(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】電子放出源の動作制御方法、電子ビーム描画方法、及び電子ビーム描画装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240911BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240911BHJP
H01J 37/305 20060101ALI20240911BHJP
H01J 37/04 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
H01L21/30 541E
H01L21/30 541N
H01L21/30 541W
G03F7/20 504
H01J37/305 B
H01J37/04 A
(21)【出願番号】P 2020192571
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】504162958
【氏名又は名称】株式会社ニューフレアテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100119035
【氏名又は名称】池上 徹真
(74)【代理人】
【識別番号】100141036
【氏名又は名称】須藤 章
(74)【代理人】
【識別番号】100178984
【氏名又は名称】高下 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】宮本 房雄
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓
【審査官】植木 隆和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-362954(JP,A)
【文献】特開2010-062374(JP,A)
【文献】特開2014-165075(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
G03F 7/20
H01J 37/305
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを放出する工程と、
試料面上で所望の電流が得られるように前記電子ビームを調整する工程と、
電子ビームのエミッション電流を変えながら、
設定されるカソード温度における、電子ビームが照射される試料面位置での試料面電流と、エミッション電流との間の特性
グラフのデータを取得する工程と、
前記特性のうち所定の範囲における、前記エミッション電流に対する前記試料面電流を前記エミッション電流で割った傾き値を前記特性から算出する工程と、
前記電子ビームが調整された状態の試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を算出する工程と、
前記電子ビームが調整された状態での傾き値が、前記所定の範囲の前記傾き値の範囲内になるように
カソードに供給されるフィラメント電力を制御してカソード温度を調整する工程と、
を備え
、
前記所定の範囲は、前記特性のピーク位置を含む範囲であることを特徴とする電子放出源の動作制御方法。
【請求項2】
所定の期間毎に、前記特性の取得と、前記所定の範囲の前記傾き値の算出と、
予め設定された輝度が得られるように前記電子ビームが調整された状態の前記傾き値の算出と、が実施され、
前記所定の期間毎に、前記傾き値が、前記所定の範囲の前記傾き値の範囲内かどうかを判定する工程をさらに備え、
判定の結果、前記傾き値が、前記所定の範囲の前記傾き値の範囲内から外れていた場合に、再度、前記傾き値が前記所定の範囲の前記傾き値の範囲内になるように前記カソード温度を調整することを特徴とする請求項
1記載の電子放出源の動作制御方法。
【請求項3】
電子ビームを放出する工程と、
試料面上で所望の電流が得られるように前記電子ビームを調整する工程と、
電子ビームのエミッション電流を変えながら、
設定されるカソード温度における、電子ビームが照射される試料面位置での試料面電流と、エミッション電流との間の特性
グラフのデータを取得する工程と、
前記特性のうち所定の範囲における、前記エミッション電流に対する前記試料面電流を前記エミッション電流で割った傾き値を前記特性から算出する工程と、
前記電子ビームが調整された状態の試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を算出する工程と、
前記電子ビームが調整された状態での傾き値が、前記所定の範囲の前記傾き値の範囲内になるように
カソードに供給されるフィラメント電力を制御してカソード温度を調整する工程と、
前記傾き値が前記所定の範囲の前記傾き値の範囲内になる前記カソード温度に調整された電子ビームを用いて、試料にパターンを描画する工程と、
を備え
、
前記所定の範囲は、前記特性のピーク位置を含む範囲であることを特徴とする電子ビーム描画方法。
【請求項4】
電子ビームを放出する電子放出源と、
前記電子ビーム放出源から放出される前記電子ビームのエミッション電流を制御するエミッション電流制御部と、
電子ビームのエミッション電流を変えながら、設定されるカソード温度における、電子ビームが照射される試料面位置での試料面電流と、電子ビームのエミッション電流との間の特性
グラフのデータを取得する取得部と、
前記特性のうち所定の範囲の前記試料面電流を前記エミッション電流で割った傾き値を前記特性から算出する第1の傾き値算出部と、
試料面上で所望の電流が得られるように前記電子ビームが調整された状態における試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を算出する第2の傾き値算出部と、
前記電子ビームが調整された状態での傾き値が、前記所定の範囲の前記傾き値の範囲内になるように
カソードに供給されるフィラメント電力を制御してカソード温度を調整する温度調整部と、
前記傾き値が前記所定の範囲の前記傾き値の範囲内になる前記カソード温度に調整された電子ビームを用いて、試料にパターンを描画する描画機構と、
を備え
、
前記所定の範囲は、前記特性のピーク位置を含む範囲であることを特徴とする電子ビーム描画装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、電子放出源の動作制御方法、電子ビーム描画方法、及び電子ビーム描画装置に係り、例えば、電子銃の動作条件を制御する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化の進展を担うリソグラフィ技術は半導体製造プロセスのなかでも唯一パターンを生成する極めて重要なプロセスである。近年、LSIの高集積化に伴い、半導体デバイスに要求される回路線幅は年々微細化されてきている。ここで、電子線(電子ビーム)描画技術は本質的に優れた解像性を有しており、マスクブランクスへ電子線を使ってマスクパターンを描画することが行われている。
【0003】
例えば、マルチビームを使った描画装置がある。1本の電子ビームで描画する場合に比べて、マルチビームを用いることで一度に多くのビームを照射できるのでスループットを大幅に向上させることができる。かかるマルチビーム方式の描画装置では、例えば、電子銃から放出された電子ビームを複数の穴を持ったマスクに通してマルチビームを形成し、各々、ブランキング制御され、遮蔽されなかった各ビームが光学系で縮小され、マスク像が縮小されて、偏向器で偏向され試料上の所望の位置へと照射される。
【0004】
電子ビームを放出する電子銃では、カソードの高輝度化に伴い、カソードの動作温度が高くなっている。その結果、カソード結晶の消耗速度が速くなってきている。結晶が一定量蒸発すると所望の性能が出せなくなるため寿命となり交換する必要がある。カソードの交換には描画装置を停止する必要があるので装置の稼働率を下げてしまう。よって、必要な輝度を維持した上でカソードの蒸発速度をできるだけ遅くすることが望ましい。そのためには、必要な輝度が得られる範囲でカソード温度をできるだけ低く保つことが望ましい。
【0005】
従来、バイアス飽和点におけるエミッション電流と電流密度との関係と、バイアス飽和点におけるエミッション電流とフィラメント電力との関係を測定しておき、これらの関係を参照して設定電流密度におけるエミッション電流が得られるフィラメント電力を算出する技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、電子放出源から放出される電子ビームが必要な輝度を維持しつつカソード温度を低くすることが可能な方法および装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の電子放出源の動作制御方法は、
電子ビームを放出する工程と、
試料面上で所望の電流が得られるように電子ビームを調整する工程と、
電子ビームのエミッション電流を変えながら、設定されるカソード温度における、電子ビームが照射される試料面位置での試料面電流と、エミッション電流との間の特性グラフのデータを取得する工程と、
特性のうち所定の範囲における、エミッション電流に対する試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を特性から算出する工程と、
電子ビームが調整された状態の試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を算出する工程と、
電子ビームが調整された状態での傾き値が、所定の範囲の傾き値の範囲内になるようにカソードに供給されるフィラメント電力を制御してカソード温度を調整する工程と、
を備え、
前記所定の範囲は、前記特性のピーク位置を含む範囲であることを特徴とする。
【0009】
また、所定の範囲は、特性のピーク位置を含むと好適である。
【0010】
また、所定の期間毎に、特性の取得と、所定の範囲の傾き値の算出と、上述した輝度が得られるように電子ビームが調整された状態の傾き値の算出と、が実施され、
所定の期間毎に、傾き値が、所定の範囲の傾き値の範囲内かどうかを判定する工程をさらに備え、
判定の結果、傾き値が、所定の範囲の傾き値の範囲内から外れていた場合に、再度、傾き値が所定の範囲の傾き値の範囲内になるようにカソード温度を調整すると好適である。
【0011】
本発明の一態様の電子ビーム描画方法は、
電子ビームを放出する工程と、
試料面上で所望の電流が得られるように電子ビームを調整する工程と、
電子ビームのエミッション電流を変えながら、設定されるカソード温度における、電子ビームが照射される試料面位置での試料面電流と、エミッション電流との間の特性グラフのデータを取得する工程と、
特性のうち所定の範囲における、前記エミッション電流に対する試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を特性から算出する工程と、
電子ビームが調整された状態の試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を算出する工程と、
電子ビームが調整された状態での傾き値が、所定の範囲の傾き値の範囲内になるようにカソードに供給されるフィラメント電力を制御してカソード温度を調整する工程と、
この傾き値が所定の範囲の傾き値の範囲内になるカソード温度に調整された電子ビームを用いて、試料にパターンを描画する工程と、
を備え、
前記所定の範囲は、前記特性のピーク位置を含む範囲であることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様の電子ビーム描画装置は、
電子ビームを放出する電子放出源と、
電子ビーム放出源から放出される電子ビームのエミッション電流を制御するエミッション電流制御部と、
電子ビームのエミッション電流を変えながら、設定されるカソード温度における、電子ビームが照射される試料面位置での試料面電流と、電子ビームのエミッション電流との間の特性グラフのデータを取得する取得部と、
特性のうち所定の範囲の試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を特性から算出する第1の傾き値算出部と、
試料面上で所望の電流が得られるように電子ビームが調整された状態における試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を算出する第2の傾き値算出部と、
電子ビームが調整された状態での傾き値が、所定の範囲の傾き値の範囲内になるようにカソードに供給されるフィラメント電力を制御してカソード温度を調整する温度調整部と、
この傾き値が所定の範囲の傾き値の範囲内になるカソード温度に調整された電子ビームを用いて、試料にパターンを描画する描画機構と、
を備え、
前記所定の範囲は、前記特性のピーク位置を含む範囲であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、電子放出源から放出される電子ビームが必要な輝度を維持しつつカソード温度を低くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
【
図2】実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板の構成を示す概念図である。
【
図3】実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構の構成を示す断面図である。
【
図4】実施の形態1における試料面電流とエミッション電流との間の特性の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図の一例である。
【
図6】実施の形態1におけるビームプロファイルの一例を示す図である。
【
図7】実施の形態1における収束角とビームサイズと焦点位置までの距離との関係を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1における特性グラフと傾き値の一例を示す図である。
【
図9】実施の形態1における傾きと設定範囲との関係の一例を示す図である。
【
図10】実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
【
図11】実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。
【
図12】実施の形態1におけるマルチビームの描画方法の一例を説明するための図である。
【
図13】実施の形態1における描画開始後の電子銃の動作制御方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態では、電子ビームとして、マルチビームを用いた構成について説明する。但し、これに限るものではなく、シングルビームを用いた構成であっても構わない。また、以下、描画装置について説明するが、熱電子放出源から放出される電子ビームを用いる装置であれば、描画装置以外の装置であっても構わない。例えば、画像取得装置、或いは検査装置等であっても構わない。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置100の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画機構150と制御系回路160を備えている。描画装置100は、マルチ電子ビーム描画装置の一例である。描画機構150は、電子鏡筒102(マルチ電子ビームカラム)と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、成形アパーチャアレイ基板203、ブランキングアパーチャアレイ機構204、縮小レンズ205、制限アパーチャ基板206、対物レンズ207、検出器108、偏向器208、及び偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象基板となるレジストが塗布されたマスクブランクス等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスク、或いは、半導体装置が製造される半導体基板(シリコンウェハ)等が含まれる。XYステージ105上には、さらに、XYステージ105の位置測定用のミラー210が配置される。XYステージ105上には、さらに、ファラディーカップ106が配置される。XYステージ105上には、さらに、マーク107が配置される。
【0017】
電子銃201(電子ビーム放出源)は、カソード222、ウェネルト224(ウェネルト電極)及びアノード226(アノード電極)を有している。また、アノード226は、接地(地絡)されている。
【0018】
制御系回路160は、制御計算機110、メモリ112、電子銃電源装置120、偏向制御回路130、デジタル・アナログ変換(DAC)アンプユニット132,134、電流検出回路136、ステージ位置検出器139、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140を有している。制御計算機110、メモリ112、電子銃電源装置120、偏向制御回路130、DACアンプユニット132,134、電流検出回路136、ステージ位置検出器139及び記憶装置140は、図示しないバスを介して互いに接続されている。偏向制御回路130には、DACアンプユニット132,134及びブランキングアパーチャアレイ機構204が接続されている。DACアンプユニット132の出力は、偏向器209に接続される。DACアンプユニット134の出力は、偏向器208に接続される。偏向器208は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ134を介して偏向制御回路130により制御される。偏向器209は、4極以上の電極により構成され、電極毎にDACアンプ132を介して偏向制御回路130により制御される。ステージ位置検出器139は、レーザ光をXYステージ105上のミラー210に照射し、ミラー210からの反射光を受光する。そして、かかる反射光の情報を使ったレーザ干渉の原理を利用してXYステージ105の位置を測定する。ファラディーカップ106の出力は、電流検出回路136に接続される。
【0019】
制御計算機110内には、電流密度J測定部52、収束角測定部54、描画データ処理部56、及び描画制御部58が配置されている。J測定部52、収束角測定部54、描画データ処理部56、及び描画制御部58といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。J測定部52、収束角測定部54、描画データ処理部56、及び描画制御部58に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0020】
電子銃電源装置120内には、制御計算機232、メモリ78、磁気ディスク装置等の記憶装置79、加速電圧電源回路236、バイアス電圧電源回路234、フィラメント電力供給回路231(フィラメント電力供給部)、及び電流計238が配置される。制御計算機232には、メモリ78、記憶装置79、加速電圧電源回路236、バイアス電圧電源回路234、フィラメント電力供給回路231、及び電流計238が、図示しないバスによって接続されている。
【0021】
制御計算機232内には、特性取得部60、傾き値算出部62、傾き値算出部64、判定部66、判定部68、判定部69、カソード温度T設定部70、エミッション電流I設定部72、バイアス電圧B制御部74、及びカソード温度T制御部76が配置されている。特性取得部60、傾き値算出部62、傾き値算出部64、判定部66、判定部68、判定部69、T設定部70、I設定部72、B制御部74、及びT制御部76といった各「~部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「~部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。特性取得部60、傾き値算出部62、傾き値算出部64、判定部66、判定部68、判定部69、T設定部70、I設定部72、B制御部74、及びT制御部76に入出力される情報および演算中の情報はメモリ78にその都度格納される。
【0022】
加速電圧電源回路236の陰極(-)側が電子鏡筒102内のカソード222の両極に接続される。加速電圧電源回路236の陽極(+)側は、直列に接続された電流計238を介して接地(グランド接続)されている。また、加速電圧電源回路236の陰極(-)は、バイアス電圧電源回路234の陽極(+)にも分岐して接続され、バイアス電圧電源回路234の陰極(-)は、カソード222とアノード226との間に配置されたウェネルト224に電気的に接続される。言い換えれば、バイアス電圧電源回路234は、加速電圧電源回路236の陰極(-)とウェネルト224との間に電気的に接続されるように配置される。そして、T制御部76によって制御されたフィラメント電力供給回路231は、かかるカソード222の両極間に電流を流してカソード222を所定の温度に加熱する。言い換えれば、フィラメント電力供給回路231は、カソード222にフィラメント電力Wを供給することになる。フィラメント電力Wとカソード温度Tは一定の関係で定義可能であり、フィラメント電力Wによって、所望のカソード温度に加熱することができる。よって、カソード温度Tは、フィラメント電力Wによって制御される。フィラメント電力Wは、カソード222の両極間に流れる電流とカソード222の両極間にフィラメント電力供給回路231によって印加した電圧の積で定義される。加速電圧電源回路236は、カソード222とアノード226間に加速電圧を印加することになる。B制御部74によって制御されたバイアス電圧電源回路234は、ウェネルト224に負のバイアス電圧を印加することになる。
【0023】
また、描画装置100の外部から描画データが入力され、記憶装置140に格納される。描画データには、通常、描画するための複数の図形パターンの情報が定義される。具体的には、図形パターン毎に、図形コード、座標、及びサイズ等が定義される。
【0024】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。
【0025】
図2は、実施の形態1における成形アパーチャアレイ基板203の構成を示す概念図である。
図2において、成形アパーチャアレイ基板203には、縦(y方向)p列×横(x方向)q列(p,q≧2)の穴(開口部)22が所定の配列ピッチでマトリクス状に形成されている。
図2では、例えば、縦横(x,y方向)に512×512列の穴22が形成される。各穴22は、共に同じ寸法形状の矩形で形成される。或いは、同じ直径の円形であっても構わない。成形アパーチャアレイ基板203(ビーム形成機構)は、マルチビーム20を形成する。具体的には、これらの複数の穴22を電子ビーム200の一部がそれぞれ通過することで、マルチビーム20が形成されることになる。また、穴22の配列の仕方は、
図2のように、縦横が格子状に配置される場合に限るものではない。例えば、縦方向(y方向)k段目の列と、k+1段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法aだけずれて配置されてもよい。同様に、縦方向(y方向)k+1段目の列と、k+2段目の列の穴同士が、横方向(x方向)に寸法bだけずれて配置されてもよい。
【0026】
図3は、実施の形態1におけるブランキングアパーチャアレイ機構204の構成を示す断面図である。ブランキングアパーチャアレイ機構204は、
図3に示すように、支持台33上にシリコン等からなる半導体基板31が配置される。基板31の中央部は、例えば裏面側から削られ、薄い膜厚hのメンブレン領域330(第1の領域)に加工されている。メンブレン領域330を取り囲む周囲は、厚い膜厚Hの外周領域332(第2の領域)となる。メンブレン領域330の上面と外周領域332の上面とは、同じ高さ位置、或いは、実質的に同じ高さ位置になるように形成される。基板31は、外周領域332の裏面で支持台33上に保持される。支持台33の中央部は開口しており、メンブレン領域330の位置は、支持台33の開口した領域に位置している。
【0027】
メンブレン領域330には、
図2に示した成形アパーチャアレイ基板203の各穴22に対応する位置にマルチビーム20のそれぞれのビームの通過用の通過孔25(開口部)が開口される。言い換えれば、基板31のメンブレン領域330には、電子線を用いたマルチビーム20のそれぞれ対応するビームが通過する複数の通過孔25がアレイ状に形成される。そして、基板31のメンブレン領域330上であって、複数の通過孔25のうち対応する通過孔25を挟んで対向する位置に2つの電極を有する複数の電極対がそれぞれ配置される。具体的には、メンブレン領域330上に、
図3に示すように、各通過孔25の近傍位置に該当する通過孔25を挟んでブランキング偏向用の制御電極24と対向電極26の組(ブランカー:ブランキング偏向器)がそれぞれ配置される。また、基板31内部であってメンブレン領域330上の各通過孔25の近傍には、各通過孔25用の制御電極24に偏向電圧を印加する制御回路41(ロジック回路)が配置される。各ビーム用の対向電極26は、グランド接続される。
【0028】
制御回路41内には、例えば、CMOSインバータ回路等の図示しないアンプ(スイッチング回路の一例)が配置される。アンプの出力線(OUT)は制御電極24に接続される。一方、対向電極26は、グランド電位が印加される。アンプの入力(IN)には、閾値電圧よりも低くなるL(low)電位(例えばグランド電位)と、閾値電圧以上となるH(high)電位(例えば、1.5V)とのいずれかが制御信号として印加される。実施の形態1では、アンプの入力(IN)にL電位が印加される状態では、アンプの出力(OUT)は正電位(Vdd)となり、対向電極26のグランド電位との電位差による電界により対応ビームを偏向し、制限アパーチャ基板206で遮蔽することでビームOFFになるように制御する。一方、アンプの入力(IN)にH電位が印加される状態(アクティブ状態)では、アンプの出力(OUT)はグランド電位となり、対向電極26のグランド電位との電位差が無くなり対応ビームを偏向しないので制限アパーチャ基板206を通過することでビームONになるように制御する。
【0029】
制御電極24と対向電極26の組は、それぞれ対応するスイッチング回路となるアンプによって切り替えられる電位によってマルチビーム20の対応ビームをそれぞれ個別にブランキング偏向する。このように、複数のブランカーが、成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22(開口部)を通過したマルチビーム20のうち、それぞれ対応するビームのブランキング偏向を行う。
【0030】
次に描画装置100における描画機構150の動作について説明する。電子銃201(電子放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により成形アパーチャアレイ基板203全体を照明する。成形アパーチャアレイ基板203には、矩形の複数の穴22(開口部)が形成され、電子ビーム200は、すべての複数の穴22が含まれる領域を照明する。複数の穴22の位置に照射された電子ビーム200の各一部が、かかる成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22をそれぞれ通過することによって、例えば矩形形状の複数の電子ビーム(マルチビーム20)が形成される。かかるマルチビーム20は、ブランキングアパーチャアレイ機構204のそれぞれ対応するブランカー(第1の偏向器:個別ブランキング機構)内を通過する。かかるブランカーは、それぞれ、個別に通過する電子ビームを偏向する(ブランキング偏向を行う)。
【0031】
ブランキングアパーチャアレイ機構204を通過したマルチビーム20は、縮小レンズ205によって、縮小され、制限アパーチャ基板206に形成された中心の穴に向かって進む。ここで、マルチビーム20のうち、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向された電子ビームは、制限アパーチャ基板206の中心の穴から位置がはずれ、制限アパーチャ基板206によって遮蔽される。一方、ブランキングアパーチャアレイ機構204のブランカーによって偏向されなかった電子ビームは、
図1に示すように制限アパーチャ基板206の中心の穴を通過する。かかる個別ブランキング機構のON/OFFによって、ブランキング制御が行われ、ビームのON/OFFが制御される。そして、ビーム毎に、ビームONになってからビームOFFになるまでに形成された、制限アパーチャ基板206を通過したビームにより、1回分のショットのビームが形成される。制限アパーチャ基板206を通過したマルチビーム20は、対物レンズ207により焦点が合わされ、所望の縮小率のパターン像となり、偏向器208,209によって、制限アパーチャ基板206を通過した各ビーム(通過したマルチビーム20全体)が同方向に一括して偏向され、各ビームの試料101上のそれぞれの照射位置に照射される。一度に照射されるマルチビーム20は、理想的には成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22の配列ピッチに上述した所望の縮小率を乗じたピッチで並ぶことになる。
【0032】
上述したように、電子ビーム200を放出する電子銃201では、カソード222の高輝度化に伴い、カソード222の動作温度が高くなっている。その結果、カソード結晶の消耗速度が速くなってきている。よって、必要な輝度を維持した上でカソード222の消耗速度(蒸発速度)をできるだけ遅くすることが望ましい。そのためには、必要な輝度が得られる範囲でカソード温度Tをできるだけ低く保つことが望ましい。
【0033】
図4は、実施の形態1における試料面電流とエミッション電流との間の特性の一例を示す図である。
図4に示すように、試料面電流とエミッション電流との間の特性にはピークが存在する。そして、かかるピーク位置は、カソード温度が高いほど、大エミッション電流側に移動する。試料面電流は、試料面101高さ位置での電子ビームの輝度を得るためのパラメータである電流密度Jに対応する値である。電子銃201は、予め設定された輝度が得られる電流密度Jになるようにエミッション電流を制御する。言い換えれば、試料面電流が、予め設定された輝度を得るための目標値になるようにエミッション電流を制御する。ピーク位置が試料面電流の目標値になる特性が得られるカソード温度が、必要な輝度を確保できる最も低温の温度となる。これよりカソード温度を低くしてしまうと試料面上で必要な輝度が得られなくなる特性になってしまう。逆に、これよりカソード温度を高くすればするほどカソードの蒸発速度が大きくなる特性になる。よって、ピーク位置が試料面電流の目標値になる特性が得られるカソード温度が理想的なカソード温度となる。従来の電子銃の動作条件の調整の仕方では、ピーク位置のエミッション電流よりも十分小さいエミッション電流で試料面電流を目標値に制御していた。その分だけカソード温度が高い状態で使用されていた。そこで、実施の形態1では、カソード温度が理想的なカソード温度に近づくように制御する。
【0034】
図5は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図の一例である。
図5において、実施の形態1における描画方法は、初期値設定工程(S102)と、ビーム調整工程(S104)と、判定工程(S106)と、カソード温度上げ処理工程(S108)と、フラグ加算工程(S110)と、特性測定工程(S112)と、所定範囲傾き値算出工程(S114)と、傾き値算出工程(S116)と、判定工程(S118)と、カソード温度下げ処理工程(S120)と、ビーム調整工程(S122)と、判定工程(S130)と、カソード温度下げ処理工程(S132)と、ビーム調整工程(S134)と、判定工程(S136)と、カソード温度上げ処理工程(S138)と、ビーム調整工程(S140)と、描画工程(S150)と、という一連の工程を実施する。
【0035】
また、実施の形態1における電子放出源の動作制御方法は、
図5の各工程のうち、初期値設定工程(S102)と、ビーム調整工程(S104)と、判定工程(S106)と、カソード温度上げ処理工程(S108)と、フラグ加算工程(S110)と、特性測定工程(S112)と、所定範囲傾き値算出工程(S114)と、傾き値算出工程(S116)と、判定工程(S118)と、カソード温度下げ処理工程(S120)と、ビーム調整工程(S122)と、判定工程(S130)と、カソード温度下げ処理工程(S132)と、ビーム調整工程(S134)と、判定工程(S136)と、カソード温度上げ処理工程(S138)と、ビーム調整工程(S140)と、を実施する。
【0036】
初期値設定工程(S102)として、エミッション電流Iの初期値、カソード温度Tの初期値、フラグ=0を設定する。具体的には、T設定部70は、カソード温度Tの初期値、及びフラグ=0を設定する。I設定部72は、エミッション電流Iの初期値を設定する。
【0037】
ビーム調整工程(S104)として、まず、初期値条件で電子銃201から電子ビーム200を放出する。以下、具体的に説明する。まず、加速電圧電源回路236が、カソード222とアノード226間に予め設定された加速電圧を印加する。そして、T制御部76によって制御されたフィラメント電力供給回路231からカソード222にカソード温度Tの初期値に対応するフィラメント電力Wを供給する。カソード温度Tは、フィラメント電力Wによって決定される。よって、制御系では、カソード温度Tをフィラメント電力Wによって制御する。かかる状態で、B制御部74によって制御されたバイアス電圧電源回路234は、電流計238で検出される電流値がエミッション電流Iの初期値になるように、ウェネルト224に印加する負のバイアス電圧を調整する。これにより、初期値条件での電子ビーム200が電子銃201から放出される。
【0038】
次に、設定されたカソード温度において電子銃201から放出される電子ビーム200が所定の条件を満たすように電子ビーム200を調整する。実施の形態1では、試料面上で所望の電流が得られるように電子ビームを調整する。具体的には、試料面上で予め設定された輝度が得られるように電子ビーム200を調整する。試料面上での輝度は、電流密度Jと収束角θとによって定義される。よって、予め設定された輝度を得るためには、電流密度Jを電流密度用の許容範囲に調整すると共に収束角を収束角用の許容範囲に調整することで実現できる。そこで、エミッション電流Iを可変にしながら、各エミッション電流Iで電流密度Jと収束角θとを測定し、電流密度Jと収束角θが共に許容範囲に入るエミッション電流Iに調整する。エミッション電流Iは、B制御部74によって制御されたバイアス電圧電源回路234によってバイアス電圧を調整することで変更できる。よって、B制御部74は、エミッション電流制御部の一例である。
【0039】
まず、マルチビーム20がファラディーカップ106に入射可能な位置にXYステージ105を移動させる。そして、電子銃201から放出された電子ビーム200から形成され、試料面上に到達したマルチビーム20の電流値をファラディーカップ106で検出する。ファラディーカップ106は、マルチビーム20全体を同時に入射してマルチビーム20全体の電流値を検出しても良いし、マルチビーム20を複数のビームアレイグループに分割して、ビームアレイグループ毎に電流を検出しても良い。検出された電流値は電流検出回路136に出力され、アナログ信号をデジタル信号に変換された後、J測定部52に出力される。電流密度J測定部52は、入力された電流値を成形アパーチャアレイ基板203の複数の穴22のうち測定されたビーム用の穴22の開口面積の合計で割ることで電流密度Jを測定できる。
【0040】
マルチビーム20の各ビームの収束角は、対物レンズ207のレンズ値を可変にしながらビームサイズを測定することで得ることができる。そのため、
【0041】
図6は、実施の形態1におけるビームプロファイルの一例を示す図である。マーク107上をマルチビーム20で走査し、反射電子を検出器108で検出することで、ビームプロファイルを得ることができる。偏向器208(或いは偏向器209)によりマルチビーム20を偏向することでマーク107上を走査すればよい。検出器108の出力は図示しない検出回路を介して収束角測定部54に出力される。また、図示しないレンズ制御回路から対物レンズ207のレンズ値(或いは焦点距離)が収束角測定部54に出力される。
【0042】
図7は、実施の形態1における収束角とビームサイズと焦点位置までの距離との関係を説明するための図である。対物レンズ207と試料101面との距離H1は装置の構造から一意に決まる。また、対物レンズ207のレンズ主面(例えば、中心高さ位置)から焦点位置までの距離H2は、対物レンズ207のレンズ値に対応する。よって、焦点位置から試料面までの距離H3(=H1-H2)を求めることができる。収束角測定部54は、焦点位置から試料面までの距離H3とビームサイズDとを用いて収束角θを算出することで収束角θを測定できる。例えば収束角θ=2tan
-1(D/(2×H3))で求めることができる。
【0043】
判定工程(S106)として、判定部66は、設定されたカソード温度で予め設定された輝度が得られるかどうかを判定する。具体的には、設定されたカソード温度で予め設定された輝度になる電流密度Jと収束角θとが得られるようにエミッション電流Iの調整ができたかどうかを判定する。エミッション電流Iの調整ができないと判定された場合には、カソード温度が低すぎるので、カソード温度上げ処理工程(S108)に進む。エミッション電流Iの調整ができると判定された場合には、カソード温度が高すぎる場合があるので特性測定工程(S112)に進む。
【0044】
カソード温度上げ処理工程(S108)として、T制御部76は、カソード温度Tを1ステップ上げるようにフィラメント電力供給回路231を制御する。フィラメント電力供給回路231は、カソード温度Tを1ステップ上げるフィラメント電力Wを供給する。カソード温度Tの1ステップあたりの変更幅は、任意で構わない。例えば、5~50℃の範囲で設定されると好適である。例えば、10℃に設定する。
【0045】
フラグ加算工程(S110)として、T制御部76は、フラグに1を加算する。フラグはカソード温度Tの属性データとして定義されると好適であるが、これに限るものではない。独立したデータとして定義してもよい。フラグの初期値がゼロなので、フラグがゼロではない値であれば、カソード温度Tの初期値が低すぎたことを示すことになる。言い換えれば、カソード温度Tが低い方から高い方に調整されることになる。
【0046】
そして、ビーム調整工程(S104)に戻り、判定工程(S106)にて、設定されたカソード温度で予め設定された輝度が得られると判定されるまで、ビーム調整工程(S104)からフラグ加算工程(S110)までを繰り返す。これにより、カソード温度不足を解消できる。
【0047】
特性測定工程(S112)として、特性取得部60は、電子ビームのエミッション電流を変えながら、電子ビームが照射される試料面位置での試料面電流と、エミッション電流との間の特性を取得する。言い換えれば、設定されたカソード温度におけるエミッション電流との間の特性を取得する。試料面電流の値は、ファラディーカップ106で検出されるマルチビーム20の電流値として得ることができる。エミッション電流の値は、電流計238で検出される電流値として得ることができる。これにより、
図4に示すような特性グラフのデータが得られる。得られた特性データは、記憶装置79に格納される。
【0048】
所定範囲傾き値算出工程(S114)として、傾き値算出部62(第1の傾き値算出部)は、特性のうち設定範囲(所定の範囲)における、エミッション電流に対する試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を特性から算出する。
【0049】
図8は、実施の形態1における特性グラフと傾き値の一例を示す図である。
図8(a)では、試料面電流とエミッション電流との間の特性グラフの一部を示している。
図8(a)の例では、特性グラフのうち、ピーク位置を含む範囲を設定範囲(実線)として示している。例えば、ピーク位置のエミッション電流を中心にピーク位置のエミッション電流の±数%~±数10%(例えば±20%)のエミッション電流の範囲を設定範囲として示している。但し、設定範囲はこれに限るものではない。例えば、ピーク位置を上限にピーク位置のエミッション電流の-数10%~-数%(例えば-40%)のエミッション電流を下限とする範囲を設定範囲(点線)にしても好適である。或いは、ピーク位置のエミッション電流よりも若干小さいエミッション電流を上限として、ピーク位置のエミッション電流の-数10%~-数%(例えば-40%)のエミッション電流を下限とする範囲を設定範囲にしても構わない。
【0050】
図8(b)は、傾き値の一例を示している。
図8(b)において縦軸に試料面電流/エミッション電流を示し、横軸にエミッション電流を示している。
図8(b)の例では、
図8(a)に示した設定範囲(実線)の試料面電流をエミッション電流で割った特性グラフの傾き値(微分値)を示している。
図8(a)に示した設定範囲では、
図8(b)に示すように特性グラフの立ち上がりの正の傾きがピークに向けて減少していき、ピーク位置でゼロになり、ピーク位置以降は立ち下がりとなり負の傾きに転じる。よって、
図8(b)の例では、設定範囲のエミッション電流の下限値での傾き値が最大値(max)となり、設定範囲のエミッション電流の上限値での傾き値が最小値(min)となる傾き値が算出される。算出された傾き値のデータは、記憶装置79に格納される。
【0051】
傾き値算出工程(S116)として、傾き値算出部64(第2の傾き値算出部)は、電子ビーム200が調整された状態の試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を算出する。具体的には、設定されたカソード温度で予め設定された輝度が得られるように電子ビーム200が調整された状態の試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を算出する。具体的には上述した特性を取得した後、判定工程(S106)にて設定されたカソード温度で予め設定された輝度が得られると判定されたエミッション電流値にエミッション電流を調整した上で、かかる状態での傾き値(微分値)を算出する。
【0052】
次に、T制御部76(温度調整部)は、電子ビームが調整された状態での傾き値が、所定の範囲の傾き値の範囲内になるようにカソード温度を調整する。言い換えれば、傾き値が、所定の範囲の傾き値の範囲内になるようにカソード温度を調整する。以下、具体的に説明する。
【0053】
判定工程(S118)として、判定部68は、予め設定された輝度が得られると判定されたビーム調整の状態での傾き値が、特性の設定範囲の傾き値の範囲内かどうかを判定する。
【0054】
図9は、実施の形態1における傾きと設定範囲との関係の一例を示す図である。
図9において、カソード温度T=T1の場合、グラフAに示すように予め設定された輝度が得られるエミッション電流値I1は、設定範囲から外れている。かかる状態では、エミッション電流値I1での傾き値は、
図8(b)に示す特性の設定範囲の傾き値の範囲内にはならない。よって、判定部68は、エミッション電流値I1での傾き値が、特性の設定範囲の傾き値の範囲内ではないと判定する。これに対して、カソード温度T=T2の場合、グラフBに示すように予め設定された輝度が得られるエミッション電流値I2は、設定範囲内にある。かかる状態では、エミッション電流値I2での傾き値は、
図8(b)に示す特性の設定範囲の傾き値の範囲内にある。よって、判定部68は、エミッション電流値I2での傾き値が、特性の設定範囲の傾き値の範囲内にあると判定する。
【0055】
傾き値が、特性の設定範囲の傾き値の範囲内ではないと判定された場合、
図9に示すようにカソード温度Tが高過ぎる状態なので、カソード温度下げ処理工程(S120)に進む。傾き値が、特性の設定範囲の傾き値の範囲内にあると判定された場合、理想状態の特性に近づいた特性が得られるカソード温度Tに調整できている。よって、カソード温度Tの調整を完了したと判断し、電子銃201の動作条件の調整を終了しても好適である。但し、実施の形態1では、カソード温度Tをさらに下げられる可能性を探るべく、判定工程(S130)に進む。
【0056】
カソード温度下げ処理工程(S120)として、T制御部76は、カソード温度Tを1ステップ下げるようにフィラメント電力供給回路231を制御する。フィラメント電力供給回路231は、カソード温度Tを1ステップ下げるフィラメント電力Wを供給する。カソード温度Tの1ステップあたりの変更幅は、1ステップ上げる場合と同様で構わない。上述したように。例えば、5~50℃の範囲で設定されると好適である。例えば、例えば、10℃に設定する。
【0057】
ビーム調整工程(S122)として、設定されたカソード温度において電子銃201から放出される電子ビーム200が所定の条件を満たすように電子ビーム200を調整する。ビーム調整工程(S122)の内容は、ビーム調整工程(S104)と同様である。ビーム調整工程(S122)が実施される場合、カソード温度Tが高過ぎる状態なので、輝度不足にはならず、予め設定された輝度が得られるエミッション電流に調整可能である。そして、特性測定工程(S112)に戻り、判定工程(S118)において予め設定された輝度が得られると判定されたビーム調整の状態での傾き値が、特性の設定範囲の傾き値の範囲内になると判定されるまで、特性測定工程(S112)からビーム調整工程(S122)までの各工程を繰り返す。
【0058】
判定工程(S130)として、判定部69は、フラグの値がゼロかどうかを判定する。フラグの値がゼロではない場合、カソード温度Tの初期値が低過ぎた状態からカソード温度Tを上げるための調整を行っていることがわかる。逆に、フラグの値がゼロである場合、カソード温度Tの初期値が高過ぎた状態からカソード温度Tを下げるための調整を行っていることがわかる。フラグの値がゼロではない場合、必要な輝度が得られる範囲で理想状態の特性に近い或いは一致した特性が得られるカソード温度Tに調整できている。よって、カソード温度Tの調整を完了したと判断し、描画工程(S150)に進む。これに対して、フラグの値がゼロである場合、カソード温度Tをさらに下げる余地があり得るのでカソード温度下げ処理工程(S132)に進む。
【0059】
カソード温度下げ処理工程(S132)として、T制御部76は、カソード温度Tを1ステップ下げるようにフィラメント電力供給回路231を制御する。カソード温度下げ処理工程(S132)の内容は、カソード温度下げ処理工程(S120)と同様である。
【0060】
ビーム調整工程(S134)として、設定されたカソード温度において電子銃201から放出される電子ビーム200が所定の条件を満たすように電子ビーム200を調整する。ビーム調整工程(S134)の内容は、ビーム調整工程(S104)と同様である。
【0061】
判定工程(S136)として、判定部66は、設定されたカソード温度で予め設定された輝度が得られるかどうかを判定する。判定工程(S136)の内容は、判定工程(S106)と同様である。設定されたカソード温度で予め設定された輝度が得られると判定された場合、カソード温度Tをさらに下げる余地があり得るので特性測定工程(S112)に戻り、判定工程(S136)にて設定されたカソード温度で予め設定された輝度が得られないと判定されるまで、特性測定工程(S112)から判定工程(S136)までの各工程を繰り返す。
【0062】
これに対して、設定されたカソード温度で予め設定された輝度が得られないと判定された場合、カソード温度を下げ過ぎているので、輝度が得られる状態に戻すためカソード温度上げ処理工程(S138)に進む。
【0063】
カソード温度上げ処理工程(S138)として、T制御部76は、カソード温度Tを1ステップ上げるようにフィラメント電力供給回路231を制御する。カソード温度上げ処理工程(S138)の内容は、カソード温度上げ処理工程(S108)と同様である。カソード温度Tを1ステップ上げることで、予め設定された輝度が得られるビーム調整ができる範囲に戻すことができると共に、傾き値が、特性の設定範囲の傾き値の範囲内にできる。
【0064】
ビーム調整工程(S140)として、設定されたカソード温度において電子銃201から放出される電子ビーム200が所定の条件を満たすように電子ビーム200を調整する。ビーム調整工程(S140)の内容は、ビーム調整工程(S104)と同様である。カソード温度Tを1ステップ上げた状態は、既にビーム調整工程(S134)にて過去にビーム調整ができているので、ここでは、過去のビーム調整ができた際の状態に戻すことと同じである。
【0065】
以上のようにして、予め設定された輝度が得られるビーム調整ができ、かつ傾き値が、特性の設定範囲の傾き値(の分布)の範囲内である中で、カソード温度Tをさらに下げるができる。言い換えれば、
図9の特性グラフBに示すように、傾き値が特性の設定範囲の傾き値の範囲内にあり、さらに理想状態の特性に近づけた特性が得られるカソード温度T(例えばT=T2)に調整できる。これにより、カソード温度Tの調整を完了したと判断し、描画工程(S150)に進む。
【0066】
描画工程(S150)として、描画データ処理部56は、記憶装置140に格納された描画データを読み出し、マルチビームで描画するための描画時間データを生成する。描画制御部58は、照射時間データを描画シーケンスに沿ってショット順に並び替える。そして、ショット順に照射時間データを偏向制御回路130に転送する。偏向制御回路130は、ブランキングアパーチャアレイ機構204にショット順にブランキング制御信号を出力すると共に、DACアンプユニット132,134にショット順に偏向制御信号を出力する。描画制御部58に制御された描画機構150は、傾き値が設定範囲(所定の範囲)の傾き値の範囲内になるカソード温度Tに調整された電子ビームを用いて、試料101にパターンを描画する。
【0067】
図10は、実施の形態1における描画動作の一例を説明するための概念図である。
図10に示すように、試料101の描画領域30は、例えば、y方向に向かって所定の幅で短冊状の複数のストライプ領域32に仮想分割される。まず、XYステージ105を移動させて、第1番目のストライプ領域32の左端、或いはさらに左側の位置に一回のマルチビーム20のショットで照射可能な照射領域34が位置するように調整し、描画が開始される。第1番目のストライプ領域32を描画する際には、XYステージ105を例えば-x方向に移動させることにより、相対的にx方向へと描画を進めていく。XYステージ105は例えば等速で連続移動させる。第1番目のストライプ領域32の描画終了後、ステージ位置を-y方向に移動させて、第2番目のストライプ領域32の右端、或いはさらに右側の位置に照射領域34が相対的にy方向に位置するように調整し、今度は、XYステージ105を例えばx方向に移動させることにより、-x方向に向かって同様に描画を行う。第3番目のストライプ領域32では、x方向に向かって描画し、第4番目のストライプ領域32では、-x方向に向かって描画するといったように、交互に向きを変えながら描画することで描画時間を短縮できる。但し、かかる交互に向きを変えながら描画する場合に限らず、各ストライプ領域32を描画する際、同じ方向に向かって描画を進めるようにしても構わない。1回のショットでは、成形アパーチャアレイ基板203の各穴22を通過することによって形成されたマルチビームによって、最大で成形アパーチャアレイ基板203に形成された複数の穴22と同数の複数のショットパターンが一度に形成される。また、
図6の例では、各ストライプ領域32を1回ずつ描画する場合を示しているが、これに限るものではない。同じ領域を複数回描画する多重描画を行っても好適である。多重描画を行う場合には、位置をずらしながら各パスのストライプ領域32を設定すると好適である。
【0068】
図11は、実施の形態1におけるマルチビームの照射領域と描画対象画素との一例を示す図である。
図11において、ストライプ領域32には、例えば、試料101面上におけるマルチビーム20のビームサイズピッチで格子状に配列される複数の制御グリッド27(設計グリッド)が設定される。例えば、10nm程度の配列ピッチにすると好適である。かかる複数の制御グリッド27が、マルチビーム20の設計上の照射位置となる。制御グリッド27の配列ピッチはビームサイズに限定されるものではなく、ビームサイズとは関係なく偏向器209の偏向位置として制御可能な任意の大きさで構成されるものでも構わない。そして、各制御グリッド27を中心とした、制御グリッド27の配列ピッチと同サイズでメッシュ状に仮想分割された複数の画素36が設定される。各画素36は、マルチビームの1つのビームあたりの照射単位領域となる。
図11の例では、試料101の描画領域が、例えばy方向に、1回のマルチビーム20の照射で照射可能な照射領域34(描画フィールド)のサイズと実質同じ幅サイズで複数のストライプ領域32に分割された場合を示している。照射領域34のx方向サイズは、マルチビーム20のx方向のビーム間ピッチにx方向のビーム数を乗じた値で定義できる。照射領域34のy方向サイズは、マルチビーム20のy方向のビーム間ピッチにy方向のビーム数を乗じた値で定義できる。なお、ストライプ領域32の幅は、これに限るものではない。照射領域34のn倍(nは1以上の整数)のサイズであると好適である。
図11の例では、例えば512×512列のマルチビームの図示を8×8列のマルチビームに省略して示している。そして、照射領域34内に、1回のマルチビーム20のショットで照射可能な複数の画素28(ビームの描画位置)が示されている。言い換えれば、隣り合う画素28間のピッチが設計上のマルチビームの各ビーム間のピッチとなる。
図11の例では、ビーム間ピッチで囲まれる領域で1つのサブ照射領域29を構成する。
図11の例では、各サブ照射領域29は、4×4画素で構成される場合を示している。
【0069】
図12は、実施の形態1におけるマルチビームの描画方法の一例を説明するための図である。
図12では、
図11で示したストライプ領域32を描画するマルチビームのうち、y方向3段目の座標(1,3),(2,3),(3,3),・・・,(512,3)の各ビームで描画するサブ照射領域29の一部を示している。
図6の例では、例えば、XYステージ105が8ビームピッチ分の距離を移動する間に4つの画素を描画(露光)する場合を示している。かかる4つの画素を描画(露光)する間、照射領域34がXYステージ105の移動によって試料101との相対位置がずれないように、偏向器208によってマルチビーム20全体を一括偏向することによって、照射領域34をXYステージ105の移動に追従させる。言い換えれば、トラッキング制御が行われる。
図6の例では、8ビームピッチ分の距離を移動する間にショット毎にy方向にビーム照射対象の画素36をシフトしながら4つの画素を描画(露光)することで1回のトラッキングサイクルを実施する場合を示している。
【0070】
具体的には、描画機構150は、当該ショットにおけるマルチビームの各ビームのそれぞれの照射時間のうちの最大照射時間Ttr内のそれぞれの制御グリッド27に対応する描画時間(照射時間、或いは露光時間)、各制御グリッド27にマルチビーム20のうちONビームのそれぞれ対応するビームを照射する。最大照射時間Ttrは、予め設定される。実際には、最大照射時間Ttrにビーム偏向のセトリング時間を加えた時間がショットサイクルとなるが、ここでは、ビーム偏向のセトリング時間を省略し、最大照射時間Ttrをショットサイクルとして示している。そして、1回のトラッキングサイクルが終了すると、トラッキング制御をリセットして、次のトラッキングサイクルの開始位置へとトラッキング位置を振り戻す。
【0071】
なお、各サブ照射領域29の右から1番目の画素列の描画は終了しているので、トラッキングリセットした後に、次回のトラッキングサイクルにおいてまず偏向器209は、各サブ照射領域29の下から1段目かつ右から2番目の画素の制御グリッド27にそれぞれ対応するビームの描画位置を合わせる(シフトする)ように偏向する。
【0072】
以上のように同じトラッキングサイクル中は偏向器208によって照射領域34を試料101に対して相対位置が同じ位置になるように制御された状態で、偏向器209によって1制御グリッド27(画素36)ずつシフトさせながら各ショットを行う。そして、トラッキングサイクルが1サイクル終了後、照射領域34のトラッキング位置を戻してから、
図10の下段に示すように、例えば1制御グリッド(1画素)ずれた位置に1回目のショット位置を合わせ、次のトラッキング制御を行いながら偏向器209によって1制御グリッド(1画素)ずつシフトさせながら各ショットを行う。ストライプ領域32の描画中、かかる動作を繰り返すことで、照射領域34a~34oといった具合に順次照射領域34の位置が移動していき、当該ストライプ領域の描画を行っていく。
【0073】
そして、試料101上のどの制御グリッド27(画素36)をマルチビームのどのビームが照射するのかは描画シーケンスによって決まる。サブ照射領域29がn×n画素の領域とすると、1回のトラッキング動作で、n制御グリッド(n画素)が描画される。次回のトラッキング動作で上述したビームとは異なるビームによって同様にn画素が描画される。このようにn回のトラッキング動作でそれぞれ異なるビームによってn画素ずつ描画されることにより、1つのn×n画素の領域内のすべての画素が描画される。マルチビームの照射領域内の他のn×n画素のサブ照射領域29についても同時期に同様の動作が実施され、同様に描画される。
【0074】
ここで、カソード222は、描画中に劣化(蒸発)が進むことがあり得る。カソード222の劣化に伴い、試料面電流とエミッション電流との間の特性が変化する。そのため、電子銃201では、設定されたカソード温度において必要な輝度が得られるようにエミッション電流が調整され続ける。その結果、使用されている状態での上述した傾き値が特性の設定範囲の傾き値の範囲から外れている場合も起こり得る。その結果、必要以上に高いカソード温度Tで電子銃201が動作している可能性もある。そこで、実施の形態1では、描画中にカソード温度Tが適正かどうかをチェックする。以下、具体的に説明する。
【0075】
図13は、実施の形態1における描画開始後の電子銃の動作制御方法の一例を示す図である。
図13において、実施の形態1における描画開始後の電子銃の動作制御方法は、判定工程(S206)と、特性測定工程(S206)と、傾き値算出工程(S210)と、傾き値算出工程(S212)と、判定工程(S214)と、という一連の工程を実施する。
【0076】
判定工程(S206)として、描画制御部58は、描画開始から所定の期間が経過したかどうかを判定する。まだ所定の期間が経過していない場合には経過するまで判定工程(S206)を繰り返す。
【0077】
特性測定工程(S206)として、所定の期間毎に、特性取得部60は、電子ビームのエミッション電流を変えながら、電子ビームが照射される試料面位置での試料面電流と、エミッション電流との間の特性を取得する。特性測定工程(S206)の内容は特性測定工程(S112)と同様である。得られた特性データは、記憶装置79に格納される。
【0078】
傾き値算出工程(S210)として、所定の期間毎に、傾き値算出部62は、特性のうち設定範囲の試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を特性測定工程(S206)にて得られた特性から算出する。所定範囲傾き値算出工程(S210)の内容は、所定範囲傾き値算出工程(S114)と同様である。算出された傾き値のデータは、記憶装置79に格納される。
【0079】
傾き値算出工程(S212)として、所定の期間毎に、傾き値算出部64は、設定されたカソード温度で予め設定された輝度が得られるように電子ビーム200が調整された状態の試料面電流をエミッション電流で割った傾き値を算出する。傾き値算出工程(S212)の内容は傾き値算出工程(S116)と同様である。
【0080】
判定工程(S214)として、所定の期間毎に、判定部68は、予め設定された輝度が得られると判定されたビーム調整の状態での傾き値が、特性の設定範囲の傾き値の範囲内かどうかを判定する。
【0081】
判定の結果、傾き値が、特性の設定範囲の傾き値の範囲内であれば描画処理を継続する。一方、傾き値が、特性の設定範囲の傾き値の範囲内から外れていた場合に、再度、傾き値が特性の設定範囲記傾き値の範囲内になるようにカソード温度を調整する。再調整の仕方は、
図5のフローチャートと同様である。
【0082】
以上のように、描画中にカソード温度Tを更新することで、描画中にカソード温度Tが高過ぎる状態になることを防止或いは低減できる。
【0083】
以上のように、実施の形態1によれば、電子銃201から放出される電子ビームが必要な輝度を維持しつつカソード温度Tを低くすることができる。
【0084】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0085】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0086】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての電子放出源の動作制御方法、電子ビーム描画方法、及び電子ビーム描画装置は、本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0087】
20 マルチビーム
22 穴
24 制御電極
25 通過孔
26 対向電極
27 制御グリッド
28 画素
29 サブ照射領域
30 描画領域
32 ストライプ領域
31 基板
33 支持台
34 照射領域
35 単位領域
36 画素
37,39 照射位置
41 制御回路
52 電流密度J測定部
54 収束角測定部
56 描画データ処理部
58 描画制御部
78 メモリ
79 記憶装置
60 特性取得部
62 傾き値算出部
64 傾き値算出部
66,68,69 判定部
70 T設定部
72 I設定部
74 B制御部
76 T制御部
100 描画装置
101 試料
102 電子鏡筒
103 描画室
105 XYステージ
106 ファラディーカップ
107 マーク
108 検出器
110 制御計算機
112 メモリ
120 電子銃電源装置
130 偏向制御回路
132,134 DACアンプユニット
136 電流検出回路
139 ステージ位置検出器
140 記憶装置
150 描画機構
160 制御系回路
200 電子ビーム
201 電子銃
202 照明レンズ
203 成形アパーチャアレイ基板
204 ブランキングアパーチャアレイ機構
205 縮小レンズ
206 制限アパーチャ基板
207 対物レンズ
208,209 偏向器
210 ミラー
222 カソード
224 ウェネルト
226 アノード
231 フィラメント電力供給回路
232 制御計算機
234 バイアス電圧電源回路
236 加速電圧電源回路
238 電流計
330 メンブレン領域
332 外周領域