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特許7554064異物・欠陥検査装置、異物・欠陥検査における画像生成装置、及び異物・欠陥検査方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】異物・欠陥検査装置、異物・欠陥検査における画像生成装置、及び異物・欠陥検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/88 20060101AFI20240911BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020112701
(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公開番号】P2022011512
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】510192019
【氏名又は名称】株式会社ヴィーネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】香川 幸大
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 修
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-276756(JP,A)
【文献】特開平08-050104(JP,A)
【文献】特開2016-118541(JP,A)
【文献】特開2015-176093(JP,A)
【文献】特開昭58-143250(JP,A)
【文献】特開2006-090728(JP,A)
【文献】特開2008-298667(JP,A)
【文献】国際公開第2019/159334(WO,A1)
【文献】特開2004-333177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0071443(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01B 11/00 - G01B 11/30
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光散乱性を持つ検査対象物中の少なくとも一つ以上の検査面に対して、主走査方向に沿ってライン状に離間して配列された複数の光源から出射した光をコリメートした光ビームを走査、または、主走査方向に沿ってライン状に離間して配列された複数の光源から出射した光をコリメートした光ビームを更に略集光した光ビームを走査する光走査手段を含む照明光学系と、
前記光源と少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位が1対1の対応をするように前記照明光学系の主走査方向に平行に配置され、前記検査対象物の検査面を透過した前記光ビームが該検査対象物にある異物又は欠陥に照射され、該異物又は欠陥からの散乱光、拡散光、乃至は、吸収・拡散反射、透過拡散された強弱を有する光を受光する複数の受光素子を含む受光光学系と、
前記照明光学系の主走査方向の任意の位置における前記光源からの光ビームを対応する受光素子のみで検出させる検出手段とを備え、
前記少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位の空間分解能は検査対象物の検査面上の照明光学系により形成された前記光ビームの空間分解能以上であり、
前記光ビームの中心部が前記少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位の主走査方向の一方の端部から他方の端部まで滞在している滞在期間中のみ、前記少なくとも1つの受光素子が信号を出力することを特徴とする異物・欠陥検査装置。
【請求項2】
光散乱性を持つ検査対象物中の少なくとも一つ以上の検査面に対して、主走査方向に沿ってライン状に離間して配列された複数の光源から出射した光を絞り込むように調整した光ビームを走査、または、主走査方向に沿ってライン状に離間して配列された複数の光源から出射した光を拡がるように調整した光ビームを走査する光走査手段を含む照明光学系と、
前記光源と少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位が1対1の対応をするように前記照明光学系の主走査方向に平行に配置され、前記検査対象物の検査面を透過した前記光ビームが該検査対象物にある異物又は欠陥に照射され、該異物又は欠陥からの散乱光、拡散光、乃至は、吸収・拡散反射、透過拡散された強弱を有する光を受光する複数の受光素子を含む受光光学系と、
前記照明光学系の主走査方向の任意の位置における前記光源からの光ビームを対応する受光素子のみで検出させる検出手段とを備え、
前記少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位の空間分解能は検査対象物の検査面上の照明光学系により形成された前記光ビームの空間分解能以上であり、
前記光ビームの中心部が前記少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位の主走査方向の一方の端部から他方の端部まで滞在している滞在期間中のみ、前記少なくとも1つの受光素子が信号を出力することを特徴とする異物・欠陥検査装置。
【請求項3】
前記照明光学系の前記光ビームの走査間隔は主走査方向に配列された少なくとも1つの受光素子からなる画素単位の空間分解能以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項4】
前記コリメートされた光ビーム或いはコリメートされた光ビームを更に略集光した光ビームのサイズが10μm以上1000μm以下であり、前記受光素子のサイズが、200dpi以上を満足することを特徴とする請求項1に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項5】
検査対象物が前記光源から出射した光を透過する性質を有する媒質であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項6】
検査対象物が前記光源から出射した光を反射する性質を有する媒質であることを特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項7】
前記受光光学系が、検査対象物の検査面を透過した光を前記受光素子上に結像させるレンズ系を有することを特徴とする請求項1~6の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記照明光学系における前記光ビームの走査と同期して、前記複数の受光素子における各走査位置での前記光ビームの中心部近傍の受光素子についてのみ信号出力することを特徴とする請求項1~7の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項9】
前記検査対象物の1つの検査面上に対する前記光源と1画素単位の前記少なくとも1つの受光素子の組み合わせを複数有することを特徴とする請求項1~8の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項10】
前記照明光学系の光源は、複数のLDからなる光源であって、該光源から出射されたレーザをコリメートした光ビーム乃至はコリメートした光ビームを更に略集光した光ビームが前記検査対象物における前記検査面上で前記複数の受光素子の配列方向に走査可能であることを特徴とする請求項1に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項11】
前記照明光学系の光源は、複数のLEDからなる光源であって、該光源から出射されたレーザをコリメートした光ビーム乃至はコリメートした光ビームを更に略集光した光ビームが前記検査対象物における前記検査面上で前記複数の受光素子の配列方向に走査可能であることを特徴とする請求項1に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項12】
前記光走査手段は、光源自身を前記受光素子の配列方向に移動させることを特徴とする請求項1~11の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項13】
前記照明光学系と受光光学系の組が、光軸方向に移動可能であることを特徴とする請求項1~12の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項14】
前記光走査手段が、前記光源からの光に対する機械的偏向手段を含むことを特徴とする請求項1~13の何れかに記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項15】
前記受光素子はラインセンサであることを特徴とする請求項1~14の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項16】
前記受光素子はエリアセンサであることを特徴とする請求項1~14の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項17】
前記受光光学系はレンズアレイを含むことを特徴とする請求項1~16の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項18】
前記レンズアレイは、各画素に1対1の対応をする多眼レンズを備え、
前記多眼レンズと各画素との間には、各画素に1対1の対応をするアパーチャーが設けられ、各アパーチャーが各光源の光軸上に位置していることを特徴とする請求項17に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項19】
前記検査面を透過した光のうち光散乱により生じる散乱光、拡散光、または、吸収・拡散反射、透過拡散された強弱を有する光の前記レンズ系への入射角に対して前記レンズ系の開口角が1mrad~20mradであることを特徴とする請求項7に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項20】
複数波長の前記光源を有することを特徴とする請求項1~19の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項21】
前記ライン状に離間して配列された複数の光源が、複数のラインを有し、同一波長の複数のライン状の光源であるか、或いは、異なる複数の波長のライン状の光源であることを特徴とする請求項1~20の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項22】
前記検査対象物の検査面を複数有し、光軸方向に被写界深度領域を複数有することを特徴とする請求項1~21の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【請求項23】
請求項1~22の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置において取得した信号を画像情報に加工し、出力することを特徴とした画像生成装置。
【請求項24】
光散乱性を持つ検査対象物中の少なくとも一つ以上の検査面に対して、主走査方向に沿ってライン状に離間して配列された複数の光源から出射した光をコリメートした光ビームを走査、または、主走査方向に沿ってライン状に離間して配列された複数の光源から出射した光をコリメートした光ビームを更に略集光した光ビームを走査する光走査手段を含む照明光学系により光ビームを走査するステップと、
前記光源と少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位が1対1の対応をするように前記照明光学系の主走査方向に平行に配置され、前記検査対象物の検査面を透過した前記光ビームが該検査対象物にある異物又は欠陥に照射され、該異物又は欠陥からの散乱光、拡散光、乃至は、吸収・拡散反射、透過拡散された強弱を有する光を受光する複数の受光素子を含む受光光学系により光ビームを受光するステップと、
前記照明光学系の主走査方向の任意の位置における前記光源からの光ビームを対応する受光素子のみで検出させるステップとを備え、
前記少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位の空間分解能は検査対象物の検査面上の照明光学系により形成された前記光ビームの空間分解能以上であり、
前記光ビームの中心部が前記少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位の主走査方向の一方の端部から他方の端部まで滞在している滞在期間中のみ、前記少なくとも1つの受光素子が信号を出力することを特徴とする異物・欠陥検査方法。
【請求項25】
光散乱性を持つ検査対象物中の少なくとも一つ以上の検査面に対して、主走査方向に沿ってライン状に離間して配列された複数の光源から出射した光を絞り込むように調整した光ビームを走査、または、主走査方向に沿ってライン状に離間して配列された複数の光源から出射した光を拡がるように調整した光ビームを走査する光走査手段を含む照明光学系により光ビームを走査するステップと、
前記光源と少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位が1対1の対応をするように前記照明光学系の主走査方向に平行に配置され、前記検査対象物の検査面を透過した前記光ビームが該検査対象物にある異物又は欠陥に照射され、該異物又は欠陥からの散乱光、拡散光、乃至は、吸収・拡散反射、透過拡散された強弱を有する光を受光する複数の受光素子を含む受光光学系により光ビームを受光するステップと、
前記照明光学系の主走査方向の任意の位置における前記光源からの光ビームを対応する受光素子のみで検出させるステップとを備え、
前記少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位の空間分解能は検査対象物の検査面上の照明光学系により形成された前記光ビームの空間分解能以上であり、
前記光ビームの中心部が前記少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位の主走査方向の一方の端部から他方の端部まで滞在している滞在期間中のみ、前記少なくとも1つの受光素子が信号を出力することを特徴とする異物・欠陥検査方法。
【請求項26】
前記照明光学系の前記光ビームの走査間隔は主走査方向に配列された少なくとも1つの受光素子からなる画素単位の空間分解能以下であることを特徴とする請求項24又は25に記載の異物・欠陥検査方法。
【請求項27】
複数波長の前記光源を有することを特徴とする請求項24~26の何れか1項に記載の異物・欠陥検査方法。
【請求項28】
前記ライン状に離間して配列された複数の光源が、複数のラインを有し、同一波長の複数のライン状の光源であるか、或いは、異なる複数の波長のライン状の光源であることを特徴とする請求項24~27の何れか1項に記載の異物・欠陥検査方法。
【請求項29】
前記検査対象物の検査面を複数有し、光軸方向に被写界深度領域を複数有することを特徴とする請求項24~28の何れか1項に記載の異物・欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光散乱透過媒質中における異物や厚みのある検査対象物におけるキズ、凹凸、欠陥、欠落、付着した異物の検査方法及び検査装置、並びに、検出した異物の画像生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から主として可視域の光源を用いた表面検査装置に採用されているシステムは、ラインセンサカメラ、密着型イメージセンサ(以下CISと記す)、或いは、レーザビームによる走査型光学系と光電変換素子(フォトマル、アバランシェフォトダイオード、CCDセンサ、CMOSセンサなど)やライトガイドを含む受光光学系の組合せなどが代表的な検査システムであり、その多くは、検査対象物におけるキズ、凹凸、欠陥、欠落、付着した異物などからの反射光や蛍光を受光する反射型である。
【0003】
それに対し、受光系と照明系とを検査対象物を挟んで対向配置した透過型において、検査対象物は、透明で、薄く、透過率が高いものが多い。そして、厚みのある検査対象物において、該検査対象物に含まれる異物やキズ、欠陥等を検出するシステムは稀である。
【0004】
非破壊検査装置として名高い透過性に優れたX線検査装置は、放射線であるX線を用いるため、放射線管理区域を設ける必要があり、放射線の人への被ばく量も管理しなければならない。即ち、設置場所を決定するうえでのハードルが高い。しかも、大型であり、重量もあるため、工場の既存の生産ラインへの追加導入は容易ではない。加えて、高額であるため、検査ポイントを多く設けることができない。
【0005】
また、X線検査装置は、X線自身の良好な透過性が仇となり、異物や欠陥、キズといったものまで透過してしまい、区別が出来ない場合も多い。
【0006】
X線以外の波長を用いた検査装置で、前記透過媒質が光散乱性を有している場合、該透過媒質に含まれる異物、キズ、欠陥、欠落等の検出装置は実現されていない。
【0007】
本願発明においては、技術的課題もさることながら、現場への導入を検討するうえで、設置の簡便性、人体への危険性、導入設備費用等も考慮し、X線以外の光源を用いることを前提にする。
【0008】
特許文献1には、照明光であるレーザビームを主走査方向にスキャンすることにより、フィルムの窪みや折れを検出する手段が示めされている。
【0009】
特許文献2には、照明光学系の光軸と受光光学系の光軸をずらすことで、検査対象物の透過光が照明光学系からの直接光や外乱光に埋もれてしまうことを抑制している。即ち、特許文献2は検査対象物の内部にある異物や欠陥などを検出するために、検査対象物に光を照射して透過光の陰影に含まれる情報を利用する方法であり、その際、検査対象物の表面近傍の異物や欠陥からの信号に、雑音となる、外乱光などの成分が混入しないようにして、異物や欠陥をより検出し易くする工夫がなされている。
【0010】
特許文献3には、偏光を利用して照明側と受光側の偏光軸のずらし方を変更した複数の画像を取得し、コントラスト調整した後に差分等の処理を適用することでノイズをキャンセルし、検査対象物内部の正確な異物や欠陥検出が実現出来ることが示されている。
【0011】
特許文献4には、レーザビーム走査光学系と試料を透過した光を受光する受光光学系の光軸を一致させることにより、透過像を得られることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2010-271133号公報
【文献】特開2015-219090号公報
【文献】特許第6451980号公報
【文献】特開平3-134609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献1においては、主として、検査対象物表面のキズや凹凸を検出する。検査対象物はフィルムなどの厚みが薄い素材が多く、被写界深度の浅いCISで検査可能である。しかしながら、厚みがあり、表面の凹凸が大きいものや積層電子基板等の配線パターンの検査などを検査対象物とするとき、1~2mmの被写界深度しか有さない従来型のCISでは、検出が困難になる。新たに被写界深度が深く、作動距離の長い(以下W.D.と記す)受光光学系を備えた検査装置が必要となる。
【0014】
被写界深度の深い光学系は、主として、テレセントリック光学系であり、該光学系を備えたラインセンサカメラが主流である。しかしながら、テレセントリック光学系は寸法が大きく、工場の狭い搬送路には用いることが困難である。更に、テレセントリック光学系は、工場の生産ラインの搬送幅が広い場合、視野が狭いので多くのカメラが必要になる。それ故に、導入コストが高くなるという難点もある。
【0015】
特許文献2の光学系の場合、光散乱性の大きい透過媒質中の異物、欠陥、キズ等を検出する場合、照明光学系の光軸近傍の光を利用しないため、受光光学系の受光光量が低下するうえ、検出できる透過光は検査対象物中での散乱光を受光することが中心となるため、検査対象物自身の散乱する外乱光が信号成分の支配的成分となり、検査対象物中の深い部分にある異物が散乱する正味の散乱光を弁別して検出することは困難である。
【0016】
特許文献3の場合、試料の光散乱性が小さい場合は問題無いのであるが、検査対象物の光散乱能が大きい場合、散乱による偏光解消により偏光情報が失われてしまうため、偏光軸のずらし方による差が現れにくく、透過性のある光散乱媒質である検査対象物中の異物や欠陥を検出することが困難である。
【0017】
特許文献4の場合、厚みのある検査対象物については、たとえ全光線透過率が高い媒質であっても媒質中の微小な屈折率の不均一性の要因により、レーザビーム走査光学系と受光光学系との光軸が一致せず、信号そのものが得られない場合があり、即ち、異物、キズ、欠陥、欠落などを見逃す場合も発生してしまう。
【0018】
以上より、従来の技術では、総じて被写界深度が浅いため、例えば、検査対象物が10mm以上の厚みのある食品検査対象物や回路基板などの場合は、深度方向の情報が得られず、結果、異物、欠陥、キズ、欠落などの検出ができない場合がある。或いは、被写界深度の深いテレセントリック光学系は、大型化するため、狭い場所への配置が困難である。また、例えば、工場の生産ラインで、全数の異物検査を実施する場合には、上記の検出方法では、電子基板のキズや不良部分を検出できず、特に食品などにおいては、異物混入があることを見逃して出荷してしまう危険性が付き纏う。
【0019】
以上、従来のCISは、被写界深度が浅いために、厚みのある検査対象物の深度方向の情報が把握できないために検査の信頼性が担保できない。また、CIS以外の従来の方式はカメラレンズやテレセントリック光学系を用いるために大型化が避けられず、工場の既存生産ラインへの追加導入が困難であり、特に狭い場所への追加導入は不可能である。
【0020】
典型的なCISを図1に、同様にCIS用ライン状照明光学系を図2に示す。図1においては、CISの長手方向中央部近傍における断面図である。図2は斜視図である。Z方向が主走査方向であり、X方向が副走査方向である。ライン状照明光源10は主走査方向に細長い光量分布を有する照明光学系である。
【0021】
図1に示すCISでは、焦点面20を挟んで2つの筐体16が対向配置されている。各筐体16内には、焦点面20上にある検査対象物を照明するためのライン状照明光源10が設けられている。一方の筐体16内には、レンズアレイ11及び受光部12が設けられており、照明された検査対象物からの光は、レンズアレイ11により受光部12へと導かれる。レンズアレイ11は、検査対象物からの光を受光部12に結像する光学素子である。図1に示すCISでは、焦点面20を基準にして、2つのライン状照明光源10のうちの一方が受光部12側に配置され、他方が受光部12側とは反対側に配置されている。
【0022】
受光部12は、一方の筐体16に固定された基板13に実装されている。レンズアレイ11を通過した光は、受光部12の受光面12Aで受光され、その受光量に応じた信号が受光部12から出力される。検査対象物が焦点面20に沿って一方向Xに搬送されることにより、検査対象物からの光が連続的に受光部12で受光され、受光部12からの出力信号に基づいて検査対象物の画像(カラー画像や蛍光画像など)が得られる。
【0023】
一方のライン状照明光源10から出射された光B3は、筐体16に固定された保護ガラス14を透過して、他方の筐体16に固定された保護ガラス14Aの内面に設けられている反射部材17Aで反射し、焦点面20に導かれる。焦点面20から受光部12までの任意の位置には、受光部12に紫外光が入射するのを阻止する紫外光遮断フィルタ(UVカットフィルタ)15が設けられている。また、受光部12と紫外光遮断フィルタ15との間には、特定波長範囲の可視光を通過させるカラーフィルタ18が設けられている。一方の筐体16内におけるライン状照明光源10の底面に対向する位置には、ライン状照明光源10に備えられた光源部103(紫外光源や可視光源など)を固定するための基板5が設置されている。
【0024】
ライン状照明光源10は、長手方向Lに沿って延びる透明な導光体101と、長手方向Lの一方の端面付近に設けられた光源部103と、導光体101の各側面を保持するためのカバー部材102とを備えている。光源部103から出射した光は、導光体101に入射し、該導光体101中を伝搬しながら光拡散パターンPにより適宜反射され、光出射面から矢印方向に出射し、ライン状の照明光となって検査対象物を照明する。しかしながら、該照明光学系は、導光体101により照明光が拡散してしまい、厚みのある光散乱透過性を有する検査対象物において、光軸方向の受光光量の減衰が問題になる。更に、従来のCISの被写界深度は浅く、検査対象物に厚みがある場合は厚み方向全体の検査は困難であり、かつ、W.D.が狭いため、検査対象物に接触し、検査そのものが成立しない場合が多い。即ち、従来のCIS光学系では、厚みのある透過媒質に対する異物や欠陥の検査は非常に困難であり、光散乱性を有している場合は、また更に困難である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本願発明者は、上記のような問題に対し、鋭意検討した結果、10mm以上の厚みのある光散乱性媒質の検査対象物でも、異物、欠陥、キズ、欠落などを検出可能であり、従来のCISのような薄型・小型化を実現する手段を見出した。また、更に光散乱能が大きく、かつ、厚みのある透過媒質が検査対象物であっても、該検査対象物中の異物や欠陥などを検出することが可能であるこことも同時に見い出した。具体的には、光ビームが照射されない画素に該光ビームや該光ビームに照射された異物・欠陥からの散乱光を入射させないようにすると同時に光源と1対1の対応をする1画素単位の少なくとも1つの受光素子のみから出力信号を取り出すことにより、画素間のクロストーク成分を極力少なくし、検査対象物中の異物や欠陥などの検出を正確にすることが可能となる方式を提供するものである。受光光学系の少なくとも1つの受光素子を単位画素とした場合、該画素を通過する光走査照明光である光ビーム走査における一画素分の滞在時間中のみ、単位画素が出力するように切り替え、光ビームが照射されない画素に該光ビームや該光ビームに照射された異物・欠陥からの散乱光を入射させなければ、画素間のクロストーク成分を極力少なくし、検査対象物中の異物や欠陥などの検出を正確にすることが可能である。ここで、滞在時間とは、前記光ビームの略中心部が前記1画素の一方の端部から他方の端部を横切る期間を意味する。前記照明光学系の照射光ビーム径を検査対象物の深さ方向で略同一にし、かつ、受光光学系の画素分解能よりも小さくすれば、検査対象物中の異物、欠陥、キズ、欠落などをほぼ均一に照明できる。
【発明の効果】
【0026】
本願発明によれば、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)の少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位と光源が1対1の対応をし、光源が発光するときのみ、該光源に対応する少なくとも1つの受光素子(1画素単位)で光ビームが検出される。そのため、コリメートされ、または、更に略集光された1本のみの光ビームが検査対象物中の「異物・欠陥」に入射し、散乱された光のみを受光素子が分離して検出可能になるため、光散乱性があり、かつ、厚みのある検査対象でも「異物・欠陥」を良好なS/N(クロストークが極めて少ない)で検出可能になる。本願発明において、光散乱性を持つ検査対象物には、光散乱透過性媒質だけでなく反射媒質も含まれる。本願発明では、光源側の被写界深度が深いため、反射媒質などが検査対象物であっても「異物・欠陥」検査が可能になり、かつフィルムなどの薄い検査対象物が工程の搬送系の上下動の激しい場所で光軸方向に動いても高分解能の検査も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】従来のCISの断面図である。
図2】従来のCIS用ライン状照明光学系の分解斜視図である。
図3】本願発明の模式図である。
図4A】本願発明の散乱光の隣接する画素へのクロストークを表す図である。
図4B】本願発明の平行光束が受光レンズアレイに入射し、出射後に拡がり、受光素子上で、バックグラウンドノイズになることを表した図である。
図5A】従来発明においてクロストーク成分とバックグラウンドノイズ成分が混在している信号である。
図5B】本願発明で、クロストーク成分やバックグラウンドノイズ成分がほとんど無い場合の信号である。
図6A】10μm粒径の前方散乱を表すグラフであり、透過性媒質がポリカーボネート、粒子がシリカの場合のMie散乱を表している(対数目盛)。
図6B】10μm粒径の前方散乱を表すグラフであり、透過性媒質がポリカーボネート、粒子がシリカの場合のMie散乱を表している(対数目盛)。
図6C】17μm粒径の前方散乱を表すグラフであり、透過性媒質がポリカーボネート、粒子がシリカの場合のMie散乱を表している(対数目盛)。
図6D】17μm粒径の前方散乱を表すグラフであり、透過性媒質がポリカーボネート、粒子がシリカの場合のMie散乱を表している(対数目盛)。
図6E】25μm粒径の前方散乱を表すグラフであり、透過性媒質がポリカーボネート、粒子がシリカの場合のMie散乱を表している(対数目盛)。
図6F】25μm粒径の前方散乱を表すグラフであり、透過性媒質がポリカーボネート、粒子がシリカの場合のMie散乱を表している(対数目盛)。
図6G】30μm粒径の前方散乱を表すグラフであり、透過性媒質がポリカーボネート、粒子がシリカの場合のMie散乱を表している(対数目盛)。
図6H】30μm粒径の前方散乱を表すグラフであり、透過性媒質がポリカーボネート、粒子がシリカの場合のMie散乱を表している(対数目盛)。
図7】本願発明のマルチビーム照明―マルチビーム走査方式を示した模式図である。
図8】不透過性「異物・欠陥」による光散乱を表したものである。
図9A】反射型の実施態様を示した模式図である。
図9B】本願発明の反射型の別の実施態様を示した模式図である。
図10】本願発明の更にクロストーク成分を小さくする別の方式の模式図である。受光系の多眼レンズ一個一個に対応したアパーチャー(アレイ)を付与した方式である。
図11】コリメートされた隣り合った光ビームがオーバーラップした場合を表す模式図である(光軸方向からみた断面図)。
図12A】本願発明のエッジ法の実験の模式図である。
図12B】従来技術のエッジ法の実験の模式図である。
図13】本願発明の実施例におけるLDのビームプロファイルである。
図14A】本願発明の実施例において、(1)拡散板2枚の場合のエッジ信号の応答を表すグラフ(規格値)、及び、(2)エッジ応答信号の隣接画素間の差分をとったものである(規格値)。
図14B】本願発明の実施例において、(1)拡散板3枚の場合のエッジ信号の応答を表すグラフ(規格値)、及び、(2)エッジ応答信号の隣接画素間の差分をとったものである(規格値)。
図14C】本願発明の実施例において、(1)拡散板4枚の場合のエッジ信号の応答を表すグラフ(規格値)、及び、(2)エッジ応答信号の隣接画素間の差分をとったものである(規格値)。
図14D】本願発明の実施例において、(1)拡散板5枚の場合のエッジ信号の応答を表すグラフ(規格値)、及び、(2)エッジ応答信号の隣接画素間の差分をとったものである(規格値)。
図15A】従来方式による、(1)拡散板2枚の場合のエッジ信号の応答を表すグラフ(規格値)、及び、(2)エッジ応答信号の隣接画素間の差分をとったものである(規格値)。
図15B】従来方式による、(1)拡散板3枚の場合のエッジ信号の応答を表すグラフ(規格値)、及び、(2)エッジ応答信号の隣接画素間の差分をとったものである(規格値)。
図15C】従来方式による、(1)拡散板4枚の場合のエッジ信号の応答を表すグラフ(規格値)、及び、(2)エッジ応答信号の隣接画素間の差分をとったものである(規格値)。
図15D】従来方式による、(1)拡散板5枚の場合のエッジ信号の応答を表すグラフ(規格値)、及び、(2)エッジ応答信号の隣接画素間の差分をとったものである(規格値)。
図16】本願発明のシミュレーションモデルを示した模式図である。
図17A】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質中心に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.00wt%の場合を示している。
図17B】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質中心に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.04wt%の場合を示している。
図17C】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質中心に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.08wt%の場合を示している。
図17D】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質中心に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.12wt%の場合を示している。
図17E】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質中心に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.16wt%の場合を示している。
図17F】光散乱透過性媒質中心に異物粒子が位置する場合のシミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の各濃度における出力比較を表している。
図18A】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の光源側端部に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.00wt%の場合を示している。
図18B】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の光源側端部に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.04wt%の場合を示している。
図18C】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の光源側端部に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.08wt%の場合を示している。
図18D】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の光源側端部に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.12wt%の場合を示している。
図18E】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の光源側端部に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.16wt%の場合を示している。
図18F】光散乱透過性媒質の光源側端部に異物粒子が位置する場合のシミュレーションの結果を示したグラフであり、各濃度における出力比較を表している。
図19A】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の受光センサ側端部に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.00wt%の場合を示している。
図19B】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の受光センサ側端部に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.04wt%の場合を示している。
図19C】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の受光センサ側端部に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.08wt%の場合を示している。
図19D】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の受光センサ側端部に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.12wt%の場合を示している。
図19E】シミュレーションの結果を示したグラフであり、光散乱透過性媒質の受光センサ側端部に異物粒子が位置し、光散乱透過性媒質の散乱粒子濃度が0.16wt%の場合を示している。
図19F】光散乱透過性媒質の受光センサ側端部に異物粒子が位置する場合のシミュレーションの結果を示したグラフであり、各濃度における出力比較を表している。
図20】主走査方向に配列された複数の光源と少なくとも一つの受光素子から成る複数の画素が1対1の対応を示す模式図である。
図21】一つの光源を機械的偏向手段により走査し、少なくとも一つの受光素子からなる複数の画素と一つの光源が1対1の対応をしていることを表す図である。
図22】複数のビームを選択的にDMDにより一つの光源とし、少なくとも一つの受光素子からなる複数の画素が1対1の対応をしていることを表す模式図である。
図23】一つの光源を走査し、少なくとも一つの受光素子からなる複数の画素が1対1の対応をしていることを表す模式図である。
図24】従来技術による検査方式の概念図である。
図25図3を側面からみた図であり、検査対象物が厚い場合、かつ、受光レンズアレイの被写界深度が検査対象物の厚みよりも狭い場合に、被写界深度位置を光軸方向にずらし、ビームスプッタで散乱光を分岐し、検査対象物の厚み方向全般に検出可能とする方式を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本願発明では、前述の異物や厚みのある検査対象物におけるキズ、凹凸、欠陥、欠落、付着した異物等を単に「異物・欠陥」と呼ぶことにする。本願発明に係る異物・欠陥検査装置の一例を模式図として図3に示す。ただし、異物・欠陥検査装置において取得した信号を画像情報に加工し、出力する画像生成装置を提供することも可能である。
【0029】
図3の31aは、光源である。該光源31aは、複数のLD(Laser Diode:レーザダイオード以下LDと記す)又は複数のLED(Light Emmiting Diode:以下LEDと記す)をライン状に離間して配列したものである。31bは、31aの側面図である。LDは、スペックルパターン等の干渉パターンの生じない可干渉性の低いものが好ましい。光源31aから出射した光は、コリメータレンズ32aによりコリメートされ、光源の数と同数の略平行ビーム33となる。32bは、32aの側面図である。なお、側面図(実線)で示した光源31b及びコリメータレンズ32bが実際の位置であり、31a及び32aは二点鎖線により仮想的に示している。複数の略平行ビーム33は、検査対象物34に入射し、検査対象物34中の「異物・欠陥」35によって散乱された散乱光36が受光レンズアレイ37の被写界深度内で補足され、該受光レンズアレイ37の焦点位置39に集光され、受光素子アレイ38に入射する。受光素子アレイ38は、副走査方向に1ラインを有するラインセンサが一般的であるが、副走査方向に複数ラインを有するラインセンサ、或いはエリアセンサでもよい。受光レンズアレイ37は、SELFOC(登録商標)レンズに代表される屈折率分布レンズアレイが好ましいが、他の球面レンズなどを複数個ライン状に配列したレンズアレイでもよい。また、コリメータレンズ32aによりコリメートした光が、更に略集光されるような構成であってもよい。ここで、「略集光」には、LEDの発光した光が集光されるような構成に限らず、収束レンズなどを用いてレーザビームのビームウエストを形成するような場合も含まれる。コリメータレンズ32aによりコリメートした光ビーム、或いは該コリメートした光ビームを更に略集光した光ビームのサイズ(ビーム径)は、Mie散乱領域の粒子に対応できる10μmから幾何光学的近似領域の粒子に対応できる1000μm程度であることが好ましい。ただし、光散乱透過性媒質の深さ・厚みに応じて、コリメータレンズ32aによりコリメートした光を絞り込むように調整し、または、拡がるように調整してもよい。
【0030】
検査対象物に「異物・欠陥」が無い場合は、略平行ビームのまま該受光レンズアレイ37に入射するため、焦点を結ばず、受光レンズアレイ37の焦点位置39で発散し、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)38において、直接光は減衰しバイアス成分となる。そのため、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)38には、直接光のバイアス成分が加算或いは減算された「異物・欠陥」による散乱光36の信号成分(変動成分)のみが検知される。
【0031】
ここで、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)38におけるクロストーク成分の抑制方法について述べる。同時に光源を点灯させた場合には、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)38の配列方向に光がライン状に照明される。そのため、「異物・欠陥」が配列方向に並んでいる状況では、同時に別々の位置にある「異物・欠陥」の散乱光を同じ受光素子(フォトダイオード)が受光してしまい、位置の特定が困難になる。即ち、位置検出分解能が低下することになる。クロストーク回避方法は、一つのフォトダイオードに対し、一つの光源を対応させることである。即ち、光源と受光素子(フォトダイオード)を1画素単位で1対1の対応をさせることがクロストークを回避させる手段の一つである。1画素は、少なくとも1つの受光素子からなり、1画素が1つの受光素子からなる構成に限らず、1画素が複数の受光素子からなる構成であってもよい。
【0032】
図3について再度説明する。図3において、検査対象物の1つの検査面上に対して、光源と受光素子の組み合わせを複数有している。この場合、複数の光源を順次点灯させることにより主走査方向(複数の光源の配列方向)に光ビームを走査し、隣接する光源が同時に点灯することがないようにすることが好ましい。このとき、各光源の動作を個別に制御することができる制御部(図示せず)が、光ビームを走査させるための光走査手段として機能する。該光走査手段、光源31a及びコリメータレンズ32aなどは、照明光学系を構成している。一方、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)38は、受光光学系を構成している。また、受光レンズアレイ37は、検査対象物の検査面を透過した光を受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)38の受光素子上に結像させるレンズ系を構成しており、該レンズ系は受光光学系に含まれる。ただし、光走査手段は、光源自身を受光素子の配列方向に移動させるような構成であってもよい。あるいは、光走査手段が、光源からの光に対する機械的偏向手段を含んでいてもよい。機械的偏向手段とは、例えばポリゴンミラー、ガルバノミラー、レゾナントミラー又はデジタルミラーデバイスなどである。また、照明光学系と受光光学系の組が、光軸方向に移動可能であってもよいし、複数の検査面に対応した光軸方向に被写界深度が重ならない複数の前記照明光学系並びに受光光学系であってもよい。照明光学系が複数の場合は、例えばライン状に離間して配列された複数の光源31aが、複数のラインを有する構成であってもよい。この場合、同一波長の複数のライン状の光源31aであってもよいし、異なる複数の波長のライン状の光源31aであってもよい。受光光学系のみ光軸方向に重ならない場合は、受光光学系に光を分岐する各種手段を用いる。例えば、ビームスプリッタなどの光学素子を1つ又は複数用いる方法がある。或いはダイクロイックミラーで各波長を分離し、異物の種類を判別する方法もある。
【0033】
ビームスプリッタで分岐する方法について、図25に示す。図25は、図3を側面からみた図であり、検査対象物34が厚い場合、かつ、受光レンズアレイ37の被写界深度が検査対象物34の厚みよりも狭い場合に、被写界深度位置を光軸方向にずらし、ビームスプッタ40a,40bで散乱光を分岐し、検査対象物34の厚み方向全般に検出可能とする方式を示すものである。図25では、それぞれ3つの受光レンズアレイ37a,37b,37c及び受光素子アレイ38a,38b,38cと、2つのビームスプリッタ40a,40bが設けられている。検査対象物34は、光軸方向に複数の被写界深度領域A1~A3を有している。受光レンズアレイ37a及び受光素子アレイ38aは被写界深度領域A1に対応し、受光レンズアレイ37b及び受光素子アレイ38bは被写界深度領域A2に対応し、受光レンズアレイ37c及び受光素子アレイ38cは被写界深度領域A3に対応している。検査対象物34を透過した光の一部は、ビームスプリッタ40aで反射され、受光レンズアレイ37aにより集光されて受光素子アレイ38aに入射する。また、ビームスプリッタ40aを通過した光の一部は、ビームスプリッタ40bで反射され、受光レンズアレイ37bにより集光されて受光素子アレイ38bに入射する。ビームスプリッタ40bを通過した光は、受光レンズアレイ37cにより集光されて受光素子アレイ38cに入射する。各ビームスプリッタ40a,40bの透過率、反射率は各受光素子アレイ38a,38b,38cに対して均等になるようにする。例えば、図25に示すように、3分岐する場合は、最初に入射するビームスプリッタ40aの反射率を概ね33%、次に入射するビームスプリッタ40bの反射率を50%とすることにより、各受光素子アレイ38a,38b,38cに入射する光量をほぼ1:1:1にし、S/Nもほぼ同等にすることができる。ビームスプリッタとしては、波長依存性の無い、干渉効果を利用しないものが好ましい。
【0034】
ここで、本願発明の方式について、今一度、整理しておく。図20は本願発明の複数の光源が少なくとも一つの受光素子を含む複数の画素と1対1の対応をしていることを示す模式図である。図21は一つの光源を機械的偏向手段(例えばガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントミラー等)により走査し、1本のビームが少なくとも一つの受光素子を含む複数の画素と1対1の対応をしていることを表す模式図である。図22はDMD(デジタルミラーデバイス:以下DMDと記す)により複数の光源を選択的に一つの光源とし、該光源が少なくとも一つの受光素子を含む複数の画素と1対1の対応をしていることを示す模式図である。図23は、一つの光源を主走査方向に走査し、該光源が少なくとも一つの受光素子からなる複数の画素と1対1の対応をしていることを示す模式図である。即ち、大きくは、第一に主走査方向に離間して配列された複数の光源が、少なくとも一つの受光素子からなる複数の光源と1対1の対応をする場合(図20参照)と、第二に、一つの光源が主走査方向にビーム走査手段により走査され、或いは、複数の光源が選択的に一つの光源となり、該光源が前記少なくとも一つの受光素子からなる複数の画素と1対1の対応をする場合(図21及び図22参照)と、第三には、一つのビームを該ビームよりもビーム径の小さい一つのビームに変換する手段により、一つの光源となり、該光源が、主走査方向に配列された少なくとも一つの受光素子からなる複数の画素と1対1の対応をする場合(図23参照)に分類できる。
【0035】
次に、従来技術による検査方式の概念図を図24に示す。但し、簡単のため受光レンズ系は図示していない。図24の従来技術の光源は検査対象物全体を照明している。また、受光素子は、散乱光及び直接受光素子に向かう非散乱光に分けられ非散乱光が異物検出に寄与するのであるが、異物に入射せず、異物以外の検査対象物の他の経路から直接受光素子に向かう非散乱光に混入し、クロストークしていることが分かる。
【0036】
これに対して、本願発明における図23の場合には、前述したごとく、図の中の光源と受光素子が1対1の対応をしているので、1対1の対応をしている受光素子には、散乱光が入射せず、クロストークが生じにくいことが分かる。図23に示した概念図は光源(ビーム)移動(走査)する方式であるが、別方式である図20の場合には、主走査方向に離間して配列された複数の光源(光源アレイ)が適宜1対1の対応をしている。図20に示す概念図でも光源と受光素子が1対1の対応をしているので、散乱光が受光素子に入射しにくく、クロストークを抑制できることが分かる。図21及び図22の場合も、光源と受光素子が1対1の対応をしているので、同様に、散乱光が受光素子に入射しにくく、クロストークを抑制できることが分かる。
【0037】
実際の「異物・欠陥」は、完全な球体ではないものがほとんどであるが、簡略化のため、代表的に球状粒子とする。異物が数10μm以下波長程度の粒子径である場合、Mie散乱領域の散乱を生じる。また数100μm程度の雨滴程度の大きさになれば、幾何光学近似が適用できる。例えば、10μm径の球粒子であり、光散乱透過媒質が樹脂であり、異物がシリカである場合について考える。光源の光の波長は、1波長に限らず、複数波長の照明光源が備えられていてもよい。今、光源の光の波長を近赤外線領域のλ=830nm、そのときの前記樹脂をポリカーボネートとし、相対屈折率をNm=1.57、異物粒子をシリカとして、その相対屈折率をNp=1.45とすると、前方散乱を生じる。数100μm程度の大きさの粒径に対しては、光源波長に対し、透過性があれば、レンズ効果により前方散乱的に集束・拡散し、透過性が全く無ければ、幾何光学的散乱断面積である円を投じた影となる。影は、吸収・拡散反射、透過拡散された光の強弱により表される。異物粒子の縁による回折の影響も考慮することは必要になる場合はあるが、画素に回折を含む散乱光が投じられるか、影が投じられるかであり、そのコントラストに対する感度が鋭敏であればよい。一例として、前記球粒子の散乱の散乱光強度を図6A図6Dに示す。図6A及び図6Bは、10μm粒径、図6C及び図6Dは17μm粒径の前方散乱を表すグラフであり、透過性媒質がポリカーボネート、粒子がシリカの場合のMie散乱を表している(対数目盛)。前方散乱光の強度が非常に強いことが分かる。0度方向(矢印の向き)が光の進行方向である。また、同時に10μmよりも17μm粒径の方が前方散乱能が数倍程度大きいことも分かる。更に粒径25μmの異物粒子の前方散乱を表すグラフを図6E図6Fに示す。但し、入射光の波長はλ=1.55μmである。この場合の前方散乱強度は、10μm粒径と17μm粒径の間にある。ちなみに25μm粒径は、1200dpi(画素分解能:約21μm)の解像度に近く、10μm粒径は、2400dpi(画素分解能:10μm強)の解像度に近い。また、入射光の波長が1.55μmの30μm粒径の異物粒子のMie散乱を表すグラフを図6G図6Hに示す。粒径30μmの前方散乱強度は25μm粒径の場合に比べ約2倍であることが分る。
【0038】
以下、Mie前方散乱領域の散乱光について、クロストーク成分の抑制方法を簡略化して記す。まず、図4Aを用いて説明する。図4Aは、「異物・欠陥」からの散乱光を受光する模式図であり、散乱光の隣接する画素へのクロストークを表している。星型のマーク41が異物(欠陥)を表す。異物(欠陥)41からの散乱光は、受光レンズアレイ42により、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43に集光・結像される。図4Aでは、別々の独立した複数の光ビームが異物に同時に入射する場合を示している。
【0039】
図4Aの左側の釣鐘型の光強度分布波形Ifが受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43に入射した散乱光の強度分布を表す。受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43に入射した散乱光は、受光レンズの収差並びに回折の影響により、「異物・欠陥」の実寸法よりも大きく、所謂ボケた状態で結像する。つまり、仮に、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43の並び方向において、受光素子(フォトダイオード)の一画素分の寸法と「異物・欠陥」の寸法が同じ大きさであっても、受光素子(フォトダイオード)43上における「異物・欠陥」の結像寸法は、受光レンズの収差や回折の影響により、「異物・欠陥」の寸法よりも大きくなる。検査対象物の検査面を透過した光のうち光散乱により生じる散乱光、拡散光、または、吸収・拡散反射、透過拡散された強弱を有する光の受光レンズへの入射角に対して、受光レンズの開口角は十分小さいことが好ましい。例えば、開口角は5mrad~15mrad程度が好ましく、所望のW,D.に応じて1mradから20mradでもよい。開口角は、小さくなれば、受光量が少なくなるため、光源側のパワーで相対的に補う必要がある。更に、光散乱性透過媒質の厚みに依存する透過率が受光センサのゲインに直接関わるため、受光センサにオートゲインコントロール(AGCと記す)を備えた回路構成とすることで、各種透過率に依存しないS/Nの良い、ダイナミックレンジの広い受光系を構築できる。また、その際には、任意の画素に対し、任意の画素の出力に対する直前までの出力の平均値を用いたフィードバック系(信号処理回路系)を用いることも可能である。また、同時に、信号をライン毎に取り込んだ位置―出力情報の総合的な情報(出力データ)の検査対象物の深さ方向における2次元的な解析を同時に進めれば、リアルタイムの検査も可能になる。いずれにしても、信号のS/Nを良質にするために受光センサの最大感度域に合わせる工夫をすることが、信号のS/Nをより向上させ、その結果「欠陥・異物」検査における適用範囲を広げることに繋がるのである。図4Aの右側の釣鐘型の光強度分布波形Irは、本願発明の異物を照明する1本1本の光ビームの強度分布である。前述した左右の光強度分布波形の受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43側の配列方向における幅を比較すると受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43側の光強度分布波形Ifが入射側の光強度分布波形Irよりも拡がっていることが分かる。
【0040】
次に、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43の2つの光強度分布波形Ifについて説明する。光散乱媒質Ms中には、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43に対向して2つの「異物・欠陥」Mf1、Mf2が受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43に平行に配置され、かつ、その間隔は受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43の素子間隔と同じである。また、受光レンズアレイ42は、等倍系であり、W.D.を予め長くしている。
【0041】
この場合、「異物・欠陥」Mf1、Mf2の一方の「異物・欠陥」が結像されてできた光強度分布波形If1が、自身に対向する受光素子(フォトダイオード)PD1に隣接する受光素子(フォトダイオード)PD2上にも拡がり、クロストークを生じていることが分かる。クロストークを生じている部分が、各光強度分布波形のハッチングを施した部分Cr1、Cr2である。
【0042】
言い換えれば、互いに隣接した画素からはみ出た光強度成分Cr1、Cr2が、自身の正味の信号成分に加わる。これが互いの受光素子(フォトダイオード)の正味の信号成分に混入するクロストーク成分がノイズとなるため、ダイナミックレンジが狭くなり、信号のSNR(Signal to Noise Ratio :S/Nと同義)を劣化させる要因の一つとなる。
【0043】
次に、図4Bについて説明する。図4Bは、コリメートされた光ビームが受光レンズアレイ42に入射し、出射後に拡がり、受光素子PD1,PD2上で、バックグラウンドノイズになることを表した模式図である。従来のCIS等に用いられる照明は、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43の長手方向に連続した光強度分布を有する。光散乱媒質Ms中の「異物・欠陥」により散乱された光が図4Aの44であるが、これに加えて受光レンズアレイ42にはコリメートされた光ビーム45が入射する。受光レンズアレイ42は等倍系に設定されているので、その被写界深度近傍以外からの光は、ほとんど焦点を結ばない。即ち発散し、結像に寄与しないため、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43上で拡がる。即ち、受光レンズアレイ42へコリメートされた光ビームが入射すると、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43上で、大きく拡がりバックグラウンドノイズ成分46となり、S/Nの劣化要因となる。バックグラウンドノイズ成分46を四角い点線で囲まれた部分で示す。バックグラウンドノイズが増加すると、コントラストの劣化に繋がる。即ち、「異物・欠陥」検出において、バックグラウンドノイズ成分に埋もれ、検出が困難になる。
【0044】
実際に検出される信号は、前述のクロストーク成分とバックグラウンドノイズ成分が混在しており、結局図5Aで示すような信号になる。図5Bは、クロストーク成分やバックグラウンド成分がほとんど無い場合を示したものである。また、幾何光学的散乱の場合は、遮蔽効果により、「異物・欠陥」の強度分布が後述の図8に類似の分布となる。
【0045】
本願発明の図3に示した受光素子(フォトダイオード)と光源を1画素単位で1対1の対応をさせて照明する方式に加え、更にクロストーク成分を少なくする方法について述べる。図3に示したごとく、同時にライン状に照明する方法では、隣接するフォトダイードに隣接する光源からの成分が混入する。これを回避する方法は、同時に点灯するのではなく、1対1の対応をさせた1対の光源と1画素単位の受光素子(フォトダイオード)のみを動作させ、次に隣の1対1の対応をした1対の光源と1画素単位の受光素子(フォトダイオード)の組み合わせに移動し、それを終端まで逐次繰り返すことである。すなわち、主走査方向の任意の位置における光源からの光ビームを対応する1画素単位の受光素子のみで検出させる。このような制御は、CPUを含む制御部(図示せず)が、各光源及び各受光素子のON/OFFを個別に切り替えることにより行うことができ、このとき制御部は検出手段として機能する。より具体的には、照明光学系における光ビームの走査と同期して、複数の受光素子における各走査位置での光ビームの中心部近傍の受光素子についてのみ信号出力する。こうすることにより、仮に光ビーム径が大きく、一つの光源から出射し、コリメータレンズによりコリメートされた光ビームが「異物・欠陥」で散乱され、その散乱光が1画素単位で1対1の対応をした受光素子(フォトダイオード)に入射した際に隣接する画素、或いは、近隣の画素に入射したとしても、隣接又は近隣画素が出力しないため、1対1の対応をした光源と1画素単位の少なくとも1つの受光素子(フォトダイオード)に対応した「異物・欠陥」に対する正味の信号のみが得られる。この際に前述したクロストーク成分は、他の画素から出力しないので、受光レンズアレイに入射したコリメートされた光ビーム成分が受光されるのみであり、クロストークは非常に少ない。
【0046】
これを図7に示す。図7は、マルチビーム照明―マルチビーム走査方式を示した模式図である。71は、入射光ビームの光強度分布であり、72は、散乱光である。73は、受光レンズアレイ74を通過した光を受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)75に集光するときの光束である。検査対象物76中の「異物・欠陥」Mr1及びMr2の散乱光の投影像がImf1、Imf2である。このときの結像サイズは、前述したごとく「異物・欠陥」の実物の大きさよりも大きく、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)75の配列方向への結像サイズは、収差や回折により、大きくなり、かつ、ボケてしまう。しかしながら、光ビームが入射している箇所が限定されており、1対1の対応をした画素以外の画素の出力は制限されているので、入射光ビームに対応した画素77以外の画素からの出力は無い。
【0047】
また、クロストークを問題にしないで済む位置にある別な画素77へ1対1の対応をした入射光ビームは同時に照射されてもよい。その場合は、図7に示したごとく、同じタイミングで同時に多数本照明ができるので、走査時間が短くなるというメリットが生まれる。本方式を「マルチビーム照明―マルチ走査受光方式」と呼んで、先述した「1ビーム照明-1走査受光方式」と区別する。
【0048】
少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位の空間分解能は、検査対象物の検査面上の光ビームの空間分解能以上である。ここで、光ビームの空間分解能は、検査対象物の検査面上における光ビームのビーム径に対応している。すなわち、少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位において、光ビームのビーム径以下で近接する2点を弁別できる能力を有している。言い換えると、光ビームの空間分解能が主走査方向に配列された少なくとも1つの受光素子からなる画素単位の空間分解能以下である。
【0049】
光ビームの走査間隔は、主走査方向に配列された少なくとも1つの受光素子からなる画素単位の空間分解能以下であってもよい。言い換えると、少なくとも1つの受光素子からなる画素単位の空間分解能は、光ビームの走査間隔以上である。すなわち、少なくとも1つの受光素子からなる1画素単位において、光ビームの走査間隔(光源の間隔)で近接する2点を弁別できる能力を有している。
【0050】
次に検査対象物中の「異物・欠陥」が幾何光学的散乱領域、或いは、不透過性の場合について記す。前記「異物・欠陥」の散乱を図8に示す。図8のCr(ハッチングを施した部分)が隣接する画素77分の照明ビームを動作している素子(中心)のクロストーク成分である。透過成分は隣の釣鐘型の強度分布の山よりも低い強度分布である。中心の画素の出力が低く、隣接する画素の出力が高いので、「異物・欠陥」Mrが存在することを検出できる。
【0051】
以上のように、検査対象物中の「異物・欠陥」がMie散乱領域であるか、幾何光学的散乱領域であるか、又は、透過性のものであるか、不透過性のものであるか、更には、表面性や誘電率などによって信号の形が変わるのであるが、検出した信号の高低により、「異物・欠陥」を検知でき、かつ、異物による信号の強弱と信号波形を予めルックアップテーブルにしてリファレンスデータとしておけば、そのリファレンスデータと照合することにより、「異物・欠陥」の種類の弁別が可能になる。
【0052】
これまで、検査対象物が、光散乱透過媒質に限定して説明してきたが、本願発明は、反射媒質にも応用可能である。図9Aに例を示す。図9Aは、反射型の実施態様を示した模式図であり、測定系の長手方向に対し、その断面を示したものである。91は電子基板、紙葉類、フィルム等の検査対象物である。LEDやLD等の光源92から出射した光は、屈折率分布型レンズ、ボールレンズ等のコリメートレンズ94でコリメートされ、検査対象物91上に照射される。受光光学系は、屈折率分布レンズに代表されるレンズをアレイ状とし、かつ、入射光ビームと反射光が侠角になるように配置しておく。受光レンズアレイ95の受光素子側の焦点位置には受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)96を配置する。
【0053】
検査においては、予め、リファレンスとなる検査対象物91の情報を取得しておき、次に製品の検査を実施する。予め、リファレンスとなる検査対象物91の情報は、メモリに記憶されている。工程で流れる製品の検査を実施した際に、予め記憶したリファレンス情報と照合する(ベリファイの実施)。また、検査対象物91に「異物・欠陥」が付着・混入或いは存在した場合を星印98で示す。検査対象物91上に「異物・欠陥」があれば、リファイレンスデータと異なったデータが取得され、取得データとの差分が求められ、検査対象物91上に「異物・欠陥」が存在すると判断されて工程から除去される。また、図9Aの90Mfに、素子97が欠落した場合について点線で示す。点線の素子が欠落していれば、前記と同様にリファレンスデータと異なったデータが取得されるのでその差分から、素子が欠落していると判断され、工程から除去される。更に電子基板上或いは内部の微細な配線が断線した場合でも同様に「異物・欠陥」として検出される。
【0054】
更に、電子基板に突起物があり、「異物・欠陥」が該突起物の影に隠れた場合でも、入射光ビームを両側から対称角度で照射することにより、かつ、受光光学系を対称に侠角に配置することにより、検出可能である。尚、図9Aでは基板に対し、入射光ビームを斜入射させた場合を示しているが、図9Bのように垂直入射させて、基板に対し斜めに受光してもよい。反射型においては、正反射光を受光しないようN.A.を考慮した受光角に配置する。要は、検査対象物に応じて測定系の配置を変えればよい。
【0055】
検査対象物が印刷物や機能性フィルムなどの場合も本願発明の手法が有効である。即ち、透過型フィルムにおいては、キズの有無などの検査、紙葉類などの不透明印刷物は、反射型を用い、キズはもとより、印刷不良などの検査に有効である。しかも、搬送系の上下動のある場所においても本願発明においては、被写界深度が深いため、使用可能であり、適用範囲が拡がる。
【0056】
また、光散乱透過型媒質において、特に透過率が低い媒質においては、前記光ビームを絞ったほうが良い場合がある。この場合は、受光素子の受光立体角を考慮して、光ビームの絞り角を決める。更に、光散乱透過媒質の透過率が高い場合や反射媒質の反射率が高い場合は、ある程度光ビームを拡げた方が受光素子の受光立体角の受光する光がバックグラウンドノイズとなることを少なくする効果もある。そのため検査対象物の透過率や反射率に応じて、光ビームをコリメートする方法や光ビームを絞り込むことや、拡げる等の工夫をすることにより、信号のS/Nが更に一層向上する。なお、「光ビームを絞り込む、または拡げる」とは、コリメ―トした平行光束を更に絞り込む、または拡げることを意味している。前記は具体的な説明は省略するが、簡単には、光散乱透過性媒質の場合は、深度方向に受光立体角がほとんど変化しない場合を想定すると、コリメートされた平行光ビームが直接に受光素子に入射することを抑制することが可能であり、反射媒質が検査対象物の場合は、検査対象物の検査面上で光ビームが広がっている方が、受光立体角における直接照明ビームの入射強度を下げることができ、受光素子が受光した光に基づく信号のS/Nが向上する。なお、検査対象物の検査面とは、検査対象物における光ビームが入射する面であり、1つに限らず、複数の検査面に対して光ビームが入射するような構成であってもよい。
【0057】
現在、LEDは、LEDプリンタに代表されるように高密度化が進んでおり、1200dpiがすでに達成されている。このLEDアレイを用いれば、高解像度が実現できる。即ち、LEDアレイから出射した出射光をコリメートし、該コリメートした光ビームを図3の光源に換えて用いればよい。屈折率分布レンズアレイは、LEDプリンタの場合、屈折率分布型レンズの等倍結像系であるが、本願発明で用いる屈折率分布型レンズは無限遠に焦点を有するものを用いる。将来的にLDが高密度に配列可能になれば、高出力のLDアレイを用いることがより好ましい。或いは、VCSEL(垂直面発光半導体レーザ)に代表される半導体レーザを平面上に配列したライン状光源やエリア状に配列したものでもよい。ライン状光源は、複数ライン配列し、更に複数の波長による検査により検査精度の向上を図ることもできる。
【0058】
前記の方式について、図3にて再度説明する。31aは、光源であるLED又はLDアレイである。31bは、31aの側面図である。32aは、コリメータレンズアレイである。32bは、32aの側面図である。34は検査対象物、35は検査対象物中の「異物・欠陥」である。37は、受光レンズアレイである。38は、受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)ある。また、30は、光源31から出射した光ビームであり、33は、コリメータレンズ32から出射した光ビームである。該光ビーム33は、検査対象物34に入射し、続いて「異物・欠陥」35に入射する。「異物・欠陥」35に入射した光ビーム33は「異物・欠陥」35により散乱され、散乱光36となって、受光レンズアレイ37に入射し、続いて受光素子アレイ38に入射する。
【0059】
次に、コリメートされた光ビームが受光レンズアレイ42に入射し、出射後に拡がり、受光素子PD1,PD2上で、バックグラウンドノイズになることを表した模式図である図4Bを用い、図4Bで示したバックグラウンドのノイズの更に優れた除去方法について述べる。
【0060】
図4Bの受光光学系では、バックグラウンドノイズは完全に除去することはできず、ある程度抑制できるのみであり、更に除去し、必要となる正味の信号成分のみにするためには、別途工夫が必要となる。その工夫について以下に記す。多眼レンズの最大の欠点は、多眼レンズであるが故に隣接する多眼レンズからのクロストーク成分はかなり広がり、バックグラウンドのノイズ成分が受光素子アレイ(フォトダイオードアレイ)43の素子面上で拡がることである。光束の拡がりを生ずるために減衰はするので、クロストーク成分は小さくなる。しかし、まだ、改善の余地は残されており、バックグラウウンドノイズを更に小さくすることで、更にS/Nを向上させることができる。図10に本方式の模式図を示す。図10は、受光系の多眼レンズ一個一個に対応したアパーチャー(アレイ)を付与した方式である。
【0061】
図10の101は、受光系の多眼レンズ一個一個に対応したアパーチャーを光軸方向から見たものである。102は、アパーチャーの断面を仮想的に表す。同時に各アパーチャー101は、各光源、コリメータレンズ(場合によっては、ビームウエストを形成する収束レンズも含む)、受光レンズ、受光素子の光軸上に位置し受光レンズのN.A.にほぼ一致するか、それよりも小さい。或いは、一度受光レンズの結像面にアパーチャーを配置し、その拡がった光を1対1の対応をさせて受光してもよい。この場合は、1対1の対応を予め補正しておき、1対1の対応をする1画素単位からの信号のみ出力するようにすればよい。
【0062】
図11は、コリメートされた隣り合った光ビームがオーバーラップした場合を表す模式図である。図11に示すように、コリメーションされた光ビームは、受光系の多眼レンズの有効径よりも大きくともよい。大きくすることで、検査対象物中の異物・欠陥を逃さず検知可能になる。103がコリメートされた光ビームが重なり合う部分であり、104がオーバーラップしない部分である。「異物・欠陥」105が、隣り合ったコリメートされた光ビームがオーバーラップした該光ビームに照射され、「異物・欠陥」106がオーバーラップしない光ビームに照射される。その結果すべての位置にある「異物・欠陥」が検出できる。
【0063】
本願発明の実施態様の1例を前記の図3を用いて詳細を説明する。光源31aはアレイ化やマトリクス化が容易であり、パワーの大きいVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:垂直共振器面発光レーザ)が好ましい。或いは、LEDプリンタで用いられるようなLEDアレイでもよい。前記のVCSELをライン状に細密配列し、受光素子アレイ38のピッチに合わせて光源31aのピッチを決める。例えば600dpi、1200dpiに合わせる。しかしながら、画像として処理する場合以外で用いる際にはこの限りではない。次にVCSELアレイを屈折率分布型レンズアレイに平行に配置する。屈折率分布型レンズアレイは、コリメータとして用いるため、1/4ピッチ近傍のピッチを用いる。或いは、3/4でピッチ近傍でもよい。即ち、コリメートされた光ビームとして出射できるようにピッチを決めればよい。また、屈折率分布型レンズ以外では、球面レンズを微小にしたマイクロレンズアレイでもよい。この場合は、光源31aの光軸に合わせて、マイクロレンズを配列する。コリメートされた光ビームとした場合は、ビームウエストがVCSELの出射面上にビームウエストがあるとし、該ビームウエストとコリメータレンズ32の焦点が一致するようにコリメートする。
【0064】
本願発明では、光散乱透過媒質に適した波長のレーザを用い、特に食品関連では、水分による吸収を考慮し、λ=800nm~900nm付近の波長を用いる。食品にも前記の波長帯域では透過率が低い媒質(カカオに代表さされる菓子類)もあり、この場合は、λ=1500nm近傍の光通信に使用される波長を用いることもある。HO、CO、Oなどの物質が多く含まれる材料も透過率の高い波長域が存在するため、必要に応じて波長を選択して検査対象物を照明すればよい。また、波長を選択した際には、選択した波長に感度域を有する受光素子を用いる。食品以外のロール紙やロールフィルム、紙葉類、樹脂フィルム、金属フィルム等においては、可視域の波長を用いてもよい。
【0065】
本実施例においては、近赤外域のλ=830nmを用いた。この波長において、光散乱透過性媒質の厚みが10mmとし、光散乱透過率媒質の中央部にビームウエストをおくと±5mmの距離で5%程度のビーム径の変化に抑えれば好ましい。例えば、VCSELの出射口のサイズが10μm径とすると、式1により、コリメート後のビーム径dは、SELFOCレンズアレイの焦点距離をfとして、f=2mmとすると、d=210μmになる。
W0={4・f・λ/(π・d)}/2 ・・・(式1)
ここで、
f:レンズの焦点距離
λ:レーザビームの波長
d:ビーム径
である。
【0066】
また、光散乱透過媒質の中央部に焦点を結ばせる方法でもよい。即ち、光散乱透過媒質中において略平行ビームになるようにビームウエスト長を調整すればよい。その場合は、kogelnikの式2を用いて、ビームウエスト位置のビーム径を求める。但し、光散乱透過媒質においては空気中(真空中)での屈折率が異なるため、ビームウエスト位置が移動することも考慮してビームウエスト位置を決定する必要があり、詳細については後述する。レーザビームの伝搬を表すKogelnikの式2をビームの許容半径の範囲を決定するとき用いる。
(z)=W0[1+{λ・z/(π・W0)} ] ・・・(式2)
ここで、
W(z):任意の光軸方向の位置におけるビーム半径
W0:ビームウエスト半径
である。
ビームウエスト半径W0は、式1により求めているので、例えば5%の誤差のビーム径の範囲を式2により決めることができる。式2の結果は、217μmであり許容範囲としてよい。
【0067】
空気中(真空中)のビームウエスト位置が、式1により決まるが、光散乱透過媒質においては、屈折率が空気中(真空中)よりも大きくなるため、実際のビームウエスト位置は光源側から遠くなる。そして収束角度が浅くなった分、ビームウエスト径も変化する。ビームウエストの移動距離Δfは、式3で表すことができる。即ち入射端面にレーザビームが入射する際の集光レンズの焦点距離とコリメーションビームのビーム径で決めることができる。回折限界近傍のビームを考慮する必要のない距離であるので、θ´は近似的に幾何光学を適用し、Snell‘Lawで求めておく。
Δf=tanθ´/di ・・・(式3)
ここで、
θ:入射角の最大値
θ´:屈折角の最大値
di:光散乱透過媒質へ入射する入射端面におけるビーム半径
である。
【0068】
光散乱透過媒質においてKogelnikの式が適用できなくなるので、ビームウエスト径は新たに求める必要がある。それには、ビームウエスト近傍の収束角を用いる必要はないため、幾何光学近似のSnell‘Lawで求めた屈折角を用いる。ビームの発散角Φは、回折限界を表す式4で表すことができる。
Φ=2λ/(π・dms) ・・・(式4)
ここで、
λ´:光散乱透過性媒質中の波長
dms:光散乱透過性媒質中のビームウエスト径
λ´:N・λ(λ:空気中(真空中)の屈折率)
である。
【0069】
以上より、光散乱透過性媒質中のビームウエスト径dmsは、焦点距離が、W.D.にほぼ等しいほど長焦点であり、小さいN.A.(Numerical Aperture)であるf=50mmの集光レンズとし、該集光レンズをコリメータレンズの後ろ側、かつ、光散乱透過性媒質の光源側に配置した場合、集光レンズへの入射ビーム径を210μmとすると、光散乱透過性媒質の無い場合のビームウエスト径2W0は、252μmになる。そして、上記の焦点距離のレンズを用いたときの光散乱透過媒質中の焦点移動距離は21mmであることが分かる。よって、中央部にビームウエスト位置を配置する場合は、照明光学系を光散乱透過媒質から16mm下げればよい。また、そのとき、ビーム径dmsは式4から377μmとなる。以上より、検査対象物の厚みと屈折率に応じて光学系の位置を決めればよい。また、そのように光学系を光軸方向に移動できる構造にしてもよい。
【0070】
図12Aに本願発明の実施例のエッジ法の実験の模式図を示し、図14A図14Dに実測結果を示す。図12Bに従来技術のエッジ法の実験の模式図を示し、図15A図15Dに従来技術による実測結果を示す。図12A及び図12Bにおいて、34aは拡散板である。図14Aは拡散板2枚の場合、図14Bは拡散板3枚の場合、図14Cは拡散板4枚の場合、図14Dは拡散板5枚の場合をそれぞれ表している(規格値)。図15Aは拡散板2枚の場合、図15Bは拡散板3枚の場合、図15Cは拡散板4枚の場合、図15Dは拡散板5枚の場合をそれぞれ表している(規格値)。本実測結果は、「異物・欠陥」に替えて、本願発明の性能を検証するため、測定対象にエッジを用いて、そのエッジ信号の立ち上がり特性をみた。また、光散乱透過媒質は、拡散板クラレ コモグラス432L(厚み:t=2mm、全光線透過率:61%、ヘーズ:95%)とし、厚みちがいを確認・検証するため、枚数を2枚、3枚、4枚、5枚とし、最大厚みを10mmとした。図14A(1)、図14B(1)、図14C(1)、図14D(1)に各枚数の拡散板の結果を、比較例として図15A(1)、図15B(1)、図15C(1)、図15D(1)に従来方式のエッジ信号の立ち上がり特性を示す。光源は、LD(パナソニック LNCT28PS01WW)をコリメートした光ビームを用いた。検査対象物中における半導体レーザのビームプロファイルを図13に示す。アレイとみなすため、1個のLDを画素ピッチ毎に移動させ、逐次1体1対応する画素の信号を得た。
【0071】
図14A(1)、図14B(1)、図14C(1)、図14D(1)は、本願発明の実施例の一例において、前記のエッジ応答(相対強度)を示すグラフである。画素寸法は、主走査方向に約62μmである。また、図14A(2)、図14B(2)、図14C(2)、図14D(2)は、隣接画素からの出力の差分(相対強度)をとったものである。図14A(2)、図14B(2)、図14C(2)、図14D(2)から明らかように、離接画素間の差が明確に存在し、その相対強度の差はピーク値の10%あることから1画素毎(400dpi相当)の弁別が可能であることが分かる。更に素子の寸法を小さくして、画素寸法、ピッチを小さく、狭くすれば、600dpiや1200dpi、更に、それ以上の解像度を実現可能である。受光素子のサイズ(画素寸法)は、200dpi以上を満足するように設定されることが好ましい。
【0072】
図15A図15Dに従来技術によるエッジ応答(相対強度)を比較例として示す。本願発明と従来技術とでは明確な差があり、従来技術では、どの拡散板においても画素分解能が無く、差分を示すグラフはもはやバックグラウウンドノイズ(ランダムノイズ)に埋もれており異物検出が不可能であることが分かる。それに対し、本願発明はどの拡散板の厚みにおいても異物検出が可能であることが分かる。
【0073】
次に、シミュレーションモデルにより、光軸方向の厚み(t=30mm)の光散乱透過性媒質中に「異物・欠陥」が存在したときの受光センサの応答を求めた結果を示す。モデルの模式図を図16に示す。検査対象物としてPMMAを選び、光散乱粒子として2μm粒径のシリコーン真球粒子とした。濃度は0.04wt%~0.20wt%まで変化させた。光源は、コリメートし、受光素子(主走査方向サイズ:62μm)よりも大きい断面サイズである150μmとした。図17A図17Fは、シミュレーションの結果を示したグラフである。異物は、100μm径の球とし、透過率0%の界面を有する吸収体とした。また、異物粒子は、検査対象物の中央に位置している。図17Aは散乱粒子濃度が0.00wt%の場合、図17Bは散乱粒子濃度が0.04wt%の場合、図17Cは散乱粒子濃度が0.08wt%の場合、図17Dは散乱粒子濃度が0.12wt%の場合、図17Eは散乱粒子濃度が0.16wt%の場合をそれぞれ示しており、図17Fは各濃度における出力比較を表している。
【0074】
また、図18A図18F図19A図19Fに検査対象物の中心から±14.5mm離れた位置にある異物粒子のシミュレーション結果であるグラフを示す。即ち、異物粒子が検査対象物の端部から0.5mmの深さに位置している。図18A図18Fは、検査対象物の光源側端部に異物粒子が位置する場合を示しており、図19A図19Fは、検査対象物の受光素子側端部に異物粒子が位置する場合を示している。このシミュレーション結果によれば、両者とも光散乱透過性媒質の中心部にある異物粒子の場合とよく似た応答であり、本願発明の効果をよく表しており、厚みのある光散乱透過性媒質中の「異物・欠陥」検出への適正が非常に優れていることが分かる。
【0075】
以上のように本願発明が従来技術に対し、光拡散透過性媒質中の「異物・欠陥」に対しその検出精度に優れていることが分かる。また、本願発明の方式は、反射媒質の「異物・欠陥」の検出にも適用可能である。更に、光散乱透過性媒質からの受光信号に基づき、画像を生成し、検出信号の高低で除去された不良品の更なる解析を進めることも可能になる。この場合はオンラインではなく、オフライン検査を主として実施することを想定しているが、信号処理速度を向上させることにより、オンラインでの解析も自動的に行うことも可能である。このように従来技術では適用が不可能であった、検査が可能になり、更なる検査の質が向上し、ひいては検査対象物である製品の品質の向上が実現可能になる。
<作用効果>
【0076】
以上のように、十分に小さい径のコリメートされた平行光ビームを用い、或いは、光散乱透過性の検査対象物中において略平行光ビームとなるようにビームウエストを調整して用いることにより、さらには、検査対象物に応じて、光ビーム絞込角度や拡がり角度を調整することにより光散乱(拡散)による光の拡がりの重なりを抑制できるほか、各照射位置に光源と1対1の対応をする1画素単位の受光素子で、前記光ビームの光軸近傍の信号のみを受光するように画素からの出力信号を選択することにより、画素間におけるクロストークを抑制でき、かつ、散乱光(拡散光)や直接入射光等によるバックグラウンドのノイズの原因となる光と「異物・欠陥」に由来する光量変化を分離して検出するようにできるため、検査対象物における「異物・欠陥」対象を鮮明化でき、正確な検査が可能になる。
【符号の説明】
【0077】
10 ライン状照明光源
11 レンズアレイ
12 受光部
31a,31b 光源
32a,32b コリメータレンズ
33 光ビーム
34 検査対象物
36 散乱光
37 受光レンズアレイ
38 受光素子アレイ
39 焦点位置
42 受光レンズアレイ
45 光ビーム
74 受光レンズアレイ
76 検査対象物
77 画素
91 検査対象物
92 光源
94 コリメートレンズ
95 受光レンズアレイ

図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図6F
図6G
図6H
図7
図8
図9A
図9B
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14A
図14B
図14C
図14D
図15A
図15B
図15C
図15D
図16
図17A
図17B
図17C
図17D
図17E
図17F
図18A
図18B
図18C
図18D
図18E
図18F
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図19F
図20
図21
図22
図23
図24
図25