(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤
(51)【国際特許分類】
G03G 9/107 20060101AFI20240911BHJP
G03G 9/113 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
G03G9/107 321
G03G9/113 351
(21)【出願番号】P 2021044299
(22)【出願日】2021-03-18
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】506334182
【氏名又は名称】DOWAエレクトロニクス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224802
【氏名又は名称】DOWA IPクリエイション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】金城 優樹
(72)【発明者】
【氏名】赤井 啓太郎
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-200669(JP,A)
【文献】特開2014-006513(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0316282(US,A1)
【文献】特開2020-144310(JP,A)
【文献】特開2016-184130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/107
G03G 9/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェライト粒子から構成されるキャリア芯材であって、
下記式(1)から算出される凸度が0.800以上0.920以下で、
残留磁化σ
rが1.0Am
2/kgを超え3.0Am
2/kg以下で
あることを特徴とするキャリア芯材。
凸度=凸包周囲長/周囲長 ・・・・・・(1)
(式中、凸包周囲長:芯材粒子の投影画像における凸部を結ぶことによって得られる長さ,周囲長:芯材粒子の投影画像の周囲長)
【請求項2】
下記式(2)から算出される円形度が0.850以上0.890以下である請求項1記載のキャリア芯材。
円形度=(ISO円面積相当径)/(周囲長円相当径)・・・・・・(2)
【請求項3】
最大高さRzが1.70μm以上2.10μm以下である請求項1又は2記載のキャリア芯材。
【請求項4】
前記フェライト粒子が、組成式(Mn
XFe
3-X)O
4(但し、0≦X<3)で表される材料を主成分とし、
Caが0.01mol%以上0.50mol%以下含有され、
Snが0.01mol%以上0.50mol%以下含有され、
ている請求項1~3のいずれかに記載のキャリア芯材。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載のキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリア。
【請求項6】
請求項5記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含む電子写真用現像剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリア芯材並びにこれを用いた電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子写真方式を用いたファクシミリやプリンター、複写機などの画像形成装置では、感光体の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて可視像化し、この可視像を用紙等に転写した後、加熱・加圧して定着させている。高画質化やカラー化の観点から、現像剤としては、キャリアとトナーとを含むいわゆる二成分現像剤が広く使用されている。
【0003】
二成分現像剤を用いた現像方式では、キャリアとトナーとが現像装置内で撹拌混合され、摩擦によってトナーが所定量まで帯電される。そして、回転する現像ローラに現像剤が供給され、現像ローラ上で磁気ブラシが形成して、磁気ブラシを介して感光体へトナーが電気的に移動して感光体上の静電潜像が可視像化される。トナー移動後のキャリアは現像ローラ上から剥離され現像装置内で再びトナーと混合される。このため、キャリアの特性として、現像ローラへの移動特性、磁気ブラシを形成する磁気特性と、所望の電荷をトナーに付与する帯電特性および繰り返し使用における耐久性などが要求される。
【0004】
このようなキャリアとして、マグネタイトや各種フェライト等の磁性粒子の表面を樹脂で被覆したものが一般に用いられている。キャリア芯材としての磁性粒子には、良好な磁気的特性と共に、トナーに対する良好な摩擦帯電特性などが要求される。このような特性を満たすキャリア芯材として種々の形状のものが提案されている。
【0005】
例えば、現像メモリ(前画像の影響が後画像に表れる現象)等の抑制を目的として、ストロンチウム(Sr)及びケイ素(Si)が特定量含有され、粒子の最大山谷深さRz及びその標準偏差σが特定範囲であるマンガン(Mn)フェライト粒子をキャリア芯材として使用することが提案されている(特許文献1)。また、特定の組成を有するキャリア芯材であって、Snが特定量含有され、飽和磁化σsが特定範囲であるキャリア芯材が提案されている(特許文献2)。そしてまたロック型氷砂糖形状及び/又は牡蠣殻形状といった形状が極端に異形化したフェライト芯材も提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-031031号公報
【文献】特開2020-144310号公報
【文献】特開2007-148452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、粒子の最大山谷深さRzを大きく、すなわち粒子表面の凹凸化を進めることによって、キャリア芯材の表面を樹脂被覆した場合にキャリア芯材の一部が表面に露出して樹脂被覆キャリアの電気抵抗が下がって現像メモリの発生はある程度抑制はされるものの、現像剤が現像ローラへくみ上げられて現像領域へ搬送される量(以下、「現像剤の搬送量」と記すことがある。)が十分でない虞がある。
【0008】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、現像メモリが抑制でき、また現像剤の搬送量の低下が生じにくいキャリア芯材を提供することにある。
【0009】
また本発明の他の目的は、長期間の使用においても安定して良好な画質画像を形成することができる電子写真現像用キャリア及び電子写真用現像剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明に係るキャリア芯材の一態様は、フェライト粒子から構成されるキャリア芯材であって、下記式(1)から算出される凸度が0.800以上0.920以下で、残留磁化σrが1.0Am2/kgを超え3.0Am2/kg以下であることを特徴とする。
凸度=凸包周囲長/周囲長 ・・・・・・(1)
(式中、凸包周囲長:芯材粒子の投影画像における凸部を結ぶことによって得られる長さ,周囲長:芯材粒子の投影画像の周囲長)
【0011】
前記構成のキャリア芯材において、下記式(2)から算出される円形度が0.850以上0.890以下であるのが好ましい。
円形度=(ISO円面積相当径)/(周囲長円相当径)・・・・・・(2)
【0012】
また前記構成のキャリア芯材において、最大高さRzが1.70μm以上2.10μm以下であるのが好ましい。
【0013】
また前記構成のキャリア芯材において、前記フェライト粒子が、組成式(MnXFe3-X)O4(但し、0≦X<3)で表される材料を主成分とし、Caが0.01mol%以上0.50mol%以下含有され、Snが0.01mol%以上0.50mol%以下含有されているのが好ましい。
【0014】
また本発明によれば、前記のいずれかに記載のキャリア芯材の表面が樹脂で被覆されていることを特徴とする電子写真現像用キャリアが提供される。
【0015】
そしてまた本発明によれば、前記記載の電子写真現像用キャリアとトナーとを含むことを特徴とする電子写真用現像剤が提供される。
【0016】
なお、本発明におけるキャリア芯材の凸度、残留磁化σr、円形度、最大高さRzは後述の実施例に記載の測定装置および測定条件で測定したものである。
【0017】
また、本明細書において「フェライト粒子」、「キャリア芯材」、「電子写真現像用キャリア」、「トナー」は、それぞれ個々の粒子の集合体(粉体)を意味するものである。そして本明細書において示す「~」は、特に断りのない限り、その前後に記載の数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るキャリア芯材によれば、現像メモリが抑制されると共に現像剤の搬送量の低下が抑制される。
【0019】
また本発明に係るキャリア芯材を含む現像剤を用いれば、長期間の使用においても安定して良好な画質画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施例1のキャリア芯材のSEM写真である。
【
図2】実施例2のキャリア芯材のSEM写真である。
【
図3】比較例22のキャリア芯材のSEM写真である。
【
図4】比較例23のキャリア芯材のSEM写真である。
【
図5】本発明に係る電子写真用現像剤を用いた現像装置の一例を示す概説図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係るキャリア芯材の大きな特徴の一つは、前記式(1)から算出される凸度が0.800以上0.920以下であることである。凸度は、キャリア芯材の粒子表面に凸部が無いほど「1.000」に近づく。キャリア芯材の凸度が0.800未満であると、キャリア芯材の粒子表面に沢山の凸部が存在するものの凸部の各々が微細化し過ぎて、キャリア芯材の粒子表面を樹脂で被覆したときに芯材の表面形状が被覆樹脂の表面に残存せず表面が滑らかになる。このため現像ローラ表面に付着したトナーの掻き取りやトナーへの帯電付与性が低下する。一方、凸度が0.920を超えるとキャリア芯材の粒子表面の凸部が少なくキャリア芯材の粒子表面を樹脂で被覆したときに被覆樹脂の表面が滑らかとなって凸度が0.800未満の場合と同様の不具合が生じる。そこで本発明ではキャリア芯材の凸度を上記範囲に定めた。より好ましいキャリア芯材の凸度のより好ましい範囲は0.890以上0.920以下である。キャリア芯材の凸度は、例えば、本焼成時の焼成温度、酸素濃度、Ca及びSnの含有量等を制御することによって調整可能である。
【0022】
本発明に係るキャリア芯材のもう一つの大きな特徴は、残留磁化σrが1.0Am2/kgを超え3.0Am2/kg以下であることである。キャリア芯材の残留磁化σrが1.0Am2/kg以下であると現像剤の搬送量が低下するおそれがある。一方、キャリア芯材の残留磁化σrが3.0Am2/kgを超えると、現像でトナーが消費された後の現像剤を現像ローラ上から剥離する際に現像ローラから現像剤を円滑に剥離できないことがある。そこで本件発明ではキャリア芯材の残留磁化σrを上記範囲に定めた。キャリア芯材残留磁化σrのより好ましい範囲は1.1Am2/kg以上2.5Am2/kg以下である。キャリア芯材の残留磁化σrは、例えば、本焼成における冷却時の酸素濃度或いは酸化処理温度等を制御することによって調整可能である。
【0023】
本発明のキャリア芯材の前記式(2)から算出される円形度は0.850以上0.890以下であるのが好ましい。円形度は、キャリア芯材の粒子の投影形状が円形になるほど「1.000」に近づく。キャリア芯材の円形度が0.850未満であると、キャリア芯材の粒子形状が歪になりすぎて粒子の割れや欠けなどの経時劣化が進みやすい。一方、キャリア芯材の円形度が0.890を超えると粒子が球形化しすぎてキャリアによる現像ローラ表面に付着したトナーの掻き取り作用やトナー搬送性の低下が生じるおそれがある。キャリア芯材の円形度は、例えば、本焼成時の焼成温度、酸素濃度、Ca及びSnの含有量等を制御することによって調整可能である。
【0024】
本発明のキャリア芯材の最大高さRzは1.70μm以上2.10μm以下であるのが好ましい。キャリア芯材の最大高さRzが1.70μm未満であると現像メモリや現像剤搬送量不足が生じるおそれがある。一方、キャリア芯材の最大高さRzが2.10μmを超えると粒子の割れや欠けが生じるおそれがある。キャリア芯材の最大高さRzのより好ましい範囲は1.74μm以上2.05μm以下である。キャリア芯材の最大高さRzは、例えば、本焼成時の焼成温度、酸素濃度、Ca及びSnの含有量等を制御することによって調整可能である。
【0025】
本発明のキャリア芯材を構成するフェライト粒子は、組成式(MnXFe3-X)O4(但し、0≦X<3)で表される材料を主成分とし、Mn(マンガン),Fe(鉄)の総mol数に対してCa(カルシウム)が0.01mol%以上0.50mol%以下含有され、Sn(スズ)が0.01mol%以上0.50mol%以下含有されているのが好ましい。CaおよびSnが上記量含有されることによってキャリア芯材の電気特性、磁気特性、形状特性を所望範囲に調整できる。Caの好ましい含有量の範囲は0.10mol%以上0.40mol%以下である。またSnの好ましい含有量の範囲は0.10mol%以上0.35mol%以下である。
【0026】
本発明のキャリア芯材の見掛け密度AD(g/cm3)は1.80以上2.80以下の範囲が好ましく、より好ましくは2.00以上2.50以下の範囲である。
【0027】
また、本発明のキャリア芯材の流動度FR(sec/50g)は20以上50以下の範囲が好ましく、より好ましくは24以上40以下の範囲である。流動度FRがこの範囲であるとキャリア芯材を構成する粒子間のストレスが小さく樹脂被覆層の摩耗が抑制される。
【0028】
本発明のキャリア芯材の体積平均粒径(D50)としては、20μm以上60μm以下の範囲が好ましく、より好ましくは25μm以上40μm以下の範囲である。また、キャリア芯材の粒径22μm以下の割合は5.0%以下が好ましく、より好ましくは1.5%以下である。本発明のキャリア芯材は、凸度が0.800以上0.920以下であり、円形度が0.850以上0.890以下と、真球とは異なる略球状の異形粒子であるにもかかわらず、凸度および円形度が前記範囲であることで篩等による粒径制御が可能となり体積平均粒径(D50)および粒径22μm以下の割合を好ましい範囲に容易に調整することができキャリア付着等を効果的に抑制することができる。
【0029】
本発明のキャリア芯材の電圧1000Vにおける電気抵抗は、5.0×105Ω以上であるのが好ましく、より好ましくは1.0×106Ω以上である。電気抵抗が5.0×105Ω以上であることによって、キャリア芯材への電荷注入が効果的に抑制されキャリア付着が抑えられる。なお、この電気抵抗値は、後述の実施例における静的電気抵抗の測定方法によるものである。
【0030】
本発明のキャリア芯材の磁気特性は次の範囲が好ましい。なお、これらの磁気特性は後述の実施例における磁気特性の測定方法によるものである。まず、飽和磁化σs(Am2/kg)は50以上90以下の範囲が好ましく70以上80以下の範囲がより好ましい。飽和磁化σsが90Am2/kgを超えると、現像ローラの外周に形成される磁気ブラシが固くなって磁気ブラシの密度が低くなり現像領域への現像剤の搬送量が不十分となるおそれがある。
【0031】
また、磁場79.58×103A/m(1,000エルステッド)を印加した際の磁化σ1k(Am2/kg)は40以上80以下の範囲が好ましく、より好ましくは50以上65以下の範囲である。また、保持力Hc(×103/(4π)A/m)は10.0以上32.0以下の範囲が好ましい。
【0032】
キャリア芯材の平均長さRSm(μm)は4.0以上10.0以下の範囲が好ましく、より好ましくは6.0以上8.0以下の範囲である。また、キャリア芯材の歪度Rskは-0.50以上0.00以下の範囲が好ましく、より好ましくは-0.30以上-0.10以下の範囲である。
【0033】
本発明に係るキャリア芯材の細孔容積PV(cm3/g)の好ましい範囲は0.002以上0.100以下の範囲であり、より好ましい範囲は0.004以上0.020以下の範囲である。細孔容積PVが大きすぎるとキャリア芯材の1粒子当たりの磁化が低下してキャリア付着などの新たな不具合が発生するおそれがある。
【0034】
本発明のキャリア芯材のBET比表面積(m2/g)は0.05以上0.50以下の範囲が好ましく、より好ましくは0.08以上0.20以下の範囲である。本発明のキャリア芯材の真密度(g/cm3)は4.20以上5.20以下の範囲が好ましく、より好ましくは4.50以上4.95以下の範囲である。
【0035】
本発明のキャリア芯材の製造方法に特に限定はないが、以下に説明する製造方法が好適である。
【0036】
まず、Fe成分原料、Mn成分原料、Ca成分原料、Sn成分原料などの成分原料、そして必要により従来公知の添加剤を秤量する。Fe成分原料としては、Fe2O3等が好適に使用される。Mn成分原料としてはMnCO3、Mn3O4等が使用できる。また、Ca成分原料としては、CaCO3、Ca(NO3)2等が好適に使用できる。Sn成分原料としては、SnO2、SnO等が使用できる。
【0037】
次いで、原料を分散媒中に投入しスラリーを作製する。本発明で使用する分散媒としては水が好適である。分散媒には、前記仮焼成原料の他、必要によりバインダー、分散剤等を配合してもよい。バインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコールが好適に使用できる。バインダーの配合量としてはスラリー中の濃度が0.1質量%~2質量%程度とするのが好ましい。また、分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウムやメタクリル酸系ポリマー等が好適に使用できる。分散剤の配合量としてはスラリー中の濃度が0.1質量%~2質量%程度とするのが好ましい。その他、カーボンブラックなどの還元剤、アンモニアなどのpH調整剤、潤滑剤、焼結促進剤等を配合してもよい。スラリーの固形分濃度は50質量%~90質量%の範囲が望ましい。より好ましくは60質量%~80質量%である。60質量%以上であれば、造粒物中に粒子内細孔が少なく、焼成時の焼結不足を防ぐことができる。
【0038】
なお、秤量した原料を混合し仮焼成し解粒した後、分散媒に投入しスラリーを作製してもよい。仮焼成の温度としては750℃~1000℃の範囲が好ましい。750℃以上であれば、仮焼成による一部フェライト化が進み、焼成時のガス発生量が少なく、固体間反応が十分に進むため、好ましい。一方、1000℃以下であれば、仮焼成による焼結が弱く、後のスラリー粉砕工程で原料を十分に粉砕できるので好ましい。また、仮焼成時の雰囲気としては大気雰囲気が好ましい。
【0039】
次に、以上のようにして作製されたスラリーを湿式粉砕する。例えば、ボールミルや振動ミルを用いて所定時間湿式粉砕する。粉砕後の原材料の平均粒径は5μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以下である。振動ミルやボールミルには、所定粒径のメディアを内在させるのがよい。メディアの材質としては、鉄系のクロム鋼や酸化物系のジルコニア、チタニア、アルミナなどが挙げられる。粉砕工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。粉砕物の粒径は、粉砕時間や回転速度、使用するメディアの材質・粒径などによって調整される。
【0040】
そして、粉砕されたスラリーを噴霧乾燥させて造粒する。具体的には、スプレードライヤーなどの噴霧乾燥機にスラリーを導入し、雰囲気中へ噴霧することによって球形に造粒する。噴霧乾燥時の雰囲気温度は100℃~300℃の範囲が好ましい。これにより、粒径10μm~200μmの球形の造粒物が得られる。次いで、必要により、得られた造粒物を振動篩を用いて分級し所定の粒径範囲の造粒物を作製する。
【0041】
次に、前記の造粒物を所定温度に加熱した炉に投入して、フェライト粒子を合成するための一般的な手法で焼成することにより、フェライト粒子を生成させる。焼成温度としては1050℃~1350℃の範囲が好ましい。より好ましくは1100℃~1300℃の範囲である。焼成温度が1050℃以下であると、相変態が起こりにくくなるとともに焼結も進みにくくなる。また、焼成温度が1350℃を超えると、過剰焼結による過大グレインの発生がするおそれがある。前記焼成温度に至るまでの昇温速度としては250℃/h~500℃/hの範囲が好ましい。焼成温度での保持時間は2時間以上が好ましい。フェライト粒子表面の凹凸は焼成工程における酸素濃度によっても調整可能である。具体的には酸素濃度を0.05%~10%とする。また、冷却時の酸素濃度を焼成時の酸素濃度よりも低くすることによって、フェライト相の酸化状態の調整を図ってもよい。具体的には酸素濃度を0.05%~21%の範囲とする。昇温・焼結・冷却における酸素濃度は0.05%~21%の範囲に制御するのが好ましい。より好ましい昇温段階での酸素濃度は0.6%~5%の範囲である。
【0042】
このようにして得られた焼成物を必要により解粒する。具体的には、例えば、ハンマーミル等によって焼成物を解粒する。解粒工程の形態としては連続式及び回分式のいずれであってもよい。また解粒処理後、必要により、粒径を所定範囲に揃えるため分級を行ってもよい。分級方法としては、風力分級や篩分級など従来公知の方法を用いることができる。また、風力分級機で1次分級した後、振動篩や超音波篩で粒径を所定範囲に揃えるようにしてもよい。さらに、分級工程後に、磁場選鉱機によって非磁性粒子を除去するようにしてもよい。フェライト粒子の粒径としては25μm以上50μm未満が好ましい。
【0043】
その後、必要に応じて、分級後のフェライト粒子を酸化性雰囲気中で加熱して、粒子表面に酸化被膜を形成してフェライト粒子の高抵抗化を図ってもよい(高抵抗化処理)。酸化性雰囲気としては大気雰囲気又は酸素と窒素の混合雰囲気のいずれでもよい。
【0044】
以上のようにして作製したフェライト粒子を本発明のキャリア芯材として用いる。そして、所望の帯電性等を得るために、キャリア芯材の外周を樹脂で被覆して電子写真現像用キャリアとする。
【0045】
キャリア芯材の表面を被覆する樹脂としては、従来公知のものが使用でき、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ-4-メチルペンテン-1、ポリ塩化ビニリデン、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)樹脂、ポリスチレン、(メタ)アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、並びにポリ塩化ビニル系やポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、フッ素シリコーン系樹脂などが挙げられる。
【0046】
キャリア芯材の表面を樹脂で被覆するには、樹脂の溶液又は分散液をキャリア芯材に施せばよい。塗布溶液用の溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル類溶媒;エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒などの1種又は2種以上を用いることができる。塗布溶液中の樹脂成分濃度は、一般に0.001質量%以上30質量%以下、特に0.001質量%以上2質量%以下の範囲内にあるのがよい。
【0047】
キャリア芯材への樹脂の被覆方法としては、例えばスプレードライ法や流動床法あるいは流動床を用いたスプレードライ法、浸漬法等を用いることができる。これらの中でも、少ない樹脂量で効率的に塗布できる点で流動床法が特に好ましい。樹脂被覆量は、例えば流動床法の場合には吹き付ける樹脂溶液量や吹き付け時間によって調整することができる。
【0048】
キャリアの粒子径は、一般に、体積平均粒子径で25μm以上50μm未満の範囲、特に25μm以上40μm以下の範囲が好ましい。
【0049】
本発明に係る電子写真用現像剤は、以上のようにして作製したキャリアとトナーとを混合してなる。キャリアとトナーとの混合比に特に限定はなく、使用する現像装置の現像条件などから適宜決定すればよい。一般に現像剤中のトナー濃度は1質量%以上15質量%以下の範囲が好ましい。トナー濃度が1質量%未満の場合、画像濃度が薄くなりすぎ、他方トナー濃度が15質量%を超える場合、現像装置内でトナー飛散が発生し機内汚れや転写紙などの背景部分にトナーが付着する不具合が生じるおそれがあるからである。より好ましいトナー濃度は3質量%以上10質量%以下の範囲である。
【0050】
トナーとしては、重合法、粉砕分級法、溶融造粒法、スプレー造粒法など従来公知の方法で製造したものが使用できる。具体的には、熱可塑性樹脂を主成分とする結着樹脂中に、着色剤、離型剤、帯電制御剤等を含有させたものが好適に使用できる。
【0051】
トナーの粒径は、一般に、コールターカウンターによる体積平均粒径で5μm以上15μm以下の範囲が好ましく、7μm以上12μm以下の範囲がより好ましい。
【0052】
トナー表面には、必要により、改質剤を添加してもよい。改質剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、ポリメチルメタクリレート等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0053】
キャリアとトナーとの混合は、従来公知の混合装置を用いることができる。例えばヘンシェルミキサー、V型混合機、タンブラーミキサー、ハイブリタイザー等を用いることができる。
【0054】
本発明の現像剤を用いた現像方法に特に限定はないが、磁気ブラシ現像法が好適である。
図5に、磁気ブラシ現像を行う現像装置の一例を示す概説図を示す。
図5に示す現像装置は、複数の磁極を内蔵した回転自在の現像ローラ3と、現像部へ搬送される現像ローラ3上の現像剤量を規制する規制ブレード6と、水平方向に平行に配置され、互いに逆向きに現像剤を撹拌搬送する2本のスクリュー1,2と、2本のスクリュー1,2の間に形成され、両スクリューの両端部において、一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤の移動を可能とし、両端部以外での現像剤の移動を防ぐ仕切板4とを備える。
【0055】
2本のスクリュー1,2は、螺旋状の羽根13,23が同じ傾斜角で軸部11,21に形成されたものであって、不図示の駆動機構によって同方向に回転し、現像剤を互いに逆方向に搬送する。そして、スクリュー1,2の両端部において一方のスクリューから他方のスクリューに現像剤が移動する。これによりトナーとキャリアからなる現像剤は装置内を常に循環し撹拌されることになる。
【0056】
一方、現像ローラ3は、表面に数μmの凹凸を付けた金属製の筒状体の内部に、磁極発生手段として、現像磁極N1、搬送磁極S1、剥離磁極N2、汲み上げ磁極N3、ブレード磁極S2の5つの磁極を順に配置した固定磁石を有してなる。現像ローラ3の筒状体が矢印方向に回転すると、汲み上げ磁極N3の磁力によって、スクリュー1から現像ローラ3へ現像剤が汲み上げられる。現像ローラ3の表面に担持された現像剤は、規制ブレード6により層規制された後、現像領域へ搬送される。
【0057】
現像領域では、直流電圧に交流電圧を重畳したバイアス電圧が転写電圧電源8から現像ローラ3に印加される。バイアス電圧の直流電圧成分は、感光体ドラム5表面の背景部電位と画像部電位との間の電位とされる。また、背景部電位と画像部電位とは、バイアス電圧の最大値と最小値との間の電位とされる。バイアス電圧のピーク間電圧は0.5kV~5kVの範囲が好ましく、周波数は1kHz~10kHzの範囲が好ましい。またバイアス電圧の波形は矩形波、サイン波、三角波などいずれであってもよい。これによって、現像領域においてトナー及びキャリアが振動し、トナーが感光体ドラム5上の静電潜像に付着して現像がなされる。
【0058】
その後現像ローラ3上の現像剤は、搬送磁極S1によって装置内部に搬送され、剥離電極N2によって現像ローラ3から剥離して、スクリュー1,2によって装置内を再び循環搬送され、現像に供していない現像剤と混合撹拌される。そして汲み上げ極N3によって、新たに現像剤がスクリュー1から現像ローラ3へ供給される。
【0059】
なお、
図5に示した実施形態では現像ローラ3に内蔵された磁極は5つであったが、現像剤の現像領域での移動量を一層大きくしたり、汲み上げ性等を一層向上させるために、磁極を8極や10極、12極と増やしてももちろん構わない。
【実施例】
【0060】
実施例1
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)43.35kg、Mn
3O
4(平均粒径:3.4μm)20.52kg、CaCO
3(平均粒径:0.6μm)244g、SnO
2(平均粒径:5.6μm)293gを純水21.75kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを191.6g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を389.6g、pH調整剤としてアンモニア水を45.5g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径3mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約210℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で5.5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~1.0%で2.5時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で5.5時間かけて冷却した。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径35.5μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度465℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例1に係るキャリア芯材を得た。
得られたキャリア芯材の見かけ密度、流動度、体積平均粒子径(平均粒径)、磁気特性、細孔容積、BET比表面積、静的抵抗、円形度、凸度を下記に示す方法で測定した。また、以下の実施例及び比較例に係るキャリア芯材についても同様の方法で測定した。
図1に実施例1のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0061】
実施例2
原料として、Fe
2O
3(平均粒径:0.6μm)43.36kg、Mn
3O
4(平均粒径:3.4μm)17.72kg、CaCO
3(平均粒径:0.6μm)233g、SnO
2(平均粒径:5.6μm)280gを純水20.84kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを164.9g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を447.1g、pH調整剤としてアンモニア水を43.5g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径35μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度480℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例2に係るキャリア芯材を得た。
図2に実施例2のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0062】
実施例3
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)43.35kg、Mn3O4(平均粒径:3.4μm)20.52kg、CaCO3(平均粒径:0.6μm)244g、SnO2(平均粒径:5.6μm)293gを純水21.75kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを191.6g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を389.6g、pH調整剤としてアンモニア水を45.5g添加して混合物とした以外は、実施例2と同様にして体積平均径36.0μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例3に係るキャリア芯材を得た。
【0063】
実施例4
実施例3と同様にして体積平均径36.0μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度480℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例4に係るキャリア芯材を得た。
【0064】
実施例5
1270℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った以外は、実施例3と同様にして体積平均径35.3μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度440℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例5に係るキャリア芯材を得た。
【0065】
実施例6
実施例5と同様にして体積平均径35.3μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例6に係るキャリア芯材を得た。
【0066】
実施例7
実施例5と同様にして体積平均径35.3μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度480℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例7に係るキャリア芯材を得た。
【0067】
実施例8
1250℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った以外は、実施例3と同様にして体積平均径35.4μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度440℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例8に係るキャリア芯材を得た。
【0068】
実施例9
実施例8と同様にして体積平均径35.4μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例9に係るキャリア芯材を得た。
【0069】
実施例10
実施例8と同様にして体積平均径35.4μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度480℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例10に係るキャリア芯材を得た。
【0070】
実施例11
1230℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った以外は、実施例3と同様にして体積平均径35.9μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度440℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例11に係るキャリア芯材を得た。
【0071】
実施例12
実施例11と同様にして体積平均径35.4μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例12に係るキャリア芯材を得た。
【0072】
実施例13
実施例11と同様にして体積平均径35.4μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度480℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例13に係るキャリア芯材を得た。
【0073】
実施例14
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)43.35kg、Mn3O4(平均粒径:3.4μm)20.52kg、CaCO3(平均粒径:0.6μm)244g、SnO2(平均粒径:5.6μm)293gを純水21.75kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを191.6g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を389.6g、pH調整剤としてアンモニア水を45.5g添加して混合物としたとした以外は、実施例2と同様にして体積平均粒径35.5μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例14に係るキャリア芯材を得た。
【0074】
実施例15
実施例14と同様にして体積平均径35.5μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度480℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例15に係るキャリア芯材を得た。
【0075】
実施例16
1270℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った以外は、実施例14と同様にして体積平均径35.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度440℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例16に係るキャリア芯材を得た。
【0076】
実施例17
実施例16と同様にして体積平均径35.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例17に係るキャリア芯材を得た。
【0077】
実施例18
実施例16と同様にして体積平均径35.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度480℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例18に係るキャリア芯材を得た。
【0078】
実施例19
1250℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った以外は、実施例14と同様にして体積平均径36.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度440℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例19に係るキャリア芯材を得た。
【0079】
実施例20
実施例19と同様にして体積平均径36.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例20に係るキャリア芯材を得た。
【0080】
実施例21
実施例19と同様にして体積平均径36.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度480℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例21に係るキャリア芯材を得た。
【0081】
実施例22
1230℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った以外は、実施例14と同様にして体積平均径35.8μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度440℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例22に係るキャリア芯材を得た。
図3に比較例22のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0082】
実施例23
実施例20と同様にして体積平均径35.8μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例23に係るキャリア芯材を得た。
図4に比較例23のキャリア芯材のSEM写真を示す。
【0083】
実施例24
実施例20と同様にして体積平均径35.8μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度480℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、実施例24に係るキャリア芯材を得た。
【0084】
比較例1
実施例3と同様にして体積平均径36.0μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、酸化処理は施さず、比較例1に係るキャリア芯材を得た。
【0085】
比較例2
実施例3と同様にして体積平均径36.0μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度420℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例2に係るキャリア芯材を得た。
【0086】
比較例3
実施例3と同様にして体積平均径36.0μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度440℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例3に係るキャリア芯材を得た。
【0087】
比較例4
実施例5と同様にして体積平均径35.3μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、酸化処理は施さず、比較例4に係るキャリア芯材を得た。
【0088】
比較例5
実施例5と同様にして体積平均径35.3μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度420℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例5に係るキャリア芯材を得た。
【0089】
比較例6
実施例8と同様にして体積平均径35.4μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、酸化処理は施さず、比較例6に係るキャリア芯材を得た。
【0090】
比較例7
実施例8と同様にして体積平均径35.4μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度420℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例7に係るキャリア芯材を得た。
【0091】
比較例8
実施例11と同様にして体積平均径35.9μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、酸化処理は施さず、比較例8に係るキャリア芯材を得た。
【0092】
比較例9
実施例11と同様にして体積平均径35.9μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度420℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例9に係るキャリア芯材を得た。
【0093】
比較例10
実施例14と同様にして体積平均径35.5μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、酸化処理は施さず、比較例10に係るキャリア芯材を得た。
【0094】
比較例11
実施例14と同様にして体積平均径35.5μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度420℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例11に係るキャリア芯材を得た。
【0095】
比較例12
実施例14と同様にして体積平均径35.5μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度440℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例12に係るキャリア芯材を得た。
【0096】
比較例13
実施例16と同様にして体積平均径35.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、酸化処理は施さず、比較例13に係るキャリア芯材を得た。
【0097】
比較例14
実施例14と同様にして体積平均径35.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度420℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例14に係るキャリア芯材を得た。
【0098】
比較例15
実施例19と同様にして体積平均径36.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、酸化処理は施さず、比較例15に係るキャリア芯材を得た。
【0099】
比較例16
実施例19と同様にして体積平均径36.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度420℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例16に係るキャリア芯材を得た。
【0100】
比較例17
実施例22と同様にして体積平均径35.8μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、酸化処理は施さず、比較例17に係るキャリア芯材を得た。
【0101】
比較例18
実施例22と同様にして体積平均径35.8μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度420℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例18に係るキャリア芯材を得た。
【0102】
比較例19
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)23.95kg、Mn3O4(平均粒径:3.4μm)8.98kgを純水11.32kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを99.83g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を199.7g、pH調整剤としてアンモニア水を23.1g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径35.7μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度400℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例19に係るキャリア芯材を得た。
【0103】
比較例20
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)23.23kg、Mn3O4(平均粒径:3.4μm)8.71kg、CaCO3(平均粒径:0.6μm)108gを純水10.82kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを95.8g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を194.8g、pH調整剤としてアンモニア水を22.6g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径36.0μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例20に係るキャリア芯材を得た。
【0104】
比較例21
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)23.23kg、Mn3O4(平均粒径:3.4μm)8.71kg、CaCO3(平均粒径:0.6μm)108g、SnO2(平均粒径:5.6μm)130gを純水10.82kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを95.8g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を194.8g、pH調整剤としてアンモニア水を22.7g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約140℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した。
得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径35.3μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度460℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例21に係るキャリア芯材を得た。
【0105】
比較例22
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)14.52kg、Mn3O4(平均粒径:3.4μm)5.44kg、SrCO3(平均粒径:0.6μm)111g、SnO2(平均粒径:5.6μm)91gを純水6.9kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを60,5g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を121g、pH調整剤としてアンモニア水を14g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径3mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約210℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で4.5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.5%で6時間かけて冷却した。得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径35.6μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度480℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例22に係るキャリア芯材を得た。
【0106】
比較例23
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)14.52kg、Mn3O4(平均粒径:3.4μm)5.44kg、SrCO3(平均粒径:0.6μm)111g、SnO2(平均粒径:5.6μm)91gを純水6.9kg中に分散し、還元剤としてカーボンブラックを60,5g、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を121g、pH調整剤としてアンモニア水を14g添加して混合物とした。この混合物を湿式ボールミル(メディア径3mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約210℃の熱風中に噴霧し、粒径10μm~75μmの乾燥造粒物を得た。この造粒物から粒径25μm以下の微小な粒子は篩を用いて除去した。
この造粒物を、電気炉に投入し1300℃まで酸素濃度1.0%で4.5時間かけて昇温した。その後1300℃で酸素濃度0.4%~1.0%で3時間保持することにより焼成を行った。その後、酸素濃度0.4%で6時間かけて冷却した。得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径36.5μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度400℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例23に係るキャリア芯材を得た。
【0107】
比較例24
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)20.80kg、Mn3O4(平均粒径:3μm)8.12kgを水11.50kg中に分散し、ポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を180.0g、pH調整剤としてアンモニア水を10.0g、還元剤としてカーボンブラックを63.0g添加し、湿式ボールミル(メディア径2mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約210℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は篩により除去した。
この造粒粉を、電気焼成炉に投入し、温度1200℃で保持時間2.5時間として、本焼成を行った。その後酸素濃度1.30%で5.5時間かけて冷却した。得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径34.0μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度410℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例24に係るキャリア芯材を得た。
【0108】
比較例25
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)28.94kg、Mn3O4(平均粒径:2μm)11.30kg、CaCO3(平均粒径:0.6μm)264gを水13.71kg中に分散し、ポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を250.8g、還元剤としてカーボンブラックを111.6g添加し、湿式ボールミル(メディア径3mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約210℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は篩により除去した。
この造粒粉を、電気焼成炉に投入し、温度1150℃で保持時間2.5時間として、本焼成を行った。その後酸素濃度0.50%で5.5時間かけて冷却した。得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径34.3μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度445℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例25に係るキャリア芯材を得た。
【0109】
比較例26
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)15.00kg、Mn3O4(平均粒径:2μm)5.86kgを水5.22kg中に分散し、ポリカルボン酸アンモニウム系分散剤を129.8g、SrCO3(平均粒径:0.6μm)170.0gを添加し、湿式ボールミル(メディア径3mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約210℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は篩により除去した。
この造粒粉を、電気焼成炉に投入し、温度1225℃で保持時間2.5時間として、本焼成を行った。その後酸素濃度0.35%で5.5時間かけて冷却した。得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径35.6μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度500℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し、比較例26に係るキャリア芯材を得た。
【0110】
比較例27
原料として、Fe2O3(平均粒径:0.6μm)14.34kg、Mn3O4(平均粒径:2μm)4.62kg、MgO 1.04kgを混合した。この混合物をローラーコンパクターでペレット化した。得られたペレットを大気雰囲気の条件下、850℃にてロータリー式の焼成炉で仮焼成を行った。乾式ビーズミルで6時間粉砕し、仮焼成粉を得た。得られた仮焼成粉を水7.12kg中に分散し、CaCO3を149.5g、メタクリル酸系ポリマー21%含有水溶液を219.7g添加し、湿式ボールミル(メディア径3mm)により粉砕処理し、混合スラリーを得た。このスラリーにおける固形分濃度は73.5%、スラリー中の原料の累積分布50%粒径D50は1.5μm、累積分布90%粒径D90は5.3μmであった。
この混合スラリーをスプレードライヤーにて約210℃の熱風中に噴霧し、乾燥造粒粉を得た。なお、このとき、目的の粒度分布以外の造粒粉は篩により除去した。
この造粒粉を、電気焼成炉に投入し、温度1250℃で保持時間3時間として、本焼成を行った。その後酸素濃度0.75%で6時間かけて冷却した。得られた焼成物をハンマーミル(三庄インダストリー社製「ハンマークラッシャーNH-34S」,スクリーン目開き:0.3mm)で解粒、振動篩を用いて分級し体積平均粒径35.2μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、酸化処理は施さず、比較例27に係るキャリア芯材を得た。
【0111】
比較例28
比較例27と同様にして体積平均径35.8μmの焼成粒子を得た。得られた焼成粒子に対して、温度360℃、大気下で1時間保持することにより酸化処理を施し比較例28に係るキャリア芯材を得た。
【0112】
(見掛け密度)
キャリア芯材の見掛け密度はJIS Z 2504に準拠して測定した。
【0113】
(流動度)
キャリア芯材の流動度はJIS Z 2502に準拠して測定した。
【0114】
(体積平均粒子径(平均粒径)及び粒径22μm以下の割合)
キャリア芯材の体積平均粒子径及び粒径22μm以下の割合は、レーザー回折式粒度分布測定装置(日機装社製「マイクロトラックModel9320-X100」)を用いて測定した。
【0115】
(磁気特性)
室温専用振動試料型磁力計(VSM)(東英工業社製「VSM-P7」)を用いて、外部磁場を0~79.58×104A/m(10000エルステッド)の範囲で1サイクル連続的に印加して、飽和磁化σs、残留磁化σr、保磁力Hc及び79.58×103A/m(1000エルステッド)の磁場における磁化σ1k(Am2/kg)をそれぞれ測定した。
【0116】
(静的電気抵抗)
電極として表面を電解研磨した板厚2mmの真鍮板2枚を電極間距離が2mmとなるように配置し、2枚の電極板の間の空隙にキャリア芯材200mgを装入したのち、それぞれの電極板の背後に断面積240mm2の磁石を配置して電極間に被測定粉体のブリッジを形成させた状態で電極間に100V、500V、1000Vの直流電圧を印加し、キャリア芯材を流れる電流値を4端子法により測定し、抵抗値を得た。
【0117】
(細孔容積)
評価装置は、Quantachrome社製のPOREMASTER-60GTを使用した。具体的には、測定条件としては、
Cell Stem Volume:0.5ml、
Headpressure:20PSIA、
水銀の表面張力:485.00erg/cm2、
水銀の接触角:130.00degrees、
高圧測定モード:Fixed Rate、
Moter Speed:1、
高圧測定レンジ:20.00~10000.00PSI
とし、サンプル1.500gを秤量して0.5ml(cc)のセルに充填して測定を行った。また、10000PSI時の容積B(ml/g)から60PSI時の容積A(ml/g)を差し引いた値を、細孔容積とした。
【0118】
(BET比表面積)
BET一点法比表面積測定装置(「Macsorb HM model-1208」マウンテック社製)を用いて、サンプル8.500gを容積5mLのセルに充填し、200℃で30分間脱気して測定した。
【0119】
(真密度)
キャリア芯材の真密度は、Quantachrome社製、「ULTRA PYCNOMETER 1000」を用いて測定を行った。
【0120】
(最大山谷深さRz、平均長さRSmの測定方法)
超深度カラー3D形状測定顕微鏡(「VK-X100」株式会社キーエンス製)を用い、100倍対物レンズで表面を観察して求めた。具体的には、まず、表面の平坦な粘着テープにキャリア芯材を固定し、100倍対物レンズで測定視野を決定した後、オートフォーカス機能を用いて焦点を粘着テープ面に調整した。キャリア芯材を固定した平坦な粘着テープ面に対し、垂直方向(Z方向)からレーザー光線を照射し、面のX方向Y方向に走査した。また、表面からの反射光の強度が最大となった時のレンズの高さ位置をつなぎ合わせることでZ方向のデータを取得した。これらX、YおよびZ方向の位置データをつなぎ合わせキャリア芯材表面の3次元形状を得た。なお、キャリア芯材表面の3次元形状の取り込みにはオート撮影機能を用いた。
各パラメータの測定には、粒子粗さ検査ソフトウェア(三谷商事製)を用いて行った。まず、前処理として、得られたキャリア芯材表面の3次元形状の粒子認識と形状選別を行った。粒子認識は以下の方法で行った。撮影によって得られた3次元形状のうち、Z方向の最大値を100%、最小値を0%として最大値から最小値までの間を100等分する。この100~35%にあたる領域を抽出し、独立した領域の輪郭を粒子輪郭として認識した。次に形状選別で粗大、微小、会合などの粒子を除外した。この形状選別を行うことで以降に行う極率補正時の誤差を小さくすることができる。具体的には面積相当径28μm以下、38μm以上、針状比1.15以上に該当する粒子を除外した。ここで針状比とは粒子の最大長/対角幅の比から算出したパラメータであり、対角幅とは最大長に平行な2本の直線で粒子を挟んだときの2直線の最短距離を表す。
つぎに表面の3次元形状から解析に用いる部分の取り出しを行った。まず上記の方法で認識した粒子輪郭から求められる重心を中心として一辺の長さが15.0μmの正方形を描く。描いた正方形の中に21本の平行線を引き、その線分上にあたる粗さ曲線を21本分取り出した。
【0121】
キャリア芯材は略球形状であるため、取り出した粗さ曲線は、バックグラウンドとして一定の曲率を持っている。このため、バックグラウンドの補正として、最適な二次曲線をフィッティングし、粗さ曲線から差し引く補正を行った。この場合、ローパスフィルターを1.5μmの強度で適用し、カットオフ値λを80μmとした。
【0122】
最大山谷深さRzは、粗さ曲線の中で最も高い山の高さと最も深い谷の深さの和として求めた。最大高さRzの算出には、各パラメータの平均値として、50粒子の平均値を用いることとした。
【0123】
平均長さRSmは、粗さ曲線のうち、谷と山の組み合わせを一つの要素と規定し、それぞれの要素の長さを平均したものである。平均長さRSmの算出には、各パラメーターの平均値として、50粒子の平均値を用いることとした。
【0124】
以上説明した最大高さRz、平均長さRSmの測定は、JIS B0601(2001年度版)に準拠して行われるものである。
【0125】
(歪度Rsk)
歪度Rskについては、粗さ曲線を以下の数1に示す式にあてはめて算出した。
【0126】
【0127】
ここで、数1の式中、Rnは、基準長さ15μmにおけるn番目の山または谷の平均線との差異を示し、二乗平均平方根高さRqは以下の数2に示す式によって求められる。
【0128】
【0129】
ここで、得られた歪度Rskは、その値が大きいほど、谷に位置する領域に偏ることを示すものである。
【0130】
(円形度(平均ISO Circulariy))
評価装置は、注入型画像解析粒度分布計(ジャスコインタナショナル株式会社、型式:IF-3200)を使用した。具体的には、サンプルは0.07gを秤量して、ポリエチレングリコール400を9ml投入したスクリュー管瓶(容量9ml)中で分散後に測定を行った。
(測定条件)
スペーサー厚:150μm
サンプリング:20%
解析タイプ:相対測定
測定量:0.95ml
解析:ダーク検出
閾値:169(穴を埋める)
O-Roughnessフィルター:0.5
フィルター条件:
ISO Area Diametere:最小値33、最大値37、内側の範囲
(解析条件)
解析フィルター条件I:
ISO Circulariy:最小値0.81、最大値0.87、内側の範囲
解析フィルター条件Iで解析して平均ISO Circularityを求めた。
【0131】
(凸度(平均Convexity))
評価装置は、注入型画像解析粒度分布計(ジャスコインタナショナル株式会社、型式:IF-3200)を使用した。具体的には、サンプルは0.07gを秤量して、ポリエチレングリコール400を9ml投入したスクリュー管瓶(容量9ml)中で分散後に測定を行った。
(測定条件)
スペーサー厚:150μm
サンプリング:20%
解析タイプ:相対測定
測定量:0.95ml
解析:ダーク検出
閾値:169(穴を埋める)
O-Roughnessフィルター:0.5
フィルター条件:
ISO Area Diametere:最小値5、最大値100、内側の範囲
(解析条件)
解析フィルター条件II:
Convexity:最小値0、最大値0.93、内側の範囲
解析フィルター条件IIで解析して平均Convexityを求めた。
【0132】
(現像メモリ)
得られたキャリア芯材の表面を樹脂で被覆してキャリアを作製した。具体的には、シリコーン樹脂450質量部と、(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン9質量部とを、溶媒としてのトルエン450質量部に溶解してコート溶液を作製した。このコート溶液を、流動床型コーティング装置を用いてキャリア芯材50000質量部に塗布し、温度300℃の電気炉で加熱してキャリアを得た。以下、全ての実施例、比較例についても同様にしてキャリアを得た。
得られたキャリアと平均粒径5.0μm程度のトナーとを、ポットミルを用いて所定時間混合し、二成分系の電子写真現像剤を得た。この場合、キャリアとトナーとをトナーの重量/(トナーおよびキャリアの重量)=5/100となるように調整した。以下、全ての実施例、比較例についても同様にして現像剤を得た。得られた現像剤を、
図5に示す構造の現像装置(現像ローラの周速度Vs:406mm/sec,感光体ドラムの周速度Vp:205mm/sec,感光体ドラム-現像ローラ間距離:0.3mm)に投入し、感光体ドラムの長手方向にベタ画像部と非画像部とが隣り合い、その後は広い面積の中間調が続く画像を初期と20万枚画像形成後に取得し、現像ローラ2周目の現像ローラ1周目のベタ画像が現像された領域とそうでない領域との画像濃度を反射濃度計(東京電色社製の型番TC-6D)を用いて測定し、その差を求め下記基準で評価した。
「○」:0.006未満
「△」:0.006以上0.020未満
「×」:0.020以上
【0133】
(搬送量)
小型現像装置(ローラ径:16mm、溝形ローラ、非磁性規制板ギャップ0.6mm)に、作成した二成分現像剤を80g投入し、ローラ回転数250rpmで3分間撹拌した後、現像ローラに横4cm縦1cmで両端円形にくりぬいた面積3.785cm2のパッチをあて、フィルター付き吸引装置を用いてパッチ内の現像剤を吸引してフィルターに回収した。回収前後でのフィルターの重量を測定し、フィルターの重量差を求め、下記式から単位面積当たりの搬送量を算出した。
(現像剤搬送量)÷3.785cm2 = 単位面積当たりの搬送量
「〇」:50mg/□cm2以上
「×」:50mg/□cm2未満
【0134】
【0135】
表1に示されるように、実施例1~24のキャリアを用いた現像剤では、現像メモリは抑制され、また現像剤の搬送量も良好であった。
【0136】
これに対して、残留磁化σrが1.0Am2/kg以下である比較例1~28のキャリアを用いた現像剤では現像剤の搬送量の量が少なかった。また、最大高さRzが1.70μm未満でもあった比較例24,25,27,28のキャリアを用いた現像剤では現像メモリも発生した。そしてまた、最大高さRzが2.27μmと大きかった比較例23のキャリアを用いた現像剤でも現像メモリが発生した。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明に係るキャリア芯材によれば、現像メモリが抑制されると共に現像剤の搬送量の低下が抑制される。
【符号の説明】
【0138】
3 現像ローラ
5 感光体ドラム