(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】偽造防止印刷物
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20240912BHJP
B42D 25/378 20140101ALI20240912BHJP
G07D 7/12 20160101ALI20240912BHJP
G07D 7/20 20160101ALI20240912BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/378
G07D7/12
G07D7/20
(21)【出願番号】P 2021045421
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2023-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】高橋 寛行
【審査官】岩本 太一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-056227(JP,A)
【文献】特開2013-220582(JP,A)
【文献】特許第4604209(JP,B2)
【文献】特許第5358819(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/00- 3/18
7/00- 9/04
B42D 15/02
25/00-25/485
G07D 7/00- 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一部に、拡散反射光下で視認される図柄と正反射光下で視認される図柄が変化して視認される印刷模様を備えた偽造防止印刷物であって、
前記印刷模様は、第1の画像、第2の画像及び第3の画像から成り、
前記第1の画像は、前記基材と異なる色の光輝性インキによって形成された情報要素が複数配置されて前記拡散反射光下で視認される図柄を現して成る情報要素群及び前記光輝性インキによって形成された背景要素が前記情報要素と重なることなく前記印刷模様内に一様に複数配置されて成る背景要素群から成り、
前記第2の画像は、透明インキによって形成された複数の潜像要素が、前記背景要素の上に重なって配置されて、前記正反射光下で視認される図柄を現して成り、
前記第3の画像は、前記情報要素と異なる色であって、前記基材よりも高い光沢を有するカモフラージュ要素が前記情報要素群と嵌り合って複数配置されて、前記情報要素群が現す図柄をネガポジ反転した図柄を現して成ることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記潜像要素を形成する前記透明インキと、前記カモフラージュ要素を形成するインキが、同じインキであることを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等のセキュリティ印刷物の分野において、観察できる画像が入射する光の角度に応じて、異なる画像に変化する偽造防止印刷物に関わるものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのような複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、印刷物に観察角度によって画像が変化するホログラムに代表される光学的なセキュリティ要素を貼付したものが多く存在するようになった。
【0003】
しかし、ホログラムは、インキを用いた印刷によって形成する従来の偽造防止技術とは異なり、複雑な製造工程と特殊な材料を用いて形成されることから、従来の偽造防止用印刷物と比較すると製造に手間がかかり、かつ、極めて高価である。このことから、金属インキ、干渉マイカ、酸化フレークマイカ、アルミニウムフレーク、光学的変化フレーク等の特殊な光反射性粉体をインキや塗料に配合し、かつ、特殊な材料同士の重ね合わせや複雑な網点構成を用いることによって、ホログラムと同様な画像変化を実現した、一般的な印刷方法で形成可能な偽造防止用印刷物が出現している。
【0004】
本出願人は、一般的、かつ、比較的安価な材料及び簡単な印刷手段を使用していながら、特定の観察角度において、印刷物中の特定部位における人の目に認識される情報が、観察角度を変化させることによって、全く別の情報に変化する偽造防止用情報担持体に係る発明をすでに出願している(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1の技術は、光輝性材料によって形成された画像の上に、透明材料によって形成された画像が積層されて成る構成であり、一方の画像が透明であって、拡散反射光下で見えないことから、二つの画像の位置合わせや色調整を要することなく作製できる点で優れる。
【0005】
また、本出願人は、特許文献1の技術に対して、更に画像が変化する効果を高めるため、詳細には、拡散反射光下で視認される画像が、正反射光下で消失することで、潜像の視認性を向上させるため、光輝性材料によって形成された画像上のみに、透明材料によって形成された画像を形成した技術を提案している(例えば、特許文献2参照)。特許文献2の技術は、より詳細には、光輝性材料によって形成される画像が、一様な濃度の背景要素群と、拡散反射光下で視認される図柄を現す情報要素群とから成り、背景要素群の上に、透明材料によって画像を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4604209号公報
【文献】特許第5358819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2の技術においては、拡散反射光下で視認される画像が、正反射光下で消失する効果は向上するものの、視認できる画像の変化によって、真偽判別や偽造を防止する印刷物として、観察する環境や用いる基材の影響を受けにくい印刷物が、更に望まれる。
【0008】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、光輝性材料から成る可視画像の上に、透明材料から成る潜像画像が積層されて、観察角度によって視認される画像が変化する印刷物であって、拡散光下で視認される画像が正反射光下で消失する効果を向上させることで、正反射光下で出現する画像の視認性が高く、真偽判別性に優れた偽造防止印刷物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の偽造防止印刷物は、基材の少なくとも一部に、拡散反射光下で視認される図柄と正反射光下で視認される図柄が変化して視認される印刷模様を備えた偽造防止印刷物であって、印刷模様は、第1の画像、第2の画像及び第3の画像から成り、第1の画像は、基材と異なる色の光輝性インキによって形成された情報要素が複数配置されて拡散反射光下で視認される図柄を現して成る情報要素群及び光輝性インキによって形成された背景要素が情報要素と重なることなく印刷模様内に一様に複数配置されて成る背景要素群から成り、第2の画像は、透明インキによって形成された複数の潜像要素が、背景要素の上に重なって配置されて、正反射光下で視認される図柄を現して成り、第3の画像は、情報要素と異なる色であって、基材よりも高い光沢を有するカモフラージュ要素が情報要素群と嵌り合って複数配置されて、情報要素群が現す図柄をネガポジ反転した図柄を現して成ることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の偽造防止印刷物は、潜像要素を形成する透明インキとカモフラージュ要素を形成するインキが、同じインキであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の偽造防止印刷物は、第1の画像が現す第1の有意情報の正反射光下で消失する効果が高いことから、正反射光下で出現する画像の視認性が高く、真偽判別性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明における偽造防止印刷物の構成を示す図である。
【
図2】本発明における印刷模様の構成を示す図である。
【
図6】本発明における偽造防止印刷物の効果を示す図である。
【
図7】第1の画像が画素によって構成された例を示す図である。
【
図8】第2の画像が画素によって構成された例を示す図である。
【
図9】第3の画像が画素によって構成された例を示す図である。
【
図10】実施例1の偽造防止印刷物の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他のいろいろな実施の形態が含まれる。
【0014】
(第1の実施の形態)
本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。
図1に、本発明における偽造防止印刷物(1)を示す。偽造防止印刷物(1)は、基材(2)の上に、基材(2)と異なる色の印刷模様(3)を有する。
図1は、基材(2)の一部に印刷模様(3)が形成された例であるが、基材(2)全体に印刷模様(3)が形成される構成でもよい。
【0015】
本発明の偽造防止印刷物(1)の印刷模様(3)を拡散反射光下で観察すると、第1の有意情報が視認され、正反射光下で観察すると第2の有意情報が視認される。本実施の形態では、拡散反射光下で視認される第1の有意情報を「花」の図柄とし、正反射光下で視認される第2の有意情報を「JPN」の文字と「彩紋」の図柄の組み合わせとした例について説明するが、本発明において、第1の有意情報と第2の有意情報は、これに限定されるものではなく、文字、記号や、他の図柄であってもよいし、人物や風景のような多階調画像であってもよい。
【0016】
図2は、印刷模様(3)の構成を示す図であり、印刷模様(3)は、
図2(b)に示す第1の画像(4)の上に、
図2(c)に示す第2の画像(5)が重なって形成され、
図2(d)に示す第3の画像(6)は、第1の画像(4)と嵌り合って成る。第1の画像(4)は、光輝性を有し基材(2)と異なる色のインキによって形成され、第2の画像(5)は、透明のインキによって形成され、第3の画像(6)は、基材(2)よりも高い光沢を備えて成る。以下、第1の画像(4)、第2の画像(5)及び第3の画像(6)の詳細な構成について説明する。
【0017】
(第1の画像)
図3は、第1の画像(4)の構成を示す図であり、第1の画像(4)は、
図3(b)に示す情報要素(4A)が複数配置されて、第1の有意情報である「花」の図柄を現す情報要素群(4-1)と、
図3(c)に示す背景要素(4B)が複数配置されて成る背景要素群(4-2)から成る。本発明において、背景要素群(4-2)は、印刷模様(3)の領域内に複数配置された背景要素(4B)によって、一様な濃度を有し、本実施の形態では、
図3(c)に示す「矩形」の領域内は、光輝性インキの色により、一様な濃度を備えた構成となっている。
【0018】
図3において、情報要素(4A)と背景要素(4B)は、直線の画線で構成された例を示しているが、本発明において、情報要素(4A)と背景要素(4B)は、画素の構成であってもよいし、画線と画素を組み合わせて構成してもよい。なお、本発明において、「画素」とは、印刷模様を形成する最小単位である印刷網点自体か、あるいは、印刷網点を複数集合させて形成した一塊の画像要素であって、円や三角形、四角形を含む多角形、星型等の各種図形、あるいは文字や記号、数字等も含まれる。一方、「画線」とは、印刷模様を形成する最小単位である印刷網点を特定の方向に連続して配置して形成した画像要素であって、点線や破線の分断線、直線、曲線及び波線等が含まれる。後述する第2の画像(5)を構成する潜像要素(5A)と第3の画像(6)を構成するカモフラージュ要素(6A)についても同様である。なお、以降の説明では、各要素が直線の画線で構成された例について説明する。
【0019】
図3(b)に示す情報要素群(4-1)は、直線の画線の構成で成る情報要素(4A)が、一定のピッチ(P1)で第1の方向(図中S1方向)に複数配置されて、「花」の図柄を現した例を示し、
図3(c)に示す背景要素群(4-2)は、「矩形」の領域内に、直線の画線の構成で成る背景要素(4B)が、一定のピッチ(P2)で第1の方向(図中S1方向)に複数配置された例を示している。また、
図3(b)は、情報要素の画線幅(W1)を全て同じ大きさとした例であり、この場合、一様な濃度の情報要素群(4-1)を形成することができる。
図3(c)に示す背景要素群(4-2)もまた、複数の背景要素の画線幅(W2)を全て同じ大きさとすることで、印刷模様(3)中の背景要素(4B)の面積率が一定となり、一様な濃度の背景要素群(4-2)を形成することができる。なお、本発明において、面積率とは、基材(2)の一定の面積の中に配置される要素の面積の割合のことである。
【0020】
図3(a)に示す拡大図は、印刷模様(3)において、第1の有意情報である「花」の図柄に対応した領域と、それ以外の領域の構成を示す図であり、第1の有意情報である「花」の図柄に対応した領域は、情報要素(4A)と背景要素(4B)が、互いに重なることなく配置される。また、「花」の図柄以外の領域は、背景要素(4B)のみが配置される。この構成により、一様な濃度の背景要素群(4-2)に重ならず配置された情報要素群(4-1)が設けられた「花」の図柄に対応した領域は、印刷模様(3)中に光輝性材料によって形成された画像要素の面積率差によって部分的に濃く視認され、拡散反射光下で「花」の図柄が視認される。
【0021】
図3においては、情報要素のピッチ(P1)と背景要素のピッチ(P2)が同じであり、交互に配置された例を示しているが、本発明においては、印刷模様(3)の領域内に複数配置された背景要素(4B)と、情報要素(4A)が重なることなく配置されればよい。例えば、背景要素(4B)と情報要素(4A)が重ならない関係であれば、それぞれの要素のピッチ(P1、P2)は、異なってもよい。また、情報要素の画線幅(W1)と背景要素の画線幅(W2)は、同じ大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよい。また、情報要素(4A)と背景要素(4B)は、重なることなく配置されていれば、互いの要素(4A、4B)が接した状態で配置されてもよいし、離れた状態で配置されてもよい。
【0022】
また、
図3において背景要素群(4-2)は、背景要素(4B)が一定のピッチ(P2)で複数配置された例について説明したが、本発明において、背景要素群(4-2)は、印刷模様(3)内に、一様な濃度を施すことができれば、背景要素(4B)が、一定のピッチで配置される構成に限定されず、わずかに異なってもよい。例えば、背景要素の画線幅(W2)が300μm以下であって、背景要素の画線幅(W2)の2倍のピッチ以下で配置すると、目視では、微細な画線の一つ一つを、認識し難いため、適正な範囲でピッチを異ならせても、一様な濃度の背景要素群(4-2)とすることができる。
【0023】
(階調画像)
また、情報要素の画線幅(W1)を部分的に異ならせることによって、面積率の差による階調画像を形成することもできる。階調画像を形成する場合の具体的な構成としては、一つの情報要素(4A)内において、画線幅(W1)を部分的に異ならせてもよいし、情報要素(4A)同士の画線幅(W1)を異ならせてもよいし、それらを組み合わせてもよい。
【0024】
(光輝性材料)
第1の画像(4)は、物体色を有し、基材(2)と異なる色彩を有する光輝性インキよって形成される。光輝性インキとは、光を強く反射する特性を備えた光輝性材料を含んだインキであって、基材(2)と異なる色彩のインキであれば如何なるインキを用いてもよい。オフセットインキとして市販されている光輝性インキとしては、メタリックインキと呼ばれる銀インキや金インキ等が存在し、着色インキに特殊なパール顔料を配合した二色性パールインキ等を用いてもよい。また、インクジェット方式や電子写真方式で用いられるメタリックインク、メタリックトナー等を用いてもよい。
【0025】
前述の光輝性材料は、アルミニウム粉末、銅粉末、亜鉛粉末、錫粉末、真鍮粉末又はリン化鉄等の一般的な金属粉顔料であってもよい。また、虹彩色パール顔料、鱗片状顔料等の一般的なパール顔料や、ガラスフレーク顔料、コレステリック液晶顔料等の機能性顔料等を用いてもよい。
【0026】
(第2の画像)
続いて、第2の画像(5)について、具体的に説明する。第2の画像(5)は、
図4に示す潜像要素(5A)が複数配置されて、第2の有意情報である「JPN」文字と「彩紋」の図柄を現して成る。また、第2の画像(5)は、透明なインキによって形成され、潜像要素(5A)は、背景要素(4B)の上に重ねて形成される。また、前述のように、潜像要素(5A)は、画素及び/又は画線で構成され、
図4では、直線の画線で構成された潜像要素(5A)が一定のピッチ(P3)で第1の方向(図中S1方向)に複数配置された例を示している。
図4では、潜像要素(5A)が背景要素(4B)の上に重ねて形成されるために、潜像要素のピッチ(P3)を背景要素のピッチ(P2)と同じピッチとした例を示しているが、本発明において、潜像要素(5A)が背景要素(4B)の上に重ねて形成されていれば、潜像要素(5A)は、一定のピッチで形成されなくてもよい。
【0027】
潜像要素(5A)が背景要素(4B)の上に重なるために、
図4に示す潜像要素の画線幅(W3)は、背景要素の画線幅(W2)以下とする必要がある。潜像要素の画線幅(W3)が大きい程、正反射光下で視認される第2の有意情報の視認性が高くなることから、潜像要素の画線幅(W3)と背景要素の画線幅(W2)が等しい構成とすることで、第2の有意情報である「JPN」の文字と「彩紋」の図柄の視認性を高くすることができる。
【0028】
なお、潜像要素の画線幅(W3)を部分的に異ならせることによって、正反射光下で視認される第2の有意情報の階調表現をすることもできる。また、潜像要素(5A)を配置するピッチ(P3)を部分的に異ならせることによっても、面積率差による階調画像を形成することができる。階調画像を形成する場合の具体的な構成としては、一つの潜像要素(5A)内において、画線幅(W3)を部分的に異ならせてもよいし、潜像要素(5A)同士の画線幅(W3)を異ならせてもよいし、それらを組み合わせてもよい。また、例えば、背景要素のピッチ(P2)と同じピッチで潜像要素(5A)を配置する領域と、背景要素のピッチ(P2)の2倍のピッチで潜像要素(5A)を配置する領域を設けることで、潜像要素(5A)の面積率が異なる構成とすることができる。
【0029】
(透明インキ)
第2の画像(5)を形成する材料は透明であり、インキは透明であればグロス系でもマット系でもよいが、基材(2)を問わずに高いスイッチ効果を発現させるにはマット系の透明インキを用いることが望ましい。マット系のインキを使用した方が第1の画像(4)に達する光の量を遮る割合が高く、第2の画像(5)の視認性が高くなるためである。また、この透明なインキに蛍光顔料や燐光顔料、蓄光顔料等の発光顔料やIR吸収顔料、フォトクロミック顔料、示温材料、サーモクロミック材料等の機能性材料を加えてもよく、この場合、画像のスイッチ効果に加えて各種の機能性を追加することができる。また、透明な色材であれば、インクジェット方式や電子写真方式で用いられるクリアインク、クリアトナー等を用いてもよい。
【0030】
(第3の画像)
続いて、第3の画像(6)について、具体的に説明する。第3の画像(6)は、
図5(a)に示すカモフラージュ要素(6A)が複数配置されて、第1の有意情報である「花」の図柄をネガポジ反転した図柄を現して成る。なお、本発明において、第3の画像(6)が現す図柄とは、情報要素群(4-1)が現す第1の有意情報である「花」の図柄をポジ画像とした場合に、ネガ画像となる図柄、すなわち、印刷模様(3)の領域から「花」の図柄を除いた領域が現す図柄のことである。
【0031】
また、第3の画像(6)を構成するカモフラージュ要素(6A)は、基材(2)よりも高い光沢を備え、カモフラージュ要素(6A)は、
図5(b)に示すように、第1の画像(4)を構成する背景要素(4B)の間に配置される。また、情報要素群(4-1)が現す第1の有意情報とネガポジ関係にある第3の画像(6)は、
図5(b)に示すように、情報要素群(4-1)と嵌り合って配置される。なお、本発明において、カモフラージュ要素(6A)が複数配置されて成る第3の画像(6)と情報要素群(4-1)が嵌り合うとは、情報要素群(4-1)が現す「花」の図柄の領域と、第3の画像(6)が現す印刷模様(3)の領域から「花」の図柄を除いた領域が嵌り合うことである。また、本発明において、第3の画像(6)を形成する材料は、有色でもよいし、透明でもよく、ここでは、透明な材料によって、第3の画像(6)が形成される例ついて説明する。
【0032】
前述のように、カモフラージュ要素(6A)は、画素及び/又は画線で構成され、
図5では、直線の画線で構成されたカモフラージュ要素(6A)が一定のピッチ(P4)で第1の方向(図中S1方向)に複数配置された例を示している。
図5に示すように、カモフラージュ要素(6A)が画線で構成された場合において、カモフラージュ要素の画線幅(W4)は、情報要素の画線幅(W1)と同じでもよいし、異なってもよく、前述のように、情報要素群(4-1)が現す図柄の領域と、印刷模様(3)の領域から「花」の図柄を除いた領域が嵌り合う配置であればよい。なお、カモフラージュ要素(6A)は、正反射光下で第1の有意情報の消失効果を高めるために、背景要素(4B)同士の間を完全に埋めた構成とすることが好ましい。
【0033】
第3の画像(6)を形成する透明な材料としては、樹脂ワニスやグロスニス等を用いることができる。また、第3の画像(6)の光沢が、基材(2)よりも高ければ、第2の画像(5)を形成する透明材料を用いてもよく、偽造防止印刷物(1)を構成する基材(2)が、上質紙、コート紙のような紙材やカード材であって、金属反射しない基材であれば、このような透明な材料を用いて、基材(2)より、光沢の高いカモフラージュ要素(6A)を形成することができる。
【0034】
(効果)
以上の構成で成る本発明の偽造防止印刷物(1)を拡散反射光下で観察すると、
図6(a)に示すように、光輝性材料によって形成された第1の画像(4)により、第1の有意情報である「花」の図柄が視認され、印刷模様(3)中に、「花」の図柄が周りの領域よりも濃く視認される。なお、第2の画像(5)と第3の画像(6)は、透明な材料で形成されていることから、視認することができない。
【0035】
一方、偽造防止印刷物(1)を正反射光下で観察すると、
図6(b)に示すように、第2の画像(5)により、第2の有意情報である「JPN」と「彩紋」の図柄が視認される。第1の有意情報が消失する原理については、特許文献2と同様であり、正反射光下の観察では、光輝性材料によって形成された第1の画像(4)が、入射した光を強く反射することで、第1の画像(4)の濃淡差を認識し難くなるからである。また、第2の有意情報が視認される原理についても、特許文献2と同様であり、透明材料によって第2の画像(5)が形成された領域は、第2の画像(5)が形成されていない領域と比べて、第1の画像(4)まで達する光の強さが低下することで、正反射する光が弱まる。その結果、第2の画像(5)が形成された領域(第2の有意情報)は、
図6(b)に示すように、周りの領域よりも暗く視認される。
【0036】
本発明の偽造防止印刷物(1)は、正反射光下で消失する第1の有意情報を現す情報要素群(4-1)の上に、透明材料が重ならないことから、情報要素群(4-1)に入射する光を遮ることがない。そのため、正反射光下で消失しなければならない情報要素群(4-1)は、入射する光を正反射して、強い正反射光が得られることで、拡散反射光下で視認される画像の消失する効果が高い。更に、本発明の偽造防止印刷物(1)は、情報要素群(4-1)が現す図柄をネガポジ反転した第3の画像(6)からも正反射光が得られることにより、光輝性インキにより形成された第1の画像(4)を構成する情報要素群(4-1)と背景要素群(4-2)の正反射光量の差を補う作用が生じて、第1の有意情報が消失する効果が高まる。その結果、本発明の偽造防止印刷物(1)は、正反射光下の観察において、第1の有意情報が混在して視認される課題を解消し、正反射光下で出現する第2の有意情報の視認性が高く、真偽判別性に優れる。
【0037】
(画素)
以上の説明では、情報要素(4A)、背景要素(4B)、潜像要素(5A)及びカモフラージュ要素(6A)が直線の画線で構成された例であるが、続いて、画素で構成された例について説明する。
【0038】
(第1の画像)
図7は、第1の画像(4)を構成する情報要素(4A)及び背景要素(4B)が画素で構成された例を示す図であり、画素の形状は、四角形とした例である。この場合、情報要素群(4-1)は、
図7(b)の拡大図に示すように、画素で構成された情報要素(4A)が、第1Aの方向(V
1A)に第1Aのピッチ(P
1A)、第1Bの方向(V
1B)に第1Bのピッチ(P
1B)で複数配置され、第1の有意情報を現して成る。また、背景要素群(4-2)は、
図7(c)の拡大図に示すように、四角形の画素で構成された背景要素(4B)が、第2Aの方向(V
2A)に第2Aのピッチ(P
2A)、第2Bの方向(V
2B)に第2Bのピッチ(P
2B)で複数配置される。
【0039】
図7においては、情報要素(4A)と背景要素(4B)が配置される方向とピッチが同じ例を示しているが、互いの要素が重なることなく配置されれば、情報要素(4A)と背景要素(4B)が配置される方向とピッチは、異なってもよい。また、
図7においては、情報要素(4A)と背景要素(4B)が、同じ四角形の画素で構成された例を示しているが、異なる形状の画素で構成されてもよい。また、情報要素の幅(w1)と背景要素の幅(w2)及び情報要素の高さ(h1)と背景要素(4B)の高さ(h2)は、同じ大きさであってもよいし、異なる大きさであってもよい。
【0040】
(階調)
また、
図7において、情報要素(4A)は、全て同じ大きさで構成された例を示しているが、情報要素(4A)の大きさを部分的に異ならせることによって、面積率の差による階調画像を形成することもできる。なお、背景要素(4B)については、画線で構成される場合と同様に、背景要素群(4-2)が一様な濃度を備えた構成とするため、一定の面積率で配置される。
図7(c)は、その構成として、全ての背景要素(4B)が、同じ形状及び同じ大きさであり、かつ、一定のピッチ(P
2A、P
2B)で配置された例を示している。
【0041】
(第2の画像)
図8は、第2の画像(5)を構成する潜像要素(5A)が画素で構成された例を示す図であり、画素の形状は、四角形とした例である。この場合、第2の画像(5)は、
図8の拡大図に示すように、画素で構成された潜像要素(5A)が、第3Aの方向(V
3A)に第3Aのピッチ(P
3A)、第3Bの方向(V
3B)に第3Bのピッチ(P
3B)で複数配置され、第2の有意情報を現して成り、潜像要素(5A)の各々は、背景要素(4B)の上に重ねて形成される。
図8は、潜像要素が配置される方向(V
3A、V
3B)及びピッチ(P
3A、P
3B)と、
図7に示す背景要素が配置される方向(V
2A、V
2B)とピッチ(P
2A、P
2B)を同じとした例を示しているが、潜像要素(5A)が背景要素(4B)に重なる構成であれば、潜像要素(5A)の方向とピッチは、背景要素(4B)と異なってもよい。なお、正反射光下で観察した際に視認される第2の有意情報がより、明瞭になるように、潜像要素(5A)と背景要素(4B)を配置する方向とピッチは同じであることが好ましい。
【0042】
潜像要素(5A)が背景要素(4B)の上に重なるために、
図8に示す潜像要素の幅(w3)は、背景要素の幅(w2)以下とし、潜像要素の高さ(h3)は、背景要素の高さ(h2)以下とする必要がある。潜像要素(5A)が画素で構成される場合においても、潜像要素の大きさ(w3、h3)が背景要素の大きさ(w2、h2)と等しい構成とすることで、正反射光下で視認される潜像の視認性が高くなる。
【0043】
なお、潜像要素の幅(w3)と潜像要素の高さ(h3)を部分的に異ならせることによって、面積率差による階調画像を形成することもできる。また、潜像要素(5A)を配置するピッチ(P3A、P3B)を部分的に異ならせることによっても、面積率差による階調画像を形成することもでき、これと併せて、潜像要素の幅(w3)と潜像要素の高さ(h3)を部分的に異ならせて階調画像を形成してもよい。
【0044】
図8において、潜像要素(5A)は、四角形の画素で構成された例について説明したが、他の形状の画素で構成してもよいし、潜像要素(5A)の画素の形状が部分的に異なってもよい。
【0045】
(第3の画像)
図9(a)は、第3の画像(6)を構成するカモフラージュ要素(6A)が画素で構成された例を示す図であり、画素の形状は、四角形とした例である。この場合、第3の画像(6)は、
図9(a)の拡大図に示すように、画素で構成されたカモフラージュ要素(6A)が、第4Aの方向(V
4A)に第4Aのピッチ(P
4A)、第4Bの方向(V
4B)に第4Bのピッチ(P
4B)で複数配置され、第1の有意情報である「花」をネガポジ反転した図柄を現して成る。
【0046】
図9(b)は、情報要素(4A)、背景要素(4B)、潜像要素(5A)及びカモフラージュ要素(6A)が画素で構成された場合の、各要素の配置を示す図である。各要素が画素で構成される場合においても、画線の場合と同様であり、
図9(b)に示すように、情報要素(4A)は、背景要素(4B)と重ならず配置される。また、潜像要素(5A)は、背景要素(4B)の上に重なって配置される。また、第3の画像(6)を構成するカモフラージュ要素(6A)は、情報要素群(4-1)を構成する情報要素(4A)と嵌り合って配置される。
【0047】
図9(a)は、カモフラージュ要素が配置される方向(V
4A、V
4B)及びピッチ(P
4A、P
4B)が、
図7及び
図8に示す画像要素が配置される方向及びピッチと同じとした例を示しているが、背景要素(4B)の間であって、情報要素(4A)と嵌り合って配置されれば、カモフラージュ要素が配置される方向(V
4A、V
4B)とピッチ(P
4A、P
4B)は、
図9に示す構成に限定されるものではなく、各要素が配置される方向、ピッチ及び画素の形状は、互いに異なってもよい。
【0048】
また、本発明の偽造防止印刷物(1)は、
図3から
図5に示すように、各要素(4A、4B、5A、6A)が画線のみで形成される構成又は
図7から
図9に示すように、各要素(4A、4B、5A、6A)が画素のみで形成される構成の他に、画線と画素を組み合わせて形成してもよい。特に、画素の構成とした場合には、解像度の高い第1の有意情報と第2の有意情報を現すことができることから、情報要素(4A)と潜像要素(5A)を画素の構成とすることが好ましい。また、第3の画像(6)からの正反射光が強い程、情報要素群(4-1)が現す第1の有意情報が、正反射光下で消失する効果が高まることから、カモフラージュ要素(6A)を、基材(2)の上に、隙間なく配置するとすることが好ましい。
【0049】
次に、第3の画像(6)が、正反射光下で有色の光を反射する光沢インキを用いる場合について説明する。なお、正反射光下で有色の光を反射する光沢インキとは、偽造防止印刷物(1)を正反射光下で観察した際に、その色が視認できない状態ではなく、赤、青、黄等の色が視認できる光沢インキである。前述のとおり第3の画像(6)は、光輝性インキで形成された第1の有意情報が正反射光下で観察した場合に消失する効果を高める役割がある。光輝性インキの正反射光が有色の場合には、第3の画像(6)を形成する光沢インキの正反射する光を同じ有色とすることで、第1の有意情報の正反射光下での消失効果を向上させることができる。例えば、光輝性インキに金インキを使用した場合には、正反射光は黄色であるため、同じ黄色の光を正反射する光沢インキを用いればよく、具体的には、正反射光が黄色のパールインキ、OVIインキ、液晶インキを用いればよい。また、前述した、樹脂ワニスやグロスニスを黄色に着色した光沢インキを使用してもよいが、その場合、拡散反射光下で第1の有意情報が視認されるために、情報要素(4A)とカモフラージュ要素(6A)の濃度を異ならせて形成する必要がある。
【0050】
第1の画像(4)を正反射光が色相をもつインキで形成した場合には、着色するのは第3の画像(6)を形成する光沢インキのみでよく、第2の画像(5)は前述のとおり、透明インキで形成すればよい。
【0051】
続いて、第3の画像(6)が、拡散反射光下で有色であって、かつ、第1の画像(4)を形成する光輝性インキと異なる色の光沢インキを用いて形成する例について説明する。具体例として、第1の画像(4)を形成する光輝性インキに、銀インキを用い、第3の画像(6)を形成する光沢インキに、金インキを用いる例について説明する。なお、銀インキは、拡散反射光下で観察すると灰色に視認され、金インキは、拡散反射光下で観察すると黄土色に視認される。
【0052】
前述のように、第3の画像(6)を拡散反射光下で透明な光沢インキによって形成した場合には、拡散反射光下で、その色が視認されることはなく、第1の画像(4)を形成する光輝性インキの色の濃淡によって、第1の有意情報が視認されるが、第3の画像(6)を有色の光沢インキによって形成した場合には、第3の画像(6)の色が拡散反射光下でも視認される。この場合、「花」の図柄に対応して、情報要素群(4-1)と背景要素群(4-2)の一部が形成される領域は、銀インキである灰色として視認され、「花」の図柄のネガポジ反転した領域は、カモフラージュ要素(6A)と背景要素群(4-2)が形成される領域は、黄土色と灰色が混色して、茶色(黄土色が暗くなる)として視認される。すなわち、拡散反射光下で視認される図柄を、異なる色で形成することができる。
【0053】
第3の画像(6)が拡散反射光下で有色であって、かつ、第1の画像(4)を形成する光輝性インキと異なる色の光沢インキによって形成する場合、前述した第1の画像(4)を形成する光輝性インキを用いることができ、第1の画像(4)を形成する光輝性インキと異なる色であれば、そのまま用いればよい。また、拡散反射光下で視認される第3の画像(6)を所望の色とするために、光輝性インキに着色顔料や着色染料を、適宜、配合したインキを用いてもよい。また、前述した樹脂ワニスやグロスニスを、第1の画像(4)を形成する光輝性インキと異なる色に着色した光沢インキを使用してもよい。
【0054】
第3の画像(6)を拡散反射光下で有色の光沢インキによって形成する場合においても、正反射光下で、第3の画像(6)からの正反射光が得られるため、第1の有意情報の消失効果が得られ、視認される図柄が変化する効果が得られる。ただし、第1の画像(4)と第3の画像(6)の色相の差が大きいと、第1の有意情報の消失効果が低下するが、その場合、第3の画像(6)の面積率を小さくする又は第3の画像(6)を形成するインキの濃度を下げる等の調整によって、第1の有意情報が消失する構成とすればよい。また、アルミ顔料のように、高い正反射光が得られる顔料を用いることでも、第1の有意情報の消失効果を高めることができる。
【0055】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した偽造防止印刷物(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【0056】
(実施例1)
実施例1は、
図2に示す印刷模様(3)を備えた偽造防止印刷物(1)である。基材(2)には、白色のカラーコピー用上質紙(Ncolor081 富士ゼロックス社製)を用い、
図2に示す構成の印刷模様(3)を電子写真方式の印刷機を用いて形成した。なお、基材(2)として用いたカラーコピー用上質紙の光沢度を光沢計(micro-TRI-gloss BYK-Gardner社製)で測定した結果、11(角度85°)であった。
【0057】
図3に示す第1の画像(4)において、情報要素群(4-1)は、光輝性インキ(メタリックシルバートナー)により形成し、画線で構成される情報要素の画線幅(W1)を、120μm、ピッチ(P1)を300μmとして、情報要素(4A)を複数配置して「花」の図柄を現す構成とした。また、
図3に示す第1の画像(4)において、背景要素群(4-2)は、光輝性インキ(メタリックシルバートナー)により形成し、画線で構成される背景要素の画線幅(W2)を、180μm、ピッチ(P2)を300μmとして、背景要素(4A)を複数配置した構成とした。なお、情報要素(4A)と背景要素(4B)は、ピッチ(P1、P2)である300μmの範囲内に、互いに接する状態で配置した(
図10(a))。
【0058】
図4に示す第2の画像(5)において、潜像要素(5A)は、透明インキ(クリアトナー)により、潜像要素の画線幅(W3)を、180μm、ピッチ(P3)を300μmとして、複数配置した構成とした。また、潜像要素(5A)は、背景要素(4B)の上に重ねて形成した(
図10(b))。
【0059】
図5に示す第3の画像(6)において、カモフラージュ要素(6A)は、透明インキ(クリアトナー)により、カモフラージュ要素の画線幅(W4)を、120μm、ピッチ(P4)を300μmとして複数配置し、「花」の図柄をネガポジ反転した図柄を現す構成とした。また、カモフラージュ要素(6A)は、第1の画像(4)を構成する背景要素(4B)の間であって、情報要素(4A)と嵌り合うように配置した(
図10(c))。なお、基材(2)に対してカモフラージュ要素(6A)を形成した部分の光沢を光沢計(micro-TRI-gloss:BYK-Gardner製)で測定した結果、34(角度60°)であり、基材(2)より光沢が高いことを確認した。
【0060】
以上の構成で成る偽造防止印刷物(1)を、拡散反射光下で観察すると、
図6(a)に示すように、光輝性インキの色である灰色の濃淡で現された「花」の図柄を視認することができ、正反射光下で観察すると、「花」の図柄は、視認されず、
図6(b)に示すように、「JPN」の文字と「彩紋」の図柄を視認することができた。
【0061】
(実施例2)
実施例2は、
図2に示す印刷模様(3)を備えた偽造防止印刷物(1)であり、基材(2)にはコート紙(OSコート紙127 富士ゼロックス社製)を用い、
図2に示す構成の印刷模様(3)を電子写真方式の印刷機を用いて形成した。なお、基材(2)として用いたコート紙の光沢度を光沢計(micro-TRI-gloss BYK-Gardner社製)で測定した結果、33(角度85°)であった。
【0062】
図3に示す第1の画像(4)において、情報要素群(4-1)は、光輝性インキ(メタリックシルバートナー)により形成し、画線で構成される情報要素の画線幅(W1)を、90μm、ピッチ(P1)を300μmとして、情報要素(4A)を複数配置して「花」の図柄を現す構成とした。また、
図3に示す第1の画像(4)において、背景要素群(4-2)は、光輝性インキ(メタリックシルバートナー)により形成し、画線で構成される背景要素の画線幅(W2)を、210μm、ピッチ(P2)を300μmとして、背景要素(4A)を複数配置した構成とした。なお、情報要素(4A)と背景要素(4B)は、ピッチ(P1、P2)である300μmの範囲内に、互いに接する状態で配置した(
図10(a))。
【0063】
図4に示す第2の画像(5)において、潜像要素(5A)は、透明インキ(クリアトナー)により、潜像要素の画線幅(W3)を、210μm、ピッチ(P3)を300μmとして、複数配置した構成とした。また、潜像要素(5A)は、背景要素(4B)の上に重ねて形成した(
図10(b))。
【0064】
図5に示す第3の画像(6)において、カモフラージュ要素(6A)は、透明インキ(クリアトナー)により、カモフラージュ要素の画線幅(W4)を、90μm、ピッチ(P4)を300μmとして複数配置し、「花」の図柄をネガポジ反転した図柄を現す構成とした。また、カモフラージュ要素(6A)は、第1の画像(4)を構成する背景要素(4B)の間であって、情報要素(4A)と嵌り合うように配置した(
図10(c))。なお、基材(2)に対してカモフラージュ要素(6A)を形成した部分の光沢を光沢計(micro-TRI-gloss:BYK-Gardner製)で測定した結果、68(角度60°)であり、基材(2)より光沢が高いことを確認した。
【0065】
以上の構成で成る偽造防止印刷物(1)を、拡散反射光下で観察すると、
図6(a)に示すように、光輝性インキの色である灰色の濃淡で現された「花」の図柄を視認することができ、正反射光下で観察すると、「花」の図柄は、視認されず、
図6(b)に示すように、「JPN」の文字と「彩紋」の図柄を視認することができた。
【符号の説明】
【0066】
1 偽造防止印刷物
2 基材
3 印刷模様
4 第1の画像
4-1 情報要素群
4-2 背景要素群
4A 情報要素
4B 背景要素
5 第2の画像
5A 潜像要素
6 第3の画像
6A カモフラージュ要素