(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-10
(45)【発行日】2024-09-19
(54)【発明の名称】ゴム基材の表面極性の改質方法
(51)【国際特許分類】
C08J 7/12 20060101AFI20240911BHJP
C09J 5/02 20060101ALI20240911BHJP
C09J 1/00 20060101ALI20240911BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20240911BHJP
C09J 183/04 20060101ALI20240911BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240911BHJP
C08J 5/12 20060101ALI20240911BHJP
【FI】
C08J7/12 A CEQ
C09J5/02
C09J1/00
C09J11/04
C09J183/04
C09J175/04
C08J5/12
(21)【出願番号】P 2021557757
(86)(22)【出願日】2020-03-23
(86)【国際出願番号】 EP2020057906
(87)【国際公開番号】W WO2020200857
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-22
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100104592
【氏名又は名称】森住 憲一
(72)【発明者】
【氏名】モネージ,アレッシオ
(72)【発明者】
【氏名】サルモイラーギ,エレオノーラ
(72)【発明者】
【氏名】シニョリーレ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ザッファローニ,ジョルジョ
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開昭53-117080(JP,A)
【文献】特開2002-069389(JP,A)
【文献】特開平02-084310(JP,A)
【文献】米国特許第04994222(US,A)
【文献】特開昭62-041232(JP,A)
【文献】米国特許第05330601(US,A)
【文献】特表2009-543675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0000942(US,A1)
【文献】M.Virtudes Navarro-Banon et al,Water-based chlorination treatment of SBS rubber soles to improve their adhesion to waterbone polyurethane adhesives in the footwear industry,Journal of Adhesion Science and Technology,2005年01月01日,Vol. 19, No. 11,947-974
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/00-7/02;7/12-7/18
C08J 5/00-5/02;5/12-5/22
B29C 65/00-65/82
C09J 1/00- 5/10
C09J 9/00-201/10
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)塩化物(Cl
-
)を含んでなる水性組成物である第一組成物、およびペルオキシ一硫酸塩(HSO
5
-/SO
5
2-
)を含んでなる水性組成物である第二組成物を、エラストマーゴム基材表面に適用する工程;
(b)任意に、活性炭を含んでなる第三組成物を適用する工程;および
(c)
エラストマーゴム基材と一緒に、第一組成物、第二組成物、および任意に第三組成物
をインキュベートする工程
を含む、
塩素化された表面を有するエラストマーゴム基材の
製造方法。
【請求項2】
第一組成物
は塩化ナトリウムの水溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二組成物は
ペルオキシ一硫酸
塩の水溶液である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
第一組成物および第二組成物を
、3:1~1:
3の重量比で用いる、請求項1~3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
エラストマーゴム基材表面に適用する第一および/または第二および/または第三組成物の量は、500~900g/m
2
の範囲である、請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
工程(c)を5~60分
間実施する、請求項1~5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
工程(c)の後に基材表面を清浄化する工程を更に含む、請求項1~6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
第一組成物は、水酸化
物を更に含有する、請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
第一組成物は、(OH
-イオンに基づいて)0.5M(mol/L)~3Mの濃度で水酸化物を含有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エラストマーゴム基材である第一基材
とゴムまたは金属基材である第二基材
との接合品の製造方法であって
、
(a)塩化物(Cl
-
)を含んでなる水性組成物である第一組成物、およびペルオキシ一硫酸塩(HSO
5
-
/SO
5
2-
)を含んでなる水性組成物である第二組成物を、エラストマーゴム基材表面に適用する工程;
(b)任意に、活性炭を含んでなる第三組成物を適用する工程;
(c)エラストマーゴム基材と一緒に、第一組成物、第二組成物、および任意に第三組成物をインキュベートする工程;
(d)接着剤組成物を、ゴムまたは金属基材の接合表面に適用する工程;
並びに
(
e)適用した接着剤
組成物により、圧力下、塩素化された
エラストマーゴム基材表面と
ゴムまたは金属基材表面とを接触させて接合
品を得る工程
を含む、方法。
【請求項11】
工程(
d)および/または(
e)の前に、ゴムおよび/または金属基材表面を清浄化する工程を更に含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
15~30℃の温度、85%以下の相対湿度で工程(
e)を実施する、請求項
10または
11に記載の方法。
【請求項13】
ローリングにより工程(
e)を実施する、請求項
10~
12のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塩化物含有組成物およびペルオキシ一硫酸塩含有組成物を用いた処理によってゴム基材表面を塩素化することによる、他のゴム基材との、または異種材料である非エラストマー基材(好ましくは金属)とのコールドボンディングを容易にするための、エラストマーゴム基材の表面極性の改質方法に関する。別の態様は、このようにして得られた表面改質ゴム基材、接着剤による表面改質ゴム基材と他の基材との接合方法、およびこのようにして得られた接合基材に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な用途のために、エラストマー材料で作られた予備成形品は、別のエラストマー材料、またはガラス、金属若しくはプラスチック等の異なる材料と接合する必要がある。非エラストマー材料用の既存の接着剤はエラストマーに対して接合性がないか、または不十分な接合性しか示さず、エラストマー用の既知の接着剤は耐水性および耐蒸気性が不十分であるため、これらの材料間で十分な接合強度を達成することは困難である。
【0003】
ホットメルト接着剤を使用することで、従来の欠点をある程度克服することは可能であるが、エポキシ接着剤を使用するほとんどの用途では、低い硬化温度が望まれる。硬化温度が低いと、省エネになり、基材への熱影響も少なくなるため好ましい。加えて、異なった加熱速度または基材の熱伸びに起因した熱応力を最小限にできる。
【0004】
近年、ハロゲン化、エッチング、グラフト化、酸化、架橋等の光化学的および化学的技術、並びにコロナ放電、プラズマ処理、電子若しくはイオンビーム処理、火炎若しくはレーザー処理等の物理的方法が、ゴム基材について一般的な低温硬化接着剤の接着性を促進するために必要とされている、ゴム表面の改質を達成する目的で広く使われている。最も単純なメカニズムは、表面を機械的に粗化することであるが、その効果は限定的である。
【0005】
ハロゲン化技術に関して、当技術分野で知られている、有機溶媒(例えば、酢酸エチル中トリクロロイソシアヌル酸または溶媒中N-ハロアミド)または水溶液(例えば次亜塩素酸ナトリウム)に基づく表面処理には、様々な種類がある。例えば、US 4,500,685 Aには、加硫ゴム表面のハロゲン化のための、ワックスマトリックスにおけるN,N-ジハロスルホンアミドの使用が記載されている。WO 2000/05363 A1には、酸性化次亜塩素酸塩溶液、有機溶媒中の塩素および塩酸、塩素若しくはフッ素含有ガス、およびそれらの2以上の混合物を用いた、ゴム表面のハロゲン化が記載されている。トリクロロイソシアヌル酸の使用は、例えば、M. Virtudes Navarro-Banonにより、"Water-based chlorination treatment of SBS rubber soles to improve their adhesion to waterborne polyurethane adhesives in the footwear industry"(J. of Adhesion Science and Technology 2005, 19(11), 第947-74頁)に記載されている。これらの方法の全ては、ゴム鎖の二重結合を活性化してハロゲン-炭素原子を生成し、表面極性を高めることに基づく。表面極性を高めることで、一般的に使用されている2K接着剤との適合性を高めている。
【0006】
有機溶媒を使用する既存の技術は、有毒な可燃性の溶媒を多く含むため、健康面および安全面上、好ましくない。次亜塩素酸塩に基づく技術は、安定性の問題、および遊離酸素還元処理性能の低下を招く副反応といった欠点があることが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】US 4,500,685 A
【文献】WO 2000/05363 A1
【非特許文献】
【0008】
【文献】M. Virtudes Navarro-Banon, "Water-based chlorination treatment of SBS rubber soles to improve their adhesion to waterborne polyurethane adhesives in the footwear industry"(J. of Adhesion Science and Technology 2005, 19(11), 第947-74頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、当技術分野では、既存の方法の欠点を有することなく、コールドボンディングを容易にするためのゴム表面のハロゲン化を可能にする代替方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、この目的に合致し、塩化物塩の水溶液およびペルオキシ一硫酸塩の水溶液を用いて、エラストマーゴム基材の表面を改質する方法を提供するものである。新規に見出した方法は、塩化物と容易に反応して硫酸塩および遊離塩素を生成する、過硫酸塩の強力な酸化剤として作用する性質に基づく。その後、遊離塩素は、ゴム表面の二重結合と反応し、処理されたゴム基材の塩素化表面をもたらすことができる。その結果、ゴムの表面極性が高まり、通常使用されている接着剤の該表面への接着性が向上する。
【0011】
従って、第一の態様では、本発明は、
(a)塩化物(Cl-)、好ましくは塩化ナトリウムを含んでなる水性組成物である第一組成物、およびペルオキシ一硫酸塩(HSO5
-/SO5
2-)、好ましくはアルカリ金属ペルオキシ一硫酸塩、より好ましくはペルオキシ一硫酸カリウム(KHSO5)を含んでなる水性組成物である第二組成物を、エラストマーゴム基材表面に適用する工程;
(b)任意に、活性炭を含んでなる第三組成物を適用する工程;および
(c)第一組成物、第二組成物、および任意に第三組成物を、ゴム基材と一緒に、エラストマーゴム表面の塩素化を可能にする時間および条件でインキュベートする工程
を含む、エラストマーゴム基材の表面の改質方法に関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、本発明の方法により得られる、塩素化された表面を有するエラストマーゴム基材に関する。
【0013】
更に別の態様は、第一基材および第二基材の間に接合を形成する方法であって、
第一基材は、本発明のエラストマーゴム基材であるか、または本発明の方法により得られたエラストマーゴム基材であり、
第二基材は、ゴムまたは金属基材であり、
(a)好ましくは樹脂組成物および硬化剤組成物を含んでなる2Kのエポキシ接着剤、ポリウレア接着剤、ポリウレタン接着剤またはシリコーン接着剤である接着剤組成物を、ゴムまたは金属基材の接合表面に適用する工程;
(b)適用した接着剤により、圧力下、塩素化されたゴム基材表面と金属基材表面とを接触させて接合を形成する工程
を含む、方法に関する。
【0014】
更に別の態様では、本発明は、本発明の方法により得られる接合品を対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において「少なくとも1」とは、参照しているものが「少なくとも1」であることに関し、参照しているものが1、2、3、4、5、6、7、8、9またはそれ以上であることを包含する。
【0016】
本発明は、本明細書に記載の方法を用いることにより、有機溶媒の使用に関する問題を回避できる一方で、本発明の方法では反応中に酸素が生成されないため、次亜塩素酸塩を使用する既知の方法より効果的であるという、本発明者らの意外な発見に基づく。加えて、利用する過硫酸塩の反応性が高いため、次亜塩素酸塩による処理では約8時間であった反応時間を、過硫酸塩ベースの改質反応では僅か約5~60分へと大幅に短縮できる。最後に、本発明の方法では、高濃度では安定性に問題のある次亜塩素酸塩よりも高い濃度の塩化物を使用できるため、より多量の遊離塩素を生成することができ、これにより、方法の性能を更に高め得ることが見出された。また、活性炭の使用により、未反応の塩素を有利に結合できることも見出された。従って、反応中の遊離塩素ガスの放出を最小限に抑えることができる。
【0017】
使用される第一組成物は、好ましくは、塩化物塩の水溶液であって、塩化物イオンを含む。塩化物塩は、好ましくは、塩化カリウムまたは塩化ナトリウム等のアルカリ金属塩化物塩であり、入手容易性、コスト、および水への溶解度の高さから塩化ナトリウムが特に好ましい。第一組成物は、好ましくは(Cl-イオンに基づく)1M(mol/L)~6M、より好ましくは4M~6Mの塩化物の濃度で、塩化物イオンを含有する。使用される量は、原則として、塩の溶解度によってのみ制限される。
【0018】
好ましい態様において、第一組成物は塩基性であり、好ましくは8超、より好ましくは10超、最も好ましくは12超のpH値を有する。好ましくは第一組成物は水酸化物を含有し、水酸化物は、好ましくはアルカリ金属水酸化物として添加される。より好ましくは、第一組成物は、水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム、最も好ましくは水酸化ナトリウムを含有する。水酸化物、特に水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを更に添加することによる利点は、空気中に放出される未反応遊離塩素が低減されることである。更に、水酸化物を追加した場合、優位性を持つ第三成分の活性炭が不要になるという効果もある。好ましくは第一組成物は、(OH-イオンに基づいて)0.5M(mol/L)~3M、より好ましくは1M~3Mの濃度で、水酸化物、特に水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを含有する。
【0019】
第二組成物は、好ましくは、ペルオキシ一硫酸塩を含んでなる水性組成物であり、ペルオキシ一硫酸塩イオン(HSO5
-/SO5
2-)を含有する。アルカリ金属塩、特にペルオキシ一硫酸カリウム(KHSO5)が好ましい。ペルオキシ一硫酸塩の濃度は、好ましくは10M~30M、より好ましくは18~22Mの過硫酸塩の範囲である。第二組成物は、溶液であってよいが、好ましくは、水中のペルオキシ一硫酸塩のペーストである。即ち、この塩(例えばペルオキシ一硫酸カリウム)は、水で湿潤されているにすぎない。
【0020】
第一組成物および第二組成物はそれぞれ、塩化物およびペルオキシ一硫酸塩に加えて、付加的な成分を含んでよい。付加的な成分は、限定するわけではないが、溶媒、充填剤、増粘剤等を包含する。しかし、第一組成物および第二組成物が有機溶媒を含まない、即ち、1体積%未満の濃度で有機溶媒を含むことが好ましい。
【0021】
塩化物含有組成物およびペルオキシ一硫酸塩含有組成物は、遊離塩素の生成量が最大になるような量で使用される。それに応じて、実際に使用される量は、使用される溶液の各濃度に基づいて決定され得る。典型的には、濃度が本明細書で記載されている範囲内であれば、第一組成物および第二組成物は、約3:1~1:3、好ましくは約2:1~1:2、より好ましくは約1.5:1~1:1.5の重量比で使用される。
【0022】
様々な態様において、エラストマーゴム基材表面に適用される第一および/または第二および/または第三組成物の量は、500~900g/m2、好ましくは600~700g/m2の範囲である。これもまた、使用される濃度に依存するが、本明細書で記載されている濃度を採用するならば、記載した範囲が特に好ましい。
【0023】
活性炭(第三組成物)は、好ましくは、粉体またはフレークのような固体状で使用される。しかし、水性分散体の形態で使用することもでき、そのような態様では、活性炭は、他の組成物に関して上述したような付加的な成分を含有することもできる。
【0024】
組成物およびゴム表面のインキュベーション工程(c)は、所望の程度の表面改質を可能にするのに十分な長さの時間にわたって実施される。これもまた、反応条件に依存するが、周囲条件(20℃、1013mbar)で、本明細書に記載された濃度を使用した場合、5~60分、好ましくは15~30分の反応時間が、所望のハロゲン化表面を得るのに十分であることが見出された。
【0025】
組成物の適用は、当技術分野で知られている任意の適切な手段によって実施できる。組成物が液体である場合、適用は、噴霧、刷毛塗り、印刷、浸漬、キャスティング等によって実施できる。活性炭、または水で湿潤させたペルオキシ一硫酸塩等の固体、または本質的に固体、またはペーストの組成物は、適当な固体適用技術によって適用できる。
【0026】
ここで記載している組成物の適用の前に、改質されるゴム基材表面を清浄化、脱脂等に付してもよい。
【0027】
本発明の方法の様々な態様において、ゴム表面をまず、油、グリースおよび汚れの除去のために清浄化する。この任意工程の後、第二組成物を表面に適用する。次いで、第二組成物を適用した表面の上に布を置き、好ましくは第三組成物を適用する。その後、第一組成物を布の上に適用する。続いて、表面をプラスチック箔または同様の被覆等の箔で覆い、約5~30分間反応させる。次いで、箔および布を取り除き、表面を水で洗浄し、布で清浄化/乾燥する。付加的な水酸化物を含有する第一組成物を用いると、プラスチック箔を使用する必要がなくなる。
【0028】
本発明の様々な態様において、方法は更に、インキュベーション工程(c)の後に基材表面を清浄化し、任意に乾燥する工程を含む。
【0029】
エラストマーゴム基材は、ゴムで作られていてよく、例えばゴムシートであってよく、またはエラストマーゴム表面を有してよい。ゴム物質は当技術分野で広く知られており、これらに限定されるものではないが、天然ゴム(NR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、エチレンプロピレンゴム(EPM)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)、ポリクロロプレン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-ブタジエン-スチレンゴム(SBS)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンエチレンブチレンスチレンゴム(SEBS)、並びにスチレン、ブタジエン、エチレンおよびイソプレンの任意の2以上のコポリマーに基づく他の全てのゴムを包含する。天然ゴムおよびスチレン-ブタジエンゴムが特に好ましい。
【0030】
接合する別の基材は、任意の材料で作られていてよい。様々な態様において、そのような基材は、同じゴム物質、別のゴム物質または金属で作られている。金属基材は、任意の金属であってよい。典型的には、金属は、鉄、鋼、アルミニウムおよびそれらの合金である。金属基材は、亜鉛等の他の金属でメッキされていてもよく、または変換処理等の表面処理に付されていてもよい。金属基材は、金属で構成されていてもよいし、金属で表面被覆されたものであってもよい。
【0031】
接合工程のために、本明細書に記載の方法に従って使用される接着剤は、当技術分野でゴム基材の接合に使用されている任意の一般的な接着剤、好ましくは2K接着剤であってよい。一般的に使用されている接着剤は、エポキシ、ポリウレア、シリコーンまたはポリウレタンに基づく接着剤である。そのような2K接着剤は通常、典型的には適用直前に組み合わせられる別個の組成物として、樹脂および硬化剤を含んでなる。これらの組成物は、組み合わせると、重合反応が開始して、組成物が完全に硬化するまで進行するよう設計されている。硬化の挙動および時間は、使用されている樹脂および硬化剤に依存する。
【0032】
ポリウレアベース接着剤またはポリウレタンベース接着剤等のポリイソシアネートベース接着剤の使用に関しては、接着剤は、NCO基および酸のH基を含む成分を介して架橋する。例には、樹脂成分として、既知のNCO基含有プレポリマーまたはポリイソシアネートが含まれる一方で、硬化剤成分として使用できるものは、樹脂成分のNCO基と反応できるOH、NH、SH、COOH基、好ましくはOHおよび/またはNH基を含む既知のオリゴマーまたはポリマーである。網目を得るためには、少なくとも2つのNCO基と少なくとも2つの特にOH基が架橋構成成分に含まれていることが好ましい。また、自体既知の添加剤も接着剤に含めることができる。これらは、接着剤の特性を調整でき、接着剤の特性に影響を与え得る成分である。
【0033】
樹脂成分は、好ましくは、少なくとも1つのポリイソシアネートおよび/または少なくとも2つのイソシアネート基を有する少なくとも1つのポリウレタンプレポリマーまたはそれらの混合物を含有する。PUプレポリマーは、例えば、化学量論的に過剰な少なくとも二官能性のイソシアネートとポリオール成分とを反応させることによって得ることができる。
【0034】
本発明の意味におけるPUプレポリマーは、OH基またはNH基を有する化合物と過剰のポリイソシアネートとの反応生成物である。それらは、接着剤用途で知られているポリオールであるか、または第二級および/または第一級アミノ基を有する相応の化合物である。OHを含有する出発化合物が好ましい。20,000g/molまで、特に200~10,000g/molの分子量(数平均分子量、MN、GPCによって測定できる)を有するポリオールが、前記プレポリマーの合成に特に適している。それらは、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアクリレート、アルキレンポリオールに基づくポリオールであってよい。別の態様では、NH基を有するそのような化合物を使用する。
【0035】
脂肪族、脂環式または芳香族のイソシアネート等の、2個以上のイソシアネート基を有する自体既知のポリイソシアネートを、直接、またはプレポリマー合成におけるポリイソシアネートとして使用できる。一態様では、樹脂成分として、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのイソシアネートを使用する。プレポリマーおよびポリイソシアネートの混合物も可能である。原則として、全ての既知のポリイソシアネートを使用でき、具体的な例は、メチレンジイソシアネート(MDI)またはトルイレンジイソシアネート(TDI)の異性体、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、1-イソシアナトメチル-3-イソシアナト-1,5,5-トリメチルシクロヘキサン(IPDI)、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート(NDI)、ヘキサン-1,6-ジイソシアネート(HDI)である。イソシアヌレート、カルボジイミドまたはビウレット等の、ジイソシアネートの三量体化またはオリゴマー化により得られる少なくとも三官能性のイソシアネートも使用できる。
【0036】
適当な二成分ポリイソシアネートベース接着剤の硬化剤成分は、イソシアネート基と反応する少なくとも2つの基を有する少なくとも1つの化合物を含有しなければならない。これらは、例えば、SH基、COOH基、NH基またはOH基であってよい。ポリオールおよびアミンが好ましい。
【0037】
多くのポリオールが、ポリウレタンベース接着剤の硬化剤成分として使用するためのポリオール成分として適している。それらは例えば、一分子当たり2~10個のOH基を有するポリオールであってよい。それらは脂肪族化合物または芳香族化合物であってよく、適当な数のOH基を有するポリマーも使用できる。それらは、イソシアネート基との適切な反応性を有する限り、第一級OH基でも第二級OH基でもよい。そのようなポリオールの分子量は、広い範囲で変化でき、例えば、500~10,000g/molであってよい。既に記載したポリオールも含まれ得る。
【0038】
そのようなポリオールの例は、2~10個のOH基を好ましくは有する低分子量脂肪族ポリオール、特にC2~C36アルコールである。適当なポリオールの別の群は、例えばポリエーテルである。これらは、C2~C4アルキレンオキシドと二官能性または三官能性の低分子量アルコールとの反応生成物である。ポリエーテルポリオールは、特に400~5000g/molの分子量を有すべきである。OH含有ポリ(メタ)アクリレートまたはポリオレフィンも適している。
【0039】
ポリエステルポリオールは、成分Bにおける使用のためのポリオール化合物の別の適当な群である。接着剤のために知られているポリエステルポリオールを使用できる。それらは例えば、ジオール、特に低分子量アルキレンジオールまたはポリエーテルジオールとジカルボン酸との反応生成物であり得る。それらは、脂肪族若しくは芳香族カルボン酸またはそれらの混合物であってよい。そのようなポリエステルポリオールは、様々な形態のものが当業者に知られており、商業的に入手可能である。これらのポリエステルポリオールは特に200~3000g/molの分子量を有すべきである。これらは、少なくとも2つの官能基を有し、相応の適当な分子量を有する限り、ポリマーラクトンまたはポリアセタールも包含する。
【0040】
ポリウレアベース接着剤のための硬化剤成分として使用されるアミンは、好ましくは立体障害アミンである。2個以上のアミン基、好ましくは2個のアミン基を有する適当な立体障害アミンは、アスパラギン酸エステルアミンまたは芳香族ジアミンである。芳香族ジアミンの例は、樹脂成分のポリマーイソシアネートと組み合わせた際の反応性を低減させるための立体障害を有するものである。そのような芳香族アミンは、限定されるわけではないが、トルエンジアミン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,4-ジアミノベンゼン、1-メチル-3,5-ジエチル-2,6-ジアミノベンゼン(DETDAまたはジエチルトルエンジアミンとしても知られている)、ジ(メチルチオ)トルエンジアミン、1,3,5-トリエチル-2,6-ジアミノベンゼン、ハロゲン基、シアノ基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルケニル基またはカルボニル基を含むトルエンジアミン誘導体、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、4',4'-メチレンジアニリン、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン、2,6-ジアミノ-ピリジン、4,4'-メチレン-ビス-(3-クロロアニリン)、4,4'-メチレン-ビス-(3-クロロ-2,6-ジエチルアニリン)、4,4-メチレン-ビス-(3-クロロ-2.5-ジエチルアニリン、3,3'-di-イソプロピル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、4,4'-ビス-(sec-ブチルアミノ)ジフェニルメタン(SBMDA)、3,5,3',5'-テトラエチル-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、プロピレン-ジ-4-アミノベンゾエート、イソブチル4-クロロ-3,5-ジアミノベンゾエート、ビス-(2-アミノフェニル)ジスルフィド、ビス-(4-アミノフェニル)ジスルフィド、3,3'-カルボメトキシ-4,4'-ジアミノジフェニルメタン、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、ジメチルチオトルエンジアミン(DMTDA)、0,1,8-ジアミノ-p-メンタン、α,α,α',α'-テトラメチルキシレンジアミン、N,N'-ジターシャリー-ブチルエチレンジアミン、およびそれらの混合物を包含する。
【0041】
シリコーンベース接着剤の場合、既知の一成分または二成分シリコーン接着剤を使用できる。二成分シリコーン接着剤が好ましい。シリコーン接着剤は、1以上のポリ(ジオルガノシロキサン)を含んでなる。これらのポリ(ジオルガノシロキサン)は架橋性である。架橋は、反応性末端基を介して、または反応性基に転化できるポリ(ジオルガノシロキサン)の末端基により起こり得る。全ての一般的なポリ(ジオルガノシロキサン)を使用できる。例えば、そのようなポリ(ジオルガノシロキサン)は、接着剤またはシーラントの製造のためによく知られており、市販されている。
【0042】
ポリ(ジオルガノシロキサン)は、好ましくは、ヒドロキシル末端基を有するポリ(ジオルガノシロキサン)であり得、および/またはアルコキシシリル末端基を有するポリ(ジオルガノシロキサン)であり得る。ヒドロキシル基末端ポリ(ジオルガノシロキサン)およびアルコキシシリル基末端ポリ(ジオルガノシロキサン)は知られており、市販されている。ポリ(ジオルガノシロキサン)は、好ましくは、アルキル基が好ましくは1~5個、より好ましくは1~3個の炭素原子を有し、特に好ましくはメチル基である、ポリ(ジアルキルシロキサン)である。ヒドロキシル基末端ポリ(ジメチルシロキサン)およびメトキシシリル基末端ポリ(ジメチルシロキサン)が最も好ましく、これらを好ましくは、2Kシリコーンベース接着剤の一成分中の、それらの各々を含有する組み合わせにおいて使用する。
【0043】
シリコーン接着剤は更に、ポリ(ジオルガノシロキサン)のための架橋剤を1以上含む。これらは、この目的のために当技術分野において知られている架橋剤の全てであってよい。例えば、架橋剤は、好ましくは、オルガニル基において1以上のヘテロ原子で任意に官能化されていてよい、テトラアルコキシシラン、オルガノトリアルコキシシラン、ジオルガノジアルコキシシランおよび/またはオリゴ(オルガノアルコキシシラン)、テトラキスケトキシモシラン、オルガノトリスケトキシモシラン、ジオルガノビスケトキシモシランおよび/またはオリゴ(オルガノケトキシモシラン)またはそれらの混合物から選択される。適当な例は、メチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、フェニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、メチルトリス(イソブチルケトキシモ)シランまたはテトラ(メチルエチルケトキシモ)シランである。メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリス(メチルエチルケトキシモ)シラン、ビニルトリス(メチルエチルケトキシモ)シランおよびメチルトリス(イソブチルケトキシモ)シラン。
【0044】
任意成分として、シリコーン接着剤、より具体的には二成分シリコーン組成物は、更に、1以上の縮合触媒も含み得る。これは、ポリジオルガノシロキサンを架橋するための触媒として作用する。好ましい縮合触媒は、特に、Sn化合物、チタン酸塩のようなTi化合物、ホウ酸塩等の元素周期表のIa、IIa、IIIa、IVa、IVbまたはIIb族からの金属若しくは半金属錯体および/またはオルガニル化合物またはそれらの混合物である。好ましい有機スズ化合物は、例えば、ジメチルスズジ-2-エチルヘキサノエート、ジメチルスズジラウレート、ジ-n-ブチルスズジアセテート、ジ-n-ブチルスズジ-2-エチルヘキサノエート、ジ-n-ブチルスズジカプリレート、ジ-n-ブチルスズジ-2,2-ジメチルオクタノエート、ジ-n-ブチルスズジラウレート、ジ-n-ブチルスズジステアレート、ジ-n-ブチルスズジマレイネート、ジ-n-ブチルスズジオレート、ジ-n-ブチルスズジアセテート、ジ-n-オクチルスズジ-2-エチルヘキサノエート、ジ-n-オクチルスズジ-2,2-ジメチルオクタノエート、ジ-n-オクチルスズジマレイネートおよびジ-n-オクチルスズジラウレートから選択される、ジアルキルスズ化合物である。
【0045】
2Kエポキシ接着剤であるエポキシ樹脂組成物においてエポキシベース接着剤を使用する場合、エポキシ樹脂は、通常知られており使用されているあらゆるエポキシ樹脂を含んでよい。適当なエポキシ樹脂は、好ましくは、一分子当たり1~10個のエポキシ基を有するエポキシ樹脂を含む。これらのエポキシ基は、1,2-エポキシ基であり得る。エポキシ樹脂は原則として、飽和または不飽和、環式または非環式、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式のポリエポキシ化合物であり得る。適当なエポキシ樹脂の例には、エピクロロヒドリンまたはエピブロモヒドリンとポリフェノールとをアルカリの存在下で反応させることにより一般的に調製されるポリグリシジルエーテル、フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂のポリグリシジルエーテル、アルキル置換フェノールホルムアルデヒド樹脂(エポキシノボラック樹脂)、フェノールヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾールヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、およびジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂が含まれる。この目的に適したポリフェノールには、例えば、レゾルシノール、ピロカテコール、ヒドロキノン、ビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン)、ビスフェノールF(ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブタン、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,5-ヒドロキシナフタレンが含まれる。同様に適しているものは、例えばIndspec Chemical Corporationのエトキシル化レゾルシノールのジグリシジルエーテル(DGER)、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシルフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールM、ビスフェノールS、テトラメチルビフェノールのジグリシジルエーテル;C2~20アルキレングリコールおよびポリ(エチレンオキシド)グリコールまたはポリ(プロピレンオキシド)グリコールのジグリシジルエーテルである。
【0046】
付加的に適しているエポキシ樹脂は、ポリアルコールまたはジアミンのポリグリシジルエーテルである。これらのポリグリシジルエーテルは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールまたはトリメチロールプロパン等のポリアルコールに由来する。
【0047】
他の適当なエポキシ樹脂は、ポリカルボン酸のポリグリシジルエステルであり、その例は、グリシドールまたはエピクロロヒドリンと、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、テレフタル酸またはダイマー脂肪酸等の脂肪族若しくは芳香族ポリカルボン酸との反応生成物である。
【0048】
別の適当なエポキシ樹脂は、オレフィン性不飽和脂環式化合物のエポキシ化生成物、または天然の油および脂肪に由来する。
【0049】
好ましい態様では、エポキシ樹脂は、1~10個のエポキシ基を有し、レゾルシノール、カテコール、ヒドロキノン、ビスフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールAP(1,1-ビス(4-ヒドロキシルフェニル)-1-フェニルエタン)、ビスフェノールF、ビスフェノールK、ビスフェノールM、ビスフェノールS、テトラメチルビフェノールのジグリシジルエーテル、C2~20アルキレングリコールおよびポリ(エチレンオキシド)またはポリ(プロピレンオキシド)のジグリシジルエーテル;フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂、アルキル置換フェノールホルムアルデヒド樹脂(エポキシノボラック樹脂)、フェノールヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、クレゾールヒドロキシベンズアルデヒド樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂およびジシクロペンタジエン置換フェノール樹脂のポリグリシジルエーテル、並びにそれらの任意の組み合わせ、好ましくは、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。
【0050】
特に好ましいものは、ビスフェノールAまたはビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応に由来するエポキシ樹脂である。液体のエポキシ樹脂を使用することが有利であり得、液体のエポキシ樹脂は、好ましくは、ビスフェノールAベースであり、十分低い分子量を有する。室温で液体のエポキシ樹脂は一般に、150~約220のエポキシ当量を有する。そのようなエポキシ樹脂は、DowからD.E.R.TMの商品名で市販されている。
【0051】
樹脂組成物は、多くの他の成分を含んでもよく、その全ては当業者によく知られており、限定するものではないが、通常使用されている助剤および添加剤を包含する。その例は、充填剤、可塑剤、強化剤、反応性および/または非反応性希釈剤、流動剤、カップリング剤(例えばシラン)、接着促進剤、保湿剤、粘着付与剤、難燃剤、湿潤剤、チキソトロピーおよび/またはレオロジー剤(例えばヒュームドシリカ)、老化および/または腐食防止剤、安定剤および/または着色剤である。接着剤およびその用途の要求に基づき、かつその製造、柔軟性、強度、および基材に対する接着接合に鑑み、助剤および添加剤は、組成物において様々な量で添加される。様々な態様において、樹脂組成物は、典型的には樹脂組成物に対して10重量%以下の量で、充填剤および/または着色剤を含む。
【0052】
様々な態様において、硬化剤組成物は、エポキシ樹脂上のエポキシ基と架橋できる化合物を含む。2Kエポキシに適した任意の硬化剤を使用してよい。好ましい硬化剤は、メルカプタン、ポリマーアミン(ポリアミン)およびポリマーアミド(ポリアミド)(例えばポリアミドアミンを包含する)、低分子量アミン、およびそれらの組み合わせを包含する。上記エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂による上記硬化剤の付加物もまた、好ましい。
【0053】
様々な態様において、好ましいポリアミンは、ポリエーテルアミン-エポキシ付加物、即ち、化学量論的に過剰のアミンプレポリマーとエポキシ樹脂との反応生成物を包含する。ポリアミン硬化剤は、低分子量アミンよりゆっくり反応する傾向にあるが、硬化接着剤に柔軟性を付与できる。付加物生成のために使用されるアミンプレポリマーは、架橋を起こすために少なくとも2つのアミン基を有する任意のアミンプレポリマーであってよい。アミンプレポリマーは、第一級および/または第二級アミン基を含み、好ましくは第一級アミン基を含む。適当なアミンプレポリマーは、ポリエーテルジアミン、ポリエーテルトリアミン、およびそれらの混合物を包含する。ポリエーテルジアミンが好ましい。ポリエーテルアミンは、直鎖、分岐または混合であってよい。分岐ポリエーテルアミンが好ましい。任意の分子量のポリエーテルアミンを使用してよい。200~6000またはそれ以上の分子量が適している。分子量は、1000より大きくてよく、またはより好ましくは3000より大きい。3000または5000の分子量が好ましい。
【0054】
付加物生成またはそのようなものとして使用できる適当な市販のポリエーテルアミンには、Huntsman社によりJeffamine(登録商標)の名称で市販されているものが含まれる。適当なポリエーテルジアミンには、D、EDおよびDRシリーズのJeffamineが含まれる。これらは、Jeffamine D-230、D-400、D-2000、D-4000、HK-511、ED-600、ED-900、ED-2003、EDR-148およびEDR-176を包含する。適当なポリエーテルトリアミンは、TシリーズのJeffamineを包含する。これらには、Jeffamine T-403、T-3000およびT-5000が含まれる。ポリエーテルジアミンが好ましく、分子量約400のポリエーテルジアミン(例えばJeffamine D-400)が最も好ましい。また、上記のいずれかに相当するものを、部分的または全体的に置き換えて使用してもよい。
【0055】
ポリアミドを含む場合は、任意のポリアミド硬化剤を使用してよい。いくつかの好ましいポリアミドには、二量化脂肪酸とポリアミンとの反応生成物が含まれる。そのようなポリアミドの例は、商品名Versamid(登録商標)で市販されているものを包含する。
【0056】
適当なメルカプタンには、モノマーまたはエポキシ付加物としての二官能性メルカプタン、例えば1,8-ジメルカプト-3,6-ジオキサオクタン(DMDO)、即ち、化学量論的に過剰のメルカプタンとエポキシ樹脂との反応生成物が含まれる。二官能性メルカプタンエポキシ樹脂付加物が特に好ましい。
【0057】
硬化剤組成物は、低分子量(非ポリマー)アミン硬化剤を含んでよい。好ましい化合物には、300g/mol、250g/molまたは200g/molまでの分子量を有する第一級および/または第二級アミンが含まれる。脂肪族アミン硬化剤は、EvonikによりAncamine(登録商標)の商品名で販売されているものを包含する。
【0058】
上記付加物の全てにおいて、エポキシ樹脂は、上記エポキシ樹脂のいずれであってもよいが、好ましくは、ビスフェノールジグリシジルエーテル、例えばビスフェノールAとエピクロロヒドリンとの反応生成物である。
【0059】
本発明では、任意の量の上記硬化剤を使用してよい。
【0060】
硬化剤組成物では、好ましくは、接着剤の硬化速度を高めるために、1以上の硬化促進剤(触媒)を用いる。硬化促進剤は、好ましくは、一方ではポリアミン/ポリアミド/メルカプタン硬化剤と、他方ではエポキシ樹脂との反応を触媒することにより効果を発揮する。硬化促進剤は、好ましくは第三級アミンを包含する。好ましい例は、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールであり、CognisからVersamine(登録商標)EH30の名称で入手可能である。他の適当なポリアミンは、米国特許第4,659,779号(並びにそのファミリー米国特許第4,713,432および4,734,332;並びにEP-A-0 197 892)に記載されている。
【0061】
硬化促進剤は、エポキシ接着の硬化を適当に促進する量で存在してよい。好ましくは、硬化促進剤は、硬化剤組成物の重量に基づいて、5重量%未満、より好ましくは0.5~2重量%の量で存在してよい。
【0062】
硬化温度は、好ましく60℃未満、または50℃未満、または40℃未満である。エポキシ接着剤組成物は、好ましくは、周囲温度、例えば約20℃または25℃で硬化する。従って、本発明の方法は、好ましくは周囲温度で、即ち約15~40℃の温度範囲内で実施する。例えば硬化時間を更に短縮するため、またはより完全な硬化を得るために、本発明におけるエポキシ接着剤を加熱することは可能であるが、好ましくはない。
【0063】
本明細書において数値に関して用いている「約」とは、その数値±10%の数値を意味する。
【0064】
様々な態様において、硬化剤は、炭酸カルシウムまたはシリカ等の充填剤のような、樹脂組成物に関連して上述した添加剤および助剤のいずれか1つを含んでもよい。
【0065】
接合工程において、工程(b)は、15~30℃の温度および85%以下の相対湿度で実施してよい。
【0066】
記載した接合方法の工程(a)および/または(b)の前に、ゴムおよび/または金属基材表面を、汚れ、油、グリース等の除去のために清浄化してよい。汚れ、油、グリースは全て、接合工程を妨げ得る。適当な清浄化剤は、当技術分野でよく知られており、Henkel社製のLoctite(登録商標)SF 7063を包含する。
【0067】
接着剤の混合、適用および/または分配は、簡単な手動装置または全自動システムを用いて実施でき、これらの全ては、当業者に知られており、容易に入手できる。
【0068】
圧力下で接合を形成するための2つの基材の接触工程は、ロール、プレートまたは他の適当な装置等の公知の装置を用いて実施できる。好ましい態様では、工程(b)はローリングによって実施する。
【0069】
様々な態様において、全ての工程は自動化され得る。
【0070】
上記したように、本発明はまた、本明細書に記載の方法において2つの基材を接合することによって得られた物品も含む。
【0071】
本明細書に記載の方法および組成物に関連して本明細書で記載された全ての態様は、本発明の物品にも同様に適用可能であり、その逆もまた同様である。本明細書において引用した文献の全ては、その内容を参照してここに組み込まれる。
【0072】
本発明を下記実施例により更に説明するが、本発明はこれに限定されない。
本発明の好ましい態様は、以下を包含する。
[1](a)塩化物(Cl
-
)、好ましくは塩化ナトリウムを含んでなる水性組成物である第一組成物、およびペルオキシ一硫酸塩(HSO
5
-
/SO
5
2-
)、好ましくはアルカリ金属ペルオキシ一硫酸塩、より好ましくはペルオキシ一硫酸カリウム(KHSO
5
)を含んでなる水性組成物である第二組成物を、エラストマーゴム基材表面に適用する工程;
(b)任意に、活性炭を含んでなる第三組成物を適用する工程;および
(c)第一組成物、第二組成物、および任意に第三組成物を、ゴム基材と一緒に、エラストマーゴム表面の塩素化を可能にする時間および条件でインキュベートする工程
を含む、エラストマーゴム基材の表面の改質方法。
[2]第一組成物は、好ましくは1M~6M、より好ましくは4M~6Mの塩化ナトリウムの濃度を有する、塩化ナトリウムの水溶液である、[1]に記載の方法。
[3]第二組成物は、好ましくは10M~30M、より好ましくは18M~22Mの過硫酸塩の濃度を有する、過硫酸塩、好ましくはモノ過硫酸カリウムの水溶液である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]第一組成物および第二組成物を、約3:1~1:3、好ましくは約2:1~1:2、より好ましくは約1.5:1~1:1.5の重量比で用いる、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
[5]エラストマーゴム基材表面に適用する第一および/または第二および/または第三組成物の量は、500~900g/m
2
、好ましくは600~700g/m
2
の範囲である、[1]~[4]のいずれかに記載の方法。
[6]工程(c)を5~60分間、好ましくは15~30分間実施する、[1]~[5]のいずれかに記載の方法。
[7]工程(c)の後に基材表面を清浄化する工程を更に含む、[1]~[6]のいずれかに記載の方法。
[8]第一組成物は、水酸化物、好ましくは水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウムを更に含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の方法。
[9]第一組成物は、(OH
-
イオンに基づいて)0.5M(mol/L)~3Mの濃度で水酸化物を含有する、[8]に記載の方法。
[10][1]~[9]のいずれかに記載の方法により得られる、塩素化された表面を有するエラストマーゴム基材。
[11]第一基材および第二基材の間に接合を形成する方法であって、
第一基材は、[8]に記載のエラストマーゴム基材であるか、または[1]~[9]のいずれかに記載の方法により得られたエラストマーゴム基材であり、
第二基材は、ゴムまたは金属基材であり、
(a)好ましくは樹脂組成物および硬化剤組成物を含んでなる2Kのエポキシ接着剤、ポリウレア接着剤、シリコーン接着剤またはポリウレタン接着剤である接着剤組成物を、ゴムまたは金属基材の接合表面に適用する工程;
(b)適用した接着剤により、圧力下、塩素化されたゴム基材表面と金属基材表面とを接触させて接合を形成する工程
を含む、方法。
[12]工程(a)および/または(b)の前に、ゴムおよび/または金属基材表面を清浄化する工程を更に含む、[11]に記載の方法。
[13]15~30℃の温度、85%以下の相対湿度で工程(b)を実施する、[11]または[12]に記載の方法。
[14]ローリングにより工程(b)を実施する、[11]~[13]のいずれかに記載の方法。
[15][9]~[13]のいずれかに記載の方法により得られる接合品。
【実施例】
【0073】
実施例
実施例1
第一組成物:27重量%の塩化ナトリウム、73重量%の脱イオン水
第二組成物:70重量%のペルオキシ一硫酸カリウム(KHSO5)、30重量%の脱イオン水
第一組成物と第二組成物との混合比:重量比1:1
第三組成物:100重量%の活性炭(フレーク)
2Kポリウレア接着剤
硬化剤組成物:100重量%のEthacure 420(ヒンダード第二級アミン硬化剤;Albemarle(米国))
樹脂組成物:100重量%のDesmodur N3900(脂肪族ポリイソシアネート;Covestro(独国))
硬化剤および樹脂を1:1.3の重量比で混合した。
【0074】
調製
塩化ナトリウムが完全に溶解するまで、塩化ナトリウムおよび水を振盪した。ペルオキシ一硫酸カリウムが十分湿潤するまで、ペルオキシ一硫酸カリウムおよび水を混合した。
【0075】
方法
1)汚れ、油およびグリースを除去するために、Loctite 7063(Henkel(独国))を用いて、接合する基材(軟鋼、SBR、NR)を十分清浄化した。
2)金属基材をサンドブラスト処理に付し、再びLoctite 7063を用いて清浄化した。
3)ペルオキシ一硫酸塩を含有する第二組成物を、プラスチック製スパチュラを用いてゴム表面に適用した。
4)ゴムを布で覆い、その上に活性炭、次いで第一組成物を適用し、表面をプラスチック箔で覆い、15分間反応させた。
5)布およびプラスチック箔を取り除き、表面を水で洗浄し、布で清浄化した。
6)接着剤の樹脂および硬化剤成分を手動で混合し、ロール剥離試験片のための金属表面またはT型剥離試験片のためのゴム表面の上に単一被覆として適用した。
7)ロール剥離試験片(ゴムと金属基材)およびT型剥離試験片(ゴムとゴム基材)をローリング(20℃、85%未満の相対湿度)により接合した。
【0076】
【0077】
実施例2
第一組成物:27重量%の塩化ナトリウム、73重量%の脱イオン水
第二組成物:70重量%のペルオキシ一硫酸カリウム(KHSO5)、30重量%の脱イオン水
第一組成物と第二組成物との混合比:重量比1:1
第三組成物:100重量%の活性炭(フレーク)
2Kエポキシ接着剤
樹脂組成物:99重量%のDER 356 P(ビスフェノールA/Fベースエポキシ樹脂、Dow)、0.01重量%のDefoamer 1244(消泡剤、Solutia);0.99重量%のSilane A187(エポキシシラン、Momentive)
硬化剤組成物:95.99重量%のAncamine 1922A(Evonik)、3.00重量%のヒュームドシリカ、1.00重量%のトリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、0.01重量%の消泡剤(Solutia)
硬化剤および樹脂を31:100の重量比で混合した。
【0078】
調製
塩化ナトリウムが完全に溶解するまで、塩化ナトリウムおよび水を振盪した。ペルオキシ一硫酸カリウムが十分湿潤するまで、ペルオキシ一硫酸カリウムおよび水を混合した。DER356、Defoamerおよびエポキシシランを、高速ディスペンサーを用いて均一な混合物になるまで動的真空下で分散させた。Ancamine 1922A、ヒュームドシリカ、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールおよび消泡剤を、高速ディスペンサーを用いて均一な混合物になるまで動的真空下で分散させた。
【0079】
方法
1)汚れ、油およびグリースを除去するために、Loctite 7063(Henkel(独国))を用いて、接合する基材(軟鋼、SBR、NR)を十分清浄化した。
2)金属基材をサンドブラスト処理に付し、再びLoctite 7063を用いて清浄化した。
3)ペルオキシ一硫酸塩を含有する第二組成物を、プラスチック製スパチュラを用いてゴム表面に適用した。
4)ゴムを布で覆い、その上に活性炭、次いで第一組成物を適用し、表面をプラスチック箔で覆い、15分間反応させた。
5)布およびプラスチック箔を取り除き、表面を水で洗浄し、布で清浄化した。
6)接着剤の樹脂および硬化剤成分を手動で混合し、ロール剥離試験片のための金属表面またはT型剥離試験片のためのゴム表面の上に単一被覆として適用した。
7)ロール剥離試験片(ゴムと金属基材)およびT型剥離試験片(ゴムとゴム基材)をローリング(20℃、85%未満の相対湿度)により接合した。
【0080】
【0081】
実施例3
第一組成物:21重量%の塩化ナトリウム、8重量%の水酸化ナトリウム、71重量%の脱イオン水
第二組成物:70重量%のペルオキシ一硫酸カリウム(KHSO5)、30重量%の脱イオン水
第一組成物と第二組成物との混合比:重量比1:1
2Kシリコーン接着剤
硬化剤組成物:LOCTITE SI 5610 B
樹脂組成物:LOCTITE SI 5610 A
硬化剤および樹脂を1:2の体積比で混合した。
【0082】
調製
塩化ナトリウムが完全に溶解するまで、塩化ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび水を振盪した。ペルオキシ一硫酸カリウムが十分湿潤するまで、ペルオキシ一硫酸カリウムおよび水を混合した。
【0083】
方法
1)汚れ、油およびグリースを除去するために、Loctite 7063(Henkel(独国))を用いて、接合する基材(軟鋼、SBR、NR)を十分清浄化した。
2)金属基材をサンドブラスト処理に付し、再びLoctite 7063を用いて清浄化した。
3)ペルオキシ一硫酸塩を含有する第二組成物を、プラスチック製スパチュラを用いてゴム表面に適用した。
4)ゴムを布で覆い、第一組成物を適用し、15分間反応させた。
5)布を取り除き、表面を水で洗浄し、布で清浄化した。
6)空気圧ガンを用い、接着剤の樹脂および硬化剤成分を、ロール剥離試験片のための金属表面またはT型剥離試験片のためのゴム表面の上に単一被覆として適用した。
7)ロール剥離試験片(ゴムと金属基材)およびT型剥離試験片(ゴムとゴム基材)をローリング(20℃、85%未満の相対湿度)により接合した。
【0084】