lを撮像することで、測定対象物Wの形状を測定するものである。
【0013】
具体的には、三次元測定機1は、図1に示すように、レーザ光の出射および撮像を行うプローブユニット10と、プローブユニット10の制御を行う制御部4と、各種データを記憶する記憶部5と、制御部4に接続された操作部6および表示部7とを備える。
【0014】
プローブユニット10は、プローブユニット10を測定対象物Wに対して移動可能な移動機構(図示省略)によって支持されており、照射部2および撮像部3を有している。なお、プローブユニット10を支持する移動機構の構成は、従来技術と同様であり、門型でもよいし、アーム型でもよい。
【0015】
照射部2は、レーザ光Lを出射する光源21と、光源21を駆動する光源駆動部22と、照射光学系23とを有する。
光源21は、例えばレーザダイオードであり、光源駆動部22から印加される駆動電圧に応じた光量のレーザ光を出射する。
照射光学系23は、光源21から出射されたレーザ光を測定対象物Wに照射する光学系である。この照射光学系23は、例えば、光源21から出射されたレーザ光Lを平行化するコリメートレンズと、レーザ光の照射方向を変化させる照射側走査ミラー(例えばガルバノミラー等)とを含んで構成される。
【0016】
撮像部3は、受光光学系31と、受光光学系31を介してレーザ光Lを受光するリニアイメージセンサ32と、信号処理部33とを有する。
受光光学系31は、測定対象物Wで反射されたレーザ光Lをリニアイメージセンサ32に導く光学系である。この受光光学系31は、例えば、測定対象物Wで反射されたレーザ光Lを反射する受光側走査ミラー(例えばガルバノミラー等)と、受光側走査ミラーで反射されたレーザ光を集光する集光レンズとを含んで構成される。
【0017】
リニアイメージセンサ32は、一方向に沿って直線状に配置された複数の受光素子を有しており、これら複数の受光素子は、リニアイメージセンサ32の受光面を構成する。また、リニアイメージセンサ32の各受光素子は、受光量に応じた電荷を蓄積する。
信号処理部33は、リニアイメージセンサ32の各受光素子に蓄積された電荷を順に読み出し、信号処理を施すことにより、撮像画像を生成する。
本実施形態において、撮像部3は、撮像画像として1列の画素列による1次元画像を生成するものであり、この撮像画像は、光強度を示すデジタルの波形データとして表される。
【0018】
なお、図2は、プローブユニット10を構成する光学的要素を簡略化して示している模式図である。図2に示すように、照射部2が測定対象物Wに照射するレーザ光Lの光軸と、測定対象物Wで反射されて撮像部3に入射するレーザ光Lの光軸とは、所定角度を挟んで配置される。
【0019】
制御部4は、本発明のデータ処理装置に対応する。この制御部4は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、記憶部5に記憶されたプログラムを実行することにより、光源制御部41、走査制御部42、画像取得部43、形状測定部44、条件設定部45、判定部46、および、表示制御部47として機能する。なお、制御部4は、有線または無線によりプローブユニット10等に接続されている。
【0020】
光源制御部41は、光源駆動部22を制御することにより、光源21から出射されるレーザ光Lの光量を調整する。なお、光源制御部41は、リニアイメージセンサ32の各受光素子の蓄積電荷の飽和を回避するため、光源駆動部22をフィードバック制御してもよい。
【0021】
走査制御部42は、照射光学系23の照射側走査ミラーおよび受光光学系31の受光側走査ミラーが同期駆動されるように制御する。これにより、照射部2から照射されるレーザ光Lが測定対象物Wを走査しつつ、測定対象物Wで反射されたレーザ光が撮像部3に入射する。また、走査制御部42は、プローブユニット10を支持する移動機構を制御することで、当該走査方向に直交する方向にプローブユニット10を移動させてもよい。
【0022】
画像取得部43は、レーザ光Lが測定対象物Wを走査する間、所定のサンプリング周期で撮像部3から撮像画像を取得する。これにより、画像取得部43は、測定対象物Wの各測定部位に対応する複数の撮像画像を取得する。取得された撮像画像は、記憶部5に記憶される。
【0023】
形状測定部44は、撮像画像に基づいて測定対象物Wの表面における測定部位までの距離を算出する。
例えば、測定対象物Wの測定部位が図2に示すように変位すると、当該測定部位で反射して撮像部3に入射するレーザ光の光路が破線のように変化する。その結果、リニアイメージセンサ32の受光面に形成されるビームスポットの位置が移動し、撮像画像の光強度分布が変化する。そこで、形状測定部44は、撮像画像の光強度分布におけるピークや重心に基づいて、測定対象物Wの測定部位までの距離を算出できる。
なお、撮像画像の光強度分布は、撮像画像を形成する画素列の配列方向に沿った光強度の変化を表すものである。本実施形態において、撮像画像は一列の画素列から形成されるため、撮像画像の光強度分布は、本発明の「画素列が示す光強度分布」に相当する。
【0024】
また、形状測定部44は、測定対象物Wの各測定部位に対応する複数の撮像画像に基づいて、測定対象物の形状測定データを生成する。具体的には、撮像画像毎に算出される測定部位までの距離と、各撮像画像の取得時におけるレーザ光Lの照射角度およびプローブユニット10の位置とに基づいて、測定対象物Wの測定部位ごとの三次元座標を算出する。
なお、レーザ光Lの照射角度は、照射光学系23の照射側走査ミラーに設けられる角度センサの検出値に基づいて算出可能であり、プローブユニット10の位置は、プローブユニット10を支持する移動機構に設けられる変位センサの検出値に基づいて算出可能である。
【0025】
条件設定部45は、例えば操作部6を介して入力される設定情報に基づいて、第1~第5パラメータのそれぞれに対する数値条件を設定できる。
ここで、第1~第5パラメータは、撮像画像の光強度分布について、正規分布を基準とした変化度合いを数値化して示す情報である。本実施形態において、第1~第5パラメータは、歪度、尖度、分散、ピークレベル、および、ピーク数にそれぞれ対応する。第1~第5パラメータの詳細は、後述する。
数値条件は、所定の数値または数値範囲を指定する条件であり、第1~第5パラメータに対してそれぞれ設定可能であり、少なくとも1以上のパラメータに対して設定される。この数値条件は、撮像画像が有効データとして扱われるための条件であり、以下、フィルタ条件と称する。
【0026】
判定部46は、撮像画像の光強度分布の第1~第5パラメータを算出し、第1~第5パラメータがそれぞれに設定されたフィルタ条件を満たすか否かを判定する。本実施形態において、判定部46は、第1~第5パラメータについて、設定されたフィルタ条件を満たす撮像画像を有効データであると判定し、少なくとも1つの第1~第5パラメータがフィルタ条件を満たさない撮像画像を無効データであると判定する。
有効データであると判定された撮像画像は、上述の形状測定部44による形状測定の際に利用されるデータとなる。
【0027】
表示制御部47は、形状測定データをグラフィック処理(例えば三次元座標へのプロット処理)して表示部7に表示させることができる。また、表示制御部47は、図3に示すように、第1~第5パラメータの各フィルタ条件の設定画面9を表示部7に表示させることができる。設定画面9については後述する。
【0028】
記憶部5は、制御部4を機能させるためのプログラムや、画像取得部43により取得された撮像画像などを記憶する。
操作部6は、例えばキーボードなどであり、表示部7は、例えば液晶ディスプレイなどである。
【0029】
(撮像画像)
以下、図4図9を参照して、測定対象物Wの測定部位と、リニアイメージセンサ32の受光面に形成されるビームスポットと、撮像画像の光強度分布との関係について説明する。なお、図4図9に示す光強度分布において、横方向は画素の配列方向に対応し、縦方向は各画素の光強度に対応する。また、図4図9では、説明のために、撮像部3のうちのリニアイメージセンサ32のみを模式的に示している。
【0030】
図4に示すように、レーザ光Lが測定対象物Wの面に対して垂直に照射される場合、通常、リニアイメージセンサ32に形成されるビームスポットは円形状であり、当該ビームスポットの光強度は、円形状の中心を中心として正規分布している。この場合、撮像画像の光強度分布は、ビームスポットの中心位置でピークを示す正規分布となる。
しかし、図5図9に示すように、測定部位の状態(例えば形状や材質等)に応じて、ビームスポットの形状や光強度分布は変化する。
【0031】
例えば、図5に示すように、レーザ光Lが測定対象物Wの面に対して鋭角に照射される場合、ビームスポットは楕円形となり、当該楕円形の片側における光強度が強くなる。この場合、光強度分布は、左右非対称になり、ビームスポットの中心とは異なる位置にピークが出現する。
【0032】
図6に示すように、測定対象物Wの測定部位がエッジである場合(図中左側)、測定対象物Wの測定部位で反射されたレーザ光Lの光路上に遮蔽物(測定対象物Wの他の部位)が存在する場合(図中中央)、または、測定対象物Wにおける反射率の異なる部位同士の境界が測定部位に含まれる場合(図中右側)、ビームスポットに欠けが生じ、光強度分布の尖度が高くなる。
図7に示すように、測定対象物Wの透過性が高い場合、ビームスポットの光強度の分散率が高くなり、光強度分布の広がりが大きくなる。
【0033】
図8は、レーザ光Lに対する反射率が互いに異なる測定対象物Wを示している。測定対象物Wが低レベルの反射率を有する場合(図中左側)、測定対象物Wが中レベルの反射率を有する場合(図中中央)に比べて、光強度分布のピークレベルが小さくなる。一方、測定対象物Wが高レベルの反射率を有する場合(図中右側)、ビームスポットの光強度が受光素子の飽和レベルを超過し、光強度分布のピーク先端が平坦になる。
【0034】
図9に示すように、測定対象物Wの測定部位で反射されたレーザ光Lがさらに測定対象物Wの他の部位で反射された後にリニアイメージセンサ32に入射した場合、リニアイメージセンサ32には2つのビームスポットが形成され、光強度分布には2つのピークが出現する。
【0035】
以上の図5図9に示すような光強度分布の変形が生じた場合、ピークや重心を正確に検出することが困難となり、測定部位までの距離に関する測定誤差が大きくなってしまう。その結果、測定対象物Wの形状測定データにおいて、当該測定部位に対応する座標データがノイズになってしまう。
【0036】
(パラメータ)
そこで、本実施形態では、撮像画像の光強度分布の変形度合いを第1~第5パラメータ(歪度、尖度、分散、ピークレベルおよびピーク数)によって数値化し、第1~第5パラメータのそれぞれがフィルタ条件を満たす撮像画像を有効データとすることで、ノイズになり得るデータを形状測定データから取り除く。
【0037】
以下、図10図14を参照して各パラメータについて説明する。なお、以下の説明では、撮像画像において所定の閾値以上の光強度を示す画素数をデータ数nとし、各画素が示す光強度を各データの値Xi(i=1,2,・・・n)とし、各データの値Xiの平均値をμとし、標準偏差をσとする。
【0038】
図10は、光強度分布の変形度合いを表す第1パラメータである歪度を説明する図である。図10において、左右中央には、歪度が0の場合の光強度分布を示し、左側には歪度がより大きい場合の光強度分布を示し、右側には歪度が0より小さい場合の光強度分布を示している。この歪度は、光強度分布の歪み具合を表す値であり、例えば次の式(1)によって求めることができる。
【数1】
歪度が0のとき、光強度分布は左右対称であり、そのピークは左右中央に位置している(図10の中央参照)。一方、歪度が正のときピークが左側に偏っており(図10の左側参照)、歪度が負のときピークが右側に偏っている(図10の右側参照)。
歪度に関してフィルタ条件を設定する場合、例えば「0を含む任意の数値範囲」をフィルタ条件に設定できる。
【0039】
図11は、光強度分布の変形度合いを表す第2パラメータである尖度を説明する図である。尖度は、光強度分布の尖り具合を表す値であり、例えば次の式(2)によって求めることができる。
【数2】
尖度が3のとき光強度分布は正規分布しており、尖度が3より小さいとき光強度分布は尖っており、尖度が3より大きいとき光強度分布は扁平である。
尖度に関してフィルタ条件を設定する場合、例えば「3を含む任意の数値範囲」をフィルタ条件に設定できる。
【0040】
図12は、光強度分布の変形度合いを表す第3パラメータである分散を説明する図である。分散は、光強度分布のばらつき具合を表す値であり、例えば次の式(3)によって求めることができる。
【数3】
光強度分布のばらつきが大きいほど、分散が大きくなる。この分散に関してフィルタ条件を設定する場合、例えば「最小値を0とした任意の数値範囲」をフィルタ条件に設定できる。
【0041】
図13は、光強度分布の変形度合いを表す第4パラメータであるピークレベルを説明する図である。このピークレベルは、光強度分布のピーク値を表す。
ピークレベルに関してフィルタ条件を設定する場合、任意の数値範囲をフィルタ条件に設定できる。なお、当該数値範囲は、飽和レベルVtより低い範囲に設定されることが好ましい。
【0042】
図14は、光強度分布の変形度合いを表す第5パラメータであるピーク数を説明する図である。このピーク数は、光強度分布に出現するピークの数を表すものであり、図14はピーク数が2の場合を例示している。
ピーク数についてフィルタ条件を設定する場合、例えば「1」という数値をフィルタ条件に設定することが好ましい。
【0043】
(形状測定方法)
まず、ユーザは、図3に示すような設定画面9に対して、第1~第5パラメータの各フィルタ情報を設定するための設定情報を入力する。
図3に例示する設定画面9には、第1~第5パラメータ(歪度、尖度、分散、ピークレベルおよびピーク数)のそれぞれに対する選択チェックボックス91、数値調整バー92および数値入力ボックス93が表示される。
例えば、ユーザは、選択チェックボックス91に対してチェックを入れることで、フィルタ条件を設定するパラメータを選択することができる。また、ユーザは、数値調整バー92に対するツマミ位置を調整する、または、数値入力ボックス93に対して数値を入力することで、選択されたパラメータのフィルタ条件について、任意の数値または数値範囲を設定することができる。
なお、第1~第4パラメータ(歪度、尖度、分散、ピークレベル)については、最小値および最大値の設定、すなわち数値範囲の設定が可能であり、第5パラメータ(ピーク数)については、最大値の設定(通常、「1」に設定)が可能である。
【0044】
また、図3に例示する設定画面9には、第1~第4パラメータ(歪度、尖度、分散およびピークレベル)のそれぞれに平均チェックボックス94が表示される。ユーザは、任意のパラメータの平均チェックボックス94に対してチェックを入れることで、当該パラメータのフィルタ条件を、測定結果の平均的な範囲に設定することができる。
以上により、第1~第5パラメータのうちの任意のパラメータに対してフィルタ条件が設定される。
【0045】
三次元測定機1では、照射部2がレーザ光Lを測定対象物Wに走査させ、撮像部3が測定対象物Wの各測定部位を撮像する。
測定対象物Wの走査終了後、判定部46は、画像取得部43により取得された各撮像画像について第1~第5パラメータを算出する。また、判定部46は、第1~第5パラメータのうちのフィルタ条件が設定されているパラメータを判断し、撮像画像毎に、各パラメータがフィルタ条件を満たすか否かを判定する。そして、判定部46は、各パラメータがフィルタ条件を満たす撮像画像を有効データであると判定し、フィルタ条件を満たさないパラメータが存在する撮像画像を無効データであると判定する(判定工程)。
形状測定部44は、画像取得部43により取得された複数の撮像画像のうち、判定部46によって有効データであると判定された撮像画像に基づいて、形状測定データを生成する(形状測定工程)。
【0046】
その後、ユーザが設定画面9に対して設定情報を入力した場合、条件設定部45は、当該設定情報に基づいて各パラメータのフィルタ条件を更新する。そして、判定部46は、更新された各パラメータのフィルタ条件に基づいて各撮像画像を再判定し、有効データを更新する。形状測定部44は、更新された有効データに基づいて測定対象物Wの形状測定データを再生成する。
ユーザは、表示部7にグラフィック表示される形状測定データを確認しながら、ノイズが削除されるまで、各パラメータのフィルタ条件を繰り返し変更することができる。
【0047】
〔本実施形態の効果〕
本実施形態の三次元測定機1において、撮像部3により撮像された撮像画像のうち、各パラメータがフィルタ条件を満たさない光強度分布を示す撮像画像(画素列)は、ノイズを発生させ得るデータとして有効データから除外される。一方、撮像部3により撮像された撮像画像のうち、各パラメータがフィルタ条件を満たす光強度分布を示す撮像画像(画素列)は、信頼性のある有効データとして、測定対象物Wの形状測定データを生成するために利用される。
すなわち、本実施形態の三次元測定機1では、測定対象物の形状測定データを生成するための撮像画像データについて、信頼性に基づく取捨選択が行われる。このため、形状生成データにおけるノイズの発生を抑制することができる。
【0048】
ここで、球状の測定対象物W1を球面測定する場合を例として説明する。
球状の測定対象物W1を球面測定する場合、図15に示すように、レーザ光Lが照射される測定部位と撮像部3とが互いに正対し、測定部位で正反射した反射光が撮像部3に入射することがある。この際、光源制御部41のフィードバック制御が受光量の変化に追い付かず、リニアイメージセンサ32が飽和レベルを超えた光量を受光してしまう。その結果、撮像画像の光強度が飽和し、形状測定部44によって算出される測定部位までの距離には、大きな誤差が含まれる。
【0049】
上述の場合において、仮にフィルタ条件が設定されていないと、測定対象物W1の形状測定データには、一部、球面形状から大きく外れた座標データ(ノイズ)が出現する。
これに対して、本実施形態では、各パラメータ(特にピークレベル)についてフィルタ条件を設定することにより、光強度が飽和した撮像画像が有効データから除外される。これにより、上述のノイズが取りのぞかれた形状測定データを生成することができる。
【0050】
また、エッジを含む測定対象物W2を形状測定する場合を例として説明する。
図16に示すように、測定対象物W2がエッジを形成する第1面101および第2面102を有する場合、第1面101とレーザ光Lの光軸との間に形成される角度は、第2面102とレーザ光Lの光軸との間に形成される角度に比べて小さくなる。このような場合、第1面101に形成されるレーザスポットSの間隔は、第2面102に形成されるレーザスポットSの間隔よりも小さくなり、第1面101を測定した際の測定精度は、第2面102を測定した際の測定精度よりも低くなる。
【0051】
そこで、本実施形態では、撮像画像の光強度分布の変形度合いを示すパラメータ(特に歪度)についてフィルタ条件を設定することにより、第2面102を撮像した撮像画像を有効データとする一方、第1面101を撮像した撮像画像を有効データから除外することができる。これにより、測定対象物W2の形状測定データから測定精度の低いデータ部分のみがノイズとして取り除かれ、形状測定データの精度を向上させることができる。
【0052】
なお、従来技術の形状測定方法では、形状測定データを構成する各座標データを前後の座標データと比較し、前後の座標データから大きく異なる座標データをノイズとして処理している。これに対して、本実施形態の形状測定方法では、従来技術のような前後のデータとの比較処理を行わず、より簡単な処理によってノイズを低減できる。
【0053】
〔変形例〕
本発明は、前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0054】
前記実施形態では、フライングスポット式の三次元測定機1について説明しているが、ライン式の三次元測定機においても本発明を適用できる。
ライン式の三次元測定機では、照射部が、照射側走査ミラーを備えず、光源から出射した点状のレーザ光Lをライン状のレーザ光Lに成形するシリンドリカルレンズ等を備える。また、撮像部は、受光側走査ミラーを備えず、ラインイメージセンサの替わりにエリアイメージセンサを有する。測定対象物Wで反射されたライン状のレーザ光Lが撮像部に撮像され、撮像画像に基づいて測定対象物の形状測定データが生成される。
このようなライン式の三次元測定機では、2次元画像である撮像画像の一列または一行の連続した画素が本発明の画素列に対応し、撮像画像の各画素列に対して前記実施形態の撮像画像に対する処理と同様の処理を行うことができる。すなわち、撮像画像の画素列毎に光強度分布に基づく判定を行い、各パラメータがフィルタ条件を満たすと判定された画素列に基づいて、測定対象物の形状測定データを生成することができる。
【0055】
前記実施形態では、歪度、尖度、分散、ピークレベル、および、ピーク数の各パラメータを算出することを説明しているが、本発明は、フィルタ条件(数値条件)の設定されている少なくともいずれか1つのパラメータを算出するものであればよい。
【0056】
前記実施形態において、各パラメータがフィルタ条件を満たさない撮像画像は、無効データとして記憶部5に記憶されたままであるが、記憶部5から削除されてもよい。
また、前記実施形態では、三次元測定機1がプローブユニット10と制御部4とを備え、本発明のデータ処理装置がプローブユニット10を制御する制御部4として構成されているが、本発明のデータ処理装置はこれに限られない。
例えば、本発明のデータ処理装置は、プローブユニット10を有する装置とは別の装置、例えばPC(Personal Computer)として構成されてもよい。この場合、本発明のデータ処理装置は、データ処理プログラムを読み込み実行することにより、前記実施形態における画像取得部43および形状測定部44として少なくとも機能する。また、データ処理装置は、前記実施形態における条件設定部45、判定部46、および表示制御部47としてさらに機能してもよい。
このような場合、本発明のデータ処理装置は、プローブユニット10から出力される撮像画像を有線、無線または記録媒体等を介して取得し、この撮像画像に基づいて各処理を行ってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…三次元測定機、10…プローブユニット、2…照射部、21…光源、22…光源駆動部、23…照射光学系、3…撮像部、31…受光光学系、32…リニアイメージセンサ、33…信号処理部、4…制御部(データ処理装置)、41…光源制御部、42…走査制御部、43…画像取得部、44…形状測定部、45…条件設定部、46…判定部、47…表示制御部、5…記憶部、6…操作部、7…表示部、L…レーザ光、W,W1,W2…測定対象物。
図1
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